(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】液晶ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20230421BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230421BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230421BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20230421BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20230421BHJP
B65D 63/10 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L23/08
C08L63/00 A
C08K5/3477
C08K7/00
B65D63/10 M
(21)【出願番号】P 2021076127
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2017107023の分割
【原出願日】2017-05-30
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】木原 正博
(72)【発明者】
【氏名】土谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】深澤 正寛
(72)【発明者】
【氏名】大杉 健太
(72)【発明者】
【氏名】内田 博人
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/043701(WO,A1)
【文献】特開平05-117506(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101305056(CN,A)
【文献】国際公開第2013/129338(WO,A1)
【文献】特開平07-109407(JP,A)
【文献】特開平10-237323(JP,A)
【文献】特開2005-054017(JP,A)
【文献】特開2008-019400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0166576(US,A1)
【文献】米国特許第05216073(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/04
C08L 23/08
C08L 63/00
C08K 5/3477
C08K 7/00
B65D 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー100重量部、エポキシ基含有エチレン共重合体9.5~30重量部、板状充填材1~30重量部、およびメラミン化合物0.01~20重量部を含有し、
液晶ポリマーは、式(I)および式(II)で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂であり、
【化1】
厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、ASTM D638に準拠して測定した引張強度(MPa)と引張破断伸び(%)の積である抗張積が800MPa・%以上であり、
板状充填材は、タルク、マイカ、グラファイト、ドロマイト、クレイおよびガラスフレークからなる群より選択される1種以上であり、
板状充填材の平均粒子径は0.5μm以上50μm以下であり、
ここで、平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定法で測定されるメディアン径である、
メラミン化合物はメラミンシアヌレートである、
液晶ポリマー組成物。
【請求項2】
エポキシ基含有エチレン共重合体が、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体、およびエチレン単位とグリシジルエーテル単位からなる共重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項3】
板状充填材がタルクである、請求項1または2に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項4】
板状充填材の含有量は1~25重量部である、請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項5】
さらにカーボンブラックを含有し、その含有量は20重量部以下である、請求項1~4のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項6】
液晶ポリマーが、式(I)および式(II)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、請求項1~5のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【化2】
【請求項7】
厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、ASTM D638に準拠して測定した引張弾性率が10.0GPa以下であり、かつ、短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を使用し、ASTM D790に準拠して測定した曲げ弾性率が7.0GPa以下である、請求項1~6のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
【請求項9】
成形品が結束バンドである、請求項8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、伸び性および成形時の流動性に優れた液晶ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモトロピック液晶ポリマー(以下、液晶ポリマーまたはLCPと略称する)は、耐熱性、高強度、耐薬品性、寸法精度、低吸水性等に優れているため、各種用途にその使用が拡大しつつある。
【0003】
特にパーソナル・コンピューターや携帯電話、スマートフォン、自動車等の電気・電子分野においては、部品の高集積度化、小型化、薄肉化、低背化が急速に進んでおり、これに伴う樹脂部材の薄肉化が求められている。そこで、液晶ポリマーはその優れた成形性、すなわち薄肉流動性が良好であり、かつバリが出ないという他の樹脂にない特徴を生かして、その使用量が大幅に増大している。
【0004】
しかし、液晶ポリマーは分子構造が剛直であるが故に柔軟性や伸び性に劣るといった欠点がある。電気・電子分野で重要な部品の1つであるコネクタ部品においては、部品同士の接続に嵌合が必要であるため、柔軟性や伸び性も求められる。材料評価の観点では、引張強度と引張破断伸びの積である抗張積が1つの基準となり、強度と伸びを兼ね備えた、抗張積の大きい液晶ポリマーが求められている。
【0005】
特許文献1には、靱性に優れた液晶ポリエステルアミド樹脂組成物について記載されている。しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物は成形加工温度ならびに溶融粘度が高いため、成形加工性が不十分であるといった課題があった。
【0006】
特許文献2には、引張物性に優れた液晶ポリマー組成物として、液晶ポリマーにエポキシ基含有エチレン共重合体および表面無処理のガラス繊維を含有させた組成物が提案されている。しかしながら、特許文献2に記載の液晶ポリマー組成物は、表面無処理のガラス繊維を含有することによって溶融粘度が高くなり、引張伸びの改善が不十分であるといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-108037号公報
【文献】特開平8-134334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、流動性および機械強度を損なうことなく、柔軟性および伸び性が改良された液晶ポリマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、液晶ポリマーの柔軟性および伸び性の改善について鋭意検討した結果、液晶ポリマーに、エポキシ基含有エチレン共重合体および板状充填材を含有させることにより、流動性および機械強度を損なうことなく柔軟性および伸び性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、液晶ポリマー100重量部、エポキシ基含有エチレン共重合体1~30重量部、板状充填材1~30重量部、およびメラミン化合物0.01~20重量部を含有し、メラミン化合物はメラミンシアヌレートである、液晶ポリマー組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶ポリマー組成物は、流動性および機械強度を損なうことなく、柔軟性および伸び性に優れるため、接続に嵌合等が求められる部品や小型化および薄肉化が求められる部品の成形用樹脂として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶ポリマー組成物に用いる液晶ポリマーは、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定されない。
【0013】
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0014】
本発明における液晶ポリマーを構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、これら化合物は1種のみであってもよく、2種以上の化合物を組み合わせてもよいが、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体を含むことが望ましい。
【0015】
液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、前記化合物の1種以上が結合してなるオリゴマー、つまり1種以上の前記化合物から構成されるオリゴマーであってもよい。
【0016】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという観点から、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0017】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,4’-ジカルボキシビフェニルおよび4,4’’-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0018】
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物がより好ましい。
【0019】
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、6-アミノ-2-ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0020】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルエーテル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’-ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすい観点から、4-アミノフェノールが好ましい。
【0021】
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0022】
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0024】
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、ジヒドロキシテレフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸またはこれらのアルキル、アルコキシもしくはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体を重合性単量体として含むものであってもよい。これらの重合性単量体の使用量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
【0025】
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、チオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える重合性単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの重合性単量体の含有量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
【0026】
これらの繰返し単位を組み合わせたポリマーは、単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布によって異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に用いる液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するものに限られる。単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布は、異方性溶融相を形成する液晶ポリマーが得られるように当業者であれば適宜選択および調節することができる。
【0027】
本発明の液晶ポリマー組成物に用いる液晶ポリマーを構成する重合性単量体の組み合わせの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
1)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、
2)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
3)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
4)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン、
5)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
6)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
7)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
8)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
9)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
10)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
11)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
12)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
13)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
14)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
15)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
16)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
17)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
18)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
19)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/4-アミノフェノール、
20)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
21)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
22)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
23)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
24)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル。
【0028】
上記の液晶ポリマーは単独で用いてもよく、2種以上の液晶ポリマーの混合物として用いてもよい。
【0029】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)および/または式(II)で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【化1】
【0030】
また、本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)および式(II)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【0031】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの結晶融解温度は、特に限定されないが、エポキシ基含有エチレン共重合体の成形加工時の滞留熱安定性の観点から、成形加工時の樹脂温度を比較的低く設定できる、350℃以下であるものが好ましく、340℃以下であるものがより好ましく、330℃以下であるものがさらに好ましい。また、結晶融解温度が170℃以上である液晶ポリマーが好ましく、180℃以上である液晶ポリマーがより好ましく、190℃以上であるものがさらに好ましい。
【0032】
以下、本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0033】
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、重合性単量体を、エステル結合またはアミド結合を形成させる公知の重縮合方法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などに供することにより液晶ポリマーを得ることができる。
【0034】
溶融アシドリシス法は、本発明の液晶ポリマー組成物に用いる液晶ポリマーを製造するのに好ましい方法である。この方法は、最初に重合性単量体を加熱して反応物質の溶融溶液を形成し、次いで重縮合反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0035】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で重合性単量体を反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0036】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用される重合性単量体は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。
【0037】
低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。本発明の好ましい実施態様において、前記重合性単量体のアセチル化物を反応に供する。
【0038】
重合性単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時に重合性単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0039】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても、重縮合反応は、温度150~400℃、好ましくは250~370℃で、常圧および/または減圧下で行うのがよく、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0040】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(例えばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン;三酸化アンチモン;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(例えば酢酸カリウム);ルイス酸(例えば三フッ化硼素)、ハロゲン化水素(例えば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0041】
触媒を使用する場合、該触媒の量は重合性単量体全量に対し、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは2~100ppmである。
【0042】
このようにして重縮合反応させて得られた液晶ポリマーは、通常、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
【0043】
ペレット状、フレーク状、または粉末状の液晶ポリマーは、分子量を高め耐熱性を向上させる目的などで、減圧下、真空下、または窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下において、実質的に固相状態で熱処理を行ってもよい。
【0044】
固相状態において行う熱処理の温度は、液晶ポリマーが溶融しない限り特に限定されないが、260~350℃、好ましくは280~320℃で行うのがよい。
【0045】
本発明の液晶ポリマー組成物は、上記のようにして得られた液晶ポリマー100重量部に加えて、エポキシ基含有エチレン共重合体1~30重量部、および板状充填材1~30重量部を含有する。
【0046】
エポキシ基含有エチレン共重合体の含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して好ましくは5~25重量部、より好ましくは5~15重量部である。前記のエポキシ基含有エチレン共重合体の含有量が液晶ポリマー100重量部に対して30重量部を上回る場合、液晶ポリマー組成物の流動性が低下する。前記のエポキシ基含有エチレン共重合体の含有量が1重量部を下回る場合、液晶ポリマー組成物の柔軟性および伸び性の向上効果を発現させることができない。
【0047】
エポキシ基含有エチレン共重合体としては、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体、およびエチレン単位とグリシジルエーテル単位からなる共重合体からなる群から選択される1種以上が挙げられ、これらの中でも、液晶ポリマー組成物の機械強度を保持できる点でエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体が好ましい。
【0048】
エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常、エチレン単位を与える化合物と、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位を与える化合物と、必要に応じてエチレン系不飽和エステル単位を与える化合物を、ラジカル発生剤の存在下、500~4000気圧、100~300℃の条件で、適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる方法により製造することができるものである。
【0049】
本発明において板状充填材とは、3次元的形状において2方向への広がりを持ち、残りの1方向へは広がりを持たない円盤状、方形板状、短冊状および不定形板状である充填材を意味し、具体的には、タルク、マイカ、グラファイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、カオリン、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、長石粉、酸性白土、ロウ石クレー、セリサイト、シリマナイト、ベントナイト、スレート粉、シラン等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、胡粉、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、沈降性硫酸カルシウム、焼石膏、硫酸バリウム等の硫酸塩、水和アルミナ等の水酸化物、アルミナ、酸化アンチモン、マグネシア、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、珪砂、石英、ホワイトカーボン、珪藻土等の酸化物、二硫化モリブデン等の硫化物、板状のウォラストナイトおよび金属粉粒体からなる群より選択される1種以上が挙げられる。これら板状充填材の中でも、液晶ポリマー組成物の柔軟性および成形時の流動性の向上効果に優れる点でタルク、マイカ、グラファイト、ドロマイト、クレイおよびガラスフレークからなる群より選択される1種以上が好ましく、特にタルクが好適に使用される。
【0050】
板状充填材の平均粒子径は特に限定されないが、レーザ回折/散乱式粒度分布測定法で測定されるメディアン径は、流動性の観点から50μm以下であることが好ましい。また、板状充填剤の平均粒子径は通常、0.5μm以上である。
【0051】
板状充填材の含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して好ましくは5~25重量部、より好ましくは5~15重量部である。前記の板状充填材の含有量が液晶ポリマー100重量部に対して30重量部を上回る場合、液晶ポリマー組成物の柔軟性改善効果が低下する。前記の板状充填材の含有量が1重量部を下回る場合、液晶ポリマー組成物の柔軟性および成形時の流動性の向上効果を発現させることができない。
【0052】
本発明の液晶ポリマー組成物の抗張積は800MPa・%以上が好ましく、より好ましくは900MPa・%以上であり、さらに好ましくは1000MPa・%以上である。
【0053】
抗張積とは、引張強度と引張破断伸びとの積(MPa・%)であり、高分子化合物の破断エネルギーの尺度として用いられ、抗張積の値が大きいほど強度と伸びのバランスの良い材料であることを示す。
【0054】
本明細書において、引張強度および引張破断伸びは厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、標線間25mmの接触式の伸び計を用い、試験速度5mm/min、チャック間距離64mmの条件で、ASTM D638に準拠して測定される。
【0055】
本発明の液晶ポリマー組成物の引張弾性率は10GPa以下が好ましく、より好ましくは9GPa以下であり、さらに好ましくは8GPa以下である。本明細書において、引張弾性率は厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、試験速度5mm/min、チャック間距離64mmの条件で、ASTM D638に準拠して測定され、値が小さいほど柔軟性に優れることを示す。
【0056】
本発明の液晶ポリマー組成物の曲げ弾性率は7GPa以下が好ましく、より好ましくは6.5GPa以下であり、さらに好ましくは6GPa以下である。
【0057】
本明細書において、曲げ弾性率は短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を使用し、試験速度1.3mm/min、スパン間距離50mmの条件で、ASTM D790に準拠して測定され、値が小さいほど柔軟性に優れることを示す。
【0058】
本発明の液晶ポリマー組成物は、成形時の流動性向上の観点からさらにメラミン化合物を0.01~20重量部含有することが好ましい。
【0059】
本発明において使用されるメラミン化合物としては、メラミンシアヌレート、メラミンアクリレート、メラミン塩酸塩、メラミンスルホン酸塩、メラミンホウ酸塩、およびメラミンピロリン酸塩からなる群より選択される1種以上のものが挙げられる。これらの中でも、流動性および機械強度に優れる点でメラミンシアヌレートが好ましい。
【0060】
メラミン化合物の含有量が液晶ポリマー100重量部に対して20重量部を上回る場合、液晶ポリマー組成物の伸び改善効果が低下する傾向がある。前記のメラミン化合物の含有量が0.01重量部を下回る場合、液晶ポリマー組成物の難燃性および成形時の流動性の向上効果を発現させることができない。
【0061】
本発明において液晶ポリマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10~25のものをいう)、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型改良剤、カーボンブラック、染料、顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。本発明において液晶ポリマー組成物は、これらの添加剤を1種のみ含有してもよく、または2種以上を組み合わせて含有してもよい。これらの中でもカーボンブラックが好ましい。本発明の液晶ポリマー組成物がカーボンブラックを含有する場合、その含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。本発明の液晶ポリマー組成物がカーボンブラックを20重量部以下含有する場合、着色剤としての機能が得られると共に抗張積を向上させる効果が得られ易い傾向がある。
【0062】
本発明の液晶ポリマー組成物は、板状充填材以外の充填材、例えば球状充填材(バルーン、ガラスビーズ等)や繊維状充填材(ガラス繊維等)を含んでもよい。板状充填材以外の充填材を含む場合は液晶ポリマー100重量部に対して1重量部未満が好ましく、0.5重量部未満がより好ましく、0.1重量部未満がさらに好ましく、これらの充填材を含まないことが特に好ましい。
【0063】
液晶ポリマー組成物における他の添加剤の合計量は、液晶ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。他の添加剤の合計量が液晶ポリマー100重量部に対して10重量部を超える場合には、液晶ポリマー組成物の成形加工性が低下する傾向や、熱安定性が悪くなる傾向がある。他の添加剤の合計量が0.1重量部を下回る場合、添加剤の機能を実現することができない。
【0064】
また、本発明の液晶ポリマー組成物を成形するに際し、上記他の添加剤のうち高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を、予め、液晶ポリマーのペレット表面に付着せしめてもよい。
【0065】
本発明の液晶ポリマー組成物は、他の樹脂成分を添加してもよい。他の樹脂成分としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。他の樹脂成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて含有することができる。液晶ポリマー組成物が他の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分の含有量は特に限定的ではないが、一つの典型的な例において、他の樹脂成分の合計量は、液晶ポリマー100重量部に対して、通常0.1~100重量部、特に0.1~80重量部である。
【0066】
上述したエポキシ基含有エチレン共重合体、板状充填材、メラミン化合物、他の添加剤並びに他の樹脂成分などは、液晶ポリマー中に添加され、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、液晶ポリマーの結晶融解温度近傍ないし結晶融解温度+20℃までの温度で溶融混練して液晶ポリマー組成物とすることができる。
【0067】
このようにして得られた本発明の液晶ポリマー組成物は、射出成形機、押出機などを用いる公知の成形方法によって、射出成形品、フィルム、シート、および不織布などの成形品に加工される。これら成形品は、本発明の液晶ポリマーから構成され、つまり、本発明の液晶ポリマー組成物を成形して得られる。
【0068】
本発明の液晶ポリマー組成物は、柔軟性および伸び性に優れるため、小型化および薄肉化が求められる成形用樹脂として好適に使用することが可能であり、柔軟性が求められる点で結束バンド、コネクタ、チューブ、クリップ等に好適に用いられ、特に結束バンドに好適に用いられる。
【0069】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
〈液晶ポリマー〉
まず、実施例および比較例において使用する液晶ポリマーの合成例を記す。
【0071】
合成例における略号は以下の化合物を表す。
[液晶ポリマーの合成に用いた重合性単量体]
POB: 4-ヒドロキシ安息香酸
BON6: 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
【0072】
合成例で得られた液晶ポリマーの結晶融解温度は以下の方法で測定した。
〈結晶融解温度〉
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
【0073】
[合成例(LCP)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた2Lの反応容器に、POB:655.4g(73モル%)およびBON6:476.0g(27モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.01倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0074】
窒素ガス雰囲気下に室温~145℃まで1時間かけて昇温し、同温度で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ330℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は278℃であった。
【0075】
[実施例1~5および比較例1~5](実施例1~2は参考例)
合成例で得られた液晶ポリマー100重量部に、エチレン系共重合体、板状充填材およびメラミン化合物を表1に記載の重量比でそれぞれ配合し、二軸押出機((株)JSW、TEX-30)にて溶融混練したものをペレット化し、液晶ポリマー組成物を調製した。
【0076】
エチレン系共重合体、板状充填材およびメラミン化合物は以下のものを使用した。
【0077】
〈エチレン系共重合体-1〉
住友化学(株)製 ボンドファースト BF-2C(エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体)
【0078】
〈エチレン系共重合体-2〉
住友化学(株)製 ボンドファースト BF-7M(エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体)
【0079】
〈板状充填材〉
富士タルク工業(株)製 RH415(板状タルク、平均粒子径14μm)
【0080】
〈メラミン化合物〉
日産化学(株)製 メラミンシアヌレート MC-6000
【0081】
〈ガラス繊維〉
セントラルグラスファイバー(株)製 EFH150-01(表面無処理ガラス繊維、平均繊維長150μm、平均繊維径11μm)
【0082】
〈カーボンブラック〉
三菱化学(株)製 #950B
【0083】
得られた液晶ポリマー組成物のペレットについて、溶融粘度、荷重たわみ温度、引張強度、引張弾性率、引張破断伸び、曲げ強度、曲げ弾性率およびIzod衝撃強度を以下に示す方法にて測定した。結果を表1に示す。
【0084】
〈溶融粘度〉
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、1.0mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、320℃にて、せん断速度1000sec-1での値を測定した。
【0085】
〈荷重たわみ温度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、結晶融解温度+20~40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製した。これを用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で所定たわみ量(0.254mm)になる温度を測定した。
【0086】
〈引張強度、引張弾性率および引張破断伸び〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて結晶融解温度+20~40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、厚み3.2mmのASTM4号ダンベル試験片を作製した。INSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、標線間25mmの接触式の伸び計を使用し、試験速度5mm/min、チャック間距離64mmの条件で、ASTM D638に準拠して測定した。
【0087】
〈曲げ強度、曲げ弾性率〉
荷重たわみ温度測定に用いた成形片と同条件にし、短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製した。曲げ試験は、3点曲げ試験をINSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、試験速度1.3mm/min、スパン間距離50mmの条件で、ASTM D790に準拠して測定した。
【0088】
〈Izod衝撃強度〉
荷重たわみ温度測定に用いた試験片と同じ試験片を用いて、試験片の中央を長さ方向に垂直に切断し、ノッチを付けた。長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mmの短冊状試験片を得、ASTM D256に準拠して測定した。
【0089】
【0090】
表1に示す通り、エポキシ基含有エチレン共重合体および板状充填材を含有する実施例1~5の液晶ポリマー組成物は、比較例1、比較例2、比較例4および比較例5の液晶ポリマー組成物と比較して、流動性および機械強度を損なうことなく、低弾性率化による柔軟性の改善、および伸びが向上することが理解される。
【0091】
比較例3の液晶ポリマー組成物は、柔軟性に優れるものの、溶融粘度が高く流動性が劣るものであった。
【0092】
また、実施例1~5の液晶ポリマー組成物は、比較例1~5の液晶ポリマー組成物と比較して抗張積が大きく、強度と伸びのバランスの良い材料であることが理解される。
【0093】
本件出願は、特願2017-107023を原出願とする分割出願であって、少なくとも以下の好ましい態様を含む当該原出願の明細書に記載された全ての内容を包含する。
〔1〕液晶ポリマー100重量部、エポキシ基含有エチレン共重合体1~30重量部、および板状充填材1~30重量部を含有する液晶ポリマー組成物。
〔2〕エポキシ基含有エチレン共重合体が、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体、およびエチレン単位と不飽和グリシジルエーテル単位からなる共重合体からなる群から選択される1種以上である、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔3〕板状充填材がタルク、マイカ、グラファイト、ドロマイト、クレイおよびガラスフレークからなる群より選択される1種以上である、〔1〕または〔2〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔4〕板状充填材がタルクである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔5〕メラミン化合物0.01~20重量部をさらに含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔6〕メラミン化合物がメラミンシアヌレート、メラミンアクリレート、メラミン塩酸塩、メラミンスルホン酸塩、メラミンホウ酸塩、およびメラミンピロリン酸塩からなる群より選択される1種以上である、〔5〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔7〕メラミン化合物がメラミンシアヌレートである、〔5〕または〔6〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔8〕液晶ポリマーが、式(I)および/または式(II)で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
[化1]
〔9〕液晶ポリマーが、式(I)および式(II)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル樹脂である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
[化2]
〔10〕厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、ASTM D638に準拠して測定した引張強度(MPa)と引張破断伸び(%)の積である抗張積が800MPa・%以上である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔11〕厚み3.2mmのASTM4号ダンベルを使用し、ASTM D638に準拠して測定した引張弾性率が10.0GPa以下であり、かつ、短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を使用し、ASTM D790に準拠して測定した曲げ弾性率が7.0GPa以下である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔12〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
〔13〕成形品が結束バンドである、〔12〕に記載の成形品。