(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】チエノピリドン誘導体のカリウム塩一水和物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20230421BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20230421BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230421BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230421BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230421BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230421BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230421BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230421BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230421BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
A61K31/4365
A61P3/10
A61P3/00
A61P1/16
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P3/06
A61P35/00
A61P9/10 103
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P9/10
A61P25/00
A61P27/02
A61P21/00
A61P21/04
A61P11/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2021526618
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081650
(87)【国際公開番号】W WO2020099678
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-13
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512169062
【氏名又は名称】ポクセル
【氏名又は名称原語表記】POXEL
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ボルズ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ランツ
(72)【発明者】
【氏名】デニズ・アリカン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・オサリバン
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー・アラク-ボゼク
(72)【発明者】
【氏名】ロール・ナヴァール
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521651(JP,A)
【文献】Greene's Protective Groups in organic Synthesis,Fourth Edition,John Wiley & Sons, Inc.,2007年,pp. 396-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D495/04
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の結晶性カリウム塩一水和物。
【請求項2】
Cu K(アルファ)線を使用して回折計により測定される、以下のXRPDピークを有する固体の形態である、請求項1に記載の結晶性カリウム塩一水和物。
【表1】
【請求項3】
Cu K(アルファ)線を使用して回折計により得られる、以下の図1に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項1に記載の結晶性カリウム塩一水和物。
【表2】
【請求項4】
前記結晶性カリウム塩一水和物の少なくとも50wt%は10μm以上の結晶性粒子の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶性カリウム塩一水和物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の結晶性カリウム塩一水和物、及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
医薬としての使用のための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患の治療又は予防における使用のための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)又は脊髄性筋ジストロフィーからなる群から選択される神経筋疾患の治療又は予防における使用のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
NASH又はNAFLDの治療又は予防における使用のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
結晶性カリウム塩一水和物が20mg~1000mgの1日用量で対象に投与される、請求項6から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
結晶性カリウム塩一水和物が60mg~500mgの1日用量で対象に投与される、請求項6から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I):
【化2】
の
結晶性カリウム塩一水和物の調製方法であって、
(A) 水並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を含む溶液中で式(II):
【化3】
の化合物を炭酸カリウムと反応させる工程と、
(B) 析出物を形成する工程と、
(C) 工程(B)で得られた析出物
を回収する工程と
を含む、方法。
【請求項13】
-工程(B)が、以下のサブステップ:
(b1)工程(A)で得られた混合物を70℃~120℃の間に含まれる温度まで加熱するサブステップと、
(b2)析出物を得るために、工程(b1)で得られた混合物を-15℃~35℃の間に含まれる温度まで冷却するサブステップと
を含
み、
-工程(C)が、ろ過により行われる、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がイソプロパノールである、請求項1
2又は
13に記載の方法。
【請求項15】
工程(A)で使用される炭酸カリウムの量が、式(II)の前記化合物に対して0.25~3当
量の間に含まれる、請求項1
2から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(II)の前記化合物が、
(a') 6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンを
ヒドロキシド源、炭酸カリウム、炭酸セシウム、窒素系塩基、及びそれらの混合物から選択される塩
基の存在下で求電子性ベンジル
源と反応させる工程と、
(b') 工程(a')で得られた化合物をヘキサメチルジシラザン及び酢酸の存在下でシアノ酢酸エチルと反応させる工程と、
(c') 工程(b')で得られた化合物を
ヒドロキシド源、炭酸カリウム、炭酸セシウム、窒素系塩基、及びそれらの混合物から選択される塩
基の存在下で硫黄と反応させる工程と、
(d') 任意選択により、工程(c')で得られた化合物の
塩を形成する工程と、
(e') 工程(c')又は(d')で得られた化合物を求電子性塩素
源と反応させる工程と、
(f') 工程(e')で得られた化合物をフェニルアセチルクロリドと反応させる工程と、
(g') 工程(f')で得られた化合物を
ナトリウムアミド又はカリウムアミド、水素化ナトリウム又は水素化カリウム、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシド、及びナトリウムtert-ペントキシド又はカリウムtert-ペントキシドから選択される塩
基と反応させる工程と、
(h') 工程(g')で得られた化合物を三臭化ホウ素又は三塩化ホウ
素と反応させる工程と、
(i') 任意選択により、工程(h')で得られた化合物を回収する工程と
を含む方法により得られる、請求項1
2から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(a')がアセトニトリル中で行われ、
工程(a')における塩基が炭酸カリウムである、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記
工程(c')における塩基がモルホリン又は炭酸水素ナトリウムである、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
工程(g')における塩基がカリウムビス(トリメチルシリル)アミド
又はカリウムtert-ブトキシドで
ある、請求項
16から
18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チエノピリドン誘導体のカリウム塩一水和物の調製方法に関する。本発明はまた、このようにして得られたチエノピリドン誘導体のカリウム塩一水和物、及び特に代謝疾患、例えば、NASHを治療又は予防するための、医薬におけるその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、脂質代謝、グルコース恒常性、及び炎症の制御をもたらす複数の代謝経路の中枢調節因子である。その活性化は、肝臓に影響を与える疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重度の形態である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む、多数の慢性代謝疾患を治療する潜在的可能性を有する。
【0003】
AMPKは、NASH発症に関与する3つの重要な病態生理学のプロセス、すなわち脂肪肝、炎症、及び線維症に対して有益性をもたらす潜在的可能性を有するため、重要な生物学的標的である。AMPKの活性化はNASH併存症も治療する潜在的可能性を有し、特に心疾患リスク因子、例えば、高血糖、インスリン抵抗性、脂質異常症、炎症、及び肥満を標的とする。
【0004】
NASHは、疾患の原因が明確でない代謝疾患であり、急速に世界的に広まっている。これは、炎症及び線維症を引き起こす、脂肪組織(AT)の脂肪分解(60%)及び肝臓de novoリポゲネシス(25%)に主に由来する肝脂質の蓄積によって特徴づけられる。この疾患は長期間にわたって無症状である場合があるが、ひとたび加速すると、重度の障害及び肝硬変が生じることがあり、これは肝機能に著しく影響を及ぼすか又は肝不全若しくは肝臓がんさえも引き起こすことがある。NASHの典型的なリスク因子としては、肥満、高いレベルの血液脂質(コレステロール及びトリグリセリド等)、及び糖尿病が挙げられる。現在、効率的で安全な治療薬又は特異的な療法が得られない(G. C. Farrell及びC. Z. Larter、Hepatology、2006年、43、99~112頁)。
【0005】
多くのチエノピリドン誘導体がAMPK活性化物質であることが知られており、いくつかの出願の主題である。特に、WO2014/001554は、AMPKの直接の活性化物質である、式(A):
【0006】
【0007】
(式中、R1は水素又はハロゲン原子であり、R2はインダニル又はテトラリニル基であり、R3はアリール又はヘテロアリール基である)
の化合物に関し、AMPKの活性化により調節される疾患の治療におけるそれらの使用にも関する。
【0008】
この出願はまた、以下の式(II)
【0009】
【0010】
により表される2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンのナトリウム塩四水和物の調製方法であって、メタノール及び水中で式(II)の化合物をナトリウムメトキシドと混合する工程と、凍結乾燥によりナトリウム塩四水和物を単離する工程とを含む、方法も記載する。
【0011】
対応するカリウム塩は、その薬理学的特性及び物理特性に起因する大きな潜在的可能性を有する。しかし、ナトリウム塩の調製に使用されるのと同様の方法にしたがって、カリウム塩をWO2014/001554で提案されるように調製した場合、得られる化合物はアモルファスである。そのためこの方法は一般にスケールアップするのがより複雑であり、噴霧乾燥のような特殊な技術の使用を必要とする。メタノール及び水の存在下でカリウムメトキシドを使用して条件を調整すると、不純物を含むメタノール溶媒和物を生じた。メタノールの毒性のため、メタノール溶媒和物よりもむしろ水和物を利用できることが好ましい。更に、凍結乾燥工程を大スケールにおいてより適切であるろ過工程に置き換えると、前記の不純物を含むメタノール溶媒和物が低収率で得られることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】G. C. Farrell及びC. Z. Larter、Hepatology、2006年、43、99~112頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、安定で、明確に定義された、ろ過の容易な化合物(II)(2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン)のカリウム塩を高収率で得られるようにする方法を開発する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この点において、発明者らは、WO2014/001554に記載される方法の塩化工程に変更を加えることにより、安定で、明確に定義された、ろ過の容易な化合物(II)のカリウム塩を得ることができることを実証した。この塩化工程について発明者らにより開発された条件は、安定な形態であることが分かっている、カリウム塩の一水和物の形態を得ることを可能にする。更に、ろ過工程は一水和物塩を高収率及び高純度で得られるようにする。発明者らはまた、前駆体、すなわち化合物(II)も、先行技術に記載される方法と対比してより環境に優しい試薬及び穏やかな条件の使用、最適化された数の工程、並びにより高い全収率によって特徴づけられる、効率的な方法によって得ることができることも実証した。
【0016】
したがって、本発明は、式(I):
【0017】
【0018】
のカリウム塩一水和物の調製方法であって、
(A) 水並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を含む溶液中で式(II):
【0019】
【0020】
の化合物を炭酸カリウムと反応させる工程と、
(B) 析出物を形成する工程と、
(C) 工程(B)で得られた析出物を、好ましくはろ過により回収する工程と
を含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、式(I):
【0022】
【0023】
のカリウム塩一水和物にも関する。
【0024】
本発明は、式(I)のカリウム塩一水和物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に更に関する。
【0025】
本発明はまた、医薬として使用するため、特に、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー(Spinal Muscular Dystrophy)、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患の治療又は予防において使用するための、式(I)のカリウム塩一水和物又は上記で定義される医薬組成物にも向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1で調製される化合物(I)のXRPDパターンを示す図である。
【
図2】様々なプロトコルから得られる固体のXRPDパターン、化合物(II)のカリウム塩のメタノール溶媒和物のXRPDパターン、及び化合物(I)のXRPDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明において、「の間に含まれる」という表現は記載される範囲の上限及び下限を含むことを意図している。
【0028】
「溶媒」という用語は、有機溶媒、水等の無機溶媒、又はそれらの混合物を指す。有機溶媒の例としては、限定はされないが、脂肪族炭化水素、例えばペンタン又はヘキサン等、脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン等、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、スチレン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、又はパラキシレン等、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、又はクロロベンゼン等、窒素系溶媒、例えばアセトニトリル又はトリエチルアミン等、酸素系溶媒、特にケトン類、例えばアセトン等、エーテル類、例えばジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、又はメチルテトラヒドロフラン(Me-THF)等、アルコール類、例えばメタノール、イソプロパノール、又はエタノール等、エステル類、例えば酢酸n-ブチル等、アミド類、例えばジメチルホルムアミド(DMF)等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
本発明は、式(I):
【0030】
【0031】
のカリウム塩一水和物の調製方法に関する。
【0032】
式(I)のカリウム塩一水和物を調製する前記方法は、
(A) 水並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を含む溶液中で式(II)の化合物を炭酸カリウムと反応させる工程と、
(B) 析出物を形成する工程と、
(C) 工程(B)で得られた析出物を、好ましくはろ過により回収する工程と
を含む。
発明の方法の1つ又は複数の工程はサブステップに分割されてもよい。
【0033】
工程(A)の炭酸カリウム(K2CO3)は、粉末等の純粋な固体の形態で使用してもよく、又は溶媒中で希釈して溶液又は分散液を得てもよい。好ましくは、炭酸カリウムは炭酸カリウムの水溶液の形態で使用される。前記水溶液中の炭酸カリウムの濃度は、1%~99%、好ましくは40%~60%(w/v)の間に含まれていてもよい。工程(A)で使用される炭酸カリウムの量は、式(II)の化合物に対して0.25~3当量、好ましくは0.5~1.2当量、好ましくは0.5~0.6当量の間に含まれていてもよい。
【0034】
工程(A)は5℃~60℃、好ましくは15℃~35℃の間に含まれる温度で行われてもよい。
【0035】
工程(A)において、式(II)の化合物、炭酸カリウム、水、並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を、任意の適切な反応器又は容器へ任意の順番で添加してもよい。本発明の一実施形態において、工程(A)は、式(II)の化合物、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒、並びに任意選択により水を含む溶液へ、炭酸カリウム、特に炭酸カリウムの水溶液を添加することにより実施されてもよい。
【0036】
1つの特定の実施形態において、工程(A)の前記溶媒は酢酸n-ブチルである。そのような実施形態において、工程(A)は水及び酢酸n-ブチルを含む溶液(又は「溶媒系」)中で式(II)の化合物を炭酸カリウムと反応させる工程を含む。
【0037】
前記溶媒が酢酸n-ブチルである場合、工程(A)における水と酢酸n-ブチルとの体積比は1/1000~100/1、好ましくは1/100~10/1、より好ましくは1/100~1/2、更により好ましくは1/100~1/10の間に含まれていてもよい。
【0038】
別の特定の実施形態において、工程(A)の前記溶媒はイソプロパノールである。そのような実施形態において、工程(A)は水及びイソプロパノールを含む溶液(又は「溶媒系」)中で式(II)の化合物を炭酸カリウムと反応させる工程を含む。
【0039】
前記溶媒がイソプロパノールである場合、工程(A)における水とイソプロパノールとの質量比は25/75~75/25、好ましくは40/60~60/40、より好ましくは45/55~55/45の間に含まれていてもよい。
【0040】
前記溶媒がイソプロパノールである場合、工程(A)における水とイソプロパノールとの体積比は20/80~70/30、好ましくは35/65~55/45、より好ましくは40/60~50/50の間に含まれていてもよい。
【0041】
水の体積は工程(A)の混合物中の水の全体積を指し、そのため炭酸カリウムの水溶液によりもたらされ得る水の体積も含む。
【0042】
前記溶媒がイソプロパノールである場合、工程(A)における化合物(II)と水及びイソプロパノールの混合物との質量比は1/99~70/30、好ましくは2/98~20/80、より好ましくは5/95~15/85の間に含まれていてもよい。
【0043】
式(II)の化合物、炭酸カリウム、水、並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を含む混合物がこのようにして工程(A)で得られる。前記混合物は例えばマグネチックスターラー又は撹拌ブレードの作動により撹拌されるのが有利である。
【0044】
工程(B)は析出物を形成する工程を含む。典型的には、工程(B)は、工程(A)で得られた混合物を、好ましくは混合物の環流に近い温度で加熱するサブステップと、それに続いて、得られる混合物を例えば-15℃~35℃の間に含まれる温度で冷却するサブステップとを含んでいてもよい。「混合物の還流に近い」という表現は、典型的には工程(A)の溶媒系(例えば、水/イソプロパノール又は水/酢酸n-ブチル)の沸点の90%~100%の間に含まれる温度を指す。
蒸留工程を、工程(B)の加熱サブステップと冷却サブステップとの間で行うことができる。
【0045】
より詳細には、工程(B)は以下のサブステップ:
(b1)工程(A)で得られた混合物を70℃~120℃の間に含まれる温度まで加熱するサブステップと、
(b2)析出物を得るために、工程(b1)で得られた混合物を-15℃~35℃の間に含まれる温度まで冷却するサブステップと
を含むことが有利である。
【0046】
工程(b1)及び(b2)は独立に、任意選択により温度レベルによって区切られる、1つ又は複数の温度勾配に分割されてもよい。「温度レベル」は、温度が一定に維持される段階を指す。「温度勾配」は、温度が上昇する(加熱工程において)又は低下する(冷却工程において)段階を指す。工程(b1)及び(b2)は独立にある温度勾配又は温度レベルで終了してもよい。
【0047】
所定の工程における温度レベル及び/又は温度勾配の温度は、その所定の工程の最終的な工程の温度について指定される温度範囲内に含まれるか又は含まれていなくてもよいことが理解される。所定の工程の最終的な工程の温度は、加熱工程については到達した最高温度を指し、冷却工程については到達した最低温度を指す。例えば、工程(b1)の最終的な工程の温度は70℃~120℃の間に含まれるが、工程(b1)の温度レベル又は温度勾配の温度は70~120℃の範囲内に含まれるか又は含まれていなくてもよい。
【0048】
工程(b1)は、工程(A)で得られた前記混合物を70℃~120℃、好ましくは90℃~110℃、又は80℃~100℃の間に含まれる温度Tb1まで加熱する工程を含む。前記温度Tb1は、5分~10時間、好ましくは10分~10時間、より好ましくは15分~5時間、更により好ましくは20分~2時間維持されてもよい。加熱の熱源は当業者に既知の任意の適切なデバイスであってもよい。
【0049】
1つの特定の実施形態において、工程(b1)は以下のサブステップ:
(b1-1)工程(A)で得られた混合物を45℃~60℃の間に含まれる温度T3まで加熱するサブステップであって、T3が30分~10時間、好ましくは1時間~5時間維持される、サブステップと、
(b1-2)工程(b1-1)で得られた混合物を70℃~90℃、好ましくは75℃~85℃の間に含まれる温度Tb1まで加熱するサブステップであって、Tb1が5分~2時間、好ましくは5分~30分間維持される、サブステップと
を含む。
そのような実施形態において、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される前記溶媒はイソプロパノールであることが有利である。
【0050】
工程(b2)は、工程(b1)で得られた混合物を-15℃~35℃の間に含まれる温度まで冷却する工程を含む。
【0051】
一実施形態において、工程(b2)は、以下のサブステップ:
(b2-1) 工程(b1)で得られた混合物を13℃~35℃の間に含まれる温度T1まで、30分~5時間、好ましくは45分~2時間の間に含まれる時間P1にわたって冷却するサブステップと、
(b2-2) 工程(b2-1)で得られた混合物を-5℃~10℃、好ましくは0℃~5℃の間に含まれる温度T2まで、10分~5時間、好ましくは45分~2時間の間に含まれる時間P2にわたって冷却するサブステップと、
(b2-3) 前記温度T2を45分~250分間維持するサブステップと
を含む。
この実施形態において、速度r1=(Tb1-T1)/P1とr2=(T1-T2)/P2は異なっていてもよい。
そのような実施形態において、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される前記溶媒は酢酸n-ブチルであることが有利である。
【0052】
サブステップ(b2-2)の前に、15分~10時間、好ましくは30分~3時間の温度T1での温度レベルが上記のサブステップ(b2-1)の後に続いてもよい。
【0053】
別の実施形態において、工程(b2)は以下のサブステップ:
(b2-1') 工程(b1)で得られた混合物を30℃~50℃の間に含まれる温度T1'まで、60分~6時間、好ましくは90分~2時間の間に含まれる時間P1'にわたって冷却するサブステップと、
(b2-2') 工程(b2-1')で得られた混合物を-5℃~10℃、好ましくは0℃~10℃の間に含まれる温度T2'まで、1時間~20時間、好ましくは45分~2時間の間に含まれる時間P2'にわたって冷却するサブステップと、
(b2-3') 前記温度T2'を1時間~15時間維持するサブステップと
を含む。
この実施形態において、速度r1'=(Tb1-T1')/P1'とr2'=(T1'-T2')/P2'は異なっていてもよい。
そのような実施形態において、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される前記溶媒はイソプロパノールであることが有利である。
【0054】
仕上げろ過(polish filtration)等のろ過を、工程(b1)と(b2)との間で行ってもよい。
【0055】
好ましい実施形態において、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される前記溶媒はイソプロパノールであり、前記工程(B)は蒸留工程を更に含む。蒸留工程は溶媒系の溶媒の一部を除去することを目的とする。好ましくは、蒸留工程は、工程(b1)と(b2)との間で、又は工程(b2)と同時に、例えば工程(b2-1')と工程(b2-2')との間で行われる。
【0056】
前記蒸留工程は好ましくは減圧下で行われる。加えようとする減圧は蒸留工程の温度によって決まり、当業者によって容易に決定することができる。例えば、蒸留工程の温度は20℃~120℃、好ましくは30℃~90℃の間に含まれていてもよく、減圧は1mbar~500mbarの間、好ましくは10mbar~300mbarの間に含まれていてもよい。
蒸留工程を行う前及び/又は後に、水を反応混合物へ添加することが有利である。
特定の実施形態において、酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される前記溶媒はイソプロパノールであり、イソプロパノールと水との質量比は、蒸留工程の終了時に15/85以下、好ましくは10/90以下である。
【0057】
工程(B)により析出物を形成することができる。前記析出物は結晶性である。工程(b2)で、好ましくは工程(b2)の初期で、例えば工程(b2-1)、(b2-2)、(b2-1')、又は(b2-2')等において、シードを添加してもよい。より一般的には、工程(b2)の初期は工程(b2)の最初の60分、好ましくは工程(b2)の最初の30分、より好ましくは第1の工程(b2)の最初の15分以内であってもよく、工程(b2)の起点は工程(b1)で得られた混合物の温度が低下し始める時間である。
【0058】
「シード」とは、典型的には結晶性析出物の形成を促す又は引き起こすために混合物へ少量で添加される結晶を指す。本発明による方法の工程(B)において、前記シードは式(I)のカリウム塩一水和物で構成されることが有利である。
【0059】
工程(B)で得られる析出物は式(I)のカリウム塩一水和物の結晶性粒子を含む。一実施形態において、工程(B)で得られる式(I)のカリウム塩一水和物の少なくとも50wt%は10μm以上の粒径を有する結晶性粒子の形態である。代わりに又は更に、工程(B)で得られる式(I)のカリウム塩一水和物の少なくとも20wt%は35μm以上の粒径を有する結晶性粒子の形態である。
【0060】
本発明による方法の工程(C)は、工程(B)で得られた析出物を回収する工程を含む。好ましい一実施形態において、前記析出物はろ過により回収される。ろ過は、10~50μm、好ましくは15~40μmの細孔径を有するフィルターにより行ってもよい。工程(C)でろ過により回収される析出物は、粒径がフィルターの細孔径以上である、式(I)のカリウム塩一水和物の結晶性粒子を含む。特定の実施形態において、工程(C)でろ過により回収される析出物は、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも25μmの粒径を有する式(I)のカリウム塩一水和物の結晶性粒子を含む。
析出物を、1つ又は複数の溶媒、好ましくは水、酢酸n-ブチル、及び/又はtert-ブチルメチルエーテルにより順次洗浄してもよい。
【0061】
前記析出物は式(I)のカリウム塩一水和物で主に構成される。前記析出物の純度、すなわち本発明による方法によって得られる式(I)のカリウム塩一水和物の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は当業者に既知の任意の他の適切な技術によって測定される場合、有利には98%a/aを超え、好ましくは99%a/aを超える。
【0062】
式(II)の化合物及びその調製方法はWO2014/001554の特許出願において開示されている。
或いは、式(II)の前記化合物は、
(a') 6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンを塩基B1の存在下で求電子性ベンジル源と反応させる工程と、
(b') 工程(a')で得られた化合物をヘキサメチルジシラザン及び酢酸の存在下でシアノ酢酸エチルと反応させる工程と、
(c') 工程(b')で得られた化合物を塩基B2の存在下で硫黄と反応させる工程と、
(d') 任意選択により、工程(c')で得られた化合物の塩、好ましくは塩酸塩を形成する工程と、
(e') 工程(c')又は(d')で得られた化合物をN-クロロスクシンイミドと反応させる工程と、
(f') 工程(e')で得られた化合物をフェニルアセチルクロリドと反応させる工程と、
(g') 工程(f')で得られた化合物を塩基B3と反応させる工程と、
(h') 工程(g')で得られた化合物を三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素と、好ましくは三塩化ホウ素と反応させる工程と、
(i') 任意選択により、工程(h')で得られた化合物を回収する工程と
を含む、改善された方法により得ることができる。
【0063】
(a')~(i')の各工程における条件(温度、濃度、反応物の当量、反応溶媒、又は後処理溶媒等)は、特定の及び/又は好ましい実施形態について下記に記載されており、当業者が自身の一般的背景を使用して調整してもよい。各工程の反応を処理し、工程の反応から得られる各中間体又は生成物を単離してもよく、任意選択により、例えばシードを使用した若しくは使用しない結晶化、再結晶、又はクロマトグラフィーによって精製してもよい。或いは、いくつかの工程は、前記反応を処理することなく、及び/又は前記反応中間体又は反応生成物を単離することなく、ワンポットで行われてもよい。これらの工程の1つ又は複数はサブステップに分割されてもよい。反応の「処理」とは、反応を停止させるため、及び典型的には抽出技術及び洗浄により反応不純物のすべて又は一部を除去するために、酸若しくは塩基等の試薬、及び/又は溶媒を使用することを指す。「精製」とは、純度を改善する(すなわち更に反応不純物を除去する)及び/又は反応生成物の結晶化度を改善することを目的として、結晶化又はクロマトグラフィー等の1つ又は複数の技術を使用することを指す。
【0064】
工程(a')は、6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンのヒドロキシ基の保護を含む。WO2014/001554の特許出願において、メチル基が保護基として選択され、これはヨウ化メチルを使用して挿入される。本発明において、6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンのヒドロキシ基は、ヨウ化メチルよりも毒性が低く揮発性が低い求電子性ベンジル源を使用して挿入することができる、ベンジル基で保護される。
【0065】
「求電子性ベンジル源」とは、触媒等の活性化剤の存在下又は非存在下で求電子性ベンジル基、すなわち形式的には「Ph-CH2
+」を放出する又は別の化合物へ変換させることができる化学試薬を指す。求電子性ベンジル源の例としては、限定はされないが、ハロゲン化ベンジル、例えば臭化ベンジル又はヨウ化ベンジル等、ベンジルトリフレート、及びベンジル2,2,2-トリクロロアセトイミデートが挙げられる。好ましくは、前記求電子性ベンジル源は臭化ベンジルである。工程(a')の前記求電子性ベンジル源の量は、6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンに対して1~5当量、好ましくは1~2当量、より好ましくは1~1.2当量の間に含まれていてもよい。
【0066】
工程(a')は塩基B1の存在下で行われるのが有利である。B1は、水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウム等のヒドロキシド源、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン若しくはモルホリン等の窒素系塩基、又はそれらの混合物であってもよい。工程(a')におけるB1の量は、6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンに対して1~5当量、好ましくは1~2当量、より好ましくは1~1.2当量の間に含まれていてもよい。
【0067】
一つの特定の実施形態において、工程(a')は、テトラブチルアンモニウムブロミド等の相間移動剤の存在下で、ジクロロメタン及び水を含む二相性溶媒系において行われる。この実施形態において、B1は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等のヒドロキシド源であることが有利である。この実施形態において、工程(a')は5℃~50℃、好ましくは15℃~35℃の間に含まれる温度で行われるのが有利である。
【0068】
好ましい実施形態において、工程(a')は、アセトニトリル又はアセトン等の単相溶媒系において、好ましくはアセトニトリル中で行われる。この好ましい実施形態において、B1は炭酸カリウム又は炭酸セシウム、好ましくは炭酸カリウムであることが有利である。この好ましい実施形態において、工程(a')は40℃~100℃、好ましくは60℃~90℃の間に含まれる温度で行われるのが有利である。
【0069】
工程(a')で得られる化合物、すなわちO-ベンジル化6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンを、工程(b')においてヘキサメチルジシラザン(HMDS)及び酢酸の存在下でシアノ酢酸エチルと反応させることができる。工程(b')におけるシアノ酢酸エチル及びHMDSの量は、互いに独立に、工程(a')で得られる化合物に対して1~5当量、好ましくは1.1~2当量の間に含まれていてもよい。酢酸は過剰量で使用してもよく、試薬及び溶媒として使用してもよい。工程(b')は30℃~100℃、好ましくは50℃~90℃の間に含まれる温度で行われるのが有利である。
【0070】
工程(b')における反応の処理は、塩基水溶液、例えばNa2CO3、NaHCO3、又はNaOH水溶液等と、有機溶媒、例えばtert-ブチルメチルエーテル(TBME)、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、又はそれらの混合物等とを含む二相溶媒系によって行われてもよい。前記処理のための好ましい塩基水溶液及び好ましい有機溶媒は、それぞれNaOH水溶液及びTBMEである。
【0071】
特定の実施形態において、工程(b')で得られる化合物、すなわちエチル3-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-2-シアノ-ブタ-2-エノエートを前記処理後に単離せず、工程(c')において硫黄S8と直接反応させる。
工程(c')における硫黄の量は、工程(b')で得られる化合物に対して1~5原子当量、好ましくは1~2.5原子当量、より好ましくは1~1.1原子当量の間に含まれていてもよい。
硫黄S8の1原子当量は硫黄S8の1/8当量である。
【0072】
工程(c')は塩基B2の存在下で行われるのが有利である。B2は、ヒドロキシド源、例えば水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウム等、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、窒素系塩基、例えばトリエチルアミン若しくはモルホリン等、又はそれらの混合物であってもよい。B2は好ましくは炭酸水素ナトリウム又はモルホリンであり、より好ましくはB2は炭酸水素ナトリウムである。工程(c')におけるB2の量は、工程(b')で得られる化合物に対して1~5当量、好ましくは1~2当量の間に含まれていてもよい。工程(c')は、任意の有機溶媒中、好ましくはエタノール又はエタノール/TBME混合物中、より好ましくはエタノール/TBME混合物中で行われてもよい。
【0073】
工程(c')は、40℃~100℃、好ましくは50℃~90℃の間に含まれる温度で行われるのが有利である。
【0074】
特定の実施形態において、工程(c')で得られる化合物、すなわちエチル2-アミノ-4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)チオフェン-3-カルボキシレートを、工程(d')において酸と反応させて対応する塩を得る。前記酸は、ブレンステッド酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、又はp-トルエンスルホン酸等である。好ましくは、前記酸は塩酸である。
前記酸は純粋なガス、液体、若しくは固体の形態であってもよく、又はジオキサン等の溶媒中に可溶化させたものであってもよい。工程(d')は、任意の有機溶媒中、例えばエタノール、TBME、酢酸エチル、又はそれらの混合物中等で行われてもよい。工程(d')は、5℃~100℃、好ましくは15℃~35℃の間に含まれる温度で行われるのが有利である。
工程(d')で形成される前記塩を析出させ、したがってろ過により単離してもよい。工程(d')で得られる塩の再結晶は、エステル、例えば酢酸エチル若しくは酢酸n-ブチル等、トルエン、又はエーテル、例えばメチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等から選択される有機溶媒、好ましくは酢酸エチルを使用して行われてもよい。
【0075】
工程(c')で得られる化合物又は工程(d')の酸の対応する塩を、求電子性塩素源と反応させることにより工程(e')において塩素化させてもよい。「求電子性塩素源」とは、触媒等の活性化剤の存在下又は非存在下で求電子性塩素基、すなわち形式的には「Cl+」を放出する又は別の化合物へ変換させることができる化学試薬を指す。求電子性塩素源の例としては、限定はされないが、N-クロロスクシンイミド(NCS)又はN-クロロフタルイミドが挙げられる。好ましくは、前記求電子性塩素源はNCSである。工程(e')における求電子性塩素源の量は、工程(c')又は(d')で得られる化合物に対して1~5当量、好ましくは1~2当量、より好ましくは1~1.1当量の間に含まれていてもよい。
工程(e')は、任意の有機溶媒中、例えばジクロロメタン又はクロロホルム中等、好ましくはジクロロメタン中で行われてもよい。工程(e')の温度は-30℃~25℃、好ましくは-5℃~10℃、より好ましくは0℃~5℃の間に含まれるのが有利である。特に工程(d')で得られる化合物を用いて工程(e')が行われる場合、塩基、例えば炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム、又は炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウム等、好ましくは炭酸カリウムを工程(e')において使用してもよい。
【0076】
好ましい実施形態において、工程(e')及び(f')は、工程(e')で得られる化合物を単離することなく順次行われる。
【0077】
工程(f')において、工程(e')で得られる化合物、すなわちエチル2-アミノ-4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-5-クロロ-チオフェン-3-カルボキシレート、又はその酸の塩をフェニルアセチルクロリドと反応させてもよい。工程(f')におけるフェニルアセチルクロリドの量は、工程(e')で得られる化合物に対して1~5当量、好ましくは1~2当量、より好ましくは1~1.5当量の間に含まれていてもよい。
工程(f')の温度は-30℃~25℃、好ましくは-5℃~25℃、より好ましくは0℃~5℃の間に含まれることが有利である。
【0078】
工程(f')は工程(e')と同じ溶媒中で行われるのが有利である。工程(f')で得られる化合物、すなわちエチル4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-5-クロロ-2-[(2-フェニルアセチル)アミノ]-チオフェン-3-カルボキシレートは、アセトン、エタノール、TBME、メタノール、エタノール、又はそれらの混合物等の有機溶媒中で、好ましくはエタノール中で結晶化及び/又は再結晶化させてもよい。
【0079】
工程(g')は、工程(f')で得られた化合物を、環化反応を引き起こす塩基B3と反応させる工程を含む。
工程(g')は、THF、メチルテトラヒドロフラン、又はトルエン等の任意の有機溶媒中で、好ましくはTHF又はメチルテトラヒドロフラン中で行われてもよい。前記塩基B3は、ナトリウムアミド若しくはカリウムアミド、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウム、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド若しくはカリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムtert-ブトキシド若しくはカリウムtert-ブトキシド、及びナトリウムtert-ペントキシド若しくはカリウムtert-ペントキシドから成る群から選択されてもよく、好ましくはB3はカリウムtert-ブトキシド又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミドであり、より好ましくはB3はカリウムtert-ブトキシドである。工程(g')におけるB3の量は、工程(f')で得られる化合物に対して2~10当量、好ましくは2.5~6当量、より好ましくは4~6当量の間に含まれていてもよい。工程(g')の反応は、不活性雰囲気下で、例えば窒素又はアルゴン雰囲気下等で行われるのが有利である。
一つの特定の実施形態において、工程(g')は、典型的には工程(f')で得られた化合物を含む混合物へB3を添加して、-40℃~15℃、好ましくは-30℃~10℃の間に含まれる温度で行われ、次いで15℃~40℃の間に含まれる温度で行われる。
【0080】
工程(g')で得られた化合物、すなわち3-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-2-クロロ-4-ヒドロキシ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンは、ヘプタン、TBME、酢酸イソプロピル、又はそれらの混合物等の有機溶媒中で結晶化させてもよい。
【0081】
工程(g')で得られた化合物を適切な脱保護試薬と反応させることにより、工程(a')で挿入された保護基(すなわちベンジル基)を工程(h')で除去できる。前記脱保護試薬は、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、又は臭化水素酸であってもよい。特定の実施形態において、前記脱保護試薬は酢酸と組み合わせた臭化水素酸である。この特定の実施形態において、臭化水素酸は酢酸中又は水中の溶液の形態で使用されてもよい。この特定の実施形態において、反応は酢酸中、及び任意選択により無水酢酸中で行われてもよい。好ましい実施形態において、前記脱保護試薬は三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素である。より好ましい実施形態において、前記脱保護試薬は三塩化ホウ素である。三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素は、純粋なガスの形態で使用されてもよく、又はジクロロメタン等の有機溶媒中に希釈されてもよい。工程(h')における脱保護試薬の量は、工程(g')で得られた化合物に対して1~10当量、好ましくは1~5当量、より好ましくは1~2.5当量の間に含まれていてもよい。工程(h')は、任意の有機溶媒中、好ましくはジクロロメタン中で行われてもよい。
【0082】
一つの特定の実施形態において、工程(h')は、工程(g')で得られた化合物を含む混合物へ脱保護試薬を添加して、-40℃~15℃、好ましくは-20℃~10℃の間に含まれる温度で行われ、次いで15℃~40℃の間に含まれる温度で行われる。
【0083】
工程(h')で得られた化合物、すなわち式(II)の化合物、すなわち2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンは、任意の有機溶媒中で、例えばヘプタン、ジクロロメタン、メタノール、トルエン、又はそれらの混合物中等で、好ましくはメタノール及びトルエンの混合物中で結晶化及び/又は再結晶化されてもよい。
【0084】
工程(h')で得られた化合物は、結晶化及び/又は再結晶後に例えばろ過により回収されてもよい。工程(h')で得られた化合物は、本発明の方法による式(I)のカリウム塩一水和物を調製するための前駆体として使用されてもよい。
【0085】
WO2014/001554の特許出願において、保護基として使用されるメチル基はメタンスルホン酸によって除去される。反応はメタンスルホン酸メチルを生じ、これは遺伝毒性として知られている。本発明において、保護基としてベンジルを使用すると、これは三臭化ホウ素若しくは三塩化ホウ素、又は臭化水素酸によって除去することができ、そのような遺伝毒性の不純物の形成を回避する。
【0086】
式(I)のカリウム塩一水和物は、85%以上、好ましくは90%以上の収率で、本発明の方法による化合物(II)から得ることができる。特定の実施形態において、本発明の方法において出発物質として使用される化合物(II)は、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上の収率で6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンから得ることができる。
【0087】
本発明はまた式(II)の化合物のカリウム塩一水和物にも関する。前記カリウム塩一水和物は以下の式(I):
【0088】
【0089】
により表すことができる。
【0090】
前記カリウム塩一水和物は結晶性粒子の形態であることが有利である。一実施形態において、前記カリウム塩一水和物の少なくとも50wt%は10μm以上の結晶性粒子の形態である。代わりに又は更に、前記カリウム塩一水和物の少なくとも20wt%は35μm以上の結晶性粒子の形態である。前記結晶性粒子は任意の形態を有していてもよく、特に結晶性集塊物として存在していてもよい。
【0091】
前記カリウム塩一水和物は、Cu K(アルファ)線を使用して回折計により測定される、以下のXRPD(粉末X線回折)ピークを有する粉末等の固体の形態であってもよい:
【0092】
【0093】
特に、前記カリウム塩一水和物は、Cu K(アルファ)線を使用して回折計により測定される、以下のXRPD(粉末X線回折)ピークを有する粉末等の固体の形態であってもよい:
【0094】
【0095】
好ましくは、前記カリウム塩一水和物は、Cu K(アルファ)線を使用して回折計により測定される、以下のXRPD(粉末X線回折)ピークを有する粉末等の固体の形態であってもよい:
【0096】
【0097】
より好ましくは、前記カリウム塩一水和物は、Cu K(アルファ)線を使用して回折計により測定される、以下のXRPD(粉末X線回折)ピークを有する粉末等の固体の形態であってもよい:
【0098】
【0099】
本発明は、本発明によるカリウム塩一水和物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に更に関する。
【0100】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明のカリウム塩一水和物又は本発明による医薬組成物にも関する。
【0101】
特に、本発明は、対象の治療において、特に糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患の治療において使用するための、本発明のカリウム塩一水和物又は本発明による医薬組成物に関する。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明のカリウム塩一水和物又は本発明による医薬組成物は、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、又は神経障害の治療において使用するためのものである。
【0103】
より好ましい実施形態において、本発明のカリウム塩一水和物又は本発明による医薬組成物は、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、又は高コレステロール血症の治療において使用するためのものである。更により好ましい実施形態において、本発明のカリウム塩一水和物はNAFLD又はNASHの治療において使用するためのものである。
【0104】
本発明における「がん」という用語は、固形又は液体腫瘍を伴うがんを含む。特に、これは神経膠芽腫、神経芽細胞種、白血病、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、乳がん、消化器がん、特に肝臓がん、膵臓がん、頭頸部がん、大腸がん、リンパ腫、及び黒色腫を指す。
【0105】
本発明の更なる目的は、AMPKの活性化により調節される疾患、より具体的には糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患を治療するための方法であって、有効量の本発明のカリウム塩一水和物又は本発明の医薬組成物を、それらを必要とする対象に投与する工程を含む、方法である。
【0106】
本発明は、特に糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患の治療のための医薬組成物の調製における、本発明のカリウム塩一水和物の使用に更に関する。
【0107】
本発明による医薬組成物は任意の従来の方法により調製されてもよい。本発明のカリウム塩一水和物を、少なくとも1つの固体、液体、及び/若しくは半液体の賦形剤又は補助剤と共に、並びに必要に応じて1つ又は複数の更なる活性成分と組み合わせて、適切な剤形へ変えることができる。
【0108】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、対象にとっては薬理学的/毒性学的な観点から、製薬化学者にとっては物理的/化学的観点から組成、製剤、安定性、対象の受容性及びバイオアベイラビリティーに関して許容可能である、キャリア、補助剤、又は賦形剤を指す。
【0109】
「キャリア」、「補助剤」、又は「賦形剤」という用語は、その取扱い性若しくは保存特性を改善するため、又は組成物の投与単位を個別の物品へ成形するのを可能にする若しくは容易にするために、治療薬を対象に送達するためのキャリア、補助剤、及び/又は希釈剤として使用されるように医薬組成物へ添加される、それ自体が治療薬ではない任意の物質を指す。本発明の医薬組成物は、個々にであれ組み合わせであれ、分散剤、可溶化剤、安定化剤、保存料等の中から選択される1つ又はいくつかの薬剤又はビヒクルを含んでいてもよい。
【0110】
「治療」又は「治療すること」という用語は、AMPKの活性化により調節される潜在的可能性のある疾患、特に糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患の療法、防止、及び予防法を指す。
【0111】
治療は、宣告された疾患を有する対象に本発明のカリウム塩一水和物又は本発明の医薬組成物を投与して治癒させる、進行を遅れさせる、又は緩やかにさせ、それにより患者の病態を改善することを伴う。治療は、疾患、特に糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患を発症するリスクがある健康な対象に対しても行われてもよい。
【0112】
本発明の文脈の範囲内で、「対象」という用語は哺乳動物、より詳細にはヒトを意味する。本発明にしたがって治療しようとする対象は、疾患に関連するいくつかの基準、例えば、過去の薬物治療、関連する病理学、遺伝子型、リスク因子への曝露、ウイルス感染、並びに、免疫学的、生化学的、酵素的、化学的方法、又は核酸の検出方法により評価できる任意の他の関連するバイオマーカーに基づいて、適切に選択することができる。特定の実施形態において、対象は体重超過の患者(特に体重超過の前糖尿病性の患者)又はアテローム型脂質異常症を患う肥満の患者である。実際に、これらの患者は、AMPKの活性化により調節される潜在的可能性がある疾患、特に糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、肝疾患、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、炎症、がん、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、高血圧、網膜症、神経障害、限定はされないがMELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作)、リー症候群、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)若しくはMNGIE(ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症)を含むミトコンドリア病及びミオパチー、神経筋疾患、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)若しくは脊髄性筋ジストロフィー、神経変性病、肺線維症、加齢性神経疾患、アルツハイマー病、又は代謝疾患を発症するリスク性がある。
【0113】
医薬組成物は、投与単位当たりのあらかじめ定められた量の活性成分を含む、投与単位の形態で投与することができる。そのような単位は、治療される病状、投与方法、並びに患者の年齢、体重、及び状態、又は医薬組成物に応じて、例えば0.5mg~1000mg、好ましくは20mg~1000mg、より好ましくは60mg~500mgの本発明によるカリウム塩一水和物を含んでいてもよく、又は医薬組成物は、投与単位当たりのあらかじめ定められた量の活性成分を含む、投与単位の形態で投与することができる。好ましい投与単位製剤は、上記のような1日用量又は部分用量、又はその対応する割合の活性成分を含むものである。更に、このタイプの医薬組成物は、医薬分野で一般に知られている方法を使用して調製できる。
【0114】
本発明のカリウム塩一水和物と薬学的に許容可能な担体との比は、広い範囲内に含まれていてもよい。特に、この比は5/95(w/w)~90/10(w/w)、好ましくは10/90(w/w)~80/20(w/w)の間に含まれていてもよい。
【0115】
医薬組成物は、任意の望ましい適切な方法により、例えば経口的(頬、又は舌下を含める)、経直腸的、経鼻的、局所的(頬、舌下、又は経皮を含める)、経膣的、又は非経口的(皮下、筋肉内、静脈内、又は皮内を含める)方法によって、投与に適合させることができる。そのような組成物は、医薬分野で知られているあらゆる方法を使用して、例えば活性成分を賦形剤又は補助剤と組み合わせることにより調製できる。好ましくは、本発明による医薬組成物は経口投与に適合されている。
【0116】
経口投与に適合された医薬組成物は、別々の単位として、例えば、カプセル剤若しくは錠剤;散剤若しくは顆粒剤;水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤;食用泡若しくは泡状食品;又は乳剤、例えば、水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として投与することができる。
【0117】
したがって、例えば、錠剤又はカプセル剤の形態の経口投与の場合、活性成分を経口用の無毒性で薬学的に許容可能な不活性賦形剤と組み合わせることができる。散剤は、化合物を適切な微細サイズまで粉砕し、それを同様に粉砕された医薬賦形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプン又はマンニトール等と共に混合することにより調製される。風味料、保存料、分散剤、及び色素が同様に存在していてもよい。
【0118】
カプセル剤は、上記の粉末混合物を調製し成形ゼラチンシェルにそれを充填することにより製造されてもよい。流動促進剤及び潤滑剤、例えば、高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又は固体状ポリエチレングリコール等を、充填操作の前に粉末混合物へ添加することができる。カプセル剤が摂取された後の医薬の利用率を改善するために、崩壊剤又は可溶化剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、又は炭酸ナトリウム等を同様に添加してもよい。
【0119】
更に、必要に応じて、適切な結合剤、潤滑剤、及び崩壊剤、並びに色素を同様に混合物中に組み込むことができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えば、グルコース又はベータ-ラクトース等、トウモロコシから作られる甘味料、天然及び合成ゴム、例えば、アカシア、トラガント、若しくはアルギン酸ナトリウム等、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス類等が挙げられる。これらの剤形において使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、限定されるわけではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。錠剤は、例えば粉末混合物を調製し、混合物を粒状化又は乾式成形し、潤滑剤及び崩壊剤を添加し、混合物全体をプレスして錠剤を得ることにより、製剤化される。粉末混合物は、適切な方法で粉砕された化合物を、上記の希釈剤又は塩基と共に、及び任意選択により結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、又はポリビニルピロリドン等、溶解抑制剤、例えばパラフィン等、吸収促進剤、例えば、第4級塩等、及び/又は吸収剤、例えばベントナイト、カオリン、若しくはリン酸二カルシウム等と共に混合することにより、調製される。粉末混合物は、結合剤、例えば、シロップ、デンプンペースト、アカディア粘液(acadia mucilage)等、又はセルロース若しくはポリマー材料の溶液で湿らせ、ふるいに通して押し出すことにより粒状化することができる。粒状化の代替として、粉末混合物を打錠機に通し、不均一な形状の塊を得て、これを粉砕して顆粒を形成することができる。錠剤鋳型に付着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、又は鉱油を添加することにより、顆粒を潤滑化させることができる。次いで潤滑化した混合物をプレスして錠剤を得る。本発明による化合物を自由流動性不活性賦形剤と合わせ、次いで粒状化又は乾式成形工程を行わずに直接プレスして錠剤を得ることもできる。セラック密封層、糖又はポリマー材料の層、及びワックスの光沢層から成る透明又は不透明保護層が存在していてもよい。異なる投与単位間を識別できるように、色素をこれらのコーティングに添加することができる。
【0120】
経口投与に適合された医薬組成物は、固体又は液体分散物の噴霧乾燥により製剤化することもできる。
【0121】
経口用液体、例えば、溶液、シロップ、及びエリキシル剤等は、所定の量があらかじめ指定された量の化合物を含むように、投与単位の形態で調製することができる。シロップは、適切な風味をつけた水溶液中に化合物を溶解させることにより調製でき、一方エリキシル剤は無毒性アルコールビヒクルを使用して調製される。懸濁剤は、無毒性ビヒクル中に化合物を分散させることにより製剤化できる。可溶化剤及び乳化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル等、保存料、風味添加剤、例えばペパーミント油等、又は天然甘味料若しくはサッカリン、又は他の人工甘味料等を同様に添加できる。
【0122】
経口投与用の投与単位製剤は、必要に応じてマイクロカプセル中に封入することができる。製剤は、例えば粒子状材料をコーティングする、又はポリマー、ワックス等に埋め込むこと等により、放出を延長する又は遅らせるように調製することもできる。
【0123】
本発明によるカリウム塩一水和物は、リポソーム送達系、例えば小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞、及び多層ラメラ小胞等の形態で投与することもできる。リポソームは、様々なリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリン等から形成することができる。
【0124】
本発明のカリウム塩一水和物の治療有効量は、例えばヒト又は動物の年齢及び体重、治療を必要とする正確な病状、及びその重症度、製剤の性質、及び投与の方法を含む、いくつかの要因によって決まり、最終的には治療医又は獣医によって決定される。しかし、本発明による化合物の有効量は一般に、1日当たり受容者(哺乳動物)の体重1kg当たり0.1~100mgの範囲、特に典型的には1日当たり体重1kg当たり1~10mgの範囲である。したがって、体重が70kgの成体哺乳動物について1日当たりの実際の量は通常は70~700mgであり、1日の全用量が同じとなるように、この量は1日当たりの個人の用量として又は通常は1日当たりの一連の部分用量(例えば、2、3、4、5、又は6回等)で投与することができる。同様の用量が上記で挙げた他の疾患の治療に適していると仮定できる。
【0125】
本発明を以下の実施例においても更に詳細に説明することとし、この実施例は添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0126】
略称
eq.:当量
a/a: スペクトル又はクロマトグラム上の、所定の化合物のピーク面積とピーク面積の合計との比。
【0127】
分析法
XRPD
粉末X線回折(XRPD)分析は、Cu (K アルファ線)X線管及びピクセル検出システムを備えたPanalytical Xpert Pro回折計を使用して行った。試料を透過モードで分析し、低密度ポリエチレン、Kapton(登録商標)、及び/又はポリプロピレンフィルムの間に保持した。HighScore Plus 2.2cソフトウェアを使用してXRPDパターンを分類し、処理し、インデックスをつけた。
Kapton(登録商標)は、2シータ=5.5°付近で弱い強度のブロードなピークを示す。
XRDピークの強度は、結晶構造の「ベース」を形成する原子のグループにおいて散乱される放射線の光の干渉、及び/又は結晶の配向によって決まる。
【0128】
TG/DTA
Perkin Elmer Diamond熱重量/示差温度分析計(TG/DTA)において熱重量(TG)分析を行った。キャリブレーション標準物質はインジウム及びスズとした。試料をアルミニウム試料皿に置き、TG炉へ装入し、正確に秤量した。試料を窒素流中で30~300℃まで10℃/分の速度で加熱した。試料の分析の前に炉の温度を30℃で平衡化させた。
【0129】
(実施例1)
式(I)のカリウム塩一水和物の合成
1a) 1-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)エタノン(1)の合成
【0130】
【0131】
6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリン(100g、1当量)をアセトニトリル(300mL)中に溶解させた。K2CO3(1.1当量)及び臭化ベンジル(1.05当量)の添加後、懸濁液を加熱した(76℃)。48時間後、臭化ベンジル(0.1当量)を添加した。全体で74時間後、固体をろ過して除き、アセトニトリル(200mL)で洗浄し、合わせたろ液を蒸発させた。
化合物1がシロップとして得られた。m=148.6g、定量的収率、純度96.6% a/a。
【0132】
1b) エチル2-アミノ-4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)チオフェン-3-カルボキシレート(2)の合成
【0133】
【0134】
酢酸(70mL)をT=65℃まで加熱した。HMDS(1.5当量)を10分かけて添加した。その後、酢酸(140mL)中の化合物1(69.5g、1当量)及びシアノ酢酸エチル(1.5当量)の溶液を添加した。得られる混合物をT=65℃で24時間撹拌した。
室温まで冷却後、NaOH水溶液(1M、140mL)及びTBME(210mL)を添加した。層を分離させた。水性相のpHが塩基性となるまで(pH=13)、有機層をNaOH水溶液(1M、4×140mL)で洗浄した。有機層をHCl水溶液(1M、140mL)及びH2O(2×140mL)で洗浄した。
【0135】
EtOH(240mL)、NaHCO3(1.3当量)、及び硫黄(1.0原子当量)を添加した。180分間加熱還流させた後、反応混合物を210mLまで濃縮し、TBME(3×140mL)を用いて共蒸発させた。室温まで冷却後、懸濁液をろ過し、固体をTBME(70mL)で洗浄した。合わせたろ液を210mLまで濃縮し、ジオキサン中のHCl(1.1当量)を室温で滴下して添加した。シード添加後、析出が見られた。ヘプタン(350mL)を室温で滴下して添加した。14時間撹拌した後、懸濁液をろ過した。ヘプタン(3×70mL)で洗浄し乾燥させた後、化合物2を固体として回収した。m=83.2g、収率71%、純度93.7% a/a。
【0136】
1c) エチル4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-5-クロロ-2-[(2-フェニルアセチル)アミノ]チオフェン-3-カルボキシレート(3)の合成
【0137】
【0138】
化合物2(17.69g、1当量)をジクロロメタン(140mL)中に溶解させた。得られる溶液を氷/水で冷却した。撹拌下で、N-クロロスクシンイミド(1.05当量)を添加した。混合物は数分かけて暗色になった。1時間後、フェニルアセチルクロリド(1.25当量)を添加した。
0℃で1時間及び室温で2時間後、混合物をおよそ35mLまで蒸発させ、EtOH(2×70mL)を添加し、再び蒸発させた。混合物をEtOH(35mL)で希釈し、氷/水で冷却した。生成物が析出した。固体をろ過し、低温のEtOH(3×18mL)で洗浄した。
化合物3を固体として得た。m=20.99g、収率94.2%、純度99.3% a/a。
【0139】
1d) 3-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-2-クロロ-4-ヒドロキシ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(4)の合成
【0140】
【0141】
化合物3(19.88g、1当量)をメチルテトラヒドロフラン(120mL)中に可溶化させ、反応混合物を-16℃~-10℃(NaCl/氷)の温度まで冷却した。カリウムtert-ブトキシド(5当量)を4回に分けて添加した。次いで、反応混合物を室温まで温め、室温で65分間撹拌した。T=0~5℃(水/氷)で2N HCl(5当量)の滴下を行い、得られる混合物を強く撹拌した。有機相をNaCl水溶液(11%、1×50mL)及び水(2×50mL)で洗浄した。有機相を約50%の溶液まで濃縮した。メチルテトラヒドロフラン(80mL)を添加し、得られる溶液を約50%の溶液まで濃縮した。TBME(100mL)を添加し、得られる溶液を約50%の溶液まで濃縮した(この工程を3回繰り返した)。次いで、TBME(25mL)、化合物4のシード、及びn-ヘプタン(20mL)を添加し、得られる溶液を室温で一晩撹拌した。混合物をおよそ50mLまで濃縮し、ろ過し、母液ですすぎ、n-ヘプタン(2×40mL)で洗浄し、乾燥させた。化合物4を粒状固体として得た。収率88%、純度99.5% a/a。
【0142】
1e) 2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(II)の合成
【0143】
【0144】
化合物4(15g、1当量)を75mLのジクロロメタンに溶解させ、T=-10℃/-15℃まで冷却した(氷/NaClにより)。BCl3(1.5当量、ジクロロメタン中の溶液:1mol/L)を滴下して添加し、得られる混合物を室温で15時間撹拌した。得られる混合物を氷/水で冷却し、水(75mL)を添加した。得られる混合物を強く撹拌し、有機相を水/MeOH(9:1v/v、5×45mL)で抽出した。有機相を濃縮し、トルエン(3×90mL)により溶媒交換を行い、90mLのトルエンの最終体積に到達するようにトルエンで希釈した。得られる混合物を加熱還流し、15mLのメタノールを添加した。わずかな粒子を含む褐色がかった溶液を得た。シードをT=40℃で添加し、T=52℃まで温め、室温まで冷却した。得られる混合物を一晩撹拌し、次いで氷/NaCl(T=-10℃/-15℃)で100分間冷却した。析出した生成物をろ過し、トルエン/ヘプタン1:2v/v(15mL)及びヘプタン(15mL)で洗浄し、乾燥させた。化合物(II)の結晶を得た。収率87%、純度99.0% a/a。
【0145】
1f) 酢酸n-ブチルを使用した、2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(I)のカリウム塩一水和物の合成
【0146】
【0147】
化合物(II)(8.43g)を酢酸n-ブチル(42mL)と共に撹拌した。水及びK2CO3(50%水溶液;0.55当量)を添加した。全体で、K2CO3溶液に由来する水を含む3mLの水を添加した。外観の変化は見られなかった。得られる混合物を100℃で加熱した。その温度で35分後、加熱を停止し、シードを添加し、撹拌を継続した。混合物を静置して室温までゆっくり冷却した。60分後、混合物を氷水でT=0~5℃まで125分間冷却した。次いで固体をろ過して除き、酢酸n-ブチル(10mL)、次いでTBME(2×35mL)で洗浄し、乾燥させた。
化合物(I)を白色固体として得た。m=8.44g、収率90%、純度99.3%a/a。
【0148】
1f') イソプロパノールを使用した、2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(I)のカリウム塩一水和物の合成
化合物(II)を水/イソプロパノール混合物(1/1、5部の各溶媒)中に懸濁させ、次いで0.50~0.55当量の炭酸カリウムを添加した。炭酸カリウムの添加の終了時にpHは約12であった(pH試験紙)。50℃で3時間撹拌した後、懸濁液は粘度が高くなり、pHは約8であった(pH試験紙)。溶液が得られるまで温度を80℃に上昇させた(10~15分間)。必要に応じて、プロセスのこの時点で清澄化を行うことができる。7部の水を添加し、次いで反応混合物を40℃まで冷却した(濁った溶液が見られた)。7部の溶媒が反応器中に残るまで、溶媒を40℃、減圧下(180mbar~40mbar)で蒸留した。カリウム塩一水和物の結晶化がここで生じ得る。4.2部の水を添加し、混合物に化合物(I)のシードを添加した(1~2%のシード)。次いで懸濁液を7時間で40℃から5℃まで冷却し(5℃/時間)、5℃で数時間維持した。懸濁液をろ過した。1.42部の水でケーキを2回洗浄した。収集した固体を40℃、真空下で乾燥させて、必要とされる化学純度(すなわち98%+)において化合物(I)の最小の収率80%を得た。
【0149】
(実施例2)
化合物(I)の特性決定
a) 化合物(I)の粉末X線回折(XRPD)データはこの化合物が結晶性物質で構成されていることを示した。化合物(I)のXRPDの説明をTable 1(表5)に示す(
図1も参照のこと)。
【0150】
【0151】
b) TG/DTA分析は30~100℃で1.1%の最初の重量減少を示し、続いて117~160℃で結合水の減少に起因する3%のより大きい重量減少を示した。2番目の重量減少は大きな吸熱を伴い、合わせて4%の重量減少は一水和物の重量減少理論値(3.75%w/w)に近い。化合物は240℃を超えたところで分解した。
【0152】
(実施例3)
比較研究
3a) WO2014/001554による化合物(II)のカリウム塩の形成
化合物(II)(1g)をMeOH(6.25mL)/THF(6.25mL)中に懸濁させた。カリウムメトキシドMeOK(1.0当量)を添加し、続いて水(3.75mL)を添加した。得られる混合物を蒸発乾固させた。次いで凍結真空乾燥工程を行った。しかし、XRPD分析はアモルファス固体が得られたことを実証した(
図2-プロトコル3a)。
【0153】
3b) 様々な条件下でMeOH/MeOKを使用した化合物(II)のカリウム塩の形成
1) 化合物(II)(1g)をMeOH(12.5mL)中に懸濁させた。カリウムメトキシドMeOK(1.0当量)、続いて水(7.5mL)を添加し、混合物T=50℃まで20分間加熱した。pHがおよそ10に到達したら反応を停止させた。得られる混合物を室温まで冷却し、蒸発乾固させた。混合物を室温までゆっくり冷却し、次いで凍結真空乾燥工程を行った。
しかし、XRPD分析は不純物を含むメタノール溶媒和物が得られたことを実証した(
図2-プロトコル3b-1)。
【0154】
2) 上記の凍結真空乾燥工程(3b-1)をろ過工程に置き換えた。しかし、低いろ過収率が得られ(1gの化合物IIから出発、ろ過後に57mgの固体が得られた)、XRPD分析は生成物が不純物を含むメタノール溶媒和物であることを実証した(
図2-プロトコル3b-2)。
【0155】
プロトコル3b-1又は3b-2では水の非存在下で、メタノール溶媒和物が得られた。
【0156】
(実施例4)
医薬組成物
Table 2(表6)は、力価30mgのカプセル剤を製造するのに使用される、20%薬物負荷ブレンド、250gバッチスケールの処方を示す。
【0157】
【0158】
Table 3(表7)は、力価125mg及び250mgのカプセル剤を製造するのに使用される、75%薬物負荷ブレンド、250gバッチスケールの処方を示す。
【0159】
【0160】
(実施例5)
生物学的試験
- 食事誘発性肥満非アルコール性脂肪性肝炎(DIO-NASH)マウスモデルにおける肝臓及び脂肪組織(AT)代謝に対する式(I)のカリウム塩一水和物(又は「化合物(I)」)の効果をここで報告する。
【0161】
41週間後、生検で確認された脂肪肝(スコア≧2)及び線維症(ステージ≧1)を有するDIO-NASHマウスのみが含められ、ビヒクル(対照)、化合物(I)35mg/kg、又は75mg/kgを1日2回、8週間経口投与された(n=12)。
【0162】
正常な食事のマウスと比較して、DIO-NASHマウスは、脂肪性肝炎(NAFLD活性スコア、NAS=7)、肝線維症(スコア=2)、肝臓トリグリセリドの上昇(TG、×26)、並びに肝臓の炎症を含む、NASHの特性を示した。予測されたように、どちらの用量の化合物(I)も肝臓におけるAMPK活性を向上させ(P-AMPK/AMPK、+128%;+143%、p<0.05)、肝臓の健康を改善させた。対照群と比較して、どちらの用量の化合物(I)も肝臓の重量を低下させた(-23%、p<0.01;-33%、p<0.01)。化合物(I)は脂肪肝を減少させてNASを低下させ(-32%(6.6から4.5へ);-44%(6.7から3.8へ)、p<0.01)、これは肝臓TG含量(-36%;-42%、p<0.01)、炎症、及び肝細胞性肥大化の減少によっても裏付けられた。線維症に対する化合物(I)の有益性は、線維化遺伝子の発現における強い発現低下(例えばタイプIコラーゲン、-65%;-68%、p<0.01)、及び肝星細胞活性化の減少(aSMAポジティブ染色法、-34%;-39%、p<0.01)によって評価された。
【0163】
肝臓に対する有益性に加えて、化合物(I)は脂肪組織の代謝を改善した。化合物(I)は内臓のATにおけるAMPKを活性化させ(P-AMPK/AMPK、+130% 非有意;+152%、p<0.01)、脂肪パッドの質量を低下させた(-25%;-37%、p<0.01)。化合物(I)はホルモン感受性リパーゼの活性を減少させ(P-HSLser565 +416%;+425%、p<0.01、P-HSLser563 -67%;-52%)、これは血漿遊離脂肪酸レベルの減少(-37%;-38%、p<0.01)と一致する。化合物(I)はMCP-1遺伝子発現を減少させて(75mg/kgにおいて-55%、p<0.05) AT炎症を減少させ、PGC1-αタンパク質発現を増加させて(+321%; +409%、p<0.01) ATミトコンドリア生合成を増加させた。
【0164】
結論:化合物(I)は、AMPKの直接的活性化によりDIO-NASHマウスモデルの肝臓及び脂肪組織の両方に作用し、NAFLD/NASH、肝線維症、及び炎症に対する有益な効果を証明した。
【0165】
- 脂質異常症のモデルにおける脂質異常症に対する式(I)のカリウム塩一水和物(又は「化合物(I)」)の効果をここで報告する。
【0166】
5週間の治療後の、オスの肥満の糖尿病性脂質異常症のob/obマウスにおける化合物(I)の効果。
【0167】
化合物(I)を、カルボキシメチルセルロース0.5%/Tween 80(98/2)中、25、50、及び100mg/kgで1日2回、経口ルートにより投与した(n=10)。対照群として1つの群のob/obマウスをカルボキシメチルセルロース0.5%/Tween 80(98/2)で処置した。
【0168】
正常なob/+マウスと比較して、ob/obマウスは脂質異常症を示した。
【0169】
化合物(I)による5週間の治療後、血漿トリグリセリドの減少(25mg/kg、50mg/kg、及び100mg/kgにおいてそれぞれ、-19% 非有意、-40% p<0.001、及び-43% p<0.001)、血漿FFAの減少(それぞれ-14% 非有意、-35% p<0.05、及び-21% 非有意)及びHDLコレステロールの増加(25mg/kg、50mg/kg、及び100mg/kgにおいてそれぞれ、+12% 非有意、+31% p<0.001、及び+32% p<0.001)が見られた。
【0170】
結論: このように化合物(I)は脂質異常症に対して有益な効果を証明した。
【0171】
- 肥満モデルにおける体重増加に対する式(I)のカリウム塩一水和物(又は「化合物(I)」)の効果をここで報告する。
【0172】
5週間の治療後の、オスの肥満の糖尿病性脂質異常症のob/obマウスにおける化合物(I)の効果。
【0173】
化合物(I)を、カルボキシメチルセルロース0.5%/Tween 80(98/2)中、25、50、及び100mg/kgで1日2回、経口ルートにより投与した(n=10)。対照群として1つの群のob/obマウスの群をカルボキシメチルセルロース0.5%/Tween 80(98/2)で処置した。
【0174】
正常なob/+マウスと比較して、ob/obマウスは体重増加の増加を伴い肥満を示した。
【0175】
化合物(I)による5週間の治療後、1日目と比較して体重増加の減少が見られた(25mg/kg、50mg/kg、及び100mg/kgにおいてそれぞれ、-17%、-24%、-113%)。
【0176】
結論: このように化合物(I)は肥満に対して、より詳細には体重増加の減少によって、有益な効果を証明した。
【0177】
- 高血圧の覚醒非拘束ラットモデルにおける動脈圧に対する式(I)のカリウム塩一水和物(又は「化合物(I)」)の効果をここで報告する。
【0178】
高血圧の覚醒非拘束の良く知られたラットモデルである高血圧自然発生ラット(SHR)において、遠隔測定を使用して動脈圧に対する化合物(I)の効果を測定した。21~22週齢のSHRは、健康なウィスターラットと比較して高い動脈圧を示す。ウィスターラットの120mmHgに対して、収縮期血圧は200mmHgであった。
【0179】
4匹のオスのSHRに、腹部大動脈へ血圧カテーテルを埋め込む手術を行った。遠隔測定送信機を腹膜に取り付けた。回復の10日後、同じ動物に5週間の間隔を空けて5日間、ビヒクル又は化合物(I)150mg/kgを1日2回投与した。収縮期血圧、拡張期血圧、及び平均動脈圧を治療の5日目に24時間記録した。
【0180】
SHRにおいて5日間、化合物(I)150mg/kgを1日2回投与すると、ビヒクル処置SHRと比較して、24時間にわたって、収縮期血圧(SAP)が-19mmHg、拡張期血圧(DAP)が-17mmHg、平均動脈圧(DAP)が-18mmHg低下した。
【0181】
結論: このように化合物(I)は高血圧のラットモデルにおいて高血圧の低減を可能にする。このように化合物(I)は高血圧に対する有益な効果を証明した。