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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-20
(45)【発行日】2023-04-28
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20230421BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20230421BHJP
   G06F 3/0362 20130101ALI20230421BHJP
   H01H 25/00 20060101ALI20230421BHJP
   H01H 89/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G06F3/02
G06F3/0354 453
G06F3/0362 461
H01H25/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021527372
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011980
(87)【国際公開番号】W WO2020255506
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019112066
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊季
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康嗣
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141364(WO,A1)
【文献】特開2014-203348(JP,A)
【文献】特開2012-022633(JP,A)
【文献】特開2015-232844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
H01H 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者のタッチ操作の入力を受け付けるタッチ入力部と、
平面視で前記タッチ入力部の周囲に配置され、操作者による回転操作の入力を受け付ける回転入力部と、
前記回転入力部に回転操作の入力が行われている場合には、前記タッチ入力部へのタッチ操作の入力を無効にする制御部と
を含
前記回転入力部は、
前記回転操作の入力が行われる回転部と、
前記回転部の回転量を検出する回転量検出部と
を有し、
前記回転量検出部は、分解能によって検出可能な検出可能回転量を有し、前記検出可能回転量のN倍(Nは2以上の整数)以上の前記回転操作が行われたときに、前記回転操作の入力を受け付ける、入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記回転入力部に回転操作の入力が行われなくなると、前記タッチ入力部へのタッチ操作の入力を有効にする、請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転量検出部によって検出される回転量が、前記検出可能回転量のM倍(Mは1以上かつN以下の整数)未満である場合には、前記タッチ入力部へのタッチ操作の入力を無効にしない、請求項1又は2記載の入力装置。
【請求項4】
前記回転部は回転方向におけるクリック機構を有し、前記クリック機構のクリック感を提示するクリック間隔は、前記検出可能回転量のL倍(LはN以上の整数)である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転するダイアル型の回転操作部材の回転を検出する第1の検出手段と、回転操作部材の内側に固定配置されるタッチ操作部へのタッチ操作を検出する第2の検出手段とを含む入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-216082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の入力装置では、利用者が回転操作部材を回転させる際に、回転操作部材の内側にあるタッチ操作部に指等が触れると、利用者がタッチ操作を行う意図がないのにタッチ操作が検出されるおそれがある。このような場合には、利用者は意図した通りに操作できないため、入力装置の使い勝手が良好ではない。
【0005】
そこで、使い勝手が良好な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の入力装置は、操作者のタッチ操作の入力を受け付けるタッチ入力部と、平面視で前記タッチ入力部の周囲に配置され、操作者による回転操作の入力を受け付ける回転入力部と、前記回転入力部に回転操作の入力が行われている場合には、前記タッチ入力部へのタッチ操作の入力を無効にする制御部とを含前記回転入力部は、前記回転操作の入力が行われる回転部と、前記回転部の回転量を検出する回転量検出部とを有し、前記回転量検出部は、分解能によって検出可能な検出可能回転量を有し、前記検出可能回転量のN倍(Nは2以上の整数)以上の前記回転操作が行われたときに、前記回転操作の入力を受け付ける
【発明の効果】
【0007】
使い勝手が良好な入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の入力装置100を示す図である。
図2】ダイアル130の回転量を検出する機構の分解斜視図である。
図3】固定電極群134及び駆動電極136の構成を示す平面図である。
図4】固定電極群134と可動電極132との平面視における重なりを説明するための図である。
図5】入力装置100の全体的な構成の一例を示す図である。
図6】入力装置100における回転操作の検出原理を説明するための図である。
図7】主制御部161が実行する処理を示すフローチャートである。
図8】入力装置100の使用例を示す図である。
図9】入力装置100の他の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の入力装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の入力装置100を示す図である。以下では、XYZ直交座標系を用いて説明し、平面視とはXY面視のことである。また、以下では、説明の便宜上、+Z側を上、-Z側を下として説明するが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
入力装置100は、筐体110、タッチパッド120、ダイアル130、インジケータ140A、及びボタン140Bを含む。入力装置100は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)や、パーソナルコンピュータやサーバのようなコンピュータに接続され、タッチパッド120のタッチ操作、又は、ダイアル130の回転操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力する装置である。操作信号は、タッチ操作、又は、回転操作の操作内容を表す。
【0012】
筐体110は、直方体状のケースであり、上面側に開口部111、112A、112Bが設けられている。開口部111は、平面視で筐体110の上面の略中央に位置し、開口部111の周りに開口部112A、112Bが設けられている。開口部112Aは、2つあり、開口部111の+Y方向側の+X方向側と-X方向側に設けられている。開口部112Bは、2つあり、開口部111の-Y方向側の+X方向側と-X方向側に設けられている。
【0013】
タッチパッド120は、操作者のタッチ操作の入力を受け付けるタッチ入力部の一例であり、開口部111の中央部から表出するように設けられている。タッチパッド120は、平面視で円形であり、周囲はダイアル130によって覆われている。タッチ操作とは、タッチパッド120の表面を指等の利用者の体の一部で触れること、又は、タッチパッド120の表面を指等の利用者の体の一部で触れた状態で移動等させることによって行う入力操作のことである。タッチパッド120は、一例として静電容量型のタッチパネルであるが、抵抗膜型のタッチパネルであってもよい。
【0014】
ダイアル130は、操作者による回転操作の入力を受け付ける回転入力部の一例であり、タッチパッド120の周囲に設けられている円環状の入力部である。回転操作の入力とは、利用者が指等の利用者の体の一部でダイアル130に触れてダイアル130を回転させる入力操作のことである。
【0015】
ダイアル130は、操作者が回転操作の入力を行うと(回転させると)、所定の回転角度毎にクリック感を提供するように構成されている。所定の回転角度は一例として45度である。このようなクリック感は、一例として、ダイアル130の回転軸の外周部に所定の回転角度毎に突起を設け、ダイアル130の回転操作に伴って突起を乗り越える際の反力がダイアル130に伝わるように構成することで実現できる。なお、ここではダイアル130がクリック感を提供可能な構成である形態について説明するが、ダイアル130はクリック感を提供しない構成であってもよい。
【0016】
インジケータ140Aは、タッチパッド120、ダイアル130、又はボタン140Bの操作に応じて点灯する点灯表示部である。インジケータ140Aは、2つあり、2つの開口部112Aから表出している。インジケータ140Aは、LED(Light Emitting Diode)等であり、入力装置100への入力操作によって決まる動作モード等を表す。
【0017】
ボタン140Bは、2つあり、2つの開口部112Bから表出している。2つのボタン140Bの操作によって、入力装置100の所定の機能等の選択等が行えるように構成されている。
【0018】
なお、ここでは、入力装置100がインジケータ140Aとボタン140Bを含む形態について説明するが、入力装置100はインジケータ140Aを含まずに、1又は複数のボタン140Bを含む構成であってもよい。
【0019】
図2は、ダイアル130の回転量を検出する機構の分解斜視図である。図2には、筐体110(図1参照)の内部に含まれるダイアル130の回転量を検出する機構のみを示す。
【0020】
ダイアル130の回転量を検出する機構は、可動電極132、スペーサシート133、固定電極群134、及び、駆動電極136を含む。
【0021】
可動電極132は、平面視において、回転軸50を中心とする略リング状に形成された導体の板である。
【0022】
可動電極132は、回転軸50を中心として、円環状の基部132Aと、基部132Aの外側において正弦波状の凹凸が形成された外縁部132Bとを備える。
【0023】
可動電極132は、ダイアル130(図1参照)の下面に取り付けられる。これにより、ダイアル130を回転軸50を中心として回転させると、可動電極132が回転する。
【0024】
ダイアル130と、固定電極群134及び駆動電極136との間には、円形で絶縁体製のスペーサシート133が配置されている。なお、可動電極132と基板4とが接触しない構成である場合には、スペーサシート133は配置されなくてもよい。
【0025】
図3は、固定電極群134及び駆動電極136の構成を示す平面図である。
【0026】
固定電極群134は、回転軸50を中心とした円上に等角度間隔に並んで16組設けられる。
【0027】
駆動電極136は、固定電極群134よりも回転軸50の近くに位置し、回転軸50を中心として円環形状に形成される。ここで、1組の固定電極群134は、1周の略1/16の角度範囲を占める。固定電極群134は、駆動電極136に対して、径方向に離間するように設けられている。
【0028】
この構成においては、16組の固定電極群134と可動電極132とが互いに対向してキャパシタを形成する。可動電極132の外縁部132Bが16組の固定電極群134と対向しており、この外縁部132Bと固定電極群134との間に形成されるキャパシタの静電容量は、ダイアル130の回転にともなって変化する。
【0029】
ここで、可動電極132においては、基部132Aが駆動電極136と対向しており、この基部132Aと駆動電極136との間に形成されるキャパシタの静電容量は、ダイアル130の回転によらず一定である。
【0030】
個々の固定電極群134は、ダイアル130の回転軸50を中心とする円周方向において、円弧状に等角度間隔で並んだ4個の固定電極134A、134B、134C、134Dを有する。これらの固定電極134A、134B、134C、134Dは、それぞれが略扇形状を呈しており、回転軸50を中心とする1周の略1/64の角度範囲を占める。
【0031】
図4は、固定電極群134と、可動電極132との平面視における重なりを説明するための図である。図4では、理解を容易にするため、円弧状に曲ったそれぞれの電極の縁部を直線状に延ばした状態で表わしている。図4には周方向Cを示す。
【0032】
図4に示すように、可動電極132の外縁部132Bは、固定電極群134の固定電極134A~134Dと平面視において重なりを有している。可動電極132の外縁部132Bが示す正弦波形状の周期と、固定電極群134が並ぶ周期とが一致しており、この外縁部132Bの正弦波形状の1周期は、回転軸50に対する角度範囲として、1周の1/16に対応する。
【0033】
例えば、可動電極132と固定電極134Aとの間の静電容量の位相が最も進んでいる場合、この位相に対して、可動電極132と3つの固定電極134B、134C、134Dのそれぞれとの間の静電容量の位相は、π/2[rad]ずつ遅れる。
【0034】
固定電極134A~134Dと可動電極132の外縁部132Bとの間に形成されるキャパシタの静電容量は、この平面視における重なりの面積に略比例する。ダイアル130の回転操作に応じて可動電極132が回転すると、その外縁部132Bの波形状の位置が固定電極134A~134Dに対して相対的に変化するため、固定電極134A~134Dと可動電極132との重なりの面積が変化する。
【0035】
これにより、可動電極132の外縁部132Bと固定電極群134との間の第1キャパシタの静電容量は正弦波状に変化する。本実施形態においては、16組の固定電極群134が設けられていることから、キャパシタの静電容量は、ダイアル130が基準位置から1回転する間に、16サイクルの周期的な変化を生じる。外縁部132Bの正弦波形状の1周期は、回転軸50に対する角度範囲として、1周の1/16に対応する。
【0036】
図4に示すように、可動電極132の外縁部132Bの正弦波形状のピーク位置があるとき、可動電極132の外縁部132Bは固定電極134Aのほぼ全面に重なっている。このとき、可動電極132の外縁部132Bと固定電極134Aとの間の静電容量は最大値となる。
【0037】
一方、図4に示すように、固定電極134C上に可動電極132の外縁部132Bの正弦波形状のピーク位置があるとき、可動電極132の外縁部132Bは固定電極134Cと重なっていない。このとき、可動電極132の外縁部132Bと固定電極134Cとの間の静電容量は最小値となる。
【0038】
また、可動電極132の外縁部132Bにおいても、固定電極134A~134Dと可動電極132の外縁部132Bとの間に形成されるキャパシタの静電容量は、この平面視における重なりの面積に略比例する。
【0039】
ダイアル130の回転操作に応じて可動電極132が回転すると、その外縁部132Bの波形の位置が固定電極134A~134Dに対して相対的に変化するため、固定電極134A~134Dと可動電極132との重なりの面積が変化する。
【0040】
これにより、可動電極132の外縁部132Bと固定電極群134との間のキャパシタの静電容量は正弦波状に変化する。本実施形態においては、16組の固定電極群134が設けられていることから、キャパシタの静電容量は、ダイアル130が基準位置から1回転する間に、16サイクルの周期的な変化を生じる。
【0041】
図5は、入力装置100の全体的な構成の一例を示す図である。入力装置100は、上述した構成に加えて、検出信号生成部150A、駆動部150C、制御装置160、及びメモリ170を有する。
【0042】
検出信号生成部150Aは、16組の固定電極群134と可動電極132との間に形成されるキャパシタの静電容量に応じた一群の検出信号を生成する。検出信号生成部150Aは、例えば、静電容量-電圧変換回路(CV変換回路)と、その出力電圧をデジタル信号に変換するAD変換回路を含んで構成される。
【0043】
駆動部150Cは、駆動電極136に対して、駆動電圧を供給する。駆動部150Cが供給する駆動電圧は、制御装置160の制御によって制御される。
【0044】
このため、駆動電極136に駆動電圧を供給した状態でダイアル130を回転させると、16組の固定電極群134と可動電極132との間に形成されるキャパシタの静電容量は周期的変化を生じる。
【0045】
16組の固定電極群134は、固定電極群134が実装される基板4に形成された配線パターンによって電気的に接続される。すなわち、16組の固定電極群134のそれぞれの固定電極134A、すなわち16個の固定電極134Aが共通の配線によって検出信号生成部150Aに接続されており、16個の固定電極134B、16個の固定電極134C、及び、16個の固定電極134Dについても、それぞれが共通配線によって検出信号生成部150Aにそれぞれ接続されている。
【0046】
駆動部150Cによって駆動電極136に所定の駆動電圧が供給されると、16個の固定電極134Aと、可動電極132との間に形成されるキャパシタには、重なった面積に対応する静電容量に応じた電荷がそれぞれ蓄積される。それぞれ16個ある固定電極134B、134C、134Dについても同様である。
【0047】
検出信号生成部150Aは、16個のキャパシタに蓄積される正電荷と負電荷の和に応じた信号を検出信号(SA、SB、SC、SD)として生成する。
【0048】
制御装置160は、主制御部161、タッチ検出部162、及び回転量検出部163を有する。制御装置160は、入力装置100の全体的な動作を制御や信号処理などを行う制御部の一例であり、例えばメモリ170に格納されたプログラムに基づいて処理を実行するコンピュータによって実現される。制御装置160による処理の少なくとも一部は、専用のハードウェア(ASIC等)で行ってもよい。
【0049】
主制御部161は、タッチ検出部162及び回転量検出部163が行う処理以外の処理を実行する。ここで、主制御部161が行う処理について説明する前に、タッチ検出部162及び回転量検出部163が行う処理について説明する。
【0050】
タッチ検出部162は、タッチパッド120から入力される位置データに基づいて、タッチパッド120へのタッチ操作が行われたことを検出する。
【0051】
回転量検出部163は、ダイアル130の回転量を検出する。具体的な検出方法については図6を用いて説明する。
【0052】
図6は、入力装置100における回転操作の検出原理を説明するための図である。図6は、ダイアル130を操作することにより可動電極132を回転させたときに、固定電極134A、134B、134C、134Dから出力された信号に基づいて検出信号生成部150Aにおいてそれぞれ生成された検出信号SA、SB、SC、SDの信号強度を、角度θに対してプロットしたグラフである。検出信号SA、SB、SC、SDは、固定電極134A、134B、134C、134Dから出力された信号にそれぞれ対応しており、周期・振幅は互いに同一で、各信号はπ/2[rad]ずつずれた波形となっている。
【0053】
この波形について、駆動電極136へ供給する駆動電圧が正である場合の検出信号SAを例にとって説明する。これは、検出信号SB、SC、SDについても同様に考えられる。
【0054】
検出信号SAは、角度θ=0において正の値のピーク値となっている。このとき、固定電極134Aには可動電極132の外縁部132Bが全体的に重なっており、駆動電極136に対応する可動電極132の外縁部132Bと固定電極134Aとが形成するキャパシタには正電荷が蓄積される。したがって、検出信号生成部150Aは、可動電極132の外縁部132Bと固定電極134Aとが形成するキャパシタで蓄積された正電荷に応じた信号を生成する。
【0055】
また、角度θ=π/2においては、検出信号SAの値は振幅の中央値となっている。このとき、固定電極134Aには、内縁部131Bと外縁部132Bが同じ面積で重なっており、検出信号生成部150Aは、可動電極132の外縁部132Bと固定電極134Aとが形成するキャパシタに蓄積される正電荷に応じた信号を生成する。
【0056】
さらにまた、角度θ=πにおいては、検出信号SAの値はボトム値となっている。このとき、可動電極132の外縁部132Bは固定電極134Aに重なっておらず、駆動電極136に対応する外縁部132Bと固定電極134Aとが形成するキャパシタには電荷は蓄積されない。したがって、検出信号生成部150Aは、電荷が蓄積されていない状態に応じた信号を生成する。検出信号SA、SB、SC、SDの信号強度の振幅の中央値は、信号強度がゼロの点に対して、オフセットを有する。
【0057】
回転量検出部163は、検出信号生成部150Aにおいて生成される一群の検出信号(第1検出信号SA、第2検出信号SB、第3検出信号SC、第4検出信号SD)に基づいて、ダイアル130の回転に係わる情報を取得する処理を行う。回転量検出部163は、角度算出部として、駆動電極136に駆動電圧を供給するように駆動部150Cを制御し、この駆動電圧の供給に伴って生成される第1検出信号SA、第2検出信号SB、第3検出信号SC、及び第4検出信号SDに基づいて、ダイアル130の回転に係わる情報(例えば回転角度)を取得する。
【0058】
次に、上述した構成を有する入力装置100における回転操作の検出の検出について説明する。
(回転操作の検出)
回転操作を検出する場合、駆動部150Cは、駆動電極136に対して駆動電圧を供給する。駆動電圧の供給に伴って検出信号生成部150Aが生成する4つの検出信号(SA、SB、SC、SD)は、固定電極群134に含まれる4つの固定電極(134A~134D)と、可動電極132との間に形成されるキャパシタで蓄積される電荷に応じた信号となる。4つの検出信号(SA、SB、SC、SD)の信号強度は、概ね次の式で表わされる。
【0059】
SA=K・cos(16θ) (1)
SB=K・sin(16θ) (2)
SC=-K・cos(16θ) (3)
SD=-K・sin(16θ) (4)
ここで、「θ」はダイアル130の回転角度を示し、「K」は比例定数を示す。上式(1)~(4)において「θ」に「16」が乗ぜられていることから、ダイアル130が1回転する間に、各検出信号(SA~SD)には16サイクルの変化が生じることが分かる。すなわち、回転量検出部163は、ダイアル130の1周(360度)を16分割した分解能で検出できる。換言すれば、回転量検出部163によるダイアル130の回転角度の分解能は、検出可能回転量であり、22.5度である。これは、ダイアル130のクリック間隔(45度)の1/2である。
【0060】
また、図6に示すように、4つの検出信号(SA、SB、SC、SD)は、互いの位相が90°(π/2[rad])又は180°(π[rad])ずれており、それぞれ異なった値を持つ。
【0061】
位相が180°ずれた第1検出信号SAと第3検出信号SCとの差「SA-SC」、及び、位相が180°ずれた第2検出信号SBと第4検出信号SDとの差「SB-SD」は、それぞれ次の式で表わされる。
【0062】
SA-SC=2K・cos(16θ) (5)
SB-SD=2K・sin(16θ) (6)
したがって、「SA-SC」、「SB-SD」の振幅は、それぞれ、元の検出信号(SA、SB、SC、SD)の略2倍となる。
【0063】
また、式(5)、(6)から、「θ」は次の式で表わされる。
【0064】
θ=(1/16)・Atan2{(SB-SD),(SA-SC)} (7)
回転量検出部163は、式(5)で示される「SA-SC」と式(6)で示される「SB-SD」の極性や値の変化に基づいて、ダイアル130の回転方向を判定する。
【0065】
また、回転量検出部163は、起点となる位置からの回転操作によって検出信号の差「SA-SC」(若しくは「SB-SD」)に生じる周期的変化のサイクル数と、式(7)により計算した「θ」とに基づいて、当該起点となる位置からのダイアル130の回転角度(回転量)を計算する。
【0066】
ここで、各固定電極から同時に出力された信号を用いて検出信号生成部150Aにおいて検出信号SA、SB、SC、SDを生成し、これらの検出信号から、差「SA-SC」又は「SB-SD」を算出すると、同時計測データを用いて差分を求めることとなるため、IC電源ノイズやセンサ配線へのノイズを打ち消すことができる。
【0067】
次に、主制御部161による処理について説明する。まず、主制御部161による処理の概略は次の通りである。
【0068】
主制御部161は、ダイアル130に回転操作の入力が行われている場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にする。また、主制御部161は、ダイアル130に回転操作の入力が行われている状態から回転操作の入力が行われなくなると、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を有効にする。
【0069】
より具体的には、主制御部161は、回転量検出部163によって検出される回転量が、回転量検出部163の分解能が表す角度のN(Nは2以上の整数)倍以上である場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にするとともに、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を受け付ける。
【0070】
タッチ操作を無効にするとは、タッチ検出部162によってタッチ操作が行われたことが検出されても、タッチ操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力しない状態にすることをいう。
【0071】
また、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を受け付けるとは、回転量検出部163によって検出された回転操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力する状態にすることをいう。
【0072】
また、主制御部161は、回転量検出部163によって検出される回転量が、回転量検出部163の分解能が表す角度のM(Mは1以上かつN以下の整数)倍未満である場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にせずに(有効にし)、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を無効にする。回転量検出部163の分解能が表す角度のM倍未満である場合とは、回転量検出部163の分解能が表す角度のM倍以上ではない場合である。
【0073】
タッチ操作の入力を無効にせずに(有効に)するとは、タッチ検出部162によってタッチ操作が行われたことが検出されると、タッチ操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力する状態にすることをいう。
【0074】
また、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を無効にするとは、回転量検出部163によって検出された回転操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力しない状態にすることをいう。
【0075】
例えば、分解能が360度の1/100のように大きい場合には、利用者がタッチパッド120を操作している際に、意図せずにダイアル130に触れて回転させてしまうと、回転量検出部163によってダイアル130の回転操作の入力が検出されるおそれがある。このような場合には、回転量検出部163の分解能が表す角度のN倍(Nは2以上の整数であるため2倍以上の整数倍)の回転操作が行われたときに、ダイアル130の回転操作の入力が受け付けられるようにすれば、意図しない入力を抑制できる。
【0076】
次に、図7を用いて主制御部161の具体的な処理について説明する。以上の説明では、固定電極群134が16組設けられるとともに、可動電極132の外縁部132Bが16個設けられていることとしたが、以下では、固定電極群134が100組設けられるとともに、可動電極132の外縁部132Bが100個設けられているものとして説明する。また、ここでは、N=M=10の場合について説明するが、Nは2以上の整数であり、Mは1以上かつN以下の整数であるため、NとMは異なっていてもよい。
【0077】
このため、以下では、回転量検出部163によるダイアル130の回転角度の分解能は、ダイアル130の1周(360度)の1/100であり、角度で表すと3.6度である。
【0078】
また、以下では、回転量検出部163の分解能が表す角度の10倍の回転操作が行われたときに、回転量検出部163によってダイアル130の回転操作の入力が検出されるものとする。すなわち、回転量検出部163は、ダイアル130に対して36度以上の回転操作が行われたときに、回転操作の入力を検出することになる。
【0079】
また、以下では、ダイアル130のクリック感は、45度の回転角度毎に提供されるものとする。ダイアル130は回転方向におけるクリック機構を有し、クリック機構のクリック感を提示するクリック間隔は、分解能が表す角度のL倍(LはN以上の整数)である。
【0080】
図7は、主制御部161が実行する処理を示すフローチャートである。
【0081】
主制御部161は、処理がスタートすると、回転量検出部163の分解能をダイアル130の1回転(360度)の1/100に設定する(ステップS1)。
【0082】
主制御部161は、回転量検出部163によってダイアル130の回転操作が検出されたかどうかを判定する(ステップS2)。
【0083】
主制御部161は、回転量検出部163によって回転操作が検出されていない(S2:NO)と判定されると、タッチパッド120へのタッチ操作を有効にする(ステップS3)。タッチ操作を有効にするとは、タッチ検出部162によってタッチ操作が行われたことが検出されると、タッチ操作に応じた操作信号をECUやコンピュータに出力する状態にすることをいう。
【0084】
ステップS3の処理により、タッチパッド120へのタッチ操作が有効な状態になる。入力装置100の電源がオンにされて最初のステップS3の処理である場合には、この処理によってタッチパッド120へのタッチ操作が有効な状態になる。また、後述するステップS5においてタッチパッド120へのタッチ操作が無効な状態にされた後にフローがステップS3に進行した場合には、タッチパッド120へのタッチ操作が無効な状態から有効な状態に復帰することになる。
【0085】
なお、主制御部161は、ステップS3の処理を終えるとフローをステップS2にリターンする。
【0086】
主制御部161は、回転量検出部163によって回転操作が検出されている(S2:YES)と判定されると、回転量検出部163によって検出されたダイアル130の回転角度が36度以上であるかどうかを判定する(ステップS4)。36度は、回転量検出部163の分解能が表す角度(3.6度)の10倍の回転角度である。
【0087】
主制御部161は、36度以上である(S4:YES)と判定すると、タッチ検出部162によってタッチ操作が行われたことが検出されてもタッチ操作を無効にするとともに、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を受け付ける(ステップS5)。
【0088】
なお、主制御部161は、ステップS5の処理を終えると1周期における処理を終了する(エンド)。主制御部161は、入力装置100がオンにされている間は、図7に示すスタートからエンドまでのフローを繰り返し実行する。
【0089】
利用者がタッチパッド120を操作している際に、意図せずにダイアル130に触れて回転させた場合は回転角度が小さく、回転量検出部163の分解能が表す角度(3.6度)の10倍の回転角度未満であると考えられるため、意図しない入力を抑制するためである。
【0090】
また、主制御部161は、ステップS4において36度以上ではない(S4:NO)と判定すると、タッチ操作を有効にするとともに、回転量検出部163によって検出された回転操作の入力を無効にする(ステップS6)。
【0091】
ステップS6では、ステップS3においてタッチ操作が有効にされている場合は、タッチ操作が有効な状態を継続することになり、ステップS5においてタッチ操作が無効にされている場合には、タッチ操作を有効な状態に切り替えることになる。
【0092】
なお、主制御部161は、ステップS6の処理を終えると1周期における処理を終了する(エンド)。主制御部161は、入力装置100がオンにされている間は、図7に示すスタートからエンドまでのフローを繰り返し実行する。
【0093】
以上のように、ダイアル130に回転操作の入力が行われている場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にする。このため、ダイアル130に回転操作の入力が行われている場合には、操作者が意図せずにタッチパッド120に触れてしまっても、操作信号は入力装置100からECUやコンピュータに出力されない。
【0094】
したがって、使い勝手が良好な入力装置100を提供することができる。
【0095】
また、主制御部161は、ダイアル130に回転操作の入力が行われている状態から回転操作の入力が行われなくなると、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を有効にするため、利用者がダイアル130に回転操作の入力を行わずにタッチパッド120へのタッチ操作の入力を行っている場合には、入力装置100は、タッチ操作に応じた操作信号を出力でき、使い勝手が良好な入力装置100を提供することができる。
【0096】
また、回転量検出部163によって検出される回転量が、分解能が表す角度のM(Mは1以上かつN以下の整数)倍未満である場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にしないため、タッチパッド120を操作しているときにダイアル130に少し触れても、意図しない入力を抑制できる。
【0097】
なお、以上では、ステップS4において、回転量検出部163によって検出される回転量が、分解能が表す角度のM(Mは1以上かつN以下の整数)倍未満である場合には、タッチパッド120へのタッチ操作の入力を無効にしない形態について説明した。しかしながら、ステップS4の処理を行わずに、ステップS2で回転量検出部163によって回転操作が検出されていると判定された場合に、フローをステップS5に進行させてタッチ操作を無効にしてもよい。
【0098】
また、以上では、回転量検出部163によるダイアル130の回転角度の分解能がダイアル130のクリック間隔(45度)の1/2(22.5度)である形態について説明したが、回転量検出部163によるダイアル130の回転角度の分解能は、ダイアル130のクリック間隔(45度)の1/N(Nは2以上の整数)であればよい。
【0099】
図8は、入力装置100の使用例を示す図である。ここでは一例として、入力装置100がミュージックプレイヤの入力部として用いられる形態について説明する。
【0100】
図8(A)、(B)には、タッチパッド120とダイアル130のみを簡略化して示す。図8(A)は、タッチパッド120へのタッチ操作の入力、及び、ダイアル130への回転操作の入力が行われていない状態である。タッチパッド120には、±X方向側に巻き戻し及び早送りの矢印が表示されているとともに、±Y方向側に音量増大(Vol. UP)及び音量低減(Vol. DOWN)の表示が設けられている。また、ダイアル130は、回転操作によって選曲できるように機能が割り当てられている。
【0101】
タッチパッド120におけるこれらの表示は、例えば、タッチパッド120の表面を覆うカバーに設けた文字をカバーの裏側に設けたLEDのオン/オフによって切り替えられる構成であってもよい。また、タッチパッド120の-Z方向側に液晶等のディスプレイを重ねて配置することによって表示される構成であってもよい。
【0102】
図8(B)では、タッチパッド120への操作で音量増大(Vol. UP)が選択されており、音量増大(Vol. UP)の表示色が変わることで音量増大(Vol. UP)が選択されていることが視覚的に分かるようにしている。
【0103】
このような入力装置100において、利用者が選曲を行うためにダイアル130の回転操作を行うときに、指先がタッチパッド120に触れても、タッチパッド120へのタッチ操作が無効にされるため、利用者が意図しない操作を抑制し、使い勝手を良好にすることができる。
【0104】
図9は、入力装置100の他の使用例を示す図である。ここでは一例として、入力装置100がパーソナルコンピュータの入力部として用いられる形態について説明する。図9(A)、(B)には、パーソナルコンピュータのディスプレイ10の表示を示す。一例として、タッチパッド120は、カーソル11を移動させるためのタッチ操作の入力を行うために機能が割り当てられており、ダイアル130は、ディスプレイ10に表示させる画像をスクロールするために機能が割り当てられている。
【0105】
図8(A)は、タッチパッド120へのタッチ操作の入力、及び、ダイアル130への回転操作の入力が行われていない状態である。図8(B)では、図8(A)に比べて画像がスクロールされるとともに、カーソル11が移動されている。
【0106】
利用者がダイアル130で画像をスクロールする際に、意図せずに指先がタッチパッド120に触れても、タッチパッド120へのタッチ操作が無効にされるため、利用者が意図しない操作を抑制し、使い勝手を良好にすることができる。
【0107】
以上、本発明の例示的な実施の形態の入力装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0108】
なお、本国際出願は、2019年6月17日に出願した日本国特許出願2019-112066に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0109】
100 入力装置
110 筐体
120 タッチパッド
130 ダイアル
160 制御装置
161 主制御部
162 タッチ検出部
163 回転量検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9