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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】固着具と炭素基材
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
F16B37/04 C
F16B37/04 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021088788
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022161772
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2023-01-12
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506037009
【氏名又は名称】赤羽 廣志
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 廣志
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90016(JP,A)
【文献】実開昭59-141215(JP,U)
【文献】特開平6-237808(JP,A)
【文献】特開平05-196022(JP,A)
【文献】実開昭61-41916(JP,U)
【文献】特開2011-153702(JP,A)
【文献】特開平09-14242(JP,A)
【文献】特開昭58-128520(JP,A)
【文献】特開昭58-124810(JP,A)
【文献】特開昭58-124809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、
円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、
この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、
この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、
この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、
この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、
前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工されることを特徴とする固着具。
【請求項2】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、
円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第1の栓体と、
この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、
この第1の小径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第2の栓体と、
この第2の栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第2の小径部と、
この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、
この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第3の小径部と、
この第3の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、
前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第2の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工されることを特徴とする固着具。
【請求項3】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、
円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、
この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、
この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、
この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、
この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部と、
この第2の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上の後端に設けられ、前記第2の大径部の外径より大きい外径の底部とを有し、
前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工されることを特徴とする固着具。
【請求項4】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、
円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第1の栓体と、
この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、
この第1の小径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第2の栓体と、
この第2の栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第2の小径部と、
この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、
この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第3の小径部と、
この第3の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部と、
この第2の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上の後端に設けられ、前記第2の大径部の外径より大きい外径の底部とを有し、
前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第2の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工されることを特徴とする固着具。
【請求項5】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具と炭素基材であって、
上記固着具は、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工され、
上記炭素基材は、前記栓体の外径より小さい孔径で前記栓体と第1の小径部とが嵌め込まれるの第1の孔と、前記第1の大径部の外径より所定値小さい孔径で前記第1の大径部と前記第2の小径部と前記第2の大径部とが嵌め込まれる第2の孔とを有することを特徴とする固着具と炭素基材。
【請求項6】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具と炭素基材であって、
上記固着具は、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第1の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第2の栓体と、この第2の栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第3の小径部と、この第3の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第2の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工され、
上記炭素基材は、前記第1の栓体と第2の栓体の外径より小さい孔径で前記第1の栓体と第1の小径部と第2の栓体と第2の小径部とが嵌め込まれるの第1の孔と、前記第1大径部の外径より所定値小さい孔径で前記第1の大径部と前記第3の小径部と前記第2の大径部とが嵌め込まれる第2の孔とを有することを特徴とする固着具と炭素基材。
【請求項7】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具と炭素基材であって、
上記固着具は、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部と、この第2の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上の後端に設けられ、前記第2の大径部の外径より大きい外径の底部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工され、
上記炭素基材は、前記栓体の外径より小さい孔径で前記栓体と第1の小径部とが嵌め込まれるの第1の孔と、前記第1大径部の外径より所定値小さい孔径で前記第1の大径部と前記第2の小径部と前記第2の大径部とが嵌め込まれる第2の孔と、前記底部の外径より大きい孔径で前記底部が嵌め込まれる第3の孔とを有することを特徴とする固着具と炭素基材。
【請求項8】
炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、
上記固着具は、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第1の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の第2の栓体と、この第2の栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第3の小径部と、この第3の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部と、この第2の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上の後端に設けられ、前記第2の大径部の外径より大きい外径の底部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第2の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工され、
上記炭素基材は、前記第1の栓体と第2の栓体の外径より小さい孔径で前記第1の栓体と第1の小径部と第2の栓体と第2の小径部とが嵌め込まれるの第1の孔と、前記第1大径部の外径より所定値小さい孔径で前記第1の大径部と前記第3の小径部と前記第2の大径部とが嵌め込まれる第2の孔と、前記底部の外径より大きい孔径で前記底部が嵌め込まれる第3の孔とを有することを特徴とする固着具と炭素基材。
【請求項11】
上記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工される前記同一方向斜めの角度が25~35度であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の固着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、黒鉛等の炭素基材に嵌め込み固定して使用するのに適した固着具と炭素基材に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛等の炭素材料は、化学的安定性、耐熱性に優れていることから、半導体製造、化学工業、機械等の多くの分野にわたって使用されている。
従来、合成樹脂の成形品からなる基材にねじ孔を形成してボルトなどをねじ込み固定すると、引張り、ねじり、振動その他の外力を受けたとき、あるいはボルトなどを反覆して着脱したときにねじ孔が変形し、または破壊して使用できなくなる。
そこで、合成樹脂等の成形品基材に設けられた孔に対して、嵌め込み固定してボルトなどを安定よく固定しておくことができると共に反覆着脱に耐えるようにしたナット状の金属製固着具が実用化されている。さらに、このような固着具が成形品基材の孔に喰い込んで充分な強度で固定されるように固着具の外側周面にローレット状その他の凹凸を設ける方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
このような固着具には先端側にリング状の栓体(突起部あるいは頭部ということもあるが以下、栓体と記述する)が設けられているものもある。この固着具を成形品基材に嵌め込む際、固着具はその栓体により成形品基材に設けられた孔に案内(ガイド)され、固着具が加熱・加圧されて嵌め込まれる。
【0004】
しかしながら、合成樹脂等の成形品基材ではなく黒鉛等の炭素基材の場合、通常加熱(合成樹脂では200℃前後)では溶融しないのでその後の冷却固化が期待できない。しかも、黒鉛等の炭素は比較的柔らかい素材であるので炭素基材に設けられた孔に嵌め込んだ際、炭素基材の孔に喰い込んで充分な強度で固定されないという問題があった。そこで、黒鉛等の炭素基材に充分な強度で固着具を嵌め込み固定させるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭50-85756号公報
【文献】特開昭58-124809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、合成樹脂等の成形品基材ではなく黒鉛等の炭素基材の場合、通常加熱(合成樹脂では200℃前後)では溶融しないのでその後の冷却固化が期待できず、しかも、黒鉛等の炭素は比較的柔らかい素材であるので炭素基材に設けられたボスの孔に嵌め込んだ際、炭素基材の孔に喰い込んで充分な強度で固定されないという課題があった。
この発明の目的は、黒鉛等の炭素基材に引き抜き方向と回転トルクともに充分な強度で嵌め込み固定させることのできる固着具と炭素基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、炭素基材に設けられた孔に固定される固着具であって、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工されたものである。
また、本発明は、上記固着具は、円柱状の本体の先端に突出して設けられ、上記孔の孔径より大きい外径の栓体と、この栓体に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該栓体の外径より小さい外径の第1の小径部と、この第1の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第1の大径部と、この第1の大径部に隣接して前記円柱状の本体の外側周面上に設けられ、当該第1の大径部の外径より小さい外径の第2の小径部と、この第2の小径部に隣接して上記孔の孔径より所定値大きい外径で前記円柱状の本体の外側周面上に設けられる第2の大径部とを有し、前記第1の大径部と第2の大径部とで前記第1の小径部側を底面側として周面が傾斜角度を持つ円錐台形状に外側周面が加工されると共に前記第1の大径部と第2の大径部とで多数の凹凸条が同一方向斜めに加工され、上記炭素基材は、前記栓体の外径より小さい孔径で前記栓体と第1の小径部とが嵌め込まれるの第1の孔と、前記第1の大径部の外径より所定値小さい孔径で前記第1の大径部と前記第2の小径部と前記第2の大径部とが嵌め込まれる第2の孔とを有したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、黒鉛等の炭素基材に引き抜き方向と回転トルクともに充分な強度で嵌め込み固定させる固着具と炭素基材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る第1実施例が適用可能な固着具の一例を示す片側断面図。
図2】炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
図3】固着具が炭素基材の孔に嵌め込まれた状態を示す図。
図4】第2実施例が適用可能な炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
図5】第3実施例が適用可能な固着具の一例を示す片側断面図。
図6】炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
図7】第4実施例が適用可能な炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
図8】第5実施例が適用可能な固着具の一例を示す片側断面図。
図9】炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
図10】第6実施例が適用可能な炭素基材に設けられた孔の形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係るインサートと呼ばれる固着具1を示す片側断面図である。すなわち、この固着具1は、短い円柱状の本体2の先端部に端面aを有する外側周面上に設けられた第1の栓体3、第1の小径部4、外側周面上に設けられた第2の栓体5、第2の小径部6、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第1の大径部7、第3の小径部8、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第2の大径部9、および端面bを有して設けられている。また、第1の栓体3の端面aに沿って面取り加工され、第1の大径部7も第2の小径部5に接する側が面取り加工されている。
【0011】
また、第1の大径部7と第2の大径部9とは、ローレットの角度が重要で同一方向斜め30度に加工されている。このような加工によって第1の大径部7と第2の大径部9と斜め30度のローレットにより回転しながら嵌め込まれるので後述する炭素基材の孔の内面をランダムに砕かず一定方向にして炭素基材の孔の内面の損傷を小さくして固定されるようになっている。さらに、第1の大径部7と第2の大径部9とで第2の小径部6側を底面側として側面(周面)の傾斜角度が1度の円錐台形状(プリンの形)でローレット外径が加工されている。この加工により第1の大径部7の最大外径で孔の内面を削ることで削りかすが第2の大径部9に入り込んで固定され、固着具1の回転トルク強度を大きくしている。
また、本体2には、端面aから端面bに貫通した雌ねじ孔10が設けられている。この雌ねじは例えばM4である。
【0012】
本実施例の固着具1は、1/100mm単位で切削加工される。
例えば、固着具1の寸法は、全長(端面aから端面b)が7.45mm、端面a部の外径が8.20mm、第1の栓体3と第2の栓体5の外径が8.90mm、第1の小径部4と第2の小径部6の外径が8.20mm、第1の大径部7の最大外径が9.30mm、第2の大径部9の最小外径が9.16mmで切削加工されている。
【0013】
なお、固着具1は、本実施例ではステンレス鋼を用いているが、炭素鋼、アルミニウム、亜鉛等の金属を用いても良い。
【0014】
図2は、カーボン等の炭素基材20に形成された孔21の構成例を示す断面図である。孔21は第1の大径部7の外径より所定値小さい孔径に形成されている。例えば、炭素基材の孔21は孔径が8.60mm、深さが8.00mmで形成されている。
【0015】
次に、このような構成において、炭素基材の孔21に固着具1を嵌め込む動作について説明する。本嵌め込み動作は、固着具1を加圧して炭素基材20の孔21へ嵌め込むものである。
まず、固着具1は炭素基材20の孔21に供給(挿入)される。
【0016】
すなわち、固着具1が上方(図上)から加圧され、固着具1の第1の栓体3、第2の栓体5、第1の大径部7、第2の大径部9の進入を可能ならしめ、炭素基材20の孔21の挿入口面に端面bが達して停止される。
【0017】
図3は、炭素基材20の孔21に固着具1が嵌め込まれた状態を示すものである。
加圧された際、固着具1の第1の栓体3に接する炭素基材20の孔21の内面が削られて削りかすが第1の小径部4に押し出され、続いて第2の栓体5に接する炭素基材20の孔21の内面が削られて削りかすが第2の小径部6に押し出される。この結果、固着具1の引き抜き方向の強度を大きくしている。さらに固着具1が加圧され、第1の大径部7に接する炭素基材20の孔21の内面がローレットにより削られて削りかすが第3の小径部8と第2の大径部9のローレットに入り込んで固定される。これは、第1の大径部7の最大外径より第2の大径部9の外径が小さいので削りかすがローレットに入り込んで固定されたものである。
【0018】
なお、固着具1の第1の大径部7と第2の大径部9と斜め30度のローレットにより回転しながら嵌め込まれるので炭素基材20の孔21の内面をランダムに砕かず一定方向にして炭素基材20の孔21の内面の損傷を小さくしている。さらに、第1の大径部7は第2の小径部6側を底面側として側面の傾斜角度が1度の円錐台でローレット外径が加工される。この加工により第1の大径部7の最大外径で孔の内面を削ることで削りかすが第2の大径部9に入り込んで固定され、固着具1の回転トルク強度を大きくしている。この結果、炭素基材20にはめ込まれた固着具1は、引き抜き方向にも回転トルクにも充分な強度を有して固定される。
【0019】
なお、上述した第1の大径部7と第2の大径部9とはローレットの角度が重要で、同一方向斜め30度にする加工はこれに限らず同一方向斜め25~35度の範囲で変更される。後述する各実施例においても同様である。
また、上述した第1の大径部7と第2の大径部9とでローレット外径を円錐台のようにして周面傾斜を角度1度にする加工は、これに限らず角度0.5~1.5度の範囲で固着具のローレット外径に応じて変更される。後述する各実施例においても同様である。
また、上述した栓体は2つ設けたが1つでも良く、要は所望する引き抜き方向の強度が得られれば良い。
【0020】
図4は、第2実施例に係る炭素基材22に形成された孔の例を示す断面図である。炭素基材22には、孔23と孔24とからなる二段孔が設けられている。
この孔23は第1実施例の孔21と同じ孔径であるが、孔24は孔21より孔径が小さくなっている。例えば、孔23の孔径は8.60mmで、孔24の孔径は7.90mmである。この孔23、24に上記固着具1が嵌め込まれる。この結果、固着具1の第1の栓体3と第2の栓体5が孔21より孔径が小さい孔24に嵌め込まれることにより、第1実施例より強い引き抜き方向の強度を得ることができる。
【0021】
図5は、この発明の第3実施例に係るインサートと呼ばれる固着具31を示す片側断面図である。すなわち、この固着具31は、短い円柱状の本体32の先端部に端面cを有する外側周面上に設けられた栓体33、第1の小径部34、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第1の大径部35、第2の小径部36、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第2の大径部37、および底部(フランジ部)38が端面dを有して設けられている。また、栓体33の端面cに沿って面取り加工され、第1の大径部35も第1の小径部34に接する側が面取り加工されている。
【0022】
また、第1の大径部35と第2の大径部37とは、ローレットの角度が重要で同一方向斜め30度に加工されている。このような加工によって第1の大径部35と第2の大径部37と斜め30度のローレットにより回転しながら嵌め込まれるので後述する炭素基材の孔の内面をランダムに砕かず一定方向にして炭素基材の孔の内面の損傷を小さくして固定されるようになっている。さらに、第1の大径部35と第2の大径部37とで第1の小径部34側を底面側として側面(周面)の傾斜角度が1度の円錐台形状(プリンの形)でローレット外径が加工されている。この加工により第1の大径部35の最大外径で孔の内面を削ることで削りかすが第2の大径部37に入り込んで固定され、固着具31の回転トルク強度を大きくしている。
また、本体32には、端面cから端面dに貫通した雌ねじ孔39が設けられている。この雌ねじは例えばM4である。
【0023】
本実施例の固着具31は、1/100mm単位で切削加工される。
例えば、固着具31の寸法は、全長(端面aから端面b)が6.50mm、端面c部の外径が8.20mm、栓体33の外径が8.90mm、第1の小径部34が8.20mm、第2の小径部36の外径が8.40mm、第1の大径部7の最大外径が9.30mm、第2の大径部9の最小外径が9.16mm、底部38の外径が12.00mmで切削加工されている。
【0024】
なお、固着具31は、本実施例ではステンレス鋼を用いているが、炭素鋼、アルミニウム、亜鉛等の金属を用いても良い。
【0025】
図6は、カーボン等の炭素基材40に形成された孔の構成例を示す断面図である。この孔は、固着具31の案内(ガイド)となり底部38が嵌め込まれる孔41と固着具31の本体32が嵌め込まれる孔42とが設けられている。
孔41は底部38より大きい孔径で形成され、孔径42は第1の大径37の外径より所定値小さい孔径に形成されている。例えば、孔41は孔径が12.50mm、深さ1.00mm、孔42は孔径が8.60mm、深さ6.00mmで形成されている。
【0026】
次に、このような構成において、炭素基材の孔41,42に固着具31を嵌め込む動作について説明する。本嵌め込み動作は、固着具31を加圧して炭素基材40の孔41,42へ嵌め込むものである。
まず、固着具31は炭素基材40の孔41,42に供給(挿入)される。
【0027】
すなわち、固着具31が上方(図上)から加圧され、固着具31の栓体33、第1の大径部35、第2の大径部37の進入を可能ならしめ、炭素基材40の孔41の底に底部38の端面dと反対面が達して停止される。
この結果、炭素基材20にはめ込まれた固着具31は、引き抜き方向にも回転トルクにも充分な強度を有して固定される。さらに、底部38により挿入動作を確実に止め、炭素基材40の表面から飛び出さない位置に固定することができる。
【0028】
図7は、第4実施例に係るカーボン等の炭素基材43に形成された孔の例を示す断面図である。炭素基材43には、孔44、孔45と46とからなる二段孔が設けられている。この孔45は第3実施例の孔42と同じ孔径であるが、孔46は孔45より孔径が小さくなっている。例えば、孔45の孔径は8.60mmで、孔24の孔径は7.90mmである。この孔44,45,46に上記固着具31が嵌め込まれる。この結果、固着具31の栓体33が孔42より孔径が小さい孔46に嵌め込まれることにより、第3実施例より強い引き抜き方向の強度を得ることができる。
【0029】
図8は、この発明の第5実施例に係るインサートと呼ばれる固着具51を示す片側断面図である。すなわち、この固着具51は、短い円柱状の本体52の先端部に端面eを有する外側周面上に設けられた第1の栓体53、第1の小径部54、第2の栓体55、第2の小径部56、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第1の大径部57、第3の小径部58、外側周面上に突出させてローレット(凹凸条)を有する第2の大径部59、および底部(フランジ部)60が端面fを有して設けられている。また、第1の栓体53の端面eに沿って面取り加工されている。
【0030】
また、第1の大径部57と第2の大径部59とは、ローレットの角度が重要で同一方向斜め30度に加工されている。このような加工によって第1の大径部57と第2の大径部59と斜め30度のローレットにより回転しながら嵌め込まれるので後述する炭素基材の孔の内面をランダムに砕かず一定方向にして炭素基材の孔の内面の損傷を小さくして固定されるようになっている。さらに、第1の大径部57と第2の大径部59とで第2の小径部56側を底面側として側面(周面)の傾斜角度が1度の円錐台形状(プリンの形)でローレット外径が加工されている。この加工により第1の大径部57の最大外径で孔の内面を削ることで削りかすが第2の大径部59に入り込んで固定され、固着具51の回転トルク強度を大きくしている。
また、本体52には、端面eから端面fに貫通した雌ねじ孔61が設けられている。この雌ねじは例えばM4である。
【0031】
本実施例の固着具51は、1/100mm単位で切削加工される。
例えば、固着具51の寸法は、全長(端面eから端面f)が6.70mm、端面e部の外径が8.70mm、第1の栓体53と第2の栓体55の外径が9.40mm、第1の小径部54と第2の小径部56が8.50mm、第1の大径部57の最大外径が9.80mm、第2の大径部59の最小外径が9.66mm、底部60の外径が12.00mmで切削加工されている。
【0032】
なお、固着具51は、本実施例ではステンレス鋼を用いているが、炭素鋼、アルミニウム、亜鉛等の金属を用いても良い。
【0033】
図9は、カーボン等の炭素基材70に形成された孔の構成例を示す断面図である。この孔は、固着具51の案内(ガイド)となり底部60が嵌め込まれる孔71と固着具51の本体52が嵌め込まれる孔72とが設けられている。
孔71は底部60の外径より大きい孔径で形成され、孔72は第1の大径57の外径より所定値小さい孔径に形成されている。例えば、孔71は孔径が12.50mm、深さ1.00mm、孔72は孔径が9.10mm、深さ6.00mmで形成されている。
【0034】
次に、このような構成において、炭素基材の孔71,72に固着具51を嵌め込む動作について説明する。本嵌め込み動作は、固着具51を加圧して炭素基材70の孔71,72へ嵌め込むものである。
まず、固着具51は炭素基材70の孔71,72に供給(挿入)される。
【0035】
すなわち、固着具51が上方(図上)から加圧され、固着具51の第1の栓体53と第2の栓体55、第1の大径部57、第2の大径部59の進入を可能ならしめ、炭素基材70の孔71の底に底部38の端面fと反対面が達して停止される。
この結果、炭素基材70にはめ込まれた固着具51は、引き抜き方向にも回転トルクにも充分な強度を有して固定される。さらに、底部60により挿入動作を確実に止め、炭素基材70の表面から飛び出さない位置に固定することができる。
【0036】
図10は、第6実施例に係るカーボン等の炭素基材73に形成された孔の例を示す断面図である。炭素基材73には、孔74、孔75と76とからなる二段孔が設けられている。この孔75は第5実施例の孔72と同じ内径であるが、孔76は孔75より内径が小さくなっている。例えば、孔75の孔径は9.10mmで、孔76の孔径は8.50mmである。この孔74,75,76に上記固着具51が嵌め込まれる。この結果、固着具51の第1の栓体53と第2の栓体55が孔72より孔径が小さい孔76に嵌め込まれることにより、第5実施例より強い引き抜き方向の強度を得ることができる。
【0037】
以上説明したように上記発明の実施の形態によれば、引き抜き方向と回転トルクともに充分な強度で嵌め込み固定させる固着具と炭素基材を提供することができる。
【0038】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0039】
1,31,51…固着具、2,32,52…本体、3,53…第1の栓体、33…栓体、4,34,54…第1の小径部、5,55…第2の栓体、6,36,56…第2の小径部、7,35,57…第1の大径部、8,58…第3の小径部、9,37,59…第2の大径部、38,60…底部、20,22,40,43,70,73…炭素基材。
図1
図2
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図10