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  • 特許-電気二重層キャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/68 20130101AFI20230424BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20230424BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230424BHJP
【FI】
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/78
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019088667
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020184588
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100199831
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】青井 芳史
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 晃浩
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181519(JP,A)
【文献】特開平11-340093(JP,A)
【文献】特開平07-161589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/68
H01G 11/70
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電及び放電が可能な電気二重層キャパシタであり、
セパレータと、
前記セパレータの両側に1個ずつ設けられた2個の分極性電極と、
前記2個の分極性電極の外側に1個ずつ設けられた2個の集電体と、
前記2個の分極性電極に接触する電解液と、
を備え、
前記集電体は、通液性補強シートと、該通液性補強シートに積層された膨張黒鉛シートと、を有する電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記集電体は、1層の通液性補強シートと、該通液性補強シートを挟む2層の膨張黒鉛シートとを有して構成される請求項1に記載する電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記通液性補強シートは、紙又は不織布により形成される請求項1又は2に記載する電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電及び放電が可能な電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、静電容量が大きくて多量の電荷を蓄積でき、内部抵抗が低いので急速充放電が可能であり、充放電による劣化が少ないので充放電のサイクル寿命が長いなどの利点から各種の電子機器に使用されている。電気二重層キャパシタは、セパレータの両側に分極性電極が設けられ、セパレータ及び分極性電極に電解液が含浸され、それぞれの分極性電極の外側に集電体が設けられたものである。分極性電極は、静電容量を大きくするよう表面積が大きい多孔質物質(一般には、活性炭)の粒状体がバインダーで結着されたものである。セパレータの両側における分極性電極と電解液の界面で、分極性電極中の電荷と電解液中のイオンが電気二重層を構成することによって、電荷が蓄積される。集電体は、金属箔(一般には、アルミニウム箔)が用いられている。
【0003】
多量の電荷の急速充放電のためには、集電体と分極性電極間の内部抵抗が小さく、かつ安定していることが好ましい。そのために、従来から、種々の技術が提案されている。特許文献1には、集電体と分極性電極との間に、合成ゴム及び粒径の異なる2種類以上の炭素材を含んだ導電性中間層を介在させたものが記載されている。また、特許文献2には、集電体と分極性電極との間に、炭素粒子を含み、かつバインダーとしてエポキシ基を含有しない重合体を含む導電性接着剤層を介在させたものが記載されている。特許文献3には、活性炭より卑でアルミニウムよりも貴な浸漬電位を示す物質からなる層をアルミニウム箔の表面に設けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-136401号公報
【文献】特開2010-171212号公報
【文献】特開2008-91563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、集電体の材質がアルミニウムであった場合、充電時に約2.4V程度以上の高い電圧を負荷すると、集電体の酸化等により集電体が分極性電極から剥離することがあり、負荷できる電圧を低く抑える必要があった。
【0006】
本願発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構造でありながら負荷できる電圧を高めることができる電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電気二重層キャパシタは、充電及び放電が可能な電気二重層キャパシタであり、セパレータと、前記セパレータの両側に1個ずつ設けられた2個の分極性電極と、前記2個の分極性電極の外側に1個ずつ設けられた2個の集電体と、前記2個の分極性電極に接触する電解液と、を備え、前記集電体は、通液性補強シートと、該通液性補強シートに積層された膨張黒鉛シートと、を有する。
【0008】
請求項2に記載の電気二重層キャパシタは、前記電気二重層キャパシタにおいて、1枚の通液性補強シートと、該通液性補強シートを挟む2枚の膨張黒鉛シートとを有して構成される。
【0009】
請求項3に記載の電気二重層キャパシタは、前記電気二重層キャパシタにおいて、前記通液性補強シートは、紙又は不織布により形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡便な構造でありながら負荷できる電圧を高めることができる電気二重層キャパシタを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタの模式的な断面図である。
図2図1の電気二重層キャパシタのキャパシタ構成部を示す模式的な断面図であって、(a)は構成を示すもの、(b)は(a)における下方側の集電体近傍を拡大して示すものである。
図3図1の電気二重層キャパシタの製造の一工程を示す図であり、(a)は活性炭粒子を塗工する工程を示す模式的な断面図であり、(b)は集電体をまとめる工程を示す模式的な断面図である。
図4図1の電気二重層キャパシタを備えるキャパシタモジュールを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明を実施するための形態を、図面に基づいて説明する。図1において、符号30は、本願発明の電気二重層キャパシタを示す。電気二重層キャパシタ30は、キャパシタ構成部10を複数個有する。
【0013】
(構成)
キャパシタ構成部10は、図2(a)に示すように、セパレータ12と、セパレータ12の両側に1個ずつ設けられた2個の分極性電極14、14と、2個の分極性電極14、14の外側に1個ずつ設けられた2個の集電体16、16と、2個の分極性電極14、14に接触する電解液と、を備えて構成されている。
【0014】
セパレータ12は、電解液によって溶融又は腐食しない通液性の材質であれば特に限定されることはなく、例えば、紙又は不織布などが用いられる。セパレータ12の厚みは、例えば、5~40μmである。
【0015】
分極性電極14は、一般的には、多数個の活性炭粒子20(例えば、粒径1~10μm)(図2(b)参照)及びバインダーなどから形成され、導電性を有するものである。活性炭粒子20は、特に限定されるものではないが、廃棄プラスチックから製造されたもの(例えば、廃棄されたPET(ポリエチレンテレフタレート)がフレーク状に加工された後、炭化装置によって炭化されて形成されたもの)を用いることも可能である。バインダーは既知のものを用いることができる。また、導電助剤や分散剤などが、適宜、これらに添加される。また、ナノファイバー等のナノ材料が添加されてもよい。分極性電極14の厚みは、例えば、50~500μmである。
【0016】
電解液は、2個の分極性電極14、14の全体(及びセパレータ12の全体)に含浸されており、それらに接触する。電解液としては、例えば、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEMABF4) /プロピレンカーボネート(PC)溶液が使用される。
【0017】
集電体16は、通液性補強シート26と、通液性補強シート26に積層された膨張黒鉛シート24と、を有する(図2(a)参照)。通液性補強シート26は、テンションなどをかけたときに膨張黒鉛シート24が破損しないように補強するものである。膨張黒鉛シート24の厚みは、例えば、20~100μmであり、通液性補強シート26の厚みは、例えば、20~100μmである。膨張黒鉛シート24と通液性補強シート26とは、例えば、接着剤又は接着シートにより接着されている。通液性補強シート26(及びそれと膨張黒鉛シート24とを接着する接着剤又は接着シート)は、導電助剤等を添加して導電性のものとすることもできる。
【0018】
膨張黒鉛シート24は、例えば、鱗状黒鉛に高温膨張処理を施した後、シート状にプレス加工することにより形成される。膨張黒鉛シート24の厚み方向の熱伝導率は5~20W/(m・K)であり、膨張黒鉛シート24の面方向の熱伝導率は200~350W/(m・K)である。膨張黒鉛シート24の面方向の熱拡散率は、約3cm/s である。膨張黒鉛シート24は、導電性を有し、厚み方向の電気抵抗率は、約1000μΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は、約7μΩ・mである。
【0019】
通液性補強シート26は、通液性を有するものであり、紙又は不織布などから形成される。
(作用及び効果)
【0020】
キャパシタ構成部10では、集電体16において、炭素から成る膨張黒鉛シート24が炭素(活性炭)から成る分極性電極14と接触する。このため、分極性電極14と膨張黒鉛シート24との親和性が良好である。これにより、集電体16がアルミニウムから形成された場合と異なり、高い電圧(例えば、約2.4~約7V)を負荷しても、集電体の酸化等により集電体16が分極性電極14から剥離することがなくなる。
【0021】
また、キャパシタ構成部10では、集電体16を面方向の熱拡散率の高い膨張黒鉛シート24(アルミニウムの面方向の熱拡散率が約0.98cm/sに対し膨張黒鉛シートの面方向の熱拡散率は約3cm/s)から構成しているため、電圧を負荷した時に抵抗成分に生じる熱が迅速に集電体16全体に拡散する。このため、集電体16の一部に熱が集中することはなく、集電体16にかかる熱ストレスが緩和される。
【0022】
電気二重層キャパシタ30では、キャパシタ構成部10が集電体16を共通にしながら多層化されたものである。そのため、集電体16が2層の膨張黒鉛シート24と、2層の膨張黒鉛シート24に挟まれた1層の通液性補強シート26とを有して構成されるものとなっている。
【0023】
電気二重層キャパシタ30は、以下のようにして製造することができる。すなわち、先ず、後に集電体16となる材料シート32の両面に、図3(a)に示すように、バインダーなど(図示しない)を混合した多数個の活性炭粒子20を所定の形状で塗工する。このとき、材料シート32にはテンションがかかるが、それが有する通液性補強シート26により破損が防止される。それから、その塗工部分を乾燥して分極性電極14とし、その後、材料シート32を、その塗工部分と後述する配線部分(未塗工部分)を含む領域ごとにカットする。そして、分極性電極14が両面に付着された複数個の集電体16を、ジグザグ状に折り曲げられたセパレータ12のシートの間に挟み込む。なお、このようにして製造すると、電気二重層キャパシタ30における集電体16の両面には必ず分極性電極14が付着することになり、電気二重層キャパシタ30の端部にはキャパシタ構成部10を構成しない分極性電極14が付着することになる(図1参照)。なお、図1に示す電気二重層キャパシタ30では、最外部にセパレータ12を設けている。
【0024】
複数個の集電体16は、その配線部分(未塗工部分)において、導電性接着剤(導電助剤等を添加して導電性とした接着剤)34により、正極又は負極ごとにまとめられて接着される。このとき、複数個の集電体16の配線部分を液状の導電性接着剤34に漬け込んで(ディップして)その後に乾燥するようにすると、図3(b)に示すように、集電体16同士を電気的に接続できるとともに、集電体16の通液性補強シート26に導電性接着剤34が浸透して集電体16が有する2層の膨張黒鉛シート24、24同士を良好に電気的に接続することができる。このようにしてまとめられた集電体16の配線部分は、後述するキャパシタモジュール36の正極端子44又は負極端子46に接続するか、或いは、そのまま正極端子44又は負極端子46にしてもよい。
【0025】
上記電気二重層キャパシタ30を使用したキャパシタモジュール36を図4に示す。キャパシタモジュール36は、電気二重層キャパシタ30と、電気二重層キャパシタ30を収納するケース38と、を備えて構成されている。ケース38は、内側のケース用膨張黒鉛シート40と、外側のケース用通液性補強シート42と、から構成されている。ケース38には正極端子44及び負極端子46が固定されている。図4において、正極端子44は負極端子46(破線で示している)よりも手前に配置されている。正極端子44及び負極端子46はそれぞれ、集電体16の配線部分を介して、電気二重層キャパシタ30の複数の正極側の膨張黒鉛シート24又は複数の負極側の膨張黒鉛シート24に接続されている。図4においては、集電体16の配線部分は、正極端子44からのものは実線の線で示し、負極端子46からのものは破線の線で示している。ケース用膨張黒鉛シート40は、上記の膨張黒鉛シート24と同じものを用いることができる。ケース用通液性補強シート42は、上記の通液性補強シート26と同じものを用いることができる。
【0026】
キャパシタモジュール36によれば、ケース38の内側がケース用膨張黒鉛シート40から構成されているため、電気二重層キャパシタ30とケース38との隙間48に電解液が侵入しても、ケース38が酸化して腐食することが防止される。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は、図面に記載した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲で、様々な設計変更が可能である。例えば、電気二重層キャパシタ30において、キャパシタ構成部10の数は一切限定されない。
【符号の説明】
【0028】
10:キャパシタ構成部
12:セパレータ
14:分極性電極
16:集電体
18:分極性電極
20:活性炭粒子
24:膨張黒鉛シート
26:通液性補強シート
30:電気二重層キャパシタ
32:材料シート
34:導電性接着剤
36:キャパシタモジュール
38:ケース
40:ケース用膨張黒鉛シート
42:ケース用通液性補強シート
44:正極端子
46:負極端子
図1
図2
図3
図4