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7266801リソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】リソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/44 20060101AFI20230424BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K33/44
A61P3/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021544300
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2020001162
(87)【国際公開番号】W WO2020159159
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0011642
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520177275
【氏名又は名称】バイオグラフェン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOGRAPHENE INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ギョン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ビョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】カン、インソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドンフン
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510650(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0122585(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103845361(CN,A)
【文献】特表2016-529310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/44
A61P 3/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン量子ドットを有効成分として含むリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物であって、
前記グラフェン量子ドットは、長さが1~20nmであり、
前記グラフェン量子ドットは、末端官能基としてカルボキシル基、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシ基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる酸素原子含有官能基を含むものであり、
前記リソソーム蓄積症は、ゴーシェ病、ファブリー病、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ファーバー病、異染性白質ジストロフィー、およびフコシド蓄積症よりなる群から選ばれる1つ以上の疾患である、
薬学的組成物
【請求項2】
前記リソソーム蓄積症は、リソソーム内に蓄積された基質により誘発されるものである、請求項1に記載のリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記グラフェン量子ドットは、代謝されない基質に結合して基質のリソソーム内蓄積を抑制したり、すでに蓄積された基質を分解するものである、請求項1に記載のリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記グラフェン量子ドットは、酸化グラフェンまたは還元酸化グラフェンのナノサイズ断片である、請求項1に記載のリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項5】
薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む、請求項1に記載のリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物に関し、具体的には、グラフェン量子ドットを有効成分として含むリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物に関する。
【0002】
本発明は、2019年01月30日に出願された韓国特許出願第10-2019-0011642号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
リソソーム内に基質が非正常的代謝により蓄積されてもたらされる病気がリソソーム蓄積症(Lysosomal Storage Disorder、LSD)である。リソソーム蓄積症は、蓄積される基質により現れる症状によって、例えばニーマン・ピック病A型、B型およびC型、ゴーシェ病II型、ファブリー病、ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、クラッベ病、異染性白質ジストロフィーなどで現れる。
【0004】
例えば、最もありふれたリソソーム蓄積症と知られたゴーシェ病は、糖脂質であるグルコセレブロシド(またはグルコセレブロシドも知られている)が蓄積されるものであって、痛み、ひどい神経学的合併症、リンパ節および隣接関節の腫脹、腹部膨張、皮膚の茶色化、貧血、低い血小板数値および鞏膜上の黄色脂肪沈着の症状を示す。また、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick’s disease)は、細胞、例えばマクロファージおよびニューロン内のリソソームにスフィンゴミエリン(sphingomyelin)が蓄積される先天性常染色体劣性リソソーム蓄積症であって、神経退行、肝と脾臓の拡大、呼吸困難などの症状を示す。
【0005】
このようなリソソーム蓄積症の発病原因は、その原因がいまだに100パーセント明らかにされていないが、脂質、グリコーゲン、糖タンパク質またはムコ多糖の代謝に必要な単一酵素の欠乏が主な要因であると知られている。例えば、ゴーシェ病は、グルコセレブロシダーゼの欠乏に起因し、ニーマン・ピック病は、酸性スフィンゴミエリナーゼの欠乏に起因する。このようにリソソーム蓄積症と知られた多様な疾患において欠陥酵素がそれぞれ相異なるので、リソソーム蓄積症に一般的に適用できる治療法を探すことは容易ではなかった。
【0006】
これより、リソソーム蓄積に関連した症状を治療するための多くの研究がなされているが、リソソーム蓄積症に共通して予防または治療効果を示す治療剤はまだ開発されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0008】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当該技術分野における通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含むリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明の一具現例として、前記リソソーム蓄積症は、リソソーム内に蓄積された基質により誘発されるものでありうる。
【0011】
本発明の他の具現例として、前記グラフェン量子ドットは、代謝されない基質に結合して基質のリソソーム内蓄積を抑制したり、すでに蓄積された基質を分解することができる。
【0012】
本発明のさらに他の具現例として、前記グラフェン量子ドットは、酸化グラフェンまたは還元酸化グラフェンのナノサイズ断片でありうる。
【0013】
本発明のさらに他の具現例として、前記グラフェン量子ドットは、末端官能基としてカルボキシル基、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシ基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる酸素原子含有官能基を含むことができる。
【0014】
本発明のさらに他の具現例として、前記グラフェン量子ドットは、長さが1~20nmでありうる。
【0015】
本発明のさらに他の具現例として、前記リソソーム蓄積症は、ポンペ病、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1-ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ファーバー病、異染性白質ジストロフィー、ハーラー・シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、サンフィリポ症候群B、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群A、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー症候群、スライ症候群、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、フコシド蓄積症、シアリドーシスおよびシンドラー・神崎病よりなる群から選ばれる一つ以上の疾患でありうる。
【0016】
本発明のさらに他の具現例として、前記リソソーム蓄積症は、ニーマン・ピック病でありうる。
【0017】
本発明のさらに他の具現例として、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含むことができる。
【0018】
また、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、リソソーム蓄積症の予防または治療方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む薬学的組成物の、リソソーム蓄積症の予防または治療用途を提供する。
【0020】
また、本発明は、リソソーム蓄積症の予防または治療に用いられる薬剤を製造するためのグラフェン量子ドットの用途を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による薬学的組成物は、グラフェン量子ドットを含んで、グラフェン量子ドットの表面に生成された負電荷を利用して代謝されない基質に結合して基質がリソソーム内に蓄積されることを抑制したり、すでに蓄積された基質を分解する効果を示すことによって、リソソーム蓄積症を予防したり治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ニーマン・ピック病誘発モデルのグラフェン量子ドットの適用による運動性分析結果である。
図2】ニーマン・ピック病誘発モデルの小脳でグラフェン量子ドットの適用によるプルキンエ細胞の生存分析結果である。
図3】プルキンエ細胞内のグラフェン量子ドットの適用によるコレステロール沈着緩和結果である。
図4】人体由来細胞でグラフェン量子ドットの適用によるコレステロール沈着緩和結果である。
図5】人体由来細胞でグラフェン量子ドットの適用による分裂能改善結果である。
図6】人体由来細胞でグラフェン量子ドットの適用による分化能改善結果である。
図7】グラフェン量子ドットのBBB透過結果である。
図8】グラフェン量子ドットにビオチンを付着する反応図である。
図9】グラフェン量子ドットのBBB透過結果である。
図10】グラフェン量子ドット製造反応を概略的に示すものである。
図11】グラフェン量子ドットとナノグラフェンオキシドのサイズを比較したものである。
図12】グラフェン量子ドットとナノグラフェンオキシドのサイズを比較したものである。
図13】グラフェン量子ドットとナノグラフェンオキシドのRaman spectroscopyの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のリソソーム蓄積症の予防または治療のための薬学的組成物は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む。
【0024】
本願明細書の全体で、「グラフェン」という用語は、複数個の炭素原子が互いに共有結合で連結されて多環式芳香族分子を形成したものを意味し、前記共有結合で連結された炭素原子は、基本反復単位として6員環を形成するが、5員環および/または7員環をさらに含むことも可能である。
【0025】
本願明細書の全体で、「グラフェン量子ドット(graphene quantum dots、GQDs)」という用語は、酸化グラフェンまたは還元酸化グラフェンのナノサイズ断片を意味する。
【0026】
本願明細書の全体で、「酸化グラフェン」という用語は、グラフェンオキシド(graphene oxides)とも呼ばれ、「GOs」と略称され得る。具体的に、グラフェン上にカルボキシル基、ヒドロキシ基、またはエポキシ基などの酸素原子を含有する官能基が結合した構造を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0027】
本願明細書の全体で、「還元酸化グラフェン」という用語は、還元過程を経て酸素原子の割合が減少した酸化グラフェンを意味し、「rGQDs」と略称され得る。
【0028】
本願明細書の全体で、「ナノ酸化グラフェン」という用語は、平均直径が15nm以上であり、平均高さが5nm以上であるナノスケールの酸化グラフェンであって、「nano-GOs」と略称され得る。
【0029】
本発明によるグラフェン量子ドットは、表面が負電荷を示す。具体的に、本発明によるグラフェン量子ドットは、末端官能基としてカルボキシル基、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシ基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる酸素原子含有官能基を含むことができる。特に、負電荷を示すカルボキシル基を主な官能基として含むことができる。
【0030】
本発明において、グラフェン量子ドットは、量子ドットの表面に生成された負電荷を利用して代謝されない基質に結合して基質のリソソーム内蓄積を抑制したり、すでに蓄積された基質を分解することができる。具体的に、グラフェン量子ドットは、量子ドットの表面に生成された負電荷を利用して代謝されずに不溶性基質の形態で蓄積された基質と結合することによって、不溶性基質の特徴を水溶性に変化させ、基質を結合した状態でグラフェン量子ドットがリソソームを抜け出ることによって、リソソーム内基質の蓄積を抑制するだけでなく、すでに蓄積された基質の分解を誘導する。
【0031】
本発明においてリソソーム蓄積症(Lysosomal Storage Disorder、LSD)は、非正常的代謝によりリソソーム内に脂質、グリコーゲン、糖タンパク質、ムコ多糖などの基質が蓄積されることによって発生する疾患を意味する。具体的に、ポンペ病、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1-ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ニーマン・ピック(niemann-pick)病、クラッベ病、ファーバー病、異染性白質ジストロフィー、ハーラー・シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、サンフィリポ症候群B、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、モルキオ症候群A、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー症候群、スライ症候群、α-マンノシドーシス、β-マンノシドーシス、フコシド蓄積症、シアリドーシスおよびシンドラー・神崎病よりなる群から選ばれた一つ以上の疾患でありうるが、これに制限されるものではない。
【0032】
リソソーム内に基質が蓄積される原因には様々なものがありうる。主にリソソーム蓄積症(Lysosomal Storage Disorder、LSD)は、リソソーム機能の欠陥、具体的に、脂質、グリコーゲン、糖タンパク質またはムコ多糖の代謝に必要な単一酵素の欠乏によって細胞のリソソーム内に基質が蓄積されることによって発生する疾患でありうる。または、細胞内物質の輸送システムに関連した遺伝子の異常によって物質輸送システムが崩壊されてリソソーム内に基質が蓄積されることによって発生する疾患でありうる。
【0033】
本発明者らは、基質蓄積の原因に関係なく、リソソーム蓄積に関連した症状を治療できる治療剤を開発するために鋭意研究努力した結果、グラフェン量子ドットを利用して代謝されない基質を分解することによって、リソソーム蓄積症を予防または治療することができることを確認した。本発明は、これに基づくものである。
【0034】
本発明の好ましい具体例において、前記リソソーム蓄積症は、ニーマン・ピック病でありうる。ニーマン・ピック病(Niemann-Pick’s disease)は、細胞、例えばマクロファージおよびニューロンのリソソームにおけるスフィンゴミエリン過剰蓄積を特徴とする先天性常染色体劣性リソソーム蓄積症であって、正常細胞の機能を損傷させる。A型ニーマン・ピック病は、酸性スフィンゴミエリナーゼの欠乏によるものであり、早い進行性の神経退行性疾患であって、典型的に2才~3才に死に至る疾患である。B型ニーマン・ピック病は、肝と脾臓の拡大、および呼吸困難を引き起こし、一般的に成人初期に死亡に至るさらに軽い形態である。このような2つの形態のニーマン・ピック病は、いずれも、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の欠乏と関連しており、総称してニーマン・ピック病またはASM欠乏症(ASMD)と称される。ニーマン・ピック病の他のタイプ、例えばC型は、ASM遺伝子で突然変異を伴わず、ASMの機能に直接的な原因がなく、NPC1およびNPC2遺伝子での突然変異の結果である。ニーマン・ピック病C型において、主な突然変異された遺伝子NPC1のタンパク質生成物は、酵素ではなく、エンドソーム-リソソームシステムでトランスポーターとして細胞を介して大型の水不溶性分子を移す役割をする。また、NPC2遺伝子によりコードされるタンパク質は、リソソームルーメンに存在する小型コレステロール結合タンパク質である。したがって、NPC1およびNPC2遺伝子の突然変異は、細胞内物質の輸送システムを崩壊させてリソソーム内にコレステロールとグリコリピドの蓄積を起こす。
【0035】
本発明のグラフェン量子ドットは、ナノスケールの小さいサイズを示すことによって、血管-脳-障壁(BBB)を容易に通過することができる。
【0036】
このために、本発明によるグラフェン量子ドットは、平均長さが約1nm~20nmでありうる。好ましくは、1nm~10nm、より好ましくは、1nm~5nm、最も好ましくは、1.5nm~4nmでありうるが、これに制限されるものではない。また、高さは、好ましくは、0.5nm~5nm、より好ましくは、0.5nm~3nm、最も好ましくは、1.5nm~2.5nmでありうるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明の一実施例によるGQDの血管-脳-障壁(Blood-Brain-Barrier、BBB)通過実験で、GOとGQDの透過率を測定したとき、GQDの透過率が顕著に上がっていることを確認した(図7)。また、グラフェン量子ドットの体外(In vivo)血管-脳-障壁透過性実験で、GQD-biotinをマウスの腹部に注入後、実験が完了したマウスの小脳にbiotin-antibodyを処置したとき、GQD-biotinを処置したマウスの小脳にGQDを検出することができた(図9)。
【0038】
しかも、本発明のグラフェン量子ドットは、体内に蓄積される問題点も発見されなかった。
【0039】
したがって、本発明によるグラフェン量子ドットは、リソソーム蓄積症の治療剤として有用に使用され得る。
【0040】
本発明の一実施例による、グラフェン量子ドットの適用によるニーマン・ピック病誘発モデルの運動性を分析した実験で、ニーマン・ピック病誘発マウスにGQD(Graphene Quantum Dot)を腹腔内に注射し、運動性を測定したとき、GQDを腹腔に入れた群において運動性の回復を観察することができた(図1)。また、グラフェン量子ドットの適用によるニーマン・ピック病誘発モデルの小脳でプルキンエ(Purkinje)細胞の生存分析を実験した結果、GQDを投与した群においてプルキンエ細胞の生存が増加したことが分かった(図2)。また、プルキンエ細胞内のコレステロール沈着緩和効果を分析した結果、ニーマン・ピック病誘発マウスのプルキンエ細胞で(con)コレステロールが沈着されるのに対し、GQD投与群において沈着症状が緩和されることを観察することができた(図3)。また、誘導神経幹細胞(iNSC)を利用した人体使用の可否を検証した実験で、ニーマン・ピック患者由来線維芽細胞(fibroblast)を利用して誘導神経幹細胞(induced Neural Stem Cell;iNSC)を生産した後、神経細胞にGQDの効果を検定した結果、患者由来iNSCでコレステロールが沈着される現象を観察することができ、同じグラフェン由来物質であるGO(Graphene Oxide)に比べて卓越した効果を示すことを観察した(図4)。また、人体由来細胞で分裂能を測定した実験で、ニーマン・ピック患者由来iNSCで細胞の分裂が顕著に劣っていることを確認し、GQDを適用した場合、分裂能が回復することを観察し(図5)、ニーマン・ピック患者由来iNSCでニューロン細胞への分化が顕著に劣っていることを確認し、GQDを適用した場合、分化能が回復し、GOに比べて格別に向上した分化能を示すことを観察した(図6)。
【0041】
本発明において「薬学的組成物」とは、特定の目的のために投与される組成物を意味する。本発明の目的上、本発明の薬学的組成物は、グラフェン量子ドットを含み、リソソーム蓄積症を治療したり予防するものであり、これに関与する化合物および薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含んで製剤化することができる。本発明による薬学的組成物は、組成物の総重量に対して本発明の有効成分を0.1~50重量%で含む。
【0042】
前記担体、賦形剤および希釈剤としては、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、医薬製剤に製造されるために、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の剤形に製剤化され得るが、一般的に、製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製され得る。
【0044】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記薬学的組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製され得る。また、単純な賦形剤の他、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用され得る。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0045】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、具体的に、非経口投与され得、投与量は、患者の年齢、性別、体重、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度によってその範囲が多様である。本発明による薬学的組成物の1日投与量は、約0.1~100mg/kgであり、好ましくは、1~30mg/kgであり、1日に1回~数回に分けて投与することができる。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、本発明によるグラフェン量子ドット以外に、同一または類似の薬効を示す有効成分を1種以上さらに含むことができる。
【0048】
本発明において「予防(prevention)」とは、本発明によるグラフェン量子ドットの投与によってリソソーム蓄積症を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0049】
本発明において「治療(treatment)」とは、本発明によるグラフェン量子ドットの投与によってリソソーム蓄積症の症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0050】
本発明において「抑制(inhibition)」とは、本発明によるグラフェン量子ドットの投与によってリソソーム蓄積症を未然に防止すること、症状を軽減させること、または治療することを含む意味である。
【0051】
本発明の一様態として、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む、リソソーム蓄積症の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0052】
本発明で使用される用語「改善」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0053】
本発明による健康機能食品組成物は、有効成分を食品にそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用され得、通常の方法によって適宜使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)に応じて適宜決定され得る。前記健康機能食品組成物は、担体、希釈剤、賦形剤および添加剤のうち1つ以上を含んで、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、粉末、カプセル剤および液剤の剤形よりなる群から選ばれた1つに剤形化したことを特徴とする。
【0054】
本発明の組成物に添加できる食品としては、各種食品類、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ剤、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。前記本発明にさらに含まれ得る添加剤としては、天然炭水化物、香味剤、栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、風味剤(合成風味剤、天然風味剤など)、着色剤、充填剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、グリセリン、アルコール、炭酸化剤、および果肉よりなる群から選ばれた1種以上の成分を使用することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。前記香味剤として天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えばレバウディオサイドA、グリチルリチンなど)) および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。
【0055】
上記以外に、本発明による組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【0056】
また、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、リソソーム蓄積症の予防または治療方法を提供する。
【0057】
また、本発明は、グラフェン量子ドットを有効成分として含む薬学的組成物の、リソソーム蓄積症の予防または治療用途を提供する。
【0058】
また、本発明は、リソソーム蓄積症の予防または治療に用いられる薬剤を製造するためのグラフェン量子ドットの用途を提供する。
【0059】
本発明において「個体(individual)」とは、本発明のグラフェン量子ドットが投与され得る対象を言い、本発明の薬学的組成物は、マウス、ラット、犬、猫、馬、牛、ヒトなどの哺乳動物を含む対象に多様な経路で投与され得るが、これに制限されない。
【0060】
本発明で、「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0061】
以下、下記実施例および実験例によって本発明をより詳細に説明しようとする。しかし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0062】
実施例1.グラフェン量子ドット(Graphene Quantom Dot,GQD)の製造
カーボンファイバー(Carbon Fiber)を原材料として熱酸化カッティング(Thermo-oxidative cutting)技術を利用してGQDを生成した(図10)。
【0063】
具体的に、カーボンファイバーを硫酸と硝酸を3:1の割合で混ぜた溶液に入れた後、80℃で24時間加熱した(thermo-oxidation process)。反応が完了した後、透析過程、真空濾過等を通して精製して、Rotovapで最終的なパウダー形態のGQDsを収得した。かくして作られたGQDsは、構造的に非常に多様なサイズ(約1nm~約20nm)を有するナノサイズの粒子形態で収得された。
【0064】
実験例1.グラフェン量子ドットの適用によるニーマン・ピック病誘発モデルの運動性分析
グラフェン量子ドットのリソソーム蓄積症の治療効果を分析するために、ニーマン・ピック病誘発マウスに前記実施例1で製造したGQDを2週~8週間1週間に1回300μgを腹腔内に注射した。ニーマン・ピック誘発マウスは、ニーマン・ピック病で最も核心として作用するNPC1タンパク質の突然変異を模写するためにマウスからNPC1遺伝子をノックアウトして疾患を誘発し、Jackson laboratoriesから購入した。
【0065】
4週、5週間マウスの運動性を予備で測定して、180秒をRota-rodの上で持ちこたえた個体だけを選別して本実験に利用し、その結果を図1に示した。
【0066】
図1に示されたように、6週(1)、7週(2)、8週(3)に運動性を測定したとき、GQDを腹腔に入れた群において運動性の回復を観察することができた。
【0067】
実験例2.グラフェン量子ドットの適用によるニーマン・ピック病誘発モデルの小脳でプルキンエ細胞の生存分析
ニーマン・ピック病誘発マウスの小脳をICC(immunocytochemistry)を利用して染色し、カルビンジン(Calbindin)は、小脳でプルキンエ細胞で特異的に発現するタンパク質であるが、このタンパク質の抗体を利用してプルキンエ細胞を染色することができる。
【0068】
前記ICCで染色したプルキンエ細胞を免疫染色法を利用してプルキンエ細胞で特異的に発現するcalbindinタンパク質を認知する抗体を標識する方法を利用して観察し、細胞の個数は、ImageJソフトウェア(version 1.46r,US National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して定量化し、その結果を図2に示した。
【0069】
図2に示されたように、GQDを投与した群においてプルキンエ細胞の生存が増加したことを観察した。
【0070】
実験例3.プルキンエ細胞内のコレステロール沈着緩和効果の分析
プルキンエ細胞内コレステロール沈着程度を確認するために、フィリピン(Filipin)を利用してコレステロールを染色し、カルビンジン抗体を利用したICC同時染色を通じてプルキンエ細胞の細胞質にコレステロール沈着を観察した。具体的に、細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde;PFA)PBS溶液に室温で15分間固定し、0.25% Triton X-100(Sigma)で10分間処理してフィリピン(Filipin)と共に常温で1時間インキュベーションした後、DAPI(Sigma)染色を5分間行って核を染色した。Filipinの沈着は、共焦点顕微鏡(confocal microscope,Eclipse TE200,Nikon,Japan)を利用して蛍光発現を観察し、発現は、ImageJソフトウェア(version 1.46r,US National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して定量化し、その結果を図3に示した。
【0071】
図3に示されたように、ニーマン・ピック病誘発マウスのプルキンエ細胞で(con)コレステロールが沈着されるのに対し、GQD投与群において沈着症状が緩和されることを確認した。
【0072】
実験例4.誘導神経幹細胞(iNSC)を利用した人体使用可否の検証
4-1.人体由来細胞でコレステロール沈着の分析
Coriell instituteから購入したニーマン・ピック患者由来線維芽細胞(fibroblast-GM03123)を利用して誘導神経幹細胞(induced Neural Stem Cell;iNSC)を生産した後、神経細胞にGQDの効果を検定した。
【0073】
具体的に、実験例3と同一に、フィリピン(Filipin)染色を通じてコレステロールの沈着を観察し、共焦点顕微鏡(confocal microscope,Eclipse TE200,Nikon,Japan)を利用して蛍光発現を観察して発現は、ImageJソフトウェア(version 1.46r,US National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して定量化し、その結果を図4に示した。
【0074】
図4に示されたように、ニーマン・ピック患者由来iNSCでコレステロールが沈着される現象が観察されるのに対し、GQD処理群は、同じグラフェン由来物質であるGO(Graphene Oxide)処理群に比べて卓越した効果を示すことを確認した。
【0075】
4-2.人体由来細胞で分裂能の測定
(1)ニーマン・ピック患者由来iNSCで細胞の分裂が顕著に劣っていることを確認し、GQDを適用した場合、分裂能が回復することを観察した(図5)。分裂能は、神経幹細胞で発現しないが、分化した神経細胞で発現するニューロフィラメント(neurofilament)の発現程度で定義することができる。細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde;PFA)PBS溶液に室温で15分間固定し、0.25% Triton X-100(Sigma)で10分間処理して、透過性を高めた(permeablilized)。固定された細胞は、ブロッキング溶液(blocking solution、5%正常ヤギ血清(normal goat serum))と共に1時間室温でインキュベーションし、一次抗体と4℃で一晩中インキュベーションした。その後、細胞をAlexa Fluor 594(Invitrogen)で標識された二次抗体とインキュベーションし、DAPI(Sigma)染色を5分間行って核を染色した。イメージは、共焦点顕微鏡(confocal microscope,Eclipse TE200,Nikon,Japan)で収集した。発現は、ImageJソフトウェア(version 1.46r,US National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して定量化した。
【0076】
(2)ニーマン・ピック患者由来iNSCでニューロン細胞への分化が顕著に劣っていることを確認し、GQDを適用した場合、分化能が回復することを観察した。同様に、GOに比べて明確に向上した分化能を示すことを確認した(図6)。
【0077】
実験例5.GQDの血管-脳-障壁(Blood-Brain-Barrier、BBB)通過
5-1.試験管内(In vitro)血管-脳-障壁assay
BMEC(brain microvascular endothelial cells)とastrocyteを利用してtranswell systemを利用したin vitro BBB assayを製作することができ、TEER(Transepithelial electrical resistance)を測定してこのassayがBBBを模倣していることを示した。この実験でGOとGQDの透過率を測定したとき、GQDの透過率が顕著に上がっていることを確認した(図7)。
【0078】
5-2.グラフェン量子ドットの体外(In vivo)血管-脳-障壁透過性
GQDにbiotinを付けて追跡できるGQD-biotinを製作した(図8)。
【0079】
全組織免疫染色(whole tissue immunohistochemistry)のために、パラフィンスライドのパラフィンを除去し(deparaffinized)、5%正常ヤギ血清含有PBSで遮断した。断片(sections)をbiotin-1次抗体と一晩中インキュベーションした後、enzyme-linked 2次抗体とインキュベーションし、DAPI染色した。イメージは、共焦点顕微鏡(confocal microscope,Eclipse TE200,Nikon,Japan)で収集した。
【0080】
GQD-biotinをマウスの腹部に注入後、実験が完了したマウスの小脳にbiotin-antibodyを処置したとき、図9に示されたように、GQD-biotinを処置したマウスの小脳でGQDを検出することができた(図9で矢印で表示、CB:cerebellum(小脳)、BS:brain stem(脳幹))。
【0081】
実験例6.GQDの生成とNano-GOの差別性
6-1.Nano-GOの収得
改善されたハンマー方法(Hummer’s method)を通じて汚染されない(pristine)酸化グラフェン(graphene oxides;GOs)を合成した。ナノサイズのGOsを製造するために、収得したGOsの蒸留水溶液(3 mg/ml)を3時間激しく超音波処理し(tipsonicated)、硝酸セルロース膜フィルター(cellulose nitrate membrane filter,0.45μm,GE Healthcare)で真空濾過した。
【0082】
6-2.TEM写真を利用したGQDとNano-GOの長さの差
300メッシュレース状炭素(lacey carbon)がコーティングされた銅グリッド(copper grids)(Ted Pella,Inc.)に上記製造例によって準備した試料を分散させた溶液(10μg/ml)を30分間吸着させた。イメージングに先立って、前記グリッドを数滴の蒸留水で洗浄し、デシケーターで完全に乾燥させた。このように準備した試料を高解像度の透過電子顕微鏡(high resolution-transmission electron microscope;HR-TEM,JEM- 3010,JEOL Ltd.)で分析し、顕微鏡に結合させたGatanデジタルカメラ(MSC-794)でイメージを収集した。
【0083】
その結果、Transmission electron microscopy (TEM)イメージを利用してNano-GOの平均長さは、28.5±9.7nmで測定されたのに対し、GQDは、2.8±1.0nmで測定された(図11)。
【0084】
6-3.AFM写真を利用した2つの物質の高さの差
Atomic force microscopy(AFM)を利用して2つの物質の高さの差を測定したとき、Nano-GOの平均高さは、7.1±1.8nmで測定されたのに対し、GQDは、1.4±0.5nmで測定された(図12)。
【0085】
6-4.Raman spectroscopyの測定結果
Raman spectroscopyの測定結果、Nano-GOとGQDが両方ともgraphene-based materialの特徴であるDとG band (1360 and 1600cm-1)が測定された。Nano-GOの場合、密度があり、広いD bandを示すが、これは、欠陥部位(defect site)を含有するためである(図13)。
【0086】
このような差異点によって、Nano-GOとGQDが生体に使用される場合、異なる結果が現れることを予想することができる。
【0087】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態で実施され得る。
【0088】
本願の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲によって示され、特許請求範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による薬学的組成物は、グラフェン量子ドットを含んで、グラフェン量子ドットの表面に生成された負電荷を利用して代謝されない基質に結合して基質がリソソーム内に蓄積されることを抑制したり、すでに蓄積された基質を分解することによって、リソソーム蓄積症を予防したり治療するのに有用に用いられるものと期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13