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特許7266807生活習慣予測装置、生活習慣予測システム、生活習慣予測方法、生活習慣予測プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】生活習慣予測装置、生活習慣予測システム、生活習慣予測方法、生活習慣予測プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230424BHJP
【FI】
G16H50/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022570215
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2022034376
【審査請求日】2022-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520070806
【氏名又は名称】株式会社CogSmart
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】安田 聡
(72)【発明者】
【氏名】樋口 彰
(72)【発明者】
【氏名】イマンクロヴァ アイジャン
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第7116445(JP,B1)
【文献】特開2021-099608(JP,A)
【文献】特開2018-191722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測装置であって、
前記ユーザの脳の形態に関する画像データまたは前記ユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部と、
前記脳状態画像データ取得部により取得された前記ユーザの脳状態画像データから、前記ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部と、
前記脳体積関連データ抽出部により抽出された前記ユーザの脳の体積に関するデータから、前記脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部と、を含み、
前記相関関係データは、
過去の前記脳の体積に関するデータおよび過去に実測した前記生活習慣指標値データに基づいて作成された前記脳の体積に関するデータと前記生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、
過去の第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1関係式データに基づいて前記第1時点における前記脳の体積に関するデータから前記生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、
前記第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1時点よりも後の第2時点において実測した前記生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、
前記第1差分データと前記第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含み、
前記生活習慣指標値データ導出部は、前記第2関係式データに基づいて、前記脳の体積に関するデータから将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する、生活習慣予測装置。
【請求項2】
前記脳の形態に関する画像データは、前記脳のMRI画像データおよび前記脳のX線CT画像データのうちの少なくともいずれか一つを含み、
前記脳の機能に関する画像データは、前記脳のPET画像データおよび前記脳のSPECT画像データのうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の生活習慣予測装置。
【請求項3】
前記脳の体積に関するデータは、頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータを含む、請求項1または請求項2に記載の生活習慣予測装置。
【請求項4】
前記生活習慣指標値データは、収縮期血圧値データ、拡張期血圧値データ、喫煙量値データ、飲酒量値データおよびBMI値データのうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項1または請求項2に記載の生活習慣予測装置。
【請求項5】
前記第1関係式データおよび前記第2関係式データのうちの少なくともいずれか一方は、線形の関係式を含む、請求項1または請求項2に記載の生活習慣予測装置。
【請求項6】
前記第1差分データ、前記第2差分データ、前記第1関係式データおよび前記第2関係式データのうちの少なくともいずれか一つを記憶する記憶部をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の生活習慣予測装置。
【請求項7】
サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムであって、
前記サーバーは、
外部から前記ユーザの脳の形態に関する画像データまたは前記ユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部と、
前記脳状態画像データ取得部により取得された前記ユーザの脳状態画像データから、前記ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部と、
前記脳体積関連データ抽出部により抽出された前記ユーザの脳の体積に関するデータから、前記脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部と、を含み、
前記相関関係データは、
過去の前記脳の体積に関するデータおよび過去に実測した前記生活習慣指標値データに基づいて作成された前記脳の体積に関するデータと前記生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、
過去の第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1関係式データに基づいて前記第1時点における前記脳の体積に関するデータから前記生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、
前記第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1時点よりも後の第2時点において実測した前記生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、
前記第1差分データと前記第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含み、
前記生活習慣指標値データ導出部は、前記第2関係式データに基づいて、前記脳の体積に関するデータから将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する、生活習慣予測システム。
【請求項8】
将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測方法であって、
前記ユーザの脳の形態に関する画像データまたは前記ユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する工程と、
取得された前記ユーザの脳状態画像データから、前記ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する工程と、
抽出された前記ユーザの脳の体積に関するデータから、前記脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する工程と、を含み、
前記相関関係データは、
過去の前記脳の体積に関するデータおよび過去に実測した前記生活習慣指標値データに基づいて作成された前記脳の体積に関するデータと前記生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、
過去の第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1関係式データに基づいて前記第1時点における前記脳の体積に関するデータから前記生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、
前記第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1時点よりも後の第2時点において実測した前記生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、
前記第1差分データと前記第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含み、
将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する工程は、前記第2関係式データに基づいて、前記脳の体積に関するデータから将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する、生活習慣予測装置が実行する生活習慣予測方法。
【請求項9】
サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられる生活習慣予測システム用プログラムであって、
前記サーバーを、
前記ユーザの脳の形態に関する画像データまたは前記ユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、
前記脳状態画像データ取得部により取得された前記ユーザの脳状態画像データから、前記ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および
前記脳体積関連データ抽出部により抽出された前記ユーザの脳の体積に関するデータから、前記脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させ、
前記相関関係データは、
過去の前記脳の体積に関するデータおよび過去に実測した前記生活習慣指標値データに基づいて作成された前記脳の体積に関するデータと前記生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、
過去の第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1関係式データに基づいて前記第1時点における前記脳の体積に関するデータから前記生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、
前記第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1時点よりも後の第2時点において実測した前記生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、
前記第1差分データと前記第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含み、
前記生活習慣指標値データ導出部は、前記第2関係式データに基づいて、前記脳の体積に関するデータから将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する、生活習慣予測システム用プログラム。
【請求項10】
サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられ、コンピューター読み取り可能な記録媒体であって、
前記サーバーを、
前記ユーザの脳の形態に関する画像データまたは前記ユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、
前記脳状態画像データ取得部により取得された前記ユーザの脳状態画像データから、前記ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および
前記脳体積関連データ抽出部により抽出された前記ユーザの脳の体積に関するデータから、前記脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させ、
前記相関関係データは、
過去の前記脳の体積に関するデータおよび過去に実測した前記生活習慣指標値データに基づいて作成された前記脳の体積に関するデータと前記生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、
過去の第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1関係式データに基づいて前記第1時点における前記脳の体積に関するデータから前記生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、
前記第1時点において実測した前記生活習慣指標値データと、前記第1時点よりも後の第2時点において実測した前記生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、
前記第1差分データと前記第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含み、
前記生活習慣指標値データ導出部は、前記第2関係式データに基づいて、前記脳の体積に関するデータから将来の前記ユーザの前記生活習慣指標値データを導出する、生活習慣予測システム用プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生活習慣予測装置、生活習慣予測システム、生活習慣予測方法、生活習慣予測プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
認知症を予防するためのシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によると、認知症の進行に関して被験者をグループ分けし、被験者が属するグループに基づいて問題を決定し、決定された問題を被験者に提示することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-180933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、健康診断等において、身体に対する種々の検査や測定が行われる。このような検査結果や測定結果を用いて将来的な生活習慣の指標に関するデータを正確に導出することができれば、生活習慣を正確に予測することができる。そうすると、将来、生活習慣病に罹患しないように効果的な予防対策を立てたり、生活習慣の効率的な改善を促すことができ、好ましい。
【0005】
そこで、将来的な生活習慣を正確に予測することができる生活習慣予測装置を提供することを本開示の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った生活習慣予測装置は、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測装置である。生活習慣予測装置は、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部と、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部と、脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部と、を含む。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【発明の効果】
【0007】
上記生活習慣予測装置によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1における生活習慣予測システムの外観を概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示す生活習慣予測システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、相関関係データに含まれる詳細なデータを示す概念図である。
図4図4は、過去の脳の体積に関するデータである頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータと、過去に実測した生活習慣指標値の一つである収縮期血圧値データとの関係を示すグラフである。
図5図5は、第1時点における実測のSBP値データと、第1時点における全脳灰白質の体積の割合に関するデータから第1関係式を用いて予測されたSBP値データとの関係を示すグラフである。
図6図6は、第1差分データと第2差分データとの関係を示すグラフである。
図7図7は、実施の形態1における生活習慣予測システムを用いて将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する際の概略的な工程を示すフローチャートである。
図8図8は、過去の脳の体積に関するデータである頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合のLog10のデータと、過去に実測した生活習慣指標値の一つである収縮期血圧値(SBP値)データとの関係を示すグラフである。
図9図9は、この場合における第1時点における実測のSBP値データと、第1時点における全脳灰白質の体積の割合のLog10のデータから予測されたSBP値データとの関係を示すグラフである。
図10図10は、この場合における第1差分データと第2差分データとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る生活習慣予測装置は、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測装置である。生活習慣予測装置は、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部と、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部と、脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部と、を含む。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0010】
将来的な生活習慣に起因する生活習慣病の発生を予防したり、効率的な生活習慣の改善を図るには、将来の収縮期血圧値データや喫煙量値データといった生活習慣指標値データをできるだけ正確に予測することが望ましい。そこで本発明者らは、以下のように考えた。まず、生活習慣指標値データについて吟味し、ユーザの生活習慣指標値データとユーザの脳の形態に関する画像データまたは脳の機能に関する画像データである脳状態画像データとが相関関係を有することを見出した。そしてさらに、脳の形態に関する画像データや脳の機能に関する画像データから単に将来の生活習慣指標値データを導出するのではなく、実測した生活習慣指標値データと実測前の脳状態画像データに基づいて予測した生活習慣指標値データとの関係性を考慮し、予測した生活習慣指標値データに修正を加えることができれば、より正確に将来のユーザの生活習慣指標値データを導出し、正確な生活習慣の予測ができると考えた。
【0011】
そこで本発明者らは鋭意検討し、ユーザの脳状態画像データと将来の生活習慣指標値データとの関係性において、過去に実測した生活習慣指標値データとその時の脳状態画像データから予測した生活習慣指標値データとのずれ(第1のずれ)、そして過去に実測した生活習慣指標値データとその時より後に実測した生活習慣指標値データとのずれ(第2のずれ)との間に相関関係があることを見出し、この相関関係に基づく修正を予測した生活習慣指標値データに対して行えば、より正確に将来の生活習慣指標値データを導出できると考え、本願発明の構成を着想するに至った。
【0012】
本開示における生活習慣予測装置によると、生活習慣指標値データ導出部は、脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出することとしている。そして、相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。このようにすることにより、上記第1のずれに対応する第1差分データおよび第2のずれに対応する第2差分データを考慮した修正を反映して、ユーザの脳状態画像データから将来の生活習慣指標値データを導出することができる。したがって、上記生活習慣予測装置によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0013】
上記生活習慣予測装置において、脳の形態に関する画像データは、脳のMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像データおよび脳のX線CT(Computed Tomography)画像データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。脳の機能に関する画像データは、脳のPET(Positron Emission Tomography)画像データおよび脳のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。このような脳の形態に関する画像データまたは脳の機能に関する画像データを脳状態画像データとして利用することにより、将来的な生活習慣の正確な予測をより確実に行うことができる。
【0014】
上記生活習慣予測装置において、脳体積に関するデータは、頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータを含んでもよい。このような全脳灰白質の体積の割合に関するデータを用いることにより、さらに正確に将来のユーザの生活習慣指標値データを導出して、将来的な生活習慣を予測することができる。
【0015】
上記生活習慣予測装置において、生活習慣指標値データは、収縮期血圧(SBP)(Systolic Blood Pressure)値データ、拡張期血圧(DBP)(Diastolic Blood Pressure)値データ、喫煙量値データ、飲酒量値データおよびBMI(Body Mass Index)値データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。このような生活習慣指標値は、将来的に罹患する可能性の高い生活習慣病と密接に関連しているため、より効果的な生活習慣の予測に基づく生活習慣の見直し等を促進することができる。
【0016】
上記生活習慣予測装置において、第1関係式データおよび第2関係式データのうちの少なくともいずれか一方は、線形の関係式を含んでもよい。このようにすることにより、第1関係式データおよび第2関係式のうちの少なくともいずれか一方を単純化して、容易に生活習慣指標値データを導出することができる。
【0017】
上記生活習慣予測装置は、第1差分データ、第2差分データ、第1関係式データおよび第2関係式データのうちの少なくともいずれか一つを記憶する記憶部をさらに含んでもよい。このようにすることにより、記憶部に記憶されたデータを利用して、効率的に将来の生活習慣指標値データを導出することができる。
【0018】
本開示に係る生活習慣予測システムは、サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムである。サーバーは、外部からユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部と、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部と、脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部と、を含む。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0019】
このような生活習慣予測システムによれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0020】
本開示に係る生活習慣予測方法は、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測方法であって、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する工程と、取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する工程と、抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する工程と、を含む。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する工程は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0021】
このような生活習慣予測方法によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0022】
本開示に係る生活習慣予測プログラムは、サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられる生活習慣予測システム用プログラムであって、サーバーを、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させる。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0023】
このような生活習慣予測プログラムによれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0024】
本開示に係る記憶媒体は、サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられ、コンピューター読み取り可能な記録媒体であって、サーバーを、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させる。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0025】
このような記憶媒体によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0026】
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本開示の生活習慣予測装置を含む生活習慣予測システムの一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0027】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1における生活習慣予測システムの構成について説明する。図1は、実施の形態1における生活習慣予測システムの外観を概略的に示す図である。図2は、図1に示す生活習慣予測システムの構成を示すブロック図である。
【0028】
図1および図2を参照して、実施の形態1における生活習慣予測システム11は、サーバー13と、ネットワーク12を介してサーバー13に接続可能な端末装置14と、を含む。ネットワーク12は、インターネットでもよいし、イントラネット等、社内向けに構築された閉塞された環境における内部ネットワークであってもよい。ネットワーク12は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0029】
まず、端末装置14の構成について説明する。端末装置14は、本実施形態においては、例えば、スマートフォンといった携帯型の端末装置14が用いられる。もちろん、タブレットPCやノートPCであってもよいし、据え置き型のデスクトップPCであってもよい。端末装置14は、ネットワーク12と接続するための端末装置ネットワークインターフェース部31と、端末装置14自身を制御する端末装置制御部32と、データを記憶する端末装置メモリ33と、ユーザとのインターフェースとなるタッチパネル15と、を含む。端末装置14は、タッチパネル15を介してサーバー13へのデータや情報の入力およびサーバー13から送信されたデータや情報の出力を行う。
【0030】
次に、サーバー13の構成について説明する。サーバー13は、生活習慣予測装置として機能する。サーバー13は、ネットワーク12と接続するためのサーバーネットワークインターフェース部21と、サーバー13自身を制御するサーバー制御部22と、データを記憶する記憶部としてのサーバーハードディスク23と、を含む。サーバー13には、データを表示するディスプレイと、データを入力するキーボードおよびマウス(いずれも図示せず)が接続されており、これらがサーバー13のインターフェースとなる。サーバーハードディスク23は、後述する第1差分データ、第2差分データ、第1関係式データおよび第2関係式データを記憶する。
【0031】
次に、サーバー制御部22の具体的な構成について説明する。サーバー制御部22は、脳状態画像データ取得部41と、脳体積関連データ抽出部42と、生活習慣指標値データ導出部43と、を含む。脳状態画像データ取得部41は、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する。脳体積関連データ抽出部42は、脳状態画像データ取得部41により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する。生活習慣指標値データ導出部43は、脳体積関連データ抽出部42により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。これらの構成については、後に詳述する。
【0032】
なお、本実施形態においては、脳状態画像データ取得部41によって取得される脳状態画像データは、脳の形態に関する画像データである脳のMRI画像データである。また、本実施形態においては、脳体積関連データ抽出部42により抽出される脳の体積に関するデータは、頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータである。
【0033】
ここで、相関関係データの構成について説明する。図3は、相関関係データに含まれる詳細なデータを示す概念図である。図3を参照して、相関関係データ51は、第1関係式データ52、第1差分データ53、第2差分データ54および第2関係式データ55を含む。
【0034】
まず第1関係式データ52について説明する。第1関係式データ52は、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す。
【0035】
図4は、過去の脳の体積に関するデータである頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータと、過去に実測した生活習慣指標値の一つである収縮期血圧値(以下、単に「SBP値」と称する場合もある)データとの関係を示すグラフである。図4に示すグラフは、第1関係式を示している。図4において、横軸は全脳灰白質の体積の割合(%)を示し、縦軸は実測のSBP値(mmHg)を示す。全脳灰白質の体積の割合は、脳のMRI画像データにより抽出されている。すなわち、MRI画像データ中の頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合から算出されている。
【0036】
図4を参照して、過去の全脳灰白質の体積の割合と実測のSBP値データとは、傾きが線βで表され、切片がeで表される相関関係を有する。この相関関係は、線形の関係式であり、以下の式1によって表される。
【0037】
SBP値=全脳灰白質×β+e・・・(1)
【0038】
本実施形態においては、この式(1)のデータが、相関関係データ51に含まれる第1関係式データ52となる。なお、図4に示すグラフにおけるp値は、例えば4.01×10-24である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0039】
次に、第1差分データ53について説明する。第1差分データ53は、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データ52に基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である。すなわち、第1関係式データ52に基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データは、上記した式(1)を用いて傾きβ1、切片e1により算出したSBP値の予測データである。
【0040】
図5は、第1時点における実測のSBP値データと、第1時点における全脳灰白質の体積の割合に関するデータから第1関係式データ52を用いて予測されたSBP値データとの関係を示すグラフである。図5において、横軸は予測のSBP値(mmHg)を示し、縦軸は実測のSBP値(mmHg)を示す。予測のSBP値は、上記した式(1)を用いて算出されている。
【0041】
図5を参照して、実測のSBP値データと予測のSBP値データとは、僅かのずれ(第1のずれ)が生じている。このずれを第1差分データとして算出する。第1差分データは、以下の式(2)によって表される。
【0042】
第1差分データ=予測SBP値-実測SBP値・・・(2)
【0043】
本実施形態においては、この式(2)によって算出されるデータが、相関関係データ51に含まれる第1差分データ53となる。なお、図5に示すグラフにおけるp値は、例えば9.82×10-8である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0044】
次に、第2差分データ54について説明する。第2差分データ54は、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である。
【0045】
すなわち、第2差分データ54=実測SBP値(第2時点)-実測SBP値(第1時点)である。なお、この関係式から、実測SBP値(第2時点)は、実測SBP値(第1時点)+第2差分データ54であることが導出される。
【0046】
次に、第2関係式データ55について説明する。第2関係式データ55は、第1差分データ53と第2差分データ54との関係を表す。
【0047】
図6は、第1差分データ53と第2差分データ54との関係を示すグラフである。図6に示すグラフは、第2関係式を示している。図6において、横軸は第1差分データ53(mmHg)を示し、縦軸は第2差分データ54(mmHg)を示す。
【0048】
図6を参照して、第1差分データ53と第2差分データ54とは、傾きが線βで表され、切片がeで表される相関関係を有する。この相関関係は、線形の関係式であり、以下の式(3)によって表される。
【0049】
第2差分データ=第1差分データ×β+e・・・(3)
【0050】
本実施形態においては、この式(4)のデータが、相関関係データ51に含まれる第2関係式データ55となる。なお、図6に示すグラフにおけるp値は、例えば4.86×10-9である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0051】
次に、このような生活習慣予測システム11を用いて、将来のユーザの生活習慣を予測する場合について説明する。図7は、実施の形態1における生活習慣予測システム11を用いて将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する際の概略的な工程を示すフローチャートである。
【0052】
図7を参照して、まず、脳状態画像データ取得部41は、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する(図7において、ステップS11においてYES、以下、「ステップ」を省略する)。本実施形態においては、脳状態画像データ取得部41は、ユーザの脳の形態に関する画像データとして、脳のMRI画像データを取得する。この場合、例えば、端末装置14から送信された脳のMRI画像データを取得する。次に、脳体積関連データ抽出部42は、取得した脳状態画像データ、この場合、脳のMRI画像データから脳の体積に関するデータを抽出する(S12)。この場合、脳のMRI画像データにおいて、頭蓋内容積のデータを抽出すると共に、全脳灰白質のデータも抽出する。そして、頭蓋内容積のデータに対する全脳灰白質の体積の割合を算出し、脳体積関連データとして抽出する。
【0053】
その後、生活習慣指標値データ導出部43は、抽出されたユーザの脳の体積に関するデータである脳体積関連データから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データ51に基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する(S13)。この場合、生活習慣指標値データ導出部43は、第2関係式データ55に基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。具体的には、例えば、現在におけるユーザの全脳灰白質の割合をMRI画像データから求め、この全脳灰白質の割合から式(1)により生活習慣指標値データであるSBP値データの予測データを導出する。そして、式(2)により得られた第1差分データ53および式(3)、第2差分データは、第1時点での実測のSBP値データと第2時点でのSBP値データとの差分である。そこで、第1時点を現在とし、第2時点を将来とすると、第2時点でのSBP値=第1時点でのSBP値+第2差分データとなる。この関係式より、ユーザの将来のSBP値データの予測データが導出される。すなわち、実測の第1時点のSBP値データおよび実測の第2時点のSBP値データに基づいて第2差分データ54が導出され、この第2差分データ54と第1差分データ53とを利用することにより、将来のユーザのSBP値データが正確に導出される。なお、導出された将来のユーザのSBP値データを利用して、ユーザの将来の生活習慣を予測する。
【0054】
本開示の生活習慣予測システム11によると、上記第1差分データおよび第2差分データを考慮した修正を反映して、ユーザの脳状態画像データから将来の生活習慣指標値データを導出することができる。したがって、上記生活習慣予測システム11によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0055】
また、上記した生活習慣予測装置としてのサーバー13によると、上記第1のずれに対応する第1差分データおよび第2のずれに対応する第2差分データを考慮した修正を反映して、ユーザの脳状態画像データから将来の生活習慣指標値データを導出することができる。したがって、上記生活習慣予測装置によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0056】
上記の実施の形態によれば、サーバー13は、第1差分データ、第2差分データ、第1関係式データおよび第2関係式データを記憶するサーバーハードディスク23を含む。よって、サーバーハードディスク23に記憶されたデータを利用して、効率的に将来の生活習慣指標値データを導出することができる。
【0057】
上記の実施の形態によれば、脳体積に関するデータは、頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合に関するデータを含む。このような全脳灰白質の体積の割合に関するデータを用いることにより、さらに正確に将来のユーザの生活習慣指標値データを導出して、将来的な生活習慣を予測することができる。
【0058】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、脳状態画像データ取得部は、脳の形態に関する画像データとして、脳のMRI画像データを取得することとしたが、これに限らず、脳状態画像データ取得部によって取得される脳の形態に関する画像データは、脳のMRI画像データおよび脳のX線CT画像データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。また、脳状態画像データ取得部によって取得される脳の機能に関する画像データは、脳のPET画像データおよび脳のSPECT画像データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。このような脳の形態に関する画像データまたは脳の機能に関する画像データを脳状態画像データとして利用することにより、将来的な生活習慣の正確な予測をより確実に行うことができる。
【0059】
上記生活習慣予測装置において、生活習慣指標値データは、SBP値データを含むこととしたが、これに限らず、生活習慣指標値データは、拡張期血圧(DBP)(Diastolic Blood Pressure)値データ、喫煙量値データ、飲酒量値データおよびBMI(Body Mass Index)値データのうちの少なくともいずれか一つを含んでもよい。このような生活習慣指標値は、将来的に罹患する可能性の高い生活習慣病と密接に関連しているため、より効果的な生活習慣の予測に基づく生活習慣の見直し等を促進することができる。
【0060】
なお、上記の実施の形態においては、第1関係式データおよび第2関係式データの双方が線形の関係式を有することとしたが、これに限らず、第1関係式データおよび第2関係式データのうちの少なくともいずれか一方は、線形の関係式を含んでもよい。このようにすることにより、第1関係式データおよび第2関係式のうちの少なくともいずれか一方を単純化して、容易に生活習慣指標値データを導出することができる。また、第1関係式データおよび第2関係式データのうちの少なくともいずれか一方は、非線形の関係式データであってもよい。具体的には例えば、一方が線形の関係式データであり、他方が非線形の関係式データであってもよい。非線形の関係式データを用いることにより、関係式を精緻化し、より精度の高い生活習慣指標値データを導出することができる。なお、このような関係式は、深層学習を用いて各パラメータを深度深く解析して、導出することができる。
【0061】
図8は、過去の脳の体積に関するデータである頭蓋内容積に対する全脳灰白質の体積の割合のLog10のデータと、過去に実測した生活習慣指標値の一つである収縮期血圧値(SBP値)データとの関係を示すグラフである。図8において、横軸は全脳灰白質の体積の割合(%)を100倍した値のLog10、すなわち、全脳灰白質の体積の割合(%)の100倍値の常用対数値を示し、縦軸は実測のSBP値(mmHg)を示す。全脳灰白質の体積の割合(%)の常用対数値は、脳のMRI画像データに基づいて導出されている。なお、図8に示すグラフにおけるp値は、例えば8.88×10-24である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0062】
図9は、この場合における第1時点における実測のSBP値データと、第1時点における全脳灰白質の体積の割合のLog10のデータから予測されたSBP値データとの関係を示すグラフである。図9において、横軸は予測のSBP値(mmHg)を示し、縦軸は実測のSBP値(mmHg)を示す。予測のSBP値は、上記した図8に示す相関関係を基に算出したデータである。図9は、上記した図5に対応するグラフである。なお、図9に示すグラフにおけるp値は、例えば5.21×10-8である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0063】
図10は、この場合における第1差分データと第2差分データとの関係を示すグラフである。図10において、横軸は第1差分データ53(mmHg)を示し、縦軸は第2差分データ54(mmHg)を示す。図10は、上記した図6に対応するグラフである。なお、図10に示すグラフにおけるp値は、例えば5.39×10-9である。この値は十分に小さいものであり、信頼性の高いものである。
【0064】
図8図10を参照して、過去の全脳灰白質の体積の割合の100倍値のLog10と実測のSBP値データとは、線形の関係式によって表される相関関係を有する。そうすると、過去の全脳灰白質の体積の割合と、実測のSBP値データとは、非線形の関係式によって表される相関関係を有するといえる。そして、第1差分データおよび第2差分データについても、非線形の関係式によって表される相関関係を有するといえる。
【0065】
本開示に係る生活習慣予測方法は、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測方法であって、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する工程と、取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する工程と、抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する工程と、を含む。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する工程は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0066】
このような生活習慣予測方法によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0067】
本開示に係る生活習慣予測プログラムは、サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられる生活習慣予測システム用プログラムであって、サーバーを、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させる。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0068】
このような生活習慣予測プログラムによれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0069】
本開示に係る記憶媒体は、サーバーを備え、将来のユーザの生活習慣を予測するための生活習慣予測システムに用いられ、コンピューター読み取り可能な記録媒体であって、サーバーを、ユーザの脳の形態に関する画像データまたはユーザの脳の機能に関する画像データである脳状態画像データを取得する脳状態画像データ取得部、脳状態画像データ取得部により取得されたユーザの脳状態画像データから、ユーザの脳の体積に関するデータを抽出する脳体積関連データ抽出部、および脳体積関連データ抽出部により抽出されたユーザの脳の体積に関するデータから、脳の体積に関するデータと生活習慣に関するデータである生活習慣指標値データとの相関関係データに基づき、将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する生活習慣指標値データ導出部として機能させる。相関関係データは、過去の脳の体積に関するデータおよび過去に実測した生活習慣指標値データに基づいて作成された脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
【0070】
このような記憶媒体によれば、将来的な生活習慣を正確に予測することができる。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
11 生活習慣予測システム、12 ネットワーク、13 サーバー、14 端末装置、15 タッチパネル、21 サーバーネットワークインターフェース部、22 サーバー制御部、23 サーバーハードディスク、31 端末装置ネットワークインターフェース部、32 端末装置制御部、33 端末装置メモリ、41 脳状態画像データ取得部、42 脳体積関連データ抽出部、43 生活習慣指標値データ導出部、51 相関関係データ、52 第1関係式データ、53 第1差分データ、54 第2差分データ、55 第2関係式データ。
【要約】
生活習慣予測装置は、脳状態画像データ取得部と、脳体積関連データ抽出部と、生活習慣指標値データ導出部と、を含む。相関関係データは、脳の体積に関するデータと生活習慣指標値データとの関係を表す第1関係式データと、過去の第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1関係式データに基づいて第1時点における脳の体積に関するデータから生活習慣指標値データを予測した予測データと、の差分である第1差分データと、第1時点において実測した生活習慣指標値データと、第1時点よりも後の第2時点において実測した生活習慣指標値データとの差分である第2差分データと、第1差分データと第2差分データとの関係を表す第2関係式データと、を含む。生活習慣指標値データ導出部は、第2関係式データに基づいて、脳の体積に関するデータから将来のユーザの生活習慣指標値データを導出する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10