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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】主桁連続化剛結合工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
E01D21/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023004984
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2023-01-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301077437
【氏名又は名称】朝日エンヂニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512101121
【氏名又は名称】エーイ-ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】徳野 光弘
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154060(JP,A)
【文献】特開2016-094819(JP,A)
【文献】特開2000-045227(JP,A)
【文献】特開2018-059313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と、橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を共通の橋脚上に支持して連結すると共に当該橋脚と剛結合する主桁連続化剛結合工法であって、以下のA乃至Gの工程を有することを特徴とする。
A:上記橋脚の橋座面上に上記各主桁の桁端を支持する枕材をそれぞれ設けると共に、該橋座面上に上記各主桁の桁端と連結する連結条材をそれぞれ立設し、
B:上記各主桁の桁端を上記枕材を介してそれぞれ支持し、
C:上記両主桁の桁端間に形成された遊間の主桁上面側端部において上記両主桁の桁端に亘って連結板を添接し、
D:上記連結板に設けた第一連結孔と、上記各主桁の桁端にそれぞれ設けた第二連結孔のいずれか一方を橋長方向に延びる長孔形状にすると共に、該第一・第二連結孔に連結ボルトの軸部を挿通し該軸部の突出端をナットで仮止めして、上記連結板を上記各主桁の桁端に対して相対的にスライド可能に取り付け、
E:上記各主桁上及び上記各主桁の橋幅方向の並列間隔内、又は上記各主桁の橋幅方向の並列間隔内に橋体コンクリートをそれぞれ打設し、
F:上記ボルトの軸部に仮止めしていたナットを本止めして、上記各主桁の桁端と上記連結板とを摩擦接合によって連結し、
G:上記遊間に連結コンクリートを打設し、上記遊間、上記各主桁の桁端、上記連結板及び上記連結条材をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と上記右径間主桁を連続化すると共に、該連続化した両主桁と上記橋脚とを剛結合する。
【請求項2】
上記A工程において上記枕材の桁支持面を曲面構造又は多角面構造として設けることを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合工法。
【請求項3】
上記連結条材を上記各主桁の桁端に設けた貫挿孔にそれぞれ貫挿し、該連結条材の突出端にナットを螺合し該ナットを上記各主桁の桁端の上面に直接又は支圧材を介して定着することを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合工法。
【請求項4】
上記連結条材を上記各主桁の桁端の橋幅方向の並列間隔にそれぞれ挿入すると共に、該連結条材を上記各主桁の桁端の上面に橋幅方向に架橋載置された支圧材に貫挿し、該連結条材の突出端にナットを螺合することを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複径間桁橋における主桁連続化剛結合工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)に示すように、一般的な複径間桁橋は橋長に応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はPCコンクリート製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間にそれぞれ橋幅方向に並列して架け渡し、共通の橋脚2上に支承6を介して左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aを支持する構成となっている。
【0003】
このような複径間桁橋にあっては、図1(B)に示すように、主桁の自重や床版コンクリートの重量等の死荷重、又は走行車両の重量等の活荷重に基づき、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを連続化した部位において大きな負の曲げモーメント(図1(B)中の「-」のモーメント、すなわち上向きの凸状となるように曲げようとする力)が発生し、当該連続化した部位の連結コンクリート15に亀裂が発生するおそれがある。
【0004】
そこで本願発明者は、下記特許文献1に示すように、左径間主桁と右径間主桁を連続化した部位に対する死荷重に基づく負のモーメントを減殺しつつ、活荷重に基づく負のモーメントにより上記連続化した部位のコンクリートに加わる引張力を連結板に受け持たせることによって、上記した亀裂の問題を有効に解決できる主桁連続化構造を既に開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-154060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の主桁連続化構造によれば、左径間主桁と右径間主桁の連続化部位に対し、死荷重に基づく負のモーメントを減殺しつつ、活荷重に基づく負のモーメントによって加わる引張力を連結板に受け持たせることができ、連結コンクリートにおける亀裂発生を有効に防止することができる。
【0007】
本願発明者は、上記特許文献1の主桁連続化構造を構築するにあたり、連結板と各主桁の桁端との摩擦接合と、各主桁の死荷重に基づく負のモーメントの減殺とを両立することができると共に、各主桁と橋脚とを剛結合することができる画期的な工法を開発し、本発明を想到するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要述すると、本発明に係る主桁連続化剛結合工法は、橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と、橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を共通の橋脚上に支持して連結すると共に当該橋脚と剛結合する主桁連続化剛結合工法であって、以下のA乃至Gの工程を有することを特徴とする。
【0009】
A:上記橋脚の橋座面上に上記各主桁の桁端を支持する枕材をそれぞれ設けると共に、該橋座面上に上記各主桁の桁端と連結する連結条材をそれぞれ立設し、
B:上記各主桁の桁端を上記枕材を介してそれぞれ支持し、
C:上記両主桁の桁端間に形成された遊間の主桁上面側端部において上記両主桁の桁端に亘って連結板を添接し、
D:上記連結板に設けた第一連結孔と、上記各主桁の桁端にそれぞれ設けた第二連結孔のいずれか一方を橋長方向に延びる長孔形状にすると共に、該第一・第二連結孔に連結ボルトの軸部を挿通し該軸部の突出端をナットで仮止めして、上記連結板を上記各主桁の桁端に対して相対的にスライド可能に取り付け、
E:上記各主桁上及び上記各主桁の橋幅方向の並列間隔内、又は上記各主桁の橋幅方向の並列間隔内に橋体コンクリートをそれぞれ打設し、
F:上記ボルトの軸部に仮止めしていたナットを本止めして、上記各主桁の桁端と上記連結板とを摩擦接合によって連結し、
G:上記遊間に連結コンクリートを打設し、上記遊間、上記各主桁の桁端、上記連結板及び上記連結条材をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と上記右径間主桁を連続化すると共に、該連続化した両主桁と上記橋脚とを剛結合する。
これにより、上記左径間主桁と上記右径間主桁に加わる死荷重を適切に減殺しつつ、上記左径間主桁と上記右径間主桁を剛結合すると共に、該剛結合した上記両主桁を上記橋脚と剛結合することができる。
【0010】
好ましくは、上記A工程において上記枕材の桁支持面を曲面構造又は多角面構造として設けることにより、上記各主桁の傾斜や変形に適切に順応し確実に上記各主桁を支持することができる。
【0011】
また、上記連結条材を上記各主桁の桁端に設けた貫挿孔にそれぞれ貫挿し、該連結条材の突出端にナットを螺合し該ナットを上記各主桁の桁端の上面に直接又は支圧材を介して定着する。
又は、上記連結条材を上記各主桁の桁端の橋幅方向の並列間隔にそれぞれ挿入すると共に、該連結条材を上記各主桁の桁端の上面に橋幅方向に架橋載置された支圧材に貫挿し、該連結条材の突出端にナットを螺合する。
これにより、上記各主桁の桁端と上記橋脚とを確実に連結する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る主桁連続化剛結合工法によれば、左径間主桁と右径間主桁に加わる死荷重を適切に減殺しつつ、左径間主桁と右径間主桁を強固に連続化して橋脚と剛結合することができる。よって、連結コンクリートにおける亀裂発生を効果的に防止できると共に、左径間主桁、右径間主桁及び橋脚が剛結合して一体化した強固なラーメン構造を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は一般的な複径間桁橋を概示する側面図、(B)は複径間桁橋に発生する曲げモーメントの分布図である。
図2】H形鋼から成る主桁を用いた実施例における、左径間主桁と右径間主桁を、それぞれ枕材を介して橋脚の橋座面上に支持する工程を示す説明図である。
図3】左径間主桁と右径間主桁の各桁端に連結板を添設し、ボルトによって固定する工程を示す説明図である。
図4】左径間主桁と右径間主桁を連結板で連結した状態を示す説明図である。
図5】主桁の連続化構造を示す橋長方向断面図である。
図6】主桁の連続化構造を平面において断面視する図(図5のA-A線断面図)である。
図7】主桁の連続化構造を示す橋幅方向断面図(図5のB-B線断面図)である。
図8】主桁の連続化構造を示す他の橋幅方向断面図(図5のC-C線断面図)である。
図9】各主桁の桁端の第二連結孔を長孔とした状態を示す説明図である。
図10】桁支持面を多角面形状とした枕材を説明する断面図である。
図11】コンクリートから成る主桁を用いた連続化構造を示す橋長方向断面図である。
図12】コンクリートから成る主桁を用いた連続化構造を示す橋幅方向断面図(図11のD-D線断面図)である。
図13】コンクリートから成る主桁を用いた連続化構造を示す橋幅方向断面図(図11のE-E線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る主桁連続化剛結合工法の最良の実施形態を図1乃至図13に基づき説明する。
【0015】
既述したとおり、図1(A)に示すように、一般的な複径間桁橋は、橋の長さに応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はPCコンクリート製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間にそれぞれ橋幅方向に並列して架け渡す構成となっている。
【0016】
詳述すると、一つの橋脚2の橋座面2a上に対し支承6を介して左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aが支持されており、該左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3a間、具体的には各桁端3aのそれぞれの桁端面3b間に遊間5を形成し、該遊間5により左径間主桁3と右径間主桁3は途切れた構造を有しており、遊間5内に連結コンクリート15を打設して左径間主桁3と右径間主桁3の連続化を図っている。
【0017】
本発明に係る主桁連続化剛結合工法は、図5図8図11図12に示すような主桁連続化構造、すなわち、左径間主桁3と右径間主桁3の連続化を図るために、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを遊間5の主桁上面側端部5aにおいて両桁端3aに亘って延びる連結板7を介し連結すると共に、同遊間5の主桁下面側端部5bにおいて非連結状態にし、遊間5、左右両主桁3の桁端3a及び連結板7を連結コンクリート15内に埋設することにより、死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ、完成後の活荷重に基づく負の曲げモーメントにより当該連結コンクリート15に加わる引張力を連結板7に受け持たせることができる主桁連続化構造を構築するための工法である。加えて、連続化した主桁3と橋脚2とを連結条材19と上記連結コンクリート15を介して剛結合する剛結合構造を構築するための工法である。
【0018】
図2図9は径間主桁3としてH形鋼を用いた例を示しており、H形鋼から成る左径間主桁3と右径間主桁3はそれぞれウェブ3cと該ウェブ3cの上端に沿って伸びる上フランジ3dと同下端に沿って伸びる下フランジ3eとを有する。なお、後述するように、本発明に係る主桁連続化剛結合工法において、主桁3として用いる形鋼形状やコンクリート製主桁3へ設ける形鋼継手の形状は実施に応じ任意である。
【0019】
<枕材設置工程>
本発明に係る主桁連続化剛結合工法においては、図2に示すように、まず左径間主桁3と右径間主桁3を支持するための共通の橋脚2の橋座面2a上に、左径間主桁3の桁端3aを支持する枕材4と、右径間主桁3の桁端3aを支持する枕材4をそれぞれ設ける。
【0020】
枕材4について詳述すると、枕材4はコンクリート製又は金属製又は合成樹脂製であり、図7にも示すように、橋幅方向に連続して配設する。好ましくは、図2等に示すように、枕材4の桁支持面(上面)4aを曲面構造とし、又は図10に示すように、桁支持面4aを多数の微小幅面4bから成る多角面構造として各主桁3の傾きや変形に応じながら支持できる構造とする。
【0021】
また、図2に示すように、上記枕材4を設置した橋座面2a上に、左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aと連結する連結条材19をそれぞれ立設する。
【0022】
連結条材19は、たとえば鉄筋等の鋼棒にて形成し、該鋼棒の下端をコンクリート製橋脚2に一体に埋設して橋座面2aから立ち上げる。又は鋼棒の他、ケーブルの使用が可能である。
【0023】
連結条材19として鋼棒を用いる場合、図5図8図11図12に示すように、コンクリート製橋脚2に埋設した補強鉄筋22の端部を橋座面2aから上方へ突出し、該突出部分を連結条材19として用いることができる。
【0024】
また、連結条材19は、図8図12に示すように、橋座面2a上において、各主桁3の桁端3aの直下から立ち上げると共に、各主桁3の桁端3aの橋幅方向における並列間隔(橋幅方向に隣接する主桁3間の間隔)の直下から立ち上げることができる。又は、橋座面2a上において、各主桁3の桁端3aの直下からのみ、若しくは、各主桁3の桁端3aの橋幅方向における並列間隔の直下からのみ、連結条材19を立ち上げることも実施に応じ任意である。
【0025】
<主桁支持工程>
図2に示すように、既述のように設置した枕材4を介して左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aを下フランジ3eをもって橋脚2の橋座面2a上に支持する。この際に、枕材4の曲面構造又は多角面構造の桁支持面4aによって主桁3の傾き等を吸収することができると共に、角部を有しないので枕材4自身が欠けることを有効に防止することができる。
【0026】
また、既述のように各主桁3の桁端3aの直下から立ち上げた連結条材19を設けた場合には、図8図12に示すように、当該連結条材19を左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aに貫挿する。具体的には、左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aにおける上フランジ3d、下フランジ3eに設けた貫挿孔23に下から上へと貫挿する。該貫挿した連結条材19の突出端へのナット20の螺合については後述する。
【0027】
また、既述のように各主桁3の桁端3aの橋幅方向における並列間隔の直下から立ち上げた連結条材19を設けた場合には、図8図12に示すように、当該連結条材19を上記並列間隔内に挿入する。該挿入した連結条材19の上端へのナット20の螺合については後述する。
【0028】
<連結板添設工程,連結板仮止め工程>
次いで、図3に示すように、左径間主桁3の桁端面3bと右径間主桁3の桁端面3b間に形成される遊間5の主桁上面側端部5aにおいて、両主桁3の桁端3aに亘って連結板7を添設し、両主桁3の桁端3aに穿設した第一連結孔10と、連結板7に穿設した第二連結孔11に連結ボルト12の軸部を挿通し該軸部の突出端をナット13で仮止めして当該連結板7を仮止めする。他方、遊間5の主桁下面側端部5bにおいては非連結状態とする。
【0029】
具体的には、左径間主桁3及び右径間主桁3の両桁端3aの上フランジ3d相互の上面8Aに亘って連結板7を添設し、同様に、両桁端3aの上フランジ3d相互の下面8Bに亘って連結板7を添接する一方、両桁端3aの下フランジ3e相互は非連結状態とする。
【0030】
両桁端3aの上フランジ3d相互の上面8Aには該各上面8Aに重畳する一対の連結板7を間隔9を置き並行に配置すると共に、両桁端3aの上フランジ3d相互の下面8Bにも該各下面8Bに重畳する一対の連結板7を間隔9を置き並行に配置する。これにより、間隔9と遊間5を連通せしめ、後述する連結コンクリート15の打設時に間隔9から空気を抜くことができ、該連結コンクリート15を均密に充填することができる。
【0031】
また、連結板7に第一連結孔10を複数穿設し、両桁端のそれぞれの上フランジ3dに第一連結孔10と対応する第二連結孔11を複数穿設し、第一・第二連結孔10,11を一致させて該第一・第二連結孔10,11内に連結ボルト12の軸部を挿入し該軸部の突出端(雄ねじ端)をナット13で仮止めする。好ましくは、連結ボルト12の軸部を各桁端3aの上フランジ3dの下面8B側から挿入し上面8A側から突出させることにより、ナット締め作業を行い易くする。
【0032】
本発明にあっては、図3に示すように、既述した連結板7に設けた第一連結孔10を橋長方向に延びる長孔形状にするか、又は、図9に示すように、両主桁3の桁端3aに穿設した第二連結孔11を橋長方向に延びる長孔形状にして、第一・第二連結孔10,11内に連結ボルト12が挿入された後も連結板7又は連結ボルト12が橋長方向に位置ズレすることができる。よって連結板7を各主桁3の桁端3aに対して相対的にスライド可能に取り付けることとなる。そのため各主桁3の自重と、後述する橋体コンクリート(床版コンクリート14及びスラブコンクリート24,間詰めコンクリート27)の重量、つまり死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0033】
また、連結ボルト12としては摩擦接合用の高力ボルトを用い、該連結ボルト12の軸部に対するナット13による仮止めは、連結板7と上フランジ3dの上面8A及び連結板7と上フランジ3dの下面8B間に砂利等の異物が混入しない程度に両者を密着させつつ連結板7が各主桁3の桁端3aに対して相対的にスライド可能な程度とする。
【0034】
好ましくは、連結板7を既述のように両主桁3の桁端3aに亘って添接する際に、ジンクリッチプライマー等の塗料によって適切なすべり係数を確保する。一層強固な摩擦接合を実現でき、強固な主桁連続化剛結合構造を実現するためである。
【0035】
<橋体コンクリート打設工程>
次いで、各主桁3上及び各主桁3の橋幅方向の並列間隔内に、又は、各主桁3の橋幅方向の並列間隔内に橋体コンクリートをそれぞれ打設する。橋体コンクリートをそれぞれ打設する。
【0036】
図5図8に示すように、主桁3としてH形鋼等の鋼桁を用いる場合には、左径間主桁3上と右径間主桁3上にそれぞれ床版コンクリート14(橋体コンクリート)を打設すると共に、左径間主桁3の橋幅方向の並列間隔内と右径間主桁3の並列間隔内にそれぞれスラブコンクリート24(橋体コンクリート)を打設する。
【0037】
この工程において、死荷重の増大により各主桁3の桁端3aが変位するが、その変位を連結板7又は連結ボルト12が位置ズレして吸収する。つまり連結板7を連結するための第一連結孔10又は第二連結孔11の長孔形状及び連結ボルト12とナット13の仮止め形態により変位を吸収して負の曲げモーメントの発生を防止する。さらに各枕材4の桁支持面4aの曲面形状又は多角面形状も各主桁3の桁端3aが変位吸収に貢献する。
【0038】
コンクリート打設について詳述すると、橋幅方向に隣接する左径間主桁3における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート24を打設し、連続して左径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。同様に橋幅方向に隣接する右径間主桁3における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート24を打設し、連続して右径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0039】
換言すると、左径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口25’を閉鎖部材で閉鎖し、左径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて上記スペース内にスラブコンクリート24を打設し、連続して左径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0040】
同様に、右径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口25’を閉鎖部材で閉鎖し、右径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて上記スペース内にスラブコンクリート24を打設し、連続して右径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0041】
また、図11図13に示すように、左径間主桁3及び右径間主桁3としてPCコンクリート桁を用いる場合には、各主桁3の桁端3aをH形鋼から成る継手3a’にて構成する、つまりPCコンクリート桁から成る左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3aをそれぞれウェブ3cと該ウェブ3cの上端に沿って延びる上フランジ3dと同下端に沿って延びる下フランジ3eとを有する継手3a’にて形成することができる。なお、図11における3b’は形鋼継手3a’の端面であり、左右の各主桁3における継手端面3b’間に遊間5が形成される。
【0042】
このように、各主桁3としてPCコンクリート桁を用いる場合、枕材設置工程、主桁支持工程、連結板添設工程、連結板仮止め工程においては、既述したH形鋼桁の上下フランジ3d,3eをH形鋼継手3a’の上下フランジ3d,3eに置き換えるだけで適用できるが、本工程においては、図12に示すように、左径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)及び右径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)にそれぞれ間詰めコンクリート27(橋体コンクリート)を打設して、橋幅方向に隣接する複数本の主桁3を一体化する。
【0043】
間詰めコンクリート27は、橋幅方向に隣接する左径間主桁3間の下側に形成される橋長方向に延びる開口25’を閉鎖部材で閉鎖し、橋幅方向に隣接する左径間主桁3間の上側に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて打設する。同様に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3間の下側に形成される橋長方向に延びる開口25’を閉鎖部材で閉鎖し、橋幅方向に隣接する右径間主桁3間の上側に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて打設する。
【0044】
<連結板本止め工程>
既述した橋体コンクリート(床版コンクリート14とスラブコンクリート24又は間詰めコンクリート27)の打設後、連結板仮止め工程にてボルト12の軸部に仮止めしていたナット13を本止めして連結板7を各主桁3の桁端3aに本止めする。これにより、左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3aと連結板7とを摩擦接合により強固に連結することができる。
【0045】
また、図8図12に示すように、各主桁3の桁端3aに貫挿した連結条材19に対しては、その突出端にナット20を螺合して該ナット20を各主桁3の桁端3aの上面に定着する。すなわち、各桁端3aの上フランジ3dの上面8Aから突出する連結条材19の突出端(雄ねじ端)にナット20を螺合し、該ナット20を上フランジ3dの上面8Aに定着する。該上フランジ3dの上面8Aに定着するナット20は、上フランジ3dの上面8Aに直接定着する、又は支圧材21を介して上フランジ3dの上面8Aに定着する。該支圧材21は橋幅方向に並列された桁端3aを橋幅方向に横断するように延在し、各桁端3aの上フランジ3dの上面8Aに架橋載置する。
【0046】
また、左径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)内及び右径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)内に挿入された連結条材19に対しては、その上端を、支圧材21における主桁3間に延在する部分21a、つまり上フランジ3d間に延在する支圧材部分21aに貫挿してナット20を螺合し、該ナット20を支圧材部分21a上面に定着する。
【0047】
<連結コンクリート打設工程>
最後に、型枠を組んで遊間5を通じて橋脚2の橋座面2a上に連結コンクリート15を打設し、遊間5、左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3a、連結板7及び連結条材19を当該連結コンクリート15内に埋設する。
【0048】
好ましくは、連結コンクリート15の打設は上述の如く打設した橋体コンクリート(床版コンクリート14及びスラブコンクリート24,間詰めコンクリート27)が硬化する前に行う。これら連結コンクリート15と橋体コンクリートとを馴染みよく緊密に硬化させるためである。
【0049】
以上説明したように、本発明にあっては、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを遊間5の主桁上面側端部5aにおいて、左径間主桁3と右径間主桁3に橋体コンクリート(床版コンクリート14及びスラブコンクリート24又は間詰めコンクリート27)による死荷重を発生させてから連結板7を介して連結することにより、死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0050】
すなわち、橋体コンクリート打設前は、連結板7を仮止めして左径間主桁3及び右径間主桁3を単純支持する一方、橋体コンクリート打設によって各主桁3の桁端3aが僅かに上方に変位するのを適切に吸収した後に、連結板7を本止めして左径間主桁3及び右径間主桁3を連結できるので、負の曲げモーメントの発生を防止しつつ強固に両主桁3を連続化することができると共に、さらには該連続化した両主桁3を橋脚2と剛結合することができる。
【0051】
そして、連結コンクリート15が硬化した後、舗装26を施せば、図5図8図11図13に示す主桁連続化剛結合構造が完成する。
【0052】
なお、完成後は左径間主桁3及び右径間主桁3に加わる活荷重又は舗装26の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントによって連結コンクリート15の上方部位に引張力が加わるが、該引張力を連結板7に適切に受け持たせ、連結コンクリート15に亀裂が生ずるのを有効に防止する。
【0053】
また、本発明にあっては、橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間には該各桁端3aに穿設した挿通孔17を介して橋幅方向に延びるPCケーブル、無垢の線材等の鋼線材から成る連結線材16を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して連結コンクリート15内に埋設すると共に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に該各桁端3aに穿設した通挿孔17を介して橋幅方向に延びる上記鋼線材から成る他の連結線材16を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して連結コンクリート15内に埋設し主桁連続化剛結合構造を強化することができる。
【0054】
再述すると、連結線材16は、図7に示すように、橋幅方向に並列したH形鋼から成る各主桁3の桁端3aにおけるウェブ3cを貫通するように通挿孔17を介して通挿して橋幅方向両端の主桁3の桁端3aにおけるウェブ3c外側面においてナット18により締結する。また、図12に示すように、PCコンクリートから成る主桁3を用いる場合も、その継手3a’におけるウェブ3cを貫通するように通挿孔17を介して通挿して橋幅方向両端の主桁3の桁端3aにおけるウェブ3c外側面においてナット18により締結することができる。
【0055】
又は橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる管材16’内に緩挿した連結線材16を通挿して連結コンクリート15内に埋設すると共に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる他の管材16’内に緩挿した連結線材16を通挿して連結コンクリート15内に埋設し、連結線材16を緊張することにより連結コンクリート15にプレストレス力を与え補強することができる。
【0056】
さらに、図8図13に示すように、左径間主桁3と右径間主桁3の各ウェブ3cの橋長方向の全長に亘り連結線材16又は連結管材16’内に緩挿した連結線材16を橋長方向に間隔を置いて多数本通挿してスラブコンクリート24又は間詰めコンクリート27にプレストレス力を与え補強することができる。
【0057】
本発明にあっては、連結板7による連結は、既述した各実施例のように必ずしも両主桁3の桁端3a又は継手3a’の各上フランジ3dの上面8A及び下面8Bの両面を連結しなくともよく、該各上フランジ3dの上面8A又は下面8Bの何れかを連結するのみでも良い。
【0058】
また、本発明にあっては、連結板7として板材又はチャンネル材又は平棒材の適用が可能であり、両桁端3a又は両継手3a’の上フランジ3d相互に亘り、且つ、該上フランジ3dに重畳して配置できれば、連結板7として上記以外の部材を用いることを包含する。また、連結板7は引張強度の強い鋼材製の中実板を適用するのが望ましい。
【0059】
また、本発明にあっては、両桁端3a又は両継手3a’の上フランジ3d相互の上面8Aに配置する連結板7を幅広に形成して、上記各実施例のように間隔9を形成せず1つの連結板7を上面8Aに重畳して配置する場合を包含する。
【0060】
更に本発明にあっては、既述したH形鋼から成る主桁3に代えて、T形鋼又はI形鋼又はπ形鋼等の上フランジ3dを有する形鋼から成る主桁3を用い該主桁3の上フランジ3dを連結板7で連結し連続化剛結合構造を構築する場合を包含する。また、既述したH形鋼から成る継手3a’に代えて、T形鋼又はI形鋼又はπ形鋼等の上フランジ3dを有する形鋼から成る継手3a’を用い該継手3a’の上フランジ3dを上記連結板7で連結し連続化剛結合構造を構築する場合を包含する。
【符号の説明】
【0061】
1…橋台、2…橋脚、2a…橋座面、3…主桁(左径間主桁、右径間主桁)、3a…桁端、3a'…継手、3b…桁端面、3b'…継手端面、3c…ウェブ、3d…上フランジ、3e…下フランジ、4…枕材、4a…桁支持面、4b…微小幅面、5…遊間、5a…主桁上面側端部、5b…主桁下面側端部、6…支承、7…連結板、8A…上フランジの上面、8B…上フランジの下面、9…間隔、10…第一連結孔、11…第二連結孔、12…連結ボルト、13…ナット、14…床版コンクリート(橋体コンクリート)、15…連結コンクリート、16…連結線材、16'…管材、17…通挿孔、18…ナット、19…連結条材、20…ナット、21…支圧材、21a…支圧材部分、22…補強鉄筋、23…貫挿孔、24…スラブコンクリート(橋体コンクリート)、25,25'…開口、26…舗装、27…間詰めコンクリート(橋体コンクリート)。
【要約】
【課題】 左径間主桁及び右径間主桁の各桁端と連結板との摩擦接合と、各主桁の死荷重に基づく負のモーメントの減殺とを両立することができると共に、各主桁と橋脚とを剛結合することができる工法の提供。
【解決手段】 本発明に係る主桁連続化剛結合工法は、橋体コンクリート打設前は、連結板を仮止めして左径間主桁及び右径間主桁を単純支持する一方、橋体コンクリート打設によって各主桁の桁端が僅かに上方に変位するのを適切に吸収した後に、連結板を本止めして左径間主桁及び右径間主桁を連結し、連結条材によって各主桁と橋脚とを連結するので、負の曲げモーメントの発生を防止しつつ強固に両主桁を連続化することができると共に、さらには該連続化した両主桁を橋脚と剛結合することができる。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13