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  • 特許-電子制御スロットル制御装置 図1
  • 特許-電子制御スロットル制御装置 図2
  • 特許-電子制御スロットル制御装置 図3
  • 特許-電子制御スロットル制御装置 図4
  • 特許-電子制御スロットル制御装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電子制御スロットル制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20230424BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20230424BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
F02D11/10 F
F02D41/04
F02D45/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019043601
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020148094
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】井野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小黒 龍一
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351033(JP,A)
【文献】特開2008-204125(JP,A)
【文献】特開2003-138965(JP,A)
【文献】特開平11-117771(JP,A)
【文献】特開平10-176579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/10
F02D 41/04
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルバルブの開度をスロットル開度信号として検出するスロットル開度センサと、車両の運転状況によりスロットル開度指令を算出し、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度信号とに基いてスロットルボディの吸気管路に設けたスロットルバルブを目標開度位置に開閉動作させる制御出力指令を算出する電子制御ユニット(ECU)と、前記電子制御ユニット(ECU)から出力される制御出力指令信号によりスロットルバルブを開閉動作させるアクチュエータとを有し、
前記電子制御ユニット(ECU)により算出される前記制御出力指令が、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度信号の差であるスロットル開度偏差から算出したスロットル主制御指令と、前記スロットル開度偏差と係数の積を積分した値であるスロットル補正制御指令から算出される電子制御スロットル制御装置において、
前記スロットル補正制御指令を算出する係数をスロットルバルブの駆動状態により変化させるものであって、スロットルバルブの駆動状態は、
前記スロットル開度偏差および前記スロットル主制御指令が何れも正である場合または前記スロットル開度偏差および前記スロットル主制御指令が何れも負である場合を加速状態、
前記スロットル開度偏差が一定値以下になった場合を開度偏差小状態、
それ以外の場合を減速状態として、
前記係数は前記加速状態では前記減速状態よりも小さく、前記開度偏差小状態では前記減速状態よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする電子制御スロットル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンの吸気系に設置されるスロットルを電子制御システムによって開閉動作させる電子制御スロットル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、車両の燃費や走行性能の向上を図る目的で、エンジン制御を高精度に行うために、スロットルを運転者のアクセル操作により機械的に開閉動作させる代わりに、電子式制御システムを用いて電子的に開閉動作させる電子制御スロットル制御装置が普及しており、例えば特開平5-240073号公報、特開2008-38872号公報などに記載されている。
【0003】
この電子制御スロットル制御装置は、図1に示すように、スロットルバルブ1の開度をスロットル開度信号として検出するスロットル開度センサ2と、車両の運転状況によりスロットル開度指令を算出し、前記スロットル開度指令とスロットル開度信号とに基いてスロットルボディ3の吸気管路4に設けたスロットルバルブ1を目標開度位置に開閉動作させる制御出力指令信号を算出する電子制御ユニット(ECU)5と、前記電子制御ユニット(ECU)5から出力される制御出力指令信号によりスロットルバルブ1を開閉動作させるアクチュエータ6とを有し、図4に示すように前記電子制御ユニット(ECU)により算出される前記制御出力指令信号が、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度検出信号の差であるスロットル開度偏差から算出したスロットル主制御指令と、前記スロットル開度偏差と係数の積を積分した値であるスロットル補正制御指令から算出されるものである。
【0004】
ところが、前記従来の電子制御スロットル制御装置は、スロットル弁が駆動する全期間において積分の演算をするものであり、スロットル開度偏差が大きい時の影響によるスロットル補正制御指令の過大が生じることになる。
【0005】
従って、図5に示すように、スロットル開度指令に対してスロットルがオーバーシュートしやすくなるという問題があった。また、オーバーシュートが発生することでスロットル開度の収束時間も長くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-240073号公報
【文献】特開2008-38872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の電子制御スロットル制御装置が有する問題点に着目してなされたものであり、スロットル開度指令に対してスロットルがオーバーシュートすることがないばかりかスロットル開度の収束時間も短くすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明である電子制御スロットル制御装置は、スロットルバルブの開度をスロットル開度信号として検出するスロットル開度センサと、車両の運転状況によりスロットル開度指令を算出し、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度信号とに基いてスロットルボディの吸気管路に設けたスロットルバルブを目標開度位置に開閉動作させる制御出力指令を算出する電子制御ユニット(ECU)と、前記電子制御ユニット(ECU)から出力される制御出力指令信号によりスロットルバルブを開閉動作させるアクチュエータとを有し、前記電子制御ユニット(ECU)により算出される前記制御出力指令が、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度検出信号の差であるスロットル開度偏差から算出したスロットル主制御指令と、前記スロットル開度偏差と係数の積を積分した値であるスロットル補正制御指令から算出される電子制御スロットル制御装置において、スロットル補正制御指令を算出する係数をスロットルの加速状態と減速状態、スロットル開度偏差小の状態による駆動状態により変化させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記スロットル補正制御指令を算出する係数を、前記スロットル開度偏差およびスロットル補正制御指令が何れも正である場合、前記スロットル開度偏差およびスロットル補正制御指令が何れも負である場合を加速状態、それ以外を減速状態、スロットル開度偏差が一定値以下の時を偏差小状態としてスロットルの駆動状態により変化させると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スロットル開度指令に対してスロットルがオーバーシュートすることがないばかりかスロットル開度の収束時間も短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施の形態および従来の電子制御スロットル制御装置の構成を示す概略図。
図2図1に示した実施の形態における制御出力指令信号の算出手段を示すブロック図。
図3図1に示した実施の形態におけるスロットル開度偏差および補正制御指令の時間的変化を示す関係図。
図4図1に示した従来例における制御出力指令信号の算出手段を示すブロック図。
図5図1に示した従来例におけるスロットル開度偏差および補正制御指令の時間的変化を示す関係図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明である電子制御スロットル制御装置における好ましい実施の形態を示すものであり、全体の構成はほぼ従来例と同じく、スロットルバルブ1の開度をスロットル開度信号として検出するスロットル開度センサ2と、車両の運転状況によりスロットル開度指令を算出し、前記スロットル開度指令とスロットル開度信号とに基いてスロットルボディ3の吸気管路4に設けたスロットルバルブ1を目標開度位置に開閉動作させる制御出力指令信号を算出する電子制御ユニット(ECU)5と、前記電子制御ユニット(ECU)5から出力される制御出力指令信号によりスロットルを開閉動作させるアクチュエータ6とを有し、図2に示すように前記電子制御ユニット(ECU)により算出される前記制御出力指令が、前記スロットル開度指令と前記スロットル開度検出信号の差であるスロットル開度偏差から算出したスロットル主制御指令と、前記スロットル開度偏差と係数の積を積分した値であるスロットル補正制御指令から算出されるものである点については前記従来例と同様である。
【0014】
殊に、前記従来の図4と異なる点は、スロットル補正制御指令の算出時に使用する係数の値をスロットルの駆動状態により変化させる点を変更している点であり、具体的にはスロットル駆動状態が、スロットル開度偏差が正かつスロットル主制御指令値が正のとき、またはスロットル開度偏差が負かつスロットル主制御指令値が負のときをスロットル加速状態、それ以外のときをスロットル減速状態とする。また、スロットル開度が開度指令に近づき、開度偏差が一定値以下となったときを偏差小状態とする。
【0015】
そして、前記3つの状態に従い、積分計算を行う際に使用する係数の値を、加速状態のときは係数を小さく、減速状態の時は中程度の値とし、偏差小状態の時は大きくと変化させて、スロットル補正制御指令を求め、求めた主制御指令とスロットル駆動状態を考慮した補正制御指令から制御出力指令信号を算出し、スロットルを駆動するものである。
【0016】
その結果、図3に示したようにスロットル開度偏差と補正制御指令の時間的変化をスロットルの駆動状態で積分を行う際の係数を切り替えることで、開度偏差が大きいときの補正制御指令への影響を小さくすることができ、これにより補正制御指令の過大が生じないため、スロットルがオーバーシュートしにくくなり、また、開度偏差が小さくなったときに素早く開度指令へと近づけることができるため、スロットル開度の収束時間が短くなる。
【符号の説明】
【0017】
1 スロットルバルブ、2 スロットル開度センサ、3 スロットルボディ、4 吸気管路、5 電子制御ユニット(ECU)、6 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5