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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019165932
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021042820
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】松本 道雄
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 智宏
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119612(JP,A)
【文献】特開2017-227265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0238039(US,A1)
【文献】特開2001-254862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から流体を導入する入口ポートと、下流側へ流体を導出する出口ポートと、前記入口ポートと前記出口ポートとを連通させる通路が設けられるボディと、
前記通路に設けられる弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、
前記ロータに同軸状に接続され、前記弁体と一体変位可能なシャフトと、
前記ボディに固定され、前記ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、
前記ロータと、前記キャンに同軸状に外挿されるステータと、を含むモータと、
前記キャンの内方に位置し、前記ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、
を備え、
前記ねじ送り機構における雄ねじ部のねじ山と雌ねじ部のねじ山との間には第1の隙間が形成されており、
前記第1の隙間の最小値が、前記内部空間と前記通路とを連通するクリアランスの最大値よりも大きいことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ねじ送り機構は、
前記ボディに立設され、前記シャフトを摺動可能に支持し、外周面に前記雄ねじ部が設けられているガイド部と、
前記ロータの回転軸を構成し、内周面に前記雄ねじ部と螺合する前記雌ねじ部が設けられ、前記ガイド部に外挿される態様で支持されている被ガイド部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記雄ねじ部のねじ山の片側面と前記雌ねじ部のねじ山の片側面とを当接させる方向に付勢するスプリングをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ロータの外周面と前記キャンの内周面との間には第2の隙間が設けられており、前記第2の隙間の最小値が前記クリアランスの最大値より大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特に流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。膨張装置は、凝縮器によって凝縮された液冷媒を絞り膨張させて霧状の気液混合冷媒にし、蒸発器へ送出する。膨張装置としては、駆動部にモータを使用して弁開度の精密な制御を実現する電動膨張弁が採用されつつある。このような電動膨張弁は、シャフトの先端に支持された弁体を、ボディに設けられた弁座に着脱させる機構を有する。この着脱に際しては、ねじ送り機構を採用してロータの回転運動をシャフトの並進運動に変換する技術が提案されている。
【0003】
このような電動膨張弁には、ボディに固定されロータを外部雰囲気から隔離するキャンが設けられる。このキャンの内方に形成され、ロータおよびねじ送り機構を含む内部空間には、冷媒が導入される。従来、異物が混入した冷媒がキャンの内部空間に流入することでねじ送り機構の駆動が妨げられるという問題が生じていた。そして、この問題を解決するために、内部空間への流路を狭くして冷媒中に含まれる異物を除去する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-127504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内部空間へ繋がる狭い流路を通過するほどの小さな異物がねじ送り機構のねじ部に入り込む場合がある。電動膨張弁においては、この微小な異物がねじ部にかみこみ、弁体の駆動が阻害されるおそれがあった。このような問題は、電動膨張弁に限らず、種々の電動弁について同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体に混入する異物によって電動弁の駆動が阻害されることを防止または抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は電動弁である。この電動弁は、上流側から流体を導入する入口ポートと、下流側へ流体を導出する出口ポートと、入口ポートと出口ポートとを連通させる通路が設けられるボディと、通路に設けられる弁部を開閉する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、ロータに同軸状に接続され、弁体と一体変位可能なシャフトと、ボディに固定され、ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、ロータと、キャンに同軸状に外挿されるステータと、を含むモータと、キャンの内方に位置し、ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、を備える。ねじ送り機構における雄ねじ部のねじ山と雌ねじ部のねじ山との間には第1の隙間が形成される。第1の隙間の最小値が、内部空間と通路とを連通するクリアランスの最大値よりも大きい。
【0008】
この態様によると、内部空間に導入される異物の大きさがクリアランスよりも小さくなる。そして、第1の隙間をクリアランスよりも大きくすることで、第1の隙間に導入される異物によるねじ部のかみこみを防止または抑制する。したがって、電動弁において弁体の駆動が阻害されるのを防止または抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体に混入する異物によって電動弁の駆動が阻害されるのを防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、電動弁ユニットの構造を表す断面図である。
図2図2は、電動弁の開弁状態を表す断面図である。
図3図3は、図1におけるA部を拡大した断面図である。
図4図4は、図1におけるB部を拡大した断面図である。
図5図5は、図1におけるC部を拡大した断面図である。
図6図6は、図1におけるX部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態における電動弁ユニットUの構造を表す断面図である。電動弁ユニットUは、電動弁1と配管ボディ2を含む。電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その冷凍サイクル膨張弁として機能する。
【0013】
電動弁1は、弁本体200にモータユニット300に組み付けて構成される。弁本体200は、弁部202を収容したボディ220を有する。ボディ220は、「バルブボディ」として機能する。ボディ220は、円筒状の第1ボディ240と円筒状の第2ボディ260とを同軸状に組み付けて構成される。
【0014】
配管ボディ2の上半部に、第1ボディ240が配設されている。第1ボディ240の下半部に、第2ボディ260が配設されている。第2ボディ260は、配管ボディ2の内方に位置する。第2ボディ260内部に弁部202が収容される。第1ボディ240の上部中央には、ガイド部材242(ガイド部)が立設されている。ガイド部材242は金属材料からなる切削加工品であり、ガイド部材242の軸線方向中央部の外周面には雄ねじ部244が形成されている。ガイド部材242の下端部は大径となっており、その大径部245が第1ボディ240の上部中央に同軸状に固定されている。第1ボディ240の内方には、モータユニット300のロータ320から延びるシャフト246が挿通されている。シャフト246の下端部は、弁部202を構成する弁体204を兼ねている。ガイド部材242はその内周面によりシャフト246を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ320の回転軸326(被ガイド部)を回転摺動可能に支持する。
【0015】
配管ボディ2の一方の側部には導入ポート222が設けられ、他方の側部には導出ポート224が設けられている。導入ポート222は流体を導入し、導出ポート224は流体を導出する。導入ポート222と導出ポート224は第2ボディ260内に形成される内部通路によって連通する。
【0016】
第2ボディ260の側部には入口ポート262が設けられ、底部には出口ポート264が設けられている。入口ポート262は導入ポート222と連通し、出口ポート264は導出ポート224と連通する。入口ポート262と出口ポート264は、弁室266を介して連通している。第2ボディ260の内方には弁孔208が設けられ、その上端開口端縁により弁座210が形成されている。弁体204が弁座210に接離することで、弁部202の開度が調整される。
【0017】
弁室266の内部では、シャフト246の下部にEリング212が嵌着されている。Eリング212の上方にはばね受け214が設けられる。ガイド部材242の下方にもばね受け248が設けられ、2つのばね受け214、248の間には弁体204を弁部202の閉弁方向へ付勢するスプリング216が弁体204と同軸状に挿入されている。本実施形態においては、シャフト246の下端部が弁体204を兼ねているから、スプリング216はシャフト246をも閉弁方向へ付勢する。
【0018】
次に、モータユニット300の構造を説明する。
モータユニット300は、ロータ320とステータ340とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット300は有底円筒状のキャン302を有し、そのキャン302の内方にロータ320、外方にステータ340を配置して構成される。
【0019】
ステータ340は、積層コア342とボビン344とを含む。積層コア342は、板状のコアが軸線方向に積層されて構成される。ボビン344には、コイル346が巻回されている。コイル346と、そのコイル346が巻回されているボビン344とをまとめて「コイルユニット345」という。コイルユニット345は、積層コア342に組みつけられている。
【0020】
ステータ340は、モールド成形によってケース400と一体に設けられている。ケース400上端開口部には、蓋体440がインロー嵌合されている。ケース400と蓋体440とに囲まれた空間Sには、プリント配線基板420が配設される。コイル346は、プリント配線基板420と接続されている。ケース400には端子カバー部402が設けられており、外部電源からの電力をプリント配線基板420へと供給するための端子422を保護する。
【0021】
ロータ320は、円筒状のロータコア322と、ロータコア322の外周に沿って設けられたマグネット324を備える。ロータコア322は回転軸326に組み付けられている。マグネット324は、その円周方向に複数極に磁化されている。
【0022】
回転軸326は、金属材料からなる切削加工品である。回転軸326は、金属材料を有底円筒状に一体成形して得られる。回転軸326は、その開口端を下にしてガイド部材242に外挿されている。回転軸326の内周面には雌ねじ部328が形成され、ガイド部材242の雄ねじ部244と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構によって、ロータ320の回転運動が軸線方向への並進運動に変換される。ねじ送り機構における雌ねじ部328と雄ねじ部244の噛合箇所を「螺合部」という。
【0023】
上述のとおり、スプリング216は弁体204およびシャフト246を閉弁方向へ付勢する。開弁時においては、このスプリング216によるシャフト246への閉弁方向の付勢力によって、雄ねじ部244のねじ山の上面と雌ねじ部244のねじ山の下面とが当接する。したがって、雄ねじ部244と雌ねじ部328との間に生じるスラスト方向のガタを抑制できる。
【0024】
シャフト246の上部は縮径され、その縮径部が回転軸326の底部を貫通している。縮径部の先端には、環状のストッパ330が固定されている。一方、縮径部の基端と回転軸326の底部との間には、シャフト246を下方(閉弁方向)に付勢するバックスプリング332が介装されている。このような構成により、弁部202の開弁時にはストッパ330が回転軸326の底部に係止される態様でシャフト246がロータ320と一体変位する。一方、弁部202の閉弁時には、弁体204が弁座210から受ける反力により、バックスプリング332が押し縮められる。この時のバックスプリング332の弾性反力により弁体204を弁座210に押し付けることができ、弁体204の着座性能(閉弁性能)を高められる。
【0025】
第2ボディ260と配管ボディ2との間、第1ボディ240と配管ボディ2との間にはそれぞれ、環状のシール部材206、201が介装されている。この構成により、配管ボディ2と第2ボディ260との間のクリアランスおよび第1ボディ240と配管ボディ2との間のクリアランスを介した流体の漏れが防止される。また、第1ボディ240とケース400との間には、環状のシール部材203が介装されている。この構成により、第1ボディ240とケース400との間のクリアランスを介した外気(水分等)の侵入が防止される。
【0026】
第1ボディ240の底部及び大径部245は、弁本体200の内部とモータユニット300の内部とを区画する。キャン302の内面、第1ボディ240の底部及び大径部245により形成される内部空間Rには、後述する流路を介して流体の圧力が導入される。
【0027】
図2は、電動弁1の全開状態を表す断面図である。
電動弁1は、回転軸326の並進運動を規制するストッパ機構を有する。ストッパ機構は、回転軸326の開口端部の一部、ガイド部材242の外周面に設けられる第1突部250、第2突部252およびストッパ部材500によって構成される。
回転軸326は、下部に内径が拡径された拡径部334を有する。拡径部334は、雌ねじ部328の直下から回転軸326の下端まで延在する。回転軸326の開口端部がロータ320の下方に突出し、その外周面に沿って環状の凹部336が設けられる。凹部336にはストッパ部材500が嵌合される。
【0028】
ガイド部材242の外周面には、雄ねじ部244のやや下方に第1突部250が突設されている。第1突部250の更に下方には、第2突部252が突設されている。第1突部250はガイド部材242の外周面から半径方向外向きに突出する態様で設けられる。第1突部250の高さは第2突部252の高さより低く設定されている。第1実施形態においては、第2突部252は大径部245の上端部を形成する。第1突部250と第2突部252は、ガイド部材242に一体成形される。第1突部250は回転軸326の並進運動における上死点を規定し、第2突部252は下死点を規定する。
【0029】
モータユニット300の駆動によりねじ送り機構が作動し、回転軸326が上方へ動き始めると、シャフト246がロータ320と一体変位する。この変位により、弁体204が弁座210から離脱する。これにより、導入ポート222、入口ポート262、弁室266に導入されていた流体が出口ポート264、導出ポート224の順に通過して流出する。
【0030】
図1に示すとおり、閉弁状態においては回転軸326の開口端部の一部が大径部245の上端部(図2における第2突部252)と当接する。一方、図2に示すとおり、全開状態においてはストッパ部材500の一部が第1突部250と当接する。この二つの当接態様によって回転軸326の下方(閉弁方向)および上方(開弁方向)への並進運動を規制する。
【0031】
図3は、図1におけるA部拡大図である。
図1に関連して説明したとおり、ガイド部材242はシャフト246を摺動可能に支持する。したがって、ガイド部材242とシャフト246との間にはクリアランスCl1が存在する。ガイド部材242の内外を連通するように均圧孔243が設けられている。均圧孔243は、ガイド部材242の径方向に開口する態様で設けられ、内部空間Rに流体の圧力を導入する。流体は、弁室266からクリアランスCl1、均圧孔243を介して内部空間Rへ導入される。
【0032】
図4は、図1におけるB部拡大図である。
ねじ送り機構を正常に機能させるために、雄ねじ部244と雌ねじ部328との間には「バックラッシュ」とよばれる隙間を設ける必要がある。雄ねじ部244と雌ねじ部328のねじ山間には隙間Cl2(第1の隙間)が形成される。流体は、ガイド部材242と回転軸326との間や隙間Cl2に流入する。なお、図4に示すとおり、閉弁時において隙間Cl2は雌ねじ部328のねじ山の下面と雄ねじ部244のねじ山の上面との間に形成される。開弁時においては、隙間Cl2は雄ねじ部244のねじ山の下面と雌ねじ部328のねじ山の上面との間に形成される。すなわち、雄ねじ部244のねじ山の片側面と雌ねじ部328のねじ山の片側面とが当接する。そして、雄ねじ部244のねじ山と雌ねじ部328のねじ山との間において、互いの当接面とは反対側の面の間に隙間Cl2が形成される。
【0033】
図5は、図1におけるC部拡大図である。
図1に関連して説明したとおり、ロータ320は、キャン302の内方において軸線方向へ移動する。この移動を可能とするために、マグネット324の外周面とキャン302の内周面との間には隙間Cl3(第2の隙間)が形成される。内部空間Rに導入された流体は、隙間Cl3に流入する。
【0034】
図6は、図1におけるX部拡大図である。図6において、矢印は流体が流れる方向を示す。
流体は弁室266からクリアランスCl1、均圧孔243をとおり、内部空間Rに導入される。内部空間Rにおいて、流体は隙間Cl2、Cl3にも流入する。本実施形態においては、隙間Cl2をクリアランスCl1より大きく、かつ、隙間Cl3より小さく設定する。すなわち、隙間Cl3をクリアランスCl1より大きく設定する。
【0035】
実際には、シャフト246および回転軸326はガイド部材242に対して偏心されうる。本実施形態においては、シャフト246および回転軸326が偏心された場合でも、隙間Cl2が常にクリアランスCl1より大きく、かつ、隙間Cl3より小さくなるように設定する。すなわち、隙間Cl3を常にクリアランスCl1より大きく設定する。
【0036】
より詳細には、シャフト246および回転軸326は、ガイド部材242に対して片寄せされうる。本実施形態においては、隙間Cl2の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく、かつ、隙間Cl3の最小値より少なく設定する。すなわち、隙間Cl3の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく設定する。ここでいうクリアランスCl1の最大値とは、シャフト246がガイド部材242の径方向片側に寄せられたときの反対側のクリアランスCl1の大きさである。また、隙間Cl2の最小値とは、回転軸326がガイド部材242の径方向片側に寄せられたときの寄せられた側における隙間Cl2の大きさを意味する。また、隙間Cl3の最小値とは、回転軸326がガイド部材242の径方向片側に寄せられたときの寄せられた側における隙間Cl3の大きさを意味する。
【0037】
隙間Cl2の最小値がクリアランスCl1の最大値より大きければ、シャフト246及び回転軸326のガイド部材242に対する偏心態様が如何なるものであっても(偏心が生じない場合も含め)隙間Cl2が常にクリアランスCl1より大きいこととなる。同様に、隙間Cl3の最小値がクリアランスCl1の最大値より大きければ、隙間Cl3が常にクリアランスCl1より大きいこととなる。
【0038】
クリアランスCl1から内部空間Rへ導入された流体には、クリアランスCl1の最大値より大きな異物(コンタミ)が含まれない。また、隙間Cl2より小さな異物は隙間Cl2に挟み込まれたとしても、雄ねじ部244と雌ねじ部328とをロックさせるおそれが少ない。隙間Cl2の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく設定することで、隙間Cl2に異物が挟まりねじ送り機構が機能しなくなる可能性を低減できる。
【0039】
また、本実施形態においては、隙間Cl3の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく設定する。隙間Cl2と同様に、隙間Cl3より小さな異物は隙間Cl3においてロータ320とキャン302とをロックさせるおそれが少ない。隙間Cl3の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく設定することで、隙間Cl3に異物がはさまり、ロータ320の作動に支障をきたす可能性を低減できる。
【0040】
図4に関連して説明したとおり、ねじ送り機構が正常に機能するためにはバックラッシュを設ける必要がある。しかしながら、このバックラッシュは電動弁1の開閉を切り替える際にガタを生じさせ、電動弁1の精度低下を招く可能性がある。
この点、本実施形態の電動弁1においては、隙間Cl2の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きくなるように設定しているが(図6参照)、図1に関連して説明したとおり、電動弁1にはスプリング216が設けられている。このスプリング216はシャフト246を閉弁方向へ付勢する。この付勢力によって、雄ねじ部244と雌ねじ部328との間に生じるガタを抑制できる。したがって、電動弁1の精度低下を防止または抑制できる。
【0041】
なお、隙間Cl3の最小値については、クリアランスCl1の最大値より大きく設定するものの、できるだけ小さいことが好ましい。すなわち、ステータ340とロータ320の距離が小さいほど、ステータ340がロータ320へ与えるトルクが大きくなる。このトルクが大きいほど、ロータ320が与えられる推力は大きくなる。ロータ320の軸線方向への運動を効率的に行うためには、ステータ340とロータ320との距離をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、隙間Cl2の最小値をクリアランスCl1の最大値より大きく設定する。この構造によって、隙間Cl2に導入される流体には、クリアランスCl1の最大値より小さな異物しか混入されなくなる。したがって、隙間Cl2に異物が挟まりねじ送り機構の機能が阻害される可能性を低減できる。
【0043】
本実施形態によれば、隙間Cl3の最大値をクリアランスCl1の最小値より大きく設定する。これにより、隙間Cl3に異物が挟まり、ロータ320の作動に支障をきたす可能性を低減できる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0045】
上記実施形態では、弁体が弁座に着脱し、閉弁状態においては弁部が完全閉となる電動弁を説明した。変形例においては、いわゆるスプール弁のように弁体が弁孔に挿抜され、閉弁状態において流体の微小漏れを許容するものであってもよい。
【0046】
上記実施形態では、上記電動弁を電動膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。
【0047】
上記実施形態では、シャフトを摺動可能に支持するガイド部材に雄ねじ部を設け、ロータの回転軸に雌ねじ部を設けている態様を説明した。変形例においては逆に、ガイド部材に雌ねじ部を設け、ロータの回転軸に雄ねじ部を設けてもよい。すなわち、ボディに立設され、シャフトを摺動可能に支持し、内周面に雌ねじ部が設けられているガイド部と、ロータの回転軸を構成し、外周面に雌ねじ部と螺合する雄ねじ部が設けられ、ガイド部に内挿される態様で支持される被ガイド部とによりねじ送り機構を構成してもよい。ボディと一体のガイド部と、ロータの回転軸およびシャフトと一体の被ガイド部とによりねじ送り機構を構成し、それらガイド部および被ガイド部の一方を他方に挿通してもよい。その一方に雄ねじ部を設け、他方に雌ねじ部を設けてもよい。いずれの態様であっても、内部空間にねじ送り機構が位置する。
【0048】
上記実施形態では、弁室から内部空間へ流体が導入される流路として、クリアランスCl1と均圧孔243を説明した。変形例においては、シャフトの摺動箇所以外にも弁室から内部空間へ流体を導入するクリアランスが設けられてもよい。この場合には、隙間Cl2の大きさをいずれのクリアランスよりも大きく設定する。
【0049】
上記実施形態では、隙間Cl2の最小値が隙間Cl3の最小値より小さい態様を説明した。変形例においては、隙間Cl2の最小値が隙間Cl3の最小値と同程度の大きさであってもよい。また、隙間Cl2の最小値が隙間Cl3の最小値より大きいとしてもよい。いずれの場合であっても、隙間Cl2の最小値がクリアランスCl1の最大値より大きければ、ねじ送り機構の機能が阻害される可能性を低減できる。また、隙間Cl3の最小値がクリアランスCl1の最大値より大きければ、ロータの作動に支障をきたす可能性を低減できる。
【0050】
上記実施形態では、シャフトとガイド部材との間にシャフトと同軸状のスプリングを設け、雄ねじ部のねじ山の上面と雌ねじ部のねじ山の下面とを当接させるようにスプリングがシャフトを付勢する態様とした。スプリングについては、雄ねじ部のねじ山の下面と雌ねじ部のねじ山の上面とを当接させる方向の付勢力を生じさせるものであればよい。すなわち、スプリングは、雄ねじ部のねじ山の片側面と雌ねじ部のねじ山の片側面とを当接させる方向の付勢力を生じさせるものであればよい。また、その配設位置は任意としてよい。たとえば、キャンの底部における内周面と回転軸の上端面との間に設けてもよい。
【0051】
上記実施形態では、弁体とシャフトが一体成形されている態様を説明した。変形例においてはこれに限らず、弁体とシャフトとが別部材であり、一体変位可能であってもよい。この場合には、弁体とシャフトとが構造的に一体であってもよい。あるいは、弁体とシャフトとが一体変位可能であり、かつ、相対変位可能であってもよい。例えば、特開2016-205584号公報に記載の電動弁のように、開弁時においては弁体とシャフトとが一体変位可能であって、閉弁作動時においては相対変位可能であってもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1ボディ240と第2ボディ260を電動弁のボディ(バルブボディ)とし、モータユニット300を第1ボディ240および第2ボディ260に固定させて「電動弁」として例示した。変形例においては、配管ボディ2、第1ボディ240および第2ボディ260を電動弁のボディとし、モータユニット300をこれら3つのボディに固定する構成を電動弁としてもよい。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電動弁、2 配管ボディ、200 弁本体、202 弁部、203 シール部材、204 弁体、206 シール部材、208 弁孔、210 弁座、212 Eリング、214 ばね受け、216 スプリング、220 ボディ、222 導入ポート、224 導出ポート、240 第1ボディ、242 ガイド部材、243 均圧孔、244 雄ねじ部、245 大径部、246 シャフト、248 ばね受け、250 第1突部、252 第2突部、260 第2ボディ、262 入口ポート、264 出口ポート、266 弁室、300 モータユニット、302 キャン、320 ロータ、322 ロータコア、324 マグネット、326 回転軸、328 雌ねじ部、330 ストッパ、332 バックスプリング、334 拡径部、336 凹部、340 ステータ、342 積層コア、344 ボビン、345 コイルユニット、346 コイル、400 ケース、402 端子カバー部、420 プリント配線基板、422 端子、440 蓋体、500 ストッパ部材、Cl1 クリアランス、Cl2 隙間、Cl3 隙間、R 内部空間、S 空間、U 電動弁ユニット。
図1
図2
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図6