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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】圧送水洗便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
E03D11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019170711
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046738
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505244349
【氏名又は名称】株式会社アイ・ファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】新保 昌貴
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-009434(JP,A)
【文献】特開2007-046307(JP,A)
【文献】特開2017-128974(JP,A)
【文献】特開2017-115480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール部と、
前記ボール部の底部側に連結した圧送ポンプと、
前記圧送ポンプに連結した排水管と、
前記排水管の途中に設けた通気部材と、
洗浄水を供給するための給水管とを備え、
前記給水管から供給される洗浄水を前記ボール部の洗浄水と前記通気部材の洗浄水とに分流する分水部材を有し
記分水部材は分水室を有し、
前記分水室にボール部洗浄用のボール部給水口と、通気部材洗浄用の通気部材給水口とを有していることを特徴とする送水洗便器。
【請求項2】
前記分水室は前記ボール部給水口に向けてと、前記通気部材給水口に向けて水流を分流するためであって、分水室に突設した分流壁部を有していることを特徴とする請求項記載の圧送水洗便器。
【請求項3】
前記通気部材は水流にて浮上する弁体と、前記弁体が浮上して当接することで前記排水管から排水逆流するのを防止する逆流防止弁座と、前記弁体が下降して通気部を形成するように支持する通気弁座とを有することを特徴とする請求項に記載の圧送水洗便器。
【請求項4】
前記ボール部は洗浄水がボール部の周壁部全体に向けて流れるように段差状の流水部を形成してあることを特徴とする請求項に記載の圧送水洗便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧送装置を有する水洗式の便器に関する。
特に設置が容易で、社会福祉施設,病院,各家庭におけるポータブルトイレとして、各種イベント会場,建築・建設現場,リフォーム時等の仮設トイレとして、更には旅館等における吐瀉物処理に使用する衛生機器等の各種衛生機器としても使用できる圧送型の水洗便器に係る。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に圧送装置付き衛生機器を提案している(特許文献1)。
この種の圧送式の水洗便器であっては、便器の使用後に汚物等を下水等に圧送する。
その後は、ボールの底部に所定の水位からなる水たまりを形成することで、便器への汚物の付着を防止するとともに、排水管を介して上がってくる臭い等を防ぐ。
また、この水たまりを形成する際に、ボール部の周壁部を洗浄することも行われている。
ここで、水たまりの水がサイホンの作用により排水側に流出しないように、排水路に空気を供給する必要がある。
特許文献1に開示する流路制御弁は、簡単な構造でありながら、汚水(汚物)の圧送時の逆流を防止しつつ、通気によりサイホン作用が生じるのを防止している点に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4260780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、設置が容易で洗浄効果の高い圧送水洗便器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る圧送水洗便器は、ボール部と、前記ボール部の底部側に連結した圧送ポンプと、前記圧送ポンプに連結した排水管と、前記排水管の途中に設けた通気部材と、洗浄水を供給するための給水管とを備え、前記給水管から供給される洗浄水を前記ボール部の洗浄水と前記通気部材の洗浄水とに分流する分水部材を有することを特徴とする。
【0006】
ここで通気部材は、ボール部で受けた排泄物等を圧送ポンプにて圧送する際には、排水経路を空気と遮断して圧送路を形成し、圧送後には通気して排水路側に向けてサイホン作用が出現するのを防止するためのものである。
例えば、通気部材は水流にて浮上する弁体と、前記弁体が浮上して当接することで前記排水の逆流を防止する逆流防止弁座と、前記弁体が下降して通気部を形成するように支持する通気弁座とを有するものが例として挙げられる。
【0007】
このような通気部材は、汚水の圧送時の水流にて弁体が逆流防止弁座に向けて押圧されることで、水の流れが遮断される。
従って、弁体が逆流防止弁座に向けて押圧され、そのシール圧が生じるまでには少量ではあるが、汚水が通気部材の逆流防止弁座を通過する恐れがある。
本発明は、ボール部を洗浄するのに供給する洗浄水の一部をこの通気部材に向けて分流させることで、通気部材の内部の洗浄も可能にした分水部材を設けた点に特徴がある。
【0008】
分水部材は、ボール部に流す洗浄水と通気部材に流す洗浄水とに分流できれば、その構造に制限はない。
簡単な構造で便器に取り付けやすい例としては、分水部材は分水室を有し、前記分水室にボール部洗浄用のボール部給水口と、通気部材洗浄用の通気部材給水口とを有しているのが好ましい。
この場合に、分水室は前記ボール部給水口に向けてと、前記通気部材給水口に向けて水流を分流するためであって、分水室に突設した分流壁部を有しているのが好ましい。
【0009】
本発明において、ボール部は洗浄水がボール部の周壁部全体に向けて流れるように段差状の流水部を形成してあってもよい。
このようにすると、段差状の流水部により、洗浄水がボール部の周壁部の全周にわたって流れやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る圧送水洗便器において、ボール部に向けて供給する洗浄水の一部を分流して通気部材の内部洗浄にも用いることができるので、簡単な構造でありながら便器の衛生が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る圧送水洗便器の構造例を示す。
図2】洗浄水の流れを示す。
図3】分水部材及び通気部材の構造例を示す。
図4】分水部材の部分断面図を示す。
図5】分水部材の分解図を示す。
図6】ボール部の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る圧送水洗便器の構造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0013】
図1は、圧送水洗便器の構造例を示し、ボール部11は断面を模式的に示す。
図2は、洗浄水の流れを示し、図3にその拡大図を示す。
便器のボール部11の底部側に圧送ポンプ12を連結してあり、圧送ポンプ12は下水等に流すための排水管13が接続されている。
圧送ポンプ12は図示を省略したが、ケーシング内にインペラが内蔵されていて、汚物等を圧送できる電動ポンプとなっている。
排水管13には、メンテナンス用の蓋体13aが設けられ、取り外し可能になっている。
汚物が圧送された後には、図2に矢印で示すようにボール部11の洗浄と、ボール部の底部側の水たまり11aが所定の水位になるように、水を供給するための給水管14,14aが、例えば水道等と接続されている。
給水管14の途中には、電動ボールバルブ等のバルブ15が設けられ、電気信号によりON-OFF制御されている。
【0014】
チューブ状の給水管14aは、図2,3に示すように分水部材16に接続され、分水部材16は更に通気部材17と、チューブ状の給水管14bを介して接続されている。
通気部材17は、圧送ポンプ12にて汚水等を圧送する際には、排水が通過しないように逆流防止機能を有し、圧送ポンプ12が作動後には排水管13内に空気を通気し、サイホンが働かないようにするためのものである。
【0015】
通気部材17の構造例を図3に示した断面図で説明する。
球形状の弁体17eの下側には、弁体17eが下降した際に受け皿となる通気弁座17cを有し、弁体17eと通気弁座17cとの間に通気部17dを形成する隙間を有している。
逆に圧送ポンプ12が作動し、排水が排水管13に通水されると、この排水の一部が通気部材17に流れ込むと、それにより弁体17eが浮上し、逆流防止弁座17aの通水孔17bを塞ぎ、シール圧が生じ、水流が遮断される。
【0016】
次に、洗浄水の流れについて説明する。
ボール部11の側壁の上部側に分水部材16を取り付けてある。
分水部材16は、図4,5に示すように凹部形状の本体部16aをボール部11の側壁にネジ部16bを介して螺着できるタイプになっている。
取付構造には制限はなく、嵌め込み構造でもよい。
本体部16aの開口部を覆う蓋部16eを有し、本体部16aと蓋部16eとで内部に分水室16Aを形成してある。
本体部16aと蓋部16eとは、中央部の一方に設けた挿入部16fと、他方に設けた嵌合部16gとで相互に嵌着されるとともに、蓋部16e側の中央部から突設し、分水室16Aを扇状に分断した分流壁部16hを形成してある。
分流壁部16hの上部側は、通気部材用分水室16iになっていて、下部側はボール部用分水室16jになっている。
通気部材用分水室16iは、対向する本体部16aに貫通した通気部材給水口16dを有し、給水管14bを介して通気部材17と接続されている。
ボール部用分水室16jの対向する本体部16aに貫通した給水口16cを有し、給水管14aと接続されるとともに、このボール部用分水室16jの両側にボール部給水口16k,16mを形成してある。
【0017】
分水部材16をこのような構造にしたことにより、洗浄水の流れを図3に示すようにバルブ15が開の状態になると、給水管14a及び給水口16cを介して、分水室16Aに勢いよく水が流れ込む。
流れ込んだ水の多くは、ボール用分水室16jを経由して両側のボール部給水口16k,16mからボール部11側に流れる。
また、給水された水の一部は、分水室16Aの蓋部16e側に設けた分流壁部16hから通気部材用分水室16i、及び通気部材給水口16dを介して、通気部材17に流れ込む。
通気部材17に流れ込んだ洗浄水は、通気孔17bを経由して弁体17e側に流れ込むことで、通気部材17の内部が洗浄される。
【0018】
ボール部給水口16k,16mからボール部11側に流れ込んだ洗浄水は、ボー部11の内周面を洗浄するとともに、水たまりとなる。
図6は、ポータブルトイレに本発明を適用した例を示し、ボール部11の内周面に段差状の流水部11cを形成することで、洗浄水はこの流水部11cに周回しながらボール部11の底部11bに流れることで、ボール部の内周面全体に洗浄水が行き渡る例になっている。
【符号の説明】
【0019】
11 ボール部
11a 水たまり
12 圧送ポンプ
13 排水管
14 給水管
15 バルブ
16 分水部材
17 通気部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6