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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/48 20060101AFI20230424BHJP
   B23Q 1/38 20060101ALI20230424BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B23Q1/48 E
B23Q1/38 Z
B23Q1/01 G
B23Q1/01 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019177441
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053725
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】植村 圭二
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307680(JP,A)
【文献】特開2014-213389(JP,A)
【文献】特開2014-113646(JP,A)
【文献】特開2018-161728(JP,A)
【文献】特開2002-328191(JP,A)
【文献】特開平08-039375(JP,A)
【文献】特開昭62-024928(JP,A)
【文献】特表2013-509307(JP,A)
【文献】特表2017-536687(JP,A)
【文献】特開2005-131767(JP,A)
【文献】実開昭59-059228(JP,U)
【文献】実開昭63-053635(JP,U)
【文献】国際公開第2000/051779(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/48
B23Q 1/38
B23Q 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油静圧軸受を介して第1軸線を中心に回転されるとともに、同じく油静圧軸受を介して前記第1軸線と直交する第2軸線の方向に移動される回転テーブルが備えられた回転テーブルユニットと、前記第1軸線及び第2軸線と直交する第3軸線を中心に回転されるとともに、油静圧軸受を介してその第3軸線の方向に移動されるスピンドルユニットとを設けた工作機械であって、
ベッドの上面前部に凹部を形成するとともに、その凹部内に前記回転テーブルユニットを設置し、前記ベッドの後部に前記スピンドルユニットを設置し、前記回転テーブルの前記第1軸線を中心とした回転のための回転油静圧軸受と、前記回転テーブルユニットの前記第2軸線方向の移動のための直線移動油静圧軸受とを同じ高さに配置した工作機械。
【請求項2】
前記回転テーブルユニットは、前記直線移動油静圧軸受と、回転油静圧軸受とを有する移動体を設けた請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記移動体を板状体によって構成し、その移動体の外周の対向する2箇所に直線移動油静圧軸受を設けるとともに、中心部に回転油静圧軸受を設けた請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記ベッドの下面において、前記第2軸線の方向の2箇所に第1荷重受け部を設けるとともに、前記スピンドルユニットの軸と対応する1箇所に第2荷重受け部を設け、前記第1荷重受け部と第2荷重受け部との間における前記ベッドの下面に曲面状の膨出部を設けた請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記ベッドを空洞形状にするとともに、その内壁に補強壁を形成した請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具などを支持する回転テーブルと、ワークを支持するスピンドルとを備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円形のテーブルを備えたワーク回転装置と、そのワーク回転装置の上方に間隔をおいて配置された工具ホルダとが開示されている。この特許文献1においては、工作機械のワーク回転装置のテーブルに関する詳細な構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-45681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工作機械においては、前記工具ホルダは、工具を下向きに保持するようになっている。従って、特許文献1の工作機械においては、全体の高さが高くなって、大形化することが避けられない。このように大形化することは、大重量になり、工場内の設置条件に制約が生じる。また、工作機械が大形化して、大重量化することは、機械の固有振動数が低くなるが、その一方、固有振動の振幅が大きくなるため、加工精度が低下する要因となる。
【0005】
本発明の目的は、高い加工精度を得ることができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明においては、油静圧軸受を介して第1軸線を中心に回転されるとともに、同じく油静圧軸受を介して前記第1軸線と直交する第2軸線の方向に移動される回転テーブルが備えられた回転テーブルユニットと、前記第1軸線及び第2軸線と直交する第3軸線を中心に回転されるとともに、油静圧軸受を介してその第3軸線の方向に移動されるスピンドルユニットとを設けた工作機械であって、前記ベッドの上面前部に凹部を形成するとともに、その凹部内に前記回転テーブルユニットを設置し、ベッドの後部に前記スピンドルユニットを設置し、前記回転テーブルの前記第1軸線を中心とした回転のための回転油静圧軸受と、前記回転テーブルユニットの前記第2軸線方向の移動のための直線移動油静圧軸受とを同じ高さに配置したことを特徴とする。
【0007】
以上のように構成された工作機械においては、ベッドの凹部内に回転テーブルユニットが収容される。このため、回転テーブルの位置を低くできる。そして、その回転テーブルユニットの回転油静圧軸受及び直線移動油静圧軸受が同じ高さに設けられている。このため、回転テーブルユニットの上下寸法を小さくできる。その結果、前記回転テーブルの位置をさらに低くできる。従って、回転テーブル上のバイトなどの工具によって加工されるワークを支持するスピンドルの位置を低くできる。これらのことから、工作機械全体を薄く、小型軽量化できる。そのため、工作機械の固有振動数が高くなり、振幅が小さくなって、加工精度を向上できる。また、工作機械を小型軽量化できるため、工作機械の工場内における設置場所の制約が少なくなり、取り扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械として、高い加工精度を得ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】旋盤ユニットを前部側の斜め上から見た斜視図。
図2】旋盤ユニットを後部側の斜め上から見た斜視図。
図3】旋盤ユニットを後部側の斜め下から見た斜視図。
図4】旋盤の側面図。
図5】旋盤の正面図。
図6】旋盤の背面図。
図7】旋盤の断面図。
図8図7とは直交する方向で切断した旋盤の断面図。
図9】ベッドと回転テーブル機構を示す分解斜視図。
図10】ベッドと回転テーブルユニットとを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態の工作機械は、旋盤において具体化したものである。
【0011】
図1及び図2に示すように、旋盤21を有する旋盤ユニット10は、工場の床面などの据え付け面(図示しない)上に設置される設置台11を備えており、この設置台11は、その下面3箇所に設置部材12を有している。すなわち、設置部材12は、前部側に2箇所,後部側に1箇所設けられている。これらの設置部材12は、それぞれ傾斜状のカム面13の作用によって高さ調節可能である。従って、各設置部材12の高さ調節によって、旋盤ユニット10の高さ及び傾きを調節できる。
【0012】
図1及び図2に示すように、設置台11の上面の3箇所にはエアダンパよりなる吸振装置14を上端に設けた一対の前部支持脚15及び単一の後部支持脚16が立設されている。前部支持脚15及び後部支持脚16はそれぞれ各設置台11を通る垂直軸線(Y軸)上に位置している。そして、吸振装置14のピストンの上端の受け板17上に前記旋盤21が支持されている。従って、旋盤21は3箇所の支持脚15,16により3点で支持されている。
【0013】
以下に、前記旋盤21の構成を説明する。
図1図6図8に示すように、旋盤21は、ベッド22を備えており、そのベッド22の前部側には左右両側を開放した凹部232を有するテーブル支持部23が形成されるとともに、後部側には平板状の天板28を有するスピンドル支持部24が形成されている。ベッド22は、鋳造によって全体が一体形成されている。図6に示すように、テーブル支持部23の上面231及びスピンドル支持部24の天板28の上面241は同一平面上に位置している。テーブル支持部23の凹部232の左右開放部は、端板27によって閉塞されている。
【0014】
図1図4図6に示すように、テーブル支持部23には回転テーブルユニット25が設けられるとともに、スピンドル支持部24にはスピンドルユニット26が設けられている。
【0015】
前記回転テーブルユニット25は以下のように構成されている。
図6図7及び図9に示すように、テーブル支持部23の凹部232の内側においてZ軸方向に対向する一対の面にはX軸方向に延びるガイド面としての上部段差301が形成されている。上部段差301には回転テーブルユニット25の移動体32がX軸方向においてガイドされて移動可能に支持されている。
【0016】
すなわち、図7図9及び図10に示すように、移動体32は、板状体を構成して、全体として四角板状をなし、その対向する一対の辺の下面部と、同辺の側面と、同辺の上面部にそれぞれ油が供給される被ガイド面としての第1油静圧軸受31が配置されている。そして、下面の第1油静圧軸受31が上部段差301の底面に、側面の第1油静圧軸受31が上部段差301の垂直面にそれぞれ油膜を介して支持されている。テーブル支持部23の上面には、X軸方向に延びる一対のガイド部材45が支持されており、このガイド部材45の下面に第1油静圧軸受31が油膜を介して支持されている。第1油静圧軸受31により直線移動油静圧軸受が構成されている。移動体32の上面には後述する回転テーブル39との間に位置するスペーサ44が取り付けられている。
【0017】
前記上部段差301の下側に下部段差302が形成されており、この下部段差302と前記移動体32との間にはリニアモータ33が介在されている。すなわち、下部段差302にリニアモータ33の固定側が設けられ、移動体32にリニアモータ33の可動側が設けられている。そして、リニアモータ33の駆動力より移動体32がX軸方向に移動される。
【0018】
移動体32の中心部にはガイド面としての支持孔42が貫設されており、その支持孔42の内周面及び支持孔42の上下の周縁部にそれぞれ被ガイド面としての環状をなすとともに、油が供給される第2油静圧軸受35が形成されている。第2油静圧軸受35により垂直(Y軸)な回転軸線上において回転軸36が支持されている。回転軸36には環状凹部43が形成されており、その環状凹部43の内上面が第2油静圧軸受35の上面に、環状凹部43の内底部周面が第2油静圧軸受35の側面に、環状凹部43の内下面が第2油静圧軸受35の下面にそれぞれ油膜を介して支持されている。第2油静圧軸受35が回転油静圧軸受を構成している。
【0019】
移動体32の下面と回転軸36の下端部との間には回転モータ37が配置されており、この回転モータ37により回転軸36が自身の垂直軸線を中心に回転される。
第1油静圧軸受31と、第2油静圧軸受35とは同一高さに配置されており、回転モータ37は、その第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35の下方に配置されている。
【0020】
回転軸36の上端には回転テーブル39が取り付けられている。この回転テーブル39上にバイト201などの工具が支持される。本実施形態においては、バイト201の先端が回転テーブル39の回転中心を通るY軸方向の軸線上に位置している。
【0021】
図1図4及び図7に示すように、前記第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35と同じ高さの位置において、テーブル支持部23の前面には中央部を窪ませた湾曲部41が形成されており、その両端には端部材46が形成されている。両方の端部材46の相互に逆ネジになっている雌ねじ孔には、調節ロッド47の両端の雄ねじが螺合されるとともに、その調節ロッド47の雄ねじには緩み止めのナット48,49が螺着されている。従って、ナット48,49を緩め、調節ロッド47を回すことにより、調節ロッド47がターンバックルとして作用する。このため、端部材46間の間隔が微調節されて、湾曲部41を介してテーブル支持部23の湾曲度合いを調節でき、その結果、前後の上部段差301の垂直面間の位置関係を調節できる。
【0022】
前記スピンドルユニット26は以下のように構成されている。
図1図3及び図10に示すように、前記スピンドル支持部24の上面にはユニット台51が載置固定されており、このユニット台51の両側には受け部52が一体形成されている。両受け部52にはZ軸方向に延びる第3油静圧軸受53が配置されており、この第3油静圧軸受53には移動体54がスライダ55を介してZ軸方向に移動可能に支持されている。この移動体54は、金属セラミックス複合材料によって構成されている。この金属セラミックス複合材料は、軽量化と強靭性の双方を得るために、例えば、鋳鉄中に炭化ケイ素の粉末を分散混合させたものである。移動体54にはスピンドル軸受56が支持されている。移動体54はリニアモータ61によってZ軸方向に移動される。このリニアモータ61の固定側がユニット台51側に、可動側が移動体54側に位置する。
【0023】
図6及び図7に示すように、スピンドル軸受56には回転モータ57によって回転されるスピンドル58がZ軸方向の軸線上において支持されており、その先端にはエアチャック59が設けられている。エアチャック59の先端にワーク202がチャックされる。
【0024】
次に、前記ベッド22,ユニット台51及びその関連構成について詳細に説明する。
図3及び図6に示すように、ユニット台51の前端部がテーブル支持部23の上方に位置している。
【0025】
図5図6及び図8に示すように、ベッド22の左右両側端には下方に向かって側板部71が一体形成されている。テーブル支持部23の下方において、両側板部71の下端間には前部下板部72が一体形成されている。スピンドル支持部24の下方において、両側板部71の下端間には膨出部としての後部下板部78が一体形成されている。
【0026】
図2及び図6に示すように、前記前部下板部72の下面における左右両端部,すなわち回転テーブル39の左右(X軸方向)移動方向の両端部の2箇所には第1荷重受け部としての前部脚連結部73が形成されている。この前部脚連結部73が前記支持脚15の上端の前記受け板17上に載置されて、ボルト(図示しない)によって受け板17に連結される。前記後部下板部78の後端部には透設部76が形成されており、この透設部76と対向するように、スピンドル支持部24の天板28の下面には第1荷重受け部としての後部脚連結部77が形成されている。この後部脚連結部77は、スピンドル58の下方に位置し、前記スピンドル軸受56の移動領域であって、左右の第3油静圧軸受53間の中央位置と対応している。この後部脚連結部77が前記後部支持脚16の上端の前記受け板17上に載置されて、ボルト(図示しない)によって連結される。後部脚連結部77は前部脚連結部73より上方の高いところに位置している。
【0027】
従って、旋盤21は、X軸方向の同一高さの2箇所において前部支持脚15によって支持されるとともに、両前部支持脚15間の中央を通るZ軸方向の1箇所において後部支持脚16によって支持されている。また、旋盤21は、前部支持脚15及び後部支持脚16により前後方向において後部側が高くなる高低差を設けて支持されている。
【0028】
図6図8に示すように、前記後部下板部78は、前記前部脚連結部73と後部脚連結部77との間に配置されるとともに、前後方向及び左右方向において曲面状であるほぼ円弧状に膨らむ形状に形成されている。本実施形態においては、このように、前後方向及び左右方向においてほぼ円弧状に膨らむ形状を球面状とする。
【0029】
図6及び図8に示すように、ベッド22は天板28,側板部71及び後部下板部78で囲まれた空洞95を有している。ベッド22の内部における天板28及び後部下板部78の両側部間には一対の補強縦壁81が介在されている。両補強縦壁81の下端部と天板28との間には一対の補強傾斜壁82が介在されている。天板28と補強傾斜壁82との間,補強傾斜壁82と後部下板部78との間及び天板28と後部下板部78との間における補強縦壁81と側板部71との間にはそれぞれ複数の補強横壁83が介在されている。前記ユニット台51の下面には、一対の傾斜壁85と、両傾斜壁85の下端間に位置する架設部86とよりなる補強部が形成されており、架設部86は天板28の上面に当接している。ユニット台51の内部には複数の横壁90が形成されている。ユニット台51の両側下部には側方に突出する板部91が形成されており、この板部91とユニット台の側壁との間には複数の補強リブ92が一体形成されている。
【0030】
図1図6図8に示すように、ベッド22及びユニット台51の板状をなす部分には、円形や三角形などの適宜な形状の重量軽減用の透孔88が形成されている。
次に、以上のように構成された旋盤21の作用を説明する。
【0031】
例えば、ワーク202をその前面が凸曲面や凹曲面となるように切削する場合には、スピンドル58の回転により、ワーク202をチャックするエアチャック59が回転するとともに、リニアモータ61によりスピンドルユニット26がZ軸方向に移動される。これと同時に、回転テーブル39がY軸を中心に旋回されながら、回転テーブルユニット25がX軸方向に往復移動される。従って、バイト201の先端がY軸を中心に回転されながら、そのバイト201がX軸方向に往復移動され、ワーク202がZ軸方向に往復移動される。このようにして、ワーク202に対して凸曲面や凹曲面を切削することができる。従って、スピンドルユニット26のZ軸方向への移動及び回転テーブルユニット25のX軸方向への移動の速度,タイミング,ストロークなどを適宜に設定するとともに、回転テーブル39の回転速度や回転範囲などを適宜に設定すれば、ワーク202を各種の形状に加工できる。
【0032】
本実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ベッド22の前部のテーブル支持部23には凹部232が形成されて、その凹部232内に回転テーブルユニット25が収容されている。このため、回転テーブル39の位置を低くできる。そして、その回転テーブルユニット25には板状の移動体32が設けられており、この移動体32の外周面及び支持孔42にそれぞれ第1油静圧軸受31及び第2油静圧軸受35が設けられている。そして、第1油静圧軸受31と第2油静圧軸受35とは同じ高さの位置に配置されている。このため、回転テーブルユニット25の上下寸法を小さくできる。その結果、前記回転テーブル39の高さをさらに低くできる。そのため、回転テーブル39上のバイト201の位置を低くでき、従って、ワーク202を支持するスピンドル58の位置を低くできる。これらのことから、旋盤21全体を薄く、小型軽量化できる。これによって、旋盤21の固有振動数が高くなり、振幅が小さくなって、加工精度を向上できる。また、旋盤21を小型軽量化できるため、旋盤21の工場内における設置場所の制約が少なくなり、取り扱いが容易になる。
【0033】
(2)旋盤21が3点で支持されるため、同旋盤21を支持脚15,16を介して安定支持することができる。従って、旋盤21を吸振装置14を有する支持脚15,16上に支持した状態において、据え付け面や設置台11が振動して、吸振装置14が振動吸収動作しても、旋盤21のベッド22が歪みを生じたりすることはなく、安定した設置状態を維持できる。従って、本実施形態においては、高精度加工を維持できる。
【0034】
(3)ベッド22のスピンドル支持部24の下面側に位置する後部下板部78が後方に向かう上昇カーブを描いているため、後部下板部78が上昇カーブを描くことなく直線状をなす場合とは異なり、ベッド22を小形化できる。また、ベッド22のスピンドル支持部24の下方が空洞95になっている。従って、ベッド22を軽量化できる。このため、前記と同様に、ベッド22の固有振動数が高くなり、その結果、旋盤21の固有振動の振幅が小さくなる。
【0035】
(4)ベッド22のスピンドル支持部24の下方に空洞95が形成されていても、その空洞95の内壁面には、補強縦壁81や補強傾斜壁82などが形成されているため、ベッド22の剛性を維持できる。また、後部下板部78が縦横に円弧状に湾曲形成されているため、言い換えれば、球状に形成されているため、ベッド22の剛性をさらに向上できる。
【0036】
(5)スピンドルユニット26などの重量による負荷が後部下板部78にその引っ張り荷重として作用するが、後部下板部78は前後方向に円弧状をなしているため、その引っ張り荷重に対して有効に抗することができて、前記負荷によるベッド22の変形は適切に抑制される。また、スピンドル58の両側のリニアモータ33などの重量による負荷は、後部下板部78にその圧縮荷重として作用するが、後部下板部78は左右方向に円弧状をなしているため、その圧縮荷重に対して有効に抗することができて、前記負荷によるベッド22の変形は適切に抑制される。従って、大重量化することなく、ベッド22の実質的な剛性が向上して、高精度加工に寄与できる。
【0037】
(6)設置台11の後部側の支持脚16を受ける後部脚連結部77を前部側の支持脚15を受ける前部脚連結部73より高い位置に配置したことにより、ベッド22の側面形状を後方に向かって上昇収束する形状にできる。このため、前記のようにベッド22の小形・軽量化に寄与できる。
【0038】
(7)ベッド22の板状の部分に複数の透孔88が形成されているため、旋盤21全体を軽量化できる。また、これらの透孔88が通気口となり、旋盤21の内外の温度を均一化できて、ベッド22などの歪変形を抑えることができる。
【0039】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
・前記実施形態とは逆に、スピンドル支持部24に回転砥石などの工具を支持し、回転テーブル39にワークを支持すること。
・本実施形態を旋盤以外の工作機械において具体化すること。
【0041】
・ベッド22とユニット台51とを一体形成すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握されるが、請求項に記載されていない技術的思想は以下の通りである。
【0042】
(A)ベッドの上面にテーブルユニットとスピンドルユニットとを設けた工作機械であって、
前記ベッドの下面において、前記スピンドルユニットのスピンドルの軸方向と直交する方向の2箇所に第1荷重受け部を設けるとともに、前記スピンドルユニットの軸と対応する1箇所に第2荷重受け部を設け、前記第1荷重受け部と第2荷重受け部との間における前記ベッドの下面に曲面状の膨出部を設けた工作機械。
【0043】
(B)前記テーブルユニットを前記スピンドルの軸方向と直角をなす方向に移動可能にするとともに、前記第1荷重受け部をテーブルの移動範囲の両端部に対応して配置した請求項1に記載の工作機械。
【0044】
(C)前記スピンドルユニットの支持部をテーブルユニットの支持部より高い位置に配置し、前記第2荷重受け部を前記第1荷重受け部より高い位置に配置した請求項2に記載の工作機械。
【符号の説明】
【0045】
10…旋盤ユニット、21…旋盤、22…ベッド、23…テーブル支持部、23…スピンドル支持部、25…回転テーブルユニット、26…スピンドルユニット、32…移動体、39…回転テーブル、54…移動体、58…スピンドル、78…後部下板部、232…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10