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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】部分めっき装置および部分めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/02 20060101AFI20230424BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20230424BHJP
   H05K 3/18 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C25D5/02 H
C25D17/10 A
H05K3/18 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019186466
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063240
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390009829
【氏名又は名称】株式会社イデヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-027465(JP,U)
【文献】特開昭57-131384(JP,A)
【文献】特開昭63-114998(JP,A)
【文献】特開平1-212791(JP,A)
【文献】特開平2-285092(JP,A)
【文献】特開平5-202494(JP,A)
【文献】特開平7-251338(JP,A)
【文献】特開2005-060749(JP,A)
【文献】特開2007-217763(JP,A)
【文献】特開2008-068726(JP,A)
【文献】特開2014-079866(JP,A)
【文献】特開2015-105401(JP,A)
【文献】中国実用新案第202705522(CN,U)
【文献】中国実用新案第206319071(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00 - 7/12
C25D 17/10
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を当該帯状部材に真っ直ぐに伸びたストレート部を形成して搬送する搬送機構と、
帯状部材の前記ストレート部の搬送方向に帯状部材に同期して前進移動し、前進限位置から初期位置まで後退移動する移動台と、
前記移動台に帯状部材に向けて接近離反移動自在に装着され、帯状部材の一方の面に押圧する第1のマスキング治具と、
前記移動台に帯状部材に向けて接近離反移動自在に装着され、帯状部材の他方の面に押圧する第2のマスキング治具と、を有し、
被処理面に開口する開口部に連通する液室を前記第1のマスキング治具に設け、
被処理面に施されるめっき必要領域に対応する形状の連通孔が形成されたマスキング板を前記第1のマスキング治具の前記開口部に設け、
前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材に押圧して帯状部材を挟持し、かつ帯状部材を搬送しながら前記移動台を前進移動し、被処理面のめっき必要領域をめっき処理する、部分めっき装置。
【請求項2】
請求項1記載の部分めっき装置において、
被処理面に開口する開口部に連通する液室を前記第2のマスキング治具に設け、
被処理面に施されるめっき必要領域に対応する形状の連通孔が形成されたマスキング板を前記第2のマスキング治具の前記開口部に設け、
前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材に押圧して帯状部材を挟持し、かつ帯状部材を搬送しながら、帯状部材の両方の被処理面のめっき必要領域を同時にめっき処理する、部分めっき装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の部分めっき装置において、
前記搬送機構は、前記ストレート部の上流側に配置されて帯状部材に張力を加えるテンションローラと、前記ストレート部の下流側に配置され帯状部材を搬送方向に駆動する駆動ローラとを有する、部分めっき装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の部分めっき装置を用いて、帯状部材の被処理面の必要領域のみにめっき処理する部分めっき方法であって、
前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材に押圧して帯状部材を挟持する挟持工程と、
帯状部材が2つのマスキング治具により挟持された状態のもとで、帯状部材を搬送し、かつ前記移動台を前進移動しながら、被処理面のめっき必要領域をめっき処理する処理工程と、
前記移動台が前進限位置に到達したら、帯状部材の搬送を停止し、前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材から離反させる離反工程と、
前記移動台を前進限位置から初期位置に後退移動させてマスキング治具を後退移動させる後退工程と、
を有する、部分めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材を搬送しながら、その被処理面に部分めっきを施すための部分めっき技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を形成するフープ材や電子部品実装用フィルムキャリアテープ等の帯状部材を搬送しながら、帯状部材の被処理面に部分的にめっき処理を施すための部分めっき装置が特許文献1、2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される連続部分めっき装置は、それぞれ円板形状の上蓋と下蓋との間に取り付けられる円筒形状の側板を備えた電極構造体のドラムを有し、ドラムの側板との間に隙間を介してドラムの径方向外方には円筒形状のマスキング材が回転自在に配置されている。帯状部材であるキャリアテープは陰極に帯電されてマスキング材に接触して搬送される。キャリアテープの被処理面のうち、めっき必要部分が側板に露出され、めっき不要部分はマスキング材により覆われる。ドラムの側板に形成された電極ノズル孔からめっき必要部分に、陽極に帯電されためっき液が塗布される。
【0004】
特許文献2に記載される連続部分めっき装置は、径方向の電極ノズルが設けられて陽極端子が接続された電極構造体と、これの外側に回転自在に装着された回転体とを有している。回転体に設けられた搬送ガイド面にリードフレーム等の帯状長尺物が接触して搬送される。帯状長尺物は陰極端子に接続され、電極ノズルから噴射されためっき液が帯状長尺物のめっき必要部分に吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-21226号公報
【文献】特開2006-225677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の部分めっき装置においては、円筒形状の回転体の外周面に帯状部材の片面を接触させ、帯状部材の片面のうち、めっき不要部分を回転体の外周面でマスキングするようにしている。帯状部材の回転体の外周面に対する押付力を強くするには限度があり、帯状部材と回転体のマスキング面との間からめっき液が漏出し、帯状部材の反対側の面にめっきが付着することがある。このため、不要なめっきを後工程において除去しなければならず、高品質のめっき処理を効率的に行うことができなかった。
【0007】
従来のように、めっき必要部分とめっき不要部分との境目であるマスキングパターンを、マスキング材の円筒面に加工するには、加工精度を出すことが困難である。このため、マスキングする部位にめっき液が漏出することがあり、部分めっき部品の製造歩留まりを高めることができなかった。
【0008】
さらに、ドラムや円筒部材の外周面に帯状部材を接触させて、めっき不要部分をマスキングすると、帯状部材のうち外周面に接触している片面しかめっき処理することができない。このため、両面に連続的にめっき処理する場合には、少なくとも2台の部分めっき装置が必要であり、1台目のめっき装置により帯状部材の一方面をめっき処理してから、2台目のめっき装置により反対側面つまり他方面をめっき処理する必要がある。このため、帯状部材の両面に効率的にめっき処理をすることができなかった。
【0009】
本発明の目的は、帯状部材のめっき被処理面に対して高精度の部分めっきを効率的に行いうるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の部分めっき装置は、帯状部材を当該帯状部材に真っ直ぐに伸びたストレート部を形成して搬送する搬送機構と、帯状部材の前記ストレート部の搬送方向に帯状部材に同期して前進移動し、前進限位置から初期位置まで後退移動する移動台と、前記移動台に帯状部材に向けて接近離反移動自在に装着され、帯状部材の一方の面に押圧する第1のマスキング治具と、前記移動台に帯状部材に向けて接近離反移動自在に装着され、帯状部材の他方の面に押圧する第2のマスキング治具と、を有し、被処理面に開口する開口部に連通する液室を前記第1のマスキング治具に設け、被処理面に施されるめっき必要領域に対応する形状の連通孔が形成されたマスキング板を前記第1のマスキング治具の前記開口部に設け、前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材に押圧して帯状部材を挟持し、かつ帯状部材を搬送しながら前記移動台を前進移動し、被処理面のめっき必要領域をめっき処理する。
【0011】
本発明の部分めっき方法は、上記部分めっき装置を用いて、帯状部材の被処理面の必要領域のみにめっき処理する部分めっき方法であって、前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材に押圧して帯状部材を挟持する挟持工程と、帯状部材が2つのマスキング治具により挟持された状態のもとで、帯状部材を搬送し、かつ前記移動台を前進移動しながら、被処理面のめっき必要領域をめっき処理する処理工程と、前記移動台が前進限位置に到達したら、帯状部材の搬送を停止し、前記第1のマスキング治具と前記第2のマスキング治具を帯状部材から離反させる離反工程と、前記移動台を前進限位置から初期位置に後退移動させてマスキング治具を後退移動させる後退工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
帯状部材のストレート部に同期して前進後退移動する移動台には、2つのマスキング治具がそれぞれ帯状部材に向けて接近離反移動自在に配置されており、2つのマスキング治具の少なくとも一方には、被処理面に施されるめっき必要領域に対応する形状の連通孔が形成されたマスキング板が設けられている。帯状部材は両面が押圧されて挟持されるので、帯状部材とマスキング板との間からめっき液が漏出することが防止され、高品質のめっき製品を製造することができるとともに、不要なめっきを後工程において除去することがなく、効率的にめっき処理を行うことができる。
【0013】
マスキング材は帯状部材のストレート部に押圧されるので、円筒形状に湾曲させることなく、平坦な形状とすることができる。これにより、めっき必要部分とめっき不要部分との境目であるマスキングパターンを平坦なマスキング板に加工することができるので、マスキングパターンの加工精度を高めることができ、高品質の部分めっき部品を歩留まり良く製造することができる。
【0014】
帯状部材の搬送方向両側に配置した2つのマスキング治具により、同時に帯状部材の両面に部分めっきを施すことができるので、部分めっき処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態である部分めっき装置を示す一部切り欠き平面図である。
図2図1の要部の拡大平面図である。
図3図2におけA-A線断面図である。
図4図3のB部拡大断面図である。
図5】帯状部材としてのフープ材の一例を示す正面図である。
図6】めっき手順を示す工程図であり、(A)はめっき開始時を示し、(B)は2つのマスキング治具を帯状部材に押圧させた状態を示す。
図7】めっき手順を示す工程図であり、(A)はめっき終了時を示し、(B)は2つのマスキング治具を帯状部材から離反させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、部分めっき装置10は水平方向に設置される装置台座11を有し、フープまたはフープ材とも言われる帯状部材12にめっき処理を施す。
【0017】
装置台座11の一端部にはテンションローラ13が回転自在に設けられており、その回転中心軸は装置台座11に対して垂直方向である。テンションローラ13の外周面には帯状部材12が掛け渡され、テンションローラ13には帯状部材12を介して押圧ローラ14が押し付けられている。テンションローラ13は、図示しない電源ユニットの陰極端子に接続されている。装置台座11の他端部には駆動ローラ15が回転自在に設けられており、その回転中心軸は装置台座11に対して垂直方向である。駆動ローラ15の外周面には帯状部材12が掛け渡されており、駆動ローラ15には帯状部材12を介して押圧ローラ16が押し付けられている。
【0018】
駆動ローラ15は図示しない電動モータ等の駆動源により回転駆動され、帯状部材12は駆動ローラ15により一定の速度で、矢印で示される搬送方向に搬送される。テンションローラ13には回転方向に制動力が加えられており、駆動ローラ15により搬送される帯状部材12には一定のテンション、つまり張力がテンションローラ13により加えられる。テンションローラ13の繰り出し端部13aと、駆動ローラ15の巻付け開始端部15aとの間においては、帯状部材12は真っ直ぐに伸びており、これらの間はストレート部17を形成している。このように、ストレート部17の搬送方向の上流側に配置される上流側のローラであるテンションローラ13と、ストレート部17の搬送方向の下流側に配置される下流側のローラである駆動ローラ15とにより、帯状部材12にストレート部17を形成してこれを搬送する搬送機構18が構成される。
【0019】
装置台座11には支持台21が設けられ、図2および図3に示されるように、支持台21には、ストレート部17に平行に2本のガイドレール22が取り付けられている。それぞれのガイドレール22には、図3に示されるように、移動ブロック23が装着されており、移動台24は移動ブロック23に取り付けられている。移動台24はガイドレール22に案内されて、ストレート部17に沿って前進移動と後退移動とを繰り返す。
【0020】
移動台24を前進後退移動するために、移動台24には搬送部材25が取り付けられ、搬送部材25を介して移動台24を駆動する駆動機構26が支持台21に取り付けられている。駆動機構26は、搬送部材にねじ結合される送りねじ軸を回転駆動する電動モータであり、移動台24は、駆動機構26により、図2に実線で示される後退限位置つまり初期位置と前進限位置との間のストロークSの範囲で往復動する。
【0021】
移動台24にはめっき処理槽30が取り付けられており、めっき処理槽30は、図2および図3に示されるように、底板31と、前後の端板32a、32bと、左右の側板33a、33bと、天板34とを有し、直方体形状である。めっき処理槽30は移動台24により前進後退移動する。前後の端板32a、32bには帯状部材12が貫通するスリットが形成されており、帯状部材12のストレート部17は、めっき処理槽30を貫通している。
【0022】
支持台21の搬送方向上流側にはガイドローラ35が設けられ、支持台21の搬送方向下流側にはガイドローラ36が設けられている。それぞれのガイドローラ35、36は、帯状部材12の搬送方向を横切る方向の位置と上下方向の位置を規制する。装置台座11にはガイドローラ36の下流側に位置させて、洗浄ボックス37が配置されており、洗浄ボックス37には、帯状部材12の被処理面を洗浄するシャワー水洗機38と、洗浄時の帯状部材12に付着した液体を払拭する液切り機39とが設けられている。
【0023】
ガイドローラ35とめっき処理槽30との間には、帯状部材12の基準位置を検出するための位置検出センサ40が設けられている。位置検出センサ40は、発光素子と受光素子とを有し、帯状部材12の搬送方向の基準位置を検出する。
【0024】
図2図4に示されるように、めっき処理槽30の内部には、第1のマスキング治具41と、第2のマスキング治具42が設けられており、2つのマスキング治具41、42のうち、帯状部材12の搬送方向右側のものを、便宜的に第1のマスキング治具41とし、左側のものを第2のマスキング治具42とする。
【0025】
それぞれのマスキング治具41、42のうち帯状部材12側の側面は、平坦面となっている。両方のマスキング治具41、42は、それぞれ帯状部材12の搬送方向に対して直角方向であって帯状部材12に向けて接近離反移動自在にめっき処理槽30に設けられている。マスキング治具41が帯状部材12に接近すると、マスキング治具41は帯状部材12の一方の被処理面T1に押圧される。一方、マスキング治具42が帯状部材12に接近すると、マスキング治具42は帯状部材12の反対側つまり他方の被処理面T2に押圧される。このように、帯状部材12は、両方の被処理面が両方のマスキング治具41、42により押圧されて挟持、つまり挟んだ状態で支持されるので、強く押圧されても、帯状部材12は変形することがない。
【0026】
第1のマスキング治具41は、図4に示されるように、水平方向に帯状部材12に沿って延びる上壁部43aと、これと平行な下壁部44aと、両方の壁部を連結する垂直方向の側壁部45aとを有し、両端部は、図2に示されるように、前壁部46aと後壁部47aにより閉じられている。マスキング治具41の内部にはめっき液が注入される液室48aが設けられている。マスキング治具41の内側の側面、つまり帯状部材12の被処理面T1に対向する側面には、被処理面T1に向けて開口し、液室48aに連通する開口部49aが設けられ、開口部49aには支持枠体50aが設けられている。
【0027】
支持枠体50aには、平板形状のフラットなマスキング板51aが取り付けられている。マスキング板51aは、ゴムシートや軟質のプラスチックシートからなり、弾性を有している。マスキング治具41が帯状部材12に突き当てられると、マスキング板51aは被処理面T1に押圧されて密着する。マスキング板51aには、被処理面T1に施されるめっき必要領域に対応した形状の連通孔が形成されており、めっき不要領域はマスキング板51aにより覆われる。
【0028】
マスキング治具41の上壁部43aには、めっき液供給部材52aが取り付けられており、図示しないホース等の供給管により外部から供給されためっき液は、めっき液供給部材52aから液室48aの内部に注入される。液室48a内には整流板53aが設けられており、整流板53aには多数の貫通孔が設けられ、液室48a内に注入されためっき液は、整流されてマスキング板51aの内面全体に均一に供給される。また、メッシュ状の陽極板54aが液室48a内に設けられており、陽極板54aは図示しない電源ユニットの陽極端子に接続される。これにより、給電手段としての電源ユニットによりめっき液は陽極電位に印加給電される。一方、帯状部材12はテンションローラ13を介して電源ユニットの陰極端子に接続されており、帯状部材12は陰極電位に印加給電される。
【0029】
支持枠体50aには排出口55aが設けられており、排出口55aから排出されためっき液は、めっき処理槽30の底板31に設けられた排出継手56に接続される排出管により外部のめっきサブタンクに送られる。めっきサブタンクに送られためっき液は、フィルタで浄化されて再循環利用される。移動台24には側板33bに隣接させてスライドテーブル付きのエアシリンダ61aが取り付けられ、エアシリンダ61aのスライドテーブル62aに取り付けられた駆動ブロック63aには2本の駆動ロッド64aが取り付けられており、駆動ロッド64aは、側板33bを貫通してマスキング治具41に連結されている。このエアシリンダ61aによって、マスキング治具41は帯状部材12に向けて接近移動する方向と、帯状部材12から離れる方向とに駆動され、マスキング板51aの帯状部材12に対する押圧力が加えられる。
【0030】
第2のマスキング治具42は、第1のマスキング治具41と同様の構造であり、マスキング治具42を構成する部材には、マスキング治具41を構成する部材における符号aに代えて符号bが付されており、詳細な説明を省略する。
【0031】
マスキング治具42の内部にはめっき液が注入される液室48bが設けられており、マスキング治具42内側の側面、つまり帯状部材12の被処理面T2に対向する側面には、被処理面T2に向けて開口し、液室48bに連通する開口部49bが設けられ、開口部49bには支持枠体50bが設けられている。
【0032】
マスキング治具42の支持枠体50bには、マスキング板51bが取り付けられており、マスキング板51bは、マスキング治具42が帯状部材12に突き当てられると、被処理面T2に押圧される。マスキング板51bには、被処理面T2に施されるめっき必要領域に対応した形状の連通孔が形成されており、めっき不要領域はマスキング板51bにより覆われる。
【0033】
マスキング治具42の液室48bには、めっき液供給部材52bからめっき液が注入される。液室48b内には、多数の貫通孔が設けられた整流板53bが設けられ、メッシュ状の陽極板54bが設けられており、陽極板54bは図示しない電源ユニットの陽極端子に接続される。
【0034】
移動台24には側板33bに隣接させてエアシリンダ61bが取り付けられ、駆動ブロック63bには2本の駆動ロッド64bが取り付けられており、駆動ロッド64bは、側板33bを貫通してマスキング治具42に連結されている。このエアシリンダ61bにより、マスキング治具42は帯状部材12に向けて接近移動する方向と、帯状部材12から離れる方向とに駆動される。
【0035】
図5は帯状部材12に施される部分めっきパターンの一例を示す図であり、長尺の帯状部材の一部が示されている。
【0036】
帯状部材12の両側には一定の間隔を隔てて送り穴65が設けられている。この送り穴65の位置を位置検出センサ40で検出することにより、マスキング板51a、51bの帯状部材12に対する搬送方向の基準位置を検出することができる。ただし、送り穴65の位置を基準位置とすることなく、他の部分を基準位置としても良い。
【0037】
図5においてハッチングを付した円形部66と長方形状部67が部分めっきされる部分であり、他の部分にはめっき処理は施されない。この場合には、円形部66と長方形状部67とに対応する領域をめっき必要領域とし、そのめっき必要領域に対応した形状の連通孔が、フラットなマスキング板に形成される。
【0038】
図5は一方面の被処理面に施される部分めっきの部分を示しており、両面を被処理面とする場合には、両方のマスキング板にめっき必要領域に対応した形状の連通孔が形成される。
【0039】
めっき必要領域が形成されるフラットなマスキング板51a、51bは、弾性に富んだ部材により形成され、真っ直ぐに伸びたストレート部の帯状部材12に押圧されるので、従来のように、マスキング部材の円筒面にマスキングパターンを形成する場合よりも、高い加工精度でマスキングパターンを形成することができる。これにより、高精度のパターンでめっき処理を行うことができるとともに、マスキング板からのめっき液の漏出を防止することができ、部分めっき製品の製造歩留まりを固めることができる。
【0040】
上述した部分めっき装置10は、第1のマスキング治具41と第2のマスキング治具42とを備えており、フープ材つまり帯状部材12の両面を被処理面としてこれらに同時にめっき処理を施すことができる。ただし、2つのマスキング治具41、42の一方のマスキング治具のみにめっき液を供給することにより、帯状部材12の一方面つまり片面のみを被処理面としてめっき処理を行うことができる。その場合には、他のマスキング治具のマスキング板としては、めっき必要領域に対応した形状の連通孔が形成されておらず、全体がめっき不要領域となった弾性を有するフラットな板が使用される。弾性を有する板がめっき処理を行わない面に押圧されるので、めっき処理が行われる被処理面からめっき液が漏出することを防止できる。これにより、帯状部材12のめっき処理を行わない面にめっきが付着することを防止することができ、不要なめっきを後工程において除去する必要がなくなり、高品質のめっき処理を歩留まり良く、効率的に行うことが可能となる。
【0041】
次に、図6および図7を参照して、部分めっき装置10により帯状部材12の両面を被処理面T1、T2としてそれぞれに部分めっきを施すためのめっき方法について説明する。
【0042】
部分めっき装置10は、帯状部材12の被処理面T1、T2に図5においてハッチングを付した部分に金めっきを施すために使用することができる。帯状部材12の被処理面には、予め、ニッケル等が下地めっき処理されている。
【0043】
めっき処理を行うには、図1および図2に示されるように、マスキング治具41、42を帯状部材12から離反させた状態のもとで、駆動ローラ15を駆動源により駆動して帯状部材12の搬送を開始する。位置検出センサ40からの信号により帯状部材12が基準位置まで搬送されたことが検出されたら、駆動機構26により移動台24を駆動してめっき処理槽30を、図1に示される初期位置つまり後退限位置から、図6(A)に示すように、前進移動させる。そのときの前進移動速度は、帯状部材12の搬送速度と同一であり、めっき処理槽30は帯状部材12の搬送に同期して前進駆動される。
【0044】
めっき処理槽30と帯状部材12とが同期した状態のもとで、図6(B)に示されるように、第1のマスキング治具41をエアシリンダ61aにより帯状部材12に向けて接近移動させるとともに、第2のマスキング治具42をエアシリンダ61bにより帯状部材12に向けて接近移動させる。これにより、マスキング治具41のマスキング板51aが帯状部材12の被処理面T1に押圧され、マスキング治具42のマスキング板51bが帯状部材12の被処理面T2に押圧され、帯状部材12はマスキング治具41、42により挟持される。図6(B)は挟持工程が終了した状態を示す。
【0045】
このように、帯状部材12が2つのマスキング治具41、42により挟持された状態のもとで、帯状部材12を搬送するとともに移動台24を前進移動しながら、めっき処理を行う。この処理工程においては、液室48a、48bに充填されためっき液が被処理面T1、T2に吹き付けられるとともに、電源ユニットがオンされる。図7(A)は、めっき処理を行いながら、移動台24によりめっき処理槽30が前進限位置にまで到達し、めっき処理槽30の前進移動が停止された状態を示す。
【0046】
移動台24が前進限位置に到達し、めっき処理が終了したら、帯状部材12の搬送を停止し、2つのマスキング治具41、42を、図7(B)に示されるように、帯状部材12から離反させる。離反工程が終了したら、移動台24によりめっき処理槽30を図7(B)に示される前進限位置から、図1に示した初期位置まで後退移動させる。この後退工程が終了したら、上述しためっき処理工程が繰り返される。
【0047】
従来のように、両面に部分めっき処理を行う場合には、少なくとも2台の部分めっき装置が必要であったが、この部分めっき装置10においては、2つのマスキング治具41、42を備えており、帯状部材12の両面に同時に部分めっき処理を行うことができるので、両面に部分めっき処理を行う場合においても、効率的にめっき処理を行うことができる。この部分めっき装置10は、帯状部材12にめっきされる金属の種類としては、金以外に、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの高額な金属を部分めっき処理する場合に好適である。めっき処理後には、部分めっきされた部分を含めて帯状部材から切り出されて、曲げ加工等の加工により、最終製品が製造される。
【0048】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、帯状部材12としては、図5に示したように、全体的に平坦となったものが示されているが、めっき処理前に、一部を打ち抜き加工した部材に対しても、めっき処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
12 帯状部材
13 テンションローラ
15 駆動ローラ
17 ストレート部
18 搬送機構
21 支持台
24 移動台
26 駆動機構
30 めっき処理槽
37 洗浄ボックス
40 位置検出センサ
41 第1のマスキング治具
42 第2のマスキング治具
48a、48b 液室
49a、49b 開口部
51a、51b マスキング板
61a、61b エアシリンダ
T1、T2 被処理面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7