(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】定量噴射ユニット
(51)【国際特許分類】
B65D 83/54 20060101AFI20230424BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B65D83/54 200
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2020514014
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019010054
(87)【国際公開番号】W WO2019202882
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018080114
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131681(JP,A)
【文献】実開平7-8273(JP,U)
【文献】特開2013-180802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/54
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の上部に備えられたバルブのステムに装着されて、前記容器体の内容物を一定量噴射する定量噴射ユニットであって、
前記ステムの先端が挿入され、内壁が前記ステムに固定されるステム挿入孔と、前記ステム挿入孔に連結された、予め定めた容量を有する内部空間である定量室と、前記定量室に連通した噴射口とが設けられた外筒と、
前記噴射口に前記定量室の内側から挿入され、前記噴射口を閉塞する栓部材と、
押しボタンと、
前記押しボタンを前記外筒上に支持する弾性部材と、
前記押しボタンに連結された軸部材とを有し、
前記弾性部材は、前記押しボタンに加えられた押圧力による変位量が、同じ押圧力を前記バルブ内で前記ステムを付勢するばねに加えた場合の変位量よりも小さいことを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の定量噴射ユニットであって、前記押しボタンが押圧されると、前記弾性部材の変位量よりも大きく前記外筒および前記ステムが降下して、前記ステムは、前記内容物を前記ステム挿入孔内に噴射することを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の定量噴射ユニットであって、前記軸部材は、前記押しボタンの押下に伴って降下することにより、前記定量室と前記ステム挿入孔とを連結する連結部の開口を閉塞する構造と、前記開口の閉塞を維持したまま、前記噴射口を開放する方向に栓部材を移動させる構造とを備えることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の定量噴射ユニットであって、前記押しボタンの押下にともなって、前記外筒および前記ステムの降下、前記軸部材による前記連結部の開口の閉塞、前記栓部材による前記噴射口の開放が、この順に生じることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項5】
請求項3または4に記載の定量噴射ユニットであって、前記軸部材は、その軸方向が前記ステムの軸方向と一致するように配置され、下方に向けられた先端を有し、
前記軸部材の先端は、前記定量室と前記ステム挿入孔との前記連結部の開口に挿入された場合、前記連結部の開口を閉塞し、密閉する大きさであることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の定量噴射ユニットであって、前記外筒の前記ステム挿入孔は、その内壁が前記ステムの外壁に密着して気密を保つ内径を有することを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載の定量噴射ユニットであって、前記定量室と前記ステム挿入孔との前記連結部の開口の内周には、可撓性のある弁が配置され、前記弁に前記軸部材の先端が挿入されることにより、前記開口を閉塞することを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項8】
請求項3に記載の定量噴射ユニットであって、前記軸部材は突起部を有し、前記押しボタンの押下に伴って降下することにより、前記突起部が、前記栓部材と接触し、前記噴射口を開放する方向に押して移動させることを
特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の定量噴射ユニットであって、前記栓部材は、前記軸部材の軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記軸部材は、前記栓部材の前記貫通孔を貫通するように配置され、
前記軸部材の突起部は、前記押しボタンの押下に伴って降下して前記栓部材の貫通孔に挿入されることにより前記栓部材と接触し、前記噴射口を開放する方向に前記栓部材を押して移動させることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項10】
請求項
3に記載の定量噴射ユニットであって、前記栓部材の移動方向は、前記軸部材の軸方向に対して直交する方向であることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の定量噴射ユニットであって、前記栓部材を前記噴射口に押し付ける方向に付勢する第2の弾性部材をさらに備えることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の定量噴射ユニットであって、前記栓部材は、その全体が、前記外筒の前記定量室内に配置されていることを特徴とする定量噴射ユニット。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の定量噴射ユニットであって、レバーと、前記押しボタンと接触するカバー部材と、前記レバーの変位を前記押しボタンを押下する方向の前記カバー部材の変位に変換する機構部とを有することを特徴とする定量噴射ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容された内容物を一定量だけ噴射する定量噴射ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエアゾール式の噴射容器は、内容物を収納する容器体と、容器体の上部のバルブとを備え、バルブ中央に、下方移動可能で容器体内の空間と外部空間とを連通するステムを有する。
【0003】
このようなエアゾール式の噴射容器において、ユーザが噴射容器を使用する度に一定量の内容物を噴射する定量噴射機構を備えた、定量噴射容器が提案されている。定量噴射容器には、定量噴射ユニットをバルブ内に備えたものと、着脱可能な定量噴射ユニットがバルブの外部(上部)に設けられたものとがある。定量噴射ユニットをバルブの上部に設けた場合、バルブ内の構成を複雑にする必要が無いために低コストでバルブを製造できる。また、既存のバルブの上部に定量噴射機構を取り付けることもできる。
【0004】
従来の定量噴射ユニットは、その内部に内容物を一定量収納できる定量室を備えており、容器体内の内容物は、ステムを介してこの定量室内に一定量充填された後、噴射口から定量噴射ユニットの外に噴射される。例えば特許文献1~3の定量噴射ユニットでは、ユーザがボタンを押下すると、噴射口が閉じた後に、ステムが押下されて定量室内に内容物が一定量充填される。次にユーザがボタンの押下を解除すると、ステムが復帰した後に噴射口が開放されて、定量室内に充填されていた内容物が定量噴射ユニットの外に噴射される。
【0005】
一方、特許文献4には、ユーザがボタンを押下すると、定量室内に充填されていた内容物が定量噴射ユニットの外に噴射され、ボタンの押下を解除すると、定量室内に内容物が一定量充填される定量噴射ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4144688号公報
【文献】特許第4747325号公報
【文献】特許第4935276号公報
【文献】特許第4973985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に開示される従来の定量噴射ユニットでは、上述の通り、ユーザがボタンを指で押下した後、ボタンから指を離すと、内容物が定量噴射される。このため、通常の押す操作により内容物が噴射される構成とは定量噴射ユニットの操作が異なり、通常の噴射ユニットの操作に慣れているユーザが、従来の定量噴射ユニットを操作すると、噴射されるタイミングの違いに違和感を抱いてしまう可能性がある。
【0008】
一方、特許文献4の定量噴射ユニットでは、ユーザが押しボタンを押下したタイミングで内容物が噴射されるが、押しボタンの復帰時に内容物が定量室内に充填されるため、次の噴射まで内容物が定量室内に充填された状態になり、定量室内の内容物が空気に触れる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、1回の押し操作で内容物を容易に定量噴射させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の定量噴射ユニットは、容器体の上部に備えられたバルブのステムに装着されて、容器体の内容物を一定量噴射する。定量噴射ユニットは、ステムの先端が挿入され、内壁がステムに固定されるステム挿入孔と、ステム挿入孔に連結された、予め定めた容量を有する内部空間である定量室と、定量室に連通した噴射口とが設けられた外筒と、噴射口に定量室の内側から挿入され、噴射口を閉塞する栓部材と、押しボタンと、押しボタンを外筒上に支持する弾性部材と、押しボタンに連結された軸部材とを有し、弾性部材は、押しボタンに加えられた押圧力による変位量が、同じ押圧力をバルブ内でステムを付勢するばねに加えた場合の変位量よりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1回の押し操作で定量噴射ユニット内に内容物を充填させることと、定量噴射ユニットの外に内容物を定量噴射させることを行える。そのため、本発明は、内容物を定量噴射させる操作が容易である。また定量噴射後に、定量室内に内容物が残留することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)~(d)実施形態の定量噴射ユニット10の動作例を示す断面図。
【
図2】定量噴射容器20の(a)側面図、(b)断面図。
【
図3】(a)~(b)定量噴射ユニット10の動作例を示す断面図。
【
図4】定量噴射ユニット10の動作例を示す断面図。
【
図5】実施形態2の定量噴射ユニット10Bの(a)側面図、(b)平面図、(c)断面図。
【
図6】実施形態3の定量噴射ユニット10Cの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態の定量噴射ユニットについて説明する。
【0014】
まず、
図1~4を参照して、定量噴射ユニット10の主な構成例と動作例について説明する。
図1は、ユーザが定量噴射ユニット10を押下するときの定量噴射ユニット10の動作例を示している。
図2(a)、(b)は
図1(a)と同じ静止時の定量噴射ユニット10の動作を示している。これと同様に、
図3(a)は
図1(b)と、
図3(b)は
図1(c)と、
図4は
図1(d)と対応している。
【0015】
図1(a)、
図2(a)、(b)に示すように、定量噴射ユニット10は、内容物を収納する容器体21の上部に備えられた、バルブ22のステム23に装着される。ユーザが定量噴射ユニット10を押下すると、ステム23が押下され、容器体21の内容物が一定量噴射される。なお、以下の説明において、上下方向は、容器体21の底部を下側、バルブ22が取り付けられている側を上側という。
【0016】
図1(a)、
図2(a)、(b)のように、定量噴射ユニット10は、外筒30と、栓部材40と、押しボタン51と、弾性部材60と、軸部材50とを有する。外筒30は、ステム23の先端が挿入され、内壁30a1がステム23に固定されるステム挿入孔30aと、ステム挿入孔30aに連結された、予め定めた容量を有する内部空間である定量室35と、定量室35に連通した噴射口33とを備えている。栓部材40は、定量室35の内側から噴射口33に挿入され、噴射口33を閉塞している。押しボタン51は、ユーザにより操作される。弾性部材60は、押しボタン51を外筒30上に支持する。軸部材50は、押しボタン51に連結されている。弾性部材60の弾性係数は、押しボタン51に加えられた押圧力による変位量が、同じ押圧力をバルブ22内でステム23を付勢するばねに加えた場合の変位量よりも小さくなるように設計されている。
【0017】
軸部材50の上端は、押しボタン51に固定されている。軸部材50は、押しボタン51の押下に伴って降下することにより、定量室35とステム挿入孔30aとを連結する連結部30rの開口を閉塞する構造と、開口の閉塞を維持したまま、噴射口33を開放する方向に栓部材40を移動させる構造とを備える。また、定量室35とステム挿入孔30aとの連結部30rの開口の内周には、可撓性のある弁32が配置されている。
【0018】
図1(a)、
図2は、ユーザが押しボタン51を押下しておらず、ステム23が軸方向に押下されていない、即ち噴射操作がなされないタイミング(静止時という)における定量噴射ユニット10の状態を示している。この静止時に押しボタン51が押圧されると、
図1(b)、
図3(a)に示すように、弾性部材60の変位量よりも大きく外筒30およびステム23が降下して(
図1(b)の作動1、変位量h1)、ステム23が内容物をステム挿入孔30a内に噴射する。ステム挿入孔30a内に噴射された内容物は、連結部30rの開口から定量室35内に
図3(a)のように流入し、定量室35内に充填される。
【0019】
さらに押しボタン51が押圧されると、
図1(c)、
図3(b)に示すように、弾性部材60の変位により軸部材50の先端(下端)が弁32に挿入される(
図1(c)の作動2、変位量h2)。これにより連結部30rの開口が閉塞されるため、定量室35内への内容物の流入が止まる。
【0020】
さらに押しボタン51が押圧されると、
図1(d)、
図4に示すように、弾性部材60の変位により軸部材50が降下し、軸部材50に設けられた突起部50cが、栓部材40と接触し、栓部材40を噴射口33を開放する方向に押して移動させる(
図1(d)の作動3、変位量h3)。これにより噴出口33が開放され、定量室35内に充填されていた内容物が、噴出口33から噴射される。
【0021】
すなわち、押しボタン51の押下にともなって、外筒30およびステム23の降下、軸部材50による連結部30rの開口の閉塞、栓部材40による噴射口33の開放が、この順に生じる。噴射後、押しボタン51からユーザが手を離すと、上記の動作と逆の動作が逆の順番に生じて押しボタン51が復帰する。
【0022】
定量噴射ユニット10では、ユーザが定量噴射ユニット10を1回押すことにより以上の動作が実現されるため、一般的な噴射ユニットの操作に慣れているユーザにとって、内容物を定量噴射させる操作が容易である上に、定量噴射後に定量室35内に内容物が残留することを防ぐことができる。
以下、定量噴射ユニット10の具体的な構成について説明する。
【0023】
図2(b)に示すように、外筒30は、その中心軸に沿う方向に貫通する円筒状のステム挿入孔30aと、ステム挿入孔30aに直交する中空部30bとを有する。ステム挿入孔30aは、その内壁がステム23の外壁に密着して気密を保つ内径を有している。
【0024】
定量室35は、外筒30のステム挿入孔30aに連結された軸方向の空間35aと、径方向に広がり噴射口33に連通する中空部30bとで形成される空間である。軸部材50の先端が弁32に挿入され、軸部材50の先端と弁32とが密着して連結部30rの開口を閉塞することにより、定量室35の下端部分が形成される。また軸部材50の上部の軸部50dの外周面が、円筒30cの内周面と接することにより、定量室35の上端部分が形成される。定量室35の内容物の収容可能量は一定であるため、ユーザの押す力等に左右されることなく、押しボタン51の押下の度に、ステム23から噴出された内容物の一定量が定量室35に収納される。
【0025】
軸部材50は、その軸方向がステム23の軸方向と一致するように配置され、下方に向けられた先端を有する。この先端は、定量室35とステム挿入孔30aとの連結部30rの開口に挿入された場合、連結部30rの開口を閉塞し、密閉する大きさに設計されている。
【0026】
栓部材40は、その全体が、外筒30の定量室35(中空部30b)内に配置され、定量室35内で移動可能である。栓部材40は、軸部材50を軸方向に通過させる貫通孔41を有し、軸部材50は、栓部材40の貫通孔41を貫通するように配置されている。
【0027】
栓部材40は、先端40aと、貫通孔41を挟んで先端40aとは反対側に位置する後端とを有し、後端には、栓部材40の先端40aを噴射口33に押し付ける方向に付勢する第2の弾性部材42が配置されている。これにより、栓部材40の先端40aは、静止時において噴射口33を閉塞している。
【0028】
(定量噴射ユニット10の動作例)
続いて、本実施形態の定量噴射ユニット10の動作例の詳細を
図1~
図4を用いて説明する。なお、
図3では、説明のために、定量噴射ユニット10の各部材のハッチングを省略し、定量室35に充填される内容物を梨地で示している。
【0029】
押しボタン51がユーザから操作されない状態、すなわち静止時においては、
図1(a)と
図2(b)に示すように、弾性部材60が押しボタン51をステム23から遠ざける方向(上方向)に付勢しているため、上端が押しボタン51に固定されている軸部材50も、ステム23の軸方向に沿ってステム23から遠ざかる上方向に付勢されている。よって、静止時には軸部材50もステム23も、押下されておらず最上部に位置している。これにより、ステム23に設けられている不図示の噴出弁は閉じた状態であり、容器体21内は外部空間と遮断されているため、定量室35内には、内容物は充填されていない。
【0030】
この静止時では、軸部材50の先端が弁32より上方に位置しているため、軸部材50は、連結部30rの開口を閉塞していない。また、軸部材50の突起部50cは栓部材40とは接触しておらず、栓部材40の先端40aは、噴射口33に押し付けられており、噴射口33を閉塞している。
【0031】
このような静止時の状態から、ユーザが、指等で押しボタン51をステム23の軸方向に(
図2(b)の矢印A1)に押下すると、弾性部材60の押しボタン51に加えられた押圧力による変位量は、同じ押圧力をステム23を付勢するばねに加えた場合の変位量よりも小さくなるように設計されているため、弾性部材60よりも先にステム23のばねが押し縮められる。そのため、軸部材50が外筒30に対して移動することなく、ステム23と外筒30が軸方向に沿って降下する。
【0032】
ステム23が降下すると、ステム23の噴出弁が開き、大気圧より高い圧力の容器体21内と大気圧の定量噴射ユニット10内との圧力差によって、容器体21内の内容物がステム23の孔23aから噴出される。このとき、
図1(b)、
図3(a)に示すように、連結部30rの開口は軸部材50により閉塞されていないため、噴出された内容物は、外筒30のステム挿入孔30aおよび連結部30rを通って定量室35内に流入する。なお、定量室35の噴射口33は、栓部材40の先端40aにより閉塞されているため、噴射口33から内容物はまだ噴射されない。
【0033】
さらにユーザが押しボタン51をステム23の軸方向に(
図3(a)の矢印A2)に押下して、ステム23が可動域の下端まで移動すると、定量室35の全体にわたって内容物が充填される。
【0034】
さらにユーザが押しボタン51をステム23の軸方向に(矢印A2)に押下すると、ステム23はすでに可動域の下端まで移動していてこれ以上は下降できないため、弾性部材60が縮んで軸部材50がステム23に近づく。
【0035】
すると、
図1(c)、
図3(b)に示すように、軸部材50の先端が弁32に挿入されて軸部材50が連結部30rの開口を閉塞することにより、定量室35内への内容物の流入が止まる。軸部材50が連結部30rの開口を閉塞すると、容器体21内と連結部30r内の圧力が同じになるため、ステム23からの内容物の噴出が止まる。このときはまだ、定量室35の噴射口33は、栓部材40の先端40aにより閉塞されており、噴射口33から内容物は噴射されない。
【0036】
このとき、定量室35には、内容物が気化した液ガスの状態で満たされているため、定量室35内を満たす内容物の量は、一定となっている。
【0037】
さらにユーザが押しボタン51をステム23の軸方向(
図3(b)の矢印A3)に押下すると、弾性部材60がさらに縮んで軸部材50がステム23に近づく。
【0038】
すると、
図1(d)、
図4に示すように、突起部50cは、押しボタン51の押下に伴って降下して、栓部材40の貫通孔41に挿入される。そして、突起部50cは、貫通孔41の内周面41bに接触して内周面41bを押すため、栓部材40を軸部材50の軸方向に対して直交する方向に押して移動させる。これにより、栓部材40の先端40aが噴射口33から離れ、噴出口33を開放する(
図4の矢印A4)。
【0039】
噴射口33が開放されると、定量室35を満たしていた内容物が噴射口33から噴射される。内容物は、気化した液ガスの状態であるため、噴射口33が開くと、一気に噴射される。
【0040】
このとき、軸部材50は、連結部30rの開口を閉塞した状態からさらに下方に移動するため、軸部材50に押された弁32がたわむことにより、弁32に密着して連結部30rの開口を閉塞する。この状態が、軸部材50が最下点に位置した状態である。
【0041】
ユーザが押しボタン51を押下する力を弱めると、弾性部材60の弾性力がステム23を付勢しているばねの弾性力よりも強いため、ステム23のばねよりも先に弾性部材60が元の位置に戻ろうとする。まず、定量噴射ユニット10内の各部材が、押しボタン51が押下されたときと逆順に動作する。弾性部材60の弾性力により押しボタン51が上昇し、これに伴い、軸部材50は、外筒30内で上方に移動する(
図4の矢印A5)。
【0042】
軸部材50が上方に移動すると、栓部材40を押していた力が解除されるため、弾性部材42により栓部材40が先端40a側に押し戻される(矢印A6)。また、このとき軸部材50が弁32に対して上方へ移動するため、弁32のたわみが解除される。
【0043】
栓部材40が先端側40a側に押し戻されて、栓部材40の先端40aが
図3(b)のように噴射口33を閉塞すると、噴射口33からの内容物の噴射が止まる。
【0044】
ユーザが押しボタン51を押下する力をさらに弱めると、さらに弾性部材60の弾性力により押しボタン51と軸部材50が上昇し、
図1(a)
図2(b)の定量噴射ユニット10の各部材が静止時の状態に戻る。このとき、弁32から軸部材50も離れるので、連結部30rの開口の軸部材50による閉塞が解除される。
【0045】
ユーザが押しボタン51から指などを離すことにより押しボタン51の押下が解除されると、ステム23のばねの弾性力により、ステム23は、定量噴射ユニット10と一体となって押し上げられ、静止時の位置に復帰する。これにより、ステム23の噴出弁が閉じ、容器体21内は再び外部空間と遮断される。
【0046】
このように、ユーザによる押しボタン51の1回の押し操作により、定量噴射ユニット10は、内容物を定量室35内に充填させる動作と、充填した内容物を噴射口33から定量噴射ユニット10の外に噴射させる動作とを行うことができる。
【0047】
また、定量噴射ユニット10は、定量室35内を軸部材50と栓部材40とが移動することにより、定量室35内の内容物を全て噴出口33から噴射させることができる。そのため、定量室35内に充填された内容物は、定量室35内に残留しない。これにより、定量噴射容器20の使用後に定量室35内の内容物が空気に触れることもない。
【0048】
また定量噴射ユニット10は、軸部材50の移動により、定量室35への内容物の流入口となる連結部30rの開口を開閉させる動作と、噴出口33を開閉させる動作との両方を実行できるため、少ない部品点数で構成可能である。
【0049】
また、定量噴射ユニット10は、ステム23に取り付けられて使用されるため、バルブのサイズによらず、いかなるバルブに対しても取り付け可能である。ここで、定量噴射ユニット10が備えられた定量噴射容器20の全体構成について補足する。
【0050】
容器体21は、中心軸を中心とした回転体である。容器体21に収納される内容物には、用途に応じた薬剤成分、溶剤、その他の添加物を必要に応じて適宜混合した液剤を含む。また内容物には、液剤に加えて、液剤を噴射させるための噴射剤として、液化ガスや液剤に可溶な圧縮ガスを含む。
【0051】
バルブ22は、容器体21の上部開口を覆うマウンテンカップ22bを備え、マウンテンカップ22bの中央(容器体21の中心軸上)に、ステム23が設けられている。ステム23は、上部の一部がバルブ22より外側に位置し、残部が容器体21内に位置しており、不図示のばねにより上方に付勢されている。
【0052】
なお図示しないが、定量噴射容器20には、定量噴射ユニット10の少なくとも一部を覆うキャップが取り付けられていてもよく、このキャップが、定量噴射容器20から着脱可能であってもよい。
【0053】
定量噴射容器20を構成する各部品は、内容物によって侵されない材料であれば、特に断らない限り、一般的な容器に用いられるプラスチック、ゴム、金属、セラミックス等の材料から用途に合わせて任意の材料を選択して用いることができる。
【0054】
(実施形態1の定量噴射ユニット10A)
図2(b)を用いて、実施形態1の定量噴射ユニット10Aについて具体的に詳しく説明する。定量噴射ユニット10Aの外筒30は、ステム23の中心軸と一致する中心軸を有しかつ径の異なる円筒が積層され一体となった形状をしている。具体的には、外筒30は、ステム23に取り付けられる側の円筒から順に、外筒下部30Aと、外筒中部30Bと、外筒上部30Cとから構成される。
【0055】
外筒下部30Aは、内壁30a1の下端に、ステム23の上端縁部に係合する段差31を有する。内壁30a1の段差31の上方には、弁32が設けられている。弁32は、円筒の上端から内側下方に折れ曲がり、その折れ曲がった先端32aが、ステム23側に向いた円形状である。先端32aの円形の中心軸は、ステム23の中心軸と一致している。弁32は、ポリエチレン等の樹脂やゴム部材など、力が加えられることにより弾性変形しやすい材料により構成されていることが好ましい。
【0056】
外筒中部30Bの内部には、中空部30bが設けられており、外筒中部30Bの外周部からは、噴射口33が突出している。
【0057】
外筒上部30Cには円筒30cが設けられており、円筒30cの内周面が、軸部材50の上下動を案内する。また、外筒上部30Cは、円筒30cの外周側に、円筒30dを有する。円筒30dの上端は、外周縁が外周方向に広がっており、上下に厚みを有した円環部30eを有する。
【0058】
栓部材40は、貫通孔41よりも噴射口33側が、先端40aに向かうほど細くなっている。弾性部材42の両端は、栓部材40の後端と、外筒中部30Bの内壁とにそれぞれ固定されている。静止時において、栓部材40の貫通孔41の中心は、ステム23の中心軸よりも、先端40a寄りに位置する。
【0059】
栓部材40の外周面には、溝やリブなどが設けられていてもよく、この溝やリブなどに沿って、栓部材40の周囲を内容物が移動できるようにしてもよい。また、栓部材40は、貫通孔41から栓部材40の周囲に内容物を移動させるために、貫通孔41から径方向に広がる方向に貫通した孔を有していてもよい。
【0060】
一方、軸部材50は、ステム23に近い下端から順に、上下方向に長い長球部50aと、軸部50bと、栓部材40の移動を誘導する突起部50cと、軸部50dとを備えている。
【0061】
長球部50aの最も径が大きな部分の径は、弁32の先端32aの径よりも大きいため、軸部材50がステム23に近づくと、長球部50aは、先端32aと接し、さらに軸部材50がステム23に近づくと、弁32の先端32aを押下してたわませ、弁32と密着して連結部30rを閉塞する。
【0062】
軸部50bは、栓部材40の貫通孔41を貫通する円筒軸であり、その軸方向の長さは、貫通孔41よりも、長球部50aが静止時から連結部30rの開口を閉塞するまでの移動量だけ長い。
【0063】
突起部50cは、下部から上部に向けて径が徐々に広がる方向に湾曲しており、その径が最も大きな部分は、栓部材40の貫通孔41内を内周面41bに接しながら移動できる程度の大きさである。静止時において、突起部50cの下端は栓部材40の貫通孔41より上に位置している。軸部材50がステム23に向かって下降すると、突起部50cの下端と内周面41bの弾性部材42側の上端が接する。さらに軸部材50は、下降すると、内周面41bを突起部50cの湾曲面に沿って弾性部材42側に押す。これにより、栓部材40の先端40aが噴射口33から離れる。軸部材50が上下移動する際、軸部50dは円筒30cの内周面に接しながら上下移動する。
【0064】
軸部50dの上端には、押しボタン51が固定されており、押しボタン51は、弾性部材60により外筒30上に支持されている。押しボタン51は、軸部50dの上端に設けられた円板51Aと、円板51Aの周囲に固定された円筒52とから形成されている。弾性部材60の下端は、外筒30の円筒30cと円筒30dの間に固定され、弾性部材60の上端は、円板51Aの下面に固定されている。
【0065】
円筒52の下端は、内周縁が内周方向に広がっており、上下に厚みを有した円環部52eを有する。静止時において、円環部52eの上面は、円筒30dの円環部30eの下面と接している。軸部材50が外筒30に対して上下移動する際には、円筒52の内周面が円筒30dの円環部30eの外周面と接し、かつ、円環部52eの内周面が円筒30dの外周面と接しながら安定して上下移動する。
【0066】
外筒30、軸部材50の材質としては、ポリプロピレン、高濃度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの樹脂を使用することができる。栓部材40には、ポリプロピレン、高濃度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等を使用することができる。弾性部材60、42には、樹脂ばね、金属ばね、コイルばね等の弾性力を有するあらゆる部材を用いることができる。
【0067】
(実施形態2の定量噴射ユニット10B)
実施形態2の定量噴射ユニット10Bを
図5を用いて説明する。
図5は、実施形態2の定量噴射ユニット10Bの(a)側面図、(b)上から見た平面図、(c)断面図である。定量噴射ユニット10Bは、実施形態1の定量噴射ユニット10Aに対して、レバー53が引かれると内容物が噴射される点で異なっている。以下、定量噴射ユニット10Bと定量噴射ユニット10Aとで異なる構成について説明する。
【0068】
定量噴射ユニット10Bは、レバー53と、押しボタン51に接触するカバー部材54と、レバー53の変位を押しボタン51を押下する方向のカバー部材54の変位に変換する機構部54a1とを有する。カバー部材54は、ステム23に対して着脱可能に取り付けられ、定量噴射ユニット10Bの上部と、側部を、覆っている。以下、カバー部材54の構成について詳しく説明する。
【0069】
カバー部材54は、バルブ22のマウンテンカップ22b外周と係合することにより容器体21に着脱可能に固定された円筒状のカバー基部54aと、カバー基部54aに対して回転軸54cで回転可能に取り付けられた回転部54bとから構成される。
図5(b)に示すように、カバー部材54の上面は、カバー基部54aと連続する円形の上面部と、その中央に設けられた帯状の回転部54bとに分割された形状をしている。回転部54bの噴射口33側の一端には、レバー53が設けられている。レバー53をステム23の中心軸に近づけるようにユーザが引くことにより、ステム23の軸方向に直交する回転軸54cを中心として、回転部54bが回転する。
【0070】
図5(c)に示すように、レバー53は、噴射口33の下部からステム23の軸方向に対して傾いて伸びており、レバー53の先端は、回転軸54bよりも下方に設けられている。レバー53の上部には、噴射口33を回避する孔33aが設けられていて、孔33aから噴射口33が突出している。
【0071】
回転部54b上部の天板には、押しボタン51の円板51Aが下方からはめ込まれている。また、カバー基部54aは中心部に円筒状の孔(機構部54a1)を有しており、この機構部54a1の内周面が、外筒下部30Aの外周よりやや大きい内径を有している。
【0072】
カバー部材54の構成は、容器体21に対して着脱可能であることと、円板51Aをステム23の軸方向に沿って押下することができれば、上述した構成に限られない。
【0073】
なお、本例の栓部材40を噴射口33側に付勢する弾性部材42には、コイルばね42Bを使用している。
【0074】
定量噴射ユニット10Bの動作例は、実施形態1の定量噴射ユニット10Aとほぼ同じであるが、ユーザが押しボタン51を押下する方法が、定量噴射ユニット10Aとは異なる。定量噴射ユニット10Bでは、ユーザが指などでレバー53を引くことにより、押しボタン51が押下される。その動作について詳しく説明する。
【0075】
まず、ユーザが指などでレバー53を矢印A方向に引くと、レバー53が、回転軸54cを中心としてステム23に近づく方向に回転する。レバー53が回転することで回転部54bの天板によって押しボタン51が押下される。押しボタン51が押下されると、外筒下部30Aが機構部54a1に接しながら移動することにより、レバー53の回転による変位が、押しボタン51を押下する方向のカバー部材54の変位に変換される。すると、外筒下部30Aが軸方向に沿ってステム23を押下するので、ステム23は、軸方向に沿って押下される。
【0076】
また、ユーザがレバー53から指を離す等することにより、レバー53が矢印A方向とは逆に回転すると、外筒下部30Aが機構部54a1に接しながら移動することにより、レバー53の回転による変位が、押しボタン51を引き上げる方向のカバー部材54の変位に変換されるため、押しボタン51の押下が解除される。
【0077】
このように、実施形態2の定量噴射ユニット10Bは、ユーザが指でレバー53を軽く引くことで、てこの原理でステム23を押下することができる構成である。そのため、定量噴射ユニット10Bでは、実施形態1の定量噴射ユニット10Aで得られた効果に加え、ユーザがより軽い力をレバー53に加えることにより内容物を定量噴射させる操作を行うことができるという効果を得られる。
【0078】
なお、軸部材50を押下する機構は、この例に限られない。例えば、押しボタン51は省略されてもよいし、回転軸54bの位置やレバー53の位置は、上述した位置とは異なっていてもよいし、外筒30の側面に設けられた押しボタンをユーザが押すことにより軸部材50が押下されてもよい。また、噴射口33の向きも、ステム23の軸方向に直交した向きに限られず、ステム23の軸方向に内容物が噴射されても、ステム23の軸方向に対して傾いた方向に内容物が噴射されてもよい。
【0079】
(実施形態3の定量噴射ユニット10C)
実施形態3の定量噴射ユニット10Cを
図6を用いて説明する。定量噴射ユニット10Cでは、軸部材50と外筒30の円筒30cとの間に空間があり、この空間にシール弁55が設けられている。すなわち、定量噴射ユニット10Cは、軸部材50の周囲にシール弁55が配置され、シール弁55が定量室35に充填された内容物の上方への移動を制限する点が、上述した定量噴射ユニット10A、10Bとは異なっている。
【0080】
シール弁55の上部は、軸部材50の周囲と円板51とに固定されていて、シール弁55の下部は、つばのように外方向に広がっている。シール弁55の下端は外筒30の円筒30cと接しており、シール弁55の下部が、定量室35のステム挿入孔30aの上端部分を形成している。
【0081】
軸部材50が静止時の状態からステム23の軸方向に沿って押下されると、シール弁55の下端は、円筒30cに接しながら押下されるので、上方にむけてたわむ。これにより、シール弁55は、定量室35内に充填された内容物が、軸部材50と外筒30の円筒30cと間から円筒状30cの上端に向けて流れ出ないようにすることができる。
【0082】
本例の栓部材40を付勢する弾性部材42には、シール弁55の下部と同形状の弁状の弾性部材42Cを用いている。弁状の弾性部材42Cは、その先端が栓部材40に向かって広がっている。弾性部材42Cの先端が広がった内部には、栓部材40の端部が挿入され、接している。軸部材50の移動により栓部材40が弾性部材42C側に動くと、弾性部材42Cは、栓部材40の端部により押されてたわみ、栓部材40を噴射口33側に戻そうとする弾性力が働く。
【0083】
シール弁55には例えばポリエチレン等の樹脂やゴム部材、弾性部材42Cの材質にはポリプロピレン、高濃度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の弾性力を有する部材を使用することができる。
【0084】
なお、上述した定量噴射ユニット10A~10Cにおいて、軸部材50、押しボタン51、シール弁55は、一体となって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…定量噴射ユニット、20…定量噴射容器、21…容器体、22…バルブ、23…ステム、30…外筒、30a…ステム挿入孔、30r…連結部、32…弁、33…噴出口、35…定量室、40…栓部材、50…軸部材、51…押しボタン、60…弾性部材、53…レバー、54…カバー部材