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特許7266907電池性能評価装置および電池性能評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電池性能評価装置および電池性能評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230424BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20230424BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20230424BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230424BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230424BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230424BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
G01R31/3828
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021130122
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023024065
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹野 諭
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187264(WO,A1)
【文献】特開2013-53943(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020250(WO,A1)
【文献】特開2021-69163(JP,A)
【文献】特許第6997473(JP,B2)
【文献】特許第7090949(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象二次電池が搭載されている対象機器から、当該対象二次電池の複数の特性パラメータ測定値を受信する入力処理要素と、
現在特性推定処理要素と、
初期特性推定処理要素と、
劣化状態推定処理要素とを備え、
前記対象機器が電源OFF状態またはスリープ状態から電源ON状態または起動状態に切り替えられたという第1指定条件が充足される前であって、前記対象二次電池に流れる電流が0である第1時点を開始時点とし、前記第1時点の後で前記第1指定条件が充足されてから前記対象二次電池に電流が流れる中間期間を経て前記対象二次電池に流れる電流が0になったという第2指定条件が充足された後の第2時点を終了時点とする期間を指定期間として、
前記現在特性推定処理要素は、前記指定期間における、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての、前記対象二次電池の電流の測定値の時系列に基づいて、前記中間期間における前記対象二次電池の電流の時間積分値または累計値から算出された現在電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1現在指標値を推定し、
前記初期特性推定処理要素は、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける当該対象二次電池の開放電圧の測定値の差分と、前記現在電池容量の差分とを第1初期特性モデルに対して入力することにより、前記第1初期特性モデルの出力として求められる、前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける前記対象二次電池の初期電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1初期指標値を推定し、
前記劣化状態推定処理要素は、前記第1現在指標値の前記第1初期指標値に対する比率を主変数とする減少関数にしたがって第1劣化度を推定することを特徴とする
電池性能評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池性能評価装置において、
前記初期特性推定処理要素が、前記指定期間の任意の時点における前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記対象二次電池の温度の測定値を前記入力処理要素から受信することにより、対応する前記第1初期特性モデルを規定するための第1初期特性モデルパラメータを定めることを特徴とする
電池性能評価装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池性能評価装置において、
前記初期特性推定処理要素は、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記指定期間の任意の時点における前記対象二次電池の電圧および電流のうち少なくとも一方の測定値を第2初期特性モデルに入力することにより、前記第2初期特性モデルの出力として求められる前記対象二次電池の初期内部抵抗を主変数とする増加関数にしたがって第2初期指標値を推定し、
前記現在特性推定処理要素は、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記指定期間における前記対象二次電池の開放電圧、電圧および電流の測定値に基づき算出された、前記対象二次電池の現在内部抵抗を主変数とする増加関数にしたがって第2現在指標値を推定し、
前記劣化状態推定処理要素は、前記第2現在指標値の前記第2初期指標値に対する比率を主変数とする増加関数にしたがって第2劣化度を推定することを特徴とする電池性能評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電池性能評価装置において、
前記初期特性推定処理要素が、前記特性パラメータ測定値としての前記指定期間の任意の時点における前記対象二次電池の温度の測定値を前記入力処理要素から受信することにより、対応する前記第2初期特性モデルを規定するための第2初期特性モデルパラメータを定めることを特徴とする
電池性能評価装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電池性能評価装置において、
前記劣化状態推定処理要素が、前記第1劣化度および前記第2劣化度を複合した複合劣化度を求める
電池性能評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電池性能評価装置において、
前記劣化状態推定処理要素が、前記複合劣化度を第1重み係数C1と第2重み係数C2を含む関係式にしたがって算出し、
前記指定期間における前記対象二次電池の電流の測定値の時系列における分散が閾値未満である場合は前記第1重み係数C1を前記第2重み係数C2よりも大きく、かつ、その差分を大きくして前記複合劣化度を求め、前記指定期間における前記対象二次電池の電流の測定値の時系列における分散が前記閾値以上である場合は前記第1重み係数C1を前記第2重み係数C2よりも小さく、かつ、その差分を大きくして前記複合劣化度を求める
電池性能評価装置。
【請求項7】
対象二次電池が搭載されている対象機器が電源OFF状態またはスリープ状態から電源ON状態または起動状態に切り替えられたという第1指定条件が充足される前であって、前記対象二次電池に流れる電流が0である第1時点を開始時点とし、前記第1時点の後で前記第1指定条件が充足されてから前記対象二次電池に電流が流れる中間期間を経て前記対象二次電池に流れる電流が0になったという第2指定条件が充足された後の第2時点を終了時点とする期間を指定期間として、
前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける当該対象二次電池の開放電圧の測定値と、前記指定期間における当該対象二次電池の電流の測定値の時系列と、を第1初期特性モデルに対して入力することにより、第1初期特性モデルの出力として求められる、前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける前記対象二次電池の初期電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1初期指標値を推定する初期特性推定工程と、
前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける前記対象二次電池の開放電圧の測定値と、前記指定期間における当該対象二次電池の電流の測定値の時系列と、に基づき、前記中間期間における前記対象二次電池の電流の時間積分値または累計値から算出された現在電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1現在指標値を推定する現在特性推定工程と、
前記第1初期指標値の前記第1現在指標値に対する比率を主変数とする減少関数にしたがって第1劣化度を推定する劣化度評価工程と、を含んでいることを特徴とする
電池性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池の劣化状態を判定するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者により、対象となる二次電池それ自体の特性パラメータの初期測定結果が存在しない場合でも、当該二次電池の劣化状態を判定するための技術的手法が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、二次電池の電圧および電流のそれぞれの測定値(V(k),I(k))に基づき、初期特性モデルを表わす多変数関数(G)にしたがって、電圧(V)の初期時点における値が初期特性推定値(V(0←k))として計算される。当該初期特性推定値(V(0←k))が、二次電池の劣化度の評価基準とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6745554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、当該先行技術によれば、二次電池の内部抵抗が考慮されて初期特性モデルが構築されているため、当該二次電池の内部抵抗の変化に応じた劣化状態は評価されうるものの、二次電池の電池容量が考慮されていないため、当該二次電池の電池容量の変化に応じた劣化状態の評価が困難になる可能性がある。このため、二次電池の電池容量が初期特性から比較的大きく変化しているにもかかわらず、当該二次電池の内部抵抗の初期特性からの変化量が小さいために、二次電池の劣化度が不適当に低く評価される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、二次電池の電池容量の変化態様に鑑みて、当該二次電池の性能の評価精度の向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池性能評価装置は、
対象二次電池が搭載されている対象機器から、当該対象二次電池の複数の特性パラメータ測定値を受信する入力処理要素と、
現在特性推定処理要素と、
初期特性推定処理要素と、
劣化状態推定処理要素とを備え、
前記対象機器が電源OFF状態またはスリープ状態から電源ON状態または起動状態に切り替えられたという第1指定条件が充足される前であって、前記対象二次電池に流れる電流が0である第1時点を開始時点とし、前記第1時点の後で前記第1指定条件が充足されてから前記対象二次電池に電流が流れる中間期間を経て前記対象二次電池に流れる電流が0になったという第2指定条件が充足された後の第2時点を終了時点とする期間を指定期間として、
前記現在特性推定処理要素は前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての、前記指定期間における前記対象二次電池の電流の測定値の時系列に基づいて、前記中間期間の開始時点および終了時点のそれぞれにおける前記対象二次電池の電流の時間積分値または累計値から算出された現在電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1現在指標値を推定し、
前記初期特性推定処理要素は、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける当該対象二次電池の開放電圧の測定値の差分と、前記現在電池容量の差分とを第1初期特性モデルに対して入力することにより、前記第1初期特性モデルの出力として求められる、前記第1時点および前記第2時点のそれぞれにおける前記対象二次電池の初期電池容量の差分を主変数とする増加関数にしたがって第1初期指標値を推定し、
前記劣化状態推定処理要素は、前記第1現在指標値の前記第1初期指標値に対する比率を主変数とする減少関数にしたがって第1劣化度を推定する。
【0007】
当該構成の電池性能評価装置によれば、第1初期指標値および第1現在指標値に基づいて第1劣化度が評価される。「第1初期指標値」は、対象二次電池に電流が流れている期間を含む指定期間の開始時点および終了時点のそれぞれにおける当該対象二次電池の初期電池容量(推定値)の差分に応じた値である。対象二次電池の初期電池容量(推定値)の差分は、指定期間の開始時点および終了時点のそれぞれにおける対象二次電池の開放電圧の測定値の差分と、指定期間の開始時点および終了時点のそれぞれにおける対象二次電池の現在電池容量の差分とが第1初期特性モデルに対して入力されることにより、第1初期特性モデルの出力として求められる値である。「第1現在指標値」は、指定期間の開始時点および終了時点のそれぞれにおける対象二次電池の現在電池容量の差分に応じた値である。対象二次電池の現在電池容量の差分は、指定期間における対象二次電池の電流の測定値の時系列に基づいて求められる値である。よって、第1劣化度に基づき、対象二次電池の初期特性を基準とした電池容量の変化に由来する、当該対象二次電池の性能の評価精度の向上が図られる。
【0008】
前記構成の電池性能評価装置において、
前記初期特性推定処理要素は、前記指定期間の任意の時点における前記対象二次電池の電圧および電流のうち少なくとも一方の測定値を第2初期特性モデルに入力することにより、前記第2初期特性モデルの出力として求められる前記対象二次電池の初期内部抵抗を主変数とする増加関数にしたがって第2初期指標値を推定し、前記現在特性推定処理要素は、前記入力処理要素により受信された前記特性パラメータ測定値としての前記指定期間における前記対象二次電池の開放電圧、電圧および電流の測定値に基づき算出された、前記対象二次電池の現在内部抵抗を主変数とする増加関数にしたがって第2現在指標値を推定し、前記劣化状態推定処理要素は、前記第2現在指標値の前記第2初期指標値に対する比率を主変数とする増加関数にしたがって第2劣化度を推定する
ことが好ましい。
【0009】
当該構成の電池性能評価装置によれば、第2初期指標値および第2現在指標値に基づいて第2劣化度が評価される。「第2初期指標値」は、対象二次電池の初期内部抵抗に応じた値である。対象二次電池の初期内部抵抗は、対象二次電池の電圧および電流のうち少なくとも一方の測定値が、第2初期特性モデルに対して入力されることにより、第2初期特性モデルの出力として求められる値である。「第2現在指標値」は、対象二次電池の現在内部抵抗に応じた値である。対象二次電池の現在内部抵抗は、対象二次電池の開放電圧、電圧および電流の測定値に基づいて求められる値である。よって、第2劣化度に基づき、対象二次電池の初期特性を基準とした内部抵抗の変化に由来する、当該対象二次電池の性能の評価精度の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態としての電池性能評価装置の構成に関する説明図。
図2】電池性能評価装置の機能を表わすブロックダイヤグラム。
図3】二次電池のI-V特性に関する説明図。
図4】本発明の一実施形態としての電池性能評価方法に関する説明図。
図5】二次電池の開放電圧-電池容量の関係に関する説明図。
図6】劣化診断情報の出力例に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(電池性能評価装置の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての電池性能評価装置は、対象機器200とネットワークを介して通信可能な一または複数のサーバーにより構成されている。電池性能評価装置100は、対象機器200に電源として搭載されている対象二次電池220の劣化状態を判定する。
【0012】
電池性能評価装置100は、入力処理要素102と、出力処理要素104と、初期特性推定処理要素110と、現在特性推定処理要素120と、劣化状態推定処理要素140と、を備えている。
【0013】
入力処理要素102は、対象機器200から、当該対象機器200に搭載されている対象二次電池220の電圧Vおよび電流I等の測定値を受信する。出力処理要素104は、対象二次電池220の劣化状態推定結果またはこれに応じて生成された劣化診断情報を対象機器220に対して送信する。
【0014】
初期特性推定処理要素110、現在特性推定処理要素120および劣化状態推定処理要素140のそれぞれは、共通のまたは別個のプロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、対象二次電池220の特性を表わす特性パラメータなどの様々なデータのほか、プログラム(ソフトウェア)が記憶保持されている。対象二次電池220またはこれが搭載されている対象機器200の種類を識別するための複数の識別子のそれぞれと、複数のモデルのそれぞれとが対応付けられてメモリに記憶保持されている。プロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、各演算処理要素110、120、130に割り当てられたタスクが実行される。
【0015】
対象機器200は、入力インターフェース202と、出力インターフェース204と、制御装置210と、対象二次電池220と、センサ群222と、を備えている。対象機器200は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、家電製品または電動自転車等の移動体など、対象二次電池220を電源とするあらゆる機器を含んでいる。
【0016】
制御装置210は、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、特性パラメータの測定値の時系列などの様々なデータが記憶保持される。制御装置210は、対象二次電池220から供給電力に応じて作動し、通電状態において対象機器200の動作を制御する。対象機器200の動作には、当該対象機器200を構成するアクチュエータ(電動式アクチュエータなど)の動作が含まれる。制御装置210を構成するプロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、割り当てられたタスクを実行する。
【0017】
対象二次電池220は、例えばリチウムイオンバッテリであり、ニッケル・カドミウム電池等のその他の二次電池であってもよい。センサ群222は、対象二次電池220の特性パラメータのほか、対象機器200の制御に必要なパラメータの値を測定する。センサ群222は、例えば対象二次電池220の電圧、電流および温度のそれぞれに応じた信号を出力する電圧センサ、電流センサおよび温度センサにより構成されている。
【0018】
電池性能評価装置100は対象機器200に搭載されていてもよい。この場合、ソフトウェアサーバー(図示略)が、対象機器200が備えている制御装置210を構成する演算処理装置に対して劣化判定用ソフトウェアをダウンロードさせることにより、当該演算処理装置に対して電池性能評価装置100としての機能を付与してもよい
【0019】
(各演算処理要素の構成)
図2には、各演算処理要素110、120、140の機能を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0020】
初期特性推定処理要素110は、第1初期特性モデルパラメータ記憶部1110および第1初期指標値決定部111としての機能、ならびに、第2初期特性モデルパラメータ記憶部1120および第2初期指標値決定部112としての機能を備えている。現在特性推定処理要素120は、第1現在指標値決定部121および第2現在指標値決定部122としての機能を備えている。劣化状態推定処理要素140は、第1劣化度評価部141および第2劣化度評価部142としての機能を備えている。
【0021】
第1初期特性モデルパラメータ記憶部1110は、参照二次電池と同一規格または同一種類の任意の二次電池の初期特性を表わす第1初期特性モデルパラメータq1(p1)を記憶保持する。第1初期特性モデルパラメータq1(p1)は、二次電池の規格または種類を識別するための複数の識別子IDおよび複数の第1特性パラメータp1の各測定結果に対応する複数の値を有する。
【0022】
第1初期特性モデルは、規格が相違する複数の参照二次電池のそれぞれに関して、開放電圧差分ΔVOC、温度Θおよび電池容量差分ΔQの関係が、例えば、基準開放電圧差分ΔVOC0(電池の仕様または規格により定められている。)および基準温度Θ0(例えば、室温付近の温度20~25℃)を用いて関係式(110)により近似的に表わされている。
【0023】
Q(VOC,Θ)=Q(VOC0,Θ0)+(∂Q/∂VOC)(VOC-VOC0)+(∂Q/∂Θ)(Θ-Θ0) ‥(110)。
【0024】
図3には、電流が流れていない状態から電流が流れている期間[τ1,τ2]を経て電流が流れていない状態に戻る際の、初期特性の二次電池の電流I-電圧V特性曲線が破線で例示され、ある程度劣化が進行した二次電池の電流I-電圧V特性曲線が実線で例示されている。一点鎖線は初期特性の二次電池の開放電圧 VOC の計算上の変化を示している。図3から、二次電池の劣化が進行するほど、電流が流れている期間における当該二次電池の電圧Vの変化量が大きくなる傾向があることがわかる。また、開放電圧VOC の変化量も大きくなる。図3のt1、2 は開放電圧の測定時間であり、電流印加後から拡散現象が収束する時間経過をもって定義される。
【0025】
例えば、図3に示されている指定期間[t1,t2]の開始時点t=t1および終了時点t=t2のそれぞれにおける参照二次電池の開放電圧VOCの差分ΔVOCが推定される。指定期間における参照二次電池の温度平均値または指定期間に含まれる任意の時点における温度が温度Θとして推定される。図3に示されているように、指定期間のうち電流が流れている期間[τ1,τ2]の開始時点t=τ1および終了時点t=τ2のそれぞれにおける電池容量Qの差分ΔQが、参照二次電池の電池容量差分ΔQとして推定される。関係式(110)において温度Θに関する項(右辺第3項)が省略されていてもよい。
【0026】
第1初期特性モデルは、1次の偏微分係数(∂Q/∂p1)(p1=VOC,Θ)に代えてまたは加えてm次(2≦m)の偏微分係数(∂mQ/∂p1 m)を用いて、例えば、関係式(111)~(112)のいずれかにより表わされていてもよい。
【0027】
Q(VOC,Θ)=Q(VOC0,Θ0)+(∂Q/∂VOC)(VOC-VOC0)+‥+(∂mQ/∂VOC m)(VOC-VOC0m+(∂Q/∂Θ)(Θ-Θ0)+‥+(∂mQ/∂Θm)(Θ-Θ0m ‥(111)。
【0028】
Q(VOC,Θ)=Q(VOC0,Θ0)+(∂2Q/∂VOC∂Θ)(VOC-VOC0)(Θ-Θ0) ‥(112)。
【0029】
第1初期特性モデルは、前記関係式において温度Θに関する項が省略された関係式により表わされていてもよい。第1初期特性モデルは、関係式ではなく、当該関係式と同等の入力-出力特性を有する機械学習モデルまたは深層学習モデルなどのモデルとして定義されていてもよい。
【0030】
初期特性における参照二次電池の開放電圧差分ΔVOC、電池容量差分ΔQおよび温度Θが測定され、さまざまな当該測定結果(ΔVOC、ΔQ、Θ)に基づき、1次偏微分係数(∂Q/∂p1)(p1=VOC,Θ)が推定される。指定期間[t1,t2]における対象二次電池の電流I(t)の時間積分値または累計値が対象二次電池の電池容量差分ΔQ’として推定される。
【0031】
【数1】
【0032】
そして、当該偏微分係数(∂Q/∂p1)が、第1初期特性モデルパラメータq1(p1)として第1初期特性モデルパラメータ記憶部1110に記憶保持される。離散的な偏微分係数(∂Q/∂p1)の推定結果に基づき、当該偏微分係数(∂Q/∂p1)が主変数VOC,Q,Θの連続関数により近似表現され、第1初期特性モデルパラメータq1(p1)を定めるための当該連続関数が第1初期特性モデルパラメータ記憶部1110に記憶保持されていてもよい。
【0033】
第2初期特性モデルパラメータ記憶部1120は、参照二次電池と同一規格または同一種類の任意の二次電池の初期特性を表わす第2初期特性モデルパラメータq2(p2)を記憶保持する。第2初期特性モデルパラメータq2(p2)は、二次電池の規格または種類を識別するための複数の識別子IDおよび複数の第2特性パラメータp2の各測定結果に対応する複数の値を有する。
【0034】
第2初期特性モデルは、規格が相違する複数の参照二次電池のそれぞれに関して、内部抵抗r、電圧V、電流Iおよび温度Θの関係が、例えば、基準電圧V0および基準電流I0(電池の仕様または規格により定められている。)ならびに基準温度Θ0(例えば、室温付近の温度20~25℃)を用いて関係式(120)により近似的に表わされている。
【0035】
r(V,I,Θ)=r(V0,I0,Θ0)+(∂r/∂V)(V-V0)+(∂r/∂I)(I-I0)+(∂r/∂Θ)(Θ-Θ0) ‥(120)。
【0036】
例えば、図3に示されている指定期間[t1,t2]の任意の時点における参照二次電池の電圧V、電流Iおよび温度Θが測定される。関係式(221)において温度Θに関する項(右辺第4項)が省略されていてもよい。
【0037】
第2初期特性モデルは、1次の偏微分係数(∂r/∂p2)(p2=V,I,Θ)に代えてまたは加えてm次(2≦m)の偏微分係数(∂mr/∂p2 m)を用いて、例えば、関係式(121)~(122)のいずれかにより表わされていてもよい。
【0038】
r(V,I,Θ)=r(V0,I0,Θ0)+(∂r/∂V)(V-V0)+‥+(∂mr/∂Vm)(V-V0m+(∂r/∂I)(I-I0)+‥+(∂mr/∂Im)(I-I0m+(∂r/∂Θ)(Θ-Θ0) ‥(121)。
【0039】
r(V,I,Θ)=r(V0,I0,Θ0)+(∂2r/∂V2)(V-V02+(∂2r/∂I2)(I-I02+(∂2r/∂V∂I)(V-V0)(I-I0)+(∂2r/∂Θ2)(Θ-Θ02 ‥(122)。
【0040】
第2初期特性モデルは、前記関係式において温度Θに関する項が省略された関係式により表わされていてもよい。第2初期特性モデルは、関係式ではなく、当該関係式と同等の入力-出力特性を有する機械学習モデルまたは深層学習モデルなどのモデルとして定義されていてもよい。
【0041】
初期特性における参照二次電池の開放電圧V0、電圧V、電流Iおよび温度Θが測定され、さまざまな当該測定結果(V0、V、I、Θ)に基づき、1次偏微分係数(∂r/∂p2)(p2=V,I,Θ)が推定される。参照二次電池の内部抵抗rは関係式r=(V-V0)/Iにしたがって推定される。そして、当該偏微分係数(∂Q/∂p1)が、第2初期特性モデルパラメータq2(p2)として第2初期特性モデルパラメータ記憶部1120に記憶保持される。離散的な偏微分係数(∂r/∂p2)の推定結果に基づき、当該偏微分係数(∂r/∂p2)が主変数V,I,Θの連続関数により近似表現され、第2初期特性モデルパラメータq2(p2)を定めるための当該連続関数が第2初期特性モデルパラメータ記憶部1120に記憶保持されていてもよい。
【0042】
(電池性能評価方法)
前記構成の電池性能評価装置により実行される対象二次電池220の性能を評価する方法について説明する。
【0043】
対象二次電池220に電流Iが流れていないまたは無視しうる程度の微小電流しか流れていない状態(例えば、対象機器200の電源OFF状態またはスリープ状態)で、センサ群222を構成する電圧センサを用いて指定期間の開始時点t=t1における対象二次電池220の開放電圧Voc1が測定される(図4/STEP210)。この際、対象二次電池220の温度Θ(t1)が測定されてもよい。開放電圧Voc1の測定に必要最小限の微小電力が対象二次電池220またはこれとは別個のキャパシタから制御装置210に対して供給されていてもよい。
【0044】
通電状態の制御装置210により第1指定条件が満たされているか否かが判定される(図4/STEP212)。「第1指定条件」には、入力インターフェース202を通じて対象機器200が電源OFF状態またはスリープ状態から電源ON状態または起動状態に切り替えられたことが含まれている。対象機器200において入力インターフェース202を通じて対象二次電池220の電池性能評価の要請があったこと、所定のアプリケーションソフトウェアが対象機器200において起動されたこと、センサ群222により測定される対象二次電池220の電圧Vの測定値V(k)が第1の変化態様(急激な低下または不連続的な変化)を示したことなどが第1指定条件に含まれていてもよい。
【0045】
第1指定条件が満たされていないと判定された場合(図4/STEP212‥NO)、一連の処理が終了する。その一方、第1指定条件が満たされていると判定された場合(図4/STEP212‥YES)、指数kが「1」に設定され(図4/STEP214)、そのうえでセンサ群222の出力信号に基づき、対象二次電池220の電圧V、電流Iおよび温度Θの測定値(V(k),I(k),Θ(k))が取得される(図4/STEP216)。「k」はサンプリング周期に応じた離散的な時点であって、図3に示されている対象二次電池220に電流が流れている期間[τ1,τ2]における時点を表わす指数である。
【0046】
続いて、制御装置210により第2指定条件が満たされているか否かが判定される(図4/STEP218)。「第2指定条件」には、対象二次電池220に流れる電流Iが再び0または微小になったことが含まれている。最後に第1指定条件が満たされたと判定された時点t=τ1から所定時間が経過した時点t=τ2に至ったこと、特性パラメータp(k)の測定結果を表わすデータの第1時点からの累計値が閾値に達したこと、センサ群222により測定される対象二次電池220の電圧Vの測定値V(k)が第2の変化態様(急激な上昇または不連続的な変化)を示したことなどが第2指定条件に含まれていてもよい。
【0047】
第2指定条件が満たされていないと判定された場合(図4/STEP218‥NO)、指数kが「1」だけ増やされ(図4/STEP219)、そのうえでセンサ群222の出力信号に基づき、対象二次電池220の電圧V、電流Iおよび温度Θの測定値(V(k),I(k),Θ(k))が取得される(図4/STEP216)。当該測定値は累積的または逐次的にメモリに記憶保持される。
【0048】
第2指定条件が満たされていると判定された場合(図4/STEP218‥YES)、センサ群222を構成する電圧センサを用いて指定期間の終了時点t=t2における対象二次電池220の開放電圧Voc2が測定される(図4/STEP220)。この際、対象二次電池220の温度Θ(t2)が測定されてもよい。
【0049】
対象二次電池220の開放電圧差分ΔVOC=VOC2-VOC1のほか、電圧V、電流Iおよび温度Θの測定値(V(k),I(k),Θ(k))の時系列が、出力インターフェース102を構成する送信装置により対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信される(図4/STEP222)。適当なタイミングで対象二次電池220の規格または種類を識別するための識別子IDも対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信される。
【0050】
対象二次電池220の開放電圧差分ΔVOC(または開放電圧VOC1およびVOC2)、ならびに、電圧V、電流Iおよび温度Θの測定値(V(k),I(k),Θ(k))が取得されたことに応じて、対象機器200から電池性能評価装置100に対して逐次的に送信されてもよい。
【0051】
電池性能評価装置100において、入力処理要素201により、対象二次電池220の開放電圧差分ΔVOC(または開放電圧VOC1およびVOC2)、ならびに、電圧V、電流Iおよび温度Θの測定値(V(k),I(k),Θ(k))の時系列が受信される(図4/STEP110)。
【0052】
第1初期指標値推定部111により、対象二次電池220の識別子IDならびに開放電圧差分ΔVOC、現在電池容量差分ΔQおよび温度Θ(=Θ(t1)、Θ(t2)もしくはΘ(k)又はこれらの平均値)に対応する第1初期特性モデルパラメータq1(p1)が第1初期特性モデルパラメータ記憶部1110から読み取られる(図4/STEP111)。第1初期特性モデルパラメータq1は、前記関係式(110)における偏微分係数(∂Q/∂p1)である。
【0053】
第1初期指標値推定部111により、第1初期特性モデルパラメータq1(p1)、開放電圧差分ΔVOCおよび温度Θに基づき、関係式(110)にしたがって初期電池容量Q(0←k)が推定される(図4/STEP113)。
【0054】
第1初期指標値推定部111により、初期電池容量差分ΔQ(0←k)を主変数xとする増加関数(例えば、1次式f=xもしくはf=α0+α1x、n次多項式f=α0+α1x+‥+αnn、指数関数f=exp(αx)もしくは対数関数f=log(αx)またはこれらの組み合わせなどの様々な形態の増加関数)にしたがって第1初期指標値F10が評価または推定される(図4/STEP115)。
【0055】
第1現在指標値推定部121により、対象二次電池220の電流I(k)の期間[τ1,τ2]における時間積分値または累積値として現在電池容量差分ΔQ’が推定される(図4/STEP121)。
【0056】
第1現在指標値推定部121により、現在電池容量差分ΔQ’を主変数xとする増加関数(例えば、1次式f=xもしくはf=α0+α1x、n次多項式f=α0+α1x+‥+αnn、指数関数f=exp(αx)もしくは対数関数f=log(αx)またはこれらの組み合わせなどの様々な形態の増加関数)にしたがって第1現在指標値F12が評価または推定される(図4/STEP123)。
【0057】
第1劣化度評価要素141により、第1初期指標値F10 および第1現在指標値F12 比率F12/F10を主変数xとする減少関数にしたがって第1劣化度D1が評価または推定される(図4/STEP141)。
【0058】
図5には、初期特性における二次電池の電池容量Q-開放電圧VOCの関係を示す曲線が破線で例示され、ある程度劣化が進行した二次電池の電池容量Q-開放電圧VOCの関係を示す曲線が実線で例示されている。図5から、二次電池の劣化が進行するほど、開放電圧差分ΔV=VOC2-VOC1に対する電池容量差分ΔQ=Q2-Q1が小さくなる傾向があることがわかる。
【0059】
第2初期指標値推定部112により、対象二次電池220の識別子IDならびに電圧V、電流Iおよび温度Θ(V(k)、I(k)、Θ(k)のt=τ1もしくはt=τ2における値または平均値)に対応する第2初期特性モデルパラメータq2(p2)が第2初期特性モデルパラメータ記憶部1120から読み取られる(図4/STEP112)。第1初期特性モデルパラメータq2は、前記関係式(120)における偏微分係数(∂r/∂p2)である。
【0060】
第2初期指標値推定部112により、第2初期特性モデルパラメータq2(p2)、電圧V、電流Iおよび温度Θに基づき、関係式(120)にしたがって初期内部抵抗r(0←k)が推定される(図4/STEP114)。
【0061】
第2初期指標値推定部112により、初期内部抵抗r(0←k)を主変数xとする増加関数(例えば、1次式f=xもしくはf=α0+α1x、n次多項式f=α0+α1x+‥+αnn、指数関数f=exp(αx)もしくは対数関数f=log(αx)またはこれらの組み合わせなどの様々な形態の増加関数)にしたがって第2初期指標値F20が評価または推定される(図4/STEP116)。
【0062】
第2現在指標値推定部122により、対象二次電池220の開放電圧VOC(VOC1もしくはVOC2またはこれらの平均値)、電圧Vおよび電流Iに基づき、関係式r=(V-VOC)/Iにしたがって現在内部抵抗rが推定される(図4/STEP122)。
【0063】
第2現在指標値推定部122により、現在内部抵抗rを主変数xとする増加関数(例えば、1次式f=xもしくはf=α0+α1x、n次多項式f=α0+α1x+‥+αnn、指数関数f=exp(αx)もしくは対数関数f=log(αx)またはこれらの組み合わせなどの様々な形態の増加関数)にしたがって第2現在指標値F22が評価または推定される(図4/STEP124)。
【0064】
第2劣化度評価要素142により、第2初期指標値F20 および第2現在指標値F22 比率F22/F20を主変数xとする増加関数にしたがって第2劣化度D2が評価または推定される(図4/STEP142)。
【0065】
劣化状態推定処理要素140により、第1劣化度D1および第2劣化度D2に応じた劣化診断情報I(D1,D2)が生成され、電池性能評価装置100から対象機器200に対して送信される(図4/STEP144)。劣化診断情報には、第1劣化度D1および第2劣化度D2の組み合わせに応じて、予め定められているテーブル、アルゴリズムまたはモデルにしたがって推定される対象二次電池220の劣化度が含まれていてもよい。
【0066】
劣化状態推定処理要素140により、第1劣化度D1および第2劣化度D2が複合されることにより、複合劣化度Dが評価されてもよい。複合劣化度Dは、例えば、重み係数C1およびC2(=1-C1)を用いて関係式D=C11+C22にしたがって評価される。対象二次電池220の電流測定値I(k)の時系列における分散が閾値未満である場合は第1劣化度D1を偏重した形で(第1重み係数C1を第2重み係数C2よりも大きく、かつ、その差分を大きくして)複合劣化度Dが求められてもよい。指定期間における対象二次電池220の電流測定値I(k)の時系列における分散が閾値以上である場合は第2劣化度D2を偏重した形で(第1重み係数C1を第2重み係数C2よりも小さく、かつ、その差分を大きくして)複合劣化度Dが求められてもよい。
【0067】
対象機器200において、入力インターフェース201を構成する受信装置により劣化診断情報I(D1,D2)が受信され、出力インターフェース202を構成するディスプレイ装置に出力表示される(図4/STEP224)。これにより、例えば図6に示されているように、対象二次電池220の第1劣化度D1および第2劣化度D2を示すグラフ表示のほか、「バッテリの劣化度は30%です。あと150日で交換することをおススメします。」といった第1劣化度D1および第2劣化度D2に応じた対処方法などに関するメッセージがディスプレイ装置に表示される。
【0068】
(効果)
本発明の電池性能評価装置および電池性能評価方法によれば、第1初期指標値F10および第1現在指標値F12に基づいて第1劣化度D1が評価される(図4/STEP115、STEP123→STEP141参照)。「第1初期指標値F10」は、対象二次電池220に電流Iが流れている期間[τ1,τ2]を含む指定期間の開始時点t=t1および終了時点t=t2のそれぞれにおける当該対象二次電池220の初期電池容量差分ΔQ(0←k)に応じた値である(図4/STEP113→STEP115参照)。対象二次電池220の初期電池容量差分ΔQ(0←k)は、指定期間の開始時点t=t1および終了時点t=t2のそれぞれにおける対象二次電池220の開放電圧VOC2およびVOC1が、第1初期特性モデルに対して入力されることにより、第1初期特性モデルの出力として求められる値である(図4/STEP111→STEP113参照)。「第1現在指標値F12」は、指定期間の電流印加の開始時点t=τ1および終了時点t=τ2のそれぞれにおける対象二次電池220の現在電池容量差分ΔQ’に応じた値である(図4/STEP121→STEP123参照)。対象二次電池220の現在電池容量差分(関係式(113)参照)は、指定期間における対象二次電池220の電流Iの測定値の時系列I(k)に基づいて求められる値である。よって、第1劣化度D1に基づき、対象二次電池220の初期特性を基準とした電池容量Qの変化に由来する、当該対象二次電池220の性能の評価精度の向上が図られる。
【0069】
さらに、第2初期指標値F20および第2現在指標値F22に基づいて第2劣化度D2が評価される(図4/STEP116、STEP124→STEP142参照)。「第2初期指標値F20」は、対象二次電池220の初期内部抵抗r(0←k)に応じた値である(図4/STEP114→STEP116参照)。対象二次電池220の初期内部抵抗r(0←k)は、対象二次電池220の電圧Vおよび電流Iの測定値が、第2初期特性モデルに対して入力されることにより、第2初期特性モデルの出力として求められる値である(図4/STEP112→STEP114参照)。「第2現在指標値F22」は、対象二次電池220の現在内部抵抗rに応じた値である。対象二次電池の現在内部抵抗rは、対象二次電池220の開放電圧VOC、電圧Vおよび電流Iの測定値に基づいて求められる値である(図4/STEP122→STEP124参照)。よって、第2劣化度D2に基づき、対象二次電池220の初期特性を基準とした内部抵抗rの変化に由来する、当該対象二次電池220の性能の評価精度の向上が図られる。
【0070】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、第1劣化度D1および第2劣化度D2が評価されたが、他の実施形態として第1劣化度D1のみが評価されてもよい。
【0071】
前記実施形態では、二次電池の開放電圧差分ΔVOCおよび温度Θの両方が勘案された関係式により第1初期特性モデルが定義され(関係式(110)参照)、開放電圧差分ΔVOCおよび温度Θの両方が第1初期特性モデルに対して入力されることにより、初期電池容量差分ΔQ(0←k)が第1初期特性モデルから出力されたが、他の実施形態として開放電圧差分ΔVOCおよび温度Θのうち一方のみが勘案された関係式により第1初期特性モデルが定義され、開放電圧差分ΔVOCおよび温度Θのうち当該一方のみが第1初期特性モデルに対して入力されることにより、初期電池容量差分ΔQ(0←k)が第1初期特性モデルから出力されてもよい。
【0072】
前記実施形態では、二次電池の電圧Vおよび電流Iの両方が勘案された関係式により第2初期特性モデルが定義され(関係式(120)参照)、電圧Vおよび電流Iの両方が第2初期特性モデルに対して入力されることにより、初期内部抵抗r(0←k)が第2初期特性モデルから出力されたが、他の実施形態として電圧Vおよび電流Iのうち一方のみが勘案された関係式により第2初期特性モデルが定義され、電圧Vおよび電流Iのうち当該一方のみが第2初期特性モデルに対して入力されることにより、初期内部抵抗r(0←k)が第2初期特性モデルから出力されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100‥電池性能評価装置、102‥入力処理要素、104‥出力処理要素、110‥初期特性推定処理要素、111‥第1初期指標値推定部、112‥第2初期指標値推定部、1110‥第1初期特性モデルパラメータ記憶部、1120‥第2初期特性モデルパラメータ記憶部、120‥現在特性推定処理要素、121‥第1現在指標値推定部、122‥第2現在指標値推定部、140‥劣化状態推定処理要素、141‥第1劣化度評価要素、142‥第2劣化度評価要素、200‥対象機器、202‥入力インターフェース、204‥出力インターフェース、210‥制御装置、220‥対象二次電池、222‥センサ群。
図1
図2
図3
図4
図5
図6