(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】可変透過の光学素子及びそのような光学素子を備えるスクリーン
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20230424BHJP
G02F 1/1673 20190101ALI20230424BHJP
G02F 1/1676 20190101ALI20230424BHJP
G02F 1/1681 20190101ALI20230424BHJP
【FI】
G02F1/167
G02F1/1673
G02F1/1676
G02F1/1681
(21)【出願番号】P 2021558756
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020073088
(87)【国際公開番号】W WO2021032735
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102019006022.9
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020002797.0
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020003265.6
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516243364
【氏名又は名称】ジオプティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SIOPTICA GMBH
【住所又は居所原語表記】Moritz-von-Rohr-Strasse 1a, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブレグラ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク ブルジャン
(72)【発明者】
【氏名】アンブローズ ピーター ナリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チン ティエン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス クリップシュタイン
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062092(JP,A)
【文献】特開2019-090969(JP,A)
【文献】特開2019-078882(JP,A)
【文献】特開2007-079532(JP,A)
【文献】特開2017-167344(JP,A)
【文献】特開2007-047231(JP,A)
【文献】特開2019-135517(JP,A)
【文献】特開2004-054029(JP,A)
【文献】特表2003-502695(JP,A)
【文献】実開平02-001733(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0002220(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0053571(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G02F 1/1335,1/13363
G02F 1/13357
G09F 9/00
G02B 5/00-5/136
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板(S)と、
前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に配置され、一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子(P)を含む液体又はスケルトンマトリックス(F)と、
一方又は両方の前記大きい表面の上又は前記大きい表面の間の前記基板(S)に平坦に構成された電磁切替手段であって、前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による角度に依存する透過が前記粒子(P)との相互作用により変化するように、オン状態において、電磁場を生成し、それによって、前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する、電磁切替手段と、を備え、
第1の選択において、前記粒子(P)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収又は散乱し、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大60容量パーセントの前記粒子(P)を含み、電磁場が前記大きい表面の間で有効であり
、
前記電磁切替手段及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を、前記粒子(P)の位置に応じて定義し、30°~90°を超える角度範囲の前記角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満であり、前記角度範囲は、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とし、ルーバーが設けられる場合、前記ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定され、
前記第1の選択において、前記電磁切替手段の第1の部分は、前記第1の大きい表面及び/又は前記第2の大きい表面の上の平面電極E1として構成され、前記電磁切替手段の第2の部分は、前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面のルーバーの形態の電極E2として構成され、前記ルーバーと前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の法線は、0°と30°の間の角度を有することを特徴とし、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で10%未満となるように、前記第1の動作状態B1では、70%を超える前記粒子(P)が前記電極E1の上にあり、前記第2の動作状態B2では、70%を超える前記粒子(P)が前記電極E2の上又はその近くにある、光学素子。
【請求項2】
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板(S)と、
前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に配置され、一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子(P)を含む液体又はスケルトンマトリックス(F)と、
一方又は両方の前記大きい表面の上又は前記大きい表面の間の前記基板(S)に平坦に構成された電磁切替手段であって、前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による角度に依存する透過が前記粒子(P)との相互作用により変化するように、オン状態において、電磁場を生成し、それによって、前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する、電磁切替手段と、を備え、
第3の選択及び第4の選択において、前記光学素子は、前記基板(S)に埋め込まれた複数のチャンバを備え、前記チャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存し、前記ルーバーは、前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に延在し、各ルーバーは、長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの前記狭い側面は、前記大きい表面のエリア内に配置され、前記長い側面は、前記大きい表面に接続し、
前記第3の選択において、前記チャンバ内の前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大95容量パーセントの前記粒子(P)を含み、前記粒子(P)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収する第1の種類の少なくとも第1の粒子(P
A
)及び/又は前記波長又は前記波長範囲の光を反射及び/又は散乱する第2の種類の第2の粒子(P
B
)を含み、1種類の粒子(P
A
,P
B
)のみ存在する場合、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、他の種類の粒子(P
A
,P
B
)の役割を果たし、前記ルーバーに衝突するような角度で前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による前記角度に依存する透過を変化させ、又は、
前記第4の選択において、前記チャンバ内の前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大95容量パーセントの前記粒子(P)を含み、前記粒子(P)は、第1の構造(P
1
)を有する少なくとも一つの領域及び第1の領域と異なるとともに第2の構造(P
2
)を有する第2の領域を有するヤヌス粒子として構成され、前記第1の構造(P
1
)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収し、前記第2の構造(P
2
)は、前記波長又は前記波長範囲の光を反射及び/又は散乱し、前記ルーバーに衝突するような角度で前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による前記角度に依存する透過を変化させる、光学素子。
【請求項3】
スケルトンマトリックスは、ポリマーマトリックスとして構成され
る、請求項1
又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の選
択において
、前記粒子
(P)は、ナノ粒子、量子ドット及び/又は染料として構成さ
れる、請求項
1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第3の選択において、前記第1の種類の前記第1の粒子(P
A
)は、ナノ粒子、量子ドット及び/又は染料として構成される、請求項2に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第3の選択において、前記第2の種類の前記第2の粒子(P
B)は
、透明球又は反射球として構成される、請求項
5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記粒子(
P)は、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は酸化金属粒子としてとして構成さ
れる、請求項
4に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1の種類の粒子(P
A
)は、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は酸化金属粒子としてとして構成される、請求項5に記載の光学素子。
【請求項9】
前記粒子(P)は、常磁性体とし
て構成されたことを特徴とする、請求項
4に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第3の選択において、前記第1の種類の前記第1の粒子(P
A)及び前記第2の種類の前記第2の粒子(P
B)は、前記チャンバの周辺面に位置する又は前記チャンバを構成する静止カプセルに埋め込まれていることを特徴とする、請求項
2に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第4の選択において、前記粒子は、前記チャンバの周辺面の静止位置に設けられたことを特徴とする、請求項
2に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第4の選択において、前記粒子(P)は、球面を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記球面の半球によって構成されたことを特徴とする、請求項
2に記載の光学素子。
【請求項13】
前記粒子(P)は、微粒子として構成さ
れることを特徴とする、請求項
12に記載の光学素子。
【請求項14】
前記粒子(P)は、透明材
料から構成され、前記半球の一方は、電気泳動特性を実現するために、金属層又は金属ナノ粒子層によってコーティングされていることを特徴とする、請求項
12又は
13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記粒子(P)は、透明材
料から構成され、前記半球の一方は、電気泳動特性を実現するために、強磁性かつ吸収性の金属又は酸化金属又は強磁性ナノ粒子層によっ
てコーティングされ、前記半球の他方は、反射層によっ
てコーティングされていることを特徴とする、請求項
12又は
13に記載の光学素子。
【請求項16】
コーティング層の厚さは、10nmを超えることを特徴とする、請求項
13又は
14に記載の光学素子。
【請求項17】
前記粒子(P)が帯電するとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための電極として構成される又は前記粒子(P)が磁性であるとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための導電層として構成され、これにより、電気又は磁気泳動の前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)の電場又は磁場で運動を行うことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記粒子(P)が帯電するとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための電極として構成される又は前記粒子(P)が磁性であるとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための導電層として構成され、これにより、電気又は磁気泳動の前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)の電場又は磁場で運動を行うことを特徴とする、請求項2に記載の光学素子。
【請求項19】
前記第3の選択において、前記第1の粒子(P
A)及び前記第2の粒子(P
B)は、前記電場又は前記磁場に沿って並進運動を行うことを特徴とする、請求項
18に記載の光学素子。
【請求項20】
前記第4の選択において、前記運動は、前記ルーバーの長い側面又は狭い側面に平行に配置された特定の軸の周りの回転運動であることを特徴とする、請求項
18に記載の光学素子。
【請求項21】
前記第1の選択において、全ての前記電磁切替手段は、前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の上の平坦な電極EPNとして構成され、その極性は、正と負の間で逆にすることができ、前記第1の動作状態B1では、70%を超える前記粒子(P)が、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)の厚さの最大1/4よりも前記電極EPNから遠くない位置にあるように及び/又は前記液体又はスケルトンマトリックス(F)に拡散して分布するように、前記第1の大きい表面の上の前記電極EPNが正であるとともに前記第2の大きい表面の上の前記電極EPNが負の極性を有する又はその逆であり、前記第2の動作状態B2では、前記第1の大きい表面又は前記第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、前記第1の大きい表面の負極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の負極性の前記電極EPNに対向し、前記第1の大きい表面の正極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の正極性の前記電極EPNに対向し、
規定した方向に沿って、前記大きい表面のそれぞれにおいて、70%を超える前記粒子(P)が、同一の極性の前記電極EPNの間にあるように、負極性の前記電極EPNが二つの正極性の前記電極EPNの間に配置され、正極性の前記電極EPNが二つの負極性の前記電極EPNの間に配置され、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項
1に記載の光学素子。
【請求項22】
前記第1の選択において、
前記粒子(P)に加えて、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、粒子(P
C)を更に含み、前記粒子(P
C)は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱及び/又は透過させ、
全ての前記電磁切替手段は、平坦な電極EPNとして前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の上に配置され、その極性は、正と負の間で逆にすることができ、前記第1の大きい表面又は前記第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、前記第1の大きい表面の負極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の負極性の前記電極EPNに対向し、前記第1の大きい表面の正極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の正極性の前記電極EPNに対向し、
規定した方向に沿って、前記大きい表面のそれぞれにおいて、電極のないブランクスペースが二つの正極性の前記電極EPN又は二つの負極性の前記電極EPNの間に周期的に配置されない場合には、負極性の前記電極EPNが二つの正極性の前記電極EPNの間に配置され、正極性の前記電極EPNが二つの負極性の前記電極EPNの間に配置され、前記ブランクスペースは、周期的に配置され、
前記粒子(P)は、一方の極性を有し、前記粒子(P
C)は、他方の極性を有し、
前記動作状態B1と前記動作状態B2の両方において、70%を超える前記粒子(P)が正極性の前記電極EPNの間にあるとともに相補的に70%を超える前記粒子(P
C)が負極性の前記電極EPNの間にあり、又は、その逆であり、前記第1の動作状態において、別の前記粒子(P
C)は、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、前記第2の動作状態において、前記粒子(P)は、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、
これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項
1に記載の光学素子。
【請求項23】
光を散乱する電気泳動的に移動可能な別の前記粒子(P
C)は
、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成された、及び/又は、光を散乱する別の前記粒子(P
C)は
、銀ナノ粒子として構成されたことを特徴とする、請求項
22に記載の光学素子。
【請求項24】
光を散乱する磁気泳動的に移動可能な別の前記粒子(P
C)は、常磁性となるように構成され
た磁化可能な材
料のナノ粒子が充填された、及び/又は、当該ナノ粒子がコーティングされたことを特徴とする、請求項
22又は
23に記載の光学素子。
【請求項25】
別の前記粒子(P
C)の存在の代わりに、光ガイドは、光散乱ゲルマトリックス(F
S)を含むルーバーのような配置のルーバーのようなチャンバを特徴付け、前記粒子(P)は、動作状態に応じて動くことを特徴とする、請求項
22~
24のいずれかの一項に記載の光学素子。
【請求項26】
前記電磁切替手段及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を、前記粒子(P)の位置に応じて定義し、30°~90°を超える角度範囲の前記角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満であり、前記角度範囲は、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とし、前記ルーバーが設けられる場合、前記ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定されることを特徴とする、請求項2に記載の光学素子。
【請求項27】
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記粒子(P)の70%を超える前記第1の粒子(P
A)又は前記第1の構造(P
1)がそれぞれ、前記ルーバーの長い側面に位置し、前記第1の構造(P
1)の場合、前記第1の構造(P
1)は、前記長い側面に対向し、前記第2の構造(P
2)は、前記長い側面から離間して対向し、前記第1の動作状態B1では、前記粒子(P)の70%を超える前記第2の粒子(P
B)又は前記第2の構造(P
2)がそれぞれ、前記ルーバーの長い側面に位置し、前記第2の構造(P
2)の場合、前記第2の構造(P
2)は、前記長い側面に対向し、前記第1の構造(P
1)は、前記長い側面から離間して対向し、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とするとともに
前記ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過は、前記第1の動作状態B1で60%を超えるとともに前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項
26に記載の光学素子。
【請求項28】
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記第1の動作状態B1では、前記粒子(P)の70%を超える前記第1の粒子(P
A)又は前記第1の構造(P
1)がそれぞれ、前記ルーバーの狭い側面に配置され、前記第1の構造(P
1)の場合、前記第1の構造(P
1)は、前記狭い側に対向し、前記第2の構造(P
2)は、前記狭い側から離間して対向し、前記第2の動作状態B2では、前記粒子(P)の70%を超える前記第2の粒子(P
B)又は前記第2の構造(P
2)がそれぞれ、前記ルーバーの前記狭い側に位置し、前記第2の構造(P
2)の場合、前記第2の構造(P
2)は、前記狭い側に対向し、前記第1の構造(P
1)は、前記狭い側から離間して対向し、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とするとともに
前記ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過は、前記第1の動作状態B1で60%を超えるとともに前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項
26に記載の光学素子。
【請求項29】
前記電磁切替手段は、前記第1の動作状態B1と前記第2の動作状態B2の間の局所的な切替を可能にするために、複数の個別の切替可能なセグメントに分割されていることを特徴とする、請求項
1又は26に記載の光学素子。
【請求項30】
前記光入射面を介して前記基板(S)に垂直に光が入射する前記電磁切替手段は、人間の眼で見える波長範囲の少なくとも50%に対して透明であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の光学素子。
【請求項31】
前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、電磁界における吸収特性及び/又は輸送特性が異なる複数の種類の粒子を含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の光学素子。
【請求項32】
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記ルーバーは、平行に又は交差する領域のグリッドパターンで互いに整列していることを特徴とする、請求項
2に記載の光学素子。
【請求項33】
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記ルーバーは、前記基板Sの垂直二等分線に対して-30°~+30°又は-10°~+10°の角度範囲で傾斜していることを特徴とする、請求項
2に記載の光学素子。
【請求項34】
自由表示モードの第1の動作状態B1及び制限表示モードの第2の動作状態B2で動作するスクリーンであって、請求項1~33のいずれか一項に記載の少なくとも一つの光学素子と、視聴者によって見えるように前記少なくとも一つの光学素子の前方又は後方に配置された画像表示装置と、を備える、スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、LEDの視角の拡大に急速な進歩があった。しかしながら、表示画面のそのような非常に広い角度の表示範囲が不利になり得る状況がしばしば存在する。銀行データ又は他の個人情報及び機密データのような情報がノートブック及びタブレットPCのようなモバイル機器で利用できるようになることが段々増えている。したがって、ユーザは、そのような機密データを見るのを許可される物をある程度制御する必要がある。ユーザは、例えば、休暇中のスナップを見るとき、広告を読むとき等に画面に表示される情報を共有するための広い視野角と画像情報を公表しないでおきたい場合の狭い視野角の間の選択を行えるようにする必要がある。
【背景技術】
【0002】
同様な問題が車両で生じる。この場合、エンジンがかかっているときには、運転手は、そのようなデジタルエンターテイメントショーのような画像コンテンツに気を取られないようにする必要があり、助手席に座っている人は、乗車中にその画像コンテンツを見たいと思う。これには、対応する表示モードの間の切替を行うことができる画面が必要となる。
【0003】
マイクロルーバーに基づくアクセサリホイルは、視覚的なデータ保護(プライバシーモード)を提供するためにモバイルディスプレイで既に使用されている。しかしながら、そのようなホイルは、(変更)切替機能がなく、手動で取付及び取外しを行う必要があった。また、アクセサリホイルを、使用しないときには表示画面とは別に持ち運ぶ必要がある。大きな欠点は、そのようなルーバーホイルの使用に伴う光損失である。
【0004】
米国特許第6,765,550号明細書は、マイクロルーバーによって提供されるそのような視覚的保護を記載している。その主な欠点は、フィルタの機械的な取付及び取外しを行う必要があること及びプライバシーモードで発生する光損失である。
【0005】
米国特許第5,993,940号明細書において、プライバシーモードは、表面に規則的に配置された小型のプリズムストライプを有するホイルによって実現される。このようなホイルの設計及び製造は、かなり複雑な作業である。
【0006】
国際公開第2012/033583号明細書において、自由表示モードと制限表示モードの間の切替は、いわゆる「クロモニック」層の間に配置された液晶をトリガすることによって実行される。これは、光損失が生じ、製造がかなり複雑になる。
【0007】
米国特許公開第2012/0235891号明細書は、スクリーンで使用される批評に複雑なバックライトを記載している。
図1及び
図15によれば、このバックライトは、複数の光ガイドだけでなく、後部から前部の照明器までの経路の光を変換する、例えば、マイクロレンズ素子40及びプリズム構造50のような更に複雑な光学素子も有する。これは、実現するには高価なものとなるとともに複雑であり、光損失を伴う。米国特許公開第2012/0235891号明細書の
図17のバージョンにおいて、光源4Rと光源18の両方が狭い照明角度の光を生成し、後部の光源18から発生する光は、先ず、複雑な手順によって、広い照明角度を有する光に変換される。上述したように、この複雑な変換は、明るさを大幅に低下させる。
【0008】
特開2007-155783号公報によれば、光の入射角に応じて光を様々な狭い範囲又は広い範囲に偏向させるために、設計及び製造が複雑な特殊な光学面19を使用する。これらの構造は、フレネルレンズに似ており、光を望ましくない方向に偏向させる非アクティブエッジを有する。したがって、実際に適切は光分布を実現できるか否か不明である。
【0009】
米国特許公開第2013/0308185号明細書は、狭い側で光を受講する方向に応じて大きな表面から様々な方向に光を放出するステップによって構成された特別は光ガイドを記載している。透過型画像表示装置、例えば、LCディスプレイとの相互作用によって、自由モードと制限モードの間の切替を行うことができる画面を生成することができる。欠点は、制限された表示効果が左/右のみ又は上/下のみのいずれかしか生じず、特定の支払い手順で必要となる左/右/上/下に同時に生じることができないことである。さらに、制限された表示モードでも、一部の残留光が、ブロックされた表示角度から見える。
【0010】
出願人の国際公開第2015/121398号明細書は、二つの動作モードの表示画面を記載し、その切替は、本質的には、それぞれの光ガイドの容積の散乱粒子によって行われる。しかしながら、一般的には、そこで選択された重合物からなる散乱粒子は、光が両方の大きい面から結合されるという共通の欠点を有し、それによって、有用な光の約半分が誤った方向に、すなわち、バックグラウンド照明器に向かって放出され、この場合、配置により、光を十分にリサイクルすることができない。さらに、光ガイドの容積に分布する重合体の散乱粒子は、特に、高濃度のときに、保護モードプライバシー効果を低下させることがある散乱効果になるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的には、上述した方法及び配置は、基本画面の明るさを著しく低下させる、及び/又は、モードの間の切替を行うための複雑かつ高価な光学素子を必要とする、及び/又は、自由表示モードの解像度を減少させる共通の欠点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これとは別に、発明の課題は、(任意選択で垂直な)角度に応じて透過率に影響を及ぼすとともに少なくとも二つの動作状態の間で切替を行うことができる光学素子を説明するためのものである。操作要素は、画面の解像度を大幅に低下させることなくプライバシーモードと自由表示モードの間の切替を可能にするために、合理的なコストで実現可能であり、かつ、特に様々なタイプの表示画面に普遍的に適応可能であることを意図している。任意選択で、光学要素は、ルーバータイプのチャンバなしで済ましてもよい。
【0013】
本発明によれば、この課題は、様々な構成を有することができる光学素子によって解決される。いかなる場合でも、光学素子は、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板と、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に配置され、好適には人間の眼に見える一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子を含む液体又はスケルトンマトリックスと、を備える。光との相互作用は、吸収、反射及び/又は散乱によって又は必要に応じて透過によって生じる。本明細書において、光を吸収する粒子を吸収粒子とも称し、光を反射、散乱又は相互作用して透過する粒子を偏向粒子とも称する。
【0014】
光学素子は、一方又は両方の大きい表面の上又は大きい表面の間の基板に平坦に構成された電磁切替手段であって、光入射面を介して基板に入射する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過が粒子との相互作用により変化するように、オン状態において、電磁場を生成し、それによって、粒子が液体又はスケルトンマトリックス内を移動する、電磁切替手段を更に備える。本明細書において、「電磁切替手段」は、電場を生成するための単なる電気切替手段、磁場を生成するための電磁場切替手段及びその両方の組合せを含む総称として理解される。
【0015】
第1の選択において、粒子は、波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱し、液体又はスケルトンマトリックスは、最大60容量パーセントの粒子を含み、電磁場が大きい表面の間で有効である。
【0016】
第2の選択、第3の選択及び第4の選択において、光学素子は、基板に埋め込まれた複数のチャンバを備え、チャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存し、ルーバーは、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在し、各ルーバーは、長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの狭い側面は、大きい表面のエリア内に配置され、長い側面は、大きい表面に接続する。
【0017】
第2の選択において、粒子は、チャンバに衝突するように光入射面を介して基板に入射する波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱する。この場合、チャンバがそれぞれルーバーを形成し、チャンバにそれぞれ液体が充填され、液体は、最大50容量パーセント、又は、好適には、運動の自由度を更に高くするために、最大20容量パーセントの粒子を含み、電磁切替手段は、オン状態において、チャンバ内で有効な電磁場を生成する。
【0018】
第3の選択において、チャンバ内の液体又はスケルトンマトリックスは、最大95容量パーセントの粒子を含む。粒子は、波長又は波長範囲の光を吸収する第1の種類の少なくとも第1の粒子及び/又は波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する第2の種類の第2の粒子PBを含む。1種類の粒子-第1の種類の第1の粒子PA又は第2の種類の第2の粒子PB-のみ存在する場合、液体又はスケルトンマトリックスは、他の種類の粒子(PA,PB)の役割を果たす。電場により、ルーバーに衝突するような角度で光入射面を介して基板に入射する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過を変化させる。
【0019】
第4の選択において、チャンバ内の液体又はスケルトンマトリックス、最大95容量パーセントの粒子を含み、粒子は、ヤヌス粒子として構成される。用語「ヤヌス粒子」は、表面が個別の領域において少なくとも二つの互いに異なる物理特性を有するマイクロ粒子又はナノ粒子として理解される。例えば、球形粒子を、適切なコーティング/機能化又は固有の構造的な違いによって実現することができる互いに異なる特性を有する二つの半球に分割することができる。ヤヌス粒子は、第1の構造P1を有する少なくとも一つの領域及び第1の領域と異なるとともに第2の構造P2を有する第2の領域を有し、第1の構造P1は、波長又は波長範囲の光を吸収し、第2の構造P2は、波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する。これも、ルーバーに衝突するような角度で光入射面を介して基板に入射する波長の光の光学素子による角度に依存する透過を変化させる。
【0020】
有利には、チャンバに充填されるスケルトンマトリックスは、例えば、ポリマーマトリックスであり、好適には、ゲルマトリックスである。液体は、極性を有しても有しなくてもよい。さらに、液体は、例えば、水、油、トルエン若しくはホルムアルデヒド又は10重量パーセントの強磁性流体との混合物及び/又は電解液によって構成してもよい。
【0021】
電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子PAが光を吸収する一つ以上の波長又は波長範囲は、好適には、可視スペクトルにあり、好適には、これを完全にカバーする。しかしながら、例えば、UV又はIR光が測定において影響が及ぼされるようにすることを意図する場合、特殊目的のために、これらは、可視スペクトル以外に存在してもよい。
【0022】
平坦な基板の第1の大きい表面と第2の大きい表面は、好適には、互いに平行に配置される。しかしながら、特殊な形態において、光学素子の特定の角度に依存する透過を意図する場合には、大きい表面の配置を、それ以外、例えば、これらの間の最大20°の規定の角度のくさび形状にしてもよい。
【0023】
光入射面として機能するように適合された平坦な基板の第1の大きい表面は、一般的には、視聴者から見えるように基板の後側に配置され、光学素子の特定の応用に応じて、例えば、画像表示装置、光源又は空隙に隣接する。後者のオブジェクトから、光は、光入射面を介して基板に入射する。
【0024】
第1の選択又は第2の選択における粒子及び第3の選択における第1の種類の第1の粒子PAは、最大200nm、好適には、最大100nm又は最大50nm、好適には、最大20nmの空間範囲を有するナノ粒子、量子ドット及び/又は染料であってもよい。他の形態も可能である。「空間範囲」は、いずれが大きいかに応じた3次元空間又は流体力学半径の空間範囲を意味する。球形粒子において、この範囲は、直径である。鎖状の粒子において、個の範囲は、粒子の表面の2点の間の最大のあり得る空間である。
【0025】
第1の選択又は第2の選択における粒子及び第3の選択における第1の種類の第1の粒子PAは、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は好適には酸化クロム(IV)又はFe2O3の酸化金属粒子としてとして構成することができ、これらの制限を有する2nmと50nmの間のサイズを有する。
【0026】
代替的には、第1の選択又は第2の選択における粒子及び第3の選択における第1の種類の第1の粒子PAは、常磁性体として、好適には、少なくとも100nmの直径を有するとともに0.5、好適には、0.75と2の間の比透磁率、好適には、1の比透磁率を有する常磁性又は反磁性のキャリア材料からなる球として、好適には、10を超える比透磁率を有する常磁性ナノ粒子又は超常磁性ナノ粒子として、好適には、Fe2O3ナノ粒子又はこれらのナノ粒子が浸透したキャリア材料がコーティングされた本体を有するメラニン樹脂又はポリスチレンとして構成することができる。
【0027】
第3の選択において、第1の粒子PA及び第2の粒子PBは、チャンバの周辺面に位置する又はチャンバを形成する静止カプセルに埋め込まれている。上述したように、第1の粒子PAは、有利には、ナノ粒子として構成される。第2の粒子PBは、有利には、5nmと5000nmの間の直径を有する透明球又は反射球として構成される。
【0028】
第4の選択において、チャンバRの周辺面の静止位置を占有するヤヌス粒子として構成された粒子Pは、自由に回転することができる。
【0029】
第4の選択において、粒子Pは、球面を有するヤヌス粒子として構成され、第1の領域と第2の領域の両方は、球面の半球によって構成される。粒子Pは、微粒子として構成され、最大200μm、好適には、最大50μm、特に好適には、最大20μmの空間範囲を有する。特に、ヤヌス粒子が透明材料、好適には、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成され、半球の一方は、電気泳動特性を実現するために、金属層又は金属ナノ粒子層によってコーティングされていることが考えられる。
【0030】
さらに、ヤヌス粒子は、ラテックス、PMMA、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成され、透明材料、好適には、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成され、半球の一方は、磁気泳動特性を実現するために、強磁性かつ吸収性の金属又は酸化金属又は強磁性ナノ粒子層によって、好適には、Fe2O3、Fe3O4又はFeOナノ粒子によってコーティングされ、半球の他方は、反射層によって、好適には、銀若しくはアルミニウムの層又は白い層によってコーティングされることができる。
【0031】
上述したように、球形のヤヌス粒子の本質特質は、互いに異なる物理特性を実現する二つの半球を有することである。第1の半球は、入射する光を吸収するためのものであり、それに対し、他の半球は、入射する光を散乱又は反射するためのものである。したがって、光を吸収する第1の半球は、第1の種類の第1の粒子PAの特性を実現し、光を散乱/反射する第2の半球は、第2の種類の第2の粒子PBの特性を実現する。
【0032】
本発明の光学素子に使用するのに適したヤヌス粒子を、例えば、a)上述したような透明球(ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカ)又は吸収半球を有する散乱球、b)反射半球を有する有色又は黒色球及びc)反射半球及び吸収半球を有する球で構成することができる。
【0033】
散乱球を、例えば、ポリスチレン球のTiO2ナノ粒子又はシリカナノ粒子によって実現することができる。一般的には、白色光を散乱又は反射する全ての適切な材料が考えられる。ヤヌス粒子の球材料に対する使用されるナノ粒子の相対屈折率によって、透明球に散乱が生じる。
【0034】
ヤヌス粒子を実現するために、例えば、ポリスチレンによって構成されるとともに吸収ナノ粒子、量子ドット又は染料が充填された有色又は黒色球を使用することもできる。その例は、粒子PAの例と同一である。強磁性特性を有する酸化クロム(IV)を使用することもできる。
【0035】
反射半球を、例えば、第2の種類の第2の粒子PBについて説明したアルミニウム、クロム、銀又は他の金属のフィルタ又はナノ粒子によって実現することができる。吸収半球に使用することができるのは、例えば、カーボン、酸化クロム(IV)、フィルムとしてのFe2O3、Fe3O4若しくはFeO又はPBについて説明したようなナノ粒子である。
【0036】
電気泳動特性は、表面の特性によって決定される。電気泳動特性を、表面機能化によって向上させることができる又は制御することができる。ヤヌス粒子を磁気泳動的にするために、球それ自体、すなわち、球の材料又は半球の一つ、すなわち、この半球の表面コーティングを磁気泳動的にする必要がある。磁気材料は、例えば、ニッケル、鉄又は酸化クロム(IV)である。材料を選択するとき、ヤヌス粒子が方向性を持って回転できるようにするために、球の磁気双極子が不変であることを確認する必要がある。これを、例えば、強磁性のヤヌス粒子によって実現することができる。
【0037】
通常、ヤヌス粒子の直径は、200nmを超え、コーティング層の厚さは、10nmを超えるが、これらの寸法を更に大きく又は更に小さくしてもよい。
【0038】
さらに、一方では、液体又はスケルトンマトリックスの安定化として、他方では、粒子が電気泳動的に移動可能である場合の電気泳動の向上すなわち電気泳動の優先として、含まれる全ての粒子Pに、高いゼータ電位を有する表面機能化を設けるのが有利である。ウェファベースシステムに対して、これを、例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)又はPEG(ポリスチレングリコール)によって実現することができる。
【0039】
第2の選択、第3の選択及び第4の選択において、光学素子は、基板に埋め込まれた複数のチャンバを備え、これらのチャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存する。個別に又はグループでルーバー状に構成され、かつ、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有するチャンバは、例えば、並列に整列させることができるとともに直方体形状を有することができる。しかしながら、狭い側面を、台形にすることもできる、又は、例えば、アーチ状にすることによって湾曲させることもできる。「ルーバー形状に構成」は、櫛の歯又はベネチアンブラインドのルーバーと同様に、長い側面に沿った寸法が狭い側面に沿った寸法より著しく大きいことを意味するものと理解される。通常、福栖のルーバーを、長手方向に沿って互いに平行に配置するが、グリッド状の配置も考えられる。
【0040】
立方体の特殊な場合を除く立方体形成の場合、狭い側面は、長い側面より小さい表面領域を有する長方形の側面であり、一般的には、チャンバの六つの全ての表面のうちの最大の表面領域を有する。典型的には、狭い側面は、基板の大きい表面に平行に又は後に説明する傾斜角を除いて基板の長い側面に平行に配置され、それに対し、長い側面は、基板の大きい表面に垂直に又は後に説明する傾斜角を除いて基板の長い側面に垂直に配置される。これと比べると、残りの端面は、狭い側面と長い側面のいずれも実現しない二つの表面である。さらに、チャンバは、基板の大きい表面の一方又は両方から少なくとも部分的に突出することができる。
【0041】
有利には、ポリマーマトリックス、例えば、ゲルマトリックスとして構成されるスケルトンマトリックスをチャンバに充填する。そのようなポリマーマトリックスは、特殊な網目サイズを有する。そのような網目サイズのために、小さい粒子Pは、大きい粒子Pより小さい「抵抗」を有し、したがって、小さい粒子P及び大きい粒子Pは、互いに異なる速度で移動する。その利点の一つは、カプセル化及びヤヌス粒子には関係ないとしても、第1の種類の粒子PA及び第2の種類の粒子PBのように粒子を構成した場合に切替時間を制御することができるとともに粒子Pの均一な分布を早めることができる。そのようなポリマーマトリックスの他の利点は、粒子Pが自発的に移動しないように拡散を大きく妨げることであり、これは、カプセル化に好適である。
【0042】
チャンバに液体が充填されると、散乱粒子Pの場合には、液体Fに対する相対屈折率を有する必要がある。チャンバの液体は、極性を有しても有しなくてもよい。さらに、例えば、液体を、水、油、トルエン又はホルムアルデヒドで構成してもよく、場合によっては液体に電解質を混合してもよい。
【0043】
第2の選択、第3の選択及び第4の選択の場合に流体チャンバの一つ以上の側面において平坦に基板に設けた電磁切替手段は、例えば、各チャンバの狭い側面に配置される。
【0044】
全ての選択において、好適には、粒子Pが帯電するとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための電極として構成される又は粒子Pが磁性、特に、常磁性又は超常磁性であるとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための導体として構成される。静電場又は動電場を印加することによって、電気又は磁気泳動の粒子Pが液体又はスケルトンマトリックスFの電場又は磁場で運動を行う。
【0045】
均一な電場を印加すると、例えば、力線が、第2の選択、第3の選択及び第4の選択の場合に、チャンバの中央に確立され、第1の選択の場合に、互いに対向する大きい表面の間に配置された二つの電極の間に並列に確立されるとともに周辺において平行から逸脱する傾向にある。他の形態も可能である。
【0046】
電磁場、特に、静電場の印加の際に粒子の運動に物理的に影響を及ぼすのは、電気(誘電)泳動又は磁気泳動である。電場又は磁場が印加されない場合、粒子は、特にチャンバにおける拡散のために移動し、したがって、時が経つにつれて均一に分布する。粒子が50nmであるので、重力が関与しない。したがって、これらの粒子は、沈殿しない。粒子は、第2の選択、第3の選択及び第4の選択の場合に、チャンバにおける垂直位置が変化しない、又は、第1の選択の場合の光学素子において、粒子は、液体又はゲルマトリックスに浮いたままである。
【0047】
第1の選択、第3の選択及び第4の選択の場合に、電極を、基板Sの第1の大きい表面に対して平行に、垂直に又は他の規定された角度で配置することができる。第3の選択の場合に、どの粒子が第1の粒子PA及び/又は第2の粒子PBを備えるかに応じて、第1の粒子PA及び第2の粒子PBは、電場又は磁場に沿った並進運動を行うことができる。第4の選択の場合に、粒子Pがヤヌス粒子として構成される場合、運動は、好適には、ルーバーの広い側面又は狭い側面に平行な特定の軸の周りの回転運動である。
【0048】
電磁切替手段及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を、粒子Pの位置に応じて定義し、基板の第2の大きい表面の法線に対して30°~90°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満である。
【0049】
第1の選択の場合に、角度範囲は、例えば、表面に対する法線すなわち表面Sの第2の大きい表面に対する法線としての垂直二等分線を含む面内で測定され、視聴者から見えるように、水平位置を有する、すなわち、一般的には、視聴者の眼が上記面に配置される又は視聴者の眼に接続するラインが当該面と平行になる位置を占有する。この規定は、次の考察にも適用される。第2の選択、第3の選択及び第4の選択の場合において、角度範囲は、ルーバー形状のチャンバ又はルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定される。この方向も、一般的には、視聴者の眼が当該方向を含む面に存在するような位置を占有する。当該長さ方向は、各チャンバ又はルーバーの二つの互いに対向する面の重心に接続する直線によって規定される。
【0050】
その意味では、角度範囲は、上記面の+/-30°から+/-90°の(すなわち、-90°から-30°まで及び+30°から+90°までであるが-30°と+30°の間を含まない)角度を含む。角度範囲は、変更されてもよく、+/-30°の代わりに+/-10°から+/-90°、+/-20°から+/-90°、+/-45°から+/-90°又は+/-25°から+/-90°を含んでもよい。90°の場合、角度は、基板の表面上に存在する。
【0051】
三つ以上の動作状態B1,B2,B3等を設定することができることも本発明の範囲内である。動作状態B1及びB2に対して上述したバージョン以外の場合について、例えば、第3(第4,第5、...)の動作状態において、異なる種類の電磁場を確立し、その結果、粒子又は粒子の種類の配置の程度は、動作状態ごとに異なり、その結果、三つ以上の互いに異なる角度に依存する透過が得られる。これは、例えば、角度に依存する遮光に対して興味深いものとなることができる。結局のところ、そのような更なる動作状態は、動作状態B2の異なる形態にすぎない。
【0052】
換言すれば、互いに異なる動作状態B1,B2は、特に、粒子による吸収による透過特性を変更するためにチャンバ又は第1の選択の場合の基板内における粒子の局所濃度及び位置が変化する点で互いに異なる。
【0053】
以下では、種々の選択のバージョンの好適な形態を説明する。第1の選択の形態を、最初に説明する。
【0054】
チャンバのない第1の選択については、電磁切替手段の第1の部分は、第1の大きい表面及び/又は第2の大きい表面の上の平面電極E1として構成され、電磁切替手段の第2の部分は、第1の大きい表面と第2の大きい表面のルーバーの形態の電極E2として構成されるように、第1の選択を実現する。ルーバーと第1の大きい表面及び第2の大きい表面の法線は、0°と30°の間の角度を有する。第1の動作状態B1では、70%を超える粒子Pが電極E1の上にあり、第2の動作状態B2では、70%を超える粒子Pが電極E2の上又はその近くにある。その結果、基板の第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超え、第2の動作状態B2で10%未満となる。ここでは、第1の選択について説明した定義を適用する。
【0055】
液体又はスケルトンマトリックス及びそれに含まれる粒子を流し込むためのチャンバ又は同様な形態を必要としないことがこの実施の形態の利点である。粒子の移動後の最終的な配置によって、原理的にはそのようなチャンバを設ける必要がなくなる。
【0056】
電極E2を、例えば、ストライプ形状に構成してもよく、この場合、電極E2は、平行に又はグリッド状に配置される。したがって、光学素子の角度に依存する透過の特性は、一つの面又は互いに直角に配置された二つの面を考察することによって確立される。しかしながら、例えば、表面をカバーするハニカムを構成する単一の平坦な電極としてこのバージョンを構成することもでき、この場合、ハニカムを共同で又は個別にもたらしてもよい。
【0057】
ルーバーの形態の電極E2を、一方では、特に、基板の垂直二等分線に略平行に基板の第2の大きい表面に対して同一の角度で全てを配置してもよい。
【0058】
他方では、例えば、装置の前に位置する視聴者にルーバーの一部の収束効果を形成するために、-10°と+10°の間、必要な場合には、-30°と+30の間の角度範囲(「傾斜角」)内で基板の垂直二等分線に対して電極E2を傾斜させることもできる。本実施の形態も、特に動作状態B2における光学素子の角度に依存する透過に影響を及ぼす。上記傾斜角のために、粒子の吸収並びにチャンバの電極形状及び電極位置に対応する粒子位置の角度に依存する吸収によって生じる角度依存は、例えば、特に急角度における僅かな透過が所望される場合に一定のオフセット角だけ傾斜する。
【0059】
電極E2のルーバー形状は、例えば、基板の第2の大きい表面に対して垂直な面で測定して最低5μm及び代行300μmの高さを有することもできる。これらの典型的な寸法からの逸脱も可能であり、本発明の範囲内である。
【0060】
この第1の実施の形態の変形において、液体又はスケルトンマトリックスを受け入れるためのチャンバ状のルーバーを、好適には、電極E2に平行に任意に設けてもよい。これによって、光学素子の感圧性を減少させる。その理由は、圧力を光学素子に加えたときに粒子が電極E2から大きな距離を移動できないからである。
【0061】
本発明の第1の選択の第2の実施の形態は、一方では、全ての電磁切替手段が第1の大きい表面及び第2の大きい表面の平坦な電極EPNとして構成されるとともに極性が正と負の間で可逆であるように設計される。第1の動作状態B1では、第1の大きい表面の電極EPNが正であるとともに第2の大きい表面の電極EPNが負である又はその逆である。このようにして、70%を超える粒子Pが、液体又はスケルトンマトリックスの厚さの最大1/4よりも電極EPNから遠くない位置にあるように及び/又は液体又はスケルトンマトリックスに拡散して分布する。第2の動作状態B2では、第1の大きい表面又は第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、第1の大きい表面の負極性の電極EPNは、第2の大きい表面の負極性の電極EPNに対向し、第1の大きい表面の正極性の電極EPNは、第2の大きい表面の正極性の電極EPNに対向する。ここでは、好適な方向に沿って、大きい表面のそれぞれにおいて、負極性の電極EPNが二つの正極性の電極EPNの間に配置され、正極性の電極EPNが二つの負極性の電極EPNの間に配置される。このようにして、70%を超える粒子Pが、同一の極性の電極EPNの間にあり、これにより、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超え、第2の動作状態B2で5%未満となる。これは、基板の第2の大きい表面の法線を基準にするとともに電極EPNの長さ方向に垂直な方向で測定した、好適には、+/-30°から+/-90°の(すなわち、-90°から-30°まで及び+30°から+90°までであるが-30°と+30°の間を含まない)の角度範囲に適用される。角度範囲は、変更されてもよく、+/-30°の代わりに+/-10°から+/-90°、+/-20°から+/-90°、+/-45°から+/-90°又は+/-25°から+/-90°を含んでもよい。ここでは、上記好適な方向を、例えば、上述したように、光学素子の前方に位置する視聴者によって見えるように水平位置に整列した基板の第2の大きい表面に平行に配置される。
【0062】
第1の選択の第3の実施の形態において、液体又はスケルトンマトリックスFは、粒子Pに加えて、粒子PCを更に含み、粒子Pが光を吸収するのに対し、粒子PCは、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱及び/又は透過させる。ここでは、全ての電磁切替手段は、可逆の正極性及び負極性を有する平坦な電極EPNとして第1の大きい表面及び第2の大きい表面の上に配置される。第1の大きい表面又は第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、第1の大きい表面の負極性の電極EPNは、第2の大きい表面の負極性の電極EPNに対向し、第1の大きい表面の正極性の電極EPNは、第2の大きい表面の正極性の電極EPNに対向する。既に規定したような好適な方向に沿って、大きい表面のそれぞれにおいて、電極のないブランクスペースが二つの正極性の電極EPN又は二つの負極性の電極EPNの間に配置されない場合には、負極性の電極EPNが二つの正極性の電極EPNの間に配置され、正極性の電極EPNが二つの負極性の電極EPNの間に配置される。ブランクスペースは、周期的に配置される。粒子Pは、一方の極性を有し、粒子PCは、他方の極性を有する。
【0063】
動作状態B1と動作状態B2の両方において、70%を超える粒子Pが正極性の電極EPNの間にあるとともに相補的に70%を超える粒子PCが負極性の電極EPNの間にあり、又は、その逆であり、第1の動作状態B1において、別の粒子PCは、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、第2の動作状態B2において、粒子Pは、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接する。これにより、基板の第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超え、第2の動作状態B2で5%未満となる。当該角度は、変更されてもよく、例えば、10°、20°又は25°になり、角度範囲についての上述した第1の選択のおける説明が同様に当てはまる。
【0064】
光を散乱する電気泳動的に移動可能な別の粒子PCは、20nmと10μmの間の粒子サイズのポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成されてもよい、及び/又は、光を散乱する別の粒子PCは、10nmと50nmの間の銀ナノ粒子として構成されてもよい。そのような別の粒子PCの磁気泳動のためには、別の粒子PCは、常磁性を有する必要がある。このために、例えば、別の粒子PCを散在及び/又はコーティングすることができるニッケルのナノ粒子を使用することができる。
【0065】
この第3の実施の形態の技術的に等価なバージョンにおいて、別の粒子PCを置き換える光散乱ゲルマトリックスFSを含む、ルーバー状に配置されたルーバー形状のチャンバを設けることができる、すなわち、チャンバは、別の粒子PCの代わりに用いられる。光散乱ゲルマトリックスFS内で、粒子Pは、動作状態に応じて移動することができる。
【0066】
ルーバーに組み込まれたチャンバを使用するこの第1の選択の第1の変形は、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板Sを備える。さらに、第1の選択の第1の変形は、基板Sに埋め込まれた複数のチャンバであって、これらのチャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存する、複数のチャンバを備える。各ルーバーは、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの狭い側面は、大きい表面のエリア内に配置され、長い側面は、大きい表面に接続する。この実施の形態の特殊な形態として、ルーバーの間のスペースは、少なくとも一つの不透明材料、すなわち、可視光を透過させない材料を含む。人間の眼で見える領域の一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱し、場合によっては透過し、かつ、屈折又は回折によって偏向させる、最大50%の、好適には、最大20%の電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な別の粒子PCを含む、液体又はスケルトンマトリックスがチャンバに充填される。ルーバーの狭い側の基板に平坦に構成された電磁切替手段であって、電磁切替手段は、オン状態において、ルーバーにおいて有効な電磁場を生成し、これにより、別の粒子PCは、液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する。これは、光入射面を介して基板に入射するとともに別の粒子PCによって反射及び/又は散乱する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過の変化に影響を及ぼす。
【0067】
第1の選択のこの第1の変形において、好適には、第1の動作状態B1では、別の粒子PCの少なくとも70%は、ルーバーの上側の狭い側面の付近に配置される。これにより、光は、ルーバーの間の不透明材料Mのために伝播方向が制限される。光は、光入射面を介して基板Sに入射するとともにルーバー内に伝播し、上側の狭い側面において別の粒子PCにより複数の方向に散乱及び/又は反射する。第2の動作状態B2では、別の粒子PCの少なくとも70%は、ルーバーの下側の狭い側面の付近に配置され、これにより、別の粒子PCの影響により散乱及び/又は反射されながら光入射面を介して基板に入射する光は、ルーバーの間の不透明材料のために伝播方向に関して制限される。
【0068】
特殊なアプリケーションの場合を意図したこの第1の選択の第2の変形も、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する平坦な基板を備える。さらに、第1の選択の第2の変形は、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に配置されるとともに最大60容量パーセントの電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pを含む液体又はスケルトンマトリックスであって、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱する複数の粒子が存在する、液体又はスケルトンマトリックスを備える。粒子は多数設けられる。第1の選択の第2の変形は、一方又は両方の大きい表面の上又は大きい表面の間の基板に平坦に構成された電磁切替手段であって、オン状態において、大きい表面の間に電磁場を生成し、それによって、粒子が液体又はスケルトンマトリックス内を移動する、電磁切替手段を更に備える。粒子によって吸収された波長又は波長範囲の光の光学素子による透過が変化し、基板の第2の大きい表面の法線を基準として、第1の動作状態B1では、透過が50%を超え、第2の動作状態B2では、透過が50%未満である。
【0069】
この場合において、電磁切替手段は、例えば、ハニカム形状、円筒形状又は矩形形状になることができ、基板全体又はその一部を十分に満たす。
【0070】
光学素子の第1の選択のこの第2の変形は、透過に関する垂直な光の通過及び組み合わせた同時の非垂直な光の通過の制御に特に適用できる。応用の場合の一つは、例えば、所定の状況におけるドライバがまぶしくなるのを防止するために車両のガラスの全体の又は一部の遮光である。この場合、光学素子は、平面かつ平坦であってもよい、又は、例えば、フロントガラスの一部としての湾曲した表面を有してもよい。さらに、光学素子を、例えば、切替ミラーを実現するために使用してもよい。
【0071】
以下、本発明の第2の選択の種々の好適な形態を説明し、以下、流体チャンバとも称する。
【0072】
この第2の選択の好適な開発において、第1の動作状態B1では、70%を超える粒子が、電磁切替手段が構成される流体チャンバの側面の領域に配置される。静的電磁場又は交流電磁場が存在しないように電磁切替手段が構成され、50%を超える粒子が、主に拡散及び/又は交流電磁場のために広く均一に分布する。これにより、角度に依存する透過は、第1の動作状態B1で60%を超えるとともに第2の動作状態B2で5%未満となる。これは、他方では、30°を超える角度範囲にも当てはまる。当該角度は、変更されてもよく、例えば、10°、20°又は25°になり、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の流体チャンバの長さ方向に垂直な方向で測定される。ここでは、第2の選択、第3の選択及び第4の選択の場合における角度範囲についての説明が当てはまる。
【0073】
特殊な応用に対する第2の選択の第1の変形おいて、光学素子は、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板と、各々が一つ以上の平面を有する、基板に埋め込まれた複数の流体チャンバと、を備える。流体チャンバには、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱する最大20容量%の電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子を含む液体が充填される。流体チャンバの一方又は両方の表面の上に電磁切替手段が構成され、オン状態において、流体チャンバ内に電磁場を生成する。それによって、粒子が液体内を移動し、粒子によって吸収された波長又は波長範囲の光の光学素子による透過が変化する。ここでは、基板の第2の大きい表面の法線を基準として、第1の動作状態B1では、透過が50%を超え、第2の動作状態B2では、透過が50%未満である。
【0074】
この場合において、流体チャンバは、例えば、ハニカム形状、円筒形状又は矩形形状になることができ、基板全体又はその一部を十分に満たす。光学素子の第1の選択のこの第1の変形は、透過に関する垂直な光の通過及び組み合わせた同時の非垂直な光の通過の制御に特に適用できる。応用の場合の一つは、例えば、所定の状況におけるドライバがまぶしくなるのを防止するために車両のガラスの全体の又は一部の遮光である。さらに、光学素子を、例えば、切替ミラーを実現するために使用してもよい。
【0075】
以下のセクションは、第3の選択及び第4の選択の好適な形態を説明する。
【0076】
粒子Pが第1の粒子PA及び第2の粒子PBを備える、例えば、第2の動作状態B2で70%を超える第1の粒子PAを備える応用について及び粒子Pがヤヌス粒子として構成される場合について、粒子Pの70%を超える第1の構造P1がルーバーの長い側面に位置される。第1の構造P1の場合、第1の構造P1は、長い側面に対向し、それに対し、第2の構造P2は、長い側面から離間して対向する。第1の動作状態B1では、粒子Pの70%を超える第2の粒子PB又は第2の構造P2がそれぞれ、ルーバーの長い側面に位置する。第2の構造P2の場合、第2の構造P2は、長い側面に対向し、それに対し、第1の構造P1は、長い側面から離間して対向する。その結果、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の流体チャンバの長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過は、第1の動作状態B1で60%を超えるとともに第2の動作状態B2で5%未満となる。
【0077】
そうでない場合、第1の動作状態B1では、粒子Pの70%を超える第1の粒子PA又は第1の構造P1がそれぞれ、ルーバーの狭い側に配置され、第1の構造P1の場合、第1の構造P1は、狭い側に対向する。第2の構造P2は、狭い側から離間して対向し、第2の動作状態B2では、粒子Pの70%を超える第2の粒子PB又は第2の構造P2がそれぞれ、ルーバーの狭い側に位置し、それに対し、第2の構造P2の場合、第2の構造P2は、狭い側に対向し、第1の構造P1は、狭い側から離間して対向する。その結果、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の流体チャンバの長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過は、第1の動作状態B1で60%を超えるとともに第2の動作状態B2で5%未満となる。
【0078】
第2の選択、第3の選択及び第4の選択に対して、電磁切替手段を基板のチャンバの各々の一つの表面のみに平坦に構成し、オン状態において、IPS(In-plane-Switching)LCDパネルで使用される電磁場に類似する電磁場をチャンバに生成してもよい。
【0079】
好適には、変形を含む四つ全ての選択において、電磁切替手段は、人間の眼で見える波長範囲において、光入射面を介して基板Sに垂直に入射する光の少なくとも50%に対して透明である。これは、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)の層の場合であってもよい。
【0080】
同様に、変形を含む四つ全ての選択において、流体チャンバとも称する電磁切替手段を、場合によっては、複数の個別の切替可能なセグメントに分割することができ、これにより、第1の動作状態B1と第2の動作状態B2の間の局所的な切替を可能にする。この場合、局所的な切替を可能にすることは、第1の動作状態B1と第2の動作状態B2の間の変更を全てのチャンバにおいて同時に行わずに動作状態B1と動作状態B2の両方を有する領域が光学素子に同時に存在することを意味する。これは、例えば、光学素子がスクリーンの前方で使用され、横に30°を超える視野角から、表示される画像の内容の一部を見ることができるとともに他の部分を見ることができない場合に有利である。
【0081】
他の有利な実施の形態において、液体は、吸収特性又は反射、散乱若しくは透過特性、及び/又は電磁場における輸送特性が異なる複数の種類の粒子を含んでもよい。用語「輸送特性」は、特に、電気(誘電)又は磁気泳動における、すなわち、電磁場における輸送中の粒子の挙動を意味する。このバージョンは、ナノ粒子の場合に特に影響を及ぼす。ここでは、粒子の種類の違いは、例えば、粒子サイズ及び/又は表面機能すなわちゼータ電位にある。粒子として量子ドット又は染料を使用する場合及び粒子が蛍光性である場合、蛍光発光を回避するためにいわゆる消光材料を更に使用するのが好ましい。
【0082】
光学素子にチャンバ又はルーバーを設ける場合、第2の選択、第3の選択及び第4の選択として、ルーバー又はチャンバを、並列に整列させてもよい又は領域が互いに交差するようにグリッド状に配置してもよい。したがって、光学素子の角度に依存する透過の特性は、一つの面又は互いに垂直な二つの面に対して具体化される。応用の好適な場合において、チャンバ、特に、長い側面は、基板の垂直二等分線に対して平行に配置される。
【0083】
これに対して、チャンバを、基板の垂直二等分線に対して-30°から+30°までの角度範囲(傾斜角)又は-30°と+30°の間で傾斜させてもよい。この実施の形態も、特に、動作状態B2において、光学素子の透過の角度の依存に影響を及ぼす。当該角度のために、チャンバ内の粒子の吸収及び粒子の位置によって生じる角度に依存する吸収は、例えば、特に急角度での低い透過が所望される場合に一定のオフセット角によって傾斜される。しかしながら、特に、制限モードにおける0°の最適な視野角も、傾斜角によって傾斜され、これは、例えば、キャッシュレジスター又は車両の表示スクリーンの場合に有利となり得る。
【0084】
例えば、ルーバー状に構成された流体チャンバは、基板の最大寸法の方向に平行な第1の面において、2μmと30μmの間の幅(流体チャンバの長い側面の間の距離)を有し、最小10μm最大150μmだけ互いに離間されている(ある流体チャンバの長い側面と最も近接する流体チャンバの最も近接する長い側面の間の間隔)。最後に、ルーバー状に構成された流体チャンバRは、第1の面に垂直な面から測定して最小10μm最大300μmの高さ(二つの狭い側面の間の距離)を有してもよい。これらの典型的な寸法からの逸脱も可能であり、本発明の範囲内である。
【0085】
本発明は、自由表示モードに対する第1の動作状態B1及び制限表示モードに対する第2の動作状態B2で動作するスクリーンにおいて変形を含む第1の選択、第2の選択、第3の選択又は第4の選択による光学素子を使用するときに特に重要である。そのようなスクリーンは、上述した少なくとも一つの光学素子と、(視聴者によって見えるように)光学素子の前方又は後方に配置された画像表示装置と、を備える。好適な構成の二つの堆積した光学素子の使用は、動作状態B2における知覚を向上させる。大きい表面の一つの面において特定の角度だけ互いに回転された位置に配置された又はスクリーンの上方視点において見えるように配置されたルーバー、チャンバ等を同様に光学素子に設ける場合が特に有利である。面の特定の角度は、最大25°であり、16°が好適である。
【0086】
画像表示装置は、例えば、OLEDディスプレイ、LCD、SED、FED、マイクロLED又はVFDであってもよい。画像表示装置の種類に関係なく光学素子が有効であるので、他のタイプのスクリーンも適切である。
【0087】
さらに、例えば、LEDスクリーンのようにバックライトを設けた画像表示装置に本発明の光学素子を使用してもよい。ここでは、光学素子を、有利には、画像表示パネル(すなわち、LEDパネル)とバックライトの間に配置し、自由表示モードに対する第1の動作状態B1と制限表示モードに対する第2の動作状態B2の間のウィッチングを可能にする。その理由は、光学素子のためにバックライトの光が一方のケース(B2)において集束されるとともに他方のケース(B1)において集束されないからである。本明細書における「集束」は、レンズによって行われる種類の集束を意味せず、光学素子の各透過特性による放出領域の収縮を意味する。
【0088】
原理的には、所定の範囲内で上述したパラメータを変更することは、本発明の性能を損なわない。
【0089】
本発明から逸脱することなく上述した特徴及び後に説明する特徴を上述した組合せだけでなく他の組合せにも適用可能である又は独立した特徴としても適用可能であることが理解される。
【0090】
以下、本発明を、本発明に不可欠な特徴も開示する添付図面を参照しながら例示的な実施の形態に基づいて更に詳しく説明する。これらの例示的な実施の形態は、単に例示の目的を果たし、限定的なものとして解釈されるべきでない。例えば、複数の素子又は構成要素を特徴とする例示的な実施の形態の説明は、これらの全ての素子又は構成要素が実装に必要であるという意味に解釈されるべきではない。むしろ、他の例示的な実施の形態は、代替の素子及び構成要素、更に少ない素子若しくは構成要素、又は、追加の素子若しくは構成要素を含んでもよい。異なる例示的な実施の形態の素子又は構成要素は、特に明記しない限り互いに組み合わせてもよい。これらの例示的な実施の形態の一つについて説明した変更及び変形は、他の例示的な実施の形態に適用可能であってもよい。冗長を回避するために、異なる図の類似する又は互いに対応する素子は、同一の参照番号又は文字で示され、1回だけ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】動作状態B1における第1の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図2】動作状態B2における第1の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図3】動作状態B1における第2の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図4】動作状態B1における第2の実施の形態の第1の変形における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図5】動作状態B1における第2の実施の形態の第2の変形における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図6】動作状態B1における第3の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図7】動作状態B2における第3の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図8】動作状態B1における第1の選択の第1の変形における光学素子の原理の概略図である。
【
図9】動作状態B2における第1の選択の第1の変形における光学素子の原理の概略図である。
【
図10】互いに異なる角度での透過に関する動作状態B1と動作状態B2の両方における第1の選択の第1の変形における光学素子の原理の概略図である。
【
図11】第2の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図12】動作状態B1における
図11の光学素子の原理の概略上面図である。
【
図13】動作状態B2における
図11の光学素子の原理の概略上面図である。
【
図14】動作状態B1における第2の選択による光学素子の原理の概略図である。
【
図15】動作状態B2における第2の選択による
図14の光学素子の原理の概略図である。
【
図16】変化するt位置において動作状態B1と動作状態B2の両方がオンになり、流体チャンバが互いに平行に配置された
図14の光学素子の原理の概略図である。
【
図17】変化するt位置において動作状態B1と動作状態B2の両方がオンになり、流体チャンバが交差パターンで配置された
図14の光学素子の原理の概略図である。
【
図18】第2の選択の第1の変形による光学素子の原理の概略断面図である。
【
図19】光学素子の第3の選択に関連するカプセル内の二つの互いに異なる種類の粒子の概略図である。
【
図20】光学素子の第4の選択に関連するヤヌス粒子の第1の構成を示す。
【
図21】光学素子の第4の選択に関連するヤヌス粒子の第2の構成を示す。
【
図22】光学素子の第4の選択に関連するヤヌス粒子の第3の構成を示す。
【
図23】動作状態B1における第3の選択又は第4の選択による光学素子の第1の実施の形態の原理の概略断面図である。
【
図24】動作状態B2における第3の選択又は第4の選択による光学素子の第1の実施の形態の原理の概略断面図である。
【
図25】動作状態B1における第3の選択又は第4の選択による光学素子の第2の実施の形態の原理の概略断面図である。
【
図26】動作状態B2における第3の選択又は第4の選択による光学素子の第2の実施の形態の原理の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図面は、寸法通りではなく、原理を示しているにすぎない。さらに、一般的には、更に明確にするために、図面は、電極、光線、粒子等の少数の選択のみを示すが、実際には、これらの実際の多様性が提供される又は提供されてもよい。以下、四つの互いに異なる選択を、各選択について繰り返さない共通の特徴を有する適切な基板の条件及び粒子の条件に関連して説明する。
【0093】
図1は、動作状態B1における第1の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図であり、
図2は、動作状態B2における第1の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図を示す。この光学素子は、光入射面として適合された第1の大きい表面及び光出射面として適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板Sを備える。光学素子は、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に配置され、一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な最大60容量パーセントの粒子Pを含む液体又はスケルトンマトリックスFを更に備え、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収する複数の粒子Pが存在する。一方又は両方の大きい表面の上又は大きい表面の間の基板Sに平坦な電磁切替手段E1,E2が存在し、電磁切替手段E1,E2は、オン状態において、大きい表面の間に電磁場を生成し、それによって、粒子Pが液体又はスケルトンマトリックスF内を移動する。その結果、光入射面を介して基板Sに入射する、粒子Pによって吸収される波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過が変化し、これは、光学フィルタとしての役割を果たす。基板の上側及び下側には、一般的には、(ここに示さない)他の基板が配置され、光入射面は、上に配置された別の基板と基板Sに嵌め込まれた(一つ以上の)チャンバの間の界面を構成する。
【0094】
スケルトンマトリックスFの場合、これは、例えば、ポリマーマトリックスとして、好適には、ゲルマトリックスとして実現される。液体Fは、極性を有しても有しなくてもよい。液体を、例えば、水、油、トルエン又はホルムアルデヒドで構成してもよい、及び/又は、液体に電解質を混合してもよい。これは、後に説明するものも含む光学素子の全ての実施の形態及び選択に同様に当てはまる。
【0095】
視聴者によって見えるように、例えば、ガラス又はポリマーによって構成することができる光入射面として適合された平坦な基板Sの第1の大きい表面は、一般的には、基板Sの後側に配置され、応用の種類に応じて、例えば、画像表示装置、光源又は空隙に隣接する。後者のオブジェクトから、光は、光入射面を介して基板に入射する。
【0096】
図1に示すように、電磁切替手段の第1の部分は、第1の大きい表面の上の平坦な電極E1として構成され、電磁切替手段の第2の部分は、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間のルーバーの形状の電極E2として構成される。一般的には、ルーバー及び第1の大きい表面又は第2の大きい表面に対する法線は、0°と30°の間の角度、ここでは、0°の角度を包囲する。第1の動作状態B1では、70%を超える粒子Pが電極E1に配置される。したがって、基板Sの光入射面に入射する光-図の下端-は、伝播の角度内で、
図1に矢印で示すように、妨害なく光学素子を通過する。ここでは、基板Sの第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超える。表面の法線の周りの角度範囲を、例えば、表面に対する法線としての、すなわち、基板Sの第2の大きい表面に垂直な垂直二等分線を含む面内で測定することができる。
【0097】
第2の動作状態B2を
図2に示す。ここでは、基板Sの第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が10%未満となるように、70%を超える粒子Pが電極E2の上又はその近くにある。これも矢印によって示す。矢印のうちの一部は、粒子Pで止まり、これは、吸収を表す。本実施の形態の一つの利点は、液体又はスケルトンマトリックスF及びそれに含まれる粒子Pのチャネリングにチャンバ又は同様に構成を必要としないことである。粒子の移動後の電極E1又はE2の粒子の最終的な位置により、一般的には、そのようなチャンバを設ける必要がなくなる。
【0098】
電極E2のルーバーは、平行であってもよい又はグリッドパターンにおいてそれぞれ交差してもよい。したがって、光学素子の角度に依存する透過の特性は、一つの面又は互いに垂直な二つの面に対して特定される。ルーバー形状の電極E2を、一方では、基板Sの第2の大きい表面に対して同一の角度で、特に、基板Sの垂直二等分線に略平行に整列してもよい。他方では、例えば、前方にいる視聴者に対するルーバーのある種の集束効果を形成するために、-10°から+10°まで、場合によっては、-30°と+30°の間の角度範囲(「傾斜角」)で基板の垂直二等分線に対してチャンバを傾斜させてもよい。本実施の形態も、特に、第2の動作状態B2において、光学素子の角度に依存する透過に影響を及ぼす。上記傾斜角のために、電極形状およびチャンバの電極位置に従う粒子の吸収及び粒子の位置による角度に依存する吸収は、例えば、特に急角度での低い透過が所望される場合に、一定のオフセット角だけ傾斜する。
【0099】
例えば、E2のルーバー形状は、基板Sの第2の大きい表面に垂直な平面で測定した最小5μm最大300μmの高さを有してもよい。E1の幅は、同様な寸法を有してもよい。
【0100】
適切な基板及び粒子の組成の実施の形態を主に説明する以下の説明は、第1の選択だけでなく後に詳しく説明する第2の選択、第3の選択及び第4の選択にも当てはまる。電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pが光を吸収する一つ以上の波長又は波長範囲は、好適には、可視スペクトル内にあり、更に好適には、当該スペクトルを完全にカバーする。
【0101】
平坦な基板Sの第1の大きい表面及び第2の大きい表面は、好適には、平行に配置される。しかしながら、特殊な実施の形態において、例えば、光学素子の特殊な角度に依存する透過を意図する場合、第1の大きい表面及び第2の大きい表面は、非平行、例えば、20°の規定された角度のくさび形状であってもよい。
【0102】
粒子Pは、最大200nm最小20nmの空間的な広がりを有するナノ粒子、量子ドット及び/又は染料であってもよい。ここでは、空間的な広がりは、3次元空間における最大の広がりと流体力学半径のうちの大きい方を意味するものと理解されたい。球形粒子において、空間的な広がりは、半径である。チェーン状粒子において、空間的な広がりは、粒子表面の二つのドットの間の最長距離である。粒子Pは、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は酸化金属粒子としてとして構成され、好適には、酸化クロム(IV)又はFe2O3から構成され、これらの制限を有する2nmと50nmの間のサイズを有する。
【0103】
代替的には、常磁性体、例えば、少なくとも100nmの直径を有するとともに0.5と2の間の比透磁率を有する常磁性又は反磁性のキャリア材料、好適には、1又は1に近い比透磁率を有するメラニン樹脂又はポリスチレンからなる球としての実施例も可能である。本体は、例えば、10を超える比透磁率を有する常磁性ナノ粒子又は超常磁性ナノ粒子、好適には、Fe2O3ナノ粒子又はこれらのナノ粒子が浸透したキャリア材料がコーティングされる。高ゼータ電位を有する表面機能化も有利である。
【0104】
静電場又は動電場を印加することによって、電気又は磁気泳動の粒子Pが液体又はスケルトンマトリックスFの電場又は磁場で運動を行うようにするために、粒子Pが帯電するとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するように適合される又は粒子Pが磁性、特に、常磁性又は超常磁性であるとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための導体として構成される。
【0105】
粒子の形態に応じて、電磁切替手段を、静電場又は動電場を生成するための電極として又は静電場又は動電場を生成するための導電層として構成される。
【0106】
第1の選択による光学素子の第2の実施の形態を、
図3~5に示す。この光学素子において、電磁切替手段は、第1の大きい表面及び第2の大きい表面の上の平坦な電極EPNとして構成され、その極性は、正と負の間で逆にすることができる。第1の大きい表面の上の電極EPNが正であるとともに第2の大きい表面の上の電極EPNが負の極性を有する又はその逆である。このようにして、70%を超える粒子Pが、(
図5に示すように)液体又はスケルトンマトリックスFの厚さの最大1/4よりも電極EPNから遠くない位置にあるように及び/又は(
図4に示すように)液体又はスケルトンマトリックスFに拡散して分布する。矢印は、ここでは大きい角度範囲で基板を通過することを裏付ける選択した光線を表す。基板Sの第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超え、角度範囲は可変である。
【0107】
図3は、第2の動作状態B2における光学素子を示す。一般的には、本実施の形態において、第1の大きい表面又は第2の大きい表面の法線に沿って見ると、第1の大きい表面の負極性の電極EPNは、第2の大きい表面の負極性の電極EPNに対向して配置され、第1の大きい表面の正極性の電極EPNは、第2の大きい表面の正極性の電極EPNに対向して配置される。同時に、第1の種類の粒子(P
A)が同様な極性の電極EPNの間に配置されるように、好適な方向に沿って、大きい表面の両方の上では、負極性の電極EPNが二つの正極性の電極EPNの間に配置され、正極性の電極EPNが二つの負極性の電極EPNの間に配置される。その結果、基板Sの第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲における角度に依存する透過は、5%未満となる。ここでは、上記好適な方向を、例えば、基板Sの第2の大きい表面に平行にするとともに光学素子の前方にいる視聴者から見えるように水平位置に整列することができる。
【0108】
図6及び
図7はそれぞれ、動作状態B1における第3の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図及び動作状態B2における第3の実施の形態における第1の選択による光学素子の原理の概略図である。粒子Pに加えて、液体又はスケルトンマトリックスFは、粒子P
Cを更に含み、粒子P
Cは、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱及び/又は透過させる。ここでは、全ての電磁切替手段は、平坦な電極EPNとして第1の大きい表面及び第2の大きい表面の上に配置され、その極性は、正と負の間で逆にすることができ、第1の大きい表面又は第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、第1の大きい表面の負極性の電極EPNは、第2の大きい表面の負極性の電極EPNに対向し、第1の大きい表面の正極性の電極EPNは、第2の大きい表面の正極性の電極EPNに対向し、上述した好適な方向に沿って、大きい表面のそれぞれにおいて、(電極のない)ブランクスペースが二つの正極性の電極EPN又は二つの負極性の電極EPNの間に周期的に配置されない場合には、負極性の電極EPNが二つの正極性の電極EPNの間に配置され、正極性の電極EPNが二つの負極性の電極EPNの間に配置され、ブランクスペースは、周期的に配置される。粒子Pは、一方の極性を有し、粒子P
Cは、他方の極性を有する。
【0109】
動作状態B1と動作状態B2の両方において、70%を超える粒子Pが正極性の電極EPNの間にあるとともに相補的に70%を超える粒子P
Cが負極性の電極EPNの間にあり、又は、その逆である。第1の動作状態B1(
図6)において、別の粒子P
Cは、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、第2の動作状態B2(
図6)において、粒子Pは、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接する。基板の第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で60%を超え、第2の動作状態B2で5%未満となる。
【0110】
基板Sの光入射面に入射する光は、特に、ブランクスペースのために粒子Pが存在せずに別の粒子P
Cが配置された場合に(ほとんど妨害なく)伝播することができる。
図6及び
図7において、機能的に説明するための光線の例を描写する。
【0111】
光を散乱する電気泳動的に移動可能な別の粒子PCは、20nmと10μmの間の粒子サイズのポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成されてもよい。光を散乱する別の粒子PCは、10nmと50nmの間の銀ナノ粒子として構成されてもよい。そのような別の粒子PCの磁気泳動のためには、別の粒子PCは、常磁性を有する必要がある。これを、常磁性の粒子を別の粒子PCに組み込むことによって実現することができる。このために、例えば、ニッケルのナノ粒子を使用することができる。
【0112】
さらに、光学装置の性能及び効率を向上させるために電極EPNのうちの少なくとも一つ(例えば、中央の一つ)を下側に反射させるように有利に適合させることが考えられる。
【0113】
図8及び
図9はそれぞれ、動作状態B1における第1の選択の第1の変形における光学素子の原理の概略図及び動作状態B2における第1の選択の第1の変形における光学素子の原理の概略図である。この光学素子も、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板Sを備える。この光学素子は、基板Sに埋め込まれた複数のチャンバKであって、これらのチャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存する、複数のチャンバKを更に備える。各ルーバーは、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在する長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの狭い側面は、大きい表面のエリア内に配置され、長い側面は、大きい表面に接続し、ルーバーの間のスペースは、少なくとも一つの不透明材料Mを含む。人間の眼で見える領域の一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱し、場合によっては透過する、最大50%の、好適には、最大20%の電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な別の粒子P
Cを含む、液体又はスケルトンマトリックスがチャンバに充填され、これによって、光は、屈折又は回折によって偏向する。基板Sのルーバー又はチャンバKの狭い側の基板に平坦に構成された電磁切替手段であって、電磁切替手段は、オン状態において、ルーバーにおいて有効な電磁場を生成し、これにより、別の粒子P
Cは、液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する。これは、ルーバーに当たる角度で光入射面を介して基板に入射するとともに別の粒子P
Cによって反射及び/又は散乱する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過の変化に影響を及ぼす。
【0114】
第1の動作状態B1では、
図8に示すように、別の粒子P
Cの少なくとも70%は、ルーバーの上側の狭い側面の付近に配置される。これにより、ルーバーの間の不透明材料Mのために伝播方向が制限されるとともに光入射面を介して基板Sに入射するとともにルーバー内に伝播する光は、ルーバーの上側の狭い側面において別の粒子P
Cにより複数の方向に散乱及び/又は反射する。
【0115】
破線は、規定可能な角度範囲の所定の光が不透明材料Mによって鳩首されることを表す。例えば、第2の動作状態B2では、
図9に示すように、別の粒子P
Cの少なくとも70%は、ルーバーの下側の狭い側面の付近に配置され、これにより、光入射面を介して基板に入射する光は、別の粒子P
Cの影響により散乱及び/又は反射されるが、ルーバーの間の不透明材料のために伝播方向に関して制限される。
【0116】
上述した全ての実施の形態及び
図11~13及び
図18に示す実施の形態を除く以下の全ての実施の形態について、
図10は、変化する角度の透過に関する、特に、画像表示装置の前方の素子の影響に関する二つの動作状態B1,B2の影響の原理を示す。簡単のために、縦軸は、正規化された値を示す。破線及び実線は、動作状態B2(プライバシーモード)及び動作状態B1(パブリックモード)をそれぞれ表す。縦座標及び横座標はそれぞれ、相対輝度及び水平方向の視野角すなわちルーバーの長さ方向に垂直な方向に位置する角度である。視野角は、上述した角度範囲をカバーする、すなわち、視野角は、基板Sの第2の大きい表面に対する法線を意味し、ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定される。自動車に搭載されたスクリーンの場合、これは、例えば、水平面の角度であってもよい。粒子Pによって吸収される波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過(上記透過は、動作状態B1と動作状態B2で異なる。)によって、動作状態B1の画像表示装置は全ての水平の視野角から見えるようになり、それに対し、動作状態B2においては、画像表示装置は、
図10に示すように、著しく制限された角度範囲内でのみ見えるようになる。
【0117】
図11は、第1の選択の第2の変形の光学素子の原理の概略上面図である。光学素子は、光入射面として適合された第1の大きい表面及び光出射面として適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板Sと、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に配置され、一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な最大60容量パーセントの粒子Pを含む液体又はスケルトンマトリックスFと、を備え、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収する複数の粒子Pが存在する。一方又は両方の大きい表面の上又は大きい表面の間の基板Sに平坦な電磁切替手段E1,E2が存在し、電磁切替手段E1,E2は、オン状態において、大きい表面の間に電磁場を生成し、それによって、粒子Pが液体又はスケルトンマトリックスF内を移動する。これによって、光入射面を介して基板Sに入射する、粒子Pによって吸収される波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過が変化し、基板Sの第2の大きい表面に垂直な方向の透過は、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満である。
【0118】
この場合において、電磁切替手段E1,E2は、例えば、ハニカム形状、円筒形状又は矩形形状になることができ、基板全体を含みうる基板の大きい表面の全体又はその一部を適切な寸法の単一の電極(E2)によってカバーすることができる。
図11に示す光学素子の原理を、
図12により動作状態B1の上面図に示し、
図13により動作状態B2の上面図に示す。
図12に示す動作状態B1において、垂直方向における光学素子の透過が最大になるように、粒子Pは、印加される静電場のために切替手段の電極E1に集中する。それに対し、
図13に示す動作状態B1において、垂直方向における光学素子の透過が最小になるように、粒子P
Aは、印加される静電場のために切替手段の電極E2に集中する。好適には、上記透過は、動作状態B1における80%を超える透過から動作状態B2における10%未満の透過まで変化し、これは、パラメータの適切な選択により何ら問題が生じなくすることができる。
【0119】
第1の選択の第2の変形の光学素子の本実施の形態も、透過に関する垂直な光の通過(及び組み合わせた同時の非垂直な光)の通過の制御に特に適用できる。一つのあり得る応用は、例えば、所定の状況においてドライバがまぶしくなるのを防止するために車両のガラスの全体の又は一部の遮光である。さらに、光学素子を、例えば、切替ミラーを実現するために使用してもよい。
【0120】
上述した光学素子は、少なくとも基本的な実施の形態において、個別に又はグループでルーバーを構成する流体チャンバとも称するチャンバを有しなく、そのようなチャンバは、後に説明する第2の選択、第3の選択及び第4の選択において設けられる。
【0121】
図14は、動作状態B1における第2の選択による光学素子の原理の概略図である。
図15は、動作状態B2における第2の選択による光学素子の原理の概略図である。
【0122】
光学素子は、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面3及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面4を有する略平坦な基板と、第1の大きい表面3と第2の大きい表面4の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有するルーバー状に構成されるとともに基板に埋め込まれた複数の流体チャンバと、を備え、狭い側面は、大きい表面3,4のエリア内に配置され、長い側面は、大きい表面3,4に接続する。流体チャンバには、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収する最大50容量パーセント、好適には、最大20容量パーセントの電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pを含む液体Fが充填される。ルーバーの高さを、チャンバの高さの粒子の量、すなわち、50%又は20%に有効に制限する必要がある。しかしながら、非常に高い濃度の粒子は、不安定な性質及び遮蔽効果のために切替の可能性を減少させる。流体チャンバRの一つ以上の側面において、電磁切替手段を、基板Sに平坦に設ける。オン状態において、上記切替手段は、チャンバ内で有効な電磁場を生成し、それによって、粒子Pは、流体Fを移動する。これは、光が流体チャンバRに当たるとともに粒子Pによって吸収される角度で光入射面3を介して基板Sに入射する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過の変化に影響を及ぼす。
【0123】
基板Sの第1の大きい表面3及び第2の大きい表面4は、好適には、互いに平行に配置される。しかしながら、特殊な形態において、例えば、光学素子の特定の角度に依存する透過を達成すべき場合、第1の大きい表面3及び第2の大きい表面4を、最大20°の規定された角度を有するくさび形状のような非平行形態で配置してもよい。
【0124】
光入射面として適合された平坦な基板Sの第1の大きい表面3は、一般的には、視聴者から見えるように基板S]の後側に配置され、光学素子の特定の応用に応じて、例えば、画像表示装置、光源又は空隙に隣接する。後者のオブジェクトから、光は、光入射面を介して基板に入射する。
【0125】
本例において、第1の大きい表面3と第2の大きい表面4の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有するルーバー状に構成された液体チャンバRは、直方体形状を有するとともに大きい表面3,4に平行に整列する。それに対し、残りの前面は、長い側面又は狭い側面を実現しない二つの表面である。
図14及び
図15に示すように基板Sの大きい表面3,4の一方又は両方から少なくとも部分的に突出する流体チャンバRも可能である。ここでは、電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pが光を吸収する一つ以上の波長又は波長範囲は、可視スペクトル内にあり、当該スペクトルを略完全にカバーする。
【0126】
基板Sの流体チャンバRの一つ以上の側面に構成される平坦な電磁切替手段2を、例えば、
図14及び
図15に示すように各流体チャンバRの狭い側面に配置する。粒子Pは、例えば、上述した種類のナノ粒子、量子ドット及び/又は染料であってもよい。液体は、10容量パーセントの強磁性流体及び電解質を混合した水であってもよい。
【0127】
さらに、電気又は磁気泳動の粒子Pが液体Fの電場で運動を行うようにするために、粒子Pが帯電するとともに電磁切替手段が静電場を生成する電極として機能するように適合される。対応する力線が、流体チャンバRの中央に、例えば、平行に確立され、それに対し、周辺において、力線が平行から逸脱する。
【0128】
例えば、透明電極として構成された電磁切替手段2及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を、粒子Pの位置に応じて定義し、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満となる。これは、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の流体チャンバRの長さ方向に垂直な方向で測定される30°を超える角度範囲(例えば、10°、20°又は25°に変化してもよい角度)に当てはまる。ここでは、長さ方向の寸法は、各流体チャンバRの二つの全面の中央に接続する直線として定義される。動作状態B1では、粒子Pを移動させるために、静電場を、切替手段2を介して生成し、それに対し、動作状態B2では、粒子Pを流体チャンバR内の拡散によって分布させる静電場を印加しない。
【0129】
好適な開発において、第1の動作状態B1では、70%を超える粒子Pが、電磁切替手段2が構成される流体チャンバR1,R2,...の側面の領域に配置され、静的電磁場ではなく経時的に変化する電磁場が設けられるように電磁切替手段が構成される第2の動作状態B2では、50%を超える粒子が、(主に拡散及び/又は変化する電磁場のために)広く均一に分布し、その結果、角度に依存する透過は、第1の動作状態B1で60%を超えるとともに第2の動作状態B2で5%未満となる。これも、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の流体チャンバの長さ方向に垂直な方向で測定される30°を超える角度範囲(例えば、10°、20°又は25°に変化してもよい角度)に当てはまる。したがって、種々の動作状態B1,B2,...は、特に、粒子による吸収により透過特性を変更するために流体チャンバの粒子Pの局所的な集中及び位置が変化するために互いに異なる。
【0130】
好適には、電磁切替手段2は、光入射面を介して基板Sに垂直に入射する少なくとも50%の、好適には、80%を超える可視波長範囲の光に対して透明である。これは、他の全ての実施の形態に当てはまる。
【0131】
(流体チャンバRとも称する)電磁切替手段を、複数の個別に切替可能なセグメントに細分してもよく、これにより、第1の動作状態B1と第2の動作状態B2の間の局所的な切替を可能にする。ここでは、局所的な切替を可能にすることは、第1の動作状態B1と第2の動作状態B2の間の変更を全てのチャンバにおいて同時に行わずに動作状態B1と動作状態B2の両方を有する領域が光学素子に同時に存在することを意味する。これは、例えば、光学素子がスクリーンの前方で使用され、横に30°を超える視野角から、表示される画像の内容の一部を見ることができるとともに他の部分を見ることができない場合に有利である。
【0132】
そのような形態を
図16に示す。この上面図は、第2の選択による光学素子の原理を示し、この場合、動作状態B1及びB2は、変化する位置でオンになり、流体チャンバは、互いに平行に配置される。明るい流体チャンバRは、動作状態B1であり、それに対し、暗い流体チャンバRは、動作状態B2である。
【0133】
流体チャンバRを、
図16に示すように並列に配置することができる又は
図17に示すようにガタイに交差する領域のグリッドパターンにすることができる。したがって、光学素子の角度に依存する透過特性は、一つの面又は互いに垂直な二つの面を考察しながら確立される。原理は、動作状態B1及びB2のオンが局所的に変化するとともに流体チャンバがグリッドパターンで配置される本発明の第2の選択による光学素子の上面図により
図17に示される。明るい流体チャンバRは、動作状態B1であり、暗い流体チャンバRは、動作状態B2である。モアレ効果を抑制するために、液体チャンバ(R)又はルーバーは、一般的には、
非周期的に、すなわち、互いに変化した間隔で配置される。代替的又は補足的には、折り曲げられたチャンバ又は湾曲したチャンバのような規則的でない形状のチャンバも考えられる。
【0134】
電磁場における吸収特性及び/又は透過特性が異なる複数の種類の粒子を用いることもできる。「透過特性」は、各泳動(場における輸送)における粒子Pの挙動に対して特に言及される。このバージョンは、特にナノ粒子の場合に生じる。ここでは、粒子の種類の間の違いは、粒子のサイズ及び/又は表面機能すなわちゼータ電位にある。量子ドット又は染料を粒子として使用する場合及び粒子が蛍光性である場合、蛍光発光を回避するためにいわゆる消光材料を更に使用するのが好ましい。
【0135】
一般的には、流体チャンバ(特に、流体チャンバの長い側面)は、基板の垂直二等分線に略平行に整列させる。他方では、流体チャンバRを、基板Sの垂直二等分線に対して-10°から+10°までの又は可能であれば-30°と+30°の間の角度範囲(傾斜角)で傾斜させてもよい。この実施の形態も、特に、限定的でない動作状態B2において、光学素子の透過の角度の依存に影響を及ぼす。当該傾斜又は傾斜角度のために、チャンバ内の粒子の吸収及び粒子の位置によって生じる角度に依存する吸収は、例えば、特に急角度での低い透過が所望される場合に一定のオフセット角によって傾斜される。
【0136】
例えば、ルーバー状に構成された流体チャンバRは、基板Sの最大寸法の方向に平行な第1の面において、約10μmの間の幅(流体チャンバRの長い側面の間の距離)を有し、50μmだけ互いに離間されている(ある流体チャンバRの長い側面と最も近接する流体チャンバRの最も近接する長い側面の間の間隔)。最後に、ルーバー状に構成された流体チャンバRは、第1の面に垂直な第2の面から測定して約40μmの高さ(二つの狭い側面の間の距離)を有してもよい。
【0137】
光学素子のこれまで説明した変形及び後に説明する変形を含む全ての変形を、好適には、自由(パブリック)表示モードに対する第1の動作状態B1及び制限(プライバシー)表示モードに対する第2の動作状態B2で動作するスクリーンとともに使用することができる。そのようなスクリーンは、光学素子に加えて、視聴者によって見えるように光学素子の前方又は後方に配置された画像表示装置を備える。画像表示装置は、例えば、OLEDディスプレイ、LCD、SED、FED、マイクロLED又はVFDであってもよい。画像表示装置1の種類に関係なく光学素子が有効であるので、他のタイプのスクリーンも適切である。さらに、バックライトを設けた画像表示装置、例えば、LEDスクリーンにこれまで説明した光学素子及び後に説明する光学素子を使用してもよい。ここでは、光学素子を、有利には、画像表示パネル(すなわち、LEDパネル)とバックライトの間に配置し、自由表示モードに対する第1の動作状態B1と制限表示モードに対する第2の動作状態B2の間のウィッチングを可能にする。その理由は、光学素子のためにバックライトの光が一方のケース(動作状態B2)において集束されるとともに他方のケース(動作状態B1)において集束されないからである。
【0138】
画像表示装置1によって放出される光は、光入射面すなわち大きい表面3を介して光学素子に入射する。光学素子内では、上記光は、動作状態に応じて伝播に影響が及ぼされ、その後、光は、大きい表面4を介して一人以上の視聴者に向かって光学素子から出射する。影響は、
図10に関連して光学素子の第1の選択について上述した。そこでの説明は、ここでも同様に当てはまる。
【0139】
さらに、電磁切替手段2を基板Sの各流体チャンバRの一つの表面のみに構成される場合に上記切替手段が流体チャンバRのオン状態において電磁場を生成することに留意すべきであり、当該電磁場は、流体チャンバ内で有効であり、いわゆるIPS(in-plane switching)として既知であるタイプで使用される電磁場と類似する。これは、後に説明する選択にも適用される。
【0140】
図18は、動作状態B1における第2の選択による光学素子の第1の変形を示す。この変形は、光出射面として機能するように適合された大きい表面2を有する略平坦な基板Sと、各々が複数の表面を有する、基板Sに埋め込まれた複数の流体チャンバRと、を備える。流体チャンバRには、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収する最大20容量パーセントの電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pを含む液体Fが充填される。表面Sの流体チャンバRの一つ以上の表面の上に電磁切替手段が構成され、オン状態において、流体Rチャンバ内に電磁場を生成し、それによって、粒子Pが液体内を移動し、粒子Pによって吸収された波長又は波長範囲の光の光学素子による透過が変化し、基板の第2の大きい表面の法線を基準として、第1の動作状態B1では、透過が50%を超え、第2の動作状態B2では、透過が50%未満である。好適には、上記透過は、第1の動作状態B1では、透過が00%を超え、第2の動作状態B2では、透過が10%未満であり、これは、本発明の範囲内であり、パラメータを適切に選択することによって実現に問題がない。
【0141】
この場合において、流体チャンバRは、例えば、ハニカム形状であり、基板Sに十分に充填される。
図18に示す第1の動作状態B1では、印加される静電場のために、粒子Pは、切替手段2の電極に集中し、その結果、光学素子の透過は、垂直方向において最大に到達する。上面図において、この光学素子は、同様な動作状態を有する
図12及び
図13に示す光学素子と同様であり、ここでの差は、流体チャンバの場合である。
【0142】
この光学素子も、透過に関する垂直な光の通過(及び組み合わせた同時の非垂直な光)の通過の制御に特に適用できる。一つのあり得る応用は、例えば、所定の状況においてドライバがまぶしくなるのを防止するために車両のガラスの全体の又は一部の遮光である。
【0143】
第3の選択及び第4の選択による光学素子の実施の形態を、以下で説明する。
図19は、第3の選択による光学素子の二つの互いに異なる種類の粒子の原理の概略図である。粒子の種類は、人間の眼に見える領域の一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収する第1の種類の粒子P
Aを備える。人間の眼に見える領域の一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する第2の種類の粒子P
Bを更に備え、好適には、両方の種類の複数の粒子が、円によって示すカプセル内にある。
【0144】
第4の選択に関連して、
図20は、いわゆるヤヌス粒子の第1の好適な実施の形態の原理を示す。ヤヌス粒子は、第1の構造P
1を有する少なくとも一つの第1の領域及び第1の領域と異なるとともに第2の構造P
2を有する第2の領域を有し、第1の構造P
1は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収し、第2の構造P
2は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する。
【0145】
第4の選択に関連して、
図21は、第2の領域が第1の領域より著しく大きいヤヌス粒子の第2の実施の形態の原理を示す。また、第4の選択に関連して、
図22は、厳密には三つの領域が存在するヤヌス粒子の第2の実施の形態の原理を示し、この場合、第1の構造P
1を有する二つの同一の第1の領域が、第2の構造P
2を有する第2の領域によって切り離されている。例えば、異なる第4の特性(例えば、P
2に比べて散乱又は反射が減少する)を有する第3の構造P
3を有する第3の領域も考えられる。
【0146】
図23は、動作状態B1における第3の選択又は第4の選択による光学素子の第1の実施の形態の原理の概略断面図であり、
図24は、動作状態B2における同一の光学素子を示す。円は、ヤヌス粒子の第1の種類の特性又は第2の種類の特性の粒子が充填されたカプセルを表す。光学素子は、光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板Sと、基板Sに埋め込まれた複数のチャンバRであって、これらのチャンバRは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存する、複数のチャンバRと、を備える。各ルーバーは、第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの狭い側面は、大きい表面のエリア内に配置され、長い側面は、大きい表面に接続する。液体又はスケルトンマトリックスFがチャンバRに充填される。液体又はスケルトンマトリックスFは、最大95容量パーセントの電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子Pを含む。
【0147】
第3の選択の第1の実施の形態粒子において、粒子は、人間の眼に見える領域の波長又は波長範囲の光を吸収する第1の種類の少なくとも第1の粒子PAと、人間の眼に見える領域の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する第2の種類の第2の粒子PBを含む。第3の選択の第1の実施の形態粒子において、2種類の粒子のうちの一方のみを設け、液体又はスケルトンマトリックスFは、第1の粒子PAと第2の粒子PBのうちの他方の役割を果たす。粒子Pは、液体又はスケルトンマトリックスFによって実現されない第1の粒子PA又は第2の粒子PBを含む。
【0148】
第4の選択において、粒子Pは、ヤヌス粒子として構成され、第1の構造P1を有する少なくとも一つの第1の領域及び第1の領域と異なるとともに第2の構造P2を有する第2の領域を有し、第1の構造P1は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収し、第2の構造P2は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する。
【0149】
第3の選択及び第4の選択による光学素子は、ルーバーの一つ以上の側面んにおいて基板Sに平坦に設けた電磁切替手段であって、オン状態において、チャンバ内で有効な電磁場を生成し、それによって、液体又はスケルトンマトリックスFの粒子Pは移動し、光がルーバーに当たるとともに粒子Pによって吸収される角度で光入射面を介して基板Sに入射する波長又は波長範囲の光の光学素子による角度に依存する透過を変化させる、電磁切替手段を備える。
【0150】
内容を簡単化するために、
図23~26に関連する以下の全ての考察は、
図20によるヤヌス粒子を伴うバージョンに基づくが、手段と効果の間の同一の関連が粒子P
A及び粒子P
Bを有する実施の形態に対して実現可能である。
【0151】
図24に示す第2の動作状態B2において、粒子Pの70%を超える第1の粒子P
1は、ルーバーの長い側面に沿って互いに対向しながら配置され、それに対し、第2の粒子P
2は、長い側面に沿って外側に向く。
図23に示す第1の動作状態B1において、粒子Pの70%を超える第2の粒子P
2は、ルーバーの長い側面に沿って互いに対向しながら配置され、それに対し、第1の粒子P
1は、長い側面に沿って外側に向く。基板Sの第2の大きい表面の法線を基準にするとともにルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定した30°を超える角度範囲において、第1の動作状態B1における第2の粒子P
2の影響により、角度に依存する透過は、60%を超え、第2の動作状態B2における第1の粒子P
1の影響により、角度に依存する透過は、5%未満となる。
【0152】
光学素子の大きい表面に対応する上側及び下側において、(一部のみを記載した)電磁切替手段としての適切な電極E
1,E
2,E
3,E
4,...を設ける。基板Sにおいてチャンバの一つ以上の側面に平坦に構成した電磁切替手段を、例えば、各チャンバの狭い側面に配置する。
図23及び
図24を比較すると、互いに異なる動作状態において、上述した電極は、ヤヌス粒子を移動(回転)できるようにするために対応する種々の方法で切り替えられる又は極性が変えられる。チャンバと同様に、電磁切替手段を、複数の個別の切替可能なセグメントに分割することができ、これにより、第1の動作状態B1と第2の動作状態B2の間の切替を選択した位置で可能にする。
図16及び
図17に関連する説明も、ルーバーの配置及びチャンバの傾斜について当てはまる。上記電極E
1,E
2,...を、基板Sの第1の大きい表面に対して平行に、垂直方向に又は他の規定された角度で配置してもよい。
【0153】
上述した実施の形態及び後に説明する実施の形態に対して、電磁的な粒子Pが液体の電場又は磁場で運動を行うようにするために、粒子Pが帯電するとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成する場合又は粒子Pが磁性であるとともに電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための電磁層として構成される場合に当てはまる。均一な電場を印加することによって、力線が、流体チャンバRの中央に平行に確立され、それに対し、周辺において、力線が平行から逸脱する。
【0154】
図25及び
図26は、第3の選択又は第4の選択による光学素子の第2の実施の形態の原理の概略断面図であり、
図25は、動作状態B1を示し、
図26は、動作状態B2を示す。
図25による第1の動作状態B1において、粒子Pの70%を超える第1の粒子P
1は、ルーバーの長い側面に沿って互いに対向しながら配置され、それに対し、第2の粒子P
2は、長い側面に沿って外側に向く。
図26による第2の動作状態B2において、粒子Pの70%を超える第2の粒子P
2は、ルーバーの長い側面に沿って互いに対向しながら配置され、それに対し、第1の粒子P
1は、長い側面に沿って外側に向く。基板Sの第2の大きい表面の法線を基準にするとともにルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定した30°を超える角度範囲において、角度に依存する透過は、第1の動作状態B1において60%を超え、第2の動作状態B2において5%未満となる。ここでも、電極Eが電磁切替手段として設けられる。光学素子の影響は、
図10に関連して既に説明した。
【0155】
電磁切替手段及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を定義し、角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満となる。これは、基板の第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の(流体)チャンバの長さ方向に垂直な方向で測定される好適には+/-30°から+/-90°(すなわち、-90°から-30°まで及び+90°から+30°までであるが-30°と+30°の間ではない)の角度範囲に当てはまる。角度範囲は、変化してもよく、+/-30°の代わりに、+/-10°から+/-90°、+/-20°から+/-90°、+/-45°から+/-90°又は+/-25°から+/-90°までを備える。ここでは、長さ方向を、各流体チャンバの二つの前面の中心を接続する直線によって定義する。
【0156】
電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子PA又はヤヌス粒子の構造P1が光を吸収する一つ以上の波長又は波長範囲は、好適には、可視スペクトルにあり、好適には、これを完全にカバーする。特殊目的のために、これらは、例えば、UV又はIR光が測定において影響が及ぼされるようにすることを意図する場合には、可視スペクトル以外に存在してもよい。特に基板の条件及び配置並びに光入射面及び光出射面の位置に関して上述した一般的な説明もここに当てはまる。
【0157】
好適には、粒子Pは、チャンバRの周辺面に位置する又はチャンバRを形成する静止カプセルに埋め込まれている第1の粒子PA及び第2の粒子PBを備える、又は、粒子Pは、チャンバRの周辺面の静止位置を占有するが自由に回転することができるヤヌス粒子として構成される。粒子Pが第1の粒子PA及び/又は第2の粒子PBを備える場合、第1の粒子PA及び第2の粒子PBは、電場又は磁場に沿った並進運動を行うことができる。代替的には、粒子Pがヤヌス粒子として構成される場合、運動は、好適には、ルーバーの広い側面又は狭い側面に平行な特定の軸の周りの回転運動である。
【0158】
第1の大きい表面と第2の大きい表面の間に延在する長い側面及び狭い側面を有するルーバー形状に構成されたチャンバを、例えば、長い側面に平行に整列することができ、最も簡単な場合には、直方体形状を有する。しかしながら、狭い側面を台形形状にする又は折り曲げる(すなわちアーチ形状にする)こともできる。(立方体でない)直方体形状の場合、狭い側面は、一般的には流体チャンバの六つの表面のうちの最も大きいエリアを有する長い側面より小さい表面を有する長方形である。典型的には、狭い側面は、基板の大きい表面に平行に又は上記傾斜角を除いて基板の大きい表面に平行に配置され、それに対し、長い側面は、傾斜角を除いて基板の大きい表面に垂直に配置される。一方、残りの全面は、狭い側面と長い側面のいずれでもない二つの表面である。チャンバ又はその一部が基板の一方の大きい表面又は両方の大きい表面から突出することもできる。例えば、ルーバー形状に構成された流体チャンバは、基板の長い寸法の方向に平行な第1の面において、2μmと30μmの間の幅(流体チャンバの一方の長い側面から他方の長い側面までの距離)を有し、長い側面から最も近い流体チャンバの最も近い長い側面まで最小10μm最大150μmの距離だけ離間している。最後に、ルーバー形状のチャンバRは、第1の面に垂直な面から測定して最小10μm最大300μmの高さ(一方の狭い側面から他方の狭い側面までの距離)を有することができる。
【0159】
有利には、ポリマーマトリックス、特に、ゲルマトリックスとして構成されるスケルトンマトリックスFがチャンバに充填される。そのようなポリマーマトリックスは、特殊な網目サイズを有する。そのような網目サイズのために、小さい粒子Pは、大きい粒子Pより小さい「抵抗」を有し、したがって、小さい粒子P及び大きい粒子Pは、互いに異なる速度で移動する。その利点の一つは、カプセル化及びヤヌス粒子には関係ないとしても、第1の種類の粒子PA及び第2の種類の粒子PBのように粒子を構成した場合に切替時間を制御することができるとともに粒子Pの均一な分布を早めることができる。そのようなポリマーマトリックスの他の利点は、粒子Pが自発的に移動しないように拡散を大きく妨げることであり、これは、カプセル化に好適である。チャンバに液体が充填されると、散乱粒子Pの場合には、液体Fに対する相対屈折率を有する必要がある。
【0160】
粒子Pが第1の粒子PA及び/又は第2の粒子PBを備える場合、第1の粒子PAを、例えば、最大200nm、好適には、最大50nm、好適には、最大20nmの空間的な広がりを有するナノ粒子、量子ドット及び/又は染料として構成する。第2の粒子PBを、5nmと5000nmの間の距離を有する透明又は反射球として構成する。ここでは、例えば、第1の粒子PAは、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は酸化金属粒子としてとして構成され、好適には、酸化クロム(IV)又はFe2O3から構成され、これらの制限を有する2nmと50nmの間のサイズを有する。
【0161】
他のバージョンにおいて、粒子Pを、第1の領域及び第2の領域がそれぞれ球面の半球によって構成される球面を有するヤヌス粒子として構成される。ここでは、粒子Pは、マイクロ粒子として構成され、最大200μm、好適には、最大50μm、好適には、最大20μmの空間的な広がりを有する。特に、ヤヌス粒子を透明材料、好適には、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカで構成すること及び電気泳動特性を実現するために半球のうちの一方に金属ナノ粒子層の金属層をコーティングすることも考えられる。
【0162】
さらに、ヤヌス粒子を透明材料、好適には、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカで構成すること及び磁気泳動特性を実現するために半球のうちの一方に金属又は酸化金属の強磁性及び吸収性相又は強磁性ナノ粒子層、好適には、Fe2O3ナノ粒子をコーティングするとともに他方の半球に反射層、好適には、銀若しくはアルミニウムの層又は白い層をコーティングすることも考えられる。
【0163】
上述したように、球形のヤヌス粒子の本質特質は、互いに異なる物理特性を実現する二つの半球を有することである。第1の半球は、入射する光を吸収するためのものであり、それに対し、他の半球は、入射する光を散乱又は反射するためのものである。したがって、光を吸収する第1の半球は、第1の種類の第1の粒子PAの特性を実現し、光を散乱/反射する第2の半球は、第2の種類の第2の粒子PBの特性を実現する。
【0164】
光学素子に使用するのに適したヤヌス粒子を、例えば、a)上述したような透明球(ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカ)又は吸収半球を有する散乱球、b)反射半球を有する有色又は黒色球及びc)反射半球及び吸収半球を有する球で構成することができる。散乱球を、例えば、ポリスチレン球のTiOナノ粒子又はシリカナノ粒子によって実現することができる。一般的には、白色光を散乱又は反射する全ての適切な材料が考えられる。使用されるナノ粒子と粒子の球材料の間の相対屈折率は、透明球の散乱出射が増大する。代替的には、有色又は黒色ポリスチレンによって構成されるとともに吸収ナノ粒子、量子ドット又は染料が充填された有色又は黒色球を粒子Pに使用することもできる。その例は、粒子PAの例と同一である。強磁性特性を有する酸化クロム(IV)を使用することもできる。反射半球を、例えば、第2の種類の第2の粒子PBについて説明したアルミニウム、クロム、銀又は他の金属のフィルタ又はナノ粒子によって実現することができる。吸収半球に使用することができる材料は、例えば、カーボン、酸化クロム(IV)、フィルムとしてのFe2O3、Fe3O4若しくはFeO又はPBについて説明したようなナノ粒子である。
【0165】
電気泳動特性は、表面の特性によって決定される。電気泳動特性を、好適には、粒子の形態に関連して既に説明したゼータ電位を有する表面機能化によって向上させることができる又は制御することができる。ヤヌス粒子を磁気泳動にするために、球それ自体、すなわち、球の材料又は半球の一つ、厳密には、この半球の表面コーティングを磁気泳動にする必要がある。磁気材料は、例えば、ニッケル、鉄又は酸化クロム(IV)である。材料を選択するとき、ヤヌス粒子が方向性を持って回転できるようにするために、球の磁気双極子が不変であることを確認する必要がある。これを、例えば、強磁性のヤヌス粒子によって実現することができる。通常、ヤヌス粒子の直径は、200nmを超え、コーティング層の厚さは、10nmを超えるが、これらの寸法を更に大きく又は更に小さくしてもよい。
【0166】
上述した光学素子の実施の形態によって、透過を、角度に応じて(オプションとして垂直に)影響を及ぼすことができ、光学素子は、少なくとも二つの動作状態の間で切替を行うことができる。それを、スクリーンの解像度をほとんど減少させることなく保護(プライバシー)表示モードと自由(パブリック)表示モードの間の切替を行うことができるようにするために特に様々なスクリーンタイプにおいて合理的コストで実現することができるとともに普遍的に適用可能である。
【0167】
画像表示装置に関連する上述した光学素子を、PIN又はパスワードの入力、マネーアクセスセンタ若しくは支払端末におけるデータ表示又はモバイル機器における電子メールの読出しのような機密データが表示及び/又は入力される場合に常に有利に適用することができる。上述したように、光学素子を車両内で使用することもできる。画像表示に関連する光学素子を、広告のために、例えば、所定の広告を特定の身長の人によって見えるようにすることを意図するとともに他の広告を誰でも見えるようにすることを意図する場合に使用することもできる。
本明細書に開示される発明は以下を含む。
[態様1]
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板(S)と、
前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に配置され、一つ以上の波長又は波長範囲の光と相互作用する電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子(P)を含む液体又はスケルトンマトリックス(F)と、
一方又は両方の前記大きい表面の上又は前記大きい表面の間の前記基板(S)に平坦に構成された電磁切替手段であって、前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による角度に依存する透過が前記粒子(P)との相互作用により変化するように、オン状態において、電磁場を生成し、それによって、前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する、電磁切替手段と、を備え、
第1の選択において、前記粒子(P)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収又は散乱し、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大60容量パーセントの前記粒子(P)を含み、電磁場が前記大きい表面の間で有効である、又は、
第2の選択、第3の選択及び第4の選択において、前記光学素子は、前記基板(S)に埋め込まれた複数のチャンバを備え、前記チャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存し、前記ルーバーは、前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に延在し、各ルーバーは、長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの前記狭い側面は、前記大きい表面のエリア内に配置され、前記長い側面は、前記大きい表面に接続し、
前記第2の選択において、前記粒子(P)は、流体チャンバ(R)として適合された前記チャンバに衝突するように前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光を吸収又は散乱し、単一のチャンバがそれぞれルーバーを形成し、単一のチャンバにそれぞれ液体(F)が充填され、前記液体(F)は、最大50容量パーセントの前記粒子(P)を含み、前記電磁切替手段は、オン状態において、前記チャンバ内で有効な電磁場を生成する、又は、
前記第3の選択において、前記チャンバ内の前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大95容量パーセントの前記粒子(P)を含み、前記粒子(P)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収する第1の種類の少なくとも第1の粒子(P
A
)及び/又は前記波長又は前記波長範囲の光を反射及び/又は散乱する第2の種類の第2の粒子(P
B
)を含み、1種類の粒子(P
A
,P
B
)のみ存在する場合、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、他の種類の粒子(P
A
,P
B
)の役割を果たし、前記ルーバーに衝突するような角度で前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による前記角度に依存する透過を変化させる、又は、
前記第4の選択において、前記チャンバ内の前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、最大95容量パーセントの前記粒子(P)を含み、前記粒子(P)は、第1の構造(P
1
)を有する少なくとも一つの領域及び第1の領域と異なるとともに第2の構造(P
2
)を有する第2の領域を有するヤヌス粒子として構成され、前記第1の構造(P
1
)は、前記波長又は前記波長範囲の光を吸収し、前記第2の構造(P
2
)は、前記波長又は前記波長範囲の光を反射及び/又は散乱し、前記ルーバーに衝突するような角度で前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による前記角度に依存する透過を変化させる、光学素子。
[態様2]
スケルトンマトリックスは、ポリマーマトリックスとして構成される、好適には、ゲルマトリックスとして構成される、請求項1に記載の光学素子。
[態様3]
前記第1の選択、前記第2の選択又は前記第3の選択において、前記第1の選択又は前記第2の選択における前記粒子(P)及び前記第3の選択における前記第1の種類の前記第1の粒子(P
A
)は、ナノ粒子、量子ドット及び/又は染料として構成され、最大200nm、最大100nm、最大50nm又は最大20nmの空間範囲を有する、請求項1又は2に記載の光学素子。
[態様4]
前記第3の選択において、前記第2の種類の前記第2の粒子(P
B
)は、5nmと5000nmの間の直径を有する透明球又は反射球として構成される、請求項3に記載の光学素子。
[態様5]
前記粒子(P)又は前記第1の種類の粒子(P
A
)は、BPQD(黒りん量子ドット)硫化鉛(PbS)、CdTeSeS量子ドット、アゾ染料及び/又は酸化金属粒子としてとして構成され、好適には、酸化クロム(IV)又はFe
2
O
3
から構成され、これらの制限を有する2nmと50nmの間のサイズを有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の光学素子。
[態様6]
前記粒子(P)は、常磁性体として、好適には、少なくとも100nmの直径を有するとともに0.5と2の間の比透磁率を有する常磁性又は反磁性のキャリア材料からなる球として、好適には、10を超える比透磁率を有する常磁性ナノ粒子又は超常磁性ナノ粒子、好適には、Fe
2
O
3
ナノ粒子又はこれらのナノ粒子が浸透したキャリア材料がコーティングされた本体を有するメラニン樹脂又はポリスチレンとして構成されたことを特徴とする、請求項3に記載の光学素子。
[態様7]
前記第3の選択において、前記第1の種類の前記第1の粒子(P
A
)及び前記第2の種類の前記第2の粒子(P
B
)は、前記チャンバの周辺面に位置する又は前記チャンバを構成する静止カプセルに埋め込まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子。
[態様8]
前記第4の選択において、前記粒子は、前記チャンバの周辺面の静止位置に設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子。
[態様9]
前記第4の選択において、前記粒子(P)は、球面を有し、前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記球面の半球によって構成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子。
[態様10]
前記粒子(P)は、微粒子として構成され、最大200μm、好適には、最大50μm、特に好適には、最大20μmの空間範囲を有することを特徴とする、請求項9に記載の光学素子。
[態様11]
前記粒子(P)は、透明材料、好適には、ラテックス、PMMA、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成され、前記半球の一方は、電気泳動特性を実現するために、金属層又は金属ナノ粒子層によってコーティングされていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の光学素子。
[態様12]
前記粒子(P)は、透明材料、好適には、ポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成され、前記半球の一方は、電気泳動特性を実現するために、強磁性かつ吸収性の金属又は酸化金属又は強磁性ナノ粒子層によって、好適には、Fe
2
O
3
ナノ粒子によってコーティングされ、前記半球の他方は、反射層によって、好適には、銀若しくはアルミニウムの層又は白い層によってコーティングされていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の光学素子。
[態様13]
前記粒子(P)の直径は、200nmを超え、コーティング層の厚さは、10nmを超えることを特徴とする、請求項10又は11に記載の光学素子。
[態様14]
前記粒子(P)が帯電するとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための電極として構成される又は前記粒子(P)が磁性であるとともに前記電磁切替手段が静電場又は動電場を生成するための導電層として構成され、これにより、電気又は磁気泳動の前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)の電場又は磁場で運動を行うことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様15]
前記第3の選択において、前記第1の粒子(P
A
)及び前記第2の粒子(P
B
)は、前記電場又は前記磁場に沿って並進運動を行うことを特徴とする、請求項14に記載の光学素子。
[態様16]
前記第4の選択において、前記運動は、前記ルーバーの長い側面又は狭い側面に平行に配置された特定の軸の周りの回転運動であることを特徴とする、請求項14に記載の光学素子。
[態様17]
前記電磁切替手段及びトリガ回路によって、少なくとも二つの動作状態を、前記粒子(P)の位置に応じて定義し、30°~90°を超える角度範囲の前記角度に依存する透過が、第1の動作状態B1で50%を超え、第2の動作状態B2で50%未満であり、前記角度範囲は、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とし、前記ルーバーが設けられる場合、前記ルーバーの長さ方向に垂直な方向で測定されることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様18]
前記第1の選択において、前記電磁切替手段の第1の部分は、前記第1の大きい表面及び/又は前記第2の大きい表面の上の平面電極E1として構成され、前記電磁切替手段の第2の部分は、前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面のルーバーの形態の電極E2として構成され、前記ルーバーと前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の法線は、0°と30°の間の角度を有することを特徴とし、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で10%未満となるように、前記第1の動作状態B1では、70%を超える前記粒子(P)が前記電極E1の上にあり、前記第2の動作状態B2では、70%を超える前記粒子(P)が前記電極E2の上又はその近くにあることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様19]
前記第1の選択において、全ての前記電磁切替手段は、前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の上の平坦な電極EPNとして構成され、その極性は、正と負の間で逆にすることができ、前記第1の動作状態B1では、70%を超える前記粒子(P)が、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)の厚さの最大1/4よりも前記電極EPNから遠くない位置にあるように及び/又は前記液体又はスケルトンマトリックス(F)に拡散して分布するように、前記第1の大きい表面の上の前記電極EPNが正であるとともに前記第2の大きい表面の上の前記電極EPNが負の極性を有する又はその逆であり、前記第2の動作状態B2では、前記第1の大きい表面又は前記第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、前記第1の大きい表面の負極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の負極性の前記電極EPNに対向し、前記第1の大きい表面の正極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の正極性の前記電極EPNに対向し、好適な方向に沿って、前記大きい表面のそれぞれにおいて、70%を超える前記粒子(P)が、同一の極性の前記電極EPNの間にあるように、負極性の前記電極EPNが二つの正極性の前記電極EPNの間に配置され、正極性の前記電極EPNが二つの負極性の前記電極EPNの間に配置され、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様20]
前記第1の選択において、
前記粒子(P)に加えて、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、粒子(P
C
)を更に含み、前記粒子(P
C
)は、一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱及び/又は透過させ、
全ての前記電磁切替手段は、平坦な電極EPNとして前記第1の大きい表面及び前記第2の大きい表面の上に配置され、その極性は、正と負の間で逆にすることができ、前記第1の大きい表面又は前記第2の大きい表面の法線に沿って見たときに、前記第1の大きい表面の負極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の負極性の前記電極EPNに対向し、前記第1の大きい表面の正極性の前記電極EPNは、前記第2の大きい表面の正極性の前記電極EPNに対向し、好適な方向に沿って、前記大きい表面のそれぞれにおいて、電極のないブランクスペースが二つの正極性の前記電極EPN又は二つの負極性の前記電極EPNの間に周期的に配置されない場合には、負極性の前記電極EPNが二つの正極性の前記電極EPNの間に配置され、正極性の前記電極EPNが二つの負極性の前記電極EPNの間に配置され、前記ブランクスペースは、周期的に配置され、
前記粒子(P)は、一方の極性を有し、前記粒子(P
C
)は、他方の極性を有し、
前記動作状態B1と前記動作状態B2の両方において、70%を超える前記粒子(P)が正極性の前記電極EPNの間にあるとともに相補的に70%を超える前記粒子(P
C
)が負極性の前記電極EPNの間にあり、又は、その逆であり、前記第1の動作状態において、別の前記粒子(P
C
)は、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、前記第2の動作状態において、前記粒子(P)は、同一の極性の電極の間に配置され、各電極は、ブランクスペースに隣接し、
これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線の周りの30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過が、前記第1の動作状態B1で60%を超え、前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様21]
光を散乱する電気泳動的に移動可能な別の前記粒子(P
C
)は、20nmと10μmの間の粒子サイズのポリスチレン、メラニン樹脂又はシリカから構成された、及び/又は、光を散乱する別の前記粒子(P
C
)は、10nmと50nmの間の銀ナノ粒子として構成されたことを特徴とする、請求項20に記載の光学素子。
[態様22]
光を散乱する磁気泳動的に移動可能な別の前記粒子(P
C
)は、常磁性となるように構成された、好適には磁化可能な材料、好適にはニッケルのナノ粒子が充填された、及び/又は、当該ナノ粒子がコーティングされたことを特徴とする、請求項20又は21に記載の光学素子。
[態様23]
別の前記粒子(P
C
)の存在の代わりに、光ガイドは、光散乱ゲルマトリックス(F
S
)を含むルーバーのような配置のルーバーのようなチャンバを特徴付け、前記粒子(P)は、動作状態に応じて動くことを特徴とする、請求項20~22のいずれかの一項に記載の光学素子。
[態様24]
前記第2の選択において、前記第1の動作状態B1では、70%を超える前記粒子(P)が、前記電磁切替手段が構成されている前記流体チャンバ(R)の側面の領域に位置し、前記第2の動作状態B2では、静的電磁場又は交流電磁場が存在しないように前記電磁切替手段が構成され、50%を超える前記粒子(P)が、前記流体チャンバ(R)に広く均一に分布し、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の前記流体チャンバ(R)の長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過は、前記第1の動作状態B1で60%を超えるとともに前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様25]
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記粒子(P)の70%を超える前記第1の粒子(P
A
)又は前記第1の構造(P
1
)がそれぞれ、前記ルーバーの長い側面に位置し、前記第1の構造(P
1
)の場合、前記第1の構造(P
1
)は、前記長い側面に対向し、前記第2の構造(P
2
)は、前記長い側面から離間して対向し、前記第1の動作状態B1では、前記粒子(P)の70%を超える前記第2の粒子(P
B
)又は前記第2の構造(P
2
)がそれぞれ、前記ルーバーの長い側面に位置し、前記第2の構造(P
2
)の場合、前記第2の構造(P
2
)は、前記長い側面に対向し、前記第1の構造(P
1
)は、前記長い側面から離間して対向し、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の前記流体チャンバ(R)の長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過は、前記第1の動作状態B1で60%を超えるとともに前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様26]
前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記第1の動作状態B1では、前記粒子(P)の70%を超える前記第1の粒子(P
A
)又は前記第1の構造(P
1
)がそれぞれ、前記ルーバーの狭い側面に配置され、前記第1の構造(P
1
)の場合、前記第1の構造(P
1
)は、前記狭い側に対向し、前記第2の構造(P
2
)は、前記狭い側から離間して対向し、前記第2の動作状態B2では、前記粒子(P)の70%を超える前記第2の粒子(P
B
)又は前記第2の構造(P
2
)がそれぞれ、前記ルーバーの前記狭い側に位置し、前記第2の構造(P
2
)の場合、前記第2の構造(P
2
)は、前記狭い側に対向し、前記第1の構造(P
1
)は、前記狭い側から離間して対向し、これにより、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準とするとともにルーバー形状の前記流体チャンバ(R)の長さ方向に垂直な方向で測定された30°を超える角度範囲において、前記角度に依存する透過は、前記第1の動作状態B1で60%を超えるとともに前記第2の動作状態B2で5%未満となることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様27]
前記電磁切替手段は、前記第1の動作状態B1と前記第2の動作状態B2の間の局所的な切替を可能にするために、複数の個別の切替可能なセグメントに分割されていることを特徴とする、請求項17に記載の光学素子。
[態様28]
前記光入射面を介して前記基板(S)に垂直に光が入射する前記電磁切替手段は、人間の眼で見える波長範囲の少なくとも50%に対して透明であることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様29]
前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、電磁界における吸収特性及び/又は輸送特性が異なる複数の種類の粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様30]
前記第2の選択、前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記ルーバーは、平行に又は交差する領域のグリッドパターンで互いに整列していることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様31]
前記第2の選択、前記第3の選択又は前記第4の選択において、前記ルーバーは、前記基板Sの垂直二等分線に対して-30°~+30°又は-10°~+10°の角度範囲で傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
[態様32]
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する略平坦な基板(S)と、
前記基板(S)に埋め込まれた複数のチャンバであって、前記チャンバは、サイズ、各々がルーバーを形成するか各々がルーバーを形成するグループにまとめられるかに依存し、各ルーバーは、前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に延在するとともに長い側面及び狭い側面を有し、各ルーバーの前記狭い側面は、前記大きい表面のエリア内に配置され、前記長い側面は、前記大きい表面に接続し、前記ルーバーの間のスペースは、少なくとも一つの不透明材料(M)を含む、複数のチャンバと、
前記チャンバに充填された液体又はスケルトンマトリックス(F)であって、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)は、人間の眼で見える領域の一つ以上の波長又は波長範囲の光を反射及び/又は散乱する最大50%の電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な別の粒子(P
C
)を含む、液体又はスケルトンマトリックス(F)と、
前記ルーバーの前記狭い側の前記基板(S)に平坦に構成された電磁切替手段であって、前記電磁切替手段は、オン状態において、前記ルーバーにおいて有効な電磁場を生成し、これにより、前記別の粒子(P
C
)は、前記液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動し、前記光入射面を介して前記基板(S)に入射するとともに前記別の粒子(P
C
)によって反射及び/又は散乱する前記波長又は前記波長範囲の光の前記光学素子による角度に依存する透過が変化する、電磁切替手段と、を備える、光学素子。
[態様33]
第1の動作状態B1では、前記別の粒子(P
C
)の少なくとも70%は、前記ルーバーの上側の前記狭い側面の付近に配置され、これにより、前記ルーバーの間の前記不透明材料(M)のために伝播方向が制限された光は、前記光入射面を介して前記基板(S)に入射するとともに前記ルーバー内に伝播し、前記上側の前記狭い側面において前記別の粒子(P
C
)により複数の方向に散乱及び/又は反射し、第2の動作状態B2では、前記別の粒子(P
C
)の少なくとも70%は、前記ルーバーの下側の前記狭い側面の付近に配置され、これにより、前記別の粒子(P
C
)の影響により散乱及び/又は反射されながら前記光入射面を介して前記基板(S)に入射する光は、前記ルーバーの間の前記不透明材料(M)のために伝播方向に関して制限される、請求項32に記載の光学素子。
[態様34]
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する平坦な基板(S)と、
前記第1の大きい表面と前記第2の大きい表面の間に配置されるとともに最大60容量パーセントの電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子(P)を含む液体又はスケルトンマトリックス(F)であって、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱する複数の粒子(P)が存在する、液体又はスケルトンマトリックス(F)と、
一方又は両方の前記大きい表面の上又は前記大きい表面の間の前記基板(S)に平坦に構成された電磁切替手段であって、オン状態において、前記大きい表面の間に電磁場を生成し、それによって、前記粒子(P)が前記液体又はスケルトンマトリックス(F)内を移動する、電磁切替手段と、を備え、
前記粒子(P)によって吸収された波長又は波長範囲の光の前記光学素子による透過が変化し、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準として、第1の動作状態B1では、前記透過が50%を超え、第2の動作状態B2では、前記透過が50%未満である、光学素子。
[態様35]
光学素子であって、
光入射面として機能するように適合された第1の大きい表面及び光出射面として機能するように適合された第2の大きい表面を有する平坦な基板(S)と、
各々が一つ以上の表面を有する、前記基板(S)に組み込まれた複数のチャンバ(R)と、
前記チャンバ(R)に充填された液体(F)であって、一つ以上の波長又は波長範囲の光を吸収又は散乱する最大20容量%の電気泳動的又は磁気泳動的に移動可能な粒子(P)を含む、液体と、
前記チャンバ(R)の一方又は両方の表面の上に平坦に構成された電磁切替手段であって、オン状態において、前記チャンバ(R)内に電磁場を生成し、それによって、前記粒子(P)が前記液体内を移動し、前記粒子(P)によって吸収された波長又は波長範囲の光の前記光学素子による透過が変化し、前記基板の前記第2の大きい表面の法線を基準として、第1の動作状態B1では、前記透過が50%を超え、第2の動作状態B2では、前記透過が50%未満である、電磁切替手段と、を備える、光学素子。
[態様36]
自由表示モードの第1の動作状態B1及び制限表示モードの第2の動作状態B2で動作するスクリーンであって、請求項1~33のいずれか一項に記載の少なくとも一つの光学素子と、視聴者によって見えるように前記少なくとも一つの光学素子の前方又は後方に配置された画像表示装置と、を備える、スクリーン。