(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20230424BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20230424BHJP
A46D 3/05 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A46B9/04
A46B15/00 K
A46B15/00 Z
A46D3/05
(21)【出願番号】P 2022085236
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2022-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721011187
【氏名又は名称】飯島 美和
(72)【発明者】
【氏名】飯島 美和
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113676(JP,A)
【文献】特開2008-000397(JP,A)
【文献】登録実用新案第3142108(JP,U)
【文献】特開2012-024216(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 9/04
A46B 15/00
A46D 3/05
A61C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のワイヤーで挟持固定され、毛先を一方向に揃えたブラシ毛をブラシヘッドの周方向にらせん状に配置したことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシヘッドと持ち手を有し、前記ブラシヘッドと前記持ち手とが分離できることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシヘッドを挟んだ対角上に、前記ブラシヘッドと平行に、前記ブラシヘッドと前記持ち手との間からブラシヘッドの方向に延伸する棒状の突起物を設けたことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記突起物は前記ブラシヘッドの周方向に回転することを特徴とする請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
ブラシヘッド中心部パーツの周方向にらせん状の溝を設け、
ブラシヘッド上部パーツのボスにブラシ毛を挟持固定したワイヤーの一端のループを嵌め込み、
前記ブラシヘッド上部の貫通孔にブラシヘッド上部パーツのボスを嵌め込み、
前記ブラシ毛を挟持固定したワイヤーを前記溝に沿って巻きつけて、
前記ブラシヘッド下部の貫通孔に前記ワイヤーの他端を嵌め込み、
前記ブラシヘッド下部の貫通孔にブラシヘッド下部パーツのボスを嵌め込み、
前記ブラシヘッドと前記ブラシヘッド上部パーツを接続し、さらに前記ブラシヘッドと前記ブラシヘッド下部パーツを接続する
歯ブラシの製造方法。
【請求項6】
ブラシヘッドの周方向にらせん状の溝を設け、
該らせん状の溝の一端に設けた孔に、ブラシ毛を挟持固定したワイヤーの一端を嵌め込み固定し、該ワイヤーを前記溝に沿って巻きつけて、
前記らせん状の溝の他端に設けた孔に前記ワイヤーの他端を嵌め込み固定し、
前記一端に設けた孔と前記他端に設けた孔とに樹脂を充填する
歯ブラシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシヘッドにワイヤーで挟持固定したブラシ毛をらせん状に配置した歯ブラシと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている歯ブラシの多くが樹脂製のブラシ用糸束を二つ折りにした後に、ブラシ台座に空けられた穴に差し込み金属パーツでブラシ用糸束を固定するという植込み型歯ブラシである。従来のディスク型の歯ブラシはディスク型に加工されたブラシ毛単独を複数枚、もしくはディスク型ブラシ毛とスペーサーを交互に複数枚、くびれさせたヘッド部分に重ねて嵌め込み先端を溶解し固定するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在市販されているディスク型の歯ブラシは、くびれたヘッド部分に複数枚のディスク型ブラシ毛を嵌め込み、固定して製造されたものである。猫などの小動物の奥歯を磨くにはブラシの持ち手を回転させる動きによって、ブラシヘッドを軸回転させて使用するのが効果的なブラッシング方法であるが、それにはヘッド部分を噛んでディスク型ブラシ毛が容易に破損してしまうため、奥歯で噛んで圧力が加わっても破損しにくい強度の高い歯ブラシが必要であった。
【0005】
また、現在市販されているディスク型の歯ブラシは、ブラシ部分を製造する為にディスク型に加工されたブラシ毛とブラシ間に入れるスペーサーも複数個必要となる。多くの部品を組み立て、検査にも多くの人員を要し製造コストが高くなるため、必要部品が少なくコストが抑えられる製造方法が必要である。
【0006】
従来のディスク型の歯ブラシはブラシヘッドと持ち手の一体型であり、ディスク型ブラシ毛が破損した場合に歯ブラシ全体を新品に交換していたので、プラスチックごみ削減という社会的観点からも問題があった。
【0007】
猫の好むペーストなどを付けたブラシヘッドを舐めたり噛んだりしている隙にブラシ本体を軸回転させると食べカスや歯垢が落ちやすいが、持ち手が不安定で回転させにくかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明1の歯ブラシは周方向にワイヤーで挟持固定したブラシ毛をらせん状に配置したことを特徴とする。ブラシ毛をワイヤーで挟持固定することで小動物の歯が当たっても容易に破損しない。更にらせん状に配置することによって複数のディスク型ブラシが不要となり、製造コストを抑制することができる。
【0009】
また、本発明2の歯ブラシは本発明1において、ブラシヘッドと持ち手とが分離できることを特徴とする。このようにすることによってブラシ毛が破損した場合に、ブラシヘッドだけを交換し、持ち手を再利用することでプラスチックごみを減らすことができる。
【0010】
また、本発明3の歯ブラシは、ブラシヘッドを挟んだ対角上に、ブラシヘッドと平行に、ブラシヘッドと持ち手との間から延伸する棒状の突起物を設けたことを特徴とする。このようにすることによって、動物の歯は棒状の突起物に当たり、それ以上噛むことができなくなるため、ブラシヘッドの損傷を抑制することができる。
【0011】
また、本発明4の歯ブラシは、本発明3において、棒状の突起物がブラシヘッドの周方向に回転することを特徴とする。このようにすることによって、動物の歯が棒状の突起物を噛んだままの状態であってもブラシヘッドを軸回転させることができるので、的確に歯磨きをすることができる。
【0012】
また、本発明5の歯ブラシの製造方法は、ブラシヘッドの周方向にらせん状の溝を施し、ブラシヘッド上部パーツのボスにブラシ毛を固定したワイヤーの一端のループを嵌め込み、前記ブラシヘッド中心パーツの上部の貫通孔に嵌め込み固定し、該上部から前記ブラシ毛を前記溝に沿って巻きつけて前記ブラシヘッド中心パーツの下部の貫通孔にワイヤーの他端のループを嵌め込み、前記ブラシヘッド中心パーツと前記ブラシヘッド上部パーツとの、及びブラシヘッド中心パーツと前記ブラシヘッド下部パーツとの接続部分を溶着固定する歯ブラシの製造方法とすることを特徴とする。従来のディスク型の歯ブラシに比べて部品点数が減ることにより、製造工程が簡略化でき、ひいては製造コストを削減することができる。
【0013】
本発明6の歯ブラシの製造方法は、一体型ブラシヘッドの周方向にらせん状の溝を設け、該らせん状の溝の一端に設けた孔に、ブラシ毛を挟持固定したワイヤーの一端を嵌め込み固定し、該ワイヤーを前記溝に沿って巻きつけて、前記らせん状の溝の他端に設けた前記ワイヤーの他端を嵌め込み固定し、前記一端に設けた孔と前記他端に設けた孔とに樹脂を充填する歯ブラシの製造方法とすることを特徴とする。このようにすることによって、部品点数を更に減らすことができるので、製造工程が簡略化でき、ひいては製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
ワイヤーで挟持固定したブラシ毛をブラシヘッドの周方向にらせん状に配置することにより強度が高まり、猫などの小動物の歯で噛まれても容易に破損せず長期的な使用に耐える歯ブラシを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の歯ブラシのブラシヘッドに使用されるワイヤーで挟持固定したブラシ毛の製造工程を示す側面図。
【
図3】
図2で示したブラシ毛の加工工程を示す断面図。
【
図4】ブラシ毛の先端をテーパー状に加工する工程の側面図(A)、俯瞰した図(B)、毛先の断面図(C)。
【
図6】ブラシヘッドにブラシ毛をセットし組み立てる工程図。
【
図9】一体型ブラシヘッドにブラシ毛をセットし組み立てる工程図。
【
図10】歯ブラシの持ち手の組み立て工程と外観図。
【
図11】持ち手グリップの形状のバリエーションを示す側面図。
【
図13】ブラシヘッドガードを歯ブラシ本体に装着した外観図。
【
図14】ブラシヘッドガード2の組み立て工程と構造を示す外観図。
【
図15】ブラシヘッドガード2を歯ブラシ本体に装着した別角度の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態を示す歯ブラシの外観図である。
図2~
図4はブラシヘッドに使用するブラシ毛の原型と側面図、加工工程を示す。
図5はブラシヘッド部分パーツの外観図、
図6はブラシヘッド部分の組み立て工程を説明する。
図7はブラシヘッドの溶着方法のひとつを示す。
図8は一体型ブラシヘッドの形状を示す側面図、
図9は一体型ブラシヘッドの組み立て工程を表す。
図10は持ち手パーツの外観図と組み立て工程を示す。
図11は持ち手グリップの様々な形状のバリエーションを示す。
図12はブラシヘッドガードの組み立て工程と形状を示し、
図13は歯ブラシ本体とブラシヘッドガードを装着した状態で違う角度から見た外観図を示す。
図14はブラシヘッドガード2の組み立て工程と形状を示し、
図15はブラシヘッドガード2を歯ブラシ本体に装着した外観図を示す。
図16は本発明の歯ブラシの使用例である。
【0017】
本発明の歯ブラシは
図1に示すように、棒状の持ち手の先端部に円筒形状のブラシヘッド(1)を有している。円筒形状のブラシヘッドは
図6に示すように、合成樹脂からなるヘッドパーツの周方向に金属ワイヤーで挟持固定したブラシ毛をらせん状に配置し、360°全周囲にブラシ毛が放射状に突出している。さらに合成樹脂からなる持ち手には滑りにくいゴム素材のグリップを組み入れ構成される。本発明の説明においては、ブラシヘッド側を上、持ち手側を下とする。
【0018】
本発明の歯ブラシは
図1に示すように棒状の持ち手(2)にブラシヘッド(1)を装着することで完成形(100)となる。
【0019】
ブラシヘッド(1)の製造工程は、4個のパーツを組み立てる
図5、
図6の方法と、2個のパーツを組み立てる
図8、
図9の方法があり、詳しくは後述する。
【0020】
歯ブラシを構成するブラシ毛については次のような態様が可能である。金属ワイヤーで挟持固定するブラシ毛においては、毛の長短や太さの異なる毛を混在させることができる。金属ワイヤーの素材や太さ、ブラシヘッドの素材や直径を変えることで強度をさらに高めることができるため様々な動物への対応が可能である。それにより、ブラシの剛性や感触など調整することができる。
【0021】
ブラシヘッド中心部パーツの貫通孔に嵌め込むボスについては、表面に環状の溝を入れる事でより強固にパーツ同士が固定される。
【0022】
一体型ブラシヘッド(15)は、ブラシヘッドの上部パーツ(10)と中心部パーツ(9)と下部パーツ(11)の3個のパーツを予め一体化したものであり、どちらの方法で製造しても完成形はブラシヘッド(1)になる。
【0023】
猫用の歯ブラシとして、ブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)のブラシ毛を巻きつける部位(15f)の直径は0.5~0.8cm、ブラシ毛(5)の毛の太さは0.1~0.3mm、長さは0.6~1cmで、ブラシヘッドにブラシ毛を巻きつけた完成形の直径は1.8~2.8cmが望ましい。その場合のブラシヘッドの貫通孔(9d)の直径は0.2~0.4cm、貫通孔に嵌め込むボスは直径0.19~0.39cmとなる。ブラシヘッドの中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッドのブラシ毛を巻きつける部位(15f)の長さは1.5~2cmとし、ブラシ毛同士の間隔は1mm~5mm、ブラシ毛は周方向に3~10周することになる。
【0024】
ブラシヘッド(1)の周方向にらせん状に配置されたブラシ毛同士の間隔(ピッチ)は噛む力の弱い動物に対しては広く取り、噛む力の強い動物に対しては狭くすることで、使用感と強度のバランス調節が可能になり、様々な動物に対応できる。ブラシ毛同士の間隔(ピッチ)とは、ブラシヘッドの周方向にらせん状に設けた溝の間隔(ピッチ)、或いは、ブラシ毛を挟持固定している金属ワイヤーがブラシヘッドに巻きつけられた間隔(ピッチ)、と解しても構わない。
【0025】
ブラシヘッド(1)の周方向にらせん状に配置されたブラシ毛を嵌め込むための溝(9a)の幅と深さはブラシ毛(5)の挟持固定されたワイヤー部分の直径と同等にする。
【0026】
小型犬用としては、ブラシヘッドの中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)のブラシ毛を巻きつける部位(15f)の直径は0.8~1.2cm、ブラシ毛(5)毛の長さは0.6~1.3cmで、ブラシヘッド完成形の直径は2~3.8cmとする。
【0027】
中型犬や大型犬、それよりも大きな動物用としては非常に噛む力が強く、それに耐えられる強度の金属素材などをブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)に用いて、さらに
図9のようなブラシヘッドガード(17)及びブラシヘッドガード2(200)を取り付けてブラシヘッドを噛みつぶさないようにすることも可能である。
【0028】
ブラシヘッドガード(17)はステンレスなどの金属素材で形成し、歯があたる部分にゴム素材などのクッション材(18)を被せる等して、動物の歯に負担がかからないようにしても良い。
【0029】
ブラシヘッドガード2(200)は2本の棒状の突起物(21)はステンレスなどの金属素材で形成し、それを支えるブラシヘッドガード2の土台パーツ(19)と土台パーツ2(20)は合成樹脂を素材とするのが適当である。
【0030】
ブラシ毛については、ナイロンや飽和ポリエステル樹脂などの化学繊維や、豚毛や馬毛などの天然毛の使用も可能である。
【0031】
ブラシヘッド(1)や持ち手(2)の素材については、ポリプロピレンや飽和ポリエステル樹脂などの合成樹脂や、木材などの天然素材や、金属なども可能である。
【0032】
ブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)は猫などの小動物の歯で圧迫されることを前提として、柔軟性も兼ね備えた合成樹脂などの素材が望ましい。ブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)の素材として、猫などの歯が食い込みにくいツルツルな表面と硬度の高いものを用いることも選択肢の一つとして考えられる。
【0033】
ブラシヘッド上部パーツ(10)とブラシヘッド下部パーツ(11)は、ブラシヘッド中心部パーツ(9)の素材よりも高強度の合成樹脂などを使用することで、柔軟性のあるブラシヘッド中心部パーツ(9)を支柱として内側から支える効果があり、ブラシヘッド自体の強度の底上げになる。
【0034】
ブラシヘッド中心部パーツ(9)、ブラシヘッド上部パーツ(10)、ブラシヘッド下部パーツ(11)の素材をステンレスなどの金属で形成する場合は、ブラシ毛だけ交換することも可能である。その場合は、ブラシヘッド中心部パーツ(9)の貫通孔(9d)とブラシヘッド上部パーツ(10)、ブラシヘッド下部パーツ(11)の各ボス(10a)、(11a)にネジ溝を施す。更にブラシヘッド中心部パーツ(9)の直径を小さくすることが可能になるため、使用感の向上が見込める。
【0035】
ブラシ持ち手(2)の滑り止め(13)のゴム素材は、手で握って軸回転させやすい形状として凹凸加工や、楕円形などにしても構わない。
【0036】
ブラシ毛(5)に使用するワイヤー(3)については、直径0.1mm~0.5mmが理想的であるが、噛む力が強い動物にはそれよりも太いワイヤーを使用する。
【0037】
ブラシ毛(5)を嵌め込み固定するらせん状の溝(9a)及び一体型ブラシヘッド(15)のらせん状の溝(15a)に合成樹脂などを充填することにより、ブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッド(15)のブラシ毛を巻きつける部位(15f)が破損した場合にワイヤーが当該溝から外れて口内を傷つけてしまうリスクを減らす事ができる。
【0038】
ブラシ毛(5)を挟持固定するワイヤー(3)は、金属以外の強度の高い繊維などを用いることも可能である。
【0039】
次に、本発明の歯ブラシの製造方法について説明する。第1工程では、まず
図2のようなブラシ毛を製造する。ワイヤー(3)と樹脂繊維(4)を用いる。一本のワイヤーを二つ折りにしてより合わせ、該ワイヤー間に樹脂繊維を挟持固定してより合わせたワイヤーを中心に、そこから放射状に360°広がった歯間ブラシ状にする。それを
図3に示す2枚のプレート(6)で挟みこみ、360°に広がった樹脂糸(4)を片側に寄せてブラシ毛(5)にする。そのブラシ毛(5)を
図4に示す土台(8)に固定し、ローラーやすり(7)による研磨を施すことでブラシ毛(5)の毛先をテーパー状(4a)に加工する。
【0040】
ブラシ毛(5)を片側に寄せる必要性については、ブラシヘッド中心部パーツ(9)のらせん状の溝(9a)及び一体型ブラシヘッド(15)のらせん状の溝(15a)にスムーズかつ正確に嵌め込むためであり、更にらせん状に並んだ状態のブラシ毛同士の間隔を保てることで通気性の確保もできるため、洗浄や乾燥がしやすく清潔に保つ効果がある。
【0041】
ブラシ毛(5)を片側に寄せることでブラシ毛の長さに微小の差異が生じ、口当たりが柔らかくなり毛先のあたる部分が増えることで歯磨き効果が向上する。
【0042】
第2工程では、
図5のようなブラシヘッド中心部パーツ(9)にらせん状の溝(9a)を施し、中心部には貫通孔(9d)を設ける。次に
図6のようにブラシヘッド上部パーツ(10)内側のボス(10a)に第1工程で作成したブラシ毛(5)の端のループ状になったワイヤー(3a)を引っ掛け、ヘッドパーツ上部の貫通孔(9d)に押し込み固定する。その際ヘッド中心部(9)の上部の溝(9b)にワイヤーを組み入れて接続部に隙間が生じないようにする。そのままブラシヘッド中心部パーツのらせん状の溝(9a)に沿わせてより合わせたブラシ毛(5)のワイヤーを巻きつけ、ブラシヘッド中心部パーツ下部の面の溝(9c)にワイヤーを嵌め、当該ワイヤーの他端を貫通孔(9d)に入れ固定する。さらに貫通孔(9d)にブラシヘッド下部パーツ(11)のボス(11a)を押し込み固定することで、ブラシヘッド(1)が完成する。
【0043】
ブラシヘッド中心部パーツ(9)とブラシヘッド上部パーツ(10)、ブラシヘッド中心部パーツ(9)とブラシヘッド下部パーツ(11)のそれぞれの接続部分はそれぞれ接着剤で接着させる方法、全周囲を包み込むように熱して溶着させる方法、
図7に示すように組み上げた状態でブラシヘッド下部パーツ(11)からブラシヘッド上部パーツ(10)まで中心部に細い貫通孔(1a)を設け、熱した金属棒(11d)を嵌め込んで一体化させて溶着固定する方法も可能である。
【0044】
一体型ブラシヘッド(15)の強度を高める目的で、
図7に示すように下部から上部まで貫通孔(1a)を設け、熱した金属棒(11d)などを嵌め込んでも良い。
【0045】
ブラシヘッド中心部パーツ(9)の貫通孔(9d)に嵌め込む上部パーツのボス(10a)、及び下部パーツのボス(11a)は、ブラシヘッド中心部パーツ(9)よりも硬度の高い素材にすることで柔軟性のある中心部パーツ(9)を内側から支え、補強する効果があり、ブラシヘッド全体の衝撃への耐性が高まる。
【0046】
ブラシヘッド(1)は前記したような中心部パーツ(9)、上部パーツ(10)、下部パーツ(11)、ブラシ毛(5)の4点を組み立てる製造方法があるが、さらに部品の少ない一体型ブラシヘッド(15)とブラシ毛(5)の2点を組み立てる方法でも製造が可能である。
【0047】
次に、一体型ブラシヘッド(15)の組み立て工程を説明する。一体型ブラシヘッドの上部の孔(15b)にブラシ毛のワイヤー(3a)を、溶接棒(16)を使用して嵌め込み固定し、らせん状の溝(15a)に沿わせてブラシ毛(5)のワイヤーを巻きつけ一体型ブラシヘッドの下部の孔(15c)にワイヤーの末端(3b)を、溶接棒(16)で嵌め込み固定する。さらに、上部の孔(15b)と下部の孔(15c)に樹脂を充填することでブラシヘッド(1)が完成する。
【0048】
ブラシヘッド(1)は、複数のパーツを組み立てる
図5、
図6の方法と
図8、
図9の一体型ブラシヘッド(15)を使用した製造方法とどちらでも可能である。
図5、
図6のブラシヘッドと比較すると
図8、
図9のブラシヘッドは中心部にボスが入っていないことから強度の低下はあるが、パーツの少なさと製造工程の簡素化で更なる大量生産が可能になる。
【0049】
第3工程では、滑り止めを有した持ち手(2)を製造する。
図10の持ち手パーツ上部(12)にゴム素材の滑り止めグリップ(13)を嵌める。次に持ち手パーツ下部(14)を接続固定し、持ち手が完成する。
【0050】
持ち手の滑り止めグリップ(13)はゴム素材がよりよく、外観の形状は
図8に示す様々なバリエーションがある。表面に凸凹を施した(13a)(13b)や、緩やかなカーブ形状(13c)(13d)の様にすることも可能である。
【0051】
持ち手に滑りにくいゴム素材などの滑り止めグリップ(13)を配置することでブラシヘッドを軸回転しやすくなり、猫などの小動物の歯にブラシの毛先が連続的に当たるので的確にブラッシングすることが可能になる。
【0052】
ブラシヘッド(1)下部の360°ぐるりと一周設置されたストッパー上部(11c)及び(15d)と、持ち手の上部に設置されたストッパー下部(12b)はブラシヘッドガード(17)及びブラシヘッドガード2(200)を装着する為のものであるが、ブラシヘッドを噛む力が比較的弱い猫などの小動物用の歯ブラシへの設置は必須ではない。
【0053】
噛む力が非常に強い動物に対応するために、ブラシヘッドガード(17)を付けることも可能である。
図9に示す形状で、ブラシヘッド下部のストッパー上部(11c)及び(15d)とストッパー下部(12b)の間に装着し、そこからブラシヘッドの方向に2本の棒状の突起物(17a)が配置される。ブラッシングの際にヘッド部分を噛みつぶせないようにブラシヘッドを挟みこむような配置で両サイドにブラシヘッド中心部の直径より少し細い2本の棒状の突起物(17a)により歯による圧迫を分散させる効果がある。
【0054】
ブラシヘッドガード(17)及びブラシヘッドガード2(200)はブラシヘッド(1)を中心にして平行に配置される為、動物の奥歯を磨く際にブラシヘッド(1)と並んだ2本の棒状の突起物(17a)の合計3本があることにより複数本で歯による圧迫を受け止めることができる。それによって噛む力が分散され、歯による圧力がブラシヘッドだけに集中して破損するリスクを減らすことができる。
【0055】
ブラシヘッドガード(17)をブラシヘッド下部のストッパー上部(11c)及び(15d)と、ストッパー下部(12b)との間に設置すると、持ち手(2)とブラシヘッドガード(17)は同心円構造になりブラシ本体を軸回転させてもブラシヘッドガード本体(17)は動かずに歯の圧迫からブラシヘッドを保護できる仕様である。
【0056】
ブラシヘッドガード(17)は、ブラシ持ち手の上部に嵌め込むためのリング状の土台から歯ブラシ本体を中心にブラシヘッドの方向に2本の棒状の突起物(17a)が突き出ている構造であり、実際に歯磨きをする際には2本の棒状の突起物にはクッション材(18)を被せて使用しても良い。
【0057】
ブラシヘッドガード(17)の同心円構造になるリングの内側部分には環状の溝(17b)を施すことで、持ち手(2)と接する面積を減らすことができ、摩擦が少なくなることで軸回転の動きがよりスムーズになる。
【0058】
ブラシヘッドガード2(200)は、ブラシヘッドガード(17)と用途は同じものであるが、形態と製造工程は異なる。
【0059】
ブラシヘッドガード2(200)は、2本の棒状の突起物(21)とクッション材(18)、それを支え持ち手に装着するブラシヘッドガード2の土台パーツ(19)、ブラシヘッドガード2の土台パーツ2(20)からなる。
【0060】
ブラシヘッドガード2(200)の土台パーツ(19)、土台パーツ2(20)はそれぞれ半円形状で、組み立て後には開閉部(20c)を解放することで反対側の狭窄部(19c)が屈折することで開き(200a)、持ち手(2)の上部に嵌め込んで装着する。
【0061】
ブラシヘッドガード2(200)の土台パーツ(19)、土台パーツ2(20)には2本の棒状の突起物(21)を組み入れる溝(19a)(20a)があり、棒状の突起物の下部の突起(21a)に合わせた形状にすることによって安定し、離脱を防ぐ。その溝(19a)の両サイドにはパーツ同士を接続させるための凹み(19b)と反対側の溝(20a)の両サイドには突起(19b)を嵌め込むための突起(20b)を設ける。
【0062】
ブラシヘッドガード2(200)の土台パーツ(19)は開閉させるための狭窄部(19c)を設け、反対側の土台パーツ2(20)は留め具(20e)を設けることで着脱を可能にする。
【0063】
ブラシヘッドガード2(200)の同心円構造になるリングの内側部分には環状の溝(19d)(20d)を施すことで、持ち手(2)と接する面積を減らすことができ、摩擦が少なくなることで周方向への動きがよりスムーズになる。
【0064】
顎の力が非常に強い動物用として使用する場合は、持ち手(2)の上部にブラシヘッドガード(17)を嵌め込み、ブラシヘッド(1)を装着することで完成する。
【0065】
ブラシヘッドガード2(200)は開閉可能な構造のため、持ち手(2)とブラシヘッド(1)が接続された状態でも着脱可能である。
【0066】
ブラシヘッドガード(17)は、歯の圧迫によってブラシヘッドにかかる負担を分散させるために、強度の高いステンレスなどの金属素材などが理想的であるが、動物の歯にかかる負担を軽減させるために歯にあたる2本の棒状の突起物(17a)にゴム素材などのクッション材(18)を付けて使用しても良い。
【0067】
ブラシヘッドガード(17)の2本の棒状の突起物(17a)を包む袋状のクッション材(18)を被せた状態の直径は、ブラシヘッド中心部パーツ(9)及び一体型ブラシヘッドのブラシ毛を巻きつける部位(15f)の直径よりも少し細い仕様にすることで、口を開く際の奥歯側から前歯方向に生じる上顎と下顎の歯の隙間の角度に対応できる。ブラシヘッドガード2(200)の2本の棒状の突起物(21)についても同様である。
【0068】
このブラシヘッド部分の特徴であるらせん状に配置されたブラシ毛の効果として、第一にブラシヘッド部分の直径が均一になることで猫などの小動物の歯で圧迫される負荷が分散され、ワイヤーを使うことでより強度が高まる。第二にブラシ毛同士が密接していないので通気性もあり、洗浄、乾燥も容易で清潔に保ちやすい。
【0069】
強度が高く破損しにくいブラシではあるが、破損や劣化した際にはブラシヘッドの交換も可能であるため持ち手一体型のブラシと比較してプラスチックごみを削減する効果もある。
【0070】
本発明の歯ブラシは、ブラシヘッド部分を持ち手の先端部に装備したものであり、ブラシヘッドの組み立ては少ないパーツで工程もシンプルであり、ブラシヘッドの交換も可能である。ブラシヘッド(1)の下部に施されたネジ溝(11b)及び一体型ブラシヘッド(15)のネジ溝(15e)と、持ち手(2)の上部に施されたネジ溝(12a)を接続又は解除することによって容易に交換できる。
【0071】
本発明の歯ブラシは、らせん構造であるため猫などの小動物の歯のブラッシングの際にブラシヘッド部分を噛んでしまうことによってかかる負荷を分散させ、金属ワイヤーを用いることでさらに高強度で破損しにくく、持ち手を回転させながら効率よくブラッシングができる。
【0072】
テーパー状に加工した毛先が歯肉へのあたりを柔らかく保ち、歯間や歯周ポケットなど隅々まで清潔にすることが可能であり、スムーズな口腔ケアができる。
【0073】
持ち手は片手の指で挟んで回転させやすい素材と形状にし、猫など小動物の口腔内をスムーズかつ的確にブラッシングすることで高い歯磨き効果が期待できる。
【0074】
ブラシヘッド部分に従来品で使用されているスペーサーを使用する必要がないため部品点数の増加が避けられ、更に製造工程が大幅に合理化可能になる。これらの製造にかかる製造コストの引き下げが可能となるため、市場価格も低価格で提供できる。
【0075】
市場に低価格で提供できるようになれば、猫などの小動物の口腔ケアが容易になり、飼い主のペットに対する口腔ケアの意識も高まり、より多くの動物たちの健康をバックアップすることも期待できる。
【符号の説明】
【0076】
1 ブラシヘッド
1a 貫通孔
2 持ち手
3 ワイヤー
3a ワイヤー端のループ
3b ワイヤーの末端
4 樹脂糸
4a テーパー状に加工したブラシ毛の先端
5 ブラシ毛
6 ブラシ毛を挟んで片側に寄せるプレート
7 ブラシ毛の先端を研磨するローラーやすり
8 ブラシ毛を固定する土台
9 ブラシヘッド中心部パーツ
9a らせん状の溝
9b ブラシヘッド中心部パーツ上部の溝
9c ブラシヘッド中心部パーツ下部の溝
9d ブラシヘッド中心部パーツの貫通孔
10 ブラシヘッド上部パーツ
10a ブラシヘッド上部パーツのボス
11 ブラシヘッド下部パーツ
11a ブラシヘッド下部パーツのボス
11b ブラシヘッド下部パーツのネジ溝
11c ストッパー1
11d 金属棒
12 持ち手パーツ上部
12a 持ち手パーツ上部のネジ溝
12b ストッパー2
13 滑り止めグリップ
13a 小さな突起のある滑り止めグリップ
13b 縦に溝のある滑り止めグリップ
13c なだらかなカーブのついた滑り止めグリップ
13d 楕円形の滑り止めグリップ
14 持ち手パーツ下部
15 一体型ブラシヘッド
15a らせん状の溝
15b 上部の孔
15c 下部の孔
15d ストッパー1
15e ネジ溝
15f ブラシ毛を巻きつける部位
16 溶接棒
17 ブラシヘッドガード
17a 2本の棒状の突起物
17b リング内側の溝
18 2本の棒状の突起物に装着するクッション材
19 土台パーツ
19a 棒状の突起物を嵌め込む溝
19b 接続するための突起
19c 狭窄部
19d リング内側の溝
20 土台パーツ2
20a 棒状の突起物を嵌め込む溝
20b 接続するための凹み
20c 開閉部
20d リング内側の溝
20e 留め具
21 2本の棒状の突起物
21a 2本の棒状の突起物を固定するための突起
100 歯ブラシ完成形態
200 ブラシヘッドガード2
【要約】
【課題】従来の360°型歯ブラシはディスク型ブラシ毛とスペーサーなど複数の部品点数が必要であり製造コストが高く、猫などの小動物の歯のブラッシングに耐えられる強度がなかった。それらの問題を解決した製品を提供する。
【解決手段】ブラシヘッド中心部パーツ(9)にらせん状の溝(9a)を施し、その溝にワイヤーで挟持固定したブラシ毛(5)を巻きつけ、ブラシヘッド上部パーツ(10)とブラシヘッド下部パーツ(11)との両方のボス(10a)(11b)を貫通孔(9d)に嵌め込んで固定する。らせん構造のブラシヘッドにすることで部品点数が従来の360°型歯ブラシよりも大幅削減でき、製造コストが抑えられる。ブラシ毛(5)の金属ワイヤーと溝(9a)により猫などの小動物が歯のブラッシングの際に噛んでしまっても破損しにくい仕様である。
【選択図】
図6