(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】食品保管方法、食品輸送方法、食品輸送体
(51)【国際特許分類】
A23L 3/32 20060101AFI20230424BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20230424BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A23L3/32
A23L3/36 Z
A23L3/00 102
(21)【出願番号】P 2022125026
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2022-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506070143
【氏名又は名称】住商グローバル・ロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 哲史
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110643(JP,A)
【文献】特開2010-263884(JP,A)
【文献】特許第7091537(JP,B1)
【文献】特許第7091536(JP,B1)
【文献】特開2001-204428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類又は1形態の食品を保管する食品保管方法であって、
収容室、及び、該収容室内に電場を形成するための電場形成部を備える収容庫を準備する収容庫準備工程と、
熱収縮性フィルムを含む包装材で前記食品を被覆して真空シュリンクラッピングすることにより、食品包装体を形成する食品包装工程と、
前記食品包装体を前記収容室内に収容し、該収容室内に電場を形成し、該収容室内を冷却することにより、前記食品の少なくとも一部をチルド状態に保持する電場冷却工程と、
を含む食品保管方法。
【請求項2】
前記食品包装体を前記収容室内に収容していない状態で、又は、前記食品包装体を前記収容室内に収容した状態で、該収容室内に電場を形成し、該収容室内を冷却したときの前記収容室内の温度分布を計測する温度計測工程を含む、
請求項1記載の食品保管方法。
【請求項3】
前記電場冷却工程では、前記温度計測工程で計測された前記収容室内の温度分布と、前記食品の種類又は形態とに基づいて、前記収容室内における前記食品包装体の収容位置を決定する、
請求項
2記載の食品保管方法。
【請求項4】
前記電場冷却工程では、保冷剤に接触させずに前記食品包装体を前記収容室内に収容する、
請求項1記載の食品保管方法。
【請求項5】
前記電場冷却工程を、1日以上実施する、
請求項1記載の食品保管方法。
【請求項6】
前記電場冷却工程における前記食品包装体の前記収容室内への収容、該収容室内の電場形成、又は、該収容室内の冷却を、前記食品の生産直後から5日以内に開始する、
請求項1記載の食品保管方法。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか一項に記載の食品保管方法を用い、前記電場冷却工程を実施しながら前記食品を輸送する、
食品輸送方法。
【請求項8】
少なくとも1種類又は1形態の食品を含んで輸送される食品輸送体であって、
収容室、及び、該収容室内に電場を形成するための電場形成部を備える収容庫と、
熱収縮性フィルムを含む包装材で前記食品を被覆して真空シュリンクラッピングすることにより形成された食品包装体と、
を備え、
前記食品包装体が収容された前記収容室内に電場が形成され、かつ、該収容室内が冷却された状態で、前記食品の少なくとも一部がチルド状態に保持された、
食品輸送体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、食品保管方法、食品保管装置、及び食品輸送体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の世界的な生鮮食料品等(以下まとめて「食品」という)の需要の高まりがあり、且つ、その中で冷凍していない商品は高付加価値で需要が高く、従って、チルド状態又はそれに近い状態を維持しつつその鮮度を長く保つ技術が注目されている。例えば特許文献1には、食品が保持される収容庫と、その内部に配置される電極と、電極に電圧を印加する電源とを備える電場技術を用いた冷凍庫が記載されている。この冷凍庫では、電源からの電圧の印加により、収容庫の内部に静電界が形成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食品の鮮度保持のためには、腐敗の原因となる食品中の細菌の増殖を抑制することが重要である。そのためには、特に、生産直後の細菌数が極力少ない状態を維持することが非常に重要と考えられ、食品の生産地から消費地までの輸送環境を改善するべく、特許文献1に記載されたような電場技術を活用する取り組みが提案又は模索されつつある。
【0005】
一方、電場技術を用いた食品の鮮度保持効果(賞味期限)は、食品の保管温度と密接に関わっており、氷点下よりも低い温度帯(0℃未満)で食品を可能な限り凍らせずに保管することが、経時的な菌数の増加の抑制に寄与すると推察される。
【0006】
しかし、長距離の海上輸送のように輸送時間が長くなればなるほど、食品の商品価値が毀損される可能性が高まる。例えば、鮮度保持効果を最大化するために、凍結しないぎりぎりの温度で管理しようとすると、外的要因(外気温や食品の個体差、輸送日数(長いほど凍結し易くなる。)、収容庫内の積載量の多寡等)に起因して、凍結又は凍結に近い状態になってしまい、食品本来の商品価値の毀損を招くおそれがある。つまり、電場技術を用いた従来の食品保管及び輸送技術では、非凍結状態を確実に維持しにくいという難点がある。
【0007】
一方、凍結のリスクが少ない保守的な(比較的高温の)温度帯で管理した場合には、腐敗や凍結に至らずに輸送することができたとしても、食品中の細菌数が比較的多くなり、賞味期限が短くなってしまう。こうなると、その食品を輸入地で販売する事業者は、そのような商品を再度凍結させて冷凍品として流通させざるを得なくなる。この場合でも、食品本来の商品価値が毀損されてしまう上に、冷凍コストの発生、冷凍過程による温室効果ガスの発生、及び、場合によっては食品廃棄の発生(フードロス)といった問題につながってしまう。従って、電場技術を用いた従来の食品保管及び輸送技術は、未だに十分に実用化されていないのが実情である。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、チルド状態又はそれに近い状態を維持して食品の鮮度保持効果の最大化を追求して食品の腐敗リスクを軽減しつつ、その際の食品の凍結リスクをも低減することが可能な食品保管方法、食品輸送方法、及び食品輸送体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態による食品保管方法の一例は、少なくとも1種類又は1形態の食品を保管する方法であって、(1)収容室、及び、該収容室内に電場を形成するための電場形成部を備える収容庫を準備(用意)する収容庫準備工程と、(2)包装材で前記食品を被覆した後に前記包装材の内部の真空度を高める処理を行うことにより食品包装体を形成する、又は、形成された該食品包装体を準備(用意)する食品包装工程と、(3)前記食品包装体を前記収容室内に収容し、該収容室内に電場を形成し、該収容室内を冷却することにより、前記食品の少なくとも一部をチルド状態に保持する電場冷却工程と、を含む。
【0010】
また、本開示の一実施形態による食品輸送方法の一例は、本開示による食品保管方法を用い、前記電場冷却工程を実施しながら前記食品を輸送する。
【0011】
さらに、本開示の一実施形態による食品輸送体の一例は、少なくとも1種類又は1形態の食品を含んで輸送されるものであって、収容室、及び、該収容室内に電場を形成するための電場形成部を備える収容庫と、前記食品を被覆し、且つ内部の真空度を高めることにより形成された食品包装体とを備え、前記食品包装体が収容された前記収容室内に電場が形成され、かつ、該収容室内が冷却された状態で、前記食品の少なくとも一部がチルド状態に保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る収容庫の一例の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る収容庫に食品包装体を収容して保管し、かつ、その状態で食品包装体を輸送する手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図ではない。すなわち、本開示の一例は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造性のある行為を必要とせずに得られる他の実施形態は、いずれも本開示の保護範囲に含まれる。さらに、本開示において、例えば1つの「工程」、「ステップ」、「部」、「体」、「室」、「装置」、「機」、「器」、「手段」、「機構」、「システム」、及びそれらの一部や全部の機能や構成が、それらの2つ以上によって実現されてもよく、或いは、それらの2つ以上が、1つによって実現されてもよい。
【0014】
[食品保管に用いられる収容庫及び食品輸送体の構成例]
図1は、本開示の一実施形態に係る収容庫の一例の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図であり、
図3は、
図1におけるIII-III線に沿った断面構造である。なお、
図1~
図3においては、説明の便宜上、鉛直上下方向を、それぞれ、矢印Z1,Z2で示し、水平方向を矢印X及びYで示す。
【0015】
コンテナ10(収容庫)は、食品を冷却保管する機能を有し、固定型コンテナとして使用されてもよく、食品を冷却保管した状態で輸送するための輸送(移動)用コンテナとして使用することもできる。固定型コンテナとしては、食品の加工工場や建屋等の屋内に設置される形態や、それ自体が倉庫として機能する形態が挙げられる。また、輸送用コンテナとしては、船舶に積み込まれる海上輸送用コンテナの他、飛行機、車両等の移動体に積み込まれるコンテナ等が挙げられる。
【0016】
図1に示すように、コンテナ10は、食品を内部に収容可能な本体20を備えている。本体20は、正面に開口部を有する矩形箱状に形成された箱体40と、箱体40の正面の開口部を閉塞する一対の扉部50とを有している。箱体40及び扉部50は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料により形成されるとともに、電気的に接地されている。
【0017】
また、
図2に示すように、箱体40及び扉部50のそれぞれの内面により囲まれる空間は、本体20の内部空間であり、かつ、段ボール箱等の外容器Bに収納された食品包装体Fが収容される多段構成の収容室S10を画成している。さらに、箱体40及び扉部50のそれぞれの内部には、コンテナ10の冷却性能を高めるために、収容室S10からコンテナ10の外部への熱伝達を抑制するための断熱材が埋め込まれている。またさらに、
図1に示す一対の扉部50は、箱体40に対して開閉自在に連結されている。コンテナ10では、扉部50の開閉により、収容室S10への食品包装体Fの出し入れを行うことが可能となる。また、扉部50を閉じることにより、収容室S10が閉空間となり、収容室S10の内部、及び、そこに収容された食品包装体Fが冷却状態で保持される。
【0018】
一方、
図3に示されるように、コンテナ10は、本体20の例えば背部に内蔵される冷却装置30を更に備えている。冷却装置30は、収容庫本体20の内部又は外部に設けられた電源(図示せず)に接続されており、電力供給によって駆動され、収容室S10の内部に冷風を供給して冷却する。具体的には、冷却装置30は、収容室S10内に開口する吸入口31及び吹出口32を有している。冷却装置30は、吸入口31を介して収容室S10内の空気を吸入するとともに、吸入した空気を冷却して吹出口32から収容室S10の内部に吹き出すことにより、収容室S10内を冷却する。このように、本実施形態のコンテナ10は、冷却装置30により収容室S10内の温度を調整することが可能な、いわゆるリーファーコンテナである。
【0019】
また、
図2及び
図3に示すように、コンテナ10は、収容庫本体20の上壁部41の内側付近に配置された電場形成部60を更に備える。この電場形成部60は、絶縁部材61と、上記電源(図示せず)に接続された電極部材62とを備えている。これにより、電場形成部60は、電力供給によって駆動され、収容室S10の内部に電場を形成する。また、電場形成部60の左右方向Xの一端部及び他端部は、それぞれ、収容庫本体20の側壁部42,43の上方に設けられる載置部81,82上に載置され、また、奥行き方向Yに延在している。
【0020】
これらの載置部81,82の種類は、特に限定されず、電気的な絶縁性を有する絶縁材料(例えば樹脂)でもよく、或いは、鉄やステンレス等の導電性材料により形成することができる。さらに、載置部81,82は、それぞれ、側壁部42,43に固定される部位810,820と、電場形成部60の一端部が載置される部位811,821とを有しており、ともにX方向断面がL字状をなす、いわゆるL字状アングル部材として構成されている。
【0021】
また、食品包装体Fに含まれる「食品」としては、特に制限されず、例えば、牛肉や豚肉等の食肉、魚や貝等の魚介類、鶏卵、魚卵、牛乳やチーズ等の乳製品、小麦粉やそば粉等の穀物の粉体から作られる麺類、いちごやりんご等の果物、キャベツやトマト等の野菜、及び、それらの加工食品が挙げられる。これらのなかでも、牛肉や豚肉等の食肉、魚や貝等の魚介類、鶏卵、魚卵、牛乳やチーズ等の乳製品等の動物性食品は、長期の保管や輸送における鮮度保持効果が特に渇望される食品であり、本開示に係るコンテナ10に収容される食品包装体Fに包含される対象として好適である。
【0022】
さらに、食品包装体Fは、それらの少なくとも1種類又は1形態の食品が、熱収縮性及び高真空性を有する包装材で被覆されたものである(
図2参照)。なお、ここでの食品の「形態」としては、例えば、同じ種類でも、性状、形状、産地、産生時期、真空シュリンクラッピングの状態等が異なることが挙げられる。また、「包装材」は、食品用の真空パック(梱包材)の一種である。このような「包装材」によって被覆された食品包装体Fとしては、熱収縮性フィルムを含む包装材で食品が被覆されて真空シュリンクラッピングされることにより形成されたものが好ましく例示される。なお、食品包装体Fのラッピング状態に関しては、同一種類の食品の全てが同一のラッピング状態を必ずしも有している必要はなく、同一種類の食品のそれぞれが異なるラッピング状態を有していても良い。
【0023】
また、「真空シュリンクラッピング」とは、食品を包含した包装材の内部を減圧(真空引き)しながら、又は、全体を減圧(真空)環境下において包装材を加熱し、熱収縮性フィルムの熱収縮により、その食品を密封ラッピングする手法である。ここで、包装材に含まれる「熱収縮性フィルム」は、特に制限されず、熱収縮温度(例えば70~110℃)における熱収縮時の収縮率が1~70%であり、所定の引張弾性率を有するフィルムが挙げられる。また、熱収縮性フィルムは、延伸されていても延伸されていなくてもよい。さらに、熱収縮性フィルムの種類として、より具体的には、公知の熱可塑性樹脂によるフィルムを使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等が挙げられる。また、熱収縮性フィルムを構成する樹脂中に、適宜の顔料、充填剤、染料、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。さらに、ここでの包装材は、熱収縮性フィルムに非熱収縮性フィルムが積層された複合フィルムであってもよい。この非熱収縮性のフィルムも特に制限されず、組み合わせて使用される熱収縮性フィルムよりも、同温度での熱収縮率が低いものであれば制限されず、例えば、70~110℃の加熱温度における熱収縮率が1%未満であるものが挙げられる。
【0024】
[食品保管方法及び食品輸送方法の実施手順例]
図4は、
図1及び
図2に示すコンテナ10に食品包装体Fを収容して保管し、かつ、その状態で食品包装体Fを輸送する手順の一例を示すフロー図である。
【0025】
ステップSP1では、食品包装体Fをコンテナ10の収容室S10に収容するため、
図1及び
図2に示すコンテナ10を、食品包装体Fの積載(荷積み)場所に設置する(収容庫準備工程)。それと前後して、又は、並行して、ステップSP2では、熱収縮性フィルムを含む包装材等で食品を被覆して真空シュリンクラッピングすることにより、高真空性を有する食品包装体Fを形成する、或いは、そのように形成された食品包装体Fを、その積載(荷積み)場所付近に移載する(食品包装工程)。
【0026】
次いで、ステップSP3では、食品包装体Fを、収容室S10の内部に収容する。このとき、食品包装体Fは、収容室S10の内部における適宜の場所に保持することができ、例えば、
図2に示すように、収容室S10の内部に多段に構成された棚を設け、その食品包装体Fの冷却及び温度管理に適した場所を選定することができる。次に、ステップSP4では、電源(図示せず)から電場形成部60の電極部材62に所定の高電圧を印加することにより、収容室S10の内部に電場を形成する。その際、電極部材62に印加される高電圧は、例えば、時間の経過に伴って周期的に大きさや向きが変化する交番(交流)電圧であってもよいし、時間の経過に伴って大きさや向きが変化しない一定(直流)電圧であってもよい。電極部材62に印加される電圧は、任意の大きさに設定可能であるが、例えば数百V~数万Vの高電圧に設定される。また、電極部材62に印加される交番電圧の周波数は、任意の周波数に設定可能である。なお、電極部材62に印加される高電圧が交番(交流)電圧である場合、上記印加電圧は実効電圧として表され得る。それと前後して、又は、並行して、ステップSP5では、電源(図示せず)から冷却装置30に所定の電力を供給することにより、収容室S10の内部に冷風を供給し、収容室S10の内部を、食品包装体F内の食品の少なくとも一部が凍結寸前の状態(チルド状態)となるように冷却し、その状態を保持する。なお、食品の少なくとも一部とは、一つの食品内の少なくとも一部分、あるいは複数の食品のうちの少なくとも一つの食品を示す。また、凍結寸前の状態には、例えば半冷凍や半解凍のような状態や、若干表面が固くなっている状態、あるいは指で押せば1mm~2mm凹むような完全凍結ではないものの、その一歩手前(解凍の初期段階)等が含まれる。ステップSP3,SP4,SP5から、「電場冷却工程」が構成される。
【0027】
そして、ステップSP6において、上述のとおり収容室S10の内部に電場を形成し、かつ、収容室S10の内部を冷却した状態で、コンテナ10を船舶、飛行機、車両、鉄道等の移動体に荷積み(積載)し、目的地まで輸送する。このとおり、
図2に示すように収容室S10の内部に食品包装体Fが収容され、かつ、冷却された状態のコンテナ10は、食品包装体Fを含めて本開示の「食品輸送体」の一例に相当する。
【0028】
このように構成されたコンテナ10を用いた食品保管方法、食品輸送方法、及び食品輸送体によれば、食品を熱収縮性及び高真空性を有する包装材で真空シュリンクラッピングした食品包装体Fとして、電場環境に保持することにより、真空シュリンクラッピングを施さない場合(脱気パックや非シュリンク真空パック等)に比して、食品の非凍結温度を更に低下させることができる。このような非凍結温度の更なる低下は、電場環境による効果に加え、真空シュリンクラッピングの場合、食品が接触する空気量及びその気中水分量が低減されるので、水の凝固点(0℃)以下での凍結自体がより生じ難くなることが要因の一つとして推察される(但し、作用はこれに限定されない。)。これにより、食品をチルド状態で凍らせずにより安定的に保持することができるので、腐敗の原因である食品中の細菌の増殖を更に抑制して、食品の鮮度を長期に亘って保持することが可能となる。
【0029】
このとおり、本開示によれば、食品の腐敗リスク及び凍結リスクを低減することができるので、真空シュリンクラッピングを施さない場合に比して、食品の可食期間をより延長することができる。よって、従来は実現し得なかった、例えば、遠方生産地から航空輸送されていた生鮮食品を海上輸送すること、及び、従来冷凍されていた食品をチルド状態のまま輸送するといったような全く新規の輸送方法が実現可能となる。さらに、これらにより、食品の長期間の流通が可能となるので、廃棄されてしまう食品量(フードロス)を削減することができ、消費者に対する食品の安価な安定供給に資することができる。また、食品が冷凍されてしまった場合に必要となる解凍作業に起因する作業性及び歩留りの低下を抑止することができる。しかも、航空輸送を、物流コストがより安価な海上輸送へ転換することにより、食品の調達価格を大幅に削減することができ、また、輸送によるCO
2ガスの排出量の削減にも寄与することができる。また、食品の生産時点から所定時間経過した後に
図4に示されるステップSP3、ステップSP4、又は、ステップSP5を開始することで、食品を敢えて熟成させた後に保管又は輸送を開始することも可能である。なお、輸送後に熟成をさせてもよい。
【0030】
この点について、更に具体的に述べれば、例えば、現状、外国産の食肉や液卵のなかには、需給バランスによって商品としての競争力が高い安価な調達価格及び高品質な食品が存在するものの、輸送距離が長い国へ輸出するには、冷凍輸送によるしかなかったことが重大な課題であった。これに対し、本開示によれば、長期間のチルド輸送が可能となるので、この問題が解消され得るという大きな利点がある。また、例えば、サーモンのセミドレス(内臓のみ取り出された状態のもの)のような魚介類は、発泡スチロール容器に裸の食品を入れて氷漬けとして、しかも航空輸送されているのが現状である。これに対し、本開示によれば、通常の輸送よりも低温度帯でのチルド状態で鮮度を維持したまま長時間の輸送が可能となるので、新たな需要を喚起し、また、商品競争力を格段に高めることができる。
【0031】
[変形例1]
以上のとおり、本開示によれば、食品の長期間の鮮度保持による輸送が可能であることから、食品の腐敗を抑えた状態で、乳酸菌の産生作用を奏する電場環境にその食品を長時間保持し得る。また、鮮度を維持しつつ食品を長期間保存することが可能なため、すなわち可食期間を延ばすことが可能なため、食品中の遊離グルタミン酸を増加させることも可能である。結果的に、食品中の遊離グルタミン酸の増加による食品の旨味の向上、及び、食品中の乳酸菌の増加による更なる腐敗進行の遅延をも実現することができる。換言すれば、本開示によれば、乳酸菌以外の食品腐敗を引き起こす細菌が活動できない低温度帯での食品保管及び輸送が可能になるので、そのような一般的な細菌に占める乳酸菌の割合が増加し、食品の鮮度維持効果を高めることができる。
【0032】
また、そこで、この観点からすれば、変形例1として、ステップSP3,SP4,SP5から構成される電場冷却工程(を実施した状態の保管又は輸送)を、一日以上実施することが好ましく、2週間以上実施することが更に好ましく、数か月(例えば1ヶ月又は2ヶ月)以上実施することが特に好ましい。この実施期間の好適な上限は、需給バランスによる供給タイミング、輸送距離、季節等を考慮して適宜設定することができる。
【0033】
[変形例2]
変形例2として、ステップSP3(食品包装体Fの収容室S10への収容)、ステップSP4(収容室S10内の電場形成)、又は、ステップSP5(収容室内の冷却)を、食品の生産(屠殺又は屠畜処理等、及び、神経締め、活き締め、又は氷締め処理等)直後に開始、あるいは食品の生産時点から所定時間以内に開始することが有効である。所定時間は、好ましくは5日に、好ましくは48時間に、更に好ましくは24時間に、特に好ましくは1時間に設定されることが好適である。なお、この開始までの期間の好適な下限は、食品の生産からステップSP2(食品包装体Fの形成又は準備)の終了までの時間に依拠して変動し得る。このように構成すれば、食品の生産直後の比較的早い経過時間における急激な細菌数の増加を抑制することができ、このような食品の冷却保持開始時の細菌数の初期値を低減させ得るので、長時間の鮮度保持効果を一層高めることができる。
【0034】
[変形例3]
コンテナ10のように本体20の例えば背部に冷却装置30が内蔵される場合、また、外部温度や断熱材性能等の外部要因に起因して、収容室S10の内部空間を均一の温度に冷却することは、実際のところ難しく、収容室S10内には冷却温度のばらつきが生じ得る。また、食品の種類や形態の相違に起因して、好適なチルド状態を実現できる温度も異なる可能性がある。
【0035】
そこで、変形例3として、食品包装体Fを収容室S10内に収容していない状態で(例えば、実際の食品包装体Fの保管や輸送に先立って)、又は、食品包装体Fを収容室S10内に収容した状態(ステップSP3の実施中)で、収容室S10内に電場を形成し(ステップSP4)、収容室S10内を冷却(ステップSP5)したときの収容室S10内の温度分布を計測する温度計測工程を実施してもよい。そして、温度計測工程で計測された収容室S10内の温度分布と、食品包装体Fに包装された食品の種類又は形態とに基づいて、収容室S10内における食品包装体Fの収容位置を決定(最適化)してもよい。この場合、収容室S10内の内壁や
図2に示すような棚板における複数箇所に温度センサを設置したり、或いは、収容室S10内の空間温度分布を計測することができる位置に温度センサを3次元的に配置したりすることができる。また、それらの温度センサによる温度計測値を収集するためのデータロガー等をコンテナ10の内部又は外部に設けてもよい。
【0036】
このように構成すれば、温度計測工程を予め実施した場合、収容室S10内の実際の温度分布(ばらつき)を予測することができるので、食品の種類や形態に応じて、好適なチルド状態を実現できる温度を示す場所に目的の食品包装体Fを配置することができる。換言すれば、収容室S10内の温度のばらつきを利用して、様々な種類や形態の食品を同一のコンテナ10内に好適な冷却温度状態で混載することが可能となる。なお、この場合、温度センサやデータロガーは、食品包装体Fの実際の保管及び輸送時には設置したままでもよく、取り外しておいてもよい。一方、温度計測工程を食品包装体Fの実際の保管又は輸送時に実施する場合、保管及び輸送中の温度分布の履歴データを取得して、その後の運用や商品提供時期の調整、及び、必要に応じて冷却装置30の出力調整に供することができる。
【0037】
[変形例4]
変形例5として、電場冷却工程では、食品の冷却温度を増大させる媒体(水等)を収容室S10内に配置しない構成が好ましい。例えば、食品の好適な冷却温度が-(マイナス)数℃以下の場合、従来の生鮮品の輸送時のように、通常は保冷剤として使用される氷(凝固点0℃)や雪状氷(凝固点-1℃)等に食品包装体Fが接すると、チルド状態から凍結状態へ遷移し易くなることが発明者らにより確認されている。その要因は、食品の周囲の水分量が増加し、過冷却解除のきっかけとなる氷結晶が食品表面に付着し易くなるためであると考えられている。したがって、食品包装体Fに保冷剤を接触させないことが望ましい。
【0038】
[変形例5]
変形例5として、
図4に示されるステップSP6の工程でコンテナ10を船舶等の移動体に荷積み(積載)して目的地まで輸送する際に、食品包装体F内の食品が凍結により固くなることがある。仮に食品が固くなった場合には、目的地に到着する輸送途上や、目的地への到着後に、コンテナ10の設定温度を所定温度に上げて電場をかけて解凍することでより良い状態(一度も凍っていないチルドに近い状態)に戻すことができる。これは、電場環境で凍結しても食品の細胞破壊が生じ難いため、また電場環境で解凍する際に解凍過程で食品の細胞破壊が生じ難いためである。なお、所定温度は氷点下でもよいし、氷点下よりも高い温度でもよい。電場解凍のタイミングは、目的地到着前でなくてもよい。また、電場解凍することで、スピーディーに高品質なチルド状態を再現できる。
【実施例】
【0039】
(実施例1~14)
食品として、複数の店舗で市販されている生の豚肩ロース肉を用い、熱収縮性フィルムを含む包装材(例えばシールドエアージャパン合同会社製の「CT304」、ムルチバック社製の「ムルチバック」、クライオバック社製のフィルム)で、その食品を被覆し、ラッピング装置(例えば株式会社平井カンパニー製の「ターボバック」、株式会社古川製作所製の真空包装機)で真空シュリンクラッピングすることにより、食品包装体Fとしての検体を形成した。この検体をコンテナ10と同様の構成を有するコンテナの収容室内に収容し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を冷却した状態で所定期間保持した後、コンテナから取り出した。そして、取り出し直後の検体を指圧し、そのときの検体の凹み量から、用いた食品の凍結の程度を観察した。各実施例の食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、保管日数、検体重量、包装種類、検体設置場所、検体設置数、及び、その設置場所の平均温度計測値)、並びに、観察結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0040】
【0041】
【0042】
(比較例1~9)
実施例1~14で用いた包装材に代えて、包装材(例えばクリロン化成株式会社製の「ハイラミナーNXS」)を用いてラッピング装置(例えば株式会社古川製作所製の真空包装機)で真空非シュリンクラッピングすることにより、検体を形成したこと以外は、実施例1~14と同様にして、食品の凍結の程度を観察した。各比較例の食品保管条件(収容室内の冷却設定温度、保管日数、検体重量、包装種類、検体設置場所、検体設置数、及び、その設置場所の平均温度計測値)、並びに、観察結果を表3にまとめて示す。
【0043】
【0044】
なお、表1~表3中、検体設置場所を示す「(1)~(3)」、及び、観察結果を示す凡例「〇、△、×」が表す意味は、以下のとおりである。
場所(1):収容室内の中央部中段
場所(2):収容室内の冷却装置30側の下段
場所(3):収容室内の冷却装置30側の中段
観察結果〇:2mm以上の凹み~完全な非凍結(チルド)状態
観察結果△:1mm以上2mm未満の凹み
観察結果×:1mm未満~完全な凍結状態
【0045】
表1~表3に示す観察結果より、本開示の構成に係る実施例1~14の食品保管方法によれば、収容室内に温度分布が生じているものの、10日間~約30日間の保管期間中、約-4℃~-5℃の収容室内温度において、検体の食品が完全に凍結することなく、その少なくとも一部又は全部において、チルド状態が保持されていたことが確認された。一方、比較例1~9の食品保管方法によれば、同じく収容室内に温度分布が生じているものの、14日間~約30日間の保管期間中、約-4℃~-5℃の収容室内温度において、検体の食品は完全に凍結又はほぼ凍結した状態となったことが確認された。これらの結果より、本開示による食品保管方法によれば、電場環境における食品の非凍結温度を有意に低下させ得ることが理解される。
【0046】
(比較例10及び11並びに実施例15及び16)
生の豚肩ロース肉及び生の豚バラ肉を複数準備し、まず、それらの屠畜直後の細菌数(一般生菌数)を測定した。次に、比較例10及び11として、生の豚肩ロース肉及び生の豚バラ肉を任意に複数選定し、それら検体群を、熱収縮性フィルムを含む包装材(例えばシールドエアージャパン合同会社製の「CT304」、ムルチバック社製の「ムルチバック」、クライオバック社製のフィルム)で個別に被覆し、ラッピング装置(例えば株式会社平井カンパニー製の「ターボバック」、株式会社古川製作所製の真空包装機)で真空シュリンクラッピングすることにより、食品包装体Fとしての検体を複数形成した。そして、これらの検体を、電場環境を有しない(非電場環境の)冷凍倉庫において、0℃の環境下でそのまま所定期間保管し、保管直後の細菌数(一般生菌数)を再度測定した。
【0047】
また、実施例15及び16として、比較例10及び11とは異なる検体群を選定し、それらの検体を、上記冷凍倉庫に代えて、コンテナ10と同様の構成を有するコンテナの収容室内に収容し、電極部材に7000Vの電圧を印加して電場を形成し、かつ、収容室内を-3.2℃に冷却した状態で所定期間保管したこと以外は、比較例10及び11と同様に、細菌数(一般生菌数)を再度測定した。
【0048】
これらの食品保管条件、及び、細菌数の推移を表4にまとめて示す。それらの結果より、検体を真空シュリンクラッピングしたものの非電場環境で保管した比較例10及び11では、何れの部位の検体も、保管後の細菌数は、屠畜直後に比して約105倍に増加していたのに対し、電場環境で保管した実施例15及び16では、何れの部位の検体も、保管後の細菌数は、屠畜直後に比して約103倍未満の増加に抑えられていたことが確認された。これらの結果より、真空シュリンクラッピングと電場環境での食品保管の優位性が理解される。
【0049】
【0050】
(比較例12並びに実施例17)
比較例12として、上記の比較例10,11と同様に作成された食品包装体Fの検体をコンテナ10内において-3.2℃の収容室内温度で53日間保管したときのチルド品の割合を測定した。また、実施例17として、上記の実施例15,16と同様に作成された食品包装体Fの検体をコンテナ10内において-3.2℃の収容室内温度で63日間保管したときのチルド品の割合を測定した。これらの食品条件、保管条件、及びチルド品の割合を表5にまとめて示す。表5に示されるように、比較例12に示されるシュリンクが施されていない食品包装体Fよりも、実施例17に示される真空シュリンクラッピングが施された食品包装体Fの方がチルド品の割合が大きい、すなわち凍結し難いことが理解される。
【0051】
【0052】
(比較例13並びに実施例18~20)
比較例13として、冷凍状態の豚バラ肉を非電場環境で解凍した際の一般生菌数の推移を測定した。実施例18として、冷凍状態の豚バラ肉をコンテナ10内において-3℃前後の電場環境で30日間保管した後、コンテナ10から取り出して0℃の非電場環境で保管した際の一般生菌数の推移を測定した。実施例19として、電場環境の保管日数を63日に設定したこと以外は実施例18と同一の条件で一般生菌数の推移を測定した。実施例20として、電場環境の保管日数を53日に設定したこと以外は実施例18と同一の条件で一般生菌数の推移を測定した。
【0053】
なお、表6において、比較例13の経過日数は、冷凍状態の豚バラ肉を解凍した日からの経過日数を示す。実施例18~20の経過日数は、冷凍状態の豚バラ肉をコンテナ10内から取り出した日からの経過日数を示す。
表6に示されるように、電場環境下で保管されていない比較例13では経過日数が約15日目で一般生菌数が740万まで上昇する。これに対して、一旦電場環境で保管された実施例18では経過日数が20日目でも一般生菌数が48万であり、またそれ以降も50日目までは一般生菌数が数十万の値に維持されるため、比較例13と比較すると一般生菌数の増加が抑制されている。同様に、実施例19,20でも比較例13と比較すると一般生菌数の増加が抑制されている。このように、一旦電場環境で保管すれば、解凍する際の一般生菌数の増加が抑えられることが理解される。
【0054】
【0055】
以上、本開示の一例としての上記実施形態、変形例、及び実施例等について詳細に説明してきたが、上述したとおり、前述した説明はあらゆる点において本開示の一例を示すに過ぎず、本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることはいうまでもない。また、上記実施形態等は、部分的に置換、削除、又は組み合わせて構成することも可能である。
【0056】
例えば、
図4に示される、収容室S10の内部に電場を形成するステップSP4の工程と、収容室S10の内部を冷却するステップSP5の工程とを時間差を設けて実行してもよい。
コンテナ10の内部に収容される食品包装体Fの総積載量、及び一つの外容器B当たりの食品包装体Fの収容数や総重量等に関しては適宜増減させることが可能である。
【0057】
図4に示されるステップSP2の工程に対して食品包装体Fに対して施す処理としては、真空シュリンクラッピングに限らず、食品包装体Fの内部の真空度を高める処理であれば任意の処理を採用することができる。なお、食品包装体Fの内部の真空度を高める処理とは、食品包装体Fの内部の圧力を大気圧よりも低くする処理である。このような処理としては、例えば食品包装体Fの内部から空気を引き抜く、いわゆる脱気処理を行うことにより、シュリンクラッピングを行うことなく食品包装体Fの内部を高真空にする処理を用いることができる。このようなシュリンクラッピングを伴わない真空パックや脱気パックを用いた場合でも、上記実施形態に類似の作用及び効果を得ることは可能である。
なお、魚介類等の水産物(例えばサーモン)のセミドレスのように現状、真空パックが施されずに裸の状態で輸送及び保管されているものに関しては、非シュリンク真空パックを用いることができる。また、豚肉等の畜肉に関しては、ルーズな真空パックではなく、敢えて真空シュリンクラッピングを用いることが望ましい。
【0058】
食品を包装材により被覆して食品包装体Fを作る際に、食品に対して乳酸菌を塗布してもよい。例えば、乳酸菌が塗布された食品を包装材により包装した後、当該包装材に対して真空シュリンクラッピング、真空パック、又は脱気パックを施すことにより食品包装体Fを作成してもよい。なお、食品に対して乳酸菌を塗布する場合には、包装材に対して真空シュリンクラッピング又は非真空シュリンクラッピングを施さなくてもよく、単に乳酸菌が塗布された食品を包装材により包装したものを食品包装体Fとして用いてもよい。また、
図4に示されるフローにおいて、収容室S10の内部に電場を形成するステップSP4の工程を削除して、食品包装体Fを収容室S10へ収容した後(ステップSP3)、収容室S10内の冷却のみを行って(ステップSP5)、コンテナ10の荷積み及び輸送を行ってもよい(ステップSP6)。
【符号の説明】
【0059】
10…コンテナ(収容庫)、S10…収容室、20…収容庫本体、30…冷却装置、40…箱体、41…上壁部、42,43…側壁部、50…扉部、60…電場形成部、61…絶縁部材、62…電極部材、81,82…載置部、810,811,820,821…部位、B…外容器、F…食品包装体、S10…収容室。
【要約】
【課題】食品の腐敗リスクを軽減しつつ、その際の食品の凍結リスクをも低減することが可能な、物体の輸出入や移動を行う際の保管、並びに包装の方法を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態による保管方法の一例は、少なくとも1種類又は1形態の食品を保管する方法であって、(1)収容室、及び、該収容室内に電場を形成するための電場形成部を備える収容庫を準備する収容庫準備工程と、(2)包装材で食品を被覆した後に包装材の内部の真空度を高める処理を行うことにより食品包装体を形成する、又は、形成された該食品包装体を準備する食品包装工程と、(3)食品包装体を収容室内に収容し、該収容室内に電場を形成し、該収容室内を冷却することにより、食品の少なくとも一部をチルド状態に保持する電場冷却工程とを含む。
【選択図】
図2