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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ワーク吸着装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018242314
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020107638
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-05-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】小河 純一
(72)【発明者】
【氏名】道添 聡浩
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238726(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216966(WO,A1)
【文献】特開2005-109288(JP,A)
【文献】特開2011-176344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを先端で吸着するノズルと、
前記ノズルを側方から見たサイドビュー画像を取得する撮像部と、
前記ノズルの側面の一部に付設され、前記サイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部と、
撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射する光照射部と、
前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行う処理部と、を備えるワーク吸着装置において、
前記ノズルを、当該ノズルの軸回りに回転させる回転機構をさらに備え、
前記光学マーク部は、光を蓄光することが可能な蓄光部材からなり、
前記回転機構は、
前記蓄光部材が前記光照射部に対向するよう前記ノズルを回転させて、当該蓄光部材に前記バックライト光にて蓄光させ、次いで、
前記蓄光部材を含む前記ノズルの領域が前記撮像部に撮像されるように、前記ノズルを回転させ、
前記撮像部は、前記バックライト光と、自発光する前記光学マーク部を含む前記ノズルの影画像とを撮像する、ワーク吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク吸着装置において、
前記ノズルが複数本環状に配列されたローターをさらに備え、
光照射部は、前記ローターの回転中心軸に沿って配置され、前記撮像部は、複数本の前記ノズルのうちの1本を挟んで前記光照射部と対向して配置されている、ワーク吸着装置。
【請求項3】
ワークを先端で吸着するノズルと、
前記ノズルを側方から見たサイドビュー画像を取得する撮像部と、
前記ノズルの側面の一部に付設され、前記サイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部と、
撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射する光照射部と、
前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行う処理部と、を備えるワーク吸着装置において、 第1波長の光を発する光源をさらに備え、
前記光学マーク部は、前記第1波長の光が照射されると、第2波長の光に波長変換して反射する波長変換部材からなり、
前記光照射部は、前記第1波長の光が照射されると、第3波長の光に波長変換して前記バックライト光を生成する波長変換層を表面に備え、
前記撮像部は、前記第1波長の光を除去するフィルター部材を備え、
前記光源は、前記光学マーク部及び前記光照射部に前記第1波長の光を照射し、
前記撮像部は、前記第3波長のバックライト光と、前記第2波長の光を反射する前記光学マーク部を含む前記ノズルの影画像とを撮像する、ワーク吸着装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク吸着装置において、
前記第2波長と前記第3波長とが同一の波長である、ワーク吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等のワークを吸着するノズルを備えたワーク吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば部品実装装置では、部品供給部から電子部品を吸着して基板上の搭載位置まで運び、当該基板に電子部品を搭載するノズルが備えられている。ノズルによる電子部品の吸着状態を判定するために、当該ノズルの側面視の画像であるサイドビュー画像が取得される。サイドビュー画像は、撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射した状態で当該ノズルを撮像することで、ノズル部分がバックライト光上に影画像として表れる二値化画像として取得される。
【0003】
電子部品を吸着したノズルをサイドビュー画像で取得しても、上記の二値化画像ではノズル部分と部品部分との区別がつき難い。この点に鑑み特許文献1では、ノズルに対して、サイドビュー画像において認識可能な形状的な特徴部分を付設する表面実装機が開示されている。この表面実装機では、二値化画像において前記形状的な特徴部分を基準にノズルの先端位置を把握することが可能となり、得られた先端位置に基づいて電子部品の吸着状態を評価することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-347412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、サイドビュー画像を撮像する撮像カメラの画角を狭く設定せざるを得ないような場合、前記形状的な特徴部分を含めて電子部品を吸着したノズル先端部分の画像を取得することは難しくなる。例えば、複数本のノズルが環状に配列されたロータリー型のノズルヘッドでは、当該複数本のノズルが回転しながら次々に電子部品を吸着してゆくため、画像データが大きいサイドビュー画像を撮像すると制御部への画像データ転送が間に合わなくなる。このため、撮像カメラの画角を狭く設定し、画像データ量を抑制する必要がある。この場合、狭い画角のサイドビュー画像に映り込むような形状的な特徴部分をノズルに付設することは困難であるので、ノズルの先端位置を把握することができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、画角の狭い撮像カメラを採用した場合でも、ワークを吸着するノズルの先端位置を的確に把握することができるワーク吸着装置、及び前記ノズルの先端認識方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るワーク吸着装置は、ワークを先端で吸着するノズルと、前記ノズルを側方から見たサイドビュー画像を取得する撮像部と、前記ノズルの側面の一部に付設され、前記サイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部と、撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射する光照射部と、前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行う処理部と、を備え、前記光学マーク部は、前記バックライト光の照射を受けて発光することで、前記特徴部を表出する
【0008】
また、本発明の他の局面に係るノズルの先端認識方法は、ワークを先端で吸着するノズルの側面の一部に、側面視のサイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部を付設するステップと、撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射し、当該照射を受けた前記光学マーク部の発光により前記特徴部を表出させるステップと、前記先端でワークを吸着した状態のノズルを側方から撮像して、サイドビュー画像を取得するステップと、前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ワークを吸着したノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行うステップと、を含む。
【0009】
上記のワーク吸着装置若しくはノズルの先端認識方法によれば、サイドビュー画像において光学マーク部による光学的な特徴部が前記影領域(対象領域)に表出する。つまり、対象領域において基準位置として用いることができる前記光学的な特徴部を、画像上で表出させることができる。このため、形状的な特徴部をノズルに施与することなく、前記光学的な特徴部を基準として前記ノズルの先端位置を特定することが可能となる。従って、画角の狭い撮像部を用いた場合でも、ノズルの先端位置認識を確実に行わせることが可能となる。また、ノズルに対する形状的な特徴部の付設が不要となるので、ノズルの軽量化、小型化が可能となる。
【0010】
上記のワーク吸着装置において、前記サイドビュー画像は、前記ノズルの先端で前記ワークを吸着した状態のノズルを側方から撮像した画像であり、前記対象領域は、前記ワークを吸着した前記ノズルの画像が占める領域であって、前記処理部は、特定された前記ノズルの先端の位置から、前記ワークの吸着の有無、前記ワークのサイズ及び前記ワークの吸着姿勢のうちの少なくとも一つを判定することが望ましい。
【0011】
このワーク吸着装置によれば、特定された前記ノズルの先端の位置から、ノズルによるワークの吸着状態が正常か否かを判定させることができる。従って、例えば当該ワーク吸着装置を電子部品の実装装置に適用する場合に、電子部品をノズルで正常に吸着しているか否かを、サイドビュー画像に基づいて部品実装前に把握することができる。
【0012】
本発明の他の局面に係るワーク吸着装置は、ワークを先端で吸着するノズルと、前記ノズルを側方から見たサイドビュー画像を取得する撮像部と、前記ノズルの側面の一部に付設され、前記サイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部と、撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射する光照射部と、前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行う処理部と、を備えるワーク吸着装置において、前記ノズルを、当該ノズルの軸回りに回転させる回転機構をさらに備え、前記光学マーク部は、光を蓄光することが可能な蓄光部材からなり、前記回転機構は、前記蓄光部材が前記光照射部に対向するよう前記ノズルを回転させて、当該蓄光部材に前記バックライト光にて蓄光させ、次いで、前記蓄光部材を含む前記ノズルの領域が前記撮像部に撮像されるように、前記ノズルを回転させ、前記撮像部は、前記バックライト光と、自発光する前記光学マーク部を含む前記ノズルの影画像とを撮像する。
【0013】
このワーク吸着装置によれば、本来的に必要なバックライト光を用いて蓄光部材(光学マーク部)に蓄光させ、自発光させることで、光学的な特徴部を影画像に表出させることができる。また、ノズルの軸回りに回転させる回転機構は、一般的なワーク吸着装置では本来的に備えられている。従って、ワーク吸着装置の既存の機能を活用して、ノズルの先端位置認識を行わせることができる。
【0014】
上記のワーク吸着装置において、前記ノズルが複数本環状に配列されたローターをさらに備え、光照射部は、前記ローターの回転中心軸に沿って配置され、前記撮像部は、複数本の前記ノズルのうちの1本を挟んで前記光照射部と対向して配置されていることが望ましい。
【0015】
このワーク吸着装置によれば、撮像部の画角を狭く設定することが要請されるロータリー型のノズルヘッド構造を備えたワーク吸着装置において、光学的な特徴部を利用したノズルの先端位置認識を的確に行わせることができる。
【0016】
本発明のさらに他の局面に係るワーク吸着装置は、ワークを先端で吸着するノズルと、前記ノズルを側方から見たサイドビュー画像を取得する撮像部と、前記ノズルの側面の一部に付設され、前記サイドビュー画像において前記ノズルに光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部と、撮像対象のノズルの背面側からバックライト光を照射する光照射部と、前記サイドビュー画像において、前記バックライト光が遮蔽された影領域を、前記ノズルの画像が占める対象領域として特定すると共に、前記対象領域の画像において、前記光学的な特徴部の表出位置を基準として前記ノズルの先端の位置を特定する処理を行う処理部と、を備えるワーク吸着装置において、第1波長の光を発する光源をさらに備え、前記光学マーク部は、前記第1波長の光が照射されると、第2波長の光に波長変換して反射する波長変換部材からなり、前記光照射部は、前記第1波長の光が照射されると、第3波長の光に波長変換して前記バックライト光を生成する波長変換層を表面に備え、前記撮像部は、前記第1波長の光を除去するフィルター部材を備え、前記光源は、前記光学マーク部及び前記光照射部に前記第1波長の光を照射し、前記撮像部は、前記第3波長のバックライト光と、前記第2波長の光を反射する前記光学マーク部を含む前記ノズルの影画像とを撮像する。
【0017】
このワーク吸着装置によれば、一つの光源が発する第1波長の光を波長変換させることにより、バックライト光及び光学的な特徴部を生成することができる。そして、フィルター部材で第1波長の光を遮断した上で、影画像と光学的な特徴部とを撮像部に撮像させることができる。従って、シンプルな構造で、ノズルの回転動作を伴うことなく、ノズルの先端位置認識を行わせることができる。
【0018】
上記のワーク吸着装置において、前記第2波長と前記第3波長とが同一の波長であることが望ましい。この場合、フィルター部材は、一の波長の光を良好に通過させる特性さえ有していれば良いので、フィルター部材の選定が容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画角の狭い撮像カメラを採用した場合でも、ワークを吸着するノズルの先端位置を的確に把握することができるワーク吸着装置、及び前記ノズルの先端認識方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係るワーク吸着装置が適用される部品実装装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2(A)は、部品を吸着したノズルのサイドビュー撮像の態様を示す模式図、図2(B)及び(B)は前記ノズルのサイドビュー画像である。
図3図3(A)は、画角の狭いカメラによるノズルのサイドビュー撮像の態様を示す模式図、図3(B)及び(B)は前記ノズルのサイドビュー画像である。
図4図4(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るサイドビュー撮像を実行する際の装置構成を示す図である。
図5図5(A)及び(B)は、第1実施形態のサイドビュー撮像の実行状態並びに取得されるサイドビュー画像を示す図である。
図6図6(A)及び(B)は、ノズル先端位置及び部品厚さの導出手法を示す図である。
図7図7(A)~(C)は、本発明の第2実施形態に係るサイドビュー撮像を実行する際の装置構成を示す図である。
図8図8(A)及び(B)は、第2実施形態のサイドビュー撮像の実行状態並びに取得されるサイドビュー画像を示す図である。
図9図9は、上記部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
図10図10は、サイドビュー撮像~部品吸着状態判定処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るワーク吸着装置が部品実装装置に適用される例を示す。従って、本実施形態では、ノズルによって吸着されるワークは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の電子部品又はパッケージ型の電子部品(以下、単に部品と称す)である。この態様は一例であり、吸着対象のワークは各種の小片状の部材であっても良い。
【0022】
[部品実装装置の全体構造]
図1は、部品実装装置1の概略構成を示す平面図である。部品実装装置1は、各種の部品を基板Pに実装して回路基板を生産する装置である。部品実装装置1は、装置本体1A、移動フレーム2、コンベア3、部品供給ユニット4、テープフィーダ5、ヘッドユニット6、第1駆動機構7及び第2駆動機構8を備える。また、部品実装装置1は、撮像装置として、部品認識カメラ9、基板認識カメラ10及びサイドビューカメラ11(撮像部)を備える。なお、図1のX方向は基板Pの搬送方向、Y方向はX方向と水平面内で直交する方向、図2他に示すZ方向は、X、Y方向と直交する方向を示す。
【0023】
装置本体1Aは、部品実装装置1を構成する各部が配置される構造体であり、Z方向から見た平面視で略矩形状に形成されている。移動フレーム2は、X方向に延び、Y方向へ移動可能に装置本体1Aに支持されている。コンベア3は、基板Pを-X側から装置本体1A内に搬入し、所定の作業位置(図1に示す基板Pの位置)まで左方へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア3は基板Pを+X側へ搬送し、装置本体1Aの機外へ搬出する。
【0024】
部品供給ユニット4は、基板Pに実装される電子部品を供給する。部品供給ユニット4は、コンベア3を挟んで、装置本体1Aの+Y側及び-Y側の領域部分にそれぞれ2箇所ずつ配置されている。各部品供給ユニット4は、X方向に配列されたテープフィーダ5を備えている。各テープフィーダ5は、部品収納テープをキャリアとして部品を供給するフィーダである。テープフィーダ5は、部品収納テープが巻回されたリールから該テープを間欠的に繰り出し、所定の部品取り出し位置に部品を供給する。
【0025】
ヘッドユニット6は、部品供給ユニット4から部品を取り出し、これを基板Pに実装する動作を実行する。ヘッドユニット6は、移動フレーム2に搭載され、後述の通り前記作業位置の上空においてXY方向に移動可能である。ヘッドユニット6は、ヘッド本体61、ローター62及びノズル63を含む。
【0026】
ヘッド本体61は、ノズル63をZ軸方向に昇降させるZ軸サーボモータ43、及び、ノズル63を当該ノズル63の軸回り(Z軸回り)に回転させるR軸サーボモータ44(回転機構)を含む(図9参照)。これに加えてヘッド本体61は、ローター62を回転させる回転機構や、ノズル63に部品の吸引動作を実行させる吸引機構を搭載している。ローター62は、円柱状のボディを備え、複数本のノズル63を環状に配列された状態で保持する。ローター62は、ヘッド本体61に対してZ方向に延びる軸回りに回転する。ノズル63は、部品を吸着する吸着孔を先端(下端)に備えている。ノズル63は、Z方向に昇降して、前記部品取り出し位置においてテープフィーダ5から部品を吸着し、基板Pの所定位置において前記吸着が解除されることで、部品を基板Pに実装する実装動作を行う。
【0027】
第1駆動機構7は、装置本体1Aの+X側及び-X側の端部に配設されている。第1駆動機構7は、移動フレーム2をY方向に移動させる機構である。第1駆動機構7は、X軸サーボモータ41(図9)と、Y方向に延び、X軸サーボモータ41に連結されるボールねじ軸と、移動フレーム2に配設されてボールねじ軸と螺合するボールナットと、を含んで構成される。このような構成の第1駆動機構7は、X軸サーボモータ41によるボールねじ軸の回転駆動に伴ってボールナットがボールねじ軸に沿って進退することにより、移動フレーム2をY方向に移動させる。
【0028】
第2駆動機構8は、移動フレーム2に配設されている。第2駆動機構8は、ヘッドユニット6を移動フレーム2に沿ったX方向に移動させる機構である。第2駆動機構8は、Y軸サーボモータ42(図9)と、X方向に延び、駆動モーターに連結されるボールねじ軸と、ヘッドユニット6に配設されてボールねじ軸と螺合するボールナットと、を含んで構成される。このような構成の第2駆動機構8は、Y軸サーボモータ42によるボールねじ軸の回転駆動に伴ってボールナットがボールねじ軸に沿って進退することにより、ヘッドユニット6をX方向に移動させる。以上のように、ヘッドユニット6は、第1、第2駆動機構7、8により、XY方向に移動可能である。
【0029】
部品認識カメラ9は、装置本体1Aに組み込まれ、装置本体1Aの上方を撮像視野とするカメラである。部品認識カメラ9は、ヘッドユニット6のノズル63に吸着された部品を下面側から撮像する。前記撮像により得られた画像データ上で、部品の中心位置とノズル63の基準位置とのズレ量(X軸、Y軸方向の位置ズレ量)、及びR軸方向の回転ズレ量が検知され、これらズレ量に応じた位置補正が部品実装時に行われる。
【0030】
基板認識カメラ10は、ヘッドユニット6のヘッド本体61に搭載されている。基板認識カメラ10は、基板Pの品種の識別や位置決めのために、ヘッドユニット6と共に移動して、基板Pの上面に記された各種マークを上方から撮像する。また、基板認識カメラ10は、部品取り出し位置において前記部品収納テープから露出された部品を撮像し、当該部品のポケット内における収納姿勢に異常が無いか否かを判定する画像を取得する。
【0031】
サイドビューカメラ11は、ノズル63を側方から撮像することが可能な光路を持つように、ヘッド本体61に搭載されている。サイドビューカメラ11は、部品の吸着動作を終えたノズル63を側方から見たサイドビュー画像を取得する。取得されたサイドビュー画像に基づいて、ノズル63の先端位置の認識、並びにノズル63による部品の吸着の有無、部品のサイズ及び部品の吸着姿勢等が判定される。
【0032】
[従来のノズル先端位置認識の問題点]
続いて、一般的なサイドビューカメラ11によるノズルのサイドビュー撮像の態様と、得られたサイドビュー画像に基づくノズル先端位置認識の際の問題点について説明する。図2(A)は、部品Cを吸着したノズル630のサイドビュー撮像の態様を示す模式図である。ノズル630の下端面であるノズル先端63Eには図略の吸着孔が開口しており、当該吸着孔に生じる負圧によってノズル先端63Eに部品Cが吸着されている。ノズル630の下端部631付近には、外径が他の部分よりも大きい形状特徴部632が設けられている。形状特徴部632と下端部631との境界には、両者の径差に基づく肩部633が形成されている。
【0033】
このノズル630を挟むように、上述のサイドビューカメラ11とLED照明部12とが対向して配置されている。両者は、カメラ光軸がミラーで屈曲される等して、実際上は対向しない場合がある。サイドビューカメラ11は、ノズル630の+Y側の側方に配置され、所定の画角G1を有している。画角G1は、ノズル先端63Eに吸着された部品Cの下端から、形状特徴部632よりも上方の領域まで、ノズル630を側方から撮像することができる画角である。ここでは、部品Cの幅方向のサイズがノズル630の下端部631と同サイズである場合を例示している。
【0034】
LED照明部12は、ノズル630の-Y側の側方に配置され、ノズル630に対してカメラ光軸と対向する方向からバックライト光BLを照射する。LED照明部12は、LED基板121と、このLED基板121の+Y側の面に取り付けられた複数のLEDランプ122とを備えている。LED照明部12が-Y側からバックライト光BLを照射している状態で、サイドビューカメラ11は+Y側からノズル630を撮像する。
【0035】
図2(B)は、上記撮像によって画角G1を有するサイドビューカメラ11が取得するサイドビュー画像20である。サイドビュー画像20は、ノズル630に対応する部分がバックライト光BLを遮光することで現れる影領域からなる影画像21と、バックライト光BLがそのまま撮像されることで現れる明領域からなる背景部22と、を備える二値化画像となる。影画像21には、形状特徴部632に対応する特徴が表出している。このような二値化画像では、部品Cの幅方向のサイズがノズルの下端部631と同サイズ或いは近似するサイズである場合、部品Cとノズル先端63Eとの境界を判別することができない、或いは判別が相当困難となる。
【0036】
形状特徴部632は、このようなケースにおいて、ノズル先端63Eの位置を特定可能とするために設けられている。図2(C)に示すように、ノズル630に形状特徴部632が存在することによって、影画像21にも同様に形状的な特徴が現れる。このため、影画像21において、例えばノズル630の肩部633に相当する段差部分を基準位置23として、ノズル先端位置24を探知することができる。すなわち、予めノズル630の肩部633からノズル先端63Eまでの長さdを計測しておけば、影画像21において、基準位置23から長さdだけ下方の位置が、ノズル先端63Eに対応するノズル先端位置24となる。これにより、部品CのZ方向の厚さも知見することができる。
【0037】
しかし、サイドビューカメラ11の画角を、種々の理由で狭く設定せざるを得ない場合がある。典型的には、1枚当たりのサイドビュー画像の画像データ量を減少させる必要が有る場合である。本実施形態のように、複数本のノズル63がローター62に環状に配列されたロータリー型のヘッドユニット6では、当該複数本のノズル63が回転しながら次々に部品Cを吸着してゆく。このため、画像データが大きいサイドビュー画像を撮像すると、画像認識を行う制御部への画像データ転送が間に合わなくなる。ただ、正確な判別処理のためには画像の解像度は落とせない。そこで、サイドビューカメラ11の画角を狭く設定することで、画像データ量を抑制する策が採られる。
【0038】
図3(A)は、狭い画角G2のサイドビューカメラ11を用いた、ノズル630のサイドビュー撮像の様子を示す図である。画角G2は、上掲の画角G1に比べて狭く、ノズル先端63Eに吸着された部品Cの下端から、形状特徴部632よりも下方の領域までの範囲でしか、ノズル630を側方から撮像することができない画角である。換言すると画角G2は、形状特徴部632が映り込む位置にサイドビューカメラ11を設置すると、画角内に部品Cの下端が映り込まない程度の画角である。
【0039】
この場合、図3(B)及び(C)に示すように、画角G2で捉えられるノズル630のサイドビュー画像20は狭い範囲のものとなる。すなわち、当該サイドビュー画像20では、影画像21において基準位置23を認識することができない。このため、図2(C)で示したような、基準位置23に基づいたノズル先端位置24の探知ができず、ノズル先端63Eの位置を把握することができなくなる。なお、狭い画角G2でもサイドビュー画像に映り込むように、よりノズル先端63Eに近い位置に形状特徴部632を配置することも考えられるが、これはノズルの機能を阻害することにも繋がるため限界がある。従って、部品Cの幅方向のサイズがノズルの下端部631と同サイズ或いは近似するサイズである場合、ロータリー型のヘッドユニット6では、ノズル先端63Eの認識並びに部品CのZ方向厚さ認識が行えないという問題が顕在化する。
【0040】
[第1実施形態]
以下、上記の問題を解消することができる、ノズル先端の認識方法の具体例について説明する。図4(A)は、第1実施形態に係るサイドビュー撮像を実行する際の装置構成を示すZ断面方向の図、図4(B)は、図4(A)のY断面方向の図である。ここでは、ロータリー型のヘッドユニット6において、Y方向に対峙する一対のノズル63-1、63-2を示している。これらノズル63-1、63-2にそれぞれ対向して、サイドビューカメラ11A、11Bが配置されている。これらサイドビューカメラ11A、11Bは、図3(A)の場合と同様な、狭い画角G2に設定されている。
【0041】
ノズル63-1、63-2は、従来のノズル630が備える形状特徴部632のような突起部分が存在しない、同一外径の筒状体からなるノズル下端部63Aを有している。形状的な特徴部分に代えて、ノズル下端部63Aの側周面の一部には、蓄光部材64(光学マーク部)が付設されている。蓄光部材64は、サイドビュー画像においてノズル63-1、63-2に光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部である。蓄光部材64としては、紫外線や可視光線などの励起光が照射されると蓄光し、その後に前記照射が停止されても発光する作用を有する材料の塗布層、テープなどを用いることができる。蓄光部材64は、ノズル下端部63Aにおいて画角G2に収まる位置に、ノズル下端部63Aの側周面を1周する帯状に設けることが望ましい。
【0042】
一対のノズル63-1、63-2の中間には、照明ポール13(光照射部)が配置されている。照明ポール13は、ロータリー型のヘッドユニット6の回転中心軸に沿って配置された円柱型の照明部材であり、その外周面からノズル63-1側、及びノズル63-2側へ放射状に照明光を発することが可能である。サイドビューカメラ11A、11Bは、各々1本のノズル63-1、63-2を間に挟んで、照明ポール13と対向して配置されている。
【0043】
照明ポール13が発する照明光は、蓄光部材64が蓄光可能な波長の光である。照明ポール13としては、円柱型の導光体の端面に光源を配置してなる光源装置を用いることができる。前記導光体の周面のうちノズル63-1、63-2との対向領域に光を拡散漏洩させる加工を施せば、前記光源の光をノズル63-1、63-2に照射することができる。本実施形態でも、ノズル先端63Eに吸着されている部品Cの幅方向のサイズが、ノズル下端部63Aと同サイズである場合を想定する。
【0044】
図5(A)及び(B)は、第1実施形態のサイドビュー撮像の実行状態並びに取得されるサイドビュー画像を示す図である。ここでは、上記のサイドビューカメラ11A、11Bの代わりに、これらカメラが備える撮像素子111を模式的に示している。そして、各々の撮像素子111の隣に、サイドビュー撮像によって取得されるサイドビュー画像30を付記している。
【0045】
図5(A)は、第1実施形態のサイドビュー撮像の第1段階を示している。照明ポール13は点灯され、一対のノズル63-1、63-2の各背面側から照明光13Lを照射している。当該照明光13Lは、サイドビューカメラ11A、11Bによるサイドビュー撮像におけるバックライト光となる。照明光13Lがノズル63-1、63-2に照射されることによって、蓄光部材64は蓄光するようになる。図5(A)では、ノズル下端部63Aの側面一周に設けられた蓄光部材64のうち、照明光13Lを蓄光する部分を蓄光部分64Pとして示している。
【0046】
サイドビュー画像30には、影画像31と背景部32とが現れる。影画像31は、バックライト光である照明光13Lがノズル63-1、63-2の各ノズル下端部63Aによって遮光された影13Sが、撮像素子111に入射して撮像された影領域である。端的には、影画像31はノズル下端部63Aの影画像である。背景部32は、照明光13Lが遮光されることなく、そのまま撮像素子111に入射して撮像された明領域である。図5(A)の第1段階で得られるサイドビュー画像30は、図3(C)のサイドビュー画像20と同様に、ノズル先端63Eを探知する基準位置が存在しない二値化画像に過ぎない。つまり、蓄光部材64は極く薄い層であって、サイドビュー画像30に形状的には表出しない。
【0047】
図5(B)は、第1実施形態のサイドビュー撮像の第2段階を示している。第2段階では、ノズル63-1、63-2が、矢印rで示すように図5(A)の状態から180°だけ、ノズル軸(R軸)回りに各々回転される。この回転により、上述の蓄光部分64Pはサイドビューカメラ11A、11Bの光軸と対向するようになる。この段階で蓄光部分64Pは、照明光13Lに照射されない状態となるが、それまでの照射による蓄光によって自発光する。
【0048】
このため、上記の影13Sに蓄光部分64Pの自発光が重畳された複合影13SPが撮像素子111に入射される。照明光13Lは、変わらず撮像素子111に入射し続ける。従って、第2段階のサイドビュー画像30には、影画像31及び背景部32に加えて、蓄光部材64の配置箇所に相当する位置に、帯状のマーク部33(光学的な特徴部)が表出するようになる。マーク部33は、蓄光部分64Pの自発光に基づく明領域であって、影画像31とは明瞭に区分できる部分である。つまり、第2段階のサイドビュー画像30は、影画像31が暗領域、背景部32及びマーク部33が明領域に二値化された画像となる。このマーク部33は、ノズル先端63Eの位置を探知する基準位置となり得る。
【0049】
図6(A)及び(B)は、マーク部33に基づいて、ノズル先端63Eの位置、さらには部品Cの厚さの導出手法を示す図である。サイドビュー画像30には影画像31が現れる。この影画像31の領域が、ノズル63-1、63-2の各ノズル下端部63Aの画像が占める対象領域であると特定することができる。ここでは、部品Cを吸着したノズル下端部63Aの画像が、前記対象領域となる。そして、当該対象領域の画像において、マーク部33の表出位置を基準として、ノズル先端63Eの位置を特定することができる。
【0050】
図6(A)では、帯状のマーク部33の上端縁と影画像31との境界位置に表出するコーナー部を、前記対象領域における画像特徴部34と扱う例を示している。このようなコーナー部は、画像上において上下・左右の位置が特定されるので、画像特徴部34として好適である。この画像特徴部34は、ノズル下端部63Aの形状的特徴に由来して発現するものではなく、光学的にのみ発現する特徴部である。
【0051】
図6(B)は、画像特徴部34を基準位置f1として、ノズル先端位置f2及び部品CのZ方向厚さd2を探知する例を示している。予め、画像特徴部34からノズル先端63Eまでの長さd1が計測される。このため、基準位置f1から既知の長さd1だけ下方の位置が、ノズル先端63Eに対応するノズル先端位置f2となる。ノズル先端位置f2が求められれば、影画像31の下端位置f3とノズル先端位置f2との間の長さが、部品CのZ方向厚さd2として求められることになる。従って、ノズル先端位置f2を求めることにより、ノズル先端63Eでの部品Cの吸着の有無、部品Cの厚さd2を含むサイズ、及びノズル先端63Eによる部品Cの吸着姿勢等を判定することが可能となる。
【0052】
以上説明した第1実施形態によれば、ノズル下端部63Aに光学マーク部としての蓄光部材64が配置される。この蓄光部材64に、サイドビュー撮像において本来的に必要なバックライト光(照明光13L)を用いて、蓄光させる。そして、蓄光した蓄光部材64を自発光させることで、サイドビュー画像30において光学的な特徴部であるマーク部33を影画像31に重畳して表出させることができる。また、ノズル63をR軸回りに回転させる回転機構は、一般的な部品実装装置1では本来的に備えられている。従って、部品実装装置1の既存の機能を活用して、ノズル先端63Eの位置認識を行わせることができる。
【0053】
[第2実施形態]
図7(A)は、第2実施形態に係るサイドビュー撮像を実行する際の装置構成を示すZ断面方向の図、図7(B)は、図7(A)のY断面方向の図、図7(C)はLED光源12Aの構成を示す図である。ここでは、1本のノズル63を挟んで、-Y側にサイドビューカメラ11及びLED光源12A(光源)が配置され、+Y側に蛍光ポール14(光照射部)が配置されている。ノズル63は、ロータリー型のヘッドユニット6が備えるノズルのうちの1本であっても、複数枚のノズルが一列に配列されているヘッドユニットが備えるノズルのうちの1本であっても良い。
【0054】
第1実施形態と同様に、ノズル63には形状的な特徴部が存在しない、同一外径の筒状体からなるノズル下端部63Aを有している。形状的な特徴部分に代えて、ノズル下端部63Aの側周面の一部には、蛍光塗料層65(波長変換部材)が塗布によって付設されている。蛍光塗料層65は、サイドビュー画像においてノズル63に光学的な特徴部を表出させることが可能な光学マーク部である。蛍光塗料層65を形成する塗料としては、ある波長の光が照射されると、これを異なる波長の光に波長変換して反射する機能を発揮する塗料が選ばれる。本実施形態では、蛍光塗料層65は、紫外光(第1波長の光)が照射されると、可視光(第2波長の光)に波長変換する。蛍光塗料層65は、ノズル下端部63Aにおいて画角G2に収まる位置に、ノズル下端部63Aの側周面を1周する帯状に設けることが望ましい。
【0055】
サイドビューカメラ11は、図3(A)の場合と同様な、狭い画角G2を有するカメラである。サイドビューカメラ11の光軸上には、紫外光(第1波長の光)を除去するフィルター部材112が配置されている。このため、サイドビューカメラ11の撮像素子には、紫外光が入射しない。
【0056】
LED光源12Aは、図7(B)に示すように、LED基板121と、このLED基板121上に配置されたLEDランプ122とを備えている。本実施形態のLEDランプ122は、紫外光(第1波長の光)を発する。LED基板121の中央部には、サイドビューカメラ11の光軸を確保するための開口123が設けられている。サイドビューカメラ11のレンズ部は、開口123の位置に配置されている。
【0057】
蛍光ポール14は、円柱型のポールであり、その外表面のLED光源12Aと対峙する領域には、ポール蛍光層66(波長変換層)が備えられている。ポール蛍光層66もまた、ある波長の光が照射されると、これを異なる波長の光に波長変換して反射する機能を有する。本実施形態では、LED光源12Aから紫外光が照射されると、可視光(第3波長の光)に波長変換する。なお、ポール蛍光層66が生成する可視光(第3波長の光)と、ノズル63の蛍光塗料層65が生成する可視光(第2波長の光)とは、同一波長であっても、異なる波長であっても良い。同一波長とした場合、フィルター部材112は、紫外光を遮蔽する一方で、一の波長の可視光を良好に通過させる特性さえ有していれば良いので、フィルター部材の選定が容易となる利点がある。
【0058】
図8(A)及び(B)は、第2実施形態のサイドビュー撮像の実行状態を示す図である。第2実施形態でも、ノズル先端63Eに吸着されている部品Cの幅方向のサイズが、ノズル下端部63Aと同サイズである場合を想定する。図8(B)には、サイドビュー撮像によって取得されるサイドビュー画像30が付記されている。
【0059】
図8(A)は、第2実施形態のサイドビュー撮像において、LED光源12Aが点灯された瞬間を示している。LED光源12Aが点灯されると、紫外光12Lがノズル63及び蛍光ポール14に照射される。つまり、紫外光12Lが、ノズル63の蛍光塗料層65と、蛍光ポール14のポール蛍光層66とに照射される。なお、紫外光12Lはフィルター部材112で遮断されるので、サイドビューカメラ11に入射することはない。
【0060】
図8(B)は、蛍光塗料層65及びポール蛍光層66が波長変換を発揮している状態を示している。蛍光塗料層65は、紫外光12Lを波長変換した第1波長変換光65L(第2波長の光)を、反射光として放射する。第1波長変換光65Lは、開口123を通してサイドビューカメラ11に入射する。一方、ポール蛍光層66は、紫外光12Lを波長変換した第2波長変換光66L(第3波長の光)を放射する。第2波長変換光66Lは、ノズル63を背面側から照射するバックライト光となる。
【0061】
サイドビュー画像30には、影画像31、背景部32及びマーク部33(光学的な特徴部)が現れる。影画像31は、バックライト光である第2波長変換光66Lがノズル下端部63Aによって遮光された影が、サイドビューカメラ11に入射して撮像された影領域である。背景部32は、第2波長変換光66Lが遮光されることなく、そのままサイドビューカメラ11に入射して撮像された明領域である。マーク部33は、ノズル下端部63Aにおける蛍光塗料層65の配置箇所に相当する位置に表出する明領域であって、第1波長変換光65Lがサイドビューカメラ11に入射して撮像された領域である。
【0062】
サイドビュー画像30は、影画像31が暗領域、背景部32及びマーク部33が明領域に二値化された画像となる。このマーク部33は、ノズル先端63Eの位置を探知する基準位置となり得る。ノズル先端63Eの位置、並びに部品Cの厚さの導出手法については、先に図6(A)及び(B)に基づいて説明した手法と同じである。
【0063】
以上説明した第2実施形態によれば、一つのLED光源12Aが発する紫外光(第1波長の光)を波長変換させることにより、バックライト光としての第2波長変換光66Lと、光学的な特徴部であるマーク部33を形成する第1波長変換光65Lとを生成することができる。そして、フィルター部材112で紫外光を遮断した上で、影画像31とマーク部33とをサイドビューカメラ11に撮像させることができる。従って、シンプルな構造で、ノズル63のR軸回りの回転動作を伴うことなく、ノズル先端63Eの位置認識を行わせることができる。
【0064】
[部品実装装置の電気的構成]
図9は、部品実装装置1の電気的構成を示すブロック図である。部品実装装置1は、制御部50を備える。制御部50は、マイクロコンピュータからなり、当該部品実装装置1が備える各部を、所定のプログラムに基づいて制御する。制御部50は、前記プログラムの実行によって機能的に、全体制御部51、軸制御部52、撮像制御部53、照明制御部54、画像処理部55、ノズル先端導出部56(処理部)及び吸着状態判定部57を具備するように動作する。
【0065】
全体制御部51は、部品実装装置1の各種動作を統括的に制御する。例えば全体制御部51は、コンベア3による基板Pの搬送動作、部品供給ユニット4による部品供給動作、ヘッドユニット6による部品実装動作などを統括的に制御する。
【0066】
軸制御部52は、X軸サーボモータ41及びY軸サーボモータ42の駆動を制御することによって、ヘッドユニット6をXY方向に移動させる。これにより、ヘッドユニット6に搭載されているヘッド本体61(ノズル63)、並びに基板認識カメラ10のXY方向の位置が制御される。また軸制御部52は、Z軸サーボモータ43及びR軸サーボモータ44の駆動を制御することによって、ノズル63の昇降及びZ軸回りの回転の動作を制御する。これにより、ノズル63の吸着孔に吸着された部品Cの基板Pへの実装、部品Cの回転位置調整が実行される。さらに、軸制御部52は、上記とは別個のZ軸サーボモータ43により、ヘッドユニット6のローター62を回転させる制御も行う。
【0067】
撮像制御部53は、部品認識カメラ9、基板認識カメラ10及びサイドビューカメラ11の撮像動作を制御する。具体的には撮像制御部53は、ノズル63に吸着された部品Cを部品認識カメラ9に撮像させる動作、基板Pのフィデューシャルマークを基板認識カメラ10に撮像させる動作、及び、部品Cを吸着したノズル63を側方から見たサイドビュー画像をサイドビューカメラ11に撮像させる動作を制御する。
【0068】
照明制御部54は、照明部120のON-OFF制御、並びに光量制御を行い、バックライト光乃至は照明光の照射制御を行う。上記第1実施形態では、照明部120は照明ポール13であり、第2実施形態では、照明部120はLED光源12Aである。
【0069】
上記第1実施形態においては、先ず軸制御部52は、R軸サーボモータ44を制御して、蓄光部材64の所定箇所が照明ポール13と対向するようにノズル63をR軸回りに回転させる。照明制御部54は、照明ポール13を所定光量で点灯させて、蓄光部材64にバックライト光となる照明光13Lを照射させ、蓄光させる(図5(A)参照)。なお、蓄光部材64がノズル63の全周に付設されている場合は、このノズル63の回転を省くことができる。次いで、軸制御部52は、蓄光部材64における蓄光された部分を含むノズル下端部63Aの領域がサイドビューカメラ11の画角G2に入るように、R軸サーボモータ44を制御してノズル63を半回転させる。照明制御部54は、照明ポール13の点灯を継続させる。そして、撮像制御部53が、サイドビューカメラ11に部品Cを吸着したノズル63のサイドビュー撮像を実行させる(図5(B)参照)。サイドビューカメラ11は、バックライト光としての照明光13Lが作る背景部32と、蓄光部材64の自発光によるマーク部33が重畳されたノズル63の影画像31とを撮像する。
【0070】
一方、上記第2実施形態における制御はシンプルである。照明制御部54は、全体制御部51からの指示に応じてLED光源12Aを点灯させる。これにより、蛍光塗料層65は第1波長変換光65Lを反射し、ポール蛍光層66はバックライト光となる第2波長変換光66Lを反射するようになる。そして、撮像制御部53が、サイドビューカメラ11に部品Cを吸着したノズル63のサイドビュー撮像を実行させる(図8(B)参照)。サイドビューカメラ11は、バックライト光としての第2波長変換光66Lが作る背景部32と、第1波長変換光65Lによるマーク部33が重畳されたノズル63の影画像31とを撮像する。
【0071】
画像処理部55は、部品認識カメラ9及び基板認識カメラ10によって取得された画像データに、形状認識のためのエッジ検出処理等の画像処理を行う。当該画像処理によって、前記フィデューシャルマークや部品Cの位置情報が認識される。また、画像処理部55は、サイドビューカメラ11により取得されたサイドビュー画像に前記画像処理を施して、影画像31及びマーク部33を認識する処理を行う。つまり、画像処理部55は、サイドビュー画像において暗領域と明領域とを区別する二値化処理を行い、影領域を特定する。
【0072】
ノズル先端導出部56は、サイドビュー画像において、影画像31の領域、すなわちバックライト光が遮蔽された影領域を、ノズル下端部63Aの画像が占める対象領域として特定する。また、ノズル先端導出部56は、前記対象領域の画像において、光学的な特徴部の表出位置であるマーク部33を基準として、ノズル先端63Eの位置を特定する処理を行う。具体的には、図6(A)、(B)に基づき述べた通り、ノズル先端導出部56は、マーク部33に基づいて画像特徴部34を特定する。画像特徴部34は、例えば、マーク部33と影画像31との境界位置に表出するコーナー部である。そして、ノズル先端導出部56は、画像特徴部34の高さ位置を基準位置f1とし、このf1に既知の長さd1を加算して、ノズル先端位置f2を求める。
【0073】
吸着状態判定部57は、先ず、ノズル先端導出部56が求めたノズル先端位置f2と、影画像31の下端位置f3とから、部品Cの該当領域のZ方向厚さd2を求める。このd2が、吸着対象の部品CのZ方向厚さの設定値若しくはその許容誤差範囲に相当する場合、吸着状態判定部57は、当該部品Cがノズル63で正常に吸着されていると判定する。一方、吸着状態判定部57は、d2=0、つまり、f2=f3であると判定した場合、部品Cがノズル63で吸着されていない吸着ミスと判定する。また、吸着状態判定部57は、d2が部品CのZ方向厚さの設定値と相違する場合、部品Cの被吸着姿勢に異常が有ると判定する。
【0074】
[処理フロー]
図10は、制御部50によるサイドビュー撮像~部品吸着状態判定処理の動作を示すフローチャートである。この処理に際しては、予めノズル下端部63Aに、上述の蓄光部材64若しくは蛍光塗料層65が付設される(光学マーク部を付設するステップ)。まず、軸制御部52は、全体制御部51から部品吸着指示が来信しているか否かを判定する(ステップS1)。部品吸着指示が来信していない場合(ステップS1でNO)、待機する。
【0075】
これに対し、部品吸着指示が来信している場合(ステップS1でYES)、軸制御部52は、X軸サーボモータ41及びY軸サーボモータ42を制御して、ヘッドユニット6と共にN番目のノズル63を部品供給ユニット4による部品吸着位置へ移動させる。N番目のノズル63は、次に吸着動作を行うノズルとして、全体制御部51が指定しているノズルである。そして、軸制御部52がZ軸サーボモータ43を制御してノズル63を昇降させると共に、図略の負圧発生機構が動作されてノズル63の吸着孔に負圧が発生され、部品Cの吸着動作を実行させる(ステップS2)。
【0076】
続いて、軸制御部52は、ローター62を回転させて、部品Cを吸着したノズル63をサイドビューカメラ11による撮像位置へ移動させる(ステップS3)。次いで、照明制御部54が、バックライト光を作る照明部120を点灯させる(ステップS4;バックライト光を照射するステップ)。第1実施形態では、照明制御部54は照明ポール13を点灯させる。第2実施形態では、照明制御部54はLED光源12Aを点灯させる。その後、第1実施形態では、軸制御部52がR軸サーボモータ44を動作させて、ノズル63をR軸回りに半回転させる(ステップS5)。第2実施形態では、このステップS5はスキップされる。
【0077】
次に、撮像制御部53がサイドビューカメラ11を動作させ、部品Cを吸着したノズル63のサイドビュー撮像を実行させる(ステップS6;サイドビュー画像を取得するステップ)。前記撮像により取得されたサイドビュー画像の画像データは、サイドビューカメラ11から画像処理部55に転送される(ステップS7)。この転送は、サイドビューカメラ11が狭い画角G2に設定されているため、高速で転送が可能である。
【0078】
画像処理部55は、転送された画像データに対して画像処理を行い、サイドビュー画像30を暗領域と明領域とに区別する二値化処理を行う(ステップS8)。前記暗領域はノズル63の影画像31、前記明領域は背景部32及びマーク部33である。次いで、ノズル先端導出部56が、サイドビュー画像30に表出しているマーク部33に基づいて画像特徴部34を求め、この画像特徴部34の位置を基準位置f1として、ノズル先端63Eの位置を特定する処理を行う(ステップS9;ノズル先端位置を特定するステップ)。
【0079】
ノズル先端63Eの位置が特定されたら、吸着状態判定部57が、サイドビュー画像30上において部品CのZ方向厚さd2を算出する(ステップS10)。そして、吸着状態判定部57は、算出されたd2と、予め記憶された吸着対象の部品CのZ方向厚さの設定値とを比較して、部品Cの吸着状態が正常であるか否かを判定する(ステップS11)。もし、吸着状態が異常であれば、吸着状態判定部57は、部品実装装置1が備える図略の表示部にエラーメッセージを表示させる。以上で、1本のノズル63に対する処理を終える。
【0080】
以上説明した部品実装装置1若しくはノズル先端63Eの認識方法によれば、サイドビュー画像30において蓄光部材64又は蛍光塗料層65による光学的な特徴部が影画像31に重畳して表出する。つまり、影画像31において基準位置f1として用いることができるマーク部33を、サイドビュー画像30上で表出させることができる。このため、形状的な特徴部をノズル63に施与することなく、光学的な特徴部であるマーク部33を基準位置f1として、ノズル先端63EのZ方向高さ位置を特定することができる。従って、狭い画角G2のサイドビューカメラ11を用いた場合でも、ノズル先端63Eの位置認識を確実に行わせることができる。また、ノズル63に対する形状的な特徴部の付設が不要となるので、ノズル63の軽量化、小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0081】
C 部品(ワーク)
BL バックライト光
G1、G2 画角
1 部品実装装置(ワーク吸着装置)
11 サイドビューカメラ(撮像部)
12A LED光源(光源)
12L 紫外光(第1波長の光)
13 照明ポール(光照射部)
14 蛍光ポール(光照射部)
30 サイドビュー画像
31 影画像(影領域)
32 背景部
33 マーク部(光学的な特徴部)
44 R軸サーボモータ(回転機構)
50 制御部
56 ノズル先端導出部(処理部)
57 吸着状態判定部(処理部)
6 ヘッドユニット
63 ノズル
63E ノズル先端
64 蓄光部材(光学マーク部)
65 蛍光塗料層(光学マーク部/波長変換部材)
65L 第1波長変換光(第2波長の光)
66 ポール蛍光層(波長変換層)
66L 第2波長変換光(第3波長の光)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10