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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ウィルキンソン回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/48 20060101AFI20230424BHJP
   H01P 5/19 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H03H7/48 Z
H01P5/19 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019025457
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020136806
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】星 宏幸
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-314139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P5/19-5/22
H03H7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と第1出力端子との間に接続された第1集中定数線路と、該入力端子と第2出力端子との間に接続された第2集中定数線路とを備えるウィルキンソン回路であって、
90°の位相遅延量の位相遅延回路が2段以上縦続接続されて構成される前記第1集中定数線路と、
90°の位相遅延量の位相遅延回路が2段以上縦続接続されて構成される前記第2集中定数線路と、
前記第1集中定数線路を構成する前記位相遅延回路の各出力側と、該出力側に対応する前記第2集中定数線路を構成する前記位相遅延回路の各出力側との間に、それぞれ接続されたアイソレーション抵抗と、
を備え、
nを2以上の正の整数とした際に、前記位相遅延回路は、90°の位相をn分割した位相遅延量とされた単位位相回路をn段縦続接続して構成されていることを特徴とするウィルキンソン回路。
【請求項2】
前記単位位相回路は、回路に直列に接続されたインダクタと、回路に並列に接続されたキャパシタとで構成される低域通過型フィルタタイプとされていることを特徴とする請求項1に記載のウィルキンソン回路。
【請求項3】
前記入力端子側から見たリターンロスの周波数特性において、20dB以上の入力端子側のリターンロスが得られる使用中心周波数から低域周波数端までの帯域幅と使用中心周波数から高域周波数端までの帯域幅とが同じとなるように前記インダクタと前記キャパシタの電気定数が微調整されることを特徴とする請求項2に記載のウィルキンソン回路。
【請求項4】
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間のアイソレーションの周波数特性が所定の周波数特性となるよう前記アイソレーション抵抗の値が微調整されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のウィルキンソン回路。
【請求項5】
前記第1出力端子および前記第2出力端子におけるリターンロスの周波数特性が所定の周波数特性となるよう前記アイソレーション抵抗の値が微調整されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のウィルキンソン回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分配回路として用いられる集中定数素子で構成されるウィルキンソン回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルキンソン回路は、3端子型高周波2分配器の代表的回路として従来から知られている。基本的な分布定数型のウィルキンソン回路100の回路構成を図30に示す。図30に示すように、ウィルキンソン回路100は、入力端子IN100と第1出力端子OUT101との間に接続された分布定数線路W1と、入力端子IN100と第2出力端子OUT102との間に接続された分布定数線路W2と、第1出力端子OUT101と第2出力端子OUT102との間に接続されたアイソレーション抵抗Rとから構成されている。このウィルキンソン回路100の使用中心周波数をFoとすると、分布定数線路W1と分布定数線路W2の電気長は使用中心周波数Foの1/4波長としているから、使用中心周波数Foにおける位相遅延量θoは90°となる。また、ウィルキンソン回路100に接続される入出力インピーダンスをZoとすると、分配比を1:1の均等分配とした場合、分布定数線路W1と分布定数線路W2の特性インピーダンスをZsとすると特性インピーダンスZsは√2×Zoになる。分布定数線路W1と分布定数線路W2は、いわゆるQマッチング回路として作用しているので、出力端子側のインピーダンスZoを特性インピーダンスZsである分布定数線路W1あるいは分布定数線路W2を介して見た入力端子IN100側のインピーダンスをZxとすると、Qマッチング回路の動作原理から、
Zx=Zs /Zo=( √2×Zo)/Zo=2Zo
となる。従って、入力端子IN100から見た合成インピーダンスは、この2ZoのインピーダンスZxが並列に接続されているので1/2のインピーダンスZoとなって入力端子IN100のインピーダンスZoと整合する。
【0003】
図30に示すウィルキンソン回路100におけるアイソレーション抵抗Rの値は、均等分配のウィルキンソン回路において最大の出力端子間アイソレーションが得られるとして知られている2Zoとなる。
一例として、ウィルキンソン回路100において、Zo=50[Ω],Fo=150[MHz],Zs=√2×Zo≒70.710678[Ω],R=2Zo=100[Ω]としたときの100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域における伝送特性を示すと、図31ないし図34に示すようになる。図31は入出力端子間の挿入損失の周波数特性、図32は入力端子側のリターンロスの周波数特性、図33は出力端子側のリターンロスの周波数特性、図34は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。実用上有効な入力端子IN100側のリターンロスを20[dB]以上とすると、黒塗り逆三角形のマークで示す周波数帯域はFoより低域側の周波数FLは約122.5[MHz]、高域側の周波数FHは約177.5[MHz]となり、周波数帯域幅は55[MHz]となる。これにより、約37%の比帯域が得られている。
【0004】
ここで、図35に分布定数線路W1のみを取り出して図示しており、入力端子IN100に接続される端子P100の接続インピーダンスは100[Ω],出力端子OUT101に接続される端子P101の接続インピーダンスは50[Ω],線路の特性インピーダンスは約70.710678[Ω]で、Fo=150[MHz]における位相遅延量θoは90°となる。分布定数線路W1の端子P100から見た100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域におけるリターンロス特性は、図32に示す分布定数型のウィルキンソン回路100における入力端子側のリターンロスの周波数特性と同一となる。このことから、以下で述べるウィルキンソン回路における説明を、ウィルキンソン回路の入力側から見たリターンロスの周波数特性を反射特性の基準として説明することにする。
ウィルキンソン回路は、特許文献1に示すように集中定数型でも実現することができる。そこで、図36(a)に分布定数線路W1を集中定数化した集中定数線路の等価回路110を示す。図36(a)に示す集中定数線路の等価回路110は、図36(b)に示す回路に並列接続されたキャパシタと回路に直列接続されたインダクタとの単位位相回路120が無限に続く回路で表すことができる。
【0005】
図36(b)に示す単位位相回路120はπ型の低域通過フィルタ(LPF)タイプとなっており、その位相遅延量は、0°を除く90°以下の任意の位相遅延量を実現できることが知られている。単位位相回路120を構成するキャパシタをCg、インダクタをLg、使用中心周波数をFoとする。回路全体の特性インピーダンスをZt100、所望する位相遅延量をθoとすると、キャパシタCgとインダクタLgは次式で与えられる。
Cg=(1-cosθo)/(2πFo・Zt100・sinθo) (1)
Lg=(Zt100・sinθo)/(2πFo) (2)
【0006】
使用中心周波数Foを150[MHz],特性インピーダンスZt100を分布定数線路W1の特性インピーダンスZsと同じ約70.710678[Ω],位相遅延量θoを90°とした際の単位位相回路120のキャパシタCgとインダクタLgの値を(1)(2)式を用いて求めると、
Cg≒15.005[pF]
Lg≒75.026[nH]
となる。このように算出された値のキャパシタCgとインダクタLgとされた単位位相回路120において、入力側の接続インピーダンスを100[Ω]、出力側の接続インピーダンスを50[Ω]とした際の入力側から見たリターンロスの周波数特性は、図37に示すようになる。図37を参照すると、黒塗り逆三角形のマークで示すリターンロスが20[dB]となる低域側の周波数FLは約136.3[MHz],高域側の周波数FHは約161.3[MHz]となる。このように、実用上有効なリターンロスが得られる周波数帯域は特に高域側で狭くなっており、全周波数帯域幅が約25[MHz]となって約17%の比帯域しか得られていない。このことから、ウィルキンソン回路を集中定数化する場合は、集中定数線路の反射特性を広帯域化する必要がある。
【0007】
集中定数線路の反射特性を広帯域化する手法が特許文献2に示されている。この手法では、90°の位相を等分割し、45°×2段の位相遅延回路構成あるいは30°×3段の位相遅延回路構成のように多段化して構成した集中定数線路として反射特性を広帯域化している。例えば、図35に示す分布定数線路W1と等価な集中定数線路を、45°の位相遅延量の位相遅延回路を2段縦続接続して構成した集中定数線路130の回路構成を図38に示す。図38に示す集中定数線路130は、端子Pe1と端子Pe2との間にそれぞれ45°の位相遅延量とされた位相遅延回路130aと位相遅延回路130bとが2段で縦続接続されて構成されており、端子P100に相当する端子Pe1の接続インピーダンスを100[Ω],端子P101に相当する端子Pe2の接続インピーダンスを50[Ω]とした際の端子Pe1から見た集中定数線路130のリターンロスの周波数特性を図39に示す。図39を参照すると、黒塗り逆三角形のマークで示すリターンロス20[dB]となる低域側の周波数FLが約124.4[MHz]、高域側の周波数FHが約174.5[MHz]となり、全周波数帯域幅が約50.1[MHz]となって約33%の比帯域まで拡大されている。このように、図38に示す集中定数線路130では図35に示す分布定数線路W1に近い反射特性が実現されている。なお、キャパシタCe1,Ce2とインダクタLeの値は上記(1)、(2)式により求めることができ、Ce1≒6.2154[pF],Ce2=2×Ce1≒12.431[pF],Le≒53.052[nH]となる。この場合、集中定数線路130の特性インピーダンスZtは約70.710678[Ω]とされている。
【0008】
分布定数型のウィルキンソン回路100では図32に示すようにリターンロスの周波数特性は、中心周波数に対して低域側と高域側の反射特性は対称となることから、使用中心周波数Foを中心として低域側と高域側の周波数帯域幅は同一となる。しかし、図39を参照するとリターンロスの周波数特性は対称性が僅かに崩れている。このように、分布定数線路を集中定数線路で近似した場合ではこの対称性は確保できないという問題点があった。その原因は、集中定数線路は図38に示すようにLPFタイプの位相遅延回路とされていることから、低域が広く高域が狭くなる傾向になるからである。この問題を解消するためには、所望する周波数帯域の中心周波数を計算上僅かに高域側にシフトさせて、低域端と高域端のリターンロスが同一になるように調整すれば良い。
【0009】
図38に示す集中定数線路130を用いた集中定数型のウィルキンソン回路200の回路構成を図40に示す。図40に示すウィルキンソン回路200は、入力端子IN200と第1出力端子OUT201との間に接続された集中定数線路210と、入力端子IN200と第2出力端子OUT202との間に接続された集中定数線路211と、第1出力端子OUT201と第2出力端子OUT202との間に接続されたアイソレーション抵抗Rfとから構成されている。集中定数線路210,211は、回路に並列に接続された2つのキャパシタCf1,Cf1と回路に直列に接続されたインダクタLfとからなる45°の遅延位相量とされた位相遅延回路と、回路に並列に接続された2つのキャパシタCf1,Cf2と回路に直列に接続されたインダクタLfとからなる45°の遅延位相量とされた位相遅延回路とが2段に縦続接続されて構成されている。
【0010】
ウィルキンソン回路200において、入力端子IN200と出力端子OUT201,OUT202のインピーダンスZoを50[Ω],集中定数線路210,211の特性インピーダンスZtを約70.710678[Ω]、使用中心周波数Foを150[MHz],アイソレーション抵抗Rfを100[Ω]とした際のキャパシタCf1,Cf2とインダクタLfの値を上記(1),(2)式により求める。この場合、使用中心周波数Foを計算上僅かに高域側にシフトさせて、低域側と高域側のリターンロスが同一になるように電気定数を調整すると、キャパシタCf1=12.431[pF],キャパシタCf2=6.1926[pF],インダクタLf=52.857[nH]となる。この電気定数とされたウィルキンソン回路200の100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域における伝送特性を図41ないし図44に示す。図41は入出力端子間の挿入損失の周波数特性、図42は入力端子側のリターンロスの周波数特性、図43は出力端子側のリターンロスの周波数特性、図44は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。図42に示す入力端子側のリターンロスの周波数特性を参照すると、黒塗り逆三角形のマークで示すリターンロス20[dB]となる周波数は、低域側の周波数FLが約124.9[MHz]、高域側の周波数FHが約175.1[MHz]となり、リターンロス最大の極が使用中心周波数Foから若干高域の150.55[MHz]にシフトするものの、使用中心周波数Foに対しておよそ±25.1[MHz]の対称な帯域に改善され、比帯域は約33%が得られている。このように、2段の集中定数素子からなる位相遅延回路を集中定数線路としたウィルキンソン回路200では、図30に示す分布定数型のウィルキンソン回路100の伝送特性に近似した反射特性が得られることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-124712号公報
【文献】特開平10-229316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の集中定数線路を集中定数化する手法を用いても実用上有効な入力端子側のリターンロスが得られる低域側の周波数FLと高域側の周波数FHとの比であるFH/FLが2以上となるような1オクターブ以上の広帯域の反射特性を得ることができないという問題点があった。
そこで、本発明は、集中定数型のウィルキンソン回路において少なくとも1オクターブの広帯域の反射特性を得ることができるウィルキンソン回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のウィルキンソン回路は、入力端子と第1出力端子との間に接続された第1集中定数線路と、該入力端子と第2出力端子との間に接続された第2集中定数線路とを備えるウィルキンソン回路であって、90°の位相遅延量の位相遅延回路が2段以上縦続接続されて構成される前記第1集中定数線路と、90°の位相遅延量の位相遅延回路が2段以上縦続接続されて構成される前記第2集中定数線路と、前記第1集中定数線路を構成する前記位相遅延回路の各出力側と、該出力側に対応する前記第2集中定数線路を構成する前記位相遅延回路の各出力側との間に、それぞれ接続されたアイソレーション抵抗とを備え、前記位相遅延回路は、90°の位相をn(nは2以上の正の整数)分割した位相遅延量とされた単位位相回路をn段縦続接続して構成されていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の集中定数型としたウィルキンソン回路は、第1集中定数線路および第2集中定数線路が、90°の位相遅延量の位相遅延回路が2段以上縦続接続されて構成されていると共に、位相遅延回路が、90°の位相をn(nは2以上の正の整数)分割した位相遅延量とされた単位位相回路をn段縦続接続して構成されていることから、少なくとも1オクターブの広帯域の反射特性を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施例において集中定数化した位相遅延回路の回路構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施例において集中定数化した集中定数線路の回路構成を示す図である。
図4】本発明の第1実施例にかかる集中定数線路の端子Pb1から見たリターンロスの周波数特性を示す図である。
図5】本発明の第1実施例にかかる集中定数線路の端子Pb1から見たリターンロスの周波数特性を示す図である。
図6】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の具体的な回路構成を示す図である。
図7】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図8】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図9】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図10】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
図11】T型の単位位相回路の回路構成および本発明の第1実施例のウィルキンソン回路におけるT型の位相遅延回路とされた集中定数線路の回路構成を示す図である。
図12】本発明の第1実施例のウィルキンソン回路における他の構成の集中定数線路の回路構成を示す図である。
図13図12に示す発明の第1実施例のウィルキンソン回路における他の構成の集中定数線路のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図14】本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路と対比される分布定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図15図14に示す分布定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図16図14に示す分布定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図17図14に示す分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図18図14に示す分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
図19】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図20】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の具体的な回路構成を示す図である。
図21】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図22】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図23】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図24】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
図25】本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路と対比される分布定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図26図25に示す分布定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図27図25に示す分布定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図28図25に示す分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図29図25に示す分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
図30】従来の基本的な分布定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図31】従来の分布定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図32】従来の分布定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図33】従来の分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図34】従来の分布定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
図35】従来の分布定数型のウィルキンソン回路において抽出した分布定数線路を示す図である。
図36】従来のウィルキンソン回路における分布定数線路を集中定数回路で表した等価回路および単位位相回路の回路構成を示す図である。
図37図36に示す単位位相回路の入力側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図38】位相遅延回路を2段縦続接続して構成した集中定数線路の回路構成を示す図である。
図39図38に示す集中定数線路の端子Pe1から見たリターンロスの周波数特性を示す図である。
図40】従来の集中定数型のウィルキンソン回路の回路構成を示す図である。
図41】従来の集中定数型のウィルキンソン回路の入出力端子間の挿入損失の周波数特性を示す図である。
図42】従来の集中定数型のウィルキンソン回路の入力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図43】従来の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子側のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図44】従来の集中定数型のウィルキンソン回路の出力端子間のアイソレーションの周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の第1実施例]
本発明にかかる第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の回路構成を図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例のウィルキンソン回路1は、入力端子IN1と第1出力端子OUT1との間に第1の集中定数線路10が接続され、入力端子IN1と第2出力端子OUT2との間に第2の集中定数線路11が接続されている。集中定数線路10は、Qマッチング回路として作用している位相遅延量θoが90°の位相遅延回路10aと位相遅延量θoが90°の位相遅延回路10bとが縦続接続された2段で構成されており、集中定数線路11も、Qマッチング回路として作用している位相遅延量θoが90°の位相遅延回路11aと位相遅延量θoが90°の位相遅延回路11bとが縦続接続された2段で構成されている。位相遅延回路10aと位相遅延回路11aとの出力側の間に第1のアイソレーション抵抗R10が接続され、位相遅延回路10bと位相遅延回路11bとの出力側の間に第2のアイソレーション抵抗R11が接続されている。
【0017】
位相遅延回路10a,11aは集中定数素子の回路構成とされ、集中定数素子からなる単位位相回路S10a,S10b,・・・,S10nをn(nは2以上の正の整数)段縦続接続して構成されている。単位位相回路S10a,S10b,・・・,S10nの各位相遅延量は各段が90°/nの位相遅延量θsとされている。位相遅延回路10b,11bも同様に集中定数素子の回路構成とされ、集中定数素子からなる単位位相回路S11a,S11b,・・・,S11nをn(nは2以上の正の整数)段縦続接続して構成されている。単位位相回路S11a,S11b,・・・,S11nの各位相遅延量は各段が90°/nの位相遅延量θsとされている。
ここで、n=2とすると位相遅延回路10a,11aは2段縦続接続された45°の位相遅延量の単位位相回路S10a,S10bから構成され、位相遅延回路10b,11bも2段縦続接続された45°の位相遅延量の単位位相回路S11a,S11bから構成される。例えば、位相遅延回路10aは図2に示す回路構成とされる。
【0018】
図2に示す位相遅延回路10aは、回路に直列に接続されたインダクタLaと回路に並列に接続された2つのキャパシタCa1,Ca2とからなる1段目の低域通過型フィルタ(LPF)タイプの45°の位相遅延量の単位位相回路S10aと、回路に直列に接続されたインダクタLaと回路に並列に接続された2つのキャパシタCa1,Ca2とからなる2段目のLPFタイプの45°の位相遅延量の単位位相回路S10bとが縦続接続されて構成されている。
入力端子IN1と第1出力端子OUT1および第2出力端子OUT2における入出力インピーダンスZoを50[Ω]とした場合、位相遅延回路10a,11aの入力端子IN1側の接続インピーダンスは2Zo=100[Ω]となり、位相遅延回路10b,11bの出力端子OUT1または出力端子OUT2側の接続インピーダンスはZo=50[Ω]となる。この場合、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の位相遅延回路10a,11aの特性インピーダンスをZt10とするとZt10を約82.034[Ω]と、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の位相遅延回路10b,11bの特性インピーダンスをZt11とするとZt11を約60.951[Ω]とすることができる。また、アイソレーション抵抗R10は約98[Ω]とされ、アイソレーション抵抗R11は約240[Ω]とされる。
【0019】
例えば、100[Ω]から50[Ω]へインピーダンス整合を2段の90°の位相遅延量の位相遅延回路U,Yで行う場合に、接続点のインピーダンスを100×√(50/100)≒70.711〔Ω〕と等比数列として、第1段の位相遅延回路Uで100[Ω]から70.711[Ω]へインピーダンス整合を行い、第2段の位相遅延回路Yで70.711[Ω]から50[Ω]へインピーダンス整合を行うとすると、第1段の位相遅延回路Uの特性インピーダンスZuは、√(100×70.711)≒84.090[Ω]となり、第2段の位相遅延回路Yの特性インピーダンスZyは、√(70.711×50)≒59.460[Ω]となる。このように、100[Ω]から50[Ω]へインピーダンス整合を行う際に、2段の90°の位相遅延量の位相遅延回路を用いてQマッチングの整合を取るインピーダンスを段階的に下げていきながら整合を取るようにしている。そして、位相遅延回路Uの特性インピーダンスを約82.034[Ω]と約2.5%小さくし、位相遅延回路Yの特性インピーダンスを約60.951[Ω]と約2.5%大きくするよう調整することで、広帯域の反射特性を得られるようになる。
【0020】
第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の使用中心周波数Foを150[MHz]としてインダクタLaとキャパシタCa1,Ca2との電気定数を上記(1)(2)式から算出すると、Ca1≒5.3575[pF],Ca2=2×Ca1≒10.715[pF],La≒61.547[nH]が得られる。また、位相遅延回路10bも図2に示す回路構成と同様になり、位相遅延回路10bの場合のインダクタLaとキャパシタCa1,Ca2との電気定数を上記と同様にして得ると、Ca1≒7.2106[pF],Ca2=2×Ca1≒14.421[pF],La≒45.729[nH]となる。さらに、位相遅延回路11aの回路構成および電気定数は位相遅延回路10aと同様となり、位相遅延回路11bの回路構成および電気定数は位相遅延回路10bと同様となる。
【0021】
集中定数化された位相遅延回路10aと位相遅延回路10bの2つを縦続接続して構成された集中定数線路10の回路構成を図3に示す。図3に示す集中定数線路10では、端子Pb1と端子Pb2との間にそれぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路10aと位相遅延回路10bとが2段縦続接続されており、入力端子IN1に接続される端子Pb1には100[Ω]の接続インピーダンスが、出力端子OUT1に接続される端子Pb2には50[Ω]の接続インピーダンスが接続されている。集中定数線路10は、回路に直列に接続されたインダクタLb1と回路に並列に接続された2つのキャパシタCb1,Cb2とからなる45°の位相遅延量の単位位相回路S10aと、回路に直列に接続されたインダクタLb2と回路に並列に接続された2つのキャパシタCb2,Cb3とからなる45°の位相遅延量の単位位相回路S10bとが縦続された位相遅延回路10aと、回路に直列に接続されたインダクタLb3と回路に並列に接続された2つのキャパシタCb3,Cb4とからなる45°の位相遅延量の単位位相回路S11aと、回路に直列に接続されたインダクタLb4と回路に並列に接続された2つのキャパシタCb4,Cb5とからなる45°の位相遅延量の単位位相回路S10bとが縦続された位相遅延回路10bとから構成されている。
【0022】
特性インピーダンスZt10が約82.034[Ω]の位相遅延回路10aと特性インピーダンスZt11が約60.951[Ω]の位相遅延回路10bとからなる集中定数線路10のインダクタLb1~Lb4とキャパシタCb1~Cb5の電気定数を上記(1)(2)式から算出すると、Cb1≒5.3575[pF],Cb2≒10.715[pF],Cb3≒12.568[pF],Cb4≒14.421[pF],Cb5≒7.2106[pF],Lb1~Lb2≒61.547[nH],Lb3~Lb4≒45.729[nH]となる。この電気定数とされた集中定数線路10の端子Pb1から見た100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域におけるリターンロス特性を図4に示す。図4を参照すると、リターンロス最大の極は明確ではなく、100[MHz]におけるリターンロスは約23[dB]となり、200[MHz]におけるリターンロスは約20.5[dB]しか得られていないことが分かる。
【0023】
ここで、後述する本発明にかかる最適化手法を用いて集中定数線路10の電気定数を修正すると、キャパシタCb1=5.3620[pF],Cb2=10.724[pF],Cb3=11.743[pF],Cb4=14.351[pF],Cb5=7.1757[pF],インダクタLb1~Lb2=61.249[nH],インダクタLb3~Lb4=45.768[nH]となる。このように、電気定数が修正され端子Pb1に100[Ω]、端子Pb2に50[Ω]の接続インピーダンスが接続された際の端子Pb1から見た100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域におけるリターンロス特性を図5に示す。図5を参照すると、最小のリターンロスは100[MHz]と200[MHz]および約152.2[MHz]にあり、約24[dB]に改善されている。また、約116.9[MHz]および約185.4[MHz]にリターンロス最大の極を持つチェビシェフ特性に近似した波状特性が得られている。端子Pb1から見た実用上有効なリターンロスを20[dB]以上とした際に、低域側の周波数FLは100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHは200[MHz]以上となって、少なくとも1オクターブの広帯域の反射特性を得ることができる。
【0024】
本発明にかかる最適化手法について説明すると、最適化手法は、以下に挙げる2つのステップからなる。
(1)各々の単位位相回路における集中定数素子の電気定数を微調整し、入力側から見たリターンロスの周波数特性が広帯域になると共に、使用周波数帯域における実用上有効な入力端子側のリターンロスが得られる使用中心周波数Foから低域周波数端FLまでの帯域幅と使用中心周波数Foから高域周波数端FHまでの帯域幅とがほぼ同一となるようにする。この場合、使用中心周波数Foを計算上僅かに高域側にシフトさせて、低域側と高域側のリターンロスが同一になるように電気定数を調整するのが有効となる。
(2)出力端子間アイソレーションの周波数特性および/または出力側のリターンロスの周波数特性が最良となるようアイソレーション抵抗の値を微調整し、集中定数型のウィルキンソン回路の集中定数素子の電気定数を確定する。
【0025】
図3に示す集中定数線路10と、この集中定数線路10と同様の構成とされた集中定数線路11を用いたn=2とした場合の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の詳細な回路構成を図6に示す。
図6において、集中定数線路10は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路10aと位相遅延回路10bとが2段縦続接続されて構成され、集中定数線路11は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路11aと位相遅延回路11bとが2段縦続接続されて構成されている。位相遅延回路10a,11aは、回路に並列に接続された2つのキャパシタCh1,Ch2と回路に直列に接続されたインダクタLh1とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S10aと、回路に並列に接続された2つのキャパシタCh2,Ch3と回路に直列に接続されたインダクタLh2とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S10bとが縦続接続されて構成されている。また、位相遅延線路10b,11bは、回路に並列に接続された2つのキャパシタCh3,Ch4と回路に直列に接続されたインダクタLh3とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S11aと、回路に並列に接続された2つのキャパシタCh4,Ch5と回路に直列に接続されたインダクタLh4とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S11bとが縦続接続されて構成されている。位相遅延回路10aと位相遅延回路11aの出力側の間に第1のアイソレーション抵抗R11が接続され、位相遅延回路10bと位相遅延回路11bの出力側の間に第2のアイソレーション抵抗R12が接続されている。
【0026】
図6に示す第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1において、入力端子IN1,第1出力端子OUT1および第2出力端子OUT2の入出力インピーダンスZoを50[Ω]とし、位相遅延回路10a,11aの特性インピーダンスZt10を約82.034[Ω]、位相遅延回路10b,11bの特性インピーダンスZt11を約60.951[Ω]とすると共に、使用中心周波数Foを150[MHz]とする。この場合の電気定数を上記(1)(2)式から算出し、上記最適化手法により第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の集中定数素子の電気定数を確定すると、キャパシタCh1=Ch2=10.724[pF],キャパシタCh3=11.743[pF],キャパシタCh4=14.351[pF],キャパシタCh5=7.1757[pF],インダクタLh1~Lh2=61.249[nH],インダクタLh3~Lh4=45.768[nH]となる。また、第1のアイソレーション抵抗Rh1は98[Ω]で、第2のアイソレーション抵抗Rh2は215[Ω]となる。
【0027】
この電気定数とされる第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の伝送特性を図7ないし図10に示す。図7は入出力端子間の挿入損失の周波数特性であり、図8は入力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図9は出力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図10は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。図7を参照すると、100[MHz]ないし200[MHz]の全周波数帯域において2分配時の最小理論挿入損失約3.0102999[dB]をわずかに超える良好な挿入損失特性とされ、図8を参照すると、実用上有効な入力端子IN1側のリターンロスを20[dB]以上とした際に、周波数帯域はFoより低域側の周波数FLは100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHは200[MHz]以上となって、FH/FLが2以上となる1オクターブを超える広帯域の入力端子側のリターンロス特性を得ることができる。さらに、100[MHz]と200[MHz]とにおけるリターンロスはほぼ同一の値となっており、低域側と高域側の周波数帯域幅が同一となっている。また、図9を参照すると100[MHz]ないし200[MHz]の全周波数帯域において32[dB]以上の良好な出力端子側のリターンロスが得られている。さらに、図10を参照すると100[MHz]ないし200[MHz]の全周波数帯域において24[dB]以上の良好な出力端子間のアイソレーションの周波数特性が得られている。このように、図6に示す第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1は、1オクターブを超える広帯域の良好な反射特性を得ることができる。
【0028】
図6に示す第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1は、前述した図36(b)に示すπ型のLPFタイプの単位位相回路120をベースにしているが、図11(a)に示すT型のLPFタイプの単位位相回路Sを用いても電気的に等価な特性が得られる。図11(a)に示す単位位相回路Sを構成する回路に直列に接続された2つのインダクタンスをLk、回路に並列に接続されたキャパシタンスをCk、使用中心周波数をFo、回路全体の特性インピーダンスをZt、所望する位相遅延量をθsとすると、キャパシタンスCkとインダクタンスLkは次式で求められる。
Ck=sinθs/(2πFo・Zt) (3)
Lk={Zt(1-cosθs)}/(2πFo・sinθs) (4)
【0029】
図1に示す第1実施例のウィルキンソン回路1の集中定数線路10をT型のLPFタイプの単位位相回路Sを用いた場合の集中定数線路10-1の回路構成を図11(b)に示す。図11(b)に示す集中定数線路10-1は、端子Pk1と端子Pk2との間に、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路10a-1と位相遅延回路10b-1とが2段縦続接続されて構成されている。位相遅延回路10a-1は、回路に直列に接続された2つのインダクタLk1,Lk2と回路に並列に接続されたキャパシタCk1とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S10a-1と、回路に直列に接続された2つのインダクタLk2,Lk3と回路に並列に接続されたキャパシタCk2とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S10b-1とが縦続接続されて構成されている。また、位相遅延線路10b-1は、回路に直列に接続された2つのインダクタLk4,Lk5と回路に並列に接続されたキャパシタCk3とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S11a-1と、回路に直列に接続された2つのインダクタLk5,Lk6と回路に並列に接続されたキャパシタCk4とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S11b-1とが縦続接続されて構成されている。
【0030】
図11(b)に示す集中定数線路10-1において、入力端子IN1に接続される端子Pk1には100[Ω]、出力端子OUT1に接続される端子Pk2には50[Ω]の接続インピーダンスが接続されているとし、位相遅延回路10a-1の特性インピーダンスZt10を約82.034[Ω]、位相遅延回路10b-1の特性インピーダンスZt11を約60.951[Ω]とすると共に、使用中心周波数Foを150[MHz]とする。この場合の電気定数を上記(3),(4)式から算出し、上記最適化手法により集中定数線路10-1の集中定数素子の電気定数を確定すると、キャパシタCk1~Ck2=9.1536[pF],キャパシタCk3~Ck4=12.250[pF],インダクタLk1=35.879[nH],インダクタLk2=71.758[nH],インダクタLk3=33.603[nH],インダクタLk4=25.109[nH],インダクタLk5=53.621[nH],インダクタLk6=26.810[nH]となる。この電気定数とした場合の端子Pk1から見たリターンロス特性は図5に示すリターンロス特性とほぼ同等になり、π型の単位位相回路とT型の単位位相回路とで同様の反射特性を得ることができる。そこで、以降の本発明の説明においては、π型のLPFタイプの単位位相回路を代表例として用いて説明する。
【0031】
さらに、図1に示す第1実施例のウィルキンソン回路1の集中定数線路10をn=3として構成した集中定数線路10-2の回路構成を図12に示す。図12に示す集中定数線路10-2では、端子Pm1と端子Pm2との間にそれぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路10a-2と位相遅延回路10b-2とが2段縦続接続されており、入力端子IN1に接続される端子Pm1には100[Ω]の接続インピーダンスが、出力端子OUT1に接続される端子Pm2には50[Ω]の接続インピーダンスが接続されている。位相遅延回路10a-2は、回路に直列に接続されたインダクタLm1と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm1,Cm2とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S10a-2と、回路に直列に接続されたインダクタLm2と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm2,Cm3とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S10b-2と、回路に直列に接続されたインダクタLm3と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm3,Cm4とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S10c-2とが縦続されて構成されている。また、位相遅延回路10b-2は、回路に直列に接続されたインダクタLm4と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm4,Cm5とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S11a-2と、回路に直列に接続されたインダクタLm5と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm5,Cm6とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S11b-2と、回路に直列に接続されたインダクタLm6と回路に並列に接続された2つのキャパシタCm6,Cm7とからなる30°の位相遅延量の単位位相回路S11c-2とが縦続されて構成されている。
このように、集中定数線路10-2では、位相遅延量が30°の単位位相回路S10a-2~S11c-2を3段縦続接続して位相遅延量が90°の位相遅延回路10a-2,10b-2が構成されている。
【0032】
位相遅延回路10a-2の特性インピーダンスZt10を約82.034[Ω]、位相遅延回路10b-2の特性インピーダンスZt11を約60.951[Ω]とすると共に、使用中心周波数Foを150[MHz]として集中定数線路10-2のインダクタLm1~Lm6とキャパシタCm1~Cm7の電気定数を上記(1)(2)式から算出する。次いで、上記最適化手法を用いて集中定数線路10-2の電気定数を修正すると、キャパシタCm1=3.4709[pF],キャパシタCm2=Cm3=6.9418[pF],キャパシタCm4=7.7930[pF],キャパシタCm5=Cm6=9.3150[pF],キャパシタCm7=4.6575[pF]となり、インダクタLm1~Lm3=43.455[nH],インダクタLm4~Lm6=32.384[nH]となる。
【0033】
この電気定数とされた集中定数線路10-2において、端子Pm1から見た100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域におけるリターンロス特性は図13に示すようになる。最小のリターンロスは約25.4[dB]の良好なリターンロスがFL=100[MHz]とFH=200[MHz]および約150.7[MHz]において得られ、約115.9[MHz」および約184.8[MHz]にリターンロス最大の極を持つチェビシェフ特性に近似した波状特性が得られている。端子Pm1から見た実用上有効なリターンロスを20[dB]以上とした際に、低域側の周波数FLは100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHは200[MHz]以上となって、少なくとも1オクターブの広帯域の反射特性を得ることができる。このように、n=3とした集中定数線路10-2では、n=2の集中定数線路10の図5に示す反射特性を集中定数素子数を増やすことにより改善することができる。
n=3とした集中定数線路10-2は、第1実施例のウィルキンソン回路1における集中定数線路10,11に適用することができ、適用することにより反射特性を改善することができる。n=4以上としても同様に反射特性をより改善できるようになる。
【0034】
ここで、本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1が分布定数型のウィルキンソン回路と同等の伝送特性を得られることを説明するために、第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1に対応する構成とされた分布定数型のウィルキンソン回路5の構成を図14に示す。
図14に示す分布定数型のウィルキンソン回路5は、入力端子IN51と第1出力端子OUT51との間に第1の分布定数線路50が接続され、入力端子IN51と第2出力端子OUT52との間に第2の分布定数線路51が接続されている。分布定数線路50は、位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wd1)50aと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wd2)50bとを縦続接続された2段で構成されており、分布定数線路51も、位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wd1)51aと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wd2)51bとを縦続接続された2段で構成されている。分布定数線路(Wd1)50aと分布定数線路(Wd1)51aとの出力側の間にアイソレーション抵抗Rd1が接続され、分布定数線路(Wd2)50bと分布定数線路(Wd2)51bとの出力側の間にアイソレーション抵抗Rd2が接続されている。このように、分布定数型のウィルキンソン回路5の構成は、図1に示す本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の構成に対応している。
【0035】
分布定数型のウィルキンソン回路5において、入力端子IN51と第1出力端子OUT51および第2出力端子52における入出力インピーダンスZoを50[Ω]とした場合、分布定数線路(Wd1)50a、51aの入力端子IN51側の接続インピーダンスは2Zo=100[Ω]となり、分布定数線路(Wd2)50b、51bの出力端子OUT51または出力端子OUT52側の接続インピーダンスはZo=50[Ω]となる。そうすると、第1実施例のウィルキンソン回路1と同様にQマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の分布定数線路(Wd1)50a、51aの特性インピーダンスZs50を約82.034[Ω]に、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の分布定数線路(Wd2)50b、51bの特性インピーダンスZs51を約60.951[Ω]とすることができる。アイソレーション抵抗Rd1を98[Ω]と、アイソレーション抵抗Rd2を240[Ω]とすることができる。
【0036】
このような電気定数とされた分布定数型のウィルキンソン回路5の使用中心周波数Foを150[MHz]とした際の伝送特性を図15ないし図18に示す。図15は入出力端子間の挿入損失の周波数特性であり、図16は入力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図17は出力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図18は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。図15を参照すると、100[MHz]ないし200[MHz]の全周波数帯域において2分配時の最小理論挿入損失約3.0102999[dB]をわずかに超える良好な挿入損失特性とされ、図16を参照すると、実用上有効な入力端子IN51側のリターンロスを20[dB]以上とすると、その周波数帯域はFoより低域側の周波数FLが100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHが200[MHz」以上となって、少なくとも100[MHz]の周波数帯域幅が得られる。この場合、約66.7%の比帯域が得られて1オクターブの広帯域の反射特性が得られている。また、図15ないし図18を参照すると、使用中心周波数Foに対して低域側と高域側が対称となった伝送特性となっている。このように分布定数型のウィルキンソン回路5は、チェビシェフ特性の反射特性が得られている。
【0037】
ここで、本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1の図7ないし図10に示す伝送特性を、対応する構成とされた分布定数型のウィルキンソン回路5の図15ないし図18に示す伝送特性と対比すると、入力端子側のリターンロス特性において本発明の第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1では、100[MHz]~200[MHz]の周波数帯域の最小リターンロスは分布定数型のウィルキンソン回路5に比べ約2[dB]の劣化は見られるものの、チェビシェフ特性に近似した広帯域の波状の伝送特性が得られている。すなわち、本発明においては集中定数化しても分布定数型のウィルキンソン回路とほぼ同等の伝送特性を示す集中定数型のウィルキンソン回路を得られることがわかる。
【0038】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の構成を図19に示す。図19に示す第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2は、入力端子IN20と第1出力端子OUT21との間に第1の集中定数線路20が接続され、入力端子IN20と第2出力端子OUT22との間に第2の集中定数線路21が接続されている。第1の集中定数線路20は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路20aと位相遅延回路20bと位相遅延回路20cとが3段縦続接続されて構成され、第2の集中定数線路21は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路21aと位相遅延回路21bと位相遅延回路21cとが3段縦続接続されて構成されている。位相遅延回路20a,21aは90°/nの位相とされたn(nは2以上の正の整数)段の単位位相回路S20a,S20b,・・・が縦続接続されて構成され、位相遅延回路20b,21bは90°/nの位相とされたn(nは2以上の正の整数)段の単位位相回路S21a,S21b,・・・が縦続接続されて構成され、位相遅延回路20c,21cは90°/nの位相とされたn(nは2以上の正の整数)段の単位位相回路S22a,S22b,・・・が縦続接続されて構成されている。また、位相遅延回路20aと位相遅延回路21aの出力側の間に第1のアイソレーション抵抗R21が接続され、位相遅延回路20bと位相遅延回路21bの出力側の間に第2のアイソレーション抵抗R22が接続され、位相遅延回路20cと位相遅延回路21cの出力側の間に第3のアイソレーション抵抗R23が接続されている。
【0039】
第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2において、n=2とした場合の詳細な回路構成を図20に示す。
図20に示す第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2において、集中定数線路20は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路20aと位相遅延回路20bと位相遅延回路20cとが3段縦続接続されて構成され、集中定数線路21は、それぞれ90°の位相遅延量の位相遅延回路21aと位相遅延回路21bと位相遅延回路21cとが3段縦続接続されて構成されている。位相遅延回路20a,21aは、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp1,Cp2と回路に直列に接続されたインダクタLp1とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S20aと、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp2,Cp3と回路に直列に接続されたインダクタLp2とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S20bとが縦続接続されて構成されている。また、位相遅延線路20b,21bは、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp3,Cp4と回路に直列に接続されたインダクタLp3とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S21aと、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp4,Cp5と回路に直列に接続されたインダクタLp4とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S21bとが縦続接続されて構成されている。さらに、位相遅延線路20c,21cは、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp5,Cp6と回路に直列に接続されたインダクタLp5とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S22aと、回路に並列に接続された2つのキャパシタCp6,Cp7と回路に直列に接続されたインダクタLp6とから構成される45°の位相遅延量の単位位相回路S21cとが縦続接続されて構成されている。また、位相遅延回路20aと位相遅延回路21aの出力側の間に第1のアイソレーション抵抗R21が接続され、位相遅延回路20bと位相遅延回路21bの出力側の間に第2のアイソレーション抵抗R22が接続され、位相遅延回路20cと位相遅延回路21cの出力側の間に第3のアイソレーション抵抗R23が接続されている。
【0040】
入力端子IN20と第1出力端子OUT21および第2出力端子22における入出力インピーダンスZoを50[Ω]とした場合、位相遅延回路20a,21aの入力端子IN20側の接続インピーダンスは2Zo=100[Ω]となり、位相遅延回路20c,21cの出力端子OUT21または出力端子OUT22側の接続インピーダンスはZo=50[Ω]となる。この場合、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の位相遅延回路20a,21aの特性インピーダンスZt21を約87.055[Ω]と、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の位相遅延回路20b,21bの特性インピーダンスZt22を約70.711[Ω]と、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の位相遅延回路20c,21cの特性インピーダンスZt23を約57.435[Ω]とすることができる。このように、100[Ω]から50[Ω]へインピーダンス整合を行う際に、3段の90°の位相遅延量の位相遅延回路を用いてQマッチング回路の整合を取るインピーダンスを段階的に下げていきながら整合を取るようにしている。この結果、後述するように第2実施例のウィルキンソン回路2でも広帯域の反射特性を得られるようになる。
【0041】
第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の使用中心周波数Foを200[MHz]とし、特性インピーダンスZt21が約87.055[Ω]の位相遅延回路20a,21aと、特性インピーダンスZt22が約70.711[Ω]の位相遅延回路20b,21bと、特性インピーダンスZt23が約57.435[Ω]の位相遅延回路20c,21cとからなる集中定数線路20,21のインダクタLp1~Lp6とキャパシタCp1~Cp7の電気定数を上記(1)(2)式から算出する。次いで、上記最適化手法を用いて第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の集中定数素子の電気定数を確定すると、キャパシタCp1=7.7276[pF],キャパシタCp2=7.6112[pF],キャパシタCp3=9.5582[pF],キャパシタCp4=7.9197[pF],キャパシタCp5=9.9122[pF],キャパシタCp6=11.631[pF],キャパシタCp7=6.3029[pF]となり、インダクタLp1=48.701[nH],インダクタLp2=47.235[nH],インダクタLp3=Lp4=39.794[nH],インダクタLp5=31.912[nH],インダクタLp6=32.562[nH]となる。また、アイソレーション抵抗R21は104[Ω]となり、アイソレーション抵抗R22は213[Ω]となり、アイソレーション抵抗R23は300[Ω]となる。
【0042】
この電気定数とされる第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の100[MHz]ないし300[MHz]の周波数帯域における伝送特性を図21ないし図24に示す。図21は入出力端子間の挿入損失の周波数特性であり、図22は入力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図23は出力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図24は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。図21を参照すると、100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において2分配時の最小理論挿入損失約3.0102999[dB]をわずかに超える良好な挿入損失特性とされ、図22を参照すると、実用上有効な入力端子IN1側のリターンロスを20[dB]以上とした際に、周波数帯域はFoより低域側の周波数FLは100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHは300[MHz]以上となって、FH/FLが3以上となる1オクターブを超える広帯域の入力端子側のリターンロス特性を得ることができる。さらに、入力側の最小のリターンロスは100[MHz],300[MHz],約161.4[MHz]および約250.2[MHz]において約23[dB]が得られており、約120.0[MHz]と約207.3[MHz]および約284.6[MHz]にリターンロス最大の極を持つチェビシェフ特性に近似した波状特性が得られている。また、図23を参照すると100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において約26[dB]以上の良好な出力端子側のリターンロスが得られている。さらに、図24を参照すると100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において約23[dB]以上の良好な出力端子間のアイソレーションの周波数特性が得られている。このように、位相遅延回路を3段縦続接続した集中定数線路を備える第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2は、位相遅延回路を2段縦続接続した集中定数線路を備える第1実施例の集中定数型のウィルキンソン回路1を超える広帯域の良好な反射特性を得ることができる。
【0043】
第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2において、位相遅延回路20a,20b,20cを3段縦続接続した集中定数線路20および位相遅延回路21a,21b,21cを3段縦続接続した集中定数線路21の各位相遅延回路をn=3として構成することができる。この場合、位相遅延回路20a,20b,20cおよび位相遅延回路21a,21b,21cの各位相遅延回路は、図12に示すように30°の位相遅延量の単位位相回路を3段縦続して構成される。このように、各位相遅延回路をn=3として構成すると反射特性をより改善できるようになる。n=4以上としても同様に反射特性をより改善できるようになる。
【0044】
ここで、本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2が分布定数型のウィルキンソン回路と同等の伝送特性を得られることを説明するために、第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2に対応する構成とされた分布定数型のウィルキンソン回路6の構成を図25に示す。
図25に示す分布定数型のウィルキンソン回路6は、入力端子IN60と第1出力端子OUT61との間に第1の分布定数線路60が接続され、入力端子IN60と第2出力端子OUT62との間に第2の分布定数線路61が接続されている。分布定数線路60は、位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn1)60aと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn2)60bと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn3)60cとが縦続接続された3段で構成されており、分布定数線路51も、位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn1)61aと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn2)61bと位相遅延量θoが90°の分布定数線路(Wn3)61cとが縦続接続された3段で構成されている。分布定数線路(Wn1)60aと分布定数線路(Wn1)61aとの出力側の間にアイソレーション抵抗Rn1が接続され、分布定数線路(Wn2)60bと分布定数線路(Wn2)61bとの出力側の間にアイソレーション抵抗Rn2が接続され、分布定数線路(Wn3)60cと分布定数線路(Wn3)61cとの出力側の間にアイソレーション抵抗Rn3が接続されている。このように、分布定数型のウィルキンソン回路6の構成は、図19に示す本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の構成に対応している。
【0045】
分布定数型のウィルキンソン回路6において、入力端子IN60と第1出力端子OUT61および第2出力端子62における入出力インピーダンスZoを50[Ω]とした場合、分布定数線路(Wn1)60a,61aの入力端子IN60側の接続インピーダンスは2Zo=100[Ω]となり、分布定数線路(Wn3)60c,61cの出力端子OUT61または出力端子OUT62側の接続インピーダンスはZo=50[Ω]となる。そうすると、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の分布定数線路(Wn1)60a,61aの特性インピーダンスZn1を約87.055[Ω]に、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の分布定数線路(Wn2)60b,61bの特性インピーダンスZn2を約70.711[Ω]に、Qマッチング回路として作用する90°の位相遅延量の分布定数線路(Wn3)60c,61cの特性インピーダンスZn3を約57.435[Ω]にすることができる。また、アイソレーション抵抗Rn1を約104[Ω]に、アイソレーション抵抗Rn2を203[Ω]に、アイソレーション抵抗Rn3を400[Ω]にすることができる。
【0046】
このような電気定数とした分布定数型のウィルキンソン回路6において使用中心周波数Foを200[MHz]とした100[MHz]ないし300[MHz]の周波数帯域における伝送特性を図26ないし図29に示す。図26は入出力端子間の挿入損失の周波数特性であり、図27は入力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図28は出力端子側のリターンロスの周波数特性であり、図29は出力端子間のアイソレーションの周波数特性である。図26を参照すると、100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において2分配時の最小理論挿入損失約3.0102999[dB]をわずかに超える良好な挿入損失特性とされ、図27を参照すると、実用上有効な入力端子IN1側のリターンロスを20[dB]以上とした際に、周波数帯域はFoより低域側の周波数FLは100[MHz]以下となり、高域側の周波数FHは300[MHz]以上となって、FH/FLが3以上となる1オクターブを超える広帯域の入力端子側のリターンロス特性を得ることができる。さらに、入力側の最小のリターンロスは100[MHz],300[MHz],約154.4[MHz]および約245.6[MHz]において約26[dB]が得られており、約116.6[MHz]と約200[MHz]および約283.4[MHz]にリターンロス最大の極を持つチェビシェフ特性が得られている。また、図28を参照すると100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において約37[dB]以上の良好な出力端子側のリターンロスが得られている。さらに、図29を参照すると100[MHz]ないし300[MHz]の全周波数帯域において約28[dB]以上の良好な出力端子間のアイソレーションの周波数特性が得られている。このように、分布定数線路を3段縦続接続した分布定数型のウィルキンソン回路6は、分布定数線路を2段縦続接続した分布定数型のウィルキンソン回路5を超える広帯域の良好な反射特性を得ることができる。
【0047】
ここで、本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2の図21ないし図24に示す伝送特性を、対応する構成とされた分布定数型のウィルキンソン回路6の図26ないし図29に示す伝送特性と対比すると、入力端子側のリターンロス特性において本発明の第2実施例の集中定数型のウィルキンソン回路2では、100[MHz]~300[MHz]の周波数帯域の最小リターンロスは分布定数型のウィルキンソン回路6に比べ約3[dB]の劣化は見られるものの、チェビシェフ特性に近似した広帯域の波状の伝送特性が得られている。すなわち、本発明においては集中定数化しても分布定数型のウィルキンソン回路とほぼ同等の伝送特性を示す集中定数型のウィルキンソン回路を得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明した本発明にかかる実施例の集中定数型のウィルキンソン回路は、以下の通り構成されている。
(1)2つ以上の90°の位相遅延量の集中定数素子からなる位相遅延回路を縦続接続して集中定数線路を構成し、位相遅延回路それぞれの特性インピーダンスを求めている。
(2)集中定数素子からなる位相遅延回路のそれぞれを、90°の位相をn(nは2以上の正の整数)分割した位相とされた集中定数素子からなるLPFタイプの単位位相回路をn段縦続接続して構成し、全体の位相遅延量が使用中心周波数において90°となると共にインピーダンスを求められた特性インピーダンスとなるようにする。
(3)各々の単位位相回路における集中定数素子の電気定数を微調整し、入力側から見たリターンロスの周波数特性が広帯域になると共に、使用周波数帯域における実用上有効な入力端子側のリターンロスが得られる使用中心周波数Foから低域周波数端FLまでの帯域幅と使用中心周波数Foから高域周波数端FHまでの帯域幅とがほぼ同一となるようにする。この場合、使用中心周波数Foを計算上僅かに高域側にシフトさせて、低域側と高域側のリターンロスが同一になるように電気定数を調整するのが有効となる。
(4)出力端子間アイソレーションの周波数特性および/または出力側のリターンロスの周波数特性が最良となるようアイソレーション抵抗の値を微調整し、集中定数型のウィルキンソン回路の集中定数素子の電気定数を確定する。
以上説明した本発明にかかる実施例の集中定数型のウィルキンソン回路では、90°の位相遅延量の集中定数素子からなる位相遅延回路を2段あるいは3段縦続接続して集中定数線路を構成したが、90°の位相遅延量の位相遅延回路を4段以上縦続接続して集中定数線路を構成してもよい。また、単位位相回路をn段縦続接続して位相遅延回路を構成する際に、n=2あるいはn=3としたがnを4以上として単位位相回路を4段以上縦続接続して位相遅延回路を構成しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1,2,5,6 ウィルキンソン回路、10 集中定数線路、10a,10b 位相遅延回路、11 集中定数線路、11a,11b 位相遅延回路、20 集中定数線路、20a,20b,20c 位相遅延回路、21 集中定数線路、21a,21b,21c 位相遅延回路、50,51 分布定数線路、50a,50b,51a,51b 分布定数線路、60,61 分布定数線路、60a,60b,60c,61a,61b,61c 分布定数線路、100 ウィルキンソン回路、110 等価回路、120 単位位相回路、130 集中定数線路、130a,130b 位相遅延回路、200 ウィルキンソン回路、210,211 集中定数線路、R10,R11,R12,R21,R22,R23,Rd1,Rd2,Rf,Rh1,Rh2,Rn3 アイソレーション抵抗、S10a,S10b,S10c,S11a,S11b,S11c,S21a,S21b,S21c,S22a,S22b 単位位相回路、W1,W2 分布定数線路
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