(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】放電検出装置及び分電盤
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20230424BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20230424BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R31/12 A
H02B1/42
(21)【出願番号】P 2019130029
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-045652(JP,A)
【文献】特開2016-200574(JP,A)
【文献】特表2009-545293(JP,A)
【文献】特開2015-161666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0200966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/12-31/20、
31/50-31/74、
29/00-29/26、
H02B 1/40-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線路における放電現象を検出する放電検出装置であって、
配線路に重畳する周波数のデータを取り出すセンサ部と、
取り出した
前記データから放電現象の発生の有無を判定する判定部と、
放電現象の発生を判定した場合に、
前記放電現象が発生したと判定された配線路に電力を供給する配電機器に対して遮断信号を出力する出力部と、
放電現象が発生したと判定した場合に、即座に遮断信号を出力する即時遮断モードと、即座に遮断信号を出力しない即時遮断禁止モードと、を切り替えるスイッチ部と、
を備えた放電検出装置。
【請求項2】
前記スイッチ部が
前記即時遮断禁止モードに設定されている場合、
計測された放電現象の発生回数が閾値を超えると、複数回放電現象が発生したと判定された配電機器に対して、
前記出力部が遮断信号を出力する請求項1に記載の放電検出装置。
【請求項3】
前記スイッチ部が
前記即時遮断禁止モードに設定されている場合、
計測された放電現象の継続時間が閾値を超えると、放電現象の径継続時間が閾値を超えたと判定された配電機器に対して、
前記出力部が遮断信号を出力する請求項1又は2に記載の放電検出装置。
【請求項4】
請求項1~3に記載される放電検出装置を備えた分電盤であって、
複数の分岐ブレーカを備え、
前記センサ部は、
前記分岐ブレーカの二次側の配線路に配置され、
前記出力部は、
前記分岐ブレーカに対して遮断信号を出力可能であり、
前記スイッチ部は、
前記分岐ブレーカごとに
前記即時遮断モードと
前記即時遮断禁止モードを切り替えることができる分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷機器に接続される配線路に生じる放電現象を検出するための放電検出装置及び当該放電検出装置を備えた分電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分電盤の分岐回路において、異常電流が流れた場合、ブレーカを確実にトリップさせることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
異常電流が流れた場合に、ブレーカをトリップさせることは火災等の事故を防止するために必要ではあるが、電力供給を停止することなく継続することが必要な負荷である重要負荷に対しては、即座にトリップすることは好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、分電盤の分岐回路において、放電現象が発生した場合、即座にトリップさせるが否かを選択することができるスイッチ部を備えた放電検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、配線路における放電現象を検出する放電検出装置であって、配線路に重畳する周波数のデータを取り出すセンサ部と、取り出したデータから放電現象の発生の有無を判定する判定部と、放電現象の発生を判定した場合に、放電現象が発生したと判定された配線路に電力を供給する配電機器に対して遮断信号を出力する出力部と、放電現象が発生したと判定した場合に、即座に遮断信号を出力する即時遮断モードと、即座に遮断信号を出力しない即時遮断禁止モードと、を切り替えるスイッチ部と、を備えた放電検出装置とする。
【0007】
また、スイッチ部が即時遮断禁止モードに設定されている場合、計測された放電現象の発生回数が閾値を超えると、複数回放電現象が発生したと判定された配電機器に対して、出力部が遮断信号を出力する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、スイッチ部が即時遮断禁止モードに設定されている場合、計測された放電現象の継続時間が閾値を超えると、放電現象の径継続時間が閾値を超えたと判定された配電機器に対して、出力部が遮断信号を出力する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、上記放電検出装置を備えた分電盤であって、複数の分岐ブレーカを備え、センサ部は、分岐ブレーカの二次側の配線路に配置され、出力部は、分岐ブレーカに対して遮断信号を出力可能であり、スイッチ部は、分岐ブレーカごとに即時遮断モードと即時遮断禁止モードを切り替えることができる分電盤とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、分電盤の分岐回路において、放電現象が発生した場合、即座にトリップさせるが否かを選択することができるスイッチ部を備えた放電検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】分電盤内に放電検出装置を設置した例を示す概念図である。
【
図2】放電検出装置と配電機器との関係を示す概念図である。
【
図3】放電検出装置のユニットに集中管理可能なスイッチ部を備えた例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の放電検出装置1は、配線路81における放電現象を検出するものである。
図1から
図3に示されていることから理解されるように、この放電検出装置1は、配線路81に重畳する周波数のデータを取り出すセンサ部12と、取り出したデータから放電現象の発生の有無を判定する判定部13と、放電現象の発生を判定した場合に、放電現象が発生したと判定された配線路81に電力を供給する配電機器60に対して遮断信号を出力する出力部15と、放電現象が発生したと判定した場合に、即座に遮断信号を出力する即時遮断モードと、即座に遮断信号を出力しない即時遮断禁止モードと、を切り替えるスイッチ部18と、を備えている。このため、分電盤の分岐回路において、放電現象が発生した場合、即座にトリップさせるが否かを選択することができるスイッチ部18を備えた放電検出装置1を提供することが可能となる。
【0013】
なお、配線路81に発生する放電現象とは、コンセントプラグの極間などで発生するトラッキングや、コンセントプラグの接触不良、配線路81の断線、地絡事故などによって生じる火花放電やアーク放電をいう。配線路81とは、ブレーカと負荷機器やコンセントの間の電線、コンセントプラグと負荷機器の間の電線、コンセント・コンセントプラグ等の線路などであり、放電現象の生じるおそれのある箇所である。なお、通常、配線路81で放電現象が発生すると、配線路81の電圧または電流に高周波数帯域のノイズが重畳する。
【0014】
このような放電現象が生じた場合であっても、配線路81に重畳する周波数のデータを取り出すセンサ部12と、取り出したデータから放電現象の発生の有無を判定する判定部13と、放電現象の発生を判定した場合に、放電現象が発生した配線路81に電力を供給する配電機器60に対して遮断信号を出力可能な出力部15を機能させて配電機器60を遮断すれば、火災等の災害を防止することができる。
【0015】
ただし、商用電源の停電時や災害などの際に、電力供給を停止することなく継続することが必要な負荷や設備等の重要負荷へ電力を供給する配電機器60に関しては、放電現象の発生によって即座に遮断することは好ましくない。そこで、本発明では、このような重要負荷の扱いと、重要負荷以外の一般負荷の扱いを区別することができるようにしている。なお、重要負荷の典型例は、医療設備における手術室、生命維持装置、情報処理設備におけるコンピュータ、エレベータ設備、消火設備等が挙げられる。
【0016】
このようなことを可能とするため、本発明では、放電現象の発生によって、即座に配電機器60に遮断信号を出力する即時遮断モードと、即座には配電機器60に遮断信号を出力しない即時遮断禁止モードを切り替えることができるスイッチ部18を備えるものとしている。そうすることによって、一般負荷に接続される配電機器60は即時遮断モード、重要負荷に接続される配電機器60は即時遮断禁止モードにするなど、接続される負荷によって、モードを切り替えることができる。
【0017】
ここで、放電現象が発生した後の放電検出装置1の動きを説明する。通常、配線路81に発生した放電現象によって、配線路81にノイズが重畳する。そのノイズの周波数のデータをセンサ部12で取り出し、判定部13において、放電現象が発生したか否かを判定する。なお、実施形態では、ターゲット周波数帯域の周波数のデータが閾値を超えた場合に放電現象が発生したと判定する。
【0018】
ここでいう、ターゲット周波数とは、放電現象によって発生するノイズを検出するために、ターゲットとする周波数のことである。このターゲット周波数は、高周波数帯域である。実施形態では、配線路81での放電現象によって生じた高周波数帯域のノイズが配線路81内を伝達し、センサ部12で当該ノイズの周波数のデータを取り出す。高周波数帯域とは、放射ノイズの周波数帯域であることが好ましい。
【0019】
なお、放電検出装置1にターゲット周波数帯域のノイズを減衰させるフィルタ部を設けることで、センサ部12側の配線路81で発生した放電現象により生じるターゲット周波数帯域のノイズのみを取り出すことができるため、放電現象の発生箇所を特定することができる。そこで、別途、このようなフィルタ部を設けたり、このようなフィルタ部とセンサ部12を一体で設けたりすることが好ましい。なお、取り出したノイズを増幅部14で増幅させた後、判定部13に送られるようにしてもよい。
【0020】
判定部13において、放電現象が発生したと判定した場合には、放電現象が発生したと判定された配線路81に電力を供給する配電機器60に対して出力部15が遮断信号を出力し、配電機器60を遮断する。このようにすることによって、配線路81への電力供給を遮断し、火災等の災害を防止する。なお、配線路81への電力供給を遮断することができれば、如何なる配電機器60に対して遮断信号を出力してもよい。なお、判定部13において、放電現象が発生したと判定した場合には、表示部17が、通常の状態と異なる表示をするようにしても良い。
【0021】
放電現象が発生したと判定された配線路81に電力を供給する配電機器60とは、放電現象が発生した配線路81が接続される配電機器60のうち、商用電源側に位置する配電機器60をいう。配電機器60は、配線路81およびそれに接続される負荷機器へ電力を供給するものであればよく、出力部15からの遮断信号によって、回路を遮断するブレーカや遮断器などであることが好ましい。
【0022】
ところで、放電検出装置1に備えられたスイッチ部18で、即座には配電機器60に遮断信号を出力しない即時遮断禁止モードが選択された場合には、基本的に放電現象が発生しても即座に配電機器60を遮断しない。しかしながら、放電現象が連続して発生する場合や、放電現象の発生時間が長い場合には、火災の危険性が高まることから、配電機器60を遮断する必要がある。
【0023】
そこで、放電現象が連続して発生する場合に対応できるように、実施形態の判定部13は、配線路81で発生する放電現象の回数を計測し、発生回数が閾値を超えた場合に、火災等が発生する可能性が上昇したと判定し、配電機器60へ遮断信号を出力する。実施形態では、判定部13が、ターゲット周波数帯域のノイズレベルが閾値を超えた回数を計測し、発生回数が一定数を超えたと判定した場合に、出力部15が配電機器60へ遮断信号を出力する。このように、スイッチ部18が即時遮断禁止モードに設定されている場合、計測された放電現象の発生回数が閾値を超えると、複数回放電現象が発生したと判定された配電機器60に対して、出力部15が遮断信号を出力するように構成することが好ましい。
【0024】
特に、同一箇所における放電現象の発生回数が多いほど、火災等が発生する危険度が増加する。このため、判定部13は、放電現象の発生箇所についても記憶しておき、同一箇所における放電現象の発生回数に閾値を設定することが好ましい。
【0025】
また、放電現象の発生時間が長い場合に対応できるように、実施形態の判定部13は、配線路81で発生した放電現象の継続時間を計測し、継続時間が閾値を超えた場合に火災等が発生する可能性が上昇したと判定し、配電機器60へ遮断信号を出力する。実施形態では、判定部13が、ターゲット周波数帯域のノイズレベルが閾値を超えてから、閾値を下回るまでの時間を計測し、継続時間が閾値を超えたと判定した場合に、出力部15が配電機器60へ遮断信号を出力する。なお、放電現象は、放電が生じている時間が長いほど火災等が発生する危険度が増加する。このように、スイッチ部18が即時遮断禁止モードに設定されている場合、計測された放電現象の継続時間が閾値を超えると、放電現象の径継続時間が閾値を超えたと判定された配電機器60に対して、出力部15が遮断信号を出力する構成とすることが好ましい。
【0026】
ところで、放電検出装置1のセンサ部12を配電機器60の二次側に配置することで、配電機器60に接続される負荷機器やその間の配線路81で発生する放電現象を検出することができる。そこで、分電盤内に収納された複数の分岐ブレーカ62の二次側に、センサ部12を配置し、それぞれの分岐ブレーカ62に接続される負荷機器やその間の配線路81で発生する放電現象を検出する構成とし、更に、放電検出装置1に設けられたスイッチ部18を切り替えることで、分岐ブレーカ62毎にモードを切り替えることができるようにすることが好ましい。例えば、重要負荷の接続された分岐ブレーカ62は即時遮断禁止モード、一般負荷の接続された分岐ブレーカ62は即時遮断モードのように、分岐ブレーカ62の二次側に接続される負荷の種類毎にモードを切り替えることができるようにすることが好ましい。
【0027】
このとき、センサ部12、判定部13、出力部15、スイッチ部18を備えた放電検出装置1を分岐ブレーカ62毎に配置してもよいが、センサ部12を分岐ブレーカ62毎に配置し、少なくとも判定部13、出力部15、スイッチ部18は複数の分岐ブレーカ62で共通のものとしても良い。後者の場合、一括管理できるため好ましい。
【0028】
図3は、判定部13、出力部15、スイッチ部18などを共通としたユニット19を分電盤内に配置した例を示している。この場合、分岐ブレーカ62毎に配置されたセンサ部12とユニット19を信号線で接続し、複数の配線路81でセンサ部12によって取り出されたデータをユニット19に集約し、ユニット19内の判定部13で放電現象の発生を判定する。
【0029】
そして、放電現象が発生した配線路81に電力を供給する配電機器60に対して、個別に遮断信号を出力し、該配電機器60を遮断する。
図3に示す例では、スイッチ部18に、各々の配電機器60へのモードを選択する個別スイッチ21と、複数の配電機器60へのモードをまとめて選択する包括スイッチ22を備えた構成としている。なお、実施形態では、包括スイッチ22が切られている場合に個別スイッチ21の選択が機能するようにしている。
【0030】
図3に示す例のように、分電盤における複数の分岐ブレーカ62の放電現象の発生の有無のデータをユニット19に集約することができる場合は、ユニット19に通信部16を設け、該データを外部機器へ通信することで一括管理できるようにすることが好ましい。
【0031】
このような放電検出装置1を用いて、複数の分岐ブレーカ62を備え、センサ部12は、分岐ブレーカ62の二次側の配線路81に配置され、出力部15は、分岐ブレーカ62に対して遮断信号を出力可能であり、スイッチ部18は、分岐ブレーカ62ごとに即時遮断モードと即時遮断禁止モードを切り替えることができる分電盤とすることが好ましい。
【0032】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、放電検出装置のユニットを分電盤の外に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 放電検出装置
12 センサ部
13 判定部
15 出力部
18 スイッチ部
60 配電機器
62 分岐ブレーカ
81 配線路