(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20230424BHJP
H02J 50/50 20160101ALI20230424BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230424BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/50
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2018076867
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅城
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-353050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090974(US,A1)
【文献】特開2013-080785(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157029(WO,A1)
【文献】特開2019-170017(JP,A)
【文献】特開2016-093084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/50
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状コアに巻線が巻回される非接触電力伝送コイルを、送電側及び受電側にともに備える非接触電力伝送装置であって、
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの延伸軸は、互いに並行するとともに、当該延伸軸と垂直方向における互いの距離を可変とし、
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルが対向する空間内に、非磁性導体をさらに備え、
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の距離がより近づいた状態においては、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の距離がより離れた状態と比べて、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の鎖交磁束の一部は、前記非磁性導体での渦電流発生により打ち消され、
非接触電力伝送が可能な範囲内において、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の鎖交磁束と、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルのインダクタンスとは、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の距離に依存せず、
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の距離が最も近づいた状態においても、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの間の距離がより離れた状態と同様に、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの送電周波数での共振条件を満たす
ことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの延伸軸と平行方向における、前記非磁性導体のサイズは、前記送電側及び前記受電側の巻線の巻回長以上であり、前記送電側及び前記受電側の棒状コアの延伸長以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルは、前記非磁性導体を前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの棒状コアの近傍に配置され、
前記非磁性導体は、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの棒状コア
に接触するように配置され、又は、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの棒状コア
に接触するように配置された基板にパターン形成され、
前記送電側及び前記受電側の巻線は、前記非磁性導体を配置された前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルの棒状コアに巻回され、前記非磁性導体と絶縁される
ことを特徴とする、請求項2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記送電側を除く前記受電側のみの非接触電力伝送コイルは、前記非磁性導体を前記送電側を除く前記受電側のみの非接触電力伝送コイルの棒状コアの近傍に配置され、
前記非磁性導体は、前記送電側を除く前記受電側のみの非接触電力伝送コイルの棒状コア
に接触するように配置され、又は、前記送電側を除く前記受電側のみの非接触電力伝送コイルの棒状コア
に接触するように配置された基板にパターン形成され、
前記送電側を除く前記受電側のみの巻線は、前記非磁性導体を配置された前記送電側を除く前記受電側のみの非接触電力伝送コイルの棒状コアに巻回され、前記非磁性導体と絶縁される
ことを特徴とする、請求項2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記非磁性導体は、前記送電側及び前記受電側の非接触電力伝送コイルが対向する空間内に、かつ、前記送電側及び/又は前記受電側の非接触電力伝送コイルのコアを固定している筐体に設置される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の非接触電力伝送装置と、送電インバータと、を備え、
前記送電インバータから見た入力インピーダンスは、誘導性であり、
前記送電側の非接触電力伝送コイルと前記受電側の非接触電力伝送コイルとの間の非接触電力伝送は、SS(Series-Series)方式で行われる
ことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術が、扉取付部から扉電気錠又は扉照明器具へと非接触電力伝送する目的等に適用されている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイル間距離がある程度離れた状態において、送電周波数での共振条件を満たし電力伝送効率を上げるように、送受電側のコイルのインダクタンス及びコンデンサのキャパシタンスを設計する。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態になると、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、一方側のコアから他方側のコイルへの鎖交磁束が大きくなり、送受電側のコイルのインダクタンスが大きくなる。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態では、コイル間距離がある程度離れた状態と異なり、送電周波数での共振条件を満たさず電力伝送効率を上げられない。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術について、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での共振条件を満たし電力伝送効率を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、コイル同士が対向する空間内に、非磁性導体を配置することとした。すると、一方側のコアから他方側のコイルへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体での渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、一方側のコアから他方側のコイルへの鎖交磁束はほとんど変化せず、他方側のコイルのインダクタンスもほとんど変化しない。
【0007】
具体的には、本開示は、巻線及びコアを備える非接触電力伝送コイルであって、他方側の非接触電力伝送コイルと対向する空間内に非磁性導体をさらに備えることを特徴とする非接触電力伝送コイルである。
【0008】
この構成によれば、コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術について、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0009】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送コイルを、送電側及び受電側にともに備え、前記非磁性導体は、前記コアの近傍に配置されることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0010】
この構成によれば、送電側/受電側のコアから受電側/送電側のコイルへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体での渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電側/受電側のコアから受電側/送電側のコイルへの鎖交磁束はほとんど変化せず、受電側/送電側のコイルのインダクタンスもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での送電側及び受電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0011】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送コイルを、送電側に備えず、受電側に備え、前記非磁性導体は、前記コアの近傍に配置されることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0012】
この構成によれば、受電側のコアから送電側のコイルへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体での渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、受電側のコアから送電側のコイルへの鎖交磁束はほとんど変化せず、送電側のコイルのインダクタンスもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での送電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。なお、受電側のコイルのインダクタンスが少々変化しても、受電側の負荷の存在により受電側の共振Q値は小さいため、送電周波数での受電側の共振条件がほぼ満たされる。また、送電側に非磁性導体を配置しないため、送電側での渦電流損失が小さくなる。
【0013】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送コイルを、送電側及び/又は受電側に備え、前記非磁性導体は、前記コアを固定している筐体に設置されることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0014】
この構成によれば、送電側/受電側のコアから受電側/送電側のコイルへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体での渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電側/受電側のコアから受電側/送電側のコイルへの鎖交磁束はほとんど変化せず、受電側/送電側のコイルのインダクタンスもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での送電側及び受電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。また、送受電側の対向空間内に非磁性導体を配置するため、送電側及び受電側での渦電流損失が小さくなる。
【0015】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送コイルに対して他方側の非接触電力伝送コイルのインダクタンスは、非接触電力伝送が可能な範囲内のコイル間距離に依存しないことを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0016】
この構成によれば、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での送電側及び/又は受電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0017】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送装置と、送電インバータと、を備え、前記送電インバータから見た入力インピーダンスは、誘導性であり、送電側と受電側との間の非接触電力伝送は、SS(Series‐Series)方式で行われることを特徴とする非接触電力伝送システムである。
【0018】
この構成によれば、コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術について、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0019】
ところで、
図8から
図10に示すように、送電インバータから見た入力インピーダンスは、若干誘導性であることが望ましい。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においては、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータから見た入力インピーダンスの誘導性が大きくなり過ぎるときには、送電インバータの安定動作をできないとともに、送電インバータの出力電圧を高くする必要がある。しかし、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータから見た入力インピーダンスの誘導性がほとんど変化しないときには、送電インバータの安定動作をできるとともに、送電インバータの出力電圧を高くする必要がない。
【発明の効果】
【0020】
このように、本開示は、コイル間距離が可変である非接触電力伝送技術について、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数での共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図3】本開示の第2の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図4】本開示の第3の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図5】本開示の第1の非接触電力伝送コイルの構成を示す図である。
【
図6】本開示の第2の非接触電力伝送コイルの構成を示す図である。
【
図7】本開示の第3の非接触電力伝送コイルの構成を示す図である。
【
図8】本開示の送電インバータの構成を示す図である。
【
図9】比較例の送電インバータの貫通電流及び損失を示す図である。
【
図10】本開示の送電インバータの貫通電流及び損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0023】
従来の非接触電力伝送システムの構成を
図1に示す。従来の非接触電力伝送システムSは、送電側において非接触電力伝送コイル1T、送電インバータ2及びコンデンサ3から構成され、受電側において非接触電力伝送コイル1R、コンデンサ4及び負荷5から構成される。非接触電力伝送コイル1Tは、巻線11T及びコア12Tから構成される。非接触電力伝送コイル1Rは、巻線11R及びコア12Rから構成される。
【0024】
非接触電力伝送コイル1T(インダクタンスLT)とコンデンサ3(キャパシタンスCT)とは、直列に接続される。非接触電力伝送コイル1R(インダクタンスLR)とコンデンサ4(キャパシタンスCR)とは、直列に接続される。このような接続方式をSS(Series‐Series)方式という。SS方式を採用することにより、送電周波数fでの送電側及び受電側の共振条件を満たすときに電力伝送効率が高くなる。
【0025】
コア12T、12Rは、それぞれ棒状コアである。非接触電力伝送コイル1T、1Rの延伸軸は、互いに並行するとともに、互いの距離を可変とする。例えば、非接触電力伝送コイル1Tは、直線上をスライドする扉の取付部に配置される。そして、非接触電力伝送コイル1Rは、直線上をスライドする扉の電気錠又は照明器具に給電する。
【0026】
コイル間距離がある程度離れた状態において、送電周波数fでの共振条件を満たし電力伝送効率を上げるように、非接触電力伝送コイル1T、1RのインダクタンスLT、LR及びコンデンサ3、4のキャパシタンスCT、CRを設計する。
【0027】
コイル間距離がほぼ0に近づいた状態になると、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束が大きくなり、非接触電力伝送コイル1R/1TのインダクタンスLR/LTが大きくなる。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態では、コイル間距離がある程度離れた状態と異なり、送電周波数fでの送電側及び受電側の共振条件を満たさず電力伝送効率を上げられない。
【0028】
図8から
図10に示すように、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、若干誘導性であることが望ましい。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においては、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INの誘導性が大きくなり過ぎるときには、送電インバータ2の安定動作をできないとともに、送電インバータ2の出力電圧を高くする必要がある。
【0029】
本開示の第1の非接触電力伝送システムの構成を
図2に示す。本開示の第1の非接触電力伝送システムSにおいて、従来の非接触電力伝送システムSに加えて、非接触電力伝送コイル1Tは、Cu、Al、Ag及びAu等の非磁性導体13Tを備え、非接触電力伝送コイル1Rは、Cu、Al、Ag及びAu等の非磁性導体13Rを備える。
【0030】
非磁性導体13Tは、非接触電力伝送コイル1Rと対向する空間内に、かつ、コア12Tの近傍に配置される。非磁性導体13Rは、非接触電力伝送コイル1Tと対向する空間内に、かつ、コア12Rの近傍に配置される。
【0031】
コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体13T/13Rでの渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束はほとんど変化せず、非接触電力伝送コイル1R/1TのインダクタンスLR/LTもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数fでの送電側及び受電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0032】
図8から
図10に示すように、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、若干誘導性であることが望ましい。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INの誘導性がほとんど変化しないときには、送電インバータ2の安定動作をできるとともに、送電インバータ2の出力電圧を高くする必要がない。
【0033】
なお、非磁性導体13T/13Rのサイズは、以下の基準で設計されることが望ましい:(1)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の一部が、渦電流発生により打ち消されること、(2)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の全部が、渦電流発生により打ち消されるわけではないこと。
【0034】
例えば、非接触電力伝送コイル1T/1Rの延伸軸と平行方向における非磁性導体13T/13Rのサイズは、巻線11T/11Rの巻回長以上であり、コア12T/12Rの延伸長以下であることが望ましい。そして、非接触電力伝送コイル1T/1Rの延伸軸と垂直方向における非磁性導体13T/13Rのサイズは、巻線11T/11Rの巻回径以下であり、コア12T/12Rの径以下であることが望ましい。
【0035】
本開示の第2の非接触電力伝送システムの構成を
図3に示す。本開示の第2の非接触電力伝送システムSにおいて、従来の非接触電力伝送システムSに加えて、非接触電力伝送コイル1Rは、Cu、Al、Ag及びAu等の非磁性導体13Rを備えるが、非接触電力伝送コイル1Tは、Cu、Al、Ag及びAu等の非磁性導体13Tを備えない。
【0036】
非磁性導体13Rは、非接触電力伝送コイル1Tと対向する空間内に、かつ、コア12Rの近傍に配置される。非磁性導体13Tは、上記のように配置されない。
【0037】
コア12Rから非接触電力伝送コイル1Tへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体13Rでの渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、コア12Rから非接触電力伝送コイル1Tへの鎖交磁束はほとんど変化せず、非接触電力伝送コイル1TのインダクタンスLTもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数fでの送電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0038】
なお、非接触電力伝送コイル1RのインダクタンスLRが少々変化しても、負荷5(抵抗値R)の存在により受電側の共振Q値は小さいため、送電周波数fでの受電側の共振条件がほぼ満たされる。また、送電側に非磁性導体13Tを配置しないため、送電側での渦電流損失が小さくなり、電力伝送効率を上げることができる。
【0039】
図8から
図10に示すように、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、若干誘導性であることが望ましい。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INの誘導性がほとんど変化しないときには、送電インバータ2の安定動作をできるとともに、送電インバータ2の出力電圧を高くする必要がない。
【0040】
なお、非磁性導体13Rのサイズは、以下の基準で設計されることが望ましい:(1)コア12Rから非接触電力伝送コイル1Tへの鎖交磁束の一部が、渦電流発生により打ち消されること、(2)コア12Rから非接触電力伝送コイル1Tへの鎖交磁束の全部が、渦電流発生により打ち消されるわけではないこと。
【0041】
例えば、非接触電力伝送コイル1Rの延伸軸と平行方向における非磁性導体13Rのサイズは、巻線11Rの巻回長以上であり、コア12Rの延伸長以下であることが望ましい。そして、非接触電力伝送コイル1Rの延伸軸と垂直方向における非磁性導体13Rのサイズは、巻線11Rの巻回径以下であり、コア12Rの径以下であることが望ましい。
【0042】
本開示の第3の非接触電力伝送システムの構成を
図4に示す。本開示の第3の非接触電力伝送システムSにおいて、従来の非接触電力伝送システムSに加えて、非接触電力伝送コイル1T及び/又は1Rは、Cu、Al、Ag及びAu等の非磁性導体13を備える。
【0043】
非磁性導体13は、非接触電力伝送コイル1T、1Rが対向する空間内に、かつ、コア12T及び/又は12Rを固定している筐体に設置される。
【0044】
コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の一部が、非磁性導体13での渦電流発生により打ち消される。よって、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束はほとんど変化せず、非接触電力伝送コイル1R/1TのインダクタンスLR/LTもほとんど変化しない。そして、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と同様に、送電周波数fでの送電側及び受電側の共振条件を満たし電力伝送効率を上げることができる。
【0045】
また、送受電側の対向空間内に非磁性導体13を配置するため、送電側及び受電側での渦電流損失が小さくなり、電力伝送効率を上げることができる。
【0046】
図8から
図10に示すように、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、若干誘導性であることが望ましい。ここで、コイル間距離がほぼ0に近づいた状態においても、コイル間距離がある程度離れた状態と比べて、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INの誘導性がほとんど変化しないときには、送電インバータ2の安定動作をできるとともに、送電インバータ2の出力電圧を高くする必要がない。
【0047】
なお、非磁性導体13のサイズは、以下の基準で設計されることが望ましい:(1)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の一部が、渦電流発生により打ち消されること、(2)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の全部が、渦電流発生により打ち消されるわけではないこと。
【0048】
例えば、非接触電力伝送コイル1T、1Rの延伸軸と平行方向における非磁性導体13のサイズは、巻線11T、11Rの巻回長以上であり、コア12T、12Rの延伸長以下であることが望ましい。そして、非接触電力伝送コイル1T、1Rの延伸軸と垂直方向における非磁性導体13のサイズは、巻線11T、11Rの巻回径以下であり、コア12T、12Rの径以下であることが望ましい。
【0049】
本開示の第1の非接触電力伝送コイルの構成を
図5に示す。本開示の第1の非接触電力伝送コイル1は、巻線11、コア12、非磁性導体13及び筐体14から構成される。
図5の左欄に平面図を示し、
図5の右欄に正面A-A断面図を示す。
【0050】
巻線11は、コア12に巻回される。非磁性導体13は、巻線11を巻回されたコア12の直上に配置され、巻線11と絶縁される。筐体14は、アルミニウム等の筐体であり、巻線11、コア12及び非磁性導体13を埋め込む窪みを有する。なお、巻線11の入力及び出力の配線(
図5に不図示。)は、筐体14の内部で引き回される。
【0051】
非接触電力伝送コイル1の延伸軸と平行方向における非磁性導体13のサイズは、コア12の延伸長程度である。非接触電力伝送コイル1の延伸軸と垂直方向における非磁性導体13のサイズは、巻線11の巻回径以下であり、コア12の径以下である。
【0052】
本開示の第1の非接触電力伝送コイル1は、
図2に示した非接触電力伝送コイル1T、1R又は
図3に示した非接触電力伝送コイル1Rに代えて適用することができる。
【0053】
本開示の第2の非接触電力伝送コイルの構成を
図6に示す。本開示の第2の非接触電力伝送コイル1は、巻線11、コア12、非磁性導体13及び筐体14から構成される。
図6の左欄に平面図を示し、
図6の右欄に正面B-B断面図を示す。
【0054】
非磁性導体13は、コア12の直上に配置され、又は、コア12の直上に配置された樹脂等の基板(
図6に不図示。)にパターン形成される。巻線11は、非磁性導体13を配置されたコア12に巻回され、非磁性導体13と絶縁される。筐体14は、アルミニウム等の筐体であり、巻線11、コア12及び非磁性導体13を埋め込む窪みを有する。なお、巻線11の入力及び出力の配線(
図6に不図示。)は、筐体14の内部で引き回される。
【0055】
非接触電力伝送コイル1の延伸軸と平行方向における非磁性導体13のサイズは、コア12の延伸長程度である。非接触電力伝送コイル1の延伸軸と垂直方向における非磁性導体13のサイズは、巻線11の巻回径以下であり、コア12の径以下である。
【0056】
本開示の第2の非接触電力伝送コイル1は、
図2に示した非接触電力伝送コイル1T、1R又は
図3に示した非接触電力伝送コイル1Rとして適用することができる。
【0057】
本開示の第3の非接触電力伝送コイルの構成を
図7に示す。本開示の第3の非接触電力伝送コイル1は、巻線11、コア12、非磁性導体13及び筐体14から構成される。
図7の左欄に平面図を示し、
図7の右欄に正面C-C断面図を示す。
【0058】
巻線11は、コア12に巻回される。筐体14は、アルミニウム等の筐体であり、巻線11及びコア12を埋め込む窪みを有する。非磁性導体13は、筐体14が有する窪みの上部に配置され、巻線11及びコア12と間隔を有し、巻線11と絶縁される。なお、巻線11の入力及び出力の配線(
図7に不図示。)は、筐体14の内部で引き回される。
【0059】
非接触電力伝送コイル1の延伸軸と平行方向における非磁性導体13のサイズは、コア12の延伸長程度である。非接触電力伝送コイル1の延伸軸と垂直方向における非磁性導体13のサイズは、巻線11の巻回径以下であり、コア12の径以下である。
【0060】
本開示の第3の非接触電力伝送コイル1は、
図4に示した非接触電力伝送コイル1T、及び/又は非接触電力伝送コイル1Rとして適用することができる。
【0061】
本実施形態では、コア12T、12Rは、それぞれ棒状コアであり、非接触電力伝送コイル1T、1Rの延伸軸は、互いに並行するとともに、互いの距離を可変とする。変形例として、コア12T、12Rは、それぞれ棒状コアであり、非接触電力伝送コイル1T、1Rの棒状コア末端は、互いに対向するとともに、互いの距離を可変としてもよい。
【0062】
変形例においても、非磁性導体13のサイズは、以下の基準で設計されることが望ましい:(1)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の一部が、渦電流発生により打ち消されること、(2)コア12T/12Rから非接触電力伝送コイル1R/1Tへの鎖交磁束の全部が、渦電流発生により打ち消されるわけではないこと。
【0063】
送電周波数fがMHzのオーダーであるときには、非磁性導体13での渦電流発生による非磁性導体13での発熱は少ない。送電周波数fがkHzのオーダーであるときには、非磁性導体13での渦電流発生による非磁性導体13での発熱があるが、送電インバータ2の出力電圧が低ければよく、又は、非磁性導体13の冷却機構があればよい。
【0064】
本開示の送電インバータの構成を
図8に示す。送電インバータ2は、フルブリッジ回路であり、ハイサイドトランジスタ2AH、ローサイドトランジスタ2AL、ハイサイドトランジスタ2BH及びローサイドトランジスタ2BLから構成される。
【0065】
ハイサイドトランジスタ2AHに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VAH及びIAHとする。ローサイドトランジスタ2ALに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VAL及びIALとする。ハイサイドトランジスタ2BHに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VBH及びIBHとする。ローサイドトランジスタ2BLに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VBL及びIBLとする。送電インバータ2から出力される電圧及びこれから流れる電流を、各々、VT及びITとする。
【0066】
比較例の送電インバータの貫通電流及び損失を
図9に示す。比較例の送電インバータ2では、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、純抵抗より若干分だけ容量性である。つまり、電流I
Tの位相は、電圧V
Tの位相より、若干分だけ進んでいる。
【0067】
ここで、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)がオンからオフへと切り替わり、ローサイドトランジスタ2AL(2BL)がオフからオンへと切り替わる時について考える。この時、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)のボディダイオードには、順方向に電流IAH(IBH)<0が流れる。そこに、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)に、電圧VAH(VBH)>0が印加される。すると、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)のボディダイオードには、逆方向にリカバリ電流が流れる。よって、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)からローサイドトランジスタ2AL(2BL)へと、黒丸で示した大きさの貫通電流が流れる。そして、送電インバータ2において、黒丸で示した大きさの損失が生じる。なお、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)がオフからオンへと切り替わり、ローサイドトランジスタ2AL(2BL)がオンからオフへと切り替わる時についても、以上の説明と同様となる。
【0068】
本開示の送電インバータの貫通電流及び損失を
図10に示す。本開示の送電インバータ2では、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZ
INは、純抵抗より若干分だけ誘導性である。つまり、電流I
Tの位相は、電圧V
Tの位相より、若干分だけ遅れている。
【0069】
ここで、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)がオンからオフへと切り替わり、ローサイドトランジスタ2AL(2BL)がオフからオンへと切り替わる時について考える。この時、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)のボディダイオードには、順方向に電流I
AH(I
BH)<0が流れるわけではない。よって、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)からローサイドトランジスタ2AL(2BL)へと、
図9の黒丸で示した大きさの貫通電流が流れるわけではない。そして、送電インバータ2において、
図9の黒丸で示した大きさの損失が生じるわけではない。なお、ハイサイドトランジスタ2AH(2BH)がオフからオンへと切り替わり、ローサイドトランジスタ2AL(2BL)がオンからオフへと切り替わる時についても、以上の説明と同様となる。
【0070】
そこで、送電インバータ2から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗より若干分だけ誘導性であることが望ましい。ここで、「純抵抗より若干分だけ誘導性である」とは、非接触電力伝送効率の最適化と、送電インバータ2における損失の低減と、を両立させる程度に、電流ITの位相を電圧VTの位相より遅らせる(位相差の最大限は、π/4rad。)ことをいう。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の非接触電力伝送コイル、非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送システムは、コイル間距離が可変である非接触電力伝送に適用することができ、例えば、扉取付部から扉電気錠又は扉照明器具へと非接触電力伝送する目的等に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
S:非接触電力伝送システム
1、1T、1R:非接触電力伝送コイル
2:送電インバータ
2AH:ハイサイドトランジスタ
2AL:ローサイドトランジスタ
2BH:ハイサイドトランジスタ
2BL:ローサイドトランジスタ
3、4:コンデンサ
5:負荷
11、11T、11R:巻線
12、12T、12R:コア
13、13T、13R:非磁性導体
14:筐体