(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】皮膚外用ジェル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20230424BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230424BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230424BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20230424BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230424BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230424BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/33
A61K8/81
A61K8/84
A61Q19/10
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2018136912
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】有野 翔子
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081876(JP,A)
【文献】特開2013-082687(JP,A)
【文献】特開2004-123661(JP,A)
【文献】特開平11-181500(JP,A)
【文献】特開2014-065671(JP,A)
【文献】特開2012-193172(JP,A)
【文献】Shanghai JNS,Purifying Jelly ID#5616087,DATABASE GNPD[Online],MINTEL,2018年04月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤
〔式(I)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~22で、二重結合を0~3個有するアルキル基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1~3で、二重結合をもたないアルキル基を表し;Yはハロゲン原子、メトサルフェート、またはメトホスフェートを表す。〕
(b)前記(a)成分が可溶な油分
(c)
20~60質量%の低級アルコール
(d)水溶性増粘剤
(e)水
を含有してなる、皮膚外用ジェル製剤。
【請求項2】
前記(a)成分以外の界面活性剤の配合量が1質量%以下である、請求項1に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【請求項3】
前記(a)成分が、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムである、請求項1又は2に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【請求項4】
前記(b)成分が、高級アルコール、ヒドロキシ基を有するエステル油、モノグリセリド、ジグリセリド、モノアルキルグリセリルエーテル、モノアルケニルグリセリルエーテル、ジアルキルグリセリルエーテル、およびジアルケニルグリセリルエーテルからなる群から選択される1種以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【請求項5】
(d)水溶性増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体およびアクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマーから選択される1種又は2種以上である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【請求項6】
指等で塗布して使用するための、請求項1から
5のいずれか一項に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【請求項7】
微粒子付着防止用である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の皮膚外用ジェル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジ長鎖型カチオン界面活性剤を安定に配合することができ、皮膚の局所へ塗り広げることが容易となる、ジェル状の皮膚外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料分野において、カチオン界面活性剤は、配合した製剤の安定性、洗浄性、粉末分散性等の向上効果を有することが知られており、乳化化粧料等に用いられている(特許文献1)。
【0003】
また、近年では、ジ長鎖型カチオン界面活性剤をメントール等の清涼剤と組み合わせて化粧料に配合すると、清涼感効果の向上が得られることが見出され、水系皮膚用化粧料にジ長鎖型カチオン界面活性剤を配合して、冷感効果と乳化安定性が向上された水中油型乳化化粧料が提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、現在のところ皮膚の一部への塗り広げに容易なジェル状の製剤は存在しない。
また、ジ長鎖型カチオン界面活性剤は水に溶けにくく、析出しやすいという問題があるため、ジェル状製剤に調製する場合でも、経時的な析出に対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-246521号公報
【文献】特開2013-82687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジ長鎖型カチオン界面活性剤を安定に配合することができ、皮膚の局所へ塗り広げることが容易となる、ジェル状の皮膚外用製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ジ長鎖型カチオン界面活性剤と、特定の油分と、低級アルコールと、水溶性増粘剤と、水とを配合することにより、ジ長鎖型カチオン界面活性剤の析出が十分に抑制された安定なジェル状製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)下記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤、
〔式(I)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~22で、二重結合を0~3個有するアルキル基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1~3で、二重結合をもたないアルキル基を表し;Yはハロゲン原子、メトサルフェート、またはメトホスフェートを表す。〕
(b)前記(a)成分が可溶な油分
(c)低級アルコール
(d)水溶性増粘剤
(e)水
を含有してなる、皮膚外用ジェル製剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成とすることにより、ジ長鎖型カチオン界面活性剤が経時的に析出することなく安定に配合された、ジェル状の皮膚外用製剤を得ることができる。本発明によっては、ジェル状であるので顔や皮膚の局所への塗り広げが容易となる。さらに、製剤にはジ長鎖型カチオン界面活性剤が安定に配合されているので、塗布した皮膚の帯電が防止され、大気中の微粒子の付着を防止する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製剤は、(a)特定の構造を有するジ長鎖型カチオン界面活性剤、(b)前記(a)成分が可溶な油分、(c)低級アルコール、(d)水溶性増粘剤、および(e)水を含有することを特徴とする。以下、本発明の製剤を構成する各成分について詳述する。
【0011】
<(a)ジ長鎖型カチオン界面活性剤>
本発明の製剤に配合される(a)ジ長鎖型カチオン界面活性剤(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、下記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤が好ましく用いられる。
式(I)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~22で、二重結合を0~3個有するアルキル基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1~3で、二重結合をもたないアルキル基を表し;Yはハロゲン原子、メトサルフェート、またはメトホスフェートを表す。
【0012】
上記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤としては、限定するものではないが、例えば、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(市販品として「カチオンDSV」(三洋化成工業(株)製)など)、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジセトステアリルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジベヘニルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジセチルジメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ジセトステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。なかでも、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが好ましく用いられる。
【0013】
(a)成分の配合量は、製剤全量中に0.001~1質量%、好ましくは0.005~0.1質量%である。0.001質量%未満では、ジ長鎖型カチオン界面活性剤に起因する効果が得られず、一方、1質量%を超えると保存時の乳化安定性が不良となり、好ましくない。(a)成分として、上記ジ長鎖型カチオン界面活性剤の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
<(b)前記(a)成分が可溶な油分>
本発明の製剤に配合される(b)前記(a)成分が可溶な油分(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、前記(a)成分を溶解することができる油分である。ここで、「(a)成分を溶解する」とは、1gの(a)ジ長鎖型カチオン界面活性剤を100gの油分と混合して加熱溶解し、常温に24時間静置した後でも析出や濁りを生じずに安定である油分を指す。
【0015】
本発明における(b)成分は、油脂、炭化水素油、シリコーン油、高級アルコール、合成エステル油、天然エステル油等から選択することができるが、なかでも高級アルコール、ヒドロキシ基を有するエステル油、モノグリセリド、ジグリセリド、モノアルキルグリセリルエーテル、モノアルケニルグリセリルエーテル、ジアルキルグリセリルエーテル、ジアルケニルグリセリルエーテル等から選択することが好ましい。
【0016】
(b)成分として好ましい例としては、例えば、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、エチルヘキシルグリセリン等を挙げることができる。なかでも、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールを用いるのが特に好ましい。
【0017】
(b)成分の配合量は、製剤全量中に0.01~10質量、好ましくは0.1~5質量%である。0.01質量%未満では、種々の油性活性剤を安定に溶解できないなど油分配合による効果が得られない場合があり、一方、10質量%超では塗布後にべたつきが生じて好ましくない。(b)成分として、上記油分の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<(c)低級アルコール>
本発明の製剤に配合される(c)低級アルコール(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常使用可能な、炭素原子数1~3の一価の低級アルコールである。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。(c)成分は清涼感向上、保存安定性向上、微細な微粒子形成等に寄与する。
【0019】
(c)成分の配合量は、製剤全量に対して10~60質量%であり、好ましくは20~60質量%、より好ましくは、10~50質量%あるいは20~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%あるいは20~40質量%である。配合量が10質量%未満では製剤にべたつきが生じ、60質量%を超えると(a)成分を安定に配合できない場合がある。
【0020】
本願発明の製剤において、(b)成分として高級アルコールが配合される場合には、高級アルコールとアルコール水溶液との可溶化を防ぐ観点とべたつきの観点から、低級アルコールの配合量を10~60質量%あるいは20~60質量%、さらには10~50質量%あるいは20~50質量%、よりさらには10~40質量%あるいは20~40質量%とすることが好ましい。
【0021】
<(d)水溶性増粘剤>
本発明の製剤に配合される(d)水溶性増粘剤(以下、単に「(d)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常使用可能な水溶性増粘剤であって、具体的には、限定するものではないが、例として、アラビアガム、トラガガントガム、ガラクタン、グアガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)抽出物、褐藻粉末およびカンテン等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストランおよびプルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミンおよびゼラチン等の動物系高分子、デンプン、カルボキシメチルデンプンおよびメチルヒドロキシデンプン等のデンプン類、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロースおよびセルロース末等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリアクリル酸およびその塩およびポリアクリルイミド等のアクリル系高分子、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体等の疎水変性ポリエーテルウレタン、グリチルリチン酸やアルギン酸およびその塩等が挙げられる。本発明の(d)成分として、これらから選択される1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、カルボキシビニルポリマー、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体およびアクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマーから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0022】
なかでも、(d)成分として、乳化能を有する水溶性増粘剤が好ましく、市販される具体的なものには、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体(商品名「アデカノールGT-700」、アデカ社製)、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー(商品名「PEMULEN TR-1」、ルーブリゾールアドバンストマテリアルズ社製)、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレート共重合体(商品名「アキュリン」、ローム&ハース社製)等が挙げられる。また、粘度調整のために乳化能を有する水溶性増粘剤と乳化能を有しない水溶性増粘剤とを組み合わせて用いることができる。
【0023】
(d)成分の配合量は、製剤全量に対して0.1~5質量%であり、好ましくは0.3~2.0質量%である。配合量が0.1質量%未満では指からのたれ落ち、乳化安定性の悪化が懸念され、5質量%を超えると塗布時の伸びが悪く使用感が損なわれるため好ましくない。
【0024】
<(e)水>
本発明の製剤に配合される(e)水(以下、単に「(e)成分」と称する場合がある)は特に限定されないが、イオン交換水、精製水、自然水が挙げられる。
(e)成分の配合量は、製剤全量に対して30~95質量%であり、好ましくは、40~90質量%である。
【0025】
本発明の製剤においては、界面活性剤を配合することにより、製剤の乳化安定性をさらに向上させることができる。界面活性剤としては、従来から水中油型乳化化粧料に使用されている非イオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上であってよく、なかでも、HLBが8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上の非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。具体例としては、限定するものではないが、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
ただし、本発明の製剤において界面活性剤を配合する場合には、製剤のべたつきを抑制する観点から、(a)成分以外の界面活性剤の配合量が、製剤全量に対して1質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
<その他の配合可能な成分>
本発明の製剤には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、水溶性高分子、粉末成分、紫外線防御剤、各種水性溶媒、油溶性薬剤、精油、保湿剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、pH調整剤、香料、防腐剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0027】
本発明の必須成分であるカチオン界面活性剤は、帯電防止効果を有するので、従来より、衣服に適用して静電気を除去することを目的とした組成物に配合されて用いられている。化粧料分野においては、毛髪化粧料に配合して静電気を抑え、整髪性に優れる毛髪化粧料が提案されているが(特許文献3:特開2010-163384)、化粧料においてもカチオン界面活性剤を配合したジェル状製剤が得られれば、塗布した部位から静電気を除去することができる。また、このようなジェル製剤は、静電気を除去することで、花粉、ウイルス、PM2.5等の空気中に浮遊している有害物質の皮膚への付着を抑制することができる。
【0028】
本発明の製剤によれば、ジ長鎖型カチオン界面活性剤を安定に配合することができ、かつ、皮膚に塗布して用いることができるので、帯電防止効果を付与したジェル状化粧料を提供することができる。化粧料が帯電防止効果を有するので、化粧料を塗布した皮膚に大気中の微粒子が付着するのを防ぐことができる。本発明による化粧料は、大気中の微粒子の肌への付着を防止する機能を有する点で新規のジェル状化粧料である。
【0029】
本発明の製剤においては、製剤のべたつきを抑制する観点から(a)成分以外の界面活性剤の配合量が1質量%以下であることが好ましい。製剤自体のべたつきを抑制することによって、(a)ジ長鎖型カチオン界面活性剤の帯電防止効果に起因する微粒子付着防止効果が最大限に発揮される。
【0030】
また、本願発明の製剤においては、大気中微粒子付着防止効果を向上させる目的で、本願(a)成分に加えて、2-(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等の静電気除去効果を有する物質をさらに配合することができる。
【0031】
本発明の製剤は、透明のジェル状あるいは白濁のジェル状の形態で調製されてよい。本発明の製剤は、ジェル状の形態であるので、所望の皮膚表面への塗り広げが容易であるという利便性を有する。また、例えば花粉などの大気中の微粒子の付着を防止するための化粧料を提供する場合には、目・鼻・口などの周りに部分的に塗布することができるジェル状形態とすることにより、微粒子付着防止機能が特に発揮される。
【0032】
本発明の製剤は、べたつきがなく、適度な粘性を有し、使用感に優れる。このため、本発明に係る製剤は化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、乳液、美容液、クリーム、サンスクリーン化粧料、化粧下地、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ等の任意の形態で提供することができる。
【0033】
本発明の製剤は、常法により製造することができる。例としては、水相成分と油相成分をそれぞれ撹拌混合して均一な水相部と油相部を調製し、水相部に油相部を加えながら、撹拌混合して調製してよい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0035】
実施例に先立って、本発明に係る(a)ジ長鎖型カチオン界面活性剤の油分に対する溶解性を下記の方法により試験した。
1gのジステアリルジモニウムクロリドを100gの下記表1に示す油分と混合して加熱溶解し、常温に24時間静置した後の状態を確認した。評価結果を表1に併せて示す。なお、均一透明を保ったものを○とし、濁りや析出があったものを×とした。
【0036】
【0037】
表1に示されるように、本発明に係るジ長鎖型カチオン界面活性剤は、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、エチルヘキシルグリセリンに均一に溶解した。
【0038】
<実施例1および2>
下記表2に示す組成を有するジェル製剤を常法に従って調製し、下記評価方法に従って乳化安定性を調べた。評価結果を表2に併せて示す。
【0039】
(1)粘度
調製した試料を30℃で1日間静置した後、BH形粘度計(ロータNo.6、10回転、1分)により粘度(mPa・s)を測定した。本発明の製剤においては、5,000~100,000mPa・sであることが好ましい。
【0040】
(2)平均乳化粒子径
試料調製後の水滴の乳化粒子径を、顕微鏡にて測定した。平均乳化粒子は小さいほど乳化安定性が良く、10μmを超えると長期保管により分離が見られる傾向が高くなる。本願発明の製剤においては、平均乳化粒子が0.1~20μmであることが好ましい。
【0041】
(3)析出の有無
調製した試料を0℃、25℃で7日間静置した後、配合成分の析出の有無を目視または顕微鏡にて評価した。
【0042】
【0043】
表2に示すように、いずれの例においても配合成分の析出が生じず、乳化安定性に優れ、適度な粘性を有するジェル製剤を得ることができた。