(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】フライバスケットおよび食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
A47J37/12 371
A47J37/12 381
(21)【出願番号】P 2018211102
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】川向 剛史
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 優太
(72)【発明者】
【氏名】野口 絢子
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-201683(JP,A)
【文献】特開2007-014312(JP,A)
【文献】特開2013-158454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0233183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に具材が内包された食品を油で揚げる際に使用されるフライバスケットであって、
前記食品が載置されるほぼ平坦な底部と、前記底部に対向した状態で該底部から所定距離だけ離間し略平行に配置された天井部と、を有する本体部と、
前記本体部に接続されたハンドル部と、を備え、
前記本体部は、油に浸漬された際、内部に油が侵入可能に構成され、
前記底部と天井部との距離が、油で揚げる前の前記食品の高さより大きく、且つ前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さの65ないし85%
まで膨張した段階で、フライバスケットの底部と天井部との間に挟持され膨張が停止させられる長さである、
ことを特徴とするフライバスケット。
【請求項2】
前記底部と天井部との距離が、前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さの70ないし80%
まで膨張した段階で、フライバスケットの底部と天井部との間に挟持され膨張が停止させられる長さである、
請求項1に記載のフライバスケット。
【請求項3】
前記底部および天井部が、網状部材から構成されている、
請求項1または2に記載のフライバスケット。
【請求項4】
前記底部がパンチング板から構成されている、
請求項1または2に記載のフライバスケット。
【請求項5】
前記天井部が、一端に設けられたヒンジ部を中心に前記本体部に対し、揺動可能に前記本体部に連結されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフライバスケット。
【請求項6】
前記底部と天井部との間に位置する前記本体部の内部空間が、網状部材から構成された側壁部によって囲まれている、
請求項5に記載のフライバスケット。
【請求項7】
前記本体部に連結された2つのハンドル部を備え、
前記本体部が直方体形状を有し、
前記2つのハンドル部が、前記本体部の対向する一対の側部のそれぞれに連結され、
一方のハンドル部は前記側部の一方の一端側に配置され、他方のハンドル部は前記側部の他方の他端側に配置されている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフライバスケット。
【請求項8】
1)内部に具材が内包された食品を油で揚げる際に使用されるフライバスケットであって、
前記食品が載置されるほぼ平坦な底部と、前記底部に対向した状態で該底部から所定距離だけ離間し略平行に配置された天井部と、を有する本体部と、
前記本体部に接続されたハンドル部と、を備え、
前記本体部は、油に浸漬された際、内部に油が侵入可能に構成され、
前記底部と天井部との距離が、油で揚げる前の前記食品の高さより大きく、且つ前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さの65ないし85%に相当する長さである、フライバスケットを準備する工程と、
2)前記フライバスケットに生地の内部に具材が内包された食品を収容する工程と、
3)前記食品を収容したフライバスケットを油に浸漬して前記食品を揚げる工程と、を備え、
前記工程3)において、前記フライバスケットの底部と天井部の間で前記食品の高さ寸法を制限される、
ことを特徴とする食品の製造方法。
【請求項9】
前記食品が、内部に50g以上の具材を内包する食品であり、
前記工程3)において、前記食
品の油への浸漬時間が5分以上である、
請求項8に記載の食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライバスケットおよび食品の製造方法に関し、詳細には、内部に具材が内包された揚げ調理パン等の油で揚げた食品を、油で揚げる際に使用される器具であるフライバスケットおよびこのようなフライバスケットを使用する食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に具材が内包され油で揚げられた調理パン等の食品が、市販されている。このような、内部に具材が内包され油で揚げられた食品を店舗あるいは工場で大量に調理する際には、大量且つ効率良く、食品の中心部まで十分に加熱されるように食品を油で揚げるため、加熱した油が収容されたフライヤ等の器具が使用される。
【0003】
フライヤのような器具を用いて、調理パン等の食品を揚げる作業では、例えば、平坦な金網部の両端に、上下方向に延びる支柱を介して取手が取付けられた網が使用されている。
【0004】
このような揚げ作業を、調理パンの代表例であるカレーパンを揚げる作業を例に、具体的に説明する。
まず、作業者が、油で揚げる食品である調理パンPを、網1の金網部2に、
図1に示されているように、複数個、載置する。次いで、左右の手で左右の取手4、6を把持し、金網部2をフライヤF内に降下させる。金網部2上に載置されたカレーパンは、パン生地の半分以上を油Aから露出する形でフライヤF内の加熱された油Aの液面に浮かぶ。所定時間が経過すると、作業者は菜箸等を使用してカレーパンを反転させる。さらに所定時間が経過すると、作業者は左右の手で左右の取手4、6を把持して、網をフライヤから引き上げ、金網部2を利用して、揚がったカレーパンをフライヤFから掬い出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明者等は、従来のカレーパンよりも大量の具材が詰まった、いままでにないプレミアムなカレーパンを提供すべく、その調理方法等につき鋭意研究を重ねてきた。
ここで、通常のカレーパンの場合、加熱した油に浸漬させる揚げ時間は、最長で4分間程度である。これに対し、本発明者等が目標とする大量の具材をぎっしり詰めたカレーパンでは、具材の中心部までしっかり加熱して衛生上の安全性を確保するために、5分間以上の揚げ時間を確保する必要があることが分かった。
しかしながら、このような大量の具材をぎっしり詰めたカレーパンを5分以上にわたって油で揚げると、この揚げ作業中に、カレーパンの生地が破断してしまうという問題が生じることが判明した。
【0006】
この点について詳述する。このような大量の具材が詰まったカレーパンPは、油に浸漬させられた直後は、生地Kで覆われた内部が具材Gで満たされ、内部に空間部分は存在していない(
図2)。このように具材がぎっしり詰まっているため、この時点では、カレーパン全体の比重は油より大きく、油に浸漬させられた直後は、
図3に示されているように、カレーパンPは油の中に完全に沈み、全体が油に浸漬された状態となる。
【0007】
所定時間が経過し、カレーパンPの内部まで熱が伝わると、カレーパン内部に存在していた空気や水分が加熱されてガスが発生し、このガスが、カレーパンを膨張させ、カレーパンの内部に空洞部分Cが形成される(
図4)。この結果、カレーパン全体の比重が、油より小さくなり、カレーパンPが油の中で浮き上がってくる(
図5)。
【0008】
この状態では、比較的比重が大きなカレーパン内の具材Gは、空洞部分Cの底部に留まり、カレーパン底部の生地に対して下方に向かう力を作用させる。一方、空洞部分C内のガスは、カレーパン上部の生地Kに対して上方に向かう力を作用させる。この結果、カレーパンの揚げ作業においては、カレーパンの生地に、カレーパンの上下に向かう反対方向の力が作用することになる。
【0009】
そして、この反対方向に作用する力が、カレーパンの揚げ作業中に、カレーパンの生地を破断させてしまうという問題を生じさせる。
【0010】
この問題は、油からの熱により具材Gが軟化する揚げ作業の後期に顕著に発生する。これは、揚げ作業の後期には、軟化した具材が、カレーパン内の空洞部分Cで偏在化し、カレーパン底部の生地に対し、局所的に大きな力を作用させることに起因すると考えられた。
【0011】
また、この問題は、大量の具材Gを内包し、揚げる前の形状が扁平な形状であり、油で揚げることにより略球状の形状となるようなカレーパンにおいては、具材によって生じる下方への力および空洞部分C内のガスによって生じる上方に向かう力が、より大きくなるため、特に大きな問題となる。
【0012】
さらに、この問題は、カレーパンに固有の問題ではなく、生地に小麦グルテンが含まれず生地のガス保持力が弱い食品や、付加価値を上げ或いは特徴付ける等の目的で生地を薄くした食品に、加熱により流動化する具材を内包させて油で揚げる際にも、生じる問題である。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、内部に具材が内包された調理パン等の食品を油で揚げる際に、生地の破断を防止することができる揚げ作業用の器具を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、内部に具材が内包された調理パン等の食品を油で揚げる際に、生地の破断を防止することができる食品の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
内部に具材が内包された食品を油で揚げる際に使用されるフライバスケットであって、
前記食品が載置されるほぼ平坦な底部と、前記底部に対向した状態で該底部から所定距離だけ離間し略平行に配置された天井部と、を有する本体部と、
前記本体部に接続されたハンドル部と、を備え、
前記本体部は、油に浸漬された際、内部に油が侵入可能に構成され、
前記底部と天井部との距離が、油で揚げる前の前記食品の高さより大きく、且つ前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で完全に揚げられたときに達する最大高さの65ないし85%に相当する長さである、
ことを特徴とするフライバスケット。
【0016】
食品の「外部から寸法制限を受けることなく油で完全に揚げられたときに達する最大高さの65ないし85%に相当する長さ」とは、その食品を、加熱した油に投入し、外方への膨張を制限することなく、油の中で自由に泳がせて揚げた際に達する上下方向の長さ(高さ)を意味する。
【0017】
さらに、本発明のフライバスケットを使用して油で揚げられる食品の内部に内包される具材は、その種類は特に限定されるものではない。具材は、例えば、肉類や野菜類等の固形物のみ、ソースまたはペースト状の食品のみ、またはこのような固形物とソースまたはペースト状の食材との混合物等であっても良い。
ソースまたはペースト状の食品の粘性は包餡できればどのような物性でも良く、その種類は限定されない。ソースまたはペースト状食品としてはカレーソース、ハヤシソース、ホワイトシチュー、ビーフシチュー等のシチュー類、ホワイトソース、デミグラスソース、ピザソース等が挙げられる。
【0018】
このような構成によれば、内部に具材が内包された食品をフライバスケットの底部に載置し、フライバスケットをフライヤ等に収容されている加熱された油内に沈め、食品を油に浸漬する。このとき、フライバスケットの底部に載置された食品の上方には、天井部が離間して位置していることになる。
【0019】
上述したように、内部に具材が内包された食品は、油に浸漬された直後には、内部が具材で満たされ、空間部分は存在していないため、内部に具材が内包された食品は、油の中に完全に沈み、全体が油に浸漬されている。
【0020】
所定時間が経過し、内部に具材が内包された食品の内部まで熱が伝わると、内部に具材が内包された食品内でガスが発生し、このガスが、内部に具材が内包された食品を膨張させていく。この結果、内部に具材が内包された食品の上部が、フライバスケットの天井部に接近していく。
【0021】
本発明では、上述したように、底部と天井部との距離は、食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で完全に揚げられたときに有する最大高さの65ないし85%に相当する長さに設定されているので、膨張してきた食品は、完全に膨張する前、詳細には、完全に膨張した状態の65ないし85%まで膨張した段階で、フライバスケットの底部と天井部との間に挟持され膨張は停止する。
【0022】
この時点で、空洞部分内のガスが、食品上部の生地に対して上方に向かう更なる力を作用させることが無くなり、また食品下部の生地に対して具材が下方に向かうことを防止することで、食品の生地の上下方向に局所的に過度な力が作用することが抑制され、生地の破断が防止される。
【0023】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記底部と天井部との距離が、前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さの70ないし80%に相当する長さである。
【0024】
このような構成によれば、食品内で発生したガスが、食品の生地に過度な力が作用することが、より抑制され、生地の破断がより確実に防止される。
【0025】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記底部および天井部が、網状部材から構成されている。
【0026】
このような構成によれば、本体部内外の油の流通を円滑に行なうことが可能となる。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記底部がパンチング板から構成されている。
【0028】
このような構成によれば、異物混入のリスクを、より低減させることができる。
【0029】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記天井部が、一端に設けられたヒンジ部を中心に前記本体部に対し、揺動可能に前記本体部に連結されている。
【0030】
このような構成によれば、
本体部への食品の出し入れを容易に行なうことができる。
【0031】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記底部と天井部との間に位置する前記本体部の内部空間が、網状部材から構成された側壁部によって囲まれている。
【0032】
このような構成によれば、
本体部内への流通を円滑に行ないつつ、揚げ作業中に本体部から食品が離脱することを防止できる。
【0033】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記本体部に連結された2つのハンドル部を備え、
前記本体部が直方体形状を有し、
前記2つのハンドル部が、前記本体部の対向する一対の側部のそれぞれに連結され、
一方のハンドル部は前記側部の一方の一端側に配置され、他方のハンドル部は前記側部の他方の他端側に配置されている。
【0034】
このような構成によれば、複数のフライバスケットをフライヤの油槽内で並置した際に、隣接するフライバスケットのハンドル部同時が干渉することがなくなる。このため、油槽内にフライバスケットを効率的に配置することが可能となる。
【0035】
本発明の他の態様によれば、
1)内部に具材が内包された食品を油で揚げる際に使用されるフライバスケットであって、
前記食品が載置されるほぼ平坦な底部と、前記底部に対向した状態で該底部から所定距離だけ離間し略平行に配置された天井部と、を有する本体部と、
前記本体部に接続されたハンドル部と、を備え、
前記本体部は、油に浸漬された際、内部に油が侵入可能に構成され、
前記底部と天井部との距離が、油で揚げる前の前記食品の高さより大きく、且つ前記食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さの65ないし85%に相当する長さである、フライバスケットを準備する工程と、
2)前記フライバスケットに生地の内部に具材が内包された食品を収容する工程と、
3)前記食品を収容したフライバスケットを油に浸漬して前記食品を揚げる工程と、を備え、
前記工程3)において、前記フライバスケットの底部と天井部の間で前記食品の高さ寸法を制限される、
ことを特徴とする食品の製造方法が提供される。
【0036】
このような構成によれば、油で揚げる工程において、膨張による食品の高さの変動が抑制されるので、膨張により食品の破損を抑制できる。
【0037】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記食品が、内部に50g以上、より好ましくは50ないし120g、更に好ましくは60ないし100gの具材を内包する食品であり、
前記工程3)において、前記食材の油への浸漬時間が5分以上、より好ましくは5ないし12分、更に好ましくは6ないし10分である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、内部に具材が内包された調理パン等の食品を油で揚げる際に、生地の破断を防止することができる揚げ作業用の器具であるフライバスケットが提供される。
【0039】
また、本発明によれば、内部に具材が内包された調理パン等の食品を油で揚げる際に、生地の破断を防止することができる食品の製造方法を提供することも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術におけるカレーパンを揚げる作業を説明する模式的な図面である。
【
図2】油で揚げる前のカレーパンの内部状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】従来技術におけるカレーパンを揚げる作業を説明する模式的な図面である。
【
図4】油で揚げる作業の後期におけるカレーパンの内部状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図5】従来技術におけるカレーパンを揚げる作業を説明する模式的な図面である。
【
図6】本発明の好ましい実施形態のフライバスケットの側面図である。
【
図7】本発明の好ましい実施形態のフライバスケットの正面図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態のフライバスケットの平面図である。
【
図9】本発明の好ましい実施形態のフライバスケットの天井部(蓋部)14が開状態にされた状態を示す正面図である。
【
図10】油で揚げる前の本実施形態のフライバスケットと食品の位置関係を概略的に示す側面図である。
【
図11】油で揚げた後の本実施形態のフライバスケットの底部と天井部との間に食品が挟持されている状態を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施形態のフライバスケット10を図面に沿って説明する。
図6は、本発明の好ましい実施形態のフライバスケット10の側面図であり、
図7は、本発明の好ましい実施形態のフライバスケット10の正面図であり、
図8は、本発明の好ましい実施形態のフライバスケット10の平面図である。
【0042】
本実施形態のフライバスケット10は、内部に具材が内包された揚げ調理パン(例えば、カレーパン)等の油で揚げた食品を、油で揚げる際に使用される器具であるフライバスケットである。フライバスケット10は、使用時には、内部に油で揚げる食品(カレーパン等)を配置し、フライヤ等の油槽に収容されている加熱された油に沈められる。
【0043】
本実施形態のフライバスケット10は、内部に具材が内包された揚げ調理パン、特にカレーパンを油で揚げる作業に適するものである。さらに、カレーパンにおいても、具材の重量が大きいカレーパンに特に適する。
【0044】
本願発明が対象とする、カレーパン等の食品は、内部に50g以上、より好ましくは50ないし120g、更に好ましくは60ないし100gの具材を内包する食品であることが好ましく、5分以上、より好ましくは5ないし12分、更に好ましくは6ないし10分の油への浸漬時間(即ち揚げ時間)が想定されている。
【0045】
例えば、油で揚げる前の生地重量に対する具材重量が1以上、詳細には1.20程度のカレーパンに適する。具体的には、重量70gのパン生地に、85g、程度のカレーフィルを具材として内包させたカレーパンが揚げられる。尚、従来のカレーパンでは、油で揚げる前の生地重量に対する具材重量は、0.6程度である。
【0046】
図6ないし
図8に示されているように、フライバスケット10は、食品が載置されるほぼ平坦な底部12と、底部に対向した状態で該底部から所定距離だけ離間し略平行に配置された天井部14と、底部12と天井部14との間に配置された4枚の側壁部16とを有する、略直方体形状の本体部18を備えている。
【0047】
本実施形態のフライバスケット10では、底部12と天井部14と4枚の側壁部16は、いずれも網状部材である金網で形成されている。このような構成によって、フライバスケット10を油の中に沈めると、本体部18の内部に油が侵入し、且つ、本体部18の内部と外部との間で油が自由に流入あるいは流出することになる。
尚、本発明では、底部12と天井部14と4枚の側壁部16の少なくとも1を、油が通過可能なパンチング板等の金網以外の有孔材料で形成してもよい。
【0048】
本実施形態のフライバスケット10は、さらに、一対のハンドル部20、20を備えている。各ハンドル部20は、紡錘状の取手20aと、取手20aの各側部に一端が連結された2本の支柱20b、20bとを備えている。ハンドル部20は、各支柱20bの下端が、本体部18の対向する側壁一対の側壁部16、16のそれぞれに連結されることにより、本体部18に取付けられている。
【0049】
また、本実施形態のフライバスケット10では、
図6および
図8に示されているように、一方のハンドル部20は対向する側壁部16の一方で一端側にオフセットした位置に配置され、他方のハンドル部20は対向する側壁の他方で他端側にオフセットした位置に配置されている。したがって、2つのハンドル部20、20は、側面視で、左右にオフセットした状態で、本体部18に取付けられていることになる。
【0050】
さらに、本実施形態のフライバスケット10では、天井部14は、本体部18の一側に設けられたヒンジ機構によって、開閉可能な蓋部として構成されている。
図9は、天井部(蓋部)14が開状態にあるフライバスケット10の側面図である。
【0051】
本実施形態のフライバスケット10では、ヒンジ機構は、本体部18の一の側壁16の上端に取付けられたシャフト22と、天井部(蓋部)14の一端の両側に形成されシャフト22を受入れる寸法形状を有する一対のフック部24、24とを備えている。
【0052】
このような構成により、本実施形態のフライバスケット10では、天井部(蓋部)14は、ヒンジ機構を中心として、
図6ないし
図8に示される閉位置と、
図9に示される開位置との間で矢印X方向に揺動可能となる。また、本実施形態のフライバスケット10では、天井部(蓋部)14の開閉動作を容易にするためのグリップ26が、天井部(蓋部)14に取付けられている。
【0053】
本実施形態のフライバスケット10では、本体部18の底部12と天井部(蓋部)14との距離である高さHが、油で揚げる前の食品の高さH1より大きく、且つ食品が、外部から寸法制限を受けることなく油で揚げられたときに有する最大高さH2の65ないし85%、好ましくは70ないし80%、に相当する長さHに設定されている。例えば、H1=45mm、H2=80mm程度とされる。
【0054】
次に、本実施形態のフライバスケット10を使用して食品を油で揚げる作業について説明する。
まず、本実施形態のフライバスケット10の天井部(蓋部)14を
図9に示されているような開状態とし、本体部18の底部12上にカレーパン等の油で揚げる食品を載置し、天井部(蓋部)14を、
図6等に示されている閉状態とすることにより、フライバスケット10に食品を収容する。底部12と天井部14との距離である高さHは、食品の初期高さ(H1)より大きく設定されているので、フライバスケット10の底部12に載置された食品Pの上方には、天井部14が離間して位置していることになる(
図10)。
【0055】
次いで、作業者がハンドル部20を把持し、カレーパン等の食品Pを収容したフライバスケット10をフライヤ内に降下させ、カレーパン等の食品Pが完全に油に浸漬されるまでフライヤ内の加熱された油Aに浸漬させ、揚げ作業を開始する。
【0056】
所定時間が経過してカレーパン等の食品Pの内部まで熱が伝わると、カレーパン等の食品内でガスが発生し、このガスが、内部に具材が内包された食品を膨張させていく。この結果、内部に具材が内包された食品Pの上部が、フライバスケット10の天井部14に接近していく。
【0057】
本実施形態のフライバスケット10、上述したように、底部12と天井部14との距離である高さHは、食品Pが、外部から寸法制限を受けることなく油で完全に揚げられたときに有する最大高さの65ないし85%、好ましくは、70ないし80%に相当する長さに設定されている。したがって、膨張してきた食品P’は、完全に膨張する前、詳細には、完全に膨張した状態の65ないし85%、好ましくは、70ないし80%まで膨張した段階で、フライバスケットの底部12と天井部14との間に挟持され膨張は停止する(
図11)。
【0058】
この時点で、食品の生地に上下方向に作用する力が更に作用することが抑制され、生地の破断が防止される。
【0059】
そして、9分の揚げ(加熱)時間が経過すると、フライバスケット10を油から引き上げ、本体部18の天井部(蓋部)14を開き、カレーパン等の食材P’を取り出して作業を終了する。
【0060】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0061】
上記実施形態のフライバスケット10では、本体部は、底部12、天井部14、および側壁部16を有する構成であったが、本発明は、側壁部16を備えず、底部12と天井部14とが他の部材で連結されている構成でもよい。
【0062】
また、本発明のフライバスケットを使用して油で揚げられる食品は、カレーパンに限定されるものではない。例えば、クリームドーナツ、あんドーナツ、シチューパン、揚げまんじゅう、ピロシキ等を油で揚げる際にも使用可能である。
【符号の説明】
【0063】
H:底部12と天井部14との距離(高さ)
H1:食品の初期高さ
H2:食品の最大高さ
P:カレーパン
10:フライバスケット
12:底部
14:天井部(蓋部)14
16:側壁部
18:本体部
20:ハンドル部
20a:取手
20b:支柱