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特許7267001プライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】プライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/689 20180101AFI20230424BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230424BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z ZNA
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018230059
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089339
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000173865
【氏名又は名称】一般財団法人日本生物科学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】593169500
【氏名又は名称】日生研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】堤 信幸
(72)【発明者】
【氏名】トー ホー
(72)【発明者】
【氏名】手島 香保
(72)【発明者】
【氏名】長井 伸也
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/097323(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/088088(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/081027(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0206654(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106367427(CN,A)
【文献】特表2009-523458(JP,A)
【文献】特開2009-268413(JP,A)
【文献】特開2009-219383(JP,A)
【文献】特開2008-200012(JP,A)
【文献】特開2008-154581(JP,A)
【文献】特開2005-176791(JP,A)
【文献】特開2003-144153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列からなるプライマーとを含むことを特徴とするプライマーセット。
【請求項2】
検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程とを含み、
前記PCR工程で、請求項1に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項3】
検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、
前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程とを含み、
前記PCR工程で、請求項1に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする細菌の同定方法。
【請求項4】
前記PCR工程におけるPCR産物の長さが750bp以下である請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNAが細菌の16S rRNA遺伝子を含む請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌が罹患生物由来である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
罹患ブタ由来の検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、
前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程と、
前記塩基配列解析に基づき、罹患ブタ由来の検体中に含まれる細菌を同定する同定工程と、
前記同定工程における細菌の同定に基づき、罹患ブタの細菌感染を治療する治療工程と、を含み、
前記PCR工程で、請求項1に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする罹患ブタの細菌感染診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌の同定は、増殖培養、分離培養を経て菌を単離した後、単離した菌を増殖させ、形態観察、グラム染色性、カタラーゼ試験、糖資化性など多くの性状試験の結果に基づき行なわれてきた。この同定方法は、少なくとも数日間を要し、多岐にわたる試験は煩雑であり、費用もかかっていた。
また、単離した細菌からDNAを抽出し、それを膜状あるいは他の支持体上に固定し、標準菌のDNAをプローブとしてハイブリダイゼーション試験を行うことにより細菌を同定する方法がある。しかし、この同定方法も数日間を要し、さらに十分な検出感度、及び選択性を得るのが困難であった。
【0003】
近年、16S rRNA遺伝子をターゲットとした細菌の同定方法が報告されている。例えば、16S rRNA遺伝子の全長(1500bp)をターゲットとしたPCR及びダイレクトシークエンス法を用いた同定方法(非特許文献1)、16S rRNA遺伝子の部分的な塩基配列部分(約800bp)をターゲットとしたPCR及びダイレクトシークエンス法を用いた同定方法(非特許文献2及び3)が報告されている。
【0004】
しかし、これらの方法はシークエンスの回数が多く、多数の試料を同定するには時間を要し、迅速性の向上が困難であるという問題があり、細菌に罹患した生物の診断に時間を要することから、適切な治療の開始が遅延し、特に、細菌に罹患した生物が畜産動物である場合には甚大な被害をもたらすことも問題となっていた。
【0005】
したがって、16S rRNA遺伝子をターゲットとしたPCR、又は細菌の同定方法に使用でき、これらを従来の方法と比較して簡易、迅速、かつ高精度とするプライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.Bacteriol., 1991 173:697-703
【文献】J.Clin.Microbiol.,2003 41:4134-4140
【文献】J.Clin.Microbiol.,2004 42:2065-2073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、16S rRNA遺伝子をターゲットとしたPCR、又は細菌の同定方法に使用でき、これらを従来の方法と比較して簡易、迅速、かつ高精度とするプライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行なった結果、本発明のプライマーセットを用いることにより、従来の方法と比較して、簡易、迅速、かつ高精度な核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法が提供できることを見出した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> (1)配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセット、及び
(2)配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセットの少なくともいずれかを含むことを特徴とするプライマーセットである。
<2> 検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程とを含み、
前記PCR工程で、前記<1>に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法である。
<3> 検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、
前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程とを含み、
前記PCR工程で、前記<1>に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする細菌の同定方法である。
<4> 前記PCR工程におけるPCR産物の長さが750bp以下である前記<2>又は<3>に記載の方法である。
<5> 前記DNAが細菌の16S rRNA遺伝子を含む前記<2>又は<3>に記載の方法である。
<6> 前記細菌が罹患生物由来である前記<5>に記載の方法である。
<7> 罹患ブタ由来の検体中のDNAを抽出する抽出工程と、
前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、
前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程と、
前記塩基配列解析に基づき、罹患ブタ由来の検体中に含まれる細菌を同定する工程とを含み、
前記PCR工程で、前記<1>に記載のプライマーセットを使用してPCRを行うことを特徴とする罹患ブタの細菌感染診断方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、16S rRNA遺伝子をターゲットとしたPCR、又は細菌の同定方法に使用でき、従来の方法と比較して簡易、迅速、かつ高精度なプライマーセット、並びにプライマーセットを用いた核酸増幅方法、細菌の同定方法、及び罹患ブタの細菌感染診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1-1及び1-2の電気泳動の結果を示す図である。
図2図2は、実施例4の電気泳動の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(プライマーセット)
本発明のプライマーセットは、
(1)配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセット、及び
(2)配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセットの少なくともいずれかを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0013】
<配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマー>
配列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーは、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)をコードする塩基配列の1番目から20番目に対応するものであり、その配列は、以下のとおりである。
5’-agagtttgatcmtggctcag-3’(配列番号:1)
【0014】
前記配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、前記配列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーのうち、少なくとも10塩基以上の連続する配列を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、12塩基以上が好ましく、15塩基以上がより好ましく、18塩基以上がさらに好ましく、19塩基以上が特に好ましく、配列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーが最も好ましい。
【0015】
前記少なくとも10塩基以上の連続する配列は、3’末端側の10塩基以上の連続する配列であっても、5’末端側の10塩基以上の連続する配列であってもよいが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、3’末端側の10塩基以上の連続する配列が好ましい。
【0016】
また、前記配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、さらに任意の塩基配列や、蛍光色素などの標識が付加されたものであってもよい。
前記配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーの塩基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、35塩基以下が好ましく、30塩基以下がより好ましく、22塩基以下が更に好ましく、21塩基以下が特に好ましい。
【0017】
前記配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのGC含量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60%が好ましい。
前記配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのTm値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60℃が好ましい。
【0018】
<配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマー>
配列番号:2で表される塩基配列からなるプライマーは、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)をコードする塩基配列の508番目から527番目に対応するものであり、その配列は、以下のとおりである。
5’-tbttaccgcggctgctggca-3’(配列番号:2)
【0019】
前記配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、前記配列番号:2で表される塩基配列からなるプライマーのうち、少なくとも10塩基以上の連続する配列を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、12塩基以上が好ましく、15塩基以上がより好ましく、18塩基以上がさらに好ましく、19塩基以上が特に好ましく、配列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーが最も好ましい。
【0020】
前記少なくとも10塩基以上の連続する配列は、3’末端側の10塩基以上の連続する配列であっても、5’末端側の10塩基以上の連続する配列であってもよいが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、3’末端側の10塩基以上の連続する配列が好ましい。
【0021】
また、前記配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、さらに任意の塩基配列や、蛍光色素などの標識が付加されたものであってもよい。
前記配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーの塩基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、35塩基以下が好ましく、30塩基以下がより好ましく、22塩基以下が更に好ましく、21塩基以下が特に好ましい。
【0022】
前記配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのGC含量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60%が好ましい。
前記配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのTm値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60℃が好ましい。
【0023】
<配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマー>
配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるプライマーは、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)をコードする塩基配列の1番目から20番目の塩基配列に相補的な塩基配列に対応するものである。
【0024】
配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、前記配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるプライマーのうち、少なくとも10塩基以上の連続する配列を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、12塩基以上が好ましく、15塩基以上がより好ましく、18塩基以上がさらに好ましく、19塩基以上が特に好ましく、配列番号:1で表される塩基配列からなるプライマーが最も好ましい。
【0025】
前記少なくとも10塩基以上の連続する配列は、3’末端側の10塩基以上の連続する配列であっても、5’末端側の10塩基以上の連続する配列であってもよいが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、3’末端側の10塩基以上の連続する配列が好ましい。
【0026】
また、前記配列番号:1で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、さらに任意の塩基配列や、蛍光色素などの標識が付加されたものであってもよい。
前記配列番号:1で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーの塩基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、35塩基以下が好ましく、30塩基以下がより好ましく、22塩基以下が更に好ましく、21塩基以下が特に好ましい。
【0027】
前記配列番号:1で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのGC含量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60%が好ましい。
前記配列番号:1で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのTm値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60℃が好ましい。
【0028】
<配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマー>
配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるプライマーは、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)をコードする塩基配列の508番目から527番目の塩基配列に相補的な塩基配列に対応するものである。
【0029】
配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、前記配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるプライマーのうち、少なくとも10塩基以上の連続する配列を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、12塩基以上が好ましく、15塩基以上がより好ましく、18塩基以上がさらに好ましく、19塩基以上が特に好ましく、配列番号:2で表される塩基配列からなるプライマーが最も好ましい。
【0030】
前記少なくとも10塩基以上の連続する配列は、3’末端側の10塩基以上の連続する配列であっても、5’末端側の10塩基以上の連続する配列であってもよいが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、3’末端側の10塩基以上の連続する配列が好ましい。
【0031】
また、前記配列番号:2で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーは、さらに任意の塩基配列や、蛍光色素などの標識が付加されたものであってもよい。
前記配列番号:2で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーの塩基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、35塩基以下が好ましく、30塩基以下がより好ましく、22塩基以下が更に好ましく、21塩基以下が特に好ましい。
【0032】
前記配列番号:2で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのGC含量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60%が好ましい。
前記配列番号:2で表されるに相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーのTm値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、50~60℃が好ましい。
【0033】
-プライマーの製造方法-
前記プライマーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、DNA自動合成機を用いた合成、プライマー合成メーカーからの購入などが挙げられる。
【0034】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TE(10mM Tris-HCl(pH 8.0)、1mM EDTA)等のバッファー、DNA、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、及び酵素等のPCRに用いる試薬などが挙げられる。
【0035】
本発明のプライマーセットは、組成物、又は核酸増幅用キット、細菌の同定用キット、若しくは細菌感染診断用キットとして存在させることもできる。
【0036】
(核酸増幅方法)
本発明の核酸増幅方法は、検体中のDNAを抽出する抽出工程と、前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0037】
<抽出工程>
前記抽出工程は、検体中のDNAを抽出する工程である。
【0038】
-検体-
前記検体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細菌感染を検査される生物の血液、尿、糞便、臓器、若しくは組織、又は種を同定される生物などが挙げられる。
【0039】
前記細菌感染を検査される生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、病原性細菌、又は非病原性細菌等に罹患した脊椎動物、無脊椎動物などが挙げられる。
前記脊椎動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、ブタ、ウシ、トリ、イヌ、ネコ、魚などが挙げられる。
【0040】
前記細菌感染を検査される生物から血液、組織などを採取する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0041】
前記種を同定される生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、16S rRNA遺伝子を有する真核生物、原核生物などが挙げられる。
前記原核生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球菌、桿菌、ラセン菌などの細菌が挙げられる。前記細菌は、罹患生物由来の同定株、未同定株であってもよい。
【0042】
-DNAの抽出-
前記DNAの抽出方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、熱抽出法、フェノール・クロロホルム抽出法、アルカリ熱抽出法、市販のDNA抽出キットを用いた抽出法などが挙げられる。
【0043】
前記熱抽出法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、検体に滅菌蒸留水を添加し、遠心分離により得られたペレットを滅菌蒸留水で洗浄し、95℃で5分間加熱後、氷中で冷却し、遠心分離により得られた上清をDNA溶液とする方法、検体を滅菌蒸留水で洗浄し、100℃で5分間加熱後、氷中で冷却し、遠心分離により得られた上清をDNA溶液とする方法などが挙げられる。
【0044】
前記フェノール・クロロホルム抽出法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、TEバッファーで懸濁した検体に、10%SDS及びプロテイナーゼK(10 mg/ml)を添加し、37℃で1時間ゆるやかに振盪した後、フェノール・クロロホルム溶液を添加し激しく振盪した後、水層にクロロホルム溶液を添加し激しく振盪した後、水層に100%エタノールを添加する方法などが挙げられる。
【0045】
<PCR工程>
前記PCR工程は、前記抽出工程で得られた前記DNAを鋳型としてPCRを行う工程である。
【0046】
-PCR-
前記PCRとしては、プライマーとして本発明のプライマーセットを使用する限り、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、DNA、プライマー、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、及び酵素を含むPCR反応液をPCRサイクル処理する方法などが挙げられる。
【0047】
--PCRサイクル処理--
前記PCRサイクル処理としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、初期変性を94℃~95℃で1分間~3分間行なった後、94℃~95℃で30秒間、40℃~60℃で30秒間、及び72℃で45秒間を1サイクルとして、これを複数サイクル行い、最後に72℃で5分間~10分間の伸長反応を行なう処理などが挙げられる。
前記サイクル数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、20サイクル以上が好ましく、25サイクル以上がより好ましく、30サイクル以上がさらに好ましく、35サイクル以上が特に好ましい。
【0048】
前記PCRにより得られるPCR産物の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、750bp以下が好ましく、700bp以下がより好ましく、600bp以下がさらに好ましく、550bp以下が特に好ましく、530bp以下が最も好ましい。
【0049】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記細菌感染を検査される生物から血液、組織などを採取する採取工程、前記種を同定される生物を増殖培養、分離培養などを経て単離する単離工程、前記PCR産物を電気泳動により確認する電気泳動工程、前記PCR産物を精製する精製工程などが挙げられる。
【0050】
<<精製工程>>
前記精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販のキットを用いた方法などが挙げられる。
前記市販のキットとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GeneClean Spin Kit(Bio101, Inc.)などが挙げられる。
【0051】
(細菌の同定方法)
本発明の細菌の同定方法は、検体中のDNAを抽出する抽出工程と、前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記抽出工程、及びPCR工程は、前述のとおりである。
【0052】
<解析工程>
前記解析工程は、前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う工程である。
【0053】
-塩基配列解析-
前記塩基配列解析方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、シークエンサーを用いたDNAシークエンス法により塩基配列を決定する方法などが挙げられる。
【0054】
前記DNAシークエンス法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、大腸菌などを用いてクローニングを行なった後、シークエンス反応を行う方法、又はダイレクトシークエンスを行う方法などが挙げられる。これらの中でも、簡易、迅速、かつ高精度の点から、ダイレクトシークエンスを行う方法が好ましい。
【0055】
前記DNAシークエンス法において使用するプライマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明のプライマーセットのうちのいずれかのプライマーを使用することができる。
【0056】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記解析工程の塩基配列解析に基づき検体の種を同定する同定工程、生化学的手法により検体の種を同定する同定工程などが挙げられる。
【0057】
<<塩基配列解析に基づき検体の種を同定する同定工程>>
塩基配列解析に基づき検体の種を同定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記塩基配列解析により得られた塩基配列について、データベースを利用して、公知の配列との相同性を算出することにより同定する方法などが挙げられる。
前記データベースとしては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、日本DNAデータバンク、EBI/EMBL(CLUSTAL.W)、NCBI/GenBank(BLAST)などのデータベースが挙げられる。
前記塩基配列解析により得られた塩基配列と、公知の配列との相同性が97%以上の場合は、検体の種が公知の配列に基づく種であると同定できる。
【0058】
<<生化学的手法により検体の種を同定する同定工程>>
生化学的手法により検体の種を同定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、市販のキットを用いた方法などが挙げられる。
前記市販のキットとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、API 20(BioMerieux S.A.)などが挙げられる。
【0059】
前記細菌の同定方法において、前記PCR工程及び前記解析工程の合計所要時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、12時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、7時間以下が更に好ましく、5時間以下が特に好ましい。
【0060】
(細菌感染診断方法)
本発明の細菌感染診断方法は、罹患ブタ由来の検体中のDNAを抽出する抽出工程と、前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程と、前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程と、前記塩基配列解析に基づき、罹患ブタ由来の検体中に含まれる細菌を同定する同定工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0061】
前記罹患ブタ由来の検体中のDNAを抽出する抽出工程は、前記核酸増幅方法における前記抽出工程に対応し、前記DNAを鋳型としてPCRを行うPCR工程は、前記核酸増幅方法における前記PCR工程に対応し、前記PCR工程で得られた産物の塩基配列解析を行う解析工程は、前記細菌の同定方法における前記解析工程に対応し、前記罹患ブタ由来の検体中に含まれる細菌を同定する同定工程は、前記細菌の同定方法における前記塩基配列解析に基づき検体の種を同定する同定工程に対応する。
【0062】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記同定工程における細菌の同定に基づき、罹患ブタの細菌感染を治療する治療工程などが挙げられる。
【0063】
<<罹患ブタの細菌感染を治療する治療工程>>
前記罹患ブタの細菌感染を治療する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記罹患ブタに、感染した細菌に適した薬物を投与する方法などが挙げられる。
【0064】
前記細菌感染診断方法において、前記PCR工、前記解析工程、及び前記同定工程の合計所要時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡易、迅速、かつ高精度の点から、14時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましく、9時間以下が更に好ましく、7時間以下が特に好ましい。
【実施例
【0065】
以下に製造例及び実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
(製造例1)プライマーセット1の作製
日本DNAデータバンクのデータベース上に公開されている以下の73菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列について、Genetyx-Max Version 9.0及びVersion 12を用いて、シークンスデータの処理及びアライメント解析を行い、菌株間で保存されている塩基配列、及び菌株間で相違する塩基配列を決定した。相同性検索は日本DNAデータバンクのウエブサイト(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/blastn?lang=en)にてblastn検索を用いて行った。
【0067】
アライメント解析を行なった73菌株は、以下のとおりである。
(1) Fu1. (Fusobacterium necrophorum (FnS-40)) (X74408)
(2) Fu2. (Fusobacterium nucleatum subsp. Nucleatum) (M58683)
(3) Clo1. (Clostridium sp.) (AY949859)
(4) Clo2. (Clostridium perfringens str. 13) (BA000016)
(5) Clo3. (Clostridium novyi)(X68188)
(6) Clo4. (Clostridium tetani) (X74770)
(7) Sta1. (Staphylococcus aureus)(DQ269498)
(8) Sta2. (Staphyloccocus epidermidis)(AY699287)
(9) Kugi. (Kurthia gibsonii) (NCIMB 9758)
(10) Listsee. (Listeria seeligeri) (DQ065843)
(11) Strepbo1. (Streptococcus bovis) (AY173079)
(12) Strepdys2. (Streptococcus dysgalactiae (AB159678)
(13) Strepsuis3. ( Streptococcus suis) (AF284578)
(14) Lacgar. (Lactococcus garvieae) (AY699289)
(15) Erysi1. (Erysipelothrix rhusiopathiae ATCC19414) (AB055905)
(16) Eryt. (Erysipelothrix tonsillarum (AB055906)
(17) Mpla1. (Mycoplasma gallisepticum strain A5969) (L35043)
(18) Mpla2 (Mycoplasma hyopneumoniae) (Y00149)
(19) Mpla3. Mycoplasma hyosynoviae (U26730)
(20) Spirome. (Spiroplasma melliferum)(AY325304)
(21) Act0. (Actinomyces bovis) (X81061)
(22) Arpyo.(Arcanobacterium pyogenes) (M29552)
(23) Myco1. (Mycobacterium sp.) (AY945803)
(24) Myco2. (Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis str.k10) (AE017236)
(25) Myco3. (Mycobacterium bovis subsp. bovis AF2122/97) (BX248338)
(26) Nocaseri. (Nocardia seriolae) (AY846841)
(27) Rhoequi. (Rhodococcus equi) (X80614)
(28) Stbi. (Streptomyces bikiniensis strain DSM40581) (X79851)
(29) Bru1. (Brucella melitensis biovar Abortus) (AM040265)
(30) Bru2. (Brucella suis) (AE014292)
(31) Er1. (Ehrlichia sp. Tibet) (AF414399)
(32) Er2. (Ehrlichia canis str. Jake) (CP000107)
(33) Er3. (Ehrlichia ruminantium) (X61659)
(34) Ana1. (Anaplasma marginale) (DQ341370)
(35) Ana2. (Anaplasma ovis)(AF309865)
(36) Ana3. (Anaplasma bovis)(U03775)
(37) Ricric. (Rickettsia rickettsii) (U11021)
(38) Pseu1. (Pseudomonas sp. BE4dil) (AY263473)
(39) Pseu2. (Pseudomonas borealis) (PB0012712)
(40) Pseu3. (Pseugomonas lini) (AY035996)
(41) Legpar. (Legionella parisiensis) (U59697)
(42) Entaero. (Enterobacter aerogenes) (AY825036)
(43) Cifreu. (Citrobacter freundii) (AF025365)
(44) Klpneu. (Klebsiella pneumoniae) (DQ185604)
(45) Serma. (Serratia marcescens) (AB061685)
(46) Sal1. (Salmonella enterica subsp. enterica serovar Choleraesuis) (AE017220)
(47) Sal2. (Salmonella enterica subsp. enterica serovar Dublin) (AF227868)
(48) Sal3. (Salmonella typhi) (AL627266)
(49) Ecoli. (Escherichia coli) (AY804014)
(50) Erwper. (Erwinia persicinus)(AM184098)
(51) Yerpseu. (Yersinia pseudotuberculosis IP 32953) (BX936398)
(52) Vipara. (Vibrio parahaemolyticus) (X74721)
(53) Photodam. (Photobacterium damselae subsp. Damselae) (AY147861)
(54) Aerhy. (Aeromonas hydrophila ATCC 35654)(X74676)
(55) Haemo. (Haemophilus parasuis) (AB004039)
(56) Histo. (Histophilus somni) ( M75046)
(57) Pas. (Pasteurella multocida) (M35018)
(58) Act1. (Actinobacillus suis) (M75071)
(59) Act2. (Actinobacillus equuli) (M75072)
(60) Act3. (Actinobacillus pleuropneumoniae) (D30032)
(61) Act4. (Actinobacillus lignieresii) (M75068)
(62) Manvar. (Mannheimia varigena) (DQ301927)
(63) Neigo. (Neisseria gonorrhoeae) (X07714)
(64) Bb. (Bordetella bronchiseptica) (BX640449)
(65) Cam. (Campylobacter jejuni subsp. jejuni NCTC 11168) (AL139074)
(66) Heli. (Helicobacter pylori) (AY366424)
(67) Lawin. (Lawsonia intracellularis) (U06423)
(68) Borbur. (Borrelia burgdorferi)(AF477989)
(69) Spiro. (Spirochaeta aurantia)(AY599019)
(70) Trevi. (Treponema vincentii) (AF033309)
(71) Brahyo. (Brachyspira hyodysenteriae) (M57741)
(72) Lep. (Leptospira interrogans serovar Copenhageni str. Fiocruz L1-130) (AE017293)
(73) Porp. (Porphyromonas gingivalis) (L16492)
【0068】
上記アライメント解析に基づき、フォワードプライマー領域及びリバースプライマー領域の配列は、菌株間で保存されているが、フォワードプライマー領域とリバースプライマー領域の間の配列は、菌株間により相違する配列となること、及び増幅産物の塩基配列が、1回のシークエンスにより決定され得る長さとなることを条件に、フォワードプライマー領域及びリバースプライマー領域を選択した。
【0069】
選択したフォワードプライマー領域及び選択したリバースプライマー領域に対応するプライマー16S-F1及びプライマー16S-R2を作製した。
プライマー16S-F1の塩基配列は、(5’-agagtttgatcmtggctcag-3’)(配列番号:1)であり、プライマー16S-R2の塩基配列は(5’-tbttaccgcggctgctggca-3’)(配列番号:2)である。
【0070】
選択したフォワードプライマー領域は、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)の1番目から20番目の塩基配列に相当し、選択したリバースプライマー領域は、大腸菌(Escherichia coli)16S rRNA遺伝子(AY804014)の508番目から527番目の塩基配列に相当する。
【0071】
(製造例2)プライマーセット2の作製
フォワードプライマー16S-F1の5’末端側の15塩基に対応するフォワードプライマー16S15aF1、及びリバースプライマー16S-R2の5’末端側の15塩基に対応するリバースプライマー16S15aR2を作製した。
プライマー16S15aF1の塩基配列は、(5’-agagtttgatcmtgg-3’)(配列番号:3)であり、プライマー16S15aR2の塩基配列は(5’-tbttaccgcggctgc-3’)(配列番号:4)である。
【0072】
(製造例3)プライマーセット3の作製
フォワードプライマー16S-F1の3’末端側の15塩基に対応するフォワードプライマー16S15bF1、及びリバースプライマー16S-R2の3’末端側の15塩基に対応するリバースプライマー16S15bR2を作製した。
プライマー16S15bF1の塩基配列は、(5’-ttgatcmtggctcag-3’)(配列番号:5)であり、プライマー16S15bR2の塩基配列は(5’-ccgcggctgctggca-3’)(配列番号:6)である。
【0073】
(製造例4)プライマーセット4の作製
フォワードプライマー16S-F1の3’末端側の10塩基に対応するフォワードプライマー16S15dF1、及びリバースプライマー16S-R2の3’末端側の10塩基に対応するリバースプライマー16S15dR2を作製した。
プライマー16S15dF1の塩基配列は、(5’-cmtggctcag-3’)(配列番号:7)であり、プライマー16S15dR2の塩基配列は(5’-gctgctggca-3’)(配列番号:8)である。
【0074】
(実施例1-1)PCR(同定株)
表1に記載の同定株である、罹患動物由来の39菌株(番号A-1からA-39)について、以下のとおり、DNAを抽出し、抽出したDNAを鋳型としてPCRを行なった。
各菌株の培養液、又は大きめのコロニーをマイクロチューブにとった。菌体に滅菌蒸留水100μLを添加して懸濁した。懸濁液を遠心分離(10,000rpmで2分間)した。遠心分離により得られたペレットを滅菌蒸留水で洗浄し、95℃で5分間加熱した。加熱後、氷中で冷却し、遠心分離(10,000rpmで2分間)した。上清を鋳型DNA溶液として、製造例1で作製した、プライマー16S-F1、及びプライマー16S-R2を用いてPCRを行い、上記各菌株が有する16S rRNA遺伝子核酸を増幅した。PCRはTaKara Ex Taq(宝酒造)を用いて行なった。
【0075】
PCR反応液の組成は、鋳型DNA溶液 5.0μL、10×reaction buffer 5.0μL、dNTP mixture 4.0μL、プライマー16S-F1 1.0μL(20pmol/μL)、16S-R2 1.0μL(20pmol/μL)、HO 33.9μL、及びEx Taq(Takara) 0.1μLで、総容量は50.0μLである。なお、10×reaction buffer及びdNTP mixtureは、Ex Taq(Takara)のキットに添付されているものを使用した。
【0076】
PCRは、GeneAmp PCR System 9700 Thermal Cycler(Perkin-Elmer Applied Biosystems)を用いて次のように行なった。すなわち、初期変性を95℃で3分間行なった後、95℃で30秒間、60℃で30秒間、及び72℃で45秒間を1サイクルとして、これを35サイクル行い、最後に72℃で10分間の伸長反応を行なった。PCR後、Mupidミニゲル泳動槽(ADVANCE Co.,Ltd)を用いて1.5%アガロースゲルによる電気泳動を行い、エチジウムブロマイド溶液でゲルを染色して、目的バンドの増幅の有無を確認した。
電気泳動の結果の一部を図1のレーン2から10及び17に示す。レーン2から10及び17において、約527bpのバンドが確認できた。他のサンプルについても同様であった。
【0077】
図1中、レーン1は分子量マーカーを表し、レーン2から10及び17は、以下のとおりである。
レーン2 番号A-3:Streptococcus suis (serotype 10)
レーン3 番号A-7:Streptococcus dysgalactiae
レーン4 番号A-11:Erysipelothrix rhusiopathiae ATCC19414
レーン5 番号A-18:Erysipelothrix tonsillarum (serotype 7)
レーン6 番号A-8:Mycoplasma hyopneumoniae
レーン7 番号A-2:Lactococcus garvieae
レーン8 番号A-30:Haemophilus parasuis(serotype 2)
レーン9 番号A-36:Pasteurella multocida(pmt非保有株)
レーン10 番号A-32:Actinobacillus pleuropneumoniae(serotype 5)
レーン17 番号A-20:Erysipelothrix sp.(serotype 13)
【0078】
(実施例1-2)PCR(未同定株)
表1に記載の未同定株である、罹患動物由来の28菌株(番号B-1からB-28)について、実施例1-1と同様の方法で、DNAを抽出し、抽出したDNAを鋳型としてPCRを行なった。
電気泳動の結果の一部を図1のレーン11から16に示す。レーン11から16において、約527bpのバンドが確認できた。他のサンプルについても同様であった。
【0079】
図1中、レーン1は分子量マーカーを表し、レーン11から16は、以下のとおりである。
レーン11 番号B-22
レーン12 番号B-24
レーン13 番号B-14
レーン14 番号B-18
レーン15 番号B-19
レーン16 番号B-15
【0080】
(実施例2-1)配列決定(同定株)
実施例1-1のPCRにより増幅が確認されたサンプルをスピンカラム(GeneClean Spin Kit、Bio101, Inc.)によって精製し、ダイレクトシークエンス反応に供した。シークエンス反応は、Big Dye terminator cycle sequencing kit(Perkin-Elmer Japan, Applied Biosystems Division, Chiba, Japan)を用いて添付のプロトコールにしたがって行い、プライマーは、製造例1で作製したプライマー16S-F1又は16S-R2を使用した。塩基配列解析はABI PRISM 310 Genetic Analyzerを用いて行なった。
番号A-1からA-39の塩基配列は、それぞれ配列番号:3~41に示す塩基配列であった。
【0081】
塩基配列解析により得られた塩基配列について、日本DNAデータバンク(DDBJ)のデータベースを利用して細菌を同定した。同定した種名、及びデータベース上の16S rRNA遺伝子配列の当該部分との相同性(%)を表1に示した。
【0082】
(実施例2-2)配列決定(未同定株)
実施例1-2のPCRにより増幅が確認されたサンプルについて、実施例2-1と同様の方法で塩基配列解析及び菌株の同定を行なった。
番号B-1からB-28の塩基配列は、それぞれ配列番号:42~69に示す塩基配列であった。
同定した種名、及びデータベース上の16S rRNA遺伝子配列の当該部分との相同性(%)を表1に示した。
【0083】
(実施例3-1)生化学的手法による同定(同定株)
表1に記載の同定株である、罹患動物由来の2菌株(番号A-34及びA-35)について、生化学的手法により細菌の同定を行なった。
生化学的手法による細菌の同定は、21種類の生化学試験からなる、API 20(BioMerieux S.A.)を用いて行なった。生化学的手法により同定した種名を表1に示した。表1のNTは、生化学的手法による同定を行なっていないことを意味する。
【0084】
(実施例3-2)生化学的手法による同定(未同定株)
表1に記載の未同定株である、罹患動物由来の28菌株(番号B-1からB-28)について、実施例3-1と同様の方法で細菌の同定を行なった。
生化学的手法により同定した種名を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
表1から、本発明のプライマーを用いた配列決定による細菌の同定は、1回のダイレクトシークエンスにより99%以上の高い相同性で細菌を同定できるものであることが分かる。
また、番号B-17からB-19及びB-24では、生化学的手法により同定した種名が、99%以上の相同性で塩基配列解析により同定した種名と異なっており、本発明のプライマーを用いた配列決定による細菌の同定は、生化学的手法による細菌の同定と比較して、簡易、迅速かつ高精度に同定できるものであることが分かる。
【0087】
(実施例4)PCR
感染ブタより分離し、Act. pleuropneumoniaeと同定された菌株(No.1、No.2、No.3、又はNo.4)の培養液、又は大きめのコロニーをマイクロチューブにとり、滅菌蒸留水で洗浄後、100℃で5分間加熱した。加熱後、氷中で冷却し、遠心分離(13,500rpmで1分間)した。上清を鋳型DNA溶液として、製造例1から4に記載のプライマーセット1から4を用いてPCRを行なった。PCRはTaKara Ex Taq(宝酒造)を用いて行なった。
【0088】
PCR反応液の組成は、鋳型DNA 1.0μL、10×Ex Taq buffer 2.5μL、dNTP mixture(各2.5mM) 2.0μL、フォワードプライマー 2.5μL(10mM)、リバースプライマー 2.5μL(10mM)、HO 14.4μL、及びEx Taq(Takara) 0.1μLで、総容量は25.0μLである。なお、10×Ex Taq buffer及びdNTP mixtureは、Ex Taq(Takara)のキットに添付されているものを使用した。
【0089】
PCRは、GeneAmp PCR System 9700 Thermal Cycler(Perkin-Elmer Applied Biosystems)を用いて次のように行なった。すなわち、初期変性を94℃で1分間行なった後、94℃で30秒間、44℃で30秒間、及び72℃で45秒間を1サイクルとして、これを25サイクル行い、最後に72℃で7分間の伸長反応を行なった。PCR後、Mupidミニゲル泳動槽(ADVANCE Co.,Ltd)を用いて1.5%アガロースゲルによる電気泳動を行い、エチジウムブロマイド溶液でゲルを染色して、目的バンドの増幅の有無を確認した。
電気泳動の結果を図2に示す。レーン2から5、7から10、及び12から19において、約527bpのバンドが確認できた。
【0090】
図2中、レーン1、6、11及び20は分子量マーカーを表し、レーン2から5、7から10、及び12から19は以下のとおりである。
レーン2 製造例1のプライマーセット(鋳型DNAはNo.1)
レーン3 製造例2のプライマーセット(鋳型DNAはNo.1)
レーン4 製造例3のプライマーセット(鋳型DNAはNo.1)
レーン5 製造例4のプライマーセット(鋳型DNAはNo.1)
レーン7 製造例1のプライマーセット(鋳型DNAはNo.2)
レーン8 製造例2のプライマーセット(鋳型DNAはNo.2)
レーン9 製造例3のプライマーセット(鋳型DNAはNo.2)
レーン10 製造例4のプライマーセット(鋳型DNAはNo.2)
レーン12 製造例1のプライマーセット(鋳型DNAはNo.3)
レーン13 製造例2のプライマーセット(鋳型DNAはNo.3)
レーン14 製造例3のプライマーセット(鋳型DNAはNo.3)
レーン15 製造例4のプライマーセット(鋳型DNAはNo.3)
レーン16 製造例1のプライマーセット(鋳型DNAはNo.4)
レーン17 製造例2のプライマーセット(鋳型DNAはNo.4)
レーン18 製造例3のプライマーセット(鋳型DNAはNo.4)
レーン19 製造例4のプライマーセット(鋳型DNAはNo.4)
【0091】
図2から、本発明のプライマーを用いた配列決定による細菌の同定は、(1)配列番号:1で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセット、及び(2)配列番号:1で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーと、配列番号:2で表される塩基配列に相補的な塩基配列のうち少なくとも10塩基以上の連続する配列を含むプライマーとからなるプライマーセットの少なくともいずれかのプライマーセットにより、1回のダイレクトシークエンスにより99%以上の高い相同性で細菌を同定できるものであることが分かる。
図1
図2
【配列表】
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