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特許7267014癌ワクチンにおける使用のためのPDL1ペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】癌ワクチンにおける使用のためのPDL1ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20230424BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
A61K38/16
A61P37/04
A61P37/06
A61P33/06
A61P31/12
A61P31/04
A61K39/39
A61P35/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018566600
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017065122
(87)【国際公開番号】W WO2017220602
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】16175397.5
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ ハルド
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534202(JP,A)
【文献】特開2013-014583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0055111(US,A1)
【文献】国際公開第2001/034768(WO,A2)
【文献】MUNIR S,CANCER RESEARCH,米国,2013年01月17日,VOL:73, NR:6,PAGE(S):1764 - 1776,https://cancerres.aacrjournals.org/content/73/6/1764.full-text.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-OH(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される、PD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩
【請求項2】
請求項に記載のPD-L1ペプチド断片を、任意で薬学的に許容可能な添加剤及び/又は保存料と共に含む組成物。
【請求項3】
薬剤としての使用のための、
a)請求項に記載のPD-L1ペプチド断片、及び
b)アジュバント
を含む、免疫療法組成物。
【請求項4】
腫瘍形成癌疾患等の癌;感染性疾患等の感染症、例えば細胞内感染、例えばL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)及びマラリア原虫(plasmodium)から成る群から選択される病原体の細胞内感染、ウイルス感染、例えばHIV及び肝炎から成る群から選択されるウイルス感染;糖尿病、SLE、及び硬化症等の自己免疫疾患、から選択される疾患、障害又は状態の治療又は予防のための方法における使用のための、請求項に記載の免疫療法組成物。
【請求項5】
アジュバントが、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン(imidazochinilines)、モンタナイド(Montanide)ISAアジュバントから成る群から選択される、請求項3又は4に記載の免疫療法組成物。
【請求項6】
以下を含むキット;
a)請求項2に記載の組成物又は請求項3~5のいずれか1項に記載の免疫療法組成物、及び
b)インターロイキン等の免疫刺激化合物、例えばIL-2及び/又はIL-21、化学療法剤等の抗癌剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含む組成物。
【請求項7】
提供された組成物が同時に又は連続的に投与されるものである、請求項に記載のキット。
【請求項8】
PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法において使用するための、請求項に記載のペプチド断片であって、該方法が、前記臨床状態を患う個体に有効量の前記ペプチド断片を投与することを含む、前記ペプチド断片。
【請求項9】
PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法において使用するための、請求項2~5のいずれか1項に記載の組成物であって、該方法が、前記臨床状態を患う個体に有効量の前記組成物を投与することを含む、前記組成物。
【請求項10】
PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法において使用するための、請求項6~7のいずれか1項に記載のキットであって、該方法が、前記臨床状態を患う個体に前記キット中の有効量のペプチド断片を投与することを含む、前記キット。
【請求項11】
PD-L1の発現を特徴とする臨床状態の治療又は予防のための免疫療法組成物又はワクチン等の薬剤の製造のための、請求項に記載のペプチド断片の使用。
【請求項12】
治療される臨床状態がPD-L1が発現している癌疾患である、請求項11に記載のペプチド断片の使用。
【請求項13】
臨床状態が感染性疾患及び自己免疫疾患から成る群から選択される、請求項11に記載のペプチド断片の使用。
【請求項14】
サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞等の追加の癌治療と同時にまたは連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、請求項に記載のペプチド断片、又はそれらの薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
追加の癌治療が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される、請求項14に記載のペプチド断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なPD-L1ペプチド断片、並びにこのペプチド断片を含む組成物、用途及びキットに関する。さらに、本発明は、追加の癌治療と同時に又は連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のためのPD-L1ペプチド断片に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は新生細胞を認識し破壊する能力を有する。しかしながら、悪性形質転換は免疫原性抗原の発現と関連しているという事実にも関わらず、免疫系がこの抗原に効果的に応答することができないことがよくある。免疫系はこの抗原に対し寛容となる。これが起きると、新生細胞は制御できずに増殖し、発生した個体にとって予後不良である悪性癌の形成がもたらされる。癌免疫療法が成功するためには、獲得される寛容状態が克服されなければならない。いくつかの筋の証拠によると、癌細胞に対する免疫応答においてT細胞が主要なエフェクターであることが示唆される。インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase、IDO)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4、CTLA-4)及びプログラム細胞死1リガンド1(Programmed cell death 1 ligand 1、PD-L1)のような免疫調節タンパク質は、抗癌免疫応答の免疫抑制及び免疫寛容の誘導において重要な役割を果たす。CTLA-4はT細胞応答の重要な負の調節因子であり、抗腫瘍免疫応答を制限し得る。最近では、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブが、第3相臨床試験において効果を示した後、黒色腫の治療についてFDA及びEMEAにより承認された。腫瘍特異免疫に対抗し有効な抗癌免疫療法を妨げる他の主要機構には、寛容性樹状細胞(DC)が免疫応答を有効な免疫でなくするのに不可欠な役割を果たす特定の環境が必要となる。
【0003】
プログラム細胞死‐1(PD1)は、同種抗原(cognate antigen)に対するT細胞の機能的沈黙(functional silence)を維持するのに重要な阻害シグナルを伝達する調節表面分子である。そのリガンドは、PD-L1及びPD-L2、又はB7-H1及びB7-H2として知られ、炎症微小環境で見られるAPC、腫瘍細胞、胎盤細胞、及び非造血細胞上で発現されている。PD-1又はそのリガンドPD-L1を阻害すると抗腫瘍免疫が増大する。PD-L1の上方調節が、癌が宿主の免疫系を回避するのに利用することのできる機構であることは明らかである。腫瘍上のPD-L1の発現は、膵臓、腎細胞、卵巣、頭頸部、及び黒色腫を含む多くの癌について臨床転帰が悪いことと関連する(Hamanishi等, 2007, Proc. Natl. Acad. Sci.U. S. A. 104:3360-3365; Nomi等, 2007, Clin. Cancer Res. 13:2151-2157; Hino等, 2010, Cancer. 116:1757-1766)。従って、腎細胞癌の患者から採取した196個の腫瘍試料を分析すると、PD-L1の高い腫瘍での発現が腫瘍の攻撃性が増大すること及び死のリスクが4.5倍増大することと関連していることが分かった(Thompson等, 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 101:17174-17179)。PD-L1の発現が高い卵巣癌患者は、PD-L1の発現が低い患者よりも予後が有意に悪かった。PD-L1発現と上皮内CD8+Tリンパ球数との間には逆相関が見られ、それにより腫瘍細胞上のPD-L1は抗腫瘍CD8+T細胞を抑制し得ることが示唆された(Hamanishi等, 2007、上記参照)。
【0004】
樹状細胞(DC)は最も強力な抗原提示細胞であり、特定の免疫応答を効果的に刺激することが示されている。DCワクチンは一般的に、DCに成熟する末梢血単球から成り、注入される前にインビトロで抗原をパルスされる。DCに基づく癌ワクチンは過去10年間にわたって、大きな注目を集めてきた。しかしながら、多くのDCワクチン接種試験が行われてきたが、大多数の患者にとって臨床的利益は限定されている。現在のワクチン接種戦略では、誘導されるT細胞の頻度は優れたものではなく、T細胞応答を増大させるのを助けるために追加の方法が必要とされる。従って、DCの生成及び表現型を最適化してその「完全武装された」T細胞を誘導する能力を向上させ、最適な投与経路を決定し、追加治療との理想的な組み合わせを特定するため、更なる研究が必要とされている。
【0005】
プログラム細胞死1(PD-1)はT細胞の表面上に発現される抑制分子である。PD-1リガンドであるPD-L1(CD274又はB7-H1としても知られる)は、単球、DC及びT細胞等のリンパ球様細胞上に構成的に発現され、内皮及び上皮細胞等の非造血細胞上にも存在する2,3。PD-L1は、JAK/STAT依存的と思われる方法で、IFN調節因子-1(IFN regulatory factor-1、IRF-1)を通してI型及びII型インターフェロン(IFN)により上方調節され得る。一般的に、T細胞上のPD-1とPD-L1との間の相互作用により、通常の免疫応答の間、末梢性細胞寛容の誘導及び維持が制御される。PD-L1は、自己免疫疾患の誘導及びエフェクター段階の両方の間、自己反応性T細胞の重要な負の調節因子であり、様々な方法でその抑制機能を発揮する。PD-1に対するリガンドであるのに加え、PD-L1はB7-1(CD80)に結合し、B7-1共刺激を妨げる。IL-10は、PD-L1が結合すると生成され、活性化T細胞のアポトーシスを増大させると考えられる。免疫系は常に外来の病原体、及び癌細胞等の異常な細胞を探索している。そのため、癌が成長し続けるためには、免疫系から身を隠し破壊を回避しなければならない。PD-1及びそのリガンドは、末梢性寛容を維持し自己免疫を防ぐのに中心的な役割を果たすが、癌細胞はこの系を利用して抑制微小環境を作り、従って免疫により媒介される死滅から自身を保護することができる。実際、PD-L1発現は多数の癌において高いことが分かっており7,8、PD-L1発現は最初、腎細胞癌における腫瘍の攻撃性の指標として説明されていた。さらに、腫瘍細胞上のPD-L1発現は、卵巣癌及び膵臓癌を含む多数の固形癌における予後因子として提案されている10,11
【0006】
モノクローナル抗体によるPD-1又はPD-L1の遮断は優れた臨床反応をもたらし12,13、抗PD1抗体であるペンブロリズマブ及びニボルマブは最近、米国食品医薬品局(FDA)により転移性黒色腫の治療について承認された(それぞれ2014年9月及び12月)。最近のPD-L1特異的T細胞の発見は、免疫系自体がPD-1及びそのリガンドの効果に対抗する機構を有することを示唆する14,15。実際、末梢血におけるPD-L1特異的T細胞応答は癌患者において健康なドナーよりも高い頻度で発生することが示された14,15。それに続き、このPD-L1特異的T細胞は、黒色腫細胞及び非悪性のDCを含むPD-L1発現細胞を溶解させることが分かった14,16。さらにPD-L1特異的T細胞の活性化はウイルス抗原に対する免疫応答を増強する17。これらの発見により、免疫ホメオスタシスにおけるPD-L1特異的T細胞についての自己反応性機能が示唆される。さらに、それにより、PD-L1由来のペプチドでの刺激は、微小環境における免疫バランスを変えて免疫抑制を低下させることにより、既存の又はワクチンにより生成された免疫応答を促進できることが暗示される。
【0007】
我々は最近、ステージIVの悪性黒色腫の患者においてワクチン試験を行った(Borch等、準備中)。当該試験では、腫瘍関連抗原であるp53、サバイビン及びテロメラーゼをコードするmRNAでトランスフェクトされたDCを用いて患者にワクチン接種した(当該ワクチンは本明細書において「DCvacc」と称される)。しかしながら、臨床的利益は限定されており、患者の免疫学的モニタリングにより、患者の末梢血単核細胞(PBMC)はDCvaccに対し限定された反応性しか有しないことが明らかとなった。
【発明の概要】
【0008】
本発明者等は、優れた溶解度を有し、凝集せず、βシートを形成しやすいものでなく、それ自体が、例えばアジュバントを共に有するワクチンに適した、新たなヒトPD-L1(配列番号1)の断片を特定した。配列番号91のPD-L1ペプチド断片(本明細書に参照により組み込まれるWO2013056716に記載のPDlong2)は極めて疎水性であり、非常にβシートを形成しやすく、それゆえ溶解度が低い。さらにこのペプチドは遊離SHを含んでおり、ダイマー形成を防ぐために低pHで扱わなければならない。
【0009】
さらに、PD-L1ペプチド断片である配列番号91及び89(WO2013056716及び本明細書において、それぞれPDlong2及びPDlong1と称される)で共刺激すると、樹状細胞に基づく癌ワクチンの免疫原性が増大することが示された(下記参照)。このため、これら2つのPD-L1の断片のいずれか1つによりPD-L1特異的T細胞を活性化させると、DCワクチンの免疫原性が直接調節され得る。従って、PD-L1エピトープを追加することは、癌ワクチン及び他の免疫療法剤の有効性を増大させるために容易に適用できる魅力的な選択肢であり得る。従って、配列番号91から成るPD-L1ペプチド断片又は配列番号89から成るPD-L1ペプチド断片、並びにこれらを含むより長い配列は本明細書に示される効果を有すると考えられる。
【0010】
一態様において本発明は、一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX(配列番号78)
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
を有するPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩に関する。言い換えると、C末端のアミノ酸は対応するアミドにより置換されても良い。X及びXはそれぞれ独立に利用可能な選択肢から選択され得る。
【0011】
C末端残基のアミノ酸形態が存在する場合、これは本明細書においてX-OHという表記で示され得る。一方、アミド形態が存在する場合、これはX-NHという表記で示され得る。いずれの表記も使用されない場合、C末端残基のアミノ酸形態もアミド形態も包含されることが理解されるだろう。従って、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態により置換される、表Aに列挙されるアミノ酸配列のいずれか1つを含んでも良い、又はそれから成っても良い。
【0012】
【表1】
【0013】
「開始位置(Start pos)」及び「終止位置(End pos)」列は、配列番号1の配列内の各々のペプチドの開始位置と終止位置を示す。表から理解されるように、本発明のペプチドは配列番号1のPD-L1配列の17~33個の連続アミノ酸を含む、又はそれから成る。本明細書に記載のように、安定性を改善するために追加の残基がN及び/又はC末端に追加され得る。配列番号1の連続アミノ酸は、好ましくは、少なくとも配列番号1の位置242~258に対応するアミノ酸を含み、C末端に配列番号1の位置259~268に対応する10個までの追加アミノ酸、及び/又はN末端に配列番号1の位置236~241に対応する6個までの追加アミノ酸を有する。特に好ましいのは、配列番号1の位置238~265に対応するアミノ酸配列RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)を含む、又はそれから成るペプチドである。このペプチドは本明細書においてIO104.1と呼ばれ得る。この配列のC末端残基は対応するアミド形態に置換されても良く、同様に好まれ得る。C末端がアミノ酸である断片はIO104.1-OHと呼ばれ得る。C末端にアミドを有する断片は、本明細書においてIO104.1-NHと呼ばれ得る。1、2、3、4、又は5個の保存的置換が表Aの配列のどの1つになされても良く、結果として生じる配列は依然として本発明のペプチドであると考えられるが、前記ペプチドは好ましくは、PDL111というHLA-A2エピトープ(配列番号92として提供される配列)に特異的なT細胞により認識され得る。最も好ましくは、前記保存的置換は、PDL111エピトープのアミノ酸配列である配列番号1の位置250~258に対応するアミノ酸を変えない。
【0014】
一実施形態では、本発明のペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-NH(C末端にアミドを有する配列番号77)
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI(配列番号67)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号67)、
VILGAILLCLGVALTFI(配列番号2)、
VILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号2)、
又はその薬学的に許容可能な塩から選択される。典型的には、ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、及び
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される。
【0015】
更なる態様では、本発明は、任意で薬学的に許容可能な添加剤と共に、本発明のPD-L1ペプチド断片を含む組成物に関する。
【0016】
なお更なる態様では、本発明は、医薬としての使用のための、
a)本発明のPD-L1ペプチド断片、及び
b)アジュバント
を含む、ワクチン等の免疫療法組成物に関する。
【0017】
一実施形態では、本発明の免疫療法組成物は、腫瘍形成癌疾患等の癌;感染性疾患等の感染症、例えば細胞内感染(例えばL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)及びマラリア原虫(plasmodium)から成る群から選択される病原体の細胞内感染)、ウイルス感染(例えばHIV及び肝炎から成る群から選択されるウイルスの感染);糖尿病、SLE、及び硬化症等の自己免疫疾患、から選択される疾患、障害若しくは状態の治療又は予防のための方法における使用のためのものである。
【0018】
更なる実施形態では、アジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン(imidazochinilines)、モンタナイド(Montanide)ISAアジュバントから成る群から選択される。
【0019】
更なる態様では、本発明は、以下を含むキットに関する;
a)本発明の免疫療法組成物、及び
b)インターロイキン等の免疫刺激化合物、例えばIL-2及び/又はIL-21、化学療法剤等の抗癌剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含む組成物。一実施形態では、提供される組成物は同時に又は連続的に投与すべきである。
【0020】
なお更なる態様では、本発明は、PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態を患う個体に有効量の本発明のペプチド断片、本発明の組成物、又は本発明のキットを投与することを含む方法に関する。
【0021】
更なる態様では、本発明は、PD-L1の発現を特徴とする臨床状態の治療又は予防のための免疫療法組成物又はワクチン等の医薬の製造のための、本発明のペプチド断片の使用に関する。一実施形態では、治療される臨床状態はPD-L1が発現している癌疾患である。別の実施形態では、臨床状態は感染性疾患及び自己免疫疾患から成る群から選択される。
【0022】
なお更なる態様では、本発明は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞等の追加の癌治療と同時にまたは連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
を有する、PD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩に関する。PD-L1ペプチド断片は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態により置換されている、表Aに開示の任意のペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩から選択されても良い。一実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-NH(C末端にアミドを有する配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI(配列番号67)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号67)、
VILGAILLCLGVALTFI(配列番号2)、
VILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号2)
又はそれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。典型的には、ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、及び
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される。
【0023】
更なる態様では、本発明は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞等の追加の癌治療と同時にまたは連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、
一般式:
FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)
を含むPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩に関する。一実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、一般式:FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)を有するPD-L1断片から選択される。更なる実施形態では、追加の癌治療は免疫系チェックポイント阻害剤から選択され、前記阻害剤は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択されるチェックポイント遮断抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】PD-L1由来エピトープでの共刺激により樹状細胞ワクチンに対し反応性のT細胞の頻度が向上する。(図1A)DCvaccを用いて、患者から得たPBMC(5×10)をインビトロで2回刺激した。その翌日、培養物を1又は2個の長いPD-L1エピトープで共刺激し、又は無関係なHIV対照ペプチドと共にインキュベートした。ペプチド刺激の翌日にすべての培養物をIL2で刺激した。細胞内TNFα/INFγ染色により16~20日後にDCvaccに反応性のT細胞について培養物を調べた。
図1B】PD-L1由来エピトープでの共刺激により樹状細胞ワクチンに対し反応性のT細胞の頻度が向上する。(図1B~E)細胞内TNFα/INFγ染色により測定されるように、DCvaccに対するT細胞の免疫性がPD-L1特異的T細胞の同時活性化により有意に増大した、3人の黒色腫患者から得たPBMC培養物の例。(図1B)CD4T細胞はDCvaccに応答してTNFαのみを放出した。
図1C】PD-L1由来エピトープでの共刺激により樹状細胞ワクチンに対し反応性のT細胞の頻度が向上する。(図1B~E)細胞内TNFα/INFγ染色により測定されるように、DCvaccに対するT細胞の免疫性がPD-L1特異的T細胞の同時活性化により有意に増大した、3人の黒色腫患者から得たPBMC培養物の例。(図1C)PD-L1ペプチド共刺激は、DCvaccへの応答においてTNFα/IFNγ二重陽性CD4T細胞を誘導した。
図1D】PD-L1由来エピトープでの共刺激により樹状細胞ワクチンに対し反応性のT細胞の頻度が向上する。(図1B~E)細胞内TNFα/INFγ染色により測定されるように、DCvaccに対するT細胞の免疫性がPD-L1特異的T細胞の同時活性化により有意に増大した、3人の黒色腫患者から得たPBMC培養物の例。(図1D、E)PD-L1エピトープでの共刺激により、DCvaccに対し応答するCD4及びCD8の両方の細胞の数が増大した。
図1E】PD-L1由来エピトープでの共刺激により樹状細胞ワクチンに対し反応性のT細胞の頻度が向上する。(図1B~E)細胞内TNFα/INFγ染色により測定されるように、DCvaccに対するT細胞の免疫性がPD-L1特異的T細胞の同時活性化により有意に増大した、3人の黒色腫患者から得たPBMC培養物の例。(図1D、E)PD-L1エピトープでの共刺激により、DCvaccに対し応答するCD4及びCD8の両方の細胞の数が増大した。
図2A】PDLong1及び樹状細胞ワクチンでのPBMCの共刺激。16~20日目、2回のDCvaccでの刺激、及び2回の無関係の対照ペプチド又はPDLong1ペプチドでの刺激の後、DCvaccに応答してTNFα/IFNγを放出した細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより特定した。ワクチン接種の前(基準)及び4回のワクチン接種の後に8人の黒色腫患者から採取したPBMCの培養物における、DCvacc反応性のCD4T細胞(図2A)及びCD8T細胞(図2B)のパーセンテージ。
図2B】PDLong1及び樹状細胞ワクチンでのPBMCの共刺激。16~20日目、2回のDCvaccでの刺激、及び2回の無関係の対照ペプチド又はPDLong1ペプチドでの刺激の後、DCvaccに応答してTNFα/IFNγを放出した細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより特定した。ワクチン接種の前(基準)及び4回のワクチン接種の後に8人の黒色腫患者から採取したPBMCの培養物における、DCvacc反応性のCD4T細胞(図2A)及びCD8T細胞(図2B)のパーセンテージ。
図3A】PDLong1及びPDLong2に対する天然のT細胞応答。(図3A)IFNγELISPOTを用いて、黒色腫患者から得た腫瘍浸潤リンパ球におけるPDLong1及びPDLong2に対するT細胞応答を測定した。12人の黒色腫患者から得た5×10個の細胞において、PDLong1又はPDLong2に応答してIFNαを放出する細胞の平均の数を測定した。
図3B】PDLong1及びPDLong2に対する天然のT細胞応答。(図3B)PDLong1又はPDLong2ペプチドを加え、又はこれらを加えずに、2人の黒色腫患者から得たTILを用いて行ったELISPOTウェルの例。
図3C】PDLong1及びPDLong2に対する天然のT細胞応答。(図3C)細胞内IFNγ/TNFα染色について分析する前に、PDLong1又はPDLong2を加え、又は加えずに、腫瘍浸潤リンパ球を5時間培養した。
図3D】PDLong1及びPDLong2に対する天然のT細胞応答。(図3D)ペプチドなし、又はPDLong1若しくはPDLong2有りに対する応答における、黒色腫患者から得た腫瘍浸潤リンパ球のIFNγ/TNFα染色の例。
図4】DCワクチンと、PDLong1+PDLong2での患者PBMCの刺激。16~20日目、2回のDCvaccでの刺激、及び2回の無関係の対照ペプチド又はPDLong1+PDLong2ペプチドでの刺激の後、DCvaccに応答してTNFα/IFNγを放出した細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより特定した。ワクチン接種の前(基準)及び4回のワクチン接種の後に8人の黒色腫患者から採取したPBMCの培養物における、DCvacc反応性のCD4T細胞(図4A)及びCD8T細胞(図4B)のパーセンテージ。
図5A】4人の患者由来の細胞培養物から得られた上清におけるサイトカイン分泌の比較。IFNγ(図5A)、IL-6(図5B)、又はTGFβ(図5C)の存在を測定できるよう、無関係な対照ペプチドで又はPDLong1+PDLong2で共刺激した培養物から得た上清をDCvacc反応性のT細胞の分析の日に回収した。
図5B】4人の患者由来の細胞培養物から得られた上清におけるサイトカイン分泌の比較。IFNγ(図5A)、IL-6(図5B)、又はTGFβ(図5C)の存在を測定できるよう、無関係な対照ペプチドで又はPDLong1+PDLong2で共刺激した培養物から得た上清をDCvacc反応性のT細胞の分析の日に回収した。
図5C】4人の患者由来の細胞培養物から得られた上清におけるサイトカイン分泌の比較。IFNγ(図5A)、IL-6(図5B)、又はTGFβ(図5C)の存在を測定できるよう、無関係な対照ペプチドで又はPDLong1+PDLong2で共刺激した培養物から得た上清をDCvacc反応性のT細胞の分析の日に回収した。
図5D】4人の患者由来の細胞培養物から得られた上清におけるサイトカイン分泌の比較。IFNγ(図5A)、IL-6(図5B)、又はTGFβ(図5C)の存在を測定できるよう、無関係な対照ペプチドで又はPDLong1+PDLong2で共刺激した培養物から得た上清をDCvacc反応性のT細胞の分析の日に回収した。(図5D)さらに、HIV又はPDLong1+PDLong2エピトープで2回目の刺激をした後、細胞の総数を計数した。
図6】無関係の対照ペプチドと対比したIO104.1-OH及びIO104.1-NHに対する応答における、黒色腫患者の腫瘍浸潤リンパ球におけるIFNγ放出細胞の測定。
図7】PDLong2、IO104.1-OH、IO104.1-NH、PDL111、及び無関係な対照ペプチドに対するPDL111特異的CD8T細胞応答のElispot比較。
図8A】マウスPDL1特異的T細胞は、マウスにおいて自然に発生している。(図8A)実施例3に記載の実験についての時系列を示す。
図8B】マウスPDL1特異的T細胞は、マウスにおいて自然に発生している。(図8B)エキソビボで5つのペプチド候補のうちの1つで刺激した脾細胞についてのElispotの結果。
図8C】マウスPDL1特異的T細胞は、マウスにおいて自然に発生している。(図8C)最も効果的なペプチド(mLong1)で刺激した脾細胞についての、代表的なElispotウェル及び結果。n=5~10マウス/群。
図9A】アレルゲン2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)により引き起こされる局所的炎症は、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞応答を誘発する。図9Aは実施例4に記載の実験についての時系列を示す。
図9B】アレルゲン2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)により引き起こされる局所的炎症は、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞応答を誘発する。(図9B)エキソビボでmPD-L1long1又はmPD-L1shortで刺激した脾臓及びdLN由来の細胞についてのElispot結果。
図9C】アレルゲン2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)により引き起こされる局所的炎症は、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞応答を誘発する。(図9C)対照に比べて最も応答が高かったDNFB処理マウスのうち1匹の代表的なElispotウェル。n=12マウス/群。
図10A】mPD-L1long1を用いたワクチン接種により、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞の集団が増殖する。図10Aは、実施例5に記載の実験についての時系列を示す。
図10B】mPD-L1long1を用いたワクチン接種により、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞の集団が増殖する。(図10B)エキソビボでmPD-L1long1又はmPD-L1shortで刺激した脾細胞についてのElispot結果。
図10C】mPD-L1long1を用いたワクチン接種により、マウスにおいてPD-L1特異的T細胞の集団が増殖する。(図10C)各群の代表的なマウスのElispotウェル。n=3~4マウス/群。
図11A】mPD-L1long1を用いたワクチン接種は、マウスにおいて抗腫瘍効果を示す。(図11A)は、実施例6に記載の実験についての時系列を示す。
図11B】mPD-L1long1を用いたワクチン接種は、マウスにおいて抗腫瘍効果を示す。(図11B)各マウスについての腫瘍体積の経時変化(M1~M3にはモンタナイドのみを用いてワクチン接種した;M4~M5にはmPD-L1long1+モンタナイドを用いてワクチン接種した)。
図11C】mPD-L1long1を用いたワクチン接種は、マウスにおいて抗腫瘍効果を示す。(図11C)カプランマイヤー生存曲線。
図11D】mPD-L1long1を用いたワクチン接種は、マウスにおいて抗腫瘍効果を示す。(図11D)各群についての平均腫瘍体積の経時変化。n=3マウス/群。
【発明を実施するための形態】
【0025】
配列の説明
配列番号1は、ヒト(h)PD-L1の全長アミノ酸配列である。
配列番号2~77は、本発明の例示的ペプチドのアミノ酸配列であり、そのすべてがhPD-L1の断片である。
配列番号78は、本発明のペプチドに相当する一般式を表すアミノ酸配列である。
配列番号79~81は、配列番号78の一般式に加えられても良い、様々なN末端アミノ酸配列である。
配列番号82~88は、配列番号78の一般式に加えられても良い、様々なC末端アミノ酸配列である。
配列番号89は、本発明の他の例示的ペプチドであり、hPD-L1の断片である。
配列番号90は、配列番号89に含まれるT細胞エピトープ配列である。
配列番号91は、本明細書に開示されるhPDL1の断片のアミノ酸配列である。
配列番号92は、PDL111と称されるHLA-A2エピトープのアミノ酸配列(hPDL1の位置250~258に相当する)である。
配列番号93及び94は、実施例において対照として用いられる特定のペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号95は、マウス(m)PD-L1の全長のアミノ酸配列である。
配列番号96~100は、実施例に記載のマウスモデル実験において、本発明のペプチドの類似物として用いられる、mPD-L1由来のペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号101は、配列番号96に含まれるT細胞エピトープ配列である。
【0026】
癌免疫抑制の問題はWO2013056716において解決された。WO2013056716ではヒトPD-L1全長(配列番号1)のPD-L1断片は、癌患者におけるPD-L1発現細胞に対する自発的な細胞傷害性免疫応答という、発明者等による驚くべき発見に基づいていた。これらの発見は、癌疾患の制御において一般的に適用可能となり得る、新たな治療及び診断アプローチへの道を切り開く。興味深いことに、当該発見は癌に限定されず、PD-L1を発現する望ましくない細胞が存在することを特徴とする他の臨床状態においても有益である。
【0027】
WO2013056716に開示されている発明は、PD-L1を発現する癌細胞を直接死滅させることにより、及びPD-L1を発現する制御性細胞を死滅させることにより、癌疾患を標的とする。これは、T細胞がPD-L1発現細胞を認識することができるようにすることにより、行われる。同様に、臨床状態が感染症である場合、T細胞はPD-L1を発現するAPC/DCを死滅させることができるようにされる。従って、これらのPD-L1発現細胞を標的とする本発明の方法の適用に当たり、癌細胞及びAPCにおいて免疫抑制酵素PD-L1の発現は陽性である。このアプローチは、特にAPC/DCの死滅を伴うため、当該分野における一般的な見解に逆行する。一般的な見解では、効果的な免疫応答を開始するために必要と考えられるAPC/DCを保護しつつ、これらの細胞周辺の寛容環境(tolerating milieu)を取り除くために、一般的にPD-L1を阻害することが試みられている。さらに、PD-L1発現細胞に対する自発的な細胞傷害性免疫応答の発見は、特に驚くべきものである。なぜなら、PD-L1発現細胞は他の免疫療法アプローチの所望の効果を打ち消すからである。このように、PD-L1及び腫瘍を標的とする免疫療法の組み合わせは非常に相乗的である。インビボでのPD-L1特異的T細胞応答の存在により、癌患者がPD-L1ペプチドの存在に応答してインビボでPD-L1に対するT細胞応答を生じさせることができることが実証される。このため、T細胞応答を生じさせるための2つの条件が満たされる:T細胞が癌患者に存在し、かつ、それが増殖する能力を有する(それらは本出願において示される)。免疫学分野における一般常識から当然であるように、追加のPD-L1タンパク質又はPD-L1ペプチドを与えるとPD-L1特異的T細胞応答が生じる。抗原のみを認識できるB細胞上の膜結合型抗体とは対照的に、T細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)と称されるタンパク質に結合した抗原ペプチドを含む、複合体リガンドを認識する。ヒトにおいてこの分子はヒト白血球抗原(HLA)として知られる。クラスI HLA分子は、細胞内のタンパク質分解からペプチドを得て、細胞表面でこれをT細胞に提示する。従って、それによりT細胞は細胞の変化を精査することができる。T細胞はHLA分子の存在下で抗原に出会うと、クローン性増殖し、記憶T細胞及び様々なエフェクターT細胞に分化する。このため、自発的免疫応答の特定は抗原がT細胞の標的であるという証拠となる。それにより、特異的T細胞が既にインビボで活性化され増殖していることが実証される。
【0028】
配列番号91のPD-L1ペプチド断片(WO2013056716においてPDLong2として記載される)は、極めて疎水性であり、非常にβシートを形成しやすく、それ故溶解度が低い。さらに、このペプチドは遊離SHを含んでおり、ダイマー形成を防ぐために低pHで扱わなければならない。このため、配列番号91のアミノ酸配列、又はC末端から6個までのアミノ酸を欠く当該配列の一部を少なくとも含む、より溶解しやすく扱いやすいPD-L1ペプチド断片が必要である。
【0029】
広い態様では、本発明は、一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
を有する、PD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩に関する。PD-L1ペプチド断片は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態により置換されている、表Aに開示の任意のPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩から選択され得る。本明細書で使用される場合、示される任意のアミノ酸配列はC末端アミノ酸において改変されアミド形態であっても良く(-CONH)、また、酸形態であっても良い(-COOH)。このように、これらはいずれも好ましい実施形態であり、-NH又は-OHにより特定されない限り、I、F、R、L、K、G、M、D等の任意のC末端アミノ酸はアミド及び酸形態の両方を含むことが意図される。
【0030】
更なる実施形態では、XはRTHL(配列番号79)及びNERTHL(配列番号81)から成る群から選択される。
【0031】
なお更なる実施形態では、XはFRLRKGR-OH(配列番号85)、FRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号85及びFRLRKGRMMD-OH(配列番号88)から成る群から選択される。
【0032】
一実施形態では、本発明のペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-OH(配列番号77)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-NH(C末端にアミドを有する配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-OH(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-OH(配列番号67)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号67)、
VILGAILLCLGVALTFI-OH(配列番号2)、
VILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号2)、
又はその薬学的に許容可能な塩
から選択される。典型的には、ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-OH(配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-OH(配列番号52)、及び
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される。
【0033】
更なる態様では、本発明は、任意で薬学的に許容可能な添加剤と共に、本発明のPD-L1ペプチド断片を含む組成物に関する。更なる実施形態では、本発明のPD-L1ペプチド断片は、広い態様に関する上記のいずれか1つから選択される。典型的には、薬学的に許容可能な添加剤が存在する。一実施形態では、組成物はワクチン組成物である。更なる実施形態では、添加剤は、担体、賦形剤、希釈剤、及びアジュバントから選択され、典型的にはアジュバントである。このようなアジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタナイドISAアジュバントから成る群から選択され得る。
【0034】
なお更なる態様では、本発明は、医薬としての使用のための、
a)本発明のPD-L1ペプチド断片、及び
b)アジュバント
を含む、免疫療法組成物に関する。更なる実施形態では、本発明のPD-L1ペプチド断片は、広い態様に関する上記のいずれか1つから選択される。更なる実施形態では、アジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタナイドISAアジュバントから成る群から選択され得る。これらのアジュバントの各々、又はアジュバントの群は、個別の実施形態を構成する。
【0035】
一実施形態では、本発明の免疫療法組成物は、腫瘍形成癌疾患等の癌;感染性疾患等の感染症、例えば細胞内感染(例えばL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)及びマラリア原虫(plasmodium)から成る群から選択される病原体の細胞内感染)、ウイルス感染(例えばHIV及び肝炎から成る群から選択されるウイルスの感染);糖尿病、SLE、及び硬化症等の自己免疫疾患、から選択される疾患、障害又は状態の治療又は予防のための方法における使用のためのものである。疾患、障害若しくは状態の各々、又は疾患、障害若しくは状態のグループは、個別の実施形態を構成する。
【0036】
更なる態様では、本発明は、以下を含むキットに関する;
a)本発明の免疫療法組成物、及び
b)インターロイキン等の免疫刺激化合物、例えばIL-2及び/又はIL-21、化学療法剤等の抗癌剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含む組成物。一実施形態では、提供される組成物は同時に投与すべきである。別の実施形態では、提供される組成物は、連続的に投与すべきである。a)の免疫療法組成物に関して、本発明のPD-L1ペプチド断片の更なる実施形態は、広い態様に関する上記のいずれか1つから選択される。更なる実施形態では、アジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタナイドISAアジュバントから成る群から選択され得る。これらのアジュバントの各々、又はアジュバントの群は、個別の実施形態を構成する。b)の第2活性成分に関して、第2活性成分の更なる実施形態は、個別の実施形態を構成する上記のいずれか1つから選択される。
【0037】
更なる態様では、本発明は、以下を含むキットに関する;
a)本発明の免疫療法組成物、及び
b)免疫系チェックポイントを遮断又は阻害する免疫調節剤(そのチェックポイントは、a)の組成物がその構成要素を含むチェックポイントと同一でも良く、又は異なっても良い)。言い換えると、それはPD1とPDL1との間の相互作用を含むチェックポイントと同一でも、又は異なっても良い。
【0038】
一実施形態では、当該チェックポイントは、以下から選択される:
a)IDO1とその基質との間の相互作用;
b)PD1とPDL1、及び/又はPD1とPDL2との間の相互作用;
c)CTLA4とCD86、及び/又はCTLA4とCD80と間の相互作用;
d)B7-H3及び/又はB7-H4と、それら各々のリガンドとの間の相互作用;
e)HVEMとBTLAとの間の相互作用;
f)GAL9とTIM3との間の相互作用;
g)MHCクラスI又はIIとLAG3との間の相互作用;及び
h)MHCクラスI又はIIとKIRとの間の相互作用。
【0039】
更なる実施形態では、免疫調節剤は、前記免疫系チェックポイントの成分に結合する抗体又は小分子阻害剤(SMI)である。
【0040】
更なる実施形態では、薬剤はIDO1の小分子阻害剤であり、任意で前記阻害剤はエパカドスタット(INCB24360)、インドキシモド、GDC-0919(NLG919)、又はF001287であり、或いは、前記薬剤はCTLA4又はPD1に結合する抗体であり、任意でCTLA4に結合する前記抗体はイピリムマブであり、PD1に結合する前記抗体はペムブロリズマブである。
【0041】
なお更なる態様では、本発明は、PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態を患う個体に有効量の本発明のペプチド断片、本発明の組成物、又は本発明のキットを投与することを含む方法に関する。
【0042】
なお更なる態様では、本発明は、PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態を患う個体に有効量の一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
を有するPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む方法に関する。PD-L1ペプチド断片は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態に置換される、表Aに開示の任意のPD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩から選択され得る。
【0043】
更なる態様では、本発明は、PD-L1の発現を特徴とする臨床状態の治療又は予防のための免疫療法組成物又はワクチン等の医薬の製造のための、本発明のPD-L1ペプチド断片の使用に関する。本発明のペプチド断片の使用の一実施形態では、医薬は免疫療法組成物である。本発明のペプチド断片の使用の他の実施形態では、医薬はワクチンである。一実施形態では、治療される臨床状態は、PD-L1が発現している癌疾患である。別の実施形態では、臨床状態は感染性疾患及び自己免疫疾患から成る群から選択される。更なる実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
又はその薬学的に許容可能な塩を有する。PD-L1ペプチド断片は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態に置換される、表Aに開示の任意のPD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩から選択され得る。
【0044】
なお更なる態様では、本発明は、追加の癌治療と同時に又は連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、一般式:
VILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含む]
を有するPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩に関する。PD-L1ペプチド断片は、任意でC末端アミノ酸が対応するアミド形態に置換される、表Aに開示の任意のPD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩から選択され得る。追加の癌治療はサイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞であり得る。サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞である追加の癌治療の各々は、個別の実施形態を構成する。例えば、更なる実施形態では、追加の癌治療は免疫系チェックポイント阻害剤から選択され、当該阻害剤は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択されるチェックポイント遮断抗体である。一実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-NH(C末端にアミドを有する配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI(配列番号67)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号67)、
VILGAILLCLGVALTFI(配列番号2)、
VILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号2)、
又はそれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。典型的には、ペプチド断片は、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD(配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)、及び
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される。
【0045】
更なる態様では、本発明は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞等の追加の癌治療と同時にまたは連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、
一般式:
FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)
を含むPD-L1ペプチド断片又はその薬学的に許容可能な塩に関する。一実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、配列番号1の配列の35個までの連続アミノ酸、例えば30個又は25個、から成り、一般式:FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)を有するPD-L1断片を含む。一実施形態では、PD-L1ペプチド断片は、一般式:FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)を有するPD-L1断片から選択される。更なる実施形態では、追加の癌治療は免疫系チェックポイント阻害剤から選択され、当該阻害剤は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択されるチェックポイント遮断抗体である。
【0046】
本明細書に開示のPD-L1ペプチド断片は、固相ペプチド合成(SPPS)等の標準的なペプチド合成により作製される。SPPSは、実験室でペプチドを合成するための標準的な方法である。SPPSにより、細菌で発現させるのが困難な天然ペプチドの合成、非天然アミノ酸の組み込み、ペプチド/タンパク質骨格の改変、及びD-アミノ酸から成るD-タンパク質の合成が可能となる。小多孔質ビーズを、機能ユニット(「リンカー」)により処理し、ペプチド鎖がその上に生成され得る。ペプチドは、無水フッ化水素又はトリフルオロ酢酸等の試薬によりビーズから切断されるまで、ビーズに共有結合している。従って、ペプチドは固相に固定され、液相試薬及び合成副産物が洗い流される濾過過程の間、保持され得る。SPPSの一般的原理は、脱保護-洗浄-カップリング-洗浄という繰り返しサイクルの1つである。固相に結合されたペプチドの遊離N末端アミンは一つのN-保護アミノ酸ユニットにカップリングされる。その後このユニットは脱保護され、新たなN末端アミンを露呈し、そこに更なるアミノ酸が結合され得る。この技術が優れているのは、全ての伸長中の目的ペプチドが不溶性樹脂に共有結合したままの状態で、各反応後に洗浄サイクルを行い余分な試薬を取り除くことができるというところに一部ある。SPPSには2つの主な使用形態、Fmoc及びBoc、がある。リボソームタンパク質合成と異なり、固相ペプチド合成はC末端からN末端に進行する。アミノ酸モノマーのN末端は、これら2つの基のいずれかにより保護され、脱保護されたアミノ酸鎖に付け加えられる。多くの研究グループは手作業でSPPSを行い続けているが、どちらの方法でも自動合成装置が利用できる。さらに、当業者は、上述及び後述の工程において、中間化合物の官能基は保護基により保護される必要があり得ることを理解するだろう。
【0047】
本明細書に開示の化合物及び医薬組成物が上述の治療のために使用される場合、治療有効量の少なくとも1つの化合物が前記治療を必要とする哺乳動物に投与される。
【0048】
本明細書に使用される場合、アミノ酸は、当業者に既知であり便宜のために以下の表に示される一又は三文字の略号により、特定される。
【0049】
【表2】
【0050】
本明細書で使用される「治療」及び「治療すること」との用語は、疾患又は障害等の状態と闘うための患者の管理及び看護を意味する。当該用語は、患者が患う所与の症状についてのあらゆる治療、例えば、症状若しくは合併症を軽減するための、疾患、障害若しくは状態の進行を遅らせるための、症状及び合併症を軽減若しくは緩和するための、及び/又は疾患、障害、若しくは状態を治し除去するための、並びに状態を予防するための活性化合物の投与等、を含むことが意図されている。ここで、予防は、疾患、状態又は障害と闘うための、患者の管理及び看護と理解するべきであり、症状又は合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。治療は急性的に又は慢性的に行われ得る。治療される患者は好ましくは哺乳類である;特にヒトであるが、それにはイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、及びブタ等の動物もまた含まれ得る。
【0051】
本明細書に使用される、本発明のPD-L1ペプチド断片又は本明細書に開示のペプチド断片の「治療有効量」との用語は、所与の疾患及びその合併症の臨床症状を治し、軽減し、又は抑えるのに十分な量を意味する。これを達成するのに適切な量が「治療有効量」と定義される。各用途のための有効量は疾患又は負傷の重症度、並びに対象の体重及び全身状態に依存するだろう。適切な投与量の決定は、値のマトリクスを作成しマトリクス内の様々な点を試験することにより、通常の実験を用いて達成され得、それはすべて熟練の医師又は獣医の通常技術の範囲内であることは理解されるだろう。
【0052】
なお更なる態様では、本発明は、本発明のPD-L1ペプチド断片、及び任意で担体又は賦形剤等の薬学的に許容可能な添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な添加剤」は、限定されないが、当業者が医薬組成物を作るために本発明の化合物を製剤化する際使用することを検討するだろう担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、着色料、香料、保存料等を含むことが意図されている。
【0054】
本発明の組成物に使用され得るアジュバント、希釈剤、賦形剤、及び/又は担体は、一般式(1)の化合物及び医薬組成物の他の成分と混合可能であり、その投与を受ける者に対し有害でないという意味で、薬学的に許容可能でなければならない。好ましくは、当該組成物はアレルギー反応等の有害反応を引き起こし得る如何なる物質も含んではならない。本発明の医薬組成物に使用され得るアジュバント、希釈剤、賦形剤及び担体は当業者に周知である。
【0055】
アジュバントとは、それを組成物に混合すると、組成物により誘発される免疫応答が増大する、又はそうでなければ改変される任意の物質である。広義ではアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントはまた、好ましくは、デポー効果を有し、投与部位からの活性剤の徐放、または持続放出をもたらし得る。アジュバントの一般的な議論は、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版, 1986)、61-63頁に与えられる。
【0056】
アジュバントは、以下から成る群から選択され得る:AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、アラム、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11687、nor-MDPとも称される)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEとも称される)、2% スクアレン/Tween-80(登録商標)エマルション中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リピドAを含むリポ多糖及びその多様な誘導体、完全フロイントアジュバント(Freund's Complete Adjuvant、FCA)、不完全フロイントアジュバント(Freund's Incomplete Adjuvants)、Merckアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリIC及びポリAU酸)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)及びブルセラ属構成種に見出される物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(US 58767及び5,554,372を参照)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックス又はGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタナイドISA-51及びQS-21。様々なサポニン抽出物が免疫原性組成物においてアジュバントとして有用であることもまた示唆されている。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)もまたアジュバントとして使用され得る。
【0057】
本発明で使用される好ましいアジュバントには、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、例えばモンタナイドアジュバント(ベルギーのSeppicから入手可能)、好ましくはモンタナイドISA-51、が含まれる。他の好ましいアジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバント等の細菌DNAに基づくアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ポリI:C等のウイルスdsRNAに基づくアジュバントである。GM-CSF及びイミダゾキニリンもまた好ましいアジュバントの例である。
【0058】
アジュバントは、最も好ましくは、モンタナイドISAアジュバントである。モンタナイドISAアジュバントは、好ましくはモンタナイドISA51又はモンタナイドISA720である。
【0059】
Goding、Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版、1986)、61-63頁には、目的抗原が低分子量である又は免疫原性が低い場合、免疫原性の担体に連結することが推奨されることもまた言及されている。本発明の免疫療法組成物のポリペプチド又は断片は、担体に連結され得る。担体はアジュバントと独立に存在し得る。担体の機能は、例えば、活性又は免疫原性を増大させるため、安定性を与えるため、生物活性を増大させるため、又は血清半減期を増大させるために、ポリペプチド断片の分子量を増大させることであり得る。さらに、担体はT細胞にポリペプチド又はその断片を提示するのに役立ち得る。従って免疫原性組成物では、ポリペプチド又はその断片は下述の担体等の担体と関連させ得る。
【0060】
担体は、当業者に知られている任意の適切な担体、例えば、タンパク質又は樹状細胞(DC)等の抗原提示細胞であり得る。担体タンパク質には、キーホールリンペットヘモシアニン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリン若しくはオボアルブミン、免疫グロブリン等の血清タンパク質、又はインスリン等のホルモン、又はパルミチン酸が含まれ得る。或いは、担体タンパク質は破傷風トキソイド又はジフテリアトキソイドであっても良い。或いは、担体はセファロース等のデキストランであっても良い。担体はヒトに対し生理学的に許容可能で安全でなければならない。
【0061】
免疫療法組成物は任意で薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。賦形剤は、組成物の他の成分と混合可能でありその投与を受ける者に対し有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。賦形剤には、湿潤剤又は乳化剤、及びpH緩衝物質等の補助物質が存在し得る。これらの賦形剤及び補助物質は一般的に、組成物を投与される個体において免疫応答を誘導しない薬剤であり、過度の毒性なく投与され得る。薬学的に許容可能な賦形剤には、限定されないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、及びエタノール等の液体が含まれる。そこには薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等の鉱酸塩等もまた含まれ得る。薬学的に許容可能な賦形剤、媒体、及び補助物質の詳細な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)で入手できる。
【0062】
免疫療法組成物は、ボーラス投与又は持続投与に適した形態で調製され、包装され、又は販売され得る。注射可能な組成物は、アンプル等の単位投薬形態において、又は保存料を含む複数回投与用容器(multi-dose containers)において調製され、包装され、又は販売され得る。組成物には、限定されないが、懸濁液、溶液、油性又は水性媒体中のエマルション、ペースト、及び埋め込み可能な持続放出性又は生分解性の製剤が含まれる。組成物の一実施形態では、有効成分が乾燥形態(粉末又は顆粒)で与えられ、適切な媒体(例えば、無菌のパイロジェンフリーの水)で再構成された後、再構成された組成物が投与される。組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で調製され、包装され、又は販売され得る。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従い製剤化されても良く、有効成分に加え、本明細書に記載のアジュバント、賦形剤、及び補助物質等の追加成分を含んでも良い。このような無菌の注射製剤は、非毒性で非経口的に許容可能な希釈剤又は溶液、例えば水又は1,3-ブタンジオール等、を用いて調製されても良い。他の許容可能な希釈剤及び溶液には限定されないが、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド又はジグリセリド等の固定油が含まれる。
【0063】
有用な他の組成物には、微晶質形態において、リポソーム製剤において、又は生分解性ポリマー系の成分として、活性成分を含む組成物が含まれる。持続放出又は埋め込み用の組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、難溶性塩等の薬学的に許容可能なポリマー材料又は疎水性材料を含み得る。或いは、組成物の活性成分は微粒子担体にカプセル化され、吸着し、又は結合し得る。適切な微粒子担体には、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する微粒子担体、並びにポリ(ラクチド)及びポリ(ラクチド-co-グリコリド)由来のPLG微小粒子が含まれる。例えば、Jeffery等(1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照。他の微粒子系及びポリマー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン等のポリマー、並びにこれらの分子のコンジュゲート、もまた使用され得る。
【0064】
上述のように、本明細書に開示される組成物、特に免疫療法組成物は、本明細書に開示の化合物に加え、少なくとも1種の薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、賦形剤及び/又は担体をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1~99重量%の前記少なくとも1種の薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、賦形剤及び/又は担体、並びに1~99重量%の本明細書に開示の化合物を含む。活性成分と薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、賦形剤及び/又は担体とを合わせた量は、組成物、特に医薬組成物の100重量%を超えなくても良い。本明細書に記載の任意の組成物、ワクチン、又はキットは、保存料を追加で含んでも良く、それにより、溶液において又は凍結乾燥物として保存される際、本発明の成分ペプチド断片の安定性が改善され得る。適切な保存料は当該分野において周知であり、好ましくは薬学的に許容可能である。いくつかの場合では、ペプチド断片の安定性は、N末端、C末端、又は両末端に追加の末端残基を組み入れることにより増大し得る。このような残基は典型的には、親水性アミノ酸残基又は対応するアミドであろう。典型的には、ペプチド断片はN及び/又はC末端にそのような残基を追加で1、2又は3個含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の1つの化合物のみが上述の用途のために使用される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の2個以上の化合物が上述の用途のために組み合わせて使用される。
【0067】
上述の化合物を含む組成物、特に免疫療法組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、腹腔内投与、経鼻投与、口腔投与、舌下投与、若しくは皮下投与、又は、例えばエアロゾル若しくは空気懸濁微粉末形態での、気道を通した投与に適合させ得る。従って、医薬組成物は例えば、錠剤、カプセル、粉末、ナノ粒子、結晶、非晶質物質、溶液、経皮貼付剤、又は坐剤の形態であっても良い。
【0068】
工程の更なる実施形態は本明細書の実験の節で説明され、個別の工程並びに各々の出発物質は、実施形態の一部を形成し得る実施形態を構成する。
【0069】
上述の実施形態は、本明細書に記載の任意の態様(「治療のための方法」、「免疫療法組成物」、「医薬としての使用のための化合物」、又は「方法における使用のための化合物」等)並びに本明細書に記載の任意の実施形態に言及していると考えるべきである。ただし、ある実施形態が本発明の特定の一態様又は複数態様に関することが特定されている場合を除く。
【0070】
本明細書で引用される、出版物、特許出願及び特許を含むすべての参照文献は、各参照文献が参照により組み込まれることが個別にかつ具体的に示されており本明細書にその全体が説明されている場合と同程度に、本明細書に参照により組み込まれる。
【0071】
すべての題目、副題は便宜のために本明細書で使用されるだけであり、決して本発明を限定すると解釈すべきでない。
【0072】
考えられる上述の要素の変形形態すべてにおける、上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段示されるか、そうでなければ明らかに文脈に矛盾する場合を除いて、本発明に包含される。
【0073】
本発明を説明する文脈において使用される「a」、「an」、「the」及び同様の指示物は、本明細書で別段示されるか、或いは明らかに文脈に矛盾する場合を除いて、単数及び複数の両方を包含すると解釈すべきである。
【0074】
本明細書で別段示されない限り、本明細書における値の範囲の記載は、その範囲に含まれる個々の値各々を個別に示す簡単な方法として働くことを目的とするだけであり、個々の値各々はそれが本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。他に述べない限り、本明細書で与えられるすべての正確な値は対応する近似値の代表である(例えば、特定の要素又は測定値に関して与えられたすべての正確な例示値は、適切な場合、「約」により修飾される対応する近似の測定値をも与えると考えられ得る)。
【0075】
本明細書で別段示されるか、そうでなければ明らかに文脈に矛盾する場合を除いて、本明細書に記載のすべての方法は任意の適切な順序で行われ得る。
【0076】
本明細書で与えられる任意の及びすべての例、又は例示的な用語(例えば、「等」)の使用は、本発明をより明確にすることを目的としているだけであり、別段示されない限り、本発明の範囲を限定しない。明確に記述されない限り、本明細書のどの用語も、任意の要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈すべきでない
【0077】
本明細書における特許文献の引用及び組み込みは便宜のためにのみ行われ、このような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使可能性という観点をまったく反映しない。
【0078】
別に述べられるか、そうでなければ明らかに文脈に矛盾する場合を除いて、一要素又は複数要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、又は「含む(containing)」等の用語を用いる、本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書における記載は、その特定の要素又は複数要素「から成る」、「から本質的に成る」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は実施形態をサポートするよう意図されている(例えば、特定の要素を含むと本明細書で記載される組成物は、別に述べられるか明らかに文脈に矛盾する場合を除いて、その要素から成る組成物をも記載していると理解すべきである)。
【0079】
本発明は、適用法により許される最大限の範囲で、本明細書に提示される態様又は請求項に記載の主題のすべての変更形態及び均等物を含む。
【0080】
本発明は下記の実施例によりさらに説明されるが、下記の例は保護範囲を制限すると解釈すべきでない。前述の記載及び下記の実施例において開示される特徴は、別々でもその任意の組み合わせでも、本発明をその様々な形態で実現するための材料となり得る。
【実施例
【0081】
[実施例1]
<材料と方法>
患者とドナー
26人のステージIVの黒色腫患者が、非盲検化非ランダム化第I/II相試験に参加した(EudraCT番号 2009-010194-20; Clinicaltrials.gov識別番号: NCT00978913)。その手順は、デンマーク首都圏の科学倫理委員会(H-A-2009-013)、デンマーク医薬品庁(2612-4030)、デンマークデータ保護局により承認され、ヘルシンキ宣言の規定に従い行われた。試験参加の前に患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。臨床結果及び免疫学的結果は他の場所で報告されるだろう(Borch等、準備中)。簡単に言うと、患者に自己DCワクチンを2週間に1度6回皮内注射した後、進行するまで4週間に1度皮内注射した。同時に、2週間に1度規則正しいシクロホスファミド投薬計画(1日2回50mg)で患者を治療した。
【0082】
免疫をモニタリングする目的で、樹状細胞ワクチン(DCvacc)の接種の前、4回及び6回の接種の後、末梢血単核細胞(PBMC)を患者から集めた。Lymphoprep分離を用いてPBMCを単離し、HLAタイピングし、10%DMSOを含むFCS中で凍結した。以前記載されたようにDCワクチンを生成し24、デンマーク医薬品庁により承認されている適正製造規範(GMP)に従ってすべての手順を行った。簡単に言うと、白血球アフェレーシスにより自己PBMCを単離し、単球をさらに単離し、8日間培養した。6日目にIL-1β、TNFα、IL-6、及びPGE2を用いてDCの成熟を行った。自動凍結保存を用いて1x10個のDCのアリコートを凍結した。腫瘍関連抗原であるp53、サバイビン及びhTERTをコードするmRNAで成熟したDCをトランスフェクトしてDCvaccを生成した。
【0083】
ペプチド
PD-L1由来の19アミノ酸長のポリペプチドを合成した(TAGコペンハーゲン、コペンハーゲン、デンマーク):PDLong1:PDL19-28、FMTYWHLLNAFTVTVPKDL-配列番号89。PDLong1は9merのHLA-A2拘束性ペプチド配列(本明細書で「PD-L101」と称される)PDL115-23を含んでいた;インターネットで利用可能なエピトープ予測データベース「SYFPEITHI」を用いて特定され分析された(LLNAFTVTV-配列番号90)25。PD-L101はSYFPEITHIアルゴリズムでスコア30をとり、最上のエピトープ候補であることが判明した。
【0084】
さらにPD-L1由来の23アミノ酸長を合成した(TAGコペンハーゲン、コペンハーゲン、デンマーク):PDLong2:PDL1242-264、VILGAILLCLGVALTFIFRLRKG(配列番号91)。この長いペプチドは、www.syfpeithi.deで入手可能なRammensee等により開発されたアルゴリズムにより予測される、多数の15’merのHLAクラスII拘束性エピトープ並びに最小クラスI拘束性エピトープであり得るものを含む25。特にそれはPDL111(PDL1250-58、CLGVALTFI-配列番号92)と称されるHLA-A2エピトープを含む。20mer長のペプチド(本明細書で「無関係な対照」と称される)GARVERVDFGNFVFNISVLW-配列番号93-を対照ペプチドとして用い、同様にHLA-A2の高親和性結合エピトープであるHIV-1 pol476-484(ILKEPVHGV-配列番号94)を無関係な対照として用いた。
【0085】
共刺激アッセイ
悪性黒色腫患者から採取したPBMCを、1:10のDCvacc:PBMCの比率で、自己DCvaccで刺激した。刺激の1日後、培養物を分割し、25μg/mLのPDLong1:PDL19-28、[FMTYWHLLNAFTVTVPKDL-配列番号89]、PDLong2:PDL1242-264、[VILGAILLCLGVALTFIFRLRKG-配列番号91]、又は対照の共刺激として無関係な長いペプチド[GARVERVDFGNFVFNISVLW-配列番号93]のいずれかのペプチドで共刺激した。7日目に2回目のDCvaccでの刺激を行い、その後8日目にペプチド共刺激を行った。各ペプチド共刺激の1日後にIL-2(120U/mL)を添加した。2回目のペプチド共刺激の1週間後、細胞内サイトカイン染色を用いて培養物のDCvacc応答を分析した。
【0086】
細胞内サイトカイン染色(ICS)
サイトカイン(IFN-γ及びTNF-α)を産生する細胞亜集団を検出するために、2週間DCvaccで刺激しペプチドで共刺激したPMBCを、5%CO、37℃で5時間DCvacc(1:10のDCvacc:PBMCの比率)で刺激した。培養開始から1時間後に1:200の希釈度でGolgiPlug(BD)を添加した。さらに4時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、表面マーカーに対する蛍光色素結合抗体で染色した(CD3-Amcyan、CD4-PerCP及びCD8-Pacific Blue、すべてBD製)。細胞をさらに一回洗浄し、その後製造業者の使用説明書に従い固定/透過処理及び透過処理バッファー(eBioscience)により固定及び透過処理した。その後、細胞内サイトカインに対する蛍光色素結合抗体で細胞を染色した。以下の組み合わせを用いた:IFN-γ-PE-CY7(BD)、TNF-α-APC(eBioscience)。正確な補正を可能とし抗体の特異性を確認するために、関連するアイソタイプ対照を用いた。染色した細胞を、BD FACSCanto IIフローサイトメーターを用いて分析し、BD FacsDivaソフトウェアを用いてさらに分析を行った。
【0087】
PD-L1応答を測定するために、培養物をPDLong1、PDLong2(0.2mmol/L)又は無関係のペプチドで5時間刺激した。その後、細胞を表面及び細胞内抗体で染色し、さらにBD FACSCanto IIにおいて分析した。
【0088】
ELISPOT
本研究では、CIPにより提供されるガイドラインに従ってELISPOTを行った(http://cimt.eu/cimt/files/dl/cip_guidelines.pdf)。簡潔に言うと、底部がニトロセルロースの96ウェルプレート(MultiScreen MAIP N45; Millipore)を関連する抗体で一晩コーティングした。ウェルを洗浄し、X-vivo培地によりブロッキングし、可能なら三連、そうでなければ二連で、様々な細胞濃度で、ペプチドとともに又はペプチドなしで、細胞を加えた。プレートを4時間培養した。次に、培地を捨て、ウェルを洗浄し、関連するビオチン化二次抗体(Mabtech)を添加し、その後アビジン-酵素複合体(AP-アビジン;Calbiochem/Invitrogen Life Technologies)、最後に酵素基質NBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies)を添加した。ImmunoSpot Series 2.0分析装置(CTL分析装置)を用いてスポットを計数した。
【0089】
CBA
DCvacc刺激及びペプチド共刺激した(PDLong1及びPDLong2又はHIVペプチド)培養物におけるサイトカイン分泌の変化を測定するために、IFN-γ、TGF-β1、TNF-α、IL-6、IL-10及びIL-17Aについて、BD(商標) Cytometric Bead Array (CBA) Flex Setsを用いて細胞培養物の上清を分析した。IFN-γ、TNF-α、IL-6及びIL-10についてのFlex Setは組み合わせたが、IL-17A及びTGF-β1は別に分析した。分析は製造業者の推奨に従って行った。FACSCANTO II(BD Biosciences)においてサンプルを得て、FCAP Array(商標) Software v3.0.1(BD Biosciences)を用いてデータを分析した。
【0090】
<結果>
長いPD-L1ペプチドでの共刺激により、DCvaccに対するT細胞の反応性が増強される
一般的に、患者におけるDCvaccに対する免疫性はワクチン接種の前でも後でも弱いことが観察されていた。本研究では、DCvacc特異的T細胞応答に対するPD-L1特異的T細胞の補助的効果を調査することを計画した。従って、ワクチン接種前の基準時に、並びに4回のDCvacc接種後、何人かの患者については6回のDCvacc接種後に、黒色腫患者からPBMCを単離した。図1Aに示すように、対照のHIVエピトープ又はPD-L1ペプチドと組み合わせてDCvaccで2回PBMCを刺激した。全般的に、DCvaccは主にCD4T細胞を刺激することが分かった。最初に、以前記載されたPD-L1由来の長いT細胞エピトープ(「PDLong1」[PDL19-27、FMTYWHLLNAFTVTVPKDL] 配列番号89)の効果を調査した18。PDLong1はHLA-A2拘束性のPD-L1由来CD8T細胞エピトープ(PDL115-23、LLNAFTVTV-配列番号90)を含む。PBMCをPDLong1と共に培養した場合、対照のHIVエピトープと共に培養した場合と比較すると、DCvaccに対し反応性を示すPBMCの数が増加することが認められた。図1B~Eには、PD-L1特異的T細胞の同時活性化によりDCvaccに対するT細胞の免疫性が有意に増大したという、3人のドナーから得た培養物の結果が示されている。CD4T細胞は、共刺激なしでDCvaccに応答してTNFαのみを放出した(図1B)。TNFα/INFγ二重陽性のCD4T細胞がPD-L1ペプチド共刺激を伴うDCvaccにより誘導された(図1C)。反応性CD4及びCD8T細胞数の両方が、PD-L1ペプチド共刺激を伴うDCvaccに応答して増加した(図1D及びE)。
【0091】
ワクチン接種前のPBMCの培養物において、PDLong1で共刺激すると、ドナー8人のうち6人でDCvaccに対するCD4T細胞の反応性が増大し(P = 0.312)、ドナー8人のうち7人でCD8T細胞の反応性が増大した(P = 0.039)(それぞれ図2A及びB)。4回のワクチン接種後、すべてのドナーにおいてCD4T細胞の反応性が増大したが(P = 0.016)(図2A)、CD8T細胞の反応性はドナー8人のうち5人のみで増大した(P = 0.313)(図2B)。CD4T細胞とCD8T細胞の両方が、PDLong1ペプチドで共刺激した培養物において、対照ペプチドで共刺激した培養物と比較して有意に高くDCvaccに対し応答した(それぞれP = 0.02及びP = 0.05)。
【0092】
新たな長いPD-L1エピトープに対する自発的免疫応答
PD-L1に対する免疫応答が共刺激により増大するかさらに調査するために、IFNγELISPOTアッセイを用い、追加のPD-L1由来エピトープ(PDLong2 [PDL1242-264、VILGAILLCLGVALTFIFRLRKG(配列番号91)])に対するT細胞の反応性について、12人の黒色腫患者から採取した腫瘍浸潤リンパ球を調べた。IFNγELISPOTアッセイにより、PDLong2と共に培養された腫瘍浸潤リンパ球においてT細胞応答が増加することが明らかとなった(図3A及びB)。この応答の増大は細胞内サイトカイン染色により確認された(図3C及びD)。
【0093】
2つの長いPD-L1ペプチドでの共刺激により、DCvaccに対するT細胞の反応性が増強される
次に、8人のワクチン接種された黒色腫患者から採取したPBMCを調べ、PDLong1とPDLong2の両方での共刺激の効果を測定した(図4A及びB)。両方のPDLongエピトープで共刺激された培養物では、対照ペプチドで共刺激された培養物と比較して、DCvaccに対して応答するCD4T細胞の数が有意に増加したことが観察された(基準時P = 0.008であり、4回のワクチン接種後P = 0.008)。従って、CD4T細胞の反応性は、両方の時点ですべてのドナーにおいて増大した。CD8T細胞の反応性も同様に、一人のドナーを除く全ドナーにおいて、基準時(P = 0.008)及び4回のワクチン接種後(P = 0.055)で有意に増大した。
【0094】
1又は2個のPD-L1エピトープで刺激したすべての培養物を対照ペプチドと共にインキュベートした培養物と比較すると、マン-ホイットニー検定により、PD-L1共刺激はT細胞応答に対し有意な効果を有することが明らかとなった。CD4T細胞応答:基準時P = 0.012、4回目のワクチン接種後P = 0.002、6回目のワクチン接種後P = 0.095。CD8T細胞応答:基準時P = 0.01、4回目のワクチン接種後P = 0.076、6回目のワクチン接種後P = 0.31。
【0095】
PD-L1エピトープでの共刺激はIL-6の産生を誘導する
サイトカイン調節環境の変化を調べるため、BD(商標) Cytometric Bead Array(CBA) Flex Setアッセイを使用して、4人のドナーから得られたPBMC培養物の上清におけるサイトカイン分泌を比較した。PDLongエピトープで共刺激したPBMC培養物は、対照の培養物と比較して、高濃度の炎症性サイトカインINFγ及びIL6を示した。基準時及び4回目のワクチン接種後の、4人の患者のうち3人から得られた培養物では、対照の培養物と比較してIFNγレベルが高いことが観察された(図5A)。さらに、両方のPDLongペプチド(Long 1+2)での共刺激後では、対照ペプチドでのインキュベーションと比較すると、両方の時点で4人の患者全員においてIL-6レベルが大きく増大することが観察された(図5B)。両方のPDLongペプチドで共刺激した培養物では、対照と比較すると、調節性サイトカインTGFβのレベルが低いこともまた観察された(図5C)。このような低レベルのTGFβは、基準時では4人の患者のうち2人、4回目のワクチン接種/共刺激後では4人の患者全員から得られたPBMC培養物において見られた。TNFα、IL10、及びIL17等の他のサイトカインを測定したが、それらは調べた上清いずれにも検出することができなかった(データ不掲載)。サイトカインプロファイルの変化に加え、PD-L1エピトープで共刺激した培養物のほとんどでは、対照の培養物と比較して細胞数が多かった(図5D)。基準時では4人の患者のうち3人、4回目の刺激後では4人の患者全員から得られた培養物において、細胞数の増大が観察された。
【0096】
<考察>
癌における免疫抑制を標的とするいくつかの潜在的な治療戦略、例えばモノクローナル抗体での阻害経路の遮断等、が現在研究されている19。我々が採用している代替戦略は、免疫抑制を標的とする特異的T細胞を利用することである20。本研究では、PD-L1由来の長いペプチドエピトープを用いたDCに基づくワクチンの共刺激の免疫原性に対する効果を調べた際、我々はワクチンに対するT細胞の反応性が有意に増大することを発見した。CD4T細胞の反応性は最も増強されたが、CD8T細胞の反応性もまた共刺激により有意に増強された。
【0097】
一般的に、我々は、エキソビボでは患者から得られたPBMCでDCvaccに対する反応性が全くないか非常に限定されていることを観察しただけだった(Borch等、準備中)。従って、DCvaccを接種した患者においてインビボでのT細胞の頻度の誘導は限定されていた。これは、おそらくDCにより増強さえもされ得る様々な免疫抑制機構が存在するためであろう。PD-L1の上方調節等の調節性フィードバック機構は、免疫応答の強さ及び範囲を制限するために不可欠であるが、別の面では宿主に害を及ぼし得る。しかしながら、この免疫回避は癌免疫治療の場面では有害である。従って、免疫抑制機構が治療効果を抑制し得る場合、1つ以上の免疫抑制経路を標的とすることは、抗癌免疫療法との組み合わせにおいて、有益となり得る。
【0098】
本研究の結果は、癌ワクチンへのPD-L1エピトープの添加によりインビボでのワクチンに対する免疫応答が強化され得ることを示唆する。これらの方法は、PD-L1の局所発現により腫瘍微小環境に引き寄せられる炎症性PD-L1特異的T細胞を同時活性化することより、エフェクターT細胞を増強し得る。先行研究では、制御性T細胞(Treg)をIL-6及び他の炎症性サイトカインに暴露すると、成熟Tregのリプログラミングが誘導され炎症性Th17細胞に類似する表現型が得られることが報告されている21~23。本研究では、PD-L1エピトープで共刺激した培養物において、IL-6レベルが有意に高かった。従って、PD-L1特異的T細胞は、直接的にも間接的にも炎症性サイトカインを放出することにより、並びにPD-1陽性T細胞を阻害するPD-L1発現調節性免疫細胞を直接除去することにより、免疫応答のエフェクター段階を効果的に増強し得る。PD-L1の免疫調節効果を直接抑制することに加え、PD-L1特異的T細胞はその同族の(cognate)標的細胞により媒介される他の免疫抑制経路を阻害し得る。
【0099】
PD-1経路の遮断の初期の成功により、PD-1又はPD-L1を標的とするモノクローナル抗体を開発することに商業的関心が生じ、製薬会社間の競争が起きている。ワクチンは免疫エフェクター細胞を腫瘍微小環境にリクルートすることが示されているため、ワクチン接種と組み合わされたPD-1経路遮断は、有望な代替的アプローチとなる。PD-L1特異的T細胞を増強すると免疫調節が直接調整され寛容が変更され得るため、PD-L1特異的T細胞の誘導により免疫調節を標的とすることは、免疫療法剤の免疫原性を増強するための魅力的な選択肢となる。ワクチン接種とPD-1経路の遮断との組み合わせは容易に実施可能であり相乗的であるはずである。抗体によりPD-L1を遮断すると、PD-L1発現標的細胞は、ワクチンにより誘導されるT細胞にとってより攻撃しやすい標的となるだろうからである。PD-L1由来エピトープでのPD-L1特異的T細胞の共刺激を含む投薬計画の安全性、忍容性、及び有効性を確認するために、今後の研究が必要とされる。
【0100】
[実施例2]
<ヒト患者におけるIO104.1に対する自発的免疫応答>
まず、黒色腫患者から得られた腫瘍浸潤T細胞においてIO104.1の2つのバージョンに対する免疫応答を分析した。次に、PDL111特異的T細胞がIO104.1を認識できるか否か分析した。
【0101】
<材料と方法>
ペプチド
PDL111=CLGVALTFI(最小エピトープ-配列番号92)
IO104(PDLong2)=VILGAILLCLGVALTFIFRLRKG(配列番号91)
IO104.1-OH=Arg-Thr-His-Leu-Val-Ile-Leu-Gly-Ala-Ile-Leu-Leu-Cys-Leu-Gly-Val-Ala-Leu-Thr-Phe-Ile-Phe-Arg-Leu-Arg-Lys-Gly-Arg-OH(C末端酸)(配列番号52)
IO104.1-NH =Arg-Thr-His-Leu-Val-Ile-Leu-Gly-Ala-Ile-Leu-Leu-Cys-Leu-Gly-Val-Ala-Leu-Thr-Phe-Ile-Phe-Arg-Leu-Arg-Lys-Gly-Arg-NH(C末端アミド)(C末端にアミドを有する配列番号52)
【0102】
<ELISPOTアッセイ>
ELISPOT技術により、比較的少ないT細胞しか利用できなくても、T細胞が認識するか否かについて多数のペプチド抗原をスクリーニングすることが可能となった。我々はELISPOTアッセイを使用し、実施例1に記載のように、ペプチド特異的な、IFN-γを分泌するエフェクター細胞を定量化した。アッセイは、癌免疫療法の免疫ガイドプログラム(immunoguiding program、CIP;http://cimt.eu/cimt/files/dl/cip_guidelines.pdf)により与えられたガイドラインに従って行った。T細胞の反応性を測定するために、底部がニトロセルロースの96ウェルプレート(MultiScreen MSIPN4W; Millipore)を関連する抗体で一晩コーティングした。ウェルを洗浄し、X-vivo培地で2時間ブロッキングした。PD-L1ペプチド又は対照ペプチドとともに3連ウェルで様々な細胞濃度で腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を加えて一晩インキュベートした。翌日、ウェルを洗浄し、関連するビオチン化二次抗体(Mabtech)を添加し、その後アビジン-酵素複合体(AP-Avidin; Calbiochem/Invitrogen Life Technologies)を添加した。最後に可視化のために酵素基質NBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies)を添加した。現像されたELISPOTプレート上のスポットを、CTL ImmunoSpot S6 Ultimate-V分析装置でImmunospotソフトウェアv5.1を用いて分析した。
【0103】
<結果>
IFNγELISPOTアッセイを使用して、IO104.1ペプチドに対するT細胞の反応性について、7人の黒色腫患者から得られた腫瘍浸潤リンパ球を調査した。当該IFNγELISPOTアッセイにより、3人の患者由来のIO104.1ペプチドと共に培養した腫瘍浸潤リンパ球においてT細胞応答が明らかとなった。図6参照。
【0104】
次に、最小エピトープCLGVALTFI(PDL111-配列番号92、IO104.1内に位置する)に特異的なCD8T細胞がIO104.1の両方のバージョンを認識することができるどうか、ELISPOTにより調査した。PDL111、PDL1242-264(VILGAILLCLGVALTFIFRLRKG-PDLong2、配列番号91),IO104.1(-OH)、及びIO104.1(NH)に対する反応性を分析した。T細胞はIO104.1の両方のバージョンに対し応答することができた。図7を参照。
【0105】
<結論>
IO104.1特異的T細胞は、ヒト黒色腫患者の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の中に天然に存在する。IO104.1ペプチドはまた、IO104.1の配列内に含まれる既知のPD-L1エピトープに特異的なCD8+T細胞により認識される。
【0106】
[実施例3]-マウスにおいてPDL1特異的T細胞は天然に生じている
我々は、PD-L1特異的T細胞が天然に生じているならば、それらは炎症に応答して活性化及び増殖するはずであるという仮説を立てた。
【0107】
<材料と方法>
C56BL/6マウスに、2日間間隔を空けて(day 0+2)200μlPBS中の1μgIFNγ(IFNy)を腹腔内に注射し、(又は対照のために注射せず)、炎症を模倣した。IFNγ-Elispotによりさらに分析するために、5日目にマウスを犠牲死させ、摘出された脾臓の単一細胞溶液(single cell solution)を作製した。
【0108】
Elispotプレートにおいて、5μg/mlのマウス(m)PDL1由来のペプチドで18~20時間、9×10個脾細胞/ウェルをエキソビボで刺激した。ペプチド刺激されたウェルについてのスポット数からバックグラウンド(ペプチド刺激なしでのウェルのスポット数)を差し引いた。
【0109】
PDL1由来のペプチドは下記の理由に基づき選択した。
mPD-L1の配列は以下である:
【0110】
この配列はヒト(h)PDL1の配列と著しく異なるため、ヒトにおいて行ったようにマウスにおいて試験するために同一のペプチドを使用することはできない。しかしながら、我々は、PDLong1及びPDLong2の配列が由来するhPDL1内領域におおよそ相当するmPDL1内領域から意図的にペプチドを選択した(実施例1及び2を参照)。即ち、mPDL1のN末端/シグナル配列及びC末端/膜貫通領域から選択した。
【0111】
以下のペプチドを選択した。
【0112】
mLong1及び2は、上でボールド体で示されるmPDL1の領域から選択された、重なり合う配列である;mLong3、4及び5は、上で下線で示されるmPDL1の領域から選択された、重なり合う配列である。mLong1は、PDlong1のヒトペプチドに最も近いマウスの相当物であると考えられる。mLong3は、PDlong2のヒトペプチドに最も近いマウスの相当物であると考えられる。
【0113】
<結果と結論>
ELISPOTの結果を図8に示す。5つのマウスペプチドはすべて、IFNγでの前刺激後T細胞により認識された。従ってこれにより、これらの配列内のエピトープに特異的なT細胞は、ワクチン接種をしなくてもマウスにおいて天然に存在することが示される。最も良好な結果はmLong1及びmLong3で得られた。以降のマウス実験では、単純にするためにmLong1のみを用いたが、少なくともmLong3では同様の結果が予測されるだろう。
【0114】
[実施例4]-マウスにおける天然のPDL1特異的T細胞についての更なる証拠
実施例3における結果を考慮し、PD-L1特異的T細胞はまた、アレルゲンに対する炎症反応等の局所的刺激に応答して活性化及び増殖するはずであるとの仮説を立てた。
【0115】
<材料と方法>
1:4のオリーブオイル/アセトン(OOA)中の0.15%2、4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB;アレルゲン)の溶液(又は対照としてOOAのみ)を、3日間連続で(0~2日目)、C56BL/6マウスの両耳の裏に、塗布した。5日目にマウスを犠牲死させ、IFNγ-Elispotによりさらに分析するために、摘出した脾臓及び流入領域リンパ節(dLN)の単一細胞溶液を作製した。
【0116】
Elispotプレートにおいて、5μg/mLのmPD-L1long1(実施例3のmLong1)又はmPD-L1short(配列GIIFTACCHL(配列番号101)を有するmLong1ペプチドの一部)で18~20時間、8~9×10個細胞/ウェルをエキソビボで刺激した。ペプチド刺激したウェルについてのスポット数からバックグラウンド(ペプチド刺激なしでのウェルのスポット数)を差し引いた。
【0117】
<結果と結論>
Elispotの結果を図9に示す。脾細胞及びdLNは、DNFBで処理したマウスにおいて長いペプチド及び短いペプチドの両方を認識したが、対照のマウスでは認識しなかった。これにより、天然のPDL1特異的T細胞が局所的なアレルゲン刺激に応じて実際に活性化及び増殖することが確認された。長いペプチド及び短いペプチド両方に対する応答は、当該応答がおそらくCD8+及びCD4+の両方のT細胞に起因することを示す。短いペプチドはMHCクラスIだけに結合しそれにより提示されるはずであるため、CD8+T細胞のみ刺激し得る。長いペプチドは(プロセシング後に)MHCクラスI及びIIに結合しそれらにより提示され得るため、CD8+及びCD4+の両方のT細胞を刺激するだろう。
【0118】
[実施例5]-マウスにおけるPDL1特異的応答は、PDL1ペプチドを用いたワクチン接種により増大する
<材料と方法>
0日目に、アジュバントとしてモンタナイドと共に又はモンタナイドなしで、100μgのmPD-L1long1(実施例3のmLong1)(対照としてモンタナイドのみ)を用いて、C56BL/6マウスの腰部皮下に(s.c.)ワクチン接種した。7日目にマウスを犠牲死させ、IFNγ-Elispotによりさらに分析するために摘出した脾臓の単一細胞溶液を作製した。
【0119】
Elispotプレートにおいて、5μg/mLのmPD-L1long1又はmPD-L1shortで18~20時間、9×10個脾細胞/ウェルをエキソビボで刺激した。ペプチド刺激したウェルについてのスポット数からバックグラウンド(ペプチド刺激なしでのウェルのスポット数)を差し引いた。
【0120】
<結果と結論>
Elispotの結果を図10に示す。アジュバントだけを用いてワクチン接種したマウスと比較して、ペプチド-ワクチン接種したマウスの脾臓及び流入領域リンパ節(DLN)では、強いPD-L1特異的T細胞応答が見られた。mPD-L1long及びより短いバージョンのmPD-L1shortの両方を用いたエキソビボでの刺激は、IFNγElispotにより見られるように、mPD-L1longをワクチン接種したマウスにおいてPD-L1特異的応答の増大を示した。
【0121】
[実施例6]-mPD-L1long1を用いたワクチン接種はマウスにおいて抗腫瘍効果を示す。
<材料と方法>
C56BL/6マウスに2×10個のB16F10腫瘍細胞を腰部一側面の皮下に(s.c.)接種した(0日目)。腫瘍細胞は接種前24時間、インビトロでIFNγを用いて事前に刺激した。0日目及び7日目に、アジュバントとしてのモンタナイドと共に、100μgのmPD-L1long1を用いて(対照としてモンタナイドのみ)、マウス腰部の他側面皮下にワクチン接種した。1週間に3回、腫瘍のサイズを測定し、腫瘍が大きくなりすぎるたところでマウスを犠牲死させた。
【0122】
<結果と結論>
結果を図11に示す。ペプチド+モンタナイドでワクチン接種したマウスは、モンタナイドのみでワクチン接種したマウスよりも腫瘍成長の減少及び良好な生存率を示した。従って、当該ワクチン接種により増殖及び活性化された抗-PDL1T細胞は抗腫瘍効果を有する。
【0123】
実施例3~7(インビボ試験)についての総体的結論
我々は、PD-L1特異的T細胞は、IFNγの注射(実施例3)及びアレルゲンでの局所的刺激(実施例4)により増殖することを述べているが、これにより、PD-L1特異的T細胞は既に存在しており、炎症部位で同族の標的(即ち、プロフェッショナル抗原提示細胞)から強い活性化シグナルを受けて活性化され増殖することが示唆される。また我々は、PD-L1特異的T細胞はワクチン接種により容易に増殖し、抗腫瘍効果が生じることを実証している。従って、PD-L1特異的T細胞は、癌細胞により利用される免疫抑制機構に対し直接反応することにより適用免疫応答に影響を与える免疫系の能力の中で、とりわけ興味深い例である。PDL1ペプチドを用いたワクチン接種はインビボで直接的な利益を有することが示された。
【0124】
Elispot方法論についての全般的な詳細
・マウスを犠牲死させた後、脾臓(及び流入領域リンパ節(dLN))を摘出した。
・脾臓及びdLNを70μMセルストレーナーに通して破砕し、培地(RPMI+10% FCS+1% pen/strep)入りの50mlチューブに回収し、300Gで5分間洗浄し、それをdLNについて繰り返した。脾細胞を1分間RBC溶解バッファーで溶解し、培地で2回洗浄した。
・細胞を計数し、9×10個細胞/ウェルの細胞数でIFNγ AbコーティングされたElispotプレートに移した。コーティング抗体:抗マウスIFN-g mAb AN18(Mebtechカタログ番号3321-3-1000)。
・刺激ペプチドを5μg/mLの濃度で指定されたウェルに添加した。対照のウェルは、ペプチドで刺激しなかった。
・18~20時間後Elispotプレートを現像した。
・検出抗体は、抗マウスIFN-g mAb R4-6A2-ビオチン(Mebtechカタログ番号3321-6-1000)。アビジン-酵素複合体(AP-Avidin; Calbiochem/Invitrogen Life Technologies)及び酵素基質、NBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies)を可視化のために使用。
・ペプチド刺激されたウェルについてのスポット数から、ペプチド刺激されていない対応するウェル(バックグラウンド)を常に差し引いた。
・負の値は0とした。

本出願は以下を提供する。
1. 一般式:XVILGAILLCLGVALTFIX
[式中、
N末端のXは、L、HL、THL、RTHL(配列番号79)、ERTHL(配列番号80)、NERTHL(配列番号81)から成る群から選択され、又は存在せず、
C末端のXは、F、FR、FRL、FRLR(配列番号82)、FRLRK(配列番号83)、FRLRKG(配列番号84)、FRLRKGR(配列番号85)、FRLRKGRM(配列番号86)、FRLRKGRMM(配列番号87)、FRLRKGRMMD(配列番号88)から成る群から選択され、又は存在せず、
ただし、Xが存在しない場合XはFRLRKG(配列番号84)ではなく、
C末端のアミノ酸はまた、アミドを含んでもよく、
任意でペプチド断片は、C末端アミノ酸又はアミドを含むRTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR(配列番号52)のアミノ酸配列を有する]
を有する、PD-L1ペプチド断片、又はその薬学的に許容可能な塩。
2. NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-OH(配列番号77)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-NH(C末端にアミドを有する配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-OH(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-OH(配列番号67)、
NERTHLVILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号67)、
VILGAILLCLGVALTFI-OH(配列番号2)、
VILGAILLCLGVALTFI-NH(C末端にアミドを有する配列番号2)、
から選択される上記1に記載のペプチド断片、又はそれらの薬学的に許容可能な塩。
3. NERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMD-OH(配列番号77)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-OH(配列番号52)、
RTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGR-NH(C末端にアミドを有する配列番号52)
から選択される上記1に記載のペプチド断片。
4. 上記1~3のいずれかに記載のPD-L1ペプチド断片を、任意で薬学的に許容可能な添加剤及び/又は保存料と共に含む組成物。
5. 薬剤としての使用のための、
a)上記1~3のいずれかに記載のPD-L1ペプチド断片、及び
b)アジュバント
を含む、免疫療法組成物。
6. 腫瘍形成癌疾患等の癌;感染性疾患等の感染症、例えば細胞内感染、例えばL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)及びマラリア原虫(plasmodium)から成る群から選択される病原体の細胞内感染、ウイルス感染、例えばHIV及び肝炎から成る群から選択されるウイルス感染;糖尿病、SLE、及び硬化症等の自己免疫疾患、から選択される疾患、障害又は状態の治療又は予防のための方法における使用のための、上記5に記載の免疫療法組成物。
7. アジュバントが、細菌DNAに基づくアジュバント、オイル/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン(imidazochinilines)、モンタナイド(Montanide)ISAアジュバントから成る群から選択される、上記4~5のいずれかに記載の免疫療法組成物。
8. 以下を含むキット;
a)上記4~6のいずれかに記載の免疫療法組成物、及び
b)インターロイキン等の免疫刺激化合物、例えばIL-2及び/又はIL-21、化学療法剤等の抗癌剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される少なくとも1種の第2活性成分を含む組成物。
9. 提供された組成物が同時に又は連続的に投与されるものである、上記8に記載のキット。
10. PD-L1の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態を患う個体に有効量の上記1~3のいずれかに記載のペプチド断片、上記4~6のいずれかに記載の組成物、又は上記7~8のいずれかに記載のキットを投与することを含む方法。
11. PD-L1の発現を特徴とする臨床状態の治療又は予防のための免疫療法組成物又はワクチン等の薬剤の製造のための、上記1~3のいずれかに記載のペプチド断片の使用。
12. 治療される臨床状態がPD-L1が発現している癌疾患である、上記11に記載の使用。
13. 臨床状態が感染性疾患及び自己免疫疾患から成る群から選択される、上記11に記載の使用。
14. サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質、遺伝子治療、抗体及び樹状細胞等の追加の癌治療と同時にまたは連続的に投与される、癌の治療又は予防のための方法における使用のための、上記1~3のいずれかに記載のペプチド断片、若しくは一般式:FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)を含むPD-L1ペプチド断片、又はそれらの薬学的に許容可能な塩。
15. 前記断片が、上記1~3のいずれかに記載のPD-L1断片から選択される、上記14に記載のペプチド断片。
16. 前記断片が、一般式:FMTYWHLLNAFTVTVPKDL(配列番号89)(ここで、C末端アミノ酸はまた、アミドを含む)を有するPD-L1断片から選択される、上記14に記載のペプチド断片。
17. チェックポイント遮断抗体が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、から選択される、上記14~16のいずれかに記載のペプチド断片。
【0125】
【0126】
文献
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
【配列表】
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