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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/107 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
H01P5/107 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019022676
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020129784
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省 「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発-300GHz帯シリコン半導体CMOSトランシーバ技術-に関する研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤二
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に設けられた結合素子と、
前記第1の基板と異なる第2の基板と、
前記第2の基板に接して配置される導波管と、
前記導波管の前記第2の基板に接していない開口と前記結合素子との間に設けられる複数の無給電素子と、
を備え
前記複数の無給電素子は、それぞれ、複数の層を有する前記第2の基板のいずれかの層に設けられる、
高周波モジュール。
【請求項2】
前記無給電素子のサイズは、前記開口のサイズよりも小さい、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記無給電素子のサイズは、前記結合素子のサイズと異なる、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
第1の基板に設けられた結合素子と、
前記第1の基板と異なる第2の基板と、
前記第2の基板に接して配置される導波管と、
前記導波管の前記第2の基板に接していない開口と前記結合素子との間に設けられる複数の無給電素子と、
を備え、
前記複数の無給電素子は、前記第2の基板に設けられ、
前記複数の無給電素子のサイズは、前記結合素子から離れるほど、小さい、
周波モジュール。
【請求項5】
第1の基板に設けられた結合素子と、
前記第1の基板と異なる第2の基板と、
前記第2の基板に接して配置される導波管と、
前記導波管の前記第2の基板に接していない開口と前記結合素子との間に設けられる無給電素子と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するはんだボールと、
を有する、
周波モジュール。
【請求項6】
前記導波管の開口の方向からの上面視において、前記はんだボールは、前記開口を囲む位置に設けられる、
請求項に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
複数の前記はんだボールの間隔は、前記結合素子に給電される信号の波長に基づいて規定される、
請求項に記載の高周波モジュール。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の高周波モジュールを含む、
無線通信装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の高周波モジュールを含む、
レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯を用いた無線システムとして、60GHz帯を用いた無線LAN(Local Area Network)による高速通信、および、76GHz帯を用いた車載レーダが実用化されている。今後は、100GHzを超える周波数帯の無線技術への応用にも期待が高まっている。例えば、高画質な4K映像および8K映像といった大容量なデータを非圧縮で転送するためには、数十Gbps~100Gbpsクラスの伝送速度が要求される。このような伝送速度の要求に応じるため、例えば、マイクロ波帯またはミリ波帯よりも、より広帯域な通信を可能とするテラヘルツ帯の利用、例えば、300GHz帯の利用が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ミリ波帯の無線装置に用いられる高周波パッケージの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-102821号公報
【文献】特開2014-190720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミリ波帯以上の周波数帯を用いた無線装置では、基板にアンテナおよび高周波回路等が実装された構成において、装置内(例えば、高周波回路とアンテナとの間)を通過する信号の通過帯域が狭くなることに対しての検討が不十分であった。
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、信号の通過帯域を広くすることができる高周波モジュールの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例に係る高周波モジュールは、第1の基板に設けられた結合素子と、前記第1の基板と異なる第2の基板と、前記第2の基板に接して配置される導波管と、前記導波管の前記第2の基板に接していない開口と前記結合素子との間に設けられる無給電素子と、を備える。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、信号の通過帯域を広くすることができる高周波モジュールを提供できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本開示の一実施の形態に係る高周波モジュールの概略構造を示す断面図
図1B図1Aの矢印Yの方向から見た高周波モジュールの概略構造を示す上面図
図2】比較例に係る高周波モジュールの概略構造を示す断面図
図3】本開示の一実施の形態に係る高周波モジュールの通過帯域の特性を示す図
図4】本開示の一実施の形態の第1の変形例に係る高周波モジュールの概略構造を示す断面図
図5A】本開示の一実施の形態の第2の変形例に係る高周波モジュールの概略構造を示す断面図
図5B図5Aの矢印Yの方向から見た高周波モジュールの概略構造を示す上面図
図6】本開示の一実施の形態の第2の変形例に係る高周波モジュールの通過帯域の特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
高周波信号を伝搬するモジュールの構成例について説明する。
【0014】
特許文献1には、例えば、高周波パッケージ内に高周波回路(半導体素子)をワイヤリボンにより実装し、基板上に設けたストリップ線路と導波管とを電磁界的に結合させる高周波パッケージが記載されている。
【0015】
特許文献1に記載された高周波パッケージにおいて、高周波信号の信号処理を行う高周波用半導体素子は、誘電体基板と筐体とにより構成されたキャビティの中に設けられる。誘電体基板の一方の面には、ストリップ線路が形成される。ストリップ線路の一方の端と高周波用半導体素子とは、ワイヤリボンで接続される。ストリップ線路の他方の端には、短絡金属層が、ストリップ線路から離れて設けられる。誘電体基板の他方の面には、接地金属層が設けられる。接地金属層は、スルーホールを介して短絡金属層に接続される。誘電体基板の接地金属層と同じ面に、導波管が接続される。導波管が接続する開口部には、整合素子が設けられる。誘電体基板の一方の面のストリップ線路と、誘電体基板の他方の面の整合素子とは、近接して配置される。
【0016】
特許文献1では、誘電体基板一方の面にストリップ線路と短絡金属層を設け、誘電体基板の他方の面に整合素子を設ける構造を採ることによって、ストリップ線路と整合素子とを電磁界的に結合させる。そのため、誘電体基板の他方の面と導波管との接続箇所における共振部からの電力の漏洩を抑えることができ、低損失の高周波パッケージが可能となる。
【0017】
特許文献2には、高周波信号の信号処理を行うデバイスを含む送受信デバイス基板と、高周波信号を放射するマイクロストリップアンテナ素子等を含む多層樹脂基板と、を有するレーダ装置が記載されている。
【0018】
特許文献2に記載されたレーダ装置において、多層樹脂基板の部品実装面には、はんだボールを介して送受信デバイス基板が実装される。送受信デバイス基板の部品実装面には、高周波信号を伝送する伝送線路を含む金属膜が形成される。伝送線路は、多層樹脂基板に形成された第1の導波管と電磁界的に結合することによって、第1の導波管を介して第2の導波管へと伝搬される。第2の導波管を伝搬した高周波信号は、結合スロットを介して、導波管-マイクロストリップ線路変換器に伝搬され、マイクロストリップアンテナ素子から放射される。
【0019】
特許文献2では、多層樹脂基板上に第1の導波管と第2の導波管を形成し、送受信デバイス基板をはんだボールを介して多層樹脂基板に実装する構造を採る。このような構成によって、多層樹脂基板上に配置したマイクロストリップアンテナ素子までの線路損失を小さくできるため、給電損失を低減でき、マイクロストリップ線路からの不要放射を低減できる。
【0020】
しかしながら、特許文献1の高周波パッケージでは、高周波用半導体素子とストリップ線路とをワイヤリボンで接続する構成であるため、100GHz超の高周波数帯では接続損失が増大してしまう。また、ワイヤリボンが持つインダクタンス成分によって、高周波信号の通過帯域が狭くなってしまう。
【0021】
また、特許文献2のレーダ装置では、送受信デバイス基板が半導体素子または半導体素子を含むパッケージ基板で構成され、送受信デバイス基板内に構成される誘電体層の膜厚は、数ミクロンから十数ミクロンと薄い。そのため、高周波信号を送受信デバイス基板から多層樹脂基板の第1の導波管に伝搬させる場合に、通過帯域が狭くなってしまう。
【0022】
本開示の一実施例では、無線通信装置およびレーダ装置等に用いる高周波モジュールであって、モジュール内で信号処理を行う回路を含むパッケージ基板と導波管との間を通過する信号の通過帯域を広くすることが可能な高周波モジュールの提供に資する。
【0023】
(一実施の形態)
図1Aは、実施の形態1に係る高周波モジュール100の概略構造を示す断面図である。図1Bは、図1Aの矢印Yの方向から見た高周波モジュール100の概略構造を示す上面図である。図1Aおよび図1Bに示す高周波モジュール100は、ファンアウトパッケージ1と、誘電体基板9と、ファンアウトパッケージ1と誘電体基板9とを接続するはんだボール8と、誘電体基板9に接続する導波管13とを有する。なお、図1Aは、図1Bにおける線X-Xに沿った断面の一例に相当する。また、図1Bには、図1Aに示す構成の一部が省略されている。
【0024】
ファンアウトパッケージ1は、例えば、高周波半導体チップ2と、封止樹脂3と、再配線層4と、を含む。
【0025】
ファンアウトパッケージ1において、高周波半導体チップ2の周囲は、封止樹脂3でモールドされる。再配線層4は、封止樹脂3によりモールドされた高周波半導体チップ2の少なくとも一方の面に半導体工程で形成される。
【0026】
高周波半導体チップ2は、例えば、高周波信号(例えば、ミリ波帯以上の周波数帯の信号)の信号処理を行う。例えば、高周波半導体チップ2は、高周波モジュール100から出力する高周波信号を生成し、ビアを介して、再配線層4へ出力する。また、例えば、高周波半導体チップ2は、導波管13、誘電体基板9および再配線層4等を介して入力される高周波信号の信号処理を行ってもよい。
【0027】
なお、以下では、高周波モジュール100が、高周波半導体チップ2によって生成された高周波信号を出力する例を挙げて説明するが、本開示はこれに限定されない。例えば、高周波モジュール100において、導波管13から入力される高周波信号が、高周波半導体チップ2によって処理されてもよい。
【0028】
再配線層4には、第1の金属層5と第2の金属層6とが含まれる。第2の金属層6には、例えば、結合素子7が設けられる。
【0029】
ファンアウトパッケージ1は、例えば、電源回路および/または制御回路等が実装された誘電体基板9に対してはんだボール8を介して実装される。
【0030】
誘電体基板9のファンアウトパッケージ1と正対する面には、例えば、第3の金属層10が形成される。第3の金属層10には、無給電素子11が設けられる。
【0031】
無給電素子11は、例えば、結合素子7と向き合う位置(図1A参照)に形成される。例えば、図1Bに示すように、高周波モジュール100の上面視において、無給電素子11は、結合素子7の少なくとも一部と重なってよい。
【0032】
無給電素子11は、図1Aでは、導波管13の誘電体基板9に接している開口と結合素子7との間に設けられる。なお、本開示はこれに限定されない。無給電素子11は、例えば、導波管13の誘電体基板9に接していない開口と、結合素子7との間に設けられてよい。
【0033】
無給電素子11のサイズは、特に限定されないが、例えば、結合素子7と同じであってもよいし、結合素子7よりも大きくてもよいし、結合素子7よりも小さくてもよい。無給電素子11のサイズが結合素子7と同じまたは結合素子7よりも大きい場合、上面視において、無給電素子11の位置は、結合素子7と重なってもよい。
【0034】
誘電体基板9のファンアウトパッケージ1と反対の面には、例えば、第4の金属層12が形成される。導波管13は、誘電体基板9の第4の金属層12に接して配置される。
【0035】
導波管13は、例えば、金属壁により形成された矩形の管である。導波管13は、図1Bに示すように、高周波モジュール100の上面視において、金属壁が無給電素子11を囲むように、誘電体基板9の第4の金属層12に接続される。例えば、図1Bに示すように、高周波モジュール100の上面視において、導波管13の外壁は、無給電素子11を囲む。
【0036】
なお、はんだボール8の位置および数は、特に限定されない。例えば、はんだボール8は、図1Bに示すように、高周波モジュール100の上面視において、導波管13の開口よりも外側に設けられる。
【0037】
高周波半導体チップ2から出力される高周波信号は、ビア15を介して第1の金属層5および/または第2の金属層6に形成された伝送線路(図示省略)を伝搬し、第2の金属層6に形成された結合素子7に直接または電磁界的に結合することによって、ファンアウトパッケージ1の外部に放射される。
【0038】
ファンアウトパッケージ1の外部に放射された高周波信号は、誘電体基板9に設けられた無給電素子11と電磁界的に結合し、さらに無給電素子11を囲む導波管13と結合することによって、導波管13内を伝搬する。
【0039】
例えば、第4の金属層12を接地導体とすることによって、誘電体基板9のGND(Ground)と導波管13のGNDとを共通としてもよい。なお、第4の金属層12は、形成されなくてもよい。
【0040】
図1Aおよび図1Bに示す高周波モジュール100では、結合素子7から放射される高周波信号が、無給電素子11と電磁界的に結合する。
【0041】
次に、通過帯域の特性について説明する。図1に示す高周波モジュール100に対する、通過帯域の特性の比較例を挙げる。
【0042】
図2は、比較例に係る高周波モジュール200の概略構造を示す断面図である。なお、図2において、図1Aおよび図1Bと同様の構成については、同一の符番を付し、説明を省略する。
【0043】
図2に示す高周波モジュール200は、高周波モジュール100と比較して、誘電体基板9が設けられていない。そのため、高周波モジュール200は、誘電体基板9を介さず、ファンアウトパッケージ1に導波管13が直接接続される。結合素子7によって放射された高周波信号は、高周波モジュール200の上面視(図示省略)において、結合素子7を囲むように配置された導波管13と直接結合することで、導波管13内を伝搬する。
【0044】
一般に、伝送線路を介して伝搬した高周波信号を導波管に伝搬させる構成においては、結合素子に対してバックショート構造と呼ばれるキャビティ構造が設けられる。バックショート構造は、結合素子に対して、導波管と反対側に所定の距離を離して設けられる。バックショート構造は、結合素子から放射される信号のうち、導波管と反対側に放射される信号を反射することによって、高周波信号を導波管に伝搬させる。
【0045】
例えば、ファンアウトパッケージ1の再配線層4の厚みは、数ミクロンから十数ミクロンと薄いため、結合素子7に対して、導波管13と反対側に所定の距離を離してバックショート構造を設けることが困難である。そのため、結合素子7には、パッチアンテナが用いられる。
【0046】
しかしながら、図2に示したファンアウトパッケージ1では、パッチアンテナを形成する結合素子7と、接地導体の機能を有する第1の金属層5とが、近接して配置される。通過帯域の幅は、基板の厚み(例えば、結合素子7と第1の金属層5との間隔)に比例するため、通過帯域の幅が狭くなってしまう。
【0047】
これに対し、本実施の形態に係る高周波モジュール100では、図1Aおよび図1Bに示したように、誘電体基板9上に無給電素子11を配置することによって結合素子7と無給電素子11とが電磁界的に結合し、パッチアンテナとしての通過帯域の幅を広くできる。
【0048】
図3は、本実施の形態に係る高周波モジュール100の通過帯域の特性を示す図である。図3には、高周波モジュール100の通過帯域の特性(図3の「無給電素子あり」)と比較例である図2の高周波モジュール200の通過帯域の特性(図3の「無給電素子なし」)とが示される。通過帯域の特性は、伝送線路から導波管13へ伝搬される信号の通過損失のシミュレーション結果を示す。なお、図3の横軸は、周波数を示し、縦軸は、通過損失(単位はdB)を示す。縦軸の通過損失の表記は、値が大きいほど損失が大きいことを示す。
【0049】
なお、図3では、「無給電素子なし」の通過損失の最も小さい値を0[dB]と規定し、「無給電素子なし」および「無給電素子ありの通過損失」のシミュレーション結果が規格化されている。
【0050】
図3の「無給電素子なし」の特性では、通過損失の3dB帯域幅(通過損失の最も小さい値に対して3dB大きい値を示す周波数の幅)が20.8GHzであるのに対し、「無給電素子あり」の特性では、通過帯域の3dB帯域幅が35.6GHzである。したがって、高周波モジュール100は、比較例の高周波モジュール200よりも、通過帯域の幅を約1.7倍に拡大できることが示される。
【0051】
また、無給電素子11を設けることによって、結合素子7からの放射電磁界を無給電素子11側に誘導できるため、結合素子7から導波管13への指向性を高め、導波管13へ結合させる場合の損失を小さくできるため、図3においてマイナスの通過損失が得られている。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、ファンアウトパッケージ1の第1の金属層5に設けられた結合素子7と、ファンアウトパッケージ1を実装する誘電体基板9に設けた無給電素子11とが電磁界的に結合される。この構成によれば、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を広帯域にできる。また、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を低損失にでき、広帯域な信号を使った超高速通信装置および超高精度レーダ装置を実現できる。
【0053】
なお、ファンアウトパッケージ1を誘電体基板9にはんだボール8を用いて実装する高周波モジュールにおいて、ファンアウトパッケージ1と誘電体基板9との間に封止樹脂が挿入(充填)されてもよい。封止樹脂を挿入することによって、はんだボール8を用いて実装する構成に対する、実装信頼性を向上できる。
【0054】
なお、図1に示した高周波モジュール100では、1つの無給電素子11が設けられる例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、無給電素子11は複数であってもよい。本実施の形態の第1の変形例として、2つの無給電素子が設けられる高周波モジュールを説明する。
【0055】
(一実施の形態の第1の変形例)
図4は、本実施の形態の第1の変形例に係る高周波モジュール300の概略構造を示す断面図である。なお、図4において、図1Aおよび図1Bと同様の構成については、同一の符番を付し、説明を省略する。
【0056】
図4に示す高周波モジュール300では、誘電体基板9の導波管13が接する面に2つ目の無給電素子14が設けられる。
【0057】
無給電素子14は、例えば、無給電素子11および/または結合素子7と向き合う位置に形成される。例えば、図4の高周波モジュール300の上面視(図示省略)において、無給電素子14は、結合素子7の少なくとも一部と重なってよい。あるいは、図4の高周波モジュール300の上面視において、無給電素子14は、無給電素子11の少なくとも一部と重なってよい。
【0058】
無給電素子14のサイズは、特に限定されないが、例えば、結合素子7と同じであってもよいし、結合素子7よりも大きくてもよいし、結合素子7よりも小さくてもよい。無給電素子11のサイズが結合素子7と同じまたは結合素子7よりも大きい場合、図4の紙面の上からの平面視において、無給電素子11の位置は、結合素子7とに重なってもよい。
【0059】
また、無給電素子14のサイズは、例えば、無給電素子11と同じであってもよいし、無給電素子11よりも大きくてもよいし、無給電素子11よりも小さくてもよい。無給電素子14のサイズが無給電素子11と同じまたは無給電素子11よりも大きい場合、図4の紙面の上からの平面視において、無給電素子14の位置は、無給電素子11と重なってもよい。
【0060】
図4に示すように、2つの無給電素子(無給電素子11と無給電素子14)を設けることによって、結合素子7から放射される電磁界を導波管13内に集中させることができ、通過損失を少なくできる。
【0061】
なお、図4の高周波モジュール300において、無給電素子11を除くことによって、誘電体基板9の導波管13が接する面に1つの無給電素子14が設けられてもよい。
【0062】
なお、図4の高周波モジュール300では、無給電素子が2つである例を示したが、無給電素子は、3つ以上であってもよい。
【0063】
例えば、誘電体基板9を多層基板の構成として、複数の層のそれぞれに無給電素子を配置する構成としてもよい。なお、誘電体基板9を多層基板の構成とした場合、多層基板の全ての層に無給電素子が設けられてもよいし、一部の層に無給電素子が設けられなくてもよい。
【0064】
また、無給電素子11は、結合素子7のサイズと異なるサイズを有してもよい。
【0065】
結合素子7の共振周波数(「第1の共振周波数」と記載することがある)は、結合素子7のサイズ(例えば、一辺の長さ、または、面積)によって定められ、無給電素子11の共振周波数は、無給電素子11のサイズ(例えば、一辺の長さ、または、面積)によって定められる。例えば、無給電素子11が、第1の共振周波数と異なる周波数(「第2の共振周波数」と記載する)で共振するサイズを有することによって、無給電素子11を第2の共振周波数で電磁界的に結合させることができる。そのため、通過帯域の幅をより広帯域にすることができる。
【0066】
例えば、第2の共振周波数が第1の共振周波数よりも高い場合、別言すると、無給電素子11が結合素子7よりも小さい場合、通過帯域の幅を、高周波数側に広げることができる。また、第2の共振周波数が第1の共振周波数よりも低い場合、別言すると、無給電素子11が結合素子7よりも大きい場合、通過帯域の幅を、低周波数側に広げることができる。
【0067】
なお、図4に示したように、複数の無給電素子(無給電素子11および無給電素子14)が設けられる場合、各無給電素子は、互いに異なるサイズであってもよいし、あるいは、各無給電素子は、結合素子7のサイズと異なるサイズを有してもよい。例えば、結合素子7から離れた位置に設けられる無給電素子ほど、小さなサイズを有してもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態の第1の変形例では、ファンアウトパッケージ1の第1の金属層5に設けた結合素子7と、ファンアウトパッケージ1を実装する誘電体基板9に設けた複数の無給電素子(例えば、無給電素子11と無給電素子14)とが電磁界的に結合される。この構成によれば、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を広帯域にできる。また、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を低損失にでき、広帯域な信号を使った超高速通信装置および超高精度レーダ装置を実現できる。さらに、この構成では、複数の無給電素子を用いることで、無給電素子の数の増加に基いて、通過帯域を更に広帯域にできる。また、結合素子7からの放射電磁界を、より強く導波管13に結合できるため、通過損失を小さくできる。
【0069】
なお、上述した高周波モジュール100および高周波モジュール300において、ファンアウトパッケージ1を誘電体基板9に実装するはんだボール8の位置は、特に限定されない。例えば、以下の本実施の形態の変形例2に示すように、はんだボール8は、特定の位置に設けられてもよい。
【0070】
(一実施の形態の第2の変形例)
図5Aは、実施の形態の第2の変形例に係る高周波モジュール400の概略構造を示す断面図である。また、図5Bは、図5Aの矢印Yの方向から見た高周波モジュール400の概略構造を示す上面図である。なお、図5Aは、図5Bにおける線X-Xに沿った断面の一例に相当する。また、図5Bには、図5Aに示す構成の一部が省略されている。また、図5Aおよび図5Bにおいて、図1Aおよび図1Bと同様の構成については、同一の符番を付し、説明を省略する。
【0071】
図5Aおよび図5Bに示す高周波モジュール400と、図1Aおよび図1Bに示した高周波モジュール100との相違点は、はんだボール8の位置が異なる点である。
【0072】
高周波モジュール400では、はんだボール8は、導波管13を構成する金属壁の直下に配置されている。例えば、図5Bに示す上面視において、はんだボール8は、導波管13を構成する金属壁と重なる位置(導波管13の開口を囲む位置)に設けられる。
【0073】
はんだボール8の間隔は、結合素子7に給電される信号の波長に基づいて規定されてよい。
【0074】
例えば、隣り合うはんだボール8は、高周波信号の波長に対して1/4以下の間隔で配置されてよい。例えば、高周波信号が300GHz帯の場合、波長λ=1mmであるため、はんだボール8の間隔は、0.25mm以下としてよい。なお、波長に対して1/4以下に設定される間隔は、隣り合うはんだボール8の間隔のうち、最小間隔に相当する。例えば、図5Bにおいて、はんだボール8aとはんだボール8bとの間隔は、最小間隔であるため、波長に対して1/4以下に設定されてよい。一方で、図5Bにおいて、はんだボール8bとはんだボール8cとの間隔は、最小間隔ではないため、波長に対して1/4以下に設定されない。なお、ここでの波長λは、真空中の波長であってもよいし、結合素子7と導波管13との間の媒質の比誘電率に応じた実効波長であってもよい。
【0075】
高周波モジュール400のファンアウトパッケージ1と誘電体基板9との間において、はんだボール8が囲む空間は、導波管の一部と考えることができる。別言すれば、導波管13が再配線層4まで延長されたことと考えることができる。そのため、無給電素子11が導波管の内部に設置された状態と等価になり、ファンアウトパッケージ1と誘電体基板9の実装部(例えば、はんだボール8との接続部分)における電力漏洩を抑圧し、通過損失を小さくできる。
【0076】
次に、通過帯域の特性について説明する。
【0077】
図6は、本実施の形態の変形例2に係る高周波モジュール400の通過帯域の特性を示す図である。図6には、高周波モジュール400の通過帯域の特性(図6の「無給電素子あり」)と比較例である高周波モジュール200の通過帯域の特性(図6の「無給電素子なし」)とが示される。通過帯域の特性は、伝送線路から導波管13への通過損失のシミュレーション結果を示す。なお、図3と同様に、図6の横軸は、周波数を示し、縦軸は、通過損失(単位はdB)を示す。また、図3と同様に、縦軸の通過損失は、値が大きいほど損失が大きいことを示す。
【0078】
図6の「無給電素子なし」の特性では、通過損失の3dB帯域幅が20.8GHzであるのに対し、「無給電素子あり」の特性では、通過損失の3dB帯域幅が41.8GHzである。したがって、本実施の形態の変形例2に係る高周波モジュール400は、比較例の高周波モジュール200よりも、通過帯域の幅を約2倍に拡大できる。
【0079】
また、図6の「無給電素子なし」の特性の最も小さい値に対して「無給電素子あり」の特性の最も小さい値が1.7dB程度小さいため、本実施の形態の変形例2に係る高周波モジュールは、通過損失を小さくできる。
【0080】
また、はんだボール8を、図5Bに示す上面視において、導波管13を構成する金属壁の内壁に接するように配置することによって、はんだボール8で囲まれた領域での電力漏洩を抑圧して通過損失をより小さくできる。
【0081】
以上のように、本実施の形態の第2の変形例では、ファンアウトパッケージ1の第1の金属層5に設けた結合素子7と、ファンアウトパッケージ1を実装する誘電体基板9に設けた無給電素子11とが電磁界的に結合される。そして、本実施の形態の第2の変形例では、ファンアウトパッケージ1と誘電体基板9とを接続するはんだボール8が、導波管13を構成する金属壁に沿って配置される。この構成によれば、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を広帯域にできる。また、再配線層4に設けられる伝送線路と、誘電体基板9に接続する導波管13との間の信号の伝搬を低損失にでき、広帯域な信号を使った超高速通信装置および超高精度レーダ装置を実現できる。さらに、この構成では、はんだボール8で囲まれた領域を導波管13の一部と考えることができ、電力漏洩を抑圧して通過損失を小さくできる。
【0082】
また、本実施の形態の第2の変形例では、はんだボール8を、高周波モジュール400において使用する周波数の波長の1/4以下の間隔で配置することによって、再配線層4に設けられる伝送線路と導波管13との間の信号の電力漏洩を抑圧して通過損失を小さくすることができる。
【0083】
なお、本実施の形態の第2の変形例では、高周波モジュール400が、1つ無給電素子11を有する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1の変形例に示したように、高周波モジュール400は、複数の無給電素子を有してもよい。
【0084】
なお、上述した変形例を含む実施の形態の高周波モジュールは、例えば、ミリ波帯以上の超高周波数帯で動作する無線通信装置およびレーダ装置などに用いられる。上述した実施の形態の高周波モジュールを用いた無線通信装置は、通信速度の高速化を実現できる。また、上述した実施の形態の高周波モジュールを用いたレーダ装置は、分解能を向上できる。
【0085】
なお、上述した実施の形態において、「・・・モジュール」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、又は、「・・・ユニット」といった他の表記に置換されてもよい。
【0086】
また、上述した実施の形態における、「ファンアウトパッケージ」という表記は、例えば、「Fan Out Wafer Level Package」、又は、「FOWLP」といった他の表記に置換されてもよい。
【0087】
半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0088】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0089】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0090】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0091】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0092】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0093】
本開示の高周波モジュールは、第1の基板に設けられた結合素子と、前記第1の基板と異なる第2の基板と、前記第2の基板に接して配置される導波管と、前記導波管の前記第2の基板に接していない開口と前記結合素子との間に設けられる無給電素子と、を備える。
【0094】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記無給電素子のサイズは、前記開口のサイズよりも小さい。
【0095】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記無給電素子のサイズは、前記結合素子のサイズと異なる。
【0096】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記無給電素子は、前記第2の基板に設けられる。
【0097】
本開示の高周波モジュールにおいて、複数の前記無給電素子は、それぞれ、複数の層を有する前記第2の基板のいずれかの層に設けられる。
【0098】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記複数の無給電素子のサイズは、前記結合素子から離れるほど、小さい。
【0099】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するはんだボールを有する。
【0100】
本開示の高周波モジュールにおいて、前記導波管の開口の方向からの上面視において、前記はんだボールは、前記開口を囲む位置に設けられる。
【0101】
本開示の高周波モジュールにおいて、複数の前記はんだボールの間隔は、前記結合素子に給電される信号の波長に基づいて規定される。
【0102】
本開示の無線通信装置は、前記高周波モジュールを含む。
【0103】
本開示のレーダ装置は、前記高周波モジュールを含む。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る高周波モジュールは、ミリ波帯以上の超高周波数帯で動作する無線通信装置およびレーダ装置などに用いられるモジュールとして有効である。
【符号の説明】
【0105】
1 ファンアウトパッケージ
2 高周波半導体チップ
3 封止樹脂
4 再配線層
5 第1の金属層
6 第2の金属層
7 結合素子
8 はんだボール
9 誘電体基板
10 第3の金属層
11、14 無給電素子
12 第4の金属層
13 導波管
15 ビア
100、200、300、400 高周波モジュール
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6