(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】フロアモップ
(51)【国際特許分類】
A47L 13/258 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
A47L13/258
(21)【出願番号】P 2019055207
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】西村 和竹
(72)【発明者】
【氏名】足立 知志
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0231456(US,A1)
【文献】特開2000-229055(JP,A)
【文献】実開昭52-069168(JP,U)
【文献】特開平10-180916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L13/20-13/258
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込孔を有するモップ
と、前記モップを保持するモップハンドル
と、を有するフロアモップにおいて、
前記モップハンドルは、ヘッド部と柄部とからなっており、
前記ヘッド部は、前記柄部の下端部から左右方向に延びた一対のアーム部を備えており、
前記モップは、キャンバスの下面に多数のパイルを有しており、
前記キャンバスの表面の両端部には、前記アーム部を差し込むための差込孔が形成されており、
前記差込孔は、前記キャンバスの表面を構成している下布地と前記下布地を覆うように配置された上布地との間に形成されており、
前記アーム部は、平らなヘラ形状を有しており、周縁に下向きの縁リブを有しており、
前記縁リブの下面の一部又は全部が、静電植毛された短繊維によって覆われている、
ことを特徴とする
フロアモップ。
【請求項2】
差込孔を有するモップと、前記モップを保持するモップハンドルと、を有するフロアモップにおいて、
前記モップハンドルは、ヘッド部と柄部とからなっており、
前記ヘッド部は、前記柄部の下端部から左右方向に延びた一対のアーム部を備えており、
前記モップは、両端が閉じた細長い袋状の形態を有しており、中央の開口から両側に、前記アーム部を差し込むための差込孔を有しており、
前記アーム部は、断面略円形の棒形状を有しており、
前記アーム部の表面の一部又は全部が、静電植毛された短繊維によって覆われている、
ことを特徴とするフロアモップ。
【請求項3】
静電植毛された前記短繊維によって覆われた
前記アーム部の領域が、単色を呈している、
請求項1
又は2に記載の
フロアモップ。
【請求項4】
静電植毛された前記短繊維によって覆われた
前記アーム部の領域が、2色以上からなる模様を呈している、
請求項1
又は2に記載の
フロアモップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込孔を有するモップを保持するための、モップハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフロアモップは、モップがモップハンドルに保持されて構成されている。そして、モップハンドルは、ヘッド部をモップのキャンバス表面に形成されている差込孔に差し込むことによって、モップを着脱自在に保持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-225188号公報
【文献】特開2003-225189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したフロアモップでは、使用時において、ヘッド部が差込孔内にて摺動するため、払拭作業が安定しないという不具合があった。特に、繰り返し洗浄して使用するモップの場合には、洗浄による収縮代を予め考慮して製作されるので、使用初期の間は差込孔に余分な隙間があり、それ故に、上記不具合が顕著であった。
【0005】
本発明は、安定した払拭作業を実行できるモップハンドルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、差込孔を有するモップを保持するための、モップハンドルにおいて、
前記差込孔に差し込まれるヘッド部と、前記ヘッド部を支持する柄部と、からなっており、
前記ヘッド部の、前記差込孔に差し込まれる差込部の、表面の少なくとも一部が、静電植毛された短繊維によって覆われている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッド部の差込部の、短繊維が植毛された領域が、キャンバスの差込孔に対する滑り止めの機能を発揮できるので、フロアモップの使用時において、差込孔内にてヘッド部が摺動するのを防止でき、その結果、安定した払拭作業を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。
【
図6】モップハンドルの両アーム部が閉じた状態を示す正面図である。
【
図7】第1実施形態のモップハンドルが保持するモッブの平面図である。
【
図9】両アーム部をそれぞれ差込孔に挿入していく様子を示す斜視図である。
【
図10】両アーム部が差し込まれた状態を示す斜視図である。
【
図11】短繊維が植毛されたモップハンドルの下面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。
【
図18】モップハンドルの両アーム部が閉じた状態を示す正面図である。
【
図19】第2実施形態のモップハンドルが保持するモッブの平面図である。
【
図20】両アーム部をそれぞれ差込孔に挿入していく様子を示す斜視図である。
【
図21】両アーム部が差し込まれた状態を示す斜視図である。
【
図22】短繊維が植毛された領域を示す、モップハンドルの正面図である。
【
図23】短繊維が植毛された領域を示す、モップハンドルの下面図である。
【
図24】本発明の第3実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。
【
図25】モップハンドルの閉じた状態の両アーム部をモップに近づける様子を示す正面図である。
【
図26】第3実施形態のモップハンドルが保持するモッブの平面図である。
【
図28】両アーム部をそれぞれ差込孔に挿入した状態を示す正面図である。
【
図29】モップを保持した状態を示す正面図である。
【
図31】第1実施形態のモップハンドルの下布地に対するY方向での滑り難さの試験の様子を示す図である。
【
図32】第1実施形態のモップハンドルの下布地に対するX方向での滑り難さの試験の様子を示す図である。
【
図33】第2実施形態のモップハンドルの下布地に対するY方向での滑り難さの試験の様子を示す図である。
【
図34】第2実施形態のモップハンドルの下布地に対するX方向での滑り難さの試験の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。
図2は、モップハンドルの正面図である。
図3は、モップハンドルの平面図である。
図4は、モップハンドルの下面図である。
図5は、モップハンドルの右側面図である。なお、モップハンドルの左側面図は、
図5と同じである。このモップハンドル10Aは、ヘッド部1Aと柄部2Aとからなっている。ヘッド部1Aは、柄部2Aの下端部21から左右方向に延びた一対のアーム部(差込部)11、11を、備えている。アーム部11は、略平板形状を有している。両アーム部11、11は、
図2に示されるように同一面上に並ぶように開いた状態から、
図6に示されるように互いに近接した閉じた状態となるように、柄部2Aの下端部21に回動可能に支持されている。両アーム部11、11は、
図2の開いた状態で柄部2Aの下端部21に対してロックされるようになっており、ロックを解除すると、重力によって
図6の閉じた状態になるようになっている。ロックは、下端部21のボタン22を押すことによって、解除されるようになっている。
【0010】
図7は、上記構成のモップハンドル10Aが保持するモッブ3Aの平面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII断面図である。モップ3Aは、キャンバス31の下面に多数のパイル38を有している。
図7では、モップ3Aを床面上に置いているため、パイル38がキャンバス31の周囲に見えている。そして、キャンバス31の表面の両端部には、各アーム部11を差し込むための差込孔32、32が形成されている。差込孔32は、キャンバス31の表面を構成している下布地33を覆うように上布地34を配置し、下布地33の周縁331に上布地34の周縁を縫い付けることによって、下布地33と上布地34との間に、形成されている。よって、差込孔32は、差込口321にて開いており、他は閉じている。
【0011】
モップ3Aを上記構成のモップハンドル10Aによって保持する作業は、次のように実行する。まず、モップハンドル10Aを
図6の閉じた状態にする。次に、
図9に示されるように、両アーム部11、11をそれぞれ差込孔32に差込口321から挿入していく。そして、両アーム部11、11を、
図10に示されるように開いた状態となるまで、挿入する。両アーム部11、11は、
図10の開いた状態となると、ロックされる。こうして、モップハンドル10Aは、モップ3Aを保持する。
【0012】
そして、本実施形態では、アーム部11の下面の一部が静電植毛された短繊維によって覆われている。具体的には、モップハンドル10Aの下面を示す
図11に示されるように、斜線で示された領域100が短繊維によって覆われている。領域100は、
図2にも示されている。
図12は、
図2のXII-XII断面略図である。アーム部11は、平らなヘラ形状を有しているが、周縁に下向きの縁リブ111を有しており、領域100は縁リブ111の一部であり、縁リブ111の下面に短繊維200が付着している。領域100は、モップハンドル10Aがモップ3Aを保持した
図10の状態において、キャンバス31の下布地33に接触する。
【0013】
モップハンドル10Aに対する短繊維の静電植毛は、公知の方法によって実行できる。例えば、まず、アーム部11の縁リブ111の下面112の、領域100に相当する部分に、接着剤を塗布する。次に、それを、プラス極とマイナス極との間に配置する。そして、両極間に電圧を印加する。これにより、プラス極上に置かれている短繊維200が、マイナス極に向かって飛び、その途中で接着剤に突き刺さる。その結果、接着剤を塗布した領域100に短繊維200が付着する。このような静電植毛加工は、「フロッキング加工」とも称する。
【0014】
上記構成のモップハンドル10Aによれば、領域100に付着している短繊維200が下布地33に対する滑り止めとして機能するので、キャンバス31に対するヘッド部1Aの安定性を増大できる。よって、モップハンドル10Aを備えたフロアモップの使用時において、差込孔32内にてヘッド部1Aが摺動するのを防止でき、その結果、安定した払拭作業を実行できる。
【0015】
[第1実施形態の変形例]
(1)短繊維200の静電植毛を、アーム部11の下面112(
図2)の一部のみに行ってもよい。これによっても、下面112の短繊維200が下布地33に対する滑り止めとして機能するので、キャンバス31に対するヘッド部1Aの安定性を増大できる。
(2)短繊維200の静電植毛を、下面112に加え又は下面112を除き、アーム部11の上面113(
図12)の全部又は一部のみに対して行ってもよい。これによれば、上面113が使用時に傷付くのを防止でき、更には、高級感を発揮できる。
(3)短繊維200の静電植毛を、下面112に加え又は下面112を除き、アーム部11の側面114(
図12)の全部又は一部のみに対して行ってもよい。これによれば、側面114が使用時に傷付くのを防止でき、側面114のクッション性を向上でき、更には、高級感を発揮できる。
(4)短繊維200の静電植毛を、下面112に加え又は下面112を除き、アーム部11の上面113及び側面114の各々の全部又は一部のみに対して行ってもよい。これによれば、上面113及び側面114が使用時に傷付くのを防止でき、更には、高級感を発揮できる。
【0016】
[第2実施形態]
図13は、本発明の第2実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。
図14は、モップハンドルの正面図である。
図15は、モップハンドルの平面図である。
図16は、モップハンドルの下面図である。
図17は、
図14のXVII-XVII断面図である。このモップハンドル10Bは、ヘッド部1Bと柄部2Bとからなっている。ヘッド部1Bは、柄部2Bの下端部23から左右方向に延びた一対のアーム部(差込部)13、13を、備えている。アーム部13は、断面略円形の棒形状を有している。両アーム部13、13は、
図14に示されるように同一面上に並ぶように開いた状態から、
図18に示されるように互いに近接した閉じた状態となるように、柄部2Bの下端部23に回動可能に支持されている。両アーム部13、13は、
図14の開いた状態で柄部2Bの下端部23に対してロックされるようになっており、ロックを解除すると、重力によって
図18の閉じた状態になるようになっている。ロックは、下端部23のボタン24を押すことによって、解除されるようになっている。
【0017】
図19は、上記構成のモップハンドル10Bが保持するモッブ3Bの平面図である。モップ3Bは、両端が閉じた細長い袋状の形態を有しており、中央に細長い開口35を有している。よって、モップ3Bは、開口35から両側に差込孔36を有している。すなわち、開口35は、差込口として機能するようになっている。差込孔36は、モップ3Bの内部において布地に囲まれて構成されている。
【0018】
モップ3Bを上記構成のモップハンドル10Bによって保持する作業は、次のように実行する。まず、モップハンドル10Bを
図18の閉じた状態にする。次に、
図20に示されるように、両アーム部13、13をそれぞれ開口35から差込孔36に挿入していく。そして、両アーム部13、13を、
図21に示されるように開いた状態となるまで、挿入する。両アーム部13、13は、
図21の開いた状態となると、ロックされる。こうして、モップハンドル10Bは、モップ3Bを保持する。
【0019】
そして、本実施形態では、アーム部13の下面131(
図14)の略全部が静電植毛された短繊維200によって覆われている。具体的には、正面図である
図22及び下面図である
図23に示されるように、モップハンドル10Bの下面131の略全領域101が短繊維によって覆われている。領域101は、モップハンドル10Bがモップ3Bを保持した
図21の状態において、差込孔36を囲んでいる布地の下側の面に接触する。
【0020】
モップハンドル10Bに対する短繊維200の静電植毛は、公知の方法によって実行でき、例えば、第1実施形態のフロッキング加工と同じ方法で実行できる。具体的には、まず、アーム部13の下面の、領域101に対応する部分に、接着剤を塗布する。次に、それを、プラス極とマイナス極との間に配置する。そして、両極間に電圧を印加する。これにより、プラス極上に置かれている短繊維200が、マイナス極に向かって飛び、その途中で接着剤に突き刺さる。その結果、接着剤を塗布した領域101に短繊維200が付着する。
【0021】
上記構成のモップハンドル10Bによれば、領域101に付着している短繊維200が差込孔36を囲んでいる布地に対する滑り止めとして機能するので、モップ3Bに対するヘッド部1Bの安定性を増大できる。よって、モップハンドル10Bを備えたフロアモップの使用時において、差込孔36内にてヘッド部1Bが摺動するのを防止でき、その結果、安定した払拭作業を実行できる。
【0022】
[第2実施形態の変形例]
(1)短繊維200の静電植毛を、アーム部13の上面132(
図15)の一部又は全部に対しても行ってよい。これによれば、上面132が使用時に傷付くのを防止でき、更には、高級感を発揮できる。
(2)短繊維200の静電植毛を、アーム部11の側面133(
図16)の一部又は全部に対しても行ってよい。これによれば、側面133が使用時に傷付くのを防止でき、また、側面133のクッション性を向上でき、更には、高級感を発揮できる。
(3)短繊維200の静電植毛を、アーム部11の上面132及び側面133の一部又は全部に対しても行ってよい。
【0023】
[第3実施形態]
図24は、本発明の第3実施形態のモップハンドルを示す斜視図である。このモップハンドル10Cは、ヘッド部1Cと柄部2Cとからなっている。ヘッド部1Cは、柄部2Cの下端部25から左右方向に延びたヘッド本体15と、ヘッド本体15の下面側において下端部25から左右方向に延びた一対のアーム部(差込部)16、16とを、備えている。ヘッド本体15及びアーム部16、16は、略平板形状を有している。アーム部16、16は、
図24に示されるように同一面上に並ぶように開いた状態、すなわち、ヘッド本体15とアーム部16、16とが合わさった状態から、
図25に示されるように互いに近接した閉じた状態となるように、柄部2Cの下端部25に回動可能に支持されている。両アーム部16、16は、
図24の開いた状態でヘッド本体15との間に布地を挟持できるようになっている。両アーム部16、16は、
図24の開いた状態で柄部2Cの下端部25に対してロックされるようになっており、ロックを解除すると、重力によって
図25の閉じた状態になるようになっている。ロックは、下端部25のボタン26を押すことによって、解除されるようになっている。
【0024】
図26は、上記構成のモップハンドル10Cが保持するモッブ3Cの平面図である。
図27は、
図26のXXVII-XXVII断面図である。モップ3Cは、キャンバス31の下面に多数のパイル38を有している。
図26では、モップ3Cを床面上に置いているため、パイル38がキャンバス31の周囲に見えている。そして、キャンバス31の表面の両側には、各アーム部16、16を差し込むための差込孔37、37が形成されている。差込孔37、37は、キャンバス31の表面を構成している下布地33を覆うように上布地341、342を配置し、下布地33の周縁331に上布地341、342の周縁を縫い付けることによって、下布地33と上布地341、342との間に、形成されている。よって、差込孔37は、上布地341と上布地342との間に開口374を有しており、上布地341の両側の口371、372にて、及び、上布地342の片側の口373にて、開いている。口371は、差込口として機能する。
【0025】
モップ3Cを上記構成のモップハンドル10Cによって保持する作業は、次のように実行する。まず、両アーム部16、16を
図25の閉じた状態にする。次に、
図25及び
図28に示されるように、両アーム部16、16をそれぞれ差込孔37に口371から挿入していく。そして、両アーム部16、16を、
図29に示されるように開いた状態となるまで、挿入する。両アーム部16、16は、
図29の開いた状態となると、ロックされる。これにより、上布地341及び上布地342が、ヘッド本体15と両アーム部16、16との間に挟持され、また、両アーム部16、16に設けられている係止部162(
図28)が開口374を通ってヘッド本体15の下面の被係止部152(
図28)に係合する。こうして、モップハンドル10Cは、モップ3Cを保持する。
【0026】
そして、本実施形態では、アーム部16の下面の全部が静電植毛された短繊維によって覆われている。具体的には、
図24のXXX-XXX断面図である
図30に示されるように、モップハンドル10Cのアーム部16の下面161の略全部の領域102(
図25)が短繊維200によって覆われている。領域102は、モップハンドル10Cがモップ3Cを保持した
図29の状態において、キャンバス31の下布地33に接触する部分である。
【0027】
モップハンドル10Cに対する短繊維200の静電植毛は、公知の方法によって実行でき、例えば、第1実施形態のフロッキング加工と同じ方法で実行できる。具体的には、まず、アーム部16の下面161の領域102に対応する部分に、接着剤を塗布する。次に、それを、プラス極とマイナス極との間に配置する。そして、両極間に電圧を印加する。これにより、プラス極上に置かれている短繊維200が、マイナス極に向かって飛び、その途中で接着剤に突き刺さる。その結果、接着剤を塗布した領域102に短繊維200が付着する。
【0028】
上記構成のモップハンドル10Cによれば、領域102に付着している短繊維200が下布地33に対する滑り止めとして機能するので、キャンバス31に対するヘッド部1Cの安定性を増大できる。よって、モップハンドル10Cを備えたフロアモップの使用時において、差込孔37内にてアーム部16が摺動するのを防止でき、その結果、安定した払拭作業を実行できる。
【0029】
[第3実施形態の変形例]
(1)短繊維200の静電植毛を、ヘッド本体15の上面153(
図30)の一部又は全部に対しても行ってよい。これによれば、上面153が使用時に傷付くのを防止でき、更には、高級感を発揮できる。
(2)短繊維200の静電植毛を、ヘッド本体15の側面154(
図30)の一部又は全部に対しても行ってよい。これによれば、側面154が使用時に傷付くのを防止でき、また、側面154のクッション性を向上でき、更には、高級感を発揮できる。
(3)短繊維200の静電植毛を、ヘッド本体15の上面153及び側面154の一部又は全部に対しても行ってよい。
【0030】
[別の実施形態]
(1)柄部2A(又は2B又は2C)の一部又は全部の表面が、静電植毛された短繊維200によって覆われている。これによれば、柄部が使用時に傷付くのを防止でき、柄部のグリップ性を向上でき、金属製の場合の冬場における柄部の不快なヒヤリ感を低減でき、更には、高級感を発揮できる。
(2)柄部2A(又は2B又は2C)のグリップ部の表面が、静電植毛された短繊維によって覆われている。なお、グリップ部は、柄部の上端部に設けられている。これによれば、グリップ部が使用時に傷付くのを防止でき、グリップ部の不快なヒヤリ感を低減でき、グリップ部における手の滑りを防止でき、更には、高級感を発揮できる。
(3)静電植毛された短繊維200によって覆われた表面が、単色を呈している。
(4)静電植毛された短繊維200によって覆われた表面が、2色以上からなる模様を呈している。これは、2色以上の短繊維200を静電植毛することによって、得ることができる。これによれば、デザイン性を向上できる。
【0031】
[実施例1、2]
下面112のみに短繊維200が静電植毛された第1実施形態のモップハンドル10Aを用意するとともに、静電植毛されていない同型のモップハンドルも用意した。前者を実施例1とし、後者を比較例1とした。
【0032】
また、下面131のみに短繊維200が静電植毛された第2実施形態のモップハンドル10Bを用意するとともに、静電植毛されていない同型のモップハンドルも用意した。前者を実施例2とし、後者を比較例2とした。
【0033】
なお、実施例1、2の具体的なフロッキング仕様は、表1に示されるとおりであった。また、実施例1、2及び比較例1、2の具体的なサイズ及び重量は、表2に示されるとおりであった。
【0034】
【0035】
【0036】
そして、キャンバス31の下布地33に対する滑り難さを次のような試験を行って調べた。
【0037】
(試験1)
図31及び
図32に示されるように、実施例1のモップハンドル10Aをキャンバス31の下布地33と同じ布地上に置き、プッシュプルゲージ9でX方向にゆっくりと押して、モップハンドル10Aが動き始めた時の荷重(最大荷重)を測定した。なお、
図31では、モップハンドル10AをX方向に対する直交方向(すなわちY方向)に沿うように置いており、
図32では、モップハンドル10AをX方向に沿うように置いている。この測定を3回行った。比較例1のモップハンドルについても、同様に測定した。
【0038】
図33及び
図34に示されるように、実施例2のモップハンドル10Bをキャンバス31の下布地33と同じ布地上に置き、プッシュプルゲージ9でX方向にゆっくりと押して、モップハンドル10Bが動き始めた時の荷重(最大荷重)を測定した。なお、
図33では、モップハンドル10BをY方向に沿うように置いており、
図34では、モップハンドル10BをX方向に沿うように置いている。この測定を3回行った。比較例2のモップハンドルについても、同様に測定した。
【0039】
測定結果を表3に示す。
【0040】
【0041】
表3から明らかなように、実施例1、2のモップハンドルは、比較例1、2のモップハンドルに比して、非常に滑り難くなっている。したがって、実施例1、2のモップハンドルを備えたフロアモップによれば、安定した払拭作業を実行できる。
【0042】
[実施例3、4]
下面112、上面113、及び側面114に短繊維200が静電植毛された第1実施形態のモップハンドル10Aを用意した。これを実施例3とした。
【0043】
また、下面131、上面132、及び側面133に短繊維200が静電植毛された第2実施形態のモップハンドル10Bを用意した。これを実施例4とした。
【0044】
なお、実施例3、4の具体的なフロッキング仕様及びサイズは、表1及び表2に示されるとおりであった。
【0045】
そして、実施例3、4のモップハンドルについて試験1と同様の方法によって「滑り難さ」を調べるとともに、実施例1~4のモップハンドルの差込孔に対する着脱性を調べた。なお、着脱性は、10人の作業者の主観により決定した。結果を表4に示す。表4においては、良好な結果から順に「◎」、「○」、「△」と判定した。なお、着脱性における「△」は「支障を感じるが可能である」を意味し、「○」は「少し支障を感じる」を意味し、「◎」は「全く支障を感じない」を意味する。
【0046】
【0047】
表4から明らかなように、滑り難さにおいて実施例1~4は差異がないが、着脱性においては実施例1、2の方が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のモップハンドルは、フロアモップに使用して安定した払拭作業を実行できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B、1C ヘッド部
2A、2B、2C 柄部
3A、3B、3C モップ
11、13、16 アーム部(差込部)
32、36 差込孔
113、132、153 上面
114、133、154 側面
112、131、161 下面