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特許7267056CSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】CSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20230424BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20230424BHJP
   G01N 22/04 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01N15/02 B
G01N33/24 E
G01N22/04 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019057691
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159785
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594135151
【氏名又は名称】一般財団法人ダム技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 侃彦
(72)【発明者】
【氏名】安田 成夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 秀公
(72)【発明者】
【氏名】安井 利彰
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】國井 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 俊
(72)【発明者】
【氏名】高野 正年
(72)【発明者】
【氏名】中島 具威
(72)【発明者】
【氏名】田中 麻穂
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-163836(JP,A)
【文献】特開2017-166835(JP,A)
【文献】特開2015-010952(JP,A)
【文献】特開2017-189940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/02
G01N 33/24
G01N 22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CSG工法に使用するCSG材の品質測定及び管理を行うための方法であって、
マイクロ波水分計を用いて、CSG材として使用する粒状材料の水分量を測定するとともに、当該粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出し、
水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行い、
水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定し、
判定結果が適切な管理値の範囲内である粒状材料をCSG材として使用し、
CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、管理値の基本データを生成し、
粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合に、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する、
ことを特徴とするCSG材の品質測定・管理方法。
【請求項2】
前記粒状材料は2種類以上を混合して用い、
水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程は、粒状材料毎に実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載のCSG材の品質測定・管理方法。
【請求項3】
粒状材料の水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程において、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出及び水分量の測定を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCSG材の品質測定・管理方法。
【請求項4】
粒状材料の水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程において、直近の所定数のデータの移動平均値を粒状材料の水分量及び粒度分布とする、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のCSG材の品質測定・管理方法。
【請求項5】
CSG工法に使用するCSG材の品質測定及び管理を行うためのシステムであって、
マイクロ波水分計を用いて、CSG材として使用する粒状材料の水分量を測定する水分量測定手段と、
CSG材として使用する粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出する粒度分布算出手段と、
水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行う水分量調整手段と、
水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、管理値の基本データを生成する基本データ生成手段と、
粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合に、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する判定正当性検証手段と、
を備えたことを特徴とするCSG材の品質測定・管理システム。
【請求項6】
前記粒状材料は2種類以上を混合して用い、
水分量測定手段及び粒度分布算出手段は、粒状材料毎に粒度分布の算出及び水分量の測定を実施する、
ことを特徴とする請求項に記載のCSG材の品質測定・管理システム。
【請求項7】
水分量測定手段及び粒度分布算出手段において、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出及び水分量の測定を行う、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のCSG材の品質測定・管理システム。
【請求項8】
水分量測定手段及び粒度分布算出手段において、直近の所定数のデータの移動平均値を粒状材料の水分量及び粒度分布とする、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のCSG材の品質測定・管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムに関するものであり、詳しくは、CSG(Cemented Sand and Gravel)工法で使用する粒状材料について、粒度や水分量の変動傾向を測定して適切に管理するための方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CSG工法によりダム堤体や海岸堤防等を構築する技術が普及している。CSG工法とは、現地発生材である砂礫材料等とセメント及び水を混合した材料を使用してダム堤体等を構築する工法であり、現地発生材を使用することにより、環境保全、工期短縮、コスト削減を図ることができる。CSG工法では現地発生材を使用するため、CSG製造時における材料の粒度や水分量の変動傾向を適切に把握する必要があり、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1(特開2015-105898号公報/特許第6173894号公報)に記載された技術は、地盤材料の表面水量をリアルタイムで管理するための方法に関するものである。この地盤材料の表面水量管理方法は、工事現場に継続的に供給される様々な粒径の混在する地盤材料の所定粒径別の含水率を予め求めて記憶しておく。また、供給される地盤材料の全粒径範囲の含水率を連続的に計測し、供給される地盤材料の一部を所定時間おきに抜き取って粒度分布を検出し、地盤材料の全粒径範囲の含水率と記憶した粒径別含水率中の所定粒径以上の含水率とから粒度分布に応じて所定粒径以下の含水率を算出する。そして、記憶した所定粒径以上の含水率と算出した所定粒径以下の含水率とに基づいて地盤材料の表面水量をリアルタイムで推定するようになっている。
【0004】
特許文献2(特開2015-10952号公報/特許第6243640号公報)に記載された技術は、CSG材料の粒度分布を測定するためのシステムに関するものである。この粒度分布測定システムは、材料を流下させる材料流下部と、流下する材料を撮影する撮影部と、撮影された材の粒度分布を算出する算出部とを備えている。そして、算出部は、撮影画像における材料の粒径区分ごとの合計面積を算出する合計面積算出部と、撮影画像における粒径区分ごとの所定面積あたりの重量である重量換算係数が記憶される記憶部と、材料の粒径区分ごとの合計面積と重量換算係数とに基づいて、粒度分布を算出する粒度分布算出部とを備えている。粒度分布の算出に使用する重量換算係数は、粒径区分ごとの重量が既知の材料を材料流下部によって流下させて撮影部によって撮影した撮影画像における材料の粒径区分ごとの合計面積と、既知である材料の粒径区分ごとの重量とに基づいて予め算出されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-105898号公報
【文献】特開2015-10952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、CSG材を製造する際には、基本的に、使用する粒状材料に対して、篩い分け試験による粒度試験および乾燥法による水分量測定を行っている。しかし、大規模なダム工事等では、使用するCSG材の量が膨大なものとなり、すべてのCSG材について人力により試験や測定を行うことは非現実的である。そこで、上述したように、CSG工法に使用する粒状材料に対して、随時、粒度分布や水分量を測定あるいは推定する技術が提案されている。
【0007】
しかし、上述した特許文献1に記載された技術は、粒状材料の粒度分布を測定する際に、地盤材料を薄く撒き出して画像を撮影し、その撒き出し画像から画像解析技術により地盤材料の粒径加積曲線を作成することにより粒度分布を測定しているため、十分な測定精度を得ることができないという問題があった。
【0008】
すなわち、画像撮影対象となる粒状体(例えば土粒子)が重なり合わないように、満遍なくばらけさせることが難しいため、粒状体の境界が不明確となってしまう。また、比較的粒径の小さい粒状体を個別に判別することが難しく、比較的粒径の小さい粒状体は、数個をまとめて大きな粒状体1個と認識されてしまうことがあり、粗粒分を過大評価してしまう。さらに、比較的粒径の大きい粒状体の陰に隠れた粒径の小さな粒状体は、その存在を認識することができない。
【0009】
この点、特許文献2に記載された技術は、粒状材料を流下させて撮影し、撮影した画像データを用いて粒度分布を算出しているため、上述した問題はないが、大量のCSG材を使用する場合に、さらなる工夫の余地があった。すなわち、大量のCSG材を使用する場合には、ストックパイル方式におけるストック状況の変化や、CSG母材の採取場所の状況の変化等、種々の要因を考慮してCSG材として使用する粒状材料の水分量及び粒度分布を迅速かつ正確に測定しなければならない。
【0010】
特許文献2には、含水比の変動に対応して粒度分布を好適に測定することができるという記載があるものの、重量換算係数の変更手法を行わない場合には、マイクロ波水分計及び含水比監視部は省略可能であるとされていることから、大量のCSG材を使用する際、すなわち重量換算係数の見直しが見込まれる粒状材料の水分量及び粒度分布の変化に対して、連続的、迅速、正確に対応することを意図した技術ではなく、その示唆もない。
【0011】
さらに、水分量の測定においても、種々の問題があった。例えば、近赤外光等を用いて含水率を連続的に計測する技術では、測定物の表面から数百マイクロメートル以下(1ミリ以下)の含水率しか測定できず、また、測定物の色彩が変化すると、その色彩変化により測定結果が影響を受けることが多々あり、表面水量推定の精度が低下してしまう。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、大量のCSG材を供給する必要がある場合であっても、CSG材として使用する粒状材料の水分量及び粒度分布を迅速かつ正確に測定することにより、適切なCSG材を連続して供給することが可能なCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法は、マイクロ波水分計を用いて、CSG材として使用する粒状材料の水分量を測定するとともに、当該粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出する工程を実施する。
【0014】
続いて、水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行う工程と、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定する工程とを実施し、判定結果が適切な管理値の範囲内である粒状材料をCSG材として使用し、さらに、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する工程を行う。また、粒状材料は2種類以上を混合して用い、水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程は、粒状材料毎に実施することが可能である。
【0015】
このような構成からなるCSG材の品質測定・管理方法では、大量のCSG材を使用する場合を想定して、仮にCSG材として使用する粒状材料の性状が変化したとしても、その質量及び水分量をほぼ同時かつ連続的に測定することにより、粒状材料の質量及び水分量を適切かつ正確に測定している。
【0016】
そして、性状が異なる2種類以上の粒状材料を混合して用いる場合であっても、水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程を粒状材料毎に実施するため、CSG材として使用する粒状材料全体に対して適切かつ正確にCSG材の品質を測定して管理している。
【0017】
上述した構成からなるCSG材の品質測定・管理方法において、粒状材料の水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程において、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出及び水分量の測定を行うことが可能である。
【0018】
上述した構成からなるCSG材の品質測定・管理方法において、粒状材料の水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程において、直近の所定数のデータの移動平均値を粒状材料の水分量及び粒度分布とすることが可能である。
【0019】
このような構成からなるCSG材の品質測定・管理方法では、常に最新のデータを用いてCSG材の品質を測定することにより、適切かつ正確にCSG材の品質を測定して管理している。
【0020】
また、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法は、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する工程として、CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、管理値の基本データを生成する。そして、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合に、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する。
【0021】
このような構成において、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が正当である場合には、粒状材料がCSG材として不適切であるため、供給される粒状材料の見直しを行う。一方、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が不当である場合には、粒状材料の粒度分布算出及び水分量測定に係る一連の工程を行っているシステムの不具合であるため、システムが復旧するまでの間、篩い分け試験による粒度分布算出及び乾燥法による水分量測定を実施して材料配合を管理するか、CSG材の供給を一時的に停止する。
【0022】
このような構成からなるCSG材の品質測定・管理方法では、CSG材として使用する粒状材料の粒度や水分量の変動傾向を測定して管理するという一連の工程(水分量の測定、粒度分布の算出、水分量の調整、適切材料の判定)において、重要な基本データを迅速かつ正確に算出している。そして、CSG材として使用する粒状材料が常に適切な管理値の範囲となるように操作することにより、適切かつ正確にCSG材の品質を測定して管理している。
【0023】
本発明に係るCSG材の品質測定・管理システムは、マイクロ波水分計を用いて、CSG材として使用する粒状材料の水分量を測定する水分量測定手段と、CSG材として使用する粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出する粒度分布算出手段と、水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行う水分量調整手段と、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定する判定手段とを備えており、さらに、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する手段を備えている。また、粒状材料は2種類以上を混合して用い、水分量測定手段及び粒度分布算出手段は、粒状材料毎に粒度分布の算出及び水分量の測定を実施することが可能である。
【0024】
上述した構成からなるCSG材の品質測定・管理システムの水分量測定手段及び粒度分布算出手段において、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出及び水分量の測定を行うことが可能である。
【0025】
上述した構成からなるCSG材の品質測定・管理システムの水分量測定手段及び粒度分布算出手段において、直近の所定数のデータの移動平均値を粒状材料の水分量及び粒度分布とすることが可能である。
【0026】
また、本発明に係るCSG材の品質測定・管理システムは、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する手段として、CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、管理値の基本データを生成する基本データ生成手段と、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合に、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する判定正当性検証手段とを備えている。
【0027】
上述したように、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が正当である場合には、粒状材料がCSG材として不適切であるため、供給される粒状材料の見直しを行う。一方、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が不当である場合には、粒状材料の粒度分布算出及び水分量測定に係る一連の工程を行っているシステムの不具合であるため、システムが復旧するまでの間、篩い分け試験による粒度分布算出及び乾燥法による水分量測定を実施して材料配合を管理するか、CSG材の供給を一時的に停止する。
【0028】
このような構成からなるCSG材の品質測定・管理システムでは、大量のCSG材を使用する場合を想定しており、CSG材の品質測定・管理方法について説明したように、適切かつ正確にCSG材の品質を測定して管理している。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、CSG材として使用する粒状材料の粒度や水分量の変動傾向を測定して管理するという一連の工程(水分量の測定、粒度分布の算出、水分量の調整、適切材料の判定)について、人手を介することなくほぼ自動的に連続して実施することができる。
【0030】
また、常に最新のデータを用い、さらに直近データの移動平均値を用いて、CSG材として使用する粒状材料の材料配合や品質管理を行うことにより、適切なCSG材を供給することができる。
【0031】
また、CSG材として使用する粒状材料が適切な管理値の範囲にあるか否かを判定するだけではなく、判定の正当性を検証することにより、さらに一層、適切なCSG材を供給することができる。
【0032】
このように、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムによれば、大量のCSG材を供給する必要がある場合であっても、CSG材として使用する粒状材料の水分量及び粒度分布を迅速かつ正確に測定することができるので、適切なCSG材を連続して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理方法のフローチャート。
図2】本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理システムの機能ブロック図。
図3】粒度分布算出手段の機能ブロック図。
図4】粒度分布算出手段の模式図。
図5】含有水分量の測定機器を示す模式図。
図6】CSG材の管理値決定グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムを説明する。図1図6は本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムを説明するもので、図1はCSG材の品質測定・管理方法のフローチャート、図2はCSG材の品質測定・管理システムの機能ブロック図、図3は粒度分布算出手段の機能ブロック図、図4は粒度分布算出手段の模式図、図5は含有水分量の測定機器を示す模式図、図6はCSG材の管理値決定グラフである。なお、図5において、(a)は側方から見た状態の模式図、(b)は上方から見た状態の模式図である。
【0035】
<CSGの品質管理>
本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理方法は、CSG工法に使用する粒状材料の水分量及び粒度分布をほぼ自動的かつ継続的に測定して配合調整及び水分量調整を行うことにより、適切な管理値の範囲内であるCSG材を連続して供給することが可能な方法に関するものである。特に、短期間で大規模な堰堤やダム等の構造物を建造するために、大量のCSG材を連続的に供給する必要がある場合に好適な方法である。このようなCSG材の品質測定・管理方法を用いることにより、製造されたCSGの品質を適切に管理することができる。なお、CSGの品質管理とは、CSG材として使用する粒状材料の配合から、製造したCSGの品質に関する管理までを含む概念である(以下、同様)。
【0036】
<CSGの品質管理に用いるシステム>
本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理システムは、上述したCSGの品質管理に使用するシステムに関するものであり、コンピュータを含んだシステムを用いることにより、CSG工法に使用する粒状材料の水分量及び粒度分布をほぼ自動的かつ継続的に測定して配合調整及び水分量調整を行うようになっている。
【0037】
<CSG材の品質測定・管理システム>
本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理システム100は、CSG工法において使用する粒状材料の品質測定及び管理を行うためのシステムであり、図2に示すように、粒度分布算出手段10と、水分量測定手段20と、水分量調整手段30と、判定手段40を主要な構成要素としており、基本データ生成手段50と、判定正当性検証手段60とを備えていることが好ましい。各手段は、それぞれの機能を発揮する機器と、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムにより構成される。なお、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムとは、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、PLC等の演算機能を有する機器及びこれらにインストールされたプログラムを含む広い概念である。
【0038】
<粒状材料>
CSG材として使用する粒状材料は、例えば、現地発生材である砂礫材料である。この粒状材料に対して粒度分布及び水分量を測定し、測定値に応じて水分量の調整等、適宜な処理を施すことにより適切な管理値の範囲内のCSG材を供給することができる。また、粒状材料は1種類に限られず、2種類以上を混合して用いることができる。なお、粒状材料はCSG材として使用できればどのような材料であってもよく、砂礫材料の他に、コンクリートがらや震災がれき等から生成される再生骨材、スラグ、石炭灰等を使用することができる。
【0039】
2種類以上の粒状材料とは、例えば、採取場所が異なる粒状材料のことである。この場合には、粒度分布及び水分量の測定は粒状材料毎に実施する。このように2種類以上の粒状材料を使用することにより、大量のCSG材を使用する必要がある場合や、1種類の粒状材料では品質を満足しない場合であっても、適切な材料供給を行うことができる。
【0040】
<水分量測定手段>
水分量測定手段20は、マイクロ波水分計を用いて粒状材料の水分量を測定するための手段である。マイクロ波水分計は、粒状材料にマイクロ波を照射して、マイクロ波が粒状材料を通過する前後におけるエネルギー量の差に基づいて、水分量を測定する装置であり、公知の製品を使用することができる。水分量の測定では、例えば、フィーダー上を流れる粒状材料を敷き均し装置により敷き均して、粒状材料に対してマイクロ波を照射することにより水分量を測定する。
【0041】
本実施形態の水分量測定手段20(マイクロ波水分計)は、粒度分布算出手段10の構成要素である供給手段11に設けている。具体的には、図5に示すように、フィーダー11bの適宜位置(上流側)に敷き均し手段16を設け、フィーダー11b上を搬送される粒状材料を適宜な高さ(h)となるように敷き均した後、質量及び水分量を測定するようになっている。なお、水分量測定手段20は、他の箇所に設けてもよいし、水分量測定手段20を複数箇所に設けてもよい。
【0042】
含有水分量の測定について具体的に説明する。図5に示すように、フィーダー11bには、質量計測手段12と水分量測定手段(マイクロ波水分計)20とが設けられている。図5に示す例では、質量計測手段12によるCSG材(粒状材料)の計量範囲は1m×0.5m×h=0.5hm3となっており、水分量測定手段(マイクロ波水分計)20の計測範囲は、0.25m×0.25m×h=0.0625hm3となっている。
【0043】
CSG材1m3あたりの補正水分量は、所用水分量から含有水分量を差し引いて求めることができる。ここで、マイクロ波水分計より算出される含水率u、マイクロ波水分計の計測範囲におけるCSG材土粒子の湿潤重量w、水分量wに関して、下記式(1)、式(2)が成り立つ。
u=w/( ) ・・・ (1)
=u/(1-u)× ・・・ (2)
したがって、図5に示す例では、下記式(3)によりCSG材計量範囲における含有水分量Wを求めることができる。
含有水分量W=w×(0.5/0.0625) ・・・ (3)
【0044】
なお、粒状材料として2種類以上を用いる場合には、それぞれの粒状材料に対して、水分量を測定するとともに、粒度分布を算出する。この際、粒状材料の種類毎に、水分量を測定する手段及び粒度分布を算出する手段を設置する。
【0045】
<粒度分布算出手段>
粒度分布算出手段10は、図3及び図4に示すように、粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影することにより粒度分布を解析するための手段であり、粒状材料の供給を行う装置、粒状材料の重さ(質量)を算出する装置、粒状材料を拡散させて流下させる装置、流下する粒状材料を撮影する装置、撮像データに基づいて粒状材料の粒度分布を解析する装置からなる一連の装置群を備えている。本実施形態では、これら一連の装置群を、それぞれ、供給手段11、質量計測手段12、拡散流下手段13、撮像手段14、粒度分布解析手段15と称して説明する。
【0046】
<供給手段>
供給手段11は、粒状材料を供給するための手段である。この供給手段11は、図4に示すように、受け入れた粒状材料を揚送するベルトコンベア11aと、ベルトコンベア11aで揚送された粒状材料を拡散流下手段13まで搬送するフィーダー11bと、ベルトコンベア11aで揚送した粒状材料をフィーダー11b上に流下させるホッパ11cとを備えている。また、供給手段11は、ベルトコンベア11a、フィーダー11b、ホッパ11cに限られず、拡散流下手段13の上方に粒状材料を供給することができれば、どのような装置や部材であってもよく、バックホーやパワーショベル等を用いてもよい。
【0047】
供給手段11の一要素としてフィーダー11bを用いた場合には、図5に示すように、フィーダー11b上で粒状材料を薄く敷き均すための敷き均し手段16を備えることが好ましい。すなわち、フィーダー11bの適宜位置に敷き均し手段16を設け、フィーダー11b上を搬送される粒状材料を薄く敷き均すことにより、拡散流下手段13で粒状材料が流下する際に均一に広がって、粒状材料の粒子が重ならないので、粒度分布解析の精度を上げることができる。敷き均し手段16は、粒状材料を薄く敷き均すことができればどのような装置であってもよいが、例えば、フィーダー11bの搬送面の上方に位置するように敷き均し板や敷き均しロッドを配設する。
【0048】
<質量計測手段>
質量計測手段12は、拡散流下手段13に供給する粒状材料の質量を計測するための装置であり、図4及び図5に示すように、本実施形態ではフィーダー11bに設けてある。この質量計測手段12は、図5に示すように、フィーダー11bの内部に組み込まれている。図5に示す質量計測手段12は、一対の計量ローラ12aの間にはフィーダーベルトが掛け渡してあり、フィーダーベルトの下側に荷重検出装置であるロードセル12bを設けた構成となっている。
【0049】
<拡散流下手段>
拡散流下手段13は、供給手段11から供給される粒状材料を均一に拡散させて流下させるための手段である。本実施形態の拡散流下手段13は、図4に示すように、対向して配設した一対の板状部材からなり、一対の板状部材の間を粒状材料が流下する際に均一に拡散する。一対の板状部材の間隔は、使用する粒状材料によって適宜設定するが、粒状材料に含まれる最大粒径の材料が詰まって閉塞しないようにする必要がある。
【0050】
なお、拡散流下手段13は、図4に示すような一対の板状部材に限られず、供給手段11から供給される粒状材料を均一に拡散させることができれば、どのような装置であってもよく、例えば、筒状の収容体及び当該収容体の内部に収容された円筒状、三角錐状、四角錐状、円錐状、あるいはこれらを組み合わせた拡散部を有する装置であってもよい。
【0051】
<撮像手段>
撮像手段14は、拡散流下手段13により均一に拡散された粒状材料を撮影するための手段である。本実施形態の撮像手段14は、図示しないが、撮像レンズ系、撮像素子、画像データの送信を行う送信インターフェース等を備えたデジタルカメラにより構成する。また、撮像手段14の構成要素として、撮像対象となる粒状材料を照明するための照明装置を含んでいてもよい。照明装置としては、例えば、光量や色温度を調整可能なLEDライトを用いることが好ましい。
【0052】
撮像手段14(デジタルカメラ)の撮像レンズ系は、単焦点であってもよいが、合焦機構を有していてもよく、さらに、パン・チルト機構、ズーム機構を有していてもよい。また、撮像手段14(デジタルカメラ)は、静止画像を撮影するカメラであってもよいし、動画映像を撮影するカメラであってもよい。
【0053】
本実施形態では、拡散流下手段13を構成する一方の板状部材を背景スクリーンとして撮影を行うため、デジタルカメラは、拡散流下手段13の下部近傍であって、流下する粒状材料が接触(衝突)しない位置に設置してある。また、粒度分布解析の精度を上げるために、撮像手段14(デジタルカメラ)を複数箇所に設置してもよい。また、背景スクリーンとなる板状部材は、撮影する粒状材料の色調とのコントラストが明確になる色の材料を用いることが好ましい。さらに、粒状材料の撮り逃しを防止して粒度分布の解析精度の向上を図るため、撮像手段14(デジタルカメラ)による粒状材料の撮影間隔を可能な範囲で短くすることが好ましい。すなわち、撮影間隔が短くなれば、それだけ粒度分布の解析精度を向上させることができる。
【0054】
<粒度分布解析手段>
粒度分布解析手段15は、撮像手段14で撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を解析するための手段である。例えば、粒度分布解析手段15は、パーソナルコンピュータ(PC)及び画像解析ソフトウェアからなり、パーソナルコンピュータにインストールされた画像解析ソフトウェアの機能により、撮像手段14から受信した画像データに基づいて画像解析を行って、解析対象となる粒状材料の粒度分布を解析する。画像解析は、公知のどのような手法を用いてもよいが、基本的には、画像データに基づいて、粒状体の輪郭認識を行って、粒状体の粒径を解析する手法が用いられる。
【0055】
<粒度分布の解析>
粒度分布の解析は、粒度分布解析手段15により行われる。以下、粒度分布の解析手順の一例を説明するが、粒度分布の解析は他の手法を用いてもよい。粒度分布の解析は、粒度分布解析手段15の機能により実施されるものであり、粒度分布が既知である粒状材料を用いて粒度毎に回帰式を作成し、作成した回帰式に、解析対象となる粒状材料の画像解析結果から算出される説明変数を代入して、粒度毎の解析対象質量率を算出し、算出した各粒度の解析対象質量率を用いて、解析対象である粒状材料の粒度分布を解析する。
【0056】
<具体的な粒度分布の解析手法>
次に、粒度分布の解析手法の一例を説明する。粒度分布の解析は、大別して6つの工程からなる。第1工程は、粒度分布が既知である粒状材料を用いて、当該粒状材料における粒度毎の土粒子平均短径(Di)と合計投影面積(Si)とを算出する工程である。第2工程は、粒度毎の合計投影面積(Si)を、各粒度の合計投影面積(Si)の総和である全投影面積(ΣSi)で除して無次元化することにより、投影面積率(Si/ΣSi)を算出する工程である。第3工程は、粒度分布が既知である粒状材料を用いて、粒度毎の合計質量(Mi)を、各粒度の合計質量(Mi)の総和である全質量(ΣMi)で除して無次元化することにより、質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程である。第4工程は、目的変数を質量率(Mi/ΣMi)とし、説明変数を土粒子平均短径(Di)及び投影面積率(Si/ΣSi)として重回帰分析を行い、粒度毎に回帰式を作成する工程である。第1工程、第2工程、第3工程、第4工程により、粒度分布解析の基本となる粒度毎の回帰式を作成する。
【0057】
なお、含水比を複数の範囲に区分し、各区分の含水比毎に、それぞれ異なる回帰式を作成することが好ましい。これにより、含水比の影響を受けることなく、正確な粒度分布解析を行うことができる。ここで、含水比を区分する境界値の数は、1あるいは2以上とする。この境界値は、粒状材料の土質に対応して適宜設定するが、例えば、粒状材料が団粒化する限界値を境界値とすることができる。
【0058】
第5工程は、作成された回帰式に、解析対象となる粒状材料の画像解析結果から算出される解析対象土粒子平均短径(Di)及び解析対象投影面積率(Si/ΣSi)を代入して、粒度毎の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程である。第6工程は、第5工程で算出した各粒度の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を用いて、解析対象である粒状材料の粒度分布を解析する工程である。この第6工程により、解析対象である粒状材料の粒度分布を解析することができる。
【0059】
また、第4工程において、説明変数として投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えることにより、より一層正確に粒度分布を解析することができる。この場合、解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程(第5工程)において、回帰式に代入する値として、解析対象となる粒状材料の画像解析結果から算出される投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えて演算を行う。
【0060】
<粒度分布の解析に用いるデータの更新>
粒度分布解析に用いる回帰式は、施工進捗に応じて、データ更新を行うことが好ましい。すなわち、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出を行う。追加及び削除するデータ数は、粒状材料の状態に応じて適宜設定することができる。例えば、粒度分布の変化が小さい粒状材料では、データの追加及び削除の間隔を長くして(データ数を増やして)データ更新を行い、粒度分布の変化が大きい粒状材料では、データの追加及び削除の間隔を短くして(データ数を減らして)データ更新を行う。
【0061】
<水分量調整手段>
水分量調整手段30は、水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行うための手段である。水分量調整手段30は、例えば、給水ポンプ、水噴射装置、混練装置等を備えており、測定した水分量に基づいて加水する水の量を調節することにより、適切量の水分を含んだ粒状材料とする。なお、水分量調整手段30は、水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水料を調整することができれば、上述した例に限られずに公知の技術を用いることができる。
【0062】
<判定手段>
判定手段40は、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定するための手段であり、例えば、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムにより構成する。適切な管理値は、図6に示すように、いわゆるひし形管理により決定する。図6に示すCSG材の管理値決定グラフは、縦軸をCSGの強度とし、横軸を単位水量としたもので、まず、CSGの強度で許容範囲を決定し、単位水量が少ない場合及び単位水量が多くて施工性を満足できない範囲を除外することにより、最終的な品質管理ひし形を定義している。図6に示す例では、塗りつぶしを行っているひし形の数値範囲内が管理値となる。
【0063】
判定手段40では、予め定めた管理値と、水分量調整を行った粒状材料の粒度及び単位水量とを比較して、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定する。水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であれば、そのままCSG材として使用することができる。一方、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内に入っていない場合には、適宜対応を行って、適切な管理値内の粒状材料とする。
【0064】
<基本データ生成手段>
CSG材を製造する際には、粒状材料に対して篩い分け試験を行って粒度分布を測定するとともに、乾燥法により水分量を測定している(以下、基本法という)。基本法による測定は人手により実施するが、人間の経験的な判断が伴うため、測定機器の不具合による誤判定の可能性は極めて低くなる。したがって、上述した機械的な連続測定を行うとともに、所定間隔(例えば、1時間毎、6時間毎、12時間毎)で、基本法による測定を行うことが望ましい。これにより、品質測定・管理システム100の不具合等による誤判定に対して、適切な対応を行うことができる。
【0065】
本実施形態では、基本法による測定作業で得たデータに基づいて、管理値の基本データを生成し、判定手段40における判定が適切なものであるか否かを検証している。すなわち、本実施形態は、CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、粒状材料の強度及び水分量に関する管理値データ(基本データ)を生成する基本データ生成手段50を備えており、後述する判定正当性検証手段60により判定手段40における判定が適切なものであるか否かを検証する。
【0066】
<判定正当性検証手段>
判定正当性検証手段60は、判定手段40において粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合に、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証するための手段であり、例えば、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムにより構成する。
【0067】
<検証への対応>
本実施形態では、判定正当性検証手段60の検証結果に基づき、以下の対応を行う。粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が正当である場合には、粒状材料がCSG材として不適切であるため、供給される粒状材料の見直しを行う。一方、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が不当である場合には、粒状材料の粒度分布算出及び水分量測定に係る一連の工程を行っているシステムの不具合であるため、システムが復旧するまでの間、篩い分け試験による粒度分布算出及び乾燥法による水分量測定を実施して材料配合を管理するか、CSG材の供給を一時的に停止する。そして、システムが復旧したことが確認されたら、CSG材の品質測定・管理システム100による品質管理を再開する。
【0068】
<CSG材の品質測定・管理方法>
本発明の実施形態に係るCSG材の品質測定・管理方法では、図1に示すように、マイクロ波水分計を用いて、CSG材として使用する粒状材料の水分量を測定する(S1-1)とともに、当該粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出する(S1-2)。なお、通常は、粒状材料の水分量測定を先行して実施するが、粒度分布の算出の後に水分量の測定を行ってもよいし、粒度分布の算出の前後に水分量の測定を行ってもよい。さらに、CSG材として使用する他の材料(砂等)について水分量の測定を行うことが好ましい。
【0069】
続いて、水分量の測定値に基づいて、粒状材料への給水量を調節して、粒状材料の水分量調整を行う(S2)。そして、水分量調整を行った粒状材料が、適切な管理値の範囲内であるか否かを判定し(S3)、判定結果が適切な管理値の範囲内である粒状材料をCSG材として使用する(S4)。
【0070】
また、粒状材料として2種類以上を混合して用いる場合には、水分量を測定する工程(S1-1)及び粒度分布を算出する工程(S1-2)は、粒状材料毎に実施する。また、粒状材料の水分量を測定する工程(S1-1)及び粒度分布を算出する工程(S1-2)において、最新のデータが所定数追加される毎に、追加されたデータ数に応じて最古のデータを削除して粒度分布の算出及び水分量の測定を行うことが好ましい。さらに、粒状材料の水分量を測定する工程(S1-1)及び粒度分布を算出する工程(S1-2)において、直近の所定数のデータの移動平均値を粒状材料の水分量及び粒度分布とすることが好ましい。
【0071】
判定結果の正当性を判断する場合には、CSG材として使用する粒状材料に対して篩い分け試験により測定した粒度分布データと、乾燥法により測定した水分量データとを取得して、管理値の基本データを生成する(S5)。そして、判定対象となった粒状材料の水分量データ及び粒度分布データと基本データとを比較して(S6)、粒状材料の適否判定が正当であるか否かを検証する(S7)。
【0072】
ここで、判定が正当である場合には、粒状材料がCSG材として不適切であるため、供給される粒状材料の見直しを行う(S8)。そして、適切な粒状材料となったか否かを判断し(S9)、適切な粒状材料となった場合には、CSG材の品質測定・管理システム100による品質管理を再開する。
【0073】
一方、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないとする判定が不当である場合には、粒状材料の粒度分布算出及び水分量測定に係る一連の工程を行っているシステムの不具合であるため、システムの復旧を図り(S10)、システムが復旧するまでの間、篩い分け試験による粒度分布算出及び乾燥法による水分量測定を実施して材料配合を管理するか、CSG材の供給を一時的に停止する。そして、システムの復旧を確認し(S11)、システムが復旧したことが確認されたら、CSG材の品質測定・管理システム100による品質管理を再開する。
【0074】
なお、本実施形態では、粒状材料が適切な管理値の範囲内ではないと判定された場合にのみ判定の正当性を判断しているが、粒状材料が適切な管理値の範囲内であると判定された場合にも判定の正当性を判断してもよい。ただし、基本法による試験は所定時間毎に実施しており、システムの判定が正当であるか否かは、基本法による試験結果を待って行わなければならない。したがって、システムにより粒状材料が適切な管理値の範囲内であると判定された場合はシステムの判定を信頼し、基本法による試験結果が適切な管理値の範囲内でない場合に、使用している粒状材料の見直しを行えばよい。
【0075】
また、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、質量計測手段12及び水分量測定手段20により、CSG材として使用する粒状材料について、その質量及び水分量をほぼ同時かつ連続的に測定している。上述したように、粒状材料を搬送するフィーダー11bには質量計測手段12及び水分量測定手段20を設けてあり、フィーダー11b上を連続的に搬送される粒状材料は、敷き均し手段16により所定の厚さに敷き均され、質量及び水分量を連続して測定した後に、粒度分布算出手段10により粒度分布を解析している。
【0076】
このように、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、CSG材として使用する粒状材料の質量及び水分量を常に把握することができる。このため、ある程度の時間間隔をもって粒度分析を実施したとしても、質量及び水分量を連続的に測定していため、供給される粒状材料に管理値を外れるような品質変化が生じた場合には、直ちにその旨を認識することができる。
【0077】
したがって、供給される粒状材料の質量または水分量の変化により、管理値を外れるような粒状材料の品質変化を認識した際には、使用している粒状材料の見直しを行う等、適宜な対応を行うことにより、大量のCSG材を供給する必要がある場合であっても、適切なCSG材を連続して供給することが可能となる。
【0078】
<本発明と従来技術との差違>
上述したように、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、CSG材として使用する粒状材料を均一に分散して流下させ、流下する粒状材料を撮影した画像データを画像解析することにより、粒状材料の粒度分布を算出している。そして、このような特徴を有することにより、粒状材料を満遍なくばらけさせて均一な厚みとして画像を撮影することができる。
【0079】
このため、粒状材料の粒度分布を算出する際に使用するデータが正確なものとなり、粒度分布の算出精度を高めることができる。したがって、CSG材として使用する粒状材料の粒度や水分量の変動傾向を測定して管理するという一連の工程(水分量の測定、粒度分布の算出、水分量の調整、適切材料の判定)において、重要な基本データの1つである粒度分布を迅速かつ正確に算出することができる。
【0080】
この点、特許文献1に記載された技術では、粒状材料の粒度分布を算出するために、粒状材料を平面的に撒き出して画像を撮影し、ラベリングやパターンマッチング等の手法を用いて撮影画像の輪郭を検出することにより粒度分布を算出している。すなわち、特許文献1に記載された技術は、地表に敷設したシート上に粒状材料を撒き出して画像を撮影している。
【0081】
このような従来技術では、粒状材料を平面的に撒き出しているため、粒状材料を均一に分散させて薄く敷き均すことが難しい。そして、粒状材料が重なり合ってしまうと、比較的小さな粒状材料を判別することができずに複数の粒状材料を1個と認識してしまう。また、小さな粒状材料がこれよりも大きな粒状材料の陰に隠れてしまい、小さな粒状材料を認識できない場合もある。このため、粗粒分を過大評価してしまい、粒度分布の算出精度を高めることができない。すなわち、CSG材として使用する粒状材料の粒度や水分量の変動傾向を測定して管理するという一連の工程において、重要な基本データの1つである粒度分布が正確なものでなければ、適切な管理を行うことはできない。
【0082】
また、特許文献2に記載された技術は、粒状材料を流下させて撮影し、撮影した画像データを用いて粒度分布を算出しているため、粒度分布の算出における上述した問題はない。しかし、大量のCSG材を使用する必要がある場合等、性状が変化する可能性のある粒状材料を連続的に使用する場合には、適切な対応を行うことができないことが懸念される。
【0083】
大規模なダム工事を短期間に完成させなければならない等、大量のCSG材を使用する必要がある場合には、例えば、ストックパイル方式を用いてCSG母材をストックしておいたり、複数の採取場所からCSG母材を採取したりする。この場合、天候の変化によりストックされたCSG母材の水分量が変化し、あるいは複数の採取場所から採取したCSG母材の性状がそれぞれ異なることも想定される。
【0084】
この点、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、CSG材として使用する粒状材料について、その質量及び水分量をほぼ同時かつ連続的に測定しているため、たとえ粒状材料の性状に変化があったとしても、粒状材料の質量及び水分量を適切かつ正確に測定することができる。
【0085】
また、粒状材料を2種類以上混合して用いる場合には、水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程を粒状材料毎に実施するため、採取場所の違いにより性状が異なる粒状材料が存在しても、CSG材として使用する粒状材料全体として、その質量及び水分量を適切かつ正確に測定することができる。
【0086】
また、粒状材料の水分量を測定する工程及び粒度分布を算出する工程において、常に最新のデータを用い、さらに直近データの移動平均値を用いているため、さらに一層、質量及び水分量を適切かつ正確に測定することができる。
【0087】
このように、本発明に係るCSG材の品質測定・管理方法及び品質測定・管理システムでは、CSG材として使用する粒状材料の粒度や水分量の変動傾向を測定して管理するという一連の工程(水分量の測定、粒度分布の算出、水分量の調整、適切材料の判定)において、重要な基本データを迅速かつ正確に算出することができる。さらに、CSG材として使用する粒状材料が適切な管理値の範囲にあるか否かを判定するとともに、判定の正当性を検証しているため、さらに一層、適切なCSG材を供給することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 粒度分布算出手段
11 供給手段
11a ベルトコンベア
11b フィーダー
11c ホッパ
12 質量計測手段
13 拡散流下手段
14 撮像手段
15 粒度分布解析手段
16 敷き均し手段
20 水分量測定手段
30 水分量調整手段
40 判定手段
50 基本データ生成手段
60 判定正当性検証手段
100 品質測定・管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6