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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】防火扉
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230424BHJP
   E06B 7/32 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/32 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019061216
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159117
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】597006470
【氏名又は名称】日本原燃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】稲妻 祐介
(72)【発明者】
【氏名】水尻 孝太
(72)【発明者】
【氏名】内山 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 敏之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正之
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207260908(CN,U)
【文献】特開2015-098716(JP,A)
【文献】中国実用新案第2881042(CN,Y)
【文献】特開2018-009330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E06B 7/00 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部の周縁に設けられた枠体と、前記開口部を開閉する少なくとも1つ以上の開閉体とを備えた防火扉であって、
前記枠体と前記開閉体との相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、
前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、
前記隙間内に設けられた気密手段であり、前記開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において前記隙間の気密性を高めるための気密手段と、
前記気密手段を収容するための第1凹部と、
前記第1凹部及び前記気密手段を覆うように設けられた第2凹部と、を備え、
前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とし、
前記第1突出部及び前記第2突出部を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置し、
前記第1凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか一方として形成し、
前記第2凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか他方として形成し、
前記第1凹部及び前記第2凹部を、前記枠体及び前記開閉体とは別体にそれぞれ形成した、
防火扉。
【請求項2】
建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部を開閉する複数の開閉体を備えた防火扉であって、
前記開閉体同士の相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記開閉体同士のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、
前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記開閉体同士のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、
前記隙間内に設けられた気密手段であり、前記開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において前記隙間の気密性を高めるための気密手段と、
前記気密手段を収容するための第1凹部と、
前記第1凹部及び前記気密手段を覆うように設けられた第2凹部と、を備え、
前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とし、
前記第1突出部及び前記第2突出部を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置し、
前記第1凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか一方として形成し、
前記第2凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか他方として形成し、
前記第1凹部及び前記第2凹部を、前記複数の開閉体とは別体にそれぞれ形成した、
防火扉。
【請求項3】
当該防火扉は、両開式の開き戸、又は子扉付き扉を含む、
請求項2に記載の防火扉。
【請求項4】
前記隙間内に設けられた熱膨張耐火部材であり、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、当該熱膨張耐火部材が前記火災の熱で膨張することにより、前記隙間を塞ぐための熱膨張耐火部材を備え、
前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置した、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防火扉。
【請求項5】
前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において前記気密手段と第2間隔を隔てて配置した、
請求項4に記載の防火扉。
【請求項6】
前記第1間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした、
請求項1から5のいずれか一項に記載の防火扉。
【請求項7】
前記枠体又は前記開閉体は、前記第1突出部又は前記第2突出部と第3間隔を隔てて設けられた耐火性の重複部であって、前記隙間方向から見て前記第1突出部又は前記第2突出部と重複するように形成された重複部を有し、
前記第3間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした、
請求項1に記載の防火扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に設けられている扉の防火性能を高めるための技術が提案されている。このような技術においては、扉体の室外側面部及び室内側面部を形成する金属製表面材と、金属製表面材間に設けた骨材と、金属製表面材の内側面に設けた加熱発泡シートとを備えた遮熱扉が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、扉体によって建物の開口部を全閉した状態において扉体と枠体との相互間に隙間が生じるように、扉体及び枠体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-196083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の防火扉においては、上述したように、上記全閉した状態において扉体と枠体との相互間に隙間が生じるように、扉体及び枠体が設けられているので、例えば、防火扉の見込方向の一方側で火災が発生した際に、当該火災の炎が上記隙間を介して防火扉の見込方向の他方側に流入して延焼するおそれがあることから、防火性能を高める観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、防火性能を高めることが可能になる、防火扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の防火扉は、建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部の周縁に設けられた枠体と、前記開口部を開閉する少なくとも1つ以上の開閉体とを備えた防火扉であって、前記枠体と前記開閉体との相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、前記隙間内に設けられた気密手段であり、前記開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において前記隙間の気密性を高めるための気密手段と、前記気密手段を収容するための第1凹部と、前記第1凹部及び前記気密手段を覆うように設けられた第2凹部と、を備え、前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とし、前記第1突出部及び前記第2突出部を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置し、前記第1凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか一方として形成し、前記第2凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか他方として形成し、前記第1凹部及び前記第2凹部を、前記枠体及び前記開閉体とは別体にそれぞれ形成した。
【0007】
請求項2に記載の防火扉は、建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部を開閉する複数の開閉体を備えた防火扉であって、前記開閉体同士の相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記開閉体同士のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記開閉体同士のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、前記隙間内に設けられた気密手段であり、前記開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において前記隙間の気密性を高めるための気密手段と、前記気密手段を収容するための第1凹部と、前記第1凹部及び前記気密手段を覆うように設けられた第2凹部と、を備え、前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とし、前記第1突出部及び前記第2突出部を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置し、前記第1凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか一方として形成し、前記第2凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか他方として形成し、前記第1凹部及び前記第2凹部を、前記複数の開閉体とは別体にそれぞれ形成した。
【0008】
請求項3に記載の防火扉は、請求項2に記載の防火扉において、当該防火扉は、両開式の開き戸、又は子扉付き扉を含む。
【0009】
請求項4に記載の防火扉は、請求項1から3のいずれか一項に記載の防火扉において、前記隙間内に設けられた熱膨張耐火部材であり、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、当該熱膨張耐火部材が前記火災の熱で膨張することにより、前記隙間を塞ぐための熱膨張耐火部材を備え、前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置した。
【0010】
請求項5に記載の防火扉は、請求項4に記載の防火扉において、前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において前記気密手段と第2間隔を隔てて配置した。
【0011】
請求項6に記載の防火扉は、請求項1から5のいずれか一項に記載の防火扉において、前記第1間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした。
【0012】
請求項7に記載の防火扉は、請求項1に記載の防火扉において、前記枠体又は前記開閉体は、前記第1突出部又は前記第2突出部と第3間隔を隔てて設けられた耐火性の重複部であって、前記隙間方向から見て前記第1突出部又は前記第2突出部と重複するように形成された重複部を有し、前記第3間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の防火扉によれば、枠体と開閉体との相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、枠体又は開閉体のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、隙間内において第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、枠体又は開閉体のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、隙間方向から見て第1突出部と第2突出部とが重複するように、第1突出部及び第2突出部を相互に対向して配置することにより、開閉体によって開口部を全閉した全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1突出部及び第2突出部があいじゃくり構造になるため、第1突出部及び第2突出部によって防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉を安価に製造できると共に、防火扉の組立の手間を低減でき、防火扉の製造性を高めることが可能になる。
また、第1突出部及び第2突出部を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置したので、例えば第1突出部、第2突出部、枠体、及び開閉体によって気密手段の周囲を囲繞でき、全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
また、第1凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成したので、第1凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成でき、第1凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
また、第2凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成したので、第2凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成でき、第2凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
【0017】
請求項2に記載の防火扉によれば、開閉体同士の相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、開閉体同士のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、隙間内において第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、開閉体同士のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、隙間方向から見て第1突出部と第2突出部とが重複するように、第1突出部及び第2突出部を相互に対向して配置することにより、全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1突出部及び第2突出部があいじゃくり構造になるため、第1突出部及び第2突出部によって防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉を安価に製造できると共に、防火扉の組立の手間を低減でき、防火扉の製造性を高めることが可能になる。
また、第1突出部及び第2突出部を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置したので、例えば第1突出部、第2突出部、枠体、及び開閉体によって気密手段の周囲を囲繞でき、全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
また、第1凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成したので、第1凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成でき、第1凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
また、第2凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成したので、第2凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成でき、第2凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
【0018】
請求項3に記載の防火扉によれば、当該防火扉は、両開式の開き戸、又は子扉付き扉を含むので、両開式の開き戸又は子扉付き扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災が延焼することを抑制でき、両開式の開き戸又は子扉付き扉の防火性能を高めることができる。
【0019】
請求項4に記載の防火扉によれば、熱膨張耐火部材を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置したので、火災時に熱膨張耐火部材よって隙間を塞ぐことができ、熱膨張耐火部材を設けない場合に比べて、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の防火扉によれば、熱膨張耐火部材を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において気密手段と第2間隔を隔てて配置したので、熱膨張耐火部材を隙間における気密手段よりも隙間方向の一方側の位置のみに設ける場合に比べて、火災時に膨張した熱膨張耐火部材によって塞がれた隙間内で気密手段を炭化するまで燃焼させやすくなる。また、熱膨張耐火部材を気密手段と密接して設ける場合に比べて、隙間内で気密手段を燃焼させやすくなる。以上のことから、上記火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0021】
請求項6に記載の防火扉によれば、第1間隔の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第1間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0022】
請求項7に記載の防火扉によれば、第3間隔の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第3間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る防火扉を示す正面図である。
図2図1の防火扉のA-A矢視断面図である。
図3図1の防火扉のB-B矢視断面図である。
図4図2の戸尻側縦枠材の周辺領域の拡大図である(一部図示省略)。
図5図2の戸先側縦枠材の周辺領域の拡大図である(一部図示省略)。
図6図2の戸尻側第2縦力骨の周辺領域の拡大図である(一部図示省略)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る防火扉の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部に設けられた防火扉であり、開口部の周縁に設けられた枠体と、開口部を開閉する開閉体とを備えた防火扉に関するものである。
【0029】
ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設、及び公共施設等を含む概念である。また、「建物の開口部」とは、建物の躯体の一部分(例えば、壁、天井、又は床等)において窓や入り口を設置するために形成された開口部である。また、「防火扉」は、建物の開口部の出入り又は視界を抑制又は制限するための構造体であって、防火性能を有する扉を意味する。また、防火扉の取り付け位置や用途は任意であるが、例えば玄関に設置される「玄関扉」、勝手口や通用口に設置される「勝手口扉」、建物内部に設置される「室内扉」等を含む。また、防火扉の開閉構造は任意であり、例えば、片開式の開き戸、子扉付き片開式の開き戸(いわゆる子扉付き扉)、両開式の開き戸(いわゆる親子型の扉)、片開式の引き戸、又は両開式の引き戸として構成することができる。以下、実施の形態では、防火扉が、商業施設の如き建物の避難通路に面する位置に配置された子扉付き片開式の開き戸であって、この避難通路に隣接する部屋の中で火災が発生した際に、火災の延焼を抑制するための防火戸である場合について説明する。
【0030】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0031】
(構成)
最初に、実施の形態に係る開閉体が適用される防火扉の構成について説明する。以下の説明では、図1のX方向を防火扉の左右方向(-X方向を防火扉の左方向、+X方向を防火扉の右方向)、図2のY方向を防火扉の前後方向(+Y方向を防火扉の前方向(部屋の室外側の方向)、-Y方向を防火扉の後方向(部屋の室内側の方向))、図1のZ方向を防火扉の上下方向(+Z方向を防火扉の上方向、-Z方向を防火扉の下方向)と称する。
【0032】
図1に示すように、防火扉1は、概略的に、枠体10、第1開閉体20、第2開閉体60、第1ヒンジ部91、及び第2ヒンジ部92を備えている。ただし、防火扉1に関する特記しない構成については、従来と同様であるものとして説明を省略する。なお、後述する防火扉1を構成する各種部材同士の取付方法(又は接続方法)については任意であるが、例えば、取付側の部材又は取付相手側の部材に形成された取付孔(例えば、リベット孔、ネジ孔、ビス孔等)を介して、取付側の部材を取付相手側の部材に対して固定具(例えば、リベット、取付ネジ、ビス等)、溶接、接着剤、両面テープ等によって取り付ける(又は接続する)方法が採用されている。
【0033】
また、躯体2(具体的には、壁部)に形成された開口部3(図1では、上下方向に長尺な長方形状の開口部3)は、第1開閉体20によって開閉される第1開口部3aと、第2開閉体60によって開閉される第2開口部3bとに区分けされている。具体的には、図1に示すように、第1開口部3aが第2開口部3bの周囲を囲繞するように、第1開口部3a及び第2開口部3bは配置されている。ここで、第2開口部3bの具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では、正面形状については、矩形状に設定されており、左右方向の長さについては、第1開閉体20の左右方向の長さよりも短い長さ(例えば、第1開閉体20の左右方向の長さの半分程度の長さ)に設定されており、上下方向の長さについては、第1開閉体20の上下方向の長さよりも短い長さ(例えば、第1開閉体20の上下方向の長さの1/3程度の長さ)に設定されている。
【0034】
また、上述のように構成された開口部3において、「第1開閉体20及び第2開閉体60の状態」とは、「全閉状態」、「全開状態」、及び「半開状態」を含む概念である。このうち、「全閉状態」とは、第1開閉体20及び第2開閉体60によって開口部3を全閉した状態であり、実施の形態では、全閉状態における第1開閉体20及び第2開閉体60の位置を「全閉位置」と称する。また、「全開状態」とは、第1開閉体20及び第2開閉体60によって開口部3を全開した状態であり、実施の形態では、全開状態における第1開閉体20及び第2開閉体60の位置を「全開位置」と称する。また、「半開状態」とは、第1開閉体20又は第2開閉体60が全閉位置と全開位置との間に位置している状態である。
【0035】
また、「第1開閉体20の状態」とは、「第1全閉状態」、「第1全開状態」、及び「第1半開状態」を含む概念である。このうち、「第1全閉状態」とは、第1開閉体20によって第1開口部3aを全閉した状態であり、実施の形態では、第1全閉状態における第1開閉体20の位置を「第1全閉位置」と称する。また、「第1全開状態」とは、第1開閉体20によって第1開口部3aを全閉した状態であり、実施の形態では、第1全開状態における第1開閉体20の位置を「第1全開位置」と称する。また、「第1半開状態」とは、第1開閉体20が第1全閉位置と第1全開位置との間に位置している状態である。
【0036】
また、「第2開閉体60の状態」とは、「第2全閉状態」、「第2全開状態」、及び「第2半開状態」を含む概念である。このうち、「第2全閉状態」とは、第2開閉体60によって第2開口部3bを全閉した状態であり、実施の形態では、第2全閉状態における第2開閉体60の位置を「第2全閉位置」と称する。また、「第2全開状態」とは、第2開閉体60によって第2開口部3bを全開した状態であり、実施の形態では、第2全開状態における第2開閉体60の位置を「第2全開位置」と称する。また、「第2半開状態」とは、第2開閉体60が第2全閉位置と第2全開位置との間に位置している状態である。
【0037】
(構成-枠体)
枠体10は、躯体2に形成された開口部3の周縁に設置されるものであり、図1に示すように、例えば耐火性材料(一例として、スチール材、ステンレス材の如き鋼材等)にて形成された左右一対の縦枠材11、12及び上下一対の横枠材13、14を備えている。これら縦枠材11、12及び横枠材13、14は、それぞれ躯体2に対して固定されており、相互に組み合わせられることによって、正面形状が略矩形環状となるように形成されている。以下では、必要に応じて、左右一対の縦枠材11、12のうち、開口部3の戸尻側に位置する縦枠材11を「戸尻側縦枠材11」と称し、開口部3の戸先側に位置する縦枠材12を「戸先側縦枠材12」と称する。また、上下一対の横枠材13、14のうち、開口部3の上方側に位置する横枠材13を「上側横枠材13」と称し、開口部3の下方側に位置する横枠材14を「くつずり側横枠材14」と称する。
【0038】
また、この戸先側縦枠材12には、第1デッドボルト受け及び第1ラッチ受けが設けられている(いずれも図示省略)。第1デッドボルト受けは、全閉状態又は第1全閉状態において、第1開閉体20に設けられた後述する第1デッドボルトを受けるための第1デッドボルト受容手段であり、後述する第1デッドボルトと対応する位置に配置されている。第1ラッチ受けは、第1開閉体20に設けられた後述する第1ラッチを受けるための第1ラッチ受容手段であり、第1ラッチと対応する位置に配置されている。なお、枠体10の構成の詳細については後述する。
【0039】
(構成-第1開閉体)
第1開閉体20は、通行対象(例えば、人、動物、物等)を通行させることを目的として、開口部3を開閉するための平板状の開閉体である。この第1開閉体20は、図2図3に示すように、枠体10内において枠体10と隙間G1(以下、「第1隙間G1」と称する)を隔てて設けられており、第1外側開閉体フレーム30、第1内側開閉体フレーム40、第1室外側表面材50a、及び第1室内側表面材50bを備えている。
【0040】
(構成-第1開閉体-第1外側開閉体フレーム)
図2に戻り、第1外側開閉体フレーム30は、第1開閉体20の剛性を主として担うためのフレームである。この第1外側開閉体フレーム30は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された長尺な力骨を複数組み合わせることによって、正面形状が矩形環状となるように形成されており、具体的には、図2図3に示すように、左右一対の第1外縦力骨31、32及び上下一対の第1外横力骨33、34から構成されている。このうち、左右一対の第1外縦力骨31、32は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、上下方向に略沿うように配置されている。また、上下一対の第1外横力骨33、34は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、左右方向に略沿うように配置されている。以下では、必要に応じて、第1外縦力骨31、32のうち、戸尻側の第1外縦力骨31を「戸尻側第1外縦力骨31」と称し、戸先側の第1外縦力骨32を「戸先側第1外縦力骨32」と称する。また、第1外横力骨33、34のうち、上側の第1外横力骨33を「上側第1外横力骨33」と称し、下側の第1外横力骨34を「下側第1外横力骨34」と称する。
【0041】
また、戸尻側第1外縦力骨31、戸先側第1外縦力骨32、上側第1外横力骨33、及び下側第1外横力骨34の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、図2図3に示すように、自己の長手方向に直交する断面の断面形状が第1開閉体20の内側に向けて略コ字状となるように形成されている(なお、後述する第1内側開閉体フレーム40の各種の力骨、及び後述する第2開閉体フレーム70の各種の力骨についても略同様とする)。
【0042】
(構成-第1開閉体-第1内側開閉体フレーム)
図2に戻り、第1内側開閉体フレーム40は、第1開閉体20の剛性を主として担うためのフレームである。この第1内側開閉体フレーム40は、第1外側開閉体フレーム30内において第2開口部3bに略対応する位置に設けられており、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された長尺な力骨を複数組み合わせることによって、正面形状が矩形環状となるように形成されている。具体的には、図2図3に示すように、左右一対の第1内縦力骨41、42及び上下一対の第1内横力骨43、44から構成されている。このうち、左右一対の第1内縦力骨41、42は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、上下方向に略沿うように配置されている。また、上下一対の第1内横力骨43、44は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、左右方向に略沿うように配置されている。以下では、必要に応じて、第1内縦力骨41、42のうち、戸尻側の第1内縦力骨41を「戸尻側第1内縦力骨41」と称し、戸先側の第1内縦力骨42を「戸先側第1内縦力骨42」と称する。また、第1内横力骨43、44のうち、上側の第1内横力骨43を「上側第1内横力骨43」と称し、下側の第1内横力骨44を「下側第1内横力骨44」と称する。
【0043】
また、この戸先側第1内縦力骨42には、第2デッドボルト受け及び第2ラッチ受けが設けられている(いずれも図示省略)。第2デッドボルト受けは、全閉状態(又は第2全閉状態)において、第2開閉体60に設けられた後述する第2デッドボルトを受けるための第2デッドボルト受容手段であり、後述する第2デッドボルトと対応する位置に配置されている。第2ラッチ受けは、第2開閉体60に設けられた後述する第2ラッチを受けるための第2ラッチ受容手段であり、第2ラッチと対応する位置に配置されている。
【0044】
(構成-第1開閉体-第1室外側表面材、第1室内側表面材)
図1に戻り、第1室外側表面材50a及び第1室内側表面材50bは、第1外側開閉体フレーム30及び第1内側開閉体フレーム40を覆うための表面材である。これら第1室外側表面材50a及び第1室内側表面材50bは、例えば耐火性を有する公知の表面材(一例として、鋼製(例えば、スチール製、ステンレス製等)の化粧板)等を用いて構成され、図1から図3に示すように、第1外側開閉体フレーム30及び第1内側開閉体フレーム40を覆うように設けられており、具体的には、第1外側開閉体フレーム30及び第1内側開閉体フレーム40を部屋の室外側及び室内側から挟むように配置され、第1外側開閉体フレーム30及び第1内側開閉体フレーム40に対して接着剤等によって固定されている。
【0045】
(構成-第1開閉体-その他の構成)
図1に戻り、第1開閉体20のその他の構成については任意であるが、実施の形態では、図1図2に示すように、第1把手部21、第1施錠装置22、及び第1ラッチ(図示省略)をさらに備えている。
【0046】
このうち、第1把手部21は、第1開閉体20の開閉操作を行うためのものであり、例えば公知の把手等を用いて構成され(なお、後述の第2把手部61についても略同様とする)、図1図2に示すように、第1開閉体20の戸先側部分に設けられている。
【0047】
また、第1施錠装置22は、第1開閉体20を施錠するためのものであり、例えば、図示しない第1デッドボルトを備える公知の施錠装置等を用いて構成され、図1図2に示すように、第1開閉体20の戸先側部分に設けられている。
【0048】
また、第1ラッチは、第1施錠装置22による施錠の有無に関わらず、全閉状態又は第1全閉状態の位置に第1開閉体20を維持するためのものであり、例えば公知のラッチを用いて構成され(なお、後述の第2ラッチについても略同様とする)、第1開閉体20の戸先側部分に設けられている。なお、第1開閉体20の構成の詳細については、後述する。
【0049】
(構成-第2開閉体)
図1に戻り、第2開閉体60は、部屋の室内の圧力を軽減することを目的として、第2開口部3bを開閉するための平板状の開閉体である。この第2開閉体60は、図2図3に示すように、第2開口部3b内において隙間G2(以下、「第2隙間G2」と称する)を隔てて設けられており、第2開閉体フレーム70、第2室外側表面材80a、及び第2室内側表面材80bを備えている。
【0050】
(構成-第2開閉体-第2開閉体フレーム)
図2に戻り、第2開閉体フレームは、第2開閉体60の剛性を主として担うためのフレームである。この第2開閉体フレーム70は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された長尺な力骨を複数組み合わせることによって、正面形状が矩形環状となるように形成されており、具体的には、図2図3に示すように、左右一対の第2縦力骨71、72及び上下一対の第2横力骨73、74から構成されている。このうち、左右一対の第2縦力骨71、72は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、上下方向に略沿うように配置されている。また、上下一対の第2横力骨73、74は、長手方向の長さが相互に略同一となるように形成されており、左右方向に略沿うように配置されている。以下では、必要に応じて、第2縦力骨71、72のうち、戸尻側の第2縦力骨71を「戸尻側第2縦力骨71」と称し、戸先側の第2縦力骨72を「戸先側第2縦力骨72」と称する。また、第2横力骨73、74のうち、上側の第2横力骨73を「上側第2横力骨73」と称し、下側の第2横力骨74を「下側第2横力骨74」と称する。
【0051】
(構成-第2開閉体-第2室外側表面材、第2室内側表面材)
図1に戻り、第2室外側表面材80a及び第2室内側表面材80bは、第2開閉体フレーム70を覆うための表面材である。これら第2室外側表面材80a及び第2室内側表面材80bは、例えば耐火性を有する公知の表面材(一例として、鋼製の化粧板)等を用いて構成され、図1から図3に示すように、第2開閉体フレーム70を覆うように設けられており、具体的には、第2開閉体フレーム70を部屋の室外側及び室内側から挟むように配置され、第2開閉体フレーム70に対して接着剤等によって固定されている。
【0052】
(構成-第2開閉体-その他の構成)
第2開閉体60のその他の構成については任意であるが、実施の形態では、第2把手部61、第2施錠装置62、及び第2ラッチ(図示省略)をさらに備えている。
【0053】
このうち、第2把手部61は、第2開閉体60の開閉操作を行うためのものであり、図1図2に示すように、第2開閉体60の戸先側部分に設けられている。
【0054】
また、第2施錠装置62は、第2開閉体60を施錠するためのものであり、図示しない第2デッドボルトを備える公知の施錠装置等を用いて構成され、図1図2に示すように、第2開閉体60の戸先側部分に設けられている。
【0055】
また、第2ラッチは、第2施錠装置62による施錠の有無に関わらず、全閉状態(又は第2全閉状態)の位置に第2開閉体60を維持するためのものであり、第2開閉体60の戸先側部分に設けられている。なお、第2開閉体60の構成の詳細については、後述する。
【0056】
(構成-第1ヒンジ部)
図1に戻り、第1ヒンジ部91は、第1開閉体20を戸尻側縦枠材11に対して回動自在に軸支するためのものである。この第1ヒンジ部91は、例えば公知のヒンジ部材(一例として、旗蝶番等)を用いて構成されており、図に示すように、第1開閉体20の戸尻側の端部(図1では、右端部)において、相互に間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設されており、第1開閉体20及び戸尻側縦枠材11に対して固定具等によって取り付けられている。
【0057】
(構成-第2ヒンジ部)
第2ヒンジ部92は、第2開閉体60を第1内側開閉体フレーム40に対して回動自在に軸支するためのものである。この第2ヒンジ部92は、例えば公知のヒンジ部材(一例として、子扉用吊りヒンジ等)を用いて構成されており、図1から図3に示すように、上側第2ヒンジ部92a(例えば、上下方向に伸縮可能なヒンジ部)及び下側第2ヒンジ部92b(例えば、上下方向に伸縮不能なヒンジ部)を備えている。
【0058】
このうち、上側第2ヒンジ部92aは、第2ヒンジ部92の基本構造体の一部であり、図1に示すように、第2開閉体60の戸尻側上方部分に設けられており、上側第2横力骨73と上側第1内横力骨43とに接続されている。また、下側第2ヒンジ部92bは、第2ヒンジ部92の基本構造体の他の一部であり、図1に示すように、第2開閉体60の戸尻側下方部分に設けられており、下側第2横力骨74と下側第1内横力骨44とに接続されている。なお、実施の形態では、図2図3に示すように、上側第2ヒンジ部92aの脱落を防止するための脱落防止部92cが、戸尻側第2縦力骨71(又はその近傍の部位等)に設けられている。この脱落防止部92cは、Y-Z平面に沿った断面形状が略Z字状である鋼製の板状体であり、上側第2ヒンジ部92aよりも若干下方位置に配置されており、戸尻側第2縦力骨71に対して固定具等によって固定されている。
【0059】
(構成-戸尻側縦枠材及び戸先側縦枠材の構成の詳細)
図2に戻り、次に、枠体10の戸尻側縦枠材11及び戸先側縦枠材12の構成の詳細について説明する。ただし、戸尻側縦枠材11及び戸先側縦枠材12は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態において、図2に示すように、戸尻側縦枠材11及び戸先側縦枠材12の各々は、縦枠材本体11a、固定材11b、及び外縦側気密部11cを備えている。
【0060】
縦枠材本体11aは、戸尻側縦枠材11(又は戸先側縦枠材12)の基本構造体である。この縦枠材本体11aは、X-Y平面に沿った断面形状が左右方向の外側に向けて開放された略コ字状となるように形成された中空状体であり、開口部3の上下方向の略全長にわたって形成されている。また、図2に示すように、縦枠材本体11aには、縦枠側凹部11d及び縦枠側気密凹部11eが設けられている。このうち、縦枠側凹部11dは、第1開閉体20を収容しながら縦枠材本体11aと第1開閉体20との干渉を回避するためのものであり(いわゆる相じゃくり構造である凹部)、縦枠材本体11aにおける第1開閉体20に対応する部分を左右方向の外側に向けて窪ませることにより形成されている。また、縦枠側気密凹部11eは、外縦側気密部11cの設置空間を確保するためのものであり、縦枠側凹部11dのうち部屋の室内側の部分(図2では、後側部分)の一部を部屋の室内側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0061】
固定材11bは、縦枠材本体11aを躯体2に対して固定すると共に、縦枠材本体11aを補強するためのものである。この固定材11bは、板状体にて形成されており、具体的には、図2に示すように、当該固定材11bの前後方向の長さが縦枠材本体11aのコ字状の開放端部における前後方向の長さと略同一(又はそれ以上の長さ)であり、当該固定材11bの上下方向の長さが縦枠材本体11aの上下方向の長さよりも短くなるように形成されている。また、この固定材11bは、縦枠材本体11aのコ字状の開放端部側(図2では、縦枠材本体11aの左右方向の外側の端部側)において、所定間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設配置されており、縦枠材本体11aに対して溶接等によって固定されている。
【0062】
外縦側気密部11cは、戸尻側縦枠材11又は戸先側縦枠材12と第1開閉体20との相互間の気密性を高めるための気密手段である。この外縦側気密部11cは、例えば公知の気密材(一例として、エアタイトゴム等)を用いて構成されており(なお、他の気密部についても略同様とする)、図2に示すように、縦枠側気密凹部11eにおいて縦枠材本体11aの上下方向の略全長にわたって設けられている。
【0063】
(構成-上側横枠材及びくつずり側横枠材の構成の詳細)
次に、枠体10の上側横枠材13及びくつずり側横枠材14の構成の詳細について説明する。ただし、上側横枠材13及びくつずり側横枠材14は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態において、図3に示すように、上側横枠材13及びくつずり側横枠材14の各々は、横枠材本体13a、固定材13b、及び外横側気密部13cを備えている。
【0064】
横枠材本体13aは、上側横枠材13(又はくつずり側横枠材14)の基本構造体である。この横枠材本体13aは、Y-Z平面に沿った断面形状が上下方向の外側に向けて開放された略コ字状となるように形成された中空状体であり、開口部3の左右方向の略全長にわたって形成されている。また、図3に示すように、横枠材本体13aには、横枠側凹部13d及び横枠側気密凹部13eが設けられている。横枠側凹部13dは、第1開閉体20を収容しながら横枠材本体13aと第1開閉体20との干渉を回避するためのものであり(いわゆる相じゃくり構造である凹部)、横枠材本体13aにおける第1開閉体20に対応する部分を上下方向の外側に向けて窪ませることにより形成されている。また、横枠側気密凹部13eは、外横側気密部13cの設置空間を確保するためのものであり、横枠側凹部13dのうち部屋の室内側の部分(図3では、後側部分)の一部を部屋の室内側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0065】
固定材13bは、横枠材本体13aを躯体2に対して固定すると共に、横枠材本体13aを補強するためのものである。この固定材13bは、板状体にて形成されており、具体的には、図3に示すように、当該固定材13bの前後方向の長さが横枠材本体13aのコ字状の開放端部における前後方向の長さと略同一(又はそれ以上の長さ)であり、当該固定材13bの左右方向の長さが横枠材本体13aの左右方向の長さよりも短くなるように形成されている。また、この固定材13bは、横枠材本体13aのコ字状の開放端部側(図3では、横枠材本体13aの上下方向の外側の端部側)において、所定間隔を隔てて左右方向に沿って複数並設配置されており、横枠材本体13aに対して溶接等によって固定されている。
【0066】
外横側気密部13cは、上側横枠材13又はくつずり側横枠材14と第1開閉体20との相互間の気密性を高めるための気密手段であり、図3に示すように、横枠側気密凹部13eにおいて横枠材本体13aの左右方向の略全長にわたって設けられている。なお、実施の形態では、上側横枠材13及びくつずり側横枠材14の各々の外横側気密部13cが、戸尻側縦枠材11及び戸先側縦枠材12の各々の外縦側気密部11cとそれぞれ当接するように配置されているので、これら気密部が四周状に配置されていると言える。
【0067】
(構成-第1開閉体の構成の詳細)
図2に戻り、次に、第1開閉体20の構成の詳細について説明する。ただし、第1開閉体20は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態において、図2図3に示すように、第1開閉体20は、第1外縦凹部23a、第1外横凹部23b、縦側あいじゃくり部24a、横側あいじゃくり部24b、内縦側気密部25a、及び内横側気密部25bを備えている。
【0068】
第1外縦凹部23aは、第1隙間G1を段差状にすることにより、火災の炎が部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ流出することを抑制するためのものであり、図2に示すように、第1開閉体20の戸尻側部分(又は戸先側部分)のうち部屋の室内側の部分(図2では、後側部分)の一部を部屋の室外側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0069】
第1外横凹部23bは、第1隙間G1を段差状にすることにより、火災の炎が部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ流出することを抑制するためのものであり、図3に示すように、第1開閉体20の上側部分(又はくつずり側部分)のうち部屋の室内側の部分(図3では、後側部分)の一部を部屋の室外側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0070】
縦側あいじゃくり部24aは、第2隙間G2を介して部屋の内部が室外側に露出しないように覆うものである。この縦側あいじゃくり部24aは、図2に示すように、第1開閉体20(具体的には、第1室内側表面材50b又は第1室外側表面材50a)の第2開口部3b側且つ戸尻側(又は戸先側)の部分のうち部屋の室内側の部分を第2開閉体60に向けて凸状に形成されている。また、縦側あいじゃくり部24aには、第1内縦気密凹部26aが設けられている。第1内縦気密凹部26aは、内縦側気密部25aの設置空間を確保するためのものであり、縦側あいじゃくり部24aのうち部屋の室外側の部分(図2では、前側部分)の一部を部屋の室内側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0071】
横側あいじゃくり部24bは、第2隙間G2を介して部屋の内部が室外側に露出しないように覆うものである。この横側あいじゃくり部24bは、図3に示すように、第1開閉体20(具体的には、第1室内側表面材50b又は第1室外側表面材50a)の第2開口部3b側且つ上側(又はくつずり側)の部分のうち部屋の室内側の部分を第2開閉体60に向けて凸状に形成されている。また、横側あいじゃくり部24bには、第1内横気密凹部26bが設けられている。第1内横気密凹部26bは、内横側気密部25bの設置空間を確保するためのものであり、横側あいじゃくり部24bのうち部屋の室外側の部分(図3では、前側部分)の一部を部屋の室内側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0072】
内縦側気密部25aは、第1開閉体20と第2開閉体60との相互間の気密性を高めるための気密手段であり、図2に示すように、第1内縦気密凹部26aにおいて第2開閉体60の上下方向の略全長にわたって設けられている。
【0073】
内横側気密部25bは、第1開閉体20と第2開閉体60との相互間の気密性を高めるための気密手段であり、図3に示すように、第1内横気密凹部26bにおいて第2開閉体60の左右方向の略全長にわたって設けられている。なお、実施の形態では、上側に位置する内横側気密部25b及び下側に位置する内横側気密部25bの各々が、戸尻側に位置する内縦側気密部25a及び戸先側に位置する内縦側気密部25aの各々とそれぞれ当接するように配置されているので、これら気密部が四周状に配置されていると言える。
【0074】
(構成-第2開閉体の構成の詳細)
図2に戻り、次に、第2開閉体60の構成の詳細について説明する。ただし、第2開閉体60は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態において、図2図3に示すように、第2開閉体60は、第2縦凹部63a及び第2横凹部63bを備えている。
【0075】
第2縦凹部63aは、第2隙間G2を段差状にすることにより、火災の炎が部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ流出することを抑制するためのものであり、図2に示すように、第2開閉体60の戸尻側部分(又は戸先側部分)のうち部屋の室内側の部分(図2では、後側部分)の一部を部屋の室外側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0076】
第2横凹部63bは、第2隙間G2を段差状にすることにより、火災の炎が部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ流出することを抑制するためのものであり、図3に示すように、第2開閉体60の上側部分(又はくつずり側部分)のうち部屋の室内側の部分(図3では、後側部分)の一部を部屋の室外側に向けて窪ませることにより形成されている。
【0077】
(構成-延焼抑制構造)
次に、防火扉1の延焼抑制構造について説明する。この防火扉1は、部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した際(すなわち、防火扉1の周辺で火災が発生した際)に、当該火災が防火扉1を介して部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ延焼することを抑制するための延焼抑制構造を備えている。また、この延焼抑制構造は、第1延焼抑制構造及び第2延焼抑制構造を備えている。以下では、これら各延焼抑制構造について順次説明する。
【0078】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造)
図2に戻り、最初に、第1延焼抑制構造について説明する。第1延焼抑制構造は、部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した際に、当該火災が第1隙間G1を介して部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ延焼することを抑制するための構造を備えている。また、第1延焼抑制構造は、戸尻側に位置する戸尻側第1延焼抑制構造と、戸先側に位置する戸先側第1延焼抑制構造と、上側に位置する上側第1延焼抑制構造と、くつずり側に位置するくつずり側第1延焼抑制構造とを備えている。なお、実施の形態では、戸尻側第1延焼抑制構造(図4参照)、戸先側第1延焼抑制構造(図5参照)、上側第1延焼抑制構造、及びくつずり側第1延焼抑制構造の各々の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では、戸尻側第1延焼抑制構造の構成のみについて説明することとする。この戸尻側第1延焼抑制構造の特徴については、実施の形態では、以下に示す通りとなる。
【0079】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第1の特徴)
まず、戸尻側第1延焼抑制構造の第1の特徴については、図2図4に示すように、第1隙間G1内には第1外側突出部101及び第2外側突出部102が設けられている。
【0080】
第1外側突出部101は、火災の延焼を抑制するための第1突出部であり、第2外側突出部102は、火災の延焼を抑制するための第2突出部である。これら第1外側突出部101及び第2外側突出部102は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、図4に示すように、第1隙間G1内において後述する第1隙間方向に対して相互に間隔OS1(以下、「第1外側間隔OS1」と称する)を隔てて設けられている。具体的には、第1外側突出部101は、戸尻側縦枠材11の縦枠側気密凹部11eに設けられている。また、第2外側突出部102は、第1開閉体20の第1外縦凹部23aに設けられていると共に、第1外側突出部101よりも外縦側気密部11cから離れた位置に設けられている。
【0081】
第1外側突出部101の具体的な大きさについては任意であるが、実施の形態では、枠体10(具体的には、戸尻側縦枠材11)から第1開閉体20に向けて当該第1開閉体20と接触しないように突出させることが可能な大きさに設定している。すなわち、第1外側突出部101の左右方向の長さ(厚み)については、戸尻側縦枠材11の厚みと略同一の長さに設定している(あるいは、戸尻側縦枠材11の厚みよりも厚い又は薄い長さに設定してもよい)。また、第1外側突出部101の前後方向の長さについては、縦枠側気密凹部11eの前後方向の長さよりも短い長さに設定している。また、第1外側突出部101の上下方向の長さについては、外縦側気密部11cの上下方向の長さと略同一の長さに設定している。
【0082】
また、第2外側突出部102の具体的な大きさについては任意であるが、実施の形態では、第1開閉体20から枠体10(具体的には、戸尻側縦枠材11)に向けて当該枠体10と接触しないように突出させることが可能な大きさに設定している。すなわち、第2外側突出部102の左右方向の長さ(厚み)については、第1外側突出部101の厚みと略同一の長さに設定している(あるいは、第1外側突出部101の厚みよりも厚い又は薄い長さに設定してもよい)。また、第2外側突出部102の前後方向の長さについては、第1外縦凹部23aの前後方向の長さよりも短い長さに設定している。また、第2外側突出部102の上下方向の長さについては、外縦側気密部11cの上下方向の長さと略同一の長さに設定している。
【0083】
第1外側突出部101及び第2外側突出部102の設置方法については任意であるが、実施の形態では、以下の通りとなる。すなわち、まず、第1外側突出部101を、戸尻側縦枠材11から第1開閉体20に向けて当該第1開閉体20と接触しないように突出させて設けており、具体的には、図4に示すように、縦枠側気密凹部11eの底部分から部屋の室外側に向けて突出させて設けている。また、第2外側突出部102を、第1開閉体20から戸尻側縦枠材11に向けて当該戸尻側縦枠材11と接触しないように突出させて設けており、具体的には、図4に示すように、第1外縦凹部23aの底部分から部屋の室内側に向けて突出させるように設けている。さらに、第1隙間方向から見て第1外側突出部101と第2外側突出部102とが重複するように、第1外側突出部101及び第2外側突出部102を相互に対向して配置している。具体的には、図4に示すように、第2外側突出部102の先端部及びその近傍部分が縦枠側気密凹部11e内に位置し、且つ左右方向から見て第1外側突出部101及び第2外側突出部102の各々の先端側部分が重複するように、相互に対向して配置している。
【0084】
ここで、「第1隙間方向」とは、第1隙間G1の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向を意味し、実施の形態では、第1隙間G1の部屋の室外側の端部から第1隙間G1の部屋の室内側の端部に向かう方向、及びその逆方向が該当する。より詳細については、図4に示すように第1隙間G1の形状が複雑に折れ曲がった形状を示す場合には、第1隙間G1のうち左右方向に沿っている部分の第1隙間方向は、左右方向となり、第1隙間G1のうち上下方向に沿っている部分の第1隙間方向は、上下方向となる(なお、後述する第2隙間方向についても同様とする)。
【0085】
このような第1の特徴により、第1外側突出部101及び第2外側突出部102があいじゃくり構造になるため、第1外側突出部101及び第2外側突出部102によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉1の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉1を安価に製造できると共に、防火扉1の組立の手間を低減でき、防火扉1の製造性を高めることが可能になる。
【0086】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第2の特徴)
図2に戻り、次に、戸尻側第1延焼抑制構造の第2の特徴については、第1外側突出部101及び第2外側突出部102は、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置されている。
【0087】
具体的には、図2図4に示すように、外縦側気密部11cよりも戸先側の位置には、第1外側突出部101及び第2外側突出部102が1つずつ配置されており、外縦側気密部11cよりも戸尻側の位置には、第1外側突出部101及び第2外側突出部102が1つずつ配置されている。
【0088】
この場合において、第1外側間隔OS1の幅については任意であるが、実施の形態では、外縦側気密部11cよりも戸尻側又は戸先側に位置する第1外側突出部101と第2外側突出部102との第1外側間隔OS1の幅を、第1隙間G1の幅W1よりも短く設定している。具体的には、図4に示すように、外縦側気密部11cよりも戸先側に位置する第1外側突出部101と第2外側突出部102との第1外側間隔OS1の幅のみを、第1隙間G1の幅W1よりも短く設定している。これにより、上記第1外側間隔OS1の幅を第1隙間G1の幅W1よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。ただし、これに限らず、例えば、上記第1外側間隔OS1の幅を、第1隙間G1の幅W1よりも長く(又は同一に)設定してもよい。なお、上述した「第1外側間隔OS1」は、特許請求の範囲における「第1間隔」に対応する。
【0089】
また、枠体10の第1重複部D1と第1外側突出部101又は第2外側突出部102との隙間OS2(以下、「第2外側間隔OS2」と称する)の幅については任意であるが、実施の形態では、外縦側気密部11cよりも戸尻側に位置する第1重複部D1と第2外側突出部102との第2外側間隔OS2の幅、又は外縦側気密部11cよりも戸先側に位置する第1重複部D1と第2外側突出部102との第2外側間隔OS2の幅を、第1隙間G1の幅W1よりも短く設定している。具体的には、図4に示すように、外縦側気密部11cよりも戸尻側に位置する第1重複部D1と第2外側突出部102との第2外側間隔OS2の幅のみを、第1隙間G1の幅W1よりも短く設定している。ここで、「第1重複部D1」とは、枠体10(具体的には、縦枠側凹部11d)における部屋の室内側の部分のうち縦枠側気密凹部11eの側壁部分であって、第1隙間方向から見て第1外側突出部101又は第2外側突出部102と重複するように形成された部分を意味する。これにより、上記第2外側間隔OS2の幅を第1隙間G1の幅W1よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。ただし、これに限らず、例えば、上記第2外側間隔OS2の幅を第1隙間G1の幅W1よりも長く(又は同一に)設定してもよい(実施の形態に係る戸先側第1延焼抑制構造(図5参照)、上側第1延焼抑制構造、及びくつずり側第1延焼抑制構造については、当該設定に倣う)。なお、上述した「第2外側間隔OS2」は、特許請求の範囲における「第3間隔」に対応し、「第1重複部D1」は、特許請求の範囲における「重複部」に対応する。
【0090】
このような第2の特徴により、第1外側突出部101、第2外側突出部102、枠体10、及び第1開閉体20によって外縦側気密部11cの周囲を囲繞でき、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、外縦側気密部11cから発生した炎が第1隙間G1の外側に出ることを抑制できる。また、第1重複部D1と第2外側突出部102とがあいじゃくり構造になるため、第1重複部D1及び第2外側突出部102によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制しやすくなる。
【0091】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第3の特徴)
図2に戻り、次に、戸尻側第1延焼抑制構造の第3の特徴については、図2図4に示すように、第1隙間G1内には第1外側凹部103及び第2外側凹部104が設けられている。
【0092】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第3の特徴-第1外側凹部)
第1外側凹部103は、外縦側気密部11cを収容するための第1凹部である。この第1外側凹部103は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、具体的には、図4に示すように、戸尻側縦枠材11とは別体に形成されており、戸尻側縦枠材11の縦枠側気密凹部11eの底部分に設けられ、且つ外縦側気密部11cを収容するように設けられている。
【0093】
また、第1外側凹部103の具体的な形状及び大きさについては、以下の通りに設定している(なお、後述する第1内側凹部113についても略同様とする)。すなわち、第1外側凹部103の平面形状については、部屋の室外側に向けて開放された略コ字状に設定している。また、第1外側凹部103の左右方向の長さについては、外縦側気密部11cの左右方向の長さと略同一に設定している。また、第1外側凹部103の前後方向の長さについては、外縦側気密部11cの前後方向の長さよりも短く設定している。また、第1外側凹部103の上下方向の長さについては、外縦側気密部11cの上下方向の長さと略同一に設定している。
【0094】
また、第1外側凹部103の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第1外側凹部103の側壁部分は、第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか一方として形成されており、具体的には、図4に示すように、戸尻側の側壁部分及び戸先側の側壁部分は、第1外側突出部101として形成されている。これにより、第1外側凹部103の側壁部分を第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか一方として形成でき、第1外側凹部103と第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0095】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第3の特徴-第2外側凹部)
第2外側凹部104は、第1外側凹部103及び外縦側気密部11cを覆うための第2凹部である。この第2外側凹部104は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、具体的には、第1開閉体20とは別体に形成されており、図4に示すように、第1開閉体20の第1外縦凹部23aの底部分に設けられ、且つ第1外側凹部103及び外縦側気密部11cを部屋の室外側から覆うように設けられている。また、第2外側凹部104の底部分には、外縦側気密部11cと当接する板状の第1当接部104aが設けられている。
【0096】
また、第2外側凹部104の具体的な形状及び大きさについては、実施の形態では、以下の通りとなる(なお、後述する第2内側凹部114についても略同様とする)。すなわち、第2外側凹部104の平面形状については、部屋の室内側に向けて開放された略コ字状に設定している。また、第2外側凹部104の左右方向の長さについては、第1外側凹部103の左右方向の長さよりも若干長く設定している。また、第2外側凹部104の前後方向の長さについては、外縦側気密部11cの前後方向の長さよりも短く設定している。また、第2外側凹部104の上下方向の長さについては、外縦側気密部11cの上下方向の長さと略同一に設定している。
【0097】
また、第2外側凹部104の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第2外側凹部104の側壁部分は、第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか他方として形成されており、具体的には、図4に示すように、戸尻側の側壁部分及び戸先側の側壁部分は、第2外側突出部102として形成されている。これにより、第2外側凹部104の側壁部分を第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか他方として形成でき、第2外側凹部104と第1外側突出部101又は第2外側突出部102のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0098】
このような第3の特徴により、第1外側凹部103及び第2外側凹部104を設けた場合に防火扉1の部品数を低減できることから、防火扉1の製造コスト及び組立の手間を低減することが可能となる。
【0099】
(構成-延焼抑制構造-第1延焼抑制構造-第4の特徴)
図2に戻り、続いて、戸尻側第1延焼抑制構造の第4の特徴については、図2図4に示すように、第1隙間G1内には第1熱膨張耐火部材105が設けられている。
【0100】
第1熱膨張耐火部材105は、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、当該第1熱膨張耐火部材105が当該火災の熱で膨張することにより、第1隙間G1を塞ぐための熱膨張耐火部材である。この第1熱膨張耐火部材105は、例えば所定温度(具体的には、150℃~250℃の温度)で加熱されることで発泡する公知の熱膨張耐火部材(一例として、フィブロック(登録商標)等)を用いて構成されており(なお、後述する第2熱膨張耐火部材115についても略同様とする)、第1隙間G1内において第1開閉体20に取り付けられている。具体的には、図4に示すように、第1開閉体20の第1室外側表面材50a又は第1室内側表面材50bの一部に形成された切欠部(図示省略)に第1熱膨張耐火部材105を配置し(より具体的には、第1室外側表面材50a又は第1室内側表面材50bの表面と略面一となるように配置し)、当該配置した第1熱膨張耐火部材105を第1開閉体20に対して両面テープ、接着剤、又はビス等によって接続されている。
【0101】
第1熱膨張耐火部材105の設置方法については任意であるが、実施の形態では、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に設置(配置)している。具体的には、図4に示すように、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置(図4では、戸尻側及び戸先側の位置)において外縦側気密部11cと間隔OS3(以下、「第3外側間隔OS3」と称する)を隔てて配置している。
【0102】
この場合において、第3外側間隔OS3の幅については任意であるが、実施の形態では、第1隙間G1の幅W1よりも長く設定しており、例えば、図4に示すように、第1熱膨張耐火部材105が第1隙間G1における第1隙間方向の端部又はその近傍に位置することが可能となる長さに設定してもよい(なお、後述する第3内側間隔IS3の幅についても略同様とする)。
【0103】
このような第4の特徴により、火災時に第1熱膨張耐火部材105よって第1隙間G1を塞ぐことができ、第1熱膨張耐火部材105を設けない場合に比べて、外縦側気密部11cから発生した炎が第1隙間G1の外側に出ることを抑制できる。特に、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において外縦側気密部11cと第3外側間隔OS3を隔てて配置しているので、第1熱膨張耐火部材105を第1隙間G1における外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置のみに設ける場合に比べて、火災時に膨張した第1熱膨張耐火部材105によって塞がれた第1隙間G1内で外縦側気密部11cを炭化するまで燃焼させやすくなる。また、第1熱膨張耐火部材105を外縦側気密部11cと密接して設ける場合に比べて、第1隙間G1内で外縦側気密部11cを燃焼させやすくなる。以上のことから、火災の延焼を抑制しやすくなる。なお、上述した「第3外側間隔OS3」は、特許請求の範囲における「第2間隔」に対応する。
【0104】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造)
図2に戻り、次に、第2延焼抑制構造について説明する。第2延焼抑制構造は、部屋の室外側又は室内側のいずれか一方で火災が発生した際に、当該火災が第2隙間G2を介して部屋の室外側又は室内側のいずれか一方から他方へ延焼することを抑制するための構造を備えている。また、第2延焼抑制構造は、戸尻側に位置する戸尻側第2延焼抑制構造と、戸先側に位置する戸先側第2延焼抑制構造と、上側に位置する上側第2延焼抑制構造と、くつずり側に位置するくつずり側第2延焼抑制構造とを備えている。なお、実施の形態では、戸尻側第2延焼抑制構造、戸先側第2延焼抑制構造、上側第2延焼抑制構造、及びくつずり側第2延焼抑制構造の各々の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では、戸尻側第2延焼抑制構造の構成のみについて説明することとする。この戸尻側第2延焼抑制構造の特徴については、実施の形態では、以下に示す通りとなる。
【0105】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第1の特徴)
まず、戸尻側第2延焼抑制構造の第1の特徴については、図2図6に示すように、第2隙間G2内には第1内側突出部111及び第2内側突出部112が設けられている。
【0106】
第1内側突出部111は、火災の延焼を抑制するための第1突出部であり、第2内側突出部112は、火災の延焼を抑制するための第2突出部である。これら第1内側突出部111及び第2内側突出部112は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、図6に示すように、第2隙間G2内において後述する第2隙間方向に対して相互に間隔IS1(以下、「第1内側間隔IS1」と称する)を隔てて設けられている。具体的には、第1内側突出部111は、第1開閉体20の第1内縦気密凹部26aに設けられており、第2内側突出部112は、第2開閉体60の第2縦凹部63aに設けられていると共に、第1内側突出部111よりも内縦側気密部25aから離れた位置に設けられている。
【0107】
第1内側突出部111の具体的な大きさについては任意であるが、実施の形態では、第1開閉体20から第2開閉体60に向けて当該第2開閉体60と接触しないように突出させることが可能な大きさに設定している。すなわち、第1内側突出部111の左右方向の長さ(厚み)については、第2室内側表面材80bの厚みと略同一の長さに設定している(あるいは、第2室内側表面材80bの厚みよりも厚い又は薄い長さに設定してもよい)。また、第1内側突出部111の前後方向の長さについては、第1内縦気密凹部26aの前後方向の長さよりも短い長さに設定している。また、第1内側突出部111の上下方向の長さについては、内縦側気密部25aの上下方向の長さと略同一の長さに設定している。
【0108】
また、第2内側突出部112の具体的な大きさについては任意であるが、実施の形態では、第2開閉体60から第1開閉体20に向けて当該第1開閉体20と接触しないように突出させることが可能な大きさに設定している。すなわち、第2内側突出部112の左右方向の長さ(厚み)については、第1内側突出部111の厚みと略同一の長さに設定している(あるいは、第1内側突出部111の厚みよりも厚い又は薄い長さに設定してもよい)。また、第2内側突出部112の前後方向の長さについては、第2縦凹部63aの前後方向の長さよりも短い長さに設定している。また、第2内側突出部112の上下方向の長さについては、内縦側気密部25aの上下方向の長さと略同一の長さに設定している。
【0109】
第1内側突出部111及び第2内側突出部112の設置方法については任意であるが、実施の形態では、以下の通りとなる。すなわち、まず、第1内側突出部111を、第1開閉体20から第2開閉体60に向けて当該第2開閉体60と接触しないように突出させて設けており、具体的には、図6に示すように、第1内縦気密凹部26aの底部分から部屋の室外側に向けて突出させて設けている。また、第2内側突出部112を、第2開閉体60から第1開閉体20に向けて当該第1開閉体20と接触しないように突出させて設けており、具体的には、図6に示すように、第2縦凹部63aの底部分から部屋の室内側に向けて突出させて設けている。さらに、第2隙間方向から見て第1内側突出部111と第2内側突出部112とが重複するように、第1内側突出部111及び第2内側突出部112を相互に対向して配置しており、具体的には、図6に示すように、第2内側突出部112の先端部及びその近傍部分が第1内縦気密凹部26a内に位置し、且つ左右方向から見て第1内側突出部111及び第2内側突出部112の各々の先端側部分が重複するように、相互に対向して配置している。ここで、「第2隙間方向」とは、第2隙間G2の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向を意味し、実施の形態では、第2隙間G2の部屋の室外側の端部から第2隙間G2の部屋の室内側の端部に向かう方向、及びその逆方向が該当する。
【0110】
このような第1の特徴により、第1内側突出部111及び第2内側突出部112があいじゃくり構造になるため、第1内側突出部111及び第2内側突出部112によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉1の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉1を安価に製造できると共に、防火扉1の組立の手間を低減でき、防火扉1の製造性を高めることが可能になる。特に、防火扉1が子扉付き扉であるので、子扉付き扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災が延焼することを抑制でき、子扉付き扉の防火性能を高めることができる。
【0111】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第2の特徴)
図2に戻り、次に、戸尻側第2延焼抑制構造の第2の特徴については、第1内側突出部111及び第2内側突出部112は、内縦側気密部25aよりも第2隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置されている。
【0112】
具体的には、図2図6に示すように、内縦側気密部25aよりも戸先側の位置には、第1内側突出部111及び第2内側突出部112が1つずつ配置されており、内縦側気密部25aよりも戸尻側の位置には、第1内側突出部111及び第2内側突出部112が1つずつ配置されている。
【0113】
この場合において、第1内側間隔IS1の幅については任意であるが、実施の形態では、内縦側気密部25aよりも戸尻側又は戸先側に位置する第1内側突出部111及び第2内側突出部112との第1内側間隔IS1の幅を、第2隙間G2の幅W2よりも短く設定している。具体的には、図6に示すように、内縦側気密部25aよりも戸先側に位置する第1内側突出部111及び第2内側突出部112との第1内側間隔IS1の幅のみを、第2隙間G2の幅W2よりも短く設定している。これにより、上記第1内側間隔IS1の幅を第2隙間G2の幅W2よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。ただし、これに限らず、例えば、上記第1内側間隔IS1の幅を、第1隙間G1の幅W1よりも長く(又は同一に)設定してもよい。なお、上述した「第1内側間隔IS1」は、特許請求の範囲における「第1間隔」に対応する。
【0114】
また、枠体10の第2重複部D2と第1内側突出部111又は第2内側突出部112との隙間IS2(以下、「第2内側間隔IS2」と称する)の幅については任意であるが、実施の形態では、内縦側気密部25aよりも戸尻側に位置する第2重複部D2と第2内側突出部112との第2内側間隔IS2の幅、又は内縦側気密部25aよりも戸先側に位置する第2重複部D2と第2内側突出部112との第2内側間隔IS2の幅を、第2隙間G2の幅W2よりも短く設定している。具体的には、図6に示すように、内縦側気密部25aよりも戸尻側に位置する第2重複部D2と第2内側突出部112との第2内側間隔IS2の幅のみを、第2隙間G2の幅W2よりも短く設定している。ここで、「第2重複部D2」とは、第1開閉体20(具体的には、縦側あいじゃくり部24a)における部屋の室外側の部分のうち第1内縦気密凹部26aの側壁部分であって、第2隙間方向から見て第1内側突出部111又は第2内側突出部112と重複するように形成された部分を意味する。これにより、上記第2内側間隔IS2の幅を第2隙間G2の幅W2よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。ただし、これに限らず、例えば、上記第2内側間隔IS2の幅を、第2隙間G2の幅W2よりも長く(又は同一に)設定してもよい(実施の形態に係る戸先側第2延焼抑制構造、上側第2延焼抑制構造、及びくつずり側第2延焼抑制構造については、当該設定に倣う)。なお、上述した「第2内側間隔IS2」は、特許請求の範囲における「第3間隔」に対応し、「第2重複部D2」は、特許請求の範囲における「重複部」に対応する。
【0115】
このような第2の特徴により、第1内側突出部111、第2内側突出部112、第1開閉体20、及び第2開閉体60によって内縦側気密部25aの周囲を囲繞でき、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、内縦側気密部25aから発生した炎が第2隙間G2の外側に出ることを抑制できる。また、第2重複部D2と第2内側突出部112とがあいじゃくり構造になるため、第2重複部D2及び第2内側突出部112によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制しやすくなる。
【0116】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第3の特徴)
図2に戻り、次に、戸尻側第2延焼抑制構造の第3の特徴については、図2図6に示すように、第2隙間G2内には第1内側凹部113及び第2内側凹部114が設けられている。
【0117】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第3の特徴-第1内側凹部)
第1内側凹部113は、内縦側気密部25aを収容するための第1凹部である。この第1内側凹部113は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、具体的には、図6に示すように、第1開閉体20とは別体に形成されており、縦側あいじゃくり部24aの第1内縦気密凹部26aの底部分に設けられ、且つ内縦側気密部25aを収容するように設けられている。
【0118】
また、第1内側凹部113の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第1内側凹部113の側壁部分は、第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか一方として形成されており、具体的には、図6に示すように、戸尻側の側壁部分及び戸先側の側壁部分は、第1内側突出部111として形成されている。これにより、第1内側凹部113の側壁部分を第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか一方として形成でき、第1内側凹部113と第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0119】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第3の特徴-第2内側凹部)
第2内側凹部114は、第1内側凹部113及び内縦側気密部25aを覆うための第2凹部である。この第2内側凹部114は、例えば耐火性材料(一例として、鋼材等)にて形成された板状体であり、具体的には、図6に示すように、第2開閉体60とは別体に形成されており、第2開閉体60の第2縦凹部63aの底部分に設けられ、且つ第1内側凹部113及び内縦側気密部25aを部屋の室外側から覆うように設けられている。また、第2内側凹部114の底部分には、内縦側気密部25aと当接する板状の第2当接部114aが設けられている。
【0120】
また、第2内側凹部114の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第2内側凹部114の側壁部分は、第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか他方として形成されており、具体的には、図6に示すように、戸尻側の側壁部分及び戸先側の側壁部分は、第2内側突出部112として形成されている。これにより、第2内側凹部114の側壁部分を第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか他方として形成でき、第2内側凹部114と第1内側突出部111又は第2内側突出部112のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0121】
このような第3の特徴により、第1内側凹部113及び第2内側凹部114を設けた場合に防火扉1の部品数を低減できることから、防火扉1の製造コスト及び組立の手間を低減することが可能となる。
【0122】
(構成-延焼抑制構造-第2延焼抑制構造-第4の特徴)
図2に戻り、続いて、戸尻側第2延焼抑制構造の第4の特徴については、図2図6に示すように、第2隙間G2内には第2熱膨張耐火部材115が設けられている。
【0123】
第2熱膨張耐火部材115は、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、当該第2熱膨張耐火部材115が当該火災の熱で膨張することにより、第2隙間G2を塞ぐための熱膨張耐火部材である。この第2熱膨張耐火部材115は、第2隙間G2内において第2開閉体60に取り付けられている。具体的には、図6に示すように、第2開閉体60の第2室外側表面材80a又は第2室内側表面材80bの一部に形成された切欠部(図示省略)に第2熱膨張耐火部材115を配置し、当該配置した第2熱膨張耐火部材115を第2開閉体60の第2開閉体フレーム70に対して両面テープ、接着剤、又はビス等によって接続されている。
【0124】
第2熱膨張耐火部材115の設置方法については任意であるが、実施の形態では、内縦側気密部25aよりも第2隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に設置(配置)している。具体的には、図6に示すように、内縦側気密部25aよりも第2隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置(図6では、戸尻側及び戸先側の位置)において内縦側気密部25aと間隔IS3(以下、「第3内側間隔IS3」と称する)を隔てて配置している。
【0125】
このような第4の特徴により、火災時に第2熱膨張耐火部材115よって第2隙間G2を塞ぐことができ、第2熱膨張耐火部材115を設けない場合に比べて、内縦側気密部25aから発生した炎が第2隙間G2の外側に出ることを抑制できる。特に、内縦側気密部25aよりも第2隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において内縦側気密部25aと第3内側間隔IS3を隔てて配置しているので、第2熱膨張耐火部材115を第2隙間G2における内縦側気密部25aよりも第2隙間方向の一方側の位置のみに設ける場合に比べて、火災時に膨張した第2熱膨張耐火部材115によって塞がれた第2隙間G2内で内縦側気密部25aを炭化するまで燃焼させやすくなる。また、第2熱膨張耐火部材115を内縦側気密部25aと密接して設ける場合に比べて、第2隙間G2内で内縦側気密部25aを燃焼させやすくなる。以上のことから、火災の延焼を一層抑制しやすくなる。なお、上述した「第3内側間隔IS3」は、特許請求の範囲における「第2間隔」に対応する。
【0126】
(防火扉の作用)
このように構成された防火扉1の作用について説明する。防火扉1の作用は、部屋の室内側で火災が発生した際の作用と、部屋の室外側で火災が発生した際の作用とに大別されるが、これら作用はそれぞれ略同一であるので、以下では、部屋の室内側で火災が発生した際の作用のみについて説明することとする。
【0127】
例えば、全閉状態において部屋の室内側で火災が発生した際に、当該火災の炎の一部が第1隙間G1を介して部屋の室外側に流入しようとすると、戸尻側第1延焼抑制構造、戸先側第1延焼抑制構造、上側第1延焼抑制構造、及びくつずり側第1延焼抑制構造の各々の第1外側突出部101及び第2外側突出部102によって当該炎の部屋の室外側への流入が妨げられる。さらに、上記火災の熱によって外縦側気密部11c又は外横側気密部13cから炎が発生しても、当該炎が発生した外縦側気密部11c又は外横側気密部13cよりも第1隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とに配置された第1外側突出部101及び第2外側突出部102と、上記火災の熱で膨張した第1熱膨張耐火部材105とによって当該炎が第1隙間G1の外側(特に、部屋の室外側)に出ることが妨げられる。これらのことから、上記火災が部屋の室内側から部屋の室外側に向けて延焼することが抑制される。
【0128】
また、上記火災が発生した際に、当該火災の炎の他の一部が第2隙間G2を介して部屋の室外側に流入しようとすると、戸尻側第2延焼抑制構造、戸先側第2延焼抑制構造、上側第2延焼抑制構造、及びくつずり側第2延焼抑制構造の各々の第1内側突出部111及び第2内側突出部112によって当該炎の部屋の室外側への流入が妨げられる。さらに、上記火災の熱によって内縦側気密部25a又は内横側気密部25bから炎が発生しても、当該炎が発生した内縦側気密部25a又は内横側気密部25bよりも第2隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とに配置された第1内側突出部111及び第2内側突出部112と、上記火災の熱で膨張した第2熱膨張耐火部材115とによって当該炎が第2隙間G2の外側(特に、部屋の室外側)に出ることが妨げられる。これらのことから、上記火災が部屋の室内側から部屋の室外側に向けて延焼することが抑制される。
【0129】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、枠体10と第1開閉体20との相互間に形成された第1隙間G1内に設けられている耐火性の第1外側突出部101であり、枠体10又は第1開閉体20のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1外側突出部101と、第1隙間G1内において第1外側突出部101と第1外側間隔OS1を隔てて設けられている耐火性の第2外側突出部102であり、枠体10又は第1開閉体20のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2外側突出部102と、を備え、第1隙間方向から見て第1外側突出部101と第2外側突出部102とが重複するように、第1外側突出部101及び第2外側突出部102を相互に対向して配置することにより、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、第1隙間G1を介して防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1外側突出部101及び第2外側突出部102があいじゃくり構造になるため、第1外側突出部101及び第2外側突出部102によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉1の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉1を安価に製造できると共に、防火扉1の組立の手間を低減でき、防火扉1の製造性を高めることが可能になる。
【0130】
また、第1開閉体20及び第2開閉体60の相互間に形成された第2隙間G2内に設けられている耐火性の第1内側突出部111であり、第1開閉体20又は第2開閉体60のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1内側突出部111と、第2隙間G2内において第1内側突出部111と第1内側間隔IS1を隔てて設けられている耐火性の第2内側突出部112であり、第1開閉体20又は第2開閉体60のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2内側突出部112と、を備え、第2隙間方向から見て第1内側突出部111と第2内側突出部112とが重複するように、第1内側突出部111及び第2内側突出部112を相互に対向して配置することにより、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、第2隙間G2を介して防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1内側突出部111及び第2内側突出部112があいじゃくり構造になるため、第1内側突出部111及び第2内側突出部112によって防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉1の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉1を安価に製造できると共に、防火扉1の組立の手間を低減でき、防火扉1の製造性を高めることが可能になる。
【0131】
また、防火扉1は、子扉付き扉を含むので、子扉付き扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災が延焼することを抑制でき、子扉付き扉の防火性能を高めることができる。
【0132】
また、第1突出部(第1外側突出部101又は第1内側突出部111)及び第2突出部(第2外側突出部102又は第2内側突出部112)を、気密手段よりも隙間方向(第1隙間方向又は第2隙間方向)の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置したので、例えば第1突出部、第2突出部、枠体10、及び開閉体(第1開閉体20又は第2開閉体60)によって気密手段の周囲を囲繞でき、全閉状態において防火扉1の周辺で火災が発生した際に、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
【0133】
また、第1凹部(第1外側凹部103又は第1内側凹部113)の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成したので、第1凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成でき、第1凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0134】
また、第2凹部(第2外側凹部104又は第2内側凹部114)の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成したので、第2凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成でき、第2凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉1の部品数を低減できる。
【0135】
また、熱膨張耐火部材(第1熱膨張耐火部材105又は第2熱膨張耐火部材115)を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置したので、火災時に熱膨張耐火部材よって隙間を塞ぐことができ、熱膨張耐火部材を設けない場合に比べて、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
【0136】
また、熱膨張耐火部材を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において気密手段と第2間隔を隔てて配置したので、熱膨張耐火部材を隙間における気密手段よりも隙間方向の一方側の位置のみに設ける場合に比べて、火災時に膨張した熱膨張耐火部材によって塞がれた隙間内で気密手段を炭化するまで燃焼させやすくなる。また、熱膨張耐火部材を気密手段と密接して設ける場合に比べて、隙間内で気密手段を燃焼させやすくなる。以上のことから、上記火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0137】
また、第1間隔(第1外側間隔OS1又は第1内側間隔IS1)の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第1間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0138】
また、第3間隔(第2外側間隔OS2又は第2内側間隔IS2)の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第3間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉1の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0139】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0140】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0141】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0142】
(隙間方向について)
上記実施の形態では、第1隙間方向が、第1隙間G1の部屋の室外側の端部から第1隙間G1の部屋の室内側の端部に向かう方向、及びその逆方向が該当すると説明したが、これに限らず、例えば、第1隙間G1の部屋の上側又は下側の端部から第1隙間G1の部屋の室内側の端部又は室外側の端部に向かう方向、又はその逆方向であってもよい(なお、第2隙間方向についても略同様とする)。
【0143】
(防火扉について)
上記実施の形態では、防火扉1が、子扉付き扉であると説明したが、これに限らない。例えば、第1開閉体20及び第2開閉体60を備える両開式の開き戸であってもよい(あるいは、片側が子扉なしの扉であってもよい)。この場合には、第1開閉体20と枠体10との相互間に形成される隙間に対して第1延焼抑制構造が適用される。また、第1開閉体20と第2開閉体60との相互間に形成される隙間に対して第2延焼抑制構造が適用される。あるいは、1つの開閉体を備える片開式の開き戸(又は片開式の引き戸)であってもよい。この場合には、開閉体と枠体10との相互間に形成される隙間に対して第1延焼抑制構造が適用される。
【0144】
また、上記実施の形態では、防火扉1が、防火戸であると説明したが、これに限らず、例えば、火災の熱が防火扉1を介して避難通路側に伝導することを抑制できる遮熱扉であってもよい。
【0145】
また、上記実施の形態では、防火扉1が、外縦側気密部11c、外横側気密部13c、内縦側気密部25a、及び内横側気密部25bを備えていると説明したが、これに限らず、例えば、外縦側気密部11c、外横側気密部13c、内縦側気密部25a、及び内横側気密部25bを省略してもよい。この場合には、例えば、戸尻側第1延焼抑制構造の第1外側突出部101及び第2外側突出部102は、第1隙間G1内のいずれの位置に配置されてもよく、一例として、第1隙間G1内の見込方向側の端部(又はその近傍位置)において第1隙間方向(具体的には、前後方向)に対して相互に第1隙間G1を隔てて配置されてもよい(なお、他の第1延焼抑制構造の第1外側突出部101及び第2外側突出部102、各種の第2延焼抑制構造の第1内側突出部111及び第2内側突出部112についても同様とする)。
【0146】
また、上記実施の形態では、防火扉1は、第1室外側表面材50aが部屋の室外側に位置するように設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、第1室外側表面材50aが部屋の室内側に位置するように設けられてもよい。
【0147】
(第1開閉体、第2開閉体について)
上記実施の形態では、第1開閉体20が、第1外側開閉体フレーム30、第1内側開閉体フレーム40、第1室外側表面材50a、及び第1室内側表面材50bを備えていると説明したが、これに限らない。例えば、これらの構成要素に加えて、第1開閉体20の内部に充填される芯材をさらに備えてもよい(なお、第2開閉体60についても同様とする)。
【0148】
(延焼抑制構造について)
上記実施の形態では、延焼抑制構造が、第1延焼抑制構造及び第2延焼抑制構造を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、所望の防火性能を維持できる場合には、第1延焼抑制構造又は第2延焼抑制構造のいずれか一方のみを省略してもよい。
【0149】
上記実施の形態では、延焼抑制構造が、第1熱膨張耐火部材105及び第2熱膨張耐火部材115を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第1熱膨張耐火部材105及び第2熱膨張耐火部材115の少なくともいずれか一方を省略してもよい。
【0150】
(第1延焼抑制構造、第2延焼抑制構造について)
上記実施の形態では、第1延焼抑制構造が、戸尻側第1延焼抑制構造、戸先側第1延焼抑制構造、上側第1延焼抑制構造、及びくつずり側第1延焼抑制構造を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、所望の防火性能を維持できる場合には、戸尻側第1延焼抑制構造、戸先側第1延焼抑制構造、上側第1延焼抑制構造、又はくつずり側第1延焼抑制構造の少なくともいずれか1つを省略してもよい。また、上記実施の形態では、第2延焼抑制構造が、戸尻側第2延焼抑制構造、戸先側第2延焼抑制構造、上側第2延焼抑制構造、及びくつずり側第2延焼抑制構造を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、所望の防火性能を維持できる場合には、戸尻側第2延焼抑制構造、戸先側第2延焼抑制構造、上側第2延焼抑制構造、又はくつずり側第2延焼抑制構造の少なくともいずれか1つを省略してもよい。
【0151】
(戸尻側第1延焼抑制構造について)
上記実施の形態では、第1外側突出部101及び第2外側突出部102が、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つずつ配置されていると説明したが、これに限らない。例えば、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置のいずれか一方のみにそれぞれ1つずつ配置されてもよい。あるいは、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ2つ以上配置されてもよい(なお、第1内側突出部111及び第2内側突出部112についても略同様とする)。
【0152】
また、上記実施の形態では、外縦側気密部11c、第1外側突出部101、及び第1外側凹部103が縦枠側気密凹部11eに設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、第1外縦凹部23aに設けられてもよい。この場合には、第2外側突出部102、第2外側凹部104、及び第1当接部104aが縦枠側気密凹部11eに設けられる。
【0153】
また、上記実施の形態では、第1外側凹部103の側壁部分が、第1外側突出部101として形成されていると説明したが、これに限らない。例えば、外縦側気密部11cを第2外側凹部104内に収容する場合には、第2外側突出部102として形成されてもよい。あるいは、第1外側凹部103の側壁部分が、第1外側突出部101及び第2外側突出部102とは別体に形成されてもよい。これらの場合には、例えば、第1外側突出部101又は第2外側突出部102は、戸尻側縦枠材11又は第1開閉体20と一体に形成されてもよい。また、上記実施の形態では、第1内側凹部113の側壁部分が、第1内側突出部111として形成されていると説明したが、これに限らない。例えば、内縦側気密部25aを第2内側凹部114内に収容する場合には、第2内側突出部112として形成されてもよい。あるいは、第1内側凹部113の側壁部分が、第1内側突出部111及び第2内側突出部112とは別体に形成されてもよい。これらの場合には、例えば、第1内側突出部111又は第2内側突出部112は、第1開閉体20又は第2開閉体60と一体に形成されてもよい。
【0154】
また、上記実施の形態では、第2外側凹部104の側壁部分が、第2外側突出部102として形成されていると説明したが、これに限らない。例えば、外縦側気密部11cを第2外側凹部104内に収容する場合には、第1外側突出部101として形成されてもよい。あるいは、第2外側凹部104の側壁部分が、第1外側突出部101及び第2外側突出部102とは別体に形成されてもよい。これらの場合には、例えば、第1外側突出部101又は第2外側突出部102は、戸尻側縦枠材11又は第1開閉体20と一体に形成されてもよい。また、上記実施の形態では、第1内側凹部113の側壁部分が、第1内側突出部111として形成されていると説明したが、これに限らない。例えば、内縦側気密部25aを第2内側凹部114内に収容する場合には、第2内側突出部112として形成されてもよい。あるいは、第2内側凹部114の側壁部分が、第1内側突出部111及び第2内側突出部112とは別体に形成されてもよい。これらの場合には、例えば、第1内側突出部111又は第2内側突出部112は、第1開閉体20又は第2開閉体60と一体に形成されてもよい。
【0155】
また、上記実施の形態では、第1熱膨張耐火部材105が、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、外縦側気密部11cよりも第1隙間方向の一方側の位置のみに設けられてもよい(なお、第2熱膨張耐火部材115についても略同様とする)。
【0156】
また、上記実施の形態では、第1熱膨張耐火部材105が、外縦側気密部11cと第3外側間隔OS3を隔てて設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、外縦側気密部11cと密接して設けられてもよい(なお、第2熱膨張耐火部材115についても略同様とする)。
【0157】
(付記)
付記1の防火扉は、建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部の周縁に設けられた枠体と、前記開口部を開閉する少なくとも1つ以上の開閉体とを備えた防火扉であって、前記枠体と前記開閉体との相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記枠体又は前記開閉体のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とした。
【0158】
付記2の防火扉は、建物の開口部に設けられた防火扉であり、前記開口部を開閉する複数の開閉体を備えた防火扉であって、前記開閉体同士の相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、前記開閉体同士のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、前記隙間内において前記第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、前記開閉体同士のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、前記隙間の入口側の端部又は出口側の端部のいずれか一方から他方に向かう方向である隙間方向から見て前記第1突出部と前記第2突出部とが重複するように、前記第1突出部及び前記第2突出部を相互に対向して配置することにより、前記複数の開閉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、前記隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能とした。
【0159】
付記3の防火扉は、付記2に記載の防火扉において、当該防火扉は、両開式の開き戸、又は子扉付き扉を含む。
【0160】
付記4の防火扉は、付記1から3のいずれか一項に記載の防火扉において、前記隙間内に設けられた気密手段であり、前記全閉状態において前記開閉体又は前記枠体と密接することにより前記隙間の気密性を高めるための気密手段を備え、前記第1突出部及び前記第2突出部を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置した。
【0161】
付記5の防火扉は、付記4に記載の防火扉において、前記気密手段を収容するための第1凹部を備え、前記第1凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか一方として形成した。
【0162】
付記6の防火扉は、付記5に記載の防火扉において、前記第1凹部及び前記気密手段を覆うように設けられた第2凹部を備え、前記第2凹部の側壁部分を、前記第1突出部又は前記第2突出部のいずれか他方として形成した。
【0163】
付記7の防火扉は、付記4から6のいずれか一項に記載の防火扉において、前記隙間内に設けられた熱膨張耐火部材であり、前記全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、当該熱膨張耐火部材が前記火災の熱で膨張することにより、前記隙間を塞ぐための熱膨張耐火部材を備え、前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置した。
【0164】
付記8の防火扉は、付記7に記載の防火扉において、前記熱膨張耐火部材を、前記気密手段よりも前記隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において前記気密手段と第2間隔を隔てて配置した。
【0165】
付記9の防火扉は、付記1から8のいずれか一項に記載の防火扉において、前記第1間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした。
【0166】
付記10の防火扉は、付記1から9のいずれか一項に記載の防火扉において、前記枠体又は前記開閉体は、前記第1突出部又は前記第2突出部と第3間隔を隔てて設けられた耐火性の重複部であって、前記隙間方向から見て前記第1突出部又は前記第2突出部と重複するように形成された重複部を有し、前記第3間隔の幅を、前記隙間の幅よりも短くした。
【0167】
(付記の効果)
付記1に記載の防火扉によれば、枠体と開閉体との相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、枠体又は開閉体のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、隙間内において第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、枠体又は開閉体のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、隙間方向から見て第1突出部と第2突出部とが重複するように、第1突出部及び第2突出部を相互に対向して配置することにより、開閉体によって開口部を全閉した全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1突出部及び第2突出部があいじゃくり構造になるため、第1突出部及び第2突出部によって防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉を安価に製造できると共に、防火扉の組立の手間を低減でき、防火扉の製造性を高めることが可能になる。
【0168】
付記2に記載の防火扉によれば、開閉体同士の相互間に形成された隙間内に設けられている耐火性の第1突出部であり、開閉体同士のいずれか一方から他方に向けて当該他方と接触しないように突出させた第1突出部と、隙間内において第1突出部と第1間隔を隔てて設けられている耐火性の第2突出部であり、開閉体同士のいずれか他方から一方に向けて当該一方と接触しないように突出させた第2突出部と、を備え、隙間方向から見て第1突出部と第2突出部とが重複するように、第1突出部及び第2突出部を相互に対向して配置することにより、全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、隙間を介して当該防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制可能としたので、第1突出部及び第2突出部があいじゃくり構造になるため、第1突出部及び第2突出部によって防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて当該火災が延焼することを抑制でき、防火扉の防火性能を高めることができる。また、熱膨張耐火部材を設ける場合に比べて、防火扉を安価に製造できると共に、防火扉の組立の手間を低減でき、防火扉の製造性を高めることが可能になる。
【0169】
付記3に記載の防火扉によれば、当該防火扉は、両開式の開き戸、又は子扉付き扉を含むので、両開式の開き戸又は子扉付き扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災が延焼することを抑制でき、両開式の開き戸又は子扉付き扉の防火性能を高めることができる。
【0170】
付記4に記載の防火扉によれば、第1突出部及び第2突出部を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置と他方側の位置とにそれぞれ1つ以上配置したので、例えば第1突出部、第2突出部、枠体、及び開閉体によって気密手段の周囲を囲繞でき、全閉状態において当該防火扉の周辺で火災が発生した際に、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
【0171】
付記5に記載の防火扉によれば、第1凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成したので、第1凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか一方として形成でき、第1凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか一方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
【0172】
付記6に記載の防火扉によれば、第2凹部の側壁部分を、第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成したので、第2凹部の側壁部分を第1突出部又は第2突出部のいずれか他方として形成でき、第2凹部と第1突出部又は第2突出部のいずれか他方とを別体に設ける場合に比べて、防火扉の部品数を低減できる。
【0173】
付記7に記載の防火扉によれば、熱膨張耐火部材を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置又は他方側の位置に配置したので、火災時に熱膨張耐火部材よって隙間を塞ぐことができ、熱膨張耐火部材を設けない場合に比べて、気密手段から発生した炎が隙間の外側に出ることを抑制できる。
【0174】
付記8に記載の防火扉によれば、熱膨張耐火部材を、気密手段よりも隙間方向の一方側の位置及び他方側の位置において気密手段と第2間隔を隔てて配置したので、熱膨張耐火部材を隙間における気密手段よりも隙間方向の一方側の位置のみに設ける場合に比べて、火災時に膨張した熱膨張耐火部材によって塞がれた隙間内で気密手段を炭化するまで燃焼させやすくなる。また、熱膨張耐火部材を気密手段と密接して設ける場合に比べて、隙間内で気密手段を燃焼させやすくなる。以上のことから、上記火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0175】
付記9に記載の防火扉によれば、第1間隔の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第1間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【0176】
付記10に記載の防火扉によれば、第3間隔の幅を、隙間の幅よりも短くしたので、第3間隔の幅を隙間の幅よりも長くする場合に比べて、防火扉の見込方向の一方側から他方側に向けて火災の炎が流入しにくくなることから、当該火災の延焼を抑制しやすくなる。
【符号の説明】
【0177】
1 防火扉
2 躯体
3 開口部
3a 第1開口部
3b 第2開口部
10 枠体
11 戸尻側縦枠材
11a 縦枠材本体
11b 固定材
11c 外縦側気密部
11d 縦枠側凹部
11e 縦枠側気密凹部
12 戸先側縦枠材
13 上側横枠材
13a 横枠材本体
13b 固定材
13c 外横側気密部
13d 横枠側凹部
13e 横枠側気密凹部
14 くつずり側横枠材
20 第1開閉体
21 第1把手部
22 第1施錠装置
23a 第1外縦凹部
23b 第1外横凹部
24a 縦側あいじゃくり部
24b 横側あいじゃくり部
25a 内縦側気密部
25b 内横側気密部
26a 第1内縦気密凹部
26b 第1内横気密凹部
30 第1外側開閉体フレーム
31 戸尻側第1外縦力骨
32 戸先側第1外縦力骨
33 上側第1外横力骨
34 下側第1外横力骨
40 第1内側開閉体フレーム
41 戸尻側第1内縦力骨
42 戸先側第1内縦力骨
43 上側第1内横力骨
44 下側第1内横力骨
50a 第1室外側表面材
50b 第1室内側表面材
60 第2開閉体
61 第2把手部
62 第2施錠装置
63a 第2縦凹部
63b 第2横凹部
70 第2開閉体フレーム
71 戸尻側第2縦力骨
72 戸先側第2縦力骨
73 上側第2横力骨
74 下側第2横力骨
80a 第2室外側表面材
80b 第2室内側表面材
91 第1ヒンジ部
92 第2ヒンジ部
92a 上側第2ヒンジ部
92b 下側第2ヒンジ部
92c 脱落防止部
101 第1外側突出部
102 第2外側突出部
103 第1外側凹部
104 第2外側凹部
104a 第1当接部
105 第1熱膨張耐火部材
111 第1内側突出部
112 第2内側突出部
113 第1内側凹部
114 第2内側凹部
114a 第2当接部
115 第2熱膨張耐火部材
D1 第1重複部
D2 第2重複部
G1 第1隙間
G2 第2隙間
OS1 第1外側間隔
OS2 第2外側間隔
OS3 第3外側間隔
IS1 第1内側間隔
IS2 第2内側間隔
IS3 第3内側間隔
W1 第1隙間の幅
W2 第2隙間の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6