(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電子機器及び電子機器の処理方法
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20230424BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20230424BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230424BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20230424BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08B25/08 A
G08B21/00 U
H04M1/00 U
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2019067331
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽禰田 卓志郎
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008347(JP,A)
【文献】特開2000-168634(JP,A)
【文献】特開2015-005075(JP,A)
【文献】特開2010-160814(JP,A)
【文献】特表2007-538297(JP,A)
【文献】特開2014-133449(JP,A)
【文献】特開2003-168177(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1416528(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00~ 5/12
G08B 21/00~21/24
G08B 25/04
G08B 25/08
G08G 1/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に取り付け可能な電子機器であって、
前記移動体の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサの出力に基づいて、前記移動体の搭乗者の状態を判定する処理装置と、を具備し、
前記処理装置は、
前記加速度センサの出力に基づいて一定レベル以上の衝撃を検知した場合、該
衝撃を検知した時より後の第1期間の前記加速度センサの出力に基づいて前記搭乗者の状態が
第1状態、第2状態または第3状態の何れであるかを判定するものであ
り、
前記第1状態は、前記搭乗者が怪我をしていて意識がある状態であり
前記第2状態は、前記搭乗者が怪我をしていて意識が無い状態であり、
前記第3状態は、前記搭乗者が怪我をしていない状態である電子機器。
【請求項2】
前記移動体の速度を検出する角速度センサ又は位置測位センサからなる第2センサをさらに具備し、
前記処理装置は、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記第2センサの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記搭乗者の音声を検出するマイクをさらに具備し、
前記処理装置は、
前記加速度センサの出力と前記マイクの出力に基づいて前記一定レベル以上の衝撃を検知し、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記マイクの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記搭乗者の画像を撮影するカメラをさらに具備し、
前記処理装置は、
前記加速度センサの出力と前記カメラの出力に基づいて前記一定レベル以上の衝撃を検知し、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記カメラの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
前記処理装置は、
前記加速度センサの出力が所定の閾値以上である期間が第2期間である場合、前記一定レベル以上の衝撃を検知するものであり、
前記第2期間は前記第1期間よりも短いものである請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は、前記移動体に取り付け可能なドライブレコーダ内に配置される請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は、前記移動体に取り付け可能な可搬の、通信機能とタッチ入力機能とカメラ機能を備えるコンピュータ機器内に配置される請求項1乃至請求項5の何れか一項記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1状態は、前記移動体が走行している時に事故が発生した状態と、前記移動体が停止している時に事故が発生した状態を含み、
前記第2状態は、前記移動体が走行している時に事故が発生した状態と、前記移動体が停止している時に事故が発生した状態を含む
請求項1乃至請求項7のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項9】
前記処理装置は、前記搭乗者の状態が前記第2状態である場合、緊急通報を送信する
請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項10】
移動体に取り付け可能であり、前記移動体の加速度を検出する加速度センサを具備する電子機器の処理方法であって、
前記加速度センサの出力に基づいて、前記移動体の搭乗者の状態を判定するステップを備え、
前記ステップは、
前記加速度センサの出力に基づいて一定レベル以上の衝撃を検知した場合、
該衝撃を検知した時より後の第1期間の前記加速度センサの出力に基づいて前記搭乗者の状態が
第1状態、第2状態、または第3状態の何れであるかを判定
し、
前記第1状態は、前記搭乗者が怪我をしていて意識がある状態であり
前記第2状態は、前記搭乗者が怪我をしていて意識が無い状態であり、
前記第3状態は、前記搭乗者が怪我をしていない状態である処理方法。
【請求項11】
前記電子機器は、前記移動体の速度を検出する角速度センサ又は位置測位センサからなる第2センサをさらに具備し、
前記ステップは、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記第2センサの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項
10記載の処理方法。
【請求項12】
前記電子機器は、前記搭乗者の音声を検出するマイクをさらに具備し、
前記ステップは、
前記加速度センサの出力と前記マイクの出力に基づいて前記一定レベル以上の衝撃を検知し、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記マイクの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項
10記載の処理方法。
【請求項13】
前記電子機器は、前記搭乗者の画像を撮影するカメラをさらに具備し、
前記ステップは、
前記加速度センサの出力と前記カメラの出力に基づいて前記一定レベル以上の衝撃を検知し、
前記第1期間の前記加速度センサの出力と前記カメラの出力に基づいて、前記搭乗者の状態が前記
第1状態、前記第2状態または前記第3状態の何れであるかを判定する請求項
10記載の処理方法。
【請求項14】
前記ステップは、
前記加速度センサの出力が所定の閾値以上である期間が第2期間である場合、前記一定レベル以上の衝撃を検知するものであり、
前記第2期間は前記第1期間よりも短いものである
請求項10乃至請求項13のいずれか一項記載の処理方法。
【請求項15】
前記第1状態は、前記移動体が走行している時に事故が発生した状態と、前記移動体が停止している時に事故が発生した状態を含み、
前記第2状態は、前記移動体が走行している時に事故が発生した状態と、前記移動体が停止している時に事故が発生した状態を含む
請求項10乃至請求項14のいずれか一項記載の処理方法。
【請求項16】
前記搭乗者の状態が前記第2状態である場合、緊急通報を送信するステップをさらに備える
請求項10乃至請求項15のいずれか一項記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は電子機器及び電子機器の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の一例として自動車がある。自動車に設けられた種々のセンサの出力に基づいて自動車事故が起きたか否かを判定し、事故が起きたことを判定すると、緊急通報を自動的に送信するシステムがある。従来システムは、事故が起き、自動車が破損した場合、センサも破損すると、事故が起きたことを検知できない。また、従来システムは、事故の程度を判別し、判別結果に応じて緊急通報の内容を変更するが、搭乗者の事故後の状態を判別してはいない。この明細書では、搭乗者とは、運転者と同乗者を含む。そのため、従来システムは、搭乗者の事故後の状態に応じた適切な対応をとることができない。このような問題は、自動車に限らず、オートバイ、バス、電車、ボート、船舶、飛行機等の全ての移動体について同様に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015―5075号公報
【文献】特開2001―247005号公報
【文献】特開2001―155281号公報
【文献】特開2002―127857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、移動体に備えられているセンサを利用しないで、移動体の事故が起きたことを検知し、搭乗者の事故後状態を判別することができる電子機器及び電子機器の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電子装置は、移動体に取り付け可能である。電子機器は移動体の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサの出力に基づいて移動体の搭乗者の状態を判定する処理装置を具備する。処理装置は、加速度センサの出力に基づいて一定レベル以上の衝撃を検知した場合、該衝撃を検知した時より後の第1期間の前記加速度センサの出力に基づいて搭乗者の状態が第1状態、第2状態または第3状態の何れであるかを判定する。第1状態は、搭乗者が怪我をしていて意識がある状態である。第2状態は、搭乗者が怪我をしていて意識が無い状態である。第3状態は、搭乗者が怪我をしていない状態である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による電子機器の一例であるドライブレコーダ10の概要を示す図である。
【
図2】ドライブレコーダ10の一例の外観を示す図である。
【
図3】ドライブレコーダ10の一例の回路構成を示すブロック図である。
【
図4】ドライブレコーダ10の動作例の一部を示すフローチャートである。
【
図5】ドライブレコーダ10の動作例の他の一部を示すフローチャートである。
【
図6】ドライブレコーダ10の動作例の別の一部を示すフローチャートである。
【
図7】ドライブレコーダ10の動作例のさらに別の一部を示すフローチャートである。
【
図8】第1FIFOメモリ64aが記憶するデータの一例を示す図である。
【
図9】第2FIFOメモリ64bが記憶するデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0008】
移動体として自動車を想定して実施形態を説明するが、自動車は4輪の自動車に限られず、車輪の数は任意である。移動体の例は自動車に限らず、オートバイ、バス、電車、ボート、船舶、飛行機等の全ての移動体を含む。さらに、実施形態は運転者が不在の自動運転の移動体にも適用可能である。
【0009】
近年、自動車の運転状況を記録するドライブレコーダが開発されている。ドライブレコーダは、例えば運転席から見た風景を示す画像データを記録する。GPSセンサを備えるドライブレコーダは、速度データも記録可能である。ドライブレコーダは、GPSセンサ以外の種々のセンサも備え得る。自動車や搭乗者の状態を示すデータを出力するセンサを備え、自動車や搭乗者の状態を認識することができるドライブレコーダを第1実施形態として説明する。
【0010】
図1に示すように、ドライブレコーダ10は、自動車の運転席側のフロントガラスの内側に両面テープ等により貼り付けられる。ドライブレコーダ10は、ビデオカメラのような外観形状であることが多い。
図2(a)は自動車の前面側から見たドライブレコーダ10の斜視図、
図2(b)はドライブレコーダ10の側面図である。
図2(b)は自動車の前面側から見た場合の右側の側面図である。ドライブレコーダ10の本体は、略円柱状の第1本体11と、略円柱状の第2本体12と、直方体状のブラケット13とを含む。第1本体11および第2本体12は、同じ直径を有する円筒筐体をそれぞれ有する。第2本体12は、ドライブレコーダ10の長手方向に沿った中心軸Cを中心として回転するように第1本体11に回動自在に取り付けられている。つまり、第2本体12は、第1本体11が固定されている状態で中心軸Cを中心として回転可能である。
【0011】
第2本体12には、第2本体12の表面の一部を削ることによって形成された凹部18aが設けられる。凹部18a内には、マイク17aとアウトカメラのレンズ14aが配置される。凹部18aの反対側の第2本体12の表面にも、一部を削ることによって形成された凹部18b(
図1に示す)が設けられる。凹部18b内には、
図1に示すように、マイク17bとインカメラのレンズ14bが配置される。なお、インカメラは必須ではなく、アウトカメラのみでも良い。また、マイク17a、17bも必須ではない。
【0012】
凹部18aは、レンズ14aの厚み以上の深さを有していても良いし、凹部18bは、レンズ14bの厚み以上の深さを有していても良い。中心軸Cを中心に第2本体12を回転させることにより、第1本体11に対する第2本体12のアウトカメラのレンズ14aの相対位置を変化させることができる。これにより、アウトカメラの視野方向を調整することができる。インカメラの視野方向は運転席に向けられている。
【0013】
ブラケット13は、ドライブレコーダ10の本体を自動車のフロントガラスに取り付けるための取り付け部として機能する。ブラケット13は、所定の厚みを有する箱状の部材であり、その底面は第1本体11に固定される。第1本体11の表面の一部を削ることによって表面に形成された平坦な装着部分にブラケット13の底面が接合されてもよい。ブラケット13の上面の平坦面は、両面テープ20を介して自動車のフロントガラスに取り付けられる。
【0014】
ブラケット13が厚みを有し、レンズ14は第2本体12の凹部18に配置されているので、ブラケット13が自動車のフロントガラスに取り付けられた時にレンズ14がフロントガラスに接することが防止される。ブラケット13をフロントガラスに取り付けるだけで、レンズ14を撮影に好適なフロントガラス近傍の位置に位置づけることができる。
【0015】
ブラケット13には、GPSアンテナ、またはGPSアンテナとGPSセンサとを含むGPSモジュールを内蔵してもよい。ブラケット13の上面は自動車のフロントガラスと接するので、ブラケット13にGPSアンテナを内蔵することにより、GPSアンテナをフロントガラスに最も近い位置に配置し且つGPSアンテナの指向性の向きを自動的に最適化することができ、GPSアンテナの受信感度の向上に寄与することができる。
【0016】
ブラケット13内のGPSアンテナ(またはGPSモジュール)は、ケーブル13Aを介して、自動車の前面側から見て第1本体11の左側(ドライブレコーダ10の本体の左側面)に接続される。
図2(b)に示すように、第2本体12の側面には、メモリカードスロット15、電源コネクタ16が配置される。メモリカードスロット15には、メモリカード、例えば無線LAN機能付きのSD(Secure Digital)(登録商標)カードが挿入される。SDカードは、ドライブレコーダ10によって撮影される画像データやドライブレコーダ10によって得られる自動車の走行に関する運転記録データを保存する。電源コネクタ16は、電源ケーブルを介して外部電源、例えば自動車のシガーライターソケットに接続される。
【0017】
図3は、ドライブレコーダ10のシステム構成の一例を示す。ドライブレコーダ10は、電源コネクタ16に接続される電源ケーブルを介して自動車のシガーライターソケット32に接続される。電源コネクタ16は、DC/DCコンバータ34に接続される。
【0018】
シガーライターソケット32はDC24VまたはDC12Vを出力し、DC/DCコンバータ34は入力電圧をDC5V程度まで降圧する。DC/DCコンバータ34の出力は、充電・電源切替回路36に入力される。充電・電源切替回路36には大容量のキャパシタ42が接続される。キャパシタ42の一例は、スーパーキャパシタとも称される電気二重層キャパシタである。充電・電源切替回路36は、DC/DCコンバータ34からDC5Vが供給されている間は、システムコントローラ40を含む各種デバイスにDC5Vを供給するとともに、キャパシタ42を充電する。DC/DCコンバータ34からDC5Vが供給されない期間は、充電・電源切替回路36は、キャパシタ42を放電し、システムコントローラ40を含む各種デバイスに放電電流に応じた電圧を供給する。このため、事故が発生し、シガーライターソケット32からの電源供給が断たれても、ドライブレコーダ10は、キャパシタ42の放電電流に基づき、暫くの間動作することができる。
【0019】
このように、キャパシタ42は、外部電源が遮断された際の予備電源として動作する。予備電源は、キャパシタに限らず、乾電池や充電電池(リチウムイオンバッテリ等)等の電池を用いるバッテリパックや、光発電、熱電発電、振動発電、電磁波発電等の環境発電によるサブ電源を用いてもよい。
【0020】
システムコントローラ40はSoC(System on Chip)で構成される。SoCは、1つの半導体チップ上にCPUとドライブレコーダの制御に必要な機能を実現するハードウェアロジックが搭載されて構成される。
システムコントローラ40には、主メモリ44、不揮発性メモリ52、DDR(Double Data Rate)のSDRAM(Synchronous DRAM )54、第1FIFO(First In First Out)メモリ64a、第2FIFOメモリ64b、アウトカメラ56a、インカメラ56b、カードスロット15、GPSセンサ72、マイク17a、マイク17b、加速度センサ76、ジャイロセンサ78、無線通信デバイス(3Gデバイス)82等が接続される。不揮発性メモリ52は、オペレーティングシステム(OS)46、ドライブレコーダ10の制御プログラム(例えば運転状況記録プログラム48a、緊急通報プログラム48b等)を記憶する。電源がオンされると、OS46、制御プログラムは主メモリ44にロードされる。システムコントローラ40は、OS46、制御プログラム等を実行することにより、運転状況記録処理と緊急通報処理を実行する。
【0021】
カードスロット15にはSDカード62が挿入可能である。運転状況を示す画像やセンサの出力データはSDカード62に記憶される。
アウトカメラ56aは、レンズ14aに入射された運転席前方の画像を撮影するイメージセンサ58aを含む。インカメラ56bは、レンズ14bに入射された画像を撮影するイメージセンサ58bを含む。運転者のみを撮影する場合と搭乗者を撮影する場合に対処できるように、インカメラ56bの撮影画角は切替可能である。イメージセンサ58a、58bはCCD型、MOS型のイメージセンサが利用可能である。イメージセンサ58a、58bが撮影する画像は動画に限らず、静止画でもよい。
【0022】
動画にマイク17a、17bからの音声も併せて記録されても良い。音声も記録しておくと、事故が発生した場合、発生原因の解明に役立つことがあるし、搭乗者の状況を判断することができる。
アウトカメラ56aとインカメラ56bは電源がオンの間、常時画像を撮影しており、カメラ56a、56bから出力される画像データはSDRAM54に常時書き込まれる。SDRAM54の空き容量が無くなると、古いデータが自動的に消去され、常に最新の画像データ(例えば、最大30秒の画像データ)がSDRAM54に保存される。SDRAM54の保存データは、定期的、例えば1秒に1回読み出され、SDカード62に保存される。
【0023】
GPSアンテナ74は、図示しないGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。GPSセンサ72は、GPSアンテナ74の受信信号のドップラー効果に基づいて、緯度データLat、経度データLon、速度データS、移動方向データLDをシステムコントローラ40に入力する。システムコントローラ40は、GPSセンサ72の出力データを第1FIFOメモリ64aに書き込む。
【0024】
加速度センサ76は、3軸の加速度データ(x軸方向の加速度データGx、y軸方向の加速度データGy、z軸方向の加速度データGz)をシステムコントローラ40に入力する。システムコントローラ40は、加速度センサ76の出力データを第1FIFOメモリ64aに書き込む。
【0025】
ジャイロセンサ78は、3軸の角速度データ(x軸を回転中心とする角速度データGyro_x、y軸を回転中心とする角速度データGyro_y、z軸を回転中心とする角速度データGyro_z)をシステムコントローラ40に入力する。システムコントローラ40は、ジャイロセンサ78の出力データを第1FIFOメモリ64aに書き込む。
【0026】
システムコントローラ40は、事故発生時に携帯電話回線を介して無線通信デバイス82から画像データ、運転状況データ及び緊急信号を指定の通報先のサーバ等へ自動的に送信させる。
システムコントローラ40は、運転状況記録プログラム48aの実行中に、アウトカメラ56a、マイク17a、インカメラ56b、マイク17bからの映像、音声信号をSDRAM54に書き込み、さらにSDカード62に書き込むとともに、GPSセンサ72、加速度センサ76、ジャイロセンサ78の出力データを第1FIFOメモリ64aに書き込み、さらにSDカード62に書き込む。
【0027】
システムコントローラ40は、緊急通報プログラム48bの実行中に、
図4~
図7に示すような処理を行う。緊急通報プログラム48bは、運転状況記録プログラム48aとともに実行されることもあるが、緊急通報プログラム48bと運転状況記録プログラム48aは独立しており、いずれか一方のみが実行されても良い。
【0028】
システムコントローラ40は、ステップS12で、データ収集タイミングになったか否かを判定する。センサデータは一定周期で収集されるとし、システムコントローラ40は、前回のデータ収集タイミングから一定時間経過したか否かを判定する。データ収集タイミングであると判定した場合、システムコントローラ40は、ステップS14で、GPSセンサ72、加速度センサ76、ジャイロセンサ78からのデータを第1FIFOメモリ64aに書き込む。この時のデータポイントをi番目のデータポイントとする。
【0029】
第1FIFOメモリ64aは、
図8に示すように、データ収集タイミング毎の加速度データGx、Gy、Gz、角速度データGyro_x、Gyro_y、Gyro_z、緯度データLat、経度データLon、速度データS、移動方向データLD、トータル加速度データTAを記憶する。第1FIFOメモリ64aの記憶容量は、例えば10秒のデータ収集期間のデータを記憶可能な容量となっている。一定周期が例えば0.05秒であるとすると、第1FIFOメモリ64aは、200データポイントのデータを記憶する。第1FIFOメモリ64aの空き容量が無くなると、最も古いデータポイントのデータが消去され、最新のデータポイントのデータが書き込まれる。
【0030】
システムコントローラ40は、これらのセンサ72、76、78の出力データを演算処理して搭乗者の状態を推定するための指標を求める。例えば、システムコントローラ40は、ステップS16で、i番目のデータポイントの加速度データGxi、Gyi、Gziから式1のようにi番目のデータポイントのトータル加速度データTAiを求め、トータル加速度データTAiも第1FIFOメモリ64aに書き込む。
TAi=(Gxi
2+Gyi
2+Gzi
2)1/2 (式1)
【0031】
次に、システムコントローラ40は、ストップフラグの値を決定し、ストップフラグの値を第2FIFOメモリ64bに書き込む。
第2FIFOメモリ64bは、
図9に示すように、データ収集タイミング毎のストップフラグ、平滑化トータル加速度データsTA、トータル角速度データTG、ドライバフラグ、eCallフラグを記憶する。第2FIFOメモリ64bの記憶容量は、例えば200秒のデータ収集期間のデータを記憶可能な容量となっている。一定周期が例えば0.05秒であるとすると、第1FIFOメモリ64aは、4000データポイントのデータを記憶する。第2FIFOメモリ64bも空き容量が無くなると、最も古いデータポイントのデータが消去され、最新のデータポイントのデータが書き込まれる。第2FIFOメモリ64bのデータ収集期間はL1期間、L2期間、L3期間の3つの期間に分割されている。L2期間は事故発生を検知するのに十分な期間であり、例えば30秒である。L1期間はL2期間より前の事故発生前の期間であり、例えば70秒である。L3期間はL2期間より後で、事故発生後の搭乗者の状態を認識するために十分な期間であり、例えば100秒である。
【0032】
システムコントローラ40は、次のような判定に基づいてストップフラグの値を決定する。システムコントローラ40は、ステップS18で、GPSセンサ72が位置情報を取得できており、第1FIFOメモリ64aの全てのデータポイントにおいて速度データSが時速1Km以下であるか否かを判定する。GPSセンサ72が位置情報を取得できており、第1FIFOメモリ64aの全てのデータポイントにおいて速度データSが時速1Km以下であると判定した場合(ステップS18の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS20で、ストップフラグの値を1とする。ストップフラグの値が1であることは、車は停止していると見做すことができることを意味する。
【0033】
ステップS18の判定結果がノーの場合、システムコントローラ40は、ステップS22で、GPSセンサ72が位置情報を取得できておらず、第1FIFOメモリ64aの90%以上のデータポイントにおいて角速度データGyro_x、Gyro_y、Gyro_zの全てが1deg/秒以下であるか否かを判定する。GPSセンサ72からデータが出力されておらず、第1FIFOメモリ64aの90%以上のデータポイントにおいて角速度データGyro_x、Gyro_y、Gyro_zの全てが1deg/秒以下であると判定した場合(ステップS22の判定結果がイエスの場合)も、システムコントローラ40は、ステップS20で、ストップフラグの値を1とする。
【0034】
GPSセンサ72からデータが出力されておらず、第1FIFOメモリ64aの90%以上のデータポイントにおいて角速度データGyro_x、Gyro_y、Gyro_zの全てが1deg/秒以下であるという判定をしなかった場合(ステップS22の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS24で、ストップフラグの値を0とする。ストップフラグの値が0であることは、車は走行していると見做すことができることを意味する。
【0035】
このように、自動車が走行しているか停止しているかは、GPSセンサ72から出力される速度データSに基づいて判断される。しかし、GPSセンサ72から速度データSが得られない時は、速度データSの代わりのジャイロセンサ78の角速度データGyro_x、Gyro_y、Gyro_zに基づいて判断されるので、自動車が走行しているか停止しているかを確実に判断することができる。
【0036】
システムコントローラ40は、ステップS20又はステップS24で設定されたストップフラグの値を、ステップS26で第2FIFOメモリ64bに書き込む。
システムコントローラ40は、ステップS28で、トータル加速度データTAを平滑化する。平滑化は、式2のように、ウィンドウサイズを3としたi番目のデータポイントのトータル加速度データTAiの移動平均によりi番目のデータポイントの平滑化トータル加速度データsTAiを計算することにより行われる。
sTAi=(TAi-1+TAi+TAi+1)/3 (式2)
【0037】
システムコントローラ40は、ステップS28で、平滑化トータル加速度データsTAiを第2FIFOメモリ64bに書き込む。
なお、データが0.05秒間隔で収集されない場合、トータル加速度データTAは平滑化されず、sTAi=TAiとされる。
【0038】
システムコントローラ40は、ステップS30で、トータル角速度データTGを計算する。i番目のデータポイントのトータル角速度データTGiは、式3のように、i番目のデータポイントの角速度データGyro_xi、Gyro_yi、Gyro_ziから求められる。
TGi=(Gyro_xi
2+Gyro_yi
2+Gyro_zi
2)1/2
(式3)
【0039】
システムコントローラ40は、ステップS30で、i番目のデータポイントのトータル角速度データTGiを第2FIFOメモリ64bに書き込む。
【0040】
システムコントローラ40は、ステップS42で、事故が発生したか否かを判定する。事故発生の判定は、種々のデータに基づいて行うことができる。例えば、L2期間においてx方向、y方向、z方向の加速度の合成ベクトルが2G以上であることが検出された場合、自動車が一定レベル以上の衝撃を受けたことになり、事故が発生したと判定することができる。なお、事故が発生すると、衝撃音が生じるので、L2期間において音のレベルが一定値以上であることが検出された場合も事故が発生したと判定しても良い。2つの判定を両方とも用いても良いし、いずれか一方のみを用いても良い。
【0041】
事故が発生したと判定した場合(ステップS42の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS43で、指定の通報先に事故が発生したことを通知する。通知の一例は、指定のサーバ、スマートフォン等に自動車のID、加速度、現在地を知らせるメールを送信することである。加速度に応じて衝撃の大きさが分かるので、通報先は、事故の程度を知ることができ、適切に対応することができる。
【0042】
システムコントローラ40は、ステップS44で、事故発生からL3期間が経過したか否かを判定する。
事故が発生していないと判定した場合(ステップS42の判定結果がノーの場合)と事故発生からL3期間が経過していないと判定した場合(ステップS44の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、再びステップS12で、データ収集タイミングか否かを判定する。
【0043】
このように、緊急通報プログラム48bの実行中で事故発生からL3期間が経過するまでは、システムコントローラ40は、センサデータを一定周期で収集し、センサデータを第1FIFOメモリ64aに書き込むとともに、これらのセンサデータを演算処理して搭乗者の状態を推定するためのいくつかの指標(トータル加速度データTAi、平滑化トータル加速度データsTAi、トータル角速度データTGi)を求め、求めた指標も第1FIFOメモリ64aと第2FIFOメモリ64bに書き込む。
【0044】
事故発生からL3期間が経過したと判定した場合(ステップS44の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、事故後の搭乗者の状態を推定し、推定結果に応じて緊急通報フラグ(以下、eCallフラグと称する)の値を決定する処理を開始する。実施形態では、eCallフラグの値は次の5つの状態を表す。
【0045】
eCallフラグの値が5の場合:自動車が走行している時に事故が発生し、運転者は怪我をしていて意識が無い状態を示す。同乗者が居るとすると、搭乗者全員が怪我をしていて意識が無い状態を示す。
eCallフラグの値が4の場合:自動車が停止している時に事故が発生し、運転者は怪我をしていて、意識が無い状態を示す。同乗者が居るとすると、搭乗者全員が怪我をしていて意識が無い状態を示す。
【0046】
eCallフラグの値が3の場合:自動車が走行している時に事故が発生し、運転者は怪我をしていて、意識がある状態を示す。同乗者が居るとすると、搭乗者の少なくとも一人は怪我をしていて意識がある状態を示す。
eCallフラグの値が2の場合:自動車が停止している時に事故が発生し、運転者は怪我をしていて意識がある状態を示す。同乗者が居るとすると、搭乗者の少なくとも一人は怪我をしていて意識がある状態を示す。
【0047】
eCallフラグの値が1の場合:それ以外(運転者は怪我をしていない。同乗者が居るとすると、搭乗者の誰も怪我をしていない)
【0048】
事故発生からL3期間が経過したと判定した場合、システムコントローラ40は、ステップS46で、L2期間における平滑化トータル加速度sTA(最大値又は平均値)についての判定を行う。ここでは、(sTA-9.8)m/s2が第1閾値Th1以上であったか否かを判定する。第1閾値Th1は、例えば40m/s2である。
【0049】
L2期間において(sTA-9.8)m/s2が第1閾値Th1以上であったと判定した場合(ステップS46の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS48で、L2期間におけるトータル角加速度TG(最大値又は平均値)が第2閾値Th2以上であったか否かを判定する。第2閾値Th2は、例えば150deg/sである。
【0050】
L2期間においてTGが第2閾値Th2以上であったと判定した場合(ステップS48の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS50で、L3期間の全てのデータポイントにおいてストップフラグの値が1であったか否かを判定する。
【0051】
L3期間の全てのデータポイントにおいてストップフラグの値が1であったという判定をしなかった場合(ステップS50の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS52で、eCallフラグの値を1とする。ステップS46の判定結果がノーの場合とステップS46の判定結果がノーの場合も、システムコントローラ40は、ステップS52で、eCallフラグの値を1とする。ステップS52の実行後、システムコントローラ40は、ステップS92でeCallフラグの値を第2FIFOメモリ64bに書き込む。
【0052】
L3期間の全てのデータポイントにおいてストップフラグの値が1であったと判定した場合(ステップS50の判定結果がイエスの場合)、eCallフラグの値を決定するために、さらに判定を行う。
システムコントローラ40は、ステップS54で、L3期間の各データポイントにおける平滑化トータル加速度データsTAと、該データポイントの近傍の11秒間のウィンドウ期間における平滑化トータル加速度データsTAの平均値との差を計算し、L3期間におけるこの差の最大値MAXを求める。システムコントローラ40は、ステップS56で、差の最大値MAXが第3閾値Th3以上であったか否かを判定する。第3閾値Th3は、例えば1m/s2である。
【0053】
差の最大値MAXが第3閾値Th3以上であったと判定した場合(ステップS56の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS58で、ドライバフラグの値を3とする。ドライバフラグの値が3であることは、運転者は怪我をしていないことを意味する。同乗者が居るとすると、ドライバフラグの値が3であることは、搭乗者の誰も怪我をしていないことを意味する。
【0054】
差の最大値MAXが第3閾値Th3以上ではなかったと判定した場合(ステップS56の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS60で、差の最大値MAXが第4閾値Th4以上であったか否かを判定する。第4閾値Th4は第3閾値Th3より小さく、例えば0.2m/s2である。
【0055】
差の最大値MAXが第4閾値Th4以上であったと判定した場合(ステップS60の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS62で、ドライバフラグの値を1とする。ドライバフラグの値が1であることは、運転者は怪我しており、意識があることを意味する。同乗者が居るとすると、ドライバフラグの値が1であることは、搭乗者の少なくとも一人は怪我をしており意識があることを意味する。
【0056】
差の最大値MAXが第4閾値Th4以上ではなかったと判定した場合(ステップS60の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS64で、ドライバフラグの値を2とする。ドライバフラグの値が2であることは、運転者は怪我しており、意識が無いことを意味する。同乗者が居るとすると、ドライバフラグの値が2であることは、搭乗者全員は怪我をしており、意識がないことを意味する。
【0057】
システムコントローラ40は、ステップS58、S62、S64の後、ステップS65で、ドライバフラグの値を第2FIFOメモリ64bに書き込む。
システムコントローラ40は、ステップS66で、ドライバフラグの値が3であるか否かを判定する。
【0058】
ドライバフラグの値が3であると判定した場合(ステップS66の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS68で、eCallフラグの値を1とする。
ドライバフラグの値が3でないと判定した場合(ステップS66の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS70で、L1期間の半分以上のデータポイント、例えば90%のデータポイントにおいてストップフラグの値が1であるか否かを判定する。
【0059】
L1期間の半分以上のデータポイントにおいてストップフラグの値が1であると判定した場合(ステップS70の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS72で、ドライバフラグの値が1であるか否かを判定する。
【0060】
ドライバフラグの値が1であると判定した場合(ステップS72の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS74で、eCallフラグの値を2とする。
ドライバフラグの値が1でないと判定した場合(ステップS72の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS76で、ドライバフラグの値が2であるか否かを判定する。
【0061】
ドライバフラグの値が2であると判定した場合(ステップS76の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS78で、eCallフラグの値を4とする。
ドライバフラグの値が2でないと判定した場合(ステップS76の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS80で、eCallフラグの値を1とする。
【0062】
L1期間の半分以上のデータポイントにおいてストップフラグの値が0であると判定した場合(ステップS70の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS82で、ドライバフラグの値が1であるか否かを判定する。
ドライバフラグの値が1であると判定した場合(ステップS82の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS84で、eCallフラグの値を3とする。
【0063】
ドライバフラグの値が1でないと判定した場合(ステップS82の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS86で、ドライバフラグの値が2であるか否かを判定する。
ドライバフラグの値が2であると判定した場合(ステップS86の判定結果がイエスの場合)、システムコントローラ40は、ステップS88で、eCallフラグの値を5とする。
【0064】
ドライバフラグの値が2でないと判定した場合(ステップS86の判定結果がノーの場合)、システムコントローラ40は、ステップS90で、eCallフラグの値を1とする。
ステップS68、S74、S78、S80、S84、S88、S90の後、ステップS92で、eCallフラグの値を第2FIFOメモリ64bに書き込む。システムコントローラ40は、ステップS94で、eCallフラグの値を指定の通報先に通知する。通知の一例は、指定のサーバ、スマートフォン等に自動車のID、現在地、eCallフラグの値を知らせるメールを送信することである。通報先は、eCallフラグの値に基づき、搭乗者の状態を判別することができ、適切に対応することができる。例えば、通報先は、eCallフラグの値が5又は4の場合、救急車の発動を依頼し、eCallフラグの値が3又は2の場合、搭乗者に対して電話等により状況の問い合わせを行っても良い。eCallフラグの値が1の場合、通報先は何もしないこともある。
【0065】
ステップS52、S68、S74、S78、S80、S84、S88、S90の判定は、自動車事故が発生した後に搭乗者が取る状況をシミュレーションした結果に基づく。例えば、搭乗者の少なくとも一人の意識がある場合、シートベルトを外して外に出る、あるいは携帯電話を使って自分で通報することが考えられる。反対に、同乗者全員の意識が無い場合、同乗者は静止していることが考えらえる。実施形態は、事故後の搭乗者の状態を平滑化トータル加速度データsTAやトータル角速度データTGに基づいて判別する。
【0066】
以上説明したように、実施形態によれば、システムコントローラ40は、自動車が一定レベル以上の衝撃を受けたことをドライブレコーダが備えるセンサ、例えば加速度センサの出力に基づいて検知することにより、事故の発生を検知する。システムコントローラ40は、自動車が走行しているか停止しているかをドライブレコーダが備えるセンサ、例えばGPSセンサの出力に基づいて判断する。そのため、自動車が走行している時に事故が発生したのか、自動車が停止している時に事故が発生したのかを判別することができる。システムコントローラ40は、事故が発生してから一定期間、少なくとも事故の発生を検知するのに使ったセンサ、すなわち加速度センサの出力をさらに収集する。実施形態では、システムコントローラ40は、この一定期間、角速度センサの出力もさらに収集する。そして、システムコントローラ40は、収集したデータを演算した結果に基づいて、搭乗者が怪我をしているのか否か、又は意識があるのか否かを判別することができる。
【0067】
自動車に後付けされるドライブレコーダのセンサを使用して事故の発生が検知され、同じセンサを使用して搭乗者の事故後の状態が判別される。このように、自動車のセンサを使用しないので、自動車事故が発生し、自動車のセンサが使用不可になっても、搭乗者の状態を判定することができる。また、センサを備えない自動車においても、実施形態のドライブレコーダを後付けすることにより、事故の検知、搭乗者の状態の判別を行うことができる。
【0068】
事故発生後の搭乗者の状態の判定(eCallフラグの値の決定)にGPSセンサ72のデータを利用しても良い。自動車が走行中か停止中かを速度データ又は角速度に基づいて判定したが、ドライブレコーダの撮影画像又は録音音声に基づいて判定しても良い。この場合、搭乗者の事故発生後の状態の判定にドライブレコーダの撮影画像又は録音音声を利用しても良い。
【0069】
実施形態は、自動車に後付けされるドライブレコーダに組み込まれるものを説明したが、他の装置に組み込まれる実施形態も可能である。例えば、カメラ、通信デバイス、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等を備えるスマートフォンを運転席の前方に配置し、ドライブレコーダ(実施形態の運転状況記録プログラム48aに相当)のアプリケーションプログラムをインストールすることがある。この場合、スマートフォンに実施形態の緊急通報プログラム48bをインストールすると、スマートフォンに上述したドライブレコーダと同様な動作をさせることができる。スマートフォンの回路図は、電源をシガーライターソケット32から取らない以外は、
図3と同じである。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0071】
40…システムコントローラ、48b…緊急通報プログラム、64a…第1FIFOメモリ、64b…第2FIFOメモリ、72…GPSセンサ、76…加速度センサ、78…ジャイロセンサ。