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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】速度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
G01P3/36 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019095485
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020190458
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏知
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
(72)【発明者】
【氏名】吉越 洋志
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207379(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171263(WO,A1)
【文献】西独国特許出願公開第3643470(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00- 3/80
G01B11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の速度計測方向を含んで延伸するラインレーザを移動面に照射するレーザ出力部と、
前記ラインレーザの像と前記移動面に選択される特徴領域とを含んでいる2つの画像を時間間隔を有して撮影する撮影部と、
前記レーザ出力部と前記撮影部との相対位置と、前記画像に含まれるラインレーザの像との関係に基づいて前記撮影部と前記ラインレーザの照射された前記移動面との間の対向距離を算出する距離算出部と、
前記2つの画像における前記特徴領域の画像上での移動距離を前記移動面の実距離に変換する変換係数を、前記2つの画像の特徴領域に対応する2つの前記対向距離に基づいて取得する係数取得部と、
前記変換係数と前記移動距離と前記時間間隔とに基づいて前記移動体の速度を計測する速度算出部とを備える
速度計測装置。
【請求項2】
前記距離算出部は、前記ラインレーザの像の各位置で算出された対向距離の一部が不適切な値であるとき、又は常に、前記ラインレーザの像の各位置と前記ラインレーザの像の各位置で算出した対向距離とに基づく近似直線を取得し、当該近似直線に基づいて前記特徴領域に対応する対向距離を算出する
請求項1に記載の速度計測装置。
【請求項3】
前記ラインレーザは、前記レーザ出力部と前記ラインレーザの像との間に形成される経路面が前記速度計測方向に対して平行である
請求項1又は2に記載の速度計測装置。
【請求項4】
前記経路面が前記撮影部の光軸の方向に傾いている
請求項3に記載の速度計測装置。
【請求項5】
前記レーザ出力部は、前記ラインレーザを第1ラインレーザとするとき、前記移動体の前記速度計測方向を含んで延伸する第2ラインレーザを前記移動面に照射し、
前記距離算出部はさらに、前記撮影部と前記第2ラインレーザの照射された前記移動面との間の対向距離を算出する
請求項1~4のいずれか一項に記載の速度計測装置。
【請求項6】
前記距離算出部はさらに、前記第2ラインレーザの像の各位置の一部で算出された対向距離が不適切な値であるとき、又は常に、前記第2ラインレーザの像の各位置と前記第2ラインレーザの像の各位置で算出した対向距離とに基づく近似直線を取得し、当該近似直線に基づいて前記第2ラインレーザの像について前記特徴領域に対応する対向距離を算出する
請求項5に記載の速度計測装置。
【請求項7】
前記画像は、前記特徴領域の撮影に使用される第1領域と、前記第1領域に隣接して前記ラインレーザの像の撮影に使用される1又は複数の第2領域とを有する
請求項1~6のいずれか一項に記載の速度計測装置。
【請求項8】
前記撮影部は、前記第1領域の撮影に利用される第1部分と、前記第2領域の撮影に利用される1又は複数の第2部分とを有している光学部品を備え、
前記第2部分にのみ、減光フィルタ、あるいは、前記ラインレーザの波長の光を選択的に透過するフィルタを有する
請求項7に記載の速度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の速度を計測する速度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には様々な性能の評価が求められている。そうした評価のひとつに排ガス計測がある。排ガス計測は、シャシダイナモメータを利用した模擬走行により求めることもできるが、模擬走行と実路走行とでは計測結果に乖離が発生することもあり、実路走行が重要視されてきている。
【0003】
自動車の実路走行による性能評価において、自動車の速度を低速度域から高速度域まで計測することが求められる。例えば、自動二輪車の速度を計測する技術の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の速度計測装置は、路面を撮影するカメラによって撮影された画像内の特徴点が単位時間当たりに移動した距離から車速を算出する車速算出手段を備える。速度計測装置は、自動二輪車の前後方向の基準距離を持つように形成された基準距離用マークを、カメラの光軸と平行に路面に対して照射する基準距離用マーク照射手段と、基準距離用マークの撮影画像中における前後方向の長さである画像基準距離を検出する画像基準距離検出手段とを有している。車速算出手段は、画像基準距離と前後方向の基準距離とを用いて移動距離から車速を算出する。速度計測装置は、撮影画像中に実距離の指標となるマークを投影するので、車高が変化した場合であっても、精度よく車速を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-149209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の装置等では、基準距離用マークがひび割れやポットホールといった路面の損傷箇所に照射されると、画像における変位量を実距離に変換する変換係数が正しく算出されないおそれがある。そして、正確ではない実距離を基に速度が計測されると、正しい車速を計測することができない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動面の表面状態によらず、カメラによって撮影された画像に基づく速度計測が可能な速度計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する速度計測装置は、移動体の速度計測方向を含んで延伸するラインレーザを移動面に照射するレーザ出力部と、前記ラインレーザの像と前記移動面に選択される特徴領域とを含んでいる2つの画像を時間間隔を有して撮影する撮影部と、前記レーザ出力部と前記撮影部との相対位置と、前記画像に含まれるラインレーザの像との関係に基づいて前記撮影部と前記ラインレーザの照射された前記移動面との間の対向距離を算出する距離算出部と、前記2つの画像における前記特徴領域の画像上での移動距離を前記移動面の実距離に変換する変換係数を、前記2つの画像の特徴領域に対応する2つの前記対向距離に基づいて取得する係数取得部と、前記変換係数と前記移動距離と前記時間間隔とに基づいて前記移動体の速度を計測する速度算出部とを備える。
【0009】
このような構成によれば、時間間隔を有して撮影された2つの画像に基づいて移動体の速度を計測することができる。このとき、移動面までの対向距離を対応するラインレーザの像から算出することができるため、移動面の任意の位置に選択された特徴領域の対向距離が、対応するラインレーザの像から近似的に算出される。これにより、移動面の表面状態によらず、カメラによって撮影された画像に基づいて速度計測が可能になる。
【0010】
また、ラインレーザの像の長さ方向の各対向距離を算出可能であるため、適切な対向距離を採用することによって、任意の位置にある特徴領域に適切な変換係数が算出されて、移動距離に基づいて精度の高い速度計測を行うことができる。
【0011】
好ましい構成として、前記距離算出部は、前記ラインレーザの像の各位置で算出された対向距離の一部が不適切な値であるとき、又は常に、前記ラインレーザの像の各位置で算出した対向距離を他の位置で算出された対向距離に基づいて補正する。
【0012】
このような構成によれば、ラインレーザの像から算出された対向距離が適切な値に補正される。例えば、ひび割れやポットホール等で対向面に特異な凹凸があるためにラインレーザの像の一部について速度計測に不適切な対向距離が算出されたとき、この不適切な対向距離を適切な対向距離に補正することが可能になる。
【0013】
好ましい構成として、前記ラインレーザは、前記レーザ出力部と前記ラインレーザの像との間に形成される経路面が前記速度計測方向に対して平行である。
この構成のように、速度計測方向とラインレーザの延伸方向とが平行であれば、レーザの像により干渉されることのない特徴領域の移動を探索するための範囲を、最大で画像上の一端から他端までの範囲で、最も長く確保することができる。これにより、特徴領域の画像上での移動距離がより大きな値まで得られるので、速度計測範囲を広げることができる。
【0014】
また、レーザの像により干渉される領域が予め設定可能になったり、特定が容易になったりする。特徴領域とラインレーザの像とが分離されれば、特徴領域とラインレーザの像とが重なったときに要する煩雑な処理を不要とすることができる。
【0015】
好ましい構成として、前記経路面が前記撮影部の光軸の方向に傾いている。
このような構成によれば、画像においてラインレーザの像の位置の変化を大きくすることができる。つまり、対向距離の計測感度の調整自由度が高められる。例えば、対向距離(ワーキングディスタンス)を長くなるように設置しなければならない移動体の計測において、対向距離の計測感度を改善することができる。
【0016】
好ましい構成として、前記レーザ出力部は、前記ラインレーザを第1ラインレーザとするとき、前記移動体の前記速度計測方向を含んで延伸する第2ラインレーザを前記移動面に照射し、距離算出部はさらに、前記撮影部と前記第2ラインレーザの照射された前記移動面との間の対向距離を算出する。
【0017】
このような構成によれば、撮影部から第1ラインレーザの像までの対向距離と、撮影部から第2ラインレーザの像までの対向距離との2つの対向距離に基づいて、撮影画像内から任意に選択された特徴領域までの対向距離をより高精度に算出することができる。また、第1ラインレーザと第2ラインレーザとの間にある特徴領域であれば、第1ラインレーザに基づく対向距離と第2ラインレーザに基づく対向距離とが相違していたとしても、対向距離を2点間の補間から得ることができる。これによって、特徴領域の対向距離を高精度に算出することができる。
【0018】
好ましい構成として、前記距離算出部はさらに、前記第2ラインレーザの像の各位置の一部で算出された対向距離が不適切な値であるとき、又は常に、前記第2ラインレーザの像の各位置で算出した対向距離を他の位置で算出された対向距離に基づいて補正する。
【0019】
このような構成によれば、第2ラインレーザの像から算出された対向距離が適切な値に補正される。例えば、ひび割れやポットホール等で対向面に特異な凹凸があるために第2ラインレーザの像の一部について速度計測に不適切な対向距離が算出されたとき、この不適切な対向距離を適切な対向距離に補正することが可能になる。
【0020】
好ましい構成として、前記画像は、前記特徴領域の撮影に使用される第1領域と、前記第1領域に隣接して前記ラインレーザの像の撮影に使用される1又は複数の第2領域とを有する。
【0021】
このような構成によれば、特徴領域が検出される領域と、ラインレーザの像の検出される領域とが画像において別々の領域に区画されるため、特徴領域の検出精度とラインレーザの像の検出精度とがそれぞれ高められるとともに、それぞれの探索時間を抑制することができる。また、特徴領域とラインレーザの像とが重ならないため、それぞれの検出が容易になる。
【0022】
好ましい構成として、前記撮影部は、前記第1領域の撮影に利用される第1部分と、前記第2領域の撮影に利用される1又は複数の第2部分とを有している光学部品を備え、前記第1部分は、前記移動面の前記特徴領域の撮影に適した光学特性を有し、前記第2部分は、前記ラインレーザの像の撮影に適した光学特性を有している。
【0023】
このような構成によれば、特徴領域を第1部分によって好適に検出することができるとともに、ラインレーザの像を第2部分によって好適に検出することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、移動面の表面状態によらず、カメラによって撮影された画像に基づいて速度計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】速度計測装置の第1実施形態を示すブロック図。
図2】同実施形態の車両に配置された速度計測装置を示す側面図。
図3】同実施形態の車両に配置された速度計測装置を示す上面図。
図4】同実施形態で相違する撮影タイミングで撮影された撮影画像を示す図であって、(a)は先の撮影タイミングの撮影画像を示す図、(b)は後の撮影タイミングの撮影画像を示す図。
図5】同実施形態の撮影範囲とレーザ光の像とを示す図であって、(a)は撮影範囲を車両から進行方向に見たときの図、(b)は車高が低いときの撮影範囲の上面図、(c)は車高が高いときの撮影範囲の上面図。
図6】同実施形態で車両が前傾している図であって、(a)は前傾車両を示す側面図、(b)は撮影画像の一例を示す図。
図7】同実施形態で路面に凹凸があるときのレーザ光の像を示す模式図。
図8】同実施形態で車速測定の事前準備のフローチャート。
図9】同実施形態で車速測定のフローチャート。
図10】速度計測装置の第2実施形態を示す車両の上面図。
図11】同実施形態の撮影画像を示す図。
図12】同実施形態の車両が前傾及び左傾したときの図であって、(a)は車両の側面図及び正面図、(b)は撮影画像を含む模式図。
図13】同実施形態で特徴領域を検出する区画、及びラインレーザの像を検出する区画を示す図。
図14】速度計測装置の光学部品の一例を示す正面図であって、(a)はラインレーザ用のフィルタが1箇所のときの図、(b)はラインレーザ用のフィルタが2箇所のときの図。
図15】速度計測装置のその他の実施形態で複数の特徴領域をマッチングするフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
図1図9を参照して、速度計測装置の第1実施形態について説明する。速度計測装置は、移動体に用いられる速度計測装置である。移動体は、例えば自動車等の車両10である。図3に示すように、車両10の前後方向Xにおいて、直進時の順方向が車両前方、直進時の逆方向が車両後方であり、車両10の幅方向が幅方向Yである。また、車両10は、進行方向の順方向に車両前部を有し、進行方向の逆方向に車両後部を有し、前方を向いて右側が車両右部、左側が車両左部である。
【0027】
図1に示すように、車両10は、当該車両10の速度を計測する速度計測装置1を備えている。車両10の速度(以下、車速とも記す)は、車両10が停止又は走行している移動面としての路面100(図2参照)に対する車両10の相対速度である。速度計測装置1は、路面100(図2参照)と車両10の車輪との間のスリップ等の影響のない速度を測定する。
【0028】
速度計測装置1は、画像取得部21及び車載制御装置26を備える。車載制御装置26は、信号処理部30、記憶部34、及び出力部40を備える。
画像取得部21は、カメラ22及びレーザ出力部24を備えている。カメラ22は、車両10が停止又は走行している路面100を撮影して路面100の画像を得る。カメラ22は、例えばCCDカメラや、CMOSカメラ等である。カメラ22は、路面100を撮影するときのパラメータ22Gを記憶する記憶部を備える。パラメータ22Gには、レンズのピント、絞り(レンズ絞り値)、シャッター速度、及び、アナログゲイン(感度)の少なくとも1つのパラメータと、その設定値とが含まれている。カメラ22は、所定の時間間隔で路面を撮影する。
【0029】
レーザ出力部24は、路面100に対してレーザ光LBを照射する。レーザ出力部24は、パターンレーザの一種で、例えばレーザモジュールに回折光学素子(DOE:ディフラクティブオプティクス)レンズを取り付け、レーザ光LBを扇状に照射することで、路面100に前後方向Xに延びる直線状のラインレーザの像を描く。レーザ出力部24は、パラメータ24Gを記憶する記憶部を備える。パラメータ24Gには、路面100へのレーザ光LBの照射に関するパラメータが含まれている。
【0030】
図2及び図3に示すように、画像取得部21及び車載制御装置26は、1つのケースに一体収容されて、又は複数のケースに分散収容されて車両前部に取り付けられている。
カメラ22及びレーザ出力部24は、車両前部において車両10の幅方向Yに隣接配置されている。カメラ22及びレーザ出力部24は、路面100からの高さとして対向距離Hを有している。
【0031】
カメラ22は、車両前方の路面100に撮影範囲Vaを有している。詳述すると、カメラ22は、路面100を垂直方向から撮影可能なように車両前部に設けられ、車両10から略垂直方向下方となる路面100の撮影範囲Vaを撮影する。なお、カメラ22と路面100との相対関係は、車両10の姿勢や振動、路面100の傾きに応じて変化する。
【0032】
レーザ出力部24は、車両前方の撮影範囲Va内にレーザ光LBの像が含まれるようにレーザ光LBを照射する。レーザ光LBは、車両10の前部から略垂直方向下方となる路面100にレーザ光LBの像を投影する。レーザ光LBは、車両10の速度計測方向としての前後方向Xに延びる直線状のラインレーザである。つまり、ラインレーザは、車両10の速度計測方向を含んで延伸している。
【0033】
カメラ22及びレーザ出力部24は、車両10の幅方向Yに所定の配置間隔dを有している。また、カメラ22及びレーザ出力部24は、カメラ22の光軸Cと、レーザ光LBが形成する経路面LPとが互いに平行になるように設けられている。経路面LPは、レーザ出力部24と、レーザ光LBの像とを結んで形成される略三角形の面であるとともに、前後方向Xに対して平行でもある。
【0034】
図4に示すように、カメラ22は、レーザ光LBの像と、路面100の任意の位置に選択される特徴領域TPとを含んでいる2つの撮影画像P11,P12を、所定の時間間隔Δtを有して撮影できる。カメラ22は、各撮影画像P11,P12を信号処理部30(図1参照)に送信する。なお、図において上側が車両10の進行方向Dであり、ここでは、進行方向Dは前後方向Xに一致している。
【0035】
図1に示すように、車載制御装置26は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置からなる記憶部34を有するコンピュータを含み構成されている。車載制御装置26は、ROMやその他の記憶装置に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することで、信号処理部30及び出力部40のそれぞれに必要とされる各演算処理等を実行する。
【0036】
信号処理部30は、車両状態として車速を算出するが、併せて走行位置や加速度等を算出してもよい。信号処理部30は、カメラ22から取得した路面100の2つの撮影画像P11,P12に基づいて車速を算出する画像車速算出部32を備える。路面100の2つの撮影画像P11,P12に基づいて算出される車速が画像車速である。画像車速算出部32は、距離算出部、係数取得部、及び速度算出部を構成する。
【0037】
画像車速算出部32は、対向距離H(図2参照)を算出する。画像車速算出部32は、レーザ出力部24とカメラ22との相対位置と、撮影された画像に含まれるレーザ光LBの像との関係から三角測量の原理に基づいて、カメラ22とレーザ光LBの像の照射された路面100との間の対向距離H(図2参照)を逐次算出する。
【0038】
また、画像車速算出部32は、撮影画像上で移動した移動画素数Δp(ピクセル長さ)を、車両10が実際に移動した移動距離ΔL(実際の長さ)に変換する係数である変換係数sを取得する。例えば、変換係数sの単位は[mm/ピクセル]である。
【0039】
また、画像車速算出部32は、車速を算出する。画像車速算出部32は、撮影画像上で移動した移動画素数Δpと変換係数sとの積から移動距離ΔLを算出し、時間間隔Δtの間に車両10が実際に移動した移動距離ΔLから車速を算出する。
【0040】
図4(a),(b)を参照して、画像車速算出部32は、例えばアスファルト舗装された路面100を、カメラ22で撮影して、2枚の撮影画像P11,P12を取得する。撮影画像P11は、所定の撮影タイミングt1で撮影され、撮影画像P12は、撮影画像P11が撮影された所定の撮影タイミングt1から時間間隔Δt経過した後の撮影タイミングt2で撮影される。
【0041】
画像車速算出部32は、取得した2枚の撮影画像P11,P12に含まれる同一の特徴領域TPを探索して、同一の特徴領域TPが時間間隔Δtの間に移動した移動画素数Δp[ピクセル]を取得し、移動画素数Δpに変換係数sを乗じて移動距離ΔLに変換した後、車速を算出する。すなわち、撮影タイミングが時間間隔Δtだけ相違する2枚の撮影画像P11,P12において、同一の特徴領域TPが移動した移動距離ΔLと、時間間隔Δtとの商に基づいて車速が計測される。車速の単位は[km/h]等である。
【0042】
画像車速算出部32は、車速測定の都度、探索に適した領域を特徴領域TPとして選定する。特徴領域TPは、機械的に選定されるため、2つの撮影画像P11,P12上において特定される位置が、前後方向X及び幅方向Yにおいて未知である。
【0043】
特徴領域TPの探索は、領域ベースマッチングに分類されるテンプレートマッチングにより行う。テンプレートマッチングでは、撮影画像P11に選択した特徴領域TPをテンプレート領域とし、このテンプレート領域に最も類似する箇所を別の撮影画像P12から探索する。領域ベースマッチングでは、対象画像からテンプレート領域と同じサイズの領域からなる注目領域を抽出する作業を、例えばラスタスキャンにより繰り返す。テンプレート領域と注目領域との間の類似の度合い(類似度)を「SSD」、「SAD」、「NCC」、「ZNCC」等の計算方法で計算し、類似度の高い注目領域をテンプレート領域に対応する画像として得る。これにより、2つの撮影画像P11,P12の間で同じ特徴領域TPの移動先を特定することができる。
【0044】
特徴領域TPは、マッチングに適した輝度変化を含む広さを有していればよく、例えば一辺が50[ピクセル]以上、かつ、200[ピクセル]以下の正方形である。しかし、特徴領域TPは、マッチングの精度が得られるのであれば、一辺が50[ピクセル]未満であってもよいし、演算負荷が抑えられるのならば、一辺が200[ピクセル]よりも広くてもよい。また、特徴領域TPは、狭い方が、演算負荷が抑えられるとともに、画像の一端から他端の間に含まれている時間を長くできるため、測定可能な速度上限が高くなる。
【0045】
図5(a)に示すように、走行中の車両10は、上下方向に振動するため、路面100と、カメラ22及びレーザ出力部24との間の対向距離Hが逐次変化する。対向距離Hは、車高が高くなると長くなり、車高が低くなると短くなる。例えば、車高は、車体重量が軽くなったり、跳ね上がったりする場合に高くなり、逆に、車体重量が重くなったり、沈み込んだりする場合に低くなる。
【0046】
そこで、図1に示す画像車速算出部32は、三角測量の原理に基づいて、対向距離Hを逐次算出する。画像車速算出部32は、撮影画像P11で特徴領域TPを含む撮影範囲Vaについての対向距離Hと、撮影画像P12(図4参照)で特徴領域TPを含む撮影範囲Vaについての対向距離Hとを算出する。画像車速算出部32は、カメラ22に対するレーザ出力部24の相対的な位置Lと、カメラ22の光軸Cとレーザ光LBの像との間の角度θnとに基づいて対向距離Hを算出する。
【0047】
[対向距離Hが一定であるとき]
図5(a)~(c)を参照して、2つの撮影画像P11,P12の対向距離Hが同じであるときの車速測定について説明する。対向距離Hは、2つの撮影画像P11,P12でカメラ22の光軸Cとレーザ光LBの像との間の角度θnが同じであれば、同じ距離である。ここでは、一方の撮影画像P11について対向距離Hを求める場合について説明し、他方の撮影画像P12について対向距離Hを求める説明は割愛する。また、レーザ光LBの経路面LPとカメラ22の光軸Cとが平行であるとする。
【0048】
図5(a)に示すように、カメラ22は、レンズ22Lを介して路面100上を2次元矩形状に区画する撮影範囲Vaを有している。カメラ22は、撮影範囲Vaの中心が光軸Cである。レーザ光LBの像が撮影範囲Vaに含まれるとき、光軸Cに対するレーザ光LBの像のなす角θ1,θ2は、対向距離Hが短くなることに応じて絶対値が大きくなる。よって、なす角θ1,θ2と対向距離Hとは関係を有する。また、なす角θ1,θ2は、画像左端とレーザ光LBの像との間の画像距離n[ピクセル]に関係を有する。ここで、中心線LCは、カメラ22の光軸Cを通り、撮影画像P11,P12を前後方向Xに延在する線である。なお、1ピクセルは、1画素に対応する。また、以下、画像距離の単位は省略する。
【0049】
図5(b)は、対向距離Hが小さいときの例であり、画像左端とレーザ光LBの像の位置P2との間の画像距離n2に対応して、なす角θ2、対向距離H2が得られる。
図5(c)は、対向距離Hが大きいときの例であり、画像左端とレーザ光LBの像の位置P1との間の画像距離n1に対応して、なす角θ1、対向距離H1が得られる。
【0050】
次に、なす角θ1に対応する対向距離H1や、なす角θ2に対応する対向距離H2に対応する実際の距離を算出する。カメラ22は、レンズ22Lから広がる画角ηを有することから撮影範囲Vaが狭くなると1画素当たりの実際の距離が短くなり、逆に、撮影範囲Vaが広くなると1画素当たりの実際の距離が長くなる。
【0051】
図5(b)に示すように、対向距離H2が短くなると、撮影範囲Vaが狭くなるため1画素に対応する実際の距離が短くなり、また、画像距離n2が短くなる。
図5(c)に示すように、対向距離H1が長くなると、撮影範囲Vaが広くなるため1画素に対応する実際の距離が長くなり、また、画像距離n1が長くなる。
【0052】
撮影画像P11,P12における光軸Cに対するレーザ光LBの像のなす角θ1,θ2によって、カメラ22から路面100までの対向距離Hを、式(1)~(3)に基づいて算出する。カメラ22の光軸Cの始点を原点Oとしたとき、レーザ出力部24の軸の位置L[Lx,Ly,Lz]、レーザ光LBの像の位置P[Px,Py,Pz]とする。Lx,Pxは前後方向Xの成分、Ly,Pyは、幅方向Yの成分、Lz,Pzは高さ方向Zの成分である。なお、「Lz=0」としている。
【0053】
予め定まっている値は、幅方向の全画素数「N」、光軸Cに対する画角「η」である。また、撮影画像P11から得られる値が、幅方向Yの画像左端からレーザ光LBの像の位置Pまでの画素数「n」である。
【0054】
まず、レーザ出力部24の幅方向Yの位置Lyと、レーザ光LBの像の幅方向Yの位置Pyとの関係が式(1)で示される。「φ」は高さ方向Zに対してレーザ光LBが幅方向Yに傾く角度である。なお、「φ=0」であるため「tanφ=0」であり、「Py=Ly」となる。
【0055】
Py=Ly+Pz・tanφ…(1)
画像左端からレーザ光LBの像の位置Pまでの画素数が「n」であるとき、光軸Cに対して幅方向Yに広がる角度θnが式(2)から求められる。
【0056】
θn=arctan[((2n/N)-1)・tanη]…(2)
そして、高さ方向Zの位置Pzが式(3)から求められる。位置Pzが対向距離Hに対応する。
【0057】
Pz=Ly/(((2n/N)-1)・tanη-tanφ)…(3)
このとき、「φ=0」であるため「tanφ=0」である。
以上より、変換係数sは式(4)から求められる。
【0058】
s=2・Pz・tanη/N…(4)
そして、前後方向Xに対して車両10が実際に移動した移動距離ΔLは、撮影画像P11上での移動画素数Δp[ピクセル]と、式(4)に示される変換係数sとの積によって求められる(式(5)参照)。
【0059】
ΔL=Δp×s…(5)
ところで、式(5)に基づいて計算される変換係数sは、幅方向Yに対する係数である一方、実際の移動距離ΔLは前後方向Xの距離であるが、通常、カメラ22の1画素の大きさ(撮影範囲)は前後方向X及び幅方向Yに等方的である。よって、幅方向Yに対する変換係数sは、前後方向Xにも適用できるから、前後方向Xに対する移動距離ΔLの算出に利用できる。もし、カメラ22の1画素の大きさが、前後方向Xと幅方向Yとで異方的であるならば、1画素の大きさの前後方向Xと幅方向Yとの比に基づいて幅方向Yの変換係数sから前後方向Xの変換係数を算出すればよい。
【0060】
そして、車速Vは、実際の移動距離ΔLと時間間隔Δtとの関係式(6)で示される。また、撮影画像P11に前後方向Xと幅方向Yとの変位があるとき、移動距離ΔLは式(7)で示すことができる。移動距離ΔL[ΔLx,ΔLy]であり、「ΔLx」は前後方向Xの成分、「ΔLy」は幅方向Yの成分である。
【0061】
V=ΔL/Δt…(6)
ΔL=sqrt(ΔLx^2+ΔLy^2)…(7)
[対向距離Hが2つの撮影画像で相違するとき]
図6(a)に示すように、車両10は、走行中の加速や減速、前後方向への傾斜等により前後方向に傾くことがある。車両10が前後方向に傾くと、図6(b)に示すように、撮影範囲Vaの前後方向Xの位置毎に路面100までの対向距離Hが相違するとともに、前後方向Xの位置毎に変換係数sが相違する。なお、説明の便宜上、図6(b)の撮影画像P11には、撮影タイミングが時間間隔Δtだけ相違する2つの撮影画像P11,P12から得られる位置であって、時間間隔Δtの開始時の特徴領域TPの位置と、終了時の特徴領域TPの位置がそれぞれ合わせて示されている。
【0062】
つまり、車両10が前傾姿勢になると、撮影範囲Vaの撮影画像P11は、車両10に近い基端側に対して、車両10から離れた先端側の対向距離Hが相対的に短くなる。このとき、中心線LCは、撮影画像P11の幅方向Yの中心を前後方向Xに延在する。一方、レーザ光LBの像は、中心線LCに対して傾いた直線となる。具体的には、レーザ光LBの像は、中心線LCからの幅方向Yの位置が、基端側では中心線LCに近い位置、先端側では中心線LCから遠い位置となる。
【0063】
この場合であっても、カメラ22の光軸Cとレーザ光LBの像との間の角度θnから、前後方向Xの各位置P3,P4に対して対向距離H及び変換係数sを算出できる。角度θnは、画像左端とレーザ光LBの像との間の画像距離n3,n4に基づいて算出できる。例えば、短い画像距離n4である基端側では、長い対向距離Hと、大きい変換係数sとが得られる。逆に、長い画像距離n3である先端側では、短い対向距離Hと、小さい変換係数sとが得られる。
【0064】
つまり、車両10が前傾したとしても、特徴領域TPに対応する各位置P3,P4の対向距離Hから車速の測定に適した変換係数sを得て車速を測定する。
図6(b)を参照して、例えば、1枚目の撮影画像P11の特徴領域TPの対向距離Hは、特徴領域TPの幅方向Yに対応する角度θ13、換言すると、画像左端とレーザ光LBの像の位置P3との間の画像距離n3に基づいて得られる。2枚目の撮影画像P12(図6(b)では撮影画像P11上に重ねて記載)の特徴領域TPの対向距離Hは、特徴領域TPの幅方向Yに対応する角度θ14、換言すると、画像左端とレーザ光LBの像の位置P4との間の画像距離n4に基づいて得られる。そして、時間間隔Δtにおいて、2つの画像距離n3,n4の平均画像距離「(n3+n4)/2」に対応する平均対向距離Hvを速度計測に使用できる。なお、平均対向距離Hvを、画像距離n3から算出された対向距離Hと画像距離n4から算出された対向距離Hとの平均として得てもよいし、平均画像距離「(n3+n4)/2」から算出された対向距離Hでもよい。
【0065】
変換係数sは、平均対向距離Hvに対応して算出するとともに、2つの特徴領域TPの間の距離は、画像上の移動画素数Δpとして得る。そして、実際の移動距離ΔLは、移動画素数Δpと変換係数sとの積で求める。実際の速度は、「実際の移動距離ΔL/時間間隔Δt」で算出される。これにより、車両10が前傾していたとしても、速度計測装置1による速度計測が行われる。
【0066】
[路面に凹凸があるときの対向距離]
図7に示すように、レーザ光LBが照射される路面100には凹凸がある。例えば、ひび割れやポットホール等で対向面に特異な凹凸もある。レーザ光LBの像は、路面100の各位置L1~L7に対して凹凸に応じた適切な対向距離Hを算出する。
【0067】
このとき、レーザ光LBの像は、直線状のラインレーザであるから、対向距離Hに歪みが生じても、その歪みの影響を抑えた対向距離Hを得ることが可能である。例えば、路面100の凹凸によってレーザ光LBの像の一部が歪んでも、撮影されたレーザ光LBの形状をレーザ光LBの全体からもっともらしい直線に補正できる。よって、撮影されたレーザ光LBの像が歪んだ部分を含んでいても特徴領域TPまでの対向距離Hを高い精度で得られる。
【0068】
画像車速算出部32は、歪みの影響を抑える処理としては、計測された多数位置L1~L7の対向距離Hに対して、最小二乗近似やロバスト推定を適用してもっともらしい直線を算出する。ジグザグに並んだ各位置L1~L7が直線であると仮定して、最小二乗法を適用すればバラツキのあるデータからであっても、もっともらしい近似直線が得られる。このとき、大きく外れた異常計測値や、路面100の狭い範囲に深く形成された穴の底の値などを予め設定した閾値に対する比較から除外する事前処理を行ってもよい。
【0069】
又は、ロバスト推定を適用して、重み付き評価によって考慮すべきでない点を除外した最小二乗法から、より適切な近似直線を得てもよい。ロバスト推定では、誤差許容範囲と繰り返し回数を指定する。誤差許容範囲は、いま得られている近似直線に対する標準偏差の3倍、繰り返し回数は、3回等を指定することができる。誤差許容範囲を標準偏差の3倍とすれば、アスファルトの凹凸の3倍以上の深さの穴は無視されるようになる。なお、適切な近似直線が得られるのであれば、標準偏差は、3倍未満であってもよいし、3倍よりも大きくてもよい。また、歪みの影響を抑える処理としては、その他の平均処理、統計処理等であってもよい。
【0070】
つまり、ラインレーザを用いて対向距離Hを算出することで、レーザ光が1点や2点であるとき、極所的な凹凸部にレーザ光が当たり、評価すべき路面100とカメラ22との位置関係とは異なる対向距離Hを算出してしまうおそれが抑制される。なお、画像車速算出部32は、レーザ光LBの形状をレーザ光LBの全体からもっともらしい直線に補正する処理を、常に行うようにしてもよいし、レーザ光LBの像の各位置に算出された対向距離Hの一部が不適切な値であるときに行うようにしてもよい。
【0071】
[車速の測定手順]
図8及び図9を参照して、車載制御装置26で実行する車速の測定手順について説明する。車速の測定手順では、初めに、計測の準備が行われ、次に、車速の測定が行われる。
【0072】
図8の流れで、車載制御装置26は、計測の準備を行う。計測の準備では、探索領域の設定処理(図8のステップS10)、計測速度の設定処理(図8のステップS11)、探索数の選択処理(図8のステップS12)、及びフレームレート等のカメラ22のパラメータ22Gの設定処理(図8のステップS13)が実行される。
【0073】
探索領域の設定処理(図8のステップS10)では、特徴領域TPの大きさが設定される。特徴領域TPの大きさは、例えば、一辺が50[ピクセル]や100[ピクセル]の正方形として設定される。特徴領域TPの大きさは、路面100の撮影画像から取得した路面凹凸に基づくテクスチャサイズあるいは車両10の特性等を考慮して定めてもよい。
【0074】
計測速度の設定処理(図8のステップS11)では、計測する車速の上限値を設定する。
探索数の選択処理(図8のステップS12)では、2つの撮影画像で比較する特徴領域TPの数が、1以上の値から選択される。ここでは、探索数は「1」である。
【0075】
フレームレートの設定処理(図8のステップS13)では、測定する車速の上限値に応じてフレームレートが決定されるとともに、カメラ22のパラメータ22Gに設定される。このとき、シャッター速度やゲイン等がカメラ22のパラメータ22Gに設定されてもよい。
【0076】
図9に示すように、計測の準備が終了すると、画像車速算出部32は、車速の測定を開始する。車速の測定では、第1計測処理として、テンプレート領域選択処理(図9のステップS20)、マッチング処理(図9のステップS21)、車速算出処理(図9のステップS22)を行う。続いて、第2計測処理として、基準テンプレート領域選択処理(図9のステップS23)、探索領域設定処理(図9のステップS24)、マッチング処理(図9のステップS25)、移動画素数算出処理(図9のステップS26)を行う。また、第2計測処理として、姿勢算出処理(図9のステップS27)、車速算出処理(図9のステップS28)を実行し、その後、終了判定(図9のステップS29)を実行する。
【0077】
第1計測処理は、第2計測処理を高速処理、高精度処理できるようにするための準備処理である。よって、第1計測処理は、第2計測処理よりも、処理時間を要したり、検出精度を低くしたりしてもよい。
【0078】
まず、テンプレート領域選択処理(図9のステップS20)では、特徴領域TPの画像としてのテンプレート領域を撮影画像P11の中央に設定する。
マッチング処理(図9のステップS21)では、撮影画像P11を撮影してから時間間隔Δt経過後に撮影された撮影画像P12の全領域に対して特徴領域TPの画像を探索するテンプレートマッチングを行う。これにより、時間間隔Δtの間における車両10の変位が取得される。
【0079】
車速算出処理(図9のステップS22)では、撮影画像P11の特徴領域TPまでの対向距離Hと、撮影画像P12の特徴領域TPまでの対向距離Hと、2つの特徴領域TPの移動画素数に基づいて車速を算出する。
【0080】
こうして取得された車速に基づいて、第2計測処理における処理が適正化されるようにしている。第2計測処理を、リアルタイムに実行できるように処理が適正化されることが好ましい。
【0081】
続いて、基準テンプレート領域選択処理(図9のステップS23)では、第1計測処理の結果に基づいて、撮影画像P11に選択する特徴領域TPの位置と、撮影画像P12に特徴領域TPの画像を探索するマッチング領域とを定める。探索領域は、1フレーム間における速度の変動量、つまり取り得る加速度を考慮した特徴領域TPよりも大きなサイズを設定する。すなわち、特徴領域TPが時間間隔Δtの間に移動する移動画素数を予測し、特徴領域TPの位置とマッチング領域の位置とを、カメラ22の光軸Cを中心にして点対称となる位置になるように設定する。これにより、撮影画像P11と撮影画像P12とで同じ特徴領域TPの画像が含まれている可能性の高い位置が定められる。また、特徴領域TPの画像とマッチング領域とを、カメラ22の光軸Cに近い位置に配置することができるため、カメラ22の撮影する画像周辺に生じやすいレンズ歪み等の影響を低減できる。
【0082】
探索領域設定処理(図9のステップS24)では、前回の移動画素数と1フレーム間における速度の変動量と前回の探索の妥当性とに基づいて、今回の特徴領域TPを探索する領域を設定する。探索する領域を絞り込むことで、テンプレートマッチングを迅速に行える可能性が高まり、第2計測処理に要する時間を短くすることができる。
【0083】
マッチング処理(図9のステップS25)では、撮影画像P11を撮影してから時間間隔Δtの経過後に撮影された撮影画像P12の探索領域に対してテンプレートマッチングによる特徴領域TPの探索を行う。
【0084】
移動画素数算出処理(図9のステップS26)では、撮影画像P11の特徴領域TPと、撮影画像P12の特徴領域TPとの間の移動画素数Δp[ピクセル]を算出する。
姿勢算出処理(図9のステップS27)では、撮影画像P11,P12の多点に対する対向距離Hの測定結果からカメラ22に対する路面100の姿勢を算出する。例えば、ロバスト推定から姿勢を算出することができる。ここで、移動画素数Δpに対して時間間隔Δtの間の姿勢変化が与える影響を補正することで、移動画素数Δpの計測精度をより高めることもできる。
【0085】
車速算出処理(図9のステップS28)では、撮影画像P11の特徴領域TPが撮影画像P12の特徴領域TPまで移動したことに適した変換係数sを算出する。変換係数sは、例えば、特徴領域TPのそれぞれの中央に対して算出し、それらの平均値とする。そして、移動画素数Δp[ピクセル]と、変換係数s[mm/ピクセル]と、時間間隔Δt[s]とに基づいて現在の速度[km/h]を算出する。
【0086】
終了判定(図9のステップS29)では、車速の算出を終了するか否かを判定する。車速の算出を終了するか否かは、車両10がエンジン停止等で走行不可能な状態等であるか否か、あるいは試験者の計測指示状態等に基づいて判定される。
【0087】
車両10がエンジン停止等で走行不可能な状態等であるとき、車速の算出を終了すると判定し(図9のステップS29でYES)、車速の算出を終了する。
車両10がエンジン停止等で走行不可能な状態等ではないとき、車速の算出を終了しないと判定し(図9のステップS29でNO)、処理をステップS23に戻して、基準テンプレート領域選択処理以降の処理を再度実行する。
【0088】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1-1)時間間隔Δtを有して撮影された2つの撮影画像P11,P12に基づいて車両10の速度を計測することができる。このとき、路面100までの対向距離Hを対応するレーザ光LBの像から算出することができるため、路面100の任意の位置に選択された特徴領域TPの対向距離Hが、対応するレーザ光LBの像から近似的に算出される。これにより、路面100の表面状態によらず、カメラ22によって撮影された撮影画像P11,P12に基づいて速度計測が可能になる。
【0089】
また、レーザ光LBの像の長さ方向の各対向距離Hを算出可能であるため、適切な対向距離Hを採用することによって、任意の位置にある特徴領域TPに適切な変換係数sが算出されて、移動画素数Δpに基づいて精度の高い速度計測を行うことができる。
【0090】
(1-2)レーザ光LBの像から算出された対向距離Hが適切な値に補正される。例えば、ひび割れやポットホール等で対向面に特異な凹凸があるためにレーザ光LBの像の一部について速度計測に不適切な対向距離Hが算出されたとき、この不適切な対向距離Hを適切な対向距離Hに補正することが可能になる。
【0091】
(1-3)前後方向Xとレーザ光LBの延伸方向とが平行であるので、レーザ光LBの像により干渉されることのない特徴領域TPの移動を探索するための範囲を、最大で画像上の一端から他端までの範囲で、最も長く確保することができる。これにより、特徴領域TPの画像上での移動画素数Δpがより大きな値となるまで得られるので、速度計測範囲を広げることができる。
【0092】
また、レーザ光LBの像により干渉される領域が予め設定可能になったり、特定が容易であったりする。特徴領域TPとレーザ光LBの像とが分離されれば、特徴領域TPとレーザ光LBの像とが重なったときに要する煩雑な処理を不要とすることができる。
【0093】
(第2実施形態)
図10図13を参照して、速度計測装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の速度計測装置は、第1実施形態に設けられたレーザ出力部24に加えて、第2レーザ出力部25がカメラ22を挟んで対称となる位置に配置されている点が第1実施形態と相違する。第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を割愛する。なお、本実施形態では、レーザ出力部24は、第1レーザ出力部24と記載し、第1レーザ出力部24の出力するレーザ光を第1レーザ光LB1とする。なお、説明の便宜上、図11及び図12に示す、撮影画像P11には、撮影タイミングが時間間隔Δtだけ相違する2つの撮影画像P11,P12から得られる位置であって、時間間隔Δtの開始時と経過後との各特徴領域TPの位置をそれぞれ示している。
【0094】
図10に示すように、画像取得部21は、車両10の前部で幅方向Yに一列となるように、カメラ22と、カメラ22を挟んで対称位置に第1レーザ出力部24と第2レーザ出力部25とを備えている。つまり、第1レーザ出力部24と第2レーザ出力部25とは幅方向Yに直線状に所定の配置間隔2dで配置されているとともに、所定の配置間隔2dの中央にカメラ22が配置されている。
【0095】
第1レーザ出力部24は、その像が撮影範囲Va内に含まれるように第1レーザ光LB1を路面100に投影する。第2レーザ出力部25は、その像が撮影範囲Va内に含まれるように第2レーザ光LB2を路面100に投影する。第1レーザ光LB1の経路面と第2レーザ光LB2の経路面とは平行である。
【0096】
[2つのレーザ光の像が平行であるときの速度計測]
図11に示すように、各位置P51,P52,P61,P62の対向距離Hと変換係数sとが同一の値として算出される。また、前後方向Xの移動画素数Δpは、時間間隔Δtを有する2つの撮影画像P11に同一の特徴領域TPを探索して得る。実際の移動距離ΔLは、移動画素数Δpと変換係数sとに基づいて算出される。そして、実際の速度は、「実際の移動距離ΔL/時間間隔Δt」で算出される。
【0097】
[2つのレーザ光の像が非平行であるときの速度計測]
図12(a)に示すように、車両10は、走行中の加速や減速、操舵等により傾くと、撮影範囲Vaの撮影画像P11は変換係数sが前後方向X及び幅方向Yの位置毎に相違することになる。例えば、減速により車両10が前後方向Xに対して前傾姿勢となると、図12(b)に示す撮影画像P11は、車両10に近い基端側の対向距離Hに対して、車両10から離れた先端側の対向距離Hが相対的に短くなる。また、車両10が幅方向Yに対して左傾姿勢となると、撮影画像P11は、右側の第2レーザ光LB2の像の対向距離Hに対して、左側の第1レーザ光LB1の像の対向距離Hが相対的に短くなる。
【0098】
よって、各位置P51,P52,P61,P62の対向距離Hと変換係数sとがそれぞれ相違する値として算出される。また、2つの位置P51,P52に対して幅方向Yに一列に並ぶ特徴領域TPの対向距離Hと変換係数sとは、2つの位置P51,P52を結ぶ直線上にあることに基づいて算出される。同様に、2つの位置P61,P62に対して幅方向Yに一列に並ぶ特徴領域TPの対向距離Hと変換係数sとは、2つの位置P61,P62を結ぶ直線上にあることに基づいて算出される。また、各位置P51,P52,P61,P62に対応する各対向距離H及び各変換係数sから平均的な対向距離H及び平均的な変換係数sを算出することができる。
【0099】
第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とを路面100に対して照射した場合、それぞれの第1レーザ光LB1の像と第2レーザ光LB2の像とのもっともらしい直線を求めることもできる。また、最小二乗近似やロバスト推定を適用して第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2を含む、もっともらしい平面を求めることで適切な対向距離Hを算出することもできる。
【0100】
なお、画像車速算出部32は、第1レーザ光LB1上の各位置P51,P61の対向距離Hを、路面100の局所的な歪みの影響を抑える処理を適用した上で算出することができる。同様に、画像車速算出部32は、第2レーザ光LB2上の各位置P52,P62の対向距離Hを、路面100の局所的な歪みの影響を抑える処理を適用した上で算出することができる。
【0101】
また、前後方向Xの移動画素数Δpは、時間間隔Δtを有する2つの撮影画像P11に同一の特徴領域TPを探索して得る。実際の移動距離ΔLは、「移動画素数Δp×平均的な変換係数s」で算出され、実際の速度は、「実際の移動距離ΔL/時間間隔Δt」で算出される。
【0102】
図13に示すように、画像車速算出部32は、撮影画像P11の幅方向Y中央に第1領域AR1を設定し、第1領域AR1の幅方向Y右側と左側とにそれぞれ第2領域AR2を設定する。第1領域AR1は、画像車速算出部32で特徴領域TPを探索する領域である。第2領域AR2は、第2レーザ光LB2の像を検出する領域である。つまり、特徴領域TPが検出される第1領域AR1と、レーザ光LBの像の検出される第2領域AR2とが撮影画像において別々の領域に区画されるため、画像車速算出部32は、特徴領域TPの探索を第1領域AR1だけで行い探索時間を抑制する。また、画像車速算出部32は、第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像の検出を第2領域AR2だけで行い検出時間を抑制する。さらに、特徴領域TPと第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像とが重なるおそれが無いため、特徴領域TPの検出精度やラインレーザの像の検出精度がそれぞれ高められる。また、特徴領域TPと第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像とが重ならないため、それぞれの検出が容易になる。
【0103】
以上説明したように、第2実施形態によれば、上記の(1-1)~(1-3)の効果に加えて、以下に記載する効果が得られる。
(2-1)カメラ22から第1レーザ光LB1の像までの対向距離Hと、カメラ22から第2レーザ光LB2の像までの対向距離Hとの2つの対向距離Hに基づいて、撮影画像内から任意に選択された特徴領域TPまでの対向距離Hがより高精度に算出することができる。また、第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2との間にある特徴領域TPであれば、第1レーザ光LB1に基づく対向距離Hと第2レーザ光LB2に基づく対向距離Hとが相違していたとしても、対向距離Hを2点間の補間から得ることができる。これによって、特徴領域TPの対向距離Hを高精度に算出することができる。
【0104】
(2-2)第1レーザ光LB1の像から算出された対向距離Hが適切な値に補正されることと同様に、第2レーザ光LB2の像から算出された対向距離Hが適切な値に補正される。例えば、ひび割れやポットホール等で対向面に特異な凹凸があるために第2レーザ光LB2の像の一部について速度計測に不適切な対向距離Hが算出されたとき、この不適切な対向距離Hを適切な対向距離Hに補正することが可能になる。
【0105】
(2-3)特徴領域TPが検出される第1領域AR1と、第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像が検出される第2領域AR2とが画像において別々の領域に区画される。このため、特徴領域TPの検出精度と第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像の検出精度とがそれぞれ高められるとともに、それぞれの探索時間を抑制することができる。また、特徴領域TPと第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像とが重ならないため、それぞれの検出が容易になる。
【0106】
(その他実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0107】
・カメラ22のレンズ22Lには、レーザ光LBの像等を撮影する範囲に、レーザ光LB等の撮影に適したフィルタを設けてもよい。
図14(a)を参照して、第1実施形態の図5(b)に示すように、撮影範囲Vaの左側に照射されるレーザ光LBを撮影するとき、レンズ22Lの透光範囲22Aには、左側に第2部分としてのレーザ透光範囲221と、第1部分としてのその他の範囲220とを設けてもよい。レーザ透光範囲221は、レーザ光LBの撮影に適したフィルタを備え、その他の範囲220は、フィルタを備えず、又は、路面100の撮影に適したフィルタを備えている。よって、特徴領域TPをその他の範囲220によって好適に検出することができるとともに、レーザ光LBの像をレーザ透光範囲221によって好適に検出することができる。
【0108】
詳述すると、レーザ透光範囲221は、撮影範囲Vaにおいて、静止した車両10においてレーザ光LBの像の全てを含み、かつ、カメラ22の光軸Cを含まない領域に対応する範囲に設けられている。その他の範囲220は、第1部分を構成し、レーザ透光範囲221は、第2部分を構成する。このとき、レーザ透光範囲221は、前後方向Xに延在することで、その他の範囲220の前後方向Xに介在しない。よって、その他の範囲220の前後方向Xの全長を特徴領域TPの探索領域とすることができる。レーザ光LBが照射されている範囲は、特徴領域TPとは色や輝度レベルが大きく相違する。そのため、路面100の観察に適切なその他の範囲220を経た撮影画像は、レーザ光LBの像を探索するには不向きである。逆に、レーザ透光範囲221も路面100の特徴領域TPの探索には不向きである。また、レーザ透光範囲221を前後方向Xに延在させることで、その他の範囲220の探索可能範囲が広く確保されて、探索が可能となる車速範囲が広く維持される。
【0109】
また、図14(b)を参照して、第2実施形態の図11等に示すように、撮影範囲Vaの左側及び右側に照射される第1レーザ光LB1及び第2レーザ光LB2を撮影する。このとき、レンズ22Lの透光範囲22Bの左側に第1レーザ光LB1の撮影に適したレーザ透光範囲221を設け、レンズ22Lの右側に第2レーザ光LB2の撮影に適したレーザ透光範囲222をレーザ透光範囲221と同様に区画された範囲に設ける。一方、その他の範囲220には、フィルタを設けない、又は、路面100の撮影に適したフィルタを設けてもよい。レーザ透光範囲222は、第2部分を構成する。このとき、レーザ透光範囲221,222は、前後方向Xに延在することで、その他の範囲220の前後方向Xに介在しない。よって、その他の範囲220の前後方向Xの全長を特徴領域TPの探索領域とすることができる。
【0110】
・車載制御装置26は、信号処理部30や出力部40の処理を実行するプログラムを有するパーソナルコンピュータ(PC)等であってもよい。
・上記各実施形態では、1つの特徴領域TPをマッチングする場合について例示した。しかし、これに限らず、複数の特徴領域TPをマッチングするようにしてもよい。例えば、複数の特徴領域TPのそれぞれに対して、図9のステップS23~S25の処理を複数回繰り返す処理によってマッチングを行ってもよい。また、複数の特徴領域TPを、主とする特徴領域TPと、主とする特徴領域TPの周囲に設定した特徴領域を副特徴領域とし、それぞれの特徴領域毎にマッチング結果を得てもよい。いずれにしても、複数の特徴領域をマッチングして、変位量を比較することで、各マッチングの妥当性を判断することができる。
【0111】
例えば、主とする特徴領域TPのマッチングの後、又は、前に、副特徴領域のマッチング処理を行うことができる。特徴領域TPのマッチングの後としては、例えば、図9のステップS25の処理の後が挙げられる。
【0112】
図15に示すように、副特徴領域のマッチング処理では、副特徴領域としての副テンプレート領域を選択する処理(図15のステップS30)と、マッチング処理(図15のステップS31)と、副マッチング終了判断(図15のステップS32)とを行う。
【0113】
副テンプレート領域を選択する処理(図15のステップS30)では、撮影画像P11の中央に設定された主とする特徴領域TPの周囲に副テンプレート領域としての副特徴領域を設定する。副特徴領域は、最初に必要とする全てが設定され、以降の処理毎に順次選択されてもよいし、必要とする全てが設定されるまで処理毎に順次、領域が選択されてもよい。
【0114】
マッチング処理(図15のステップS31)では、時間間隔Δtの経過後に撮影された撮影画像P12のマッチング対象領域に対して副特徴領域を探索するためのテンプレートマッチングを行う。
【0115】
副マッチング終了判断(図15のステップS32)では、必要とする全ての副特徴領域のマッチングが終了したか否かを判断する。必要とする全ての副特徴領域のマッチングが終了していないと判断した場合(図15のステップS32でNO)、図15のステップS30に戻り、副テンプレート領域を選択する処理以降の処理を実行する。
【0116】
これにより、主とする特徴領域TPのマッチングの妥当性を判断することができる。特徴領域TPの変位量が同様であればマッチングの妥当性が高く、変位量が相違するようであればマッチングの妥当性が低いと判断できるようになる。このとき、得られた複数の変位量を分類し、最も多くの集合をなす変位量を確からしい値として採用してもよい。
【0117】
・上記第2実施形態では、第1レーザ光LB1の経路面と第2レーザ光LB2の経路面とが平行である場合について例示した。これに限らず、第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とが交差するなど、非平行であってもよい。
【0118】
例えば、第1レーザ光LB1の経路面がカメラ22の光軸Cの方向に傾斜してもよいし、第2レーザ光LB2の経路面がカメラ22の光軸Cの方向に傾斜してもよい。また、路面100までの間で第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とが交差してもよい。
【0119】
第1レーザ光LB1や第2レーザ光LB2を傾けることができれば、撮影画像においてレーザ光の像の配置自由度が高まる。
・上記第1実施形態では、レーザ光LBの経路面LPとカメラ22の光軸Cとが平行である場合について例示した。これに限らず、レーザ出力部24の経路面がカメラ22の光軸Cに対して傾いてもよく、レーザ光LBの経路面とカメラ22の光軸Cとが交差してもよい。
【0120】
これにより、撮影画像において対向距離Hに対するレーザ光LBの像の位置の変化を大きくすることができる。つまり、対向距離Hの計測感度の調整自由度が高められる。例えば、対向距離H(ワーキングディスタンス)を長くなるように設置しなければならない移動体の計測において、対向距離Hの計測感度を改善することができる。
【0121】
・上記各実施形態では、経路面LPが前後方向Xに対して平行である場合について例示したが、経路面が前後方向Xに傾きを有していてもよい。
・上記各実施形態では、画像取得部21は、車両10の前部に取り付けられている場合について例示した。これに限らず、レーザ光LBの像を含む路面100の撮影画像を撮影できれば、画像取得部は、車両の前部以外の場所である、車両の後部、側部、底部等に設けてもよい。
【0122】
・上記各実施形態では、カメラ22の光軸Cが路面100に対して略垂直である場合について例示した。これに限らず、カメラは、路面の模様を探索可能な程度に撮影できれば、光軸Cが路面に対して略垂直でなくてもよい。傾きによる影響を演算処理等によって適切に処理可能であれば、傾きを補正する演算により垂直であることと同様に処理できる。
【0123】
・上記各実施形態では、路面100が移動面である場合について例示した。しかしこれに限らず、移動体の速度を相対的に測定する対象であって、レーザ光の像が写るものであれば、移動面は、アスファルト以外の路面や、路面以外の地面や床面、壁面等であってもよい。
【0124】
・上記各実施形態では、レーザ光LB等の像の前後方向Xの長さが撮影範囲Vaを超える場合について例示した。これに限らず、特徴領域のある位置の対向距離や変換係数を得られれば、レーザ光の像の一端、又は両端が撮影範囲内で終わっていてもよい。
【0125】
・上記各実施形態では、車載制御装置26の信号処理部30にパラメータ設定部33を設ける場合について例示した。これに限らず、各カメラに適切なパラメータを予め設定できれば、車載制御装置の信号処理部にパラメータ設定部を設けなくてもよい。例えば、カメラ22のパラメータ22Gを予め適切な値に設定しておいてもよい。
【0126】
・上記各実施形態では、車載制御装置26がケースに収容されて車両10の前部に取り付けられている場合について例示したが、車載制御装置は分離して、車両に設置されていてもよい。
【0127】
・上記各実施形態では、カメラ22が記憶部にパラメータ22Gを保持している場合について示した。これに限らず、車載制御装置からの操作が可能ならば、カメラにパラメータを保持する記憶部がなくてもよい。この場合、パラメータは車載制御装置に保持される。
【符号の説明】
【0128】
1…速度計測装置、10…車両、21…画像取得部、22…カメラ、22A…透光範囲、22B…透光範囲、22G…パラメータ、22L…レンズ、24…レーザ出力部、24…第1レーザ出力部、24G…パラメータ、25…第2レーザ出力部、26…車載制御装置、30…信号処理部、32…画像車速算出部、33…パラメータ設定部、34…記憶部、40…出力部、100…路面、220…その他の範囲、221,222…レーザ透光範囲、C…光軸、LC…中心線、O…原点、LB…レーザ光、LP…経路面、P11,P12…撮影画像、TP…特徴領域。
図1
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