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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20230424BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B09C1/08
B09C1/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019104415
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020195970
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】505252517
【氏名又は名称】ジオテクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】横山 圭一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】江口 信也
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-313903(JP,A)
【文献】特開2008-194590(JP,A)
【文献】特開2007-253075(JP,A)
【文献】特許第3793084(JP,B2)
【文献】特開2001-269657(JP,A)
【文献】特開2005-279454(JP,A)
【文献】特表平04-501382(JP,A)
【文献】特開2009-148702(JP,A)
【文献】特開2009-285609(JP,A)
【文献】特開2016-221479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重油により汚染された汚染土壌に対して液体を添加し、前記汚染土壌と前記液体を混合する混合工程と、
前記汚染土壌から前記液体を除去する液体除去工程と、
前記液体除去工程の後に、前記汚染土壌に対して過酸化水素及び触媒を含有するフェントン試薬を添加し、前記汚染土壌中の炭化水素化合物を酸化分解する酸化分解工程と、
を含み、前記酸化分解工程を2回以上行い、
前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して0.01mol/kg以上0.1mol/kg以下添加することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記酸化分解工程において、前記汚染土壌に対して、過酸化水素及び2価鉄を含有するフェントン試薬を添加する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記酸化分解工程において、前記汚染土壌に対して、過酸化水素及び2価マンガンを含有するフェントン試薬を添加する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して、0.01mol/kg以上0.05mol/kg以下添加する請求項1から3のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
前記混合工程において、前記液体を、前記汚染土壌に対して、30質量%以上添加する請求項1から4のいずれかに記載の汚染土壌の処理方法。
【請求項6】
前記酸化分解工程において、前記フェントン試薬を、前記汚染土壌に対して、10質量%以上添加する請求項1から5のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
前記混合工程において、40℃以上80℃以下の温度の液体を添加する請求項1から6のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項8】
前記混合工程において、6以上14以下のpHの液体を添加する請求項1から7のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
前記混合工程及び前記液体除去工程を1回以上行う請求項1から8のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項10】
ガソリンにより汚染された汚染土壌に対してpH12以上のアルカリ性水溶液を添加し、前記汚染土壌と前記アルカリ性水溶液を混合する混合工程と、
前記汚染土壌から前記アルカリ性水溶液を除去する液体除去工程と、
前記液体除去工程の後に、前記汚染土壌に対して過酸化水素及び触媒を含有するフェントン試薬を添加し、前記汚染土壌中の炭化水素化合物を酸化分解する酸化分解工程と、
を含み、前記酸化分解工程を2回以上行い、
前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して0.01mol/kg以上0.1mol/kg以下添加することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油類や多環芳香族化合物などの特定有害物質で汚染された汚染土壌に薬剤を添加し、化学的に前記特定有害物質の分解を行う方法の1つとして、フェントン工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記フェントン工法は、揮発性有機化合物や低炭素数であるガソリンなどの油種には効果があるが、重油や絶縁油などへの効果は低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3793084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガソリン、重油、絶縁油などの低~高炭素数の油類により汚染された汚染土壌を、現場において効率良く浄化することができる汚染土壌の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 重油により汚染された汚染土壌に対して液体を添加し、前記汚染土壌と前記液体を混合する混合工程と、
前記汚染土壌から前記液体を除去する液体除去工程と、
前記液体除去工程の後に、前記汚染土壌に対して過酸化水素及び触媒を含有するフェントン試薬を添加し、前記汚染土壌中の炭化水素化合物を酸化分解する酸化分解工程と、
を含み、前記酸化分解工程を2回以上行い、
前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して0.01mol/kg以上0.1mol/kg以下添加することを特徴とする汚染土壌の浄化方法である。
<2> 前記酸化分解工程において、前記汚染土壌に対して、過酸化水素及び2価鉄を含有するフェントン試薬を添加する前記<1>に記載の汚染土壌の浄化方法である。
<3> 前記酸化分解工程において、前記汚染土壌に対して、過酸化水素及び2価マンガンを含有するフェントン試薬を添加する前記<1>に記載の汚染土壌の浄化方法である。
<4> 前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して、0.01mol/kg以上0.05mol/kg以下添加する前記<1>から<3>のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法である。
<5> 前記混合工程において、前記液体を、前記汚染土壌に対して、30質量%以上添加する前記<1>から<4>のいずれかに記載の汚染土壌の処理方法である。
<6> 前記酸化分解工程において、前記フェントン試薬を、前記汚染土壌に対して、10質量%以上添加する前記<1>から<5>のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法である。
<7> 前記混合工程において、40℃以上80℃以下の温度の液体を添加する前記<1>から<6>のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法である。
<8> 前記混合工程において、6以上14以下のpHの液体を添加する前記<1>から<7>のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法である。
<9> 前記混合工程及び前記液体除去工程を1回以上行う前記<1>から<8>のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法である。
<10> ガソリンにより汚染された汚染土壌に対してpH12以上のアルカリ性水溶液を添加し、前記汚染土壌と前記アルカリ性水溶液を混合する混合工程と、
前記汚染土壌から前記アルカリ性水溶液を除去する液体除去工程と、
前記液体除去工程の後に、前記汚染土壌に対して過酸化水素及び触媒を含有するフェントン試薬を添加し、前記汚染土壌中の炭化水素化合物を酸化分解する酸化分解工程と、
を含み、前記酸化分解工程を2回以上行い、
前記過酸化水素を、前記汚染土壌に対して0.01mol/kg以上0.1mol/kg以下添加することを特徴とする汚染土壌の浄化方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ガソリン、重油、絶縁油などの低~高炭素数の油類により汚染された汚染土壌を、現場において効率良く浄化することができる汚染土壌の浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の汚染土壌の浄化方法のフロー図である。
図2図2は、本発明における、汚染土壌を掘削する方法を示した図である。
図3図3は、本発明における、汚染土壌と、液体及びフェントン試薬のいずれかとを混合する方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(汚染土壌の浄化方法)
本発明の汚染土壌の浄化方法は、混合工程と、液体除去工程と、酸化分解工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、汚染土壌の浄化方法における、フェントン反応などの酸化分解工程の前処理として、液体を添加し、前記汚染土壌と前記液体を混合することで、汚染土壌中の酸化分解されにくい油類、酸化分解阻害物質などを汚染土壌中から前記液体中に移すことができ、前記液体を除去することによって、前記汚染土壌から酸化分解されにくい油類、酸化分解阻害物質などを除くことができるため、酸化分解工程における、汚染土壌の浄化作用を向上させることができることを知見した。
また、上記汚染土壌の浄化方法は、ガソリン、軽油等の低炭素数の油類で汚染された土壌だけではなく、従来のフェントン工法では浄化が難しいA重油、B重油等の高炭素数の油類で汚染された土壌を浄化することができる。
【0011】
<混合工程>
前記混合工程は、炭化水素化合物により汚染された汚染土壌に対して液体を添加し、前記汚染土壌と前記液体を混合する工程である。前記混合工程によって、汚染土壌中の酸化分解されにくい油類、酸化分解阻害物質などを汚染土壌中から液体中に移すことができる。
【0012】
前記炭化水素化合物としては、例えば、油類、多環芳香族化合物などが挙げられる。
【0013】
前記油類としては、例えば、鉱物油類、植物性油類などが挙げられる。これらの油類は、道路工事、トンネル建設工事、再開発工事等の各種建設工事に伴って発生する油類、又は自然由来の油類である。
前記鉱物油類としては、例えば、重油、絶縁油等の中~高炭素数の油、ガソリン等の低炭素数の油、軽油、灯油、ナフサ、機械油、切削油などが挙げられる。
前記重油は、動粘度により、1種(A重油)、2種(B重油)、3種(C重油)の3種類に分類され、その規格は、JIS K 2205に示される通りである。
前記植物性油類としては、例えば、ヤシ油、パーム油、オリーブ油等の不乾性油、ナタネ油、米ぬか油等の半乾性油、アマニ油等の乾性油などが挙げられる。
【0014】
前記多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、ベンズアントラセン、ベンゾピレンなどが挙げられる。
【0015】
前記炭化水素化合物により汚染された汚染土壌とは、土壌に対する全石油系炭化水素(Total Petroleum Hydrocarbon:TPH)濃度が1000mg/kg以上である土壌、又は油臭や油膜を有する土壌を意味する。
前記TPH濃度の試験方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ法(GC-FID法)、赤外分光分析法(IR法)、重量法(ノルマルヘキサン抽出法)などが挙げられる。これらの中でも、含有する炭素数範囲が明確になり油種を特定しやすい点から、GC-FID法が好ましい。
前記油臭や油膜の判定方法としては、例えば、「油汚染対策ガイドライン」(平成18年3月、中央環境審議会)にある土壌及び水の油臭の測定方法、シャーレ法、ビーカー法等による油膜の測定方法などが挙げられる。
【0016】
前記液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水溶液などが挙げられる。
【0017】
前記水としては、例えば、水道水、工業用水、河川水、海水などが挙げられる。
前記水のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、6以上14以下が挙げられる。
【0018】
前記水溶液としては、薬剤を前記水で希釈した水溶液などが挙げられる。
前記薬剤としては、例えば、酸性pH調整剤、アルカリ性pH調整剤、界面活性剤、有機溶剤などが挙げられる。
前記酸性pH調整剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルカリ性pH調整剤としては、例えば、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記有機溶剤の含有量としては、前記水溶液に対して、1質量%以下が好ましい。
前記水溶液としては、酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液などが挙げられる。これらの中でも、pHが5.8~8.6の中性水溶液、pHが8.6以上のアルカリ性水溶液が好ましい。前記水溶液が、前記中性水溶液、前記アルカリ性水溶液であると、ガソリンに対して、酸化分解工程における高い浄化作用が得られる。また、アルカリ性水溶液で処理をすることによって、濃度低減率の上昇、pHの低下、酸性臭の発生を抑制することができる。
前記酸性水溶液の調製方法としては、水に対して、前記酸性pH調整剤を添加する方法などが挙げられる。
前記アルカリ性水溶液の調製方法としては、水に対して、前記アルカリ性pH調整剤を添加する方法などが挙げられる。
【0019】
前記液体の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸化分解工程における高い浄化作用が得られる点から、40℃以上が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましく、60℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0020】
前記液体の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記汚染土壌に対して、30質量%以上が好ましい。
【0021】
前記汚染土壌と前記液体を混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バックホウ、ポンプ、撹拌機などを用いて混合する方法が挙げられる。前記バックホウは、スケルトンバケット、ミキシングバケットなどを用いると混合精度が向上する。
前記混合の条件は、汚染土壌が前記液体に浸漬されていればよい。
【0022】
前記混合工程の回数は、前記汚染土壌の、TPHの濃度及び油臭や油膜の低減状況に応じて1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。
【0023】
<液体除去工程>
前記液体除去工程は、前記混合工程後の汚染土壌から、液体を除去する工程である。前記液体除去工程によって、汚染土壌から、酸化分解されにくい油類、酸化分解阻害物質などを前記液体ごと除去することができ、酸化分解工程における、汚染土壌の浄化作用を向上させることができる。
【0024】
前記液体を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクリューデカンタを用いる方法、フィルタープレスを用いる方法、重力沈降を利用して土壌粒子を沈殿させ、上澄みを除去する方法、ポンプを用いる方法などが挙げられる。液体除去工程によって、汚染土壌から、酸化分解されにくい油類、酸化分解阻害物質などを除去することができ、酸化分解工程における処理時間の短縮、浄化処理量を増加させることができる。
【0025】
前記汚染土壌から液体を除去した後は、例えば、UV法、IR法、ガスクロマトグラフ法などの各種簡易測定法によるTPHの濃度の測定、油臭や油膜の判定を行うことにより、汚染土壌の汚染度合を把握することが好ましい。汚染土壌の汚染度合を把握することで、前記混合工程を繰り返す必要性を判断することができる。
【0026】
前記液体除去工程の回数は、前記汚染土壌の、TPHの濃度及び油臭や油膜の低減状況に応じて1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。
前記液体除去工程としては、前記混合工程を1回行う毎に、液体除去工程を1回行うことが好ましい。
【0027】
<酸化分解工程>
前記酸化分解工程は、前記汚染土壌中の炭化水素化合物を酸化分解する工程である。
【0028】
前記炭化水素化合物を酸化分解する方法としては、前記汚染土壌中に、過硫酸、過炭酸、オゾン、ヒドロキシラジカルなどを発生させる方法などが挙げられる。
前記ヒドロキシラジカルを発生させる方法としては、例えば、フェントン反応、紫外線の照射、超音波などが挙げられる。これらの中でも、フェントン反応が好ましい。
前記フェントン反応は、前記汚染土壌に、フェントン試薬を添加することで、ヒドロキシラジカルを発生させる方法であり、前記フェントン試薬としては、酸化剤と触媒を含有することが好ましい。
下記式に示すように、前記酸化剤と前記触媒とのフェントン反応により、ヒドロキシラジカルが発生し、発生したヒドロキシラジカルの酸化力によって、汚染土壌中の炭化水素化合物が酸化分解される。
+ Fe2+ → Fe3+ + OH + ・OH
前記フェントン試薬の添加量としては、前記汚染土壌に対して、10質量%以上が好ましい。前記添加量が、10質量%以上であると、酸化分解工程における浄化作用が向上する。
【0029】
前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、過マンガン酸塩などの過酸化物が挙げられる。これらの中でも、強力な酸化力を有するヒドロキシラジカルを生成する点から、過酸化水素が好ましい。
前記過酸化水素の添加量は、前記汚染土壌に対して、0.01mol/kg以上が好ましい。前記過酸化水素の添加量が、0.01mol/kgであると、酸化分解工程における浄化作用が向上する。
【0030】
前記触媒としては、例えば、2価鉄、3価鉄、2価銅、2価マンガンなどの化合物が挙げられる。これらの中でも、2価鉄、2価マンガンなどの化合物が好ましい。
前記2価鉄の化合物としては、硫酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、硝酸鉄(II)などが挙げられる。
前記硫酸鉄(II)としては、硫酸鉄(II)無水和物、硫酸鉄(II)一水和物、硫酸鉄(II)四水和物、硫酸鉄(II)五水和物、硫酸鉄(II)七水和物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、鉄(II)イオンと結合している水分子と過酸化水素が効率よく置き換わる点から、硫酸鉄(II)七水和物が好ましい。
前記2価マンガンの化合物としては、硫酸マンガン(II)一水和物、硫酸マンガン(II)四水和物、硫酸マンガン(II)五水和物、硝酸マンガン(II)無水和物、硝酸マンガン(II)四水和物、硝酸マンガン(II)六水和物などが挙げられる。これらの中でも、マンガン(II)イオンと結合している水分子と過酸化水素が効率よく置き換わる点から、硫酸マンガン(II)五水和物が好ましい。
【0031】
前記触媒の添加量としては、前記汚染土壌に対して、0.0002mol/kg以上が好ましく、0.001mol/kg以上がより好ましく、0.002mol/kg以上が特に好ましい。前記触媒の添加量としては、前記過酸化水素の添加量に対して、モル比として1/50程度が好ましい。
油類により汚染された前記汚染土壌に、前記液体を添加及び混合した後に、前記液体除去工程を経てから前記フェントン反応を適用することにより、フェントン反応による前記汚染土壌からの油類の除去効果を著しく向上させることができる。
【0032】
前記酸化分解工程は、TPHの濃度及び油臭や油膜の低減状況に応じて1回以上が好ましく、2回以上がより好ましい。
【0033】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化分解時に発生する上澄みを除去する工程、浄化完了判定工程などが挙げられる。
【0034】
前記酸化分解時に発生する上澄みを除去する工程としては、例えば、スクリューデカンタを用いる方法、フィルタープレスを用いる方法、重力沈降を利用して土壌粒子を沈殿させ、上澄みを除去する方法、ポンプを用いる方法などが挙げられる。
添加したフェントン試薬などが少ない場合、又は酸化分解時に発生した上澄みが少ない場合は、直接、汚染土壌に固化材等の改良材を添加することができる。
【0035】
前記浄化完了判定工程は、汚染土壌の浄化が完了しているかを判定する工程であり、例えば、前記各種簡易測定法などで行うことができる。
【0036】
図1は、本発明の汚染土壌の浄化方法のフロー図である。図1を用いて、本発明の汚染土壌の浄化方法の実施形態について説明する。
まず、図1に示す汚染土壌の掘削を、図2に示すようにバックホウなどを用いて行う。
次に、液体をホース又はポンプを用いて、掘削した汚染土壌に添加し、又は添加しながらバックホウを用いてよく混合する。このとき、図3に示すように、汚染土壌と液体を混合容器に投入し、混合容器内で混合することが好ましい。
次に、混合後の汚染土壌から、ポンプなどを用いて液体を除去する。除去された液体は、油分の除去、pHの調整を行った後に排水することが好ましい。
液体が除去された汚染土壌は、TPHの濃度及び油臭や油膜の低減状況に応じて、液体の添加、混合、除去の処理を繰り返し行うことが好ましい。
次に、液体が除去された汚染土壌に、酸化剤及び触媒を含有するフェントン試薬をホース又はポンプを用いて添加し、バックホウを用いてよく混合する。このとき、図3に示すように、汚染土壌とフェントン試薬を混合容器に投入し、混合容器内で混合することが好ましい。これにより、汚染土壌の量を把握することができ、適量のフェントン試薬を汚染土壌に添加することができる。また、フェントン試薬は、酸化剤と触媒を混合すると瞬時にヒドロキシラジカルが発生するため、酸化剤と触媒の混合は、汚染土壌に投入する直前に行うことが好ましい。フェントン試薬を添加後は、酸化分解反応が停止するまで放置する。
次に、酸化分解反応停止後の土壌から、ポンプなどを用いて上澄みを除去する。除去された上澄みは、pHの調整を行った後、また、必要に応じて油分の除去を行った後に排水することが好ましい。
フェントン試薬が除去された浄化後の土壌は、TPHの濃度及び油臭や油膜の低減状況に応じて、フェントン試薬の添加、混合、反応停止後の上澄みの除去の処理を繰り返し行うことが好ましい。
次に、浄化後の土壌の含水調整を行い、浄化後の土壌を埋戻す。前記含水調整の方法としては、例えば、天日干し、固化材等の改良材の添加、フィルタープレスなどの方法が挙げられる。
【実施例
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、設備の関係からラボスケールで実験を行ったが、現場において実施しても同様の効果が得られるものである。
【0038】
(実施例1)
-A重油汚染土壌の調製-
重油で汚染されている汚染土壌を採取した。A重油を貯蔵していたタンクおよび配管付近の漏洩箇所から採取した汚染土壌をA重油汚染土壌とし、GC-FID法によって炭素数範囲を確認した。前記A重油汚染土壌のTPH濃度を、前記簡易測定法のUV法によって測定したところ、3,900mg/kgであった。同一敷地内の同一の土質である非汚染土壌を採取し、前記非汚染土壌と前記A重油汚染土壌とを混合することで、試験土壌(前記A重油汚染土壌)におけるTPHの濃度を調整した。前記TPHの濃度測定を、混合工程後、及び酸化分解工程後に実施した。
【0039】
-混合工程-
容器に前記A重油汚染土壌300g、液体として水90gを添加し、5分間混合した。
上記工程を1回行った。
【0040】
-液体除去工程-
前記混合工程後、容器中の上澄みを除去した。
上記工程を1回行った。
【0041】
-酸化分解工程-
混合工程後のA重油汚染土壌300gに下記組成のフェントン試薬30gを添加し、5分間混合した。その後、混合後のA重油汚染土壌を、室温で一晩放置した。その後、A重油汚染土壌から、上澄みを除いた後に風乾した。
上記酸化分解工程を回行った。
[フェントン試薬]
・過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製) 0.34質量%
・硫酸鉄(II)七水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製) 0.001質量%
・水 99.66質量%
[UV法]
・土壌油分抽出試薬(株式会社共立理化学研究所製)
【0042】
(実施例2~17及び比較例1~9)
実施例1において、フェントン試薬の組成、液体、混合工程の回数、液体除去工程の回数、酸化分解工程の回数を表1~表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~17及び比較例1~9の汚染土壌の浄化方法を行った。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
実施例1~17及び比較例1~9の汚染土壌の浄化方法による、浄化後の土壌のTPH濃度の測定を行い、浄化方法の評価を行った。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例1~17の評価結果より、混合工程及び酸化分解工程を1回以上行うことで、従来のフェントン工法では、浄化が難しいA重油汚染土壌を浄化できることが確認された。また、実施例9の結果より、混合工程における液体の温度を60℃とすることで、A重油汚染土壌の高い浄化作用が確認された。
【0049】
(実施例18)
-B重油汚染土壌の調製-
重油で汚染されている汚染土壌を採取した。B重油を貯蔵していたタンクおよび配管付近の漏洩箇所から採取した汚染土壌をB重油汚染土壌とし、GC-FID法によって炭素数範囲を確認した。前記B重油汚染土壌のTPH濃度を、前記簡易測定法のUV法によって、測定したところ5,100mg/kgであった。同一敷地内の同一の土質である非汚染土壌を採取し、前記非汚染土壌と前記B重油汚染土壌とを混合することで、試験土壌(前記B重油汚染土壌)におけるTPHの濃度を調整した。前記TPHの濃度測定を、混合工程後、及び酸化分解工程後に実施した。
【0050】
-混合工程-
容器に前記B重油汚染土壌300g、液体として水90gを添加し、5分間混合した。
上記混合工程を1回行った。
【0051】
-液体除去工程-
前記混合工程後、容器中の上澄みを除去した。
上記液体除去工程を1回行った。
【0052】
-酸化分解工程-
混合工程後のB重油汚染土壌300gに下記組成のフェントン試薬30gを添加し、5分間混合した。その後、混合後のB重油汚染土壌を、室温で一晩放置した。その後、B重油汚染土壌から上澄みを除いた後に風乾した。
上記酸化分解工程を3回行った。
[フェントン試薬]
・過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製) 0.34質量%
・硫酸鉄(II)七水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製) 0.001質量%
・水 99.66質量%
[UV法]
・土壌油分抽出試薬(株式会社共立理化学研究所製)
【0053】
(実施例19~23及び比較例10~14)
実施例18において、フェントン試薬の組成、液体、混合工程の回数、液体除去工程の回数、酸化分解工程の回数を表5及び表6に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして、実施例19~23及び比較例10~14の汚染土壌の浄化方法を行った。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
実施例18~23及び比較例10~14の汚染土壌の浄化方法による、浄化後の土壌のTPH濃度を、実施例1~17及び比較例1~9と同様の方法で測定を行い、浄化方法の評価を行った。結果を表7に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
実施例18~23の評価結果より、混合工程及び酸化分解工程を1回以上行うことで、従来のフェントン工法では、浄化が難しいB重油汚染土壌を浄化できることが確認された。
【0059】
参考例24)
-ガソリン汚染土壌の調製-
汚染されていない土壌に、市販のガソリンを添加後、よく混合し、ガソリン汚染土壌を調製した。前記ガソリン汚染土壌のTPH濃度を、前記簡易分記法のIR法によって、測定したところ2,500mg/kgであった。前記TPHの濃度測定を、混合工程後、及び酸化分解工程後に実施した。
【0060】
-混合工程-
前記ガソリン汚染土壌300gに、水90gを添加し5分間混合した。
上記混合工程を1回行った。
【0061】
-液体除去工程-
前記混合工程後、容器中の上澄みを除去した。
上記液体除去工程を1回行った。
【0062】
-酸化分解工程-
混合工程後のガソリン汚染土壌300gに下記組成のフェントン試薬30gを添加し、5分間混合した。その後、混合後のガソリン汚染土壌を室温で一晩放置した。その後、ガソリン汚染土壌から、上澄みを除いた。
上記酸化分解工程を3回行った。
[フェントン試薬]
・過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製) 3.4質量%
・硫酸鉄(II)七水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製) 0.01質量%
・水 96.59質量%
[IR法]
・油分抽出専用溶媒(株式会社堀場アドバンスドテクノ製)
【0063】
(実施例25)
参考例24において、フェントン試薬の組成、液体、混合工程の回数、液体除去工程の回数、酸化分解工程の回数を表8に示すように変更した以外は、参考例24と同様にして、実施例25及び比較例15~17の汚染土壌の浄化方法を行った。
【0064】
【表8】
【0065】
参考例24、実施例25及び比較例15~17の汚染土壌の浄化方法による、浄化後の土壌のTPH濃度を、実施例1~17及び比較例1~9と同様の方法で測定を行い、浄化方法の評価を行った。結果を表9に示す。
【0066】
【表9】
【0067】
実施例24~25の評価結果より、混合工程及び酸化分解工程を1回以上行うことで、従来のフェントン工法よりもガソリン汚染土壌を浄化できることが確認された。また、実施例25の結果より、混合工程における液体のpHを12以上(アルカリ性水溶液)とすることで、ガソリン汚染土壌の高い浄化作用が確認された。

図1
図2
図3