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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】LED駆動装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/50 20220101AFI20230424BHJP
【FI】
H05B45/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019109459
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020202118
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 圭
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029665(JP,A)
【文献】特開2016-197294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
F21S 2/00
F21V 8/00
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数のLED列へ電力を供給するように構成された電源回路と、
前記複数のLED列に対応して設けられ、各々が対応のLED列に流れる電流を調整するように構成された複数の電流ドライバと、
前記複数の電流ドライバに接続される信号線とを備え、
前記複数の電流ドライバの各々は、
所定のフェール信号を出力するように構成された出力回路と、
前記出力回路の出力を受け、前記信号線が接続される出力端子とを含み、
前記出力回路は、前記複数の電流ドライバに共通の同期信号に従って、一時的に前記フェール信号に代えて、当該出力回路が設けられている電流ドライバの状態を示す状態信号を出力するように構成され、
前記複数の電流ドライバの各々は、前記出力端子に接続される前記信号線の信号を当該電流ドライバに入力するように構成された入力回路をさらに含む、LED駆動装置。
【請求項2】
前記出力回路は、前記フェール信号をオープンドレイン又はオープンコレクタで前記出力端子へ出力するように構成され、
前記状態信号は、当該出力回路が設けられている電流ドライバに対応するLED列のカソード側の電圧が所定電圧よりも低いか否かを示す信号である、請求項1に記載のLED駆動装置。
【請求項3】
前記複数の電流ドライバに接続され、前記複数の電流ドライバの各々から対応のLED列のカソード側の電圧である帰還電圧が出力される電圧信号線と、
前記電圧信号線の電圧に基づいて前記電源回路を駆動するように構成された駆動装置とをさらに備え、
前記複数の電流ドライバの各々は、前記電圧信号線への前記帰還電圧の出力を制御するように構成された出力制御回路をさらに含み、
前記出力制御回路は、当該出力制御回路が含まれる電流ドライバに対応するLED列のカソード側の電圧が前記所定電圧よりも高く、かつ、前記入力回路により入力される前記信号線の信号がローレベルのとき、前記電圧信号線への出力を維持するように構成される、請求項2に記載のLED駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のLED駆動装置と、
前記LED駆動装置によって駆動されるLEDとを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LED駆動装置及びそれを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギ光源としてのLED(Light Emitting Diode)の用途が近年ますます拡大している。LEDの駆動には、LEDの順方向電圧-電流特性と発光特性とから、LEDに定電流を供給するためのLEDドライバが用いられる。
【0003】
特開2018-19498号公報(特許文献1)には、このようなLEDドライバが開示されている。このLEDドライバは、LEDへ電流を供給する電源回路(DC/DCコンバータ)と、LEDに流れる電流を調整する電流ドライバ(定電流制御回路)とを含む。このLEDドライバでは、LEDのカソード側の電圧を帰還信号とする帰還制御が行なわれ(第2帰還制御モード)、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって電源回路を駆動することにより、LEDのカソード側の電圧が一定に制御される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-19498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数のLEDが設けられる液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等では、複数のLED列が並列接続され、電源回路から各LED列へ電力が供給されるとともに、LED列毎に設けられる電流ドライバによってLED列毎に電流が調整される。
【0006】
このような構成では、各LED列においてLED列のカソード側の電圧(以下「帰還電圧」と称する。)を一定に制御する必要があり、LED列毎に上記の帰還制御が行なわれる。この場合に、LED列毎の帰還制御が互いに干渉する可能性がある。たとえば、あるLED列では、帰還電圧を高める方向の制御が求められる一方で、他のLED列では、帰還電圧を下げる方向の制御が求められる場合がある。このような場合に、LED列毎の帰還制御を調整するために、帰還電圧を出力する各電流ドライバの状態をマイコンにより把握して管理することも考えられるが、マイコンの改造が別途必要になり、簡易な構成での対応が求められる。
【0007】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易な構成で電流ドライバ間で互いに状態を把握可能なLED駆動装置及びそれを備える表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のLED駆動装置は、並列接続された複数のLED列へ電力を供給するように構成された電源回路と、複数のLED列に対応して設けられ、各々が対応のLED列に流れる電流を調整するように構成された複数の電流ドライバと、複数の電流ドライバに接続される信号線とを備える。各電流ドライバは、所定のフェール信号を出力するように構成された出力回路と、出力回路の出力を受け、上記信号線が接続される出力端子とを含む。出力回路は、複数の電流ドライバに共通の同期信号に従って、一時的にフェール信号に代えて、当該出力回路が設けられている電流ドライバの状態を示す状態信号を出力するように構成される。各電流ドライバは、出力端子に接続される上記信号線の信号を当該電流ドライバに入力するように構成された入力回路をさらに含む。
【0009】
このような構成により、各電流ドライバは、同期信号に従って一時的に、フェール信号が出力される信号線を用いて、他の電流ドライバの状態を把握することができる。したがって、このLED駆動装置によれば、簡易な構成で電流ドライバ間で互いに状態を把握することができる。
【0010】
出力回路は、フェール信号をオープンドレイン又はオープンコレクタで出力端子へ出力するように構成されてもよい。そして、状態信号は、当該出力回路が設けられている電流ドライバに対応するLED列のカソード側の電圧が所定電圧よりも低いか否かを示す信号であってもよい。
【0011】
LED駆動装置は、複数の電流ドライバに接続され、かつ、各電流ドライバから対応のLED列のカソード側の電圧である帰還電圧が出力される電圧信号線と、電圧信号線の電圧に基づいて電源回路を駆動するように構成された駆動装置とをさらに備えてもよい。そして、各電流ドライバは、電圧信号線への帰還電圧の出力を制御するように構成された出力制御回路をさらに含み、出力制御回路は、当該出力制御回路が含まれる電流ドライバに対応するLED列のカソード側の電圧が所定電圧よりも高く、かつ、入力回路により入力される信号線の信号がローレベルのとき、電圧信号線への出力を維持するように構成されてもよい。
【0012】
また、本開示の表示装置は、上述したいずれかのLED駆動装置と、LED駆動装置によって駆動されるLEDとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示のLED駆動装置及び表示装置によれば、簡易な構成で電流ドライバ間で互いに状態を把握することが可能となる。その結果、LED列毎の帰還制御が互いに干渉するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態に従うLEDドライバを用いた表示装置の全体構成を示す図である。
図2】カレントドライバにおけるフェール信号の出力回路の構成例を示す図である。
図3図2に示す回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図4】本実施の形態に従うカレントドライバの構成例を示す回路図である。
図5図4に示したカレントドライバの動作例を概略的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
<LEDドライバの構成>
図1は、本開示の実施の形態に従うLEDドライバを用いた表示装置の全体構成を示す図である。図1を参照して、表示装置1は、LED列10-1~10-4と、DC/DCコンバータ20と、カレントドライバ30-1~30-4と、コントローラ40と、MCU(Micro Control Unit)50と、プルアップ電源52とを備える。
【0017】
LED列10-1~10-4は、並列して電力線L1に接続され、DC/DCコンバータ20から電力の供給を受けて発光する。LED列10-1~10-4の各々は、直列接続された複数のLED12を含む。この例では、LED列の数は4つとしているが、LED列の数はこれに限定されるものではない。また、各LED列に含まれるLED12の数も特に限定されるものではない。
【0018】
DC/DCコンバータ20は、電力線L1を通じてLED列10-1~10-4へ電力を供給する電源回路である。DC/DCコンバータ20は、電源ノード22と、コイル24と、スイッチング素子Q1と、ダイオード26と、キャパシタ28とを含んで構成される。コイル24は、電源ノード22とスイッチング素子Q1との間に接続される。スイッチング素子Q1は、コイル24と接地ノードとの間に接続される。スイッチング素子Q1のゲートは、コントローラ40に接続されている。この例では、スイッチング素子Q1は、N型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、NPN型バイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0019】
ダイオード26は、コイル24とスイッチング素子Q1との接続点にアノードが接続され、電力線L1にカソードが接続される。この例では、ダイオード26は、ショットキーバリアダイオード(以下「SBD(Schottky Barrier Diode)」と称する。)である。SBDは、順方向電圧が小さいため、順方向の損失が小さく高効率であり、また、スイッチングが高速である。なお、ダイオード26がSBDであることは必須ではなく、SBD以外のダイオードを採用することも可能である。キャパシタ28は、電力線L1と接地ノードとの間に接続される。
【0020】
これらの電源ノード22、コイル24、スイッチング素子Q1、SBD26、及びキャパシタ28によって、いわゆる非同期整流型の昇圧チョッパ回路が形成されている。コントローラ40によってスイッチング素子Q1がスイッチング制御され、電源ノード22から供給される電力が昇圧されてLED列10-1~10-4へ供給される。
【0021】
カレントドライバ30-1~30-4は、それぞれLED列10-1~10-4に対応して設けられ、それぞれLED列10-1~10-4に流れる電流を調整する。なお、各カレントドライバ30-1~30-4の構成は同じであるので、以下ではカレントドライバ30-1について代表的に説明する。
【0022】
カレントドライバ30-1は、LED列10-1に流れる電流を所定の目標に制御する。また、カレントドライバ30-1は、LED列10-1のカソード側の電圧V1を受け、電圧V1に応じて、コントローラ40に接続される電圧帰還線L2へ出力される帰還電圧Vfb1を調整する。具体的には、カレントドライバ30-1は、電圧V1に応じて、電圧帰還線L2からのシンク電流を調整する。なお、後述のように、他のカレントドライバ30-2~30-4の状態によっては、LED列毎の制御の干渉を防止するため、カレントドライバ30-1は、電圧V1に拘わらず帰還電圧Vfb1(シンク電流)を維持する。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
さらに、カレントドライバ30-1は、内部の各種異常を検知する機能を備えている。そして、カレントドライバ30-1は、異常が検知されているか否かを示すフェール信号FL1を、MCU50に接続される信号線L4へ出力可能に構成されている。カレントドライバ30-1~30-4の構成については、後ほど詳しく説明する。
【0024】
コントローラ40は、電圧帰還線L2の電圧レベルに基づいてDC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q1を駆動する。コントローラ40は、たとえば、エラーアンプと、PWM(Pulse Width Modulation)回路とを含んで構成することができる(いずれも図示せず)。エラーアンプは、電圧帰還線L2の電圧(Vfbとする。)が所定値(たとえば0.5V)となるように、電圧Vfbと所定値との差を増幅して出力する。PWM回路は、エラーアンプの出力に基づいてPWM信号を生成し、その生成されたPWM信号をスイッチング素子Q1のゲートへ出力する。なお、電圧帰還線L2は、各カレントドライバ30-1~30-4に共通に設けられているので、各カレントドライバ30-1~30-4のシンク電流の合計に応じた電圧が電圧帰還線L2によってコントローラ40に伝達される。
【0025】
なお、コントローラ40は、ハードウェア(電子回路)で実行するものに限られず、ソフトウェアで実行するもので構成されてもよい。具体的には、コントローラ40を、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))、各種信号を入出力するための入出力バッファ等を含んで構成してもよい。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、コントローラ40の処理手順が記されたプログラムである。そして、コントローラ40は、このプログラムに従って各種処理を実行するように構成されてもよい。
【0026】
このLEDドライバでは、カレントドライバ30-1~30-4により、それぞれLED列10-1~10-4に流れる電流が所定の電流目標値に調整される。また、帰還電圧Vfb1~Vfb4に基づいて、コントローラ40によりDC/DCコンバータ20が駆動される。これにより、各LED列10-1~10-4のカソード側の電圧をDC/DCコンバータ20により調整しつつ、各LED列10-1~10-4に流れる電流が目標に制御される。
【0027】
MCU50は、表示装置1の表示全体を制御する上位のコントロールユニットである。一例として、MCU50は、LED列10-1~10-4の表示タイミングを制御するための同期信号(水平同期信号、垂直同期信号)を生成する。
【0028】
また、MCU50は、カレントドライバ30-1~30-4からそれぞれ出力されるフェール信号FL1~FL4を信号線L4から受ける。図示のように、フェール信号FL1~FL4は、共通の信号線L4に出力される。MCU50は、信号線L4の信号レベルに基づいて、カレントドライバ30-1~30-4のいずれかにおいて異常が検知されているか否かを取得し、異常が検知されている場合に所定の処理を実行することができる。
【0029】
図2は、カレントドライバ30-1~30-4におけるフェール信号FL1~FL4の出力回路の構成例を示す図である。なお、この図では、カレントドライバ30-1,30-2の構成が示されており、カレントドライバ30-3,30-4については図示が省略されているが、各カレントドライバ30-1~30-4の構成は同じである。以下では、カレントドライバ30-1におけるフェール信号FL1の出力回路の構成について代表的に説明する。
【0030】
図2を参照して、カレントドライバ30-1におけるフェール信号FL1の出力回路は、スイッチング素子Q21と、NOT回路32-1とを含む。スイッチング素子Q21は、外部端子T1と接地ノードとの間に接続される。この例では、スイッチング素子Q21は、N型MOSFETであるが、NPN型バイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0031】
外部端子T1には、信号線L4が接続される。信号線L4は、MCU50に接続され、プルアップ電源52により電圧VHにプルアップされている。なお、信号線L4は、カレントドライバ30-2~30-4において出力回路が接続される外部端子にも接続されている。
【0032】
NOT回路32-1は、カレントドライバ30-1において異常が検知されるとH(論理ハイ)レベルからL(論理ロー)レベルとなる信号FS1を受け、信号FS1の論理状態(ハイ又はロー)を反転して出力する。NOT回路32-1の出力端は、スイッチング素子Q21のゲートに接続される。
【0033】
この出力回路は、カレントドライバ30-1において異常が検知されたか否かを示すフェール信号FL1を所謂オープンドレイン(スイッチング素子Q21がNPN型バイポーラトランジスタで構成される場合にはオープンコレクタ)で信号線L4へ出力する。すなわち、カレントドライバ30-1において異常が検知されると、信号FS1がLレベルとなり、スイッチング素子Q21はオンとなる。これにより、信号線L4の電位は、VH(Hレベル)から接地レベル(Lレベル)へプルダウンされる。
【0034】
信号線L4は、各カレントドライバ30-1~30-4の出力回路に接続されており、カレントドライバ30-1~30-4のいずれかにおいて異常が検知されると、信号線L4の電位がプルダウンされ、信号線L4の信号はLレベルとなる。すなわち、信号線L4の電位は、カレントドライバ30-1~30-4のいずれかにおいて異常が検知されているか否かを示しており、信号線L4の電位が接地レベル(Lレベル)にプルダウンされている場合は、カレントドライバ30-1~30-4のいずれかにおいて異常が検知されている。
【0035】
<カレントドライバ間の通信機能>
上記のように、本開示のLEDドライバでは、LED列10-1~10-4毎に、帰還電圧Vfb1~Vfb4に基づく帰還制御が行なわれる。この場合に、LED列毎の帰還制御が互いに干渉する可能性がある。たとえば、LED列10-1では、カソード側の電圧V1を高める方向の制御が求められる一方で、LED列10-2では、カソード側の電圧V2を下げる方向の制御が求められる場合がある。
【0036】
たとえば、LED列10-2のカソード側の電圧V2が大きく低下すると、カレントドライバ30-2によってLED列10-2に所望の電流を流せなくなる可能性があるため、電圧V2が低すぎる場合には、他のカレントドライバの制御に拘わらず、カレントドライバ30-2による電圧V2を高める方向の制御を優先させるのが好ましい。一方、電圧V2が高すぎる場合は、カレントドライバ30-2の発熱が大きくなるので、この場合には、他のカレントドライバの制御に拘わらず、カレントドライバ30-2による電圧V2を下げる方向の制御を優先させるのが好ましい。
【0037】
このように、各カレントドライバ30-1~30-4における帰還制御は、他のカレントドライバにおける帰還制御と干渉する場合がある。このような場合に、各カレントドライバ30-1~30-4の状態をMCU50により把握して管理することも考えられるが、MCU50の改造が別途必要になる。
【0038】
そこで、本実施の形態に従うLEDドライバでは、図2に示した、各カレントドライバ30-1~30-4におけるフェール信号の出力回路を利用して、あるカレントドライバが他のカレントドライバの状態を取得可能とする。以下、これについて説明する。
【0039】
図3は、図2に示した回路の動作例を示すタイミングチャートである。図3とともに図2を参照して、時刻t2において、カレントドライバ30-1にて異常が検知されたものとする。異常が検知されると、信号FS1がLレベルとなり、スイッチング素子Q21がオンとなる。これにより、信号線L4の電位がプルダウンされ、フェール信号FL1はLレベルとなる。
【0040】
他のカレントドライバ30-2~30-4は、信号線L4の電位に基づいて、カレントドライバ30-1において異常が検知されていることを知ることができる。たとえば、カレントドライバ30-2についてみれば、どのカレントドライバにおいて異常が検知されているかまでは分からないけれども、カレントドライバ30-1,30-3,30-4のいずれかにおいて異常が検知されていることは判断可能である。このように、図2に示した、カレントドライバ30-1~30-4におけるフェール信号の出力回路を用いれば、カレントドライバ30-1~30-4間で通信機能を持たせることが可能である。
【0041】
しかしながら、あるカレントドライバ(たとえばカレントドライバ30-1)において異常が検知されている間(図3の時刻t2以降)は、信号線L4の電位が既にプルダウン(Lレベル)されているので、このままでは、信号線L4を通じてカレントドライバ間で情報を伝達することができない。
【0042】
そこで、本実施の形態に従うLEDドライバでは、図2に示したフェール信号の出力回路において、周期的に所定期間だけ、フェール信号に代えてカレントドライバの状態を示す状態信号を出力する。周期的なタイミングには、LED列10-1~10-4の表示タイミングを制御するための同期信号Vsync(水平同期信号又は垂直同期信号)が用いられる。すなわち、各カレントドライバ30-1~30-4に共通の同期信号Vsyncをトリガにして、同期信号Vsyncが立上がる毎に所定期間だけ、図2に示したフェール信号の出力回路を、フェール信号を出力する回路としてではなく、カレントドライバの状態を示す状態信号を出力する回路として用いる。これにより、あるカレントドライバにおいて、信号線L4を通じて他のカレントドライバの状態を取得することができる。
【0043】
図4は、本実施の形態に従うカレントドライバ30-1~30-4の構成例を示す回路図である。なお、各カレントドライバ30-1~30-4の構成は同様であり、図4では、カレントドライバ30-1の構成について代表的に示されている。
【0044】
図4を参照して、カレントドライバ30-1は、出力回路70と、電流調整部72と、コンパレータ80,81と、切替回路82と、入力回路84と、出力制御回路86とを含む。なお、出力回路70の構成は、図2で説明したので繰り返さない。
【0045】
電流調整部72は、スイッチング素子Q31と、抵抗素子74と、アンプ76とを含む。スイッチング素子Q31は、LED列10-1のカソード側が接続される外部端子T11と抵抗素子74との間に接続される。この例では、スイッチング素子Q31は、N型MOSFETであるが、NPN型バイポーラトランジスタ等であってもよい。抵抗素子74は、スイッチング素子Q31と接地ノードとの間に接続される。
【0046】
スイッチング素子Q31と抵抗素子74との接続点は、アンプ76の反転入力端(-)に接続される。アンプ76の非反転入力端(+)には、基準電圧Vref1が与えられる。アンプ76の出力端は、スイッチング素子Q31のゲートに接続される。
【0047】
アンプ76の反転入力端(-)には、スイッチング素子Q31に流れる電流(すなわちLED列10-1に流れる電流)を抵抗素子74によって電圧に変換した検出信号(電圧)が入力される。アンプ76の非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vref1は、LED列10-1に流れる電流の目標値を抵抗素子74の抵抗値によって電圧に変換した信号である。
【0048】
アンプ76は、基準電圧Vref1と上記検出信号(電圧)とが等しくなるようにスイッチング素子Q31を駆動する。これにより、スイッチング素子Q31に流れる電流、すなわちLED列10-1に流れる電流が、基準電圧Vref1に対応する電流目標値に調整される。
【0049】
コンパレータ80の非反転入力端(+)は、外部端子T11に接続され、LED列10-1のカソード側の電圧V1を受ける。コンパレータ80の反転入力端(-)には、基準電圧Vref2が入力される。この基準電圧Vref2は、LED列10-1の点灯に影響し得る程度まで電圧V1が低下したことを示す電圧レベルである。コンパレータ80は、電圧V1と基準電圧Vref2との比較結果を示す信号を切替回路82及び出力制御回路86へ出力する。
【0050】
コンパレータ81の非反転入力端(+)は、外部端子T11に接続され、LED列10-1のカソード側の電圧V1を受ける。コンパレータ81の反転入力端(-)には、基準電圧Vref3が入力される。基準電圧Vref3は、コンパレータ80の反転入力端(-)に入力される基準電圧Vref2よりも高い。この基準電圧Vref3は、コンパレータ80の発熱が問題となり得る程度まで電圧V1が上昇したことを示す電圧レベルである。そして、コンパレータ81は、電圧V1と基準電圧Vref3との比較結果を示す信号を出力制御回路86へ出力する。
【0051】
切替回路82は、カレントドライバ30-1において異常が検知されるとHレベルからLレベルとなる信号FS1と、コンパレータ80の出力とを受ける。そして、外部端子T12から入力される同期信号Vsyncの立上がりから所定期間だけ、コンパレータ80から受ける信号を出力回路70へ出力する。したがって、同期信号Vsyncの立上がりから所定期間は、出力回路70は、コンパレータ80の出力をオープンドレインで信号線L4へ出力する。
【0052】
具体的には、電圧V1が基準電圧Vref2よりも低い場合(LED列10-1のドレイン電圧の低下時)は、出力回路70においてスイッチング素子Q2がオンするため、外部端子T1の電位はプルダウンされ、外部端子T1の信号レベルはLレベルとなる。一方、電圧V1が基準電圧Vref2よりも高い場合は、スイッチング素子Q2はオフとなり、外部端子T1の信号レベルはHレベルとなる。
【0053】
なお、上記の所定期間以外は、切替回路82は、信号FS1を出力回路70へ出力する。したがって、出力回路70は、カレントドライバ30-1において異常が検知された場合にフェール信号FL1をMCU50へ通知するための回路として作動する。
【0054】
入力回路84の入力端は、外部端子T1に接続される。この入力回路84は、外部端子T1に接続される信号線L4(図2)の信号をカレントドライバ30-1内に取り込むための回路である。入力回路84は、外部端子T1の電位(すなわち信号線L4の電位)がVH(Hレベル)のとき、信号STをHレベルで出力し、上記の電位が接地レベル(Lレベル)のときは、信号STをLレベルで出力する。
【0055】
出力制御回路86は、外部端子T11から入力される電圧V1を受ける。また、出力制御回路86は、外部端子T12から入力される同期信号Vsync、入力回路84から出力される信号ST、及びコンパレータ80,81の出力信号をさらに受ける。そして、出力制御回路86は、同期信号Vsyncの立上がりから所定期間の間、信号ST及びコンパレータ80,81の出力信号に基づいて、帰還電圧Vfb1の出力を制御する。
【0056】
具体的には、帰還電圧Vfb1の出力は、電圧帰還線L2(図1)が接続される外部端子T13から引き込むシンク電流を調整することによって制御される。たとえば、コンパレータ81の出力信号がHレベルであるときは(電圧V1>基準電圧Vref3)、出力制御回路86は、シンク電流を低減させる。これにより、電圧帰還線L2の電流が減少すれば、コントローラ40は、出力電圧を下げるように作動し、その結果、LED列10-1のカソード側の電圧V1が下がる。
【0057】
コンパレータ80,81の出力信号がそれぞれHレベル,Lレベルであり(基準電圧Vref2<電圧V1<基準電圧Vref3)、かつ、信号STがLレベルであるときは、出力制御回路86は、シンク電流を維持する。
【0058】
コンパレータ80の出力信号がLレベルであるときは(電圧V1<基準電圧Vref2)、出力制御回路86は、シンク電流を増加させる。これにより、電圧帰還線L2の電流が増加すれば、コントローラ40は、出力電圧を上げるように作動し、その結果、LED列10-1のカソード側の電圧V1が上がる。
【0059】
Lレベルの信号STは、他のカレントドライバ30-2~30-4のいずれかにおいて、LED列のカソード側の電圧が基準電圧Vref2よりも低いために出力回路70により信号線L4の電位がプルダウン(Lレベル)されていることを示している。このため、カレントドライバ30-1において、電圧V1を下げる方向の帰還制御が行なわれると、LED列のカソード側の電圧が基準電圧Vref2よりも低いLED列のカレントドライバにおいて、対応のLED列に十分な電流を流せなくなる可能性がある。
【0060】
そこで、カレントドライバ30-1において、コンパレータ80,81の出力信号がそれぞれHレベル,Lレベルであり(基準電圧Vref2<電圧V1<基準電圧Vref3)、かつ、信号STがLレベルであるときは、LED列のカソード側の電圧が基準電圧Vref2よりも低いLED列における帰還制御(電圧を高める方向の制御)を優先させるために、出力制御回路86によってシンク電流が維持される。これにより、電圧帰還線L2の電流は、LED列のカソード側の電圧が基準電圧Vref2よりも低いカレントドライバにおけるシンク電流が増加することによって全体として増加し、各LED列のカソード側の電圧は上昇する。
【0061】
なお、カレントドライバ30-1において、コンパレータ81の出力信号がHレベルであるときは(電圧V1>基準電圧Vref3)、信号STがLレベルであっても、出力制御回路86によってシンク電流を低減させる。これにより、LED列のカソード側の電圧が基準電圧Vref2よりも低いカレントドライバにおけるシンク電流の増加と、カレントドライバ30-1におけるシンク電流の低減とが相殺され、電圧V1の上昇が抑制される。なお、この場合は、電圧が低下したLED列においてもカソード側の電圧上昇が抑制されるけれども、基準電圧Vref3を超えた電圧V1がさらに上昇するのを抑制することができる。
【0062】
図5は、図4に示したカレントドライバ30-1の動作例を概略的に示すタイミングチャートである。なお、以下では、説明を容易にするため、カレントドライバ30-2との関係のみについて説明を行なう。
【0063】
図5とともに図4を参照して、時刻t13において、カレントドライバ30-1にて異常が検知されたものとする。異常が検知されると、信号FS1がLレベルとなり、スイッチング素子Q21がオンとなる。これにより、外部端子T1の電位(信号線L4の電位)がプルダウンされ、当該電位は0となる。
【0064】
時刻t11,t14,t16において、周期的に同期信号Vsyncが発生している。この実施の形態に従うLEDドライバでは、同期信号Vsyncの発生後、所定期間Δtだけ、カレントドライバ30-1の異常を示す信号FS1に代えて、コンパレータ80の出力が出力回路70に与えられる。
【0065】
この例では、時刻t11の時点では、電圧V1が基準電圧Vref2よりも低いため、コンパレータ80の出力はLレベルである。このため、時刻t11において、スイッチング素子Q21がオンとなり、外部端子T1の電位はプルダウンされる(Lレベル)。したがって、出力制御回路86は、シンク電流を増加させ、コントローラ40(図1)によって電圧V1を高める方向の帰還制御が行なわれる。そして、これにより、電圧V1は、基準電圧Vref2を超えている。
【0066】
時刻t14において、次周期の同期信号Vsyncが発生する。時刻t14の時点では、電圧V1が基準電圧Vref2よりも高いため、コンパレータ80の出力はHレベルである。このため、時刻t14において、スイッチング素子Q21はオフとなる。
【0067】
ここで、カレントドライバ30-2では、電圧V2が基準電圧Vref2よりも低いため、出力回路70においてスイッチング素子Q21がオンとなる。これにより、信号線L4の電位がプルダウンされ、カレントドライバ30-1において、信号線L4が接続される外部端子T1の電位は0(Lレベル)となる。すなわち、この外部端子T1の電位は、カレントドライバ30-2の状態を示している。
【0068】
この場合、出力制御回路86は、シンク電流を維持する。これにより、電圧帰還線L2の電流は全体として増加し(カレントドライバ30-2においてシンク電流が増加)、コントローラ40により電圧を高める方向の帰還制御が行なわれる。
【0069】
続いて、時刻t16において、次周期の同期信号Vsyncが発生する。時刻t16~t17の所定期間Δtにおけるカレントドライバ30-1の動作は、時刻t14~t15における動作と同じである。
【0070】
なお、特に図示していないが、電圧V1が基準電圧Vref3を超えた場合には、カレントドライバ30-1の出力制御回路86は、電圧V1を下げるためにシンク電流を低減させる。このとき、カレントドライバ30-2において電圧V2が基準電圧Vref2よりも高ければ、カレントドライバ30-2においてシンク電流が維持されるので、コントローラ40は出力電圧を下げるように作動し、電圧V1は低下する。
【0071】
以上のように、この実施の形態によれば、各カレントドライバ30-1~30-4は、同期信号Vsyncに従って一時的に、フェール信号FL1~FL4が出力される信号線L4を用いて、他のカレントドライバの状態を把握することができる。したがって、この実施の形態によれば、簡易な構成でカレントドライバ30-1~30-4間で互いに状態を把握することができる。
【0072】
なお、上記の実施の形態では、DC/DCコンバータ20は、非同期整流型の昇圧チョッパ回路としたが、DC/DCコンバータ20の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、DC/DCコンバータ20は、非同期整流型の降圧チョッパ回路であってもよいし、同期整流型のDC/DCコンバータであってもよい。
【0073】
なお、上記の表示装置1は、たとえば、多数のLEDが設けられる液晶ディスプレイ(LCD)に適用することができる。
【0074】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 表示装置、10-1~10-4 LED列、20 DC/DCコンバータ、22 電源ノード、24 コイル、26 SBD、28 キャパシタ、30-1~30-4 カレントドライバ、32-1,32-2 NOT回路、40 コントローラ、50 MCU、52 プルアップ電源、70 出力回路、72 電流調整部、74 抵抗素子、76 アンプ、80,81 コンパレータ、82 切替回路、84 入力回路、86 出力制御回路、L1 電力線、L2 電圧帰還線、L4 信号線、Q1,Q21,Q22,Q31 スイッチング素子、T1,T2,T11~T13 外部端子。
図1
図2
図3
図4
図5