(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230424BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
(21)【出願番号】P 2019128751
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】藤森 太一
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-131055(JP,A)
【文献】特開2009-113632(JP,A)
【文献】特開2016-210337(JP,A)
【文献】特開2019-051772(JP,A)
【文献】実開平05-066454(JP,U)
【文献】登録実用新案第3144552(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0014485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路内に前可動ルーバと後可動ルーバが直交方向に且つ前後して配設され、該前可動ルーバの前フィンに操作ノブが摺動可能に外嵌され、該操作ノブの後部に設けた係合部が該後可動ルーバに係合し、該操作ノブの操作により該前可動ルーバと該後可動ルーバを回動させて、空気の吹出方向を調整するレジスタであって、
該操作ノブは、該前フィンの一方の面を覆うノブ基部と、他方の面を覆うノブ蓋部と、該操作ノブの内側に収納され該前フィンの端部に接触して摩擦抵抗荷重を付与する荷重付与部材と、を備え、
該荷重付与部材は、断面略コ字状に形成され、該前フィンの該端部を覆う部材本体と、該部材本体内に設けられ、該前フィンの該端部と係合する係合凸部と、を設けて形成され、
該部材本体を該前フィンの該端部側に押圧するばね弾性部材が設けられたことを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
前記前フィンの前記端部に、長手方向に断面略三角形の係合溝を設け、前記荷重付与部材の前記係合凸部が、該係合溝に係合することを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
前記荷重付与部材の前記部材本体の前面に、前記ばね弾性部材から押圧される押圧凸部を設けることを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【請求項4】
前記ノブ基部の内側に、ばね押圧部が左右の両側に設けられ、両側の該ばね押圧部が、前記ばね弾性部材に、当接して取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【請求項5】
前記前フィンの前記一方の面に、長手方向に溝形状の下係合溝を有し、前記ノブ基部に、ガイド突起部を有し、該下係合溝に該ガイド突起部が係合することを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内等の換気や空調装置の空気吹出口に使用されるレジスタに関し、特に、前可動ルーバの前フィンに、摺動可能に外嵌された操作ノブを有したレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内空調用のレジスタとして、通風路を形成するリテーナ内に、前可動ルーバと後可動ルーバを前後して直交方向に配設し、前方に位置する前可動ルーバの前フィンに、操作ノブを、フィンの長手方向に摺動可能に取り付けた構造のレジスタが知られている。この種のレジスタの操作ノブには、その操作荷重を付与するために、シリコンゴムを含む熱可塑性エラストマーなどからなる荷重付与部材が前フィンとの摺接位置に設けられている。このため、手動による摺動操作のみであれば、荷重付与部材の摩耗は少なく問題とならないものの、電動によるオートスイング機能を搭載するスイングレジスタでは、摩耗は顕著なものとなる。このため、摩耗が顕著に生じると、長期の使用に伴い、摩耗粉が発生し、操作ノブの摺動時には引っ掛かりやガタが発生し易い。
【0003】
この種のレジスタの操作ノブとして、下記特許文献1により、ローラを備えた操作ノブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このレジスタの操作ノブは、前可動ルーバの前フィンに、その長手方向に摺動可能に外嵌されて、操作ノブの後側の内側には、回動自在に2つのローラが取り付けられ、ローラの外周部が前フィンの後端部に当接することによって、摩擦抵抗荷重を発生させる。そして、その摩擦抵抗荷重が、操作ノブに対して、摺動時の操作荷重を付与する。しかし、この操作ノブに、前フィンに当接するローラが取付けられるため、操作ノブの操作により、摩耗粉が発生するという課題がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、操作荷重を付与し、且つ、摺動操作による摩耗粉の発生を防止可能な操作ノブを備えたレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のレジスタは、
通風路内に前可動ルーバと後可動ルーバが直交方向に且つ前後して配設され、該前可動ルーバの前フィンに操作ノブが摺動可能に外嵌され、該操作ノブの後部に設けた係合部が該後可動ルーバに係合し、該操作ノブの操作により該前可動ルーバと該後可動ルーバを回動させて、空気の吹出方向を調整するレジスタであって、
該操作ノブは、該前フィンの一方の面を覆うノブ基部と、他方の面を覆うノブ蓋部と、該操作ノブの内側に収納され該前フィンの端部に接触して摩擦抵抗荷重を付与する荷重付与部材と、を備え、
該荷重付与部材は、断面略コ字状に形成され、該前フィンの該端部を覆う部材本体と、該部材本体内に設けられ、該前フィンの該端部と係合する係合凸部と、を設けて形成され、
該部材本体を該前フィンの該端部側に押圧するばね弾性部材が設けられたことを特徴とする。
【0008】
なお、レジスタの前後は、通風路内の下流側が前であり、通風路内の上流側が後であり、左右は、前側から後側を見た際の左右である。
【0009】
本発明のレジスタによれば、荷重付与部材の部材本体が、断面略コ字状に形成され、前フィンの端部を覆って、ばね弾性部材により係合凸部を前フィンの端部に押圧し、荷重付与部材を有する操作ノブが前フィン上を摺動するため、オートスイング機能を搭載するスイングレジスタの場合のように、操作ノブが頻繁に往復摺動を繰り返した場合でも、適度の操作荷重を付与しつつ、摩耗粉の発生を防止することができる。
【0010】
また、上記レジスタにおいて、前記前フィンの前記端部に、長手方向に断面略三角形の係合溝を設け、前記荷重付与部材の前記係合凸部が、該係合溝に係合する構成とすることができる。これによれば、前フィンと係合凸部との隙間を少なくして、操作ノブの摺動操作時の、ガタツキを抑制し、円滑にスライド操作することができる。
【0011】
また、上記レジスタにおいて、前記荷重付与部材の前記部材本体の前面に、前記ばね弾性部材から押圧される押圧凸部を設けることができる。これによれば、ばね弾性部材が多少湾曲した場合であっても、ばね弾性部材が部材本体を、押圧凸部を介して前フィン側にバランス良く押圧することができ、操作ノブの摺動操作時、均一な操作荷重を付与することができる。
【0012】
また、上記レジスタにおいて、前記ノブ基部の内側に、ばね押圧部が左右の両側に設けられ、両側の該ばね押圧部が、前記ばね弾性部材に、当接して設けられる構成とすることができる。これによれば、ばね押圧部がばね弾性部材を荷重付与部材の押圧凸部に安定して押し付け、押圧凸部が荷重付与部材の係合凸部を前フィンの凹状形状に安定して押し付けるため、安定した操作荷重を生じさせることができる。
【0013】
また、上記レジスタにおいて、前記前フィンの前記一方の面に、長手方向に溝形状の下係合溝を有し、前記ノブ基部に、ガイド突起部を有し、該下係合溝に該ガイド突起部が係合する構成とすることができる。これによれば、操作ノブに対して、前フィンが、荷重付与部材に加えガイド突起部によっても支持されるため、操作ノブの摺動操作に対して、ガタツキをより防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジスタによれば、操作ノブの摺動操作時、適度な操作荷重を付与し、荷重付与部材と前フィンとの摩擦力が分散され、且つ、摺動部分からの摩耗粉の発生を防止することができる。このため、操作ノブの摺動操作による摩耗を低減させ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態のレジスタの、ベゼルを外した状態における右前方からの斜視図である。
【
図4】操作ノブが外嵌された前フィンと操作ノブの正面図である。
【
図7】同前フィンと操作ノブの縦方向断面図であり
図4のVII-VII線位置の断面図である。
【
図8】同前フィンと操作ノブの水平方向断面図であり
図4のVIII-VIII線位置の断面図である。
【
図10】Aは操作ノブが外嵌される前フィンの平面図、Bはその左前方からの斜視図、Cはその左後方からの斜視図、Dはその後方から見上げた斜視図である。
【
図11】Aは荷重付与部材の正面図、Bはその背面図、Cはその平面図、Dはその側面図、Eはその前方からの斜視図、Fはその後方からの斜視図である。
【
図13】Aはノブ基部の平面図、Bはその正面図、Cはその左側面図、Dはその前方からの斜視図、Eはその後方からの斜視図である。
【
図14】Aはノブ蓋部の下から見上げた斜視図、Bはその後方からの斜視図である。
【
図15】Aは装飾部の前方からの斜視図、Bはその後方からの斜視図である。
【
図16】Aは荷重付与部材を取り付けたノブ基部の後方からの斜視図、Bは前フィンと荷重付与部材を取り付けたノブ基部の後方からの斜視図、Cはその前方からの斜視図である。
【
図17】Aは操作ノブが外嵌された前フィンの前方からの斜視図、Bはその下前方側からの斜視図、Cはその下後方からの斜視図である。
【
図18】Aはレジスタの水平方向断面図であり
図2のXVIII-XVIII線位置の断面図で風向を正面に向けたもの、Bはその風向を左に向けた断面図である。
【
図19】Aは本発明の第2実施形態のレジスタの前フィンと操作ノブの水平方向断面図であり
図4のVIII-VIII線位置に相当する断面図、Bは同レジスタの前フィンと操作ノブの縦方向断面図であり
図4のVII-VII線位置に相当する断面図である。
【
図20】Aは本発明の第2実施形態のレジスタの荷重付与部材の正面図、Bはその背面図、Cはその平面図、Dはその側面図、Eはその前方からの斜視図、Fはその後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図3は、車室等の空調装置の空気吹出用に使用されるレジスタを示している。このレジスタは、ダクト状で内部に通風路41を設けたリテーナ4の正面側に、空気吹出口42を設け、図示しないベゼルが嵌着される。空気吹出口42の直ぐ内側(後方側)に、前可動ルーバ5が、前フィン60の長手方向を水平横方向に配設され、前可動ルーバ5の上流側(後方側)の通風路41内に、後可動ルーバ7が、後フィン70の長手方向を上下縦方向に配設されて構成される。
【0017】
図1に示すように、前可動ルーバ5の各前フィン60と後可動ルーバ7の各後フィン70は、相互に、直交方向に前後して配置され、前可動ルーバ5の中央の前フィン60には、操作ノブ1が前フィン60の長手方向に摺動可能に外嵌され、操作ノブ1の操作により、前可動ルーバ5の上下方向の向きと後可動ルーバ7の左右方向の向きが調整される(
図18)。
【0018】
図3に示すように、リテーナ4の上壁と下壁の内側に、後可動ルーバ7を軸支する軸受板71,72が対向して配置され、嵌着される。上下の軸受板71,72には、後可動ルーバ7の後フィン70用の軸孔が所定の間隔をおいて穿設され、各後フィン70の上下に突設された支軸が上下の軸受板71,72の各軸孔に嵌入され、後フィン70は左右に回動可能に軸支される。
【0019】
後可動ルーバ7には、
図3に示す如く、複数(ここでは5枚)の後フィン70が、上下縦方向に配置され、左右に所定の間隔をおいて並設される。各後フィン70の下側の支軸の下側から前方に、連結軸が突設され、1本のリンクバー73が各後フィン70のそれぞれの連結軸に連結され、全ての後フィン70が所定の角度範囲内で、同期して同じ方向に回動する。左右方向の中央位置の後フィン70の前部に、歯車状のフィン係合部74が設けられ、操作ノブ1の後部に設けた歯車状の係合部17がこのフィン係合部74に噛合する。操作ノブ1は、前フィン60上に水平横方向に摺動可能に外嵌され、操作ノブ1を左右方向(前フィンの長手方向)に摺動させたとき、歯車状の係合部17が後フィン70の歯車状のフィン係合部74と係合し、後フィン70が右又は左に支軸を軸に回動する。
【0020】
前可動ルーバ5は、
図3に示す如く、複数(ここでは5枚)の前フィン60を、水平横方向に配置し、各前フィン60を上下に一定の間隔をおいて並設して構成される。各前フィン60は、ベゼルの内側で、リテーナ4前部の左右側壁に設けた軸受板51,52により軸支される。両側の軸受板51,52は、空気吹出口42の直ぐ内側に配設され、左右側壁の内側に対向して取り付けられる。
【0021】
図10に示すように、前可動ルーバ5の前フィン60には、左右の両端部に、支軸61,63が突設され、
図3に示すように、両側の軸受板51,52の各軸孔に、支軸61,63が嵌入され、前フィン60は上下に回動可能に軸支される。各前フィン60の左端にガイドピン62が、左端の支軸61の近傍に突設され、ガイドピン62は軸受板51に形成されたガイド溝に係合し、前フィン60の回動範囲をガイドする。さらに、各前フィン60の右端の支軸63から連結軸64を設けたアームが後方に突設され、1本のリンクバー53がそれぞれの連結軸64に連結される(
図3)。これにより、上下方向中央の前フィン60に外嵌された操作ノブ1を持って前フィン60を上下に回動操作すると、前可動ルーバ5の各前フィン60は、両側の支軸61,63を軸に、所定の角度範囲内で、上または下に回動する。
【0022】
図1~
図3に示すように、ダンパノブ44が、レジスタの前面に露出して配置され、上下に回動操作可能に軸支される。リテーナ4は、略矩形のダクト状に形成され、内部に通風路41が形成され、通風路41内の後部の両側側壁に、ダンパプレート43用のダンパ軸孔が設けられ、そこにダンパプレート43の回動軸が嵌挿される。ダンパプレート43の一方の回動軸には、ダンパアームが連結され、ダンパアームは、ダンパレバーを介して、ダンパノブ44の端部にリンクされる。これにより、ダンパノブ44を上または下に回動操作したとき、ダンパプレート43が回動し、通風路41が開閉される。
【0023】
図10に示すように、中央の前フィン60の前端部に、長手方向に断面略三角形の係合溝65が設けられ、下側となる面に、長手方向に断面略三角形の下係合溝66が設けられる。また、前フィン60の後端部に、断面略三角形の後部係合溝67が、長手方向に2箇所に分かれて設けられている。
図9に示すように、後部係合溝67に、操作ノブ1のノブ基部11の後部突起部18が係合し、前端部の係合溝65には、荷重付与部材3の係合凸部35が嵌入する。これにより、操作ノブ1は、その摺動操作に対して、ガタツキを抑制し、円滑にスライド操作ができる。前フィン60は、実施形態では、硬質プラスチックである45質量%ガラス繊維充填ポリブチレンフタレート(PBT-G45%)を使用して射出成形される。
【0024】
操作ノブ1は、
図13~
図17に示す如く、中央の前フィン60に外嵌され、前フィン60の下側の面を覆うノブ基部11と、上側の面を覆うノブ蓋部12と、操作ノブ1の内側に収容され前フィン60の前端部に接触して摩擦抵抗荷重を付与する荷重付与部材3と、荷重付与部材3を後方に押圧するバネ弾性部材31と、から構成される。
【0025】
荷重付与部材3は、操作ノブ1の往復摺動に対して、前フィン60の前端部の断面略三角形の係合溝65に、略三角形状の係合凸部35が接触することで、操作ノブ1に摩擦抵抗荷重を付与する部材である。荷重付与部材3は、操作ノブ1が頻繁に往復摺動を繰り返した場合でも、適度の操作荷重を付与しつつ、摩耗粉の発生を抑制するように、硬質プラスチックにより成形される。実施形態では、荷重付与部材3は、硬質プラスチックとしてPOM(ポリアセタール)を使用して射出成形される。
【0026】
荷重付与部材3は、
図11に示す如く、外観が略矩形状であり、短手方向の断面が略コ字状に形成される。荷重付与部材3は、前フィン60の前端部を覆う部材本体33を有し、部材本体33内に、前フィン60の係合溝65と係合する略三角形状の係合凸部35が2箇所に設けられる。部材本体33の前面に、ばね弾性部材31が当接して押圧される押圧凸部32が設けられる。ばね弾性部材31は、
図12に示すように、荷重付与部材3を後方に押圧する棒状の弾性体であり、実施形態では、ばね弾性部材31として、針金状の金属弾性体であるSUS302(ステンレス鋼材)が使用される。
【0027】
荷重付与部材3は、
図7に示す如く、略コ字状に形成された部材本体33が前フィン60の端部を覆って、ノブ基部11内に組み付けられる。このように、荷重付与部材3は、前フィン60の端部を覆い、且つ、ばね弾性部材31によって後方に押圧されることにより、係合凸部35が前フィン60の係合溝65に係合し、操作ノブ1の摺動操作時、操作荷重を発生させて、円滑なスライド操作が可能となる。
【0028】
図9に示すように、両端を支持されたばね弾性部材31が、荷重付与部材3前方の2箇所の押圧凸部32をその中間部で押圧するため、ばね弾性部材31のばね弾性力を、荷重付与部材3に対しバランス良く加えることができ、操作ノブ1の摺動操作に対して、均一な操作荷重を付与することができる。
【0029】
ノブ基部11は、
図16に示す如く、前フィン60の下側を覆い、操作ノブ1を形成する基部となる部材であり、後部に、後可動ルーバ7を回動させる歯車状の係合部17が設けられている。ノブ基部11は、実施形態では、その素材に、PBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂とABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂の混合物を使用して射出成形される。
【0030】
図13に示すように、ノブ基部11に、荷重付与部材3を収容する部材収容部15が設けられ、部材収容部15内に、2本のリブ15aが横断方向に設けられ、2本のリブ15aは、部材本体33の下面に接触し、ガタツキを防止する。また、ノブ基部11の部材収容部15の前側に、ばね収容部16が設けられ、ばね収容部16に、ばね弾性部材31が収容される。操作ノブ1の摺動操作時、ばね弾性部材31がばね収容部16を前から囲うばね支持壁16bの両端が当り、ばね弾性部材31の移動を規制する。また、ばね収容部16内のばね支持壁16bの両側にばね支持部16cが設けられ、ばね弾性部材31を荷重付与部材3側に押圧するばね押圧部16aが設けられている。これにより、棒状のばね弾性部材31は、その両端近傍がばね押圧部16aとばね支持部16cにより挟持される。
【0031】
ガイド突起部14と後部突起部18は、操作ノブ1の摺動操作時のガタツキを抑制する。
図16に示すように、ガイド突起部14が、ノブ基部11の後方上側の左右に、前フィン60の下側の下係合溝66に係合するように(
図17B)、突設されている。また、
図16に示すように、後部突起部18が、ノブ基部11の内側の後方から前方に、前フィン60の後端部の後部係合溝67に係合するように(
図7)、突設されている。
【0032】
操作ノブ1を前フィン60上に組み付ける場合、先ず、
図16Aに示すように、ノブ基部11内のばね収容部16内にばね弾性部材31を挿入し、ばね弾性部材31の両端をばね押圧部16aとばね支持部16c間で支持させる。次に、ノブ基部11内の部材収容部15内に、荷重付与部材3を入れ、ばね弾性部材31に押圧凸部32を当接させる。次に、
図16B,Cに示すように、前フィン60をノブ基部11内に挿入し、前フィン60の前端部中央を荷重付与部材3の部材本体33内に嵌め込む。その状態で、さらに、前フィン60の後端部をノブ基部11内に押し込み、2箇所の後部突起部18を後部係合溝67に嵌め込む。これにより、前フィン60上に操作ノブ1を組付けたとき、ノブ基部11は、
図16B,Cに示すように、前可動ルーバ5の中央の前フィン60の下面を覆うように設置され、上部にノブ蓋部12が嵌着され、前側に装飾部13が嵌着されることによって、
図17に示す如く、操作ノブ1の形態となる。前フィン60の係合溝65、下係合溝66及び後部係合溝67には、摺動をスムーズにすべく、シリコングリスが塗布される。操作ノブ1は、
図13,
図14に示す如く、ノブ蓋部12の左右の係止爪部12aがそれぞれノブ基部11の左右の係止部11aに係止され、ノブ基部11の左右の係止爪部11bがそれぞれノブ蓋部12の左右の係止部12bに係止される。装飾部13は、
図8,
図13,
図15に示すように、装飾部13の左右の係止爪部13cがそれぞれノブ基部11の左右の係止部11cに係止され、装飾部13の左右の係止爪部13dがそれぞれノブ基部11の左右の係止部11dに係止されることによって、操作ノブ1に嵌着される。
【0033】
上記構成のレジスタは、自動車の車内のインストルメントパネルやダッシュボードの部分に、そのリテーナ4の末端を図示しない送風ダクトに接続するようにして装着される。送風ダクトから送られる空気は、リテーナ4内の通風路41から空気吹出口42を通して吹き出される。
【0034】
空気の吹出向きを上または下に調整する場合、前可動ルーバ5に嵌着された操作ノブ1を上または下に回動させて調製する。操作ノブ1を持って上または下に回動させると、操作ノブ1が装着された前フィン60がその支軸61を軸に上下に回動し、その回動力がリンクバー53を介して他の前フィン60に伝達され、各前フィン60がその支軸61を軸に回動し、前フィン60の上下方向の向きが変化し、空気の吹出方向が上下に調整される。
【0035】
一方、空気の吹出向きを左右に調整する場合、操作ノブ1を左または右に移動させて調製する。操作ノブ1を持って左または右に動かすと、操作ノブ1は前フィン60上を摺動し、水平方向(横方向)に移動する。これに伴い、
図18に示すように、操作ノブ1の後部の係合部17が、後可動ルーバ7の後フィン70を、フィン係合部74を介して左右に回動させ、リンクバー73を介して、各後フィン70がその支軸を軸に同期して回動し、後可動ルーバ7の後フィン70の左右方向の向きが変化し、空気の吹出方向が左または右に調整される。
【0036】
操作ノブ1を摺動操作したとき、断面略コ字状に形成された荷重付与部材3の部材本体33が、前フィン60の前端部を覆って、且つ、ばね弾性部材31が係合凸部35を介して前フィン60の前端部を押圧し、適度な摩擦抵抗が生じ、操作ノブ1には適度な操作荷重が付与される。また、硬質プラスチック製の荷重付与部材3を介して操作ノブ1が前フィン60上を摺動するため、例えば、オートスイング機能を搭載するスイングレジスタに、この発明の操作ノブ1を適用し、操作ノブ1が頻繁に往復摺動を繰り返した場合でも、適度の操作荷重を付与しつつ、摩耗粉の発生を防止することができる。また、ガイド突起部14が、前フィン60の下側の下係合溝66に係合するように突設され、後部突起部18が、前フィン60の後端部の後部係合溝67に係合するように突設されているため、操作ノブ1の摺動操作時、操作ノブ1は安定してスムーズに摺動する。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態に係るレジスタの操作ノブ101は、
図19,
図20に示すように、前フィン160の前端部が半円柱状に形成され、荷重付与部材103の部材本体133内の2箇所に、平坦リブ状の係合凸部135が設けられる。これら以外の部分については、第1実施形態に係るレジスタと同じであるため、その説明は省略する。
【0038】
第2実施形態のレジスタに使用される、操作ノブ101が外嵌される前フィン160の前端部は、
図19A,Bに示すように、円滑な半円柱状の曲面を有する。また、荷重付与部材103の前フィン160と係合する係合凸部135は、
図20に示すように、後方に突出する上下方向の凸状体が左右両端部にそれぞれ設けられている。
【0039】
荷重付与部材103は、
図20に示す如く、外観が略矩形状であり、短手方向の断面が略コ字状に形成される。荷重付与部材103は、前フィン160の前端部を覆う部材本体133を有し、部材本体133内に、前フィン160の前端部と係合する平坦リブ状の係合凸部135が左右両端部の2箇所に設けられる。部材本体133の前面に、ばね弾性部材31が当接して押圧される押圧凸部132が設けられる。
【0040】
荷重付与部材103は、
図19Bに示す如く、略コ字状に形成された部材本体133が前フィン160の前端部を覆って、ノブ基部11内に組み付けられる。このように、荷重付与部材103は、前フィン160の端部を覆い、且つ、ばね弾性部材31によって後方に押圧されることにより、前フィン160の前端部と平坦リブ状の係合凸部135が係合し、操作ノブ1の摺動操作時、円滑にスライド操作することができる。
【0041】
図19Aに示すように、両端を支持されたばね弾性部材31が、荷重付与部材103前方の2箇所の押圧凸部132をその中間部で押圧するため、ばね弾性部材31のばね弾性力を、荷重付与部材103に対しバランス良く加えることができ、操作ノブ1の摺動操作に対して、均一な操作荷重を付与することができる。
【0042】
(変形例)
なお、実施形態のレジスタは、以下のような形態であっても実施することができる。
【0043】
実施形態のレジスタでは、前可動ルーバ5が、前フィン60の長手方向を水平横方向に配設され、後可動ルーバ7が、後フィン70の長手方向を上下縦方向に配設された構成としたが、前可動ルーバ5が、前フィン60の長手方向を上下縦方向に配設され、後可動ルーバ7が、後フィン70の長手方向を水平横方向に配設された構成としても良い。
【0044】
実施形態のレジスタでは、操作ノブ1の後部に設けられた歯車状の係合部17が、後フィン70の前部に設けられた歯車状のフィン係合部74と係合して、後フィン70を左右に回動させる構成としたが、操作ノブ1の後部に二股の係合部を設け、後フィン70の前部に係合軸を設け、二股の係合部を係合軸に係合させ、後フィン70を左右に回動させる構成としても良い。
【0045】
実施形態のレジスタでは、前フィン60に、45質量%ガラス繊維充填ポリブチレンフタレート(PBT-G45%)を使用したが、ガラス繊維充填ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ガラス繊維充填ポリサルホン(PSU)、ガラス繊維充填ポリエーテルサルホン(PES)などのガラス繊維充填硬質プラスチックも使用することができる。
【0046】
実施形態のレジスタでは、荷重付与部材3に、POM(ポリアセタール)を使用したが、PPA(芳香族ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)などの硬質プラスチックも使用することができる。
【0047】
実施形態のレジスタでは、ばね弾性部材31に、SUS302(ステンレス鋼材)を使用したが、ピアノ線やばね用ステンレス鋼線などの鋼材も使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,101…操作ノブ、3,103…荷重付与部材、4…リテーナ、5…前可動ルーバ、7…後可動ルーバ、11…ノブ基部、11a…係止部、11b…係止爪部、12…ノブ蓋部、12a…係止爪部、12b…係止部、13…装飾部、14…ガイド突起部、15…部材収容部、15a…内壁、16…ばね収容部、16a…ばね押圧部、16b…ばね支持壁、16c…ばね支持部、17…係合部、18…後部突起部、31…弾性部材、32,132…押圧凸部、33,133…部材本体、35,135…係合凸部、41…通風路、42…空気吹出口、43…ダンパプレート、44…ダンパノブ、51…軸受板、53…リンクバー、60,160…前フィン、61…支軸、62…ガイドピン、64…連結軸、65…係合溝、66…下係合溝、67…後部係合溝、70…後フィン、71…軸受板、73…リンクバー、74…フィン係合部。