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特許7267134波形整形回路、信号生成装置および信号読取システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】波形整形回路、信号生成装置および信号読取システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230424BHJP
   H04L 25/06 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H04L25/02 303Z
H04L25/06
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019133343
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2020025255
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018140191
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 浩一
(72)【発明者】
【氏名】池田 大桂
(72)【発明者】
【氏名】笠井 真
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智春
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162159(JP,A)
【文献】特開平4-132412(JP,A)
【文献】特表2018-519703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0140849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パルス信号が入力される入力部に一端部が接続されると共に出力部に他端部が接続されたコンデンサと、
一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧が印加されて、当該ターゲット定電圧を当該コンデンサの当該他端部に供給する第1インピーダンス素子と、
ダイオードを含まずにスイッチを含んで構成され、一端部が前記出力部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、当該スイッチがオン状態のときに当該ターゲット定電圧を当該出力部に印加し、当該スイッチがオフ状態のときに当該ターゲット定電圧の当該出力部への印加を停止するスイッチ回路と、
前記入力パルス信号に基づいて、当該入力パルス信号の交流成分における低電圧期間に前記スイッチをオン状態に移行させると共に、当該交流成分における高電圧期間に前記スイッチをオフ状態に移行させる制御パルス信号を生成して出力するスイッチ制御回路とを備えて、前記入力パルス信号を、前記交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に整形して前記出力部から出力する波形整形回路。
【請求項2】
入力パルス信号が入力される入力部に一端部が接続されると共に出力部に他端部が接続されたコンデンサと、
一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧が印加されて、当該ターゲット定電圧を当該コンデンサの当該他端部に供給する第1インピーダンス素子と、
ダイオードを含まずにスイッチを含んで構成され、一端部が前記出力部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、当該スイッチがオン状態のときに当該ターゲット定電圧を当該出力部に印加し、当該スイッチがオフ状態のときに当該ターゲット定電圧の当該出力部への印加を停止するスイッチ回路と、
前記入力パルス信号に基づいて、当該入力パルス信号の交流成分における高電圧期間に前記スイッチをオン状態に移行させると共に、当該交流成分における低電圧期間に前記スイッチをオフ状態に移行させる制御パルス信号を生成して出力するスイッチ制御回路とを備えて、前記入力パルス信号を、前記交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に整形して前記出力部から出力する波形整形回路。
【請求項3】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも高い基準電圧が非反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている請求項1記載の波形整形回路。
【請求項4】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に非反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも高い基準電圧が反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている請求項1記載の波形整形回路。
【請求項5】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に非反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも低い基準電圧が反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている請求項2記載の波形整形回路。
【請求項6】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも低い基準電圧が非反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている請求項2記載の波形整形回路。
【請求項7】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、
反転入力端子が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、
一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されて、当該いずれかの電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧電圧を前記コンパレータの非反転入力端子に基準電圧として出力する抵抗分圧回路とを備えている請求項1記載の波形整形回路。
【請求項8】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、
反転入力端子に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、
一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されて、前記出力パルス信号の電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧パルス信号を前記コンパレータの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路とを備えている請求項1記載の波形整形回路。
【請求項9】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、
反転入力端子に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、
一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されて、前記出力パルス信号の電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧パルス信号を前記コンパレータの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路とを備えている請求項2記載の波形整形回路。
【請求項10】
前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、
反転入力端子が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、
一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されて、当該いずれかの電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧電圧を前記コンパレータの非反転入力端子に基準電圧として出力する抵抗分圧回路とを備えている請求項2記載の波形整形回路。
【請求項11】
前記スイッチ制御回路は、
一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、前記出力パルス信号を分圧して分圧パルス信号として出力する抵抗分圧回路と、
前記ターゲット定電圧を基準としてバイアス電圧を生成するバイアス電圧源と、
前記分圧パルス信号に前記バイアス電圧を電圧加算して前記制御パルス信号として出力する加算器とを備えている請求項1記載の波形整形回路。
【請求項12】
前記スイッチ回路は、直列接続された第2インピーダンス素子および前記スイッチの直列回路で構成されている請求項1から11のいずれかに記載の波形整形回路。
【請求項13】
前記コンデンサの前記他端部は、第3インピーダンス素子を介して前記出力部に接続され、
前記スイッチ回路は、前記スイッチ(実施例にて、「単体」または「だけ」を補充)で構成されている請求項1から11のいずれかに記載の波形整形回路。
【請求項14】
前記スイッチは、前記制御パルス信号によって制御されて、前記オン状態のときには前記ターゲット定電圧を出力端子から前記出力部に出力し、前記オフ状態のときには前記出力端子をハイインピーダンス状態に移行させるスリーステートバッファで構成されている請求項1から13のいずれかに記載の波形整形回路。
【請求項15】
外部から入力された電圧データをD/A変換して、当該電圧データで示される電圧値の前記ターゲット定電圧を出力するD/A変換器を備えている請求項1から14のいずれかに記載の波形整形回路。
【請求項16】
一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記一対の被覆導線における被覆部にそれぞれ接触させられる一対の電極のうちの一方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該一方の電極と容量結合する一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1電圧信号を発生させる第4インピーダンス素子と、
前記一対の電極のうちの他方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該他方の電極と容量結合する他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2電圧信号を発生させる第5インピーダンス素子と、
前記第1電圧信号および前記第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項1,3,4,7,8,11のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する信号生成装置。
【請求項17】
一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記一対の被覆導線における被覆部にそれぞれ接触させられる一対の電極のうちの一方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該一方の電極と容量結合する一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1電圧信号を発生させる第4インピーダンス素子と、
前記一対の電極のうちの他方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該他方の電極と容量結合する他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2電圧信号を発生させる第5インピーダンス素子と、
前記第1電圧信号および前記第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項2,5,6,9,10のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する信号生成装置。
【請求項18】
前記一方の電極は、基端部側が前記第4インピーダンス素子に接続された第1シールドケーブルの自由端側に接続され、
前記他方の電極は、前記第1シールドケーブルとは別体の第2シールドケーブルであって、基端部側が前記第5インピーダンス素子に接続された当該第2シールドケーブルの自由端側に接続されている請求項16または17記載の信号生成装置。
【請求項19】
一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線に装着されて、当該一方の被覆導線に流れる電流であって、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第1電圧信号を出力する第1電流検出プローブ、および前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線に装着されて、当該他方の被覆導線に流れる電流であって、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第2電圧信号を出力する第2電流検出プローブに接続されて、当該第1電圧信号および当該第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項1,3,4,7,8,11のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する信号生成装置。
【請求項20】
一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線に装着されて、当該一方の被覆導線に流れる電流であって、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第1電圧信号を出力する第1電流検出プローブ、および前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線に装着されて、当該他方の被覆導線に流れる電流であって、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第2電圧信号を出力する第2電流検出プローブに接続されて、当該第1電圧信号および当該第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項2,5,6,9,10のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する信号生成装置。
【請求項21】
前記シングルエンド信号を閾値電圧と比較して二値化することにより前記符号特定用信号を生成する信号生成部を備えている請求項16から20のいずれかに記載の信号生成装置。
【請求項22】
請求項16から21のいずれかに記載の信号生成装置と、
前記信号生成装置によって生成された前記符号特定用信号に基づいて前記ロジック信号に対応する前記符号を特定する符号化装置とを備えている信号読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳する直流電圧が変化する入力パルス信号や振幅が変化する入力パルス信号の高電圧期間の電圧または低電圧期間の電圧を予め規定されたターゲット定電圧に規定する波形整形を行って出力パルス信号として出力する波形整形回路、この波形整形回路を備えて、通信路を介して伝送されるロジック信号に基づいてロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた信号読取システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の波形整形回路として、下記の特許文献1には、コンデンサおよびダイオードで構成された波形整形回路(クランプ回路)が開示されている。この波形整形回路は、入力パルス信号(入力信号)のピークtoピーク電圧の大小に拘わらず、このピークtoピーク電圧を維持しつつ、高電圧期間の電圧(正の波高値)をターゲット定電圧としてのゼロボルト(ダイオードを理想ダイオードと仮定した場合)に規定する波形整形を行って出力する。このため、波形整形回路の後段に配置された電圧比較器では、ターゲット定電圧(ゼロボルト)よりも低く、かつ漸近した電圧に選択された基準電圧と波形整形回路から出力される信号とを比較することで、入力パルス信号に同期したサンプリングパルスを生成することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-28689号公報(第2-3頁、第1,5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示の波形整形回路には、以下のような解決すべき課題が存在している。具体的には、現実のダイオードには順方向電圧が必ず存在していることから、この波形整形回路は、入力パルス信号の高電圧期間の電圧(正の波高値)をゼロボルトに対してこの順方向電圧だけ高いターゲット定電圧に規定して出力することになる。この場合、順方向電圧を規定するダイオードの電流・電圧特性は温度によって変動するものであることから、この波形整形回路には、ターゲット定電圧が温度によって変動するという解決すべき課題が存在している。
【0005】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、温度の影響を受けるダイオードを含まない波形整形回路を提供することを主目的とする。また、この波形整形回路を備えた信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた信号読取システムを提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の波形整形回路は、入力パルス信号が入力される入力部に一端部が接続されると共に出力部に他端部が接続されたコンデンサと、一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧が印加されて、当該ターゲット定電圧を当該コンデンサの当該他端部に供給する第1インピーダンス素子と、ダイオードを含まずにスイッチを含んで構成され、一端部が前記出力部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、当該スイッチがオン状態のときに当該ターゲット定電圧を当該出力部に印加し、当該スイッチがオフ状態のときに当該ターゲット定電圧の当該出力部への印加を停止するスイッチ回路と、前記入力パルス信号に基づいて、当該入力パルス信号の交流成分における低電圧期間に前記スイッチをオン状態に移行させると共に、当該交流成分における高電圧期間に前記スイッチをオフ状態に移行させる制御パルス信号を生成して出力するスイッチ制御回路とを備えて、前記入力パルス信号を、前記交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に整形して前記出力部から出力する。
【0007】
また、請求項2記載の波形整形回路は、入力パルス信号が入力される入力部に一端部が接続されると共に出力部に他端部が接続されたコンデンサと、一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧が印加されて、当該ターゲット定電圧を当該コンデンサの当該他端部に供給する第1インピーダンス素子と、ダイオードを含まずにスイッチを含んで構成され、一端部が前記出力部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、当該スイッチがオン状態のときに当該ターゲット定電圧を当該出力部に印加し、当該スイッチがオフ状態のときに当該ターゲット定電圧の当該出力部への印加を停止するスイッチ回路と、前記入力パルス信号に基づいて、当該入力パルス信号の交流成分における高電圧期間に前記スイッチをオン状態に移行させると共に、当該交流成分における低電圧期間に前記スイッチをオフ状態に移行させる制御パルス信号を生成して出力するスイッチ制御回路とを備えて、前記入力パルス信号を、前記交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に整形して前記出力部から出力する。
【0008】
また、請求項3記載の波形整形回路は、請求項1記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも高い基準電圧が非反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている。
【0009】
また、請求項4記載の波形整形回路は、請求項1記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に非反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも高い基準電圧が反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている。
【0010】
また、請求項5記載の波形整形回路は、請求項2記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に非反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも低い基準電圧が反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている。
【0011】
また、請求項6記載の波形整形回路は、請求項2記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、前記コンデンサの前記他端部に反転入力端子が接続され、かつ前記ターゲット定電圧よりも低い基準電圧が非反転入力端子に入力されて、出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータを有して構成されている。
【0012】
また、請求項7記載の波形整形回路は、請求項1記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、反転入力端子が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されて、当該いずれかの電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧電圧を前記コンパレータの非反転入力端子に基準電圧として出力する抵抗分圧回路とを備えている。
【0013】
また、請求項8記載の波形整形回路は、請求項1記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、反転入力端子に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されて、前記出力パルス信号の電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧パルス信号を前記コンパレータの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路とを備えている。
【0014】
また、請求項9記載の波形整形回路は、請求項2記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が高電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が低電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、反転入力端子に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されて、前記出力パルス信号の電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧パルス信号を前記コンパレータの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路とを備えている。
【0015】
また、請求項10記載の波形整形回路は、請求項2記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号が低電位のときにオン状態に移行し、前記制御パルス信号が高電位のときにオフ状態に移行するように構成され、前記スイッチ制御回路は、反転入力端子が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に出力端子から前記制御パルス信号を出力するコンパレータと、一端部が前記出力端子に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧および前記ターゲット定電圧の近傍の電圧のうちのいずれかの電圧が印加されて、当該いずれかの電圧および前記制御パルス信号の電圧で規定される分圧電圧を前記コンパレータの非反転入力端子に基準電圧として出力する抵抗分圧回路とを備えている。
【0016】
また、請求項11記載の波形整形回路は、請求項1記載の波形整形回路において、前記スイッチ制御回路は、一端部が前記コンデンサの前記他端部に接続されると共に他端部に前記ターゲット定電圧が印加されて、前記出力パルス信号を分圧して分圧パルス信号として出力する抵抗分圧回路と、前記ターゲット定電圧を基準としてバイアス電圧を生成するバイアス電圧源と、前記分圧パルス信号に前記バイアス電圧を電圧加算して前記制御パルス信号として出力する加算器とを備えている。
【0017】
また、請求項12記載の波形整形回路は、請求項1から11のいずれかに記載の波形整形回路において、前記スイッチ回路は、直列接続された第2インピーダンス素子および前記スイッチの直列回路で構成されている。
【0018】
また、請求項13記載の波形整形回路は、請求項1から11のいずれかに記載の波形整形回路において、前記コンデンサの前記他端部は、第3インピーダンス素子を介して前記出力部に接続され、前記スイッチ回路は、前記スイッチ(実施例にて、「単体」または「だけ」を補充)で構成されている。
【0019】
また、請求項14記載の波形整形回路は、請求項1から13のいずれかに記載の波形整形回路において、前記スイッチは、前記制御パルス信号によって制御されて、前記オン状態のときには前記ターゲット定電圧を出力端子から前記出力部に出力し、前記オフ状態のときには前記出力端子をハイインピーダンス状態に移行させるスリーステートバッファで構成されている。
【0020】
また、請求項15記載の波形整形回路は、請求項1から14のいずれかに記載の波形整形回路において、外部から入力された電圧データをD/A変換して、当該電圧データで示される電圧値の前記ターゲット定電圧を出力するD/A変換器を備えている。
【0021】
また、請求項16記載の信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記一対の被覆導線における被覆部にそれぞれ接触させられる一対の電極のうちの一方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該一方の電極と容量結合する一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1電圧信号を発生させる第4インピーダンス素子と、前記一対の電極のうちの他方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該他方の電極と容量結合する他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2電圧信号を発生させる第5インピーダンス素子と、前記第1電圧信号および前記第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項1,3,4,7,8,11のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する。
【0022】
また、請求項17記載の信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記一対の被覆導線における被覆部にそれぞれ接触させられる一対の電極のうちの一方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該一方の電極と容量結合する一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1電圧信号を発生させる第4インピーダンス素子と、前記一対の電極のうちの他方の電極と接続されて、前記一対の被覆導線のうちの当該他方の電極と容量結合する他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2電圧信号を発生させる第5インピーダンス素子と、前記第1電圧信号および前記第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項2,5,6,9,10のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する。
【0023】
また、請求項18記載の信号生成装置は、請求項16または17記載の信号生成装置において、前記一方の電極は、基端部側が前記第4インピーダンス素子に接続された第1シールドケーブルの自由端側に接続され、前記他方の電極は、前記第1シールドケーブルとは別体の第2シールドケーブルであって、基端部側が前記第5インピーダンス素子に接続された当該第2シールドケーブルの自由端側に接続されている。
【0024】
また、請求項19記載の信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線に装着されて、当該一方の被覆導線に流れる電流であって、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第1電圧信号を出力する第1電流検出プローブ、および前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線に装着されて、当該他方の被覆導線に流れる電流であって、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第2電圧信号を出力する第2電流検出プローブに接続されて、当該第1電圧信号および当該第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項1,3,4,7,8,11のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ低電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する。
【0025】
また、請求項20記載の信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線に装着されて、当該一方の被覆導線に流れる電流であって、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第1電圧信号を出力する第1電流検出プローブ、および前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線に装着されて、当該他方の被覆導線に流れる電流であって、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電流値が変化する電流を検出すると共に、当該電流値に応じて電圧値が変化する第2電圧信号を出力する第2電流検出プローブに接続されて、当該第1電圧信号および当該第2電圧信号を入力すると共に当該各電圧信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を出力する差動増幅回路、および請求項2,5,6,9,10のいずれかに記載の波形整形回路を備えて構成されると共に、当該波形整形回路が、前記入力パルス信号として入力する前記差分信号を、当該差分信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつ高電圧期間の電圧が前記ターゲット定電圧に規定された前記出力パルス信号に整形して前記出力部からシングルエンド信号として出力する差動増幅部とを備えて、当該シングルエンド信号に基づいて前記符号特定用信号を生成する。
【0026】
また、請求項21記載の信号生成装置は、請求項16から20のいずれかに記載の信号生成装置において、前記シングルエンド信号を閾値電圧と比較して二値化することにより前記符号特定用信号を生成する信号生成部を備えている。
【0027】
また、請求項22記載の信号読取システムは、請求項16から21のいずれかに記載の信号生成装置と、前記信号生成装置によって生成された前記符号特定用信号に基づいて前記ロジック信号に対応する前記符号を特定する符号化装置とを備えている。
【発明の効果】
【0028】
請求項1,2記載の波形整形回路は、いずれも温度の影響を受けるダイオードをスイッチ回路に含まない構成となっている。したがって、これらの波形整形回路によれば、温度の影響の極めて少ないターゲット定電圧を使用することにより、入力パルス信号を、温度の影響を受けることなく、入力パルス信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつその低電位側電圧(低電圧期間の電圧)が温度の影響を受けない定電圧(ターゲット定電圧)に規定された出力パルス信号に確実に整形したり、また入力パルス信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつその高電位側電圧(高電圧期間の電圧)が温度の影響を受けない定電圧(ターゲット定電圧)に規定された出力パルス信号に確実に整形したりして、出力部から出力することができる。このため、これらの波形整形回路のいずれかを備えた請求項16,17記載の信号生成装置によれば、温度の影響を受けることなく、符号特定用信号を確実に生成することができ、またこの信号生成装置を備えた請求項22記載の信号読取システムによれば、温度の影響を受けることなく、CAN通信用のシリアルバスからCANフレームを正確に読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームを各種のCAN通信対応機器に確実に出力することができる。
【0029】
請求項3,4記載の波形整形回路によれば、出力パルス信号の低電位側電圧(低電圧期間の電圧)がターゲット定電圧に規定されている状態において、出力パルス信号にノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが基準電圧に達するまで(基準電圧に上昇するまで)は、スイッチ制御回路が制御パルス信号を高電位に維持して(つまり、直列回路のスイッチをオン状態に維持して)、直列回路に対してコンデンサの他端部(および出力部)へのターゲット定電圧の印加を継続させることができる。したがって、この波形整形回路によれば、ノイズによる誤動作を軽減することができる。また、この波形整形回路を備えた請求項16,17記載の信号生成装置、さらにはこの信号生成装置を備えた請求項22記載の信号読取システムにおいても、ノイズによる誤動作を軽減することができる。
【0030】
請求項5,6記載の波形整形回路によれば、出力パルス信号の高電位側電圧(高電圧期間の電圧)がターゲット定電圧に規定されている状態において、出力パルス信号にノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが基準電圧に達するまで(基準電圧に低下するまで)は、スイッチ制御回路が制御パルス信号を高電位に維持して(つまり、直列回路のスイッチをオン状態に維持して)、直列回路に対してコンデンサの他端部(および出力部)へのターゲット定電圧の印加を継続させることができる。したがって、この波形整形回路によれば、ノイズによる誤動作を軽減することができる。また、この波形整形回路を備えた請求項16,17記載の信号生成装置、さらにはこの信号生成装置を備えた請求項22記載の信号読取システムにおいても、ノイズによる誤動作を軽減することができる。
【0031】
請求項7,8記載の波形整形回路によれば、出力パルス信号が低電位側電圧(低電圧期間の電圧)のときに、また請求項9,10記載の波形整形回路によれば、出力パルス信号が高電位側電圧(高電圧期間の電圧)のときに、出力パルス信号にノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが上記のヒステリシス特性で規定されるレベル未満のときには、スイッチ制御回路が制御パルス信号の電位を現在の電位に維持すること(つまり、直列回路のスイッチがオン状態のときにはこの状態を維持し、またこのスイッチがオフ状態のときにはこの状態を維持すること)ができることから、出力パルス信号の電圧を現在の状態に維持することができる。したがって、これらの波形整形回路によれば、ノイズによる誤動作を一層軽減することができる。また、この波形整形回路を備えた請求項16,17記載の信号生成装置、さらにはこの信号生成装置を備えた請求項22記載の信号読取システムにおいても、ノイズによる誤動作を一層軽減することができる。
【0032】
請求項11記載の波形整形回路では、スイッチ制御回路は、出力パルス信号を分圧して分圧パルス信号として出力する抵抗分圧回路と、ターゲット定電圧を基準としてバイアス電圧を生成するバイアス電圧源と、分圧パルス信号にバイアス電圧を電圧加算して制御パルス信号として出力する加算器とを備えて構成されている。したがって、この波形整形回路によれば、コンパレータを使用しない構成においても、入力パルス信号を、温度の影響を受けることなく、入力パルス信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつその低電位側電圧(低電圧期間の電圧)がターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に確実に整形したり、また入力パルス信号の交流成分のピークピーク電圧と同等のピークピーク電圧で、かつその高電位側電圧(高電圧期間の電圧)がターゲット定電圧に規定された出力パルス信号に確実に整形したりして、出力部から出力することができる。また、これにより、波形整形回路の設計の自由度を高めることもできる。
【0033】
請求項12記載の波形整形回路では、スイッチ回路は、直列接続された第2インピーダンス素子およびスイッチの直列回路で構成され、また請求項13記載の波形整形回路では、スイッチ回路は、スイッチで構成されているため、スイッチ回路を簡易な構成とすることができる。特に、スイッチ回路がスイッチで構成されているときには、第2インピーダンス素子を介さずにターゲット定電圧を直接印加し得るため、出力パルス信号の立ち上がりや立ち下がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧への移行に要する時間をより短くすること)ができる。
【0034】
請求項14記載の波形整形回路では、直列回路を構成するスイッチが、スリーステートバッファで構成されている。したがって、この波形整形回路によれば、集積回路に内蔵されている出力バッファ(または入出力バッファ(双方向バッファ))のようなロジックICをこのスイッチとして使用することができる。
【0035】
請求項15記載の波形整形回路によれば、外部から入力された電圧データで示される電圧値のターゲット定電圧を出力するD/A変換器を備えたことにより、この電圧データを変更することで、出力パルス信号においてターゲット定電圧に規定される高電位側電圧(高電圧期間の電圧)や低電位側電圧(低電圧期間の電圧)を変更することができる。したがって、入力パルス信号を出力パルス信号に確実に整形し得るように、ターゲット定電圧を調整することが容易に実行可能となる。
【0036】
請求項18記載の信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた信号読取システムによれば、一対の電極部の各電極が別体に形成された第1シールドケーブルおよび第2シールドケーブルの自由端側に接続(配置)されているため、通信路の長さ方向に沿った異なる位置(それぞれが取り付け易い任意の位置)に取り付けることができる。
【0037】
請求項19,20記載の信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた信号読取システムによれば、一対の被覆導線における長手方向の任意の部位に電流検出プローブを装着する(クランプ型のときにはクランプする)という簡易な作業を行うことで、一対の被覆導線を介して伝送されているロジック信号によって示されている符号を特定可能な符号特定用信号を生成し得るシングルエンド信号を生成することができる。したがって、シングルエンド信号に基づいて符号特定用信号を生成し得る装置を設けることにより、符号特定用信号を生成し、生成した符号特定用信号に基づいてロジック信号によって示されている符号を特定することができ、さらには特定した符号の列で構成される符号列を特定することができる。これにより、一対の被覆導線にコネクタが配設されていなくても、また一対の被覆導線にコネクタが配設されている場合においても、一対の被覆導線の任意の場所においてロジック信号を読み取って、符号、および符号列を特定することができる。
【0038】
請求項21記載の信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた請求項22記載の信号読取システムによれば、信号生成部を備えたことにより、シングルエンド信号に基づいて符号特定用信号を生成する装置を別途設ける手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】信号読取システム1の構成を示す構成図である。
図2】信号生成装置2の構成を示す構成図である。
図3】差動増幅回路41の他の構成を示す回路図である。
図4】差動増幅回路41の他の構成を示す回路図である。
図5図2の波形整形回路42の構成、および信号生成部14の構成を示す回路図である。
図6図5の波形整形回路42および信号生成部14を備えた信号生成装置2の動作を説明するための波形図である。
図7】波形整形回路42の他の構成、および信号生成部14の他の構成を示す回路図である。
図8図7の波形整形回路42および信号生成部14を備えた信号生成装置2の動作を説明するための波形図である。
図9】他の波形整形回路42の回路図である。
図10】他の波形整形回路42の回路図である。
図11】他の波形整形回路42を説明するための説明図である。
図12】他の波形整形回路42を説明するための説明図である。
図13】他の波形整形回路42の回路図である。
図14】他の波形整形回路42の回路図である。
図15】他の波形整形回路42の回路図である。
図16】他の波形整形回路42の回路図である。
図17図5のスイッチ42fを負論理で動作する構成としたときの波形整形回路42の回路図である。
図18図7のスイッチ42fを負論理で動作する構成としたときの波形整形回路42の回路図である。
図19図9のスイッチ42fを負論理で動作する構成としたときの波形整形回路42の回路図である。
図20図10のスイッチ42fを負論理で動作する構成としたときの波形整形回路42の回路図である。
図21図5の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図22図7の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図23図9の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図24図10の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図25図13の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図26図14の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図27図15の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図28図16の第2インピーダンス素子42eを削除した構成の波形整形回路42の回路図である。
図29】信号生成装置2を被覆導線La,Lbに接続する構成を説明するための構成図である。
図30】信号生成装置2を被覆導線La,Lbに接続する他の構成を説明するための構成図である。
図31】信号生成装置2を電流検出プローブPLc,PLdで被覆導線La,Lbに接続する構造を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、信号生成装置、信号読取システム、およびこの信号生成装置に含まれる波形整形回路の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0041】
この信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、このロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する。また、この信号読取システムは、信号生成装置によって生成された符号特定用信号に基づいて上記のロジック信号に対応する符号を特定すると共に、特定した符号で構成される符号列を特定するシステムであって、「CANプロトコル」、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」などの各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」を対象とすることができる。この場合、「CANプロトコル」および「CAN FD」の「CAN通信用のシリアルバス」では、「高電位側信号線(CANH)/低電位側信号線(CANL)」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当し、「FlexRay通信用のシリアルバス」では、「正側信号線(BP)/負側信号線(BM)」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当し、「LVDSによる通信を行うシリアルバス」では、「正論理側信号線/負論理側信号線」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当する。また、この信号読取システムは、上記のロジック信号に対応する符号および符号列を特定する機能を備えていることから、結果として、通信路に伝送されているロジック信号を検出するアナライザとしても機能し、さらに検出した符号列をメモリに記憶するように構成されているときには記録装置(レコーダ)としても機能する。
【0042】
以下では、一例として、「CAN通信用のシリアルバス」を対象として、CAN通信用のシリアルバス(通信路)から各種CANフレーム(2線差動電圧方式のロジック信号によって示されている符号の列(以下、符号列ともいう))を取得して動作する各種電子機器とシリアルバスとの間に配設して使用される信号生成装置および信号読取システムを例に挙げて説明する。具体的には、一例として、自動車に配設されている通信路からロジック信号を読み取り、対応する符号列(CANフレーム)を利用した各種の処理を外部機器(CAN通信対応機器)において実行させる例について説明する。
【0043】
図1に示す信号読取システム1は、「信号読取システム」の一例であって、信号生成装置2(「信号生成装置」の一例)、および符号化装置3(「符号化装置」の一例)を備えて構成されている。この信号読取システム1は、自動車に配設されているCAN通信用のシリアルバスSB(「通信路」の一例)からCANフレーム(「通信路を介して伝送されるロジック信号」の一例)を読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームCs(「ロジック信号に対応する符号列」の一例)を各種のCAN通信対応機器に出力することができるように(いわゆる、CANバスアナライザとして)構成されている。
【0044】
この場合、シリアルバスSBを介してのCANプロトコルに準拠した通信時には、図2に示すように、CANフレーム(符号列)を構成する各符号を表すロジック信号Saが、シリアルバスSBにおける2本の信号線のうちのCANHigh(CANH)の信号線としての被覆導線Laに伝送される電圧信号の電圧Va(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vaともいう)と、2本の信号線のうちのCANLow(CANL)の信号線としての被覆導線Lbに伝送される電圧信号の電圧Vb(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vbともいう)との間の電位差(Va-Vb)である差動信号として伝送される。
【0045】
なお、シリアルバスSBを介してのロジック信号Saの伝送原理については公知のため、詳細な説明を省略するが、CANHigh(CANH)の電圧信号VaおよびCANLow(CANL)の電圧信号Vbの仕様について簡単に説明する。図6に示すように、電圧信号Va,Vbは、ベースになる電圧(+2.5V)から逆方向に変化する電圧信号であって、電圧信号Vaがこのベースの電圧のときには、電圧信号Vbも同じ期間に亘り同じベースの電圧になって、電位差(Va-Vb)がゼロ(最小)となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「1」を示すものとなる。一方、電圧信号Vaがこのベースの電圧よりも高電圧の規定電圧(+3.5V)のときには、電圧信号Vbは同じ期間に亘り、逆にベースの電圧よりも低電圧の他の規定電圧(+1.5V)になって、電位差(Va-Vb)が最大となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「0」を示すものとなる。また、シリアルバスSBにおいて差動信号を伝送するための基準電位となる信号線である「SG」や、差動信号の伝送の用途以外に配設されている信号線および電力線等の図示および説明を省略する。
【0046】
信号生成装置2は、図2に示すように、電極部11a,11b、インピーダンス素子12a,12b、差動増幅部13および信号生成部14を備えている。また、信号生成装置2は、一対の被覆導線La,Lb(以下、特に区別しないときには「被覆導線L」ともいう)で構成されるシリアルバスSBを介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号Sa(具体的には、被覆導線La側の電圧信号Vaおよび被覆導線Lb側の電圧信号Vb)に基づき、図6に示すように、電圧信号Va,Vbに対応する符号Cs(電位差(Va-Vb)である差動信号に対応する符号Cs(「1」または「0」))を特定可能な符号特定用信号Sfを生成する。
【0047】
電極部11a,11bは、電極21およびシールド22を備えて同一に構成されている。また、各電極部11a,11bは、被覆導線La,Lbのうちの任意の一方に対して着脱可能に構成されている。なお、理解の容易のため、図1,2に示すように、電極部11aは被覆導線Laに装着され、電極部11bは被覆導線Lbに装着されるものとする。また、電極部11a,11bは、対応する被覆導線Lへの装着状態において、その被覆導線Lの絶縁被覆部(以下、単に「被覆部」ともいう)に電極21が接触(当接)するように構成されている。この構成により、電極部11a,11bの各電極21は、対応する被覆導線La,Lbの金属部(芯線)と接触することなく非接触の状態(つまり、金属非接触の状態)で容量結合する。また、シールド22は、各電極部11a,11bが対応する被覆導線La,Lbに装着されている状態において、被覆導線La,Lbの被覆部における電極21の接触部位を、この電極21を含めて覆うことで、電極21が対応する被覆導線Laの金属部以外の金属部と容量結合することを防止する。
【0048】
インピーダンス素子12aは、本例では一例として、抵抗31a、および抵抗31aに並列接続されたコンデンサ32aを備えて構成され、またインピーダンス素子12bは、抵抗31b(抵抗31aと同じ抵抗値)、および抵抗31bに並列接続されたコンデンサ32b(コンデンサ32aと同じ容量値)を備えて構成されている。第4インピーダンス素子としてのインピーダンス素子12aでは、抵抗31aは、高抵抗値の抵抗(少なくとも数MΩ程度の高インピーダンス抵抗)で構成されて、その一端(インピーダンス素子12aの一端)がシールドケーブル(同軸ケーブル)CBa(以下、第1シールドケーブルCBaともいう)の芯線を介して電極部11aの電極21(以下、一方の電極21ともいう)に接続され、その他端(インピーダンス素子12aの他端)が信号生成装置2における基準電位の部位(グランドG)に接続されている。また、第5インピーダンス素子としてのインピーダンス素子12bでは、抵抗31bは、高抵抗値の抵抗(少なくとも数MΩ程度の高インピーダンス抵抗)で構成されて、その一端(インピーダンス素子12bの一端)がシールドケーブル(同軸ケーブル)CBb(以下、第2シールドケーブルCBbともいう)の芯線を介して電極部11bの電極21(以下、他方の電極21)に接続され、その他端(インピーダンス素子12bの他端)がグランドGに接続されている。また、シールドケーブルCBaのシールドは、電極部11a側の端部が電極部11aのシールド22に接続されると共に、インピーダンス素子12a側の端部がグランドGに接続されている。また、シールドケーブルCBbのシールドは、電極部11b側の端部が電極部11bのシールド22に接続されると共に、インピーダンス素子12b側の端部がグランドGに接続されている。
【0049】
この構成により、インピーダンス素子12aは、電極部11aの電極21と容量結合する一方の被覆導線Laに伝送されている電圧信号Vaの電圧Vaに応じて電圧が変化する(電圧Vaが上記のベースの電圧のときに低電圧となり、電圧Vaが上記の高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように変化する)第1電圧信号Vc1を、両端間に発生させる。また、インピーダンス素子12bは、電極部11bの電極21と容量結合する他方の被覆導線Lbに伝送されている電圧信号Vbの電圧Vbに応じて電圧が変化する(電圧Vbが上記のベースの電圧のときに高電圧となり、電圧Vbが上記の低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように変化する)第2電圧信号Vc2を、両端間に発生させる。また、第1電圧信号Vc1および第2電圧信号Vc2は、共に、容量結合によって検出される信号であることから、電圧信号Va,Vbの変化(電圧信号Va,Vbのパルスの長さの変化や、このパルスの密度の変化)に応じて、直流レベル(直流成分)が変化する信号となっている。
【0050】
なお、インピーダンス素子12a,12bは、上記の構成(抵抗31aおよびコンデンサ32aの並列回路、抵抗31bおよびコンデンサ32bの並列回路)に限定されるものではない。例えば、抵抗31aや抵抗31bだけの回路や、コンデンサ32aやコンデンサ32bだけの回路で構成してもよい。また、コンデンサ32a,32bについては、ディスクリート部品で構成することもできるし、インピーダンス素子12a,12bと対応する電極21とを接続するシールドケーブル(同軸ケーブル)CBa,CBbの配線容量(芯線とシールドとの間に形成される容量)で構成することもできる。
【0051】
差動増幅部13は、第1電圧信号Vc1および第2電圧信号Vc2を入力すると共に各電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)に応じて電圧が変化するシングルエンド信号Vdを出力する。
【0052】
具体的には、差動増幅部13は、図2に示すように、差動増幅回路41および波形整形回路42を備え、差動増幅回路41および波形整形回路42が後述するようにトランスを有さずに主として演算増幅器やコンパレータで構成されることにより、トランスレス差動増幅部として構成されている。また、本例では一例として、差動増幅回路41は、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Vee(例えば、±10V)で動作する3つの演算増幅器41a,41b,41c、および7つの抵抗41d,41e,41f,41g,41h,41i,41jを備えて、全体として計装アンプに構成されている。この差動増幅回路41では、演算増幅器41aは、非反転入力端子がインピーダンス素子12aの一端に接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗41d(帰還抵抗)が接続されている。演算増幅器41bは、非反転入力端子がインピーダンス素子12bの一端に接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗41e(抵抗41dと同一抵抗値の帰還抵抗)が接続されている。また、演算増幅器41aおよび演算増幅器41bの各反転入力端子は抵抗41f(演算増幅器41aおよび演算増幅器41bの共通の入力抵抗)を介して接続されている。演算増幅器41cは、反転入力端子が抵抗41g(一方の入力抵抗)を介して演算増幅器41aの出力端子に接続され、非反転入力端子が抵抗41h(抵抗41gと同一抵抗値の他方の入力抵抗)を介して演算増幅器41bの出力端子に接続され、反転入力端子と出力端子との間に抵抗41i(帰還抵抗)が接続され、かつ反転入力端子は抵抗41j(抵抗41iと同一抵抗値)を介してグランドGに接続されて、各演算増幅器41a,41bから出力される出力信号の差分を増幅して出力する差動増幅器として機能する。
【0053】
この構成により、差動増幅回路41は、電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)を各抵抗41d,41e,41f,41g,41iの抵抗値で規定される公知の増幅率で反転増幅して、電圧信号としての差分信号Vd0を出力する。この差分信号Vd0は、シリアルバスSBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において(電圧Va,Vbが共にベースの電圧のときに)高電位側電圧となり、CANフレームを構成する符号Cs(「0」)が伝送されている期間において(電圧Vaが高電圧の規定電圧で、電圧Vbが低電圧の規定電圧のときに)低電位側電圧となる電圧信号である。また、上記したように、各電圧信号Vc1,Vc2は共に電圧信号Va,Vbの変化に応じて直流レベルが変化する信号であることから、電圧信号Vc1,Vc2に基づいて生成される差分信号Vd0もまた、差動増幅回路41においてこの直流レベルの変化について軽減されてはいるものの、直流レベル(直流成分)が変化する信号である。
【0054】
なお、この差動増幅回路41では、演算増幅器41aおよび演算増幅器41bの各反転入力端子に接続される入力抵抗を共通の1つの抵抗41fとする構成(計装アンプとする構成)を採用しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、演算増幅器41aの反転入力端子に抵抗41faを個別の入力抵抗として接続して、この抵抗41faを介してこの反転入力端子をグランドGに接続し、かつ演算増幅器41bの反転入力端子に抵抗41fb(抵抗41faと同一抵抗値)を個別の入力抵抗として接続して、この抵抗41fbを介してこの反転入力端子をグランドGに接続する構成を採用することもできる。この構成においても差動増幅回路41は、上記の差分電圧(Vc1-Vc2)を、各抵抗41d,41e,41fa,41fb,41g,41iの抵抗値で規定される公知の増幅率で増幅して、差分信号Vd0を出力する。
【0055】
また、図3に示す上記の差動増幅回路41では、演算増幅器41aおよび演算増幅器41bが、各電圧信号Vc1,Vc2の交流成分のみならず、直流成分をも増幅する構成であることから、この直流成分の大きいときには演算増幅器41aおよび演算増幅器41bの各出力端子から出力される出力信号が飽和することがある。この出力信号の飽和を軽減するため、図4に示す差動増幅回路41のように、演算増幅器41aの反転入力端子とグランドGとの間に接続される抵抗41faに直列にコンデンサ41kを接続し、かつ演算増幅器41bの反転入力端子とグランドGとの間に接続される抵抗41fbに直列にコンデンサ41mを接続する構成を採用することもできる。この構成の演算増幅器41aおよび演算増幅器41bは、各電圧信号Vc1,Vc2の直流成分は増幅せずに交流成分のみを増幅するように動作することから、出力端子から出力される出力信号が各電圧信号Vc1,Vc2の直流成分に起因して飽和する事態の発生を大幅に軽減することが可能となっている。
【0056】
波形整形回路42は、差分信号Vd0を入力すると共に、この差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分のピークtoピーク電圧(ピークピーク電圧)と同等のピークtoピーク電圧(ピークピーク電圧)で、かつその高電位側電圧(高電圧期間の電圧)および低電位側電圧(低電圧期間の電圧)のうちのいずれか一方の電圧が予め規定されたターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力する。この構成により、波形整形回路42は、シングルエンド信号Vdの上記のいずれか一方の電圧を、信号についての基準電位(ピークピーク電圧がゼロボルトのときの電圧。本例では、ターゲット定電圧Vtg)に固定する基準電位固定回路とも言える。
【0057】
一例として、波形整形回路42は、図5に示すように、入力パルス信号としての差分信号Vd0が入力される入力部42a、出力パルス信号としてのシングルエンド信号Vdが出力される出力部42b、コンデンサ42c、第1インピーダンス素子42d、ダイオードを含まずにスイッチ42fを含んで構成されたスイッチ回路SC(後述するように直列接続された第2インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fで構成された直列回路を有するスイッチ回路)、並びにコンパレータなどで構成されると共にスイッチ42fをオン状態からオフ状態へ、またオフ状態からオン状態へ移行させる制御パルス信号Vctを、差分信号Vd0に基づいて生成して出力するスイッチ制御回路SWCを備えている。
【0058】
具体的には、コンデンサ42cは、一端部が入力部42aに接続されると共に他端部が出力部42bに接続されている。第1インピーダンス素子42dは、一例として抵抗(1つの抵抗、または複数の抵抗を直列や並列に接続して構成された抵抗回路)で構成されて、一端部がコンデンサ42cの他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgが印加されて、ターゲット定電圧Vtgをコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に供給する。なお、ターゲット定電圧Vtgは、正電源電圧Vccを下回り、かつ負電源電圧Veeを上回る任意の1つの定電圧に予め規定されている。第1インピーダンス素子42dについては、最も簡易な構成として、図5に示すように1本の抵抗(一端部がコンデンサ42cの他端部に接続され、他端部にターゲット定電圧Vtgが印加された抵抗)で構成することもできるが、この構成に限定されるものではない。図示はしないが、第1インピーダンス素子42dは、抵抗と共に、または抵抗に代えてインダクタを使用した構成としてもよい。なお、第1インピーダンス素子42dは、全体としてのインピーダンス値(抵抗だけで構成されているときには抵抗値)が第2インピーダンス素子42eのインピーダンス値(抵抗だけで構成されているときには抵抗値)よりも大きい値(例えば、抵抗だけの場合には、数kΩから数百kΩ程度)に規定されている。
【0059】
スイッチ回路SCは、一例として図5に示すように、直列接続された第2インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fの直列回路で構成されると共に、一端部がコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgが印加されている。この構成により、スイッチ回路SCは、スイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctによってスイッチ42fがオン状態に移行させられたときには、ターゲット定電圧Vtgのコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)への印加を実行し、オフ状態に移行させられたときには、ターゲット定電圧Vtgのコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)への印加を停止する。また、スイッチ回路SCは、その順方向電圧が温度によって変動し易いダイオードを含まない構成であるため、温度変動の影響を受けることなく、ターゲット定電圧Vtgをそのままコンデンサ42cの他端部に印加することが可能となっている。
【0060】
スイッチ42fは、オン状態において低インピーダンスとなって、スイッチ回路SCの他端部に印加されているターゲット定電圧Vtgを第2インピーダンス素子42e(例えば、第1インピーダンス素子42d全体の抵抗値に対して十分に小さい抵抗値の抵抗)を介して出力部42bに印加し得る半導体スイッチであれば、アナログスイッチ、バイポーラトランジスタおよび電界効果型トランジスタなどの種々の半導体スイッチで構成することができる。また、スイッチ42fは、本例では一例として、制御パルス信号Vctが高電位のときにオン状態に移行し、制御パルス信号Vctが低電位のときにオフ状態に移行するように(いわゆる、正論理(ハイアクティブ)で動作するように)構成されている。
【0061】
第2インピーダンス素子42eは、本例では一例として、スイッチ42fがオン状態のときに、他端部に印加されているターゲット定電圧Vtgをコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に低インピーダンスで供給し得る十分に低い抵抗値に規定された抵抗で構成されている。ただし、第2インピーダンス素子42eの抵抗値は、スイッチ42fがオン状態(ターゲット定電圧Vtgの供給状態)のときであっても、差分信号Vd0の立ち下がりや立ち上がり時にはこの電圧変化の影響を受けて、コンデンサ42cの他端部の電圧がターゲット定電圧Vtgから若干変動し得る(差分信号Vd0の立ち下がり時には瞬間的に若干低下したり、立ち上がり時には瞬間的に若干上昇したりし得る)程度の抵抗値(例えば、十数Ωから数十Ω程度の抵抗値)に規定されている。また、第2インピーダンス素子42eについては、最も簡易な構成として、図5に示すように1本の抵抗で構成することもできるが、複数の抵抗を直列や並列に接続して構成してもよい。また、図示はしないが、第2インピーダンス素子42eは、抵抗と共に、または抵抗に代えてインダクタを使用した構成としてもよい。また、スイッチ回路SCにおける第2インピーダンス素子42eとスイッチ42fの並び順は、図5に示す並び順の逆の順とすることもできる。
【0062】
スイッチ制御回路SWCは、ダイオードを含まずに構成されて、図5に示す構成では、図6に示すように、入力部42aに入力される差分信号Vd0の交流成分Vd0ac図6参照)における低電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させるために高電位(高レベル。例えば、後述するコンパレータ42gについての正電源電圧Vccの近傍の電圧レベル)となり、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるために低電位(低レベル。例えば、後述するコンパレータ42gについての負電源電圧Veeの近傍の電圧レベル)となる制御パルス信号Vctを出力する。
【0063】
具体的には、スイッチ制御回路SWCは、図5に示すように、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Veeで動作する1つのコンパレータ42g、および直流定電圧(バイアス電圧)Vbi1(≠0ボルト)を出力する1つの基準電源42hを有して構成されている。また、基準電源42hは、負極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、ターゲット定電圧Vtgに直流定電圧Vbi1が加算された電圧(Vtg+Vbi1)を基準電圧(第1基準電圧)Vr1として正極側から出力する。直流定電圧Vbi1は、差分信号Vd0の交流成分Vd0acについてのピークtoピーク電圧Vp(図6参照)の例えば数%から十数%の電圧値に規定されている。したがって、基準電圧Vr1は、ターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧に規定されている。また、コンパレータ42gは、反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、かつ非反転入力端子に基準電圧Vr1が入力されることで、出力端子から上記の制御パルス信号Vctを出力するように構成されている。
【0064】
この制御パルス信号Vctにより、スイッチ42fが、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにオン状態に移行し、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにオフ状態に移行したときの波形整形回路42の動作について説明する。なお、図6では理解の容易のため、差分信号Vd0の直流成分Aが差分信号Vd0の交流成分Vd0acの1周期内で大きく変動する状態で、差分信号Vd0を図示しているが、実際には、商用周波数のような100Hz未満の低周波ノイズが重畳することで、直流成分Aは、交流成分Vd0acの1周期(通常は、数μs以下)に対して十分に長い周期で変動する。このため、直流成分Aは差分信号Vd0の交流成分Vd0acの1周期内でほぼ一定であるものとして説明する。また、交流成分Vd0acについてのピークtoピーク電圧を符号Vpで示し、高電圧期間Tにおける差分信号Vd0の電圧値は、直流成分Aよりも電圧Vp1だけ高く、低電圧期間Tにおける差分信号Vd0の電圧値は、直流成分Aよりも電圧Vp2だけ低いものとする。また、シングルエンド信号Vdに生じるサグは無視するものとする。
【0065】
まず、スイッチ42fがオン状態になる低電圧期間Tでは、スイッチ回路SCからターゲット定電圧Vtgが第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスで供給されることにより、コンデンサ42cの他端部(および出力部42b)の電圧、つまり、シングルエンド信号Vdは、図6に示すように、ターゲット定電圧Vtgに規定される。また、差分信号Vd0が印加されるコンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧は、低電圧期間Tであることから、電圧(A-Vp2)となっている。これにより、コンデンサ42cは、ターゲット定電圧Vtgに規定されている他端部の電圧を基準として一端部側の電圧を正電圧としたときに、電圧(A-Vp2-Vtg)に充電される。
【0066】
この状態から、スイッチ42fがオフ状態になる高電圧期間Tになったときには、スイッチ回路SCからのターゲット定電圧Vtgの供給が停止されると共に、コンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧が電圧(A+Vp1)となる。これにより、コンデンサ42cの他端部(および出力部42b)の電圧は、電圧(A+Vp1)から電圧(A-Vp2-Vtg)を減算した電圧(A+Vp1-(A-Vp2-Vtg))、すなわち電圧(Vp1+Vp2+Vtg)となる。また、電圧(Vp1+Vp2)は交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpである。このことから、コンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧である電圧(Vp1+Vp2+Vtg)、つまり、シングルエンド信号Vdは、図6に示すように、電圧(Vp+Vtg)に規定される。
【0067】
以上のことから、図5に示す波形整形回路42は、スイッチ制御回路SWCがスイッチ42fをオン状態およびオフ状態に交互に移行させることにより、図6に示すように、差分信号Vd0(ピークtoピーク電圧Vpの交流成分Vd0acに直流成分Aが重畳した信号)を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。すなわち、波形整形回路42は、差分信号Vd0に重畳している直流成分Aを除去(つまり、低周波ノイズを除去)する機能を備えている。これにより、この波形整形回路42は、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位になるシングルエンド信号Vdを出力する。
【0068】
次いで、スイッチ制御回路SWCのコンパレータ42gが、上記の制御パルス信号Vctを出力する動作について説明する。
【0069】
交流成分Vd0acが低電圧期間Tから高電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち上がり時)には、スイッチ回路SCから第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスでターゲット定電圧Vtgが印加されている出力部42bの電圧(コンデンサ42cの他端部の電圧。つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が、この交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的に上昇して、基準電圧Vr1を上回る。したがって、コンパレータ42gは、図6に示すように、制御パルス信号Vctを高電位から低電位に移行させる。この場合、スイッチ回路SCではスイッチ42fがオフ状態に移行するため、スイッチ回路SCによる出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加が停止されて、シングルエンド信号Vdの電圧は、電圧(Vp+Vtg)に移行する。この結果、その後は、シングルエンド信号Vdの電圧は、基準電圧Vr1を上回る状態に維持される。なお、交流成分Vd0acの低電圧期間Tのときには、上記したようにシングルエンド信号Vdの電圧はターゲット定電圧Vtgになり、コンパレータ42gの反転入力端子もこのターゲット定電圧Vtgになる。しかしながら、コンパレータ42gの非反転入力端子に入力されている基準電圧Vr1(=Vtg+Vbi1)はこのターゲット定電圧Vtgよりも高い電圧である(同じ電圧ではない)ことから、コンパレータ42gは、高電位の制御パルス信号Vctの出力を継続する(つまり、スイッチ回路SCから出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加を継続させる)。
【0070】
また、交流成分Vd0acが高電圧期間Tから低電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち下がり時)には、シングルエンド信号Vdの電圧は、交流成分Vd0acの電圧の低下に伴って電圧(Vp+Vtg)から低下して、基準電圧Vr1を下回る。したがって、コンパレータ42gは、図6に示すように、制御パルス信号Vctを低電位から高電位に移行させる。この場合、スイッチ回路SCではスイッチ42fがオン状態に移行する。このため、スイッチ回路SCによる出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加が開始されて、その後は、シングルエンド信号Vdの電圧は、基準電圧Vr1より低いターゲット定電圧Vtgに維持される。
【0071】
信号生成部14は、一例として、図5に示すように、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Veeで動作する1つのコンパレータ14a、および直流定電圧(バイアス電圧)Vbi2(≠0ボルト)を出力する1つの基準電源14bを有して構成されている。また、基準電源14bは、負極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、ターゲット定電圧Vtgに直流定電圧Vbi2が加算された電圧(Vtg+Vbi2)を閾値電圧Vthとして正極側から出力する。直流定電圧Vbi2は、差分信号Vd0の交流成分Vd0acについてのピークtoピーク電圧Vpの例えば数%から十数%の電圧値に規定されている。したがって、閾値電圧Vthは、ターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧に規定されている。なお、閾値電圧Vthと上記した基準電圧Vr1との大小関係には、同じであってもよいし、いずれが高い状態であってもよい(なお、図6では、一例として、基準電圧Vr1が閾値電圧Vthよりも高い状態となっている)。
【0072】
コンパレータ14aは、出力部42bに非反転入力端子が接続され、かつ閾値電圧Vthが反転入力端子に入力されて、出力部42bから出力されるシングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthと比較して二値化することにより、出力端子から符号特定用信号Sfを出力する。上記したように、閾値電圧Vthがターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧に規定されていることから、このコンパレータ14aを備えた信号生成部14は、図6に示すように、シングルエンド信号Vd(ピークtoピーク電圧が電圧Vpで、かつその低電位側電圧がターゲット定電圧Vtgに規定された信号)を閾値電圧Vthで確実に二値化して、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において高電位(コンパレータ14aの最大出力電圧)となり、この符号Csが「0」の期間において低電位(コンパレータ14aの最小出力電圧)となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0073】
ターゲット定電圧Vtgは、上記したように、正電源電圧Vccを下回り、かつ負電源電圧Veeを上回る任意の1つの定電圧に規定されるが、図5に示す構成の波形整形回路42および信号生成部14では、通常は、信号生成装置2におけるグランドGの電位(ゼロボルト)に規定される。したがって、波形整形回路42は、ピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧がターゲット定電圧Vtg(ゼロボルト)に規定されたシングルエンド信号Vdを出力する。
【0074】
なお、波形整形回路42は、上記した図5の構成、すなわち、差分信号Vd0を入力すると共に、この差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分のピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧。ボトム電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力する構成に限定されない。例えば、波形整形回路42を図7に示すように構成することで、差分信号Vd0の交流成分のピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧。トップ電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力する構成とすることもできる。
【0075】
以下、図7に示す波形整形回路42および信号生成部14について説明する。なお、図5に示す波形整形回路42および信号生成部14と同一の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0076】
一例として、波形整形回路42は、差分信号Vd0が入力される入力部42a、シングルエンド信号Vdが出力される出力部42b、コンデンサ42c、第1インピーダンス素子42d、第2インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fで構成されたスイッチ回路SC、並びにダイオードを含まずにコンパレータなどで構成されると共にスイッチ42fをオン状態からオフ状態へ、またオフ状態からオン状態へ移行させる制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCを備えている。
【0077】
具体的には、第1インピーダンス素子42dは、一例として図7に示すように1本の抵抗(一端部がコンデンサ42cの他端部に接続され、他端部にターゲット定電圧Vtgが印加された抵抗)で構成されている。
【0078】
スイッチ制御回路SWCは、図7に示すように、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Veeで動作する1つのコンパレータ42g、および直流定電圧(バイアス電圧)Vbi1を出力する1つの基準電源42hを有して構成されている。また、基準電源42hは、正極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、ターゲット定電圧Vtgから直流定電圧Vbi1が減算された電圧(Vtg-Vbi1)を基準電圧Vr1として負極側から出力する。直流定電圧Vbi1はピークtoピーク電圧Vpの例えば数%から十数%の電圧値に規定されていることから、基準電圧Vr1は、ターゲット定電圧Vtgよりも若干低い電圧に規定されている。また、コンパレータ42gは、非反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、かつ反転入力端子に基準電圧Vr1が入力されることで、図8に示すように、差分信号Vd0の交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるために低電位となり、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させるために高電圧となる制御パルス信号Vctを出力する。
【0079】
この制御パルス信号Vctにより、スイッチ42fが、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにオフ状態に移行し、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにオン状態に移行したときの波形整形回路42の動作について説明する。なお、図8では理解の容易のため、差分信号Vd0の直流成分Aが差分信号Vd0の交流成分Vd0acの1周期内で大きく変動する状態で、差分信号Vd0を図示しているが、実際には、直流成分Aは、交流成分Vd0acの1周期(通常は、数μs以下)に対して十分に長い周期で変動する。このため、直流成分Aは差分信号Vd0の交流成分Vd0acの1周期内でほぼ一定であるするものとして説明する。また、交流成分Vd0acについてのピークtoピーク電圧を符号Vpで示し、高電圧期間Tにおける差分信号Vd0の電圧値は、直流成分Aよりも電圧Vp1だけ高く、低電圧期間Tにおける差分信号Vd0の電圧値は、直流成分Aよりも電圧Vp2だけ低いものとする。また、シングルエンド信号Vdに生じるサグは無視するものとする。
【0080】
まず、スイッチ42fがオン状態になる高電圧期間Tでは、スイッチ回路SCからターゲット定電圧Vtgが第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスで供給されることにより、コンデンサ42cの他端部(および出力部42b)の電圧、つまり、シングルエンド信号Vdは、図8に示すように、ターゲット定電圧Vtgに規定される。また、差分信号Vd0が印加されるコンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧は、高電圧期間Tであることから、電圧(A+Vp1)となっている。これにより、コンデンサ42cは、ターゲット定電圧Vtgに規定されている他端部の電圧を基準として一端部側の電圧を正電圧としたときに、電圧(A+Vp1-Vtg)に充電される。
【0081】
この状態から、スイッチ42fがオフ状態になる低電圧期間Tになったときには、スイッチ回路SCからのターゲット定電圧Vtgの供給が停止されると共に、コンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧が電圧(A-Vp2)となる。これにより、コンデンサ42cの他端部(および出力部42b)の電圧は、電圧(A-Vp2)から電圧(A+Vp1-Vtg)を減算した電圧(A-Vp2-(A+Vp1-Vtg))、すなわち電圧(-(Vp1+Vp2)+Vtg)となる。また、電圧(Vp1+Vp2)は交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpである。このことから、コンデンサ42cの一端部(入力部42a側の端部)の電圧である電圧(-(Vp1+Vp2)+Vtg)、つまり、シングルエンド信号Vdは、図8に示すように、電圧(-Vp+Vtg)に規定される。
【0082】
以上のことから、図7に示す波形整形回路42は、スイッチ制御回路SWCがスイッチ42fをオン状態およびオフ状態に交互に移行させることにより、図8に示すように、差分信号Vd0(ピークtoピーク電圧Vpの交流成分Vd0acに直流成分Aが重畳した信号)を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して、つまり、直流成分Aの変動による影響を除去して出力部42bから出力する。これにより、この波形整形回路42は、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(ターゲット定電圧Vtg)になるシングルエンド信号Vdを出力する。
【0083】
また、スイッチ制御回路SWCのコンパレータ42gが、上記の制御パルス信号Vctを出力する動作について説明する。
【0084】
交流成分Vd0acが高電圧期間Tから低電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち下がり時)には、スイッチ回路SCから第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスでターゲット定電圧Vtgが印加されている出力部42bの電圧(コンデンサ42cの他端部の電圧。つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が、この交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的に低下して、基準電圧Vr1を下回る。したがって、コンパレータ42gは、図8に示すように、制御パルス信号Vctを高電位から低電位に移行させる。この場合、スイッチ回路SCではスイッチ42fがオフ状態に移行するため、スイッチ回路SCによる出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加が停止されて、シングルエンド信号Vdの電圧は、電圧(-Vp+Vtg)に移行する。この結果、その後は、シングルエンド信号Vdの電圧は、基準電圧Vr1を下回る状態に維持される。なお、交流成分Vd0acの高電圧期間Tのときには、上記したようにシングルエンド信号Vdの電圧はターゲット定電圧Vtgになり、コンパレータ42gの非反転入力端子もこのターゲット定電圧Vtgになる。しかしながら、コンパレータ42gの反転入力端子に入力されている基準電圧Vr1(=Vtg-Vbi1)はこのターゲット定電圧Vtgよりも低い電圧である(同じ電圧ではない)ことから、コンパレータ42gは、高電位の制御パルス信号Vctの出力を継続する(つまり、スイッチ回路SCから出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加を継続させる)。
【0085】
また、交流成分Vd0acが低電圧期間Tから高電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち上がり時)には、シングルエンド信号Vdの電圧は、交流成分Vd0acの電圧の上昇に伴って電圧(-Vp+Vtg)から上昇して、基準電圧Vr1を上回る。したがって、コンパレータ42gは、図8に示すように、制御パルス信号Vctを低電位から高電位に移行させる。この場合、スイッチ回路SCではスイッチ42fがオン状態に移行する。このため、スイッチ回路SCによる出力部42bへのターゲット定電圧Vtgの印加が開始されて、その後は、シングルエンド信号Vdの電圧は、基準電圧Vr1より高いターゲット定電圧Vtgに維持される。
【0086】
信号生成部14は、一例として、図7に示すように、1つのコンパレータ14aおよび1つの基準電源14bを有して構成されている。また、基準電源14bは、正極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、ターゲット定電圧Vtgから直流定電圧Vbi2が減算された電圧(Vtg-Vbi2)を閾値電圧Vthとして負極側から出力する。直流定電圧Vbi2はピークtoピーク電圧Vpの例えば数%から十数%の電圧値に規定されているため、閾値電圧Vthは、ターゲット定電圧Vtgよりも若干低い電圧に規定されている。
【0087】
コンパレータ14aは、出力部42bに非反転入力端子が接続され、かつ閾値電圧Vthが反転入力端子に入力されて、出力部42bから出力されるシングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthと比較して二値化することにより、出力端子から符号特定用信号Sfを出力する。上記したように、閾値電圧Vthがターゲット定電圧Vtgよりも若干低い電圧に規定されていることから、このコンパレータ14aを備えた信号生成部14は、図8に示すように、シングルエンド信号Vd(ピークtoピーク電圧が電圧Vpで、かつその高電位側電圧がターゲット定電圧Vtgに規定された信号)を閾値電圧Vthで確実に二値化して、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において高電位(コンパレータ14aの最大出力電圧)となり、この符号Csが「0」の期間において低電位(コンパレータ14aの最小出力電圧)となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0088】
図7に示す構成の波形整形回路42および信号生成部14では、上記の構成により、例えば、ターゲット定電圧Vtgを、グランドGの電位(ゼロボルト)を超え、かつ正電源電圧Vcc未満の正の所定の電圧としたときには、波形整形回路42は、ピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧がこの正のターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdを出力する。
【0089】
また、図5に示す構成の波形整形回路42については、図9に示す構成の波形整形回路42のように、直列接続された2本の抵抗42i,42jで構成されて、一端部(抵抗42i側の端部)がコンパレータ42gの出力端子に接続されると共に他端部(抵抗42j側の端部)に基準電圧Vr2(第2基準電圧)が印加されて、基準電圧Vr2および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧電圧をコンパレータ42gの非反転入力端子に基準電圧Vr1として出力する抵抗分圧回路42kを備えて、コンパレータ42gにヒステリシス特性を持たせる構成(コンパレータ42gをヒステリシスコンパレータとして動作させる構成)に変更することもできる。なお、図5に示す波形整形回路42と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0090】
この抵抗分圧回路42kでは、抵抗42iの抵抗値が抵抗42jの抵抗値に対して十分に大きな値(例えば、抵抗42jが数十kΩのときには抵抗42iは数MΩ程度)に規定されている。また、この抵抗分圧回路42kでは、負極側がターゲット定電圧Vtgに接続された基準電源42hから出力される電圧(Vtg+Vbi1。図5の基準電圧Vr1と同等の電圧)を基準電圧Vr2(ターゲット定電圧Vtgの近傍の電圧(この例では、ターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧))として使用しているが、これに限定されるものではなく、図示はしないが、ターゲット定電圧Vtgの近傍の電圧の他の例であるターゲット定電圧Vtgよりも低い(若干低い)電圧を基準電圧Vr2として使用する構成や、ターゲット定電圧Vtg自体を基準電圧Vr2として使用する構成を採用することもできる。
【0091】
この構成により、図9に示す構成の波形整形回路42では、交流成分Vd0acが低電圧期間Tから高電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち上がり時)には、スイッチ回路SCから第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスでターゲット定電圧Vtgが印加されている出力部42bの電圧(コンデンサ42cの他端部の電圧。つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が、この交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的に上昇して、基準電圧Vr1を上回る。この場合、抵抗分圧回路42kは、高電位の制御パルス信号Vctと基準電圧Vr2との差分電圧(Vct-Vr2)を分圧して得られる電圧Vdvを基準電圧Vr2に加算して、基準電圧(分圧電圧)Vr1として出力する。したがって、このコンパレータ42gでは、図5に示すコンパレータ42gと比較して、出力部42bの電圧が交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的により高く(図5の構成よりも、電圧Vdvの分だけ高く)上昇したときに基準電圧Vr1を上回って、制御パルス信号Vctを高電位から低電位に移行させる。
【0092】
また、交流成分Vd0acが高電圧期間Tから低電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち下がり時)には、シングルエンド信号Vdの電圧は、交流成分Vd0acの電圧の低下に伴って電圧(Vp+Vtg)から低下して、基準電圧Vr1を下回る。この場合、抵抗分圧回路42kは、低電位の制御パルス信号Vctと基準電圧Vr2との差分電圧(Vct-Vr2)を分圧して得られる電圧Vdvを基準電圧Vr2に加算して、基準電圧(分圧電圧)Vr1として出力する。したがって、このコンパレータ42gでは、図5に示すコンパレータ42gと比較して、出力部42bの電圧が交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的により低く(図5の構成よりも、電圧Vdvの分だけ低く)低下したときに基準電圧Vr1を下回って、制御パルス信号Vctを低電位から高電位に移行させる。
【0093】
このようにして、図9に示す構成の波形整形回路42では、コンパレータ42gがヒステリシス特性(図5の構成と比較して、非反転入力端子に入力される基準電圧Vr1が基準電圧Vr2を中心とした±Vdvのヒステリシス幅で変化するヒステリシス特性)を有した状態で動作して、制御パルス信号Vctを出力する。このため、入力部42aに入力される差分信号Vd0に多少のノイズが重畳していて、これによりシングルエンド信号Vdがターゲット定電圧Vtg(低電圧期間の電圧)のときに、そのシングルエンド信号Vdにノイズが重畳している状態であっても、そのノイズの電圧レベルが上記のヒステリシス特性で規定されるレベル未満のときには、スイッチ制御回路SWCが制御パルス信号Vctの電位を現在の電位に維持すること(つまり、スイッチ回路SCのスイッチ42fがオン状態のときにはこの状態を維持し、またこのスイッチ42fがオフ状態のときにはこの状態を維持すること)ができる。これにより、図9に示す構成の波形整形回路42では、このノイズの影響を低減しつつ(ノイズによる誤動作を一層軽減しつつ)、制御パルス信号Vctを生成することが可能となっている。
【0094】
また、図7に示す構成の波形整形回路42については、図10に示す構成の波形整形回路42のように、直列接続された2本の抵抗42i,42jで構成されて、一端部(抵抗42i側の端部)がコンパレータ42gの出力端子に接続されると共に他端部(抵抗42j側の端部)がコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に接続されて、シングルエンド信号Vdの電圧および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧パルス信号Vdpをコンパレータ42gの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路42kを備えて、コンパレータ42gにヒステリシス特性を持たせる構成に変更することもできる。なお、図7に示す波形整形回路42と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、この抵抗分圧回路42kは、図9に示す波形整形回路42の抵抗分圧回路42kと同一に構成されている。
【0095】
この構成により、図10に示す構成の波形整形回路42では、交流成分Vd0acが高電圧期間Tから低電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち下がり時)には、スイッチ回路SCから第2インピーダンス素子42eを介して低インピーダンスでターゲット定電圧Vtgが印加されている出力部42bの電圧(コンデンサ42cの他端部の電圧。つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が、この交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的に低下して、基準電圧Vr1を下回る。この場合、抵抗分圧回路42kは、高電位の制御パルス信号Vctとシングルエンド信号Vdの電圧との差分電圧を分圧して得られる分圧パルス信号Vdpをコンパレータ42gの非反転入力端子に出力する。したがって、このコンパレータ42gでは、図7に示すコンパレータ42gと比較して、シングルエンド信号Vdの電圧(出力部42bの電圧)が交流成分Vd0acの電圧の変化の影響を受けてターゲット定電圧Vtgから瞬間的により低く(図7の構成よりも、抵抗42jの両端間に生じる電圧Vdvの分だけ低く)低下したときに、非反転入力端子への分圧パルス信号Vdpが基準電圧Vr1を下回って、制御パルス信号Vctを高電位から低電位に移行させる。
【0096】
また、交流成分Vd0acが低電圧期間Tから高電圧期間Tに切り替わるとき(交流成分Vd0acの立ち上がり時)には、シングルエンド信号Vdの電圧は、交流成分Vd0acの電圧の上昇に伴って電圧(-Vp+Vtg)から上昇して、基準電圧Vr1を上回る。この場合、抵抗分圧回路42kは、低電位の制御パルス信号Vctとシングルエンド信号Vdの電圧との差分電圧を分圧して得られる分圧パルス信号Vdpをコンパレータ42gの非反転入力端子に出力する。したがって、このコンパレータ42gでは、図7に示すコンパレータ42gと比較して、シングルエンド信号Vdの電圧(出力部42bの電圧)が電圧(-Vp+Vtg)から瞬間的により高く(図7の構成よりも、抵抗42jの両端間に生じる電圧Vdvの分だけ高く)上昇したときに、非反転入力端子への分圧パルス信号Vdpが基準電圧Vr1を上回って、制御パルス信号Vctを低電位から高電位に移行させる。
【0097】
このようにして、図10に示す構成の波形整形回路42においても、コンパレータ42gがヒステリシス特性(図7の構成と比較して、シングルエンド信号Vdの電圧が、基準電圧Vr1を中心とした±Vdvのヒステリシス幅を超えて変化して初めて制御パルス信号Vctの電位を高電位から低電位へ、また低電位から高電位へ変化させるヒステリシス特性)を有した状態で動作して、制御パルス信号Vctを出力する。このため、図10に示す構成の波形整形回路42でも、上記した図9に示す構成の波形整形回路42と同様にして、入力部42aに入力される差分信号Vd0に多少のノイズが重畳している状態であっても、このノイズの影響を低減しつつ、制御パルス信号Vctを生成することが可能となっている。
【0098】
なお、上記した図5,7,9,10に示す各波形整形回路42では、コンパレータ42gとは別体に配設したスイッチ42fを用いてスイッチ回路SCを構成しているが、例えば図11に示すように、PNP型オープンコレクタのトランジスタを出力段として内蔵するコンパレータをコンパレータ42gとして使用する構成を、図5,9に示す各波形整形回路42に採用することもできる。この構成を採用した各波形整形回路42では、図11に示すように、この出力段のトランジスタのエミッタ端子に第2インピーダンス素子42eを介してターゲット定電圧Vtgを供給し、このトランジスタのコレクタ端子が接続される出力端子を出力部42bに接続する。これにより、コンパレータ42gに内蔵されたトランジスタをスイッチ回路SCを構成するスイッチ42fとして機能させることができる。
【0099】
また、例えば図12に示すように、NPN型オープンコレクタのトランジスタを出力段として内蔵するコンパレータをコンパレータ42gとして使用する構成を、図7,10に示す各波形整形回路42に採用することもできる。この構成を採用した各波形整形回路42では、図12に示すように、このトランジスタのエミッタ端子に第2インピーダンス素子42eを介してターゲット定電圧Vtgを供給し、このトランジスタのコレクタ端子が接続される出力端子を出力部42bに接続する。これにより、コンパレータ42gに内蔵されたトランジスタをスイッチ回路SCを構成するスイッチ42fとして機能させることができる。
【0100】
この図11,12に示す構成を採用することにより、スイッチ42fを省略できる分だけ、波形整形回路42の部品点数を削減することができる。
【0101】
また、上記した図5,9に示す各波形整形回路42におけるスイッチ回路SCのスイッチ42fとして、3ステートロジックICを使用することもできる。一例として図9に示す波形整形回路42のスイッチ42fとして3ステートロジックIC(以下、ロジックIC42fともいう)を使用した構成の波形整形回路42を図13に示す。なお、図9に示す波形整形回路42と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。この図13に示す波形整形回路42では、ロジックIC42fにおけるローレベルに対応する電圧をターゲット定電圧Vtgとして規定し、このターゲット定電圧VtgをロジックIC42fの入力端子に入力し、ロジックIC42fの出力端子を第2インピーダンス素子42eを介して出力部42bに接続し、ロジックIC42fの制御入力端子に制御パルス信号Vctを入力する。ロジックIC42fは、制御入力端子が正論理(ハイアクティブ。制御パルス信号Vctが高電位のときにターゲット定電圧Vtgを出力し、制御パルス信号Vctが低電位のときに出力をハイインピーダンス状態にする構成)のロジックICで構成されている。
【0102】
このスイッチ回路SCは、ロジックIC42fが制御パルス信号Vctの高電位のときにターゲット定電圧Vtgを出力部42bに出力し、制御パルス信号Vctの低電位のときに出力をハイインピーダンス状態に移行させることにより、ターゲット定電圧Vtgの出力部42bへの出力を停止する。
【0103】
この図13に示す波形整形回路42は、図9に示す波形整形回路42と同様に動作して、図6に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。これにより、この波形整形回路42は、図6に示すように、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位になるシングルエンド信号Vdを出力する。
【0104】
また、上記した図7,10に示す各波形整形回路42におけるスイッチ回路SCのスイッチ42fとしても、3ステートロジックICを使用することができる。一例として図10に示す波形整形回路42のスイッチ42fとして、ロジックIC42f(図13に示すロジックIC42fと同じ正論理のロジックIC)を使用した構成の波形整形回路42を図14に示す。なお、図10に示す波形整形回路42と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。この図14に示す波形整形回路42では、ロジックIC42fにおけるハイレベルに対応する電圧をターゲット定電圧Vtgとして規定し、このターゲット定電圧VtgをロジックIC42fの入力端子に入力し、ロジックIC42fの出力端子を第2インピーダンス素子42eを介して出力部42bに接続し、ロジックIC42fの制御入力端子に制御パルス信号Vctを入力する。
【0105】
この図14に示す波形整形回路42は、図10に示す波形整形回路42と同様に動作して、図8に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。これにより、この波形整形回路42は、図8に示すように、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(ターゲット定電圧Vtg)になるシングルエンド信号Vdを出力する。
【0106】
この図13,14に示す構成を採用することにより、集積回路に内蔵されている出力バッファをロジックIC42fとして使用することができる。
【0107】
また、図5,9,13に示す波形整形回路42と同様に、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する波形整形回路としては、図15に示す波形整形回路42を採用することもできる。この波形整形回路42は、上記した図13に示す波形整形回路42と同様に、スイッチ回路SCのスイッチ42fとして3ステートロジックICを使用する構成であることから、図13に示す波形整形回路42と比較しつつ説明する。なお、図13に示す波形整形回路42と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0108】
図15に示す波形整形回路42は、差分信号Vd0が入力される入力部42a、シングルエンド信号Vdが出力される出力部42b、コンデンサ42c、第1インピーダンス素子42d、第2インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fとしての3ステートロジックIC(以下、ロジックIC42fともいう)で構成されたスイッチ回路SC、並びにダイオードを含まずに加算器42mなどで構成されると共にスイッチ42fをオン状態からオフ状態へ、またオフ状態からオン状態へ移行させる制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCを備えている。
【0109】
スイッチ制御回路SWCは、加算器42mに加えて、抵抗分圧回路42nおよびバイアス電圧源42pを備えて構成されている。抵抗分圧回路42nは、直列接続された抵抗を有して構成されると共に、一端部が出力部42bに接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgが印加されて、出力部42bから出力されるシングルエンド信号Vdを分圧して分圧パルス信号Vdpとして加算器42mに出力する。本例の抵抗分圧回路42kは、一例として 直列接続された2つの抵抗42n1,42n2で構成されているが、図示はしないが、さらに多くの抵抗を組み合わせて構成してもよい。バイアス電圧源42pは、負極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、生成した直流定電圧(バイアス電圧)Vbi3(≠0ボルト)をターゲット定電圧Vtgに加算して、加算器42mに出力する。この場合、抵抗分圧回路42nおよびバイアス電圧源42pは、加算器42mから出力される制御パルス信号Vctの振幅および直流レベルが後述するロジックIC42fの制御入力端子の入力仕様に合致するように、その分圧比や電圧値が予め規定されている。
【0110】
加算器42mは、分圧パルス信号Vdpと、直流定電圧Vbi3およびターゲット定電圧Vtgの加算電圧(Vbi3+Vtg)とを入力すると共に電圧加算して、制御パルス信号Vct(=Vdp+Vbi3+Vtg)を出力する。この制御パルス信号Vctは、シングルエンド信号Vdを分圧して得られる分圧パルス信号Vdpと同位相の信号であることから、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tに低電圧となり、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tに高電圧となる信号である。つまり、この図15における制御パルス信号Vctは、図6に示す制御パルス信号Vctとは逆位相の信号となっている。
【0111】
このため、図15の波形整形回路42におけるスイッチ回路SCは、上記した図13の波形整形回路42におけるスイッチ回路SCを構成するロジックIC42f(制御入力端子が正論理(ハイアクティブ。制御パルス信号Vctが高電位のときにターゲット定電圧Vtgを出力する構成)のロジックIC)とは異なり、制御入力端子が負論理(ローアクティブ。制御パルス信号Vctが低電位のときにターゲット定電圧Vtgを出力する構成)のロジックIC42fで構成されている。
【0112】
この図15に示す波形整形回路42は、図5,9,13に示す波形整形回路42と同様に動作して、図6に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。これにより、この波形整形回路42は、図6に示すように、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位になるシングルエンド信号Vdを出力する。なお、この図15に示す波形整形回路42では、抵抗分圧回路42nは、シングルエンド信号Vdを分圧する上記の機能に加えて、ターゲット定電圧Vtgをコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に供給する機能(第1インピーダンス素子42dと同様の機能)を備えている。このため、第1インピーダンス素子42dを省くことも可能である。
【0113】
また、図15に示す波形整形回路42のスイッチ回路SCを構成するロジックIC42fとして、上記したような制御入力端子が負論理(ローアクティブ)のロジックICを使用する構成に代えて、図示はしないが、制御入力端子が正論理(ハイアクティブ)のロジックICを使用する構成としてもよい。この波形整形回路によれば、図8に示す制御パルス信号Vctに基づいて、スイッチ回路SCを構成するロジックIC42fが制御パルス信号Vctの高電位のときにターゲット定電圧Vtgの印加を実行し、制御パルス信号Vctの低電位のときにターゲット定電圧Vtgの印加を停止することから、図8に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力することができる。これにより、この波形整形回路は、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(ターゲット定電圧Vtg)になるシングルエンド信号Vdを出力する。
【0114】
また、図15に示す波形整形回路42や上記した不図示の波形整形回路において、抵抗分圧回路42nから出力される分圧パルス信号Vdpの振幅および直流レベルがロジックIC42fの制御入力端子の入力仕様に合致するものであるときには、加算器42mおよびバイアス電圧源42pを省いて、図16に示す波形整形回路42のように、抵抗分圧回路42nだけでスイッチ制御回路SWCを構成することもできる。この波形整形回路42では、抵抗分圧回路42nから出力される分圧パルス信号Vdpがそのまま制御パルス信号Vctとして、ロジックIC42fの制御入力端子に供給される。
【0115】
図16に示す波形整形回路42は、スイッチ回路SCを構成するロジックIC42fとして、制御入力端子が正論理(ハイアクティブ)のロジックICを使用する構成のため、図8に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。
【0116】
なお、図示はしないが、図16に示す波形整形回路42のスイッチ回路SCを構成するロジックIC42fとして、制御入力端子が負論理(ローアクティブ)のロジックICを使用して波形整形回路を構成することもできる。この波形整形回路は、図6に示すように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。
【0117】
また、上記した各波形整形回路42において使用されるターゲット定電圧Vtgは、波形整形回路42に不図示の直流定電圧源を配置して、この直流定電圧源から出力される直流定電圧を使用することもできるし、図5において破線で示すように、波形整形回路42の外部から入力された電圧データDvをD/A変換して、この電圧データDvで示される電圧値の直流電圧を出力するD/A変換器15を波形整形回路42に配置して、このD/A変換器15から出力される直流電圧をターゲット定電圧Vtgとして使用する構成とすることもできる。なお、一例として図5に示す波形整形回路42を例に挙げたが、図7図9~16の各波形整形回路42についても同様である。このD/A変換器15を波形整形回路42に配置する構成を採用したときには、電圧データDvを変更することで、シングルエンド信号Vdにおいてターゲット定電圧Vtgに規定される高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)や低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)を変更することができる。したがって、差分信号Vd0をシングルエンド信号Vdに確実に整形し得るように、ターゲット定電圧Vtgを調整することが容易に実行可能となる。
【0118】
符号化装置3は、信号生成装置2から出力された符号特定用信号Sfに基づき、ロジック信号Saに対応する符号Cs(図6,8参照)を特定する符号化処理を実行し、特定した符号Csの列(すなわち、シリアルバスSBを伝送されているCANフレームと同じCANフレーム)を、信号読取システム1に接続されている各種CAN通信対応機器に出力する。具体的には、符号化装置3は、符号化処理において、符号特定用信号Sfの高電位期間においては、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームを構成する符号Csが「1」であると特定し、かつ符号特定用信号Sfの低電位期間においては、このCANフレームを構成する符号Csが「0」であると特定すると共に、特定した符号Csで構成される符号列を、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームと特定して、各種CAN通信対応機器に出力する。この場合、符号化装置3は、CAN通信対応機器と有線伝送路を介して接続されているときには、特定したCANフレームを有線通信でCAN通信対応機器に出力(送信)し、CAN通信対応機器と無線伝送路を介して接続されているときには、特定したCANフレームを無線通信でCAN通信対応機器に出力(送信)する。
【0119】
次に、信号読取システム1の使用例、およびその際の信号読取システム1の動作について、図面を参照して説明する。なお、図2に示すように、電極部11aの電極21はシールドケーブルCBaの芯線を介してインピーダンス素子12aの一端に接続され、電極部11aのシールド22はシールドケーブルCBaのシールドを介して信号生成装置2のグランドGに接続され、電極部11bの電極21はシールドケーブルCBbの芯線を介してインピーダンス素子12bの一端に接続され、かつ電極部11bのシールド22はシールドケーブルCBbのシールドを介して信号生成装置2のグランドGに接続されているものとする。
【0120】
まず、図2に示すように、自動車に敷設されているシリアルバスSBにおける被覆導線La,Lbの被覆部に電極21が接触(当接)するように電極部11a,11bを被覆導線La,Lbにそれぞれ装着すると共に、シリアルバスSBから読み取ったCANフレーム(符号Csの列)を出力すべきCAN通信対応機器を符号化装置3に接続する。
【0121】
この場合、本例の信号読取システム1では、被覆導線La,Lb自体を加工する(絶縁被覆を剥がす)ことなく、電極部11a,11bを装着するだけでシリアルバスSBからロジック信号Saを読み取ることができるため、シリアルバスSBにコネクタが配設されていない場合においても使用することができる。また、コネクタが配設されていたとしても、シリアルバスSBに対する接続場所(電極部11a,11bの装着場所)がコネクタの配設場所に限定されずに、被覆導線La,Lbの長手方向における任意の場所に接続する(電極部11a,11bを装着する)ことが可能となっている。
【0122】
この状態において、自動車に搭載された図外のCAN通信対応機器(制御情報を示すCANフレームを出力するコントローラや、任意の計測結果を示すCANフレームを出力する検出器等)からシリアルバスSBにロジック信号Saが出力されたときに、信号生成装置2では、被覆導線Laに装着された電極部11aとシールドケーブルCBaを介して接続されたインピーダンス素子12aには、被覆導線Laに伝送されている電圧信号Vaの電圧Vaに応じて電圧が変化する第1電圧信号Vc1が発生し、また被覆導線Lbに装着された電極部11bとシールドケーブルCBbを介して接続されたインピーダンス素子12bには、被覆導線Lbに伝送されている電圧信号Vbの電圧Vbに応じて電圧が変化する第2電圧信号Vc2が発生する。
【0123】
信号生成装置2では、差動増幅部13が、この第1電圧信号Vc1およびこの第2電圧信号Vc2を入力すると共に、これらの電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)に応じて電圧が変化するシングルエンド信号Vdを出力する。この場合、差動増幅部13では、波形整形回路42が図5,9,11,13,15のうちのいずれかに示す回路構成のときには、図6に示すように、シリアルバスSBに伝送されているCANフレームを構成する符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位になるシングルエンド信号Vd(つまり、低電位期間の信号の電圧(信号のボトム電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されるように波形整形された信号)を出力する。また、波形整形回路42が図7,10,12,14,16のうちのいずれかに示す回路構成のときには、図8に示すように、シリアルバスSBに伝送されているCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位になるシングルエンド信号Vd(つまり、高電位期間の信号の電圧(信号のトップ電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されるように波形整形された信号)を出力する。
【0124】
また、信号生成装置2では、波形整形回路42が図5,9,11,13,15のうちのいずれかに示す回路構成のときには、この波形整形回路42の回路構成に対応して図5に示す回路に構成された信号生成部14が、図6に示すように、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において「高電位期間」となり、この符号Csが「0」の期間において「低電位期間」となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。また、波形整形回路42が図7,10,12,14,16のうちのいずれかに示す回路構成のときには、この波形整形回路42の回路構成に対応して図7に示す回路に構成された信号生成部14が、図8に示すように、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において「高電位期間」となり、この符号Csが「0」の期間において「低電位期間」となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0125】
また、符号化装置3では、信号生成装置2によって生成されて出力された符号特定用信号Sfに基づき、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームを構成する符号Csを特定すると共に、特定した符号Csで構成される符号列を、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームと特定して、各種CAN通信対応機器に出力する。これにより、このCAN通信対応機器では、信号読取システム1から出力された(信号読取システム1によってシリアルバスSBから読み取られた)CANフレーム(符号Csの列)に対応して予め規定されている各種の処理が実行される。
【0126】
このように、この信号生成装置2を構成する上記した各波形整形回路42は、いずれも温度の影響を受けるダイオードをスイッチ回路SCに含まない構成となっている。したがって、これらの波形整形回路42によれば、温度の影響の極めて少ないターゲット定電圧Vtgを使用することにより、差動増幅回路41から出力される差分信号Vd0を、温度の影響を受けることなく、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)が温度の影響を受けない定電圧(ターゲット定電圧Vtg)に規定されたシングルエンド信号Vdに確実に整形したり、また差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)が温度の影響を受けない定電圧(ターゲット定電圧Vtg)に規定されたシングルエンド信号Vdに確実に整形したりして、出力部42bから出力することができる。このため、この波形整形回路42を備えた信号生成装置2によれば、温度の影響を受けることなく、符号特定用信号Sfを確実に生成することができ、またこの信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、温度の影響を受けることなく、CAN通信用のシリアルバスSBからCANフレームを正確に読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームCsを各種のCAN通信対応機器に確実に出力することができる。一方、本例のスイッチ回路SCに相当する回路にダイオードを含む構成の波形整形回路では、温度の影響の極めて少ないターゲット定電圧Vtgを使用したとしても、順方向電圧が温度の影響を受けて変化するダイオードを介してこのターゲット定電圧Vtgが供給されることになるため、シングルエンド信号Vdにおける低電位側電圧や高電位側電圧は温度の影響を受けて変化するものとなる。また、各波形整形回路42は、差分信号Vd0に重畳している直流成分A(低周波ノイズ)を除去して出力する機能を有するため、波形整形回路42を備えた信号生成装置2、およびこの信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、直流成分A(低周波ノイズ)の影響を受けることなく、符号特定用信号Sf、およびをCANフレームCsを正確に生成して出力することができる。
【0127】
なお、この信号生成装置2では、上記したように、シングルエンド信号Vdが出力される波形整形回路42の部位(例えば、出力部42b)に対してターゲット定電圧Vtgを印加する経路(本例では、スイッチ回路SC)にダイオードが含まれていなければよいのであって、波形整形回路42におけるスイッチ回路SC以外の回路にダイオードが含まれていてもよいのは勿論である。この種のダイオードとしては、例えば、図示はしないが、コンパレータ42gから出力される制御パルス信号Vctの上限電圧や下限電圧を、スイッチ42fの入力電圧範囲内に制限するために、コンパレータ42gの出力端子に接続される電圧クリップ(電圧リミッタ)用のダイオードなどがある。また、波形整形回路42の外部ではあるが、シングルエンド信号Vdにおけるターゲット定電圧Vtgに規定されていない側の電圧をコンパレータ14aの入力電圧範囲内に制限するために、信号生成部14におけるコンパレータ14aの非反転入力端子に接続される電圧クリップ(電圧リミッタ)用のダイオードなどがある。
【0128】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図5に示す波形整形回路42では、スイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部に反転入力端子が接続され、かつターゲット定電圧Vtgよりも高い(若干高い)基準電圧Vr1が非反転入力端子に入力されて、出力端子から制御パルス信号Vctを出力するコンパレータ42gを有して構成されている。したがって、この波形整形回路42によれば、シングルエンド信号Vdの低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されている状態において、シングルエンド信号Vdにノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが基準電圧Vr1に達するまで(基準電圧Vr1に上昇するまで)は、スイッチ制御回路SWCが制御パルス信号Vctを高電位に維持して(つまり、スイッチ42fをオン状態に維持して)、スイッチ回路SCに対してコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)へのターゲット定電圧Vtgの印加を継続させることができる。したがって、この波形整形回路42によれば、ノイズによる誤動作を軽減することができる。
【0129】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図7に示す波形整形回路42では、スイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部に非反転入力端子が接続され、かつターゲット定電圧Vtgよりも低い(若干低い)基準電圧Vr1が反転入力端子に入力されて、出力端子から制御パルス信号Vctを出力するコンパレータ42gを有して構成されている。したがって、この波形整形回路42によれば、シングルエンド信号Vdの高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されている状態において、シングルエンド信号Vdにノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが基準電圧Vr1に達するまで(基準電圧Vr1に低下するまで)は、スイッチ制御回路SWCが制御パルス信号Vctを高電位に維持して(つまり、スイッチ42fをオン状態に維持して)、スイッチ回路SCに対してコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)へのターゲット定電圧Vtgの印加を継続させることができる。したがって、この波形整形回路42によれば、ノイズによる誤動作を軽減することができる。
【0130】
このため、この図5,7に示す波形整形回路42を備えた信号生成装置2によれば、温度の影響を受けることなく、またノイズによる誤動作を軽減しつつ、符号特定用信号Sfを確実に生成することができ、またこの信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、温度の影響を受けることなく、またノイズによる誤動作を軽減しつつ、CAN通信用のシリアルバスSBからCANフレームを正確に読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームCsを各種のCAN通信対応機器に出力することができる。
【0131】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図9に示す波形整形回路42では、スイッチ制御回路SWCは、反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続されると共に出力端子から制御パルス信号Vctを出力するコンパレータ42gと、一端部がこの出力端子に接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgの近傍の基準電圧Vr2(またはターゲット定電圧Vtg)が印加されて、この基準電圧Vr2(またはターゲット定電圧Vtg)および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧電圧をコンパレータ42gの非反転入力端子に基準電圧Vr1として出力する抵抗分圧回路42kとを備えて、コンパレータ42gがヒステリシス特性を有している(コンパレータ42gがヒステリシスコンパレータとして動作する)。
【0132】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図10に示す波形整形回路42では、スイッチ制御回路SWCは、反転入力端子に基準電圧Vr1(ターゲット定電圧Vtgおよびターゲット定電圧Vtgの近傍の電圧のうちのいずれかの電圧)が印加されると共に出力端子から制御パルス信号Vctを出力するコンパレータ42gと、一端部がこの出力端子に接続されると共に他端部がコンデンサ42cの他端部に接続されて、シングルエンド信号Vdの電圧および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧パルス信号Vdpをコンパレータ42gの非反転入力端子に出力する抵抗分圧回路42kとを備えて、コンパレータ42gがヒステリシス特性を有している(コンパレータ42gがヒステリシスコンパレータとして動作する)。
【0133】
したがって、この図9,10に示す波形整形回路42によれば、シングルエンド信号Vdが低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)のとき、およびシングルエンド信号Vdが高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)のときのいずれのときに、シングルエンド信号Vdにノイズが重畳した場合であっても、そのノイズの電圧レベルが上記のヒステリシス特性で規定されるレベル未満のときには、スイッチ制御回路SWCが制御パルス信号Vctの電位を現在の電位に維持すること(つまり、スイッチ42fがオン状態のときにはこの状態を維持し、またスイッチ42fがオフ状態のときにはこの状態を維持すること)ができることから、シングルエンド信号Vdの電圧を現在の状態に維持することができる。したがって、これらの波形整形回路42によれば、ノイズによる誤動作を一層軽減することができる。
【0134】
このため、この図9,10に示す波形整形回路42を備えた信号生成装置2によれば、温度の影響を受けることなく、またノイズによる誤動作を一層軽減しつつ、符号特定用信号Sfを確実に生成することができ、またこの信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、温度の影響を受けることなく、またノイズによる誤動作を一層軽減しつつ、CAN通信用のシリアルバスSBからCANフレームを正確に読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームCsを各種のCAN通信対応機器に出力することができる。
【0135】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図15,16に示す波形整形回路42によれば、コンパレータを使用しない構成においても、差動増幅回路41から出力される差分信号Vd0を、温度の影響を受けることなく、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに確実に整形したり、また差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに確実に整形したりして、出力部42bから出力することができる。また、これにより、波形整形回路の設計の自由度を高めることもできる。
【0136】
また、この信号生成装置2を構成する上記した図13~16に示す波形整形回路42では、スイッチ回路SCを構成するスイッチ42fが、スリーステートバッファとしての3ステートロジックIC(ロジックIC42f)で構成されている。したがって、この各波形整形回路42によれば、集積回路に内蔵されている出力バッファ(または入出力バッファ(双方向バッファ))をロジックIC42fとして使用することができる。
【0137】
また、この信号生成装置2を構成する波形整形回路42が、上記したD/A変換器15を備えた構成のときには、D/A変換器15への電圧データDvを変更することで、シングルエンド信号Vdにおいてターゲット定電圧Vtgに規定される高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)や低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)を変更することができる。したがって、差分信号Vd0をシングルエンド信号Vdに確実に整形し得るように、ターゲット定電圧Vtgを調整することが容易に実行可能となる。
【0138】
また、上記の信号生成装置2では、電極部11a,11bを備える構成を採用しているが、電極部11a,11bを別体とする構成を採用して、信号生成装置2を使用する際に、信号生成装置2に電極部11a,11bをシールドケーブルCBa,CBbを介して接続するようにしてもよい。
【0139】
また、図5,7,9,10に示す上記の波形整形回路42では、スイッチ回路SCのスイッチ42fが正論理で動作するように構成されているが、この構成に限定されず、負論理(ローアクティブ)で動作する(つまり、制御パルス信号Vctが低電位のときにオン状態に移行し、制御パルス信号Vctが高電位のときにオフ状態に移行するように動作する)構成であってもよい。なお、スイッチ42fを負論理で動作する構成とした場合には、制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCの構成も変更する必要がある。以下では、図5,7,9,10に示す上記の波形整形回路42のスイッチ42fを負論理で動作する構成としたときの波形整形回路の構成について、図5の波形整形回路42に対応する波形整形回路42については図17を参照して、また図7の波形整形回路42に対応する波形整形回路42については図18を参照して、また図9の波形整形回路42に対応する波形整形回路42については図19を参照して、また図10の波形整形回路42に対応する波形整形回路42については図20を参照して、スイッチ制御回路SWCの構成を含めて説明する。
【0140】
まず、図17を参照しつつ、負論理で動作するスイッチ42fを有する波形整形回路42の構成について説明する。なお、この波形整形回路42は、図5に示す波形整形回路42と比較して、スイッチ42fが負論理で動作する構成に加えて、上記したように制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCの構成が相違すること以外は図5に示す波形整形回路42と同一である。このため、この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCについて主として説明する。
【0141】
この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCは、図5の波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同様にして、図6に示すように、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させることでシングルエンド信号Vdにおける低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)をターゲット定電圧Vtgに規定(固定)し、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるための制御パルス信号Vctを出力する。ただし、図17の波形整形回路42のスイッチ42fは、図5の波形整形回路42のスイッチ42fとは異なり、負論理で動作する。このため、図17のスイッチ制御回路SWCからは、図5のスイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctの極性とは逆の極性の制御パルス信号Vctを出力させる(つまり、図8に示す制御パルス信号Vctと同じ極性で出力させる)必要がある。
【0142】
したがって、図17の波形整形回路42におけるスイッチ制御回路SWCは、図8に示す極性で制御パルス信号Vctを出力する図7に示す波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同等の基本構成を備えている。すなわち、図17のスイッチ制御回路SWCでは、コンパレータ42gの非反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、反転入力端子に基準電圧Vr1が入力される構成となっている。ただし、図17の波形整形回路42では、基準電圧Vr1については図5の波形整形回路42と同等にする必要があることから、図17に示すように、基準電源42hは、図5の波形整形回路42と同等に構成されて、ターゲット定電圧Vtgよりも高い電圧を基準電圧Vr1として出力する。
【0143】
この構成により、負論理のスイッチ42fを駆動するスイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部の電圧(つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を上回る状態から低下して基準電圧Vr1を下回った時点で、高電位から低電位に移行し、逆に、コンデンサ42cの他端部の電圧(シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を下回る状態から上昇して基準電圧Vr1を上回った時点で、低電位から高電位に移行する制御パルス信号Vct(図6に示す制御パルス信号Vctとは逆極性の信号(低電圧期間Tにおいて低電位となり、高電圧期間Tにおいて高電位となる信号))を生成して、負論理のスイッチ42fに出力する。その結果として、負論理のスイッチ42fは、図5に示す波形整形回路42の正論理のスイッチ42fと同じタイミングでオン状態からオフ状態に、またオフ状態からオン状態に移行する。つまり、図17に示すように負論理のスイッチ42fおよびこのスイッチ42f用に構成された上記のスイッチ制御回路SWCを備えた波形整形回路42は、図5に示す波形整形回路42(正論理のスイッチ42fを備えた波形整形回路)と同等に機能する。
【0144】
次に、図18を参照しつつ、負論理で動作するスイッチ42fを有する波形整形回路42の構成について説明する。なお、この波形整形回路42は、図7に示す波形整形回路42と比較して、スイッチ42fが負論理で動作する構成に加えて、上記したように制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCの構成が相違すること以外は図7に示す波形整形回路42と同一である。このため、この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCについて主として説明する。
【0145】
この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCは、図7の波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同様にして、図8に示すように、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させることでシングルエンド信号Vdにおける高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)をターゲット定電圧Vtgに規定(固定)し、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるための制御パルス信号Vctを出力する。ただし、図18の波形整形回路42のスイッチ42fは、図7の波形整形回路42のスイッチ42fとは異なり、負論理で動作する。このため、図18のスイッチ制御回路SWCからは、図7のスイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctの極性とは逆の極性の制御パルス信号Vctを出力させる(つまり、図6に示す制御パルス信号Vctと同じ極性で出力させる)必要がある。
【0146】
したがって、図18の波形整形回路42におけるスイッチ制御回路SWCは、図6に示す極性で制御パルス信号Vctを出力する図5に示す波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同等の基本構成を備えている。すなわち、図18のスイッチ制御回路SWCでは、コンパレータ42gの反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、非反転入力端子に基準電圧Vr1が入力される構成となっている。ただし、図18の波形整形回路42では、基準電圧Vr1については図7の波形整形回路42と同等にする必要があることから、図18に示すように、基準電源42hは、図7の波形整形回路42と同等に構成されて、ターゲット定電圧Vtgよりも低い電圧を基準電圧Vr1として出力する。
【0147】
この構成により、負論理のスイッチ42fを駆動するスイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部の電圧(つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を上回る状態から低下して基準電圧Vr1を下回った時点で、低電位から高電位に移行し、逆に、コンデンサ42cの他端部の電圧(シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を下回る状態から上昇して基準電圧Vr1を上回った時点で、高電位から低電位に移行する制御パルス信号Vct(図8に示す制御パルス信号Vctとは逆極性の信号(高電圧期間Tにおいて低電位となり、低電圧期間Tにおいて高電位となる信号))を生成して、負論理のスイッチ42fに出力する。その結果として、負論理のスイッチ42fは、図7に示す波形整形回路42の正論理のスイッチ42fと同じタイミングでオン状態からオフ状態に、またオフ状態からオン状態に移行する。つまり、図18に示すように負論理のスイッチ42fおよびこのスイッチ42f用に構成された上記のスイッチ制御回路SWCを備えた波形整形回路42は、図7に示す波形整形回路42(正論理のスイッチ42fを備えた波形整形回路)と同等に機能する。
【0148】
続いて、図19を参照しつつ、負論理で動作するスイッチ42fを有する波形整形回路42の構成について説明する。なお、この波形整形回路42は、図9に示す波形整形回路42と比較して、スイッチ42fが負論理で動作する構成に加えて、上記したように制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCの構成が相違すること以外は図9に示す波形整形回路42と同一である。このため、この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCについて主として説明する。
【0149】
この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCは、図9の波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同様にして、図6に示すように、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させることでシングルエンド信号Vdにおける低電位側電圧(低電圧期間Tの電圧)をターゲット定電圧Vtgに規定(固定)し、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるための制御パルス信号Vctを出力する。ただし、図19の波形整形回路42のスイッチ42fは、図9の波形整形回路42のスイッチ42fとは異なり、負論理で動作する。このため、図19のスイッチ制御回路SWCからは、図9のスイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctの極性とは逆の極性の制御パルス信号Vctを出力させる(つまり、図8に示す制御パルス信号Vctと同じ極性で出力させる)必要がある。
【0150】
したがって、図19の波形整形回路42におけるスイッチ制御回路SWCは、図8に示す極性で制御パルス信号Vctを出力する図10に示す波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同等の基本構成を備えている。すなわち、図19のスイッチ制御回路SWCでは、コンパレータ42gは、その反転入力端子に基準電圧Vr1が印加され、また抵抗分圧回路42kは、一端部がコンパレータ42gの出力端子に接続されると共に他端部がコンデンサ42cの他端部に接続されて、シングルエンド信号Vdの電圧および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧パルス信号Vdpをコンパレータ42gの非反転入力端子に出力する構成となっている。ただし、図19の波形整形回路42では、基準電圧Vr1については図5の波形整形回路42と同等にする必要があることから、図19に示すように、基準電源42hは、図5の波形整形回路42と同等に構成されて、ターゲット定電圧Vtgよりも高い電圧を基準電圧Vr1として出力する。
【0151】
この構成により、負論理のスイッチ42fを駆動するスイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部の電圧(つまり、シングルエンド信号Vdの電圧)が低下するのに伴って低下する分圧パルス信号Vdpの電圧が基準電圧Vr1を上回る状態から下回る状態に移行した時点で、高電位から低電位に移行し、逆に、コンデンサ42cの他端部の電圧(シングルエンド信号Vdの電圧)が上昇するのに伴って上昇する分圧パルス信号Vdpの電圧が基準電圧Vr1を下回る状態から上回る状態に移行した時点で、低電位から高電位に移行する制御パルス信号Vct(図6に示す制御パルス信号Vctとは逆極性の信号(低電圧期間Tにおいて低電位となり、高電圧期間Tにおいて高電位となる信号))を生成して、負論理のスイッチ42fに出力する。その結果として、負論理のスイッチ42fは、図9に示す波形整形回路42の正論理のスイッチ42fと同じタイミングでオン状態からオフ状態に、またオフ状態からオン状態に移行する。つまり、図19に示すように負論理のスイッチ42fおよびこのスイッチ42f用に構成された上記のスイッチ制御回路SWCを備えた波形整形回路42は、図9に示す波形整形回路42(正論理のスイッチ42fを備えた波形整形回路)と同等に機能する。
【0152】
次いで、図20を参照しつつ、負論理で動作するスイッチ42fを有する波形整形回路42の構成について説明する。なお、この波形整形回路42は、図10に示す波形整形回路42と比較して、スイッチ42fが負論理で動作する構成に加えて、上記したように制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCの構成が相違すること以外は図10に示す波形整形回路42と同一である。このため、この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCについて主として説明する。
【0153】
この波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCは、図10の波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同様にして、図8に示すように、交流成分Vd0acにおける高電圧期間Tにスイッチ42fをオン状態に移行させることでシングルエンド信号Vdにおける高電位側電圧(高電圧期間Tの電圧)をターゲット定電圧Vtgに規定(固定)し、交流成分Vd0acにおける低電圧期間Tにスイッチ42fをオフ状態に移行させるための制御パルス信号Vctを出力する。ただし、図20の波形整形回路42のスイッチ42fは、図10の波形整形回路42のスイッチ42fとは異なり、負論理で動作する。このため、図20のスイッチ制御回路SWCからは、図10のスイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctの極性とは逆の極性の制御パルス信号Vctを出力させる(つまり、図6に示す制御パルス信号Vctと同じ極性で出力させる)必要がある。
【0154】
したがって、図20の波形整形回路42におけるスイッチ制御回路SWCは、図6に示す極性で制御パルス信号Vctを出力する図9に示す波形整形回路42のスイッチ制御回路SWCと同等の基本構成を備えている。すなわち、図20のスイッチ制御回路SWCでは、コンパレータ42gは、その反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、また抵抗分圧回路42kは、一端部がコンパレータ42gの出力端子に接続されると共に他端部に基準電圧Vr2が印加されて、基準電圧Vr2および制御パルス信号Vctの電圧で規定される分圧電圧をコンパレータ42gの非反転入力端子に基準電圧Vr1として出力する構成となっている。ただし、図20の波形整形回路42では、基準電圧Vr1については図7の波形整形回路42と同等にする必要があることから、図20に示すように、基準電源42hは、ターゲット定電圧Vtgよりも低い電圧を基準電圧Vr2として出力するように構成されている。
【0155】
この構成により、負論理のスイッチ42fを駆動するスイッチ制御回路SWCは、コンデンサ42cの他端部の電圧(シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を上回る状態(ターゲット定電圧Vtg)から低下して(図7の構成よりも、電圧Vdvの分だけ低く低下して)基準電圧Vr1を下回った時点で、低電位から高電位に移行し、逆に、コンデンサ42cの他端部の電圧(シングルエンド信号Vdの電圧)が基準電圧Vr1を下回る状態から上昇して(図7の構成よりも、電圧Vdvの分だけ高く上昇して)基準電圧Vr1を上回った時点で、高電位から低電位に移行する制御パルス信号Vct(図8に示す制御パルス信号Vctとは逆極性の信号(高電圧期間Tにおいて低電位となり、低電圧期間Tにおいて高電位となる信号))を生成して、負論理のスイッチ42fに出力する。その結果として、負論理のスイッチ42fは、図10に示す波形整形回路42の正論理のスイッチ42fと同じタイミングでオン状態からオフ状態に、またオフ状態からオン状態に移行する。つまり、図20に示すように負論理のスイッチ42fおよびこのスイッチ42f用に構成された上記のスイッチ制御回路SWCを備えた波形整形回路42は、図10に示す波形整形回路42(正論理のスイッチ42fを備えた波形整形回路)と同等に機能する。
【0156】
このように、図5,7,9,10に示す波形整形回路42のスイッチ42fを負論理で動作するスイッチに代える構成(図17,18,19,20に示す波形整形回路42の構成)を採用することもできる。
【0157】
また、上記の信号生成装置2では、波形整形回路42から出力されるシングルエンド信号Vdを二値化して符号特定用信号Sfとして出力する信号生成部14を備える構成を採用しているが、符号化装置3がシングルエンド信号Vdをそのまま符号特定用信号Sfとして処理し得る構成のとき(例えば、符号化装置3が信号生成部14に相当する装置を内蔵する構成のとき)には、信号生成装置2がシングルエンド信号Vdをそのまま符号特定用信号Sfとして出力する構成(信号生成部14を備えない構成)とすることもできる。
【0158】
また、上記の信号読取システム1では、信号生成装置2が、「高電位期間」および「低電位期間」の配列パターンがシリアルバスSBを介して伝送されているロジック信号Saのロジックパターン(つまり、電位差(Va-Vb)の大小のパターン)と反転する符号特定用信号Sfを生成して出力すると共に、符号化装置3が、符号特定用信号Sfにおける高電位期間を2進数データの「1」とし、かつ符号特定用信号Sfにおける低電位期間を2進数データの「0」とする符号化処理を実行して符号列Cs(CANフレーム)を特定する構成を採用したが、図示はしないが、信号生成装置2が、「高電位期間」および「低電位期間」の配列パターンがシリアルバスSBを介して伝送されているロジック信号Saのロジックパターン(電位差(Va-Vb)の大小のパターン)と一致する符号特定用信号(上記した符号特定用信号Sfと位相が反転した信号)を生成して出力すると共に、符号化装置3が、この符号特定用信号における低電位期間を2進数データの「1」とし、かつ符号特定用信号における高電位期間を2進数データの「0」とする符号化処理を実行して符号列Cs(CANフレーム)を特定する構成を採用することもできる。
【0159】
また、上記した各波形整形回路42は、直列接続された第2インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fで構成された直列回路を有するスイッチ回路SCを備えて、シングルエンド信号Vdの高電位側電圧(高電圧期間の電圧)および低電位側電圧(低電圧期間の電圧)のうちのいずれか一方の電圧をターゲット定電圧Vtgに規定(固定)する際に、第2インピーダンス素子42e(十分に低い抵抗値の抵抗)を介してターゲット定電圧Vtgを、シングルエンド信号Vdが出力される出力部42bに、低インピーダンスで供給(印加)するように構成されているが、この構成に限定されるものではない。
【0160】
例えば、図5,7,9,10,13~16に示す各波形整形回路42を例に挙げて説明すると、対応する各図21図28の波形整形回路42のように、第2インピーダンス素子42eを削除して(短絡して)、ターゲット定電圧Vtgをオン状態のスイッチ42fだけを介して直接供給し得る構成(一層低インピーダンスな状態で供給し得る構成)を採用することもできる。なお、この構成では、各図21図28に示すように、コンデンサ42cの他端部と出力部42bとの間に第3インピーダンス素子42rを配設する構成(コンデンサ42cの他端部を第3インピーダンス素子42rを介して出力部42bに接続する構成)を採用するものとする。
【0161】
まず、図21の波形整形回路42の具体的な構成について、基本構成が関連する図5の波形整形回路42と比較しつつ説明する。なお、図5の波形整形回路42の構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。図21の波形整形回路42では、図5に示す波形整形回路42の第2インピーダンス素子42eが削除されている(短絡されている)。つまり、ターゲット定電圧Vtgの電位と出力部42bとの間に、スイッチ42fだけが配置されている。また、図21の波形整形回路42では、新たな第3インピーダンス素子42rが、一端部がコンデンサ42cの他端部(コンパレータ42gの反転入力端子が接続されている端部)に接続されると共に、他端部が出力部42bに接続されることで、コンデンサ42cの他端部と出力部42bとの間に配設されている。
【0162】
この構成により、図21の波形整形回路42では、オン状態のスイッチ42fを介して極めて低インピーダンス(第2インピーダンス素子42eを介して印加する図5の構成と比較して一層低インピーダンス)でターゲット定電圧Vtgを出力部42bに印加することが可能となっている。これにより、図21の波形整形回路42は、図5の波形整形回路42と同等に機能して差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち下がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、これにより、後段に配置された信号生成部14において、ターゲット定電圧Vtgを基準として規定された閾値電圧Vthと比較することで、シングルエンド信号Vdを一層確実に、かつより正確なパルス幅で二値化して符号特定用信号Sfを生成することができる。
【0163】
次いで、図22の波形整形回路42の具体的な構成について、基本構成が関連する図7の波形整形回路42と比較しつつ説明する。なお、図7の波形整形回路42の構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。図22の波形整形回路42でも、図7に示す波形整形回路42の第2インピーダンス素子42eが削除されている(短絡されている)。つまり、ターゲット定電圧Vtgの電位と出力部42bとの間に、スイッチ42fだけが配置されている。また、図22の波形整形回路42では、新たな第3インピーダンス素子42rが、一端部がコンデンサ42cの他端部(コンパレータ42gの非反転入力端子が接続されている端部)に接続されると共に、他端部が出力部42bに接続されることで、コンデンサ42cの他端部と出力部42bとの間に配設されている。
【0164】
この構成により、図22の波形整形回路42でも、オン状態のスイッチ42fを介して極めて低インピーダンス(第2インピーダンス素子42eを介して印加する図7の構成と比較して一層低インピーダンス)でターゲット定電圧Vtgを出力部42bに印加することが可能となっている。これにより、図22の波形整形回路42は、図7の波形整形回路42と同等に機能して差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち上がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、これにより、図21の波形整形回路42と同様にして、後段に配置された信号生成部14において、より正確なパルス幅で二値化された符号特定用信号Sfを生成させることができる。
【0165】
続いて、図23,25の波形整形回路42の具体的な構成について、図23の波形整形回路42については基本構成が関連する図9の波形整形回路42と比較しつつ、また図25の波形整形回路42については基本構成が関連する図13の波形整形回路42と比較しつつ説明する。なお、図9,13の波形整形回路42の構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。図23,25の波形整形回路42でも、図9,13に示す波形整形回路42の第2インピーダンス素子42eが削除されている(短絡されている)。つまり、ターゲット定電圧Vtgの電位と出力部42bとの間に、スイッチ42fだけが配置されている。また、図23,25の波形整形回路42では、新たな第3インピーダンス素子42rが、一端部がコンデンサ42cの他端部(コンパレータ42gの反転入力端子が接続されている端部)に接続されると共に、他端部が出力部42bに接続されることで、コンデンサ42cの他端部と出力部42bとの間に配設されている。
【0166】
この構成により、図23,25の波形整形回路42では、オン状態のスイッチ42fを介して極めて低インピーダンス(第2インピーダンス素子42eを介して印加する図9,13の構成と比較して一層低インピーダンス)でターゲット定電圧Vtgを出力部42bに印加することが可能となっている。これにより、図23,25の波形整形回路42は、図9,13の波形整形回路42と同等に機能して差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち下がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、これにより、図21の波形整形回路42と同様にして、後段に配置された信号生成部14において、より正確なパルス幅で二値化された符号特定用信号Sfを生成させることができる。
【0167】
次いで、図24,26の波形整形回路42の具体的な構成について、図24の波形整形回路42については基本構成が関連する図10の波形整形回路42と比較しつつ、また図26の波形整形回路42については基本構成が関連する図14の波形整形回路42と比較しつつ説明する。なお、図10,14の波形整形回路42の構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。図24,26の波形整形回路42でも、図10,14に示す波形整形回路42の第2インピーダンス素子42eが削除されている(短絡されている)。つまり、ターゲット定電圧Vtgの電位と出力部42bとの間に、スイッチ42fだけが配置されている。また、図24,26の波形整形回路42では、新たな第3インピーダンス素子42rが、一端部がコンデンサ42cの他端部(直列接続された2本の抵抗42i,42jで構成された抵抗分圧回路42kの他端部(抵抗42j側の端部))に接続されると共に、他端部が出力部42bに接続されることで、コンデンサ42cの他端部と出力部42bとの間に配設されている。
【0168】
この構成により、図24,26の波形整形回路42でも、オン状態のスイッチ42fを介して極めて低インピーダンス(第2インピーダンス素子42eを介して印加する図10,14の構成と比較して一層低インピーダンス)でターゲット定電圧Vtgを出力部42bに印加することが可能となっている。これにより、図24,26の波形整形回路42は、図10,14の波形整形回路42と同等に機能して差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち上がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、これにより、図21の波形整形回路42と同様にして、後段に配置された信号生成部14において、より正確なパルス幅で二値化された符号特定用信号Sfを生成させることができる。
【0169】
また、図15に示す波形整形回路42についても、上記した図21図26に示す波形整形回路42と同様にして、第2インピーダンス素子42eを削除する(短絡する)と共に、新たな第3インピーダンス素子42rを追加することで、図27に示す波形整形回路42に構成することもできる。また、図16に示す波形整形回路42についても、上記した図21図26に示す波形整形回路42と同様にして、第2インピーダンス素子42eを削除する(短絡する)と共に、新たな第3インピーダンス素子42rを追加することで、図28に示す波形整形回路42に構成することもできる。
【0170】
この図27に示す波形整形回路42は、図21,23,25に示す波形整形回路42と同様にして、差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち下がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、この図28に示す波形整形回路42は、図22,24,26に示す波形整形回路42と同様にして、差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力すると共に、シングルエンド信号Vdの立ち上がりをより急峻にすること(ターゲット定電圧Vtgへの移行に要する時間をより短くすること)ができる。また、これにより、図27,28に示す波形整形回路42は、図21の波形整形回路42と同様にして、後段に配置された信号生成部14において、より正確なパルス幅で二値化された符号特定用信号Sfを生成させることができる。
【0171】
また、図17,18,19,20に示す各波形整形回路42(スイッチ42fが負論理で動作する回路)についても、図示はしないが、図21図24に示す上記の波形整形回路42と同様にして、第2インピーダンス素子42eを削除する(短絡する)と共に、第3インピーダンス素子42rを追加する構成を採用することで、ターゲット定電圧Vtgをオン状態のスイッチ42fだけを介して直接供給し得るようにすることもできる。そして、このように第2インピーダンス素子42eを削除する(短絡する)と共に、第3インピーダンス素子42rを追加する構成を採用した上記のいずれかの波形整形回路42を備えた信号生成装置2を有する信号読取システム1によれば、この符号特定用信号Sfに基づいて、ロジック信号Saによって示されている符号Csを一層確実に特定することができ、さらには特定した符号Csの列で構成されるCANフレームをより確実に特定することができる。
【0172】
また、信号読取システム1では、図2を参照して説明したように、シリアルバスSBの一方の被覆導線Laに装着される電極部11aはシールドケーブルCBaを介して信号生成装置2に接続されると共に、シリアルバスSBの他方の被覆導線Lbに装着される電極部11bはシールドケーブルCBaとは別体のシールドケーブルCBbを介して信号生成装置2に接続されている。
【0173】
すなわち、信号読取システム1では、図29に示すように、電極部11aの電極21である一方の電極21は、基端部側が信号生成装置2内の第1インピーダンス素子12a(同図では図示を省略している)に接続された第1シールドケーブルCBaの自由端側に接続されている。このため、電極部11aおよび第1シールドケーブルCBaは、信号生成装置2(具体的には、内部の第1インピーダンス素子12a)を一方の被覆導線Laに金属非接触の状態で接続する(結合容量を介して接続する)第1検出プローブPLaとして機能する。また、電極部11bの電極21である他方の電極21は、基端部側が信号生成装置2内の第2インピーダンス素子12b(同図では図示を省略している)に接続された第2シールドケーブルCBb(第1シールドケーブルCBaとは別体のシールドケーブル)の自由端側に接続されている。このため、電極部11bおよび第2シールドケーブルCBbは、信号生成装置2(具体的には、内部の第2インピーダンス素子12b)を他方の被覆導線Lbに金属非接触の状態で接続する(結合容量を介して接続する)第2検出プローブPLb(第1検出プローブPLaとは別体の検出プローブ)として機能する。
【0174】
この構成(各電極部11a,11bが別体に形成された一対の検出プローブPLa,PLbの自由端側に配置されている構成)により、信号読取システム1では、各電極部11a,11bが一体的に形成されている構成とは異なり、図29に示すように、電極部11a,11bをシリアルバスSBにおける長手方向(長さ方向)Wに沿って離間する任意の2つの位置(同図に示すように、電極部11aは、一般的に互いにツイストされている(撚り合わされている)被覆導線La,Lbのうちの被覆導線Laの第1の位置P1に、電極部11bはシリアルバスSBを構成する被覆導線Lbの第2の位置P2)に装着して使用することができる。このため、図示はしないが、各電極部11a,11bが一体的に形成されていて、シリアルバスSBにおける長手方向Wに沿った同じ位置に取り付ける構成(ツイストされている被覆導線La,Lbをこの位置において解いて、電極部11a,11bを取付可能な距離だけ離す作業と、電極部11a,11bをこの位置における対応する被覆導線La,Lbに同時に取り付ける作業とを行う必要がある構成)とは異なり、各電極部11a,11bを、それぞれが取り付け易い任意の各位置P1,P2に取り付けることができる(本例では、各位置P1,P2において、ツイストされている被覆導線La,Lbを解いて取り付けることができる)。また、各電極部11a,11bをシリアルバスSBにおける長手方向Wに沿った別の位置P1,P2に取り付ける構成のため、ツイストされている被覆導線La,Lbを各位置P1,P2において解く量を少なくすることができる。したがって、信号読取システム1によれば、各電極部11a,11bのシリアルバスSBへの装着を確実に行えると共に、装着に要する時間の短縮も図ること(装着性を高めること)ができる。
【0175】
なお、各検出プローブPLa,PLbについては、図示はしないが、信号読取システム1の信号生成装置2に、コネクタを介して着脱自在に接続する構成を採用してもよい。また、検出プローブPLa,PLbを共通の1つのコネクタを介して信号生成装置2に接続するようにし、かつ検出プローブPLa,PLbにおける各基端部側の部位(例えば図29に示す部位X)を、電極部11a,11b側の部位をある程度露出させた状態のままで熱収縮チューブなどで一本化する(まとめる)ようにしてもよい。また、図29の信号読取システム1では、検出プローブPLa,PLbの基端部側をそれぞれ信号生成装置2に接続する構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。
【0176】
例えば、図30に示す信号読取システム1のように、2芯シールド線CBcを介して信号生成装置2に接続された接続ボックスなどの接続部51に、検出プローブPLa,PLbの基端部側をそれぞれ接続する構成を採用することもできる。この構成では、2芯シールド線CBcは、基端部側が不図示のコネクタを介して信号生成装置2に接続されると共に、2つの芯線がこのコネクタを介して信号生成装置2内の各インピーダンス素子12a,12bに接続されると共に、不図示のシールドがコネクタを介して信号生成装置2内のグランドGに接続されている。また、接続部51は、2芯シールド線CBcの自由端側に接続されている。この場合、接続部51内には、2芯シールド線CBcに含まれてインピーダンス素子12aに接続される一方の芯線を、対応する検出プローブPLaを構成するシールドケーブルの芯線に接続し、2芯シールド線CBcに含まれてインピーダンス素子12bに接続される他方の芯線を、対応する検出プローブPLbを構成するシールドケーブルの芯線に接続し、かつ2芯シールド線CBcのシールドを、検出プローブPLa,PLbを構成する各シールドケーブルのシールドに接続する不図示の接続回路が内蔵されている。
【0177】
この図30に示す信号読取システム1においても、別体に形成された一対の検出プローブPLa,PLbの自由端側に各電極部11a,11bが配置されている構成のため、上記した図31に示す信号読取システム1と同等の効果を奏することができる。
【0178】
また、上記の各信号読取システム1では、信号生成装置2が、被覆導線La,Lbの金属部(芯線)と容量結合する電極部11a,11b、およびシールドケーブルCBa,CBbを介して、被覆導線La,Lbに接続されると共に、被覆導線La,Lbに伝送されている電圧信号Va,Vbの電圧Va,Vbに応じて電圧が変化する各電圧信号Vc1,Vc2を生成し、この電圧信号Vc1,Vc2に基づいて、電圧信号Va,Vbに対応する符号Csを特定可能な符号特定用信号Sfを生成する構成(すなわち、電圧検出プローブとして機能する上記の検出プローブPLa,PLbを使用する構成)を採用しているが、この構成に限定されるものではない。
【0179】
例えば、検出プローブPLa,PLbに代えて、図31に示すように、一対の電流検出プローブPLc,PLd(被覆導線La,Lbを切断することなく、被覆導線La,Lbに装着し得るクランプ式の電流検出プローブが好ましい)を信号生成装置2に接続して、符号特定用信号Sfを生成する構成を採用することもできる。公知となっている様々な電流検出プローブをこの電流検出プローブPLc,PLdとして使用することができるが、以下では、一例として、本願出願人が既に提案している特開2006-343109号公報に開示されている電流検出プローブを使用する例を挙げて説明する。
【0180】
この電流検出プローブPLc,PLdは、図31に示すように、略円形に形成されると共に先端が開閉自在に構成されたクランプ部61と、クランプ部61の内部に配設されて鉄心などの磁気コアに巻線を巻き付けたコイルで構成された電流センサ(図示せず)とを備えて、同一に構成されている。この電流センサは、各クランプ部61で対応する被覆導線(電流検出プローブPLcでは被覆導線La、電流検出プローブPLdでは被覆導線Lb)を挟み込んだ状態(クランプした状態)において、対応する被覆導線を流れている電流(被覆導線Laを流れている電流Iaと、被覆導線Lbを流れている電流Ib)を検出してその電流値に振幅が比例する電流対応信号Vi(電流Iaについての電流対応信号Viaと、電流Ibについての電流対応信号Vib)を検出信号として信号生成装置2に出力する。なお、この電流検出プローブPLc,PLdは、上記した構成により、AC電流検出プローブ(交流電流検出プローブ)として構成されているが、電流検出プローブPLc,PLdとして交流電流だけでなく直流電流についても測定し得るDC電流検出プローブ(直流電流検出プローブ)を採用してもよいのは勿論である。
【0181】
被覆導線Laを流れている電流Iaは、被覆導線Laに伝送される電圧信号Vaの電圧Vaに応じてその電流値が変化することから、電流対応信号Viaは電圧信号Vaの電圧Vaに応じてその電圧値が変化する。また、被覆導線Lbを流れている電流Ibは、被覆導線Lbに伝送される電圧信号Vbの電圧Vbに応じてその電流値が変化することから、電流対応信号Vibは電圧信号Vbの電圧Vbに応じてその電圧値が変化する。したがって、信号生成装置2では、電流検出プローブPLc,PLdが接続されている構成においても、検出プローブPLa,PLbが接続されている上記の構成と同様にして、差動増幅回路41(上記した種々の差動増幅回路41のうちのいずれか1つ)が、電流対応信号Via,Vibに基づき差分信号Vd0を生成して出力し、波形整形回路42(上記した種々の波形整形回路42のうちのいずれか1つ)がこの差分信号Vd0からシングルエンド信号Vdを生成して出力し、信号生成部14(上記した種々の信号生成部14のうちの波形整形回路42に対応する1つ)がこのシングルエンド信号Vdを二値化して符号特定用信号Sfを生成して出力することができる(図2参照)。
【0182】
したがって、図31に示す構成の信号生成装置2、およびこの信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、一対の被覆導線La,Lbにおける長手方向Wの任意の部位に電流検出プローブPLc,PLdを装着する(この例では、クランプ部61をクランプ)するという簡易な作業を行うことで、シリアルバスSBを介して伝送されているロジック信号Saによって示されている符号Csを特定可能な符号特定用信号Sfを生成し、生成した符号特定用信号Sfに基づいてロジック信号Saによって示されている符号Csを特定することができ、さらには特定した符号Csの列で構成されるCANフレームを特定することができる。これにより、シリアルバスSBにコネクタが配設されていなくても、またシリアルバスSBにコネクタが配設されている場合においても、シリアルバスSBの任意の場所(第1の位置P1および第2の位置P2)においてロジック信号Saを読み取って、符号Cs、および符号Csで構成されるCANフレームを特定することができる。
【符号の説明】
【0183】
1 信号読取システム
2 信号生成装置
42 波形整形回路
42a 入力部
42b 出力部
42c コンデンサ
42d 第1インピーダンス素子
42e 第2インピーダンス素子
42f スイッチ
SC 直列回路
SWC スイッチ制御回路
Vd シングルエンド信号
Vd0 差分信号
Vtg ターゲット定電圧
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