(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】排熱ダクト及び排熱ダクトの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20230424BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B60K11/06
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2019148992
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-04-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】中根 一輝
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-243855(JP,A)
【文献】特開平11-277586(JP,A)
【文献】特開平09-063312(JP,A)
【文献】特開2017-217986(JP,A)
【文献】特開2019-129090(JP,A)
【文献】特開平10-230345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00 - 11/08
H05K 7/20
H01M 50/20 - 50/298
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の熱源の周囲の熱気を
前記車両外に案内する排熱路のうち、排熱口を含む末端側を構成すると共に、前記排熱路を通して前記熱源側へ異物が侵入することを規制するメッシュが設けられた
樹脂製の排熱ダクトであって、
前記メッシュは、前記排熱ダクトの途中位置に設けられ、前記メッシュより上流側及び下流側の部分と一体成形されている排熱ダクト。
【請求項2】
前記排熱ダクトの途中部分に設けられた折れ曲がり部と、
前記折れ曲がり部から前記排熱口まで延びる下流側ストレート部と、前記折れ曲がり部から前記排熱口と反対側の端まで延びる上流側ストレート部と、を有し、
前記メッシュは、前記折れ曲がり部に設けられている請求項1に記載の排熱ダクト。
【請求項3】
前記メッシュは、前記排熱ダクトの内側部分を塞ぐように配置された板状部に貫通孔が複数形成されてなり、
前記貫通孔は、前記上流側ストレート部と略平行に延びている、請求項2に記載の排熱ダクト。
【請求項4】
前記メッシュは、前記排熱口の内接球の半径よりも長い距離、前記排熱口から離れた位置に設けられている、請求項1から3のうち何れか1項に記載の排熱ダクト。
【請求項5】
請求項1に記載の排熱ダクトの製造方法であって、
前記排熱ダクトの外周面を成形する1対のメイン金型と、
前記1対のメイン金型の間に挿通されて前記排熱ダクトの内周面を成形する中子と、を有する成形金型を用いて、前記排熱ダクトを樹脂の射出成形で製造し、
前記成形金型に、
前記排熱ダクトのうち前記排熱口を含むストレート部の内周面を成形する第1の前記中子と、
前記1対のメイン金型の間で前記第1の中子と突き合わされる突合せ部と、
前記第1の中子と前記突合せ部のうち一方に突設され、他方との当接部位を構成する複数の突部と、を設けておき、
前記第1の中子と前記突合せ部との間にて、前記メッシュを成形し、前記複数の突部により、前記メッシュの貫通孔を成形する、排熱ダクトの製造方法。
【請求項6】
前記成形金型に、前記1対のメイン金型の間に挿通されて前記第1の中子と交差する方向に延び、前記突合せ部を有する第2の前記中子を設けておくと共に、
前記複数の突部を、前記第2の中子に設けておき、
前記第2の中子により、前記排熱ダクトのうち前記排熱口と反対側に配置される上流側ストレート部の内周面を成形し、
前記第1と第2の中子の突き合わされた先端部同士の間にて前記メッシュを成形し、
前記第2の中子の前記複数の突部により、前記メッシュの前記複数の貫通孔を、前記上流側ストレート部と略平行に延びるように成形する、請求項5に記載の排熱ダクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両内の熱気を車両外へ排出する排熱ダクト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンコントロールユニット等の熱源を内部に有する車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両としては、上記熱源の周囲の熱気を車両の例えば下面まで案内する排熱ダクトが設けられ、その排熱ダクトの下端の排熱口から車両外に上記熱気を排出するものがある。このような排熱ダクトには、排熱ダクトの内部を通して上記熱源側へ生物等の異物が侵入することを規制するメッシュが、排熱ダクトの排熱口を外側から覆った状態に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-14586号公報(段落[0004]、[0005]、[0013]及び
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の排熱ダクトでは、例えば走行時に小石がメッシュに当たる等して、メッシュが傷付き易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、車両内の熱源の周囲の熱気を車両外に案内する排熱路のうち、排熱口を含む末端側を構成すると共に、前記排熱路を通して前記熱源側へ異物が侵入することを規制するメッシュが設けられた排熱ダクトであって、樹脂製で前記メッシュが一体成形されてなり、前記メッシュは、前記排熱口よりも前記車両内側に奥まる位置に設けられている排熱ダクトである。
【0006】
発明の第2態様は、前記排熱ダクトの途中部分に設けられた折れ曲がり部と、前記折れ曲がり部から前記排熱口まで延びる下流側ストレート部と、前記折れ曲がり部から前記排熱口と反対側の端まで延びる上流側ストレート部と、を有し、前記メッシュは、前記折れ曲がり部に設けられている第1態様に記載の排熱ダクトである。
【0007】
発明の第3態様は、前記メッシュは、前記排熱ダクトの内側部分を塞ぐように配置された板状部に貫通孔が複数形成されてなり、前記貫通孔は、前記上流側ストレート部と略平行に延びている、第2態様に記載の排熱ダクトである。
【0008】
発明の第4態様は、前記メッシュは、前記排熱口の内接球の半径よりも長い距離、前記排熱口から離れた位置に設けられている、第1態様から第3態様のうち何れか1の態様に記載の排熱ダクトである。
【0009】
発明の第5態様は、第1態様に記載の排熱ダクトの製造方法であって、前記排熱ダクトの外周面を成形する1対のメイン金型と、前記1対のメイン金型の間に挿通されて前記排熱ダクトの内周面を成形する中子と、を有する成形金型を用いて、前記排熱ダクトを樹脂の射出成形で製造し、前記成形金型に、前記排熱ダクトのうち前記排熱口を含むストレート部の内周面を成形する第1の前記中子と、前記第1の中子と前記1対のメイン金型の間で突き合わされる突合せ部と、前記第1の中子と前記突合せ部のうち一方に突設され、他方との当接部位を構成する複数の突部と、を設けておき、前記第1の中子と前記突合せ部との間にて、前記メッシュを成形し、前記複数の突部により、前記メッシュの貫通孔を成形する、排熱ダクトの製造方法である。
【0010】
発明の第6態様は、前記成形金型に、前記1対のメイン金型の間に挿通されて前記第1の中子と交差する方向に延び、前記突合せ部を有する第2の前記中子を設けておくと共に、前記複数の突部を、前記第2の中子に設けておき、前記第2の中子により、前記排熱ダクトのうち前記排熱口と反対側に配置される上流側ストレート部の内周面を成形し、前記第1と第2の中子の突き合わされた先端部同士の間にて前記メッシュを成形し、前記第2の中子の前記複数の突部により、前記メッシュの前記複数の貫通孔を、前記上流側ストレート部と略平行に延びるように成形する、第5態様に記載の排熱ダクトの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
発明の第1態様の排熱ダクトでは、排熱路を通しての熱源側への異物の侵入を規制するメッシュが、排熱ダクトの末端の排熱口よりも車両内側に奥まる位置に設けられる。従って、例えば車両の走行時に小石等がメッシュに当たる等、異物が外側からメッシュに当たることが抑制され、メッシュが傷つくことが抑制される。また、メッシュが排熱ダクトに一体成形されているので、メッシュが排熱ダクトと別体となった従来の構造に比べて、部品点数の削減が図られる。
【0012】
発明の第2態様では、排熱ダクトに、折れ曲がり部が設けられ、その折れ曲がり部から排熱ダクトの両端までがストレート部となっていると共に、メッシュが、折れ曲がり部に設けられる。従って、メッシュが一体成形される排熱ダクトが、折れ曲がり部を有する構成であっても、射出成形で容易に成形することが可能となる。
【0013】
発明の第3態様では、メッシュの貫通孔が、熱源側からの熱気が流入する上流側ストレート部と略平行に延びているので、熱源側からの熱気が貫通孔を(即ち、メッシュを)スムーズに通過することが可能となる。また、折れ曲がり部を有する排熱ダクトでは、メッシュの貫通孔が上流側ストレート部と略平行であれば、メッシュの貫通孔が、下流側ストレート部と交差する方向に延びることになる。従って、排熱口から下流側ストレート部に侵入した小石や泥等の異物が、貫通孔(即ち、メッシュ)を通過し難くなり、熱源側への異物の侵入を規制し易くすることができる。
【0014】
発明の第4態様では、メッシュが、排熱口の内接球の半径よりも長い距離、排熱口から離れた位置に配置されるので、排熱口よりも大径の球状の異物によるメッシュへの接触を抑制でき、メッシュが傷つくことをより抑制可能となる。
【0015】
発明の第5態様によれば、メッシュを有する排熱ダクトを射出成形で容易に成形することが可能となる。
【0016】
発明の第6態様によれば、折れ曲がった形状の排熱ダクトの内面にメッシュを一体成形することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態に係る排熱ダクトの車両への取付状態を示す側面図
【
図6】排熱ダクトを成形する射出成形金型の型閉じ状態の側断面図
【
図8】キャビティ内に樹脂が射出された射出成形金型の側断面図
【
図9】第1と第2の中子が外され始めたときの第1と第2の中子の突合せ部分及びメッシュの拡大側断面図
【
図10】第1と第2の中子が外されているときの射出成形金型の側断面図
【
図11】型開き中の射出成形金型及び排熱ダクトの側断面図
【
図12】他の実施形態に係る排熱ダクトの射出成形金型での製造工程を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示されるように、本実施形態の排熱ダクト10は、例えば、内部にエンジンコントロールユニット等の熱源91を有する車両90に取り付けられる。車両90では、熱源91が車室内の空気を用いて冷却され、熱源91の周囲の熱気(即ち、冷却に使用された空気)は、排熱ダクト10によって車両90の下面まで案内され、排熱ダクト10の一端(下端)の排熱口10Aから車両90外に排出される。なお、本実施形態では、排熱ダクト10は、熱源91の周囲の熱気を排出する排出路92のうち排熱口10Aを含む一端側(下側)部分を構成し、排出路92の他端側(上側)部分は、別のダクトにより構成される。
【0019】
図2及び
図3に示されるように、排熱ダクト10は、例えば、鈍角に折れ曲がった略くの字状をなしている。具体的には、排熱ダクト10の途中位置に設けられた折れ曲がり部12と、その折れ曲がり部12から排熱口10Aまで延びる下流側ストレート部14と、折れ曲がり部12から排熱ダクト10の他端開口10Bまで延びる上流側ストレート部13と、を有する。なお、本実施形態では、排熱ダクト10は、略円管状となっていて、排熱口10Aは、円形になっている。また、上流側ストレート部13と下流側ストレート部14との内径は、同じになっている。
【0020】
図1及び
図3に示されるように、排熱ダクト10が車両90に取り付けられた状態では、下流側ストレート部14は、排熱口10Aから鉛直上方に延びると共に、上流側ストレート部13は、車両90の後側に向かうにつれて上るように傾斜し、上流側ストレート部13の上端である他端開口10Bは、例えば、排出路92を構成する上記別のダクトに接続される。なお、下流側ストレート部14のうち排熱口10A寄りの位置には、外側に張り出した略円環状のフランジ10Fが設けられている(
図2参照)。
【0021】
さて、
図3及び
図4に示されるように、本実施形態の排熱ダクト10には、排熱路92(
図1参照)を通して、車両90の熱源91側へ異物(例えば、生物や小石等)が侵入することを規制するメッシュ20が設けられている。メッシュ20は、排熱ダクト10の内面に一体に設けられている。具体的には、排熱ダクト10は、樹脂からなり、メッシュ20は、樹脂で排熱ダクト10に一体成形されている。
【0022】
ここで、メッシュ20は、排熱ダクト10のうち排熱口10Aよりも車両90の内側に奥まる位置に設けられている。即ち、メッシュ20は、排熱口10Aから他端側に離れた位置に設けられている。本実施形態では、例えば、メッシュ20は、排熱口10Aの内接球の半径よりも長い距離、排熱口10Aから離れている。なお、ここでいう内接球とは、排熱口10Aに内側から接する架空の内接球のうち最も大きい内接球のことを意味する。
【0023】
また、本実施形態では、メッシュ20は、排熱ダクト10の折れ曲がり部12に設けられている。
図4及び
図5に示されるように、メッシュ20は、排熱ダクト10(本実施形態では、折れ曲がり部12)の内側部分を塞ぐように配置された板状部21と、その板状部21を厚み方向に貫通する複数の貫通孔22と、を有する。本実施形態では、板状部21は、円板状をなして、折れ曲がり部12の内周面に周方向全体に亘って連絡している。複数の貫通孔22は、例えば、板状部21の略全体に亘って設けられ、格子状に配列されている。複数の貫通孔22の配置は、特に限定されるものではなく、ランダムな配置であってもよい。
【0024】
なお、詳細には、本実施形態では、メッシュ20の板状部21は、上流側ストレート部13の延在方向(軸方向)と、下流側ストレート部14の延在方向(軸方向)と、のそれぞれに対して傾斜していて、それらの傾斜角は、同じになっている。言い換えれば、本実施形態では、折れ曲がり部12における、上流側ストレート部13と下流側ストレート部14との境目部分が、上流側ストレート部13と下流側ストレート部14との両方の延在方向に対して傾斜し、その傾斜角が同じになっている。また、本実施形態では、メッシュ20は、折れ曲がり部12における上流側ストレート部13側に配置されているが、折れ曲がり部12における下流側ストレート部14側に配置されていてもよいし、折れ曲がり部12において上流側ストレート部14と下流側ストレート部13とにまたがって設けられていてもよい。
【0025】
ここで、
図5に示されるように、本実施形態の排熱ダクト10では、メッシュ20の複数の貫通孔22が、上流側ストレート部13と略平行に延びている。詳細には、各貫通孔22の中心軸Cが、上流側ストレート部13と略平行になっている。なお、複数の貫通孔22は、例えば、下流側ストレート部14側から上流側ストレート部13側へ向かうにつれて、広がる形状となっていてもよい。また、複数の貫通孔21の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、四角形や三角形等の多角形状でもよいし、円形状であってもよい。また、複数の貫通孔21は、全て同じ形状であってもよいし、互いに異なる形状のものを含んでいてもよい。
【0026】
本実施形態の排熱ダクト10は、例えば、以下のようにして製造される。
図6には、排熱ダクト10を射出成形するための射出成形金型50が示されている。射出成形金型50は、上下に接近、離間して開閉される上型51及び下型52(特許請求の範囲に記載の「1対のメイン金型」に相当する。)と、上型51及び下型52の型開き方向と交差する方向にスライドする第1と第2の中子53,54と、を有する。
【0027】
上型51と下型52は、各成形面に、横に延びて互いに対向する成形溝部51U、52Uを有する。中子53,54は、射出成形金型50が型閉じ状態のときには(
図6参照)、成形溝部51U,52Uの内側に挿通されて、成形溝部51U,52U内で互いの先端部同士を突き合わせる。そして、この型閉じ状態のときには、上型51及び下型52(詳細には、成形溝部51U及び52Uの内面)と中子53,54との間、並びに、中子53,54の先端部同士の間の部分により、排熱ダクト10を成形するキャビティ55が形成される。上型51と下型52は(成形溝部51U,52Uの内面は)、排熱ダクト10の外周面を成形する。中子53,54は、排熱ダクト10の内周面を成形する。
【0028】
詳細には、キャビティ55は、略管状をなすと共に、折れ曲がった形状となっている。そして、キャビティ55のうち途中部分の折れ曲がり部に、突き合わされた中子53,54同士の境目が位置する。即ち、第1の中子53と第2の中子54は、互いに交差する方向に延びて、それぞれの延在方向にスライドする。
【0029】
本実施形態では、第2の中子54の先端面には、複数の先端突部54Tが突設されている。そして、これら複数の先端突部54Tが、射出成形金型50が型閉じ状態のときに、第1の中子53の先端面に当接する。詳細には、第1の中子53の先端面は、第1の中子53の延在方向に対して傾斜した先端平坦面53Mとなっている。また、
図6及び
図7に示されるように、第2の中子54の先端面は、第1の中子53の先端平坦面53Mと対向する先端対向面54Mから、上記複数の先端突部54Tが突出した構成となっていて、先端対向面54Mは、第2の中子54の延在方向に対して傾斜している。
【0030】
第2の中子54の複数の先端突部54T(詳細には、複数の先端突部54Tの各中心軸)は、第2の中子54の延在方向と略平行に延びている。なお、複数の先端突部54Tは、例えば、第2の中子54の先端面の略全体に設けられていると共に、略格子状に配置されている。複数の先端突部54Tの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、角柱状であってもよいし、円柱状であってもよい。複数の先端突部54Tは、例えば、先細り形状となっていてもよい。
【0031】
図6に示されるように、射出成形金型50が型閉じ状態になると、キャビティ55内に、図示しない樹脂供給孔から溶融樹脂が射出される。そして、キャビティ55内に充填された溶融樹脂が固化すると、
図8に示されるように、射出成形金型50のキャビティ55内に、折れ曲がり部12を途中に有する排熱ダクト10が成形される。この際、第1と第2の中子53,54の互いに突き合わされた先端部同士の間にてメッシュ20が成形され、メッシュ20が排熱ダクト10に一体成形される。詳細には、第1と第2の中子53,54の先端平坦面53Mと先端対向面54Mとの間に、メッシュ20の板状部21が成形されると共に、第2の中子54の複数の先端突部54Tにより、板状部21を貫通する複数の貫通孔22が成形される。
【0032】
次に、
図9に示されるように、中子53,54が、互いに離れるようにスライドして、メッシュ20から離れる。そして、
図10に示されるように、中子53,54がさらにスライドし、上型51と下型52の間から外される。次いで、
図11に示されるように、上型51が下型52から離されて、射出成形金型50が型開きされる。その後、射出成形金型50から、排熱ダクト10が取り外される。排熱ダクト10の製造方法についての説明は以上である。
【0033】
本実施形態の排熱ダクト10の製造方法によれば、メッシュ20を有する排熱ダクト10を射出成形で容易に成形することが可能となる。しかも、本実施形態の排熱ダクト10の製造方法によれば、折れ曲がった形状の排熱ダクト10の内面にメッシュ20を一体成形することが容易となる。このように、本実施形態の排熱ダクト10の製造方法によれば、メッシュ20を有する排熱ダクト10を射出成形により製造できるので、例えば、3Dプリンタにより製造する場合や、切削加工により製造する場合に比べて、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0034】
本実施形態の排熱ダクト10によれば、以下の効果を奏することができる。本実施形態の排熱ダクト10では、排熱路92を通しての熱源91側への異物の侵入を規制するメッシュ20が、排熱ダクト10の末端の排熱口10Aよりも車両90の内側に奥まる位置に設けられる。従って、例えば車両90の走行時に小石等がメッシュ20に当たる等、異物が外側からメッシュ20に当たることが抑制され、メッシュ20が傷つくことが抑制される。また、メッシュ20が排熱口10Aよりも車両90内側に奥まる位置にあることで、車両90の走行時における泥等により、メッシュ20が目詰まりすることが抑制される。また、本実施形態では、メッシュ20が、排熱口10Aの内接球の半径よりも長い距離、排熱口10Aから離れた位置に配置されるので、排熱口10Aよりも大径の球状の異物によるメッシュ20への接触を抑制でき、メッシュ20が傷つくことをより抑制可能となる。
【0035】
本実施形態では、メッシュ20が排熱ダクト10に一体成形されているので、メッシュ20が排熱ダクト10と別体となった従来の構造に比べて、部品点数の削減が図られる。また、本実施形態では、排熱ダクト10に、折れ曲がり部12が設けられ、その折れ曲がり部12から排熱ダクト10の両端までがストレート部13,14となっていると共に、メッシュ20が、折れ曲がり部12に設けられる。従って、メッシュ20が一体成形される排熱ダクト10が、折れ曲がり部12を有する構成であっても、上述したように、射出成形で容易に成形することが可能となる。
【0036】
本実施形態の排熱ダクト10では、メッシュ20の貫通孔22が、熱源91側からの熱気が流入する上流側ストレート部13と略平行に延びているので、熱源91側からの熱気が貫通孔22を(即ち、メッシュ20を)スムーズに通過することが可能となる。また、折れ曲がり部12を有する排熱ダクト10では、メッシュ20の貫通孔22が上流側ストレート部13と略平行であれば、メッシュ20の貫通孔22が、下流側ストレート部14と交差する方向に延びることになる。従って、排熱口10Aから下流側ストレート部14に侵入した小石や泥等の異物が、貫通孔22(即ち、メッシュ20)を通過し難くなり、熱源91側への異物の侵入を規制し易くすることができる。また、メッシュ20の貫通孔22を、下流側ストレート部14側から上流側ストレート部13側へ広がる形状とすれば、熱源91側(上流側)からの熱気の貫通孔22の通過をスムーズにすることが可能となると共に、射出成形金型50内でメッシュ20を成形した際に、第2の中子54の複数の先端突部54Tを、メッシュ20から外し易くすることができる。また、例えば、路面上の小石等は、車両90の走行中に排熱ダクト10内に進入し易くなると考えられるが、本実施形態では、下流側ストレート部14が鉛直方向を向いているので、例えば、下流側ストレート部14が、車両90の前側に向かうにつれて下るように傾斜して配置されている場合に比べて、車両90が前進している際に小石等が排熱ダクト10内に入り難くなる。
【0037】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、排熱ダクト10(排出路92)が、車両90内の熱源91の周囲の熱気を、車両90の下面に案内する構成であったが、例えば、車両90の側面、後面、又は上面に案内する構成であってもよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、排熱ダクト10が、折れ曲がった形状であったが、ストレート形状であってもよい。この場合の例として、
図12には、略円管状のストレート部14Vから構成される排熱ダクト10Vが示されている。この場合、例えば、
図12に示されるように、メッシュ20が、排熱ダクト10のうち排熱口10Aと反対側に配置される他端部(他端開口20B側の端部)に設けられてもよい。この場合、第2の中子54を用いずに、上型51及び下型52に、第1の中子53と突き合わされる突合せ部51E,52Eをそれぞれ設け、第1の中子53の先端部に、突合せ部51E,52Eと当接する複数の突部53Tを突設すればよい。そして、第1の中子53の先端部と突合せ部51E,52Eとの間にてメッシュ20を成形し、第1の中子53の複数の突部53Tにより、メッシュ20の複数の貫通孔22を成形すればよい。
【0039】
(3)上記実施形態では、排熱ダクト10が射出成形により製造されていたが、3Dプリンタにより製造されてもよいし、切削加工により製造されてもよい。
【0040】
(4)上記実施形態では、メッシュ20が、排熱ダクト10の折れ曲がり部12に設けられていたが、上流側ストレート部13に設けられていてもよいし、下流側ストレート部14に設けられていてもよい。これらの場合、排熱ダクト10を、例えば、3Dプリンタにより製造することができる。
【0041】
(5)上記実施形態では、メッシュ20が、1つだけ設けられていたが、排熱ダクト10に沿って複数設けられていてもよい。これらの場合、排熱ダクト10を、例えば、3Dプリンタにより製造することができる。
【0042】
(6)上記実施形態では、排熱ダクト10が、略円管状であったが、これに限定されるものではなく、略角管状であってもよい。この場合においても、メッシュ20を、排熱口10Aの内接球の半径よりも長い距離、排熱口10Aから離して配置してもよい。
【0043】
(7)上記実施形態では、折れ曲がり部12に設けられるメッシュ20の板状部21が、上流側ストレート部13の延在方向と下流側ストレート部14の延在方向との両方に対して傾斜していたが、どちらか一方のストレート部の延在方向に対してのみ傾斜していてもよい。即ち、他方のストレート部の延在方向に対してはこの板状部21が傾斜せず、直交してもよい。なお、詳細には、この構成では、折れ曲がり部12における、上流側ストレート部13と下流側ストレート部との境目部分が、一方のストレート部の延在方向に対して傾斜し、他方のストレート部の延在方向に対して直交配置されることになる。
【符号の説明】
【0044】
10 排熱ダクト
10A 排熱口
20 メッシュ
90 車両
91 熱源
92 排熱路