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特許7267165カーボンナノチューブ水性分散液、潤滑油組成物及びグリース組成物並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ水性分散液、潤滑油組成物及びグリース組成物並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20230424BHJP
   C10M 173/02 20060101ALI20230424BHJP
   C10M 103/02 20060101ALI20230424BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C01B32/174
C10M173/02
C10M103/02
C10N50:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019184941
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059473
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219576
【氏名又は名称】東海カーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 歩
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩之
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519201(JP,A)
【文献】特開2017-137232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/158
C10M 173/02
C10M 103/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ水性分散液であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液中の前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの濃度が4.0~6.0質量%であり、
分散粒径測定における前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50が100nm以上120nm以下、D90が255nm以下、且つ、(D90-D50)/D50の値が0.5以上1.00以下であり、
前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価が1.30mmol/g以上1.50mmol/g以下であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度が2.00mPa・s以下であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液の粘度(mPa・s)/表面酸化処理されたカーボンナノチューブ濃度(質量%)の値(粘度/濃度)が0.40以下であること、
を特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液。
【請求項2】
原料カーボンナノチューブと、酸化剤と、水溶媒と、を含有する原料混合物を、加熱下で粉砕処理し、前記原料カーボンナノチューブを粉砕しながら酸化することにより、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物を得る粉砕酸化工程を有することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1記載のカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とするグリース組成物。
【請求項5】
請求項1記載のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とする潤滑油組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とするグリース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ水性分散液及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、カーボンナノチューブ水性分散液が用いられている潤滑油組成物及びグリース組成並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素によって作られる六員環ネットワークが単層又は複層の同軸管状になった物質である。このカーボンナノチューブは、性状、サイズ等により、種々の用途への展開が期待されている物質である。例えば、電子放出源やビア配線等の電子デバイスへの応用、導電性や機械的強度を付与した樹脂コンポジット、リチウムイオン二次電池の添加剤としてエネルギーデバイスへの応用などが検討されており、産業上の利用分野は広い。
【0003】
しかしながら、カーボンナノチューブは、ファンデルワールス力による凝集力が強いため、各種溶媒への分散が非常に困難であり、且つ、凝集物の状態で存在していたのでは、カーボンナノチューブ本来の特性が発揮されないので、上記の用途への使用ができない。
【0004】
そこで、カーボンナノチューブの溶媒への分散性を高めるために、例えば、特許文献1では、溶媒にカーボンナノチューブと共に分散剤を添加することにより、カーボンナノチューブの分散性を高めたカーボンナノチューブ分散液が開示されている。
【0005】
ところが、特許文献1では、実施例に記載されているように、カーボンナノチューブの濃度を5質量%程度にすると、粘度が10mPa・sを超えてしまい、更に、濃度を高めると、粘度が増々高くなってしまう。粘度増加の要因として、カーボンナノチューブの凝集や、分散剤の過剰添加が挙げられる。これらは、各種用途に用いた場合、その特性を阻害する要因となる。
【0006】
一方で、特許文献2の実施例には、粘度が2~3mPa・s程度のカーボンナノチューブ分散液が開示されている。しかし、それらの分散液中のカーボンナノチューブ濃度は、0.03~0.15質量%と非常に低いものである。
【0007】
そこで、カーボンナノチューブの溶媒への分散性を高める別の方法として、カーボンナノチューブの表面を修飾することにより、カーボンナノチューブの分散性を高める方法がある。例えば、特許文献3では、カーボンナノチューブの表面を酸化処理して、カーボンナノチューブの表面に、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、水酸基等の親水基を導入して、カーボンナノチューブを表面修飾することにより、カーボンナノチューブの分散性を高めたカーボンナノチューブ分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-206412号公報
【文献】特開2017-65964号公報
【文献】特開2017-137232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献3では、硝酸と硫酸の混酸を用いて、カーボンナノチューブの酸化処理が行われているが、このような方法では、酸化処理により付与される親水基は、主に、カーボンナノチューブの末端部分に導入されるため、サイドウォール間で凝集が起こり易い。そのため、例え、表面酸化処理によりカーボンナノチューブに親水基を導入したとしても、サイドウォール間での凝集のために、凝集が発生してしまうとの問題がある。
【0010】
そして、分散性を高めるために、親水基の導入量を多くすることが考えられるが、カーボンナノチューブへの親水基の導入量には限界があり、また、酸化処理のためのコストが著しく上昇するとの問題が発生する。
【0011】
このようなことから、実際に得られている分散液中の表面酸化処理カーボンナノチューブの濃度は、せいぜい1~2質量%である。
【0012】
従って、本発明の目的は、カーボンナノチューブ濃度が高く且つ粘度が低いカーボンナノチューブの水性分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情において、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの水性分散液の製造において、原料カーボンナノチューブを、粉砕しながら酸化し、且つ、その際のカーボンナノチューブの粒径及び粒度分布を調節することにより、カーボンナノチューブに導入される酸性官能基の量(酸価)を多くできること、及び粒径、粒度分布及び酸価が特定の範囲にある表面酸化処理カーボンナノチューブは、凝集し難いので、濃度を高くしても、良好な分散性を有すること等を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ水性分散液であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液中の前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの濃度が4.0~6.0質量%であり、
分散粒径測定における前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50が150nm以下、D90が315nm以下、且つ、(D90-D50)/D50の値が1.10以下であり、
前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価が1.30mmol/g以上であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度が5.00mPa・s以下であること、
を特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液。
【0015】
また、本発明(2)は、前記カーボンナノチューブ分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度が2.00mPa・s以下であることを特徴とする(1)のカーボンナノチューブ水性分散液を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50が120nm以下であることを特徴とする(1)又は(2)のカーボンナノチューブ水性分散液を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの(D90-D50)/D50の値が1.00以下であることを特徴とする(1)~(3)いずれかのカーボンナノチューブ水性分散液を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、少なくとも、原料カーボンナノチューブと、酸化剤と、水溶媒と、を含有する原料混合物を、加熱下で粉砕処理し、前記原料カーボンナノチューブを粉砕しながら酸化することにより、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物を得る粉砕酸化工程を有することを特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、(1)~(4)いずれかのカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とする潤滑油組成物を提供するものである。
【0020】
また、本発明(7)は、(1)~(4)いずれかのカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とするグリース組成物を提供するものである。
【0021】
また、本発明(8)は、(1)~(4)いずれかのカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とする潤滑油組成物の製造方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(9)は、(1)~(4)いずれかのカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とするグリース組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、カーボンナノチューブ濃度が高く且つ粘度が低いカーボンナノチューブの水性分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ水性分散液であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液中の前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの濃度が4.0~6.0質量%であり、
分散粒径測定における前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50が150nm以下、D90が315nm以下、且つ、(D90-D50)/D50の値が1.10以下であり、
前記表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価が1.30mmol/g以上であり、
前記カーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度が5.00mPa・s以下であること、
を特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液である。
【0025】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブが水溶媒に分散されているカーボンナノチューブの水性分散液である。
【0026】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液に係る表面酸化処理されたカーボンナノチューブは、表面が酸化処理されることにより、表面に酸性官能基が導入されたカーボンナノチューブである。表面酸化処理されたカーボンナノチューブに導入されている酸性官能基は、カルボキシル基(-COOH)及び/又は水酸基(-OH)である。また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブは、表面が酸化されることにより生じたカルボニル基(>C=O)やエーテル基(C-O-C)、スルホン基(-SOH)、燐酸基(-HPO)、等を有していてもよい。
【0027】
分散粒径測定における表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50は、カーボンナノチューブを粉砕し、短尺化する観点から150nm以下が好ましく、更に表面官能基量を増加し酸価を向上する観点から135nm以下がより好ましく、安定した分散性を発揮し、水性分散液中の濃度を向上する観点から120nm以下がさらに好ましい。
【0028】
また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50は、水性分散液中のカーボンナノチューブ存在数を一定以下とし、粘度増加を抑制できる観点から50nm以上が好ましく、濃度を向上し、且つ、容易なハンドリング性を得る観点から100nm以上がより好ましい。
【0029】
分散粒径測定における表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD90は、カーボンナノチューブを粉砕し、短尺化する観点から315nm以下が好ましく、更に表面官能基量を増加し酸価を向上する観点から285nm以下がより好ましく、安定した分散性を発揮し、水性分散液中の濃度を向上する観点から255nm以下がより好ましい。
【0030】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブの「(D90-D50)/D50」の値は、長尺なカーボンナノチューブが存在することによるサイドウォール間の凝集を抑制する観点化から1.10以下が好ましく、均一な表面酸化処理を施し、水性分散液中のカーボンナノチューブ濃度を高くする観点から1.00以下がより好ましい。また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの「(D90-D50)/D50」の下限値は、特に制限されないが、長時間にわたる粉砕処理を避け、効率的に生産する観点から、好ましくは0.5以上である。なお、粒度分布の狭さを示す指標として、一般に、「(D90-D10)/D50」値が用いられることもあるが、本発明では、粒子がナノサイズであり、D10の信頼性が低くなるおそれがあるため、信頼性の高いD50及びD90の値を用いて、粒度分布を示す指標とした。また、本発明において、上記指標はカーボンナノチューブ水性分散液の粒度特性を表す重要な数値である。
【0031】
本発明において、表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50及びD90は、動的光散乱式粒度分布測定装置(型番UPA150、マイクロトラック・ベル社製)で測定して求められる粒度分布における積算体積分率が、それぞれ、50%、90%に対応する粒子径(μm)を指す。なお、D50、D90は、動的光散乱式粒度分布測定装置で測定する時に、表面酸化処理されたカーボンナノチューブを純水溶媒に、ローディングインデックスが20~30の範囲下で分散させて、N=4で測定した値の平均値であり、小数点以下は無視できるものとして扱う。
【0032】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価は、凝集を抑制できる観点から1.30mmol/g以上が好ましく、分散安定性を得つつ、水性分散液中のカーボンナノチューブ濃度を高くすることができる観点から1.35mmol/g以上がより好ましい。
【0033】
また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価は、極度な短繊維化を抑制し、分散液の粘度を抑制する観点から2.50mmol/g以下が好ましく、使用する酸化剤量を抑え、経済性が得られる観点から1.50mmol/g以下がより好ましい。
【0034】
なお、本発明において、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価は、標準溶液に水酸化ナトリウム溶液を用いた逆滴定によりにより測定される値である。また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価は、カルボキシル基(-COOH)やヒドロキシル基(-OH)、スルホン基(-SOH)、燐酸基(-HPO)などの酸性基の合計モル数である。
【0035】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液中の表面酸化処理されたカーボンナノチューブの濃度は、種々の用途に展開した際、より少ない分散液量で機能を発現することができる観点から4.0~6.0質量%が好ましく、同様の理由から5.0質量%以上がより好ましい。
【0036】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度は、分散液のハンドリング性を確保する観点から5.00mPa・s以下が好ましく、凝集が抑制された分散状態を得る観点から3.00mPa・s以下がより好ましく、凝集が抑制され、安定した分散状態を得る観点から2.00mPa・s以下がさらに好ましい。尚、以降では、25℃、せん断速度383s-1における粘度を、単純に粘度とも記載する。
【0037】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の粘度(mPa・s)/表面酸化処理されたカーボンナノチューブ濃度(質量%)の値(粘度/濃度)は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50、D90及び「(D90-D50)/D50」の値と、酸価を調整することにより、カーボンナノチューブの凝集を少なくし、分散性を高くすることができ、カーボンナノチューブ濃度が高くても、粘度を低くすることができるため、0.50以下が好ましく、安定した分散性を得ることができる観点から0.40以下がより好ましい。
【0038】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液において、表面酸化処理されたカーボンナノチューブが分散されている分散媒は、水系溶媒が好ましく、水性溶媒としては水や、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどの多価アルコール類、ピロリドン系などの水溶性の有機溶媒を挙げることができるが、経済性や安全性の面から水、特に脱イオン水が好ましい。水系溶媒中で分散させることにより、静電反発力を利用でき、カーボンナノチューブを高分散することができる。
【0039】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、凝集防止剤を含有していてもよい。本発明のカーボンナノチューブ水性分散液が凝集防止剤を含有する場合、凝集防止剤としては、一般的な高分子分散剤、および非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤などを用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等が挙げられ、また、凝集防止剤の含有量は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブに対し、安定した分散状態を得る観点から、0.1~100.0質量%が好ましく、粘度を抑制する観点から1.0~20.0質量%がより好ましい。
【0040】
また、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、他に、防腐剤、防湿剤などの添加剤等を含有していてもよい。
【0041】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液を製造する方法は、以下に述べる本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法により、好適に製造される。なお、以下に示す本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法は、製造方法の一例であって、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、当該製造方法により得られたものに限定されるものではない。
【0042】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法は、少なくとも、原料カーボンナノチューブと、酸化剤と、水溶媒と、を含有する原料混合物を、加熱下で粉砕処理することにより、原料カーボンナノチューブを粉砕しながら酸化して、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物を得る粉砕酸化工程を有することを特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法である。
【0043】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法は、原料カーボンナノチューブの粉砕及び酸化により、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物を得る粉砕酸化工程を有する。
【0044】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法に係る粉砕酸化工程において、表面酸化処理される原料カーボンナノチューブとしては、単層型、多層型、カップスタック型等のものを用いることができる。原料カーボンナノチューブの形態としては、ペレット状、粉末状などが挙げられる。原料カーボンナノチューブがペレット状の場合、粉砕酸化工程を行う前に、ペレットを解砕してもよい。また、原料カーボンナノチューブ中には、径が0.5~100.0nm、長さが10.0nm~100.0μmの範囲のものが存在しており、これらの範囲のものを適宜選択して使用することができる。
【0045】
原料カーボンナノチューブが、カーボンナノチューブの製造のための触媒や、カーボンナノチューブの製造における不純物等を含有する場合、原料カーボンナノチューブとしては、酸洗浄や気相中で焼成すること等によって、粉砕酸化工程を行う前に、精製処理がされたものであってもよい。原料カーボンナノチューブを精製する方法は、公知の方法から適宜用いられる。
【0046】
そして、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法では、原料カーボンナノチューブを原料に用いて、粉砕酸化工程を行うことにより、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物を得る。
【0047】
粉砕酸化工程では、原料カーボンナノチューブと、酸化剤と、水溶媒と、必要に応じて、凝集防止剤等と、を混合して、原料混合物を得、次いで、加熱下で原料カーボンナノチューブの粉砕を行う。つまり、粉砕酸化工程では、粉砕装置内に、所定の温度に加熱された原料混合物を供給し、原料混合物の加温状態を保ったままで、粉砕処理を行う。
【0048】
原料混合物中の原料カーボンナノチューブの含有量は、効率的な粉砕を行う観点から0.1~10.0質量%が好ましく、粉砕時の粘度上昇を抑制し、均一な酸化を行う観点から1.0~5.0質量%がより好ましい。
【0049】
粉砕酸化工程に係る酸化剤としては、湿式でカーボンナノチューブの表面酸化を行うことができるものであればよく、例えば、硝酸、硫酸、塩素酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソ硼酸、ペルオキソ炭酸、ペルオキソリン酸などのペルオキシ二酸や、過マンガン酸、重クロム酸、亜塩素酸、過塩素酸、次亜ハロゲン酸、過酸化水素、ホスホン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸や、これ等の酸の塩類などが挙げられ、塩類としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の塩あるいはアンモニア塩などが挙げられる。また、上記酸化剤を混合して用いることもできる。
【0050】
原料混合物中の酸化剤の含有量は、酸化剤の種類、加熱温度、粉砕処理時間等に応じて、適宜選択されるが、粉砕されたカーボンナノチューブに表面官能基を付与する観点から1.0~50.0質量%が好ましく、十分な酸化反応により安定した分散状態を得る観点から15.0~50.0質量%がより好ましい。
【0051】
原料混合物中の原料カーボンナノチューブと酸化剤の割合は、適宜選択されるが、原料カーボンナノチューブ1kgに対し、酸化剤が粉砕されたカーボンナノチューブに表面官能基を付与する観点から5.0~300.0molであることが好ましく、十分な酸化反応により安定した分散状態を得る観点から60.0~300.0molであることが特に好ましい。
【0052】
粉砕酸化工程において、原料混合物を加熱する際の加熱温度は、酸化剤の種類により適宜選択されるが、酸化剤が失活することを抑制する観点から40~90℃が好ましく、酸化を促進し、効率的に表面官能基を付与する観点から60~90℃がより好ましい。
【0053】
粉砕酸化工程において、原料カーボンナノチューブの粉砕に用いる粉砕装置としては、湿式で酸化剤の存在下、加熱しながら粉砕を行うことができるものから適宜選択して使用でき、例えば、ボールミル、ビーズミル、ディスパーミル、ピンミル、振動ミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0054】
粉砕酸化工程において、粉砕時間は、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物が所望の粒度性状且つ所望の酸価となるように、粉砕機の種類、酸化剤の種類、処理温度等に応じて、適宜選択される。
【0055】
そして、粉砕酸化工程では、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物のD50、D90、「(D90-D50)/D50」の値及び酸価が、所定の範囲になるように、原料混合物を粉砕処理しながら加熱して、原料カーボンナノチューブを粉砕しながら酸化する。
【0056】
粉砕酸化工程を行い得られる表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物のD50は、カーボンナノチューブを粉砕し、短尺化する観点から150nm以下が好ましく、更に表面官能基量を増加し酸価を向上する観点から135nm以下がより好ましく、安定した分散性を発揮し、水性分散液中の濃度を向上する観点から120nm以下がさらに好ましい。
【0057】
また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50は、水性分散液中のカーボンナノチューブ存在数を一定以下とし、粘度増加を抑制できる観点から50nm以上が好ましく、濃度を向上し、且つ、ハンドリング性を向上する観点から100nm以上がより好ましい。
【0058】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物のD90は、カーボンナノチューブを粉砕し、短尺化する観点から315nm以下が好ましく、更に表面官能基量を増加し酸価を向上する観点から285nm以下がより好ましく、安定した分散性を発揮し、水性分散液中の濃度を向上する観点から255nm以下がより好ましい。
【0059】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブの「(D90-D50)/D50」の値は、長尺なカーボンナノチューブが存在することによるサイドウォール間の凝集を抑制する観点から1.10以下が好ましく、均一な表面酸化処理を施し、水性分散液中のカーボンナノチューブ濃度を高くする観点から1.00以下がより好ましい。
【0060】
本発明において、表面酸化処理されたカーボンナノチューブ粉砕物のD50及びD90の測定方法は、上記本発明のカーボンナノチューブ水性分散液に係る表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50及びD90の測定方法と同様である。
【0061】
表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価は、凝集を抑制できる観点から1.30mmol/g以上が好ましく、分散安定性を得つつ、水性分散液中のカーボンナノチューブ濃度を高くすることができる観点から好ましくは1.35mmol/g以上がより好ましい。
【0062】
また、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価の上限は特に制限されないが、極度な短繊維化を抑制し、分散液の粘度を抑制する観点から2.50mmol/g以下が好ましく、酸化剤の使用量を抑え、経済性を得る観点から1.50mmol/g以下がより好ましい。
【0063】
カーボンナノチューブは表面官能基が付与されていない状態では、凝集が著しいため、カーボンナノチューブの粉砕を先に行い、後から酸化しようとしても、カーボンナノチューブの粉砕物が強く凝集しているために、個々の粒子の表面に酸化剤が十分に作用できなくなるので、酸性官能基の導入量を多くすること、すなわち、酸価を高くすることができない。一方で、先にカーボンナノチューブの酸化を行って、後から粉砕をしようとしても、カーボンナノチューブでは、主に、末端部分が酸化され、サイドウォール部分は酸化され難いので、酸価を高くすることが難しい。
【0064】
それに対して、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法に係る酸化粉砕工程では、原料カーボンナノチューブを粉砕しながら酸化することにより、粉砕されたカーボンナノチューブが凝集する前に、粉砕により末端部となる部分を速やかに酸化して酸性官能基を導入することができるので、カーボンナノチューブが粉砕により小さくなっても凝集し難い。そして、粉砕しながらの酸化を繰り返すことにより、酸性官能基の導入量を多くすることができるので、カーボンナノチューブ粉砕物の酸価を高くすることができる。
【0065】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液の製造方法では、粉砕酸化工程を行った後は、公知の方法に従い、所定のカーボンナノチューブ濃度のカーボンナノチューブ水性分散液を製造する。
【0066】
一例を説明すると、例えば、粉砕酸化工程を行い得られる表面酸化処理がされたカーボンナノチューブ粉砕物の水性分散液を、限外濾過により、脱塩処理し、次いで、アルカリ水溶液等を添加して、表面酸化処理がされたカーボンナノチューブ粉砕物の水性分散液のpHを7~8に調整する。次いで、必要に応じて、表面酸化処理がされたカーボンナノチューブ粉砕物の水性分散液に、種々の凝集防止剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等を添加する。表面酸化処理がされたカーボンナノチューブ粉砕物の水性分散液に凝集防止剤を添加する場合は、添加後に超音波振動処理などを行う。次いで、表面酸化処理がされたカーボンナノチューブ粉砕物の水性分散液を、限外濾過により、精製及び濃縮し、所望のカーボンナノチューブ濃度の水性分散液を得る。本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、種々の用途に展開した際、より少ない分散液量で機能を発現することができる観点から4.0~6.0質量%が好ましく、同様の理由から5.0質量%以上がより好ましい。
【0067】
本発明の潤滑油組成物は、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とする潤滑油組成物である。また、本発明のグリース組成物は、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液が用いられていることを特徴とするグリース組成物である。
【0068】
本発明の潤滑油組成物において、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液中の表面酸化処理されたカーボンナノチューブの、潤滑油組成物への分散には、公知技術又は慣用技術が適宜適用される。本発明の潤滑油組成物において、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液中の表面酸化処理されたカーボンナノチューブの、グリース組成物への分散には、公知技術又は慣用技術が適宜適用される。
【0069】
本発明の潤滑油組成物の製造方法は、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とする潤滑油組成物の製造方法である。つまり、本発明の潤滑油組成物の製造方法では、潤滑油組成物の製造工程にいずれかで、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する。
【0070】
本発明のグリース組成物の製造方法は、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する工程を有することを特徴とするグリース組成物の製造方法である。つまり、本発明のグリース組成物の製造方法では、グリース組成物の製造工程にいずれかで、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液を混合する。
【0071】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例
【0072】
(実施例1)
<粉砕酸化工程>
ラバーヒーターを取り付けたタンク内に原料カーボンナノチューブ(公知の気相法により合成されたカーボンナノチューブであり、直径が0.5~100.0nm、長さが10.0nm~100.0μmの範囲のものを含んでいる。)を70gと純水7000gを投入し、撹拌を行う。次に、酸化剤として過硫酸ナトリウム1000gを投入し、30分間程、撹拌する。この混合液が60℃になるように温度制御した後に、該混合液を、直径0.2mmのセラミックスビーズを約85%充填したビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製 ラボスターLMZ06)内を循環させる。ビーズミルは周速14m/s、送り量1.5L/分の条件で運転を行い、循環開始から6時間後に、運転を終了した。運転終了後、ビーズミル装置より混合液を排出し、回収した。
【0073】
<脱塩処理>
粉砕酸化工程後の液中に含まれる硫酸塩などを除去するため、限外ろ過膜による脱塩処理を行った。脱塩終了後の処理液のpHは2~3程度、電気伝導度は1.5mS/cm以下であった。
【0074】
<中和処理>
上記脱塩処理後、水酸化ナトリウム水溶液を処理液のpHが8~9の範囲になるまで添加し、97℃に温度制御した状態で、撹拌を行い、3時間後に室温まで冷却した。
【0075】
<凝集防止剤の添加>
上記中和処理後、処理液に、原料カーボンナノチューブに対し、約10.0質量%のコール酸ナトリウムを添加し、300Wの出力の超音波発生端子を処理液中に浸漬し、1時間超音波振動処理を行った。
【0076】
<精製及び濃縮処理>
超音波振動処理後、限外ろ過膜により、処理液内に残存した不純物イオンなどの除去を行い精製すると同時に、水分を低減し、カーボンナノチューブ濃度の調製を行い、表面酸化処理されたカーボンナノチューブの水性分散液を得た。
【0077】
<カーボンナノチューブ水性分散液の物性>
上記により得られた表面酸化処理されたカーボンナノチューブの水性分散液の物性を、以下に示す測定方法で測定した。その結果を、表1及び表2に示す。
【0078】
・カーボンナノチューブの濃度の測定方法
赤外線式 電子水分計(株式会社シービーシー製 MB-30C)を用いて、アルミ皿にカーボンナノチューブ水性分散液を5.0gを入れ、140℃にて加熱し、水分率を測定し、得られた数値から固形分濃度を算出した。
・カーボンナノチューブ水性分散液のせん断速度383s-1における粘度の測定方法
JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法」に準拠し、E型粘度計(東機産業株式会社製 TVE-22L)を用いて、付帯の恒温槽で25℃に温度制御し、サンプルカップ内にカーボンナノチューブ水性分散液を1mlを入れ、せん断速度383s-1(回転数100rpm)にて測定した。
・表面酸化処理されたカーボンナノチューブのD50、D90、(D90-D50)/D50の測定方法
平均粒子径D50及びD90は、各々、動的光散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製UPA150)により測定された、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%及び90%の粒径を意味し、4回測定した際(サンプル数n=4)の平均値を意味する。また、平均粒子径D50及びD90の小数点以下は無視できるものとして扱う。尚、D90から平均粒子径D50を差し引いた値を、D90で除した数値は、粒度分布のシャープさを示す指標である。
・表面酸化処理されたカーボンナノチューブの酸価の測定方法
(試料調製:酸洗浄、および標準溶液添加)
得られたカーボンナノチューブ水性分散液を110℃で乾燥して、乳鉢などで解砕した粉末1.0gを遠沈管に採取し、0.5mol/l塩酸を5.0g添加し、数回振った後に、遠心分離機により固液分離する。この操作を計4回行った後の固形物を、100mlビーカーに移し、110℃で乾燥する。乾燥後の固形物を乳鉢で解砕し、表面処理されたカーボンナノチューブ1.0gを三角フラスコに採取し、0.1mol/l NaOH 25mlを三角フラスコに添加した後に、振盪機を用いて三角フラスコを4時間振盪する。振盪した液を遠沈管に移し、上澄み液を測定サンプルとして採取する。
(測定手順:滴定方法、および酸価の算出方法)
酸価の測定には、自動滴定装置(Metrohm社製、809Titrando)を用いた電位差滴定により測定した。上記で得たサンプルの測定前に、ブランクとして0.1mol/l NaOH 25mlを0.1mol/l HClで滴定し、中和に要したHClの滴下量を計測した後に、測定サンプルを、0.1mol/l HClで滴定し、中和に要したHClの滴下量を計測した。得られた測定値を下記の式に代入し、酸価を求めた。尚、式中の記号の意味は、下記に示した。
Blank[ml]:0.1mol/l NaOH 25mlを0.1mol/lHClで滴定した際の、中和に要した滴下量
Sample[ml]:サンプル 25mlを0.1mol/l HClで滴定した際の、中和に要した滴下量
HCl[mol/l]:HCl標準溶液の濃度
sample[g]:測定サンプル中のカーボンナノチューブ重量
酸価[mmol/g]=(VBlank-VSample)×NHCl/Msample
・カーボンナノチューブ水性分散液の40℃保存安定性試験
得られたカーボンナノチューブ水性分散液を100mlの密閉容器に80ml採取し、40℃に管理された乾燥機内で4週間(4w)保存した後に、上記に示す測定方法により、各種物性を測定した。
【0079】
(実施例2)
粉砕酸化工程処理における過硫酸ナトリウムの投入量を1000gとすることに代えて、4000gとすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0080】
(比較例1)
<酸化工程>
ラバーヒーターを取り付けたタンク内に原料カーボンナノチューブ(公知の気相法により合成された(直径が0.5~100.0nm、長さが~20μmの範囲の)カーボンナノチューブ)を70gと純水7000gを投入し、撹拌を行う。次に、酸化剤として過硫酸ナトリウム1000gを投入し、60℃になるように温度制御し、6時間の撹拌を行った後に、排出し、回収した。つまり、粉砕を行わずに、酸化のみを行った。
【0081】
以降は、実施例1と同様に、脱塩処理、中和処理、凝集防止剤の添加、精製及び濃縮処理を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0082】
(比較例2)
酸化工程において、60℃になるように温度制御し、6時間の撹拌を行うことに代えて、90℃になるように温度制御し、3時間の撹拌を行うこと以外は比較例1と同様に行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0083】
(比較例3)
酸化工程における過硫酸ナトリウムの投入量を1000gとすることに代えて、4000gとすること以外は、比較例1と同様に行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0084】
【表1】
1)カーボンナノチューブ水性分散液中のカーボンナノチューブの濃度
2)カーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度
【0085】
【表2】
1)カーボンナノチューブ水性分散液中のカーボンナノチューブの濃度
2)カーボンナノチューブ水性分散液の25℃、せん断速度383s-1における粘度
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、低粘度であるので、幅広い用途への応用が可能となる。そして、本発明のカーボンナノチューブ水性分散液は、カーボンナノチューブの濃度が高いので、材料設計の幅を拡げることが可能であり、また、利便性の高いカーボンナノチューブを、低運搬コストで供給できる。