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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】障子開口量制限具及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/60 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
E05C17/60 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020017805
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123944
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 麻美
(72)【発明者】
【氏名】荒木 将
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-001400(JP,U)
【文献】実開昭60-130969(JP,U)
【文献】特開2005-133374(JP,A)
【文献】特開2006-241795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の見込み面に取り付けられる台座と、
開口部を備えた係合部材と、
前記枠体に支持されるスライド式の障子に取り付けられ、前記係合部材に係合可能な被
係合部材と、
前記障子のスライド方向に沿った第1軸周りに回動可能な回動部と、を有し、
前記係合部材は、前記回動部の回動に応じて前記第1軸周りに回動可能、且つ、前記第
1軸と直交する第2軸周りに回動可能であり、
前記開口部は、前記第2軸に沿う平面をなす部位に形成されて前記第2軸の軸方向と直交する方向に貫通しており、
前記平面をなす部位が前記見込み面に沿う状態において、前記平面をなす部位における前記第2軸とは反対側の端部側に、当該平面をなす部位よりも、前記見込み面側に突出した突出部を備えることを特徴とする障子開口量制限具。
【請求項2】
請求項1に記載の障子開口量制限具であって、
前記係合部材は、前記第1軸周りの回動及び前記第2軸周りの回動によって、第1状態、第2状態、及び第3状態とすることができ、
前記第3状態は、前記係合部材が、前記被係合部材の被係合部に係合する係合状態であり、且つ、前記開口部が貫通する貫通方向と前記スライド方向とが直交する状態であり、
前記第2状態は、前記第3状態から前記第2軸周りに前記係合部材を所定角度回動させた状態であり、且つ、前記係合部材が、前記被係合部材の被係合部に係合しない非係合状態であり、
前記第1状態は、前記第2状態から前記第1軸周りに前記係合部材を所定角度回動させた状態であり、且つ、前記非係合状態であることを特徴とする障子開口量制限具。
【請求項3】
請求項2に記載の障子開口量制限具であって、
前記第2状態における前記係合部材の前記第1軸周りの回動を規制する規制部を有することを特徴とする障子開口量制限具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の障子開口量制限具であって、
前記第3状態における前記係合部材の前記第2軸周りの所定角度以上の回動を制限する回動制限部を備えることを特徴とする障子開口量制限具。
【請求項5】
請求項4に記載の障子開口量制限具であって、
前記台座は、前記枠体の前記見込み面に取り付けられる取り付け面を有し、
前記スライド方向において、前記突出部の先端は、前記取り付け面より前記第2軸側に位置することを特徴とする障子開口量制限具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の障子開口量制限具であって、
前記係合部材は、内側に凹んだ凹部を有し、
前記被係合部材は、被係合部よりも先端側に先端部を有し、
前記先端部の少なくとも一部が前記凹部に収められた状態で、前記被係合部が、前記係合部材と所定方向に移動可能に係合することを特徴とする障子開口量制限具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子開口量制限具及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関引戸のようなスライド式に開閉可能な障子に、特許文献1に記載されたような引戸ガードを設けることが知られている。特許文献1には、枠体にアームを設け、引戸に受け具を設けられており、アームを上方から受け具の溝部に向かって嵌め込むことで、引戸の開閉を制限する引戸ガードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-220936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の特許文献1に記載された引戸ガードは、使用者の意図に反して、障子の開閉による振動や自重等の要因でアームが上方から下方に倒れて受け具の溝部にはめ込まれてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、枠体や障子への取り付けが容易で、障子の開閉による振動や自重等の要因によって使用者の意図に反して係合状態となることを防ぐ障子開口量制限具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の障子開口量制限具は、枠体に取り付けられる台座と、開口部を備えた係合部材と、前記枠体に支持されるスライド式の障子に取り付けられ、前記係合部材に係合可能な被係合部材と、前記障子のスライド方向に沿った第1軸周りに回動可能な回動部と、を有し、前記係合部材は、前記回動部の回動に応じて前記第1軸周りに回動可能、且つ、前記第1軸と直交する第2軸周りに回動可能であり、前記開口部は、前記第2軸の軸方向と直交する方向に貫通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の障子開口量制限具によれば、枠体や障子への取り付けが容易で、障子の開閉による振動や自重等の要因によって使用者の意図に反して係合状態となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る玄関引戸1を屋内側から見た正面図である。
図2】玄関引戸1を屋内側から見た正面図である。
図3図1中の部分Xの制限具50の斜視図である。
図4】制限具50の分解斜視図である。
図5図5Aは、第1状態の制限具50を説明する正面図である。図5Bは、第1状態の制限具50を説明する側面図である。
図6】第2状態の制限具50の斜視図である。
図7図7Aは、第2状態の制限具50を説明する正面図である。図7Bは、第2状態の制限具50を説明する側面図である。
図8】第3状態の制限具50の斜視図である。
図9図9Aは、第3状態の制限具50を説明する正面図である。図9Bは、第3状態の制限具50を説明する側面図である。
図10図9中のZ-Z矢視断面図である。
図11】第4状態の制限具50の斜視図である。
図12図12Aは、第4状態の制限具50を説明する正面図である。図12Bは、第4状態の制限具50を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る玄関引戸1を屋内側から見た正面図である。図1は、障子11及び障子12を閉じた状態を示し、図2は、図1の状態から障子11を所定量だけ開口した状態を示している。玄関引戸1は、建物の開口部に固定される建具枠である枠体2を有しており、枠体2は上枠2a、下枠2b、及び左右の縦枠2cを有する。この枠体2にスライド可能に支持された一対の障子11、12を備える。なお、玄関引戸1の左右方向、上下方向、及び見込み方向は、互いに直交している。玄関引戸1の左右方向は、障子11、12のスライド方向でもある。また、玄関引戸1は、左右方向における一方側に、障子開口量制限具50(以下、「制限具50」ともいう。)を備える。
【0010】
左右方向における一方側(図1及び図2における左側)の障子11が屋外側、他方側(図1及び図2における右側)の障子12が屋内側に配置され、互いに引き違い可能に配置されている。障子11の召合せ框(不図示)と障子12の召合せ框12aには、障子11、12を施錠する錠15が設けられている。また、他方側の障子12の戸先框12bには、他方側の障子12を施錠する戸先錠16が設けられている。
【0011】
<<障子開口量制限具50の構成>>
制限具50は、いわゆるスライドタイプの障子の開口量を制限する。本実施形態では、予め玄関引戸1に制限具50が設けられた形態について説明するが、これに限られない。一般的な玄関引戸1等のスライドタイプの障子を備えた建具に、後付けでネジ等の固定具で制限具50を設置してもよい。制限具50は、玄関引戸1等のスライドタイプの障子を備える建具であれば、建具に特別な加工を行うことなく設置が可能である。また、本実施形態では、左右方向における一方側の障子11の開口量を制限する制限具50を設け、左右方向の他方側の障子12の戸先錠16で障子12の開閉を制限している。制限具50を用いて障子11が所定量以上開口しないように制限することで、防犯性を確保しつつ、来訪者の確認や換気を行うことができる。
【0012】
図3は、図1中の部分Xの制限具50の斜視図である。図4は、制限具50の分解斜視図である。図3及び後述の図5図12において、障子11の戸先框11bや模様等の線図は省略して示している。図4において、各部材を縦枠2cや障子11に固定するための固定具は、省略して示している。制限具50は、亜鉛ダイカスト等の金属製であるが、セラミックや樹脂等の任意の素材であってもよい。制限具50は、台座51、係合部材52、回動部材53、回動軸(第2軸)54、座金55、弾性部材56、及び被係合部材57を備える。
【0013】
台座51は、取り付け面51a、台座開口51h、及び台座凹部51dを備える。取付け面51aは、縦枠2cの見込み面に取り付けられる面である。なお、制限具50のスライド方向は、制限具50を玄関引戸1に取り付けた状態(図3等)の左右方向である。台座開口51hは、図4において、スライド方向に貫通した開口である。台座51の取り付け面51a側から回動部材53が挿入される。台座凹部51dは、取り付け面51aとは反対側の面に設けられた窪んだ部分である。
【0014】
回動部材53は、台座51に対して、スライド方向に沿った軸線を有する回動軸(以下、「第1軸」ともいう。)として回動可能な部材である。回動部材53の回動軸の軸方向を第1軸方向ともいう。回動部材53は、挿入部53aと基端部53bと貫通孔53pを備える。貫通孔53pは、回動軸54を挿入するための貫通孔である。基端部53bは、回動部材53のうち、台座開口51hに挿入されない部分である。基端部53bは、所定箇所に切り欠き部53cを備える。本実施形態では90度毎に4箇所切り欠き部53cを備えている。
【0015】
挿入部53aは、台座開口51hに挿入される部分であり、先端部にスライド方向に直交した貫通孔53pを備える。挿入部53aは、略円柱形状であり、先端部は丸みを帯びた湾曲形状である。挿入部53aには、環形状の座金55が嵌められており、制限具50を玄関引戸1に取り付けた状態において、座金55は、台座51と基端部53bの間に位置する。
【0016】
座金55は、金属製で弾性を備えた、いわゆるウェーブワッシャーである。座金55の環状の貫通領域は、台座51の台座開口51h及び挿入部53aより大きく、回動部材53の基端部53bより小さい。座金55は、図3等のように制限具50の一部として組み込まれた状態では、所定量だけ撓んだ状態となっている。
【0017】
係合部材52は、細長い部材であり、開口部52h、突出部52e、凹部52b、貫通孔52p、傾斜部52s、及び回動開口部52rを備える。開口部52hは、係合部材52の中央部に設けられた開口部であり、被係合部材57の被係合部58(後述)と係合可能な部分である。貫通孔52pは、回動軸54を挿入するための貫通孔である。突出部52eは、貫通孔52pとは図3に示す上下方向の反対側の端部側に設けられた、スライド方向における取付け面51a側に突出した部分である。本実施形態においては、突出部52eは、係合部材52の端部を屈曲させることで突出させている。傾斜部52sは、貫通孔52pが設けられた側の端部に設けられた傾斜部分であり、開口部52hの貫通方向における突出部52eが設けられた側に傾斜している。図3において、凹部52bは、台座51側から見て内側に凹んだ部分である。回動開口部52rは、回動部材53の挿入部53aが収容される部分である。なお、係合部材52が回動軸54周りに回動する場合に、回動部材53が係合部材52の回動を妨げたりすることがないように、回動開口部52rの形状を挿入部53aに応じた形状とする必要がある。図3等に示すように、挿入部53aの先端部が丸みを帯びた湾曲形状であることで、回動開口部52rを過度に大きくすることなく、回動部材53と係合部材52との接触を防ぐことができる。
【0018】
回動軸54は、係合部材52を回動させる軸であり、回動軸54の軸方向(以下、「第2軸方向」ともいう。)は、開口部52hの貫通方向と直交している。回動軸54は、係合部材52の貫通孔52p及び回動部材53の貫通孔53pに挿入されている。そのため、制限具50を縦枠2cに取り付けた状態において、回動軸54の軸方向が、回動部材53の回動によって、見込み方向に沿い、スライド方向に直交する状態となり(図3参照)、上下方向に沿い、スライド方向に直交する状態となることができる(図6参照)。
【0019】
弾性部材56は、樹脂製の部品であり、台座51の取り付け面51a側で、回動部材53の上方と下方にそれぞれ設けられている。弾性部材56は、それぞれ所定箇所に凸部56aを有しており、回動部材53の基端部53bの切り欠き部53cと凸部56aとの噛み合わせによって、回動角度90度毎に回動部材53の回動状態を保持し係合部材52の操作性を向上させることができる。
【0020】
被係合部材57は、障子11の見付け面(具体的には、戸先框11b)に取り付けられる。被係合部材57は、被係合部58と先端部59を備える。被係合部58は、被係合部材57の取り付け面に対して垂直に設けられた略円柱状の部材で、係合部材52と左右方向に移動可能に係合することができる部材である。先端部59は、被係合部58よりも先端側に設けられている。
【0021】
<<障子開口量制限具50による開口量を制限する操作>>
制限具50のうち、台座51が縦枠2cの見込み面に固定され、被係合部材57が障子11(戸先框11b)に固定されており、係合部材52を、図1に示す非係合状態から図2に示す係合状態へと操作すると、障子11の開口量を制限した状態となる。非係合状態から係合状態にする操作として、制限具50の4つの状態について説明する。
【0022】
<<<第1状態>>>
第1状態は、非係合状態で、開口部52hの貫通方向が、スライド方向と同じ状態となっている状態をいう。図3図5A及び図5Bは、第1状態の制限具50を示しており、図1中のX部分を示している。図5Aは、第1状態の制限具50を説明する正面図、図5Bは、第1状態の制限具50を説明する側面図であり、左右方向の他方側から制限具50を見たときの側面図である。具体的には、図1に示すように、障子11及び障子12を閉じた状態であり、縦枠2cの上下方向に係合部材52の長手方向が沿っており、縦枠2cの見込み面に、係合部材52が収まっている状態をいう。
【0023】
第1状態の制限具50は、係合部材52の開口部52hが被係合部58よりも下側に位置している。第1状態では、回動軸54(第2軸方向)は見込み方向に沿い、スライド方向と直交している。また、開口部52hの貫通方向が左右方向に沿っている。なお、回動部材53の回動軸(第1軸方向)は、第1状態~第4状態において、スライド方向(左右方向)に沿っている。
【0024】
非係合状態を維持する場合には、制限具50を第1状態としておくことが好ましい。縦枠2cの上下方向に係合部材52の長手方向が沿うことで、縦枠2cから係合部材52が突出しないため、人の出入りの障害になる等、係合部材52が邪魔になる恐れを軽減できる。また、係合部材52の開口部52hが被係合部58より下側に位置することで、開口部52hを被係合部58より上側に設けた場合のように、係合部材52の落下によって、使用者の意図しない状態で係合状態になることを防ぐことができる。
【0025】
図5Aに示すように、第1状態において、係合部材52は、スライド方向における取付け面51a側(左右方向における縦枠2c側、一方側)に突出した突出部52eを備えることが好ましい。係合部材52は、細長い形状であるため、左右方向の他方側から一方側に向かって係合部材52を押したりする等の力を加えると、変形してしまう恐れがある。これに対し、突出部52eを備えることで、左右方向の他方側から一方側に向かって係合部材52に力を加えた場合でも、まず、突出部52eが縦枠2cに接触するため、係合部材52が撓んで変形することを防ぎ、被係合部材57と係合しづらくなってしまう恐れを軽減する。また、係合部材52の突出部52eが、開口部52hが設けられた部分より突出していることから、操作者は突出部52eを掴みやすくなり、操作性が向上する。
【0026】
さらに、スライド方向において、突出部52eの先端が、取り付け面51aより回動軸54側に位置することが好ましい。つまり、図5Aに示すように、制限具50を玄関引戸1に取り付けた状態において、左右方向において、突出部52eが、縦枠2cから離間していることが好ましい。突出部52eが縦枠2cと接触して、縦枠2cを傷つけたり、係合部材52を破損させたり、使用者にとって不快な衝突音を生じさせたりすることを防ぐ。
【0027】
このとき、左右方向において、突出部52eの先端が、台座51の取り付け面51aより他方側であり、台座51の左右方向における取付け面51aとは反対側の面より一方側に位置することがより好ましい。つまり、縦枠2cと突出部52eとの左右方向における距離Dが、台座51の左右方向における長さWより短いことが好ましい(D<W)。係合部材52と縦枠2cとの接触を防ぎつつ、左右方向における係合部材52と縦枠2cとの間の長さをより短くすることで、左右方向の一方側から他方側に向かって係合部材52に力を加えた場合の係合部材52の変形を軽減させることができる。
【0028】
第1状態の係合部材52を、図3及び図5Bに示す矢印R1の方向、つまり、第1軸周りに、屋内側に向かって回動させることで第2状態となる。なお、回動部材53の回動軸周りに屋外側に向かって回動可能な構成であってもよい。係合部材52を、回動部材53の回動軸周り両方向に回動可能にすることで、屋内側から見て、左右方向における一方側の縦枠2c及び障子11だけでなく、他方側の縦枠2c及び障子12にも制限具50の設置が可能となる。
【0029】
<<<第2状態>>>
第2状態は、第1状態から係合部材52を第1軸周りに所定角度(90度)だけ回動させた状態をいう。図6は、第2状態の制限具50の斜視図である。図7Aは、第2状態の制限具50を説明する正面図、図7Bは、第2状態の制限具50を説明する側面図である。
【0030】
図6図7A及び図7Bに示すように、制限具50の第2状態は、第1状態から係合部材52を第1軸周りに90度だけ屋内側に向かって回動させて、開口部52hの貫通方向が左右方向に沿い、回動軸54(第2軸方向)が上下方向に沿った状態である。第2状態の制限具50は、非係合状態であり、係合部材52の長手方向を左右方向に沿わせた状態で、係合部材52の一部が縦枠2cから屋内側に突出した状態である。
【0031】
第2状態において、係合部材52が操作者の意図に反して、係合部材52が第1軸周りに屋外側に向かって回動することを規制する規制部を有することが好ましい。例えば、制限具50は、座金55が規制部として設けられている。座金55は、所定量だけ撓んだ状態で設置されているため、第2状態では、座金55の弾性力が回動部材53を介して係合部材52に働き、係合部材52を台座51に押し付ける力が働く。これによって、係合部材52が第1軸周りに屋外側に向かって回動することを規制することができ、操作者が操作していない状態でも第2状態の係合部材52の長手方向を見込み方向に沿った状態で維持することができる。なお、第2状態から第3状態にする場合、又は第2状態から第1状態にする場合には、操作者が所定の力を加えることで回動可能となる。
【0032】
第2状態の係合部材52を、図6に示す矢印R2の方向、つまり、第2軸周りに、左右方向における他方側に向かって回動させることで、第3状態となる。
【0033】
<<<第3状態>>>
第3状態は、第2状態から係合部材52を第2軸周りに所定角度(90度)だけ回動させた状態をいう。図8は、第3状態の制限具50の斜視図である。図9Aは、第3状態の制限具50を説明する正面図、図9Bは、第3状態の制限具50を説明する側面図である。
【0034】
図8図9A及び図9Bに示すように、制限具50の第3状態は、第2状態から係合部材52を第2軸周りに略90度だけ左右方向における他方側に向かって回動させて、回動軸54(第2軸方向)が上下方向に沿い、貫通方向が見込み方向に沿った状態である。
【0035】
開口部52hは、突出部52e側の端部より回動軸54側の端部が広く開口している。具体的には、図9A等に示す状態において、突出部52e側の開口部52hの上下方向の長さより、回動軸54側の開口部52hの上下方向の長さの方が長い。第3状態の制限具50を屋内側から見たときには、開口部52hの回動軸54側の端部に、被係合部材57の先端部59が収まっている状態となる。
【0036】
第3状態及び後述の第4状態において、台座51の取り付け面51aとは反対側の台座凹部51dに係合部材52の一部を入り込ませることが好ましい。台座凹部51dの上端と下端である端51s、51sが、第2軸方向とスライド方向と直交する方向から外れる回動を抑止する抑止部となる。つまり、係合部材52が第1軸周りに回動しようとすると、台座凹部51dの端51sに係合部材52の上端部が干渉して、操作者の意図に反して係合部材52が第1軸周りに回動することを防ぐことができる。
【0037】
また、制限具50は、第3状態において、抑止部として、座金55を備えるものであってもよい。座金55によって、係合部材52を台座51に押し付ける力が働くため、座金55が第2軸方向とスライド方向と直交する方向から外れる回動を抑止する抑止部となり、係合部材52が第1軸周り及び第2軸周りに操作者の意図に反して回動することを防ぐことができる。なお、抑止部としては、台座の台座凹部51dや座金55に限られない。例えば、台座と係合部材52との間に樹脂ばね等の弾性部材を抑止部として配置して、第2軸方向とスライド方向と直交する方向から外れる回動を抑止してもよい。また、本実施形態では、抑止部として、台座の台座凹部51dと座金55を設けたが、いずれか一方のみでもよい。
【0038】
さらに、第2状態から第3状態に所定角度だけ回動させるときに、係合部材52が所定角度以上に回動しないように制限具50が回動制限部を備えることが好ましい。制限具50は、第2状態から第3状態にする際に、第2軸周りに約90度回動させて、係合部材52の長手方向が左右方向に沿う状態としている。制限具50は、玄関引戸1に設置しているため、左右方向に開閉する障子11、12の開口量を制限するためには、通常、障子11、12と係合部材52とが略平行であることが好ましく、第2軸周りに所定角度(例えば、90度)より大きく回動する必要がない。
【0039】
図10は、図9中のZ-Z矢視断面図である。図10において、便宜上、回動部材53を省略し、枠体2及び障子11の断面についてのハッチングは省略して示している。制限具50は、回動制限部によって、係合部材52が所定角度以上に回動しないように制限されている。具体的には、図8図12に示すように、第3状態及び第4状態においては、制限具50は、台座51の台座凹部51dに、係合部材52の縦枠2c側の端部を入りこませ、係合部材52を台座51の台座凹部51dの奥まった面に当接させている。そのため、制限具50の回動制限部は、台座51の台座凹部51dの奥まった面、及び係合部材52の縦枠2c側の端部から構成されている。
【0040】
なお、第3状態及び第4状態において、制限具50は、座金55の撓みによって、係合部材52を台座51に押し付ける力が働き、台座51の台座凹部51dに係合部材52の一部を入りこませた状態を維持している。
【0041】
一方、図10に示す第3状態の制限具50を第2状態の制限具50とすることは可能である。係合部材52を図10に示す矢印R3の方向、つまり、第2軸回りに、左右方向における一方側に回動させるとき、係合部材52は、回動軸54の中心より見込み方向における屋内側に傾斜部52sを備えているため、回動軸54は、左右方向における一方側に移動して、座金55の撓みを緩ませることになる。そのため、第3状態の制限具50を第2状態の制限具50とする回動は容易に行うことができる。
【0042】
係合部材52の所定角度以内の回動を可能としつつ、制限具50が回動制限部を備えることで、第2状態から第3状態に所定角度だけ回動させるときに、係合部材52が所定角度以上に回動しないように制限し、操作者は第2軸周りに操作すべき範囲を認識しやすくなるだけでなく、係合部材52を所定角度(90度)以上回動させた場合に、障子11の開閉によって、係合部材52に対して予期しない方向に力が加えられて係合部材52や回動部材53が破損してしまう恐れを軽減させることができる。
【0043】
第3状態の障子11を、図8及び図9Aに示す矢印Mの方向、つまり、左右方向における一方側から他方側に向かって開口させることで、第4状態となる。
【0044】
<<<第4状態>>>
第4状態は、第3状態から、障子11を開口させて、係合部材52を被係合部材57に係合させた状態をいう。図11は、第4状態の制限具50の斜視図である。図12Aは、第4状態の制限具50を説明する正面図、図12Bは、第4状態の制限具50を説明する側面図である。図11図12A及び図12Bは、図2中のY部分を示している。図11図12A、及び図12Bに示すように、係合部材52の開口部52hの左右方向の長さに応じた量だけ障子11は、開口可能に制限されている。
【0045】
第4状態は開口部52hの縁に被係合部58が係合した状態であり、被係合部58は、開口部52h内において、左右方向に移動可能である。具体的には、開口部52hより上側及び下側に設けられた凹部52bに被係合部58が屋外側から屋外側に向かって挿入された状態で、且つ先端部59が凹部52bより屋内側に位置している状態である。つまり、屋外側から屋内側に向かって被係合部58を開口部52hに挿入した状態で、先端部59が、凹部52bの屋内側の面にひっかかることで、係合状態となる。非係合状態とするためには、障子11を閉めて、第3状態を経て、第2軸周りに係合部材52を回動させて第2状態とする必要がある。
【0046】
制限具50のように、第4状態における屋内側(突出部52e側)から見て、屋外側に凹んだ凹部52bを備え、凹部52bに先端部59の少なくとも一部を収めた状態で、被係合部58が左右方向に移動可能に係合されていることが好ましい。係合状態(第4状態)において、係合部材52から先端部59が突出する長さを短くすることができるだけでなく、被係合部58の見込み方向の長さもより短くすることができる。
【0047】
上述では、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態の順を経ることで非係合状態から係合状態にすることを示したが、第4状態、第3状態、第2状態、第1状態の順に係合部材52及び障子11を操作することで係合状態から非係合状態とすることができる。
【0048】
非係合状態から係合状態とするにあたり、第1状態から第4状態を経るところ、操作者は、係合部材52の回動と障子11の開閉というそれぞれ容易な操作で、制限具50を係合状態、非係合状態とすることができ、障子の開閉による振動や制限具50、特に係合部材52の自重により係合部材52が落下する等の要因によって使用者の意図に反して係合状態となることを防ぐことができる。
【0049】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0050】
上述の実施形態では、玄関引戸1が、左右方向における一方側に、制限具50を備えたが、左右方向における両側に制限具50を備えるものであってもよい。
【0051】
上述の実施形態では、左右方向にスライド可能な一対の障子11、12を備えた玄関引戸1に制限具50を設置したが、これに限らず、制限具50は、スライド式の障子を備えた建具に設置することができる。例えば、1枚の障子が壁の屋内側又は屋外側に引き込まれる建具、3枚以上の障子が左右方向にスライド可能な建具、引き違い窓や片上げ下げ窓等の建具に設置することができる。
【0052】
また、上述の実施形態では、突出部52eを、係合部材52の端部を屈曲させたものとしたが、これに限られない。例えば、係合部材52の端部に別部材を張り付けて突出させた構成や、予め係合部材52の端部の厚みを他の部分より厚くして突出させた構成であってもよい。
【0053】
さらに、上述の実施形態では、第1状態において、係合部材52の開口部52hを被係合部58より下側に位置するように設けたが、これに限られない。開口部52hを被係合部58より上側に設ける構成、つまり、図3及び図5に示す第1状態の係合部材52を上下反転させた状態を第1状態としてもよい。
【0054】
上述の実施形態において、制限具50が、第1軸周りに回動可能な回動部材53を備えたが、これに限られない。回動部材53が、必ずしも回動部材が独立した部品でなくてもよい。回動部として、台座51や係合部材52の一部として設けられるものであってもよい。
【0055】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
枠体に取り付けられる台座と、開口部を備えた係合部材と、前記枠体に支持されるスライド式の障子に取り付けられ、前記係合部材に係合可能な被係合部材と、前記障子のスライド方向に沿った第1軸周りに回動可能な回動部と、を有し、前記係合部材は、前記回動部の回動に応じて前記第1軸周りに回動可能、且つ、前記第1軸と直交する第2軸周りに回動可能であり、前記開口部は、前記第2軸の軸方向と直交する方向に貫通していることを特徴とする障子開口量制限具である。
【0056】
このような障子開口量制限具によれば、枠体や障子への取り付けが容易であるだけでなく、係合部材を被係合部に係合させた状態では、係合部材が、開口部と直交する第2軸周りの回動によって被係合部材と係合可能となるため、障子の開閉による振動や自重等の要因によって使用者の意図に反して係合状態となることを防ぐことができる。
【0057】
かかる障子開口量制限具であって、前記係合部材は、前記第1軸周りの回動及び前記第2軸周りの回動によって、第1状態、第2状態、及び第3状態とすることができ、前記第3状態は、前記係合部材が、前記被係合部材の被係合部に係合する係合状態であり、且つ、前記開口部が貫通する貫通方向と前記スライド方向とが直交する状態であり、前記第2状態は、前記第3状態から前記第2軸周りに前記係合部材を所定角度回動させた状態であり、且つ、前記係合部材が、前記被係合部材の被係合部に係合しない非係合状態であり、前記第1状態は、前記第2状態から前記第1軸周りに前記係合部材を所定角度回動させた状態であり、且つ、前記非係合状態であることを特徴とする。
【0058】
このような障子開口量制限具によれば、使用者は、係合部材の回動させることで、容易に第1状態~第3状態とすることができるため、容易に係合部材を被係合部材に対して係合・非係合の状態とすることがきる。
【0059】
かかる障子開口量制限具であって、前記第2状態における前記係合部材の前記第1軸周りの回動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【0060】
このような戸体によれば、第2状態において、操作者が手で支えていない状態でも、使用者の意図に反して第1軸周りに回動することを規制することができるため、障子開口量制限具の操作性が向上する。
【0061】
かかる障子開口量制限具であって、前記第3状態における前記係合部材の前記第2軸周りの所定角度以上の回動を制限する回動制限部を備えることを特徴とする。
【0062】
このような障子開口量制限具によれば、第3状態において、係合部材が第2軸周りに所定角度以上に回動しないように制限することで、係合部材の操作性を向上させたり、係合部材と障子との接触を防止して、係合部材の破損を防ぐことができる。例えば、スライド式の障子は、スライド方向に沿った方向にスライドするため、所定角度を90度までとすることで、操作者が第2軸周りに操作すべき範囲を認識しやすくなるだけでなく、係合部材を90度以上回動させた場合に、障子の開閉によって、係合部材に対して予期しない方向に力が加えられて係合部材や回動部材が破損してしまう恐れを軽減させることができる。
【0063】
かかる障子開口量制限具であって、前記台座は、前記枠体の見込み面に取り付けられる取り付け面を有し、前記第1状態において、前記係合部材は、前記第2軸とは反対側の端部側に、前記スライド方向における前記取り付け面側に突出した突出部を備えることを特徴とする。
【0064】
このような障子開口量制限具によれば、係合部材に台座側に向かって力を加えると、まず、突出部が枠体に接触するため、係合部材の変形の恐れを軽減できる。また、係合部材の突出部を掴みやすくなるため、操作性が向上する。
【0065】
かかる障子開口量制限具であって、前記スライド方向において、前記突出部の先端は、前記取り付け面より前記第2軸側に位置することを特徴とする。
【0066】
このような障子開口量制限具によれば、障子開口量制限具を枠体に取り付けた状態に、枠体から突出部を離間させることができるため、突出部が枠体を傷つけたり、係合部材を破損させたり、不快な衝突音を生じさせたりする恐れを軽減できる。
【0067】
かかる障子開口量制限具であって、前記係合部材は、内側に凹んだ凹部を有し、前記被係合部材は、被係合部よりも先端側に先端部を有し、前記先端部の少なくとも一部が前記凹部に収められた状態で、前記被係合部が、前記係合部材と所定方向に移動可能に係合することを特徴とする。
【0068】
このような障子開口量制限具によれば、障子を開口した状態において、非係合状態とできないようにすることができるため、例えば、屋内側から係合状態とした場合には、屋外側から非係合状態とするための操作を行うことができず、防犯性を向上させることができる。また、係合状態において、先端部の一部を凹部に収容することで、被係合部材の障子の見込み方向における長さをより短くすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 玄関引戸(建具)、2 枠体、2a 上枠、2b 下枠、2c 縦枠、11 障子、11b 戸先框、12 障子、12a 召合せ框、12b 戸先框、15 錠、16 戸先錠、50 制限具(障子開口量制限具)、51 台座、51a 取り付け面、52 係合部材、52b 凹部、52e 突出部、52h 開口部、53 回動部材(回動部)、54 回動軸(第2軸)55 座金、56 弾性部材、57 被係合部材、58 被係合部、59 先端部
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12