(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】監視システム、監視装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2020044944
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光野 正志
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄介
(72)【発明者】
【氏名】本荘 英俊
(72)【発明者】
【氏名】木村 謙児
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-296851(JP,A)
【文献】特開2019-125252(JP,A)
【文献】特表2016-529630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象機器を特定する機器特定情報と分析目的とを受付ける入力部と、
入力された前記機器特定情報と前記分析目的に基づいて、特定された前記監視対象機器の稼働状態を示す稼働データのうち前記分析目的に対応する分析項目データが所定の範囲の値である場合に、あらかじめ定められた比較項目データと比較した前記分析項目データの傾向を出力する出力部と
を備え
、
前記比較項目データは、前記分析項目データとは異なる種別のデータであって、かつ前記分析項目データと相関性を有するデータである
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記所定の範囲は、対応する項目データについての異常検知の条件を満たさない範囲に含まれる
ことを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記出力部からの出力を加工し、前記監視対象機器の稼働状態を報告するコメントデータを生成し、該コメントデータを含むレポートとして可視化するデータ可視化部を有することを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の監視システムにおいて、
前記所定の範囲は、対応する項目データについての異常検知の条件を満たさない範囲に含まれ、
前記データ可視化部は、
前記レポートの対象期間に前記異常検知の条件を満たした実績があるならば該異常検知の実績を報告するコメントデータを生成し、
前記レポートの対象期間に前記異常検知の条件を満たした実績がない場合に前記分析項目データの傾向を報告するコメントデータを生成する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記分析項目データが前記監視対象機器の機器内温度である場合に、前記比較項目データとして周囲の気温を用いる
ことを特徴とする監視システム。
【請求項6】
監視対象機器を特定する機器特定情報と分析目的とを受付ける入力部と、
入力された前記機器特定情報と前記分析目的に基づいて、特定された前記監視対象機器の稼働状態を示す稼働データのうち前記分析目的に対応する分析項目データが所定の範囲の値である場合に、あらかじめ定められた比較項目データと比較した前記分析項目データの傾向を出力する出力部と
を備え
、
前記比較項目データは、前記分析項目データとは異なる種別のデータであって、かつ前記分析項目データと相関性を有するデータである
ことを特徴とする監視装置。
【請求項7】
監視対象機器を特定する機器特定情報と分析目的とを受付ける入力受付ステップと、
入力された前記機器特定情報と前記分析目的に基づいて、特定された前記監視対象機器の稼働状態を示す稼働データのうち前記分析目的に対応する分析項目データを決定するとともに、該分析項目データの比較に用いる比較項目データを決定するデータ決定ステップと、
前記分析項目データが所定の範囲の値である場合に、前記比較項目データと比較した前記分析項目データの傾向を出力する出力ステップと
を含
み、
前記比較項目データは、前記分析項目データとは異なる種別のデータであって、かつ前記分析項目データと相関性を有するデータである
ことを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象機器の稼働状態を監視する監視システム、監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器メンテナンスのあり方が、定期的にメンテナンスをする時間基準保全から機器毎の状態に合わせてメンテナンスを行う状態基準保全へと移行している。状態基準保全をするためには、常に状態を監視する必要があり、IoTクラウドを用いた遠隔監視サービスの普及が進んでいる。
【0003】
機器を監視し障害予兆を検出する監視装置に関する技術としては特許文献1が知られている。特許文献1には、「監視対象システムについて異常が検出されなかった期間における該監視対象システムの監視データを曜日、時間帯、日にち、または、週数毎に分類して記憶部に記憶し、記憶された監視データの曜日、時間帯、日にち、または、週数毎の分布をもとに許容範囲を設定し、監視対象システムから現在取得した監視データと、現在の日時が属する曜日、時間帯、日にち、または週数の監視データの分布にもとづく許容範囲とを比較し、取得した監視データが許容範囲の上限または下限を超える場合に監視対象システムの障害予兆を検出する、処理をコンピュータ実行する」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、監視対象のコンピュータシステムの稼働状況に応じた適切な閾値を用いて障害予兆を検出する処理を実現する技術は開示されている。しかしながら、監視対象の機器の監視結果が閾値を超えたか否かで障害予兆を判断しており、許容範囲内の機器の状態を判断する方法については記載がない。
【0006】
産業用機器の状態基準保全の実現には、障害の発生有無だけでなく、機器の状態を判断することが求められる。本発明の目的は、機器毎の状態に合わせてメンテナンスを行う状態基準保全のため、監視対象の機器の状態を診断し、可視化する監視装置および監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい一例は、監視対象機器を特定する機器特定情報と分析目的とを受付ける入力部と、入力された前記機器特定情報と前記分析目的に基づいて、特定された前記監視対象機器の稼働状態を示す稼働データのうち前記分析目的に対応する分析項目データが所定の範囲の値である場合に、あらかじめ定められた比較項目データと比較した前記分析項目データの傾向を出力する出力部とを有する監視装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機器の状態を可視化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る監視システムの概念を示す概念図である。
【
図2】実施例1の監視システムを示す構成図である。
【
図6】機器特定情報DBのデータフォーマットを示す図である。
【
図7】分析項目DBのデータフォーマットを示す図である。
【
図8】所定範囲DBのデータフォーマットを示す図である。
【
図9】比較項目DBのデータフォーマットを示す図である。
【
図10】比較データDBのデータフォーマットを示す図である。
【
図11】分析データDBのデータフォーマットを示す図である。
【
図12】警報故障情報DB227のデータフォーマットを示す図である。
【
図13】レポートを生成する処理フローを示す図である。
【
図15】実施例2の監視システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例について、図面を用いて、以下に説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本実施例に係る監視システムの概念について説明する。
図1は、実施例1に係る監視システムの概念を示す概念図である。
図1に示す分析サーバ20は、監視対象機器の状態に関する複数のデータベースを有する。
【0012】
監視対象機器は、例えば空気圧縮機などの産業用機器である。監視対象機器は、通信機能を有し、状態に関するデータを適宜分析サーバ20に送信する。分析サーバ20は、監視対象機器に生じた警報や故障などを警報故障情報DB(DataBase)227に登録して管理する。また、分析サーバ20は、監視対象機器の稼働に関するデータを稼働データとして稼働データ情報DB224に登録して管理する。
【0013】
稼働データ情報DB224には、比較データDB225と分析データDB226とが含まれる。分析データDB226には、分析の対象となる所定期間分の稼働データが分析データとして登録される。比較データDB226には、分析データとの比較に用いるデータが登録される。例えば、直近3か月を所定期間とするならば、直近3か月分の稼働データを分析データDB226に登録し、3か月以前の稼働データを比較データDB225に蓄積すればよい。
【0014】
分析サーバ20は、これらのデータベースを利用し、監視対象機器の稼働状態に関するレポートを自動生成することができる。生成したレポートは、表示出力や印刷出力により可視化する。例えば、監視対象機器の保守を担当するサポート員は、分析サーバ20が自動生成したレポートを印刷し、監視対象機器のユーザに提供することができる。
【0015】
図1では、レポートには、名称と、稼働データのグラフと、警報故障の履歴と、保守履歴と、コメントの欄が設けられている。名称は、対象の機器を識別するために設けられており、
図1では「機器1」となっている。警報故障履歴は、警報故障情報DB227から抽出される。保守履歴は、例えば保守の履歴を管理するデータベース(図示せず)から抽出される。稼働データのグラフは、分析データDB226から抽出され、グラフとして表示される。
【0016】
コメントの欄には、監視対象機器の稼働状態を報告するコメントデータが挿入される。コメントデータは、レポートにおける総評として機能するものであり、画一的な生成には適さない。例えば、コメントデータを生成するにあたり、コメントの量は適正範囲に抑えることが必要である。表示出力や印刷出力におけるコメント欄の大きさには制限があり、また、大量の情報を羅列しても読み飛ばされるリスクが生じるからである。そのため、重要度の高い報告事項があるならば、重要度の低い事項は割愛することが望まれる。一方で、重要度の高い報告事項が存在しなければ、重要度の低い事項も報告すべきである。特に、状態基準保全の観点からは、稼働データが警告の閾値を超えて警告を行ったとの報告よりも、稼働データは警告の閾値を超えていないが注意を要する状態にあるとの報告をいかに早期に(重要度の低いうちに)行えるかが課題と言える。
【0017】
ここで、注意を要する状態にあるとの判定を行うために単純に閾値を下げるとすれば、早期の警告はできるものの、警告の精度が低下し、信頼性を損なう。そこで、本実施例の監視システムでは、警告の閾値には満たないが、警告の閾値に近い所定範囲に分析データが存在する場合に、比較データと比較した分析データの傾向をコメントとして出力することとしている。
【0018】
すなわち、
図1に示すように、分析サーバ20は、警報故障情報DB227に警報故障が登録されているならば、警報故障の実績をコメントデータとする。そして、警報故障が登録されていなければ、比較データDB225の比較データと比較した分析データDB226の傾向をコメントデータとする。
【0019】
次に、実施例1の監視システムの構成について説明する。
図2は、実施例1の監視システムを示す構成図である。実施例1の監視システムは、サービスを提供する場であるサービス拠点100において、分析サーバ20と複数の機器10とを有線もしくは無線などを介して通信接続して構成される。
図2では、複数の機器10として機器10-1~機器10-Nを例示している。
【0020】
図3は、分析サーバ20の構成の例を示す図である。分析サーバ20の処理内容は、一般的なコンピュータの補助記憶装置204にプログラム(ソフトウェア)の形で格納(記録)され、CPU(Central Processing Unit)202が、補助記憶装置204から読み出したプログラムをメモリ201上に展開して、実行する。分析サーバ20は、ネットワークI/F205を介して他のサーバや機器と通信する。
【0021】
I/O(入出力インタフェース)203は、ユーザが分析サーバ20に指示を入力し、プログラムの実行結果などをユーザに提示するためのユーザインタフェースである。I/O203には、入出力デバイス(例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ、プリンタなど)が接続される。I/O203は、ネットワークを経由して接続された管理端末によって提供されるユーザインタフェースが接続されてもよい。
【0022】
CPU202は、メモリ201に格納されたプログラムを実行するプロセッサである。メモリ201は、例えば揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)などで構成され、プログラムの実行に係るデータを一時的に展開する主記憶装置として機能する。
【0023】
具体的には、メモリ201には、データ入力部211、データ決定部212、データ比較部213、データ出力部214、データ可視化部215などの機能部として動作するプログラムが格納されることになる。
【0024】
また、メモリ201には、分析項目DB221、所定範囲DB222、比較項目DB223、稼働データ情報DB224、警報故障情報DB227、機器特定情報DB228などのデータが必要に応じて一時的に格納される。
【0025】
補助記憶装置204は、例えば、磁気記憶装置(HDD:Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ(SSD:Solid State Drive)などの大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置204は、CPU202により実行されるプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータが格納される。すなわち、プログラムは、補助記憶装置204から読み出されて、メモリ201にロードされ、CPU202によって実行される。
【0026】
分析サーバ20は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的な複数の計算機上で構成される計算機システムであり、メモリ201に格納されたプログラムが、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。また、分析サーバ20と他の装置が一つの物理的又は論理的計算機に収容されてもよい。なお、プログラムの実行によって実現される処理の全部又は一部の処理をハードウェア(例えば、Field-Programmable Gate Array)によって実現してもよい。
【0027】
図4は、分析サーバ20の機能ブロックを示す図である。
図4に示すように、分析サーバ20は、データ入力部211、データ決定部212、データ比較部213、データ出力部214及びデータ可視化部215を備える。
【0028】
データ入力部211は、監視対象機器特定情報入力部231と、分析目的入力部232とを備える。監視対象機器特定情報入力部231は、機器10を一意に特定する機器特定情報の入力を受け付ける。機器特定情報は、例えば機器IDなどである。分析目的入力部232は、分析目的の入力を受け付ける。分析目的としては、例えば、温度、圧力、電流など機器の状態を示すパラメータを指定することができる。
【0029】
データ決定部212は、分析項目決定部241、所定範囲決定部242、比較項目決定部243及び比較データ決定部244を備える。
【0030】
分析項目決定部241は、データ入力部211が受け付けた監視対象機器特定情報及び分析目的に従って、分析項目DB221から分析項目を抽出し分析項目を決定する。この分析項目は、機器の稼働状態を示す稼働データのうち分析目的に対応する分析対象としてのデータである。例えば、分析目的として温度が指定された場合、監視対象機器特定情報により特定された機器の稼働データのうち、機器内温度など温度のデータが分析項目となる。なお、稼働データとして機器の複数個所で機器内温度を取得している場合のように、目的に対応する分析項目が複数存在するならば、そのうち1又は複数を分析項目の候補とすることができる。
【0031】
所定範囲決定部242は、分析項目決定部241にて決定した分析項目に従って、所定範囲DB222から所定範囲を抽出し、所定範囲を決定する。この所定範囲とは、警告の閾値には満たないが、警告の閾値に近く、コメントの対象とすべき範囲である。
【0032】
比較項目決定部243は、所定範囲決定部242にて決定した所定範囲に従って、比較項目DB223から比較項目を抽出し、比較項目を決定する。ここで決定される比較項目は、分析項目データとは異なる種別のデータであって、かつ分析項目データと相関性を有するデータである。例えば、分析項目が機器内温度であれば、比較項目として周囲温度(周囲の気温)を用いることができる。なお、例えば機器の複数個所で機器内温度を取得しているならば、異なる箇所の機器内温度は異なる種別のデータとして扱うものとする。また、同一の機器の同一の箇所で取得されるデータであっても、条件が異なるデータは異なる種別のデータとして扱うものとする。例えば、分析項目として所定箇所の機器内圧力が指定されている場合に、同一機器の異なる箇所の機器内圧力を比較項目とすることができる。同様に、分析項目としてモータ電流が指定されている場合に、最大負荷時のモータ電流を比較項目とすることができる。
【0033】
比較データ決定部244は、稼働データ情報DB224に格納されている比較データDB225から比較データを抽出し、比較データを決定する。ここで決定される比較データは、分析項目データと同一の種別のデータであって、かつ分析項目データとは異なる環境下で取得されたデータである。例えば、対象の機器について過去に取得した稼働データを比較データとして用いることができる。一例として、直近3か月の機器内温度を分析項目データとする場合に、3か月よりも前の機器内温度を比較データとする。
【0034】
なお、比較項目決定部243にて決定した比較項目がある場合には、比較データについて比較項目決定部243と同種のデータをさらに比較項目に加えることができる。例えば、分析項目が機器内温度、比較項目が周囲温度である場合に、3か月以上前の機器内温度と周囲温度の組合せを用いる。
【0035】
データ比較部213は、稼働データ情報DB224に格納されている分析データ226から分析データを抽出し、分析データを比較項目データや比較データと比較する。この比較により、分析データの傾向を求めることができる。
【0036】
データ出力部214は、データ比較部213による比較の結果をコメントデータなどの形式でデータ可視化部215に出力する。なお、データ出力部214は、警報故障情報DB227に警報故障が登録されているならば、警報故障の実績をコメントデータとしてデータ可視化部215に出力する。すなわち、データ出力部214は、コメントデータとして何を出力するかを取捨選択することができる。
【0037】
データ可視化部215は、データ出力部214から入力されたコメントデータを含む各種情報をレポートとしての形式に加工することで、レポートの自動生成を行い、生成したレポートを可視化する。この可視化は、表示出力や印刷出力によって行うことができる。
【0038】
図5は、データ可視化部215による可視化の例を示す図である。
図5に示すように、可視化された表示画面例300は、監視対象機器名称301、警報故障履歴302、保守履歴303、コメント304、監視対象機器の稼働データのグラフ305をそれぞれ表示する表示領域を含んで構成される。なお、
図5に示す可視化の構成は一例であり、様々な構成で可視化して良い。また、可視化の媒体においても、Web上で可視化される場合もあれば、紙媒体やファイル形式で可視化しても良い。ここでは、レポートとして可視化する場合を例に以下を説明する。
【0039】
図6は、機器特定情報DB228のデータフォーマットを示す図である。
図6に示すように、機器特定情報DB228は、機器30、製造番号31、型式32、設置先住所33、設置日34などを記録するデータベースである。機器30は、分析サーバ20の利用者が機器を一意に識別するための識別情報である。製造番号31は、機器の製造者により付された機器の識別情報である。分析サーバ20と全ての機器が同一のサービス拠点に配置されるならば、設置先住所33による住所の管理は必要ではない。しかし、機器が複数の住所に分散して配置されるケースや、分析サーバ20が機器とは異なる場所に設置されるケースを想定し、機器特定情報DB228には設置先住所33の項目が設けられている。
【0040】
図7は、分析項目DB221のデータフォーマットを示す図である。分析項目DB221は、型式40、温度41、圧力42、電流43を記録するデータベースである。型式40が「Model A」であれば、分析項目として選択できる温度、圧力、電流の項目はそれぞれ1つである。一方、型式40が「Model B」であれば、分析項目として選択できる温度、圧力の項目はそれぞれ2つ、電流の項目は1つである。このように、型式40により特定される機種によっては、複数個所で機器内温度や機器内圧力を取得している場合があり、複数個所から分析項目を選択することができる。
【0041】
図8は、所定範囲DB222のデータフォーマットを示す図である。所定範囲DB222は、型式50、分析項目51、所定範囲52を記録するデータベースである。所定範囲は、警告の閾値には満たないが、警告の閾値に近い範囲である。換言するならば、異常検知の条件を満たさない正常稼働の範囲に含まれるが、意喚起のコメントを報知するべき範囲である。
図8に示すように、複数個所から分析項目を選択することができる機種であれば、それぞれについて所定範囲が個別に設定される。
【0042】
図9は、比較項目DB223のデータフォーマットを示す図である。比較項目DB223は、分析項目60、比較項目61を記録するデータベースである。
図9では、分析項目が機器内温度である場合には、周囲温度が比較項目として対応付けられている。また、分析項目が機器内圧力であれば、同一機器の他の箇所の機器内圧力が比較項目として対応付けられている。ここで、比較項目として対応付ける機器内圧力は、分析項目として選択されない箇所のものであってもよい。なお、分析項目がモータ電流である場合には、一例として最大負荷時のモータ電流を分析項目としている。
【0043】
図10は、稼働データ情報DB224に格納されている比較データDB225のデータフォーマットを示す図である。比較データ225は、取得日時70、第一の比較項目71、第一の比較項目の数値72、第二の比較項目73、第二の比較項目の数値74を記録するデータベースである。第一の比較項目71は、比較項目DB223における分析項目60と同一の種別のデータである。第二の比較項目73は、比較項目DB223における比較項目61と同一の種別のデータである。
【0044】
図11は、稼働データ情報DB224に格納されている分析データDB226のデータフォーマットを示す図である。分析データDB226は、取得日時80、分析項目81、分析項目の数値82、比較項目83、比較項目の数値84を記録するデータベースである。
【0045】
図12は、警報故障情報DB227のデータフォーマットを示す図である。警報故障情報DB227は、警報もしくは故障の発生日時90、製造番号91、型式92、警報もしくは故障の内容93を記録するデータベースである。
【0046】
なお、本実施例1では、データベースによって各種情報の管理を行う構成について説明するが、これらの情報は必ずしもデータベースによるデータ構造で表現されていなくても良く、リスト、テーブル等のデータ構造やそれ以外で表現されていても良い。そのため、「テーブル」、「リスト」、「DB」等について単に「情報」と呼ぶことがある。
【0047】
図13は、レポートを作成する処理フローを示す図である。まず、監視対象機器特定情報入力部231は、入出力デバイスなどを介し、監視対象機器の特定情報(例えば製造番号XXX1234)の入力を受け付ける(S101)。S101の入力結果と
図6の機器特定情報DB228とから、製造番号がXXX1234に紐付いた、機器の名称として機器1、型式の名称がModelA、設置先住所が××県〇〇市、設置日が2015年8月15日が抽出される。
続いて、分析目的入力部232は、入出力デバイスなど介し、分析目的(例えば、温度に関する傾向を調べる)の入力を受け付ける(S102)。S101とS102の入力結果と、
図7の分析項目DB221とから、例えば、「型式がModelA、温度が機器内温度」が抽出される。
ここまでの処理で、レポートを作成する監視対象機器と分析項目が決定したことになる。
【0048】
データ決定部212は、稼働データ情報DB224に決定した監視対象機器に紐づくデータの有無を判断し(S103)、データが存在しない場合は、データ出力部214によるコメント決定処理(S109)に移行する。データが存在する場合は、データ決定部212は、警報故障情報DB227から、決定した監視対象機器に紐付くデータの有無を判断する(S105)。
【0049】
データが存在する場合は、データ決定部212は、データ出力部214によるコメント作成処理(S107)に移行する。データが存在しない場合は、分析データ情報DB226から、決定した監視対象機器に紐付く分析データを抽出し、あらかじめ設定された値を超えていないかどうかを判断する(S106)。
【0050】
分析データ情報DB226から、決定した監視対象機器に紐付く分析データにおいて、あらかじめ設定された値を超えていた場合は、データ決定部212は異常と判断し、データ出力部214によるコメント作成処理(S107)に移行する。あらかじめ設定された値を超えていない場合は、データ決定部212は、傾向抽出処理に移行する。
【0051】
コメント作成処理では、データ出力部214は、警報故障情報DB227に格納されている警報/故障内容93から警報や故障の実績を抽出してリスト化し、コメントデータの候補としてコメント決定処理に出力する(S107)。また、データ出力部214は、分析データがあらかじめ設定された値を超えたケースの発生実績を抽出し、コメントデータの候補としてコメント決定処理に出力する(S107)。
【0052】
傾向抽出処理では、データ決定部212は、分析データ情報DB226に格納されている第一の分析項目81の上昇傾向や減少傾向を抽出し、抽出結果をコメントデータの候補としてコメント決定処理に出力する(S108)。詳細については
図14を用いて説明する。
【0053】
コメント決定処理(S109)では、データ出力部214は、コメントデータの候補からコメントデータを選択し、可視化処理に出力する。具体的には、警報や故障の実績がコメントデータの候補に含まれていれば、データ出力部214は、警報や故障の実績を優先的に選択する。また、分析データが設定値を超えたケースが発生していれば、警報故障の次に優先的に選択する。そして、これらの優先すべきコメントデータの候補がない場合、もしくは、優先すべきコメントデータの数が少ない場合には、データ出力部214は、傾向抽出の結果をコメントデータとして選択する。
【0054】
可視化処理(S110)では、データ可視化部215は、データ出力部214から入力されたコメントデータを含む各種情報をレポートとしての形式に加工することで、レポートの自動生成を行い、生成したレポートを可視化し、処理を終了する。この可視化は、表示出力や印刷出力によって行うことができる。
【0055】
図14は、傾向抽出の処理フローを示す図である。傾向抽出の処理が開始されると、分析項目決定部241は、監視対象機器の特定情報から監視対象機器を特定する(S801)。例えば製造番号XXX1234に基づいて機器特定情報DB228を参照すれば、
図6に示すように、製造番号がXXX1234に紐付いた、機器の名称として機器1、型式の名称がModelA、設置先住所が××県〇〇市、設置日が2015年8月15日などの情報が監視対象機器の情報として特定される。
【0056】
分析項目決定部241は、入力された分析目的と監視対象機器の特定結果から、分析項目を決定する(S802)。例えば、分析項目として「温度に関する傾向を調べる」との入力を受け付けていれば、
図7示すように分析項目DB221を参照し、「型式ModelAの機器内温度」が分析項目として決定される。
【0057】
所定範囲決定部242は、決定した分析項目(型式ModelAの機器内温度)と、所定範囲DB222とから、
図8に示すように所定範囲52を90~100℃に決定する(S803)。
【0058】
所定範囲決定部242は、
図8の所定範囲52である90~100℃の範囲に基づいて
図11を参照し、分析項目81の数値82がこの範囲に入るデータ有無を判断し(S804)、データがない場合は、傾向抽出処理結果として傾向なしを出力する(S808)。
【0059】
一方、所定範囲内にデータが存在した場合は、比較項目決定部243は、
図9に示す比較項目データDB223と、
図11に示す分析データDB226の分析項目81とから、比較項目61を決定する(S805)。ここでは、取得日時80が2019年5月13日13:00、分析項目81が機器内温度、数値82が93℃、比較項目61が周囲温度に決定する。
【0060】
比較データ決定部244は、分析項目の値に基づいて比較データDB225を参照し、比較データを決定する(S806)。比較データの決定方法の一例について説明する。比較データDB226に格納されているデータのうち、機器内温度が分析項目の数値、ここでは93℃のデータを比較データとして決定する(S806)。ここでは、取得日時70が2015年8月15日、比較項目71が機器内温度、数値72が93℃、比較項目73が周囲温度、数値74が33度が比較データとして決定する。
【0061】
データ比較部213は、S805により決定した分析データと、S805で決定した比較項目やS806で決定した比較データとを比較し(S807)、傾向抽出処理結果として出力する(S808)。
【0062】
ここでは、分析データとして、取得日時80が2019年5月13日13:00、分析項目81が機器内温度、数値82が93℃、比較項目83が周囲温度、数値84が21度、比較データとして、取得日時70が2015年8月15日、比較項目71が機器内温度、数値72が93℃、比較項目73が周囲温度、数値74が33度となるので、機器内温度と周囲温度の差を比較すると、分析データは72℃、比較データは60℃となり、上昇傾向にあることが結果として出力される。
【0063】
実施例1によれば、機器毎の状態に合わせてメンテナンスを行う状態基準保全のため、監視対象の機器の状態を診断し、可視化する監視装置および監視システムを提供することができる。
【実施例2】
【0064】
図15は、実施例2の監視システムを示す構成図である。実施例2の監視システムは、複数のサービス拠点100-1~100-Mと、複数のサービス拠点を監視する監視センタ110とをネットワーク120により接続した構成である。また、サービス拠点100-1~100-Mのそれぞれは、機器10-1~10-Nなどの複数の機器を有する。
【0065】
監視センタ110は、機器から取得した稼働状態の情報や警報や故障の情報を管理する分析サーバ20を有する。実施例1と同じ内容については、説明は省略する。実施例1と異なる点は、サービス拠点100-1などの各サービス拠点と、分析サーバ20とは、ネットワーク120を介して接続されることである。このため、分析サーバ20は、異なる地域の複数の機器を分析対象の機器との比較に用いることができる。
【0066】
例えば、実施例2の分析サーバ20は、監視対象機器と同一機種の機器について取得した分析項目データと同一種別のデータを用いることができる。すなわち、「型式ModelAの機器内温度」が分析項目データであるならば、他のサービス拠点などに設置された「型式ModelA」である機器の「機器内温度」を比較項目データとして用いるのである。
【0067】
また、実施例2の分析サーバ20は、監視対象機器と同一地域の機器について取得した分析項目データと同一種別のデータを用いることもできる。すなわち、「型式ModelAの機器内温度」が分析項目データであるならば、近傍(例えば同一地区)に設置された機器の「機器内温度」を比較項目データとして用いるのである。
【0068】
上述してきた本発明の実施の形態によれば、分析サーバ20が、監視対象機器を特定する機器特定情報と分析目的とを受付けるデータ入力部211と、入力された機器特定情報と分析目的に基づいて、特定された監視対象機器の稼働状態を示す稼働データのうち分析目的に対応する分析項目データが所定の範囲の値である場合に、あらかじめ定められた比較項目データと比較した分析項目データの傾向を出力するデータ出力部214とを備えるよう構成した。かかる構成により、機器毎の状態に合わせてメンテナンスを行う状態基準保全のため、監視対象の機器の状態を診断し、可視化することができる。
【0069】
ここで、所定の範囲とは、対応する項目データについての異常検知の条件を満たさない範囲に含まれる。すなわち、異常検知の条件を満たしていない監視対象機器について、機器の状態がどのような傾向にあるかを診断し、出力することができる。このため、機器の状態を早期に報告することが可能である。
【0070】
また、分析サーバ20は、出力部からの出力を加工し、監視対象機器の稼働状態を報告するコメントデータを生成し、該コメントデータを含むレポートとして可視化するデータ可視化部215を有する。このデータ可視化部215は、レポートの対象期間に異常検知の条件を満たした実績があるならば該異常検知の実績を報告するコメントデータを生成し、レポートの対象期間に異常検知の条件を満たした実績がない場合に分析項目データの傾向を報告するコメントデータを生成する。したがって、重要度の高い情報から順に、コメントが適正なボリュームで収まるように情報を取捨選択し、レポートを自動生成することができる。
【0071】
また、分析サーバ20は、分析項目データとは異なる種別のデータであって、かつ分析項目データと相関性を有するデータを比較項目データとして用いることができる。例えば、分析項目データが前記監視対象機器の機器内温度である場合に、比較項目データとして周囲の気温を用いる。
【0072】
また、分析サーバ20は、分析項目データと同一の種別のデータであって、かつ分析項目データとは異なる環境下で取得されたデータを比較項目データとして用いることができる。例えば、監視対象機器について過去に取得した分析項目データと同一種別のデータを比較項目データとして使用可能である。また、監視対象機器と同一地域の機器について取得した分析項目データと同一種別のデータを比較項目データとして使用可能である。
【0073】
また、分析サーバ20は、異なる比較項目データを組み合わせて分析項目データと比較することができる。したがって、例えば、
「対象機器の機器内温度と周囲温度との差が、設置当時の機器内温度と周囲温度との差よりも大きい傾向にある」
「対象機器の機器内圧力は、同時期に導入された同一機種の平均よりも高い傾向にある」
「対象機器のモータ電流が低くなる傾向がみられたが、同一地域の他の機器も同様の傾向を示している」
などの高度なコメントを自動的に生成可能である。
【0074】
なお、上記の例では、機器は、空気圧縮機を例に説明したが、変圧器などの別の産業用機器であってもよい。
【0075】
また、本発明を実施するための形態は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えてもよい。
【0076】
また、前述したプログラムによる処理などは、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどにより、ハードウェアで実現してもよく、ハードウェアによる処理とプログラムによる処理を組み合わせてもよい。プログラムやテーブルなどの情報は、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVDなどの記録媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は説明上必要なものを示しており、示した以外の制御線や情報線があってもよい。
【符号の説明】
【0077】
20:分析サーバ、110:監視センタ、211:データ入力部、212:データ決定部、213:データ比較部、214:データ出力部、215:データ可視化部、221:分析項目DB、222:所定範囲DB、223:比較項目DB、224:稼働データ情報DB、227:警報故障情報DB、228:機器特定情報DB