(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】皮膚の保護に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230424BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 9/02 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 9/04 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 19/04 20060101ALI20230424BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230424BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230424BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20230424BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/10
A61Q15/00
A61Q9/02
A61Q9/04
A61Q1/04
A61Q1/02
A61Q1/10
A61Q19/04
A61Q17/04
C11D3/20
C11D1/68
C11D3/33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114922
(22)【出願日】2020-07-02
(62)【分割の表示】P 2018060110の分割
【原出願日】2013-09-16
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512218946
【氏名又は名称】ティーデルタエス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502006782
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】クラーク キーラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーチ リチャード ルイス
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-256157(JP,A)
【文献】特開平07-076513(JP,A)
【文献】Fitoterapia,2010年09月16日,Vol.82,No.2,PP.93-101,<file://kvrdf99004v.ring.meti.go.jp/JShare$/KRDA1672/Downloads/document.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D-ベータヒドロキシブチレートブタンジオールモノエステル
及びヒドロキシブチレートの塩
から選択されるケトン体を含有する、皮膚の保護、皮膚の劣化の軽減、または皮膚の特性の維持もしくは改善における局所使用のための組成物。
【請求項2】
前記ケトン体が、D-ベータヒドロキシブチレートブタンジオールモノエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
局所塗布のための賦形剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
リーブオンタイプのローション、リーブオンタイプのクリーム、シャワージェル、固形化粧石鹸、制汗剤、消臭剤、歯科製品、シェービングクリーム、脱毛剤、口紅、ファンデーション、マスカラ、サンレスタンナー、または日焼け止めローションの形態である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の保護に使用するための化合物、皮膚への損傷のリスクを防ぐもしくは低減させるための方法、および皮膚を保護する、老化に起因するもしくは放射線の悪影響に起因する皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善する、局所使用のための組成物に関する。特に、本発明は、かかる使用のためのケトンモノエステルおよびケトンエステルを含む局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線は、生体組織および細胞、例えば皮膚に、損傷を与えることが知られている。放射線、特に紫外線(UV)の悪影響、または老化に起因する劣化を軽減するための皮膚の治療は、よく知られている。
劣化の速度を低下させること、または皮膚の特性、例えば、皮膚の外観および感触を維持もしくは改善することに、多大な研究努力が傾注されてきており、皮膚を治療するための局所用組成物は、古くから知られてきた。乾燥肌もまた、多くの人々にとっての問題である。スキンクリームおよびローション、シャンプー、コンディショナー、固形化粧石鹸、シャワージェル、および制汗剤、および消臭剤などのパーソナルケア製品は、乾燥肌に対処するための少なくとも1種の材料とともに、典型的に通常処方されている。痒み、かさつき、および見た目の悪い皮膚の外観などの症状は全て、ある程度寛解できる。幅広い範囲の製品が、これらの問題に対処するために開発されてきており、製品は、自然な水分の喪失を阻止する役割を果たすペトロラタムまたはシリコーン油などの密封物を含む。密封物は、表皮と環境の間にバリアを形成する。角質溶解剤もまた、皮膚剥離の速度を上げるために使用されてきた。アルファヒドロキシ酸は、剥離を達成するための最も一般的な薬剤である。さらなるアプローチは、湿潤剤の局所塗布にあり、水酸化されたモノマーまたはポリマーの有機物質が、この目的のために典型的に使用される。グリセリン(グリセロール)は、この使用のためによく知られている。従来の局所塗布は、第一に皮膚の死んだ表層を典型的に扱い、使用者による塗布という利点があり、皮膚の状態または老化の影響を寛解させるという前向きな経験を、使用者に提供し得る。
【0003】
皮膚の外観および質感における改善を実現するために、摂取可能な成分を使用して皮膚を治療することもまた、知られている。これらの成分は、皮膚の生きている内部に到達することによって作用する。皮膚を治療するための摂取可能な成分の例としては、食用魚油ならびに摂取するとUVR誘発性紅斑から保護することが知られている、リコペンおよびβ-カロテンなどのカロテノイドが挙げられる。ビタミンEおよびCもまた、一緒に経口摂取される場合、UVR誘発性紅斑から保護することが示された。摂取可能物による治療は、医学的効果をもたらすと認められ得るが、局所用組成物と比較して、改善の即時的感覚を使用者にもたらさないこともある。
【0004】
水和作用、老化防止効果、皮膚の外観の改善、乾燥の軽減、日焼けなどの治療、ならびに医学的状態、例えば、湿疹および乾癬またはその他の上述の問題の治療の提供の1つまたは複数を含む、皮膚へ有益な効果をもたらすことができる組成物が、依然として必要とされている。
ケトン体およびケトン体エステルは、例えばWO2004/105742に開示されている通り、患者の血漿内で循環する遊離脂肪酸のレベルを低減させることが知られており、ケトン体の摂取は、種々の臨床的利点につながり得る。ケトン体は、認知能力の向上、心血管病態、糖尿病の治療、およびミトコンドリア機能不全障害の治療、ならびに筋肉疲労および機能障害の治療を含む、広範な医学的状態を治療することが知られており、ケトン体は、食品、栄養補助食品もしくは補助食品として、または機能性食品として、例えば再水和作用において有利な効果をもたらすこともまた知られている。
WO2004/108740は、ケトン体の血中濃度を上昇させるのに有効である、ヒドロキシブチレートのオリゴマーを重視し、(R)-3-ヒドロキシブチレート誘導体を含有する、幅広い範囲の化合物および組成物を開示している。ケトン体は、脂肪酸レベルが体内で上昇した場合に生成され、エネルギーのために身体によって代謝される。既知の適用において、ケトン体は、患者に経腸的にまたは非経口的に投与されてきた。
【0005】
R-3-ヒドロキシブチレートを含有する幅広い範囲のケトン体が、オリゴマー、オリゴマーのエステル、塩、その酸形態、一価、二価、または三価アルコールとその酸のエステルを含み、知られている。しかし、ケトン体は今日まで、皮膚への損傷のリスクを防ぐもしくは低減させる、皮膚を保護する、老化に起因するもしくは放射線の悪影響に起因する皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善するために、局所的に使用されてこなかった。
【発明の概要】
【0006】
皮膚線維芽細胞は、結合組織を発生させ、皮膚を外傷から回復をさせることに関与している。培養下のヒト皮膚線維芽細胞(HDF)は、好気性代謝と嫌気性代謝の両方の燃料となるグルコースに第一に依存する。本発明者らは今や、特定のケトン体が、局所的に塗布される場合、皮膚に有益な効果をもたらし、皮膚線維芽細胞を、放射線、特にUV放射線から保護することを見い出した。ケトンは、歯ぐきおよび軟組織への局所塗布に対してもまた有益な効果をもたらす。使用者は、使用者自身がケトンエステルを局所的に塗布する方法の結果である改善された特性に関連する、肯定的な心理的効果もまた経験し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】10日間のインキュベーション後の生細胞および死細胞
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、第一の態様において、皮膚の保護、皮膚の劣化の軽減、または皮膚の特性の維持もしくは改善における局所使用のための(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体を提供する。
本発明は、第二の態様において、ケトン体を皮膚に局所的に塗布することを含む、皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善するための方法に使用するための(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含む前記ケトン体を提供する。
さらなる態様において、本発明は、皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善する方法であって、(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体を皮膚に局所的に塗布することを含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらなる態様において、皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善するための局所剤としての(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体の使用もまた提供する。
皮膚は、老化を含む多くの理由によってまたは放射線の悪影響に起因して、劣化し得る。本発明のケトンエステルは、かかる劣化の速度を低下させ得る。(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトンエステルは、放射線、例えばUV-B放射線から、ヒト皮膚線維芽細胞を保護するのに特に有益である。ケトン体は、放射線への暴露の前、間、または後、いつでも皮膚に塗布してよい。
維持または改善され得る皮膚の特性は、水和作用、老化防止効果、皮膚の外観の改善、乾燥の軽減、日焼けなどの治療、ならびに医学的状態、例えば、湿疹および乾癬の治療の提供の1つまたは複数を含む。
さらなる態様において、本発明は、(R)-3-ヒドロキシブチレート部分および局所塗布のための賦形剤を含む、局所用組成物を提供する。組成物は、皮膚の保護、老化に起因するもしくは放射線の悪影響に起因する皮膚の劣化の軽減、および皮膚の特性の維持もしくは改善の1つまたは複数における局所使用のために適切である。
好ましくは、賦形剤は、化粧品として許容される担体を含む。
本発明は、皮膚の特性を改善するための方法であって、本発明による組成物を皮膚に局所的に塗布することを含む、方法もまた提供する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、皮膚に組成物を塗布することを含む、皮膚の治療の方法を提供し、組成物は、(R)-3-ヒドロキシブチレート部分および(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を皮膚に伸ばすまたは皮膚に吸収させる助けとなる、局所塗布のための賦形剤を含む。
本発明によるケトン体および組成物が、局所塗布で皮膚の特性に有益な効果をもたらし、望ましい使用者の経験を与えることは有利である。適切には、組成物は容易に皮膚上に伸ばすことができかつ皮膚中に吸収可能であるが、好ましくは皮膚を通過しない。
【0011】
本発明のケトン体および組成物はまた、保護するために歯ぐきまたは軟組織に、有益に、局所的に塗布してもよい。
いずれの理論によっても縛られることを望まないが、組成物中のケトン体は代謝されて、細胞へのエネルギーおよび栄養分のためにATPを生成すると考えられる。局所的に塗布される従来の皮膚治療は、脂肪などを使用して、物理的効果をもたらし、つまり、水の蒸発を防ぎ、その結果、真皮中に水分を保持する。さらに、皮膚の特性を改善するための従来の局所用組成物は、組成物のバルク特性を活用する物理的方法において、例えば、油を塗布することまたは水分を保持することによって、作用すると考えられる。しかし、本発明者は、細胞レベルで作用するケトンエステルを使用することおよびケトンエステルを局所的に塗布することによって、望ましい使用者の経験および皮膚の特性における改善の組合せを実現することを見い出した。
【0012】
本発明はまた、ヒトまたはヒト以外の哺乳類(好ましくは、ヒト)の皮膚における、老化防止効果を達成する方法であって、前記老化防止効果を達成するのに有効な量の本発明によるケトン体または組成物をヒトまたはヒト以外の哺乳類の皮膚に塗布することを含む、方法を提供する。
本明細書において使用されている通り、用語「ケトン」、「ケトン体」、または「ケトン体(複数)」は、ケトンまたはケトン体前駆物質である化合物または化学種、つまり、ケトンへの前駆物質であり、転換もしくは代謝されてケトンになり得る化合物または化学種を意味する。好ましい実施形態において、ケトン体は、ケトン体エステルまたはケトン体の部分エステルを含む。
【0013】
(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含有する、任意のケトン体またはケトン体エステルが、本発明において使用されてもよい。好ましくは、ケトン体は、ケトンモノエステルを含む。(R)-3-ヒドロキシブチレート部分をその場で提供する適切なケトン体または化合物の例としては、ヒドロキシブチレートのオリゴマー、トリオリド、アセトアセテートおよびそのエステル、ならびに皮膚細胞において代謝可能であるベータヒドロキシブチレートの任意の前駆物質が挙げられる。
本発明者らは、驚いたことに、R-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレート、ケトンモノエステルが、ヒドロキシブチレートのその他の形態、特にオリゴマーより有効に代謝されることを見い出した。
本発明のさらなる態様によれば、皮膚の保護、皮膚の劣化の軽減、または皮膚の特性の維持もしくは改善における局所使用のためのR-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを含むケトン体が、提供される。
好ましくは、ケトン体は、鏡像異性的に富化されたR-1,3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを含む。R-1,3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートモノエステルは、その他のケトン体またはケトン体前駆物質、例えばアセトアセテートと組み合わせて使用されてもよい。R-1,3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートモノエステルは、任意のその他のかかるケトン体よりも少ない量で存在してもよいが、好ましくは、任意のかかるその他のケトン体より多い量で存在する。特に好ましい実施形態において、R-1,3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートモノエステルは、本発明の組成物中に存在する唯一のケトン体またはケトン体前駆物質である。
【0014】
組成物中のケトン体またはケトン体エステルのレベルは、組成物の少なくとも1質量%のケトン体、より好ましくは、少なくとも10質量%および95質量%までを、適切に含む。組成物の15~30質量%のレベルが適切であり得る一方で、組成物の30~95質量%、特に50~95質量%を含む組成物が、治療される皮膚状態に応じて好ましいことがある。
本発明の組成物は、中鎖トリグリセリド(MCT)およびその関連する脂肪酸をさらに含んでもよい。MCTは、5~12の間の炭素原子の鎖長を有する脂肪酸を含む。MCTが豊富な食事は、血中ケトンレベルを上昇させることが知られている。適切な中鎖トリグリセリドは、以下の式、CH2R1-CH2R2-CH2R3で表され、式中、R1、R2、およびR3は、炭素原子5~12個を有する脂肪酸である。好ましくは、R1、R2、およびR3が、6個の炭素骨格を含有する脂肪酸である(tri-C6:0)、MCTが使用される。
【0015】
MCTが使用される場合、本発明の組成物は、i)ケトン体、好ましくはケトンモノエステル、より好ましくは、D-β-ヒドロキシブチレートモノエステル、ii)MCT、好ましくはtri-C6:0MCT、およびiii)化粧品として許容される担体を含むことが適切である。
本発明の組成物は、L-カルニチンまたはL-カルニチンの誘導体もまた含んでもよい。L-カルニチンの誘導体の例としては、デカノイルカルニチン(decanoylcamitine)、ヘキサノイルカルニチン、カプロイルカルニチン、ラウロイルカルニチン、オクタノイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、アセチル-L-カルニチン、O-アセチル-L-カルニチン、およびパルミトイル-L-カルニチンが挙げられる。カルニチンが使用される場合、本発明の組成物は、i)ケトン体、好ましくはケトンモノエステル、より好ましくはD-β-ヒドロキシブチレートモノエステルおよびii)L-カルニチンまたはL-カルニチンの誘導体を含むことが適切である。
【0016】
MCTおよびL-カルニチンまたはその誘導体が使用される場合、MCTは、カルニチンと乳化させることが適切である。好ましくは、乳化させたMCT10~500gを、カルニチン10~2000mgと組み合わせる、例えば、モノ-およびジ-グリセリド50gと乳化させたMCT(95%triC8:0)50gを、L-カルニチン500mgと組み合わせる。
【0017】
MCTは、ケトン体より多い量で存在してもよいが、好ましくは、ケトン体のレベルは、MCTのレベルより大きい。
組成物は、固体形態または液体形態、例えば、懸濁液、分散系、およびエマルション、または局所塗布のために知られているその他の形態、例えばゲルであってもよい。組成物は、固体である場合、例えば水での希釈によって、使用に先立って局所塗布可能な形態に適切に作られて、ペースト、ローションなどを形成する。組成物の好ましい形態としては、ローション、クリーム、ロールオン配合物、スティック、ムース、エアゾールおよび非エアゾールスプレー、ならびに布(例えば、不織布)で塗布する配合物が挙げられる。
本発明の組成物は、老化防止効果、しわの減少、皮膚の外観のその他の側面、洗浄、防臭、もしくは美観全般の1つまたは複数を含む、皮膚の特性を改善するために人体に塗布される任意の物質であってもよい。適切な組成物の非限定的例としては、リーブオンタイプの(leave-on)スキンローションおよびクリーム、シャワージェル、固形化粧石鹸、制汗剤、消臭剤、歯科製品、シェービングクリーム、脱毛剤、口紅、ファンデーション、マスカラ、サンレスタンナー、日焼け止めローションが挙げられる。
【0018】
化粧品として許容される担体は、単独でまたはその他の担体と組み合わせて使用される、任意の既知のかかる担体であってもよい。担体の量は、組成物の1~99.9質量%、好ましくは70~95質量%、最適には80~90質量%の範囲であってもよい。有用な担体の中には、水、皮膚軟化剤、脂肪酸、脂肪族アルコール、増粘剤、およびそれらの組合せがある。担体は、水性、無水性、またはエマルションであってもよい。好ましくは、組成物は、水性、特にW/O型またはO/W型または三相のW/O/W型の種類の水と油とのエマルションである。水は、存在する場合、組成物の5~95質量%、好ましくは20~70質量%、最適には35~60質量%の範囲の量であってもよい。
【0019】
皮膚軟化剤材料は、化粧品として許容される担体として、役割を果たし得る。皮膚軟化剤材料は、シリコーン油、天然または合成のエステル、および炭化水素の形態であってもよい。皮膚軟化剤の量は、組成物の0.1~95質量%、好ましくは1~50質量%の間の範囲の任意の値であってもよい。
シリコーン油は、揮発性および不揮発性の種類に分類し得る。本明細書において使用されている用語「揮発性」は、周囲温度において測定可能な蒸気圧を有する材料を意味する。揮発性シリコーン油は、ケイ素原子3~9個、好ましくは4~5個を含有する環状(シクロメチコン)または直鎖状ポリジメチルシロキサンから、好ましくは選ばれる。
【0020】
皮膚軟化剤材料として有用な不揮発性シリコーン油としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、およびポリエーテルシロキサンコポリマーが挙げられる。本明細書において有用な本質的に不揮発性のポリアルキルシロキサンとしては、例えば、25℃において粘度5x10-6~0.1m2/秒を有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。本組成物において有用な好ましい不揮発性皮膚軟化剤の中に、25℃において粘度1x10-5~4x10-4m2/秒を有するポリジメチルシロキサンがある。
不揮発性シリコーンの別のクラスは、乳化性および非乳化性シリコーンエラストマーである。この部類の代表例は、Dow Corning9040、General Electric SFE839、および信越化学工業KSG-18として入手可能なジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーである。Silwax WS-L(ラウリル酸ジメチコンコポリオール)などのシリコーンワックスもまた有用であり得る。
【0021】
適切なエステル皮膚軟化剤としては、以下が挙げられる。
a)炭素原子10~24個を有する飽和脂肪酸のアルキルエステル。その例としては、ネオペンタン酸ベヘニル、イソノナン酸イソノニル(isononyl isonanonoate)、ミリスチン酸イソプロピル、およびステアリン酸オクチルが挙げられる。
b)エーテル-エステル、例えばエトキシ化飽和脂肪族アルコールの脂肪酸エステル。
c)多価アルコールエステル、例えば、エチレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200~6000)モノ-およびジ-脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリプロピレングリコール2000、モノステアリン酸エトキシ化プロピレングリコール、グリセリルモノ-およびジ-脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ-脂肪酸エステル、モノステアリン酸エトキシ化グリセリル、モノステアリン酸1,3-ブチレングリコール、ジステアリン酸1,3-ブチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、十分な例である。特に有用であるのは、C1-C30アルコールのペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、およびネオペンチルグリコールエステルである。
d)ワックスエステル、例えば、ミツロウ、鯨ロウ、およびトリベヘニンワックス。
e)脂肪酸の糖エステル、例えば、ポリベヘン酸スクロースおよびポリ綿実脂肪酸スクロース。
【0022】
天然エステル皮膚軟化剤は、モノ-、ジ-、およびトリ-グリセリドを主にベースとしている。代表的なグリセリドとしては、ヒマワリ種子油、綿実油、ボラージ油、ボラージ種子油、プリムローズ油(primrose oil)、ヒマシ油および水添ヒマシ油、米糠油、大豆油、オリーブ油、ベニバナ油、シアバター、ホホバ油、ならびにそれらの組合せが挙げられる。動物由来の皮膚軟化剤は、ラノリン油およびラノリン誘導体によって代表される。天然エステルの量は、組成物の0.1~20質量%の範囲であってもよい。
【0023】
適切な化粧品として許容される担体である炭化水素としては、ペトロラタム、鉱油、C11-C13イソパラフィン、ポリブテン、および特に、Presperse Inc.からPermethyl101Aとして市販されているイソヘキサデカンが挙げられる。
炭素原子10~30個を有する脂肪酸もまた、化粧品として許容される担体として適切であり得る。この部類の例としては、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸が挙げられる。
炭素原子10~30個を有する脂肪族アルコールもまた、化粧品として許容される担体として適切であり得る。この部類の例としては、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、およびセチルアルコールが挙げられる。
【0024】
増粘剤は、本発明による組成物の化粧品として許容される担体の一部として使用できる。典型的な増粘剤としては、架橋アクリレート(例えばCarbopol982(登録商標))、疎水変性されたアクリレート(例えばCarbopol1382(登録商標))、ポリアクリルアミド(例えばSepigel305(登録商標))、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸/塩ポリマーおよびコポリマー(例えば、Aristoflex HMB(登録商標)およびAVC(登録商標))、セルロース誘導体、ならびに天然ガムが挙げられる。適切なセルロース誘導体としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメトセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースが挙げられる。本発明のために適切である天然ガムとしては、グアー、キサンタン、スクレロチウム、カラギーナン、ペクチン、およびこれらのガムの組合せが挙げられる。無機物、特に、ベントナイトおよびヘクトライトなどの粘土、ヒュームドシリカ、タルク、炭酸カルシウム、ならびにケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))などのケイ酸塩もまた、増粘剤として使用してもよい。増粘剤の量は、組成物の0.0001~10質量%、通常は0.001~1質量%、最適には0.01~0.5質量%の範囲であってもよい。
【0025】
補助湿潤剤が、本発明において使用されてもよい。これらは、一般に、多価アルコール系の材料である。典型的な多価アルコールとしては、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシ化グリセロール、プロポキシ化グリセロール、およびそれらの混合物が挙げられる。補助湿潤剤の量は、組成物の0.5~50質量%、好ましくは1~15質量%の間の範囲の任意の値であってもよい。
界面活性剤もまた、本発明の組成物中に存在してもよい。界面活性剤が存在する場合の合計濃度は、組成物の0.1~90質量%、好ましくは1~40質量%、最適には1~20質量%の範囲であってよく、パーソナルケア製品の種類に大きく依存する。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、および両性活性物質からなる群から選択されてもよい。特に好ましい非イオン性界面活性剤は、疎水性物質1モル当たりエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド2~100モルと縮合しているC10-C20脂肪族アルコールまたは酸疎水性物質;アルキレンオキシド2~20モルと縮合しているC2-C10アルキルフェノール;エチレングリコールのモノ-およびジ-脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセリド;ソルビタン、モノ-およびジ-C8-C20脂肪酸;ならびにポリオキシエチレンソルビタン、さらにまたそれらの組合せを有するものである。アルキルポリグリコシドおよびサッカライド脂肪族アミド(例えば、メチルグルコンアミド)およびトリアルキルアミンオキシドもまた、適切な非イオン性界面活性剤である。
【0026】
好ましい陰イオン性界面活性剤としては、石鹸、アルキルエーテル硫酸塩およびスルホン酸塩、アルキル硫酸塩およびスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルおよびジアルキルスルホコハク酸塩、C8-C20アシルイセチオン酸塩、C6-C20アルキルエーテルリン酸塩、C8-C20サルコシン酸塩、C8-C20アシル乳酸塩、スルホ酢酸塩、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
有用な両性界面活性剤としては、ココアミドプロピルベタイン、C12-C20トリアルキルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、およびラウロジアンホ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0027】
日焼け止め剤もまた、本発明の組成物中に含まれてもよい。特に好ましいのは、p-メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(Parsol MCX(登録商標))、アボベンゾン(avobenzene)(Parsol1789(登録商標))、およびベンゾフェノン-3(オキシベンゾンとしてもまた知られている)などの材料である。超微細な二酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機の日焼け止め活性物質が、使用されてもよい。日焼け止め剤の量は、存在する場合、一般に、組成物の0.1~30質量%、好ましくは2~20質量%、最適には4~10質量%の範囲であってもよい。
【0028】
本発明の制汗剤および消臭剤組成物は、収斂活性物質を、通常含有することになる。例としては、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドレックス(chlorhydrex)、アルミニウム-ジルコニウムクロロヒドレックスグリシン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、ジルコニウムおよびアルミニウムクロロヒドログリシネート、ジルコニウムヒドロキシクロリド、乳酸ジルコニウムおよびアルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、ならびにそれらの組合せが挙げられる。収斂剤の量は、組成物の0.5~50質量%の範囲の任意の値であってもよい。
【0029】
保存剤は、潜在的に有害な微生物の増殖から保護するために、本発明のパーソナルケア組成物中に、望ましくは組み込まれることができる。特に好ましい保存剤は、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ジメチロールジメチルヒダントイン、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル(iodopropynbutylcarbamate)、およびベンジルアルコールである。保存剤は、組成物の用途および保存剤とその他の成分の間の不適合の可能性に重きを置いて、選択されるべきである。保存剤は、組成物の0.0001質量%~2質量%の範囲の量で、好ましくは使用される。
本発明の組成物は、ビタミンを含んでもよい。例となるビタミンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB2、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、およびビオチンである。ビタミンの誘導体もまた、使用されてもよい。例えば、ビタミンC誘導体としては、テトライソパルミチン酸アスコルビル、リン酸マグネシウムアスコルビル、およびアスコルビルグリコシドが挙げられる。ビタミンEの誘導体としては、酢酸トコフェリル、パルミチン酸トコフェリル、およびリノール酸トコフェリルが挙げられる。DL-パンテノール(DL-lianthenol)および誘導体もまた、使用されてもよい。本発明による組成物中に存在する場合、ビタミンの合計量は、組成物の0.001~10質量%、好ましくは0.01質量%~1質量%、最適には0.1~0.5質量%の範囲であってもよい。
【0030】
酵素は、望まれる通り存在してもよく、例えば、アミラーゼ、オキシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、およびそれらの組合せである。特に好ましいのは、Brooks Company、USAからBiocell SODとして市販されている、スーパーオキシドジスムターゼである。
美白化合物が、本発明の組成物中に含まれてもよい。例となる物質は、胎盤抽出物、乳酸、ナイアシンアミド、アルブチン、コウジ酸、フェルラ酸、レゾルシノールおよび4-置換レゾルシノールを含む誘導体、ならびにそれらの組合せである。これらの薬剤の量は、組成物の0.1~10質量%、好ましくは0.5~2質量%の範囲であってもよい。
【0031】
種々のハーブ抽出物は、本発明の組成物中に含まれてもよい。抽出物は、水溶性または水不溶性のいずれであってもよく、それぞれ親水性または疎水性である溶媒中で保持されている。水およびエタノールは、好ましい抽出溶媒である。例となる抽出物としては、緑茶、カモミール、甘草、アロエベラ、ブドウ種子、温州ミカン(citrus unshui)、ヤナギ樹皮、セージ、タイム、およびローズマリーからのものが挙げられる。
【0032】
さらなる担体成分、例えば、リポ酸、レチノキシトリメチルシラン(Silcare IM-75の商標で、Clariant Corp.から入手可能)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、およびそれらの組合せが含まれてもよい。セラミド(セラミド1、セラミド3、セラミド3B、およびセラミド6を含む)および擬似セラミドもまた、有用であり得る。これらの材料の量は、組成物の0.000001~10質量%、好ましくは0.0001~1質量%の範囲であってもよい。
着色剤、乳白剤、および研磨剤もまた、本発明の組成物中に含まれてもよい。これらの物質のそれぞれは、組成物の0.05~5質量%、好ましくは0.1~3質量%の間の範囲であってもよい。
本発明の組成物は、処理されたワイプの形態などで皮膚への塗布のために、不溶性基材中が組み込まれてもよいこともある。
【0033】
本発明の別の態様は、本発明のケトン体または組成物が供給される包装に添付した、または別の方法で付随させた、説明書の包含である。説明書は、皮膚、毛髪、または口腔粘膜上でのケトン体または組成物の局所使用を、消費者に指示する。包装自体は、説明書と一緒に、通常印刷されることになるが、時として、包装内の別の書面の挿入物が、説明書の役割を果たすことがある。典型的な言葉遣いは、「脇の下に薄く塗る」、「手に定期的に塗る」、「皮膚を洗浄する」、および「手のひらに、少量を出す」などの語句を含む。
本発明のケトン体および組成物は、皮膚の特性を改善するために、特に老化防止効果をもたらすために適切である。用語「老化防止」によって、本発明者らは、皮膚にしわがより少なく見え得る(つまり、しわの深さの低減を含む、しわおよび/または小じわに、しわ防止効果がある)ことを意味し、組成物が、乾燥の軽減、堅さの増加、弾力性の増加、滑らかさの増加、皮膚の色艶の向上、シミ、吹き出物および傷(ニキビを含む)の減少、皮膚の色艶の向上、皮膚の過敏性の軽減、ならびに皮膚の全般的な健康の向上から選択される、皮膚のための1つまたは複数のさらなる利点をもたらし得ることを意味する。
本発明のケトン体および組成物は、皮膚細胞の栄養を改善することによってまたは例えば、皮膚におけるコラーゲン合成を増加させることによって、老化防止効果を示し得るし、本発明の組成物は、コラーゲン合成を増加させるために使用されてもよい(老化防止効果の一部としてまたは老化防止効果とは別に)。好ましくは、コラーゲン合成を、(例えば、好ましくは14週間超で合成されたコラーゲンの質量に対する判定として)少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも20質量%、例えば少なくとも25質量%増加させる。
【0034】
皮膚は、身体全体、好ましくは、顔、首、および/または手の皮膚を含んでもよい。皮膚は、毛髪(老化の軽減を含む)および頭皮の痒みまたは刺激に有益なので、頭皮もまた含んでもよい。
以下の例は、本発明の例となる実施形態である。本明細書および添付の特許請求の範囲に述べられている全ての部、パーセンテージ、および比率は、別途説明のない限り、質量による。
皮膚の特徴の測定の種々の方法が知られていて、測定または皮膚の特性における見た目の改善によって判定する手段を提供する。かかる方法の例としては、以下が挙げられる。
【0035】
皮膚の水和作用の測定
角質層の水和状態を判定するための種々の方法が、Fluhr et al., Skin Res Technol 1999; 5:161-170にまとめられている。簡潔に言えば、Corneometer(Courage & Khazaka)は、表皮の静電容量の検出を通じて、皮膚の水和作用を測定する。プローブは、互いに近接する2枚のフィンガー型の金属板からできていて、測定の深さはおよそ30mmである。装置は、角質層の最も外側の皮膚層の湿潤レベルを判定する。Corneometer(登録商標)の作動原理は、コンデンサーの形態に設計されている検出器の静電容量の変化に基づく。測定ヘッドの表面は、皮膚と接触させると、皮膚の湿潤レベルに応じて静電容量を変化させる。Corneometerによって測定された値の増加は、皮膚の水和作用の改善を表す。
【0036】
経表皮水分喪失(TEWL)の測定
TEWLを測定する方法の分析は、Wilson & Maibach, (1989) Transepidermal water loss, A review, In: Cutaneous Investigation in Health and Disease, Noninvasive Methods and Instrumentation (Leveque, J. L., ed.), pp. 113-130, Dekker, New York, NYにより実施されている。皮膚バリアは、皮膚の水分バランスにおける調節器として作用する。皮膚バリアが損傷を受けた場合、水分交換調節システムは、不安定になる。このことは、水が、より容易に外部環境へ移動して、経表皮水分喪失を増加させることを意味する。皮膚バリアの効果は、年齢とともに低下する。しかし、皮膚バリアの状態が改善した場合、水分交換調節機構が、そのバランスを回復するので、水分喪失は減少する。経表皮水分喪失測定は、Servomedの「Evaporimeter」EP-3(登録商標)によって実施できる。2つのキャプター(captor)から作られているプローブを、水蒸気の流れが、横断する。2つのキャプターの間で、部分圧力の相違を測定する。この値は、揮発性物質(この場合、水)の蒸発速度に相当する。TEWLにおける減少は、皮膚バリア特性の改善を表す。
【0037】
皮膚の弾力性および堅さの測定
皮膚の弾力性および堅さの測定は、キュートメーター(cutometer)を用いて行われ、Escoffier et al, J Invest Dermatol, 93(3): 353-7に記載されている。測定は、真空の原理を使用して、皮膚の表面の規定された領域を吸い上げ、それを光学的に記録する装置を用いて行われる。記録された測定曲線の分析によって、皮膚の弾力性および可塑性の特徴を判定することができる。若い皮膚は、高度の弾力性を示し、徐々に形を失うだけであり、その一方で、吸引手順の終了後に原状を回復する。若く、健康で、しなやかで、十分に湿潤な皮膚は、老化し、乾燥した、粗い皮膚より、高い弾力性を有することになる。したがって、キュートメーターによって、弾性特徴を定量化できる一連の測定値が得られる。この技術は、測定プローブによる皮膚の吸引からなる。皮膚は、デバイス内で作り出される陰圧によって、プローブの開口部に吸い込まれる。皮膚がプローブ内へ貫入する深さを、非接触の光学測定システムによって測定する。このシステムは、光源および光受容器、ならびに伝送器から受容器へ光を投影する向かい合わせの2つのプリズムからなる。光強度は、皮膚の貫入の深さによって変化する。吸い上げられる皮膚の抵抗力は、皮膚の堅さの指標となり、元の位置へ復帰する能力は、皮膚の弾力性の指標となる。それぞれの測定の最後に、曲線が表示され、この曲線により、皮膚の機械的特性に対応して、いくつかの計算ができる。
【0038】
小じわ、しわ、および皮膚の滑らかさの分析
皮膚の粗さおよびしわは、Cook, J Soc Cosmet Chem, 1980; 31:339-359によって記載されている通り、レプリカおよび皮膚のプロフィロメトリーを使用して、評価することができる。Silfloなどのシリコーンゴム材料を調製し、試験領域に塗布する。いったん固まったら、皮膚からはがし、光学的プロフィロメトリーを使用して分析する。この測定方法によって、平行なストライプパターンが、皮膚表面上に投影され、カメラのCCDチップ上に描写される。皮膚表面上の微小な評価の相違が、平行な投影ストライプを偏向させ、これらの偏向が、皮膚プロフィールの定性的および定量的測定を構成するという事実により、3D測定効果が達成される。皮膚プロフィールは、CCDカメラによって記録され、デジタル化され、定性的評価のために測定および評価用コンピューターに転送される。
【実施例】
【0039】
(例1)
本発明の組成物
局所使用のための化粧用ローションの形態の本発明の組成物を、表Iに概説する。
【0040】
【表1】
本組成物は、相を連続的に加え、混合物を均質化することによって適切に調製される。
【0041】
(例2)
局所使用のためのスキンクリームの形態の本発明の組成物を、表IIに示す。
【0042】
【0043】
(例3)
局所使用のための本発明の化粧品組成物を、表IIIに示す。
【0044】
【0045】
(例4)
使い捨ての一回使用パーソナルケアおしぼり製品が、本発明にしたがって記載される。
ポリエステル70/レーヨン30の不織布おしぼりが、質量1.8グラムおよび寸法15cm×20cmで調製される。このおしぼり上に、下の表IVに示されているヒドロキシブチレートエステルを有する組成物を、含浸させる。
【0046】
【0047】
(例5)
D-ベータヒドロキシブチレートブタンジオールモノエステルを、この実験で適切に使用した。使用者の手を、D-ベータヒドロキシブチレートブタンジオールモノエステルの塗布に先立って、視診した。手は、乾燥した外観および感触を有した。D-ベータヒドロキシブチレートブタンジオールモノエステルを、手に塗布し、皮膚に完全にマッサージしてすり込んだ。手を30分後に再び視診し、乾燥の軽減、しわの減少、および感触の改善を含む、特性における見た目に顕著な改善を有すると観察された。
【0048】
(例6)
この例において、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖に対するR-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートの効果を評価した。TCS Cellworksからの播種能力2,500細胞/cm2を有する初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を、ヒト線維芽細胞(HF)基本培地(TCS Cellworks)または4mMのケトンエステルを含有する基本培地、デルタGのいずれかにおいて、24、48および72時間、96ウェルプレートで増殖させた。基本培地を、毎日取り換えた。
【0049】
細胞生存率を、プローブ、Calcein AMおよびEthD-IIIを使用して、生細胞および死細胞の2色の蛍光染色によって、生死アッセイキットを使用して判定した。10日間のインキュベーション後、R-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートの存在下で増殖させる場合、生細胞の数は、有意により多く(89%対75%、P<0.05)、死細胞の数は、より少なかった。結果を、
図1に示す。本発明によるケトンエステルが、ヒト皮膚線維芽細胞の死を減少させたと結論付けることができる。
【0050】
(例7)
ヒト皮膚線維芽細胞を、1ウェルにつき細胞50,000個で、6ウェルプレート中の基本培地で培養した。培地のみまたは4mMのR-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを加えた培地で、細胞をインキュベートした。80~90%のコンフルエンスに到達後、細胞をリン酸緩衝食塩水で洗浄し、培地を、ハンクスバッファー(CO
2のない大気条件下で細胞に使用するために設計された平衡塩類溶液)の薄い層と交換した。細胞レベルで、フルエンス率0.9mW/cm
2を有するポータブルUVB源(302nm)を使用して、線量25、50、100、150、300、および600mJ/cm
2で、細胞に照射した。無菌を維持するために、UV照射をドラフト内で実施した。照射後、細胞を洗浄し、培地のみまたは4mMのR-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを加えた培地でインキュベートした(照射前に行われた通り)。デルタGのない基本培地で最初に増殖させた、照射された細胞の別の群を、4mMのR-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを加えて、インキュベートした。照射の48時間後に、トリパンブルー排除法を使用して、生存細胞を数えることによって、細胞生存を判定した。結果を
図2に示す。
【0051】
R-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートが、放射線照射後、細胞に与えられる場合、150~600mJ/cm2の間の線量でUVB放射線から、ヒト皮膚線維芽細胞を保護することがわかった(p<0.05)。放射線暴露前および後の両方で、R-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを提供することは、さらなる利点をもたらさなかった。
【0052】
要約すると、R-3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートは、ヒト皮膚線維芽細胞生存率の上昇と皮膚線維芽細胞のUV損傷からの保護の両方を行った。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕放射線暴露によって引き起こされる損傷から動物の組織を保護する方法であって、少なくとも1種のケトンエステルを含む薬剤の治療有効量を前記組織と接触させ、それによって放射線損傷から前記組織を保護することを含む、方法。
〔2〕皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善する方法であって、(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体、または(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体および(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を皮膚に伸ばすもしくは皮膚に吸収させる助けとなる局所塗布のための賦形剤を含む組成物を、皮膚に局所的に塗布することを含む、方法。
〔3〕ヒトまたはヒト以外の哺乳類の皮膚における老化防止効果を達成する方法であって、前記老化防止効果を達成するのに有効な量の、(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体または(R)-3-ヒドロキシブチレート部分および局所塗布のための賦形剤を含む組成物を、前記ヒトまたはヒト以外の哺乳類の皮膚に塗布することを含む、方法。
〔4〕皮膚の保護、皮膚の劣化の軽減、または皮膚の特性の維持もしくは改善における局所使用のための(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体。
〔5〕ケトン体を皮膚に局所的に塗布することを含む、皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善するための方法に使用するための(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含む前記ケトン体。
〔6〕前記ケトン体が、ヒドロキシブチレートのオリゴマー、トリオリド、アセトアセテートおよびそのエステル、アセトアセチルオリゴマー、ならびに皮膚細胞において代謝可能であるベータヒドロキシブチレートの任意の前駆物質から選択される、前記〔4〕または前記〔5〕に記載のケトン体。
〔7〕3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを含む、前記〔4〕から〔6〕までのいずれか1項に記載のケトン体。
〔8〕鏡像異性的に富化されたR-1,3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチレートを含む、前記〔4〕から〔7〕までのいずれか1項に記載のケトン体。
〔9〕皮膚を保護する、皮膚の劣化を軽減する、または皮膚の特性を維持もしくは改善するための局所剤としての(R)-3-ヒドロキシブチレート部分を含むケトン体の使用。
〔10〕局所塗布のための(R)-3-ヒドロキシブチレート部分および賦形剤を含む、局所用組成物。
〔11〕前記賦形剤が、化粧品として許容される担体を含む、前記〔10〕に記載の局所用組成物。
〔12〕皮膚の保護、老化に起因するもしくは放射線の悪影響に起因する皮膚の劣化の軽減、および皮膚の特性の維持もしくは改善の1つまたは複数における局所使用のための前記〔10〕または前記〔11〕に記載の局所用組成物。
〔13〕ケトン体のレベルが、少なくとも1質量%のケトン体を含む、前記〔10〕から〔12〕までのいずれか1項に記載の局所用組成物。
〔14〕前記賦形剤が、ポリエチレングリコールを含む、前記〔10〕から〔13〕までのいずれか1項に記載の局所用組成物。