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特許7267253PIVKAに対する新規結合剤およびアッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】PIVKAに対する新規結合剤およびアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20230424BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230424BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230424BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
G01N33/53 D
G01N33/532 A
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020501157
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018068871
(87)【国際公開番号】W WO2019012019
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】17181242.3
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】エッカート,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ゲルク,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】カール,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】リートリンガー,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】スウィアテク-デ・ランゲ,マグダレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルリングハウス,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルツェル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】リジー,マルクス-レーネ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024050(US,A1)
【文献】特開2014-035278(JP,A)
【文献】KINUKAWA, H., et al.,"Epitope characterization of an anti-PIVKA-II antibody and evaluation of a fully automated chemiluminescent immunoassay for PIVKA-II.",CLIN. BIOCHEM.,2015年,Vol.48,pp.1120-1125,DOI: 10.1016/j.clinbiochem.2015.08.017,EPUB 2015/08/19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤であって、
前記特異的結合剤がモノクローナル抗体である、前記特異的結合剤
【請求項2】
配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも15倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤であって、
前記特異的結合剤がモノクローナル抗体である、前記特異的結合剤
【請求項3】
配列番号4のペプチドと比較して配列番号1のペプチドに結合優先性を有することをさらに特徴とする、請求項1または2に記載の特異的結合剤。
【請求項4】
CDRが、以下のアミノ酸配列を含む:
(i)軽鎖可変ドメイン中の配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(ii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(iii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;または
(iv)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3
ことをさらに特徴とするモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の特異的結合剤
【請求項5】
a)試料を請求項1からのいずれかに記載のPIVKA-IIへの特異的結合剤と、特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;および
b)特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在を検出するステップであって、特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在が試料中のPIVKA-IIの存在を示す、ステップ
を含む、試料中のPIVKA-IIを検出する方法。
【請求項6】
a)試料を請求項1からのいずれかに記載のPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;および
b)(a)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIを検出するステップ
を含む、試料中のPIVKA-IIを検出する方法。
【請求項7】
a)試料を請求項1からのいずれかに記載のPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;
b)PIVKA-IIへの第2の特異的結合剤を第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体に、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で加えておくステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;および
c)(b)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIを検出するステップ
を含む、試料中のPIVKA-IIを検出する方法。
【請求項8】
第2の特異的結合剤がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
第2の特異的結合剤が結合するPIVKA-II上のエピトープがF1/F2内に含まれる、請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第2の特異的結合剤が結合するPIVKA-II上のエピトープがF1内に含まれる、請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第2の特異的結合剤が結合するPIVKA-II上のエピトープがPIVKA-IIのGla-ドメイン内に含まれる、請求項から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
a)患者から得られた試料を請求項1からのいずれかに記載のPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;
b)(a)において形成された複合体を測定することにより、試料中に存在するPIVKA-IIの量を測定するステップであって、参照レベルより多いPIVKA-IIの量が患者におけるHCCの存在を示す、ステップ
を含む、HCCを有することが疑われる患者においてHCCを診断するための指標を提供する方法。
【請求項13】
PIVKA-IIのインビトロ測定における、請求項1からのいずれかに記載の特異的結合剤の使用。
【請求項14】
請求項1からのいずれかに記載の特異的結合剤を含有する容器を含む、試料中のPIVKA-IIを検出するおよび/またはその量を定量するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性(binding preference)を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤に関する。同様に、低カルボキシル化PIVKA-IIのサブセットを測定するための方法およびかかる特異的結合剤に基づいてHCCを診断するための方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
第II因子としても公知のタンパク質プロトロンビンII、は、ビタミンKの存在下で、グルタミン酸(GLA)ドメイン中の10個のグルタミン酸(GLA)残基がγ-カルボキシグルタミン酸にカルボキシル化される合成後修飾を受ける。カルボキシル化工程は、疾患状態では異常で不完全である。この不完全なカルボキシル化により、成熟プロトロンビンではなくPIVKA-II(Protein Induced by Vitamin K Absence/Antagonist-II)が形成される。PIVKA-IIは、分子量72KDaを有する大きな糖タンパク質であり、肝細胞癌(HCC)患者において上昇することが公知である(Liebmanら、The New England Journal of Medicine(1984)、310(22)、1427~1431頁;Fujiyamaら、Hepatogastroenterology(1986)、33、201~205頁;Marreoら、Hepatology(2003)、37、1114~1121頁)。
【0003】
肝臓がんは、7番目に多いがんであり、世界でがんによる死亡の2番目の原因である。罹患率および死亡率は、2012年に人口100,000人あたり10.1および9.5であった。肝細胞癌(HCC)は、世界において生じる原発性肝臓がんの主要な組織学的種類であり、全負荷の70%から85%を占める。HCCは、初期ステージと診断された患者に対しては切除、肝臓移植またはラジオ周波数を用いる局所アブレーションによって処置され得る。
【0004】
マーカーPIVKA-IIは、HCCの早期診断に主に関連すると考えられ、PIVKA-IIの測定のためのいくつかのイムノアッセイが開発された。しかし、10個の異なるカルボキシル化部位が存在し、カルボキシル化されたりカルボキシル化されなかったりするため、および個々のグルタミン酸残基のγ-カルボキシグルタミン酸への段階的カルボキシル化のために、PIVKA-IIの多様ないわゆる「低カルボキシル化」形態が存在する。
【0005】
数個の一部カルボキシル化されたプロトロンビン変種が、ビタミンK-依存カルボキシル化に遺伝的欠損を有する患者(Goldsmithら、J.Clin.Invest.1982;69、1253~1260、Borowskiら、J.Biol.Chem.1985;260(16):9258~64)、HCC患者およびワルファリン治療中の患者(Ueharaら、Clin.Chim.Acta 1999;289(1-2):33~44)において示されている。さまざまなカルボキシル化パターンは、プロトロンビンの機能性および疾患の重症度の両方とそれぞれ関連する可能性がある。
【0006】
Gla-ドメイン(成熟プロトロンビンのアミノ酸1から46)内のγ-カルボキシグルタミン酸への個々のグルタミン酸残基のカルボキシル化の配列、およびプロトロンビン機能へのその重要性は、広く研究された。Ueharaら、(1999)は、ヒトプロトロンビンの10個のGla残基が、Gla残基26から開始して次のGla残基25、16、29、20、19、14、32、7から6の特定の順でカルボキシル化されることを示した。加えて、Gla16は、プロトロンビンの機能性において重要な役割を演じており、この部位でのカルボキシル化を失うことは、凝固活性およびリン脂質結合の欠損を生じる(Borowskiら、J.Biol.Chem.1986;261(32):14969~75)。
【0007】
PIVKA-IIの検出のための既存の商業的に入手できるキットでは、主に抗PIVKA-IIモノクローナル抗体MU-3が応用される(EidiaのおよびFujirebioのPIVKA-IIアッセイ)。MU-3のエピトープはアミノ酸(AA)17~27の間に位置し、19位(Glu19)および20位(Glu20)のグルタミン酸残基が必須であり、25位(Glu25)のグルタミン酸残基がこの抗体の結合を顕著に増強する(Motoharaら、Pediatr.Res.1985;19:354~357、Narakiら、Biochim.Biophys.Acta 2002;1586:287~298)。
【0008】
IVD Abbott ARCHITECT PIVKA-IIアッセイは、3C10と名付けられたモノクローナル抗体を使用する。この抗体が結合するエピトープは、MU-3エピトープと実質的に等価であることが示された(Kinukawaら、Clin.Biochem.2015;48(16-17):1120~5)。
【0009】
PIVKA-IIについてのいくつかの商業的に入手できるアッセイを比較した。WAKO DCP、Abbott ARCHITECT PIVKA-II、Sanko Junyaku and Eisai Picolumi PIVKA-IIとFujirebio PIVKA-II Lumipulse assayとの間に高い相関(Passing-Bablok相関係数>0.95)が示された(Kinukawaら、Clin Biochem.2015;48(16-17):1120~5、およびPIVKA-II Lumipulse、Fujirebio;DCP-Assay、WAKO;Architect PIVKA-II、Abbottのそれぞれの添付文書)。したがってこれらすべてのアッセイは、低カルボキシル化PIVKA-IIの同じサブセット(形態)を検出していると考えられる。
【0010】
Sekisuiは、2つのモノクローナル抗体P11およびP16に基づくサンドイッチイムノアッセイを開発した(WO2012/002345;Toyoda、H.ら、Cancer Science、103(2012)921~925)。これらのモノクローナル抗体の1つは、PIVKA-IIのN末端アミノ酸に結合する一方で、他の1つはPIVKA-IIのアミノ酸60から156内のどこかに結合すると考えられている。いくつかの論文に示されるとおり、これら2つのモノクローナル抗体に基づくアッセイは、低カルボキシル化PIVKA-II形態の別のサブセットに結合し得ると考えられる。
【0011】
すべての商業的に入手できるPIVKA-IIアッセイは、互いに良好に相関する一方で、日常的に使用されるアッセイ以外の低カルボキシル化PIVKA-IIの他のサブセットを検出するアッセイが開発され得るかどうか、およびその場合かかるアッセイが臨床的に有意義な結果をもたらすかどうかについて、問題および課題が存在する。
【0012】
代表的モノクローナル抗体MU-3と比較して異なる結合特性を示す新規モノクローナル抗体が開発および使用され得ることが今や驚くべきことに見出された。これらの新規モノクローナル抗体のエピトープは、Glu16の存在を必要とする一方で、Glu25の存在はこれらの新規抗体の効率的な結合のために必要でない。これらの新規抗体に基づくサンドイッチイムノアッセイは、商業的に入手できるPIVKA-IIアッセイとは中程度の相関だけを示すが、臨床的に有意義なデータを、特に、高い臨床感度(例えば90%)のためのカットオフ設定でのアッセイの特異性の改善に関してもたらすことが驚くべきことに見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤を開示する。
【0014】
さらに:a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤と;特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;ならびにb)特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在を検出するステップであって、特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在が試料中のPIVKA-IIの存在を示す、ステップを含む試料中のPIVKA-IIを検出する方法が開示される。
【0015】
同様に:a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;ならびにb)(a)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIを検出するステップを含む試料中のPIVKA-IIを検出する方法が開示される。
【0016】
同様に:a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤と;特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;b)PIVKA-IIへの第2の特異的結合剤を第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体に、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で加えておくステップであって、第2の特異的結合剤が配列番号1の部分ではないPIVKA-II上のエピトープに結合し、検出可能に標識化されている、ステップ;ならびにc)(b)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIの存在を検出するステップを含む試料中のPIVKA-IIを検出する方法が開示される。
【0017】
同様に:a)患者から試料を得るステップ;b)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;c)(b)において形成された複合体を測定することにより、試料中に存在するPIVKA-IIの量を測定するステップであって、参照レベルより多いPIVKA-IIの量が患者におけるHCCの存在を示す、ステップを含む、HCCを有することが疑われる患者においてHCCを診断する方法が開示される。
【0018】
さらに:a)患者から試料を得るステップ;b)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤と;特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;c)PIVKA-IIへの第2の特異的結合剤を第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体に、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で加えておくステップであって、第2の特異的結合剤が配列番号1の部分ではないPIVKA-II上のエピトープに結合し、検出可能に標識化されている、ステップ;d)(c)において形成された複合体を測定することにより、試料中に存在するPIVKA-IIの量を測定するステップであって、予め決定されたレベルより多いPIVKA-IIの量が患者におけるHCCの存在を示す、ステップを含む、HCCを有することが疑われる患者においてHCCを診断する方法が開示される。
【0019】
さらに、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤のPIVKA-IIの測定における使用、ならびに、かかる特異的結合剤を含む試料中のPIVKA-IIを検出するおよび/またはその量を定量するためのキットが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ElecsysでのPIVKA-IIイムノアッセイの模式図である。 抗体-PIVKA-II-抗体サンドイッチの形成およびそのストレプトアビジンコート微小粒子結合が模式的に示されている。DCP(デスカルボキシ-プロトロンビン)は、PIVKA-IIに対する代替名であり、「RU」は第2の抗PIVKA-II抗体に結合するルテニウム標識を示す。
図2】PIVKA-II Elecsys対DCP WAKOの方法比較を示すグラフである。
【0021】
PIVKA-II Elecsys(登録商標)アッセイにおいて測定された値対DCP WAKOアッセイにおいて測定された値が比較されている。HCC患者、対照およびその他(すなわち、胆管細胞癌(CCC)またはHCC/CCC混合患者またはHCC/CCCを有すると疑われる患者)からなる3つの群が異なる記号を用いて示されている。すべての点についてのデミング回帰(実線)および参照線(破線/傾き1および切片0を有する参照対角線)がプロットされている。見出された相関係数は、それぞれピアソンのr=0.86およびスピアマンのp=0.88であった。Warfarinによって処置された患者由来の試料は除外された。
図3】WAKO DCPおよびElecsys PIVKA-II/すべてのHCCの臨床成績を示す図である。
【0022】
この図は、WAKO DCPアッセイおよびElecsys PIVKA-IIアッセイのそれぞれについてのAUCがすべてのHCC患者(BCLCステージ0~D)対対照について示されている。高感度領域について、Elecsys PIVKA-IIアッセイは、WAKO DCP検査よりも良好な特異度を示している。
図4】WAKO DCPおよびElecsys PIVKA-II/early HCCの臨床成績 この図は、WAKO DCPアッセイおよびElecsys PIVKA-IIアッセイのそれぞれについてのAUCがすべてのHCC患者(BCLCステージ0およびA)対対照について示されている。高感度領域(60~90%)について、Elecsys PIVKA-IIアッセイは、WAKO DCP検査よりも良好な特異度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤に関する。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が他を明確に示す場合を除いて、複数の参照物を含む。
プレプロトロンビン(配列番号5)は、細胞内で合成され、最初の43個のN末端アミノ酸(シグナルペプチドおよびプロペプチド配列→配列番号6)の切断、およびプロトロンビンポリペプチドの6、7、12、14、16、19、20、25、26および31位のグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化によって(「成熟」)プロトロンビンにプロセスされる。循環において経時的に、プロトロンビンも種々の分解産物に分解される。低カルボキシル化の検出に関して特に興味深いのは、少なくともいわゆるGLAドメイン(配列番号7)を含むプロトロンビン切断(分解)産物である。主に関連するプロトロンビン切断産物は、それぞれいわゆるF1/F2-断片(配列番号8)およびいわゆるF1-断片(配列番号9)である。
【0025】
配列番号1のペプチド配列は、プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸55から70位、すなわち(低カルボキシル化および「成熟」)プロトロンビンのアミノ酸12から27位に対応する。配列番号1のペプチドにおいて、すべてのグルタミン酸残基は、γ-カルボキシル化されていない。したがって、配列番号1の合成ペプチドは、19位でγ-カルボキシル化されておらず、20および25位でもそれぞれγ-カルボキシル化されていないPIVKA-II形態に対応し、それを模倣している。
【0026】
配列番号2のペプチド配列は、プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸55から70位、すなわち(一部カルボキシル化された)プロトロンビンのアミノ酸12から27位に対応する。配列番号2のペプチドは、成熟プロトロンビンの19位のγ-カルボキシル化グルタミン酸に対応するγ-カルボキシル化グルタミン酸を含む。言い換えると、このペプチドは、19位でγ-カルボキシル化されている(しかし、20でも25位でもそれぞれされていない)PIVKA-II形態に対応し、それを模倣している。
【0027】
配列番号3のペプチド配列は、プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸55から70位、すなわち(一部カルボキシル化された)プロトロンビンのアミノ酸12から27位に対応する。配列番号2のペプチドは、成熟プロトロンビンの25位のγ-カルボキシル化グルタミン酸に対応するγ-カルボキシル化グルタミン酸を含む。言い換えると、このペプチドは、25位でγ-カルボキシル化されている(しかし、19でも20位でもそれぞれされていない)PIVKA-II形態に対応し、それを模倣している。
【0028】
当業者が理解するとおり、配列番号1のペプチド配列は、プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸55から70位、すなわち非カルボキシル化プロトロンビンのアミノ酸12から27位に対応する。この配列、およびアミノ酸の同じストレッチにわたって一部ガンマカルボキシル化された配列(配列番号2、3または4)は、2個のシステイン残基を含む。本開示により選択された合成条件下で、2個のシステインが酸化され、シスチン架橋を形成することに注意が払われた。したがって、本明細書において使用/開示されるおよび/または配列表に記載される配列番号1、2、3および4ならびに配列番号32、33および34の配列を含む全ての合成ペプチドにおいて、2個のシステイン残基はシスチン架橋を形成するように酸化される。
【0029】
一実施形態では、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤は、PIVKA-IIに結合する単離された特異的結合剤である。「単離された」特異的結合剤、例えば単離された抗体は、その天然環境の構成成分から同定され、分離および/または回収されたものである。その天然環境の混入成分は、特異的結合剤、例えば抗体についての研究、診断または治療的使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。一部の実施形態では、特異的結合剤は(1)例えばローリー法によって決定して90重量%より高くまで、一部の実施形態では95重量%より高くまで;(2)例えば、スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)例えば、クーマシーブルーもしくは銀染色を使用する還元または非還元条件下でのSDS-PAGEによって均一まで、精製される。
【0030】
通常、単離された特異的結合剤、例えば単離された抗体は、例えば当技術分野において周知のタンパク質精製技術を使用する少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0031】
用語「特異的結合剤」は、標的に特異的に結合する天然または非天然分子を指す。特異的結合剤の例として、これだけに限らないが、タンパク質、ペプチドおよび核酸が挙げられる。ある特定の実施形態では、特異的結合剤は、抗体または核酸である。ある特定の実施形態では、特異的結合剤は、抗体である。ある特定の実施形態では、特異的結合剤は、抗体の抗原結合領域を含む。用語、標的および抗原は、互換的に使用され得る。一実施形態では、標的は抗原であり、特異的結合剤は抗体である。特異的結合剤は、その対応する標的分子に対して10l/molの親和性を少なくとも有する。特異的結合剤は、一実施形態では、少なくとも10l/molもしくはより良好な、またはさらなる実施形態では少なくとも10l/molもしくはより良好な親和性をその標的分子に対して有する。
【0032】
一実施形態では、本明細書で開示される特異的結合剤は、抗体またはアプタマーからなる群から選択される。
一実施形態では、特異的結合剤は、アプタマーとしても公知の特異的結合核酸である。
【0033】
用語「アプタマー」は、ポリペプチドを認識し、結合する核酸を指す。アプタマーは、さまざまな1本鎖RNA分子の大きなプールからSELEXなどの選択方法によって単離され得る(例えば、Jayasena(1999)Clin.Chem.、45、1628~50;KlugおよびFamulok(1994)M.Mol.Biol.Rep.、20、97~107;US 5,582,981を参照されたい)。アプタマーは、それらの鏡像形態で、例えばL-リボヌクレオチドとしても合成および選択され得る(Nolteら、(1996)Nat.Biotechnol.、14、1116~9;Klussmannら、(1996)Nat.Biotechnol.、14、1112~5)。後者の方法において単離された形態は、天然に存在するリボヌクレアーゼによって分解されず、そのためより大きな安定性を有する有利点を享受する。
【0034】
本発明の内容では、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の短いポリマーを指す。タンパク質と同じ化学(ペプチド)結合を有するが、一般に長さが短い。最も短いペプチドはジペプチドであり、単一のペプチド結合によって繋がれた2つのアミノ酸からなる。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドなどもあり得る。典型的にはペプチドは、4、6、8、10、12、15、18または20アミノ酸までの長さを有する。ペプチドは、それが環状ペプチドである場合を除いて、アミノ末端およびカルボキシ末端を有する。
【0035】
本発明の内容では、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって互いに結合されているアミノ酸の単一の直鎖を指し、典型的には少なくとも約21個のアミノ酸、すなわち少なくとも21個、22個、23個、24個、25個などのアミノ酸を含む。ポリペプチドは、1本より多い鎖からなるタンパク質の1本の鎖であってよく、またはタンパク質が1本鎖からなる場合、タンパク質自体であってもよい。
【0036】
ペプチドの内容では用語「合成」は、当業者に完全に明らかであり、ペプチドが天然供給源から単離されておらず、むしろin vitroでの化学合成によって得られたことを示すために単に使用される。
【0037】
用語「結合優先性」または「結合優先性」は、他は同等の条件下で、2つの代替的抗原または標的の1つが他の1つよりも良好に結合を受けることを示す。本開示による特異的結合剤は、配列番号1のペプチドに強く結合し、配列番号2のペプチドにしにくい。これら2つのペプチドおよび例えば配列番号3のような他のペプチドへの特異的結合は、実施例3に記載のとおり評価される。簡潔には、ビオチン化ペプチドは、分析される配列を含んで使用される。それらは、実施例3のアッセイ条件下で評価され、分析される各(ビオチン化)ペプチドで得られるシグナル(カウント)は、配列番号1を含むビオチン化ペプチドを用いて得られたシグナルと比較される。
【0038】
本明細書において開示されるPIVKA-IIへの特異的結合剤は、a)配列番号2を少なくとも10倍超える配列番号1の優先的結合、b)配列番号1のペプチドと同様またはさらに良好な配列番号3のペプチドへの結合、の少なくとも2つの判定基準に合致する。言い換えると、MU-3抗体および当技術分野において公知の同様の抗体とは異なり、本発明の特異的結合剤は、PIVKA-IIの25位にグルタミン酸を含まないか、またはPIVKA-IIの25位でのグルタミン酸のカルボキシル化の存在もしくは非存在に依存しないエピトープに結合する。
【0039】
当業者が完全に理解するとおり、任意の他の実験と同様に、結合強度または結合優先性の実験的評価は、いくらかの変動を受ける。かかる変動は、シグナル強度において例えばプラス/マイナス20%を生じる場合がある。したがってかかる変動は、絶対数に与えられる限度内である、例えば50%は、40%から60%の範囲として理解されるべきである。したがって、別の標的への結合と同様に良好(すなわち100%)であることが見出されている1つの標的への比較結合は、かかる比較量が80から120%(標的1に対するシグナル割る標的2に対するシグナル掛ける100)の範囲で生じる場合に認められ得る。一実施形態では、本発明による結合剤の結合特性は、実施例3に開示されるとおり評価される。表現「少なくとも同様の結合」は、特異的結合剤が等しいまたはより大きな結合親和性で結合することを意味する。同様に「少なくとも10倍の結合優先性」は、少なくとも10倍大きい結合親和性を有する結合を意味する。
【0040】
本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも15倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する単離された特異的結合剤にも関する。
【0041】
本発明の一実施形態では、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とし、配列番号4のペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して結合優先性を有することをさらに特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤に関する。言い換えると、本実施形態ではPIVKA-IIへの特異的結合剤は、19位にグルタミン酸を有するが20位にγ-カルボキシグルタミン酸を有するペプチドと比較して、PIVKA-IIのアミノ酸19および20に対応する両方の位置にグルタミン酸残基を有するペプチドに良好に結合する。しかし、20位のγ-カルボキシグルタミン酸と比較した20位のグルタミン酸に関する結合優先性は、先行技術結合剤、すなわちMU-3抗体などほど明白ではまったくない。
【0042】
一実施形態では、本開示による特異的結合剤は、抗体である。
一実施形態では、本明細書で開示される特異的結合剤は、モノクローナル抗体である。
抗体の全体構造は、当技術分野において周知であり、ジスルフィド結合によって繋がれた2本の重鎖および2本の軽鎖から構成される。重鎖および軽鎖は、それぞれ1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインからなる。抗原への結合特異性は、抗体を形成する軽鎖および重鎖の可変ドメインによってもたらされる。より具体的には、それらの特異性を決定し、特異的リガンドと接触する抗体の部分は、相補性決定領域(CDR)と称される。CDRは、分子の最も可変性の部分であり、これらの分子の多様性に寄与する。各可変ドメインには3つのCDR領域、CDR1、CDR2およびCDR3があり、4つのフレームワーク領域(FW)に埋め込まれる。本明細書において使用される場合、CDR-HC(またはCDR(HC))は可変重鎖のCDR領域を示し、CDR-LC(またはCDR(LC))は可変軽鎖のCDR領域に関する。同様に、FW-HC(またはFW(HC))は可変重鎖のフレームワーク領域を示し、FW-LC(またはFW(LC))は可変軽鎖のフレームワーク領域に関する。
【0043】
本発明により使用される場合、用語「含む(comprising)」は、さらなる配列/構成成分が、具体的に述べられる配列および/または構成成分に加えて含まれてよいことを記している。しかし、この用語は、特許請求される主題が述べられる配列および/または構成成分から厳密になることも包含する。
【0044】
本発明の抗体が述べられるアミノ酸配列より多くを含むこれらの実施形態では、追加的アミノ酸伸長は、N末端もしくはC末端のいずれかまたは両方に存在し得る。追加的配列は、例えば本明細書において下に詳細に考察されるとおり、例えば精製または検出のために導入された配列を含み得る。さらに、個々の配列は、述べられる配列を「含み」、それらは、追加的アミノ酸をN末端もしくはC末端または両方に含み得る。
【0045】
本発明の内容では、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子全体およびFab、Fab’、F(ab’)、Fvなどのその抗原結合断片に関する。さらに、用語は、改変および/または変更された抗体分子、ならびに組換え的にまたは合成的に生成された/合成された抗体に関する。用語「抗体」は、二機能性抗体、三機能性抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体および1本鎖Fv(scFv)もしくは抗体融合タンパク質のような抗体構築物も含む。
【0046】
本明細書において使用される場合、「Fab断片」は、1本の軽鎖ならびに1本の重鎖のC1および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。「Fab’断片」は、1本の軽鎖ならびに、VドメインおよびC1ドメインならびにC1とC2ドメインとの間の領域も含有する1本の重鎖の一部を、鎖間ジスルフィド結合がF(ab’)分子を形成するように2つのFab’断片の2本の重鎖の間に形成され得るように含有する。「F(ab’)断片」は、2本の軽鎖および、C1とC2ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2本の重鎖を、鎖間ジスルフィド結合が2本の重鎖の間に形成されるように含有する。したがって、F(ab’)断片は、2本の重鎖の間のジスルフィド結合によって互いに合わさっている2つのFab’断片から構成される。
【0047】
Fab/c断片は、FcおよびFab決定基の両方を含有し、ここで「Fc」領域は抗体のC2およびC3ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は、2つ以上ジスルフィド結合によって、およびC3ドメインの疎水性相互作用によって互いに合わさっている。
【0048】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠いている。「1本鎖Fv」(「scFv」とも略される)は、本発明の内容では、抗体のVおよびVドメインを有する抗体断片であり、ここでこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在している。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVドメインとVドメインとの間にさらに含む。1本鎖抗体の産生について記載される技術は、例えばPluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag、N.Y.113(1994)、269~315に記載されている。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。それでもなお、完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、もしくはマウス細胞由来の融合細胞において産生された場合はマウス(murine)炭水化物鎖を含む場合がある、またはラットにおいて、ラット細胞において、もしくはラット細胞由来の融合細胞において産生された場合はラット炭水化物鎖を含む場合がある。同様に、完全ヒト抗体は、ハムスターにおいて、ハムスター細胞、例えばCHO細胞などにおいて、またはハムスター細胞由来の融合細胞において産生された場合はハムスター炭水化物鎖を含む場合がある。一方、「マウス抗体」または「マウス(murine)抗体」は、マウス(マウス(murine))免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体であり、一方「ラット抗体」または「ウサギ抗体」は、それぞれラットまたはウサギ免疫グロブリン配列のみを含む抗体である。完全ヒト抗体と同様に、かかるマウス(murine)、ラットまたはウサギ抗体は、かかる動物またはかかる動物の細胞において産生される場合に、他の種からの炭水化物鎖を含有する場合がある。例えば抗体は、ハムスター細胞、例えばCHO細胞などにおいて、またはハムスター細胞由来の融合細胞において産生された場合はハムスター炭水化物鎖を含む場合がある。完全ヒト抗体は、例えば、完全ヒト抗体の産生およびスクリーニングを可能にする広く使用されているスクリーニング技術であるファージディスプレイによって産生され得る。同様に、ファージ抗体は、本発明の内容において使用され得る。ファージディスプレイ法は、例えばUS5,403,484、US5,969,108およびUS5,885,793に記載されている。完全ヒト抗体の開発を可能にする別の技術は、マウス融合細胞技術の改変を含む。マウスは、それら自体のマウス遺伝子の代わりにヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するようにトランスジェニックにされる(例えば、US5,877,397を参照されたい)。
【0050】
用語「キメラ抗体」は、ヒトまたは非ヒト(例えば、マウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ)のいずれかの別の種由来の抗体領域(例えば、定常領域)に融合されたまたはそれとキメラ化された、ヒトまたは非ヒト種の可変領域を含む抗体を指す。
【0051】
上述のとおり、用語「抗体」は、抗体融合タンパク質などの抗体構築物も包含し、ここで抗体は、具体的なアミノ酸配列によって本明細書において定義されるドメインに加えて、例えば組換え的に産生された構築物の単離および/または調製のための追加的ドメイン(複数可)を含む。
【0052】
本発明の抗体は、組換え抗体、例えば組換えヒト抗体、異種性抗体またはヘテロハイブリッド抗体であるように産生され得る。用語「組換え(ヒト)抗体」として、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離された抗体、などの組換え手段によって調製、発現、作製または単離されたすべての(ヒト配列)抗体が挙げられる。組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域(存在する場合)を有する。しかし、かかる抗体は、in vitro変異導入(または、ヒトIg配列についてのトランスジェニック動物が使用される場合はin vivo体細胞変異導入)に供されてよく、それにより組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、関連する一方で、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然で存在しない配列である。
【0053】
「異種性抗体」は、かかる抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物との関連において定義される。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物ではない生物において見出され、一般にトランスジェニック非ヒト動物のもの以外の種由来のものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0054】
用語「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物に由来する軽鎖および重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス(murine)軽鎖と会合したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。ヘテロハイブリッド抗体の例として、キメラおよびヒト化抗体が挙げられる。
【0055】
PIVKA-IIまたは対応する合成ペプチドへの結合のための、MU-3などの、PIVKA-IIに対する先行技術抗体は、20位のグルタミン酸の存在に強く依存(および25位のグルタミン酸の存在に一部依存)する。γ-カルボキシグルタミン酸が20位に存在する場合、これらの先行技術抗体は、かかるペプチドに、およびおそらく20位でγ-カルボキシル化された対応するPIVKA-II形態にも、いかなる結合もほとんど示さない。しかし、まったく異なって、本明細書に開示される抗体は、20位のグルタミン酸の存在にそれほど依存しない。一実施形態では本発明は、配列番号1と比較して40から80%未満の範囲の、およびさらなる実施形態では50から80%の範囲内の配列番号4への相対的結合によってさらに特徴付けられる、上に定義される特異的結合剤に関する。
【0056】
したがって、本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体に関し、ここで前記抗体は、CDRが以下のアミノ酸配列、またはCDRあたり最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むことをさらに特徴とする:
(i)軽鎖可変ドメイン中の配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(ii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(iii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;または
(iv)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0057】
本発明による抗体は、軽鎖CDRおよび重鎖CDRの(i)から(iv)の4種の述べられた組合せ1つを含む。CDRが組み込まれるそれぞれの可変ドメインの周囲のフレームワーク配列は、さらなる負担を伴うことなく当業者によって選択され得る。例えば、下にさらに記載されるフレームワーク配列または添付の実施例において使用される具体的なフレームワーク配列は、使用され得る。
【0058】
本発明によりCDRは、具体的に述べられた配列を含むことができる、またはCDRあたり最大1個のアミノ酸置換においてそれから異なっていてよい。そのため、各CDR中の1つのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置き換えられてよい。アミノ酸置換は、1本鎖のまたは1つの抗体のCDRの一部に存在するが、全てにおいてではないことも包含されることは、理解される。
【0059】
本発明により用語「置換」は、アミノ酸の別のアミノ酸での置き換えを指す。したがって、アミノ酸の総数は同じままである。ある特定の位置でのアミノ酸の欠失または、異なる位置での1つ(もしくは複数の)アミノ酸(複数可)の導入は、それぞれ用語「置換」によって明確に包含されない。
【0060】
本発明による置換は、一実施形態では保存的アミノ酸置換である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般に保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。かかる類似性として、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性が挙げられる。一実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群、(i)アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる非極性(疎水性)アミノ酸;(ii)グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる極性中性アミノ酸;(iii)アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる正荷電を有する(塩基性)アミノ酸;ならびに(iv)アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる負荷電を有する(酸性)アミノ酸、の1つの中に含まれる1つのアミノ酸の別のものへの置換である。
【0061】
一実施形態では本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体に関し、ここで前記抗体は、CDRが以下のアミノ酸配列、または、CDRあたり最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含み、ただし重鎖可変ドメインのCDR3が配列番号15のアミノ酸配列からなることをさらに特徴とする:
(i)軽鎖可変ドメイン中の配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(ii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(iii)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2およびに配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3;または
(iv)軽鎖可変ドメイン中の配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに重鎖可変ドメイン中の配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0062】
一実施形態では、CDRは、上に具体的に述べられる、すなわちいかなるアミノ酸変化も含まない配列を含む。
重鎖および軽鎖の両方の軽鎖可変領域/ドメイン/配列は、抗体の特異性を決定するCDRおよび「CDRを適切な位置に保つ」さらなる一般的フレームワーク領域をそれぞれ含む。
【0063】
軽鎖可変ドメイン/配列は、式I:
FW(LC)1-CDR(LC)1-FW(LC)2-CDR(LC)2-FW(LC)3-CDR(LC)3-FW(LC)4(式I)
に表されるフレームワーク領域(FW)およびCDRからなる。
【0064】
重鎖可変ドメイン/配列は、式II:
FW(HC)1-CDR(HC)1-FW(HC)2-CDR(HC)2-FW(HC)3-CDR(HC)3-FW(HC)4(式II)
に表されるFWおよびCDRからなる。
【0065】
式Iに示される一次構造は、N末端からC末端への本発明の抗体の軽鎖可変ドメインの構成成分の順序を表す。式IIに示される一次構造は、N末端からC末端への本発明の抗体の重鎖可変ドメインの構成成分の順序を表す。各場合において、フレームワーク領域(FW)1は、それぞれの可変鎖ドメインの最もN末端部分を表し、一方FW4は、それぞれの可変鎖ドメインの最もC末端部分を表す。
【0066】
本開示のとおり、全長可変鎖配列およびそれに含まれるCDRの配列が与えられると、当業者は各FW領域の配列を完全に推定できる。
さらに本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体に関し、ここで前記抗体は、
(i)配列番号10のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号12のCDR3を含む配列番号16の軽鎖可変配列ならびに配列番号13のCDR1、配列番号14のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号17の重鎖可変配列;
(ii)配列番号18のCDR1、配列番号19のCDR2および配列番号20のCDR3を含む配列番号23の軽鎖可変配列ならびに配列番号21のCDR1、配列番号22のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号24の重鎖可変配列;
(iii)配列番号18のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号20のCDR3を含む配列番号26の軽鎖可変配列ならびに配列番号21のCDR1、配列番号25のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号27の重鎖可変配列;または
(iv)配列番号18のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号28のCDR3を含む配列番号30の軽鎖可変配列ならびに配列番号29のCDR1、配列番号25のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号31の重鎖可変配列
を含むことをさらに特徴とし、
ここで、それぞれのFWは、上の所与の可変鎖配列に含有されるとおりであるか、または上の可変鎖配列を介して開示されるFW配列と少なくとも85%同一であるその変種であり、ここでそれぞれのCDRは、上に示されるとおりであるか、または最大1個のアミノ酸置換において異なっている。
【0067】
CDRおよびその変種に関して、上に提供される定義および具体的に例示される実施形態を準用する。
フレームワーク領域に関して、ある特定の程度の変動も本明細書において想定される、すなわち個々のFWは、具体的に述べられるアミノ酸配列またはそれに少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含み得る、またはそれからなり得る。さらなる一実施形態では、同一性は、少なくとも90%である。またさらなる実施形態では、同一性は少なくとも95%である。
【0068】
本発明により、用語「%配列同一性」は、2つ以上のアライメントされたアミノ酸配列の同一アミノ酸のマッチ(「ヒット」)数を、アミノ酸配列の長さ全体(またはその比較される部分全体)を構成するアミノ酸残基数と比較して記載する。同一性パーセントは、同一残基の数を残基の総数で割り、商に100を掛けることによって決定される。言い換えると、アライメントを使用して、同じであるアミノ酸残基の百分率(例えば、85%同一性)は、2つ以上の(サブ)配列が、当技術分野において公知の配列比較アルゴリズムを使用して測定される、比較ウインドウにわたるまたは指定の領域にわたる最大の対応について比較およびアライメントされる場合、または手作業でアライメントされ、目視で検査された場合に、2つ以上の配列またはサブ配列について決定され得る。
【0069】
当業者は、例えばNCBI BLASTアルゴリズム(Altschul,S.F.ら、[1997]Nucleic Acids Res.25:3389~3402)、CLUSTALWコンピュータープログラム(Tompson,J.D.ら、[1994]Nucleic Acids Res.22:4673~4680)またはFASTA(Pearson,W.R.& Lipman,D.J.[1988]Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444~2448)に基づくものなどのアルゴリズムを使用して、配列間の/内のパーセント配列同一性をどの様に決定するかを公知である。一実施形態では、NCBI BLASTアルゴリズムは、本発明により使用される。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、ワード長(W)3、および期待値(E)10を初期設定として使用する。BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff,S.& Henikoff,J.G.[1992]Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915~10919)は、配列比較(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4および両鎖の比較を使用する。したがってこれらの実施形態では、%配列同一性が示される場合、NCBI BLASTプログラムを用いて決定された少なくとも85%の配列同一性を有するすべてのアミノ酸配列は、前記実施形態の範囲内である。
【0070】
具体的に述べられたそれぞれのアミノ酸配列と比較した、フレームワーク領域における変動の上に記載の程度は、アミノ酸(複数可)の置換、挿入、付加または欠失によるものであり得る。
【0071】
用語「置換」は、本明細書において上で定義された。1つより多いアミノ酸が置換される場合、各アミノ酸は独立に別のアミノ酸を用いて置換される、すなわち除去される各アミノ酸について異なるアミノ酸が同じ位置に導入される。
【0072】
用語「挿入」は、本発明により、1つまたは複数のアミノ酸の具体的に述べられるアミノ酸配列への付加を指し、ここで付加は、ポリペプチドのNまたはC末端への付加ではない。
【0073】
用語「付加」は、本発明により、1つまたは複数のアミノ酸の具体的に述べられるアミノ酸配列へのポリペプチドのNもしくはC末端へのまたは両方への付加を指す。
本発明により使用される場合、用語「欠失」は、具体的に述べられるアミノ酸配列から1つまたは複数のアミノ酸を失うことを指す。
【0074】
一実施形態では、フレームワーク領域のアミノ酸配列における変動は、アミノ酸(複数可)の置換による。本明細書において上で定義されたとおり置換は、保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換であってよい。用語「置換」に関して上に提供された定義および具体的に例示された実施形態を準用する。一実施形態では、フレームワーク領域中の置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0075】
本発明の抗体のさらなる実施形態では、抗体は、フレームワーク領域(FW)および上の式Iに表されるCDRからなる軽鎖可変ドメイン、ならびにFWおよび上の式IIに表されるCDRからなる重鎖可変ドメインを含み、ここでFWは可変鎖配列を介して開示されるアミノ酸配列またはそれに少なくとも85%同一であるその変種を含み、ここでCDRは、以下のアミノ酸配列を含む:
(i)配列番号10のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号12のCDR3を含む配列番号16の軽鎖可変配列ならびに配列番号13のCDR1、配列番号14のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号17の重鎖可変配列;
(ii)配列番号18のCDR1、配列番号19のCDR2および配列番号20のCDR3を含む配列番号23の軽鎖可変配列ならびに配列番号21のCDR1、配列番号22のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号24の重鎖可変配列;
(iii)配列番号18のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号20のCDR3を含む配列番号26の軽鎖可変配列ならびに配列番号21のCDR1、配列番号25のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号27の重鎖可変配列;または
(iv)配列番号18のCDR1、配列番号11のCDR2および配列番号28のCDR3を含む配列番号30の軽鎖可変配列ならびに配列番号29のCDR1、配列番号25のCDR2および配列番号15のCDR3を含む配列番号31の重鎖可変配列。
【0076】
本明細書においてFWとして定義される式Iおよび式IIの一部が、可変鎖領域のフレームまたはスキャホールドの一部を形成するアミノ酸配列であることから、前記配列内の置換、特に保存的アミノ酸置換の形態は、多くの場合、抗PIVKA-II抗体の結合能力に影響を与えない。
【0077】
本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体にさらに関し、前記抗体は、
(i)配列番号16のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメイン、および配列番号17のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメイン;
(ii)配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメイン、および配列番号24のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメイン;
(iii)配列番号26のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメイン、および配列番号27のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメイン;または
(iv)配列番号30のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメイン、および配列番号31のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメイン
を含む。
【0078】
本発明の抗PIVKA-II抗体に関して本明細書で上に提供されるすべての定義および具体的例示的実施形態、特に多様性の言及される程度および種類を準用する。
一実施形態では、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合し、
(i)軽鎖可変ドメインとして配列番号16のアミノ酸配列および重鎖可変ドメインとして配列番号17のアミノ酸配列(すなわち、添付の実施例において7A10と呼ばれるモノクローナル抗体の可変鎖領域に対応する)を含む;
(ii)軽鎖可変ドメインとして配列番号23のアミノ酸配列および重鎖可変ドメインとして配列番号24のアミノ酸配列(すなわち、添付の実施例において4E8と呼ばれるモノクローナル抗体の可変鎖領域に対応する)を含む;
(iii)軽鎖可変ドメインとして配列番号26のアミノ酸配列および重鎖可変ドメインとして配列番号27のアミノ酸配列(すなわち、添付の実施例において9A6と呼ばれるモノクローナル抗体の可変鎖領域に対応する)を含む;または
(iv)軽鎖可変ドメインとして配列番号30のアミノ酸配列および重鎖可変ドメインとして配列番号31のアミノ酸配列(すなわち、添付の実施例において13H7と呼ばれる可変鎖領域に対応する)を含むことを特徴とする。
【0079】
改変軽鎖および重鎖領域について上に述べられた配列は、添付の実施例において使用されたアミノ酸配列である。実施例において使用された(前記可変ドメインを含む)抗体中に存在する軽鎖および重鎖についての全長アミノ酸配列は、配列番号16、23、26および30ならびに配列番号17、24、27および31にそれぞれ表されている。実施例において示されるとおり、これらの抗PIVKA-II抗体は、優れた結合効率および特異性を提供する。
【0080】
本発明は、本明細書において上に定義される本発明の抗体のいずれか1つの軽鎖可変領域をコードする核酸分子にさらに関する。この核酸分子は、本明細書において本発明の第1の核酸分子と称される。さらに本発明は、本明細書において上に定義される本発明の抗体のいずれか1つの重鎖可変領域をコードする核酸分子にも関する。この核酸分子は、本明細書において本発明の第2の核酸分子と称される。
【0081】
本発明により、用語「核酸分子」は、本明細書において核酸配列またはポリヌクレオチドとも称され、cDNAまたはゲノムDNAなどのDNAを含む。
本発明の核酸分子は、例えば標準的化学合成方法および/もしくは組換え法によって合成され得る、または例えば化学合成と組換え法を組み合わせることによって半合成的に産生され得る。コード配列の転写制御エレメントへの、および/または他のアミノ酸コード配列へのライゲーションは、制限消化、ライゲーションおよび分子クローニングなどの確立された方法を使用して実行され得る。
【0082】
本発明により、本発明の第1の核酸分子は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体の
(i)配列番号10のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号12のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)配列番号18のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号20のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;
(iii)配列番号18のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号20のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;
(iv)配列番号18のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号28のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;
(v)配列番号16のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号26のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;または
(viii)配列番号30のアミノ酸配列からなる軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列
をコードする。
【0083】
同様に、本発明の第2の核酸分子は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体の
(i)配列番号13のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号14のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む重鎖可変領域;
(ii)配列番号21のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む重鎖可変領域;
(iii)配列番号21のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む重鎖可変領域;
(iv)配列番号29のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列または最大1個のアミノ酸置換において異なっているその変種を含むCDR3を含む重鎖可変領域;
(v)配列番号17のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号24のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号27のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列;または
(viii)配列番号31のアミノ酸配列からなる重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列
をコードする。
【0084】
本発明は、本発明の第1の核酸分子、すなわち本明細書において上に定義される本発明の抗体のいずれか1つの軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含むベクターにさらに関する。本発明は、本発明の第2の核酸分子、すなわち本明細書において上に定義される本発明の抗体のいずれか1つの重鎖可変領域をコードする核酸分子を含むベクターにさらに関する。かかるベクターは、本明細書において「本発明の個別のベクター(複数可)」とも称される。
【0085】
多数の好適なベクターが分子生物学の当業者に公知であり、その選択は所望の機能に依存する。ベクターの非限定的例として、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージおよび例えば遺伝子工学において慣用されている他のベクターが挙げられる。当業者に周知である方法は、種々のプラスミドおよびベクターを構築するために使用できる;例えば、Sambrookら、(同上)およびAusubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1989)、(1994)に記載される技術を参照されたい。
【0086】
一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。本発明による発現ベクターは、宿主において本発明の核酸分子の複製および発現を導くことができ、したがって、それによりコードされた本発明の抗PIVKA-II抗体の可変鎖ドメインの選択された宿主での発現を提供する。さらなる実施形態では、ベクター(複数可)は、本発明の前記可変鎖ドメインだけでなく、本発明の前記可変鎖ドメインを含む全長IgG抗体も発現されることを確実にするためのさらなる配列を含む。
【0087】
発現ベクターは、例えば、クローニングベクター、バイナリーベクターまたはインテグレーティングベクターであり得る。発現は、核酸分子の、例えば翻訳可能なmRNAへの転写を含む。一実施形態では、ベクターは、モノクローナルウサギ抗体の重鎖および/または軽鎖の一過的組換え発現のための真核生物発現プラスミドである。かかるベクターは、抗体発現のためだけでなく、例えば真核細胞、例えばHEK293もしくはその誘導体またはCHO細胞の一過性トランスフェクションによる抗体産物のために特に開発された。
【0088】
ベクターの非限定的例として、pQE-12、pUCシリーズ、pBluescript(Stratagene)、発現ベクターのpETシリーズ(Novagen)もしくはpCRTOPO(Invitrogen)、lambda gt11、pJOE、pBBR1-MCSシリーズ、pJB861、pBSMuL、pBC2、pUCPKS、pTACT1、pTRE、pCAL-n-EK、pESP-1、pOP13CAT、E-027 pCAG Kosak-Cherry(L45a)ベクターシステム、pREP(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO-pSV2neo、pBPV-1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2-dhfr、pIZD35、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pcDNA3.1、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGEMHE(Promega)、pLXIN、pSIR(Clontech)、pIRES-EGFP(Clontech)、pEAK-10(Edge Biosystems)pTriEx-Hygro(Novagen)およびpCINeo(Promega)が挙げられる。Pichia pastorisに対する好適なプラスミドベクターの非限定的例は、例えばプラスミドpAO815、pPIC9KおよびpPIC3.5K(すべてInvitrogen)を含む。Xenopus胚、ゼブラフィッシュ胚ならびに多種多様な哺乳動物および鳥類細胞においてタンパク質を発現するために好適な別のベクターは、多目的発現ベクターpCS2+である。
【0089】
一般に、ベクターは、1つまたは複数の複製開始点(ori)およびクローニングまたは発現のための遺伝系、宿主における選択のための1つまたは複数のマーカー、例えば、抗菌薬耐性ならびに1つまたは複数の発現カセットを含有することができる。加えて、ベクターに含まれるコード配列は、転写制御エレメントおよび/または他のアミノ酸コード配列に、確立された方法を使用してライゲートされてよい。かかる制御配列は、当業者に周知であり、限定されることなく、転写の開始を確実にする制御配列、内部リボソーム侵入部位(IRES)(Owens,G.C.ら、[2001]Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:1471~1476)ならびに任意選択で転写の終了および転写物の安定化を確実にする制御エレメントを含む。転写の開始を確実にするかかる制御エレメントの非限定的例は、プロモーター、翻訳開始コドン、エンハンサー、インスレーターおよび/または転写終結を確実にする制御エレメントを含み、これらは本発明の核酸分子の下流に含まれるものである。さらなる例として、Kozak配列ならびにRNAスプライシングのためのドナーおよびアクセプター部位が隣接する介在配列、分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列または、使用される発現系に応じて、細胞性コンパートメントへまたは培養培地へ発現されたタンパク質を方向付けることができるシグナル配列が挙げられる。
【0090】
ベクターは、正しいタンパク質フォールディングを促進するための1つまたは複数のシャペロンをコードする追加的な発現可能なポリヌクレオチドも含有する場合がある。
好適な複製開始点の追加的例として、例えば全長ColE1、切断型ColEI、SV40ウイルス性およびM13複製開始点が挙げられる一方で、好適なプロモーターの追加的例として、限定されることなく、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫(Rous sarcome)ウイルス)、lacZプロモーター、テトラサイクリンプロモーター/オペレーター(tetp/o)、ニワトリβ-アクチンプロモーター、CAG-プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーターとサイトメガロウイルス最初期エンハンサーとの組合せ)、gai10プロモーター、ヒト伸長因子1α-プロモーター、AOX1プロモーター、GAL1プロモーターCaM-キナーゼプロモーター、lac、trpもしくはtacプロモーター、T7もしくはT5プロモーター、lacUV5プロモーター、Autographa californica多核多角体ウイルス(multiple nuclear polyhedrosis virus)(AcMNPV)多角体プロモーターまたは哺乳動物および他の動物細胞におけるグロビンイントロンが挙げられる。エンハンサーの一例は、例えばSV40エンハンサーである。転写終結を確実にする制御エレメントについての非限定的な追加的例として、SV40-ポリA部位、tk-ポリA部位、rho-非依存性lppターミネーターまたはAcMNPV多角体ポリアデニル化シグナルが挙げられる。選択可能マーカーのさらなる非限定的例として、メトトレキサートへの耐性を付与するdhfr(Reiss、Plant Physiol.(Life Sci.Adv.)13(1994)、143~149)、アミノグリコシド ネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシン(paromycin)に対する耐性を付与するnpt (Herrera-Estrella、EMBO J.2(1983)、987~995)ならびに、ハイグロマイシンへの耐性を付与するhygro(Marsh、Gene 32(1984)、481~485)が挙げられる。追加的な選択可能遺伝子は、記載されており、すなわちtrpB、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにする;hisD、細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノール(histinol)を利用できるようにする(Hartman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988)、8047);マンノース-6-リン酸イソメラーゼ、細胞がマンノースを利用できるようにする(WO94/20627)、およびODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMOに対する耐性を付与する(McConlogue、1987、In:Current Communications in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Laboratory ed.)またはAspergillus terreus由来のデアミナーゼ、ブラストサイジンSに対する耐性を付与する(Tamura、Biosci.Biotechnol.Biochem.59(1995)、2336~2338)。
【0091】
さらなる実施形態では、ベクターは、イントロンAを含む5‘CMVプロモーターおよび3‘BGHポリアデニル化配列からなる発現カセットを含有する真核生物発現プラスミドである。発現カセットに加えて、プラスミドは、pUC18由来複製開始点および、E.coliにプラスミド増幅のためのアンピリシン耐性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子を含有できる。抗体の分泌のために、真核生物リーダー配列は、抗体遺伝子の5’にクローニングされてよい。
【0092】
好適な細菌性発現宿主は、例えばJM83、W3110、KS272、TG1、K12、BL21(BL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRAREなど)またはRosettaa由来の株を含む。ベクター改変、PCR増幅およびライゲーション技術について、Sambrook & Russel[2001](Cold Spring Harbor Laboratory、NY)を参照されたい。
【0093】
本発明の核酸分子および/またはベクターは、例えば化学に基づく方法(ポリエチレンイミン、リン酸カルシウム、リポソーム、DEAEデキストラン、ヌクレオフェクション)、非化学的方法(電気穿孔法、ソノポレーション、光学トランスフェクション(optical transfection)、遺伝子電気泳動転写、水力学的送達(hydrodynamic delivery)または細胞を本発明の核酸分子に接触させることで自然に生じる形質転換)、粒子に基づく方法(遺伝子銃、マグネトフェクション、インペールフェクション(impalefection))ファージベクターに基づく方法およびウイルスでの方法による細胞への導入のために設計されてよい。例えば、レトロウイルス、ワクチニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルスまたはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、標的細胞集団への核酸分子の送達のために使用され得る。加えて、バキュロウイルス系も本発明の核酸分子のための真核生物発現系においてベクターとして使用され得る。一実施形態では、本発明の核酸分子および/またはベクターは、リン酸カルシウムによる化学的にコンピテントなE.coliの形質転換のためおよび/またはポリエチレンイミンもしくはリポフェクタミントランスフェクションによるHEK293およびCHOの一過性トランスフェクションのために設計される。
【0094】
本発明は、本明細書において上に定義される選択肢(i)から(viii)による軽鎖可変ドメインならびに本明細書において上に定義される選択肢(i)から(viii)による合致する(例えば上の(vi)および(vi))重鎖可変ドメインをコードする核酸分子を含むベクターにさらに関する。
【0095】
一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。
本発明のベクター、具体的にはベクターの種類または制御配列に関して、本明細書において上で提供されるすべての定義および具体的に例示される実施形態を準用する。この第2の種類のベクターは、少なくとも2つの核酸分子、すなわち1つは軽鎖可変ドメインをコードし1つは重鎖可変ドメインをコードする2つの核酸分子を含むベクターに関する。上の組合せから明らかであるとおり、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとは、本発明の機能性抗PIVKA-II抗体の発現が可能であるようにベクターにおいて組み合わされる。この第2の種類のベクターは、本明細書において「本発明の組合せベクター」とも称される。
【0096】
本発明は、
(i)本発明の組合せベクター;または
(ii)本発明の第1の核酸分子、すなわち本発明による軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む本発明の個別のベクターおよび本発明の第2の核酸分子、すなわち本発明の重鎖可変領域をコードする核酸分子を含む本発明の個別のベクターであって、これら2つのベクターが上に定義される合致する軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸分子を含む、ベクター
を含む宿主細胞または非ヒト宿主にさらに関する。
【0097】
宿主細胞は、任意の原核または真核細胞であってよい。用語「原核生物」は、本発明のタンパク質の発現のためにDNAまたはDNAもしくはRNA分子を用いて形質転換、形質導入またはトランスフェクトされ得るすべての細菌を含んで意味する。原核生物宿主は、例えばE.coli、S.typhimurium、Serratia marcescens、Corynebacterium(glutamicum)、Pseudomonas(fluorescens)、Lactobacillus、Streptomyces、SalmonellaおよびBacillus subtilisなどのグラム陰性およびグラム陽性細菌を含み得る。
【0098】
用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含んで意味する。典型的な哺乳動物宿主細胞として、Hela、HEK293、H9、Per.C6およびJurkat細胞、マウスNIH3T3、NS/0、SP2/0およびC127細胞、COS細胞、例えばCOS1またはCOS7、CV1、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞、マウス肉腫細胞、Bowesメラノーマ細胞ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。本発明による例示的な哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である。他の好適な真核生物宿主細胞として、限定されることなく、例えばDT40細胞などのニワトリ細胞、またはSaccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombeおよびKluyveromyces lactisなどの酵母が挙げられる。発現のために好適な昆虫細胞は、例えばDrosophila S2、Drosophila Kc、Spodoptera Sf9およびSf21またはTrichoplusia Hi5細胞である。好適なゼブラフィッシュ細胞株として、限定されることなく、ZFL、SJDまたはZF4が挙げられる。
【0099】
記載されるベクター(複数可)は、宿主のゲノムにインテグレートされ得るか、または染色体外に維持され得るか、のいずれかである。ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は核酸分子の高レベル発現のために好適な条件下に維持され、所望により、本発明の抗体の回収および精製が続き得る。上に記載の宿主細胞のために適切な培養培地および条件は、当技術分野において公知である。
【0100】
一実施形態では、述べられる宿主は、ヒト細胞またはヒト細胞株などの哺乳動物細胞である。さらなる実施形態では、本発明のベクター(複数可)を用いて形質転換される宿主細胞は、HEK293またはCHOである。またさらなる実施形態では、本発明のベクター(複数可)を用いて形質転換される宿主細胞は、CHOである。これらの宿主細胞ならびに好適な培地および細胞培養条件は、当技術分野において記載されている、例えばBaldi L.ら、Biotechnol Prog.2005 Jan-Feb;21(1):148~53、Girard P.ら、Cytotechnology 2002 Jan;38(1-3):15~21およびStettler M.ら、Biotechnol.Prog.2007 Nov-Dec;23(6):1340~6を参照されたい。
【0101】
本発明による用語「を含むベクター」に関して、本発明の抗PIVKA-II抗体を産生するために宿主細胞に必要および/または十分であるさらなる核酸配列が、ベクター中に存在することは理解される。かかるさらなる核酸配列は、例えば、軽鎖の残部をコードする核酸配列および重鎖の残部をコードする核酸配列である。
【0102】
本発明による宿主細胞または非ヒト宿主は、本明細書において上に定義される軽鎖および重鎖可変領域の両方をコードする1つのベクターを含むか、または一方のベクターが本発明による軽鎖可変領域をコードする核酸分子を保有し、第2のベクターが本発明による合致する重鎖可変領域をコードする核酸分子を保有する2つの別々のベクターを含む。したがって、第1のベクターが本明細書において上の選択肢(i)による軽鎖可変領域をコードする核酸分子を保有する場合、それにより第2のベクターは同様に上の選択肢(i)による重鎖可変領域をコードする核酸分子を保有する。同じことを選択肢(ii)から(viii)に準用する。
【0103】
したがって、各場合において、本明細書において上に記載される結合能力からなる本発明の抗PIVKA-II抗体の産生を確実にするために、1つの抗体分子内に存在することが必要であるこれらの核酸分子の発現は、互いに関連付けられている。
【0104】
本実施形態による宿主細胞は、例えば、多量の本発明の抗PIVKA-II抗体を産生するために使用され得る。前記宿主細胞は、上に記載のベクター(複数可)を宿主に導入することによって産生される。宿主中の前記ベクター(複数可)の存在は、次に本発明の抗PIVKA-II抗体の上に記載の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードする核酸分子の発現を媒介する。本明細書において上に記載のとおり、本発明のベクター(複数可)は、全長IgG抗体の発現を可能にする配列をさらに含むことができ、それにより宿主細胞による全長IgG抗体の産生をもたらし、ここで前記抗体は、本発明による可変軽鎖および/または重鎖ドメインの存在によって特徴付けられる。
【0105】
本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体の産生のための方法にさらに関し、方法は本発明の宿主細胞を好適な条件下で培養するステップおよび産生された抗体を単離するステップを含む。
【0106】
本実施形態により、本発明の宿主中に存在するベクター(複数可)は、発現ベクター(複数可)、または宿主細胞のゲノムへの本発明の核酸分子(複数可)の、その発現が確実である様式での安定なインテグレーションを媒介するベクター(複数可)のいずれかである。本発明の抗PIVKA-II抗体の軽鎖および重鎖ドメインそれぞれをコードする核酸分子が、抗体の発現が確実であるように良好に導入されている宿主細胞の選択のための手段および方法は、当技術分野において周知であり、記載されている(Browne,S.M.& Al-Rubeai,M.[2007]Trends Biotechnol.25:425~432;Matasci,Mら、[2008]Drug Discov.Today:Technol.5:e37-e42;Wurm,F.M.[2004]Nat.Biotechnol.22:1393~1398)。
【0107】
原核または真核生物宿主細胞を培養するための好適な条件は、当業者に周知である。例えば細菌、例えばE.coliなどの細菌は、Luria Bertani(LB)培地中、通気下、典型的には4から約37℃の温度で培養され得る。発現産物の収量および溶解度を増加させるために、培地は、緩衝されてよく、または両者を増強もしくは促進することが公知である好適な添加物を補充されてよい。誘導性プロモーターが宿主細胞に存在するベクター(複数可)中の本発明の核酸分子を調節する場合、ポリペプチドの発現は、例えばアンヒドロテトラサイクリンなどの適切な誘導剤の添加によって誘導され得る。好適な発現プロトコールおよび戦略は、当技術分野において記載されており(例えば、Dyson,M.R.ら、(2004).BMC Biotechnol.4、32~49においておよびBaldi,L.ら、(2007)Biotechnol.Lett.29、677~684において)、必要に応じて、特定の宿主細胞が必要とすることおよび発現されるタンパク質の必要要件に適合され得る。
【0108】
細胞型およびその具体的な必要要件に依存して、哺乳動物細胞培養は、例えば10%(v/v)FCS、2mM L-グルタミンおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI、Williams’EまたはDMEM培地において実行されてよい。細胞は、DT40ニワトリ細胞では例えば37℃または41℃、5%CO、水飽和雰囲気中に保たれてよい。
【0109】
昆虫細胞培養のために好適な培地は、例えばTNM+10%FCS、SF900またはHyClone SFX-Insect培地である。昆虫細胞は、通常付着培養または懸濁培養として27℃で増殖させる。
【0110】
真核細胞または脊椎動物細胞のための好適な発現プロトコールは、当業者に周知であり、例えばSambrook,J & Russel,D.W.[2001](Cold Spring Harbor Laboratory、NY)から検索され得る。
【0111】
一実施形態では、方法は、例えばCHOまたはHEK293細胞などの哺乳動物細胞を使用して実行される。さらなる実施形態では、方法は、CHO細胞を使用して実行される。
【0112】
組換え産生手順において使用される宿主に依存して、発現される抗体は、グリコシル化されている場合とされていない場合がある。一実施形態では、プラスミドまたはウイルスは、本発明の抗体のコード配列ならびにそれに遺伝子的に融合されたN末端FLAGタグおよび/またはC末端Hisタグを含有して使用される。さらなる実施形態では、前記FLAG-タグの長さは、例えば正確に8アミノ酸などの約4から8アミノ酸である。上に記載されるベクターは、当業者に一般に公知の任意の技術を使用して宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。さらに、融合し、作動可能に連結した遺伝子を調製するため、ならびにそれらを例えば哺乳動物細胞および細菌において発現するための方法は、当技術分野において周知である(Sambrook、同上)。
【0113】
形質転換された宿主は、バイオリアクターにおいて増殖させることができ、当技術分野において公知の技術によって最適な細胞増殖を達成するように培養され得る。次に本発明の抗体は、増殖培地から単離され得る。例えば、本発明の微生物によって発現された抗体の単離および精製は、例えば、親和性クロマトグラフィー(例えば、StrepタグIIもしくはHisタグなどの融合タグを使用する)、ゲルろ過(サイズ排除クロマトグラフィー)、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLCまたは免疫沈降などの任意の従来の手段によってでよい。これらの方法は、当技術分野において周知であり、例えばSambrook,J & Russel,D.W.[2001](Cold Spring Harbor Laboratory、NY)に一般に記載されている。
【0114】
本発明により、用語「産生された抗体を単離すること」が本発明の抗PIVKA-II抗体の単離を指すことは理解される。
さらに、本発明は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに特異的に結合する抗体であって、本発明の方法によって得ることができるまたは得られる、抗体に関する。
【0115】
本発明は、
(i)本発明の抗体、
(ii)本発明の核酸分子、
(iii)本発明のベクター、
(iv)本発明の宿主細胞、および/または
(v)本発明の方法によって産生された抗体
の少なくとも1つを含む組成物にさらに関する。
【0116】
本発明により使用される場合、用語「組成物」は、述べられた化合物の少なくとも1つを含む組成物に関する。それは、任意選択で、本発明の化合物の特徴を変更でき、それによりそれらの機能を、例えば、安定化、モジュレートおよび/または増強するさらなる分子を含み得る。組成物は、固体または液体形態であってよく、とりわけ粉末(複数可)、錠剤(複数可)または溶液(複数可)の形態であってよい。
【0117】
組成物の構成成分は、1つまたは複数の容器、例えば、密封されたアンプルもしくはバイアルに、水溶液としてまたは再構成のための凍結乾燥製剤として包装されてよい。凍結乾燥製剤の例として、10mlバイアルは5mlの1%(w/v)または10%(w/v)水溶液を用いて充填され、得られた混合物は凍結乾燥される。使用のための溶液は、例えば、治療使用のための注射用水または別の望ましい溶媒、例えば、診断目的のための緩衝液、のいずれかを使用して凍結乾燥化合物(複数可)を再構成することによって調製される。保存剤および、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどの他の添加剤も存在してよい。
【0118】
組成物の種々の構成成分は、使用のための説明書を含むキットとして包装されてよい。
一実施形態では本開示は、a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤と;特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;およびb)特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在を検出するステップであって、特異的結合剤-PIVKA-II複合体の存在が試料中のPIVKA-IIの存在を示す、ステップを含む試料中のPIVKA-IIを検出する方法に関する。
【0119】
一実施形態では本発明は、a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されているステップ;ならびにb)(a)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIを検出する、ステップを含む、試料中のPIVKA-IIを検出する方法に関する。
【0120】
当業者に明らかであるとおり、試料は、第1のおよび第2の特異的結合剤と任意の望ましい順序で、すなわち第1の→第2の;第2の→第1のまたは同時に、第1の特異的結合剤PIVKA-II第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触されてよい。
【0121】
一実施形態では本開示は、a)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する第1の特異的結合剤と;第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;b)PIVKA-IIへの第2の特異的結合剤を第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体に、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で加えておくステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;およびc)(b)において形成された複合体を測定することにより、試料中のPIVKA-IIを検出するステップを含む、試料中のPIVKA-IIを検出する方法に関する。
【0122】
当業者が容易に理解するとおり、特異的結合剤(PIVKA-IIへの)と(PIVKA-II)抗原/分析物(=特異的結合剤-抗原/分析物複合体)とのいずれかの間の複合体の形成、または第1の特異的結合剤(PIVKA-IIへの)、(PIVKA-II)抗原/分析物および第2の特異的結合剤(PIVKA-IIへの)を含む二次もしくはサンドイッチ複合体(=第1の特異的結合剤-抗原/分析物-第2の特異的結合剤複合体)の形成のために、適切であるまたは十分である時間および条件を確立することは、日常的な実験に過ぎない。
【0123】
分析物PIVKA-IIを検出するための方法のさらなる実施形態では、PIVKA-IIへの特異的結合剤または使用される結合剤の少なくとも1つは、上に定義されるとおりである。
【0124】
特異的結合剤-PIVKA-II複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。当業者は、かかる手段/方法を完全に熟知している。
用語「試料」または「目的の試料」または「検査試料」は、本明細書において互換的に用いられる。試料は、in vitro試料であり、in vitroで分析され、身体に戻されない。試料の例として、これだけに限らないが血液、血清、血漿、滑膜液、尿、唾液およびリンパ液などの液体試料または、組織抽出物、軟骨、骨、滑膜および結合組織などの固形試料が挙げられる。一実施形態では試料は、血液、血清、血漿、滑膜液および尿から選択される。一実施形態では試料は、血液、血清および血漿から選択される。一実施形態では試料は、血清または血漿である。
【0125】
本明細書において使用される場合、用語「参照試料」は、目的の試料と実質的に同一の様式で分析され、その情報が目的の試料のものと比較される試料を指す。それにより参照試料は、目的の試料から得られた情報の評価を可能にする基準を提供する。参照試料は、健康なまたは正常な組織、器官または個体由来であってよく、それにより、組織、器官または個体の健康な状況の基準を提供する。正常な参照試料の状況と目的の試料の状況との間の差異は、疾患発症のリスクまたはかかる疾患もしくは障害の存在もしくはさらなる進行を示し得る。参照試料は、異常なまたは病的な組織、器官または個体由来であってよく、それにより組織、器官または個体の病的な状況の基準を提供する。異常な参照試料の状況と目的の試料の状況との間の差異は、疾患発症のリスクが低いことまたはかかる疾患または障害が存在しないこと、もしくはそれらが改善していることを示し得る。
【0126】
用語、指標の「上昇した」または「増加した」レベルは、試料中のかかる指標のレベルが参照または参照試料におけるかかる指標のレベルと比較して高いことを指す。例えば、所与の疾患を罹患していない個体の同じ液体試料より高い量で、前記疾患を罹患している1個の個体の液体試料において検出可能であるタンパク質は、上昇したレベルを有する。
【0127】
ある特定の実施形態では、サンドイッチは、第1の特異的結合剤(PIVKA-IIへの)、(PIVKA-II)抗原および第2の特異的結合剤(PIVKA-IIへの)を含んで形成され、ここで第2の特異的結合剤は検出可能に標識化されている。
【0128】
多数の標識(色素とも称される)は、利用可能であり、一般に以下のカテゴリーに分類することができ、それらすべてを合わせておよびそれらそれぞれが本開示による実施形態を表す:
(a)蛍光色素
蛍光色素は、例えば、Briggsら、”Synthesis of Functionalized Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,” J.Chem.Soc.、Perkin-Trans.1(1997)1051~1058)によって記載されている。
【0129】
蛍光標識またはフルオロフォアとして、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、FITC、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型標識;TAMRAを含むローダミン型標識;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;およびこれらの類似体が挙げられる。蛍光標識は、本明細書に開示される技術を使用して標的分子中に含まれるアルデヒド基にコンジュゲートされてよい。蛍光色素および蛍光標識試薬として、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene、Oregon、USA)およびPierce Biotechnology,Inc.(Rockford、Ill.)から商業的に入手できるものが挙げられる。
【0130】
(b)発光色素
発光色素または標識は、化学発光および電気化学発光色素にさらに細分類され得る。
化学発光(chemiluminogenic)標識のさまざまなクラスとして、ルミノール、アクリジニウム化合物、セレンテラジンおよび類似物、ジオキセタン、ペルオキシオキサリック酸(peroxyoxalic acid)およびそれらの誘導体に基づく系が挙げられる。免疫診断手順のために主にアクリジニウムに基づく標識が使用される(詳細な概説は、Dodeigne C.ら、Talanta 51(2000)415~439に示されている)。
【0131】
電気化学発光標識として使用される主な関連標識は、それぞれルテニウムおよびイリジウムに基づく電気化学発光複合体である。電気化学発光(Electrochemiluminescense)(ECL)は、高感度および選択的な方法として分析的応用において非常に有用であることが証明されている。それは、化学発光分析(バックグラウンド光学シグナルの非存在)の分析的有利点と、印加する電極電位による反応調節の容易さとを組み合わせている。一般に、ルテニウム複合体、特に、液相または液体固相界面においてTPA(トリプロピルアミン)を用いて再生される[Ru(Bpy)3]2+(約620nmで光子を放出する)は、ECL標識として使用される。近年、イリジウムに基づくECL標識も記載されている(WO2012107419(A1))。
【0132】
(c)放射性標識は、3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Gn、86Y、89Zr、99TC、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211Atまたは131Biなどの放射性同位元素(放射性核種)を利用する。
【0133】
(d)画像化および治療目的のための標識として好適な金属キレート複合体は、当技術分野において周知である(US2010/0111856;US5,342,606;US5,428,155;US5,316,757;US5,480,990;US5,462,725;US5,428,139;US5,385,893;US5,739,294;US5,750,660;US5,834,456;Hnatowichら、J.Immunol.Methods 65(1983)147~157;Mearesら、Anal.Biochem.142(1984)68~78;Mirzadehら、Bioconjugate Chem.1(1990)59~65;Mearesら、J.Cancer(1990)、Suppl.10:21~26;Izardら、Bioconjugate Chem.3(1992)346~350;Nikulaら、Nucl.Med.Biol.22(1995)387~90;Cameraら、Nucl.Med.Biol.20(1993)955~62;Kukisら、J.Nucl.Med.39(1998)2105~2110;Verelら、J.Nucl.Med.44(2003)1663~1670;Cameraら、J.Nucl.Med.21(1994)640~646;Rueggら、Cancer Res.50(1990)4221~4226;Verelら、J.Nucl.Med.44(2003)1663~1670;Leeら、Cancer Res.61(2001)4474~4482;Mitchellら、J.Nucl.Med.44(2003)1105~1112;Kobayashiら、Bioconjugate Chem.10(1999)103~111;Miedererら、J.Nucl.Med.45(2004)129~137;DeNardoら、Clinical Cancer Research 4(1998)2483~90;Blendら、Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18(2003)355~363;Nikulaら、J.Nucl.Med.40(1999)166~76;Kobayashiら、J.Nucl.Med.39(1998)829~36;Mardirossianら、Nucl.Med.Biol.20(1993)65~74;Roselliら、Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals、14(1999)209~20)。
【0134】
一実施形態では、第1の特異的結合剤、PIVKA-IIおよび第2の特異的結合剤複合体を含むサンドイッチの形成のために使用されるPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。
【0135】
一実施形態では、サンドイッチイムノアッセイ方法は、かかるサンドイッチアッセイにおける一方のパートナーとして本発明によるPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤、および別の結合パートナーとしてPIVKA-II(配列番号8)のF1/F2断片に結合する第2の特異的結合剤を使用して行われる。
【0136】
一実施形態ではサンドイッチイムノアッセイ法は、かかるサンドイッチアッセイにおける一方のパートナーとして本発明によるPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤、および別の結合パートナーとしてPIVKA-II(配列番号9)のF1断片に結合する第2の特異的結合剤を使用して行われる。
【0137】
一実施形態ではサンドイッチイムノアッセイ法は、かかるサンドイッチアッセイにおける一方のパートナーとして本発明によるPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤、および別の結合パートナーとしてPIVKA-II(配列番号7)のGlaドメインに結合する第2の特異的結合剤を使用して行われる。
【0138】
第1の特異的結合剤、PIVKA-IIおよび第2の特異的結合剤を含むサンドイッチの形成では;2つの特異的結合剤は非重複エピトープに結合する。一実施形態ではPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤は、配列番号1の部分ではないPIVKA-II上のエピトープに結合する。一実施形態では、第1のおよび第2の特異的結合剤の両方、それぞれは抗体であり、一実施形態ではそれらの両方は、モノクローナル抗体である。
【0139】
一実施形態では本開示は、a)患者から試料を得るステップ;b)試料を請求項1から5のいずれかに記載のPIVKA-IIへの第1の特異的結合剤およびPIVKA-IIへの第2の特異的結合剤と、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で接触させるステップであって、第2の特異的結合剤が検出可能に標識化されている、ステップ;c)(b)において形成された複合体を測定することにより、試料中に存在するPIVKA-IIの量を測定するステップであって、参照レベルより多いPIVKA-IIの量が患者におけるHCCの存在を示す、ステップを含む、HCCを有することが疑われる患者においてHCCを診断する方法に関する。
【0140】
一実施形態では本開示は、a)患者から試料を得るステップ;b)試料を、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤と;特異的結合剤-PIVKA-II複合体の形成のために十分な時間および条件下で接触させるステップ;c)PIVKA-IIへの第2の特異的結合剤を第1の特異的結合剤-PIVKA-II複合体に、第1の特異的結合剤-PIVKA-II-第2の特異的結合剤複合体を形成するために十分な時間および条件下で加えておくステップであって、第2の特異的結合剤が配列番号1の部分ではないPIVKA-II上のエピトープに結合し、検出可能に標識化されている、ステップ;d)(c)において形成された複合体を測定することにより、試料中に存在するPIVKA-IIの量を測定するステップであって、予め決定されたレベルより多いPIVKA-IIの量が患者におけるHCCの存在を示す、ステップを含む、HCCを有することが疑われる患者においてHCCを診断する方法に関する。
【0141】
一実施形態では本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤の、PIVKA-IIの測定における使用に関する。
【0142】
一実施形態では本開示は、配列番号1の合成ペプチドに結合し、配列番号2の合成ペプチドと比較して配列番号1のペプチドに対して少なくとも10倍の結合優先性を有し、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合することを特徴とする、PIVKA-IIに結合する特異的結合剤を含有する容器を含む、試料中のPIVKA-IIを検出するおよび/またはその量を定量するためのキットに関する。
【0143】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記されている。記載される手順において改変が、本発明の精神から逸脱することなく作製され得ることは理解される。
【実施例
【0144】
実施例1
モノクローナル抗PIVKA-II抗体の生成における使用のためのペプチド免疫原の合成
1.1免疫原においておよびスクリーニング試薬において使用されるペプチドのための一般的合成方法
ペプチドを例えばProtein Technologies,Incからのマルチプルペプチド合成機でフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成によって合成した。この合成では、合成の各ステップにおいて各アミノ酸誘導体の4当量を使用した。アミノ酸誘導体を1当量の1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールを含有するジメチルホルムアミドに溶解した。ペプチドをTentagel(登録商標)レジン(Rapp Polymere GmbH、Tubingen)上で合成した。カップリング反応を、レジン負荷量と比較して4当量のHATU(1-[Bis(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)および8当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミンを含む、反応媒体としてのジメチルホルムアミド中で5分間実行した。Fmoc基をジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して各合成ステップ後8分間以内に切断した。合成レジンからのペプチドの遊離および酸不安定性保護基の切断を3時間以内に室温で、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシランおよび水(38:1:1)を含有するカクテルを用いて達成した。次に反応溶液を、ペプチドを沈殿させるための冷却ジイソプロピルエーテルと混合した。沈殿物をろ過し、冷却ジイソプロピルエーテルを用いて再度洗浄し、少量の酢酸水溶液に溶解し、凍結乾燥させた。得られた粗物質を0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル/水の勾配を使用して調製用RP-HPLCによって精製した。精製された物質の同一性をイオンスプレー質量分析によって調べた。
【0145】
1.2ペプチド免疫原51-73
プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸51から73を含み、但し、53位のリシンがアルギニンによって置換され、βAla-Ahx-βAla-βAlaのN末端伸長がある、ペプチドβAla-Ahx-βAla-βAla-VRRGNLERECVEETCSYEEAFEA-NH2(配列番号32)を合成した。
【0146】
ESI-MScalc:M+=3045.4Da;
ESI-MSexp:[M+3H]3+=1015.6Da
このペプチドのジスルフィド酸化を以下のとおり実施した。CLEAR-OX(商標)レジン(130mg、26μmol)をジクロロメタン(DCM)中で30分間膨潤させ、次にジメチルホルムアミド(DMF)、メタノールおよびアセトニトリルを用いて連続的に洗浄した。還元ペプチド(16mg、8.5μmol)を脱気したアンモニウムアセテート緩衝液(0.1M;pH7.8)とアセトニトリルとの混合物(1:1、2.5mL)に溶解し、レジンに加え、穏やかに4時間撹拌した。レジンを50%アセトニトリル水溶液を用いて洗浄し、ろ液を凍結乾燥した。
【0147】
ESI-MScalc:M+=3043.4Da;ESI-MSexp:[M+3H]3+=1015.2Da
次のステップは、ジエチルスクアレート(スクアレート=3-エトキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン)のN末端コンジュゲーションであった。エタノールおよび水(1:1)中のペプチド(9mg、3μmol)の溶液に3,4-ジエトキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(1.2当量)を加えた。溶液を炭酸ナトリウムの添加によってpH8.0に保ち、一晩撹拌し、次に乾燥のために蒸発させた。
【0148】
ESI-MScalc:M+=3167.2Da;ESI-MSexp:[M+3H]3+=1056.5Da
次に、ペプチド-KLHコンジュゲートを合成した。ホウ酸緩衝液(10mL、0.1M、pH9.0)中KLH(35mg)の溶液にスクアラミド含有ペプチド(9mg、3μmol)を加えた。反応物を一晩、室温でインキュベートし、リン酸緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して透析し、35.3mgペプチド-KLHコンジュゲートを得た。
【0149】
1.3ペプチド免疫原55-70
プレプロトロンビン(配列番号5)のアミノ酸55から70およびβAla-Ahx-βAla-βAlaのN末端伸長を含んで、ペプチドβAla-Ahx-βAla-βAla-NLERECVEETCSYEEA-NH2(配列番号33)を合成した。
【0150】
ESI-MScalc:M+=2229.0Da;
ESI-MSexp:[M+2H]2+=1115.5Da
このペプチドのジスルフィド酸化を以下のとおり実施した。CLEAR-OX(商標)レジン(230mg、46μmol)をDCM中で30分間膨潤させ、次にDMF、メタノールおよびアセトニトリルを用いて連続的に洗浄した。還元ペプチド(34mg、15.3μmol)を脱気したアンモニウムアセテート緩衝液(0.1M;pH7.8)とアセトニトリルとの混合物(1:1、5mL)に溶解し、レジンに加え、穏やかに4時間撹拌した。レジンを50%アセトニトリル水溶液を用いて洗浄し、ろ液を凍結乾燥した。
【0151】
ESI-MScalc:M+=2227.0Da;
ESI-MSexp:[M+2H]2+=1114.5Da
次のステップは、ジエチルスクアレートのN末端コンジュゲーションであった。エタノールおよび水(1:1)中のペプチド(34mg、15.3μmol)の溶液に3,4-ジエトキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(1.5当量)を加えた。溶液を炭酸ナトリウムの添加によってpH8.0に保ち、一晩撹拌し、次に乾燥のために蒸発させた。
【0152】
ESI-MScalc:M+=2351.4Da;
ESI-MSexp:[M+2H]2+=1176.6Da
次にペプチド-KLHコンジュゲートを合成した。ホウ酸緩衝液(15mL、0.1M、pH9.0)中KLH(50mg)の溶液にスクアラミド含有ペプチド(27.2mg、12.2μmol)を加えた。反応物を一晩、室温でインキュベートし、リン酸緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して透析し、49.5mgペプチド-KLHコンジュゲートを得た。
【0153】
実施例2
モノクローナル抗PIVKA-II抗体の生成
2.1 PIVKA-IIに対する抗体の生成のためのウサギの免疫処置
本明細書において本発明者らは、PIVKA-IIのN末端領域内のさまざまなエピトープに結合する能力を有する抗体の開発を記載する。かかる抗体の生成のために、12~16週齢NZWウサギをPIVKA-IIのN末端領域にわたる種々のペプチドを用いて免疫処置した。ペプチドの免疫原性を増強するために、実施例1に記載のとおり、それらを担体タンパク質としてのKLHにカップルした。免疫処置のために、プレプロトロンビンのそれぞれAA51~73および55~70を網羅するペプチドを選択した。すべてのウサギを反復免疫処置に供した。1ヵ月目は、動物を毎週免疫処置した。2ヵ月目からは、動物を1ヵ月に1回免疫処置した。1回目の免疫処置のために500μgKLH-カップルペプチドを1mL 140mM NaClに溶解し、1mlフロイント完全アジュバント(CFA)に乳化した。続くすべての免疫処置についてはCFAをフロイント不完全アジュバント(IFA)によって置き換えた。動物の力価を免疫処置の開始後45日目および105日目にそれぞれ評価した。
【0154】
2.2 力価分析
免疫処置した動物の力価を決定するために、血清滴定を配列番号1のC末端ビオチン化ペプチド(=NLERECVEETCSYEEA-E(ビオチン-PEG)-NH2、ジスルフィドとしてC/Cを含む)を使用して実施した。ペプチドを例えばProtein Technologies, Incからのマルチプルペプチド合成機でフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成によって合成した。このために各アミノ酸誘導体の4当量を使用した。アミノ酸誘導体を1当量の1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールを含有するジメチルホルムアミドに溶解した。ペプチドをTentagel Rレジン上で合成した。カップリング反応を、レジン負荷量と比較して4当量のHATUおよび8当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミンを含む、反応媒体としてのジメチルホルムアミド中で5分間実行した。Fmoc基をジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して各合成ステップ後8分間以内に切断した。合成レジンからのペプチドの遊離および酸不安定性保護基の切断を3時間以内に室温で、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシランおよび水(38:1:1)を含有するカクテルを用いて達成した。次に反応溶液を、ペプチドを沈殿させるための冷却ジイソプロピルエーテルと混合した。沈殿をろ過し、冷却ジイソプロピルエーテルを用いて再度洗浄し、少量の酢酸水溶液に溶解し、凍結乾燥させた。得られた粗物質を0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル/水の勾配を使用して調製用RP-HPLCによって精製した。精製された物質の同一性をイオンスプレー質量分析によって調べた。
【0155】
配列:NLERECVEETCSYEEA-E(ビオチン-PEG)-NH2
略号:DMF=ジメチルホルムアミド;DCM=ジクロロメタン;E(ビオチン-PEG)=Nδ-(N-ビオチニル-3-(2-(2-(3-アミノプロピルオキシ)-エトキシ)-エトキシプロピル)-L-グルタミン;-NH2=C末端カルボキサミド;
ESI-MScalc:M+=2459.7Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=1231.0Da
ジスルフィド酸化
CLEAR-OX(商標)レジン(80mg、16μmol)をDCM中で30分間膨潤させ、次にDMF、メタノールおよびアセトニトリルを用いて連続的に洗浄した。還元ペプチド(10.4mg、4.2μmol)を脱気したアンモニウムアセテート緩衝液(0.1M;pH7.8)とアセトニトリルとの混合物(1:1、1.5mL)に溶解し、レジンに加え、穏やかに2時間撹拌した。レジンを水を用いて洗浄し、ろ液を凍結乾燥した。
【0156】
ESI-MScalc:M+=2457.7Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=1230.1Da
上のビオチン化スクリーニングペプチドを96ウエルストレプトアビジンコートマイクロタイタープレートの表面に固定した。固定化のために、ビオチン化ペプチド(100μl)をマイクロタイタープレートのウエルで30分間、100ng/mlの濃度でインキュベートした。各ウサギの少量の血清(動物あたり2~3ml)を免疫処置キャンペーンの開始後45日目および105日目にそれぞれ回収した。各ウサギからの血清を1%BSAを含むPBSに希釈し、希釈物をプレートに加えた。血清を1:300、1:900、1:2700、1:8100、1:24300、1:72900、1:218700および1:656100の希釈でそれぞれ検査した。ELISA検査のために種々の希釈での100μlの血清を、各ペプチドを用いて上に記載のとおりコートした96ウエルプレートのウエルに加えた。血清を30分間、室温でインキュベートした。結合抗体をHRP-標識F(ab‘)2ヤギ抗ウサギFcγ(Dianova)および基質としてのABTS(Roche)を用いて検出した。分析した動物の力価は希釈曲線の50%シグナル減少に設定した。
【0157】
【表1】
【0158】
表1から見られるとおり、免疫処置した動物からのポリクローナル血清は、スクリーニングペプチドに結合する。したがってすべての動物は、続く抗体開発のために好適であった。
【0159】
2.3 PIVKA-IIに結合する抗体の開発
PIVKA-IIに結合する抗体の開発では、Seeberら、(2014)、PLoS One.2014 Feb4;9(2)に記載されるB細胞クローニングを使用した。抗原反応性B細胞の濃縮のために、免疫原に相同性の配列を有するビオチン化スクリーニングペプチドそれぞれをストレプトアビジンコート磁気ビーズ(Miltenyi)に固定した。ビーズのコーティングのために、ペプチドを250ng/mlの濃度で使用した。その後、免疫処置した動物の末梢血液単核細胞(PBMC)プールを調製し、ペプチドコートビーズと共に1時間インキュベートした。抗原反応性B細胞の濃縮のために、MACSカラム(Miltenyi)を使用した。B細胞選別およびインキュベーションをSeeberら、(2014)、PLoS One.2014 Feb4;9(2)に記載のとおり行った。いわゆるHit-ELISAのために、スクリーニングペプチドそれぞれをストレプトアビジンコート96ウエルプレート(Greiner Bio-One)の表面に固定化した。ビオチン化ペプチドをプレート表面に100ng/mlの濃度で固定化した。それにより100μlのペプチド溶液をプレート上で30分間、室温でインキュベートした。洗浄後、バックグラウンドシグナルを低減するためにプレートを、100μlの5%BSAを用いて30分間、室温でブロックした。プレートを再度洗浄し、30μlのウサギB細胞培養物を96ウエルプレートに移し、1時間、室温でインキュベートした。スクリーニングペプチドに結合した抗体の検出のために、HRP-標識F(ab‘)2ヤギ抗ウサギFcγ(Dianova)およびABTS(Roche)を基質として加えた。それらそれぞれのスクリーニングペプチドに結合したクローンを続く分子クローニングのためにSeeberら、(2014)、PLoS One.2014 Feb 4;9(2)に記載のとおり選択した。
【0160】
2.4 選択されたクローンのスクリーニング
ヒトプロトロンビンは、Haemochrom Diagnostica (Essen、Germany)から得た。プロトロンビンのγ-カルボキシグルタミン酸残基を、Bajaj,S.P.ら、(1982)、JBC 1982、Vol.257、No.7、3726~3731の方法に従って熱で脱炭酸させた。ビオチン化プロトロンビンおよびビオチン化脱炭酸(decarboylated)プロトロンビンを以下のとおり生成した:プロトロンビン変種を100mM KPO/100mM KCl、pH8.0に対して透析し、続いてpHをpH8.4に調整し、それぞれのプロトロンビン変種をビオチン-DDS(ビオチノイル-アミノ-3,6-ジオキサオクタノイル-アミノカルボニル-ヘプタン酸-N-ヒドロキシサクシニミドエステル(EP0632810 B1))を化学量論1:2.75(mol PT/mol ビオチン-NHS-エステル)で使用してビオチン化した。反応完了後、ビオチン化プロトロンビン変種をSuperdex200HR 10/30カラム(GE Healthcare Life Sciences)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0161】
それらそれぞれのスクリーニングペプチドに結合する抗体をクローンの小規模発現(HEK細胞の2mLトランスフェクション)によって得て以下のとおりさらに評価した:
最初に、培養物上清中の(試料量20μL)ウサギ-IgGの濃度を標準ウサギIgGサンドイッチECL-イムノアッセイを使用して決定した。このアッセイでは、いずれもアッセイ緩衝液(アッセイ緩衝液は、40mM NaPO、150mM NaCl、5mM EDTA、0.1%(w/v)ポリドカノール、2.0%(w/v)ウシ血漿アルブミンを含み、pH7.5を有する)中の、1μg/mLビオチン化IgGヒツジ抗ウサギFcγ(75μL)および1μg/mLルテニル化ヒツジ抗ウサギFcγ(70μl)をストレプトアビジンコート磁気ビーズ(=Elecsys(登録商標)ビーズ)(35μL;0.7mg/mL)と混合し、形成されたサンドイッチをElecsys 2010(Roche Diagnostics、Germany)自動化イムノアナライザーで測定する。ここで使用されるストレプトアビジンコート磁気ビーズ(Elecsys(登録商標)ビーズ)は、Roche(Roche Diagnostics GmbH、Germany)によって販売されるElecsys(登録商標)試薬容器に含まれるストレプトアビジンコート磁気ビーズと同じである。
【0162】
得られた結果に基づいて、上清をウサギIgG濃度に関して標準化し、ビオチン化デスカルボキシ-プロトロンビンへの反応性およびビオチン化プロトロンビンへの交差反応性を決定した:50ng/mLウサギIgG(50μL)に希釈した培養上清を75ng/mLビオチン化デスカルボキシ-プロトロンビンまたはプロトロンビン(50μL)と第1のステップにおいてそれぞれ反応させた、アッセイ緩衝液(上記;60μL)中の1μg/mLルテニル化IgGヒツジ抗ウサギFcγおよびストレプトアビジンコート磁気Elecsys(登録商標)ビーズ(40μL;0.7mg/mL)を第2のインキュベーションステップにおいて使用した。形成されたサンドイッチ複合体をElecsys 2010自動化イムノアナライザーを使用して測定した。天然プロトロンビンに無視できるだけの交差反応性を示すクローンだけをさらに評価した。
【0163】
ヒト試料に含有される天然PIVKA-IIへのクローンのこのサブセットの反応性をマルコウマー(marcoumar)処置患者の希釈血漿(「クマリン血漿」)または、肝細胞癌を罹患している患者の血漿(「HCC血漿」)の存在によって生じる阻害の程度を、上に記載のデスカルボキシプロトロンビン結合アッセイにおいて分析することによって調査した:INR>4を有するクマリン血漿をBiomex GmbH、(Heidelberg、Germany)から得た。上に記載の実験と同様に、第1のステップで50ng/mLウサギIgG(20μL)に希釈した培養上清をクマリン血漿(アッセイ緩衝液中1:25)とまたはアッセイ緩衝液(参照)(40μL)のみと反応させ、続いて75ng/mLビオチン化デスカルボキシプロトロンビンを含む50μLおよびアッセイ緩衝液中1μg/mLルテニル化IgGヒツジ抗ウサギFcγ 55μLおよびストレプトアビジンコート磁気Elecsys(登録商標)ビーズ(35μL;0.7mg/mL)とElecsys 2010自動化イムノアナライザーを使用して反応させた。同様に、第1のステップとして培養上清(20μL)を希釈HCC血漿(試料に応じてアッセイ緩衝液中1:3~1:160)またはアッセイ緩衝液(参照)(40μL)と反応させ、クマリン血漿阻害実験について記載されたステップが続いた。天然PIVKA IIへのクローンの相対的反応性をパーセント阻害、すなわち天然PIVKA-IIの存在または非存在(すなわち参照条件)において得られたシグナルの比、を算出することによって評価した。
【0164】
実施例3
抗体結合へのカルボキシル化の影響
PIVKA-IIにおける規定のグルタミン酸残基のガンマカルボキシル化の影響に関する、選択されたクローンのエピトープ-特異度の詳細な分析のために一連のビオチン化ペプチドを使用した(表2):
【0165】
【表2】
【0166】
N末端ビオチン化のために、E(ビオチン-PEG)(=Nδ-(N-ビオチニルl-3-(2-(2-(3-アミノプロピルオキシ)-エトキシ)-エトキシプロピル)-L-グルタミン)を標準的手順に従って使用した。N末端ビオチン-(リンカー)-タグは、表2において**Glu(Bi-PEG)によって表される。NH2は、C末端アミノ酸がC末端カルボキサミドの形態で存在することを例示するために使用する。
【0167】
Elecsys 2010イムノアナライザーを上のペプチド(aboveeptide)と選択した抗PIVKA-II抗体との反応性を決定するために以下のとおり使用した:
50μLのルテニル化(ruthenylated)抗PIVKA-II抗体(アッセイ緩衝液中300ng/mL。実施例2.4を参照されたい)を第1のステップでビオチン化ペプチド(アッセイ緩衝液中2.5ng/mL)50μLおよびアッセイ緩衝液70μLと反応させ、37℃、9分間インキュベートした。ストレプトアビジンコート常磁性Elecsys(登録商標)ビーズ(0.7mg/mL;実施例2.4を参照されたい)30μLの添加および第2のインキュベーションステップ(37℃、9分間)後、反応混合物を、微小粒子が測定電極の表面に磁気的に捕捉される測定セルに吸引した。未結合物質をProCellシステム緩衝液(Roche Diagnostics GmbH、Germany)を用いて除去する。次いで電極への電圧の印加は、光電子増倍管によって測定される光の電気化学発光に基づく発光を誘導する。
【0168】
種々のγ-カルボキシ-グルタミン酸残基含有ペプチド(Bi-配列番号2、3および4、それぞれ)を用いて得られたシグナルをいかなるγ-カルボキシグルタミン酸残基も有さない参照ペプチド(Bi-配列番号1)に標準化した。
【0169】
【表3】
【0170】
表3に見られるとおり、成熟プロトロンビン(配列番号6)の19位のグルタミン酸(グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化の非存在)の存在は、良好な抗体結合のために不可欠である。配列番号1(γ-カルボキシ-グルタミン酸残基をまったく有さない)の参照ペプチドと正確に同じ方法でビオチン化および他に処置された配列番号2のペプチドは、参照ペプチドを用いて得られるシグナルの約5%だけをもたらす。一方、先行技術抗体とは対照的に、本開示による、表3において例示される抗体は、配列番号1のペプチドと比較して配列番号3の合成ペプチドに少なくとも同様に結合する。
【0171】
実施例4
PIVKA-IIの測定のためのサンドイッチアッセイ
4.1 抗体の多量産生および精製
HEK-細胞の1L トランスフェクション培養上清のpHを2M酢酸を用いてpH4.75に調整し、溶液を20分間、室温で撹拌した。濁った溶液を≧20000xg、>20分間の遠心分離によって透明化した。続いて溶液のpHを2M KPOの添加によってpH7.5に再調整した。ウサギIgGをMabSelect SuRe Protein A mediaを使用する親和性クロマトグラフィーによって精製した:10mL MabSelect SuRe(商標)Protein Aカラム(GE Healthcare Life Sciences)をPBS(25mM KPO、150mM KCl、pH7.5)を用いて平衡化し、次に、透明培養上清をカラムに流速5~20CV/時でポンプで注入し、PBSを用いる第1の洗浄、130mM KPO/15mM クエン酸Na pH6.5を用いる第2の洗浄および0,14M KPO、15mMクエン酸、0,1M硫酸アンモニウム、pH5.0を使用する最終溶出が続いた。IgG含有画分をプールし、プールのpHをpH7.5~8.0に2M KPOを使用して再調整した。最後に溶液を50mM KPO、150mM KCl、pH7.5に対して透析した。
【0172】
4.2 ビオチン化
IgG(100mM KPO/150mM KCl pH8.4中4.5mg/mL)の溶液1mLに、ビオチン-DDS(ビオチノイル-アミノ-3,6-ジオキサオクタニル-アミノカルボニル-ヘプタン酸-N-ヒドロキシサクシニミドエステル(EP 0632810 B1);DMSO中1.4mg/ml)の50μL溶液を加えた(すなわち、IgG 1molあたり3molビオチン-NHS-エステルの化学量論)。30分間、室温で撹拌した後、10mMリシンの添加によって誘導体化を停止した。pHを飽和KHPOを用いてpH7.5に調整し、溶液を50mM KPO4/150mM KCl pH7.4に対して透析した。凝集物の除去のために、適切な画分をSuperdex 200 HR 10/30カラム(GE Healthcare Life Sciences)上でのサイズ排除クロマトグラフィーから回収した。
【0173】
4.3 ルテニル化
IgG(100mM KPO/150mM KCl pH8.4中4.5mg/mL)の溶液1mLに、ルテネート(3-)、ビス(2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’)[N-[4-(4’-メチル[2,2’-ビピリジン]-4-イル-κN1,κN1’)-1-オキソブチル]-β-アラニル-L-α-グルタミル-L-α-グルタミル-N6-[8-[(2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-1,8-ジオキソオクチル]-L-リジネート(3-)]-、(OC-6-33)-(9CI)(BPRu-UEEK-DSS;CAS406218-59-5;DMSO中4.3mg/ml)の溶液50μLを加えた(すなわち1molのIgGあたり4.0molルテニウム-NHS-エステルの化学量論)。30分間、室温で撹拌した後、10mMリシンの添加によって誘導体化を停止した。pHを飽和KHPOを用いてpH7.0に調整し、反応混合物を50mM K-PO/0.15M KCl/2%ショ糖、pH7.0に対して透析した。凝集物の除去のために、適切な画分をSuperdex 200 HR 10/30カラム(GE Healthcare Life Sciences)上でのサイズ排除クロマトグラフィーから回収した。
【0174】
実施例5
PIVKA-IIのN末端への抗体の生成
PIVKA-IIのN末端へのモノクローナル抗体も生成した。簡潔にはペプチドANTFLEEVRKGNLERE-βAla-Ahx-βAla-Cys-NH2(配列番号34)を、プレプロトロンビンのアミノ酸44から59(配列番号5)および-βAla-Ahx-βAla-Cys-NH2からなるN末端リンカーを含んで、合成した。このリンカーは、アミノ酸誘導体βAla=ベーターアラニンおよびAhx=6-アミノヘキサン酸をそれぞれ含んだ。
【0175】
ESI-MScalc:M=2262.6Da;
ESI-MSexp:[M+2H]2+=1131.8Da
リン酸緩衝液(45mL、20mM、pH7.2)中のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(150mg)の溶液に3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシサクシニミドエステル(55mg、1.5mLジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解207μmol)を加えた。反応混合物を5時間、室温でインキュベートし、次にリン酸緩衝液(0.1M、pH7.05)に対して透析した。N末端システインを含むペプチド(配列番号34)(6.8mg、3μmol)をDMSOに溶解し、0.1M EDTAを含有するマレイミド活性化KLH(36.7mg)の溶液に加えた。溶液を5時間、室温で撹拌し、次にリン酸緩衝液(0.1M、pH7.05)に対して透析し、28mg KLH-ペプチドコンジュゲートを得た。
【0176】
その後、この免疫原の支援によって生成された抗体を標準的手順に従って得た。
実施例6
Elecsysサンドイッチアッセイの一般的記載
免疫学的サンドイッチアッセイの検査原理を図1に示す。アッセイのために必要な総インキュベーション時間は、18分間である。
【0177】
第1のインキュベーション(9分間):20μLの試料(1:5 希釈済)、PIVKA-IIのN末端に対する第1のビオチン化モノクローナルPIVKA-II特異的抗体)、および実施例4によりルテニウム複合体を用いて標識された第2のPIVKA-II特異的モノクローナル抗体(7A10)を同時インキュベートし、ビオチン化抗体、PIVKA-IIおよびルテニル化抗体を含むサンドイッチ複合体を形成する。
【0178】
第2のインキュベーション(9分間):ストレプトアビジンコート微小粒子(Elecsys(登録商標)ビーズ)を第1のインキュベーションステップの混合物に加え、この第2のインキュベーションの際に、ビオチン化抗体、PIVKA-IIおよびルテニル化抗体を含む複合体は、ビオチンおよびストレプトアビジンの相互作用を介して固相に結合する。
【0179】
反応混合物を、微小粒子が電極の表面に磁気的に捕捉されている測定セルに吸引する。次に未結合物質をProCell M.を用いて除去する。次いで電極への電圧の印加は、光電子増倍管によって測定される光の電気化学発光に基づく発光を誘導する。
【0180】
標準および慣用のとおり、次にPIVKA-IIは較正曲線を介して定量/測定される。
新たに開発されたPIVKA-II Elecsys(登録商標)アッセイの測定範囲は、0~5000ng/mlである。
【0181】
実施例7
肝細胞癌(HCC)の早期検出におけるPIVKA-II Elecsysアッセイの応用
7.1 分析試料
PIVKA-IIレベルを前向き多施設試料回収で患者および対照から回収した血清において検討した。
【0182】
試料パネルの構成は以下のとおり組成物:
患者:
・ 肝細胞癌(HCC)(n=309)、次を含む
・ BCLC(バルセロナ臨床肝臓がん)ステージ0(n=10)、BCLC A(n=116)、BCLC B(n=77)、BCLC C(n=82)、BCLC D:(n=12);ステージ分類を有さない患者(n=12)
・ 他の患者CCC(=胆管細胞癌)およびHCC/CCC混合(n=21)、
対照:
対照対象から、慢性B型肝炎感染(HBV)患者(n=226)、慢性C型肝炎感染(HCV)患者(n=52)、肝硬変+HBV(n=173)、肝硬変+HCV(n=136)、肝硬変混合(n=88)、その他(n=67)を含んで合計742試料を得た。対照対象の別の群は、疑わしいがさらには明らかにされなかった症例(n=12)を含む。
【0183】
試料の由来:
試料は、以下の施設で回収された:(1)タイ:Songklanagarind Hospital Hat Yai;Srinagarind Hospital Khon Kaen; Siriraj Hospital Bangkok;Maharaj Nakorn Hospital Chiang Mai;(2)中国:Prince of Wales Hospital、Hong Kong;(3)ドイツ:NCT Heidelberg;(4)スペイン:Hospital Vall d‘Hebron Barcelona
【0184】
【表4】
【0185】
7.2 Elecsys PIVKA-IIアッセイとWAKO DCP testとの比較方法
7.1に記載の血清試料(n=1084)をPIVKA-II ElecsysアッセイおよびWAKO DCPアッセイ(WAKO Chemicals GmbH、Fuggerstr.12、D-41 468 Neuss、Germany)によって分析した。
【0186】
WAKO DCPアッセイは、レーザー誘起蛍光を用いて検出される抗体結合DCPのマイクロ流体等速電気泳動に基づいており、プロトロンビンのaa11~35に対して産生させた1つの特異的抗体を利用する(YS5;Yamaguchiら、Clin.Chem.Lab.Med.2008;46(3):411~6)。WAKO DCP検査の報告可能な範囲は、0.1~950ng/mlである。
【0187】
線形相関の係数(図2)は、0.9未満であり、分析される試料中の天然PIVKA-IIの認識における差異を示している。WAKOと本明細書で上において開示されるElecsysアッセイとの間の弱い相関の原因は、本発明による捕捉抗体の異なる抗体結合による異なるPIVKA-II形態の認識にあることが想定される。
【0188】
7.3. WAKO DCP(PIVKA-II)検査と比較するElecsys PIVKA-IIアッセイの臨床成績の比較
Roche PIVKA-IIおよびWAKO DCPアッセイに関する臨床感度を90%特異度で算出した。並行して、Roche PIVKA-IIおよびWAKO DCPアッセイに関する臨床特異度を90%感度で算出した。独立した評価をすべてのステージのHCC(n=309)対すべての対照について、および初期ステージHCC(BCLC 0およびA、n=126)対すべての対照について実施した。加えて、曲線下面積(AUC)を両アッセイおよび評価方法について算出した。
【0189】
【表5】
【0190】
表5から見られるとおり、Elecsys PIVKA-IIアッセイでの、すべてのHCCステージ対対照について、および初期ステージHCC対対照についての90%感度に関して最適化されたカットオフでの臨床特異度は、WAKO DCP検査と比較して優れている(それぞれ、59%対51%および27.6%対26.1%)。
【0191】
同時に、90%特異度に関して最適化されたカットオフでの感度は、両アッセイについてまさに同等である。
Elecsys PIVKA-IIアッセイは、すべてのHCCおよび初期ステージHCC群の両方についてそれぞれ対照に対して算出されたAUCのわずかな増加も示す。高感度領域(60~95%)における受信者動作曲線(ROC)の詳細な分析は、WAKO DCPに対するElecsys PIVKA-IIの優れた特異度をすべてのHCCステージ(図3)および初期HCCステージ(図4)それぞれについて確認している。
【0192】
7.4.結論
既存のPIVKA-IIアッセイにおける擬陽性率が、いまだ著しいことから(Leeら、Korean J.Clin.Pathol.1997;17(3):395~404、Taketaら、Acta Med.Okayama 2002;56(6):317~320)ならびに初期ステージのHCCの検出における感度および特異度が後期HCCについてほど良好でない(Limら、Scand.J.Gastroenterol.2016;51(3):344~53)ことので、PIVKA-II検出方法の改善は、臨床的判断において重要性が高い。本明細書において開示のとおり、PIVKA-IIのγ-カルボキシル化アミノ酸19および20付近にそれぞれ独自の結合特性を有する抗体の使用は、この新たに開発されたPIVKA-IIアッセイの特異度の改善を、特に高感度領域においてもたらす。すべてのHCC患者の検出およびさらにHCCの初期ステージ(BCLC 0~A)の検出の両方についてもこれはあてはまる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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