(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】口栓部の構造および包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 41/47 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
B65D41/47
(21)【出願番号】P 2020505088
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008950
(87)【国際公開番号】W WO2019172339
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018039504
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(73)【特許権者】
【識別番号】000234627
【氏名又は名称】シロウマサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】梅中 一博
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高島 弘明
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-124784(JP,A)
【文献】特開昭54-008081(JP,A)
【文献】特開2013-154886(JP,A)
【文献】特開2004-331124(JP,A)
【文献】特開昭58-149264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口が形成された筒状の注出部と、前記注出部の外周および前記先端に着脱可能に嵌合し、前記注出部への装着時に前記開口を閉鎖するキャップと、を備える口栓部の構造であって、
前記注出部は、
軸方向において前記先端から離間した位置における、前記注出部の外周面の周方向の一部に設けられ、径方向外側に突出した第1外側突起と、
前記軸方向において前記第1外側突起よりも前記先端からさらに離間した位置に設けられ、前記注出部の外周面から径方向外側に突出した第2外側突起と、
を備え、
前記第1外側突起は、
前記キャップを抜け止め可能に係止する係止面と、
前記係止面と前記先端との間において、螺旋状に延びる第1ガイド面と、
を有しており、
前記キャップは、
前記注出部において、前記第1外側突起と前記開口とを覆って装着可能なキャップ本体と、
前記キャップ本体の基端側に接続され、前記キャップ本体の前記注出部への装着時に前記第2外側突起を側方から覆う環状に形成されており、前記キャップ本体の回転時に前記第2外側突起から受ける外力によって破断可能な脆弱部が周方向の一部に設けられたタンパーバンドと、
を備え、
前記キャップ本体は、
その内周面から径方向内側に
弾性変位可能に突出され、前記注出部への装着時に、
その弾性復元力により径方向内側に突出することで前記係止面に係止可能な第1内側突起と、
前記内周面から径方向内側に突出され、前記第1内側突起が前記係止面に係止していない状態で、前記第1ガイド面に沿って移動可能に設けられた第2内側突起と、
を有しており、
前記注出部の前記外周面には、前記キャップの着脱時に前記第1内側突起および前記第2内側突起が沿って前記軸方向に移動できる、第2ガイド面が形成されている、
口栓部の構造。
【請求項2】
前記注出部は、
前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端に、より近い先端側端部との間に、前記キャップ本体における前記第2内側突起が着脱可能に嵌合できる嵌合隙間を形成する第3外側突起を、さらに備える、請求項1に記載の口栓部の構造。
【請求項3】
前記第1内側突起は、
前記キャップ本体の基端部から、径方向内側に斜めに延びる突片によって形成されている、請求項1または2に記載の口栓部の構造。
【請求項4】
前記第1外側突起は、
前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端から、より離れた基端側端部およびその近傍では、径方向外側の突出量が、前記周方向において前記基端側端部から前記基端側端部と反対側の端部に向かうにつれて漸増している、請求項1~3のいずれか1項に記載の口栓部の構造。
【請求項5】
前記キャップ本体の軸方向から見た前記キャップ本体の外形は、全体として扁平な形状
を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の口栓部の構造。
【請求項6】
前記キャップ本体の外周面が、前記軸方向に延びるとともに前記径方向の突出量が異なる複数のリブを備えることで、前記キャップ本体の外形は軸方向視で楕円状に形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の口部材の構造。
【請求項7】
前記キャップ本体の外周面は、軸方向先端側の第1外周面と軸方向基端側の第2外周面とを有し、前記第1外周面の外径は、前記第2外周面の外径よりも小さく、前記楕円状の短軸と交差する前記第2外周面の一部は、リブを備えていないリブ非形成領域である、請求項6に記載の口栓部の構造。
【請求項8】
前記注出部における前記第1外側突起および前記第2外側突起は、
それぞれが前記周方向において180°回転対称となるように、前記第2ガイド面を間に挟んで、
それぞれ1組設けられており、
前記キャップ本体における前記第1内側突起および前記第2内側突起は、
前記注出部の前記周方向における前記第2ガイド面の幅以下の範囲に形成され、
それぞれが前記キャップ本体の周方向において180°回転対称となるように、
それぞれ1組設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の口栓部の構造。
【請求項9】
前記注出部は、補助突起をさらに備え、
前記補助突起は、前記軸方向における前記第1外側突起と前記第2外側突起との間の位置から、前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端からより離れた基端側端部に向けて延びるとともに前記第1内側突起が当接しつつ移動可能な傾斜ガイド面を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の口栓部の構造。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の口栓部の構造を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口栓部の構造および包装体に関する。
本願は、2018年3月6日に日本に出願された特願2018-039504号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
流動体からなる内容物を液密に収容し、必要に応じて、内容物を外部に容易に注出できるスパウト付きパウチが知られている。スパウト付きパウチは、スパウトの先端部に設けられた注出部に着脱可能に固定されたキャップによって、注出口が開閉可能になっている。
注出部およびキャップからなるスパウトの口栓部は、タンパーエビデント(不正開封防止)構成とするため、キャップの開口側先端に、開栓動作によって切断されるタンパーバンドなどが設けられる場合がある。
例えば、特許文献1に記載の口栓部の構造では,注出部の外周面に形成された雄ねじにキャップの内周面に形成された雌ねじが螺合することによって、キャップが注出部に着脱可能に固定される。さらに、特許文献1におけるキャップには、開栓時に回転されると、注出部の外周の爪部に引っかかって切断されるバンドピースが設けられている。
タンパーエビデント構成ではないが、特許文献2には、蓋の開口部において内側に突出するアンダーカット部が、口部から外周側に突出した係止部と嵌合することによって閉栓される蓋付き容器が記載されている。この蓋付き容器は、蓋の内側の膨出部が口部の外周に設けられた傾斜面部に沿って移動することで開栓力が得られる。この蓋付き容器では、蓋を口部にかぶせて軸方向に押圧したり、打栓したりすることによって閉栓することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2004-331124号公報
【文献】日本国実公平4-27789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術には、以下のような問題がある。
特許文献1に記載の技術では、キャップと注出部とが螺合されているため、キャップを着脱する際に、少なくても1~2周程度の回転動作が必要とされる。このため、開閉に手間がかかる場合がある。例えば、子供、老人、病人などにとっては、開閉が難しい場合もある。さらに、閉栓時には、ねじ込みが不充分であると、内容物が漏れてしまう可能性もある。
特許文献2に記載の技術では、蓋と口部とが螺合していないため、開栓時における蓋の回転量が少なくて済む。特に、閉栓時には打栓が可能である。しかし、開閉のたびに、アンダーカット部を拡径させる必要があるため、開閉に必要な力はあまり低減されない場合がある。特許文献2の蓋に特許文献1のようなバンドピースを追加することも考えられるが、この場合には、初回開栓時には、アンダーカット部を拡径するための力と、バンドピースを切断するための力と、が必要になるため、一層大きな開封力が必要になる。
さらに、特許文献2に記載の技術では、開閉を繰り返すと、アンダーカット部の内径が広がるため閉栓能力が経時的に低下しやすい可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、タンパーエビデント構成であっても、初回開栓時および開栓後の開閉動作が容易となる口栓部の構造および包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様の口栓部の構造は、先端に開口が形成された筒状の注出部と、前記注出部の外周および前記先端に着脱可能に嵌合し、前記注出部への装着時に前記開口を閉鎖するキャップと、を備える口栓部の構造であって、前記注出部は、軸方向において前記先端から離間した位置における、前記注出部の外周面の周方向の一部に設けられ、径方向外側に突出した第1外側突起と、前記軸方向において前記第1外側突起よりも前記先端からさらに離間した位置に設けられ、前記注出部の外周面から径方向外側に突出した第2外側突起と、を備え、前記第1外側突起は、前記キャップを抜け止め可能に係止する係止面と、前記係止面と前記先端との間において、螺旋状に延びる第1ガイド面と、を有しており、前記キャップは、前記注出部において、前記第1外側突起と前記開口とを覆って装着可能なキャップ本体と、前記キャップ本体の基端側に接続され、前記キャップ本体の前記注出部への装着時に前記第2外側突起を側方から覆う環状に形成されており、前記キャップ本体の回転時に前記第2外側突起から受ける外力によって破断可能な脆弱部が周方向の一部に設けられたタンパーバンドと、を備え、前記キャップ本体は、その内周面から径方向内側に弾性変位可能に突出され、前記注出部への装着時に、その弾性復元力により径方向内側に突出することで前記係止面に係止可能な第1内側突起と、前記内周面から径方向内側に突出され、前記第1内側突起が前記係止面に係止していない状態で、前記第1ガイド面に沿って移動可能に設けられた第2内側突起と、を有しており、前記注出部の前記外周面には、前記キャップの着脱時に前記第1内側突起および前記第2内側突起が沿って前記軸方向に移動できる、第2ガイド面が形成されている。
【0007】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記注出部は、前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端に、より近い先端側端部との間に、前記キャップ本体における前記第2内側突起が着脱可能に嵌合できる嵌合隙間を形成する第3外側突起を、さらに備えてもよい。
【0008】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記第1内側突起は、前記キャップ本体の基端部から、径方向内側に斜めに延びる突片によって形成されていてもよい。
【0009】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記第1外側突起は、前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端から、より離れた基端側端部およびその近傍では、径方向外側の突出量が、前記周方向において前記基端側端部から前記基端側端部と反対側の端部に向かうにつれて漸増していてもよい。
【0010】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記キャップ本体の軸方向から見た前記キャップ本体の外形は、全体として扁平な形状を有してもよい。
【0011】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記キャップ本体の外周面が、前記軸方向に延びるとともに前記径方向の突出量が異なる複数のリブを備えることで、前記キャップ本体の外形は軸方向視で楕円状に形成されていてもよい。
【0012】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記キャップ本体の外周面は、軸方向先端側の第1外周面と軸方向基端側の第2外周面とを有し、前記第1外周面の外径は、前記第2外周面の外径よりも小さく、前記楕円状の短軸と交差する前記第2外周面の一部は、リブを備えていないリブ非形成領域であってもよい。
【0013】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記注出部における前記第1外側突起および前記第2外側突起は、それぞれが前記注出部の前記周方向において180°回転対称となるように、前記第2ガイド面を間に挟んで、それぞれ1組設けられており、前記キャップ本体における前記第1内側突起および前記第2内側突起は、前記注出部の前記周方向における前記第2ガイド面の幅以下の範囲に形成され、それぞれが前記キャップ本体の周方向において180°回転対称となるように、それぞれ1組設けられていてもよい。
【0014】
上記第1の態様の口栓部の構造においては、前記注出部は、補助突起をさらに備え、前記補助突起は、前記軸方向における前記第1外側突起と前記第2外側突起との間の位置から、前記周方向における前記第1外側突起の端部のうち、前記第1ガイド面が前記先端からより離れた基端側端部に向けて延びるとともに前記第1内側突起が当接しつつ移動可能な傾斜ガイド面を有していてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様の包装体は、上記第1の態様の口栓部の構造を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の口栓部の構造および包装体では、タンパーエビデント構成であっても、初回開栓時および開栓後の開閉動作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の口栓部の構造を有する包装体の一例を示す模式的な分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における口栓部の開栓前の模式的な正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における口栓部のキャップおよび注出部の詳細構成を示す正面視の模式的な分解図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における口栓部の注出部の模式的な側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における口栓部の注出部の模式的な平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における口栓部のキャップの模式的な斜視部分断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態における口栓部の開栓動作の動作説明図である。
【
図10】本発明の第1実施形態における口栓部の開栓動作の動作説明図である。
【
図11】本発明の第1実施形態における口栓部の開栓動作の動作説明図である。
【
図12】本発明の第2実施形態における口栓部の注出部の模式的な正面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態における口栓部の注出部の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下では、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の口栓部を有する包装体の一例を示す模式的な分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態における口栓部の開栓前の模式的な正面図である。
図3は、本発明の第1実施形態における口栓部のキャップおよび注出部の詳細構成を示す正面視の模式的な分解図である。
図4は、本発明の第1実施形態における口栓部の注出部の模式的な側面図である。
図5は、本発明における第1実施形態の口栓部の注出部の模式的な平面図である。
図6は、本発明の第1実施形態における口栓部のキャップの模式的な斜視部分断面図である。
図7は、
図2におけるA-A断面図である。
図8は、
図1におけるC-C断面図である。
【0019】
図1に示す本実施形態のスパウト付きパウチ1(本発明の包装体に相当する)は、流動体からなる内容物を後述する注出口から注出可能に収容する容器である。スパウト付きパウチ1に収容する内容物は、流動体であれば、特に限定されない。スパウト付きパウチ1に収容する内容物の例としては、例えば、飲料、流動性食品、レトルト食品、食品原料、液状調味料、薬液等が挙げられる。
スパウト付きパウチ1は、容器本体4、スパウト2、およびキャップ3を備える。
図1は分解斜視図のため、スパウト2とキャップ3とが離間して描かれているが、
図2に示すように、キャップ3の未開栓状態では、キャップ3は、スパウト2の端部を覆った状態で、スパウト2と係合している。
本実施形態では、スパウト2の中心軸線Oに沿う軸方向において、スパウト付きパウチ1のキャップ3が設けられている側を上側、容器本体4が設けられている側を下側と称し、中心軸線Oに交差する方向を径方向と称し、中心軸線O回りの方向を周方向と称する場合がある。
【0020】
容器本体4の構成は、内容物を液密に収容することができ、後述するスパウト2が固定できれば特に限定されない。例えば、容器本体4は、サイドガゼット袋、底ガゼット袋、側部および底部にガゼットを有する袋、ピロー袋、平袋等が用いられてもよい。
図1に示す例では、容器本体4として、サイドガゼット袋が用いられている。すなわち、容器本体4は、前面フィルム4aと、前面フィルム4aと重なる後面フィルム4bとの間に、2つ折りに折りたたまれた側面フィルム4cが挟まれている。
前面フィルム4a、後面フィルム4b、および側面フィルム4cは、それぞれの周縁部でヒートシールされている。
容器本体4の上端部には、中心部に後述するスパウト2が挟まれた状態で、前面フィルム4a、後面フィルム4b、および側面フィルム4cを互いに接着する上部シール4dが形成されている。
【0021】
スパウト2は、全体として細長い管状部材である。スパウト2には、注出部2A、フランジ部2B、取り付け部2C、および導管部2Dがこの順に配置されている。注出部2A、フランジ部2B、および導管部2Dは、スパウト2の中心軸線Oに同軸に配置されている。なお、スパウト2に装着された際のキャップ3や後述するキャップ本体3Aも、中心軸線Oと同軸に配置されている。
以下では、スパウト付きパウチ1における各部の相対的な位置関係を説明する場合に、XYZ直交座標系を参照する場合がある。Z軸は、中心軸線Oと平行な軸線である。すなわち、Z軸方向は上記軸方向と同一である。Y軸は、Z軸と直交し、上部シール4dのシール面に平行な軸線である。X軸は、Z軸およびY軸に直交する軸線である。
中心軸線O上において、導管部2Dから注出部2Aに向かう方向は、Z軸正方向である。X軸正方向は、X軸に沿って後面フィルム4bから前面フィルム4aに向かう方向である。Y軸正方向は、Z軸正方向を鉛直上方向に合わせて、X軸負方向にスパウト付きパウチ1を見たとき、左から右に向かう方向である。X軸負方向にスパウト付きパウチ1を見た図を正面図、Y軸方向にスパウト付きパウチ1を見た図を側面図と称する場合がある。
以下では、特に断らない限り、例えば、キャップ3のように、スパウト2から着脱自在な部材であっても、未開栓状態における位置関係に基づいて、各部の位置関係が説明される。
【0022】
図1に示すように、注出部2Aは、筒状であり、容器本体4に収容された内容物を注出するための貫通孔を有している。貫通孔は、注出部2Aの先端T(図示上側)に開口している。このため、注出部2Aの先端には、注出口p1が開口している。注出口p1の開口形状は中心軸線Oを中心とする円形である。
注出部2Aの外周面2aは、中心軸線Oを中心とする直径Dの円筒面からなる。
本実施形態では、注出部2Aの本体は、上述の外周面2aを有し、端部に注出口p1が形成された円筒管2Eによって形成されている。円筒管2Eは、後述するフランジ部2Bおよび取り付け部2Cの中心部を通り、後述する導管部2Dに接続している。円筒管2Eの管径は、一定でもよい。ただし、フランジ部2Bおよび取り付け部2Cにおける円筒管2Eの外周面2eの外径は、注出部2Aにおける外周面2aの外径から変化していてもよい。
注出口p1と軸方向の反対側における注出部2Aの端部には、外周面2aから径方向外側に突出する板状部2bが形成されている。注出部2Aの、注出口p1と軸方向の反対側の端部を、基端と称する場合がある。
注出部2Aの詳細構成は後述される。
【0023】
フランジ部2Bは、板状部2bのZ軸負方向側に隣接して設けられている。フランジ部2Bは、円筒管2Eの外周面2eから側方(径方向外側)に突出した第1フランジf1、第2フランジf2、および第3フランジf3を備える。第1フランジf1、第2フランジf2、および第3フランジf3の平面視(Z軸に沿って見る方向)の外形は、一例として、八角形状である。第1フランジf1、第2フランジf2、および第3フランジf3の外形はいずれも同形である。第1フランジf1、第2フランジf2、および第3フランジf3の外形は、平面視で、板状部2bの外形よりも外側に突出している。
図2に示すように、第1フランジf1と第2フランジf2との間、第2フランジf2と第3フランジf3との間には、少なくともX軸方向に貫通する隙間が形成されている。
フランジ部2BのZ軸方向における幅は、スパウト付きパウチ1の使用者が、スパウト2をX軸方向から指で把持可能な大きさを有する。
【0024】
図1に示すように、取り付け部2Cは、スパウト2において、前面フィルム4aと後面フィルム4bとを図示上縁部において液密に接着するための部位である。
取り付け部2Cは、第3フランジf3に隣り合ってフランジ部2BのZ軸負方向側に設けられている。取り付け部2Cは、円筒管2Eの外周面2eからY軸方向に延びている。取り付け部2Cは、中心軸線Oを通りYZ平面に平行な平面を対称面とする板状に延びている。取り付け部2CにおけるX軸方向の幅は、外周面2eから離れるにつれて漸次減少している。取り付け部2CにおけるX軸方向の幅は、延在方向の先端部で、前面フィルム4aと後面フィルム4bとの接着に影響がでない程度で、0.1mm~0.5mm程度になっている。すなわち、取り付け部2Cを挟んで接着された前面フィルム4aおよび後面フィルム4bは、取り付け部2Cの先端部において段差は生じない。このため、取り付け部2CのY軸方向の先端部と上部シール4dとは液密な接着が可能となっている。
取り付け部2Cは、Z軸方向から見てフランジ部2Bの外形の内側に入る大きさで形成されている。
【0025】
導管部2Dは、容器本体4の内部に挿入され、容器本体4内の内容物を注出部2Aの注出口p1に導く管路を形成する部位である。
導管部2Dは、円筒管2Eと連通していれば、管路の太さ、長さ、形状は特に限定されない。例えば、導管部2Dは、円筒管2Eと同形状の管状部でもよいし、円筒管2Eから拡径する管状部でも、あるいは縮径する管状部でもよい。例えば、導管部2Dの管路断面は、扁平形状を有していてもよい。
本実施形態では、導管部2Dは、取り付け部2Cに延びる円筒管2Eから中心軸線Oに沿って延びる細長い円筒状に形成されている。導管部2Dは、延在方向の先端(下端)に向かうにつれて緩やかに縮径している。このため、導管部2Dの先端における開口部p2は、注出口p1よりも開口面積が小さい。
本実施形態では、容器本体4の内容物が注出口p1に円滑に流れるように、導管部2Dの側面に複数の孔部2fが形成されている。これにより、開口部p2に加えて各孔部2fからも容器本体4の内容物が導管部2Dの管内に流入できる。
【0026】
このような構成のスパウト2は、少なくとも取り付け部2Cの表面が、容器本体4の前面フィルム4aおよび後面フィルム4bと接着可能な樹脂材料からなる。取り付け部2Cに用いられる樹脂材料は、前面フィルム4aおよび後面フィルム4bをヒートシールによって接着可能な材料であることがより好ましい。
本実施形態では、取り付け部2Cを含むスパウト2の全体が、前面フィルム4aおよび後面フィルム4bをヒートシールによって接着可能な材料で構成されている。このような樹脂材料としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0027】
ここで、注出部2Aの詳細構成について説明する。
図3、4に示すように、注出部2Aの外周面2aには、ガイド突起5(第1外側突起)と、係合用突起6(第3外側突起)と、が形成されている。
【0028】
ガイド突起5は、外周面2aの周方向に沿って延びる円弧状の突起である。ガイド突起5の個数は1以上であれば、特に限定されない。以下では、一例として、ガイド突起5が2個の場合で説明する。
図5に示すように、各ガイド突起5は、互いに同形状を有している。各ガイド突起5は、中心軸線Oを対称軸として180°回転対称の位置関係に設けられている。
図5に示す例では、各ガイド突起5の周方向の長さは、外周面2aの円周の1/4よりもわずかに小さい。すなわち、各ガイド突起5の中心軸線Oに対する中心角が90°よりもわずかに小さい。なお、本実施形態において中心角とは、中心軸線Oから、ガイド突起5といった対象物の周方向における両端をそれぞれ通過する2本の直線間の角度をいう。
ただし、後述するキャップ3との着脱が可能であれば、各ガイド突起5の中心軸線Oに対する中心角としては、必要に応じて、0°を超え180°未満の適宜の角度が可能である。
ガイド突起5が2個の場合、各ガイド突起5の中心軸線Oに対する中心角は、45°以上90°以下であることがより好ましい。
中心角が45°未満であると、開封に必要なキャップ3のZ軸方向の移動量およびキャップ3への付勢力が得られない可能性がある。加えて、キャップ3の装着におけるガイド突起5の耐引き抜き強度が不足する可能性もある。
中心角が90°を超えると、開栓時および挿脱時にキャップ3の回転量が増えるため、キャップ3が外しにくくなる可能性がある。加えて、キャップ3側の係合部の周方向の長さを短くする必要があるため、キャップ3の装着におけるキャップ3側の係合部の耐引き抜き強度が不足する可能性もある。
【0029】
図4に示すように、ガイド突起5は、軸方向において先端Tから離間した位置に配置されている。ガイド突起5は、注出部2Aの外周面2aの周方向の一部に設けられ、径方向外側に突出している。本実施形態においては、ガイド突起5は、板状部2bと先端Tとの間の外周面2aにおいて、周方向における第1端部e1(本発明の先端側端部に相当する)から第2端部e2(本発明の基端側端部に相当する)に向かって延びている。
図5に示すように、第1端部e1は、注出部2AをZ軸正方向から負方向に見て、反時計回り方向の端部である。言い換えれば、第1端部e1は、注出部2AをZ軸正方向から負方向に見て、時計回り方向におけるガイド突起5のリーディング側の端部である。第2端部e2は、同様に見て時計回り方向の端部である。言い換えれば、第2端部e2は、注出部2AをZ軸負方向に見て、時計回り方向におけるガイド突起5のトレーリング側の端部である。なお、本実施形態において、時計回り方向は、注出部2Aを閉栓する際にキャップ3を回転させる方向であり、反時計回り方向は、注出部2Aを開栓する際にキャップ3を回転させる方向である。
ガイド突起5の側面5cは、外周面2aと同軸の円筒面状である。側面5cは、ガイド突起5の径方向外側の面である。ただし、第1端部e1側のガイド突起5の側面には、第2端部e2から第1端部e1に向かうにつれて側面5cから外周面2aに向かって傾斜する傾斜端面5dが形成されている。傾斜端面5dは、後述するキャップ3の第2内側突起を係止するために設けられている。
第2端部e2側のガイド突起5の側面には、第2端部e2から第1端部e1に向かうにつれて外周面2aから側面5cに向かって緩やかに傾斜する傾斜部5eが形成されている。傾斜部5eの平面視の平均的な傾斜角は、傾斜端面5dよりも浅い。すなわち、傾斜部5eの外周面2aに対する傾斜角は、傾斜端面5dの外周面2aに対する傾斜角よりも小さい。
【0030】
図4に示すように、ガイド突起5の下面5a(係止面)は、板状部2bに面している。板状部2bと下面5aとの間には、後述するキャップ3の第1内側突起が周方向に進退可能に嵌合できる隙間が形成されている。下面5aは、後述するキャップ3の第1内側突起が進入した際は、第1内側突起を軸方向に係止することができる。
板状部2bと下面5aとの間の隙間は、本実施形態では、第1端部e1から第2端部e2に向かってわずかに縮小している。ただし、板状部2bと下面5aとの間の隙間は一定でもよい。
【0031】
ガイド突起5において、下面5aと軸方向の反対側には、上面5b(第1ガイド面)が形成されている。上面5bは、第2端部e2から第1端部e1に向かって下面5aから漸次先端Tに向かって近づく螺旋状(図示右上がりの螺旋状)に延びている。ただし、板状部2bから上面5bまでの距離が滑らかに変化していれば、上面5bは、厳密な螺旋面には限定されない。上面5bは螺旋状に滑らかに変化する適宜の湾曲面で形成される。例えば、
図4に示す例では、上面5bは、周方向には螺旋状に旋回し、かつ径方向内側から径方向外側に向かうにつれて下面5a側に向かって傾斜する湾曲面からなる。上面5bは、反時計回り方向に進むに従い先端Tに向かうように傾斜している。
上面5bの第1端部e1側には、第2端部e2から第1端部e1に向かうにつれて、上面5bから下面5aに向かう第1傾斜面5fが形成されている。
上面5bの第2端部e2側には、側面に傾斜部5eが形成されている範囲に、第2端部e2から第1端部e1に向かうにつれて、下面5aから上面5bに向かう第2傾斜面5gが形成されている。第2傾斜面5gの側面視の平均的な傾斜は、上面5bの周方向における傾斜よりも大きい。言い換えれば、第2傾斜面5gの、軸方向と直交する平面に対する傾斜角は、上面5bの上記平面に対する傾斜角よりも大きい。
【0032】
図5に示すように、係合用突起6は、各ガイド突起5の傾斜端面5dとの間に隙間を開けて隣り合う位置に形成されている。
図3、4に示すように、各係合用突起6は、周方向において、傾斜端面5dおよび第1傾斜面5fに臨む範囲に、Z軸方向に延びている。係合用突起6は、注出部2Aの外周面2aから径方向外側に突出して設けられている。
図5に示すように、各係合用突起6のXY平面に平行な断面形状は円弧状である。
係合用突起6の突出高さは、後述するキャップ3によって注出口p1を閉栓する際に使用者にクリック感が感じられる適宜の高さとされる。例えば、係合用突起6の突出高さは、0.05mm以上1.0mm以下とされてもよい。係合用突起6の突出高さはZ方向において変化していてもよい。
このような構成により、ガイド突起5の傾斜端面5dと係合用突起6との間には、周方向断面において、略V字状の浅い溝部(嵌合隙間)が形成されている。上記嵌合隙間の、軸方向に直交する方向での断面形状は、V字状に限定されず、U字状であってもよい。
周方向に隣り合う各ガイド突起5の間の外周面2aは、後述するキャップ3が着脱時にZ軸方向に移動できる第2ガイド面2dを構成している。
【0033】
図5に示すように、板状部2bは、Y軸方向に対向する平面視C字状の2つの部分から形成されている。板状部2bにおけるそれぞれのC字状の形状は、中心軸線Oを対称軸として、180°回転対称である。
各板状部2bの外周部には、第1ラチェット6A(第2外側突起)および第2ラチェット6B(第2外側突起)が径方向外側に突出している。このため、第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bは、軸方向においてガイド突起5からさらに離間した位置に設けられ、注出部2Aの外周から径方向外側に突出している。
第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bは、後述するキャップ3が開栓される際に、タンパーバンドを破断させる外力をタンパーバンドに与えるために設けられている。
【0034】
第1ラチェット6Aは、各ガイド突起5の周方向における中間部と径方向において重なり合う2位置にそれぞれ形成されている。第1ラチェット6Aの平面視形状は、注出部2AをZ軸正方向から負方向に見るとき、時計回り方向に傾斜して径方向外側に延びている。第1ラチェット6Aは、このような平面視形状がZ軸方向に延びている。
第2ラチェット6Bは、各ガイド突起5の第2端部e2と径方向において重なり合う2位置にそれぞれ形成されている。第2ラチェット6Bの平面視形状は、注出部2AをZ軸正方向から負方向に見るとき、時計回り方向に傾斜して径方向外側に延びている。第2ラチェット6Bは、このような平面視形状がZ軸方向に延びている。
【0035】
図1に示すように、キャップ3は、スパウト2の注出口p1を液密に封止するため、スパウト2に着脱可能に固定される栓部材である。
キャップ3は、有頂筒状のキャップ本体3Aと、タンパーバンド3Bと、を備える。
【0036】
図3に示すように、キャップ3は、図示下方に開口する有頂筒状に形成されている。
キャップ本体3Aおよびタンパーバンド3Bの各内周面3a、3nは、それぞれ略円筒面状である。内周面3aの内径は、注出部2Aの各ガイド突起5の外径よりも大きい。内周面3nの内径は、各第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bの外径と略同径である。
キャップ本体3Aは、注出部2Aにおいて、ガイド突起5と注出口p1とを覆って注出部2Aに装着可能である。
図1に示すように、キャップ本体3Aの外周面3cには、Y軸方向の一部を除いて、複数のリブ3dが突出している。リブ3dは、Z軸方向から見て、中心軸線Oを中心とする放射状に突出している。リブ3dは、キャップ3を着脱する際の手指の滑り止めとなる凹凸部になっている。
各リブ3dの突出方向の先端を連ねた包絡面は、キャップ本体3Aの最外の外形を規定している。以下では誤解のおそれがない限り、このようなキャップ本体3Aの最外の外形を単にキャップ本体3Aの外形と称する。
キャップ本体3Aの外形は、平面視では、長径方向がX軸方向に一致する楕円である。キャップ本体3Aの外形の長径はd1、短径はd2(ただし、d2<d1)である。
このため、使用者は、キャップ本体3Aの短径方向の端部に指をかけてキャップ3を回転させることによって、キャップ本体3Aを長径方向に把持して回転する場合に比べてキャップ本体3Aをつかみ易い。
複数のリブ3dは、軸方向に延びるとともに外周面3cからの径方向の突出量が異なっている。すなわち、キャップ本体3Aの外周面3cは、軸方向に延びるとともに径方向の突出量が異なる複数のリブ3dを備えることで、キャップ本体3Aの外形は軸方向視で楕円状に形成されている。なお、「キャップ本体3Aの外形は軸方向視で楕円状に形成されている」とは、複数のリブ3dの径方向外側の端部を互いに接続する仮想線L(
図7参照)が楕円状であることをいう。また、本実施形態の「楕円状」には長円が含まれていてもよい。キャップ本体3Aの外周面3cは、複数のリブ3dを備えるリブ形成領域R1と、リブを備えないリブ非形成領域R2と、を有する。言い換えれば、リブ非形成領域R2におけるリブの径方向突出量は0である。リブ非形成領域R2は、外周面3cの、中心軸線Oを挟んだ2つの位置に各々配置されている。
より詳細には、本実施形態のキャップ本体3Aの外周面3cは、頂部側(先端側)に位置する第1外周面3sと、基端側に位置する第2外周面3tとを有し、第1外周面3sの外径は、第2外周面3tの外径よりも小さい。第2外周面3tの軸方向長さは、第1外周面3sの2倍程度であるが、この比率は適宜調整してよい。本実施形態のリブ非形成領域R2は、第2外周面3tのみに設けられている。すなわち、軸方向視で上記楕円状の短軸と交差する第2外周面3tの一部が、リブを備えていないリブ非形成領域R2である。第1外周面3sには、全周に亘って複数のリブ3dが設けられている。
なお、本発明はこのような構成に限定されず、外周面3cの外径が軸方向において略一定であり、リブ非形成領域R2が外周面3cの軸方向全域に亘って設けられていてもよい。リブ非形成領域R2が外周面3cに設けられておらず、複数のリブ3dの径方向突出量が異なるのみで、キャップ本体3Aが軸方向視で楕円状に形成されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、キャップ本体3AのZ軸正方向側の端部は、Z軸負方向側にへこんだ天面部3eで塞がれている。天面部3eの内面には、シール体3fがZ軸負方向に突出している。
シール体3fは、キャップ3の装着時にスパウト2の注出口p1を塞ぐ筒状突起である。本実施形態では、シール体3fは、注出口p1に着脱可能に嵌合する円筒状である。シール体3fの先端の外周部には、注出口p1への挿入を円滑するためのテーパが形成されている。
【0038】
キャップ本体3AのZ軸負方向側の端部(すなわち基端部)には、外周面3cから径方向外側に突出するフランジ3gが形成されている。キャップ本体3AのZ軸負方向側の端面3jは、フランジ3gのZ軸負方向側の端面よりもわずかに下方または径方向内側に突出している。
フランジ3gのZ軸負方向側の端面には、接続片3h(脆弱部)を介してタンパーバンド3Bが接続されている。接続片3hは、フランジ3gに沿って平面視半円状に延びる薄肉片である。接続片3hは後述するようにキャップ3を回転することによって受ける外力によって、破断可能な脆弱部である。
【0039】
キャップ本体3Aの内周面3aには、フラップ7(第1内側突起)と、フラップ7の周方向の近傍においてフラップ7と隣り合うように形成されたストッパ8(第2内側突起)とが、径方向内側に突出している。ストッパ8は、キャップ本体3Aの内周面3aの周方向においてフラップ7に近接して配置されている。フラップ7およびストッパ8の個数は1以上であれば、特に限定されない。以下では、一例として、フラップ7およびストッパ8がそれぞれ2個の場合で説明する。
【0040】
図7には、
図2におけるA-A断面図が示されている。
図7に示すように、キャップ3が未開栓の状態では、キャップ3の長径方向は、Y軸方向に一致している。
2個のフラップ7は互いに同形状を有している。2個のストッパ8も互いに同形状を有している。フラップ7およびストッパ8は、中心軸線Oを対称軸として180°回転対称の位置関係に設けられている。
各フラップ7は、Y軸方向に互いに対向する位置に配置されている。このため、各フラップ7は、キャップ3が未開栓の状態では、Z軸正方向から負方向に見ると、それぞれガイド突起5と重なっている。
各ストッパ8は、キャップ3が未開栓の状態では、いずれも、係合用突起6と傾斜端面5dとの間に形成された嵌合隙間に嵌合する位置に配置されている。
互いに周方向に近接したフラップ7およびストッパ8は、各ガイド突起5の間の第2ガイド面2dに沿って軸方向に進退可能な周方向の範囲に形成されている。例えば、本実施形態では、互いに周方向に近接したフラップ7およびストッパ8は、各ガイド突起5の形成範囲が中心軸線Oに対する中心角が90°よりもわずかに小さいことに対応して、中心軸線Oに対する中心角が90°以下の範囲に形成されている。
【0041】
図6に示すように、フラップ7は、端面3jの内縁部から径方向内側に向かうにつれて、Z軸正方向に向かう斜め方向に延びる突片である。フラップ7は片状に形成されることによって、可撓性を有している。さらに、フラップ7は、端面3jとの接続部が樹脂ヒンジの機能を有することによって、径方向への弾性変位が容易である。
図8に示すように、フラップ7の周方向の中央部には、スリット7aが形成されている。このため、フラップ7はスリット7aが形成されない場合に比べて可撓性が増大している。
フラップ7のZ軸正方向側の端縁7bの端面3jからの高さは、注出部2Aにおける板状部2bと、ガイド突起5の下面5aとの間の隙間に略等しい。本実施形態では、下面5aがわずかに傾斜していることに対応して、端縁7bも、周方向において、下面5aと同様に傾斜している。例えば、
図8に示す例では、端縁7bは、第1端部F1(図示左側)から第2端部F2(図示右側)に向かってわずかに下降する傾斜を有している。
【0042】
キャップ3単品の形状としては、中心軸線Oから端縁7bまでの距離は、注出部2Aにキャップ本体3Aを装着したときに、ガイド突起5の下面5aにフラップ7が係止できる寸法であれば特に限定されない。例えば、中心軸線Oから端縁7bまでの距離は、外周面2aの半径以上、ガイド突起5の側面5cの半径以下であってもよい。この場合、中心軸線Oから端縁7bまでの距離は、外周面2aの半径に近いほどより好ましい。ただし、フラップ7の可撓性によっては、中心軸線Oから端縁7bまでの距離は、外周面2aの半径未満であってもよい。
【0043】
各フラップ7の周方向の長さは、第2ガイド面2d上を軸方向に移動できる長さであり、かつ、後述するようにガイド突起5の下面5aと係止したときに必要な耐引き抜き強度が得られる長さとされる。このため、フラップ7の周方向の長さは、第2ガイド面2dの周方向の長さに応じて、適宜の長さが選択される。例えば、本実施形態の場合、各フラップ7の中心軸線Oに対する中心角は、45°以上90°以下とされてもよい。
【0044】
図8に示すように、ストッパ8は、内周面3aから径方向内側に突出し、Z軸方向に延びる突条である。ストッパ8のZ軸負方向側の端面である下端面8aのZ軸方向の位置は、第1端部F1におけるフラップ7の端縁7bのZ軸方向の位置と略同じである。ただし、Y軸方向から見ると、Z軸方向の高さの違いを除けば、ストッパ8は、フラップ7の第1端部F1と、周方向において近接して隣り合っている。
図7に示すように、径方向におけるストッパ8の先端部は山形の断面を有する。径方向における各ストッパ8の先端8bは、キャップ3が中心軸線O回りに回転されたとき、第2ガイド面2dに沿って周方向に移動可能である。このため、各先端8bと中心軸線Oとの間の距離は、注出部2Aの外周面2aの半径以上である。さらに各先端8bと中心軸線Oとの間の距離は、各ガイド突起5の側面5cの半径未満、かつ中心軸線Oから各係合用突起6の頂部(径方向外側端部)までの距離未満である。本実施形態では、一例として、各先端8bと中心軸線Oとの間の距離は、外周面2aの半径に等しい。
【0045】
径方向におけるストッパ8の径方向内側の先端部は、第1斜面8cおよび第2斜面8dによって形成されている。第1斜面8cは、フラップ7の第1端部F1に近い方に形成されている。第2斜面8dは、周方向において第1斜面8cと反対側に形成されている。
ストッパ8の先端部は、係合用突起6と傾斜端面5dとの間に形成された溝部に、周方向から着脱可能に嵌合する形状に形成されている。
ただし、本実施形態では、第1斜面8cは、傾斜端面5dとほぼ同様の傾斜および傾斜面の幅を有している。このため、キャップ3は、
図7の図示時計回りに回転された際、第1斜面8cと傾斜端面5dとが当接する位置を超えて回転することはできない。
これに対して、径方向におけるストッパ8の先端部は、係合用突起6に図示時計回り方向および図示反時計回り方向のいずれから当接しても、軽微な回転力で、係合用突起6を乗り越えることが可能である。径方向におけるストッパ8および係合用突起6の突出量が適宜に設定されることによって、係合用突起6を乗り越える際の回転力が調整される。ストッパ8の先端8bが係合用突起6を乗り越える際の回転力は、ストッパ8の先端部が係合用突起6と傾斜端面5dとの間の溝に嵌合する際、およびストッパ8の先端部が溝から抜ける際に、使用者が適度のクリック感を感じる程度の大きさとされる。例えば、適度のクリック感が得られるようにするために、ストッパ8の先端8bが係合用突起6を乗り越える高低差は、0.05mm以上1.0mm以下とされてもよい。上記高低差は、中心軸線Oから係合用突起6の径方向外側端部までの距離D1と、中心軸線Oからストッパ8の径方向内側端部である先端8bまでの距離D2と、の差である。この高低差が0.05mm以上であれば、キャップ3を回転して注出部2Aを開栓する際および閉栓する際にストッパ8が係合用突起6を乗り越えることによる適度なクリック感を使用者に伝えることができる。また、上記高低差が1.0mm以下であれば、キャップ3を回転して注出部2Aを開栓する際および閉栓する際にストッパ8が係合用突起6を適切に乗り越えることができる。言い換えれば、D1/D2が1.01以上1.2以下であれば、上記2つの効果を得ることができる。
【0046】
図1に示すように、タンパーバンド3Bは、キャップ3および注出部2Aからなる口栓部Sをタンパーエビデント構成にするために設けられている。
図3に示すように、タンパーバンド3Bは、フランジ3gと同様な外径を有する円環状に形成されている。
タンパーバンド3Bは、第1バンドピース3Cと、第2バンドピース3Dと、を備える。第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dのバンド幅(Z軸方向の幅)は、キャップ3が注出部2Aに装着された状態で、注出部2Aの板状部2b、第1ラチェット6A、および第2ラチェット6Bを側方から覆うことができる大きさである。
図5に示すように、第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dは、平面視においてX軸方向に互いに対向する半円状の形状を有する。第1バンドピース3Cは、キャップ3におけるX軸正方向側、第2バンドピース3Dは、X軸負方向側にそれぞれ配置されている。第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dの周方向における各両端部は、バンド幅よりも狭い幅を有する連結片3i(脆弱部)によって、周方向に互いに連結されている。
図3に示すように、連結片3iは、第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3DをそれぞれにおけるZ軸負方向側の端部において連結している。このため、
図8に示すように、連結片3iとフランジ3gとの間には、Z軸方向に延び、タンパーバンド3Bの径方向に貫通するスリットが形成されている。
【0047】
第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3DにおけるZ軸正方向側の端部は、上述の接続片3hによって、フランジ3gと連結されている。
図8に示すように、第1バンドピース3CにおけるY軸負方向側の端部は、フランジ3gと第1バンドピース3Cとを高強度に接続する固定接続部3kによって、フランジ3gと固定されている。固定接続部3kは、Y軸負方向側に設けられたスリット3mを間に挟んで、接続片3hと周方向に対向している。
図3に示すように、第2バンドピース3DにおけるY軸正方向側の端部には、同様の固定接続部3kが形成されている。
図3では図示されていないが、第2バンドピース3Dにおいて固定接続部3kのX軸負方向側には、第1バンドピース3Cにおけると同様のスリット3mが形成されている。第2バンドピース3Dにおける固定接続部3kおよびスリット3mは、第1バンドピース3Cにおける固定接続部3kおよびスリット3mと、中心軸線Oに関して180°回転対称の形状および配置を有する。
【0048】
図5には、注出部2Aおよびフランジ部2Bの平面図に、
図2におけるタンパーバンド3BのB-B断面が重ね合わされている。
図5に示すように、タンパーバンド3Bの内周面3nの内径は、板状部2bにおいて第1ラチェット6Aの最外周部の外径と等しい。
第1バンドピース3CのY軸正方向側の端部および第2バンドピース3DのY軸負方向側の端部には、それぞれ、第1爪部9Aが径方向内側に突出している。第1爪部9Aの平面視形状は、タンパーバンド3BをZ軸負方向に見るとき、時計回り方向に傾斜して径方向外側に延びている。第1爪部9Aは、このような平面視形状がZ軸方向に延びる突起である(
図3参照)。
本実施形態では、未開栓状態における第1爪部9Aは、周方向において第1ラチェット6Aと隙間を空けて対向している。
第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dの周方向における各中央部よりも第1爪部9A寄りの部位には、それぞれ、第2爪部9Bが径方向内側に突出している。第2爪部9Bの平面視形状は、第1爪部9Aと略同様の形状である。第2爪部9Bは、このような平面視形状がZ軸方向に延びる突起である(
図3参照)。
本実施形態では、未開栓状態における第2爪部9Bは、周方向において第2ラチェット6Bと隙間を空けて対向している。ただし、本実施形態では、第2爪部9Bと第2ラチェット6Bとの隙間は、第1爪部9Aと第1ラチェット6Aとの隙間よりも広い。
第1爪部9Aおよび第2爪部9Bの内周面3nからの突出量は、互いに略等しい。第1爪部9Aおよび第2爪部9Bの径方向内側の端面は、板状部2bの外縁に摺動可能に当接している。
【0049】
キャップ3は、キャップ本体3Aおよびタンパーバンド3Bが一体成形によって製造可能な樹脂材料によって形成されている。例えば、キャップ3は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって製造されてもよい。
【0050】
以上説明した注出部2Aおよびキャップ3は、以下に説明するようにして開栓可能である。
以下では、口栓部Sの構造の作用について、口栓部Sの初回開栓動作および初回開栓後の開閉動作を中心として説明する。
図9~11は、本発明の第1実施形態における口栓部の開栓動作の動作説明図である。
【0051】
スパウト付きパウチ1の製造工程では、容器本体4にスパウト2が固定された後、容器本体4に注出部2Aの注出口p1から内容物が充填される。この後、注出部2Aにキャップ3が取り付けられる。
このとき、
図2に示すように、キャップ3は、長径方向がY軸方向に一致するように取り付けられる。このとき、タンパーバンド3Bは、図示略の板状部2bを側方から覆うように配置される。タンパーバンド3BのZ軸負方向側の端部は、第1フランジf1と近接して隣り合っている。タンパーバンド3Bは、板状部2bに径方向外側から対向している。
このような位置関係では、フラップ7は、Z軸方向において板状部2bとガイド突起5との間に位置している。さらに、フラップ7の端縁7bは、ガイド突起5の下面5aに係止している。このため、キャップ3が取り付けられた未開栓状態では、使用者はキャップ3を注出部2AからZ軸正方向に引き抜くことはできない。
【0052】
このような未開栓状態は、キャップ3の長径方向をY軸方向に合わせて、注出部2Aに向かってキャップ3を押し込むことによって形成される。
まず、キャップ3が中心軸線Oと同軸の状態で、注出部2Aの上方に配置される。キャップ3の長径方向はY軸方向に合わせられる。このとき、平面視では、
図7に示すように、各ストッパ8は、係合用突起6と傾斜端面5dとの間の溝部に嵌合可能な位置にある。フラップ7とガイド突起5とは、平面視で重なり合う位置関係にある。
キャップ3が注出部2Aに押し込まれると、フラップ7は、ガイド突起5の上面5bに当接する。フラップ7は、ガイド突起5から径方向外側に押圧されることで、内周面3a側にたわむ。これにより、ガイド突起5からの抵抗が減少するため、フラップ7がガイド突起5を乗り越える。このため、キャップ3がさらにZ軸負方向側に移動できる。
【0053】
このとき、
図5に示すように、第1爪部9Aおよび第2爪部9Bは、注出部2Aにおける第2ラチェット6Bおよび第1ラチェット6Aと、周方向に離間した位置関係にある。このため、第1爪部9Aおよび第2爪部9Bと、第2ラチェット6Bおよび第1ラチェット6Aとが干渉して、キャップ3の移動の障害になることはない。
【0054】
各フラップ7が各ガイド突起5を乗り越えると、フラップ7は径方向外側に向かう押圧力が解除される。フラップ7の弾性復元力によって、フラップ7が径方向内側に突出する。これにより、
図3に二点鎖線で示すように、フラップ7の端縁7bがガイド突起5の下面5aに係止される。
このようにして、キャップ3はZ軸負方向に押し込まれることによって閉栓される。
【0055】
以上では、キャップ3を漸次押し込んでいく場合の例で説明したが、いわゆる打栓のように、キャップ3に軸方向に衝撃力を加えて閉栓が行われてもよい。
この場合、衝撃によってキャップ3の周方向の位置がずれる可能性がある。しかし、傾斜端面5dのZ軸正方向側には、第1傾斜面5fが隣接している。このため、キャップ3がZ軸負方向に見て時計回り方向に多少ずれても、ストッパ8が第1傾斜面5fに沿って滑るため、ストッパ8は係合用突起6と傾斜端面5dとの間の溝部に嵌合する。
例えば、ロボットなどの自動機でキャップ3が閉栓される場合、キャップ3が押し込まれた後、必要に応じて、キャップ3を周方向に移動させ、ストッパ8の先端部が係合用突起6と傾斜端面5dとの間の溝部に嵌まるように調整させてもよい。
【0056】
このような未開栓状態では、
図3に二点鎖線で示すように、シール体3fは、注出口p1の内部に嵌合している。このため、注出口p1は、シール体3fによって閉鎖されている。
【0057】
このような未開栓状態から、キャップ3を開栓するには、使用者は、キャップ3を
図7における反時計回り(矢印CCW参照)に回転させる。使用者がキャップ3を図示時計回りに回転させようとしても、ストッパ8の第1斜面8cが傾斜端面5dに係止するため、周方向の抵抗力が増大する。このため、使用者は、図示時計回りに回転させても開栓できないことが容易に感知できる。
使用者は、キャップ3の短径方向の端部に指をかけて回転させることによって、より小さい回転力でキャップ3を回転させることができる。特に本実施形態では、短径方向の端部に指をかける方がキャップ3に対する使用者の指の接触面積が大きくなるため、使用者がキャップ3をつかみやすい。
【0058】
キャップ3が図示の反時計回りに回転されると、キャップ本体3Aに設けられたストッパ8およびフラップ7も反時計回りに回転する。例えば、ストッパ8は、係合用突起6を乗り越えて、第2ガイド面2dの領域に移動する。使用者は、ストッパ8が係合用突起6を乗り越えるときのクリック感によって、開栓が始まったことを感知できる。
一方、フラップ7は、滑らかな下面5aに沿って移動するため、フラップ7に起因する抵抗はほとんど生じない。
【0059】
これに対して、キャップ3が図示の反時計回りに回転されると、タンパーバンド3Bも
図5における反時計回り(矢印CCW参照)に回転する。このため、
図5に示す例では、回転開始と略同時に、各第1爪部9Aと各第1ラチェット6Aとが周方向において互いに当接する。同様に各第2爪部9Bと各第2ラチェット6Bとが周方向において互いに当接する。これらの当接は両方同時に起こってもよいし、片方ずつ起こってもよい。
図5に示す例では、両方の当接が略同時に起こる。
第1爪部9Aと第1ラチェット6Aとは、それぞれ係合し合う傾斜を有しているため、第1爪部9Aと第1ラチェット6Aとの間には、互いを周方向に押圧する力が作用する。使用者がさらに反時計回りに回転を続けると、第1爪部9Aが第1ラチェット6Aを乗り越える。第1爪部9Aが第1ラチェット6Aを乗り越える際には、第1爪部9Aからタンパーバンド3Bに径方向外側への押圧力が作用する。
同様に、第2爪部9Bと第2ラチェット6Bとは、それぞれ係合し合う傾斜を有しているため、第2爪部9Bが第2ラチェット6Bを乗り越える際には、第2爪部9Bからタンパーバンド3Bに径方向外側への押圧力が作用する。
このため、脆弱部である連結片3iと、接続片3hとが、それぞれ破断する。
【0060】
このようにして、キャップ3が未開栓状態(またはストッパ8が第1端部e1と係合用突起6との間の嵌合隙間に位置する状態)から約45°回転される間に、連結片3iと、接続片3hと、が破断されるため、第1バンドピース3Cと第2バンドピース3Dとは、互いに分離した状態になる。これにより、キャップ3の回転の抵抗が減少する。また、これにより、目視によりキャップ3の回転がなされたことを確認することができる。
キャップ3が約90°回転されると、
図9、10に示すように、各フラップ7が、ガイド突起5から抜けて、第2ガイド面2dに面する位置に移動する。
図9は、
図2におけるA-A断面図である
図7と同位置の断面図である。
この状態で、使用者がキャップ3をZ軸正方向に引き抜くことが可能である。使用者がキャップ3をZ軸正方向に移動させると、フラップ7は、第2ガイド面2dを案内される。キャップ3は、ほとんど抵抗を受けることなく注出部2Aから引き抜かれる。この状態では、ストッパ8も第2ガイド面2dを案内される。
これにより口栓部Sが開栓される。本実施形態では、キャップ3が約90°程度の回転で開栓が可能になるため、キャップと注出部とが螺合されている場合に比べて、迅速な開栓が行える。
【0061】
ただし、使用者によっては開栓されたことを認識せずに、キャップ3をさらに反時計回りに回転させることも考えられる。このような場合でも、本実施形態では、以下に説明するようにして、確実にキャップ3が引きぬかれる。
図9に示す状態から、キャップ3がさらに図示反時計回りに回転されると、キャップ本体3Aに設けられたストッパ8およびフラップ7も反時計回りに回転する。例えば、ストッパ8は、
図11に二点鎖線で示すストッパ8’、8’’を経て、実線のストッパ8’’’のように移動する。
例えば、ストッパ8’は、傾斜部5eの端部に到達している(
図4も参照)。ストッパ8’’は、第2傾斜面5gに乗り上げている。このとき、フラップ7の第1端部F1は、径方向において傾斜部5eに当接する。このため第1端部F1において、フラップ7の端縁7bは、下面5aよりもZ軸正方向側に位置する傾斜部5eに沿って、周方向およびZ軸正方向に移動可能である。キャップ3の回転が進むにつれて、フラップ7は、傾斜部5eに沿って移動し、径方向外側に押圧されていく。フラップ7は可撓性を有するため、内周面3aに向かってたわみ変形する。このため、フラップ7の端縁7bは、下面5aに係止することなく、ガイド突起5と内周面3aとの間に挟まれる。
このようにして、ストッパ8’’’は、上面5bに乗り上げる(
図4も参照)。
キャップ3がさらに反時計回りに回転すると、
図4に二点鎖線で示すように、第2傾斜面5gおよび上面5bに沿ってストッパ8がZ軸正方向に移動する。この結果、キャップ3には、注出部2Aに対して相対的にZ軸正方向に押し出される外力が、ガイド突起5から作用する。
【0062】
このように、本実施形態では、使用者は、キャップ3を約90°以上、反時計回りに回転させることで、口栓部Sが開栓される。使用者がキャップ3を90°を超えて回転させる場合には、キャップ3が自動的にZ軸正方向に押し上げられるため、使用者はすでに開栓されていることを感知できる。このため、大部分の使用者は90°もしくは90°よりわずかに大きく回転させるだけで、口栓部Sを開栓することができる。
このため、キャップが注出部に螺合している場合に比べると、使用者は、格段に容易に開栓が行える。
さらに本実施形態では、第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dは、固定接続部3kによって、キャップ本体3Aと固定されている。固定接続部3kは、スリット3mを間に挟んで、接続片3hとは離間している。この結果、接続片3hがすべて切断されても、接続片3hの亀裂が固定接続部3kに到達しないため、固定接続部3kは開栓動作によって切断されない。
このため、第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dは、開栓後も固定接続部3kを介してフランジ3gに接続されており、キャップ本体3Aとともに、注出部2Aから引き抜かれる。第1バンドピース3Cおよび第2バンドピース3Dを含む切断片は、注出部2Aに残らず、キャップ3に一体化されている。
よって、開栓時に、キャップ本体3Aから切り離されてゴミとなるような切断片のゴミが発生することはない。
さらに、例えば、使用者が注出部2Aに口を着けて内容物を飲むような使用方法であっても、注出部2Aに切断片が残存せず、切断片に使用者の口が触れることがないため、使用者の使用感が良好になる。
【0063】
次に、初回開栓後の開閉動作について説明する。
初回開栓後、使用者が注出部2Aを閉栓するには、使用者は、上述したように口栓部Sがスパウト付きパウチ1に内容物が充填された後に閉栓される場合と同様の動作が行われればよい。
ただし、使用者は、上述の開栓動作を逆の順に行うことによって、閉栓してもよい。
すなわち、
図10に二点鎖線で示すように、キャップ3の長径方向をX軸方向に(短径方向をY軸方向に)合わせた状態で、キャップ3をZ軸負方向に移動して、注出部2Aに装着する。このようなキャップ3の姿勢では、フラップ7およびストッパ8が注出部2Aの第2ガイド面2dの範囲に位置するため、フラップ7が第2ガイド面2dに案内されて、キャップ3が円滑に注出部2Aに装着される。初回開栓後にはタンパーバンド3Bは破断されているため、装着時にタンパーバンド3Bが挿入抵抗になることはない。
キャップ本体3Aは、図示二点鎖線で示すように、端面3jが板状部2bに近接する挿入限度位置まで挿入されると、シール体3fが注出口p1の内部に嵌合する。
【0064】
この後、使用者は、キャップ3を
図9における時計回り(矢印CW参照)に回転させる。
図10では、二点鎖線で示された図示手前側のフラップ7が図示左方向に移動していく。フラップ7は、ガイド突起5の下面5aと板状部2bとの間に入り込む。フラップ7の端縁7bは下面5aと摺動しながら下面5aに沿って移動していく。このとき、シール体3fが注出部2Aの開口に密着嵌合して、Z軸負方向への移動が規制される結果、端縁7bが下面5aに押しつけられる。このため、フラップ7のZ軸負方向側の端部と板状部2bとの間には、隙間が形成されている。
このようなキャップ3の回転時に、タンパーバンド3Bは破断されているため、第1爪部9Aおよび第2爪部9Bが、第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bと当接して回転抵抗が発生することはない。仮に、第1爪部9Aおよび第2爪部9Bが、第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bと当接したとしても、傾斜方向が同方向であるため容易に乗り越えることができる。
図7に示すように、キャップ3が約90°回転されると、各フラップ7は、Z軸正方向から負方向に見ると、それぞれガイド突起5と略重なる範囲に移動する。このため、フラップ7の端縁7bがガイド突起5にZ軸負方向側から係止している。これにより、キャップ3はZ軸方向において抜け止めされる。このようにして、注出部2Aは、キャップ3によって閉栓される。
【0065】
このような閉栓動作において、キャップ3の回転とともに、ストッパ8も外周面2aに沿って時計回りに移動する。
図7において二点鎖線で示すように、ストッパ8が係合用突起6の位置に到達すると、ストッパ8が係合用突起6を乗り越える際に径方向外側に押圧されるため、軽微な抵抗が発生する。実線で示すように、ストッパ8が係合用突起6を乗り越えると、ストッパ8は、係合用突起6と傾斜端面5dとの間のV字状の溝部に嵌合する。このとき、回転抵抗が急峻に減少するため、使用者はクリック感を得る。
この状態から、さらに使用者が図示時計回りに回転しようとすると、第1斜面8cが傾斜端面5dに係止するため、周方向の抵抗力が増大する。このため、使用者は回転限度に達したことを感知できる。
また、このような時計回りにキャップ3を回転することによる閉栓動作は、キャップ3の長径方向をX軸方向に合わせた状態からに限られたものではなく、キャップ3の長径方向がY軸方向に合わせた状態以外の状態から閉栓するときにも応用することができる。その場合は、フラップ7の一部分がガイド突起5を乗り越え、その他の部分及びストッパ8が注出部2Aの第2ガイド面2dに案内されて、キャップ3が注出部2Aに装着される。その後、キャップを時計回りにキャップ3の長径方向がY軸方向に一致するまで回転させることで、フラップ7の端縁7bがガイド突起5にZ軸負方向側から係止し、ストッパ8は係合用突起6と傾斜端面5dとの間のV字状の溝部に嵌合する。
このようにして、キャップ3の長径方向がY軸方向に向くと、閉栓動作が終了する。
本実施形態の閉栓動作では、上部シール4dと直交する方向にキャップ3の長径方向が向いていることによって、キャップ3がX軸方向に出っ張った状態から、キャップ3の長径方向が上部シール4dの延在方向に揃うことで、キャップ3の出っ張りが減少するように、キャップ3を回転させる動作になっている。このため、閉栓状態かどうかが、見ただけで分かりやすいため、閉め忘れなどが防止できる。
さらに、回転時のクリック感によって、使用者にキャップ3が閉栓時の所定位置に移動されたかどうかが容易に伝わる点でも、不完全な閉栓状態が防止されやすい。
【0066】
このような閉栓状態から、使用者が開栓するには、初回開栓時と同様、キャップ3を
図9における図示反時計回りに回転させればよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の口栓部Sは、タンパーバンド3Bを有するキャップ3と、キャップ3の開封時の回転によって、タンパーバンド3Bが切断されるため、目視によりキャップ3が回転されていることが確認できるタンパーエビデント構成である。
本実施形態の口栓部Sの構造によれば、注出部2Aのガイド突起5と、キャップ3の係合用突起6およびフラップ7と、を有するため、初回開栓時および開栓後の開閉動作が容易となる。
【0068】
本実施形態の口栓部Sの構造は、先端Tに注出口p1(開口)が形成された筒状の注出部2Aと、注出部2Aの外周および先端Tに着脱可能に嵌合し、注出部2Aへの装着時に注出口p1を閉鎖するキャップ3と、を備える。
注出部2Aは、軸方向において先端Tから離間した位置における、注出部2Aの外周面2aの周方向の一部に設けられ、径方向外側に突出したガイド突起5と、軸方向においてガイド突起5よりも先端Tからさらに離間した位置に設けられ、注出部2Aの外周面から径方向外側に突出したラチェット6Aおよび6Bと、を備える。
ガイド突起5は、キャップ3を抜け止め可能に係止する下面5aと、下面5aと先端Tとの間において、螺旋状に延びる上面5bと、を有している。
キャップ3は、注出部2Aにおいて、ガイド突起5と注出口p1とを覆って装着可能なキャップ本体3Aと、キャップ本体3Aの基端側に接続され、キャップ本体3Aの注出部2Aへの装着時にラチェット6Aおよび6Bを側方から覆う環状に形成されており、キャップ本体3Aの回転時にラチェット6Aおよび6Bから受ける外力によって破断可能な連結片3iが周方向の一部に設けられたタンパーバンド3Bと、を備える。
キャップ本体3Aは、その内周面3aから径方向内側に突出され、注出部2Aへの装着時に、下面5aに係止可能なフラップ7と、内周面3aから径方向内側に突出され、フラップ7が下面5aに係止していない状態で、上面5bに沿って移動可能に設けられたストッパ8と、を有している。
注出部2Aの外周面には、キャップの着脱時にフラップ7およびストッパ8が沿って軸方向に移動できる、第2ガイド面2dが形成されている。
【0069】
注出部2Aは、周方向におけるガイド突起5の2つの端部のうち、上面5bが先端Tに、より近い第1端部e1との間に、キャップ本体3Aにおけるストッパ8が着脱可能に嵌合できる嵌合隙間を形成する係合用突起6を、さらに備える。
【0070】
フラップ7は、キャップ本体3Aの基端部から、径方向内側に斜めに延びる突片によって形成されている。
【0071】
ガイド突起5は、周方向におけるガイド突起5の2つの端部のうち、上面5bが先端Tから、より離れた第2端部e2およびその近傍では、径方向外側の突出量が、周方向において第2端部e2から第2端部e2と反対側の第1端部e1に向かうにつれて漸増している。
【0072】
キャップ本体3Aの軸方向から見たキャップ本体3Aの外形は、全体として扁平な形状を有する。
【0073】
キャップ本体3Aの外周面3cが、軸方向に延びるとともに径方向の突出量が異なる複数のリブ3dを備えることで、キャップ本体3Aの外形は軸方向視で楕円状に形成されている。
【0074】
キャップ本体3Aの外周面3cは、軸方向先端側の第1外周面3sと軸方向基端側の第2外周面3tとを有し、第1外周面3sの外径は、第2外周面3tの外径よりも小さく、上記楕円状の短軸と交差する第2外周面3tの一部は、リブを備えていないリブ非形成領域R2である。
【0075】
注出部2Aにおけるガイド突起5並びにラチェット6Aおよび6Bは、周方向において180°回転対称となるように、第2ガイド面2dを間に挟んで、2組設けられている。
キャップ本体3Aにおけるフラップ7およびストッパ8は、注出部2Aの周方向における第2ガイド面2dの幅以下の範囲に形成され、キャップ本体3Aの周方向において180°回転対称となるように、2組設けられている。
【0076】
注出部2Aは、補助突起10をさらに備え、当該補助突起10は、軸方向におけるガイド突起5とラチェット6Aおよび6Bとの間の位置から、周方向におけるガイド突起5の2つの端部のうち、上面5bが先端Tからより離れた第2端部e2に向けて延びるとともにフラップ7が当接しつつ移動可能な傾斜ガイド面10aを有する。
【0077】
本実施形態のスパウト付きパウチ1は、上述した口栓部Sの構造を備える。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図11および
図12を参照して説明する。本実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成および機能を有する構成要素には上記第1実施形態と同一の符号を付し、重複した説明は省略する場合がある。なお、
図11および
図12において、導管部2Dの記載は省略している。
【0079】
図12および
図13に示すように、本実施形態の注出部2Aの外周面2aには、軸方向におけるガイド突起5とラチェット6Aおよび6Bとの間に、径方向外側に突出する補助突起10が設けられている。本実施形態における補助突起10は、軸方向におけるガイド突起5と板状部2bとの間に設けられている。補助突起10は、ガイド突起5の第2端部e2の下方に設けられている。本実施形態の補助突起10は、ガイド突起5と板状部2bとにそれぞれ接続されているが、この構成に限定されず、補助突起10とガイド突起5との間に隙間が設けられていてもよいし、補助突起10と板状部2bとの間に隙間が設けられていてもよい。
【0080】
補助突起10は、軸方向におけるガイド突起5とラチェット6Aおよび6Bとの間の位置から、周方向におけるガイド突起5の2つの端部のうち、上面5bが注出部2Aの先端Tからより離れた第2端部e2(本発明の基端側端部に相当する)に向けて延びるとともにフラップ7が当接しつつ移動可能な傾斜ガイド面10aを有する。本実施形態における傾斜ガイド面10aは、軸方向におけるガイド突起5と板状部2bとの間の位置からガイド突起5の第2端部e2に向けて延びている。傾斜ガイド面10aは、反時計回り方向に進むに従い先端Tに向かうように傾斜している。傾斜ガイド面10aの、中心軸線Oに直交する平面に対する傾斜角は、上面5bの上記平面に対する傾斜角よりも大きい。本実施形態における傾斜ガイド面10aは、上方に向けて凹となるように湾曲しているが、上方に向けて凸となるように湾曲していてもよく、直線状やS字状に延びていてもよい。本実施形態における傾斜ガイド面10aは、ガイド突起5の第2端部e2に接続されているが、この構成に限定されず、傾斜ガイド面10aと第2端部e2との間に隙間が設けられていてもよい。この隙間の大きさは、フラップ7が引っ掛かったり落ち込んだりしない範囲で適宜設定すればよい。本実施形態における傾斜ガイド面10aは、板状部2bの上面に連結されているが、この構成に限定されず、傾斜ガイド面10aと板状部2bとの間に隙間が設けられていてもよい。傾斜ガイド面10aの径方向の幅は、フラップ7の端縁7bが傾斜ガイド面10aに当接しつつ移動できる範囲で設定すればよい。
【0081】
補助突起10の側面10bは、補助突起10の径方向外側の面である。側面10bは、軸方向と周方向との双方向に延びている。側面10bの、反時計回り方向のトレーリング側の縁部(
図13において紙面右側の縁部)は、軸方向に延びている。
補助突起10の傾斜面10cは、側面10bの反時計回り方向の隣に位置し、側面10bの上記縁部に接続されている。傾斜面10cの径方向高さは、反時計回り方向に進むに従い漸減している。傾斜面10cは、軸方向と、注出部2Aの外周面2aの接線方向と、の双方向に延びている。
補助突起10の径方向高さは、ガイド突起5と板状部2bとの間の隙間に位置するフラップ7が時計回り方向に移動する際に、当該フラップ7が補助突起10を乗り越えることを防止できる範囲で設定してもよい。
【0082】
本実施形態におけるガイド突起5の周方向長さは、上記第1実施形態におけるガイド突起5よりも拡大されている。本実施形態における第2端部e2の周方向位置は、上記第1実施形態における第2端部e2の周方向位置と同等であり、本実施形態における第1端部e1が上記第1実施形態に比べて反時計回り方向に変位されている。上面5bの、中心軸線Oに直交する平面に対する傾斜角度は上記第1実施形態と同等であるため、本実施形態における第1端部e1の軸方向の長さは、上記第1実施形態よりも拡大され、ガイド突起5の中心軸線Oに対する中心角は90°以上120°程度である。この結果、傾斜端面5dの軸方向の長さも拡大されている。上記第1実施形態において、傾斜端面5dの面積は第1傾斜面5fよりも狭いが(
図3参照)、本実施形態において、傾斜端面5dの面積は第1傾斜面5fよりも広くなっている。このため、本実施形態においては、傾斜端面5dと係合用突起6との間に位置するストッパ8が時計回り方向に移動する際に、ストッパ8が傾斜端面5dを乗り越えることをより確実に防止することができる。
【0083】
本実施形態の係合用突起6の軸方向長さは、上記第1実施形態の係合用突起6よりも大きい。このため、ストッパ8が係合用突起6を乗り越える際のクリック感を大きくすることができ、使用者に対してクリック感を確実に伝えることができる。また、本実施形態の係合用突起6の、時計回り方向のリーディング側の端縁(
図12の紙面右側の端縁)は、平面視で径方向外側に向けて円弧状に膨出する形状となっているが、時計回り方向のトレーリング側の端縁(
図12の紙面左側の端縁)は、略径方向に延びる切り立った形状となっている。このため、ストッパ8が係合用突起6を反時計回り方向に乗り越える場合のクリック感を、ストッパ8が係合用突起6を時計回り方向に乗り越える場合のクリック感よりも大きくすることができる。なお、このような係合用突起6の構成が、周方向で逆であってもよい。
【0084】
次に、キャップ3が注出部2Aを閉栓している状態、すなわちガイド突起5と板状部2bとの間にフラップ7が位置し、傾斜端面5dと係合用突起6との間の嵌合隙間にストッパ8が位置している状態から、注出部2Aを開栓するためにキャップ3を反時計回り方向に回転させたときの機能を説明する。なお、以下の説明では、タンパーバンド3Bは破断されていなくともよいし、破断されていてもよい。
キャップ3が注出部2Aを閉栓している状態、すなわち一のガイド突起5と板状部2bとの間の隙間にフラップ7が位置している状態からキャップ3を反時計回り方向に回転させると、まずストッパ8が係合用突起6を乗り越え、次いでフラップ7の端縁7bが補助突起10の傾斜ガイド面10aに当接し、さらにストッパ8がガイド突起5の第2傾斜面5gや上面5bに当接する。キャップ3を反時計回り方向にさらに回転させると、ストッパ8が上面5bに沿って移動するとともに、フラップ7は傾斜ガイド面10aに沿って移動し、この傾斜ガイド面10aがガイド突起5の第2端部e2に向けて延びているため、フラップ7は傾斜ガイド面10aからガイド突起5の上面5bに適切に移動することができる。よって、例えば、反時計回り方向に移動しているフラップ7が、上記一のガイド突起5と異なる他のガイド突起5と板状部2bとの間の隙間に侵入することを確実に防止することができる。なお、フラップ7が傾斜ガイド面10aからガイド突起5の上面5bに移動する際に、ストッパ8は上面5bに当接していなくともよい。その後、第1実施形態と同様に注出部2Aは開栓される。
【0085】
また、最初に開栓動作を行い、タンパーバンド3Bを破断した後に、閉栓動作を再度行う際には、キャップ3が先端Tおよびガイド突起5を覆った状態でキャップ3を時計回り方向に回転させる。ストッパ8が係合用突起6を時計回り方向に乗り換えた後に、ストッパ8およびフラップ7は、傾斜端面5dおよび傾斜面10cにそれぞれほぼ同時期に当接する。このため、使用者がキャップ3をさらに時計回り方向に回転させようとしても、当該回転を確実に防止することができる。
【0086】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明はこのような各実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0087】
例えば、上記実施形態の説明では、スパウト2が係合用突起6を有するため、傾斜端面5dと係合用突起6との間にストッパ8の先端部が着脱可能に嵌合する嵌合隙間(溝部)が形成される例で説明した。
しかし、フラップ7と下面5aとの摩擦力によって、閉栓状態が容易に保たれる場合には、係合用突起6は省略されてもよい。この場合でも、使用者は、ストッパ8の第1斜面8cがガイド突起5の傾斜端面5dと当接して回転が止まることで、閉栓が完了したことを容易に知ることができる。
【0088】
上記実施形態の説明では、第1内側突起が突片からなるフラップ7で構成される場合の例で説明した。しかし、第1内側突起は、突片には限定されない。例えば、キャップ本体3A自体が柔軟な材料で構成されている場合、第1内側突起に可撓性がなくても、上記実施形態と同様の開閉動作が行える。例えば、キャップ3が約90°以上回転されて第1内側突起がガイド突起5と内周面3aとの挟まれるときに、キャップ本体3Aが径方向外側に変形することで、上記実施形態と同様に開栓動作が可能である。
【0089】
上記実施形態の説明では、軸方向から見たキャップ本体の外形が、全体として扁平な形状を有する場合の例で説明した。しかし、開栓および閉栓に必要な回転トルクが、使用者が加える回転力によって得られる形状であれば、キャップ本体の外形は扁平な形状には、限定されない。例えば、円形、多角形であってもよい。例えば、円筒から蝶型平板などが径方向に突出した形状であってもよい。
【0090】
上記実施形態の説明では、注出部2Aが板状部2bを有する場合の例で説明した。しかし、上記実施形態の場合、板状部2bは、特に係止面またはガイド面の機能を有していないため、第1ラチェット6Aおよび第2ラチェット6Bが形成できれば、板状部2bは設けられなくてもよい。
【0091】
上記第1および第2実施形態からそれぞれ抽出した一部の構成を組み合わせて、本発明の口栓部の構造および包装体を構成してもよい。例えば、上記第1実施形態におけるガイド突起5の周方向長さは、上記第2実施形態におけるガイド突起5よりも短いが、上記第1実施形態におけるガイド突起5と、上記第2実施形態における補助突起10とを組み合わせて口栓部の構造および包装体を構成してもよい。また、上記第1実施形態における口栓部の構造および包装体に、補助突起10を適用することなく、上記第2実施形態における周方向に比較的長いガイド突起5や軸方向に比較的長い係合用突起6を適用してもよい。
また、上記第1または第2実施形態から一部の構成を除外して本発明の口栓部の構造および包装体を構成してもよい。例えば、上記第2実施形態における構成から補助突起10を除外して、口栓部の構造および包装体を構成してもよい。
【0092】
上記実施形態において、2対のガイド突起5および係合用突起6が注出部2Aに設けられている。しかし、3対以上のガイド突起5および係合用突起6が、中心軸線Oに対する点対称となるように注出部2Aに設けられてもよい。同様に、上記実施形態において、2対のフラップ7およびストッパ8がキャップ本体3Aに設けられている。しかし、3対以上のフラップ7およびストッパ8が、中心軸線Oに対する点対称となるようにキャップ本体3Aに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 スパウト付きパウチ(包装体)
2 スパウト
2a、2e、3c 外周面
2A 注出部
2b 板状部
2B フランジ部
2C 取り付け部
2d 第2ガイド面
3 キャップ
3a、3n 内周面
3A キャップ本体
3B タンパーバンド
3C 第1バンドピース
3d リブ
3D 第2バンドピース
3f シール体
3g フランジ
3h 接続片(脆弱部)
3i 連結片(脆弱部)
3j 端面
3k 固定接続部
4 容器本体
5 ガイド突起(第1外側突起)
5a 下面(係止面)
5b 上面(第1ガイド面)
5c 側面
5d 傾斜端面
5e 傾斜部
5f 第1傾斜面
5g 第2傾斜面
6 係合用突起(第3外側突起)
6A 第1ラチェット(第2外側突起)
6B 第2ラチェット(第2外側突起)
7 フラップ(第1内側突起)
7b 端縁
8、8’、8’’、8’’’ ストッパ(第2内側突起)
8a 下端面
8b 先端
8c 第1斜面
8d 第2斜面
9A 第1爪部
9B 第2爪部
10 補助突起
10a 傾斜ガイド面
e1 第1端部(先端側端部)
e2 第2端部(基端側端部)
F1 第1端部
F2 第2端部
T 先端
O 中心軸線
p1 注出口
R1 リブ形成領域
R2 リブ非形成領域
S 口栓部