(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230424BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2020510907
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012842
(87)【国際公開番号】W WO2019189173
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018069682
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田久 真也
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194431(WO,A1)
【文献】特表2014-523110(JP,A)
【文献】特開2018-006677(JP,A)
【文献】特開2017-103330(JP,A)
【文献】特開2006-253402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、
前記第1保護膜が形成された半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、及び
ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハの前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記第1保護膜の残渣を除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、を含
み、
前記ハーフカットダイシングは、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さAが、前記半導体ウエハの厚さA
0
の1/5~4/5であるように行われる、
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
【請求項2】
第1支持シートと前記第1支持シート上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む第1保護膜形成用シートの前記熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記第1支持シートを前記熱硬化性樹脂フィルムから剥離すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、
前記半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、及び
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記第1保護膜の残渣を除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、を含
み、
前記ハーフカットダイシングは、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さAが、前記半導体ウエハの厚さA
0
の1/5~4/5であるように行われる、
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
【請求項3】
ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハの前記第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)と、前記バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さC(μm)と、プラズマ照射による前記半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による前記第1保護膜のエッチング速度b(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を充足する、請求項1又は2に記載の第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
A<at ・・・(1)
B>bt ・・・(2)
C<bt ・・・(3)
【請求項4】
熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記熱硬化性樹脂フィルムを除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、及び
前記個片化された半導体ウエハに貼付している前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、を含
み、
前記ハーフカットダイシングは、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さAが、前記半導体ウエハの厚さA
0
の1/5~4/5であるように行われる、
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
【請求項5】
第1支持シートと前記第1支持シート上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む第1保護膜形成用シートの前記熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記第1支持シートを前記熱硬化性樹脂フィルムから剥離すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付している前記半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記熱硬化性樹脂フィルムを除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、及び
前記個片化された半導体ウエハに貼付している前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、とを含
み、
前記ハーフカットダイシングは、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さAが、前記半導体ウエハの厚さA
0
の1/5~4/5であるように行われる、
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
【請求項6】
ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハの前記第1面上の熱硬化性樹脂フィルムの厚さD(μm)と、前記バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルムの厚さE(μm)と、プラズマ照射による前記半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による前記熱硬化性樹脂フィルムのエッチング速度d(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(4)及び式(5)の関係を充足する、請求項4又は5に記載の第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
A<at ・・・(1)
D>dt ・・・(4)
E<dt ・・・(5)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造方法に関する。より詳しくは、バンプ形成面を保護する第1保護膜付きの半導体チップの製造方法に関する。
本願は、2018年3月30日に、日本に出願された特願2018-069682号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、MPUやゲートアレー等に用いる多ピンのLSIパッケージをプリント配線基板に実装する場合には、半導体チップとして、その接続パッド部に共晶ハンダ、高温ハンダ、金等からなる凸状電極(以下、本明細書においては「バンプ」と称する)が形成されたものを用い、所謂フェースダウン方式により、それらのバンプをチップ搭載用基板上の相対応する端子部に対面、接触させ、溶融/拡散接合するフリップチップ実装方法が採用されてきた。
【0003】
この実装方法で用いる半導体チップは、例えば、回路面にバンプが形成された半導体ウエハの、回路面(換言するとバンプ形成面)とは反対側の裏面を研削したり、ダイシングして個片化することにより得られる。このような半導体チップを得る過程においては、通常、半導体ウエハのバンプ形成面及びバンプを保護する目的で、硬化性樹脂フィルムをバンプ形成面に貼付し、このフィルムを硬化させて、バンプ形成面に保護膜(本明細書においては、以下、「第1保護膜」と称することがある)を形成する。
【0004】
硬化性樹脂フィルムは、通常、加熱により軟化した状態で、半導体ウエハのバンプ形成面に貼付される。このようにすることにより、硬化性樹脂フィルムは、半導体ウエハのバンプを覆うようにしてバンプ間に広がり、バンプ形成面に密着するとともに、バンプの表面、特にバンプ形成面の近傍部位の表面を覆って、バンプを埋め込む。この後、硬化性樹脂フィルムは、さらに硬化によって、半導体ウエハのバンプ形成面と、バンプのバンプ形成面の近傍部位の表面と、を被覆して、これらの領域を保護する保護膜となる。さらに、半導体ウエハは、半導体チップに固片化され、最終的に、バンプ形成面に保護膜を備えた半導体チップ(本明細書においては、「第1保護膜付き半導体チップ」と称することがある。)となる。
【0005】
このような保護膜付き半導体チップは、基板上に搭載されて半導体パッケージとなり、さらにこの半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置が構成される。半導体パッケージ及び半導体装置が正常に機能するためには、保護膜付き半導体チップのバンプと、基板上の回路との電気的接続が阻害されないことが必要である。ところが、硬化性樹脂フィルムが、バンプの頭頂部に残存してしまう場合がある。バンプの頭頂部に残存した硬化性樹脂フィルムは、他の領域の硬化性樹脂フィルムの場合と同様に硬化して、保護膜と同様の組成を有する硬化物(本明細書においては、「保護膜残留物」と称することがある)となる。すると、バンプの頭頂部は、バンプと基板上の回路との電気的接続領域であるため、保護膜残留物の量が多い場合には、保護膜付き半導体チップのバンプと、基板上の回路と、の電気的接続が阻害され、信頼性試験における電気特性低下に繋がる。
すなわち、保護膜付き半導体チップの基板上への搭載前の段階で、保護膜付き半導体チップのバンプの頭頂部においては、保護膜残留物が殆ど存在しないことが求められる。
【0006】
バンプの頭頂部の保護膜を除去する方法として、プラズマ処理を施す半導体装置の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。バンプ形成面の保護膜にプラズマ処理を施すことにより、バンプの頭頂部を覆っている樹脂膜を除去したのち、ダイシングブレードによりダイシングして個片化して半導体チップを得ており、頭頂部が露出されたバンプと、基板の電極とを電気的に接続することで、接続信頼性に優れた半導体装置を効率よく製造できる。
【0007】
また、予め、半導体ウエハの切断線以外の領域をレジスト層で覆い、レジスト膜が被覆されていない切断線に対応する部分をプラズマ照射することにより半導体ウエハをエッチングして分割する方法も知られている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/194431号
【文献】特開2004-193305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1で開示されているダイシング方法では、ダイシング工程の前に、バンプの頭頂部の樹脂膜を除去するためのプラズマ処理工程が別途必要になるために、生産性の点で難がある。また、特許文献2で開示されているダイシング方法では、ダイシング工程の前に、レジスト膜の塗布、露光、現像処理が別途必要になるために、生産性の点で難がある。
【0010】
そこで、本発明は、バンプの頭頂部の第1保護膜の残渣除去と半導体ウエハの個片化を同時に達成でき、生産性に優れる半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次の態様を含む。
[1] 熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、
前記第1保護膜が形成された半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、及び
ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハの前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記第1保護膜の残渣を除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、を含む
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
[2] 第1支持シートと前記第1シート上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む第1保護膜形成用シートの前記熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記第1支持シートを前記熱硬化性樹脂フィルムから剥離すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、
前記半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、及び
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射うすることによって、前記バンプの頭頂部の前記第1保護膜の残渣を除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、を含む
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
[3] ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハの前記第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)と、前記バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さC(μm)と、プラズマ照射による前記半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による前記第1保護膜のエッチング速度b(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を充足する[1]又は[2]に記載の第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
A<at ・・・(1)
B>bt ・・・(2)
C<bt ・・・(3)
【0012】
[4] 熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付された半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記熱硬化性樹脂フィルムを除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、及び
前記個片化された半導体ウエハに貼付している前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、を含む
第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
[5] 第1支持シートと前記第1支持シート上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む第1保護膜形成用シートの前記熱硬化性樹脂フィルムを、バンプを有する半導体ウエハの前記バンプ側の第1面に貼付すること、
前記第1支持シートを前記熱硬化性樹脂フィルムから剥離すること、
前記熱硬化性樹脂フィルムが貼付している前記半導体ウエハを前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記半導体ウエハのハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射することによって、前記バンプの頭頂部の前記熱硬化性樹脂フィルムを除去するとともに前記半導体ウエハを個片化すること、
前記個片化された半導体ウエハに貼付している前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて前記半導体ウエハの前記第1面に第1保護膜を形成すること、を含む第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
[6] ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハの前記第1面上の熱硬化性樹脂フィルムの厚さD(μm)と、前記バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルムの厚さE(μm)と、プラズマ照射による前記半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による前記熱硬化性樹脂フィルムのエッチング速度d(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(4)及び式(5)の関係を充足する、[4]又は[5]に記載の第1保護膜付き半導体チップの製造方法。
A<at ・・・(1)
D>dt ・・・(4)
E<dt ・・・(5)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体ウエハをハーフカットダイシングした後プラズマ照射することにより、レジスト膜を被覆することなくプラズマ照射によるダイシングが可能となるだけでなく、バンプの頭頂部の第1保護膜の残渣除去と、半導体ウエハの個片化を、同時に達成することができ、生産性に優れる。また、ハーフカットダイシングの後にプラズマ照射してダイシングするので、チッピングの発生を低減でき、チップ強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の第一実施形態を模式的に示す概略図である。
【
図2】本発明の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の第一実施形態を模式的に示す概略図である。
【
図3】本発明の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の第二実施形態を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<第1保護膜付き半導体チップの製造方法>>
<第一実施形態>
図1及び
図2は、本発明の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の第一実施形態を模式的に示す概略図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0016】
第一実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法は、第1支持シート101と前記第1支持シート101上に備えられた熱硬化性樹脂フィルム12を含む第1保護膜形成用シート1(
図1(a))の前記熱硬化性樹脂フィルム12を、バンプ91を有する半導体ウエハ9(
図1(b))の前記バンプ91側の第1面9aに貼付すること(
図1(c))、
前記半導体ウエハ9の前記第1面9aとは反対側の第2面9bを研削すること(
図1(d))、
前記半導体ウエハ9の研削された前記第2面9bにダイシングテープ14を貼付すること(
図1(e))、
前記第1支持シート101を前記熱硬化性樹脂フィルム12から剥離すること(
図2(f))、
前記熱硬化性樹脂フィルム12を熱硬化させて前記半導体ウエハ9の前記第1面に第1保護膜12’を形成すること(
図2(g))、
前記半導体ウエハ9を、前記第1面の側からハーフカットダイシングすること(
図2(h))、
前記半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプ91の頭頂部910の前記第1保護膜12’の残渣を除去するとともに、前記半導体ウエハ9を個片化すること(
図2(i))、を含む。
【0017】
まず、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、第1保護膜形成用シート1を、その熱硬化性樹脂フィルム12が半導体ウエハ9のバンプ側の第1面9a(「バンプ形成面」と称することがある。)に対向するように配置する。
【0018】
第1保護膜形成用シート1は、第1支持シート101上に熱硬化性樹脂フィルム12を備える。第1支持シート101は、第1基材11上に緩衝層13を備えるものが好ましい。すなわち、本発明に係る第1保護膜形成用シートは、1つの側面として、第1支持シートと、前記第1支持シート上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む。別の側面として、本発明に係る第1保護膜形成用シートは、第1基材と、前記第1基材上に備えらえた緩衝層と、前記緩衝層上に備えられた熱硬化性樹脂フィルムとを含む。
第1保護膜形成用シート1の詳細については後述する。
【0019】
半導体ウエハ9のバンプ91の高さは特に限定されないが、40~200μmであることが好ましく、50~180μmであることがより好ましく、60~140μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「バンプの高さ」とは、バンプのうち、バンプ形成面から最も高い位置に存在する部位での高さ(すなわち、半導体ウエハのバンプ形成面からバンプの最も高い位置までの垂直方向の距離)を意味する。
【0020】
バンプ91の幅は特に限定されないが、60~250μmであることが好ましく、80~220μmであることがより好ましく、120~180μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「バンプの幅」とは、バンプ形成面に対して垂直な方向からバンプを見下ろして平面視したときに、バンプ表面上の異なる2点間を直線で結んで得られる線分の最大値を意味する。
【0021】
隣り合うバンプ91間の距離は、特に限定されないが、100~350μmであることが好ましく、130~300μmであることがより好ましく、160~250μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「隣り合うバンプ間の距離」とは、隣り合うバンプ同士の表面間の距離の最小値を意味する。
【0022】
半導体ウエハの厚さA0は、特に限定されないが、50~200μmであることが好ましく、65~180μmであることがより好ましく、80~150μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「半導体ウエハの厚さA0」とは、半導体ウエハ、特に、研削後の半導体ウエハの厚さを意味する。
本明細書における「厚さ」は、特に断りがない限り、無作為に選択した10箇所で、定圧厚さ測定器により測定した値の平均値である。
【0023】
次に、半導体ウエハ9上のバンプ91に熱硬化性樹脂フィルム12を接触させて、第1保護膜形成用シート1を半導体ウエハ9に圧着させる。これにより、熱硬化性樹脂フィルム12の第1面12aを、バンプ91の表面91a及び半導体ウエハ9の第1面9aに、順次圧着させる。このとき、熱硬化性樹脂フィルム12を加熱することで、熱硬化性樹脂フィルム12は軟化し、バンプ91を覆うようにしてバンプ91間に広がり、第1面9aに密着するとともに、バンプ91の表面91a、特に半導体ウエハ9の第1面9aの近傍部位の表面91aを覆って、バンプ91を埋め込む。
【0024】
第1保護膜形成用シート1を半導体ウエハ9に圧着させる方法としては、各種シートを対象物に圧着させて貼付する公知の方法を適用でき、例えば、ラミネートローラーを用いる方法等が挙げられる。
【0025】
半導体ウエハ9に圧着させるときの第1保護膜形成用シート1の加熱温度は、熱硬化性樹脂フィルム12の硬化が全く又は過度に進行しない程度の温度であればよく、80~100℃であることが好ましく、85~95℃であることがより好ましい。
【0026】
第1保護膜形成用シート1を半導体ウエハ9に圧着させるときの圧力は、特に限定されないが、0.1~1.5MPaであることが好ましく、0.3~1MPaであることがより好ましい。
【0027】
上記のように、第1保護膜形成用シート1を半導体ウエハ9に圧着させると、第1保護膜形成用シート1中の熱硬化性樹脂フィルム12は、バンプ91から圧力を加えられ、初期には、熱硬化性樹脂フィルム12の第1面12aが凹状に変形する。
以上により、第1保護膜形成用シート1を、その熱硬化性樹脂フィルム12により半導体ウエハ9の第1面9aに貼り合わせる(
図1(c))。
【0028】
次いで、必要により、半導体ウエハ9のバンプ形成面とは反対側の第2面9b(すなわち裏面)を研削し(
図1(d))、その後、この裏面に、ダイシングシートを貼付する(
図1(e))。ダイシングシートとしては、例えば、硬化によって、半導体ウエハ及び半導体チップの裏面を保護するための第2保護膜を形成する第2保護膜形成フィルムを備えたものであってもよい。
【0029】
次いで、半導体ウエハ9の第1面9aに貼り合わせた第1保護膜形成用シート1のうち、熱硬化性樹脂フィルム12のみを第1面9aに残して、第1支持シート101を熱硬化性樹脂フィルム12から剥離させる(
図2(f))。ここで「第1支持シート101」とは、例えば、
図1に示す第1保護膜形成用シート1の場合には、第1基材11及び緩衝層13である。
なお、第一実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法においては、以上の様に第1支持シート101を用いた実施形態を示したが、
図2(f)に示す形態とすることができれば、
図1(a)~
図1(d)の工程は必須ではなく、任意の方法を採用することができる。
次いで、熱硬化性樹脂フィルム12を硬化させることにより、半導体ウエハのバンプ形成面に第1保護膜12’を形成する(
図2(g))。
【0030】
第1保護膜12’を備えた状態の半導体ウエハ9をハーフカットダイシングする(
図2(h))。「ハーフカットダイシング」とは、第1保護膜12’とともに、第1保護膜12’の側から半導体ウエハ9を完全に切断しないように切り込むダイシング方法である。ハーフカットダイシングの方法としては、第1保護膜12’とともに、第1保護膜12’の側から半導体ウエハ9をハーフカットダイシングできる方法であればよく、ブレードダイシングであってもよく、レーザーグルービングであってもよい。
【0031】
なお、本発明の半導体チップの製造方法は、第一実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の各工程を上記の順番に行ってもよく、例えば、第一実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の変形として、第1支持シート101上に熱硬化性樹脂フィルム12を備えた第1保護膜形成用シート1(
図1(a))の前記熱硬化性樹脂フィルム12を、バンプ91を有する半導体ウエハ9(
図1(b))の前記バンプ91側の第1面9aに貼付すること(
図1(c))、
半導体ウエハ9の前記第1面9aとは反対側の第2面9bを研削すること(
図1(d))、
半導体ウエハ9の研削された前記第2面9bにダイシングテープ14を貼付すること(
図1(e))、
前記第1支持シート101を前記熱硬化性樹脂フィルム12から剥離すること(
図2(f))、
前記半導体ウエハ9を、前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記熱硬化性樹脂フィルム12を熱硬化させて前記半導体ウエハ9の前記第1面に第1保護膜12’を形成すること(
図1(h))、及び
前記半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプ91の頭頂部910の前記第1保護膜12’の残渣を除去するとともに、前記半導体ウエハ9を個片化すること(
図2(i))、を含む方法が挙げられ、前記方法は前記各工程をこの順番に行ってもよい。
【0032】
また、第一実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法のさらなる変形として、熱硬化性樹脂フィルム12を、バンプ91を有する半導体ウエハ9の前記バンプ91側の第1面9aに貼付すること(
図2(f))、
前記半導体ウエハ9を、前記第1面の側からハーフカットダイシングすること、
前記熱硬化性樹脂フィルム12を熱硬化させて前記半導体ウエハ9の前記第1面に第1保護膜12’を形成すること(
図2(h))、及び
前記半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプ91の頭頂部910の前記第1保護膜12’の残渣を除去するとともに、前記半導体ウエハ9を個片化すること(
図2(i))を含む方法が挙げられ、前記方法は前記各工程をこの順番に行ってもよい。
【0033】
半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(すなわち、半導体ウエハの厚さからハーフカットされた部分を除いた厚さ)は、特に限定されないが、半導体ウエハの厚さA0の1/5~4/5であることが好ましく、厚さA0の1/4~3/4であることがより好ましく、厚さA0の1/3~2/3であることが特に好ましい。半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さAは、25~100μmであることが好ましく、32~90μmであることがより好ましく、40~75μmであることが特に好ましい。
【0034】
前記半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプ91の頭頂部910の前記第1保護膜12’の残渣を除去するとともに、前記半導体ウエハ9を個片化する(
図2(i))。半導体ウエハ9をハーフカットダイシングした後プラズマ照射することにより、レジスト膜を被覆することなくプラズマ照射によるダイシングが可能となるだけでなく、バンプ91の頭頂部910の第1保護膜12’の残渣除去と、半導体ウエハ9の個片化を、同時に達成できることができ、生産性に優れる。また、ハーフカットダイシングの後プラズマ照射してダイシングするので、チッピングの発生を低減でき、チップ強度の向上を図ることができる。また、バンプ91の頭頂部910の第1保護膜12’の残渣は、バンプ91の頭頂部910にできた窪み部に入り込むように残っている場合がある。このバンプ91の頭頂部910の窪み部に残る第1保護膜12’の残渣をも、プラズマ照射により取り除くことができるので、接続信頼性に優れた半導体装置を効率よく製造できる。
【0035】
プラズマ照射を行うプラズマ処理装置は、特に限定されず、公知のプラズマ処理装置を用いることができる。また、プラズマ処理の条件は、第1保護膜12’及び半導体ウエハ9の種類などに応じて異なり、特に限定されないが、ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)(すなわち、半導体ウエハ上のバンプのない部分における第1保護膜の厚さ)と、前記バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さC(μm)と、プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による第1保護膜のエッチング速度b(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を充足することが好ましい。
A<at ・・・(1)
B>bt ・・・(2)
C<bt ・・・(3)
【0036】
なお、ハーフカットされた部分の残りの厚さA、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さB、及び、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さCは、取得する半導体チップの範囲の、任意の5箇所で、走査型電子顕微鏡により、厚さを測定した平均で表される値として取得できる。
本明細書において、「エッチング速度」とは、各対象物に対してプラズマ照射した際にエッチングされる速度を意味する。
【0037】
取得する半導体チップの範囲で、ハーフカットされた部分の残りの厚さにばらつきがあるとき、ハーフカットされた部分の残りの厚さの最大値A’が式(1)’を充足することがより好ましく、バンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さにばらつきがあるとき、バンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さの最小値B’が式(2)’を充足することがより好ましく、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さにばらつきがあるとき、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さの最大値C’が式(3)’を充足することがより好ましい。
A’<at ・・・(1)’
B’>bt ・・・(2)’
C’<bt ・・・(3)’
【0038】
好ましくは、式(1)、式(2)及び式(3)の関係、より好ましくは、式(1)’、式(2)’及び式(3)’の関係を充足することで、時間t(min)のプラズマ照射後の半導体ウエハは個片化され、バンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さがB-bt>0となって、バンプ形成面を保護する第1保護膜付き半導体チップを得ることができる。
【0039】
プラズマ照射における照射ガスとしては、フッ素系安定ガス(SF6、CF4、C2F6、C2F4、CHF3、C4F8、NF3、XeF2等)、O2、Ar等が挙げられ、半導体ウエハのエッチング性に優れるという観点から、SF6、CF4又はCHF3が好ましい。
プラズマパワー条件としては、100~8000Wが好ましい。
【0040】
プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度aは、0.3~30μm/minが好ましく、0.4~25μm/minが好ましく、0.5~20μm/minが好ましい。プラズマ照射による第1保護膜のエッチング速度bは、0.1~2μm/minが好ましく、0.2~1.5μm/minが好ましく、0.3~1.0μm/minが好ましい。
【0041】
バンプの頭頂部上の第1保護膜はバンプによって圧縮されるので、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さC(μm)は、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)よりも薄くなる。半導体ウエハはプラズマ照射によって容易にエッチングされるのに対して、第1保護膜は熱硬化された樹脂でできているので、プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)は、プラズマ照射による第1保護膜のエッチング速度b(μm/min)よりも充分に大きい。よって、プラズマ照射の時間t(min)を調整することにより、前記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を充足するプラズマ照射の条件を容易に調整することができる。
【0042】
例えば、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さBが30μm、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さCが3μm、厚さ100μmの半導体ウエハについて、残りの厚さAを50μmまでハーフカットし、プラズマ照射ガス:SF6、プラズマパワー:2000Wの条件でプラズマ照射することにより、半導体ウエハのエッチング速度aを15μm/minとすることができ、第1保護膜のエッチング速度bを1.5μm/minとすることができ、前記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を充足する。
【0043】
以降は、従来法と同様の方法により、半導体装置の製造までを行うことができる。すなわち、第1保護膜付き半導体チップをピックアップし、ピックアップした半導体チップを配線基板にフリップチップ実装し、最終的に半導体装置を製造する。
【0044】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第1保護膜付き半導体チップの製造方法の第二実施形態を模式的に示す概略図である。
第二実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法は、熱硬化性樹脂フィルム12を、バンプを有する半導体ウエハ9のバンプ側の第1面に貼付すること(
図3(f))、
半導体ウエハ9を前記第1面の側からハーフカットダイシングすること(
図3(g’))、
半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプの頭頂部の熱硬化性樹脂フィルム12を除去するとともに半導体ウエハ9を個片化すること(
図3(h’))、及び
熱硬化性樹脂フィルム12を熱硬化させて半導体ウエハ9の前記第1面に第1保護膜12’を形成すること(
図3(i’))、を含む第1保護膜付き半導体チップの製造方法である。
【0045】
なお、第二実施形態の第1保護膜付き半導体チップの製造方法において、
図3(f)に示す形態とする方法として、
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)、
図1(d)及び
図3(f)を経る工程が挙げられるが、
図1(a)~
図1(d)の工程は必須ではなく、任意の方法を採用することができる。
【0046】
前記半導体ウエハ9のハーフカットされた前記第1面の側にプラズマ照射して、前記バンプ91の頭頂部910の熱硬化性樹脂フィルム12の残渣を除去するとともに、前記半導体ウエハ9を個片化する(
図3(h’))。半導体ウエハ9をハーフカットダイシングした後プラズマ照射することにより、レジスト膜を被覆することなくプラズマ照射によるダイシングが可能となるだけでなく、バンプ91の頭頂部910の熱硬化性樹脂フィルム12の残渣除去と、半導体ウエハ9の個片化を、同時に達成できることができ、生産性に優れる。また、ハーフカットダイシングの後プラズマ照射してダイシングするので、チッピングの発生を低減でき、チップ強度の向上を図ることができる。また、バンプ91の頭頂部910の熱硬化性樹脂フィルム12の残渣は、バンプ91の頭頂部910にできた窪み部に入り込むように残っている場合がある。このバンプ91の頭頂部910の窪み部に残る熱硬化性樹脂フィルム12の残渣をも、プラズマ照射により取り除くことができるので、接続信頼性に優れた半導体装置を効率よく製造できる。
【0047】
プラズマ照射を行うプラズマ処理装置は、特に限定されず、公知のプラズマ処理装置を用いることができる。また、プラズマ処理の条件は、熱硬化性樹脂フィルム12及び半導体ウエハ9の種類などに応じて異なり、特に限定されないが、ハーフカットダイシングされた前記半導体ウエハについて、前記半導体ウエハのハーフカットされた部分の残りの厚さA(μm)と、前記半導体ウエハのバンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さD(μm)(すなわち、半導体ウエハ上のバンプのない部分における熱硬化性樹脂フィルムの厚さ)と、前記バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さE(μm)と、プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)と、プラズマ照射による熱硬化性樹脂フィルム12のエッチング速度d(μm/min)と、プラズマ照射の時間t(min)とが、下記式(1)、式(4)及び式(5)の関係を充足することが好ましい。
A<at ・・・(1)
D>dt ・・・(4)
E<dt ・・・(5)
【0048】
ハーフカットされた部分の残りの厚さA、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さD、及び、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さEは、取得する半導体チップの範囲の、任意の5箇所で、走査型電子顕微鏡により、厚さを測定した平均で表される値として取得できる。
【0049】
取得する半導体チップの範囲で、ハーフカットされた部分の残りの厚さにばらつきがあるとき、ハーフカットされた部分の残りの厚さの最大値A’が式(1)’を充足することがより好ましく、バンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さにばらつきがあるとき、バンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さの最小値D’が式(4)’を充足することがより好ましく、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さにばらつきがあるとき、バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さの最大値E’が式(5)’を充足することがより好ましい。
A’<at ・・・(1)’
D’>bt ・・・(4)’
E’<bt ・・・(5)’
【0050】
好ましくは、式(1)、式(4)及び式(5)の関係、より好ましくは、式(1)’、式(4)’及び式(5)’の関係を充足することで、時間t(min)のプラズマ照射後の半導体ウエハは個片化され、バンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さがD-dt>0となって、バンプ形成面を保護する第1保護膜付き半導体チップを得ることができる。
【0051】
プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度aは、0.3~30μm/minが好ましく、0.4~25μm/minが好ましく、0.5~20μm/minが好ましい。プラズマ照射による熱硬化性樹脂フィルム12のエッチング速度dは、0.1~2μm/minが好ましく、0.2~1.5μm/minが好ましく、0.3~1.0μm/minが好ましい。
【0052】
バンプの頭頂部上の第1保護膜はバンプによって圧縮されるので、バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さE(μm)は、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さD(μm)よりも薄くなる。半導体ウエハはプラズマ照射によって容易にエッチングされるので、プラズマ照射による半導体ウエハのエッチング速度a(μm/min)は、プラズマ照射による熱硬化性樹脂フィルム12のエッチング速度d(μm/min)よりも充分に大きい。よって、プラズマ照射の時間t(min)を調整することにより、前記式(1)、式(4)及び式(5)の関係を充足するプラズマ照射の条件を容易に調整することができる。
【0053】
例えば、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さDが30μm、バンプの頭頂部上の熱硬化性樹脂フィルム12の厚さEが3μm、厚さ100μmの半導体ウエハについて、残りの厚さAを50μmまでハーフカットし、プラズマ照射ガス:SF6、プラズマパワー:2000Wの条件でプラズマ照射することにより、半導体ウエハのエッチング速度aを15μm/minとすることができ、熱硬化性樹脂フィルム12のエッチング速度dを1.5μm/minとすることができ、前記式(1)、式(4)及び式(5)の関係を充足する。
【0054】
以降は、従来法と同様の方法により、半導体装置の製造までを行うことができる。すなわち、第1保護膜付き半導体チップをピックアップし、ピックアップした半導体チップを配線基板にフリップチップ実装し、最終的に半導体装置を製造する。
【0055】
◎第1保護膜形成用シート
図1(a)は、第1支持シート101上に熱硬化性樹脂フィルム12を備えた第1保護膜形成用シート1の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【0056】
図1(a)に示す第1保護膜形成用シート1は、第1支持シート101と、第1支持シート101の一方の表面101a上に備えらえた熱硬化性樹脂フィルム12とを含む。より具体的には、第1保護膜形成用シート1は、第1基材11と、第1基材11上に備えらえた緩衝層13と、緩衝層13上に備えられた熱硬化性樹脂フィルム12とを含み、第1基材11及び緩衝層13が第1支持シート101を構成している。
【0057】
第1保護膜形成用シートは、
図1(a)に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1(a)に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
次に、第1保護膜形成用シートを構成する各層について説明する。
【0058】
◎熱硬化性樹脂フィルム
熱硬化性樹脂フィルムは、半導体ウエハのバンプ側の第1面(すなわち、バンプ形成面)、及びこのバンプ形成面上に設けられたバンプを保護するために用いられるものである。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂フィルムは、通常の樹脂フィルムと同様、加熱により軟化するが、更に加熱することにより熱硬化するものであり、熱硬化前の常温(23℃)の熱硬化性樹脂フィルムよりも、熱硬化後に常温に戻したときには硬くなる性質を有する。これにより、バンプを有する表面に形成される第1保護膜が、保護膜として機能することとなる。
【0060】
熱硬化性樹脂フィルムは、シート状又はフィルム状であり、その構成材料は、特に限定されない。
【0061】
熱硬化性樹脂フィルムは1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0062】
熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、5~75μmであることがより好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。熱硬化性樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い第1保護膜を形成できる。
また、熱硬化性樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「熱硬化性樹脂フィルムの厚さ」とは、熱硬化性樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる熱硬化性樹脂フィルムの厚さとは、熱硬化性樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0063】
◎第1保護膜
第1保護膜は、半導体ウエハのバンプ側の第1面(すなわち、バンプ形成面)、及びこのバンプ形成面上に設けられたバンプ上で、熱硬化されてできる膜である。
【0064】
半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)(すなわち、半導体ウエハ上のバンプのない部分における第1保護膜の厚さ)は、熱硬化性樹脂フィルムの厚さと同様である。バンプの頭頂部上の第1保護膜はバンプによって圧縮されるので、バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さC(μm)は、熱硬化性樹脂フィルムの厚さ、すなわち、半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さB(μm)よりも薄くなる。半導体ウエハのバンプ側の第1面上の第1保護膜の厚さBは、1.1~100μmであることが好ましく、5~75μmであることがより好ましく、10~50μmであることが特に好ましい。
バンプの頭頂部上の第1保護膜の厚さCは、0.11~10μmであることが好ましく、0.5~7.5μmであることがより好ましく、1~5μmであることが特に好ましい。
【0065】
<<熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物>>
熱硬化性樹脂フィルムは、その構成材料を含有する熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物から形成できる。例えば、熱硬化性樹脂フィルムの形成対象面に熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に熱硬化性樹脂フィルムを形成できる。熱硬化性樹脂フィルムのより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物中の、常温(23℃)で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、熱硬化性樹脂フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0066】
熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0067】
熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0068】
<樹脂層形成用組成物>
熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物(本明細書においては、単に「樹脂層形成用組成物」と略記することがある)等が挙げられる。
【0069】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性樹脂フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物であり、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0070】
重合体成分(A)としては、例えば、ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
【0071】
重合体成分(A)における前記ポリビニルアセタールとしては、公知のものが挙げられる。
なかでも、好ましいポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するものが挙げられる。
【0072】
【化1】
(式中、l
1、m
1及びn
1は、ポリビニルブチラールを構成する全構成単の合計モル数に対するそれぞれの構成単位の含有割合(mol%)である。)
【0073】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5000~200000であることが好ましく、8000~100000であることがより好ましい。
【0074】
ブチラール基を有する構成単位の含有割合l1(ブチラール化度)は、ポリビニルブチラールを構成する全構成単位の合計モル数に対して、40~90mol%が好ましく、50~85mol%がより好ましく、60~76mol%が特に好ましい。
【0075】
アセチル基を有する構成単位の含有割合m1は、ポリビニルブチラールを構成する全構成単位の合計モル数に対して、0.1~9mol%が好ましく、0.5~8mol%がより好ましく、1~7mol%が特に好ましい。
【0076】
水酸基を有する構成単位の含有割合n1は、ポリビニルブチラールを構成する全構成単位の合計モル数に対して、10~60mol%が好ましく、10~50mol%がより好ましく、20~40mol%が特に好ましい。
【0077】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。
ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製,製品名「DSC Q2000」)によって、昇温・降温速度20℃/分で測定した結果を用いることができる。
【0078】
ポリビニルアセタールを構成する3種以上のモノマーの比率は任意に選択できる。
【0079】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂層の形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂層が追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂層との間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0080】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-50~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、第1保護膜と第1支持シートとの接着力が抑制されて、第1支持シートの剥離性が向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜の被着体との接着力が向上する。
【0081】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなる共重合体等が挙げられる。
【0082】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0083】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0084】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0086】
本発明においては、例えば、重合体成分(A)として、ポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、ポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、ポリビニルアセタール又はアクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、第1保護膜の第1支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0087】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0088】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0089】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0090】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0091】
樹脂層形成用組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂フィルムの重合体成分(A)の含有量)は、重合体成分(A)の種類によらず、5~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、例えば、5~70質量%、5~60質量%、5~50質量%、5~40質量%、及び5~30質量%のいずれかであってもよい。ただし、樹脂層形成用組成物におけるこれら含有量は一例である。
【0092】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、樹脂層形成用組成物が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、樹脂層形成用組成物は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0093】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性樹脂フィルムを硬化させて、硬質の第1保護膜を形成するための成分である。
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0094】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0095】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0096】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0097】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0098】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基ともいう)、2-プロペニル基(アリル基ともいう)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は、15000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましく、5000以下であることが特に好ましい。
【0100】
エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量の下限値は、特に限定されない。ただし、熱硬化性樹脂フィルムの硬化性、並びに第1保護膜の強度及び耐熱性がより向上する点では、エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。
【0101】
エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。
例えば、エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は、好ましくは300~15000、より好ましくは300~10000、特に好ましくは300~3000である。また、エポキシ樹脂(B1)の重量平均分子量は、好ましくは500~15000、より好ましくは500~10000、特に好ましくは500~3000である。ただし、これらは、エポキシ樹脂(B1)の好ましい重量平均分子量の一例である。
本明細書において、「数平均分子量」は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値で表される数平均分子量を意味する。
【0102】
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、130~800g/eqであることがより好ましい。
本明細書において、「エポキシ当量」とは1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2001の方法に従って測定することができる。
【0103】
エポキシ樹脂(B1)は、常温(23℃)で液状であるもの(本明細書においては、単に「液状のエポキシ樹脂(B1)」と称することがある)が好ましい。
【0104】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0105】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0106】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(本明細書においては、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
【0107】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0108】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、第1保護膜の第1支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0109】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0110】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0111】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、1~150質量部、1~100質量部、1~75質量部、1~50質量部、及び1~30質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルムの吸湿率が低減されて、第1保護膜を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0112】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましく、60~950質量部であることがより好ましく、70~900質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、第1保護膜と第1支持シートとの接着力が抑制されて、第1支持シートの剥離性が向上する。
【0113】
[硬化促進剤(C)]
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、樹脂層形成用組成物の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(すなわち、少なくとも1個の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(すなわち、少なくとも1個の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0114】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
硬化促進剤(C)を用いる場合、樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性樹脂フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0116】
[充填材(D)]
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性樹脂フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた第1保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を第1保護膜の形成対象物に対して最適化することで、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性樹脂フィルムが充填材(D)を含有することにより、第1保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0117】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0118】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
充填材(D)の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0120】
充填材(D)の平均粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、充填材(D)の平均粒径は、充填材(D)の入手がより容易である点では、0.01μm以上であることが好ましい。 1つの側面として、充填材(D)の平均粒子径は、0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0121】
充填材(D)を用いる場合、樹脂層形成用組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対する充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂フィルムの充填材(D)の含有量)は、3~60質量%であることが好ましく、3~55質量%であることがより好ましい。
【0122】
[カップリング剤(E)]
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性樹脂フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた第1保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0123】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0124】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0125】
カップリング剤(E)を用いる場合、樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量を100質量部としたとき、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。
カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性樹脂フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0126】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性樹脂フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0127】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(すなわち、金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(すなわち、アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0128】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0129】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0130】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0131】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性樹脂フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0132】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
架橋剤(F)を用いる場合、樹脂層形成用組成物において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0134】
[他の成分]
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)、硬化促進剤(C)、充填材(D)、カップリング剤(E)及び架橋剤(F)以外の、他の成分をさらに含有していてもよい。
前記他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、着色剤、汎用添加剤等が挙げられる。前記汎用添加剤は、公知のものであり、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0135】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムの前記他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0136】
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂フィルムは、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有し、重合体成分(A)としてポリビニルアセタールを含有し、かつエポキシ樹脂(B1)として液状のものを含有することが好ましく、これら成分以外に、さらに、硬化促進剤(C)及び充填材(D)を含有するものがより好ましい。そして、この場合の充填材(D)は、上述の平均粒径を有することが好ましい。
【0137】
[溶媒]
樹脂層形成用組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する樹脂層形成用組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オールともいう)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(すなわち、アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
樹脂層形成用組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
樹脂層形成用組成物が含有する溶媒は、樹脂層形成用組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0139】
樹脂層形成用組成物の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0140】
<<熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物の製造方法>>
樹脂層形成用組成物等の熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0141】
◎第1支持シート
第1保護膜形成用シート1において、第1支持シート101としては、公知のものを用いることができる。たとえば、第1支持シート101は、第1基材11と、第1基材11上に形成された緩衝層13と、を備えて構成されている。すなわち、第1保護膜形成用シート1は、第1基材11、緩衝層13及び熱硬化性樹脂フィルム12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0142】
◎第1基材
第1基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPEと略すことがある)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPEと略すことがある)、高密度ポリエチレン(HDPEと略すことがある)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0143】
第1基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0144】
第1基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、第1基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0145】
第1基材の厚さは、5~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、15~300μmであることがさらに好ましく、20~150μmであることが特に好ましい。
ここで、「第1基材の厚さ」とは、第1基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1基材の厚さとは、第1基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0146】
第1基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い第1基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0147】
第1基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0148】
第1基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
前記熱硬化性樹脂フィルムがエネルギー線硬化性である場合、第1基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0149】
第1基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する第1基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0150】
◎剥離フィルム
前記剥離フィルムは、この分野で公知のものでよい。
好ましい前記剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製フィルムの少なくとも一方の表面が、シリコーン処理等によって剥離処理されたもの;フィルムの少なくとも一方の表面が、ポリオレフィンで構成された剥離面となっているもの等が挙げられる。
剥離フィルムの厚さは、第1基材の厚さと同様であることが好ましい。
【0151】
◎緩衝層
緩衝層13は、緩衝層13とこれに隣接する層へ加えられる力に対して、緩衝作用を有する。ここでは、「緩衝層と隣接する層」として、熱硬化性樹脂フィルム12を示している。
【0152】
緩衝層13は、シート状又はフィルム状であり、エネルギー線硬化性であることが好ましい。エネルギー線硬化性である緩衝層13は、エネルギー線硬化させることで、後述する熱硬化性樹脂フィルム12からの剥離がより容易となる。
【0153】
緩衝層13の構成材料としては、例えば、各種粘着性樹脂が挙げられる。前記粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。緩衝層13がエネルギー線硬化性である場合には、その構成材料としては、エネルギー線硬化に必要な各種成分も挙げられる。
【0154】
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0155】
緩衝層13は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0156】
緩衝層13の厚さは、30~500μmであることが好ましい。
ここで、「緩衝層13の厚さ」とは、緩衝層13全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる緩衝層13の厚さとは、緩衝層13を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0157】
<<粘着性樹脂組成物>>
緩衝層13は、粘着性樹脂を含有する粘着性樹脂組成物から形成できる。例えば、緩衝層13の形成対象面に粘着性樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に緩衝層13を形成できる。
【0158】
粘着性樹脂組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0159】
粘着性樹脂組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、後述する溶媒を含有する粘着性樹脂組成物は、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着性樹脂組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0160】
緩衝層13がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着性樹脂組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着性樹脂組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着性樹脂組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着性樹脂組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性低分子化合物と、を含有する粘着性樹脂組成物(I-3)等が挙げられる。
【0161】
粘着性樹脂組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着性樹脂組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着性樹脂組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0162】
<<粘着性樹脂組成物の製造方法>>
粘着性樹脂組成物(I-1)~(I-4)等の前記粘着性樹脂組成物は、前記粘着性樹脂と、必要に応じて前記粘着性樹脂以外の成分等の、粘着性樹脂組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0163】
◇第1保護膜形成用シートの製造方法
前記第1保護膜形成用シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0164】
例えば、第1基材上に緩衝層及び熱硬化性樹脂フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる第1保護膜形成用シートは、以下に示す方法で製造できる。すなわち、第1基材に対して、緩衝層形成用の粘着性樹脂組成物を押出成形することにより、第1基材上に緩衝層を積層する。また、剥離フィルムの剥離処理面上に、上述の熱硬化性樹脂フィルム形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、熱硬化性樹脂フィルムを積層する。そして、この剥離フィルム上の熱硬化性樹脂フィルムを第1基材上の緩衝層と貼り合わせることで、第1基材上に緩衝層、熱硬化性樹脂フィルム及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる第1保護膜形成用シートを得る。剥離フィルムは、第1保護膜形成用シートの使用時に取り除けばよい。
【0165】
上述の各層以外の他の層を備えた第1保護膜形成用シートは、上述の製造方法において、前記他の層の積層位置が適切な位置となるように、前記他の層の形成工程及び積層工程のいずれか一方又は両方を適宜追加して行うことで、製造できる。
【0166】
例えば、第1基材上に、密着層、緩衝層及び熱硬化性樹脂フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる第1保護膜形成用シートは、以下に示す方法で製造できる。すなわち、第1基材に対して、密着層形成用組成物及び緩衝層形成用の粘着性樹脂組成物を共押出成形することにより、第1基材上に密着層及び緩衝層をこの順に積層する。そして、上記と同じ方法で、別途、剥離フィルム上に熱硬化性樹脂フィルムを積層する。次いで、この剥離フィルム上の熱硬化性樹脂フィルムを、第1基材及び密着層上の緩衝層と貼り合わせることで、第1基材上に、密着層、緩衝層、熱硬化性樹脂フィルム及び剥離フィルムがこの順に積層されてなる第1保護膜形成用シートを得る。熱硬化性樹脂フィルム上の剥離フィルムは、第1保護膜形成用シートの使用時に取り除けばよい。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、バンプの頭頂部の第1保護膜の残渣除去と半導体ウエハの個片化を同時に達成でき、生産性に優れる半導体チップの製造方法を提供できるので、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0168】
1・・・第1保護膜形成用シート、
11・・・第1基材、
12・・・熱硬化性樹脂フィルム、
12a・・・熱硬化性樹脂フィルムの第1面、
12’・・・第1保護膜、
13・・・緩衝層、
14・・・ダイシングシート、
101・・・第1支持シート、
9・・・半導体ウエハ、
9a・・・半導体ウエハの第1面(バンプ形成面)、
9b・・・半導体ウエハの第2面(裏面)、
91・・・バンプ、
91a・・・バンプの表面、
910・・・バンプの頭頂部