(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】混合流体中の異なる揮発度を有する成分を分離する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/26 20060101AFI20230424BHJP
D21C 11/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B01D3/26 Z
D21C11/00
(21)【出願番号】P 2020520421
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 SE2018050669
(87)【国際公開番号】W WO2018236282
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519456055
【氏名又は名称】ローゼンブラッド デザイン アクティーボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サールストレム,スティグ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-519536(JP,A)
【文献】米国特許第02609334(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090581(US,A1)
【文献】特開2000-271403(JP,A)
【文献】特開2018-161626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00- 8/00
B01B 1/00- 1/08
D21C 11/00
F28B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合流体中で異なる揮発度を有する成分を分離する装置(10)であり、
前記装置(10)は、
第1及び第2の端部(101、102)の間で延在して第1の熱交換部(100)を通る第1及び第2の液体流のための別々の流路を形成する第1及び第2の流路構造(131、132)を備え、前記第1の端部(101)は、前記装置(10)の稼働中に第1の熱交換部(100)の上部を、前記第2の端部(102)は下部を形成するためのものである、第1の熱交換部(100)と、
前記装置(10)に前記混合流体を供給する注入口(118)であって、前記第1の熱交換部(100)の上端部(101)で前記第1の流路構造(131)と流体連通するように配置された混合流体注入口(118)と、
前記装置(10)に蒸気を供給する注入口(119)であって、
前記熱交換部(100)の下端部(102)で前記第1の流路構造(131)と流体連通するように配置された蒸気注入口(119)と、
前記装置(10)を通して冷却媒体を供給する構造であって、前記第1の熱交換部(100)の前記第1の
上端部(101)に前記第2の流路構造(132)と流体連通するように配置された少なくとも1つの冷却媒体注入口(105、106、107、108)を含む、構造とを含む装置(10)であって、
前記装置(10)は、前記第1の熱交換部(100)の前記第1の端部(101)に配置され、前記装置(10)の稼働中に前記第1の熱交換部(100)の上方に位置するようになる第2の熱交換部(200)を含み、
前記第2の熱交換部(200)は、
第1の上部及び
第2の下部(201、202)の間で延在して前記第2の熱交換部(200)を通る第1及び第2の液体流のための別々の流路を形成する第3及び第4の流路構造(233、234)を備え、前記
第1の上部(201)は、前記装置(10)の稼働中に第2の熱交換部(200)の上端部を、前記
第2の下部(202)は下端部を形成するためのものであり、
前記冷却媒体
を供給する構造は、前記第2の熱交換部(200)の前記第1の
上部(201)に前記第4の流路構造(234)と流体連通するように配置された少なくとも1つの冷却媒体注入口(205、206、207、208)を含み、
前記第1及び第3の流路構造(131、233)は、互いに流体連通するように配置され、前記第1の熱交換部(100)の前記上端部(101)で前記第1の流路構造(131)を出た蒸発液体流は前記第2の熱交換部(200)の前記第3の流路構造(233)へ更に上向きに流れることができ、前記第2の熱交換部(200)の前記
下部(202)で前記第3の流路構造(233)を出た縮合物の流れは前記第1の熱交換部(100)の前記第1の流路構造(131)へ更に下向きに流れることができる、装置。
【請求項2】
前記第2及び第4の流路構造(132、234)は、互いに流体連通するように配置され、前記第2の熱交換部(200)の前記
下部(202)に前記第4の流路構造(234)を出た冷却媒体流が前記第1の熱交換部(100)の前記第2の流路構造(132)へ更に下向きに流れることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置(10)は、前記第4の流路構造(234)と流体連通するように配置されている冷却媒体迂回ダクト(60)を備え、それにより、前記装置(10)の稼働中に前記第2の熱交換部(200)を通り前記第1の熱交換部(100)に向かって下向きに流れる前記冷却媒体の少なくとも一部が、前記第1の熱交換部(100)に到達する前に前記装置(10)から供給されることができる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
主冷却媒体注入口(205-208)が、前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に前記第4の流路構造(234)と流体連通するように配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の流路構造(131)は、前記第1の熱交換部(100)の前記下端部及び前記上端部(102、101)に開口端を有する一組のチャネルを含み、前記第2の流路構造(132)は、前記チャネルの外側に沿って延在して、前記チャネルの内側の流体と前記チャネルの外側の別の流体との間のチャネルの壁を介して熱伝達を可能とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の熱交換部(100)の前記上端部(101)に第1の封止板(141)が配置され、前記封止板(141)は、前記第1の熱交換部(100)を横切って延在して前記第2の流路構造(132)の上側制限部を形成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の封止板(141)が、前記第1の流路構造(131)の前記チャネルに適合した孔を有し、前記チャネルが密閉された状態で、又は前記孔を介して延在し、前記第1の流路構造(131)の液体は前記封止板(141)を通過できるが前記第2の流路構造(132)の液体は通過できない、
請求項5を引用する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の熱交換部(100)の前記下端部(102)に第2の封止板(142)が配置され、前記封止板(142)は、前記第1の熱交換部(100)を横切って延在して前記第2の流路構造(132)の下側制限部を形成する、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の熱交換部(100)の前記上端部(101)に冷却媒体用の第1の分配板(145)が配置され、前記第1の分配板(145)は前記第1の封止板(141)の下方にある程度の距離を置いて前記第1の熱交換部(100)を横切って延在して、前記第1の封止板(141)と前記第1の分配板(145)との間に冷却媒体用の蓄積空間を形成する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の分配板(145)は、前記チャネル(131’)の周りに円周方向に嵌るが、前記チャネル(131’)より大きく、それにより、前記チャネル(131’)の外壁の周囲に又は周囲に沿って狭い排水開口(146)が形成される、
請求項7を引用する請求項9に記載の装置。
【請求項11】
間隔要素(147)は、前記チャネル(131’)の前記外壁と前記第1の分配板(145)との間の前記排水開口(146)に配置され、前記チャネル(131’)を前記チャネル
に適合した孔に適切に位置付ける、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置(10)から進入混合流体の縮合成分を除去する出口(117)が、前記第1の流路構造(131)と流体連通して前記第1の熱交換部(100)の前記下部(102)に配置されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置(10)から進入混合流体の縮合成分を除去する出口(234)が、前記第3の流路構造(233)と流体連通して前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に配置されている、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置(10)に再循環成分を供給する注入口(213)が前記第3の流路構造(233)と流体連通して前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に配置されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置(10)は、前記第3の流路構造(233)と流体連通して前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に配置された上部空間(52)と、前記装置(10)に前記再循環成分を供給する前記注入口(213)と、前記装置(10)から前記進入混合流体の
蒸発成分を除去する前記出口(214)と、を含む、請求項13を引用する請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置(10)は前記第1及び第2の熱交換部(100、200)の間に中央空間(53)を含み、前記中央空間は前記第1及び第3の流路構造(131、233)の間で流体連通状態を形成する、請求項1から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置(10)の稼働中に前記中央空間(53)に蓄積された成分を除去する中央出口(113-116)が前記中央空間(53)に配置されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置(10)は前記第1の流路構造(131)と流体連通して前記第1の熱交換部(100)の前記下部(102)に配置された下部空間(54)と、前記装置(10)に蒸気を供給する前記注入口(119)と、前記装置(10)から前記進入混合流体の縮合成分を除去する前記出口(117)と、を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記装置(10)の稼働中に、混合液及び蒸気の流れは
第1の流を形成し、冷却媒体の流れは
第2の流を形成する、請求項1から18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントであって、
前記プラントは、請求項1から19のいずれか1項に記載の装置(10)を含む、プラント。
【請求項21】
前記プラントは、前記プラントの稼働中に、異なる揮発度を有する成分を含有する不浄縮合物を生成する装備を含み、前記不浄縮合物を前記装置(10)の前記混合流体注入口(118)に供給するように構成される、請求項20に記載のプラント。
【請求項22】
請求項1から19のいずれか1項に記載の装置(10)を用いて混合流体中の異なる揮発度を有する成分を分離する方法であって、前記方法は、
前記混合流体を前記混合流体注入口(118)に供給するステップと、
前記蒸気注入口(119)に蒸気を供給するステップと、
前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)で前記第4の流路構造(234)に冷却媒体を供給するステップと、
前記第1の流路構造(131)と流体連通して前記第1の熱交換部(100)の前記下端部(102)に配置されている第1の出口(117)を介して前記装置(10)から
進入混合流体の縮合成分を除去するステップと、
前記第3の流路構造(233)と流体連通して前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に配置されている第2の出口(214)を介して前記装置(10)から
前記進入混合流体の蒸発成分を除去するステップと、
前記第1の熱交換部(100)の前記下端部(102)で前記第2の流路構造(132)から加熱された冷却媒体を除去するステップと、を含む、方法。
【請求項23】
前記方法は、再循環成分であって、蒸発の形で除去された成分の留分を、前記第3の流路構造(233)と流体連通して前記第2の熱交換部(200)の前記上部(201)に配置された注入口(213)を介して前記装置(10)に供給するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記蒸発成分はメタノールを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部によると、混合流体、例えばケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントで生成された不浄縮合物中の異なる揮発度を有する成分を分離する装置に関する。本発明は更に、装置を含むプラントと、分離を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルセルロースパルプは、酸又はアルカリプロセスにより溶解される木材チップや他のリグノセルロース材から製造される。蒸解/溶解中、木材のリグニンの主要部分、特に無数の木材繊維間の中間ラメラを主に形成するリグニンは蒸解液に溶け込み、それによって消化後、例えばバッチ式蒸解法による蒸解物の吹き込み後、繊維を分離してセルロースパルプを形成する。例えば、木材のリグニン含有量の大部分に加え、木材のヘミセルロースのかなりの部分が溶液に溶解する。この部分がどれほど大きくなるかは、パルプ化の程度により決まる。一般的には、蒸解の歩留りとして百分率で表される。また、木材セルロース含有量はごく一部のみが溶液になることができる。
【0003】
酸蒸解プロセスの例としては亜硫酸塩プロセスが挙げられ、アルカリ蒸解プロセスの例としては硫酸塩プロセスが挙げられる。
【0004】
その他の従来のアルカリ蒸解プロセスとしては、ポリスルフィドパルプ化プロセスやソーダタイプ(水酸化ナトリウム)プロセスが挙げられ、キノン化合物などの触媒を用いることができる。「硫酸プロセス」には、実際の硫酸パルプ化プロセスの前に、高硫化パルプ化、白液(主に水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合物)が蒸解段階の後期に追加される向流蒸解、リグノセルロース材の化学処理を使用する、などの方法が含まれる。
【0005】
亜硫酸法、又は亜硫酸プロセスは、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、ナトリウムなど、蒸解液で用いられる塩基に応じて分けることができる。ナトリウムとマグネシウムの蒸解液は通常回収されるため、この場合に適用可能となる。
【0006】
リグノセルロース材が溶解した後、蒸解液は繊維から分離される。蒸解液は黒液、使用済み液、又は化学物質の回収に鑑みて薄液などと呼ばれ、主に水を含有する。この薄液の乾燥固形分(リグニン、ヘミセルロース、セルロース、残留化学物質など)は、通常15~20%の範囲である。
【0007】
例えば、ソーダ回収ボイラーで黒/薄液を燃焼させるためには、通常、乾燥固形分を少なくとも約55%に増やす必要がある。燃焼プロセス中、有機化合物は主に二酸化炭素と水に変換し、熱を生成する。無機化合物は、新しい未加工蒸解液の製造に使用される抽出残留物を形成する。乾燥固形分の高い黒液は、通常、濃厚液と呼ばれる。濃厚液は、通常5~7工程/段階で、薄液の蒸発により生成される。
【0008】
現代のケミカルセルロースパルププラントでは、淡水の消費をできる限り抑えながら、廃液の排出を減らすことを目標としている。この目標は、ある程度は全液体システムを閉ループ構造として構成することで達成される。一般的には、漂白段階から使用済み液を回収し、使用済み蒸解液(黒/薄液)と混合するのである。これにより薄液は、使用済みの蒸解液と、様々な漂白工程からの使用済み液との混合物を含めることができる。
【0009】
薄液の蒸発により縮合物が生成される。蒸発プロセスからの縮合物の流れ、例えば、様々な蒸発段階からの流れは比較的清浄である可能性があり、そのような縮合物はパルププラントの1つ以上の位置で使用し得る。蒸発プロセスで生成される他の流れには、時折、不浄縮合物が含まれている。
【0010】
本開示は、具体的には、パルププラントから生成された不浄(汚染、不純)縮合物、通常、上述した種類の縮合物の浄化に関する。
【0011】
ケミカルセルロースパルプの生産では、それ以外の不浄縮合物も生成される。リグノセルロース材料の溶解は一定の圧力の下で行われるので、蒸気や様々な有機・無機化合物を含むガス混合物が溶解/蒸留容器から放出される。そのようなガス混合物は、バッチ方式と連続方式の両方で生成される。通常、ガス混合物は縮合され、不浄蒸発縮合物と混合されるようになる。
【0012】
ケミカルパルプ化プロセスの他にも、中性亜硫酸塩セミケミカルプロセス(NSSC)などのセミケミカルパルプ化プロセスが存在する。この種のプロセスでは、化学パルプ化の程度が比較的低いため、その後の機械的解繊が必要となる。場合によっては、蒸解/処理液が蒸発されるので、本発明は、蒸発プロセスから不浄縮合物を精製する作業にも適している。
【0013】
従来、不浄縮合物の精製には蒸留(stripping)と呼ばれる工程が含まれる。不浄縮合物は、吹き込みにより蒸気に晒され、それにより、不浄縮合物内の揮発性化合物は蒸気に追従し、縮合物を残すことになる。通常、分離又は隔離された蒸留機器を用いる。用いられる蒸気は、多くの場合、回収ボイラーで生成される流入蒸気や蒸発プラントの蒸発器段から得た蒸気である。上記のような従来の不浄縮合物の精製は、大気圧以上で行われる。
【0014】
スウェーデン特許第7704352-9(423915)は、硫黄化合物、メタノールなどの揮発性アルコール、ターペンチンなどの副産物、不浄縮合物からの類似化合物の回収方法を開示している。しかしながら、この特許に記載されている技術は、主に隔離された蒸留器の用意や高品質の流入蒸気の過度の使用を必要とするため、費用効果が十分ではない。
【0015】
WO0001879は、上述の問題や欠点に対処するシステムを開示している。この特許が提案するシステムは、直列に配置された4つの縮合器を含み、最初の縮合器が蒸留器-縮合器を形成する。不浄(汚染)縮合物は蒸留器-縮合器の上部にあるチューブの開口端に供給され、蒸気は蒸留器-縮合器の下部にある同チューブの開口端に供給される。冷却媒体流は、4つの縮合器のチューブを冷却するために用いられる。清浄縮合物は、主に蒸留器-縮合器の底部で生成される。蒸気の一部と揮発性化合物は、蒸留器-縮合器の上部から出て、第2の縮合器の上部に流れ、又は第2の縮合器を通って下向きに流れる。主に水とテレビン油が第2の縮合器で縮合される。蒸気の一部は、第2の縮合器の底部から第3の縮合器の底部へ向かい、第3の縮合器を通って上向きに流れ、主にメタノールが縮合される第4の縮合器の上部に入る。汚染水と縮合メタノールの流れの一部は、システム内で再循環される。
【0016】
WO0001879に開示されたシステムは、実際に当時の技術の改良に成功している。しかしながら、コスト効率(設置コスト、運用コスト)やプロセス効率(分離効率、純度、質量流量など)に関する現状の要求を満たすためには、更なる改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、異なる揮発度を有する成分を含有する混合流体、具体的には上述の種類の不浄縮合物の処理に用いられるシステム及び方法として、従来のものに比べてコストとプロセス効率の面で改善されているシステム及び方法を提供することである。この目的は、独立請求項に記載の技術的特徴により定義される装置、プラント、及び方法によって達成することができる。従属請求項は、本発明の実施形態、改良案や変形案を含む。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントで生成された不浄縮合物などの、混合流体中で異なる揮発度を有する成分を分離する装置であり、装置は、
第1及び第2の端部の間で延在して第1の熱交換部を通る第1及び第2の液体流のための別々の流路を形成する第1及び第2の流路構造を備え、第1の端部は、装置の稼働中に第1の熱交換部の上部を、第2の端部は下部を形成するためのものである、第1の熱交換部と、
装置に混合流体を供給する注入口であって、第1の熱交換部の上端部に第1の流路構造と流体連通するように配置された混合流体注入口と、
装置に蒸気を供給する注入口であって、熱交換分離部の下端部に第1の流路構造と流体連通するように配置された蒸気注入口と、
装置を通して冷却媒体を供給する構造であって、第1の熱交換部の第1の(上)端部に第2の流路構造と流体連通するように配置された少なくとも1つの冷却媒体注入口を含む、構造とを含む装置に関する。
【0019】
本発明の特徴は、装置が、第1の熱交換部の第1の端部に配置され、装置の稼働中に第1の熱交換部の上方に位置するようになる第2の熱交換部を含み、第2の熱交換部が、第1/上端部及び第2/下端部の間で延在して第2の熱交換部を通る第1及び第2の液体流のための別々の流路を形成する第3及び第4の流路構造を備え、第1の部は、装置の稼働中の上端部を、第2の部は下端部を形成するためのものであり、冷却媒体構造が、第2の熱交換部の第1の(上)端部に第4の流路構造と流体連通するように配置された少なくとも1つの冷却媒体注入口を含み、第1及び第3の流路構造は互いに流体連通するように配置され、第1の熱交換部の上端部に第1の流路構造を出た蒸発液体流は第2の熱交換部の第3の流路構造へ更に上向きに流れることができ、第2の熱交換部の下端部に第3の流路構造を出た縮合物の流れは第1の熱交換部の第1の流路構造へ更に下向きに流れることができる、ことである。
【0020】
この設計により、冷却媒体(通常は冷却水)を第1及び第2の熱交換部の両方の上部に供給することができ、冷却媒体は2つの熱交換部を通って下向きに流れる第2の流を形成させることができる。よって、蒸発状態で存在して2つの熱交換部を通って上向きに流れる第1の流の部分と冷却媒体流との間に100%の向流をもたらし得る。
【0021】
上記の向流は、WO0001879に開示された装置で(部分的に)用いられた平行流熱交換器より、高い温度差と、異なる揮発性を有する成分に対するより効率的な分離を可能とする。従って本発明は分離効率の改善という効果をもたらし、より高純度の製品を得られるか、又は小型・高費用効率の装置で同様の純度を得るようになる(勿論、類似の効果、例えばやや小型の装置でやや高い純度を得られることも可能である)。一例として、本発明は、WO0001879の装置のように、メタノールを縮合する前に3つの熱交換器を使用する必要がない。
【0022】
本発明の設計が有する更なる利点は第1の流における縮合流体の還流、つまり下向きに流れる液体と第1及び第3の流路構造を通って上向きに流れる蒸発流体の混合物を含む還流が、ポンプを使用せず、第2の熱交換部(上側)の上部から第1の熱交換部(下側)の下部へ流れ得るということである。これにより、装置のエネルギー効率が向上する(縮合物の組成は装置の高さに沿って変化するため、装置内を流れるのは常に同じ液体ではないことに留意されたい)。
【0023】
冷却媒体流は、未処理状態(冷却状態)の冷却媒体を第2の熱変化部(上側)の上部(つまり、第4の流路構造の上部)に供給することにより、一般的な単一逆流として構成できる。更に、冷却媒体は第1の熱交換部(上側)を通り(第2の流路構造を介して)、第1の熱交換部(下側)の底部の出口に向かって更に下向きに流れる。
【0024】
一部の構成や運転モードで更に有利となる変更例として、第2の熱交換部(上側)の下流側に迂回流を配置して、第2の熱交換部(上側)の下部から出る冷却媒体流の一部が第1の熱交換部(下側)に入ることを防止する構成がある。この方法で、第1の熱交換部(下側)を通る冷却媒体の流量を減らし、第2の熱交換部(上側)へ流れる蒸気の流量を増やすことができる。
【0025】
更なる変更例として、未処理状態(冷却状態)の冷却媒体が装置の上部だけでなく、第1の熱変化部(下側)の上部(つまり、第2の流路構造の上部)にも供給されるように、装置を構成することもできる。第2の熱交換部(上側)から出る冷却媒体の部分加熱された一部は、新しい冷却媒体とともに第1の熱交換部(上側)に入ってもよい。更に別の例として、2つの冷却媒体システムを、第1の熱交換部用と第2の熱交換部用として、別々に使用してもよい。両方とも上部に注入口、下部に出口がある。
【0026】
よって、本発明の装置から得られる一般的な効果は、分離効率とエネルギー効率の改善である。
【0027】
本発明の実施形態において、第2及び第4の流路構造は、互いに流体連通するように配置され、第2の熱交換部の下端部に第4の流路構造を出た冷却媒体流が第1の熱交換部の第2の流路構造へ更に下向きに流れることができる。これによって、未処理状態(冷却状態)の冷却媒体が第2の熱変化部(上側)の上部(つまり、第4の流路構造の上部)に供給され、両方の熱交換部を通る逆流をもたらす。流体連通を構成する方法、つまり、第2及び第4の流路構造を接続する方法は、装置の特定の構造に左右される。
【0028】
本発明の実施形態において、装置は、第4の流路構造と流体連通するように、好ましくは第2の熱交換部の下端部と連結されるように配置されている冷却媒体迂回ダクトを備え、それにより、装置の稼働中に第2の熱交換部を通り第1の熱交換部に向かって下向きに流れる冷却媒体の少なくとも一部が、第1の熱交換部に到達する前に装置から送り出されることができる。上述したように、これにより、第1の熱交換部(下側)を通る冷却媒体の流量を減らし、第2の熱交換部(上側)へ流れる蒸気の流量を増やすことができる。
【0029】
本発明の実施形態において、主冷却媒体注入口は、第2の熱交換部の上端部に第4の流路構造と流体連通するように配置されている。装置には、補完用の冷却媒体注入口が設けられてもよい。
【0030】
本発明の実施形態において、第1の流路構造は、第1の熱交換部の下端部及び上端部に開口端を有する一組のチャネルを含み、第2の流路構造は、チャネルの外側に沿って延在して、チャネルの内側の流体とチャネルの外側の別の流体との間のチャネルの壁を介して熱伝達を可能とする。チャネルは一組の分離された開口端チューブであり、第2の流路構造は、チューブに沿って、チューブの外側に、更にはチューブの間に(そして装置の外側ハウジングの内部に)形成されるのが好ましい。
【0031】
第2の熱交換部は、原則的に、第1の熱交換部と同様に構成されてもよい。つまり、第3の流路構造は、チューブ状のチャネルの一組を含み、第4の流路構造は、チューブの間に形成されてもよい。ただし、第1及び第2の熱交換部の大きさは異なってもよい。多くの応用案では、質量流量は第1の熱交換部(下側)の方が第2の熱交換部(上側)よりも大きく、その場合、第2の熱交換部の小型化が可能となるので、材料費を低減し、設置を簡素化できる。
【0032】
本発明の実施形態において、第1の熱交換部の上端部に第1の封止板が配置され、封止板は、第1の熱交換部を横切って延在して第2の流路構造の上側制限部を形成する。第1の封止板は、第1の流路構造のチャネルに適合した孔を有し、チャネルが密閉された状態で、又は孔を介して延在し、第1の流路構造の液体は封止板を通過できるが第2の流路構造の液体は通過できないのが好ましい。
【0033】
混合流体を装置に供給する注入口は第1の熱交換部の上端部に配置され、混合流体は第1及び第3の流路構造内を流れるようになっているため、混合流体を目的の流路構造に供給し、冷却媒体を目的通りに流しながら2つの流れの混合を避けるためには、装置のこの領域に何らかの構造が必要である。第1の封止板は、この構造の一部を形成する。例えば第2の熱交換部(上側)の下部に配置された同様の封止板とともに、混合流体注入口を第1の封止板の上方、第1の熱交換部と第2の熱交換部との間に配置することができる。第1の熱交換部の上部にある1つ以上の冷却媒体注入口は、第1の封止板又は装置の外側ハウジングに設けられる。パイプは、冷却媒体注入口のそれぞれに接続されるのが好ましい。
【0034】
本発明の実施形態において、第2の熱交換部の下端部に第2の封止板が配置され、封止板は、第1の熱交換部を横切って延在して第2の流路構造の下側制限部を形成する。また、第2の封止板も、第1の流路構造のチャネルに適合した孔を有し、チャネルが密閉された状態で、又は孔を介して延在し、第1の流路構造の液体は封止板を通過できるが第2の流路構造の液体は通過できないのが好ましい。
【0035】
装置の外側ハウジングとともに、第1及び第2の封止板は、第2の流路構造を形成する空間を区画する。第1の流路のチャネル/チューブは、2つの封止板の間に延在する。冷却媒体は、この空間の上部に注入口を設け、下部、例えば外側ハウジングに出口を設けることにより、この空間を流れることができる。
【0036】
本発明の実施形態において、第1の熱交換部の上端部に冷却媒体用の第1の分配板が配置され、第1の分配板は第1の封止板の下方にある程度の距離を置いて第1の熱交換部を横切って延在して、第1の封止板と第1の分配板との間に冷却媒体用の蓄積空間を形成する。蓄積空間により、冷却媒体を第1の熱交換部の断面積に均等に分配することができる。第1の分配板には、第1の分配板上に分配された複数の比較的小さな排水孔を設けることができる。
【0037】
第1の分配板は、チャネルの周りに円周方向に嵌るが、チャネルよりわずかに大きく、それにより、チャネルの外壁の周囲に、又は周囲に沿って狭い排水開口が形成されるのが好ましい。これは、冷却媒体がチャネル壁に沿って下向きに流れ(チャネル間に落下しない)、非常に効率的な熱交換をもたらすことを意味する。
【0038】
間隔要素は、チャネルの外壁と第1の分配板との間の排水開口に配置され、チャネルをチャネル孔に適切に位置付けるのが好ましい。更に、間隔要素は、第1の分配板の一部を形成するのが好ましい。チャネルが円形チューブを形成する場合、排水開口は、チューブの外壁の周りに環状開口を形成することができ、環状開口は、開口の周りに分配された複数の間隔要素により中断される。
【0039】
本発明の実施形態において、第2の熱交換部は、第1の熱交換部と原則的に同じ方法で配置される。つまり、上部に配置された第3の封止板、下部に配置された第4の封止板、上部(ある程度の距離を置いて第3の封止板の下方に位置)に配置された排水開口を備える第2の分配板、第2の分配板と第3の封止板との間に形成された第2の蓄積空間に関連付けられて配置された(一次)冷却媒体注入口などを有する。ただし、第2の熱交換部の構造は、第1の熱交換部の構造と一部異なってもよい。
【0040】
冷却媒体は、(上側熱交換器の下部にある)第4の封止板に、又はその上方に出口を設け、第1の分配板と(下側熱交換器の上部にある)第1の封止板との間で注入口と出口を、例えばパイプを介して連結する蓄積空間に関連付けられた注入口を設けることで、第2の熱交換部(上側)から第1の熱交換部(下側)に流れることができる。
【0041】
第2の熱交換部の下部にある第4の封止板により、第1及び第4の封止板の間に中央空間を配置することができる。中央空間は、第1及び第3の流路構造とは流体連通するが、第2及び第4の流路構造とは流体連通していない。装置に混合液を供給する注入口は、中央空間と関連付けられて配置されるのが好ましい。
【0042】
本発明の実施形態において、装置から進入混合流体の縮合成分を除去する出口は、第1の流路構造と流体連通して第1の熱交換部の下部に配置されている。処理対象の混合流体がケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントで生成された不浄縮合物である場合は、この出口から除去される縮合成分は「清浄縮合物」(つまり、ほとんどが水であり、他の物質がわずかに含まれている縮合物)になる。
【0043】
本発明の実施形態において、装置から進入混合流体の縮合成分を除去する出口は、第3の流路構造と流体連通して第2の熱交換部の上部に配置されている。上記のパルププラントの例では、この出口から除去される蒸発成分はメタノールと非縮合性ガスになる。ガスは、メタノール流から取り出すことができる。
【0044】
本発明の実施形態において、装置に再循環成分を供給する注入口は、第3の流路構造と流体連通して第2の熱交換部の上部に配置されている。再循環、又はフィードバックにより、分離効率が改善される。
【0045】
本発明の実施形態において、装置に再循環成分を供給する注入口は、少なくとも1つの噴霧ノズルを含む。複数のノズルは、再循環成分の流れを装置の断面積全体に略均等に分配するように配置されるのが好ましい。
【0046】
本発明の実施形態において、装置は、第3の流路構造と流体連通して第2の熱交換部の上部に配置された上部空間と、装置に再循環成分を供給する注入口と、装置から進入混合流体の蒸発成分を除去する出口と、を含む。
【0047】
本発明の実施形態において、装置は第1及び第2の熱交換部の間に中央空間を含み、中央空間は第1及び第3の流路構造の間で流体連通状態を形成する。
【0048】
本発明の実施形態において、装置の稼働中に中央空間に蓄積された成分を除去する中央出口が中央空間に配置されている。上記のパルププラントの例では、この出口から除去される蓄積成分はテレビン油である。
【0049】
本発明の実施形態において、装置に混合流体を供給する注入口が中央空間に配置されている。
【0050】
本発明の実施形態において、装置に混合流体を供給する注入口が装置の内部、第1の熱交換部の上方に配置された少なくとも1つの噴霧ノズルを含む。複数のノズルは、混合液を装置の断面積全体に略均等に分配するように配置されるのが好ましい。
【0051】
本発明の実施形態において、装置は第1の流路構造と流体連通して第1の熱交換部の下部に配置された下部空間と、装置に蒸気を供給する注入口と、装置から進入混合流体の縮合成分を除去する出口と、を含む。
【0052】
本発明の実施形態において、装置は、第2及び第4の流路構造に対する、更に第1及び第2の熱交換部の間にある中央空間に対する外側制限部を形成するハウジングを含む。
【0053】
本発明の実施形態において、装置の稼働中に、混合液及び蒸気の流れは第1の流を形成し、冷却媒体の流れは第2の流を形成する。
【0054】
本発明は更に、ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントであり、上述の装置を含むプラントに関する。
【0055】
本発明の実施形態において、プラントは、プラントの稼働中に、異なる揮発度を有する成分を含有する不浄縮合物を生成する装備を含み、不浄縮合物を装置の混合流体注入口に供給するように構成される。
【0056】
本発明は更に、上述の装置を用いて混合流体中の異なる揮発度を有する成分を分離する方法に関する。方法は、混合流体を混合流体注入口に供給するステップと、蒸気注入口に蒸気を供給するステップと、第2の熱交換部の上端部に第4の流路構造に冷却媒体を提供するステップと、第1の流路構造と流体連通して第1の熱交換部の下端部に配置されている第1の出口を介して装置から進入混合流体の縮合成分を除去するステップと、第3の流路構造と流体連通して第2の熱交換部の上部に配置されている第2の出口を介して装置から進入混合流体の蒸発成分を除去するステップと、第1の熱交換部の下端部に第2の流路構造から加熱された冷却媒体を除去するステップと、を含む。
【0057】
本発明の実施形態において、方法は、再循環成分、好ましくは蒸発の形で除去された成分の留分を、第3の流路構造と流体連通して第2の熱交換部の上端部に配置された注入口を介して装置に供給するステップと更に含む。混合流体は、ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントから生成された不浄縮合物であることが好ましい。蒸発成分はメタノールを含むのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
後述する本発明の説明は、下記の図を参照して行う。
【0059】
【
図1】本発明による装置の実施形態を示す第1の斜視図である。
【
図5】
図3の断面の中央部分の拡大図であり、他の部分の拡大図を更に含む。
【
図7】
図1の装置を含む例示的なプロセスフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1から
図6は、本発明による装置10の実施形態を示す。
図7は、ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントで生成された不浄縮合物である混合流体中の異なる揮発度を有する成分の分離に関する、装置10を含むプロセスフローの概略図である。
【0061】
図1から
図5に示されるように、装置は垂直に配置され、第1の上端部101と第2の下端部102を有する第1の熱交換部100を備える。装置10は更に、第1の上端部201と第2の下端部202を有する第2の熱交換部を備える。第2の熱交換部200は、第1の部100の上方に配置されている。装置10は、2つの熱交換部100、200を囲む外側ハウジング50を備える。ハウジング50には、蓋部50aと底部50bが含まれる。装置10は、底部50bに設けられた脚部51の上に配置されている。
【0062】
第1の熱交換部100には、第1及び第2の流路構造がそれぞれ、チューブ131及びチューブ131を囲む空間132の形で設けられている(
図3参照)。流路131、132は、第1及び第2の端部101、102の間に延在し、第1の熱交換部を通る第1及び第2の流体流に用いられる別々の流路を形成する。
【0063】
第2の熱交換部200は、本例では第1の部100と原則的には同様に構成され、それぞれチューブ233及びチューブ233を囲む空間234の形を有する第3及び第4の流路構造を備える(
図3を参照)。第3及び第4の流路233、234は、第1及び第2の端部201、202の間に延在し、第2の熱交換部200を通る第1及び第2の流体流に用いられる別々の流路を形成する。
【0064】
図3に示されるように、装置10は、第2の熱交換部200の上部(蓋部50aの下方)の上部空間52、第1及び第2の部100、200の間にある中央空間53、第1の熱交換部(100)の下部(底部50bの上方)の下部空間54を含む。
【0065】
第1及び第3の流路構造131、233、つまり第1及び第2の部100、200のチューブは、中央空間53を介して互いに流体連通に配置される。それにより、第1の熱交換部100の上端部101でチューブ131を出る蒸発流体の流れは、第2の熱交換部200のチューブ233へ更に上向きに流れることができる。また、第2の熱交換部200の下端部202でチューブ233を出る縮合流体の流れは、第1の熱交換部100のチューブ131へ更に下向きに流れることができる。
【0066】
混合流体を装置10に供給する注入口118が中央空間53に配置されている。混合流体注入口118は、第1の熱交換部100の上端部101に第1及び第3の流路構造131、233と流体連通して配置されている(中央空間53が両方の部101と202に関連付けられて配置されているため、第2の熱交換部200の下端部202にも配置されることになる)。
【0067】
図3及び
図5に示されるように、混合流体を装置10に供給する注入口118は、中央空間53における第1の熱交換部100の上方の装置10の内側に配置された複数のパイプ118a及び噴霧ノズル118bを含む。ノズル118bは、装置10の断面積に亘って混合液を分配するように配置されている。
【0068】
装置10に蒸気を供給する注入口119は、第1の熱交換分離部100の下端部102に第1の流路構造131と流体連通して下部空間54に配置される(
図2及び
図3を参照)。
【0069】
装置10は、装置10を通して冷却媒体(水)を供給する構造を更に備える。本例では、構造は流れの順で次のように構成される。
第4の流路構造234と流体連通して配置された第2の熱交換部200の第1の(上)端部201にて、装置10の周りに分配された4つの主冷却水注入口205~208。
第4の流路構造234、つまりチューブ233を囲む空間。
第4の流路構造234と流体連通して配置された第2の熱交換部200の第2の(下)端部202にて装置10の周りに分配された4つの冷却水出口209~212。
4つの水出口209~212を接続する水パイプ構造(図示せず)。
第2の流路構造132と流体連通して配置された第1の熱交換部100の第1の(上)端部101にて装置10の周りに分配された4つの冷却水注入口105~108。
第2の熱交換部200を出る冷却水の一部又は全部が第1の熱交換部100を迂回できるようにする、バルブ61を含む冷却水迂回ダクト60(装置図面には図示せず。プロセスフローを参照)。
第2の流路構造132、つまりチューブ131を囲む空間。
第2の流路構造132と流体連通して配置された第1の熱交換部100の第2の(下)端部102にて装置10の周りに分配された4つの冷却水主出口109~112。
【0070】
迂回ダクト60は、出口209~212を注入口105~108に接続する(従って、第4及び第2の流路構造234、132を接続する)パイプ構造に関連付けられて配置されることが好ましい。パイプ構造は、ハウジング50の外側の装置50上に設けることができる。
【0071】
迂回ダクト60が設けられていない場合、又は迂回ダクト60がパイプ構造の設計に特別な影響を与えない場合、パイプ構造を単純に4つの独立したパイプで構成してもよい。この場合、それぞれのパイプが冷却水出口209~212を、垂直方向において下方に位置する対応する冷却水注入口105~108に接続する。
【0072】
従って、冷却水は、中央空間53の周りに「迂回路」を備えて、装置10の上部から下部に流れることができる。
【0073】
第1及び第3の流路構造131、233を形成するチャネル/チューブは、それぞれ、第1及び第2の熱交換部100、200の下端部及び上端部に開口端を有する。チューブ上端を
図4及び
図5に示す。チューブ下端も同様である。
図3から
図5に示されるように、第2及び第4の流路構造132、234は、チャネル/チューブの外側に沿って延在して、チャネル内の流体(本例では、上向きに流れる蒸気と蒸発成分、及び下向きに流れる縮合水と成分の混合物である)と、チャネル内の他の流体(本例では、下向きに流れる冷却水)との間でチャネル/チューブの壁を介した熱伝達が行われるようにする。
【0074】
第1の封止板141は、第1の熱交換部100の上端部101に配置されている(
図3及び
図5を参照)。第1の封止板141は、第1の熱交換部100を横切って延在し、第2の流路構造132の上側制限部を形成する。更に、第1の封止板141には、第1の流路構造131のチャネル/チューブに適合する孔が設けられており、チャネル/チューブ131は孔まで、又は孔を通って、密閉状態で延在することができる。それによって第1の流路構造131の流体は第1の封止板141を通過できるが、第2の流路構造132の流体は通過できない。
【0075】
同様に、第2の封止板142は、第2の流路構造132の下側制限部を形成する第1の熱交換部100の下端部102に配置されている。
【0076】
第2の熱交換部200には、対応する第3及び第4の封止板243、244が設けられている(
図3及び
図4を参照)。第3の封止板243は、
図4に示されるように上部空間52の下側制限部を形成する。
【0077】
図5に示されるように、第1及び第4の封止板141、244は、中央空間53に対してそれぞれ下側制限部及び上側制限部を形成する。
【0078】
図5は更に、第1の熱交換部100の各チューブ131が、チューブ131の内側で第1の封止板141の略上方に延在する挿入部135を備えていることを示す。本例では、挿入部の断面はX又は+形である。挿入部135の目的は、乱流と熱伝達を増加させることである。挿入部135は、別の形状の断面を有してもよい。挿入部135は、チューブ131内の圧力や組成における半径方向の差をより均一にするために穿孔されるのが好ましい。
【0079】
図3及び
図5に示されるように、チューブ131は、本例では4つの区画131a、131bにグループ化されている(図には2つの区画のみ示される)。区画131a、131bは、それぞれ、第1の熱交換部100の円形断面の約4分の1を占める。各区画は、ある程度の距離を置いて互いから離れている。区画131a、131bのそれぞれを囲むように、中央空間53の第1の封止板141の上にタブ壁137が配置されている(
図5を参照)。タブ壁137は、垂直方向における上向きに、ノズル118bに向かって、ただしノズル118bまでは届かないように、ある程度の距離で延在し、第1の封止板141の上側の各チューブ区画131a、131bにタブを形成する。
【0080】
タブ壁137は互いに分離され、互いに対向するタブ壁137の間の第1の封止板141上に開かれた流路チャネルを区画する。この場合、流路チャネルは、流路チャネルが互いに流体連通している封止板141の横中心点から装置10の外側ハウジング50に向かって延在する、半径方向に走って円周方向に均等に分配された4つの流路を形成する。中央出口113~116は、これらの流路の端点にてハウジングに配置される。
【0081】
タブ壁137、それに関連付けられたタブと流路チャネルなどの目的は、中央空間53、つまり上述のタブに蓄積される、特にタブのより濃い液体の上に蓄積される、物理的特性(揮発度、密度、溶解度)を有する混合液の成分をデカント及び分離することである。よって、主に問題の成分は、タブ壁137を越えて流路チャネルに流れ、更に中央出口113~116から流出する。本開示が重点を置いている例では、この成分は通常(タブ内の水の上に蓄積する)テレビン油である。出口113~116から排出される流れは、一般的には、例えば外部デカンタを用いて更に処理され、テレビン油が更に洗浄/精製される。
【0082】
チューブ区画、タブ壁、流路チャネル、中央出口などの設計は、上記のものとは異なってもよい。
【0083】
更に、第1の冷却水分配板145は、第1の熱交換部100の上端部101に配置されている(
図3及び
図5参照)。第1の分配板145は、第1の封止板141と平行に、且つ第1の封止板141の下方にある程度の距離を置いて第1の熱交換部100を横切って延在し、第1の封止板141と第1の分配板145との間に冷却媒体に用いられる蓄積空間を形成する。4つの冷却水注入口105~108は、冷却水が蓄積空間に供給されるように、第1の封止板141と第1の分配板145との間に配置される。
【0084】
第1の分配板145には、チューブ/チャネル131の周りに円周方向に適合する孔が設けられている。孔はチューブ131の外周よりもわずかに大きいので、狭い排水開口146がチューブ131の外壁の周囲に、又は周囲に沿って形成される。
【0085】
これは、特定のチューブ131’がチューブ131の一例を形成する
図6により明確に示されている。
図6は、第1の分配板145における円形チューブ131’及び挿入部135の断面を示す。環状排水開口146がチューブ131’の周りに設けられる。この場合、チューブ131’の周りに円周方向に分配された4つの間隔要素147により、4つの環状区画に分離される。この場合、第1の分配板145の一体化部分を形成する間隔要素147は、チューブ131’の外壁と第1の分配板145との間に配置され、チューブ131’をチャネル孔(その一部は排水開口146を形成する)内に適切に位置決めする。
【0086】
第1の分配板145の上方の蓄積空間に供給された冷却水は、装置10の断面に亘って均等に分配され、各チューブ131の外壁に沿った排水開口146を通って流れる。
【0087】
同様の第2の分配板245が、第2の熱交換部200の上部201に配置されている(
図3及び
図4を参照)。冷却水注入口、冷却水蓄積空間、排水開口などを有する構造は、第1の熱交換部100に関する前述のものと同じである。
【0088】
装置10は、装置10から進入混合流体の縮合成分を除去する出口117を更に備える。この出口117は、第1の流路構造131と流体連通して第1の熱交換部100の下部102の下部空間54に配置されている。
【0089】
装置10から進入混合流体の蒸発成分を除去する出口214は、第3の流路構造233と流体連通して第2の熱交換部200の上部201の上部空間52に配置されている。
【0090】
再循環成分(還流)、この場合、蒸発により前に除去された成分の留分(液状)を装置10に供給する注入口213は、第3の流路構造233と流体連通して第2の熱交換部200の上部201の上部空間52に配置されている。
【0091】
混合液を装置に供給する注入口118と同様に、再循環成分を装置に供給する注入口213は、上部空間52における第2の熱交換部200の上方の装置10の内側に配置された複数のパイプ213a及び噴霧ノズル213bを含む。ノズル213bは、装置10の断面積に亘って還流液を分配するように配置されている。
【0092】
従って、第2の熱交換部200の上部201の上部空間52は、第3の流路構造233、再循環成分用の注入口213、蒸発成分を除去する出口214と流体連通している。
【0093】
第1の熱交換部100の下部102の下部空間54は、第1の流路構造131、装置10に蒸気を供給する注入口119、縮合成分を除去する出口117と流体連通している。
【0094】
蓋部50a及び底部50bを含む装置10の外側ハウジング50は、第4の流路構造132、234(冷却水の蓄積空間を含む)に対して、第1及び第2の熱交換部100、200の間の中央空間53に対して、並びに上部空間52及び下部空間54に対して、上側制限部を形成する。
【0095】
通常、装置10の稼働中、混合液と蒸気の流れが第1の流を形成し、冷却媒体の流れが第2の流を形成する。
【0096】
図7は、ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプを製造するプラントで生成された不浄縮合物である混合流体中の異なる揮発度を有する成分の分離に関連する、装置10を含むプロセスフローの概略図を示す。
【0097】
図7の進入流
A:混合液/不浄縮合物
B:未処理状態(冷却状態)の冷却水
C:蒸気
【0098】
図7の排出流
D:清浄縮合物
E:他の成分/テレビン油
F:蒸発・縮合成分/メタノール
G:使用済み(加熱状態)の冷却水
【0099】
蒸発及び縮合成分/メタノールの留分であるH流は、装置10に再循環される。
【0100】
破線は蒸気を示し、実線は液体を示す。
【0101】
成分70は蒸発成分、本例では主にメタノールの縮合器である。この目的に適する縮合器は、既知のもので十分である。
【0102】
従って、装置10の上部から縮合器70(破線)へのJ流は、蒸発成分/メタノールの流れである。
【0103】
図7は簡略化されたプロセスフローであり、例えば、ポンプ、縮合器70への冷却水の流れなどは示していない。
【0104】
図7のプロセスは上述されている。要約すると、プロセスは次のようになる。
不浄縮合物(A流:ケミカル又はセミケミカルセルロースパルプ製造プラントで生成)を注入口118に供給し、第1の熱交換部(下側)100に下向きに噴霧する。
冷却水(B流)を、第2の熱交換部(上側)200の上部の注入口205~208に供給する。チューブの外側の装置10を介して(出口209~212、接続パイプ、注入口105~108)、装置10の底部にある主出口109~112に向かって流れ、排出流Gを形成する。バルブ61を開くことにより、冷却水流の一部は、迂回ダクト60を介して第1の熱交換部100を迂回する。
蒸気(C流)を注入口119に供給する。
【0105】
注入口119に供給された蒸気は、プラントの蒸発ラインの最後の蒸発生成物から取り出すことができる。望ましい結果を得るためには、最低の温度と圧力を有していなければならない。
【0106】
蒸気と蒸発成分は、装置10のチューブを通って上向きに流れる。つまり、冷却水と逆流で(温度差が大きくなる)、縮合蒸気と成分は下向きに流れる。揮発成分の濃度は、装置10の上方に向かうほど増加する。
【0107】
清浄縮合物は、出口117を介して装置10の底部で除去され、揮発成分(主にメタノールであるが一部のガスも含む)は出口214を介して除去される。メタノールは縮合器70で縮合され、F流で除去される。縮合メタノールの一部は注入口213を介して還流される(H流)。
【0108】
中央空間53に蓄積されるテレビン油及び/又は他の生成物は、出口113~116を介して除去される(E流)。
【0109】
排気ガスも装置に供給することができる。プラントの蒸発ラインからの排気ガスは中央空間53に供給できる。ガスは蒸留され、上側熱交換部200で濃縮される。
【0110】
装置に供給される蒸気の温度は、通常約50~60℃である。蒸気は縮合し、温度は装置10の上方向に向かうほど徐々に低下する。出口214から出るメタノール又は蒸発成分の混合物は、通常、約20~25℃である。
【0111】
装置10は部分真空下で作動する。特定の用途に応じて圧力を調整できる。圧力は、冷却水(温度及び/又は質量流量)を調整することで調整可能である。
【0112】
気相(つまり、蒸発成分の混合物)におけるメタノールの濃度は、装置10の上方に向かうほど増加する。出口214を出るJ流は、80~95%のメタノールを含み得る。第2の熱交換部200の蒸気を低圧で、且つ蒸発成分の混合物中のメタノール濃度が高い状態で縮合するにためには、低温の冷却水が必要であり、従って冷却水の向流は大きな利点となる。
【0113】
低圧は、メタノールの大部分が気相として存在し、より純粋で清浄な縮合物が得られるという長所を有する。
【0114】
迂回ダクト60は、第2の熱交換部200に到達する蒸気の量を増やすことに使用できる。これには、清浄縮合物を更に浄化する効果がある。通常の動作条件下では、迂回バルブ61は通常閉じられたままである。
【0115】
混合流体/不浄縮合物を装置10の中央、つまりこの場合は第1及び第2の熱交換部100、200の間にある中央空間53に供給するのが特に有利である。勿論、混合流体を装置の上部に供給する方が遥かに簡単である。その場合、実際の装置は単一の熱交換部を形成する。しかしながら、分離が難しくなり、J流及びF流のメタノール濃度が低下する。
【0116】
大きさの一例として、装置10は約20~25mの全高と4~5mの直径を有してもよい。脚部51の高さは約4mである。
【0117】
本発明は、上述の実施形態により限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々に変更することができる。
【0118】
装置10は、プラントの蒸発ラインの最後の蒸発段の上に配置することができる。
【0119】
装置10は、沸点の異なる化合物の分離が望まれる他の用途にも使用することができる。例えば、酢酸と無水酢酸の分離にも適用可能である。別の例としては、水とエタノールの分離が挙げられる。
【符号の説明】
【0120】
10:装置
50:装置の外側ハウジング
50a:装置の蓋部
50b:装置の底部
51:脚部
52:上部空間
53:中央空間
54:下部空間
60:冷却水迂回ダクト
61:冷却水迂回バルブ
70:蒸発成分/メタノールの縮合器
100:第1の熱交換部(下側)
101:第1の熱交換部の上端部
102:第1の熱交換部の下端部
105~108:第1の熱交換部の冷却水注入口
109~112:第1の熱交換部の冷却水出口
113~116:中央出口
117:縮合物出口
118:混合液注入口
118a:パイプ
118b:噴霧ノズル
119:蒸気注入口
131:第1の流路構造(チューブ)
131a、131b:チューブ区画
132:第2の流路構造(チューブを囲む空間)
135:チューブ挿入部
141:第1の封止板
142:第2の封止板
145:第1の分配板
146:環状排水開口
147:排水開口の間隔要素
200:第2の熱交換部(上側)
201:第2の熱交換部の上端部
202:第2の熱交換部の下端部
205~208:第2の熱交換部の冷却水注入口
209~212:第2の熱交換部の冷却水出口
213:再循環成分の注入口(還流/フィードバック)
214:蒸発成分出口
233:第3の流路構造(チューブ)
234:第4の流路構造(チューブを囲む空間)
243:第3の封止板
244:第4の封止板
245:第2の分配板
【0121】
流れ:
A:混合液/不浄縮合物
B:未処理状態(冷却状態)の冷却水
C:蒸気
D:清浄縮合物
E:他の成分/テレビン油
F:蒸発・縮合成分/メタノール
G:使用済み(加熱状態)の冷却水
H:蒸発・縮合成分の留分の還流
J:蒸発成分