(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】指板を独立した分離できる断片に分ける相互連結フレットを有する弦楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 3/06 20200101AFI20230424BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G10D3/06
G10D1/08
G10D1/08 100
(21)【出願番号】P 2020520476
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 ES2018070609
(87)【国際公開番号】W WO2019073096
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】520122862
【氏名又は名称】フランシスコ ハヴィエル アロンソ ヒメネス
【氏名又は名称原語表記】Francisco Javier Alonso Jimenez
(73)【特許権者】
【識別番号】520122873
【氏名又は名称】パブロ デル レアル フェルナンデス
【氏名又は名称原語表記】Pablo del Real Fernandez
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ ハヴィエル アロンソ ヒメネス
(72)【発明者】
【氏名】パブロ デル レアル フェルナンデス
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-122093(JP,A)
【文献】実開平1-160496(JP,U)
【文献】米国特許第5990396(US,A)
【文献】実開平2-62600(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0124991(US,A1)
【文献】特開2001-13957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202305(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0317958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/08,3/06
G10H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック(4)の長さに沿って細長い構造(
図1)を含み、該細長い構造は、該構造から分離できる、独立した断片(3)に指板を分けることができる、互いに接続された、垂直枕木(1)の集まりによって形成され
る弦楽器であって、
前記細長い構造(
図1)が、前記ネック(4)より長い長さを有し、前記楽器の本体(6)および/またはヘッドストック(5)に達することを特徴とする、
弦楽器。
【請求項2】
前記細長い構造(
図1)が、単一部品で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項3】
前記細長い構造(
図1)が、金属材料または金属合金で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項4】
前記垂直枕木(1)によって区分化される前記指板(3)の独立した断片が、前記細長い構造(
図1)とは異なる材料で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項5】
前記指板(3)の独立した断片が、木材で作製されることを特徴とする、請求項4に記載の弦楽器。
【請求項6】
前記指板(3)の独立した断片が、互いに接続され、単一部品として前記細長い構造(
図1)中に挿入するかつ該細長い構造から取り出すことができることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項7】
前記細長い構造(
図1)が、その背部に長手方向「T」バー(2)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項8】
前記長手方向バー(2)が、コアを含み、これによって、前記ネック(4)の角度が調整され、前記楽器の弦により生じる張力を相殺することが可能となることを特徴とする、請求項7に記載の弦楽器。
【請求項9】
前記楽器が、音響撥弦楽器からなることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【請求項10】
前記楽器が、電気撥弦楽器からなることを特徴とする、請求項1に記載の弦楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器に関し、相互に連結され指板を構造の独立した分離できる断片(3)に分ける、ネックおよび構造に垂直な一連の枕木(1)によって形成される、細長い構造(
図1)を、楽器のネック(4)の長さに沿って有することを特徴とする。本発明の好ましい実施形態において、枕木は、それらがすべてその上に置かれるベースによって接続され、楽器のためのフレットとして機能する。
【0002】
楽器のフレットがネックの長さに沿って互いに接続または連結されているという事実によって、最新技術において現存するものを明らかに改良する楽器への音響品質がもたらされる。
【0003】
本発明が属する技術分野は、物理学の分野、特に弦楽器の製造に適用される物理学の分野であると考えられる。
【背景技術】
【0004】
通常、本発明の適用分野において、弦楽器のフレットは概して、指板上にマークされた特定の溝中に埋め込まれたまたははめられた金属のバンドまたはストリップであり、この後者は単一ピースを形成し、通常は半音単位の楽器の音調距離をマークする。
【0005】
理解しやすいように、エレキギターの一般的な「リフレット(refretting)」のビデオの例へのリンクが提供される:https://www.youtube.com/watch?v=bD93U2_CiW4。
【0006】
フレットは通常、ニッケル、銀および/またはスチールを一般に組み合わせる金属合金で作製される。他方、指板は通常、楽器のシャフトに貼り付けまたは接着された平らな木片(通常は黒檀、ローズウッドまたはメープル)である。弦の上に指を置き指板に埋め込まれたフレットに対して指を押すと、音楽が生成される。
【0007】
本出願時に存在する最新技術は、フレットと同数の独立した区域に区分化または断片化された指板を組み込むことを示しておらず、むしろ、指板(以下に示されるように全てではないがそれらを有する弦楽器中の)は常に単一の部品であり、その上に溝または挿入物がマークされ、その内部にフレットを形成する金属ストリップが埋め込まれる。
【0008】
弦楽器をフレッティングするこの一般的な技術は、広く使用されるものであるが、唯一のものではない。その意味で、最初の電気弦楽器は、フレットを指板上にマークされた溝に埋め込まずに、フレット自体を部品中に含むアルミニウムで作製された単一の部品にネックを明らかに組み込んだ形跡がある。この楽器は、米国特許第2089171号明細書中の特許発明の主題である。同じ技術、または非常に類似した技術が、米国特許第8324489号明細書で明らかに使用される。これらの刊行物は、保護が請求される本発明の特許性を妨げない。
【0009】
スペイン国実用新案出願第0092207号明細書には、ギターの通常のフレッティング技術が記載され、権利者が「シート」と称する指板を有する単一の部品を形成する指板中にフレットが組み込まれるフレッティングシステムが明らかに請求される。この刊行物は、本発明の新規性および進歩性に影響を与えない。
【0010】
他方、アルミニウムまたはカーボンファイバーのような木材以外の材料で作製される指板の使用は、近年比較的拡大している。これに関して、カーボンファイバーで作製されたネックおよび指板を請求するスペイン国特許第255348号明細書を引用することが有用である。また、例として、アルミニウムのネックおよび/または指板の使用を開示する以下の刊行物が引用される:
http://www.ricktoone.com/2016/03/old-growth-walnut-skele.html
http://www.electricalguitarcompany.com/
http://bastinguitar.com/
【0011】
これらの楽器はいずれも、特定の場合に指板が木材で作製されないという特徴で、指板上にマークされた溝にフレットを組み込むので、通常と異なるフレッティング技術を使用することは示されていない。したがって、これらは本発明の特許性を妨げない。
【0012】
アルミニウム(または他の金属)で完全に作製されるネック、または、金属材料で作製される指板およびフレットの使用についての主な技術的問題は、正確には、木材が無いことである。楽器(弦楽器だけでなく)の作製において通常使用される特定のタイプの木材は、特に本発明の分野において音の「暖かさ」として知られる、金属材料が有しない音、振動および音響伝播特性を有する。この暖かさは、使用される木材の種類によっても変化し、例えば、楽器の音により大きい放射をもたらす木材もあれば、低音と高音とのより良好なバランスをもたらすものもあれば、より明確な音を可能とするものもある。
【0013】
保護が請求される本発明は、一方で楽器(より大きい音響伝播、音量の自然な増加およびより大きい明確性を生成する)のフレットの接続において、他方で本発明の好ましい実施形態において金属材料(伝播を促進する)および木材(音の温かさを維持する)の組合せにおいて、技術的ステップを示す。
【0014】
従来技術においてはまた、木材の指板(これは楽器のネックに剛性または頑丈さをもたらすためのものであると理解される)と組み合わせた弦楽器のネックに埋め込まれた他の材料の金属部品の使用が同定されるが、金属ストリップを使用する通常のフレッティングにおいて変化はなく、したがって、保護が求められる本発明によって特徴付けられる全てのフレットの接続によって生成される特定の音を達成しない。例として、以下の刊行物が引用される:
http://tbeamguitar.blogspot.com.es/2007/06/background-why-and-how.html http://www.vintagekramer.com/alum.htm
したがって、これらの刊行物は本発明の特許性を妨げない。
【0015】
最後に、米国特許出願公開第2014033905号明細書の場合において、指板有しすらしない弦楽器が同定されるが、この後者は指板を組み込まずそのフレット構造が非常に異なるので、保護が求められる本発明の特許性を妨げない。
【0016】
したがって、本発明が従来技術に存在することは示されず、わずかに似た刊行物の表示はなく、本発明の主題はこの領域における通常の技術的ステップを明らかに凌ぐので当業者が従来技術から本発明が当然に生じると考えられるものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、弦楽器からなり、楽器のネック(4)上に配置または位置された細長い構造(
図1)を含むことにより特徴づけられ、この楽器は、これに垂直な枕木(1)の集まりを含み、本発明の好ましい実施形態において、枕木は指板(3)の表面を超えて伸長し楽器のためのフレットとして機能し、すべての枕木がその上に置かれるベースを介して互いに接続される。
【0018】
上記の構造を用いて、指板は最早楽器のシャフトに貼り付けまたは接着された単一の部品ではなく、楽器が有するフレットと同数の独立した区域に分割、区分化または断片化される。指板の独立した区域へのこの分割は、例えばエッジの1つに沿って、接続されることを妨げず、したがって、個々に抜き出すまたは挿入する必要なしに、単一ユニットであるかのように挿入しネック(4)から抜き出すことができる。
【0019】
フレットが最早指板に埋め込まれる小さい金属ストリップではなく、より高くより丈夫な枕木(1)であることを考慮に入れると、この構造(
図1)の使用によって、楽器のすべてのフレットが互いに接続されることにより、特に(これに限らないが)電気である場合に楽器によって生成される音がより容易に分散されることが可能となるため、音の性能の点で明らかな改良および利点が提供される。
【0020】
この細長い構造は、ネック自体より長くさえある長さのものでもよく、本発明の好ましい実施形態において生じるように、楽器の本体(6)に達しその中に組み込まれる、あるいは、本体自体を形成すらする。同様に、楽器のヘッド(5)またはヘッドストックにすら達してもよく、その上側部分としてヘッドストック自体の形状を取りうる。
【0021】
構造(
図1)は、単一部品でまたはいくつかの組立部品で作製されてもよい。
【0022】
最後に、構造(
図1)は、その角度を調整可能にして弦により生じる張力を相殺するための、ネック(4)の内部長さに沿ってコアまたは金属バーを楽器に組み込むことを妨げない。これは、構造(
図1)に、「T」を形成する、コアが内部に配置されうるその背部に沿って長手バー(2)を提供することにより達成される。
【0023】
本報告は、保護が請求されるここに説明される発明を審査官および公衆が理解することを容易にする目的で一連の図面を含み、これらは単なる例示として考慮されるべきであり本質的に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】垂直枕木(1)および長手方向「T」バー(2)を示し、構造の背部に沿って配置され、内部に楽器のコアを配置できる、本明細書において言及される細長い構造の実施形態を示す図
【
図2】指板の独立した断片がどのように配置されるか(3)、垂直枕木(1)および構造(2)の背部に配置された長手方向バーによって区分化されるか;並びに、弦楽器のネック(4)中に組み込まれた細長い構造それ自体、を示す細長い構造の実施形態を示す図
【
図3】ネック(4)およびその本体(6)の一部が本明細書で言及される細長い構造を組込み、その長さは楽器のヘッドストック(5)を超えない、弦楽器、この場合はギターの実施形態を示す図
【
図4】長手方向「T」バー(2)の全長を見ることができる、後方からの細長い構造の実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態の例はエレキギター(
図3)であり、ErgalまたはFortal Constructalとしても知られるアルミニウム合金であるZicralで作製される細長い構造(
図1)を含み、単一部品を形成する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、細長い構造(
図1)は、金属材料で作製されて、電気楽器により生成される音の分散を促進する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、細長い構造(
図1)は、枕木によって区分化される指板(3)の断片の表面に適合する十分な高さの一連の垂直枕木(1)を含み、これらは楽器のフレットとして機能する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、細長い構造(
図1)の端部の一つは、楽器の本体(6)に達し、その内部に組み込まれるが、反対端は楽器のヘッドストック(5)に達しない。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、指板(3)の独立した断片は木製であり、細長い構造(
図1)はその背部に長手方向「T」バーを含み、その内部にコアが配置されうるが、好ましい実施形態においてもこれは含まれていない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
保護が請求される本発明は、弦楽器のより良好な音響性能を提供するために音楽業界において完全に製造可能または利用可能であるので、明らかな産業上の用途を有していると考えられる。
【0031】
本明細書は、当業者が本発明の範囲を理解し実行するために十分に明確かつ正確であると考えられる。本明細書において使用される用語は、最も広い意味で捉えられ消して限定されるべきものでなく、本発明は、例として説明される好ましい実施形態と異なる形態で実践において使用されてもよく、これらはすべて、基本原理を修正または変更しないという条件で請求される保護に含まれる。