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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】硬化封止体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20230424BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230424BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230424BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H01L21/56 R
C09J7/20
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020523609
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2019020190
(87)【国際公開番号】W WO2019235217
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018110617
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
(72)【発明者】
【氏名】田久 真也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/011850(WO,A1)
【文献】特開2003-064329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
C09J 7/20
C09J 7/38
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)と、
基材(Y)の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)とを有し、
前記膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ得る、粘着シートを用いて、硬化封止体を製造する方法であって、
前記非膨張性基材層(Y2)は、前記膨張性基材層(Y1)よりも前記第1粘着剤層(X1)から離れた位置に存在しており、前記膨張性基材層(Y1)と前記第1粘着剤層(X1)との間には前記非膨張性基材層(Y2)は存在しておらず、
前記膨張性粒子が膨張する際における前記非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は、前記膨張性粒子が膨張する際における前記膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’よりも大きく、
下記工程(1)~(3)を有する、硬化封止体の製造方法。
・工程(1):第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(2):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、前記封止対象物を前記封止材で封止してなる硬化封止体を得る工程。
・工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程。
【請求項2】
前記粘着シートが、前記基材(Y)の前記膨張性基材層(Y1)側に第1粘着剤層(X1)を有し、該基材(Y)の前記非膨張性基材層(Y2)側に前記第2粘着剤層(X2)を有する、請求項1に記載の硬化封止体の製造方法。
【請求項3】
膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)と、
基材(Y)の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)とを有し、
前記膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ得る、粘着シートを用いて、硬化封止体を製造する方法であって、
前記基材(Y)が、前記膨張性基材層(Y1)と、前記膨張性基材層(Y1)の前記第1粘着層(X1)側に設けられた非膨張性基材層(Y2)[以下非膨張性基材層(Y2-1)と表す]と、前記膨張性基材層(Y1)の前記第2粘着層(X2)側に設けられた非膨張性基材層(Y2)[以下非膨張性基材層(Y2-2)と表す]とを有しており、
前記膨張性粒子が膨張する際における非膨張性基材層(Y2-1)の貯蔵弾性率E’が、前記膨張性粒子が膨張する際における非膨張性基材層(Y2-2)の貯蔵弾性率E’よりも低く、
下記工程(1)~(3)を有する、硬化封止体の製造方法。
・工程(1):第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(2):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、前記封止対象物を前記封止材で封止してなる硬化封止体を得る工程。
・工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程。
【請求項4】
工程(3)において、前記膨張性粒子を膨張させた際、前記粘着シートを構成する各層の層間では分離しない、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化封止体の製造方法。
【請求項5】
前記膨張性粒子が、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子である、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化封止体の製造方法。
【請求項6】
前記熱膨張性粒子の膨張を、熱膨張性粒子の「膨張開始温度(t)+10℃」~「膨張開始温度(t)+60℃」間で加熱処理により行う、請求項記載の硬化封止体の製造方法。
【請求項7】
前記膨張性基材層(Y1)が前記熱膨張性粒子を含む熱膨張性基材層(Y1-1)であり、23℃における熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である請求項5又は6に記載の硬化封止体の製造方法。
【請求項8】
前記封止対象物が、半導体チップである、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化封止体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化封止体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、部材を半永久的に固定する用途だけでなく、建材、内装材、電子部品等を加工もしくは検査を行う際に、対象となる部材を仮固定するための仮固定用途に使用される場合がある。
このような仮固定用途の粘着シートには、使用時の接着性と、使用後の剥離性との両立が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材の少なくとも片面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられた、電子部品切断時の仮固定用の加熱剥離型粘着シートが開示されている。
この加熱剥離型粘着シートは、熱膨張性粘着層の厚さに対して、熱膨張性微小球の最大粒子径を調整し、加熱前の熱膨張性粘着層の表面の中心線平均粗さを0.4μm以下に調整している。
特許文献1には、当該加熱剥離型粘着シートは、電子部品切断時には、被着体との貼付面積を十分に確保できるため、チップ飛び等の接着不具合を防止し得る接着性を発揮でき、一方で、使用後には、加熱して熱膨張性微小球を膨張させれば、被着体との接触面積を減少させ、容易に剥離することができる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3594853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化、薄型化、及び高密度化が進んでおり、電子機器に搭載される半導体装置にも、小型化、薄型化、及び高密度化が求められている。このような要求に対応し得る半導体パッケージ技術として、FOWLP(Fan out Wafer Level Package)が注目されている。
FOWLPは、所定の間隔で配置した複数の半導体チップを封止材で封止してなる硬化封止体の半導体チップ側の表面上に、再配線層を設け、再配線層を介して、はんだボールと半導体チップとを電気的に接続した半導体パッケージである。
FOWLPは、半導体チップの外側まではんだボールである端子を広げること(Fan out)ができるため、半導体チップの面積と比べて端子数が多い用途にも適用することができる。
【0006】
ところで、FOWLPは、半導体チップの回路面を粘着シート上に載置し、100℃前後まで加熱した流動性を有する状態の封止樹脂を、半導体チップの周辺に充填し、加熱して、封止樹脂から構成された層を形成する、もしくは、封止用樹脂フィルムを半導体チップ上に積層して、加熱して、ラミネートするといった封止工程と、粘着シートを除去し、表出した半導体チップ側の表面に再配電層及びはんだボールを形成する工程とを経て製造されることが一般的である。
上記のFOWLPの製造方法の封止工程において、例えば、特許文献1に記載されたような、基材上に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられた加熱剥離型粘着シートを用いることも考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱剥離型粘着シートが有する熱膨張性粘着層は、熱膨張性微小球を含有するため、熱膨張性微小球を含有しない粘着層に比べて、封止工程等の加工や検査を行う際の粘着力の低下が懸念される。
例えば、封止工程の際の粘着力の低下は、粘着剤層上に載置している半導体チップの位置ずれや、半導体チップと粘着シートとの接着界面において封止樹脂が侵入し、半導体チップの回路面に樹脂が付着する等の弊害が生じる要因となる。
特に、熱膨張性微小球の膨張時に、表面に凹凸が形成され易くなるように、熱膨張性粘着層の弾性率は低く調整していることが一般的であるが、弾性率が低い熱膨張性粘着剤層の表面上に載置した半導体チップは、封止工程の際に、位置ずれが生じ易いという懸念がある。
【0008】
半導体チップの位置ずれの発生や、半導体チップの回路面への封止樹脂の付着は、半導体装置の製造における歩留まりの低下の要因となる。このような問題は、半導体チップ以外の封止対象物にも生じ得ることである。
そのため、硬化封止体を得る際に生じ得る、半導体チップ等の封止対象物の位置ずれの発生や、半導体チップの回路面等の封止対象物の露出表面のへの封止樹脂の付着といった弊害を抑制し得る、硬化封止体を製造する方法が求められている。
【0009】
また、FOWLPの製造において、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを介して、支持体と半導体チップと固定することが一般的である。例えば、特許文献1に記載された加熱剥離型粘着シートにおいて、基材の両面に、熱膨張性粘着層及び粘着剤層を設けた両面粘着シートとして、熱膨張性粘着層側には半導体チップを載置し、粘着剤層側は支持体と貼付して、封止工程等の各種加工が通常行われる。
しかしながら、上記の加熱剥離型粘着シートを用いた場合、熱膨張性粘着層と硬化封止物との界面で分離され、支持体には上記の両面粘着シートが貼付したままとなるが、支持体から両面粘着シートを除去する際に、被着体に粘着シートの粘着剤層の一部が残存してしまう場合がある。このような場合、支持体の洗浄工程を要する必要があり、生産性の低下の要因となる。
【0010】
一方で、上記の両面粘着シートを用いる際に、熱膨張性粘着層を支持体と貼付する方法も考えられ、封止工程後に、支持体から両面粘着シートを除去する際の剥離性は改善されるものと思われる。
しかしながら、熱膨張性微小球の膨張した後の熱膨張性粘着層は、非常に脆くなっている。
そのため、支持体から剥離後の両面粘着シート付きの硬化封止体は、この熱膨張性粘着層が最外層に位置するため、運搬する際や、次工程で加工を施す際に、熱膨張性粘着層の一部が脱落が生じたり、熱膨張性粘着層の剥がれが生じ易い。脱落した熱膨張性粘着層が、製造環境内の各種機器等に付着して、機器を汚染してしまった場合には、機器の洗浄が必要となるため、生産性の低下の要因となる。
つまり、硬化封止体の製造において、製造環境内での汚染を抑制して、洗浄工程を要せず、生産性を向上させることも求められている。
【0011】
本発明は、封止対象物を封止材を用いて硬化封止体を得る際に、封止対象物の位置ずれの発生や、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制して、歩留まりを向上させ得ると共に、製造環境内での汚染を抑制して、生産性も向上させ得る、硬化封止体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、封止対象物を封止材を用いて硬化封止体を製造する過程において、膨張性粒子を含む膨張性基材層と非膨張性基材層とを少なくとも備える基材の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層及び第2粘着剤層を有する粘着シートを用いることで、上記課題を解決し得ることを見い出した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記[1]~[10]に関する。
[1]膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)と、
基材(Y)の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)とを有し、
前記膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ得る、粘着シートを用いて、硬化封止体を製造する方法であって、
下記工程(1)~(3)を有する、硬化封止体の製造方法。
・工程(1):第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(2):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、前記封止対象物を前記封止材で封止してなる硬化封止体を得る工程。
・工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程。
[2]前記粘着シートが、前記基材(Y)の前記膨張性基材層(Y1)側に第1粘着剤層(X1)を有し、該基材(Y)の前記非膨張性基材層(Y2)側に前記第2粘着剤層(X2)を有する、上記[1]に記載の硬化封止体の製造方法。
[3]前記基材(Y)が、前記膨張性基材層(Y1)と、前記膨張性基材層(Y1)の前記第1粘着層(X1)側に設けられた非膨張性基材層(Y2-1)と、前記膨張性基材層(Y1)の前記第2粘着層(X2)側に設けられた非膨張性基材層(Y2-2)とを有しており、
前記膨張性粒子が膨張する際における非膨張性基材層(Y2-1)の貯蔵弾性率E’が、前記膨張性粒子が膨張する際における非膨張性基材層(Y2-2)の貯蔵弾性率E’よりも低い、上記[1]又は[2]に記載の硬化封止体の製造方法。
[4]前記非膨張性基材層(Y2)は、前記膨張性基材層(Y1)よりも前記第1粘着剤層(X1)から離れた位置に存在しており、前記膨張性基材層(Y1)と前記第1粘着剤層(X1)との間には前記非膨張性基材層(Y2)は存在しておらず、
前記膨張性粒子が膨張する際における前記非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は、前記膨張性粒子が膨張する際における前記膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’よりも大きい、上記[1]又は[2]に記載の硬化封止体の製造方法。
[5]工程(3)において、前記膨張性粒子を膨張させた際、前記粘着シートを構成する各層の層間では分離しない、上記[1]~[4]のいずれかに記載の硬化封止体の製造方法。
[6]前記膨張性粒子が、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化封止体の製造方法。
[7]前記熱膨張性粒子の膨張を、熱膨張性粒子の「膨張開始温度(t)+10℃」~「膨張開始温度(t)+60℃」間で加熱処理により行う、上記[6]記載の硬化封止体の製造方法。
[8]前記膨張性基材層(Y1)が前記熱膨張性粒子を含む熱膨張性基材層(Y1-1)であり、23℃における熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である上記[6]又は[7]に記載の硬化封止体の製造方法。
[9]前記非膨張性基材層(Y2)の体積変化率(%)が2体積%未満である上記[1]~[8]のいずれかに記載の硬化封止体の製造方法。
[10]前記封止対象物が、半導体チップである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の硬化封止体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化封止体の製造方法によれば、封止対象物を封止材によって硬化封止体を得る際に、封止対象物の位置ずれの発生や、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制して、歩留まりを向上させ得ると共に、製造環境内での汚染を抑制して、生産性も向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の半導体チップの製造方法で用いる粘着シートの構成の一例を示す、当該粘着シートの断面模式図である。
図2】本発明の半導体チップの製造方法の工程(1)~(3)における断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、対象となる層が「膨張性層」又は「非膨張性層」のどちらであるかの判断は、膨張させるための処理を3分間行った後、当該処理の前後での下記式から算出される体積変化率に基づき判断する。
・体積変化率(%)={(処理後の前記層の体積-処理前の前記層の体積)/処理前の前記層の体積}×100
つまり、体積抵抗率が5体積%以上であれば、当該層は「膨張性層」であると判断し、当該体積変化率が5体積%未満であれば、当該層は「非膨張性層」であると判断する。
なお、「膨張させるための処理」としては、例えば、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合には、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)で3分間の加熱処理を行えばよい。
【0017】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0018】
本明細書において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0019】
〔本発明の硬化封止体の製造方法〕
本発明の硬化封止体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)は、膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)と、基材(Y)の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)とを有し、前記膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ得る、粘着シートを用いて、硬化封止体を製造する方法である。
そして、本発明の製造方法は、下記工程(1)~(3)を有する。
・工程(1):第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(2):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、前記封止対象物を前記封止材で封止してなる硬化封止体を得る工程。
・工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程。
【0020】
〔本発明の製造方法で用いる粘着シートの構成〕
図1は、本発明の製造方法で用いる粘着シートの構成の一例を示す、当該粘着シートの断面模式図である。
本発明の製造方法で用いる粘着シートは、図1(a)に示すような、膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)と、基材(Y)の両面に、それぞれ、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)とを有する粘着シート1aが挙げられる。
【0021】
図1(a)に示す粘着シート1aが有する基材(Y)は、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)とが直接積層した構成を有するものであるが、基材(Y)は、これ以外の構成であってもよい。
例えば、図1(b)に示す粘着シート1bが有する基材(Y)のように、膨張性基材層(Y1)の両面に第1非熱膨張性基材層(Y2-1)及び第2非熱膨張性基材層(Y2-2)を設けた構成であってもよい。
【0022】
なお、本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、第1粘着剤層(X1)の粘着表面及び第2粘着剤層(X2)の粘着表面には、さらに剥離材を積層した構成としてもよい。
当該構成において、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の一方の粘着表面に、両面に剥離処理が施された剥離材が積層したものを、ロール状に巻いた構成としてもよい。
これらの剥離材は、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の粘着表面を保護するために設けられたものであり、粘着シートの使用時には除去されるものである。
【0023】
また、例えば、図1(a)に示す粘着シート1aにおいて、第1粘着剤層(X1)上に積層した剥離材を剥がす際の剥離力と、第2粘着剤層(X2)上に積層した剥離材を剥がす際の剥離力とが同程度である場合、双方の剥離材を外側へ引っ張って剥がそうとすることで、粘着シート1aが、2つの剥離材に伴って分断されて引き剥がされるという弊害が生じることがある。
そのため、第1粘着剤層(X1)上に積層する剥離材と、第2粘着剤層(X2)上に積層する剥離材とは、互いに貼付される粘着剤層からの剥離力が異なるように設計された2種の剥離材を用いることが好ましい。
【0024】
ところで、本発明の製造方法で用いる粘着シートは、前記膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ得るように調整されている。
例えば、図1(a)に示す粘着シート1aでは、膨張性粒子を含有する膨張性基材層(Y1)上に、非膨張性粘着剤層である第1粘着剤層(X1)を積層し、また、非膨張性基材層(Y2)上に、非膨張性粘着剤層である第2粘着剤層(X2)を積層した構成を有している。
粘着シート1aにおいて、膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子が膨張すると、膨張性基材層(Y1)の表面に凹凸が生じて、当該表面と接触している第1粘着剤層(X1)が、その凹凸によって押し上げられ、結果として、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも凹凸が生じ得る。
本発明の製造方法において、上述の工程(1)のとおり、第1粘着剤層(X1)の粘着表面は、硬質支持体に貼付される。
そして、上述の工程(3)において、膨張性粒子を膨張させた際、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ、硬質支持体との接触面積が減少するため、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pでわずかな力で一括して容易に分離することができる。
また、膨張性粒子を膨張させた際、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)との界面においても、わずかな力で一括して容易に分離可能となるように調整してもよい。
【0025】
一方で、上述の工程(1)のとおり、第2粘着剤層(X2)の粘着表面には、封止対象物が載置され、工程(2)において、載置された封止対象物と、封止対象物の周辺部の第2粘着剤層(X2)とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、硬化封止体が形成される。そして、上述の工程(3)で規定のとおり、膨張性粒子を膨張させた際には、第2粘着剤層(X2)上に硬化封止体を積層したまま、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離される。
つまり、硬質支持体から分離する際に、複数の半導体チップは、粘着シートの第2粘着剤層(X2)上に保持されていることを要する。
そのために、第2粘着剤層(X2)の粘着表面は、前記膨張性粒子の膨張によっても、硬化封止体を保持し得るほどの粘着力を維持できるように、凹凸の形成が抑制されるように調整されていることが好ましい。
【0026】
例えば、図1(a)に示す粘着シート1aにおいては、膨張性基材層(Y1)の第1粘着剤層(X1)とは反対の表面には、非膨張性基材層(Y2)を備えており、この非膨張性基材層(Y2)の表面上に第2粘着剤層(X2)が積層した構成としている。
粘着シート1aにおいて、膨張性粒子が膨張した際に、非膨張性基材層(Y2)が存在するため、膨張性粒子が膨張することによる膨張性基材層(Y1)側からの応力は、非膨張性基材層(Y2)が吸収する。その結果、非膨張性基材層(Y2)上に積層した第2粘着剤層(X2)の粘着表面の凹凸の形成は抑制され、当該粘着表面上に硬化封止体を積層した状態で保持することができる。
【0027】
なお、図1(b)に示す粘着シート1bにおいては、膨張性粒子が膨張した際に、第1粘着剤層(X1)の粘着表面には凹凸が形成されるように、第1非膨張性基材層(Y2-1)の貯蔵弾性率E’を低く調整することが好ましい。
一方で、膨張性粒子が膨張した際に、第2粘着剤層(X2)の粘着表面には凹凸の形成が抑制されるように、第2非熱膨張性基材層(Y2-2)の貯蔵弾性率E’は高く調整することが好ましい。
すなわち、膨張性粒子が膨張する際における第1非膨張性基材層(Y2-1)の貯蔵弾性率E’を、膨張性粒子が膨張する際における第2非熱膨張性基材層(Y2-2)の貯蔵弾性率E’より低く調整することが好ましい。
【0028】
ところで、特許文献1に記載されたような、膨張性粒子を含む膨張性粘着剤層を有する粘着シートを用いて、当該膨張性粘着剤層の粘着表面に封止対象物を載置して硬化封止体を得ようとした場合、封止対象物を載置している膨張性粘着剤層は、膨張性粒子を含有しているため、粘着力が不十分となり易い。
そのため、工程(2)における封止工程の際に、封止対象物の位置ずれや、封止対象物と膨張性粘着剤層との接着界面に封止材の封止樹脂が侵入し、封止対象物の露出表面(例えば、半導体チップの回路面等)に封止樹脂が付着するという弊害が生じ得る。
【0029】
また、基材の一方の表面上に膨張性粘着剤層を有し、他方の表面上に非膨張性粘着剤層を有する両面粘着シートを用いて、当該膨張性粘着剤層は、硬質支持体と貼付し、当該非膨張性粘着剤層上には、封止対象物を載置して、硬化封止体を得る方法も考えられる。
しかしながら、膨張性粘着剤層の粘着力は不十分となり易く、封止対象物が硬質支持体に十分に固定されていないため、非膨張性粘着剤層上に載置されている封止対象物も、封止材で被覆する際に動き易い。そのため、封止工程の際に、封止対象物の位置ずれや、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害は生じ易い。
【0030】
また、粘着性樹脂を選択して、膨張性粘着剤層を高粘着力とすることで、上記の弊害を回避することも考えられる。
しかしながら、膨張性粘着剤層を高粘着力とした際に、膨張性粘着剤層に含まれる粘着性樹脂の種類によっては、膨張性粒子の膨張が不十分となり、膨張性粒子を膨張させる処理を行っても、一括して容易に剥離することが難しくなる場合がある。
つまり、高粘着力とした膨張性粘着剤層に封止対象物を載置した場合、形成した硬化封止体を、当該膨張性粘着剤層から剥離し難くなる場合があり、剥離したとしても、硬化封止体に膨張性粘着剤層の一部が残存するといった弊害が生じ得る。
【0031】
また、高粘着力とした膨張性粘着剤層を硬質支持体に貼付した場合、膨張性粒子を膨張させて硬質支持体から当該両面粘着シートを剥離する際に、硬質支持体の表面に粘着剤層の一部が残存することがあり、支持体の洗浄工程を要する必要があり、生産性の低下の要因ともなる。
【0032】
加えて、膨張性粒子の膨張後の膨張性粘着剤層は、非常に脆くなっている。硬質支持体から両面粘着シート付きの硬化封止体において、膨張性粘着剤層は、最外層に位置するが、運搬する際や、次工程で加工を施す際に、最外層にある膨張性粘着剤層の一部が脱落が生じたり、膨張性粘着剤層の剥がれが生じ易い。
脱落した膨張性粘着剤層が、製造環境内の各種機器等に付着して、機器を汚染してしまった場合には、機器の洗浄が必要となるため、生産性の低下の要因となる。
【0033】
一方で、本発明の製造方法で用いる粘着シートは、膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える基材(Y)を有し、膨張性粒子が膨張した際には、第1粘着剤層(X1)の粘着表面には凹凸が形成されるように調整されている。
そのため、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の形成材料である粘着剤組成物の選択の自由度も高い。
つまり、上述のような使用する粘着性樹脂の制限が課される膨張性粘着剤層とは異なり、膨張性粒子の膨張性を考慮せずに、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)に用いる粘着性樹脂を選択することが可能である。
また、硬質支持体と貼付する第1粘着剤層(X1)には、非膨張性粘着剤層であり、膨張性粒子を含む必要がないため、硬質支持体に十分に固定することができるため、封止対象物と硬質支持体との固定不足による、封止対象物の位置ずれや、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制し得る。
【0034】
さらに、硬質支持体と貼付した粘着シートとを分離する際には、一括して容易に分離することができると共に、分離後の硬質支持体の汚染を効果的に抑制し得る。
【0035】
加えて、分離後の粘着シート付きの硬化封止体において、膨張後の膨張性粒子を含有する膨張性基材層(Y1)は、少なくとも最外層に位置しておらず、また、粘着剤層に膨張性粒子を含有した場合に比べて、ある程度の強度を有している。そのため、膨張後の膨張性基材層(Y1)の脱落等は生じ難い。
さらに、分離後の粘着シート付きの硬化封止体において、最外層に位置する第1粘着剤層(X1)は、非膨張性粘着剤層であり、膨張性粒子を含む必要がないため、第1粘着剤層(X1)の脱落等の弊害は生じ難い。
よって、本発明の製造方法においては、製造環境内での汚染を効果的に抑制し得るため、汚染に伴う洗浄工程を要する必要が無く、優れた生産性を発現し得る。
【0036】
〔粘着シートの各種物性〕
本発明の一態様で用いる粘着シートは、膨張性粒子の膨張によって、硬質支持体と貼付している第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで、わずかな力で一括して容易に分離可能となる。
ここで、本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、膨張性粒子を膨張させ、界面Pで分離する際の剥離力(F)としては、通常0~2000mN/25mm、好ましくは0~1000mN/25mm、より好ましくは0~150mN/25mm、更に好ましくは0~100mN/25mm、より更に好ましくは0~50mN/25mmである。
なお、当該剥離力(F)が0mN/25mmである場合には、実施例に記載の方法で剥離力を測定しようとしても、剥離力が小さ過ぎるために測定不可となる場合も含まれる。
【0037】
一方で、膨張性粒子の膨張前においては、封止対象物を封止材によって硬化封止体を得る際に、封止対象物の位置ずれの発生や、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制して、歩留まりを向上させる観点から、第1粘着剤層(X1)の粘着力は高いほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、膨張性粒子の膨張前における、界面Pで分離する際の剥離力(F)としては、好ましくは0.05~10.0N/25mm、より好ましくは0.1~8.0N/25mm、更に好ましくは0.15~6.0N/25mm、より更に好ましくは0.2~4.0N/25mmである。
なお、上記剥離力(F)は、硬質支持体に対する第1粘着剤層(X1)の粘着力とみなすこともできる。
【0038】
本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、剥離力(F)と剥離力(F)との比〔(F)/(F)〕は、好ましくは0~0.9、より好ましくは0~0.8、更に好ましくは0~0.5、より更に好ましくは0~0.2である。
【0039】
なお、剥離力(F)は、膨張性粒子が膨張する際の環境下で測定した値である。例えば、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合、剥離力(F)を測定する際の温度条件としては、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上であればよい。
一方で、剥離力(F)を測定する際の温度条件としては、膨張性粒子が膨張しない温度であればよく、基本的には、室温(23℃)である。
ただし、剥離力(F)及び剥離力(F)のより具体的な測定条件及び測定方法は、実施例に記載の方法に基づく。
【0040】
また、本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、室温(23℃)における、第2粘着剤層(X2)の粘着力としては、好ましくは0.1~10.0N/25mm、より好ましくは0.2~8.0N/25mm、更に好ましくは0.4~6.0N/25mm、より更に好ましくは0.5~4.0N/25mmである。
本明細書において、第2粘着剤層(X2)の粘着力は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
以下、本発明の一態様で用いる粘着シートを構成する各層について説明する。
【0041】
<基材(Y)>
本発明の一態様で用いる粘着シートが有する基材(Y)は、膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)を少なくとも備える。
また、基材(Y)としては、図1(a)に示す粘着シート1aのように、膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)をそれぞれ一つずつ積層してなるものであってもよく、図1(b)に示す粘着シート1bのように、膨張性基材層(Y1)の両面に第1非熱膨張性基材層(Y2-1)及び第2非熱膨張性基材層(Y2-2)を設けた構成であってもよい。
【0042】
また、本発明の一態様で用いる粘着シートが有する基材(Y)は、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)との間に接着層を設けた構成であってもよい。
例えば、図1(b)に示す粘着シート1bの構成の場合は、膨張性基材層(Y1)と、第1非熱膨張性基材層(Y2-1)及び/又は第2非熱膨張性基材層(Y2-2)との間に接着層を設けてもよい。
接着層を設けることで、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)との層間密着性を良好とすることができる。
接着層は、一般的な接着剤や、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の形成材料である粘着剤組成物から形成することができる。
【0043】
本発明の一態様において、膨張性粒子の膨張によって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を生じさせる一方、第2粘着剤層(X2)の粘着表面には凹凸の形成が抑制されるような粘着シートとする観点から、基材(Y)としては、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)とを少なくとも最表面に備えるものであることが好ましい。
当該態様としては、図1(a)に示す粘着シート1aが有する基材(Y)や、膨張性基材層(Y1)、接着層、及び非膨張性基材層(Y2)をこの順で積層してなる基材(Y)等が挙げられる。
【0044】
なお、基材(Y)を構成する膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)は、いずれも非粘着性の層である。
本発明において、非粘着性の層か否かの判断は、対象となる層の表面に対して、JIS Z0237:1991に準拠して測定したプローブタック値が50mN/5mmφ未満であれば、当該層を「非粘着性の層」と判断する。
本発明の一態様で用いる粘着シート(I)が有する膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)の表面におけるプローブタック値は、それぞれ独立に、通常50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
なお、本明細書において、熱膨張性基材の表面におけるプローブタック値の具体的な測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0045】
本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、基材(Y)の厚さとしては、好ましくは15~2000μm、より好ましくは25~1500μm、更に好ましくは30~1000μm、より更に好ましくは40~500μmである。
【0046】
膨張性粒子の膨張前における、膨張性基材(Y1)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~700μm、更に好ましくは25~500μm、より更に好ましくは30~300μmである。
非膨張性基材(Y2)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~700μm、更に好ましくは25~500μm、より更に好ましくは30~300μmである。
なお、本明細書において、例えば、図1(b)に示す粘着シート1bのように、膨張性基材(Y1)又は非膨張性基材(Y2)が、他の層を介して、複数存在する場合には、上記の膨張性基材(Y1)又は非膨張性基材(Y2)の厚さは、それぞれの一層あたりの厚さを意味する。
【0047】
本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、膨張性粒子の膨張前での、膨張性基材層(Y1)と非熱膨張性基材層(Y2)との厚さ比〔(Y1)/(Y2)〕としては、好ましくは0.02~200、より好ましくは0.03~150、更に好ましくは0.05~100である。
【0048】
本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、膨張性粒子の膨張前での膨張性基材層(Y1)と、当該膨張性基材層(Y1)と直接積層する第1粘着剤層(X1)との厚さ比〔(Y1)/(X1)〕としては、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは5.0以上であり、また、好ましくは1000以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは30以下である。
【0049】
また、本発明の一態様で用いる粘着シートにおいて、非膨張性基材層(Y2)と、当該非膨張性基材層(Y2)と直接積層する第2粘着剤層(X2)との厚さ比〔(Y2)/(X2)〕としては、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
【0050】
以下、基材(Y)を構成する、膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)について説明する。
【0051】
<膨張性基材層(Y1)>
基材(Y)を構成する膨張性基材層(Y1)は、膨張性粒子を含有し、所定の膨張処理によって、膨張し得る層である。
膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子の含有量は、膨張性基材層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
【0052】
なお、膨張性基材層(Y1)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、膨張性基材層(Y1)の表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0053】
膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子としては、所定の処理を行うことで、膨張する粒子であればよく、例えば、所定の温度以上の加熱によって膨張する熱膨張性粒子や、所定量の紫外線を吸収することで、粒子内部にガスが発生して膨張するUV膨張性粒子等が挙げられる。
【0054】
膨張性粒子の体積最大膨張率は、好ましくは1.5~100倍、より好ましくは2~80倍、更に好ましくは2.5~60倍、より更に好ましくは3~40倍である。
【0055】
23℃における膨張前の膨張性粒子の平均粒子径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~70μm、更に好ましくは6~60μm、より更に好ましくは10~50μmである。
なお、膨張性粒子の平均粒子径とは、体積中位粒径(D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した膨張性粒子の粒子分布において、膨張性粒子の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒径を意味する。
【0056】
23℃における膨張前の膨張性粒子の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは25~90μm、より更に好ましくは30~80μmである。
なお、膨張性粒子の90%粒子径(D90)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した膨張性粒子の粒子分布において、膨張性粒子の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒径を意味する。
【0057】
本発明の一態様において、膨張性粒子としては、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子であることが好ましい。
つまり、膨張性基材層(Y1)としては、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子を含む熱膨張性基材層(Y1-1)であることが好ましく、熱膨張性基材層(Y1-1)は、下記要件(1)を満たすことがより好ましい。
・要件(1):前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、前記熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
なお、本明細書において、所定の温度における熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0058】
上記要件(1)は、熱膨張性粒子が膨張する直前の熱膨張性基材層(Y1-1)の剛性を示す指標といえる。
つまり、熱膨張性粒子が膨張する際、上記要件(1)を満たす程度に、熱膨張性基材層(Y1-1)が柔軟性を有していれば、熱膨張性基材層(Y1-1)の表面に凹凸が形成され易くなり、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも凹凸が生じ易くなる。その結果、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pでわずかな力で一括して容易に分離可能とすることができる。
【0059】
熱膨張性基材層(Y1-1)の要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、上記観点から、好ましくは9.0×10Pa以下、より好ましくは8.0×10Pa以下、更に好ましくは6.0×10Pa以下、より更に好ましくは4.0×10Pa以下である。
また、膨張した熱膨張性粒子の流動を抑制し、熱膨張性基材層(Y1-1)の表面に生じる凹凸の形状維持性を向上させ、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも凹凸を生じ易くする観点から、熱膨張性基材層(Y1-1)の要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
【0060】
また、熱膨張性基材層(Y1-1)は、下記要件(2)を満たすことも好ましく、上述の要件(1)と共に、当該要件(2)も満たすことがより好ましい。
・要件(2):23℃における、熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10Pa以上である。
【0061】
上記要件(2)を満たす熱膨張性基材層(Y1-1)とすることで、封止対象物を第2粘着剤層(X2)の粘着表面に載置する際の位置ずれを防止することができ、また、封止対象物の第2粘着剤層(X2)への過度な沈み込みを防止することもできる。
【0062】
上記観点から、上記要件(2)で規定する熱膨張性基材層(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(23)は、好ましくは5.0×10~5.0×1012Pa、より好ましくは1.0×10~1.0×1012Pa、更に好ましくは5.0×10~1.0×1011Pa、より更に好ましくは1.0×10~1.0×1010Paである。
【0063】
熱膨張性基材層(Y1-1)中に含まれる熱膨張性粒子としては、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子であることが好ましい。
なお、本明細書において、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、以下の方法に基づき測定された値を意味する。
[熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)の測定法]
直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに、測定対象となる熱膨張性粒子0.5mgを加え、その上からアルミ蓋(直径5.6mm、厚さ0.1mm)をのせた試料を作製する。
動的粘弾性測定装置を用いて、その試料にアルミ蓋上部から、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、試料の高さを測定する。そして、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定し、正方向への変位開始温度を膨張開始温度(t)とする。
【0064】
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、当該外殻に内包され、且つ所定の温度まで加熱されると気化する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0065】
外殻に内包された内包成分としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ネオペンタン、ドデカン、イソドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、シクロトリデカン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらの内包成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、内包成分の種類を適宜選択することで調整可能である。
【0066】
膨張性基材層(Y1)は、樹脂及び膨張性粒子を含む樹脂組成物(y)から形成することが好ましい。
なお、樹脂組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、基材用添加剤を含有してもよい。
基材用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
なお、これらの基材用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの基材用添加剤を含有する場合、それぞれの基材用添加剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0067】
膨張性基材層(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)に含まれる膨張性粒子については、上述のとおりであり、熱膨張性粒子であることが好ましい。
膨張性粒子の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
【0068】
膨張性基材層(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)に含まれる樹脂としては、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。
つまり、樹脂組成物(y)に含まれる樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y)から膨張性基材層(Y1)を形成する過程において、当該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、当該樹脂を含む膨張性基材層(Y1)が非粘着性となればよい。
【0069】
樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1000~100万、より好ましくは1000~70万、更に好ましくは1000~50万である。
また、当該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0070】
樹脂の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0071】
本発明の一態様において、膨張性粒子の膨張時に、表面に凹凸が形成し易い膨張性基材層(Y1)とする観点から、樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂としては、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、上記アクリルウレタン系樹脂としては、以下の樹脂(U1)が好ましい。
・ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)。
【0072】
[アクリルウレタン系樹脂(U1)]
アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ポリオールと多価イソシアネートとの反応物が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー(UP)は、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を施して得られたものであることが好ましい。
【0073】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレン型ポリオール、エーテル型ポリオール、エステル型ポリオール、エステルアミド型ポリオール、エステル・エーテル型ポリオール、カーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いるポリオールとしては、ジオールが好ましく、エステル型ジオール、アルキレン型ジオール及びカーボネート型ジオールがより好ましく、エステル型ジオール、カーボネート型ジオールが更に好ましい。
【0074】
エステル型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;等のジオール類から選択される1種又は2種以上と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物から選択される1種又は2種以上と、の縮重合体が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0075】
アルキレン型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;等が挙げられる。
【0076】
カーボネート型ジオールとしては、例えば、1,4-テトラメチレンカーボネートジオール、1,5-ペンタメチレンカーボネートジオール、1,6-ヘキサメチレンカーボネートジオール、1,2-プロピレンカーボネートジオール、1,3-プロピレンカーボネートジオール、2,2-ジメチルプロピレンカーボネートジオール、1,7-ヘプタメチレンカーボネートジオール、1,8-オクタメチレンカーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0077】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となる多価イソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの多価イソシアネートは、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0078】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0079】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられるが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0080】
本発明の一態様において、アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ジオールとジイソシアネートとの反応物であり、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーが好ましい。
当該直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、ジオールとジイソシアネート化合物とを反応してなる直鎖ウレタンプレポリマーの末端のNCO基と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させる方法が挙げられる。
【0081】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
アクリルウレタン系樹脂(U1)の側鎖となる、ビニル化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
【0083】
アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの配合割合としては、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.5~30質量部、更に好ましくは1.0~20質量部、より更に好ましくは1.5~10質量部である。
【0084】
当該アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8、より更に好ましくは1~3である。
【0085】
また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入するために用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
ビニル化合物中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0088】
ビニル化合物中のアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合計含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0089】
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)において、ウレタンプレポリマー(UP)に由来の構成単位(u11)と、ビニル化合物に由来する構成単位(u12)との含有量比〔(u11)/(u12)〕としては、質量比で、好ましくは10/90~80/20、より好ましくは20/80~70/30、更に好ましくは30/70~60/40、より更に好ましくは35/65~55/45である。
【0090】
[オレフィン系樹脂]
樹脂組成物(y)に含まれる樹脂として好適なオレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマーに由来の構成単位を少なくとも有する重合体が挙げられる。
上記オレフィンモノマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン及びプロピレンが好ましい。
【0091】
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m以上910kg/m未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m以上915kg/m未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m以上942kg/m未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン-プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられる。
【0092】
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂は、さらに酸変性、水酸基変性、及びアクリル変性から選ばれる1種以上の変性を施した変性オレフィン系樹脂であってもよい。
【0093】
例えば、オレフィン系樹脂に対して酸変性を施してなる酸変性オレフィン系樹脂としては、上述の無変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又はその無水物を、グラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
なお、不飽和カルボン酸又はその無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
オレフィン系樹脂に対してアクリル変性を施してなるアクリル変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、側鎖として、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記のアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~12である。
上記のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のモノマー(a1’)として選択可能な化合物と同じものが挙げられる。
【0095】
オレフィン系樹脂に対して水酸基変性を施してなる水酸基変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、水酸基含有化合物をグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の水酸基含有化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0096】
(アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂)
本発明の一態様において、樹脂組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
そのような樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;アクリルウレタン系樹脂には該当しないポリウレタン;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0097】
ただし、膨張性粒子の膨張時に、表面に凹凸が形成し易い膨張性基材層(Y1)とする観点から、樹脂組成物(y)中のアクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合は、少ない方が好ましい。
アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合としては、樹脂組成物(y)中に含まれる樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
【0098】
[無溶剤型樹脂組成物(y1)]
樹脂組成物(y)の一態様として、質量平均分子量(Mw)が50000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y1)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y1)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、前記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y1)から形成した塗膜に対して、エネルギー線を照射することで、膨張性粒子の膨張時に、表面に凹凸が形成し易い膨張性基材層(Y1)を形成し易く、特に、上記要件(1)及び(2)を満たす熱膨張性基材層(Y1-1)を形成し易い。
【0099】
なお、無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合される、膨張性粒子の種類や形状、配合量(含有量)については、樹脂組成物(y)と同じであり、上述のとおりである。
【0100】
無溶剤型樹脂組成物(y1)に含まれる前記オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、50000以下であるが、好ましくは1000~50000、より好ましくは2000~40000、更に好ましくは3000~35000、より更に好ましくは4000~30000である。
【0101】
また、前記オリゴマーとしては、上述の樹脂組成物(y)に含まれる樹脂のうち、質量平均分子量が50000以下のエチレン性不飽和基を有するものであればよいが、上述のウレタンプレポリマー(UP)が好ましい。
なお、当該オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基を有する変性オレフィン系樹脂も使用し得る。
【0102】
無溶剤型樹脂組成物(y1)中における、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの合計含有量は、無溶剤型樹脂組成物(y1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0103】
エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート等の脂環式重合性化合物;フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート等の芳香族重合性化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等の複素環式重合性化合物等が挙げられる。
これらのエネルギー線重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーの配合比(前記オリゴマー/エネルギー線重合性モノマー)は、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは30/70~85/15、更に好ましくは35/65~80/20である。
【0105】
本発明の一態様において、無溶剤型樹脂組成物(y1)は、さらに光重合開始剤を配合してなることが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
【0106】
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシル-フェニル-ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
光重合開始剤の配合量は、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、更に好ましくは0.02~3質量部である。
【0108】
<非膨張性基材層(Y2)>
基材(Y)を構成する非膨張性基材層(Y2)の形成材料としては、例えば、紙材、樹脂、金属等が挙げられる。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
【0109】
これらの形成材料は、1種から構成されていてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上の形成材料を併用した非膨張性基材層(Y2)としては、紙材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたものや、樹脂を含む樹脂フィルム又はシートの表面に金属膜を形成したもの等が挙げられる。
なお、金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
【0110】
なお、非膨張性基材層(Y2)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、非膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、非膨張性基材層(Y2)の表面に対しても、上述の膨張性基材層(Y1)と同様に、酸化法や凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
【0111】
また、非膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、当該樹脂と共に、樹脂組成物(y)にも含有し得る、上述の基材用添加剤を含有してもよい。
【0112】
非膨張性基材層(Y2)は、上述の膨張性基材層(Y1)よりも上述の第1粘着剤層(X1)から離れた位置に存在しており、膨張性基材層(Y1)と第1粘着剤層(X1)との間には非膨張性基材層(Y2)は存在しておらず、前記膨張性粒子が膨張する際における前記非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は、前記膨張性粒子が膨張する際における前記膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’よりも大きいことが好ましい。このように、膨張性基材層(Y1)と第1粘着剤層(X1)との間に非膨張性基材層(Y2)が存在しないため、膨張性粒子の膨張によって膨張性基材層(Y1)の表面に生じる凹凸が、非膨張性基材層(Y2)を介在させることなく第1粘着剤層(X1)に伝わることになり、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも凹凸が生じ易くなる。また、膨張性粒子が膨張する際において、非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’よりも大きいため、膨張性粒子の膨張時に、膨張性基材層(Y1)のうち非膨張性基材層(Y2)側の表面に凹凸が生じることが抑制され、その結果、膨張性基材層(Y1)のうち、第1粘着剤層(X1)側の表面に凹凸が生じ易くなり、したがって、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも凹凸が生じ易くなる。
前述の膨張性粒子が膨張する際における、非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は、上記のとおり第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸が生じ易くする観点から、好ましくは1.0MPa以上であり、また、貼付作業及び剥離作業の容易性の観点、第2粘着剤層(X2)の粘着表面にも凹凸を生じさせる観点、又はロール形体でのハンドリングのし易さの観点から、好ましくは1.0×10MPa以下である。当該観点から、膨張性粒子が膨張する際における、非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0~5.0×10MPa、より好ましくは1.0×10~1.0×10MPa、さらに好ましくは5.0×10~1.0×10MPaである。
また、上記の観点及び半導体ウエハを第2粘着剤層(X2)の粘着表面に貼付する際の位置ずれを防止する観点から、23℃における、非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’(23)は、好ましくは5.0×10~5.0×10MPa、より好ましくは1.0×10~1.0×10MPa、さらに好ましくは5.0×10~5.0×10MPaである。 非膨張性基材層(Y2)は、上述の方法に基づき判断される、非膨張性層である。
そのため、上述の式から算出される非膨張性基材層(Y2)の体積変化率(%)としては、5体積%未満であるが、好ましくは2体積%未満、より好ましくは1体積%未満、更に好ましくは0.1体積%未満、より更に好ましくは0.01体積%未満である。
【0113】
また、非膨張性基材層(Y2)は、体積変化率が上記範囲である限り、熱膨張性粒子を含有してもよい。例えば、非膨張性基材層(Y2)に含まれる樹脂を選択することで、熱膨張性粒子が含まれていたとしても、体積変化率を上記範囲に調整することは可能である。
ただし、非膨張性基材層(Y2)中の熱膨張性粒子の含有量は、少ないほど好ましい。
具体的な熱膨張性粒子の含有量としては、非膨張性基材層(Y2)の全質量(100質量%)に対して、通常3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
【0114】
<第1粘着剤層(X1)、第2粘着剤層(X2)>
本発明の一態様で用いる粘着シートは、非膨張性粘着剤層である、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)を有する。
本発明の製造方法においては、第1粘着剤層(X1)の粘着表面は、硬質支持体と貼付され、第2粘着剤層(X2)の粘着表面には、封止対象物が載置され、硬化封止体が形成される。
【0115】
第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)が、非膨張性粘着剤層であることで、封止対象物と硬質支持体との固定不足による、封止対象物の位置ずれや、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制し得る。
加えて、第1粘着剤層(X1)が、非膨張性粘着剤層であることで、上記の効果に加えて、硬化支持体から分離後の粘着シート付きの硬化封止体において、第1粘着剤層(X1)が脱落等してしまい、製造環境内の各種機器等を汚染するような弊害を抑制し得る。
【0116】
第1粘着剤層(X1)は、膨張性基材層(Y1)中に含まれる膨張性粒子の膨張前においては、硬質支持体と密着性が高く、封止対象物を硬質支持体に十分に固定し得る性質が求められる。
当該観点から、23℃における、第1粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10Pa以下、より好ましくは5.0×10Pa以下、更に好ましくは1.0×10Pa以下である。
【0117】
その一方で、膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子の膨張時には、膨張性基材層(Y1)の表面に生じた凹凸を、第1粘着剤層(X1)の粘着表面にも形成し得る程の剛性も要求される。
当該観点から、23℃における、第1粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
【0118】
また、第2粘着剤層(X2)は、封止対象物との密着性だけでなく、当該封止対象物を封止材で封止してなる硬化封止体との密着性も要求される。また、当該封止対象物が第2粘着剤層(X2)へ過度に沈み込むといった現象も抑制する必要がある。
これらの観点から、23℃における、第2粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10~1.0×10Pa、より好ましくは5.0×10~5.0×10Pa、更に好ましくは9.0×10~1.0×10Paである。
なお、本明細書において、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0119】
第1粘着剤層(X1)の厚さは、好ましくは1~60μm、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
【0120】
第2粘着剤層(X2)の厚さは、好ましくは1~60μm、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
【0121】
第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物(x)から形成することができる。
また、粘着剤組成物(x)は、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
以下、粘着剤組成物(x)に含まれる各成分について説明する。
【0122】
(粘着性樹脂)
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂としては、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であればよい。
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、粘着力の向上の観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
【0123】
具体的な粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0124】
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂は、上記の粘着性樹脂の側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂であってもよい。
例えば、第2粘着剤層(X2)をエネルギー線硬化型の粘着性樹脂を含むエネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成することで、エネルギー線を照射することで粘着力を低下させることができるため、得られた硬化封止体を第2粘着剤層(X2)から容易に分離することができる。
当該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
また、エネルギー線としては、紫外線や電子線が挙げられるが、紫外線が好ましい。
なお、エネルギー線を照射して粘着力を低下し得る粘着剤層の形成材料としては、重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを含有するエネルギー線硬化型粘着剤組成物であってもよい。
【0125】
これらのエネルギー線硬化型粘着剤組成物には、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
光重合開始剤としては、上述の無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合されるものと同じものが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂100質量部もしくは重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
【0126】
本発明の一態様において、優れた粘着力を発現させる観点から、粘着性樹脂が、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。特に、第1粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂を含む粘着剤組成物から形成することで、第1粘着剤層の表面に凹凸を形成させ易くすることができる。
【0127】
粘着性樹脂中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物(x)に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0128】
粘着性樹脂の含有量としては、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~98質量%、より更に好ましくは70~95質量%である。
【0129】
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)が官能基を有する粘着性樹脂を含有する場合、粘着剤組成物(x)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、当該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
【0130】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0131】
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~5質量部である。
【0132】
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、上述の粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~10000、より好ましくは500~8000、更に好ましくは800~5000である。
【0133】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
【0134】
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60~170℃、より好ましくは65~160℃、更に好ましくは70~150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、単独で用いてもよく、軟化点や構造が異なる2種以上を併用してもよい。
そして、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0135】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.1~50質量%、更に好ましくは1~40質量%、より更に好ましくは2~30質量%である。
【0136】
(粘着剤用添加剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0138】
なお、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)は、いずれも非膨張性粘着剤層であるが、膨張性粒子を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「膨張性粒子を実質的に含有しない」とは、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)中に、特定の意図によって膨張性粒子を含有することはない、ということを意味する。そのため、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)中に、膨張性粒子が不純物として混入する態様までを除外するものではない。
具体的には、膨張性粒子の含有量としては、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の形成材料である粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)、もしくは、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
【0139】
<剥離材>
本発明の一態様で用いる粘着シートは、第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の粘着表面に、さらに剥離材を積層してもよい。
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0140】
剥離材用基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
【0141】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0142】
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~170μm、更に好ましくは35~80μmである。
【0143】
〔本発明の硬化封止体の製造方法の各工程〕
本発明の製造方法は、上述の粘着シートを用いた、硬化封止体を製造する方法であって、下記工程(1)~(3)を有する。
・工程(1):第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物を載置する工程。
・工程(2):前記封止対象物と、当該封止対象物の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させて、前記封止対象物を前記封止材で封止してなる硬化封止体を得る工程。
・工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程。
【0144】
図2は、本発明の硬化封止体の製造方法の工程(1)~(3)における断面模式図である。
以下、図2を適宜参照しながら、工程(1)~(3)について説明する。
【0145】
<工程(1)>
図2(a)は、図1(a)に示す粘着シート1aを用いた場合における、工程(1)における断面模式図である。
工程(1)では、図2(a)に示すように、粘着シート1aの第1粘着剤層(X1)の粘着表面を硬質支持体50に貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物60を載置する工程である。
本工程において、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に、封止対象物60の露出表面61が接触するように載置することが好ましい。
また、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に載置する封止対象物は、1つのみであってもよく、図2(a)に示すように複数であってもよい。複数の封止対象物を載置する場合には、隣り合う封止対象物の間隔が、一定となるように載置することが好ましい。
【0146】
なお、図2においては、図1(a)に示す粘着シート1aを用いた態様を示しているが、他の構成を有する粘着シートを用いる場合においても、同様に、硬質支持体、粘着シート、及び半導体チップをこの順で積層又は載置し、粘着シートの第1粘着剤層(X1)の粘着表面は硬質支持体と貼付し、第2粘着剤層(X2)の粘着表面は、封止対象物の露出表面と貼付されることが好ましい。
【0147】
なお、工程(1)は、膨張性粒子が膨張しない環境下で行うことが好ましい。
例えば、膨張性粒子として、熱膨張性粒子を用いる場合には、工程(1)は、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満となる温度条件下で行われればよく、具体的には、0~80℃の環境下(膨張開始温度(t)が60~80℃である場合には、膨張開始温度(t)未満の環境下)で行われることが好ましい。
【0148】
硬質支持体は、粘着シートの第1粘着剤層(X1)の粘着表面の全面に貼付されることが好ましい。そのため、硬質支持体は、板状であることが好ましい。
また、第1粘着剤層(X1)と貼付される硬質支持体の表面の面積は、図2に示すように、第1粘着剤層(X1)の粘着表面の面積以上であることが好ましい。
【0149】
硬質支持体を構成する材質としては、例えば、SUS等の金属材料;ガラス、シリコンウエハ等の非金属無機材料;エポキシ樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の樹脂材料;ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられ、これらの中でも、SUS、ガラス、及びシリコンウエハが好ましい。
なお、エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0150】
硬質支持体の厚さは、好ましくは20μm以上50mm以下であり、より好ましくは60μm以上20mm以下である。
【0151】
硬質支持体のヤング率としては、半導体チップを硬質支持体に十分に固定して、工程(2)における、封止対象物の位置ずれの発生や、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制する観点から、好ましくは1.0GPa以上、より好ましくは5.0GPa以上、更に好ましくは10GPa以上、より更に好ましくは20GPa以上である。
なお、本明細書において、硬質支持体のヤング率は、JIS Z2280:1993の静的ヤング率試験方法に準拠し、室温(25℃)にて測定した値である。
【0152】
一方、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に載置される封止対象物としては、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、化合物半導体、半導体パッケージ、電子部品、サファイア基板、ディスプレイ、パネル用基板等が挙げられる。
なお、載置される封止対象物は、同種のものから構成されていてもよく、2種以上の異種のものから構成されていてもよい。
【0153】
これらの封止対象物の露出表面とは、第2粘着剤層(X2)の粘着表面と接し、封止材によって被覆されない表面を指すが、具体的には、回路面が該当する。
本発明の製造方法においては、封止対象物が硬質支持体に十分に固定されているため、工程(2)の封止工程の際に、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害を効果的に抑制し得る。例えば、回路面に封止樹脂が付着すると、回路の配線が断線してしまい、歩留まりの低下の要因となるが、本発明の製造方法によれば、このような弊害を抑制し得る。
【0154】
封止対象物の載置の方法としては、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いたピックアンドプレイス方法や、転写装置を用いた一括転写方法とが挙げられる。
また、封止対象物の配置のレイアウト、配置数等は、目的とするパッケージの形態、生産数等に応じて適宜決定すればよい。
【0155】
本発明の製造方法により製造される硬化封止体は、FOWLPに用いられることが好ましい。そのため、封止対象物が、半導体チップであることが好ましい。
半導体チップは、従来公知のものを使用することができ、その回路面には、トランジスタ、抵抗、コンデンサー等の回路素子から構成される集積回路が形成されたものを使用することができる。
本発明の一態様で用いる半導体チップは、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、ガリウム、砒素等から構成された基板の一方の表面に、エッチング法、リフトオフ法等によって回路を形成された半導体ウエハをダイシングして得ることができる。
なお、半導体ウエハから半導体チップを得る方法としては、ステルスダイシング法であってもよく、先ダイシング法であってもよく、これら以外の方法であってもよい。
【0156】
第2粘着剤層(X2)の粘着表面に載置される半導体チップの露出表面は、回路が形成された回路面であることが好ましい。
第2粘着剤層(X2)の粘着表面に、半導体チップの回路面を載置することで、工程(2)の処理過程で、半導体チップの回路面を保護することができる。
一方、半導体チップの当該回路面とは反対側の面(以下「裏面」ともいう)は、次工程で封止材で被覆される側であり、通常は、回路や電極等は形成されていない平坦面である。
【0157】
ここで、FOWLP、FOPLP等のように、半導体チップをチップサイズよりも大きな領域を封止材で覆って、半導体チップの回路面だけではなく、封止材の表面領域においても再配線層を形成するパッケージに適用されることが好ましい。
そのため、半導体チップは、第2粘着剤層(X2)の粘着表面の一部に載置されるものであり、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて整列された状態で、当該粘着表面に載置されることが好ましく、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて、複数行且つ複数列のマトリックス状に整列された状態で当該粘着表面に載置されることがより好ましい。
半導体チップ同士の間隔は、目的とするパッケージの形態等に応じて適宜決定すればよい。
【0158】
<工程(2)>
工程(2)は、図2(b)に示すように、前記封止対象物60と、当該封止対象物60の少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを封止材70で被覆し(以下、「被覆処理」ともいう)、当該封止材70を硬化させて(以下、「硬化処理」ともいう)、前記封止対象物60を前記封止材70で封止してなる硬化封止体80を得る工程である。
【0159】
工程(2)の被覆処理においては、封止対象物の表出している面全体を封止材で覆いつつ、複数の封止対象物が載置されている場合には、当該封止材は、封止対象物同士の間隙にも充填されるように被覆することが好ましい。
また、図2(b)に示すように、封止対象物60及び第2粘着剤層(X2)の粘着表面をすべて覆うように封止材70で被覆してもよい。
【0160】
封止材は、封止対象物及びそれに付随する要素を外部環境から保護する機能を有するものである。
本発明の製造方法で用いる封止材としては、取扱性の観点から、熱硬化性樹脂を含む、熱硬化性封止材であることが好ましい。
封止材は、室温で、顆粒状、ペレット状、フィルム状等の固形であってもよく、組成物の形態となった液状であってもよいが、作業性の観点から、フィルム状の封止材である封止樹脂フィルムが好ましい。
【0161】
被覆方法としては、従来の封止工程に適用されている方法の中から、封止材の種類に応じて適宜選択して適用することができる。
具体的な被覆方法としては、例えば、ロールラミネート法、真空プレス法、真空ラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、トランスファーモールディング法、圧縮成形モールド法等が挙げられる。
【0162】
工程(2)の被覆処理及び硬化処理は、膨張性粒子が膨張しない環境下で行うことが好ましい。
例えば、膨張性粒子として、熱膨張性粒子を用いる場合には、工程(2)は、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満となる温度条件下で行われればよく、具体的には、0~80℃の環境下(膨張開始温度(t)が60~80℃である場合には、膨張開始温度(t)未満の環境下)で行われることが好ましい。
【0163】
そして、被覆処理を行った後、封止材を硬化させて、封止対象物を封止材で封止してなる硬化封止体が得られる。
また、被覆工程と熱硬化工程とは、別々に実施してもよいが、被覆工程において封止材を加熱する場合には、当該加熱によって、そのまま封止材を熱硬化させ、被覆工程と熱硬化工程とを同時に実施してもよい。
【0164】
<工程(3)>
工程(3)は、前記膨張性粒子を膨張させて、第2粘着剤層(X2)上に前記硬化封止体を積層したまま、前記硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離する工程である。
図2(c)は、膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子を膨張させて、硬質支持体50と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離した状態を示している。
【0165】
本工程において、膨張性粒子を膨張させる方法としては、膨張性粒子の種類に応じて適宜選択される。
例えば、膨張性粒子として、熱膨張性粒子を用いている場合は、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上の温度での加熱処理を行い、当該熱膨張性粒子を膨張させる。
この際、上記の「膨張開始温度(t)以上の温度」としては、「膨張開始温度(t)+10℃」以上「膨張開始温度(t)+60℃」以下であることが好ましく、「膨張開始温度(t)+15℃」以上「膨張開始温度(t)+40℃」以下であることがより好ましい。
【0166】
本発明の製造方法においては、膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)を有する粘着シートを用いて、当該膨張性粒子の膨張によって、硬質支持体と貼付している第1粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成することで、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面Pで分離できるように調整している。
そのため、分離後に硬質支持体の表面に第1粘着剤層(X1)の一部が残存するような、硬質支持体の汚染を抑制して、硬質支持体の洗浄工程を省略可能とし、生産性を向上させ得る。
【0167】
また、本工程において、膨張性粒子を膨張させた際、前記粘着シートを構成する各層の層間では分離しないことが好ましい。
つまり、図2(c)に示すように、工程(3)によって、硬質支持体50の表面には、粘着シートの一部の層が残存せずに、すべて除去されることが好ましい。
通常、粘着シートを分離した後の硬質支持体は、再度、新たな粘着シートを貼付して、同様の工程が施されることが一般的である。この際、粘着シートを構成する各層の層間で分離して、硬質支持体の表面に、粘着シートの一部の層が残存してしまうと、この層を除去するための工程が必要となる。
【0168】
一方で、本工程において、膨張性粒子を膨張させた際、前記粘着シートを構成する各層の層間では分離しないことで、上記の問題は生じず、硬化封止体の製造の生産性をより向上させることができる。
加えて、上述のとおり、分離後の粘着シート付きの硬化封止体において、粘着シートの最外層に位置する第1粘着剤層(X1)は、非膨張性粘着剤層であるため、第1粘着剤層(X1)が脱落する等の弊害は生じ難い。その点からも、製造環境内での汚染の問題は抑制されており、生産性をより向上し得る要因となる。
【0169】
また、粘着シートを除去した後、得られた硬化封止体は、封止対象物の位置ずれの発生や、封止対象物の露出表面への封止樹脂の付着といった弊害が効果的に抑制されている。
そのため、本発明製造方法によれば、このような硬化封止体の製造における歩留まりを向上させ得る。
【0170】
なお、得られた硬化封止体は、この後、硬化封止体の封止材を封止対象物の表面が露出するまで研削する工程、回路面に対して再配線を行う工程、外部電極パッドを形成し、外部電極パッドと外部端子電極とを接続させる工程等を経てもよい。
さらに、硬化封止体に外部端子電極が接続された後、個片化させ、半導体装置を製造することもできる。
【実施例
【0171】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0172】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0173】
<膨張性粒子の平均粒子径、90%粒子径(D90)の測定>
レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて、対象となる膨張性粒子の粒子分布を測定した。
そして、当該粒子分布から、膨張性粒子の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒径を「平均粒子径」とし、累積体積頻度が90%に相当する粒径を「90%粒子径(D90)」とした。
【0174】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0175】
<熱膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’>
形成した熱膨張性基材層(Y1)を、縦5mm×横30mm×厚さ200μmの大きさとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製,製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hz、振幅20μmの条件で、所定の温度における、当該試験サンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。
【0176】
<第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’>
形成した第1粘着剤層(X1)及び第2粘着剤層(X2)を、直径8mmの円形に切断したものを、剥離材を除去し、重ね合わせて、厚さ3mmとしたものを試験サンプルとした。
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、所定の温度における、試験サンプルの貯蔵せん断弾性率G’を測定した。
【0177】
<プローブタック値>
測定対象となる基材層を一辺10mmの正方形に切断した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置したものを試験サンプルとした。
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、タッキング試験機(日本特殊測器株式会社製,製品名「NTS-4800」)を用いて、試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定した。
具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cmで試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定し、得られた値を、その試験サンプルのプローブタック値とした。
【0178】
<第2粘着剤層(X2)の粘着力の測定>
剥離フィルム上に形成した第2粘着剤層(X2)の粘着表面上に、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)を積層し、基材付き粘着シートとした。
そして、剥離フィルムを除去し、表出した第2粘着剤層(X2)の粘着表面を、被着体であるステンレス鋼板(SUS304 360番研磨)に貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置した後、同じ環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、23℃における粘着力を測定した。
【0179】
<硬質支持体のヤング率>
JIS Z2280:1993の静的ヤング率試験方法に準拠し、室温(25℃)にて測定した。
【0180】
製造例1(アクリルウレタン系樹脂の合成)
(1)ウレタンプレポリマーの合成)
窒素雰囲気下の反応容器内に、質量平均分子量1,000のポリカーボネートジオール100質量部(固形分比)に対して、イソホロンジイソシアネートを、ポリカーボネートジオールの水酸基とイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基との当量比が1/1となるように配合し、さらにトルエン160質量部を加え、窒素雰囲気下にて、撹拌しながら、イソシアネート基濃度が理論量に到達するまで、80℃で6時間以上反応させた。
次いで、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)1.44質量部(固形分比)をトルエン30質量部に希釈した溶液を添加して、両末端のイソシアネート基が消滅するまで、更に80℃で6時間反応させ、質量平均分子量2.9万のウレタンプレポリマーを得た。
【0181】
(2)アクリルウレタン系樹脂の合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、製造例1で得たウレタンプレポリマー100質量部(固形分比)、メチルメタクリレート(MMA)117質量部(固形分比)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)5.1質量部(固形分比)、1-チオグリセロール1.1質量部(固形分比)、及びトルエン50質量部を加え、撹拌しながら、105℃まで昇温した。
そして、反応容器内に、さらにラジカル開始剤(株式会社日本ファインケム製、製品名「ABN-E」)2.2質量部(固形分比)をトルエン210質量部で希釈した溶液を、105℃に維持したまま4時間かけて滴下した。
滴下終了後、105℃で6時間反応させ、質量平均分子量10.5万のアクリルウレタン系樹脂の溶液を得た。
【0182】
製造例2(粘着シートの作製)
以下の粘着シートの作製の際に、各層の形成で使用した粘着性樹脂、添加剤、熱膨張性粒子、基材及び剥離材の詳細は以下のとおりである。
<粘着性樹脂>
・アクリル系共重合体(i):2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80.0/20.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体。
・アクリル系共重合体(ii):n-ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/アクリル酸=86.0/8.0/5.0/1.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体。
<添加剤>
・イソシアネート架橋剤(i):東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%。
<熱膨張性粒子>
・熱膨張性粒子(i):株式会社クレハ製、製品名「S2640」、膨張開始温度(t)=208℃、23℃における膨張前の平均粒子径(D50)=24μm、23℃における膨張前の90%粒子径(D90)=49μm。
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、PETフィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
【0183】
(1)第1粘着剤層(X1)の形成
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(i)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)5.0質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の粘着剤組成物を調製した。
そして、上記重剥離フィルムの剥離剤層の表面に、当該粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ5μmの非膨張性粘着剤層である第1粘着剤層(X1)を形成した。
なお、23℃における、第1粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、2.5×10Paであった。
【0184】
(2)第2粘着剤層(X2)の形成
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(ii)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)0.8質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の粘着剤組成物を調製した。
そして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面に、当該粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ10μmの第2粘着剤層(X2)を形成した。
なお、23℃における、第2粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、9.0×10Paであった。
また、上記方法に基づき測定した、第2粘着剤層(X2)の粘着力は、1.0N/25mmであった。
なお、第2粘着剤層(X2)及び前記第1粘着剤層(X1)は、プローブタック値が50mN/5mmφ以上であることが明らかであったため、プローブタック値の測定を省略した。
【0185】
(3)基材(Y)の作製
製造例1で得たアクリルウレタン系樹脂の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)6.3質量部(固形分比)、触媒として、ジオクチルスズビス(2-エチルヘキサノエート)1.4質量部(固形分比)、及び上記熱膨張性粒子(i)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)30質量%の樹脂組成物を調製した。
なお、得られた樹脂組成物中の有効成分の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
そして、非膨張性基材である、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」、プローブタック値:0mN/5mmφ)の表面上に、当該樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの膨張性基材層(Y1)を形成した。
ここで、上記PETフィルムは、非膨張性基材層(Y2)に相当する。
【0186】
なお、膨張性基材層(Y1)の物性値を測定するサンプルとして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面に、当該樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの膨張性基材層(Y1)を同様に形成した。
そして、上述の測定方法に基づき、膨張性基材層(Y1)の各温度における貯蔵弾性率及びプローブタック値を測定した。当該測定結果は、以下のとおりであった。
・23℃における貯蔵弾性率E’(23)=2.0×10Pa
・208℃における貯蔵弾性率E’(208)=5.0×10Pa
・プローブタック値=0mN/5mmφ
また、上記PETフィルム、すなわち、非膨張性基材層(Y2)の各温度における貯蔵弾性率及びプローブタック値を測定した。当該測定結果は、以下のとおりであった。
・23℃における貯蔵弾性率E’(23)=1.0×10MPa
・208℃における貯蔵弾性率E’(208)=0.8×10MPa
・プローブタック値=0mN/5mmφ
【0187】
(4)各層の積層
上記(1-3)で作製した基材(Y1)の非膨張性基材層(Y2)と、上記(2)で形成した第2粘着剤層(X2)とを貼り合わせると共に、熱膨張性基材層(Y1)と、上記(1)で形成した第1粘着剤層(X1)とを貼り合せた。
そして、重剥離フィルム/第1粘着剤層(X1)/膨張性基材層(Y1)/非膨張性基材層(Y2)/第2粘着剤層(X2)/軽剥離フィルムをこの順で積層してなる、粘着シートを作製した。
【0188】
なお、作製した粘着シートについて、上述の方法に基づき、剥離力(F)及び(F)を以下の方法に準拠して測定した。
その結果、剥離力(F)=0.23N/25mm、剥離力(F)=0mN/25mmとなり、剥離力(F)と剥離力(F)との比〔(F)/(F)〕は0であった。
【0189】
<剥離力(F)の測定>
作製した粘着シートを23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置した後、当該粘着シートが有する重剥離フィルムを除去し、表出した第1粘着剤層(X1)を、シリコンウエハに貼付した。
次いで、粘着シートが貼付されたシリコンウエハの端部を、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン UTM-4-100」)の下部チャックへ固定し、上部チャックで粘着シートを固定した。
そして、上記と同じ環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引張速度300mm/分で、シリコンウエハと粘着シートの第1粘着剤層(X1)との界面Pで剥離した際に測定された剥離力を「剥離力(F)」とした。
【0190】
<剥離力(F)の測定>
作製した粘着シートが有する重剥離フィルムを除去し、表出した第1粘着剤層(X1)をシリコンウエハに貼付し、240℃で3分間加熱し、熱膨張性基材層(Y1)中の熱膨張性粒子を膨張させた。
その後は、上述の剥離力(F)の測定と同様にし、上記条件にて、シリコンウエハと粘着シートの第1粘着剤層(X1)との界面Pで剥離した際に測定された剥離力を「剥離力(F)」とした。
なお、剥離力(F)の測定において、万能引張試験機の上部チャックで、粘着シートを固定しようとした際、シリコンウエハから粘着シート(I)が完全に分離してしまい、固定ができない場合には、測定を終了し、その際の剥離力(F)は「0mN/25mm」とした。
【0191】
実施例1
<工程(1)>
製造例2で作製した粘着シートを230mm×230mmの正方形の大きさに裁断した。
バックグラインド用テープラミネーター(リンテック社製、装置名「RAD-3510F/12」)を用いて、裁断後の粘着シートの重剥離フィルムを剥離して、表出した第1粘着剤層(X1)の粘着表面を、硬質支持体(材質:シリコン、厚さ:725μm、ヤング率:30GPa)に貼付した。そして、さらに軽剥離フィルムも剥離して、表出した第2粘着剤層(X2)の粘着表面に、9個の半導体チップ(それぞれのチップの大きさは、縦6.4mm×横6.4×厚さ200μm(#2000)の直方体の形状)を、回路が形成された回路面が粘着表面に接触するように、一定の間隔を空けて載置した。
【0192】
<工程(2)>
9個の前記半導体チップと、当該半導体チップの少なくとも周辺部の第2粘着剤層(X2)の粘着表面とを、封止材である、熱硬化性の封止樹脂フィルムによって被覆し、真空加熱加圧ラミネーター(ROHM and HAAS社製の「7024HP5」)を用いて、封止樹脂フィルムを熱硬化させて、半導体チップを封止材で封止してなる硬化封止体を作製した。
封止条件は、下記のとおりである。
・予熱温度:テーブル及びダイアフラム共に100℃
・真空引き:60秒間
・ダイナミックプレスモード:30秒間
・スタティックプレスモード:10秒間
・封止温度:180℃×60分間
なお、上の封止樹脂フィルムでの被覆時に、半導体チップの位置ずれは確認されなかった。
【0193】
<工程(3)>
硬質支持体、粘着シート、及び硬化封止体を含む系内の温度を、熱膨張性粒子(i)の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃とし、同温度で3分間の加熱処理を行った。
加熱処理後、硬質支持体と第1粘着剤層(X1)との界面で一括して容易に分離することができた。この際、第2粘着剤層(X2)上の前記硬化封止体は積層したままであり、粘着シートを構成する各層の層間での分離は生じなかった。
そのため、粘着シートを分離した後の硬質支持体の表面は、第1粘着剤層(X1)の残存は確認されず、汚染は見られず、硬質支持体の表面に対しては、新たに洗浄工程を行う必要がないと考えられる。
また、得られた硬化封止体に封止された半導体チップについて、位置ずれは生じておらず、回路面には封止樹脂の付着は見られなかった。
さらに、硬質支持体から分離後の粘着シート付き硬化封止体について、粘着シートの最外層に位置する第1粘着剤層(X1)が脱落する等の弊害は見られず、製造環境内での汚染の発生は抑制されているといえる。
【符号の説明】
【0194】
1a、1b 粘着シート
(X1) 第1粘着剤層
(X2) 第2粘着剤層
(Y) 基材
(Y1) 膨張性基材層
(Y2) 非膨張性基材層
(Y2-1) 第1非膨張性基材層
(Y2-2) 第2非膨張性基材層
50 硬質支持体
60 封止対象物
61 露出表面
70 封止材
80 硬化封止体
図1
図2