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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】血液検査評価用のスマートアドバイザ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/72 20060101AFI20230424BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230424BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20230424BHJP
   G16H 10/40 20180101ALI20230424BHJP
【FI】
G01N33/72 A
G01N30/88 Q
G01N30/86 D
G01N30/86 E
G01N30/86 J
G16H10/40
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020527024
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018061688
(87)【国際公開番号】W WO2019099948
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/587,958
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フレイミニ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー ジュディス ボルスク
(72)【発明者】
【氏名】ジポール アナット アヴィダン
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第2619537(JP,B2)
【文献】特許第3131439(JP,B2)
【文献】特開平04-366762(JP,A)
【文献】特開平10-104217(JP,A)
【文献】特開平09-251016(JP,A)
【文献】特開平09-005312(JP,A)
【文献】米国特許第05719053(US,A)
【文献】国際公開第2017/032635(WO,A1)
【文献】特開昭56-063255(JP,A)
【文献】特開平04-130271(JP,A)
【文献】特開平02-297060(JP,A)
【文献】特開平09-196903(JP,A)
【文献】特公平07-097109(JP,B2)
【文献】特開平06-082432(JP,A)
【文献】特開平01-174965(JP,A)
【文献】Zuhair Mohammad Ali Jeddoa,Evaluation of (HPLC) Patterns of Sickle Cell Anaemia Patients in Comparison with Apparently Healthy Individuals,Kerbala J. Med.,2011年04月,Vol.4 No.9,Page.980-987
【文献】Stephen E. Reichenbacha,Smart Templates for peak pattern matching with comprehensive two-dimensional liquid chromatography,Journal of Chromatography A,2008年09月21日,Vol.1216,Page.3458-3466
【文献】A.V. Pirogov,Application of the pattern-recognition method for modelling expert estimation of chromatogram quality,Analytica Chimica Acta,1998年,Vol.369,Page.47-56
【文献】Stephen I. Fisher,Validation of an Automated HPLC Method for Quantification of Hemoglobin S,Clinical Chemistry,1997年,Vol.43 No.9,Page.1667-1669
【文献】D-100 System,Bio-Rad Laboratories, Inc.,2017年07月28日,https://info.bio-rad.com/d-100.html
【文献】D-100 Smart HPLC: Get More Done,Bio-Rad Diagnostics,2017年07月27日,https://www.youtube.com/watch?v=8FMIMAQ1YKo
【文献】D-100 Smart HPLC: Work Smarter,Bio-Rad Diagnostics,2017年07月28日,https://www.youtube.com/watch?v=aRLKUH6Xljw
【文献】D-100 Smart HPLC: Be Confident,Bio-Rad Diagnostics,2017年07月28日,https://www.youtube.com/watch?v=0tPj3bXMS_M
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/72
G01N 30/88
G01N 30/86
G16H 10/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検査データから向上版レポート(enhanced report)を生成するための方法であって、以下の段階:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、該複数のピークの各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピークのうちの少なくとも1つを異常ピークとして同定する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピーク内で、第1の医学的状態を示す仮定的パターンを同定する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言であって、該第1の医学的状態を第2の医学的状態と区別するのを補助する追加的検査についての提案を含む助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含む、方法。
【請求項2】
血液検査データの品質の現れを決定するために不正確な結果である見込みが高いことを示す解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために、先に適用された規則によって追加されたコメントおよびフラグを考慮した、全体的な解析を提供する結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的な互いに混同される類似のパターンを伴う状態、追加的検査の推奨、または、対応する医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
効率的な解析を補助するために複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和(special sum)を、血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、方法が、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、仮定的パターンと混同されうる類似のパターンに関する追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数のプロセッサと;
実行された時に、
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピークのうちの少なくとも1つを異常ピークとして同定する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピーク内で、第1の医学的状態を示す仮定的パターンを同定する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言であって、該第1の医学的状態を第2の医学的状態と区別するのを補助する追加的検査についての提案を含む助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含むオペレーションを該1つまたは複数のプロセッサに行わせるコンピュータプログラムコードを保存している、コンピュータ可読媒体と
を具備する、血液検査データから向上版レポートを生成するためのコンピュータ式システム。
【請求項9】
オペレーションが、血液検査データの品質の現れを決定するために不正確な結果である見込みが高いことを示す解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
オペレーションが、向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために、先に適用された規則によって追加されたコメントおよびフラグを考慮した、全体的な解析を提供する結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的な互いに混同される類似のパターンを伴う状態、追加的検査の推奨、または、対応する医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
オペレーションが、効率的な解析を補助するために複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和を血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、請求項8記載のシステム。
【請求項13】
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、オペレーションが、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、仮定的パターンと混同されうる類似のパターンに関する追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、請求項8記載のシステム。
【請求項15】
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピークうちの少なくとも1つを異常ピークとして同定する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを該血液検査クロマトグラフィデータに適用することによって、該複数のピーク内で、第1の医学的状態を示す仮定的パターンを同定する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言であって、該第1の医学的状態を第2の医学的状態と区別するのを補助する追加的検査についての提案を含む助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含むオペレーションを行うためにプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム命令を保存している、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
オペレーションが、血液検査データの品質の現れを決定するために不正確な結果である見込みが高いことを示す解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項15記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
オペレーションが、向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために、先に適用された規則によって追加されたコメントおよびフラグを考慮した、全体的な解析を提供する結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、請求項15記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的な互いに混同される類似のパターンを伴う状態、追加的検査の推奨、または、対応する医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、請求項15記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
オペレーションが、効率的な解析を補助するために複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和を血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、請求項15記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、請求項19記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、オペレーションが、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、仮定的パターンと混同されうる類似のパターンに関する追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、請求項15記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により組み入れられる、2017年11月17日に提出された米国特許仮出願第62/587,958号の恩典を主張する。
【0002】
1. 技術分野
本明細書に説明する内容は、概して診断検査データの解析に関し、特にコンピュータ支援による血液検査評価に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 背景情報
異常ヘモグロビン症は、個人の血液中のヘモグロビン分子が異例的な構造となる、遺伝的な障害である。例えば、鎌状赤血球症は、特定の状況下で赤血球が硬直的な鎌形となることがある、異常ヘモグロビン症によって引き起こされる。形状異常をきたしたこれらの赤血球は、毛細血管をふさいで血流を制限することがあり、それはさまざまな健康上の問題につながる。一方、サラセミアは、ヘモグロビン産生の低下(例えば重度の貧血)をもたらしうる遺伝的状態である。いくつかの異常ヘモグロビン症はヘモグロビン産生にも影響を及ぼし、ゆえにそれらはサラセミアでもある。
【0004】
血液中における特定のヘモグロビン変異体の存在、および異なる変異体の比率によって、さまざまな医学的状態が特性付けられる。血液検査は血液サンプル中の異なるヘモグロビン変異体の比率について情報を提供する。しかし、この情報の解釈は困難でありうる。特定の変異体の存在に対して、異なる状態が同様の影響を有する可能性がある。他の環境要因および健康上の要因が、存在する変異体の比率に影響を及ぼす可能性もあるので、解析はさらに複雑になる。例えば、ヘモグロビンFが異例的に大量であることは、遺伝性障害を示す可能性もあるし、サンプル採取時に個人が妊娠中または乳児であったことを示す可能性もある。さらに、ある変異体が比較的少量であること(または存在する変異体の量の変化)は、臨床的に重要である可能性もあるし、それよりはるかに大量に存在する変異体によって隠蔽されている可能性もある。
【0005】
血液検査データを解析するための従来のアプローチは、人間の解析者に大きく依存するが、解析者はエラーをする可能性があり、かつ、診断に至るために多大な時間とトレーニングとを必要とする。いくつかのシステムはコンピュータ式技術を用いて血液検査データを提示するが、そのデータは、人間のオペレータによる容易な解釈および診断の助けとはならない形式で提示される。ゆえに、そうしたシステムは依然として人的エラーをこうむりやすく、かつ、かなりの量のオペレータトレーニングを必要とする。
【発明の概要】
【0006】
詳細な説明
コンピュータ技術は、血液検査データを解析し、そして、サンプル中に観察されるヘモグロビン変異体レベルの異なる原因をより高い信頼性で区別する、新たな機会を提供する。前述のように、既存のシステムは人的エラーをこうむりやすく、かつ、人間のオペレータのトレーニングをかなり必要とする。これらおよび他の問題が、血液検査評価用のスマートアドバイザシステムによって対処される。
【0007】
概要および恩典
本発明のスマートアドバイザは、検査室の血液検査システムの一部として、サンプル中のさまざまなタイプのヘモグロビンの相対比率に基づき遺伝的状態を同定するために用いられる。スマートアドバイザは、サンプルから得られた結果と、可能な仮定的パターンのセットのうち1つとの間のマッチを決定するため、パイプライン中の一連の規則を適用する。仮定的パターンはそれぞれ特有の表現型に対応する。スマートアドバイザは、選択されたパターンおよび/または表現型を同定する向上版レポートを生成する。レポートはまた、仮定的パターンがそのサンプルに対する正しいマッチである見込み、ならびに、コメントおよび注記も含んでもよい。コメントおよび注記は、行われるべき追加的検査を提案する、一般的な診断ピットフォールを同定する、対応する状態についての追加的情報(例えば、診断に相関する人口統計学的要因)を提供する、および、生じうる生殖リスクを同定する、などしてもよい。
【0008】
規則の自動適用は複数の利点を有する。第一に、規則の自動適用は、結果の解釈を助けて、追加的なトレーニングの必要なく検査室がより標準的な結果を送達することを可能にする。事実、規則の自動適用は、検査技師が効率的に作業するために必要なトレーニングの量を減らす可能性がある。第二に、規則の自動適用は、結果を、オンラインで利用できる参照症例の大規模データベースと実質的にリアルタイムで比較することを可能にし、このことは、潜在的状態のより正確な予備的同定をもたらす可能性がある。第三に、規則パイプラインの使用は、解析の異なるステージにおいて、検査結果に生じうるエラーまたは干渉を自動的に検出することを可能にする。このことは、追加的または反復的な検査を自動的または半自動的にトリガして、最終的な結果の信頼性を高めることを可能にしうる。第四に、規則は、診断に至る次の段階についての提案をもたらしてもよく、それは、検査結果と可能な原因との間を人間によって接続することに対する依存を低減する可能性がある。いくつかの事例において、(例えば、次の段階に必要なデータがデータベース内ですでに利用可能であるならば)次の段階が自動的または半自動的にトリガされてもよく、それは検査プロセスを完了するための所要時間を短縮させる。つまり、本発明のスマートアドバイザは、既存のアプローチより効率的かつ/または正確でありうる、血液検査データを解析するためのユーザインターフェースを提供する。
[本発明1001]
血液検査データから向上版レポート(enhanced report)を生成するための方法であって、以下の段階:
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、該複数のピークの各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを適用する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを適用する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含む、方法。
[本発明1002]
血液検査データの品質の現れを決定するために解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的なピットフォール、追加的検査の推奨、または、医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和(special sum)を、血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、方法が、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
1つまたは複数のプロセッサと;
実行された時に、
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを適用する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを適用する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含むオペレーションを該1つまたは複数のプロセッサに行わせるコンピュータプログラムコードを保存している、コンピュータ可読媒体と
を具備する、血液検査データから向上版レポートを生成するためのコンピュータ式システム。
[本発明1009]
オペレーションが、血液検査データの品質の現れを決定するために解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1008のシステム。
[本発明1010]
オペレーションが、向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1008のシステム。
[本発明1011]
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的なピットフォール、追加的検査の推奨、または、医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、本発明1008のシステム。
[本発明1012]
オペレーションが、複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和を血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、本発明1008のシステム。
[本発明1013]
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、本発明1012のシステム。
[本発明1014]
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、オペレーションが、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、本発明1008のシステム。
[本発明1015]
患者の血液サンプルについての血液検査クロマトグラフィデータを受け取る段階であって、該データが複数のピークを含み、各ピークが、ヘモグロビンの1つのタイプに対応し、かつ、該血液サンプル中に存在する該対応するタイプのヘモグロビンの量を示す値を有する、段階;
該ピークのうち少なくとも1つを異常ピークとして同定するため、変異体同定規則のセットを適用する段階;
該異常ピークに基づいて同定される、医学的状態を示す仮定的パターンを同定するため、パターン規則のセットを適用する段階;
向上版レポートの解釈に関する助言を提供する少なくとも1つのコメントを含む向上版レポートを、該仮定的パターンに基づいて生成する段階;および
該向上版レポートを端末での表示用に提供する段階
を含むオペレーションを行うためにプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム命令を保存している、非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1016]
オペレーションが、血液検査データの品質の現れを決定するために解析品質規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1015の非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1017]
オペレーションが、向上版レポートの解釈に関する助言のうち少なくとも一部を決定するために結果評価規則のセットを適用する段階をさらに含む、本発明1015の非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1018]
向上版レポートの解釈に関する助言が、仮定的パターンに関連する一般的なピットフォール、追加的検査の推奨、または、医学的状態についての追加的情報のうち、少なくとも1つを含む、本発明1015の非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1019]
オペレーションが、複数のピークからのデータを組み合わせた特殊な和を血液検査クロマトグラフィデータから計算する段階をさらに含む、本発明1015の非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1020]
特殊な和が総ヘモグロビンA量であり、該特殊な和を計算する段階が、以下:
ヘモグロビンAの変異体に対応する複数のピークのサブセットを同定すること;
該サブセット内の各ピークについて、そのピークが異常として同定されたかを決定すること;および
異常として同定されなかった該サブセット内の各ピークの値を合計すること
を含む、本発明1019の非一時的なコンピュータ可読媒体。
[本発明1021]
向上版レポートが追加的検査の推奨を含み、オペレーションが、以下の段階:
患者についての全血球算定結果をデータベースに要求する段階;
該要求された全血球算定結果を受け取る段階;
該全血球算定結果に基づいて、仮定的パターンを洗練するため、追加的規則のセットを適用する段階;および
該洗練に基づいて該向上版レポートを更新する段階
をさらに含む、本発明1015の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】1つの態様に基づく、診断データが生成および解析されるネットワーク型コンピューティング環境を示したハイレベルブロック図である。
図2】1つの態様に基づく、図1のネットワーク型コンピューティング環境における使用に好適な検査室端末を示したハイレベルブロック図である。
図3】1つの態様に基づく、検査室端末のスマートアドバイザを示したハイレベルブロック図である。
図4】1つの態様に基づく、検査室端末としての使用に好適なコンピュータの例を示したハイレベルブロック図である。
図5】1つの態様に基づく、例示的なクロマトグラムを示した図である。
図6】1つの態様に基づく、クロマトグラフィ結果の特有の範囲を仮定的パターンに関連付ける例示的なパターン規則を示した表である。
図7】1つの態様に基づく、スマートアドバイザによって作成された例示的な向上版レポート(enhanced report)を示した図である。
図8】1つの態様に基づく、スマートアドバイザによって作成された第二の例示的な向上版レポートを示した図である。
図9A】1つの態様に基づく、スマートアドバイザを用いて向上版レポートを作成するための方法を示したフローチャートである。
図9B】1つの態様に基づく、スマートアドバイザを用いて向上版レポートを作成するための方法を示したフローチャートである。
図10】1つの態様に基づく、パターン規則のコメントを編集するためのオペレーションにおけるドリルを示したインタラクション図である。
図11】1つの態様に基づく、向上版レポートにおいて同定された仮定的パターンを洗練するため追加的検査データを自動的に取得する段階を含む、向上版レポートを生成するための方法を示したフローチャートである。
図12】鎌状赤血球S形質の保因者である個人についての例示的な血液検査データのデータセットをプロットした図である。
図13】βサラセミアを伴う鎌状赤血球を有する個人についての例示的な血液検査データのデータセットをプロットした図である。
図14】1つの態様に基づく、規則エディタ内の解析品質規則を示したスクリーンショットである。
図15】1つの態様に基づく、規則エディタ内の変異体同定規則を示したスクリーンショットである。
図16】1つの態様に基づく、規則エディタ内のパターン規則を示したスクリーンショットである。
図17】1つの態様に基づく、規則エディタ内の結果評価規則を示したスクリーンショットである。
【0010】
図面はさまざまな態様を例証の目的で描いたものにすぎない。当業者には、以下の記述から、本明細書に例証する構造および方法の代替的態様が、本明細書に説明する原理から逸脱することなく利用されうることが、容易に認識されるであろう。留意される点として、同様または類似の機能性を示すため、実際的な同様または類似の参照番号が図面において用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的なシステム
図1に、診断データが生成および解析されるネットワーク型コンピューティング環境100の1つの態様を示す。図1に示す態様において、ネットワーク型コンピューティング環境は、すべてネットワーク170を介して接続された、検査室情報システム(LIS)110と、検査室設備120と、検査室端末130とを含む。検査室設備120の2つのアイテムと2つの検査室端末130とが図示されているが、所与の配備は、任意の量の設備と(単一の端末のみを含めて)任意の数の端末とを含んでもよい。他の態様において、ネットワーク型コンピューティング環境100は、異なる要素および/または追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、説明されているのとは異なる様式で要素間に分布していてもよい。例えば、検査室設備120の各アイテムが、検査室端末130の機能性を提供するコンピュータシステムを含んでもよい。
【0012】
LIS 110は、検査室のオペレーションをサポートするコンピュータ式システムである。種々の態様において、LIS 110は、技師および他のユーザが検査室内で効率的に機能することを助けるツールを提供する。例えば、LIS 110は、データトラッキング自動バックアップ、データ交換、ワークフロー管理、サンプル管理、データ解析、データマイニング、器械管理、レポート生成、およびデータ監査などを提供してもよい。図1に示す態様において、LIS 110は医療データ112を保存する。医療データ112は、ハードドライブなど、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体上に保存される。医療データ112は、患者記録、検査結果、および医学文献などを含んでもよい。当業者には、LIS 110が提供しうる他の機能性、および、医療データ112の一部として保存されうる他のタイプのデータが認識されるであろう。
【0013】
検査室設備120は、医学検査を行う1つまたは複数のデバイスである。1つの態様において、検査室設備120は、サンプル中に存在するヘモグロビンの異なる変異体の相対比率を示すクロマトグラムを作成する、クロマトグラフィシステムを含む。そうしたシステムの1例はBio-Rad(商標)によるD-100(商標)である。検査室設備120はまた、DNA検査および尿検査など、他の検査を行うデバイスも含んでもよい。スマートアドバイザは、可能な表現型を同定することによって、例えば、鎌状化試験、安定性試験(イソプロパノール試験)、電気泳動試験、MS/MS、および分子検査など、サンプルの鑑別診断を補助するための一連の検査をトリガしてもよい。
【0014】
検査室端末130は、ユーザがLIS 110および検査室設備120とインタラクトするコンピューティングデバイスである。種々の態様において、技師は、スマートアドバイザを含む端末130を用いて、サンプルに対する検査を開始する。スマートアドバイザは、検査室端末130上にインストールされたソフトウェアであってもよく、または、端末上のインターフェースを介してアクセスされる遠隔ソフトウェア(例えば、サービスとしてのクラウド型ソフトウェア)であってもよい。端末130は、結果解析および提案を含む、スマートアドバイザによって生成されたレポートを提示する。1つの態様において、技師がレポートを承認し、そしてレポートは保存のためLIS 110に送られる。別の態様において、検査室の監督者が(例えば第二の端末130を用いて)レポートを承認しなければならない。端末130はまた、スマートアドバイザによって生成された推奨に基づいて、追加的な検査を行うため、および/または、以前に行われた検査の結果を提供するための命令を、(例えばLIS 110に)送ってもよい。端末130の諸態様、そして特にスマートアドバイザのオペレーションについて、図2および3を参照しながら以下により詳しく説明する。
【0015】
ネットワーク170は、ネットワーク型コンピューティング環境100の他の要素がそれを介して通信する通信チャネルを提供する。ネットワーク170は、有線および/または無線の通信システムの両方を用いた、ローカルエリアネットワークおよび/またはワイドエリアネットワークの任意の組み合わせを含んでもよい。1つの態様において、ネットワーク170は、標準的な通信技術および/またはプロトコルを用いる。例えば、ネットワーク170は、Ethernet、802.11、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)、3G、4G、5G、符号分割多重アクセス(CDMA)、デジタル加入者線(DSL)などの技術を用いた通信リンクを含んでもよい、ネットワーク170を介した通信に用いられるネットワーキングプロトコルの例には、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、ハイパーテキストトランスポートプロトコル(HTTP)、シンプルメールトランスファープロトコル(SMTP)、およびファイルトランスファープロトコル(FTP)などがある。ネットワーク170上で交換されるデータは、ハイパーテキストマークアップランゲージ(HTML)またはエクステンシブルマークアップランゲージ(XML)など、任意の好適なフォーマットを用いて表示されてもよい。1つの態様において、コンポーネントのいくつかまたは全部が、RS-232シリアル接続を用いて接続される。いくつかの態様において、ネットワーク170の通信リンクの全部またはいくつかが、任意の好適な技術を用いて暗号化される。
【0016】
図2に、図1のネットワーク型コンピューティング環境100における使用に好適な検査室端末130の1つの態様を示す。図2に示す態様において、検査室端末130は、結果プロバイダ210と、ディスプレイサブシステム220と、ユーザ入力サブシステム230と、スマートアドバイザ240と、規則編集モジュール250と、ローカルストレージ260とを含む。他の態様において、検査室端末130は、異なる要素および/または追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、説明されているのとは異なる様式で要素間に分布していてもよい。例えば、1つの態様において、スマートアドバイザ240によって用いられる規則はプリプログラムされており、規則編集モジュール250は省略される。
【0017】
結果プロバイダモジュール210は、医療データを取得するため、検査室設備120とインターフェースする。1つの態様において、医療データは、結果プロバイダモジュール210がクロマトグラムを作るために用いる、血液のクロマトグラフィデータである。代替的に、クロマトグラムは、検査室設備120(またはネットワーク型コンピューティング環境100中の他の場所)によって生成されてもよく、そして結果プロバイダモジュール210に対する入力として提供されてもよい。図5に、1つの態様に基づくクロマトグラム500の例を示す。クロマトグラム500は、データの視覚的表象510とデータ表520とを含む。視覚的表象510は、複数のピーク512(明瞭さのため、そのうち2つのみにラベルを付している)を含む、経時的な検出器反応のプロットを含む。データ表520は、ヘモグロビンの異なる変異体(例えば、A1a、A1b、Fなど)に対応すると予測されるさまざまなウィンドウにおける保持時間(すなわち、ピーク512について最も強い検出器反応が観察された時間)を同定する。データ表520はまた、各ピーク512の面積(これはサンプル中に存在する所与の変異体の総量に対応する)、および、各ピークによって表示される全結果のパーセンテージも含む。
【0018】
図2に戻ると、ディスプレイサブシステム220は、情報およびコントロールをユーザ(例えば検査室の科学者)に提示する。1つの態様において、ディスプレイサブシステム220は、検査室設備120による検査を技師が開始するためのコントロールを提供する。ディスプレイサブシステム220は次に、オペレータが(例えばスマートアドバイザ240を用いて)検査の結果を閲覧および解析することを可能にする、コントロールを提供する。ディスプレイサブシステム220はまた、患者記録を閲覧する、検査室設備120を確認する、および、状態/メンテナンスデータを閲覧するなど、他の機能性も提供してもよい。
【0019】
ユーザ入力サブシステム230は、ユーザ(例えば検査室の科学者または監督者)からの入力を受け取り、そしてそれを端末130の他の要素に提供する。1つの態様において、ユーザ入力サブシステム230はタッチスクリーンを含む。タッチスクリーン上にコントロールが提示されて、ユーザが検査室設備120を制御することおよび/またはスマートアドバイザ240とインタラクトすることを可能にする。ユーザ入力サブシステム230によって提供されるユーザインターフェースの諸態様について、図3、8~10、および14~17を参照しながらさらに詳しく後述する。
【0020】
スマートアドバイザ240は、レポートを生成するため、結果プロバイダモジュール210によって提供されるデータを解析する。種々の態様において、スマートアドバイザ240は、特有の医学的状態にデータを仮マッチさせるため、カスタム化可能な規則のセットを適用する。スマートアドバイザ240は次に、仮マッチを同定しかつ結果の解釈に関するコメントを含む、レポートを生成する。レポートは、仮マッチが正しいという見込み、および/または、確定診断を可能にするさらなる検査の推奨を、追加的に含んでもよい。例えば、被験者が遺伝性血液疾患の保因者でありうることを結果が示唆する場合、被験者が子供を持つことを検討しているのであれば、検証のためのDNA検査をスマートアドバイザ240が推奨する可能性もある。1つの態様において、スマートアドバイザ240は、必要なデータおよび/または設備が利用可能ならばさらなる解析を自動的にトリガしてもよく、そしてそれに従ってレポートを更新してもよい。スマートアドバイザ240のさまざまな態様の詳細は、図3を参照しながらさらに詳しく後述する。
【0021】
規則編集モジュール250は、スマートアドバイザ240によって用いられる規則を、権限付与されたユーザ(例えばシステムアドミニストレータ)がそれを介して修正できる、ユーザインターフェースを提供する。1つの態様において、規則は、入力、入力と1つまたは複数の既定の状態との比較、および、比較の結果に基づく出力を定義する。入力は、結果プロバイダモジュール210によって提供されるデータから直接取得されるか、または他の規則の出力かのいずれかである、1つまたは複数の変数であってもよい。比較は、それによって入力が既定の状態と比較されるべきである、1つまたは複数の方式を示す。これには、入力変数が、既定の値にマッチするかどうか、閾値より大きいかどうか、閾値より小さいかどうか、および、指定された範囲内に入るかどうか、などを決定する段階が含まれる。出力には、比較の結果に関する情報が含まれる。多くの形式の出力が可能であり、それには、検査結果の信頼性が低い可能性があるとフラグ付けすることから、1つまたは複数のピークが正常な値の範囲外であると示すこと、被験者が特定の状態を有することをサンプルが示していると予備的に結論すること、そして、得られたレポートに追加的検査に関するコメントを追加することまで、幅広い形式が含まれる。
【0022】
ある規則に対する入力は、別の規則の出力であってもよいので、詳しい解析を行うため規則が連鎖していてもよい。1つの態様において、検査室端末130は、ユーザの特有のニーズと、検査室設備120から利用可能である特有のデータとに応じて、ユーザが修正および拡張できる、デフォルトの規則でプリプログラムされている。以下の記述において規則のいくつかの例を同定する。当業者には、同定された規則に基づき、使用されうる他の規則も認識されるであろう。
【0023】
図3に、図2に示した検査室端末120のスマートアドバイザ240の1つの態様を示す。図3に示す態様において、スマートアドバイザ240は、解析品質モジュール310と、変異体同定モジュール320と、パターン比較モジュール330と、結果評価モジュール340とを含む。他の態様において、スマートアドバイザ240は、異なる要素および/または追加的な要素を含有する。加えて、諸機能が、説明されているのとは異なる様式で要素間に分布していてもよい。
【0024】
解析品質モジュール310は解析品質規則を適用する。1つの態様において、品質解析規則は、不正確な結果である見込みが高いことを示す可能性がある、データ中の特徴についてチェックする。例えば、1つのそうした規則は、クロマトグラムについての総面積を最小面積の閾値と比較してもよく、そして、総面積が閾値より小さいならば検査データを低品質としてフラグ付けしてもよい。検査データが低品質データとしてフラグ付けされたならば、解析品質モジュール310は、解析を終了してもよく、そして新たな検査が行われるべきであることを示してもよい。このことは、時間および資源が、信頼できないデータのさらなる解析に浪費されることを防ぐ。そうした事例において、解析品質モジュール310は、サンプルの再検査を自動的にトリガしてもよい。別の解析品質規則は、公知のピーク(例えばA1cまたはA2ピーク)の幅を見てもよく、そして、その幅が予測される幅閾値を超えているならば警告コメントを追加してもよい。他の例として、不均一なベースラインおよび非対称性の高いピーク(例えばピークのテーリング)についてチェックする規則などがある。いくつかの態様において、品質解析規則はまた、専門の解析を要する可能性がある、異例的な結果パターンを同定するためにも用いられてもよい。例えば、クロマトグラムがA0ピークを含まないならば、これは、検査データが信頼できないことを示す可能性があり、または、被験者がホモ接合体もしくは二重ヘテロ接合体であることを示す可能性がある。他のすべてのピークが予測範囲内であるならば、解析品質モジュール310は、潜在的なシステム機能不全の注意喚起を提供する。対照的に、別のピーク(例えば総面積の60%より大きい)または他の2つのピーク(例えば、いずれも総面積の25%より大きい)が検出されたならば、スマートアドバイザ240は、それぞれホモ接合または二重ヘテロ接合の状態を示唆する注記および/またはコメントを追加してもよい。
【0025】
図6は、1つの態様に基づく、いくつかの例示的なパターンを示した表である。仮定的パターンは、特定の状態に対応するピークの存在(または不存在)およびサイズに関する、規則のセットである。血液検査データ中のピークがそのパターンにマッチするならば、それは、その血液が、対応する状態を伴う個人に由来する可能性があることを示す。例えば、第一行目610は、HbAの量が(正常範囲に対して)やや低下し、かつHbSの量が中程度(例えば約40%)であることを、クロマトグラフィの結果が示すならば、仮定的パターンASが選択されることを示している。第二行目620は、大部分がHbSであり、併せて、HbFが(最大10%まで)上昇しかつHbAがない場合は、仮定的パターンSSに対応することを示す。第三行目~第七行目630、640、650、660、および670は、それぞれ仮定的パターンAH、FF、AA2、HPFH、およびAAに対応する条件を提供する。他の態様において、観察されるクロマトグラフィ結果を仮定的パターンに対してマッピングするため、追加的または異なる規則が用いられる。さらに、前述したように、いくつかの態様において、権限付与されたユーザによってパターン規則が修正または追加されてもよい;これにより、スマートアドバイザ240は、利用可能な最新の情報(例えば、以前は不明であった状態または相関など、学術文献において発表された新たな発見など)を反映するよう容易にアップグレード可能となる。
【0026】
図3に戻ると、変異体同定モジュール320は、各ピークを正常か異例かに分類し、かつ変異体に対応するピークを同定するため、変異体同定規則を入力データ(解析品質モジュール310によって追加された注記またはコメントを含む)に適用する。1つの態様において、各ピークは、「異例ピーク」フラグおよび「変異体ピーク」フラグという1対のフラグを有する。すべての変異体ピークは異例ピークでもあるが、その逆は真ではない。異例ピークは、予測されない位置に出現するかまたは予測されない面積を有するピークである(例えば、ヘモグロビンFのピークが、健康な成人について予測されるより高いならば、異例ピークのフラグが設定される)。変異体ピークのフラグは、ピークが、ヘモグロビン変異体に対応する可能性が高いことを示す。例えば、1つの変異体同定規則が、不明ピークの閾値を上回る面積を備えた不明ピークが、変異体としてラベル付けされることを言明してもよい。ピークが変異体としてラベル付けされるサイズは、そのピークが出現するウィンドウに依存しうる。例えば、S-ウィンドウまたはC-ウィンドウにおける小さなピークが変異体としてラベル付けされる可能性がある。加えて、予測されるピークのサイズのわずかな増大または減少もまた、異例としてラベル付けされる可能性がある(例えば、妊娠女性におけるHbF上昇、血液悪性疾患によるHbF上昇、鉄欠乏性貧血によるHbA2レベル低下、および、HIV治療または甲状腺機能亢進によるHbA2上昇など)。変異体同定モジュール320はまた、もともとのラベルが不正確であることを示す規則に基づいて、1つまたは複数のピークを再ラベル付けしてもよい。
【0027】
パターン比較モジュール330は、変異体同定モジュール320によってラベル付けされたように、入力データにパターン規則を適用する。パターン比較モジュール330はまた、効率的な解析を補助するため、1つまたは複数のピークからのデータを組み合わせる特殊な和(special sum)も計算してもよい。例えば、先に変異体としてラベル付けされたピークを省いて、関係するすべてのピーク(例えばA1a、A1b、P3、LA1c、A1c、およびA0)を組み合わせることによって、総ヘモグロビンAパーセンテージ(HbA)が計算されてもよい。他の例として、アセチル化HbFおよび「レギュラー」HbFのピークを加算することによって、より正確な総ヘモグロビンF(HbF)値が得られてもよい;また、共遺伝したベータサラセミアを見逃すリスクを低減するため、HbA2と変異体HbA2'とが加算されてもよい。
【0028】
1つの態様において、各パターン規則は、入力データにマッチする、対応する予備的パターンを同定するため、1つまたは複数のピークの面積を検討する。パターン規則の条件が満たされると、その規則がトリガされ、そしてパターン比較モジュール330は、関連する予備的パターンのインジケータをデータに追加する。パターン比較モジュール330はまた、1つまたは複数のコメントも追加してもよい。例えば、コメントは、その予備的パターンに関連付けられた潜在的な診断ピットフォール(例えば、しばしば互いに混同される類似のパターンを伴う状態)を同定してもよく;対応する状態に関する科学文献からの引用および/もしくはそうした文献へのリンクを含んでもよく;診断に至ることを助けるさらなる検査(例えば、類似のパターンを伴う2つまたはそれ以上の状態を区別するフォローアップ検査)を提案してもよく;かつ/または、考慮されるべき他の要因(例えば被験者の民族性)を同定してもよい。
【0029】
結果評価モジュール340は、パターン比較モジュール330からの出力を受け取り、そして結果評価規則を適用する。結果評価規則は、先に適用された規則によって追加されたコメントおよびフラグを考慮した、全体的な解析を提供する。例えば、ベータサラセミアについて検査している時、生成されるレポートは、HbA1cの結果を含んでもよく、併せて、ヘモグロビンパターンについての情報、そして関連するコメントおよび注記も含んでもよい。このことは、赤血球寿命を変化させうる異常ヘモグロビン症の存在下において、糖尿病コントロールのより完全な評価を可能にしうる。追加されたコメントは、検査室の科学者に注意喚起してもよく、そして結果の解釈において臨床医を助けてもよい。
【0030】
1つの態様において、結果評価モジュール340は、(例えば、結果が信頼できないことを解析が示唆しているならば)検査結果が抑制されるべきである、および/または反復されるべきであることを示すフラグを設定してもよい。結果評価モジュール340はまた、特有のヘモグロビン変異体の存在など、検査結果の特徴に関する追加的コメントも追加してもよい。他の規則セットの適用後に結果評価規則を適用することは、他にもあるがとりわけ、保持時間および範囲パーセンテージなどに基づくパターンの同定を可能にする。そうした適用はまた、公知の変異体の検出、ならびに/または、各パターンへのコメントおよび注記の追加に基づいて、変異体同定をカスタム化することも可能にしうる。
【0031】
図7に、1つの態様に基づく、スマートアドバイザ240によって生成された例示的な向上版レポート700を示す。向上版レポート700は、クロマトグラムを、血液学的データ(例えば全血球算定の結果)、民族性、妊娠、生殖状態(年齢、検査を受けたパートナーなど)といった、LIS 110から収集された情報と統合する;それらはすべて、症例のより完全な評価に寄与する。図7に示す態様において、向上版レポート700は、クロマトグラム500に含まれていたデータ表520および対応する視覚的表象510を含む。加えて、向上版レポートは、検査情報710、計算されたいくつかの特殊な和720、1つまたは複数の注記730、1つまたは複数のコメント740、および、スマートアドバイザ240によって選択された予備的パターン750を含む。1つの態様において、スマートアドバイザ240によって生成されたコメントは、(例えば端末130において)検査室の監督者に提示され、そして、検査室の監督者がそれらを承認した場合にのみ向上版レポート700上に含まれる。他の態様において、向上版レポート700は、異なるおよび/または追加的な情報を含む。
【0032】
検査情報710は、(例えば患者IDにより)被験者を同定し、そして、担当医、人口統計学的データ、および検査日時など、他の関連情報を提供する。計算された特殊な和720は、パターン比較モジュール330によって計算された値である。注記730およびコメント740のセクションは、スマートアドバイザ240による規則によって追加された注釈を表示する。前述のように、予備的パターン750は、規則の適用に基づいてスマートアドバイザ240によって選択される。
【0033】
図8に、1つの態様に基づく、スマートアドバイザ240により生成されそして端末130上に表示された向上版レポート800の例を示す。向上版レポート800は、図7に示した向上版レポート700と同様に、検査情報710とデータの視覚的表象510とを含む。図8の向上版レポート800はまた、結果サマリー810、血液学的情報820、解釈情報830、および、さらなる詳細をリクエストするためのボタン840も含む。
【0034】
結果サマリー810は、サンプル中に存在したさまざまなヘモグロビン変異体のパーセンテージを含む。これは、図7の向上版レポート700に含まれていたデータほどには詳しくないビューであり、ゆえに解釈がより容易または迅速になる可能性がある。留意されたい点として、結果サマリー810は、変異体同定規則によって再命名されたピークに対する名称変更を反映してもよく、かつ/または、スマートアドバイザ240によって計算された特殊な和(例えば総HbA)を含んでもよい。換言すると、サマリー810は、レポート800が示すものを解釈するうえでユーザを補助するための簡便な概要を提供する。血液学的情報820は、赤血球数および平均血球体積など、血液サンプルについてのさまざまなデータを含む。解釈情報830は、スマートアドバイザ240によって選択された予備的パターン、ならびに、注記730およびコメント740を含む。さらなる詳細ボタン840をユーザが選択すると、端末130がその検査についての追加情報を表示する。例えば、追加情報には、構成の詳細、監査追跡情報、用いられた特有の規則、および品質測定法などが含まれうる。
【0035】
コンピューティングシステムアーキテクチャ
図4に、1つの態様に基づく、検査室端末120またはLIS 110としての使用に好適である例示的なコンピュータ400を示す。例示的なコンピュータ400は、チップセット404に連結された少なくとも1つのプロセッサ402を含む。チップセット404は、メモリコントローラハブ420および入力/出力(I/O)コントローラハブ422を含む。メモリ406およびグラフィックアダプタ412がメモリコントローラハブ420に連結され、かつディスプレイ418がグラフィックアダプタ412に連結される。ストレージデバイス408、キーボード410、ポインティングデバイス414、およびネットワークアダプタ416がI/Oコントローラハブ422に連結される。コンピュータ400の他の態様は異なるアーキテクチャを有する。
【0036】
図4に示す態様において、ストレージデバイス408は、ハードドライブ、コンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD、または固体メモリデバイスなど、非一時的なコンピュータ可読保存媒体である。メモリ406は、プロセッサ402によって用いられる命令およびデータを保持する。ポインティングデバイス414は、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、または他のタイプのポインティングデバイスであり、そして、コンピュータシステム400にデータを入力するためキーボード410(オンスクリーンキーボードであってもよい)と組み合わせて用いられる。グラフィックアダプタ412は画像および他の情報をディスプレイ418上に表示する。ネットワークアダプタ416は、コンピュータシステム400を1つまたは複数のコンピュータネットワークに連結する。
【0037】
図1~3のエンティティによって用いられるコンピュータのタイプは、態様と、そのエンティティが要求する処理パワーとによって、異なりうる。例えば、LIS 110が、本明細書に説明する機能性を提供するため、一緒に作動する複数のブレードサーバを含む分散データベースを含んでもよい。さらに、コンピュータは、キーボード510、グラフィックアダプタ512、およびディスプレイ518など、上述のコンポーネントのいくつかを欠いていてもよい。
【0038】
例示的方法
図9Aおよび9Bに、1つの態様に基づく、向上版レポート(例えばスマートレポート700)を作成するための方法を示す。図9Aおよび9Bの諸段階は、同方法を行っているスマートアドバイザ240の視点から示されている。しかし、段階のいくつかまたは全部が他のエンティティまたはコンポーネントによって行われてもよい。加えて、いくつかの態様において、諸段階が並列で行われるか、諸段階が異なる順序で行われるか、または異なる段階が行われてもよい。
【0039】
図示の態様において、方法は、スマートアドバイザ240が内部規則セットを実行することから始まる。内部規則セットの結果として、スマートアドバイザ240が、データセットに注記、コメント、および/またはフラグを追加してもよい。内部規則はまた、スマートアドバイザに、結果を抑制すること、検査室設備120がそのサンプルに対して検査を反復すべきであると命令すること、そのサンプルの処理を停止すること、および/または、そのサンプルをVHTAまたはVHA1cサンプルとして扱うことを、させてもよい。
【0040】
解析を続けるべきであることを内部規則セットが示したならば、スマートアドバイザ240は、現在の方法のタイプが、起動したスマートアドバイザを有するかをチェックする。そうであると仮定すると、スマートアドバイザは、現在の方法および言語に対するユーザ規則セットを(例えばローカルストレージ260から)ロードする。スマートアドバイザ240は次に、(ユーザ規則内の)解析品質規則のセットに対する入力をデータセットから準備する;入力は、内部規則によって追加された注記およびコメントを含む。スマートアドバイザ240は次に、注記、コメント、およびフラグを適宜追加しながら、かつ、必要ならば結果を抑制することまたはサンプルの検査を反復することを命令しながら、解析品質規則を適用する。解析品質規則セットが空である(すなわち、現在の方法に対してそうした規則が存在しない)ならば、スマートアドバイザは、変異体同定規則の適用に進む。
【0041】
解析を終了するべきであることが解析品質規則の適用によって示されたのでない限り、スマートアドバイザ240は、変異体同定規則のセットに対する入力を準備し、そして同規則を適用する。前述したように、これらの規則はデータセット中のピークを同定し、そして、規則が示すところに従って、正常/異例フラグと、変異体フラグとを設定する。変異体同定規則はまた、特定のピークを名称変更してもよい。
【0042】
スマートアドバイザ240は、変異体同定規則によって設定されたフラグも含めたデータセットを用いて、その方法について定義された特殊な和を計算する。スマートアドバイザ240は次に、パターン規則のセットに対する入力を準備し、そして同規則を適用する。前述したように、これらの規則は、データセットにマッチする仮定的パターンを同定する。これらの規則はまた、フラグ、パターン注記、およびパターンコメントをデータセットに追加してもよい。
【0043】
スマートアドバイザ240はまた、結果評価規則のセットに対する入力を準備し、そして同規則を適用する。これらの規則は、追加的な注記、コメント、およびフラグをデータセットに追加してもよく、かつ、結果を抑制することまたはサンプルの検査を反復することを命令してもよい。
【0044】
規則連鎖の終端に達したか、または、(例えば検査結果が信頼できないことにより)解析を早期に終えるべきであることを規則セットの1つが示したからかにかかわらず、スマートアドバイザ240の解析がどこであれ終わった時点で、結果がLIS 110に対してリリースされ、かつ端末130上のユーザインターフェースを介してユーザに通知がなされる。留意されたい点として、結果を抑制するべきであることを規則セットの1つが決定したならば、その結果はLIS 110に対してリリースされない可能性もある。
【0045】
図10は、1つの態様に基づく、パターン規則のコメントを編集するためのオペレーションにおけるドリルを示したインタラクション図である。図10に示す態様において、ユーザが、(例えば端末130上の)ユーザインターフェースを用いて、患者サンプルのドリルインを入力し、そしてパターンコメントエディタ(例えばパターン規則のポップアップ)を開く。ユーザインターフェースは、現在のサンプルに対するパターン規則出力を結果プロバイダに要求し、結果プロバイダは、出力をサマリー表とともにデータベースから取り出す。要求されたパターン規則出力とサマリー表とがユーザインターフェースに提供され、ユーザインターフェースはそれらをユーザに提示する。ユーザは、パターンコメントに対する編集を入力し、そしてそれらをユーザインターフェースから(例えばセーブボタンを押すことによって)提出する。ユーザインターフェースは更新されたコメントを結果プロバイダに送り、結果プロバイダはデータベース内に保存されたコメントを更新する。他の態様において、パターンコメントを編集する他の方法が提供される。
【0046】
図11は、1つの態様に基づく、向上版レポートにおいて同定された仮定的パターンを洗練するため追加的検査データを自動的に取得する段階を含む、向上版レポートを生成するための方法を示したフローチャートである。図11の諸段階は、例えばパターン洗練モジュール(図には示していない)などで、同方法を行っているスマートアドバイザ240の視点から示されている。しかし、段階のいくつかまたは全部が他のエンティティまたはコンポーネントによって行われてもよい。加えて、いくつかの態様において、諸段階が並列で行われるか、諸段階が異なる順序で行われるか、または異なる段階が行われてもよい。
【0047】
図11に示す態様において、方法は、追加的検査についての提案と仮定的パターンとを含む、患者についてのサンプル結果を、スマートアドバイザ240が受け取る1110ことから始まる。例えば、サンプル結果は、図9Aおよび9Bを参照しながら上述した方法を用いて、スマートアドバイザ240によって生成されたものであってもよい。
【0048】
スマートアドバイザ1120は、患者についての全血球算定結果をLIS 110に要求する1120。それに応じて、LIS 110は要求された結果を返し、それは次にスマートアドバイザ240によって受け取られる1130(要求された結果が利用可能であると仮定している)。スマートアドバイザ240は、仮定的パターンを洗練するため、受け取った全血球算定結果を用いて、追加的規則を適用する1140。スマートアドバイザは次に、追加的規則の適用に基づき、追加的情報を向上版レポートに追加する1150。例えば、仮定的パターンが(仮定的パターンと混同されうる類似のパターンではなく)正しいことが全血球算定結果によって確認されたならば、その仮定的パターンが確認済みとしてマークされてもよい。別の例として、全血球算定結果に基づく解析がなお不確定であるならば、別の種類の検査(例えば血縁者のDNA検査)を提案するコメントが追加されてもよい。当業者には、全血球算定結果に基づきレポートに追加されうるさまざまなコメントおよび注記が認識されるであろう。
【0049】
例示的な結果およびインターフェース
図12は、鎌状赤血球S形質の保因者(「AS保因者」)である個人についての例示的な血液検査データをプロットした図である。AS保因者についての血液検査データは、50%超のHbAピークと約35%のHbSピークとを有するとして特性付けされうる。ゆえに、1つの態様において、スマートアドバイザ規則は、血液検査データが50%超のHbAピークと約35%(例えば30~40%、32~38%、34~36%など)のHbSピークとを含むならば、その個人がAS保因者であるという可能性が、その状態についての情報、提案されるフォローアップ検査、および、追加的情報を伴う文献へのリンクとともに、結果としてもたらされるスマートレポートに追加される、ということを言明してもよい。
【0050】
図13は、βサラセミアを伴う鎌状赤血球を有する個人についての例示的な血液検査データのデータセットをプロットした図である。そうした個人についての血液検査データは、約0%(すなわち、非常に小さいピークまたはピークが全くない)のHbAピークと約85%のHbSピークとを有するとして特性付けされうる。ゆえに、1つの態様において、スマートアドバイザ規則は、血液検査データが約0%(例えば5%未満、2%未満、1%未満など)のHbAピークと約85%(例えば80~90%、82~88%、84~86%など)のHbSピークとを含むならば、その個人がβサラセミアを伴う鎌状赤血球を有するという可能性が、その状態についての情報、提案されるフォローアップ検査、および、追加的情報を伴う文献へのリンクとともに、結果としてもたらされるスマートレポートに追加される、ということを言明してもよい。
【0051】
図14は、1つの態様に基づく、規則エディタ内の解析品質規則を示したスクリーンショットである。解析品質規則は、血液サンプルから取得された結果の品質の現れを提供する。例えば、結果についての総面積が小さすぎまたは大きすぎるならば、このことは、検査サンプル中の血液の量が少なすぎまたは多すぎのいずれかであったことを示す可能性がある。ゆえに、テストのやり直しの推奨などの警告が、何がその問題を引き起こした可能性があるかという提案とともに、生成されるレポートに追加されてもよい。いくつかの態様において、解析品質規則は、サンプルの自動的な再検査をトリガしてもよい。
【0052】
図15は、1つの態様に基づく、規則エディタ内の変異体同定規則を示したスクリーンショットである。変異体同定規則は、典型的なピークと異なるピーク、および、異例的な位置にあるピーク(例えば不明ピーク)などのピークを同定する。例えば、図示する第一の変異体同定規則によって、6.00秒~6.10秒の範囲内で面積が1.5%~3.0%である不明ピークは、「速い異例(fast unusual)」ピークとしてラベル付けされる。同様に、第二の規則によって、6.00秒~6.10秒の範囲内で面積が3.0%に等しいかまたはそれより大きい不明ピークは、「速い変異体(fast variant)」ピークとしてラベル付けされる。これらの規則はまた、そうしたピークが、異例としてのみフラグ付けされるべきか、または、異例および変異体の両方としてフラグ付けされるべきかも、決定してもよい。例えば、第一の規則が、速い異例ピークを、異例であるが変異体ではないとラベル付けし、一方で、第二の規則が、速い変異体ピークを、異例および変異体の両方としてラベル付けする。
【0053】
図16は、1つの態様に基づく、規則エディタ内のパターン規則を示したスクリーンショットである。パターン規則は、判定基準を定義し、そして、定義された判定基準が満たされたならば、(ある状態に対応する)パターンを結果に割り当てる。例えば、図示する第一のパターン規則によって、A0ピーク面積が50%より大きくかつピーク-Sウィンドウの面積が20%より小さい血液検査結果は、HV/HAS/SH-HHパターンでラベル付けされる。パターン規則はまた、向上版レポートに追加される、パターンに関するコメントおよび/または注記も定義してもよい。例えば、図示する第一の規則は、そのパターンが選択されることにつながった、検出されたピークと、それらピークをもたらした可能性がある状態とについて、概説した注記を含む。図示する第一の規則はまた、正確な診断を助けるために行われるべきさらなる検査を推奨する、コメントも含んでもよい。
【0054】
図17は、1つの態様に基づく、規則エディタ内の結果評価規則を示したスクリーンショットである。結果評価規則は、それまでに適用された規則のいくつかまたは全部によって追加されたラベルを組み込んでもよい、追加的な解析を提供する。例えば、図示する第一の規則は、HbA1cピークが閾値を上回るのであれば、向上版レポートに注記を追加して、変異体による干渉が結果内に存在する可能性があることを示す。同規則はまた、なぜその注記が含められたか(この事例では、異例的に高いHbA1cピーク)を説明するコメントもまた追加する。
【0055】
追加的な考慮事項
以上の説明のいくつかの部分は、オペレーションのアルゴリズム的処理という点において諸態様を説明している。これらのアルゴリズム的な説明および表象は、データ処理技術の当業者によって、その仕事の実質を他の当業者に効果的に伝えるために広く用いられている。これらのオペレーションは、機能的、計算的、または論理的に説明されているが、プロセッサによって実行されるための命令を含むコンピュータプログラム、または同等の電気回路もしくはマイクロコードなどによって実施されるものと理解される。さらに、機能的オペレーションのこれらアレンジメントをモジュールと呼ぶことは、一般性を失うことなく、時に便利であることが証明されている。
【0056】
本明細書において用いられる、「1つの態様(one embodiment)」または「1つの態様(an embodiment)」への参照は、その態様との関連において説明される具体的な要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本明細書のさまざまな箇所における、「1つの態様において(in one embodiment)」という句の出現は、必ずしもすべて同じ態様を参照するわけではない。
【0057】
いくつかの態様が、「連結され(coupled)」および「接続され(connected)」という表現、ならびにそれらの派生形を用いて説明される可能性がある。理解されるべき点として、これらの用語は、互いの同義語であるとは意図されていない。例えば、いくつかの態様が、2つまたはそれ以上の要素が互いに物理的または電気的に直接接触していることを示すため、「接続され」という用語を用いて説明される可能性がある。別の実施例において、いくつかの態様が、2つまたはそれ以上の要素が物理的または電気的に直接接触していることを示すため、「連結され」という用語を用いて説明される可能性がある。しかし、「連結され」という用語はまた、2つまたはそれ以上の要素が、互いに直接接触していないが、それでも互いに協働または相互作用する、ということも意味しうる。その態様はこの文脈において限定されるわけではない。
【0058】
本明細書において用いられる、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、またはそれらの他の任意のバリエーションは、非排他的包含をカバーすることが意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、それら要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、明示的に列挙されない、またはそうしたプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有でない、他の要素を含んでもよい。さらに、明示的に別段の言明がない限り、「または/もしくは(or)」は、排他的な「または/もしくは」ではなく包含的な「または/もしくは」を指す。例えば、条件AまたはBは、Aが真(もしくは存在)かつBが偽(もしくは非存在)、Aが偽(もしくは非存在)かつBが真(もしくは存在)、または、AおよびBの両方が真(もしくは存在)、のいずれか1つによって満たされる。
【0059】
加えて、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、諸態様の要素およびコンポーネントを説明するために利用される。このことは、利便性のため、および、本開示の一般的意味を与えるためになされるにすぎない。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものとして読まれるべきであり、かつ、別段を意味することが明らかでない限り、単数形は複数もまた含む。
【0060】
本開示を読んだ当業者には、異常ヘモグロビン症の評価を補助するスマートアドバイザを提供するためのシステムおよびプロセスについて、さらに追加の代替的な構造的および機能的設計が認識されるであろう。ゆえに、特定の態様および用途を以上に例証したが、本明細書に説明した内容は、本明細書に開示したとおりの構成およびコンポーネントに限定されるわけではないこと、ならびに、当業者に認識されるであろうさまざまな修正、変更、およびバリエーションが、本開示の方法および装置のアレンジメント、オペレーション、および細部に対して行われうることが、理解されるべきである。保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
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図17