(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 5/45 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
H02M5/45 A
(21)【出願番号】P 2020538149
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022176
(87)【国際公開番号】W WO2020245916
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】新村 直人
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225410(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/128455(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第106452099(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M5/40-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1正側のアームと、複数の第1負側のアームと、前記複数の第1正側のアームをスター型に接続する第1正側スター結線と、前記複数の第1負側のアームをスター型に接続する第1負側スター結線と、前記第1正側スター結線と前記第1負側スター結線とを電源側交流系統の各相にそれぞれ接続する第1端子とを含み、前記複数の第1正側のアームの各相と前記複数の第1負側のアームの各相とが前記電源側交流系統の各相にそれぞれ対応付けられている交直電力変換器である第1電力変換器と、
複数の第2正側のアームと、複数の第2負側のアームと、前記複数の第2正側のアームをスター型に接続する第2正側スター結線と、前記複数の第2負側のアームをスター型に接続する第2負側スター結線と、前記第2正側スター結線と前記第2負側スター結線とを負荷側交流系統の各相にそれぞれ接続する第2端子とを含み、前記複数の第2正側のアームの各相と前記複数の第2負側のアームの各相とが前記負荷側交流系統の各相にそれぞれ対応付けられている交直電力変換器である第2電力変換器と、
直流電力を双方向に変換する絶縁型のDCDC変換装置群を形成し、前記第1電力変換器と前記第2電力変換器との間で電力を相互に変換する複数のDCDC変換装置と、
前記第2電力変換器が接続される前記負荷側交流系統の各相に生じた有効電力の不平衡が、前記第1電力変換器が接続される前記電源側交流系統の各相の有効電力の不平衡に影響しないように前記第1電力変換器と前記第2電力変換器とを制御する制御部と、
を備え、
前記第1電力変換器は、
前記複数の第1正側のアームの各アームと前記複数の第1負側のアームの各アームとに分けて配置される複数の単相コンバータセルと、コンバータ側キャパシタ群とを含み、
前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタは、
前記複数の単相コンバータセルの各単相コンバータセルの直流側に夫々対応付けて配置されていて、
前記第1電力変換器は、
力行時に前記コンバータ側キャパシタ群を充電して、回生時に前記コンバータ側キャパシタ群の直流電力を前記電源側交流系統の交流電力である第1交流電力に変換し、
前記第2電力変換器は、
前記複数の第2正側のアームの各アームと前記複数の第2負側のアームの各アームとに分けて配置される複数の単相インバータセルと、インバータ側キャパシタ群とを含み、
前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタは、
前記複数の単相インバータセルの各単相インバータセルの直流側に夫々対応付けて配置されていて、
回生時に前記インバータ側キャパシタ群を充電して、力行時に前記インバータ側キャパシタ群の直流電力を前記負荷側交流系統の交流電力である第2交流電力に変換し、
前記複数のDCDC変換装置の各DCDC変換装置は、
前記各単相コンバータセルの直流側と、前記各単相
インバータセルの直流側との間に夫々設けられていて、
前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタの直流電力と、前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタの直流電力とを双方向に変換する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記複数のDCDC変換装置は、
前記第1電力変換器と前記第2電力変換器とに接続され、前記第1電力変換器と前記第2電力変換器との間を絶縁し、
前記複数のDCDC変換装置の中の1つのDCDC変換装置は、
前記複数の単相コンバータセルの中の1つの単相コンバータセルに対応付けて設けられた第1キャパシタと、
前記複数の単相インバータセルの中の1つの単相インバータセルに対応付けて設けられた第2キャパシタとに接続される、
前記第1キャパシタは、前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタのうちの何れかであり、
前記第2キャパシタは、前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタのうちの何れかである、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記1つの単相コンバータセルは、
前記第1交流電力の一部と前記コンバータ側キャパシタ群の直流電力の一部を相互に変換して、
前記1つのDCDC変換装置は、
前記コンバータ側キャパシタ群の直流電力の一部と前記インバータ側キャパシタ群の直流電力の一部を相互に変換して、
前記1つの単相インバータセルは、
前記インバータ側キャパシタ群の直流電力の一部と前記第2交流電力の一部を相互に変換する、
請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1正側スター結線と前記第1負側スター結線に流す第1循環電流として、前記第1交流電力に係る基本波正相電流に対する基本波逆相電流が流れるように、前記第1電力変換器を制御する第1制御部
をさらに備える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1電力変換器を、前記第1交流電力の各相の有効電力が揃うように制御する第1制御部
をさらに備える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2正側スター結線と前記第2負側スター結線とに流す第2循環電流を調整して、前記第2電力変換器を制御する第2制御部
をさらに備える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1交流電力に係る基本波逆相電流を成分に含む第1循環電流が前記第1正側スター結線と前記第1負側スター結線とに流れるように、前記第1電力変換器を制御する第1制御部と、
前記第2正側スター結線と前記第2負側スター結線とに流す第2循環電流を調整して、前記第2電力変換器を制御する第2制御部と
を備える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第2制御部は、
前記第2電力変換器の状態量として前記インバータ側キャパシタ群の直流電力の低周波脈動成分を取得して、
前記取得した低周波脈動成分に基づいた調整に、前記第1制御部による前記第1循環電流の調整量の調整と、前記第2制御部による前記第2循環電流の調整量の調整が含まれる、
請求項7記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2制御部は、
前記負荷側交流系統の零相電圧を指定する相電圧指令値を算出し、前記相電圧指令値に基づいて、前記第2電力変換器を制御する、
請求項7記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記複数の単相コンバータセルは、
前記複数の第1正側のアームのそれぞれにおいて、カスケード接続されていて、
前記複数の単相インバータセルは、
前記複数の第2正側のアームのそれぞれにおいて、カスケード接続されている、
前記第1制御部は、
前記カスケード接続された前記複数の単相コンバータセルに夫々
対応付けて設けられている前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタの電圧の直流量を一定にするように前記第1循環電流を調整する、
請求項7記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1制御部と前記第2制御部は、
前記第2電力変換器の状態量として、前記第2電力変換器の負荷である電動機の速度制御のための速度帰還量を取得して、
前記速度帰還量に基づいて、前記第1循環電流の調整量と前記第2循環電流の調整量を調整する、
請求項7記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記複数のDCDC変換装置の中の第1番目のDCDC変換装置は、
前記複数の単相コンバータセルの中の第1番目の単相コンバータセルと、前記複数の単相インバータセルの中の第1番目の単相インバータセルとに接続され、
前記複数のDCDC変換装置の中の第2番目のDCDC変換装置は、
前記複数の単相コンバータセルの中の第2番目の単相コンバータセルと、前記複数の単相インバータセルの中の第2番目の単相インバータセルとに接続される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記第1番目のDCDC変換装置と前記第2番目のDCDC変換装置は、
前記第1番目の単相コンバータセルと、前記第2番目の単相コンバータセルとを経て接続される、
請求項12記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記第1番目のDCDC変換装置と前記第2番目のDCDC変換装置は、
前記第1番目の単相インバータセルと、前記第2番目の単相インバータセルとを経て接続される、
請求項12記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記複数の単相インバータセルには、前記複数の単相インバータセルに対応付けられて第2キャパシタがそれぞれ設けられており、
前記第2キャパシタは、前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタのうちの何れかであって、
前記複数のDCDC変換装置は、
前記第2キャパシタの電圧の瞬時値を一定にするように直流電力の変換を制御する、
請求項12記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記第1電力変換器は、
前記複数の単相コンバータセルの交流側が前記電源側交流系統の各相に相毎に接続され、直列に接続される前記第1正側スター結線と前記第1負側スター結線を備え、
前記第2電力変換器は、
前記複数の単相インバータセルの交流側が前記負荷側交流系統の各相に相毎に接続され、直列に接続される前記第2正側スター結線と前記第2負側スター結線を備え、
前記複数の単相コンバータセルの中の1つの単相コンバータセルに対応する単相インバータセルが、前記複数の単相インバータセルの中の1つの単相インバータセルであり、
前記複数のDCDC変換装置は、
前記複数の単相コンバータセルの直流側と前記複数の単相インバータセルの直流側とを絶縁し、前記1つの単相コンバータセルの直流側と、前記1つの単相インバータセルの直流側をそれぞれ繋ぐ
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記複数のDCDC変換装置の夫々は、
前記第2電力変換器側で発生した低周波脈動電力を、前記第1電力変換器側に伝搬する
請求項16記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置及び電力変換制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源側交流系統から供給される第1の多相交流電力を、第2の多相交流電力に間接変換方式で変換する電力変換装置(間接交流変換装置:indirect AC converter)がある。比較的大きな電力を変換する電力変換装置には、単相コンバータセルを直列に接続してマルチレベル変換器を構成するものがある。
また、電力変換装置の負荷側に生じた事象等により、上記の第2の多相交流電力の各相に供給される有効電力が不平衡になり、上記の第1の多相交流電力を供給する電源側交流系統にその影響が波及することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許特開2008-301640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電力変換装置の負荷側に供給される有効電力の各相間の不平衡が、電源側交流系統に影響することを軽減させる電力変換装置及び電力変換制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電力変換装置は、第1電力変換器と、複数のDCDC変換装置と、第2電力変換器と、を備える。第1電力変換器は、複数の第1正側のアームと、複数の第1負側のアームと、前記複数の第1正側のアームをスター型に接続する第1正側スター結線と、前記複数の第1負側のアームをスター型に接続する第1負側スター結線と、前記第1正側スター結線と前記第1負側スター結線とを電源側交流系統の各相にそれぞれ接続する第1端子とを含み、前記複数の第1正側のアームの各相と前記複数の第1負側のアームの各相とが前記電源側交流系統の各相にそれぞれ対応付けられている交直電力変換器である。第2電力変換器は、複数の第2正側のアームと、複数の第2負側のアームと、前記複数の第2正側のアームをスター型に接続する第2正側スター結線と、前記複数の第2負側のアームをスター型に接続する第2負側スター結線と、前記第2正側スター結線と前記第2負側スター結線とを負荷側交流系統の各相にそれぞれ接続する第2端子とを含み、前記複数の第2正側のアームの各相と前記複数の第2負側のアームの各相とが前記負荷側交流系統の各相にそれぞれ対応付けられている交直電力変換器である。複数のDCDC変換装置は、直流電力を双方向に変換する絶縁型のDCDC変換装置群を形成し、前記第1電力変換器と前記第2電力変換器との間で電力を相互に変換する。制御部は、前記第2電力変換器が接続される前記負荷側交流系統の各相に生じた有効電力の不平衡が、前記第1電力変換器が接続される前記電源側交流系統の各相の有効電力の不平衡に影響しないように前記第1電力変換器と前記第2電力変換器とを制御する。前記第1電力変換器は、前記複数の第1正側のアームの各アームと前記複数の第1負側のアームの各アームとに分けて配置される複数の単相コンバータセルと、コンバータ側キャパシタ群とを含む。前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタは、前記複数の単相コンバータセルの各単相コンバータセルの直流側に夫々対応付けて配置されている。前記第1電力変換器は、力行時に前記コンバータ側キャパシタ群を充電して、回生時に前記コンバータ側キャパシタ群の直流電力を前記電源側交流系統の交流電力である第1交流電力に変換する。前記第2電力変換器は、前記複数の第2正側のアームの各アームと前記複数の第2負側のアームの各アームとに分けて配置される複数の単相インバータセルと、インバータ側キャパシタ群とを含む。前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタは、前記複数の単相インバータセルの各単相インバータセルの直流側に夫々対応付けて配置されている。前記第2電力変換器は、回生時に前記インバータ側キャパシタ群を充電して、力行時に前記インバータ側キャパシタ群の直流電力を前記負荷側交流系統の交流電力である第2交流電力に変換する。前記複数のDCDC変換装置の各DCDC変換装置は、前記各単相コンバータセルの直流側と、前記各単相インバータセルの直流側との間に夫々設けられていて、前記コンバータ側キャパシタ群の各キャパシタの直流電力と、前記インバータ側キャパシタ群の各キャパシタの直流電力とを双方向に変換する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】実施形態のコンバータの信号名の定義について説明するための図。
【
図4】実施形態のインバータの信号名の定義について説明するための図。
【
図6】実施形態の偏差量演算ユニット12011の構成図。
【
図7】実施形態の系統電流ACR1212の構成図。
【
図8】実施形態のアームバランス制御部1204の構成図。
【
図9】実施形態の第1低周波脈動電力低減制御部1217の構成図。
【
図10】実施形態の第1循環電流ACR1213の構成図。
【
図11】実施形態のインバータ制御部13の構成図。
【
図12】実施形態のLF_PPS制御器1322の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力変換装置及び電力変換制御装置を、図面を参照して説明する。以下に説明の電力変換装置は、負荷の一例である交流電動機(モータ)に所望の交流電力を供給する。実施形態の電力変換装置は、間接交流変換装置(indirect AC converter)を含む。実施形態における接続するという記載は、電気的に接続することを含む。
【0008】
電力変換装置の構成例を
図1に示す。
図1は、実施形態における電力変換装置の構成図である。
図1に示す電力変換装置1は、例えば、コンバータ2と、インバータ3と、DCDC変換装置群4と、コンバータ側キャパシタ群5と、インバータ側キャパシタ群6と、制御部10とを備える。コンバータ2と、インバータ3と、DCDC変換装置群4と、コンバータ側キャパシタ群5と、インバータ側キャパシタ群6は、電力変換装置1の主回路を形成する。電源側交流系統7は、例えば電力変換装置1に多相交流電力(第1交流電力)を供給する。例えば、電源側交流系統7は、r相s相t相の三相交流電力を供給する。負荷側交流系統8は、例えば電力変換装置1から負荷装置に多相交流電力(第2交流電力)を供給する。例えば、負荷側交流系統8は、u相v相w相の三相交流電力を供給する。
【0009】
まず、コンバータ2について説明する。
コンバータ2(第1電力変換器)は、電源側交流系統7の第1交流電力と第1直流電力とを相互に変換する。換言すれば、コンバータ2は、力行時に第1交流電力を第1直流電力に変換し、回生時に第1直流電力を第1交流電力に変換する。例えば、コンバータ2は、電源側交流系統7のr相s相t相にそれぞれ接続される第1交流接続端子201、202、203を備える。コンバータ2は、電源側交流系統7との間で、第1交流接続端子201、202、203を介して第1交流電力を授受する。
【0010】
コンバータ2は、中性点210Pを中心にする第1正側スター結線210と、中性点220Nにする第1負側スター結線220とを含む。第1正側スター結線210と第1負側スター結線220のr相s相t相のそれぞれは、スター型に第1交流接続端子201、202、203にそれぞれ接続される。第1正側スター結線210と第1負側スター結線220を区別しない場合には、それらを纏めて単に「コンバータスター結線」と呼ぶ。なお、上記のスター結線は、Y型結線であってもよい。
【0011】
コンバータ2は、r相第1アーム2110と、s相第1アーム2120と、t相第1アーム2130と、r相第2アーム2210と、s相第2アーム2220と、t相第2アーム2230と、リアクトル2119、2129、2139、2219、2229、2239とを備える。
【0012】
第1正側スター結線210のr相にr相第1アーム2110が設けられ、s相にs相第1アーム2120が設けられ、t相にt相第1アーム2130が設けられている。r相第1アーム2110と、s相第1アーム2120と、t相第1アーム2130とを纏めて、単に「コンバータ第1アーム」(複数の第1正側のアーム)と呼ぶ。
【0013】
第1負側スター結線220のr相にr相第2アーム2210が設けられ、s相にs相第2アーム2220が設けられ、t相にt相第2アーム2230が設けられている。r相第2アーム2210と、s相第2アーム2220と、t相第2アーム2230とを纏めて、単に「コンバータ第2アーム」(複数の第1負側のアーム)と呼ぶ。
【0014】
換言すれば、コンバータスター結線の各相には、コンバータ第1アームとコンバータ第2アームとがそれぞれ設けられている。コンバータ第1アームとコンバータ第2アームは、少なくとも1個の単相コンバータセル(例えば、
図2参照。)を含み、電源側交流系統7の第1交流電力と第1直流電力とを相互に変換する。以下に示す事例のコンバータ第1アームとコンバータ第2アームは、それぞれ4個の単相コンバータセルを備える。この個数は一例であり、3個以下でもよく、5個以上でもよい。
【0015】
例えば、r相第1アーム2110には、単相コンバータセル2111から2114が設けられる。r相第2アーム2210には、単相コンバータセル2215から2218が設けられる。なお、
図1における単相コンバータセル2112、2113、2216、2217の表記を省略する。s相とt相についても同様であるが、単相コンバータセルの符号の表記を省略する。
【0016】
上記の各単相コンバータセルは、電源側交流系統7の第1交流電力の一部と上記の第1直流電力の一部を相互に変換する。
【0017】
上記の通り、コンバータ2のコンバータ第1アームとコンバータ第2アームにおいて、アーム毎に単相コンバータセルを直列に接続した直列回路がスター結線で接続されている。コンバータ第1アームとコンバータ第2アームの各相には、単相コンバータセルを含む直列回路が設けられている。
【0018】
なお、コンバータ第1アームとコンバータ第2アームを直接接続すると、コンバータ2内で短絡電流が流れる。これを防ぐためには、例えば、コンバータ第1アームとコンバータ第2アームとをリアクトルを介して接続するとよい。r相の場合には、リアクトル2119とリアクトル2219とを介してr相第1アーム2110とr相第2アーム2210とを接続する。s相とt相についても同様である。なお、上記のリアクトルは、コンバータ第1アームとコンバータ第2アームに各々に設けられた単相リアクトルであってもよいし、結合リアクトルであってもよい。
【0019】
コンバータ2の単相コンバータセルには、後述するDCDC変換装置群4の中の1つのDCDC変換装置と、後述するコンバータ側キャパシタ群5の中の1つの第1キャパシタとが対応付けられている。単相コンバータセルの直流側は、DCDC変換装置群4の中の1つのDCDC変換装置の第1直流端子と、コンバータ側キャパシタ群5の中の1つの第1キャパシタとに並列に接続されている。
【0020】
例えば、単相コンバータセル2111には、キャパシタ5111が接続されている。単相コンバータセル2114には、キャパシタ5114が接続されている。図示を省略するがキャパシタ5112、5113についても同様である。すなわち、単相コンバータセル2111から2114には、キャパシタ5111から5114が接続されている。同様に単相コンバータセル2215から2218には、キャパシタ5215から5218が接続されている。s相とt相についても同様である。その詳細は、
図3を参照する。上記のキャパシタ5111から5114と、キャパシタ5215から5218などは、第1キャパシタの一例である。
【0021】
次に、インバータ3について説明する。
インバータ3(第2電力変換器)は、第2直流電力と第2交流電力とを相互に変換する。インバータ3は、力行時に第2直流電力を第2交流電力に変換し、回生時に第2交流電力を第2直流電力に変換する。例えば、インバータ3は、負荷側交流系統8のu相v相w相にそれぞれ接続される第2交流接続端子301、302、303を備える。インバータ3は、負荷側交流系統8に接続される負荷装置Mとの間で、第2交流接続端子301、302、303を介して第2交流電力を授受する。
【0022】
インバータ3は、中性点310Pを中心にする第2正側スター結線310と、中性点320Nを中心にする第2負側スター結線320とを含む。第2正側スター結線310と第2負側スター結線320のu相v相w相のそれぞれは、スター型に第2交流接続端子301、302、303にそれぞれ接続される。第2正側スター結線310と第2負側スター結線320を区別しない場合には、それらを纏めて単に「インバータスター結線」と呼ぶ。
【0023】
インバータ3は、u相第1アーム3110と、v相第1アーム3120と、w相第1アーム3130と、u相第2アーム3210と、v相第2アーム3220と、w相第2アーム3230と、リアクトル3119、3129、3139、3219、3229、3239とを備える。
【0024】
第2正側スター結線310のu相にu相第1アーム3110が設けられ、v相にv相第1アーム3120が設けられ、w相にw相第1アーム3130が設けられている。u相第1アーム3110と、v相第1アーム3120と、w相第1アーム3130とを纏めて、単に「インバータ第1アーム」(複数の第2正側のアーム)と呼ぶ。
【0025】
第2負側スター結線320のu相にu相第2アーム3210が設けられ、v相にv相第2アーム3220が設けられ、w相にw相第2アーム3230が設けられている。u相第2アーム3210と、v相第2アーム3220と、w相第2アーム3230とを纏めて、単に「インバータ第2アーム」(複数の第2負側のアーム)と呼ぶ。
【0026】
換言すれば、インバータスター結線の各相には、インバータ第1アームとインバータ第2アームとがそれぞれ設けられている。インバータ第1アームとインバータ第2アームは、少なくとも1個の単相インバータセルを含み、負荷側交流系統8の第2交流電力と第2直流電力とを相互に変換する。以下に示す事例のインバータ第1アームとインバータ第2アームは、それぞれ4個の単相インバータセルを備える。この個数は一例であり、コンバータ2における単相コンバータセルの個数に等しければ、3個以下でもよく、5個以上でもよい。
【0027】
例えば、u相第1アーム3110には、カスケード接続された単相インバータセル3111から3114が設けられる。u相第2アーム3210には、カスケード接続された単相インバータセル3215から3218が設けられる。なお、単相インバータセル3112、3113、3216、3217の表記を省略する。v相とw相についても同様であるが、符号の表記を省略する。
【0028】
上記の各単相インバータセルは、負荷側交流系統8の第2交流電力の一部と上記の第2直流電力の一部を相互に変換する。
【0029】
上記の通り、インバータ3のインバータ第1アームとインバータ第2アームにおいて、アーム毎に単相インバータセルを直列に接続した直列回路がスター結線で接続されている。インバータ第1アームとインバータ第2アームの各相には、単相インバータセルを含む直列回路が設けられている。
【0030】
なお、インバータ第1アームとインバータ第2アームを直接接続すると、インバータ3内で短絡電流が流れる。これを防ぐために、例えば、インバータ第1アームとインバータ第2アームとをリアクトルを介して接続するとよい。u相の場合には、リアクトル3119とリアクトル3219とを介してu相第1アーム3110とu相第2アーム3210とを接続する。v相とw相についても同様である。上記の各リアクトルは、同じ大きさの誘導性リアクタンスを有する。なお、上記のリアクトルは、インバータ第1アームとインバータ第2アームに各々に設けられた単相リアクトルであってもよいし、結合リアクトルであってもよい。
【0031】
インバータ3の単相インバータセルには、後述するDCDC変換装置群4の中の1つのDCDC変換装置と、後述するインバータ側キャパシタ群6の中の1つの第2キャパシタとが対応付けられている。インバータ3の直流側は、後述するDCDC変換装置群4の各DCDC変換装置の第2直流端子に接続されている。
【0032】
例えば、インバータ3においても前述のコンバータ2と同様に、単相インバータセル3111から3114には、キャパシタ6111から6114が接続されている。単相インバータセル3215から3218には、キャパシタ6215から6218が接続されている。なお、キャパシタ6112、6113、6216、6217の表記を省略する。v相とw相についても同様である。その詳細は、
図4を参照する。上記のキャパシタ6111から6114と、キャパシタ6215から6218などは、第2キャパシタの一例である。
【0033】
次に、DCDC変換装置群4について説明する。
DCDC変換装置群4は、双方向に電力伝送可能な複数個のDCDC変換装置を備える。例えば、r相とu相を繋ぐDCDC変換装置4111から4114、4215から4218は、複数個のDCDC変換装置の一例である。なお、
図1の中でDCDC変換装置4112、4113、4216、4217の表記を省略する。s相とv相を繋ぐ複数個のDCDC変換装置とt相とw相を繋ぐ複数個のDCDC変換装置も、符号の表記を省略する。s相とv相を繋ぐ場合も、t相とw相を繋ぐ場合も、上記のr相とu相を繋ぐ場合と同様である。複数個のDCDC変換装置を纏めて、DCDC変換装置4000と呼ぶ。
【0034】
例えば、DCDC変換装置4000は、第1直流端子と第2直流端子とを備える。DCDC変換装置4000の第1直流端子は、コンバータ2の単相コンバータセルの直流側に接続され、DCDC変換装置4000の第2直流端子は、インバータ3の単相コンバータセルの直流側に接続される。DCDC変換装置4000は、コンバータ2の単相コンバータセルの直流側と、インバータ3の単相コンバータセルの直流側を電気的に接続する。上記の通り、DCDC変換装置4000は、コンバータ2とインバータ3とに接続され、双方向に電力を変換する絶縁型の直流電力変換器である。
【0035】
第1番目の組み合わせの一例として、DCDC変換装置4111は、単相コンバータセル2111の直流側と、単相インバータセル3111の直流側を電気的に接続する。第2番目の組み合わせの一例として、DCDC変換装置4114は、単相コンバータセル2114の直流側と、単相インバータセル3114の直流側を電気的に接続する。
【0036】
上記のDCDC変換装置4111は、第1番目のDCDC変換装置の一例である。単相コンバータセル2111は、第1番目の単相コンバータセルの一例である。単相インバータセル3111は、第1番目の単相インバータセルの一例である。また、DCDC変換装置4114は、第2番目のDCDC変換装置の一例である。単相コンバータセル2114は、第2番目の単相コンバータセルの一例である。単相インバータセル3114は、第2番目の単相インバータセルの一例である。
【0037】
なお、DCDC変換装置4111とDCDC変換装置4114は、互いに絶縁されていて、かつ独立して制御される。例えば、DCDC変換装置4111とDCDC変換装置4114は、少なくとも単相コンバータセル2111を経て接続される。別の観点では、DCDC変換装置4111とDCDC変換装置4114は、少なくとも単相コンバータセル2111と単相コンバータセル2114を経て接続される。また、DCDC変換装置4111とDCDC変換装置4114は、少なくとも単相インバータセル3111を経て接続される。別の観点では、DCDC変換装置4111とDCDC変換装置4114は、少なくとも単相インバータセル3111と単相インバータセル3114を経て接続される。
【0038】
例えば、DCDC変換装置4000は、2つの単相フルブリッジ回路と、単相変圧器とを備える。
【0039】
DCDC変換装置4000は、第1単相フルブリッジ回路に接続される単相コンバータセルの直流電圧と、第2単相フルブリッジ回路に接続される単相インバータセルの直流電圧が整合するように、電力変換量を調整する。これにより、DCDC変換装置4000は、第1単相フルブリッジ回路の直流側の電力(第1直流電力)と第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力(第2直流電力)を相互に変換することにより、コンバータ2とインバータ3との間で電力を相互に変換する。
【0040】
なお、DCDC変換装置4000は、上記の回路方式に制限されることなく、他の回路方式で、相互に直流電力を伝送可能な絶縁型のDCDC変換器を形成してもよい。例えば、2つの三相ブリッジ回路と三相変圧器との組み合わせは、DCDC変換装置4000の変形例の一例である。
【0041】
図2Aと
図2Bは、実施形態の単相コンバータセルの構成図である。
図2Aと
図2Bに、単相コンバータセル2111を示す。単相コンバータセル2111は、例えば
図2Bに示すように複数の半導体素子を組み合わせた単相フルブリッジ型である。
図2Bに例示する半導体素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体素子は、IGBTに限らず、FETなど他の種類のものでもよい。
図2Aに示す記載は、
図2Bに示す単相コンバータセル2111を省略して記載したものである。
【0042】
実施形態の単相コンバータセル2111の交流側は、共通するアーム(r相第1アーム2110)内の他の単相コンバータセル2112、2113、2114とカスケード接続される。
【0043】
実施形態の単相コンバータセル2111の直流側には、それに対応するキャパシタ5111が設けられている。さらに、単相コンバータセル2111には、キャパシタ5111の端子電圧(コンバータ側キャパシタ電圧)を検出する電圧検出器VDETが設けられている。電圧検出器VDETで検出された電圧は、制御部10における制御に利用される。単相コンバータセル2111以外の単相コンバータセルも同様に構成される。
【0044】
単相コンバータセルの回路構成と、単相インバータセルの回路構成は、同一でもよく、異なっていてもよい。なお、単相コンバータセルと単相インバータセルは、図示する回路に制限されなることなく、直流電圧から交流電圧に変換できる構成を有するものであれば、単相フルブリッジに限らず、他の構成でもよい。中性点クランプ型、ハーフブリッジ型は、単相コンバータセルの他の構成の一例である。
【0045】
次に、コンバータ2のr相を例示して電力変換に係る動作の概要について説明する。コンバータ2は、r相第1アーム2110によってVr/2の電圧を出力し、r相第2アーム2210によって-Vr/2の電圧を出力する。これにより、第1交流のr相には上記の各電圧が加算されたVr の電圧が出力される。s相とt相についてもr相と同様である。インバータ側についても同様である。
【0046】
図1と
図2Aと
図2Bを参照して、DCDC変換装置4111を基準に、キャパシタ5111とキャパシタ6111との関係を整理する。
図1に示すようにDCDC変換装置4111は、単相コンバータセル2111に対応付けて設けられたキャパシタ5111(第1キャパシタ)と、単相インバータセル3111に対応付けて設けられたキャパシタ6111(第2キャパシタ)とに接続されている。なお、DCDC変換装置4111は、複数のDCDC変換装置の中の1つのDCDC変換装置の一例である。単相コンバータセル2111は、複数の単相コンバータセルの中の1つの単相コンバータセルの一例である。単相インバータセル3111は、複数の単相インバータセルの中の1つの単相インバータセルの一例である。例えば、DCDC変換装置4111は、キャパシタ6111の電圧の瞬時値を一定にするように直流電力の変換を制御する。DCDC変換装置4000の他のものも同様である。
【0047】
次に、
図3と
図4とを参照して、実施形態の信号名の定義について説明する。
図3は、実施形態のコンバータの信号名の定義について説明するための図である。
電源側交流系統7の3相の相電圧(瞬時値)を、系統電圧検出値vS^r、vS^s、vS^tで示し、これらを纏める場合には、系統電圧検出値vS^rstと記す。本文の説明の中で上記の「^(ハット)」は、それに続く文字が上付き文字であることを示す。
【0048】
これに対し、後述する演算式の中では、例えば、系統電圧検出値vS^rstを、式(1)に示すように表記する。式(1)の左辺は、ベクトルで表記したもの。右辺は、行列の成分に分けて表記したものである。右辺の変数の上付き文字により、行列の各成分を識別する。なお、行列の上付き文字の「T」は、転地行列を示す。
【0049】
【0050】
同じく3相の相電流(瞬時値)を系統電流検出値iS^r、iS^s、iS^tで示し、これらを纏めて系統電流検出値iS^rst(不図示)で示す。各相の相電流が、電源側交流系統7からコンバータ2に向かう方向を正にする。電源側交流系統7の交流電力の基本周波数をfSで示す。
【0051】
コンバータ2の各アームのキャパシタの電圧の検出値を、下記のように規定する。例えば、キャパシタ電圧vCNV_DC1^r、vCNV_DC4^rは、r相第1アームに係るキャパシタ5111、5114の電圧である。r相第1アームに係るキャパシタ5111から5114の電圧を纏めてキャパシタ電圧vCNV_DC1-4^rと表記する。キャパシタ電圧vCNV_DC5^r、vCNV_DC8^rは、r相第2アームに係るキャパシタ5215、5218の電圧である。r相第2アームに係るキャパシタ5215から5218の電圧を纏めてキャパシタ電圧vCNV_DC5-8^rと表記する。同様に、キャパシタ電圧vCNV_DC1-4^sとキャパシタ電圧vCNV_DC5-8^sは、s相第1アームに係るキャパシタ5121から5124と、s相第2アームに係るキャパシタ5125から5128の電圧である。キャパシタ電圧vCNV_DC1-4^tとキャパシタ電圧vCNV_DC5-8^tは、t相第1アームに係るキャパシタ5131から5134と、t相第2アームに係るキャパシタ5135から5138の電圧である。上記のコンバータ2の各アームのキャパシタの電圧のことを、コンバータ側キャパシタ電圧と呼ぶ。
【0052】
コンバータ2のr相第1アーム2110の電圧を、vCNV_P^rで示し、r相第2アーム2210の電圧を、vCNV_N^rで示す。図示を省略するが、s相第1アーム2120の電圧を、vCNV_P^sで示し、s相第2アーム2220の電圧を、vCNV_N^sで示し、t相第1アーム2130の電圧を、vCNV_P^tで示し、t相第2アーム2230の電圧を、vCNV_N^tで示す。
【0053】
r相第1アーム2110における単相コンバータセルが発生させる電圧を、下記のように規定する。単相コンバータセル2111が発生させる電圧をvCNV_1^rで示す。r相第2アーム2210における単相コンバータセル2114が発生させる電圧をvCNV_4^rで示し、単相コンバータセル2115が発生させる電圧をvCNV_5^rで示し、単相コンバータセル2118が発生させる電圧をvCNV_8^rで示す。r相の他の単相コンバータセルが発生させる電圧についても同様である。記載を省略するが、s相とt相についても同様である。
【0054】
r相第1アーム2110に流れる電流を、iCNV_P^rで示し、r相第2アーム2210に流れる電流を、iCNV_N^rで示す。s相第1アーム2120に流れる電流を、iCNV_P^sで示し、s相第2アーム2220に流れる電流を、iCNV_N^sで示す。t相第1アーム2130に流れる電流を、iCNV_P^tで示し、t相第2アーム2230に流れる電流を、iCNV_N^tで示す。
【0055】
なお、電流検出器210iは、第1正側スター結線210に設けられ、第1正側スター結線210の各アームに流れる電流を検出して、その検出値(iCNV_P^rst)を出力する。電流検出器220iは、第1負側スター結線220の各アームに流れる電流を検出し、その検出値(iCNV_N^rst)を出力する。なお、上記は各相の電流を検出する場合の事例であるが、例えば電流検出器210iと電流検出器220iは、r相s相の電流を検出して、検出された電流値から残りのt相の電流値を、次の式(2)と式(3)とを用いて算出してもよい。
【0056】
【0057】
図4は、実施形態のインバータの信号名の定義について説明するための図である。インバータの信号名の定義は、前述のコンバータの信号名の定義と同様に規定する。rst相をuvw相に置き換えるとともに、「CNV」の表記を「INV」に置き換えている。以下、その一部について説明する。
【0058】
負荷側交流系統8の相電圧(瞬時値)を負荷電圧検出値vM^uvwで示し、相電流(瞬時値)を系統電流検出値iM^uvwで示す。
図4の中では、これを各相に分けて記載する。各相の相電流が、負荷側交流系統8からインバータ3に向かう方向を正にする。負荷側交流系統8の交流電力の基本周波数をfMで示す。
【0059】
インバータ3の各アームのキャパシタの電圧の検出値を、下記のように規定する。キャパシタ電圧vINV_DC1-4^uは、u相第1アームに係るキャパシタ6111から6114の電圧である。キャパシタ電圧vINV_DC5-8^uは、u相第2アームに係るキャパシタ6215から6218の電圧である。上記のインバータ3の各アームのキャパシタの電圧のことを、インバータ側キャパシタ電圧と呼ぶ。
【0060】
インバータ3のu相第1アーム3110の電圧を、vINV_P^uで示し、u相第2アーム3210の電圧を、vINV_N^uで示す。
【0061】
u相第1アーム3110における単相コンバータセルが発生させる電圧を、下記のように規定する。単相インバータセル3111が発生させる電圧をvINV_1^uで示す。vINV_4^u、vINV_5^u、vINV_8^uについても、上記と同様である。
【0062】
上記に関し、v相とw相についてはu相と同様である。
【0063】
なお、電流検出器310iは、第2正側スター結線310に設けられ、第2正側スター結線310の各アームに流れる電流を検出して、その検出値(iINV_P^uvw)を出力する。電流検出器320iは、第2負側スター結線320に設けられ、第2負側スター結線320の各アームに流れる電流を検出し、その検出値(iINV_N^uvw)を出力する。なお、上記は各相の電流を検出する場合の事例であるが、電流検出器310iと電流検出器320iは、何れか2相分の電流を検出して、検出された電流値から残りの相の電流値を算出してもよい。
【0064】
以下、実施形態の電力変換装置1における制御について、より具体的な例を挙げて説明する。
【0065】
まず、電力変換装置1における制御の概要について説明する。実施形態の電力変換装置1は、例えば、以下の制御を実施する。
【0066】
・コンバータ側キャパシタ電圧の安定化
例えば、コンバータ2は、コンバータ側キャパシタ電圧の直流量を揃えるように制御する。その際に、コンバータ2の各単相コンバータセルは、コンバータ側キャパシタ電圧を所定の電圧に安定化させるように制御する。
【0067】
・インバータ側キャパシタ電圧の安定化
DCDC変換装置4000は、インバータ側キャパシタ電圧が一定になるように、その瞬時値を安定化させるように制御する。例えば、DCDC変換装置4000は、その制御に既知の位相シフト制御を適用してもよい。
【0068】
・負荷装置Mの稼働状況を制御
インバータ3は、上位装置からの制御を受けて、ベクトル制御などの制御方法によって負荷装置Mを制御する。負荷装置Mの稼働に伴い、負荷側交流系統8の各相のバランスが崩れたり、インバータ側キャパシタ電圧に低周波脈動が生じたりする場合がある。上記のインバータ側キャパシタ電圧の低周波脈動には、負荷側交流系統8の交流電力の基本周波数(fM)が、基本周波数fSよりも低い場合(fM < fS)に、単相の電力脈動として発生する2fMの成分が含まれる。例えば、交流電力の基本周波数(fM)を1(Hz)、基本周波数fSを50(Hz)とすると、2(Hz)の電力脈動が発生する。この周波数領域の脈動成分であれば、コンバータ2に50(Hz: 基本周波数fS)の逆相電流を流すことで、上記の低周波脈動を低減できる。
【0069】
・「インバータ側低周波脈動電力低減制御」
インバータ側キャパシタ電圧に低周波脈動が生じた場合、インバータ3は、これを低減させるように制御する。例えば、インバータ3は、高周波の零相電圧を交流電圧に重畳させて、上記の高周波の周波数の循環電流をインバータ3内に流す。上記の「高周波の零相電圧」とは、負荷側交流系統8の交流の基本周波数(fM)よりも高い周波数成分の零相電圧を交流電圧に重畳させたものである。例えば、交流電力の基本周波数(fM)の高調波成分(正弦波)は、上記の「高い周波数成分」の一例である。これにより、インバータ3は、インバータ側キャパシタ電圧の低周波脈動を低減させる。これを、「インバータ側低周波脈動電力低減制御」と呼ぶ。
【0070】
・「コンバータ側低周波脈動電力低減制御」
インバータ側キャパシタ電圧に生じた低周波脈動成分は、コンバータ2側に伝搬して、コンバータ側キャパシタ電圧に低周波脈動成分が生じる。コンバータ2は、インバータ側低周波脈動電力低減制御の演算結果(例えば、インバータ側の低周波脈動電力推定値)に応じて、コンバータ2内に、交流の基本波(基本周波数fS)の逆相循環電流を流し、コンバータ側キャパシタ電圧に生じた低周波脈動成分を低減させる。これを、「コンバータ側低周波脈動電力低減制御」と呼ぶ。
【0071】
電力変換装置1は、コンバータ側低周波脈動電力低減制御及びインバータ側低周波脈動電力低減制御を組み合わせて、インバータ側キャパシタ電圧等の直流電圧の低周波脈動成分を低減させる。例えば、コンバータ側低周波脈動電力低減制御とインバータ側低周波脈動電力低減制御の配分は、予め決定されていてもよい。
【0072】
次に、
図5を参照して、実施形態の制御部10の構成例について説明する。
図5は、実施形態の制御部10の構成図である。
制御部10は、コンバータ制御部12(第1制御部)と、インバータ制御部13(第2制御部)とを備える。
【0073】
まず、コンバータ制御部12について説明する。
コンバータ制御部12は、平均電圧演算ユニット1201と、第1αβ0変換器1202と、第1PN-YZ変換器1203と、アームバランス制御部1204と、加算器1206と、PLL回路1207(図中の記載は「PLL(Phase-Locked Loop)」。)と、第1dq0変換器1209と、第2dq0変換器1210と、第2PN-YZ変換器1211と、系統電流ACR(Automatic Current Regulator)1212と、第1循環電流制御部1213と、第1YZ-PN変換器1214と、第1dq0逆変換器1215と、CNV制御器1216と、第1低周波脈動電力低減制御部1217(図中の記載は「第1LF_RPP制御部」。)とを備える。平均電圧演算ユニット1201と、第1αβ0変換器1202と、第1PN-YZ変換器1203は、コンバータ充電状態検出ユニット1205を形成する。
【0074】
コンバータ充電状態検出ユニット1205は、例えば、コンバータ2の各アームのキャパシタに共通して、各キャパシタに掛ける直流電圧の指令値(キャパシタ電圧指令値vDC^*)と、コンバータ側キャパシタ電圧の検出値とに基づいて、コンバータ側キャパシタ電圧のバランスを検出する。以下、コンバータ充電状態検出ユニット1205の一例について説明する。
【0075】
平均電圧演算ユニット1201は、6個の偏差量演算ユニット12011を備える。偏差量演算ユニット12011は、コンバータ2の各アームのキャパシタ電圧指令値vDC^*と、コンバータ2の各アームのキャパシタの電圧の検出値とに基づいて、各アームにおけるキャパシタの電圧の偏差量を、アーム毎に算出する。
【0076】
図6を参照して、上記の各アームにおけるキャパシタの電圧の偏差量の算出について説明する。
図6は、実施形態の偏差量演算ユニット12011の構成図である。偏差量演算ユニット12011は、LPF演算ユニット12011a、12011bと、減算器12011c、12011dと、平均演算ユニット12011eとを備える。
【0077】
以下、検出対象のコンバータ側キャパシタ電圧としてキャパシタ電圧vCNV_DC1-4^rを例示して説明する。その他の場合も同様である。
【0078】
例えば、LPF演算ユニット12011aは、低周波通過フィルタ(「LPF」という。)であり、キャパシタ電圧vCNV_DC1^rの低周波成分を抽出する。LPF演算ユニット12011bは、LPFであり、同様にキャパシタ電圧vCNV_DC4^rの低周波成分を抽出する。例えば、LPF演算ユニット12011aとLPF演算ユニット12011bのLPF特性は、交流の基本波成分(fS)が遮断されるように、LPFの遮断周波数が決定される。図示されないLPF演算ユニットによって、同様にキャパシタ電圧vCNV_DC2-3^rの低周波成分が同様に抽出される。
【0079】
減算器12011cは、キャパシタ電圧vCNV_DC1^rの低周波成分からキャパシタ電圧指令値vDC^*を減算して、その結果の電圧偏差ΔvCNV_DC1^rを出力する。減算器12011dは、キャパシタ電圧vCNV_DC4^rの低周波成分からキャパシタ電圧指令値vDC^*を減算して、その結果の電圧偏差ΔvCNV_DC4^rを出力する。図示されない減算器によって、電圧偏差ΔvCNV_DC2-3^rが同様に算出される。
【0080】
平均演算ユニット12011e(図中の記載は「AVE」。)は、電圧偏差ΔvCNV_DC1-4^rの平均値(キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^r)を算出する。
【0081】
図5に戻りコンバータ2の各アームにおけるキャパシタの電圧の偏差量について整理する。
【0082】
キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^rは、r相第1アームのキャパシタ5111から5114のキャパシタ電圧vCNV_DC1-4^rの上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^rは、r相第2アームのキャパシタ5115から5118のキャパシタ電圧vCNV_DC5-8^rの上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^sは、s相第1アームのキャパシタ5121から5124の電圧の上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^sは、s相第2アームのキャパシタ5125から5128の電圧の上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^tは、t相第1アームのキャパシタ5131から5134の電圧の上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^tは、t相第2アームのキャパシタ5135から5138の電圧の上記キャパシタ電圧指令値vDC^*に対する偏差量の平均値である。上記の通り平均電圧演算ユニット1201が出力する値は、各偏差量の平均値であるが、以下の説明では、それぞれ出力する値を単に「キャパシタ電圧偏差量」と呼ぶ。
【0083】
上記の通り、平均電圧演算ユニット1201は、各相のキャパシタ電圧偏差量を、固定座標系の3相信号(ΔvCNV_DCP^rstとΔvCNV_DCN^rst)として出力する。
【0084】
第1αβ0変換器1202は、固定座標系の3相信号を固定座標系の2相信号に変換する。これを「αβ0変換」と呼ぶ。第1αβ0変換器1202は、コンバータ2の第1アームと第2アームとに分けて、「αβ0変換」を実施する。例えば、第1αβ0変換器1202は、コンバータ2の第1アームのキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^αβ0を、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^rstに基づいて、式(4)を用いて算出する。第1αβ0変換器1202は、コンバータ2の第2アームのキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^αβ0を、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^rstに基づいて、式(5)を用いて算出する。上記の式中の「αβ0変換」に用いられる行列式[C^αβ0]を式(6)に示す。
【0085】
【0086】
第1PN-YZ変換器1203は、第1αβ0変換器1202によって座標変換された固定座標系の2相信号に基づいて、その変数を変換する。この変換処理を「PN-YZ変換」と呼ぶ。例えば、第1PN-YZ変換器1203は、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCP^αβ0とキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCN^αβ0に基づいて、次の式(7)を用いてその変数を変換して、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβ0とキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβ0とを算出して、アーム間の直流電圧アンバランス量を分離する。
【0087】
【0088】
次に、アームバランス制御部1204について説明する。
アームバランス制御部1204は、第1PN-YZ変換器1203による演算結果に基づいて、各アームの電圧が互いに等しくなるような電流指令値を生成する。
【0089】
例えば、アームバランス制御部1204は、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβ0とキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβとに基づいて、循環電流を調整するための電流指令値iCNV_ZB^d*と電流指令値iCNV_ZB^q*とを生成する。アームバランス制御部1204は、生成した電流指令値iCNV_ZB^d*を後述のd軸加算器1206dに供給し、電流指令値iCNV_ZB^q*を後述のq軸加算器1206qに供給する。アームバランス制御部1204の詳細については、後述する。
【0090】
次に、第1低周波脈動電力低減制御部1217について説明する。
第1低周波脈動電力低減制御部1217は、インバータ制御部13から供給されるαβ0座標系の低周波脈動成分~pM^α*と~pM^β*とに基づいて、電流指令値iCNV_ZLF^d*と電流指令値iCNV_ZLF^q*とを算出する。インバータ制御部13は、少なくともLF_PPS制御器1322と、第2αβ0変換器1323とを含む。第1低周波脈動電力低減制御部1217と、インバータ制御部13の詳細については、後述する。
【0091】
加算器1206は、アームバランス制御部1204の演算結果と、後述する第1低周波脈動電力低減制御部1217の演算結果とを加算する。例えば、加算器1206は、d軸加算器1206dとq軸加算器1206qを備える。d軸加算器1206dは、第1入力信号の電流指令値iCNV_ZB^d*と、後述する第2入力信号の電流指令値iCNV_ZLF^d*とを加算して、電流指令値iCNV_Z^d*を出力する。q軸加算器1206qは、第1入力信号の電流指令値iCNV_ZB^q*と、後述する第2入力信号の電流指令値iCNV_ZLF^q*とを加算して、電流指令値iCNV_Z^q*を出力する。
【0092】
次に、PLL回路1207について説明する。
PLL回路1207は、例えば、図示されないr相PLL回路と、s相PLL回路と、t相PLL回路と備える。PLL回路1207のr相PLL回路は、例えば、A-B線間電圧に基づいて電源側交流系統7の電圧の基本波成分などを抽出し、位相θCNV^rを生成する。位相θCNV^rは、電源側交流系統7のr相の電圧の基本波の位相に同期している。同様に、PLL回路1207のs相PLL回路は、B-C線間電圧に基づいて位相θCNV^sを生成する。PLL回路1207のs相PLL回路は、C-A線間電圧に基づいて位相θCNV^tを生成する。位相θCNV^rと、位相θCNV^sと、位相θCNV^tは、互いに(2π/3)ラジアンの位相差がある。位相θCNV^rstは、電源角周波数(電気角速度)ωの積分値と等価であり、説明の中で電源角周波数ωと時刻情報(t)の積で示すことがある。
【0093】
なお、PLL回路1207は、三相PLLであってもよい。この場合、PLL回路1207は、電源側交流系統7の系統電圧検出値vs^rstに基づいて系統電圧の基本波成分を抽出し、基本波成分に同期した位相θCNV^rstを生成する。
【0094】
PLL回路1207は、位相θCNV^rstの代表値を、後述する第1dq0変換器1209と、第2dq0変換器1210と、系統電流ACR1212と、第1dq0逆変換器1215とに供給する。
【0095】
第1dq0変換器1209は、固定座標系の3相信号に対するαβ0変換を実施し、さらに、式(9)に示す行列式を用いた「αβ0-dq0変換」を実施することにより固定座標系の2相信号からdq0軸を基準にした回転座標系の2相信号に変換する。基準角度信号θCNV^rstを利用した上記の2段階の変換を纏めて「三相-dq0変換」と呼ぶ。電圧検出器(不図示)によって検出された、電源側交流系統7の系統電圧検出値vS^rstは、固定座標系の3相信号の一例である。系統電圧検出値vS^dqは、回転座標系の2相信号の一例である。第1dq0変換器1209は、次の式(8)に従い、系統電圧検出値vS^rstの三相-dq0変換を実施して、その結果の系統電圧検出値vS^dq0を算出する。なお、系統電圧検出値vS^0の値が0であるため、系統電圧検出値vS^0に関わる後段の処理を省略してもよい。
【0096】
【0097】
第2dq0変換器1210は、同じく、式(10)と式(11)とに示すようにコンバータ2の各アーム電流の検出値の第1アームのrst相電流値iCNV_P^rstと、第2アームのrst相電流値iCNV_N^rstとに対する三相-dq0変換によって、夫々を第1アームのrst相電流値iCNV_P^dq0と、第2アームのrst相電流値iCNV_N^dq0とに変換する。なお、第1アームのrst相電流値iCNV_P^0と、第2アームのrst相電流値iCNV_N^0の成分を後段の処理では利用しないため、その算出を省略してもよい。
【0098】
【0099】
第2PN-YZ変換器1211は、前述した「PN-YZ変換」によって、式(12)を用いて第1アームのrst相電流値iCNV_P^dqと、第2アームのrst相電流値iCNV_N^dqとに基づいて、rst相系統側電流値iCNV_Y^dqと、rst相循環電流値iCNV_Z^dqとに変換する。
【0100】
【0101】
上記の式(12)において、rst相系統側電流値iCNV_Yが系統側電流を表し、rst相循環電流値iCNV_Zがコンバータ2内を循環する循環電流を表す。
【0102】
系統電流ACR1212は、例えば、rst相系統側電流値iCNV_Y^dqと、インバータ側有効電力指令値pM^*と、コンバータ側無効電力指令値qS^*と、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^0と、系統電圧検出値vS^dqと、位相θCNV^rstとに基づいて、rst相電圧指令値vCNV_Y^dq*を算出する。例えば、インバータ側有効電力指令値pM^*と、コンバータ側無効電力指令値qS^*は、上位装置からの指令値である。系統電流ACR1212の詳細については、後述する。
【0103】
第1循環電流制御部1213(以下、「第1循環電流ACR1213」という。)は、電流指令値iCNV_Z^d*と、電流指令値iCNV_Z^q*と、rst相循環電流値iCNV_Z^dqとに基づいて、rst相電圧指令値vCNV_Z^dq*を生成する。第1循環電流ACR1213の詳細については、後述する。
【0104】
第1YZ-PN変換器1214は、前述の「PN-YZ変換」(式(7)参照。)の逆変換を実施する。これを「YZ―PN変換」と呼ぶ。第1YZ-PN変換器1214は、YZ―PN変換によって、rst相電圧指令値vCNV_Y^dq*と、rst相電圧指令値vCNV_Z^dq*とを、第1アームのrst相電圧指令値vCNV_P^dq*と、第2アームのrst相電圧指令値vCNV_N^dq*とに変換する。
【0105】
第1dq0逆変換器1215は、前述のdq0変換(式(9)参照。)の逆変換を実施する。これを「dq0逆変換」と呼ぶ。第1dq0逆変換器1215は、dq0逆変換によって、第1アームのrst相電圧指令値vCNV_P^dq*と、その零相成分のrst相電圧指令値vCNV_P^0とに基づいて、第1アームのrst相電圧指令値vCNV_P^rst*を生成する。第1dq0逆変換器1215は、dq0逆変換によって、第2アームのrst相電圧指令値vCNV_N^dq*と、その零相成分のrst相電圧指令値vCNV_N^0とに基づいて、第2アームのrst相電圧指令値vCNV_N^rst*を生成する。なお、上記のrst相電圧指令値vCNV_P^0とrst相電圧指令値vCNV_N^0の値は、簡単のために0にしてもよく、過変調領域を利用するために基本波の3n次の零相成分にしてもよい。上記の「3n次」は、3の自然数倍の次数を示す。
【0106】
CNV制御器1216は、第1アームのrst相電圧指令値vCNV_P^rst*と、第2アームのrst相電圧指令値vCNV_N^rst*とに基づいて、コンバータ2内の各単相コンバータセルを制御するためのゲートパルスGPCNVを生成する。例えば、コンバータ2内の単相コンバータセルの個数は、3相交流の夫々の相に2個づつアームが設けられ、各アームに4個の単相コンバータセルが設けられているから、全24個になる。単相コンバータセルがフルブリッジ型であれば各単相コンバータセルが4個のスイッチング素子を備えているので、ゲートパルスの信号数は、全96個になる。
【0107】
次に、実施形態のコンバータ制御部12の制御の詳細について説明する。
コンバータ制御部12は、上記の構成を利用して以下の制御を実施する。
・すべてのコンバータ側キャパシタ電圧の直流量を一定にする制御
・コンバータ側低周波脈動電力低減制御
【0108】
以下、コンバータ制御部12による上記の2つの制御について順に説明する。
第1番目の「すべてのコンバータ側キャパシタ電圧の直流量を一定にする制御」は、以下に示す複数の制御(サブ制御)に階層化されていて、その複数の制御の組み合わせによって実現されてもよい。
【0109】
・直流電圧一括制御:
CNV制御器1216は、電源側交流系統7から流入する有効電力を調整することで、すべてのコンバータ側キャパシタ電圧の算術平均値が所望の値になるように制御する。
【0110】
・アームバランス制御:
CNV制御器1216は、コンバータ2(変換器)内を流れる循環電流を制御することで、各アームのコンバータ側直流キャパシタ電圧の平均値が均等になるように制御する。これを、「キャパシタ電圧バランス制御」と呼び、その詳細を後述する。
【0111】
・個別バランス制御:
CNV制御器1216は、各アーム内のコンバータ側直流キャパシタ電圧をバランスさせる際に、個別バランス制御を行ってもよい。
なお、この個別バランス制御は、アーム出力電圧の調整と非干渉な制御である。CNV制御器1216は、上記の「直流電圧一括制御」及び「アームバランス制御」に影響を与えずに独立に制御することが可能である。例えば、r相第1アームが、定格電圧の100%の電圧を出力する場合に、アーム内の4つの単相コンバータセルがそれぞれ出力する電圧(セル出力電圧)の比率を均等(例えば、25% : 25% : 25% : 25%。)に割り当ててもよい。これに制限されず、直流電圧に応じてセル出力電圧の比率を不均等に微調整して割り当ててもよい。このようにアーム内の各単相コンバータセルに割り当てる値を個別に調整するための制御が「個別バランス制御」である。例えば、上記の調整により、セル出力電圧の比率を不均等(例えば、20% :30% : 25% : 25%。)に割り当てることができる。その際に合計値が100%になるように設定される。なお、説明を簡略化するため、以下の説明では、個別バランス制御の説明を省略し、単相コンバータセルがそれぞれ出力する電圧の比率を均等にした場合について説明する。
【0112】
次に、上記の「キャパシタ電圧バランス制御」について説明する。
キャパシタ電圧バランス制御は、例えば、キャパシタ電圧の直流成分を安定化するために、キャパシタ電圧のアンバランス成分を分離して、それが0になるように調整するものであってよい。
【0113】
例えば、コンバータ充電状態検出ユニット1205における平均電圧演算ユニット1201は、コンバータ側キャパシタ電圧の検出値にまずLPF演算を施して交流の基本周波数(fs)に依存する脈動成分を低減させて、その後、各々キャパシタ電圧指令値vDC^*との偏差を計算する。また、平均電圧演算ユニット1201は、上記の偏差量について、アーム内の算術平均を計算する。その一例は、先に説明した通りである。
【0114】
コンバータ充電状態検出ユニット1205は、平均電圧演算ユニット1201の演算結果に対して、第1αβ0変換器1202がαβ0変換を実施して、第1PN-YZ変換器1203が「PN-YZ変換」を実施する。これによりコンバータ充電状態検出ユニット1205は、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβ0と、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβ0とを算出する。コンバータ充電状態検出ユニット1205は、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβ0とキャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβをアームバランス制御1204に供給する。これらは、アーム間の直流電圧アンバランス量を示す。コンバータ充電状態検出ユニット1205は、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^0を系統電流ACR1212に供給する。キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^0は、全キャパシタ電圧の平均とキャパシタ電圧指令値vDC^*との差(偏差量)を示す。
【0115】
アームバランス制御部1204は、第1PN-YZ変換器1203の演算結果を用いて循環電流の指令値を算出する。
【0116】
さらに、コンバータ制御部12は、アームに流れる電流の検出値に基づいた、帰還制御を実施する。例えば、アームに流れる電流の検出値に対して、第2αβ0変換器1210がαβ0変換を実施して、第2PN-YZ変換器1211が「PN-YZ変換」を実施する。第2PN-YZ変換器1211の演算結果のrst相系統側電流値iCNV_Y^dqは、電源側交流系統7側の電流の大きさを示す。rst相系統側電流値iCNV_Z^dqは、コンバータ2内を流れる循環電流を示す。
【0117】
系統電流ACR1212は、この過不足分の電力を電源から授受するために、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^0に基づいて、系統電流iCNV_Yを調整する(これを、「直流電圧一括制御」と呼ぶ。)。
【0118】
次に、実施形態の「直流電圧一括制御」に関わる系統電流ACR1212について説明する。
図7は、実施形態の系統電流ACR1212の構成図である。系統電流ACR1212は、演算ユニット1212aから1212lを備える。なお、VSは、電源側交流系統7の線間電圧実効値を示す。vS^dqは、系統電圧検出値vS^rstに対応する系統電圧検出値を示す。後述する事例では、系統電圧検出値vS^dqを、フィードフォワード項に利用する。
【0119】
演算ユニット1212aは、コンバータ側無効電力指令値qS^*に、電源側交流系統7の線間電圧実効値に基づく所定の係数「1/VS」を乗じて、無効電流出力指令値iCNV_Y^q*を算出する。演算ユニット1212bは、無効電流出力指令値iCNV_Y^q*からrst相系統側電流値iCNV_Y^qを減算する。演算ユニット1212cは、無効電流出力指令値iCNV_Y^q*に対するrst相系統側電流値iCNV_Y^qの偏差量に基づいて、その偏差がゼロになるような第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Y1^q*を算出する。例えば、演算ユニット1212cは、演算式「KS+KS/sTS」に従った比例積分演算を実施して、第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Y1^q*を算出するとよい。上記の「KS」は、例えば予め定められた比例ゲインである。上記の「KS/TS」は、例えば予め定められた積分ゲインである。上記の「TS」は、所定の演算周期であり、演算式の分母の「s」はラプラス演算子である。なお、比例ゲインと積分ゲインの「KS」は、異なる値であってよい。
【0120】
演算ユニット1212dは、インバータ側有効電力指令値pM^*に、上記と同様に所定の係数「1/VS」を乗じて、無効電流出力指令値iCNV_Y^d*を算出する。演算ユニット1212eは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^0に、所定の係数「K0A」を乗じる。上記の「K0A」は、例えば予め定められた定数である。演算ユニット1212fは、演算ユニット1212dと演算ユニット1212eの演算結果を加算して、無効電流出力指令値iCNV_Y^d*を算出する。演算ユニット1212gは、無効電流出力指令値iCNV_Y^d*からrst相系統側電流値iCNV_Y^dを減算する。演算ユニット1212hは、無効電流出力指令値iCNV_Y^d*に対するrst相系統側電流値iCNV_Y^dの偏差量に基づいて、その偏差がゼロになるような第1のd軸系統電圧指令値vCNV_Y1^d*を算出する。
【0121】
演算ユニット1212iは、無効電流出力指令値iCNV_Y^d*に、所定の係数「ωLB」を乗じて、第2のq軸系統電圧指令値vCNV_Y2^q*を算出する。上記の「LB」は、例えばリアクトル3119のリアンクタンスである。演算ユニット1212jは、無効電流出力指令値iCNV_Y^q*に、所定の係数「ωLB」を乗じて、第2のd軸系統電圧指令値vCNV_Y2^d*を算出する。上記の「LB」は、例えばリアクトル3219のリアンクタンスであり、その値はリアクトル3119のリアンクタンスと同じ値であってよい。
【0122】
演算ユニット1212kは、第2のd軸系統電圧指令値vCNV_Y2^d*と、系統電圧検出値vS^dとを加算し、さらにその和から第1のd軸系統電圧指令値vCNV_Y1^d*を減算して、その結果のrst相電圧指令値vCNV_Y^d*を算出する。演算ユニット1212lは、第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Y1^q*と第2のq軸系統電圧指令値vCNV_Y2^q*とを、系統電圧検出値vS^qから減算して、その結果のrst相電圧指令値vCNV_Y^q*を算出する。
【0123】
系統電流ACR1212は、上記の「系統電圧一括制御」によって、全キャパシタ電圧の過不足分の電力を、電源側交流系統7と授受することによって、キャパシタ電圧の直流成分を安定化させる。
【0124】
次に、実施形態の「アームバランス制御」に関わるアームバランス制御部1204について説明する。
【0125】
図8は、実施形態のアームバランス制御部1204の構成図である。アームバランス制御部1204は、演算ユニット1204aから1204hを備える。
【0126】
演算ユニット1204aは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^0に、所定の係数「KCNV_DCY^0」を乗じて、第1の電流指令値ICNV_ZB^f*を算出する。
【0127】
演算ユニット1204bは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβの大きさ(絶対値|ΔvCNV_DCY^αβ|)を算出する。演算ユニット1204cは、絶対値|ΔvCNV_DCY^αβ|に、所定の係数「KCNV_DCY^αβ」を乗じて、第2の電流指令値ICNV_ZB^b*を算出する。演算ユニット1204dは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCY^αβに基づく偏角φCNV_ZB^b*を、次の式(13)を用いて算出する。
【0128】
【0129】
演算ユニット1204eは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβの大きさ(絶対値|ΔvCNV_DCZ^αβ|)を算出する。演算ユニット1204fは、絶対値|ΔvCNV_DCZ^αβ|に、所定の係数「KCNV_DCZ^αβ」を乗じて、第2の電流指令値ICNV_Zdc^b*を算出する。演算ユニット1204gは、キャパシタ電圧偏差量ΔvCNV_DCZ^αβに基づく偏角φCNV_Zdc^b*を、次の式(14)を用いて算出する。
【0130】
【0131】
演算ユニット1204hは、上記の第1の電流指令値ICNV_ZB^f*と、第2の電流指令値ICNV_ZB^b*と、偏角φCNV_ZB^b*と、第2の電流指令値ICNV_Zdc^f*と、偏角φCNV_Zdc^f*とに基づいて、次の式(15)を用いて、電流指令値iCNV_ZB^d*と電流指令値iCNV_ZB^q*とを算出する。
【0132】
【0133】
上記の式(15)の第1項から第3項は、系統周波数の正相・逆相、及び直流の循環電流の大きさに対応する。これらの値を調整することにより、所望の循環電流を流すように制御することができる。
【0134】
次に、実施形態の循環電流制御に関わる第1低周波脈動電力低減制御部1217と、第1循環電流ACR1213とについて、順に説明する。
【0135】
図9は、実施形態の第1低周波脈動電力低減制御部1217の構成図である。第1低周波脈動電力低減制御部1217は、演算ユニット1217aから1217dを備える。
【0136】
演算ユニット1217aは、低周波脈動成分~pM^αβ*の大きさ(絶対値|~pM^αβ*|)を算出する。演算ユニット1217bは、絶対値|~pM^αβ*|に、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」を乗じて、電流指令値ICNV_ZLF^b*を算出する。換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」は、電力を電流に変換するための変換係数(変換率)の一例である。演算ユニット1217cは、低周波脈動成分~pM^αβ*に基づく偏角φCNV_ZLF^b*を、次の式(16)を用いて算出する。
【0137】
【0138】
演算ユニット1217dは、上記の電流指令値ICNV_ZLF^b*と、偏角φCNV_ZLF^b*とに基づいて、次の式(17)を用いて、電流指令値iCNV_ZLF^d*と電流指令値iCNV_ZLF^q*とを算出する。
【0139】
【0140】
上記の式(17)は、前述の式(15)から、アームバランス制御の逆相電流成分を抜き出したものに相当する。ただし、絶対値|~pM^αβ*|に乗じる換算ゲイン「GCNV_LF」は、アームバランス制御部1204の演算ユニット1204aが利用する定数(所定の係数「KCNV_DCY^0」)とは異なる。アームバランス制御における上記の定数は、制御ゲインとして規定される。これに対して、換算ゲイン「GCNV_LF」は、入力の脈動電力から、どれだけの電流が必要かを算出するためのゲインとして規定される。
【0141】
例えば、通常は、換算ゲイン「GCNV_LF」は、脈動電力をすべて打ち消せるだけの値に設定するとよい。コンバータ2の電流容量に余裕がなく、脈動電力をすべて打ち消せるだけの循環電力を供給できない場合や、後述する「INV側低周波脈動制御」を併用する場合などは、換算ゲイン「GCNV_LF」を適宜低減させてもよく、コンバータ2の動作状態によって低減させてもよい。
【0142】
その後、加算器1206は、上記のアームバランス制御の結果の電流指令値iCNV_ZB^dq*と、CNV 側低周波脈動低減制御の結果の電流指令値iCNV_ZLF^dq*とを足し合わせて、最終的な循環電流指令値(電流指令値iCNV_Z^dq*)とする。
【0143】
図10は、実施形態の第1循環電流ACR1213の構成図である。第1循環電流ACR1213は、演算ユニット1213b、1213c、1213gから1213lを備える。
【0144】
演算ユニット1213bは、電流指令値iCNV_Z^q*からrst相系統側電流値iCNV_Z^qを減算する。演算ユニット1213cは、電流指令値iCNV_Z^q*に対するrst相系統側電流値iCNV_Z^qの偏差量に基づいて、その偏差がゼロになるような第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Z1^q*を算出する。例えば、演算ユニット1213cは、「KCNV_Z^dq」で係数が規定される比例演算を実施して、第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Z1^q*を算出するとよい。
【0145】
演算ユニット1213gは、電流指令値iCNV_Z^d*からrst相系統側電流値iCNV_Z^dを減算する。演算ユニット1213hは、電流指令値iCNV_Z^d*に対するrst相系統側電流値iCNV_Z^dの偏差量に基づいて、その偏差がゼロになるような第1のd軸系統電圧指令値vCNV_Z1^d*を算出する。
【0146】
演算ユニット1213iは、電流指令値iCNV_Z^d*に、所定の係数「ωLB」を乗じて、第2のq軸系統電圧指令値vCNV_Z2^q*を算出する。演算ユニット1213jは、電流指令値iCNV_Z^q*に、所定の係数「ωLB」を乗じて、第2のd軸系統電圧指令値vCNV_Z2^d*を算出する。
【0147】
演算ユニット1213kは、第2のd軸系統電圧指令値vCNV_Z2^d*から、第1のd軸系統電圧指令値vCNV_Z1^d*を減算して、その結果のrst相電圧指令値vCNV_Z^d*を算出する。演算ユニット1213lは、第2のq軸系統電圧指令値vCNV_Z2^q*から、第1のq軸系統電圧指令値vCNV_Z1^q*を減算して、その結果のrst相電圧指令値vCNV_Z^q*を算出する。
【0148】
第1循環電流ACR1213によって算出されたrst相電圧指令値vCNV_Z^q*は、後段の第1dq0逆変換器1215と、CNV制御器1216とによって、ゲートパルスGPCNV^rstに変換され、コンバータ2の各アームが、そのゲートパルスGPCNV^rstによって制御される。
【0149】
上記の制御により、コンバータ制御部12は、コンバータ2の内部に、所望の循環電流を流すことができる。
【0150】
例えば、コンバータ制御部12は、第1正側スター結線210と第1負側スター結線220に流す第1循環電流として、電源側交流系統7の交流電力に係る基本波正相電流に対する基本波逆相電流が流れるように、コンバータ2を制御してもよい。
【0151】
コンバータ制御部12は、コンバータ2を、電源側交流系統7の各相の有効電力が揃うように制御してもよい。
【0152】
次に、実施形態のインバータ制御部13について説明する。
図11は、実施形態のインバータ制御部13の構成図である。
【0153】
インバータ制御部13は、第3dq0変換器1310と、第3PN-YZ変換器1311と、モータ電流ACR1312と、第2循環電流制御部1313と、第2YZ-PN変換器1314と、第2dq0逆変換器1315と、INV制御器1316と、INV電流指令値位相演算ユニット1321と、LF_PPS制御器1322と、第2αβ0変換器1323と、第2低周波脈動電力低減制御部1324(図中の記載は「第2LF_RPP制御部」。)と、零相電圧演算ユニット1325と、乗算器1326とを備える。
【0154】
第3dq0変換器1310は、インバータ3の各アーム電流の検出値の第1アームのuvw相電流値iINV_P^uvwと、第2アームのuvw相電流値iINV_N^uvwとを、座標変換用位相θINVを基準にした三相-dq0変換によって、第1アームのuvw相電流値iINV_P^dqと、第2アームのuvw相電流値iINV_N^dqとに変換する。
【0155】
第3PN-YZ変換器1311は、PN-YZ変換を実施する。第3PN-YZ変換器1311は、第1アームのuvw相電流値iINV_P^dqと、第2アームのuvw相電流値iINV_N^dqとに基づいて、uvw相系統側電流値iINV_Y^dqと、uvw相循環電流値iINV_Z^dqとに変換する。uvw相系統側電流値iINV_Yが系統側電流を表し、uvw相循環電流値iINV_Zがコンバータ2内を循環する循環電流を表す。
【0156】
モータ電流制御部1312(以下、「モータACR1312」という。)は、uvw相系統側電流値iINV_Y^dqと、モータ電流指令値iINV_Y^dq*とに基づいて、uvw相電圧指令値vINV_Y^dq*を算出する。
【0157】
モータ電流ACR1312は、例えば、演算ユニット1312b、1312c、1312gから1312lを備える。演算ユニット1312b、1312c、1312gから1312lは、前述の系統電流ACR1213の1212b、1212c、1212gから1212lに対応する。上記の対応付けにより、モータ電流ACR1313の詳細な説明については、
図7とその説明を参照する。
【0158】
第2循環電流制御部1313(以下、「第2循環電流ACR1313」という。)は、電流指令値iINV_ZLF^dq*と、uvw相循環電流値iINV_Z^dqとに基づいて、uvw相電圧指令値vINV_Z^dq*を生成する。
【0159】
第2循環電流ACR1313は、演算ユニット1313b、1313c、1313gから1313lを備える。演算ユニット1313b、1313c、1313gから1313lは、第1循環電流ACR1213の演算ユニット1213b、1213c、1213gから1213lに対応する。上記の対応付けにより、第2循環電流ACR1313の詳細な説明については、
図10とその説明を参照する。
【0160】
第2YZ-PN変換器1314は、YZ-PN変換を実施して、uvw相電圧指令値vINV_Y^dq*と、uvw相電圧指令値vINV_Z^dq*とを、第1アームのuvw相電圧指令値vINV_P^dq*と、第2アームのuvw相電圧指令値vINV_N^dq*とに変換する。
【0161】
零相電圧演算ユニット1325は、上記の「インバータ側低周波脈動電力低減制御」のために、「高周波の零相電圧」を交流電圧に重畳させるように、インバータ3が出力する零相電圧を指定するuvw相電圧指令値vINV_LF^0*を生成する。なお、零相電圧演算ユニット1325は、インバータ3の零相電圧の大きさ(振幅)及び位相を調整する際に、それらをインバータ3の出力電圧が飽和しないように設定するとよい。
【0162】
乗算器1326は、uvw相電圧指令値vINV_LF^0*に基づいて、uvw相電圧指令値vINV_LF^0*と絶対値が等しい負の値のuvw相電圧指令値vINV_LFN^0を算出する。
【0163】
第2dq0逆変換器1315は、第1アームのuvw相電圧指令値vINV_P^dq*と、その零相成分のuvw相電圧指令値vINV_LF^0*とに基づいて、座標変換用位相θINVを基準にしたdq0逆変換を実施して、第1アームのuvw相電圧指令値vINV_P^uvw*を生成する。第2dq0逆変換器1315は、第2アームのuvw相電圧指令値vINV_N^dq*と、その零相成分のuvw相電圧指令値vINV_LFN^0*とに基づいて、同様にdq0逆変換を実施して、第2アームのuvw相電圧指令値vINV_N^uvw*を生成する。
【0164】
INV制御器1316は、第1アームのuvw相電圧指令値vINV_P^uvw*と、第2アームのuvw相電圧指令値vINV_N^uvw*とに基づいて、インバータ3内の各単相インバータセルを制御するためのゲートパルスGPINVを生成する。例えば、インバータ3内の単相インバータセルの個数は、コンバータ2と同様で全24個になる。単相インバータセルがフルブリッジ型であれば、ゲートパルスの信号数は、コンバータ2と同様に全96個になる。
【0165】
INV電流指令値位相演算ユニット1321と、LF_PPS制御器1322と、第2αβ0変換器1323と、第2低周波脈動電力低減制御部1324については、制御の説明の中で纏めて説明する。
【0166】
次に、実施形態のインバータ制御部13の制御について説明する。
【0167】
INV電流指令値位相演算ユニット1321は、速度FBKに基づいて、dq軸のモータ電流指令値iINV_Y^dq*と座標変換用位相(θINV)を算出する。例えば、INV電流指令値位相演算ユニット1321は、上位制御器から指定される速度基準と速度検出器SS(
図1)によって検出されたモータMの角速度(速度FBKという。)に基づいて、ベクトル制御などの既知の技術により、dq軸のモータ電流指令値iINV_Y^dq*を算出するとよい。また、INV電流指令値位相演算ユニット1321は、例えば、速度FBKを積分して座標変換用位相θINVを算出する。
【0168】
なお、
図11に示す構成は、電流マイナループを持つクローズドループ制御を前提としたものであるが、オープンループ制御を適用してもよい。ベクトル制御は、クローズドループ制御の一例であり、V/f制御(電圧周波数比一定制御)はオープンループ制御の一例である。また、上記の構成では速度検出器を用いた速度制御系を例示しているが、速度検出器を用いないセンサレス制御(センサレスベクトル制御)を適用してもよいし、速度制御ではなく、トルク制御に代えてもよい。
【0169】
モータACR1312は、uvw相系統側電流値iINV_Y^dqと、モータ電流指令値iINV_Y^dq*とに基づいて、uvw相電圧指令値vINV_Y^dq*を算出する。第2循環電流ACR1313は、電流指令値iINV_ZLF^dq*と、uvw相循環電流値iINV_Z^dqとに基づいて、uvw相電圧指令値vINV_Z^dq*を生成する。モータACR1312と第2循環電流ACR1313は、それぞれの成分で電流制御を実施する。上記のY成分がモータの駆動電流をあらわしており、モータACR1312は、上記で得られたモータ電流指令値に追従するよう電流制御を実施する。
【0170】
次に、
図12を参照して、LF_PPS制御器1322について説明する。
図12は、実施形態のLF_PPS制御器1322の構成図である。LF_PPS制御器1322は、モータ電流指令値iINV_Y^dq*と、uvw相電圧指令値vINV_Y^dq*とに基づいて、モータMに供給する電力pMに含まれている低周波脈動成分(~pM^uvw*)を算出する。
【0171】
例えば、LF_PPS制御器1322は、第3dq0逆変換器1322aと、第4dq0逆変換器1322bと、演算ユニット1322cから1322jとを備える。
【0172】
第3dq0逆変換器1322aは、座標変換用位相θINVを基準にしたdq0逆変換を実施して、dq軸のuvw相電圧指令値のY成分vINV_Y^dq*と、その零相成分のuvw相電圧指令値のY成分vINV_Y^0とに基づいて、uvw相電圧指令値のY成分vINV_Y^uvw*を生成する。なお、uvw相電圧指令値vINV_Y^0値は、0である。
【0173】
第4dq0逆変換器1322bは、座標変換用位相θINVを基準にしたdq0逆変換を実施して、dq軸のuvw相電流指令値のY成分iINV_Y^dq*と、その零相成分のuvw相電流指令値のY成分iINV_Y^0とに基づいて、uvw相電流指令値のY成分iINV_Y^uvw*を生成する。なお、uvw相電流指令値iINV_Y^0の値は、0である。
【0174】
演算ユニット1322c、1322d、1322eは、乗算器である。演算ユニット1322c、1322d、1322eは、uvw相電圧指令値のY成分vINV_Y^uvw*と、uvw相電流指令値のY成分iINV_Y^uvw*とを成分毎に乗算して、uvw相の瞬時電力指令値pM^uvw*を算出する。
【0175】
演算ユニット1322fは、加算器であり、uvw相の瞬時電力指令値pM^uvw*の各成分を加算する。uvw相の瞬時電力指令値pM^uvw*の合計値が有効電力指令値pM^*になる。演算ユニット1322gは、有効電力指令値pM^*を3で割って、その商を各相に配分して、後段の基準値にする。
【0176】
演算ユニット1322h、1322i、1322jは、減算器であり、uvw相の瞬時電力指令値pM^uvw*の各成分から、各相に配分された基準値(有効電力指令値pM^*/3)を減算する。演算ユニット1322h、1322i、1322jの演算結果は、各相に含まれていた低周波脈動成分(~pM^uvw*)になる。これにより、LF_PPS制御器1322は、uvw相の低周波脈動成分を相毎に分離することができる。
【0177】
次に、
図10に戻り、LF_PPS制御器1322の後段に設ける第2αβ0変換器1323について説明する。
第2αβ0変換器1323は、αβ0変換によって、uvw相の低周波脈動成分(~pM^uvw*)を、固定座標系の低周波脈動成分(~pM^αβ0*)に変換する。第2αβ0変換器1323は、低周波脈動成分(~pM^αβ*)を、後述する第2低周波脈動電力低減制御部1324と、前述した第1低周波脈動電力低減制御部1217とに出力する。なお、第2αβ0変換器1323は、零相成分を出力しなくてもよい。
【0178】
ところで、インバータ3が出力する第2交流電力の基本周波数fMと位相は、コンバータ2に供給される第1交流電力の基本周波数fSと位相と互いに異なる。上記の通り、第2αβ0変換器1323は、αβ0変換によって、低周波脈動成分を固定座標系で表す。これにより、コンバータ2とインバータ3は、上記の低周波脈動成分の値を、固定座標系の情報として共有することができる。コンバータ2とインバータ3は、固定座標系の低周波脈動成分の値に基づいて、それぞれ制御することにより、互いに連携した制御を可能にする。
【0179】
次に、前述の
図11を参照して、第2低周波脈動電力低減制御部1324が低周波脈動成分(~pM^αβ*)を用いてインバータ3内の循環電流を制御することについて説明する。
【0180】
図11に示される第2低周波脈動電力低減制御部1324は、
図7に示された第1低周波脈動電力低減制御部1217とは構成が異なる。
【0181】
第2低周波脈動電力低減制御部1324は、低周波脈動成分(~pM^αβ*)に基づいて、電流指令値iINV_ZLF^αβ*を生成する。
【0182】
例えば、第2低周波脈動電力低減制御部1324は、次の式(18)を用いて、上記の低周波脈動成分~pM^αβ*に、コンバータ2側と同様に換算ゲイン「GINV_LF^αβ」を乗じて、電流指令値IINV_ZLF^αβ*を算出する。換算ゲイン「GINV_LF^αβ」は、電力を電流に変換するための変換係数(変換率)の一例である。
【0183】
【0184】
CNV 側でも説明したとおり、制御部10は、電力変換装置1の運転状態に応じて、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」の比率を、予めまたは適応的に適切な値に設定することで、低周波脈動電力を低減する効果を最適化することができる。上記の比率をこれに従い決定するとよい。
【0185】
第2低周波脈動電力低減制御部1324は、上記で求めた循環電流の電流指令値IINV_ZLF^αβ*に、αβ0逆変換を施して、uvw相の電流指令値IINV_ZLF^uvw*を生成する。このとき、零相の値を0にする。
【0186】
次に、第2低周波脈動電力低減制御部1324は、次の式(19)を用いて、電流指令値IINV_ZLF^uvw*に基づいて、電流指令値iINV_ZLF^uvw*を算出する。
【0187】
【0188】
次に、第2低周波脈動電力低減制御部1324は、電流指令値iINV_ZLF^uvw*に、dq変換を施して、電流指令値iINV_ZLF^dq*を算出する。
【0189】
第2循環電流ACR1313は、前述の第1循環電流ACR1213と同様の手法によって、第2低周波脈動電力低減制御部1324によって算出された電流指令値iINV_ZLF^dq*に基づいて、uvw相電圧指令値vINV_Z^dq*を生成する。
【0190】
この後の、第2dq0逆変換器1315と、INV制御器1316とによる処理は、先に説明した通りである。
【0191】
なお、零相電圧演算ユニット1325は、次の式(20)を用いて、uvw相電圧指令値vINV_LF^0*を生成するとよい。
【0192】
【0193】
ここで、基本波周波数fMよりも高い周波数成分(以下、fX と呼ぶ。)について規定する。上記の式(20)における「X」は、上記の周波数成分fXの識別に用いる識別子である。「VX^0*」は、周波数成分fXの零相電圧の指令値を、実効値で規定したものである。同様に「ωX」と「φX^0」は、周波数成分fXの角速度と、零相電圧の位相を示す。
【0194】
上記のように、インバータ3は、低周波脈動成分~pM^αβ*と、コンバータ2側と同様に、電力を電流に変換する換算ゲイン「GINV_LF^αβ」とを用いて、コンバータ2内の循環電流を決定する。
【0195】
なお、上記の式(20)に示す換算ゲイン「GINV_LF^αβ」は、前述の第1循環電流ACR1213の換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と同様に零相電流の制御に利用されるが、換算ゲイン「GCNV_LF」とは互いに異なる値であって良い。
【0196】
例えば、制御部10の記憶部には、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」とを格納する領域が割り当てられていて、これらを規定するデータがその領域に予め格納されている。コンバータ制御部12は、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」を用いて、コンバータ2側の零相電圧の成分の大きさ(振幅)を調整する。インバータ制御部13は、換算ゲイン「GINV_LF^αβ」を用いて、インバータ3側の零相電圧の成分の大きさ(振幅)を調整する。これにより、コンバータ2とインバータ3は、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」とをそれぞれ用いることで、夫々の零相電圧の成分の大きさ(振幅)を独立に決定することができる。
【0197】
なお、制御部10は、電力変換装置1の運転状態に応じて、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」の比率を、予めまたは適応的に適切な値に設定することで、低周波脈動電力を低減する効果を最適化することができる。上記の換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」は、変換率の一例である。
【0198】
上記のように、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」と換算ゲイン「GINV_LF^αβ」を用いる場合に、インバータ3は、換算ゲイン「GINV_LF^αβ」に基づいて、周波数成分fXの零相電圧を重畳し、かつ同周波数の循環電流をインバータ3内に流すことで、基本波周波数fMに由来の脈動電力を低減させる。これに併せて、コンバータ2は、換算ゲイン「GCNV_LF^αβ」に基づいて、周波数成分fXの零相電圧を重畳し、かつ同周波数の循環電流をコンバータ2内に流すことで、基本波周波数fMに由来の脈動電力を低減させる。
【0199】
この場合、コンバータ2とインバータ3は、それぞれの零相電圧の成分には、周波数成分fXの正弦波を用いてもよく、周波数成分fXの方形波を用いてもよい。
【0200】
上記の実施形態の電力変換装置1によれば、コンバータ2(第1電力変換器)は、コンバータ第1アームと、コンバータ第2アームと、コンバータ第1アームをスター型に接続する第1正側スター結線210と、コンバータ第2アームをスター型に接続する第1負側スター結線220と、第1正側スター結線210と第1負側スター結線220とを電源側交流系統7の各相にそれぞれ接続する第1交流接続端子201、202、203(第1端子)とを含み、コンバータ第1アームとコンバータ第2アームとが電源側交流系統7の第1交流電力と第1直流電力とを相互に変換する。絶縁型の複数のDCDC変換装置4000は、前記第1直流電力と第2直流電力を相互に変換する。インバータ3(第2電力変換器)は、インバータ第1アームと、インバータ第2アームと、インバータ第1アームをスター型に接続する第2正側スター結線310と、インバータ第2アームをスター型に接続する第2負側スター結線320と、第2正側スター結線310と第2負側スター結線320とを負荷側交流系統8の各相にそれぞれ接続する第2交流接続端子301、302、303(第2端子)とを含み、インバータ第1アームとインバータ第2アームとが前記第2直流電力と第2交流電力とを相互に変換する。
【0201】
このような、電力変換装置1では、第1正側スター結線210と第1負側スター結線220とが電源側交流系統7に接続され、第2正側スター結線310と第2負側スター結線320とが負荷側交流系統8に接続されることにより、コンバータ2とインバータ3とが、電力変換装置の負荷側に供給される有効電力の各相間の不平衡を軽減させることで、上記の負荷側交流系統8の有効電力の各相間の不平衡が、電源側交流系統7に影響することを軽減させることができる。
【0202】
上記の構成の場合、コンバータ2のコンバータ第1アームとコンバータ第2アームは、コンバータスター結線によって所謂ダブルスター型に接続されている。インバータ3のインバータ第1アームとインバータ第2アームは、インバータスター結線によって所謂ダブルスター型に接続されている。この場合、コンバータ2がデルタ結線で接続される場合に比べて各相に掛かる電圧が低くなるため、各相の単相コンバータセルの個数が、デルタ結線の場合の個数よりも少なくなる。インバータ3を負荷側交流系統8に接続する場合も同様である。
【0203】
コンバータ制御部12は、電源側交流系統7に係る基本波逆相電流を成分に含む第1循環電流が第1正側スター結線210と第1負側スター結線220とに流れるように、コンバータ2を制御するとよい。この場合、コンバータ2は、第1循環電流ACR1213によって生成されたrst相電圧指令値vCNV_Z^dq*に基づいて電流量が調整された第1循環電流を流すことができる。
【0204】
上記の場合に、インバータ制御部13は、第2正側スター結線310と第2負側スター結線320とに流す第2循環電流を調整して、インバータ3を制御するようにしてもよい。この場合、インバータ3は、第2循環電流ACR1313によって生成されたuvw相電圧指令値vINV_Z^dq*に基づいた電流量に調整された第2循環電流を流すことができる。
【0205】
さらに、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、上記の第1循環電流の調整量と第2循環電流の調整量を、インバータ3の状態量に基づいて算出してもよい。例えば、速度FBKは、インバータ3の状態量の一例である。
【0206】
なお、制御部10(電力変換制御装置)におけるコンバータ制御部12は、第1正側スター結線210と第1負側スター結線220に流す第1循環電流として、第1交流電力に係る基本波正相電流に対する基本波逆相電流を流すように、コンバータ2を制御する。インバータ制御部13は、第2正側スター結線310と第2負側スター結線320に第2循環電流を流すように制御する。その際、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、第1循環電流と第2循環電流を所定の係数を用いて独立に制御するとよい。これにより、コンバータ制御部12とインバータ制御部13とによる調整量を軽減することができる。
【0207】
(変形例)
次に、いくつかの変形例について説明する。
【0208】
第1の変形例では、インバータ制御部13がインバータ3の状態量としてインバータ3における第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力(第2直流電力)の低周波脈動成分を検出して、コンバータ制御部12は、第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力の低周波脈動成分に基づいて、コンバータ2内の第1循環電流を調整してもよい。これにより、第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力の低周波脈動成分が生じている場合に、コンバータ2内に第1循環電流を流すことで、第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力の低周波脈動成分の影響をコンバータ2側で軽減させることができる。
【0209】
第2の変形例では、インバータ制御部13は、上記の第2直流電力の直流電圧の低周波脈動成分に基づいて、第2直流電力の直流電圧の低周波脈動成分が少なくなるように、インバータ3内の第2循環電流を調整してもよい。これにより、第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力の低周波脈動成分が生じている場合に、コンバータ2内に第1循環電流を流すことで、第2単相フルブリッジ回路の直流側の電力の低周波脈動成分の影響をコンバータ2側に波及しないように軽減させることができる。
【0210】
第3の変形例では、コンバータ2における複数の単相コンバータセルには、それぞれ第1キャパシタが設けられている。コンバータ制御部12は、複数の単相コンバータセルにそれぞれ設けられている第1キャパシタの電圧の直流量と第2直流電力の直流電圧の低周波脈動成分とに基づいて、複数の単相コンバータセルの第1キャパシタの電圧の直流量を一定にするように第1交流電力の基本波の逆相の第1循環電流を調整してもよい。
【0211】
なお、上記の制御部10は、例えば、図示されない記憶部と、CPU(central processing unit)と、駆動部と、取得部とを備える。記憶部と、CPUと、駆動部と、取得部は、例えばBUSを介して制御部内で接続されている。記憶部は、半導体メモリを含む。CPUは、ソフトウェアプログラムに従い、所望の処理を実行するプロセッサを含む。駆動部は、CPUの制御に従い、電力変換装置1の各部に対する制御信号を生成する。取得部は、各電流センサーと各電圧センサーの検出結果を取得する。例えば、制御部10のCPUは、取得部によって取得した電流センサーと電圧センサーの検出結果に基づいて、駆動部によって各相の主回路を制御する。制御部10は、その処理の一部または全部を上記のようにソフトウェアプログラムの処理により実現されてもよく、これに代わりハードウェアによって実現されてもよい。また、制御部10を適宜分割して構成してよく、これによって回路の絶縁性を確保してよい。
【0212】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0213】
なお、以上の実施形態の説明では、各単相コンバータセル、各単相インバータセル、及びDCDC変換装置4000の単相フルブリッジ回路として2レベルの単相自励変換器を含むものを例示したが、各単相コンバータセル、各単相インバータセル、及びDCDC変換装置4000の単相フルブリッジ回路は、これに制限されず、3レベルやそれ以上の任意のレベルの単相自励変換器であってよい。その場合には、レベル数に見合った数のキャパシタを設けるとよい。
【符号の説明】
【0214】
1…電力変換装置、2…コンバータ(第1電力変換器)、3…インバータ(第2電力変換器)、4…DCDC変換装置群、5…コンバータ側キャパシタ群、6…インバータ側キャパシタ群、7…電源側交流系統、8…負荷側交流系統、10…制御部、12…コンバータ制御部、13…インバータ制御部、210…第1正側スター結線、220…第1負側スター結線、201、202、203…第1交流接続端子、2110…r相第1アーム、2120…s相第1アーム、2130…t相第1アーム、2210…r相第2アーム、2220…s相第2アーム、2230…t相第2アーム、310…第2正側スター結線、320…第2負側スター結線、301、302、303…第2交流接続端子、3110…u相第1アーム、3120…v相第1アーム、3130…w相第1アーム、3210…u相第2アーム、3220…v相第2アーム、3230…w相第2アーム、2111から2114、2215から2218…単相コンバータセル、3111から3114、3215から3218…単相インバータセル、4111から4114、4215から4218、4000…DCDC変換装置、5111から5114、5215から5218…キャパシタ(第1キャパシタ)、6111から6114、6215から6218…キャパシタ(第2キャパシタ)