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特許7267289セレブロン改変化合物のスクリーニング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-21
(45)【発行日】2023-05-01
(54)【発明の名称】セレブロン改変化合物のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230424BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230424BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
A61K38/16
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020538704
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013049
(87)【国際公開番号】W WO2019140088
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】62/617,112
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/710,401
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509307635
【氏名又は名称】セルジーン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マリー マティスキエラ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ チャンバーレイン
(72)【発明者】
【氏名】スザナ スツルリニ コウト
(72)【発明者】
【氏名】ガング ル
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン スタンプ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジェイ.シェルラット
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア フイ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/161119(WO,A1)
【文献】特表2009-517479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0265230(US,A1)
【文献】特表2015-528112(JP,A)
【文献】特表2017-534270(JP,A)
【文献】特表2017-538104(JP,A)
【文献】GANG LU, RICHARD E. MIDDLETON, HUAHANG SUN, MARKVIC NANIONG, CHRISTOPHER J. OTT, CONSTANTINE S. MITSIADES, KWOK-KIN WONG, JAMES E. BRADNER AND WILLIAM G. KAELIN, JR.,The Myeloma Drug Lenalidomide Promotes the Cereblon-Dependent Destruction of Ikaros Proteins,SCIENCE,2013年11月28日,Vol 343, Issue 6168,pp. 305-309,DOI: 10.1126/science.1244917
【文献】Kronke, J., Fink, E., Hollenbach, P. et al,Lenalidomide induces ubiquitination and degradation of CK1α in del(5q) MDS,Nature,2015年,523,183-188,https://doi.org/10.1038/nature14610
【文献】Jurgen Knobloch & Ulrich Ruther,Shedding light on an old mystery: Thalidomide suppresses survival pathways to induce limb defects,Cell Cycle,2008年,7:9,1121-1127
【文献】Jurgen Kohlhase, Marielle Heinrich, Lucia Schubert, Manuela Liebers, Andreas Kispert, Franco Laccone, Peter Turnpenny, Robin M. Winter, William Reardon,Okihiro syndrome is caused by SALL4 mutations,Human Molecular Genetics,2002年11月01日,Volume 11, Issue 23,Pages 2979-2987,https://doi.org/10.1093/hmg/11.23.2979
【文献】Hiro Tatetsu, Nikki R. Kong, Gao Chong, Giovanni Amabile, Daniel G. Tenen, Li Chai,SALL4, the missing link between stem cells, development and cancer,Gene,2016年,Volume 584, Issue 2,Pages 111-119,https://doi.org/10.1016/j.gene.2016.02.019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
A61K 31/33 -33/44
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セレブロン改変化合物を試料に投与すること、及び
(b)前記セレブロン改変化合物が、Sal-like protein 4(SALL4)の分解を誘発するかを判断することを含む方法であって、
該SALL4の分解が、SALL4とセレブロンとの相互作用によって誘発される、前記方法
【請求項2】
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)試料を得ること、
(b)前記試料中のSal-like protein 4(SALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、
(c)前記セレブロン改変化合物を前記試料に投与すること、
(d)前記試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、
(e)SALL4の前記第1のタンパク質レベルと前記第2のタンパク質レベルを比較して、前記セレブロン改変化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び
(f)SALL4の前記第2のタンパク質レベルが前記第1のタンパク質レベルよりも低くない場合、SALL4の分解を誘発しない前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含み、
SALL4の前記第1のタンパク質レベルと前記第2のタンパク質レベルとの差異が、SALL4とセレブロンとの相互作用によって誘発される、前記方法。
【請求項3】
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)前記試料中のSal-like protein 4(SALL4のユビキチン化レベルを求めること、
(c)コントロール試料中の対照化合物により誘発されるSALL4のユビキチン化よりも、低下したレベルのSALL4のユビキチン化を誘発する前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含み、
SALL4のユビキチン化が、SALL4とセレブロンとの相互作用によって誘発される、前記方法。
【請求項4】
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
Sal-like protein 4(SALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、
(c)コントロール試料中のSALL4とセレブロンとの相互作用を誘発する対照化合物と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しない前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含む前記方法。
【請求項5】
前記疾患または障害が、がんである、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、血液がんである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、固形がんである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが、多発性骨髄腫、リンパ腫及び白血病からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、多発性骨髄腫である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記がんが、リンパ腫である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが、白血病である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
SALL4の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって、またはSALL4の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11)とセレブロンとの相互作用によって、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)試料を得ること、
(b)前記試料中のSal-like protein 4(SALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、
(c)前記セレブロン改変化合物を前記試料に投与すること、
(d)前記試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、
(e)SALL4の前記第1のタンパク質レベルと前記第2のタンパク質レベルを比較して、前記セレブロン改変化合物の催奇形性作用を判断すること、
を含み、
SALL4の前記第1のタンパク質レベルと前記第2のタンパク質レベルとの差異が、SALL4とセレブロンとの相互作用によって誘発される、前記方法。
【請求項14】
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)前記試料中のSal-like protein 4(SALL4のユビキチン化レベルを求めることによって、前記セレブロン改変化合物の催奇形性作用を判断すること、
を含み、
SALL4のユビキチン化が、SALL4とセレブロンとの相互作用によって誘発される、前記方法。
【請求項15】
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)Sal-like protein 4(SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することによって、前記セレブロン改変化合物の催奇形性作用を判断すること、
を含む前記方法。
【請求項16】
SALL4の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって、またはSALL4の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11)とセレブロンとの相互作用によって、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年1月12日に出願した米国特許仮出願第62/617,112号及び2018年2月16日に出願した米国特許仮出願第62/710,401号の優先権の権利を主張するものであり、これらの各出願の開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本願には、参照により、14247-269-228_SEQ_LISTING.txtという名称で2019年1月8日に作成し、サイズが57,330バイトであるテキストファイルとして、本願とともに提出した配列表が援用される。
【0003】
1.技術分野
本発明で提供するのは、ある特定の実施形態においては、催奇形性を誘発するリスクが低減されたセレブロン改変化合物のスクリーニング方法である。さらに本発明で提供するのは、ある特定の実施形態においては、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法である。
【背景技術】
【0004】
2.背景
タンパク質セレブロン(CRBN)には、少なくとも2つのアイソフォームが存在し、それぞれ442アミノ酸長及び441アミノ酸長であり、CRBNは、植物からヒトまで保存されている。ヒトでは、CRBN遺伝子は、常染色体劣性非症候群性精神遅滞(ARNSMR)の候補遺伝子として同定されている。Higgins,J.J.et al.,Neurology,2004,63:1927-1931を参照されたい。CRBNは当初、ラット脳で、カルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質(SLO1)と相互作用する新規なRGS含有タンパク質として特徴付けられ、後に、AMPK1及びDDB1とともに、網膜内の電位依存性塩素チャネル(CIC-2)と相互作用することが示された。Jo,S.et al.,J.Neurochem,2005,94:1212-1224、Hohberger B.et al.,FEBS Lett,2009,583:633-637、Angers S.et al.,Nature,2006,443:590-593を参照されたい。DDB1は元々、損傷DNA結合タンパク質2(DDB2)と会合するヌクレオチド除去修復タンパク質として同定された。その活性の欠損により、色素性乾皮症相補群E(XPE)の患者において、修復が欠損する。DDB1は、標的タンパク質のユビキチン化及びそれに続くプロテアソーム分解を媒介する多くの異なるDCX(DDB1-CUL4-X-box)E3ユビキチンタンパク質リガーゼ複合体の構成要素としても機能すると見られる。CRBNは、大脳皮質の疾患に対する治療剤の開発の標的としても特定されている。WO2010/137547A1を参照されたい。
【0005】
CRBNは、サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドマイドのような治療用化合物に結合する重要な分子標的として特定されている。これらの薬物は、CRBNを標的とし、そのユビキチンリガーゼの基質特異性を改変して、特定のがん細胞において臨床活性を誘導する。結合した基質は、CRBN-CRL4複合体によってユビキチン化され、その結果、26Sプロテアソームによって分解される。CRBN下流の基質を特定し、CRBNとそれらの基質との相互作用を理解することにより、有効性及び/または毒性の分子機序を定義できるようになり、有効性及び毒性プロファイルの改善した薬物をもたらし得る。
【発明の概要】
【0006】
3.発明の概要
一態様では、本発明において提供するのは、(a)セレブロン改変化合物を試料に投与すること、及び(b)その化合物が、SALL4タンパク質の分解を誘発するかを判断することを含む方法である。
【0007】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物がSALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び(f)SALL4の分解を誘発しないその化合物を選択することを含む方法である。
【0008】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、SALL4の分解レベルを求めること、及び(f)対照化合物と比べて、SALL4の分解の低減を示す(または誘導する)その化合物を選択することを含む方法である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、SALL4の分解を誘発するセレブロン改変化合物である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによるそのSALL4の分解と比べて低減される。
【0009】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、(c)SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しないその化合物を選択することを含む方法である。
【0010】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、(c)対照化合物と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用の低減をもたらす(または誘導する)その化合物を選択することを含む方法である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、SALL4とセレブロンとの相互作用(または結合)を誘発するセレブロン改変化合物である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによるそのSALL4の分解と比べて低減される。
【0011】
一実施形態では、SALL4とセレブロンとのその相互作用は、サリドマイドの存在下における、SALL4とセレブロンとの相互作用と比べて低減される。
【0012】
いくつかの実施形態では、SALL4とセレブロンとのその相互作用は、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって判断する。いくつかの実施形態では、SALL4とセレブロンとのその相互作用は、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基とセレブロンとの相互作用によって判断する。
【0013】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、(c)SALL4のユビキチン化を誘発しないその化合物を選択することを含む方法である。
【0014】
別の態様では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、(c)対照化合物と比べて、SALL4のユビキチン化レベルの低下を示す(誘導する)その化合物を選択することを含む方法である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、SALL4のユビキチン化を誘発するセレブロン改変化合物である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な一実施形態では、そのSALL4のユビキチン化は、サリドマイドによるそのSALL4のユビキチン化と比べて低下する。
【0015】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、その疾患または障害は、がんである。いくつかの実施形態では、そのがんは、血液がんである。別の実施形態では、そのがんは、固形がんである。いくつかの実施形態では、そのがんは、多発性骨髄腫、リンパ腫及び白血病からなる群から選択する。具体的な実施形態では、そのがんは、多発性骨髄腫である。別の具体的な実施形態では、そのがんは、リンパ腫である。さらに別の具体的な実施形態では、そのがんは、白血病である。別の実施形態では、その疾患または障害は、がんではない。一実施形態では、その疾患または障害は、非催奇形性治療、例えば、非催奇形性であるかまたは対照化合物による治療と比べて、催奇形性の軽減されたセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、その催奇形性は、サリドマイドによる治療と比べて軽減されている。
【0016】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用の低減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4とセレブロンとの相互作用は、サリドマイドによる治療と比べて低減されている。
【0017】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4のユビキチン化を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4のユビキチン化の軽減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4のユビキチン化は、サリドマイドによる治療と比べて軽減されている。
【0018】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4の分解を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4の分解の低減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによる治療と比べて低減される。
【0019】
別の態様では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断することによって、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。
【0020】
さらに別の態様では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)そのセレブロン改変化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めることによって、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。
【0021】
さらに別の態様では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することを含み、SALL4とセレブロンとのその相互作用によって、催奇形性の可能性が示される方法である。いくつかの実施形態では、SALL4とセレブロンとのその相互作用は、SALL4とセレブロンとの物理的結合である。
【0022】
いくつかの実施形態では、SALL4とセレブロンとの相互作用は、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって判断する。いくつかの実施形態では、SALL4とセレブロンとの相互作用は、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11)とセレブロンとの相互作用によって判断する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
4.図面の簡単な説明
図1A】特定のSALL4ジンクフィンガードメイン(405~432位のアミノ酸)が、サリドマイド依存的に、セレブロン-CRL4によって顕著にユビキチン化されることを示している(DMSOは、ネガティブコントロールである)。Ikarosのジンクフィンガードメイン(140~168位のアミノ酸)のユビキチン化をポジティブコントロールとして使用した。
【0024】
図1B】個々のSALL4ジンクフィンガーと、セレブロンと結合するIkaros及びZFP91のジンクフィンガーをアラインメントしたものを示している。重要なグリシンの位置が強調表示されている。
【0025】
図1C】in vitroにおいて、ヒト及びウサギのSALL4ジンクフィンガーは、セレブロン-CRL4の直接的なサリドマイド依存性基質であるが、マウスSALL4は、認識されないことを示している。パネルaは、SALL4Aタンパク質の概略図であり、ジンクフィンガードメインが、四角で囲まれている。デグロンのグリシンを含むジンクフィンガーは、☆で強調表示されている。パネルbには、個々のMBPタグ付加SALL4ジンクフィンガーにおいて、サリドマイドの不在下(DMSO、ビヒクルコントロール)または存在下(thal)で、セレブロン-CRL4によるユビキチン化について試験した結果が示されている。ユビキチン化反応物は、SDS-PAGEによって分離してから、抗MBPウエスタンブロットを行った。SALL4ジンクフィンガー2(ZF2、410~432位のアミノ酸)は、サリドマイド依存的に、セレブロン-CRL4によって効率的にユビキチン化されたが、SALL4ジンクフィンガー4(ZF4、594~616位のアミノ酸)のユビキチン化は弱かった。パネルcには、SALL4ジンクフィンガーのユビキチン化が、β-ヘアピンセレブロン結合モチーフ内の重要なグリシンに依存していることが示されている。MBPタグを付加したWT SALL4ジンクフィンガー2及びG416A SALL4ジンクフィンガー2において、SDS-PAGEによる分離及び抗MBP抗体によるウエスタンブロッティングの前に、ユビキチン化について試験した。重要なグリシンの変異によって、ユビキチン化が有意に軽減され、このSALL4ジンクフィンガーが、証明されたグリシン含有β-ヘアピンモチーフを利用して、セレブロンと結合することが示された。「-」は、サリドマイドを含むが、ATPを含まない完全反応物を示している。パネルdには、ウサギセレブロンは、ウサギSALL4を標的とし得るが、マウスセレブロンまたはヒトセレブロンのいずれも、マウスSALL4を標的とできないことが示されている。ヒトSALL4ジンクフィンガー2、またはオルソログのウサギジンクフィンガー及びマウスジンクフィンガーにおいて、示されているように、ヒトセレブロン、ウサギセレブロンまたはマウスセレブロンによるin vitroでのユビキチン化について試験した。ウサギセレブロンによるウサギジンクフィンガー2(362~389位のアミノ酸)のユビキチン化では、効率性は、ヒトセレブロンによるヒトSALL4のユビキチン化と同程度である。これに対して、マウスSALL4ジンクフィンガー2(415~437位のアミノ酸)は、マウスセレブロンまたはヒトセレブロンによって、効率的にはユビキチン化されない。「-」は、サリドマイドを含むが、ATPを含まない完全反応物を示している。パネルb~dの結果はそれぞれ、3回の独立した実験の代表的なものである。
【0026】
図1D】SALL4ジンクフィンガー2(410~432位のアミノ酸)におけるG416Aという変異、及びSALL4ジンクフィンガー4(594~616位のアミノ酸)におけるG600Aという変異によって、Ikaros及びZFP91のセレブロン結合ジンクフィンガーの同様の変異と同様に、そのそれぞれのジンクフィンガーのユビキチン化が、有意に軽減されたことを示しており、SALL4ジンクフィンガーが、証明されたグリシン含有モチーフを利用して、セレブロンに結合することが示されている。MBPタグを付加した野生型SALL4ジンクフィンガー及びグリシン変異SALL4ジンクフィンガーを個々に精製し、SDS-PAGEによる分離及び抗MBP抗体によるウエスタンブロッティングの前に、精製したセレブロン-CRL4によるユビキチン化についてin vitroで試験した。結果は、3回の独立した実験の代表的なものである。
【0027】
図1E】ヒトセレブロン、ウサギセレブロン及びマウスセレブロンをアラインメントしたものを示しており、種間のアミノ酸の違いが示されている。E377及びV388は、ヒトにおいて、基質の結合に不可欠であり、マウスにおいて、基質の結合を阻害するものであることが示されたとともに、強調表示されている。ウサギでは、これらの位置に、ヒトアミノ酸が見られる。複数配列のアラインメントは、CLUSTAL O(1.2.4)を用いて行った。
【0028】
図1F】ヒトSALL4、ウサギSALL4及びマウスSALL4をアラインメントしたものを示しており、種間のアミノ酸の違いが示されている。セレブロン-CRL4+サリドマイドによって強くユビキチン化されるヒトジンクフィンガー2が、強調表示されている。セレブロンとの結合のために重要なグリシン残基が示されている。複数配列のアラインメントは、CLUSTAL O(1.2.4)を用いて行った。
【0029】
図1G】SALL4ジンクフィンガー2骨格の構造モデル(左)、及びサリドマイドの存在下で、SALL4ジンクフィンガーが結合しているセレブロンの構造モデル(右)を示しており、ヒトとのアミノ酸配列の違いが、強調表示されている。SALL4ジンクフィンガー2は、ウサギでは100%保存されているが、マウスでは、アミノ酸の違いが5つ見られる。ウサギセレブロンでは、基質結合部位の周囲領域に、アミノ酸の違いは見られないが、マウスセレブロンは、サリドマイド結合ポケットを取り囲む2つのアミノ酸の違い(E377V及びV388I)を含み、セレブロンネオ基質の結合を阻害する。
【0030】
図1H】マウスSALL4ジンクフィンガーが、ヒトまたはマウスのセレブロンによって、効率的にはユビキチン化されないことを示している。パネルaは、マウスSALL4Aタンパク質の概略を示しており、ジンクフィンガードメインが、四角で囲まれている。デグロンのグリシンを含むジンクフィンガーは、☆で強調表示されている。パネルbには、個々のMBPタグ付加SALL4ジンクフィンガーにおいて、サリドマイドの不在下(DMSO、ビヒクルコントロール)または存在下(thal)で、マウスセレブロン(左パネル)またはヒトセレブロン(右パネル)のいずれかによるユビキチン化について試験した結果が示されている。ユビキチン化反応物は、SDS-PAGEによって分離してから、抗MBPによるウエスタンブロットを行った。比較のために、セレブロンと結合するZFP91ジンクフィンガー(395~423位のアミノ酸、ヒト、ウサギ及びマウスの間で100%保存されている)、ならびにヒトSALL4ジンクフィンガー2(ZF2、410~432位のアミノ酸)が示されており、この両方とも、サリドマイド依存的に、ヒトセレブロンによって効率的にユビキチン化される。パネルcには、セレブロンと結合するZFP91ジンクフィンガー(395~423位のアミノ酸、ヒト、ウサギ及びマウスの間で100%保存されている)において、ヒトセレブロン、ウサギセレブロン及びマウスセレブロンによるユビキチン化について試験した結果が示されている。ZFP91は、ヒトセレブロン及びウサギセレブロンによって効率的にユビキチン化できるが、マウスセレブロンによってはユビキチン化できない。これにより、ZFP91は、ヒト、ウサギ及びヒト化セレブロンマウスにおいては分解されるが、野生型マウスでは分解されないことが示されている。パネルb及びcの結果は、3回の独立した実験の代表的なものである。
【0031】
図2】細胞内でのSALL4の分解が、化合物及びセレブロンに依存的なものであり、G416からA416への変異によって、SALL4のこの分解が阻害されることを示している。
【0032】
図3】共免疫沈降によって示した場合に、細胞内でのSALL4とセレブロンとの結合が、化合物に依存的なものであり、G416の変異によって阻害されることを示している。
【0033】
図4】各種のがん細胞株において、短期間暴露(S.E)または長期間暴露(L.E.)の後に、内在性SALL4が化合物依存的に分解されたことを示している。
【0034】
図5】SALL4のIHC染色によって示した場合に、サリドマイドが、用量依存的に、ウサギ精巣中のSALL4レベルを低下させることを示している。
【0035】
図6】SALL4のIHC染色によって示した場合に、サリドマイドが、ウサギ胚においてSALL4レベルをダウンレギュレートさせることを示している。雌の妊娠ウサギを180mg/kgのサリドマイドで処置し、受精から12日後に胚を調べた。胚を固定し、SALL4(上パネル)及びビメンチンC(下パネル)を染色し、免疫組織化学法によって調べた。すべての組織は、ヘマトキシリンブルーで対比染色した。画像は、各群においてn=10の胚の代表的なものである。
【0036】
図7A】iPS細胞におけるSALL4タンパク質のレベルの低下が、サリドマイド及びセレブロンに依存することを示している。CRBN野生型(WT)ヒトiPS細胞及びCRBNノックアウト(-/-)ヒトiPS細胞の全細胞溶解液のイムノブロット解析を行った。細胞を、DMSOビヒクルコントロール(-)、または示されている濃度のサリドマイド(Thal)で16時間処理した(n=4、生物学的複製物)。
【0037】
図7B】iPS細胞におけるSALL4タンパク質のレベルのサリドマイド依存的な低下が、NEDD化依存的かつプロテアソーム依存的であることを示している。1μMのMLN4924または10μMのMG132の存在下または不在下で、DMSO(-)またはThal(+)で6時間処理したヒトiPS細胞の全細胞溶解液のイムノブロット解析を行った(n=2、生物学的複製物)。
【0038】
図7C】GST-CRBN及びSALL4バリアントを安定的に発現するLenti-X-293HEK細胞の全細胞溶解液のイムノブロット解析結果を示している。示されているように、細胞を40μMのサリドマイド(+)またはビヒクルコントロールのDMSO(-)で16時間処理した(n=2、生物学的複製物)。
【0039】
図7D】GST-CRBN及びSALL4バリアントを安定的に発現するLenti-X-293HEK細胞の抗HA免疫沈降物(上パネル)及び全細胞溶解液(下パネル)のイムノブロット解析結果を示している。示されているように、すべての細胞を1μMのMLN4924、及び40μMのサリドマイド(+)またはビヒクルコントロールのDMSO(-)で8時間処理した(n=2、生物学的複製物)。
【0040】
図7E】ヒトiPS細胞におけるSALL4 mRNAのレベルのqRT-PCR解析によって、SALL4タンパク質のレベルの低下が、転写のダウンレギュレーションによるものではないことが示されていることを示している。DMSOまたは20μMのサリドマイド(THA)で16時間処理したヒトiPS細胞に対して、定量RT-PCR解析を行った。SALL4及びPOU5F1(OCT4)の相対的なmRNAレベルは、GAPDHによって正規化した(n=2、生物学的複製物)。
【0041】
図8】ウサギにおいてサリドマイドによる処理を行うと、in vivoにおいて、SALL4タンパク質のレベルが低下するが、野生型マウスまたはヒトセレブロンを発現するマウスでは低下しないことを示している。ウサギ、野生型マウス及びヒト化セレブロンマウスの精巣で、SALL4及びZFP91のタンパク質レベルを免疫組織化学法によって調べた。左パネルには、150mg/kgのサリドマイドでウサギを処理した場合に、ZFP91及びSALL4の両方が分解されたことが示されている。中央パネルには、野生型マウスを1000mg/kgのサリドマイドで処理した場合には、ZFP91またはSALL4のいずれも、有意には分解されなかったことが示されている。右パネルには、huCRBNマウスを1000mg/kgのサリドマイドで処理した場合に、ZFP91は分解されたが、SALL4は分解されなかったことが示されている。huCRBNマウスは、7日処置して、精巣を採取し、免疫組織化学法によって調べた(マウス種あたり処置群あたりn=3匹)。
【0042】
図9】未処置のウサギの胚とサリドマイドで処置したウサギの胚の肢芽において、SALL4 mRNAのレベルが同程度であったことを示している。ウサギ胚の肢芽において、SALL4 mRNA転写産物をin situハイブリダイゼーション(ISH)によって可視化した。
【0043】
図10】ヒト化セレブロンノックインマウスの概略を示している。
【0044】
図11】サリドマイドで処置したhuCRBNマウスにおいて、四肢欠損が観察されなかったことを示している。ビヒクルで処置したマウスの骨格写真が左側に示されており、1000mg/kgのサリドマイドで処置したhuCRBNトランスジェニックマウスが右側に示されている。骨の可視化のために、胎児は、アリザリンレッドSで準備した。
【発明の詳細な説明】
【0045】
5.発明の詳細な説明
本発明で提供する方法は部分的には、SALL4が、セレブロン-CRL4によるユビキチン化の直接的な化合物依存性基質であるという所見に基づいている。例えば、下記の第6節の実施例に示されているように、SALL4は、ウサギの精巣及び発育中のウサギ胚において、サリドマイドによる処理によってダウンレギュレーションされる。本明細書に示さているデータによって、SALL4のダウンレギュレーションが、サリドマイドのようなセレブロン改変化合物による治療によって誘発される催奇形性作用の大きな動因であることが示されている。したがって、SALL4レベルを利用して、セレブロン改変化合物の毒性を判断することによって、生殖毒性及び/または胚障害のリスクが低減された化合物のスクリーニング及び選択を可能にできる。
【0046】
5.1 定義
「セレブロン」または「CRBN」という用語、及び類似の用語は、ヒトCRBNタンパク質(例えば、GenBankアクセッション番号NP_057386のヒトCRBNアイソフォーム1またはGenBankアクセッション番号NP_001166953のヒトCRBNアイソフォーム2(それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される))のようないずれかのCRBNのアミノ酸配列を含むポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では同義的に用いる)と、関連するポリペプチド(そのSNPバリアントを含む)を指す。関連するCRBNポリペプチドには、ある特定の実施形態では、CRBN活性を保持し、及び/または抗CRBN免疫応答を起こすのに充分であるアレルバリアント(例えばSNPバリアント)、スプライスバリアント、断片、誘導体、置換バリアント、欠失バリアント、挿入バリアント、融合ポリペプチド及び種間ホモログが含まれる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「化合物」及び「治療用化合物」という用語は、同義的に用いる。化合物の非限定的な例としては、下記の第5.4節に開示されているものが挙げられる。本開示の例示的な化合物または治療用化合物は、セレブロン改変化合物である。
【0048】
「セレブロン改変化合物」(または「CRBN改変剤」)という用語は、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体を直接または間接的に調節する分子を指す。いくつかの実施形態では、「セレブロン改変化合物」は、CRBNに直接結合するか、CRBNタンパク質のコンホメーション変化を誘導するか、またはCRBNタンパク質の表面を変化させることができる。別の実施形態では、セレブロン改変化合物は、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体の他のサブユニットに直接結合できる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「免疫調節化合物」または「免疫調節薬」という用語は概して、免疫応答を何らかの方法で改変できる分子または薬剤を指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語には、固形がん及び血液がんが含まれるが、これらに限らない。「がん」という用語は、組織または器官の疾患を指し、膀胱癌、骨癌、血液がん、脳癌、乳癌、頸癌、胸部癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭部癌、腎臓癌、肝臓癌、リンパ節癌、肺癌、口腔癌、頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、咽喉癌及び子宮癌が挙げられるが、これらに限らない。具体的ながんとしては、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、神経芽腫、髄膜腫、血管周囲細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、膠芽腫、脳幹グリオーマ、予後不良の悪性脳腫瘍、悪性グリオーマ、再発性悪性グリオーマ、退形成星性細胞腫、退形成乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、結腸直腸癌(ステージ3及びステージ4の結腸直腸癌を含む)、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、核型急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性胸水中皮腫症候群、腹膜癌、漿液性乳頭状癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維異形成症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除後のハイリスク軟部組織肉腫、肝細胞癌、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無症候性骨髄腫、卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞状甲状腺癌、甲状腺髄様癌及び平滑筋腫が挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
本明細書で使用する場合、「血液がん(blood borne cancer)」または「血液がん(hematologic cancer)」とは、体の造血系及び免疫系(骨髄組織及びリンパ組織)の癌を指す。このような癌としては、白血病、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、ホジキン病(ホジキンリンパ腫ともいう)及び骨髄腫が挙げられる。一実施形態では、その骨髄腫は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、その白血病は例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)白血病、肥満細胞症またはB細胞急性リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、そのリンパ腫は例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞免疫芽球性リンパ腫、小非分割細胞性リンパ腫、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)白血病/リンパ腫、成人T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、AIDS関連性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換リンパ腫、縦隔原発(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、リヒタートランスフォーメーション、節性辺縁帯リンパ腫またはALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫である。一実施形態では、その血液がんは、例えば、DLBCL、濾胞性リンパ腫または辺縁帯リンパ腫を含む緩慢性リンパ腫である。そのリンパ腫は、新たに診断されたものであり、再発性であり、難治性であり、及び/または従来の療法に対して耐性であることができる。
【0052】
「白血病」という用語は、造血組織の悪性新生物を指す。白血病としては、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病及び急性骨髄芽球性白血病が挙げられるが、これらに限らない。白血病は、新たに診断されたものであり、再発性であり、難治性であり、及び/または従来の療法に対して耐性であることができる。
【0053】
「骨髄異形成症候群」という用語は、血液(赤血球、白血球(リンパ球以外)及び血小板(またはその前駆細胞である巨核球))の細胞成分のうちの1つ以上の産生の異常によって特徴付けられる血液学的状態を指し、不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴うRA(RARS)、芽球過剰のRA(RAEB)、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)、単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症(RCUD)、分類不能型骨髄異形成症候群(MDS-U)、del(5q)単独の染色体異常を伴う骨髄異形成症候群、治療関連骨髄性腫瘍及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)という障害が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「前骨髄球性白血病」または「急性前骨髄球性白血病」とは、骨髄系の細胞における成熟血液細胞不全と、前骨髄球という未熟細胞の過剰が見られる、骨髄の悪性腫瘍を指す。その白血病は通常、15番染色体及び17番染色体の領域の転座によって特徴付けられる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「急性リンパ芽球性白血病」としても知られる「急性リンパ性白血病(ALL)」とは、初期の非顆粒性白血球、すなわちリンパ球の異常な成長または発生を原因とする悪性疾患を指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、「T細胞白血病」とは、Tリンパ球またはT細胞と呼ばれる特定のリンパ系細胞が悪性である疾患を指す。T細胞は、通常は、ウイルス感染細胞、外来細胞及びがん細胞を攻撃するとともに、免疫応答を調節する物質を産生することができる白血球である。
【0057】
本明細書で使用する場合、別段に定められていない限り、「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、患者が所定の疾患または障害に罹患している際に行う措置であって、その疾患もしくは障害の重症度、その疾患もしくは障害の症状を軽減するか、またはその疾患または障害の進行を遅らせるかもしくは減速させる措置を指す。一実施形態では、その疾患または障害は、がんである。
【0058】
本明細書で使用する場合、化合物の「治療上有効な量」という用語は、疾患または障害の治療または管理の際に治療効果をもたらすか、またはその疾患もしくは障害の存在と関連する1つ以上の症状を遅らせるかもしくは最小限に抑えるのに充分な量である。化合物の治療上有効な量とは、治療剤単独の量、または他の療法剤と組み合わせた場合の治療剤の量であって、疾患または障害の治療または管理の際に治療効果をもたらす量を意味する。「治療上有効な量」という用語には、治療全体を改善するか、疾患もしくは障害の症状もしくは原因を軽減もしくは回避するか、または別の治療剤の治療効力を高める量を含めることができる。その用語は、研究者、獣医、医師または臨床医が追求している、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNAもしくはDNA)、細胞、組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を誘起するのに充分な化合物量も指す。
【0059】
「調節する」という用語は、本明細書で使用する場合、分子または生体機能の活性または機能を増強または低減することのように、分子または生体機能の活性を制御することを指す。
【0060】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語(本明細書では同義的に用いられている)は、3つ以上のアミノ酸が連続した配列で、ペプチド結合を通じて連結されているアミノ酸ポリマーを指す。「ポリペプチド」という用語には、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質類似体、オリゴペプチドなどが含まれる。「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、ペプチドを指すこともできる。ポリペプチドを構成するアミノ酸は、天然由来であっても、合成したものであってもよい。ポリペプチドは、生体試料から精製できる。ポリペプチド、タンパク質またはペプチドには、修飾されたポリペプチド、タンパク質及びペプチド、例えば、糖ポリペプチド、糖タンパク質もしくは糖ペプチド、またはリポポリペプチド、リポタンパク質もしくはリポペプチドも含まれる。
【0061】
「レベル」という用語は、分子の量、蓄積量または比率を指す。レベルは、例えば、遺伝子によってコードされたメッセンジャーRNA(mRNA)の合成量もしくは合成速度、遺伝子によってコードされたポリペプチドもしくはタンパク質の合成量もしくは合成速度、または細胞もしくは生体液に蓄積された生体分子の合成量もしくは合成速度によって表すことができる。いくつかの実施形態では、「レベル」という用語は、試料中の分子の絶対量または分子の相対量を定常状態または非定常状態の条件下で求めたものを指す。
【0062】
「求めること」、「測定すること」、「評価すること(evaluating)」、「評価すること(assessing)」及び「アッセイすること」という用語は、本明細書で使用する場合、概して、いずれかの形態の測定を指し、ある要素が存在するか否かを判断することを含む。これらの用語には、定量的判断及び/または定性的判断が含まれる。評価は、相対的評価であっても、絶対的評価であってもよい。「~の存在を判断すること」には、存在するものの量を求めること、及びその存在または不在を判断することを含めることができる。
【0063】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では、ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドで構成されたいずれかの長さのポリマー、または合成により作製した化合物であって、2本の天然の核酸と同様に、配列特異的に天然の核酸とハイブリダイズできる(例えば、ワトソン・クリック塩基対相互作用に関与できる)化合物を説明する目的で、同義的に用いられている。「複数の塩基」(または「1つの塩基」)という用語は、ポリヌクレオチド配列との関係で本明細書で使用する場合、「複数のヌクレオチド」(または「1つのヌクレオチド」)、すなわち、ポリヌクレオチドのモノマーサブユニットと同義である。「ヌクレオシド」及び「ヌクレオチド」という用語は、既知のプリン塩基及びピリミジン塩基を含有する部分のみならず、修飾された他の複素環型塩基も含有する部分を含むように意図されている。このような修飾物としては、メチル化プリンもしくはメチル化ピリミジン、アシル化プリンもしくはアシル化ピリミジン、アルキル化リボース、またはその他の複素環が挙げられる。加えて、「ヌクレオシド」及び「ヌクレオチド」という用語には、従来のリボース糖及びデオキシリボース糖のみならず、他の糖も含有する部分が含まれる。修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、糖部分にも修飾を含み、例えば、そのヒドロキシル基のうちの1つ以上が、ハロゲン原子もしくは脂肪族基で置き換えられているか、またはエーテルもしくはアミンなどに官能化されている。「類似体」とは、模倣体、誘導体として文献で認識されている構造的特徴を有する分子、類似の構造を有する分子、または他の同様の用語を指し、例えば、非天然ヌクレオチドが組み込まれたポリヌクレオチド、ヌクレオチド模倣体(2’-修飾ヌクレオシドなど)、ペプチド核酸、オリゴマーヌクレオシドホスホネート、及び置換基(保護基または連結部分など)が付加されている任意のポリヌクレオチドが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「結合する」という用語は、直接的または間接的な結合を示す。「結合する」という用語は、ある特定の実施形態では、2分子間の直接的な物理的相互作用を意味する。化学的構造との関係においては、「結合する」とは、2つの部分を直接連結するか、または2つの部分を間接的に(例えば、その分子の連結基もしくは任意の他の介在部分を介して)連結する化学結合が存在することを指してよい。その化学結合は、共有結合、イオン結合、配位錯体、水素結合、ファンデルワールス相互作用または疎水性スタッキングであっても、複数のタイプの化学結合の特徴を示すものであってもよい。特定のケースでは、「結合する」には、その結合が直接的である実施形態、及びその結合が間接的である実施形態が含まれる。本明細書で使用する場合、「セレブロンに結合する」には、セレブロンへの直接的な結合、及びCRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体の他のサブユニットへの結合の両方が含まれる。
【0065】
「試料」という用語は、本明細書で使用する場合、必須ではないが、典型的には流体形態で、対象となる構成成分を1つ以上含む物質または物質の混合物に関するものである。試料は、「生体試料」であることができ、「生体試料」とは、生体組織または生体液由来の試料を含め、生体対象から得た試料であって、in vivoまたはin situで取得または採取した試料を指す。生体試料には、罹患細胞または罹患組織、例えば前がん細胞、前がん組織、がん細胞またはがん組織を含む生体対象領域に由来する試料も含まれる。このような試料は、哺乳動物から単離した器官、組織及び細胞であることができるが、これらに限らない。他の例示的な試料としては、細胞溶解液、細胞培養液、細胞株、単離タンパク質(複合体中のものを含む)、合成タンパク質(複合体中のものを含む)、細胞抽出物、操作した細胞(例えば、遺伝子改変細胞またはトランスフェクション細胞)、細菌細胞(例えばE.coli細胞)、昆虫細胞(例えばspodoptera frugiperda細胞)、胎児細胞、胎児組織、ゼブラフィッシュ組織、口腔組織、胃腸組織、器官、細胞小器官、生体液、血液試料、尿試料、皮膚試料、骨髄試料、循環腫瘍細胞、腫瘍細胞など、及びこれらのうちの1つ以上を組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
【0066】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「製薬学的に許容可能な塩」という用語には、その用語が言及している化合物の無毒の酸付加塩と塩基付加塩が含まれる。許容可能な無毒の酸付加塩には、当該技術分野において知られている有機酸及び無機酸に由来する塩が含まれ、その酸としては例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボル酸、エナント酸などが挙げられる。天然において酸性である化合物は、様々な製薬学的に許容可能な塩基と塩を形成できる。このような酸性化合物の製薬学的に許容可能な塩基付加塩を調製するのに用いることができる塩基は、無毒の塩基付加塩、すなわち、以下に限らないが、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(特には、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩)のように、薬理学的に許容可能なカチオンを含む塩を形成する塩基である。好適な有機塩基としては、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リシン及びプロカインが挙げられるが、これらに限らない。
【0067】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「溶媒和物」という用語は、本明細書に示されている化合物またはその塩であって、非共有結合分子間力により結合された溶媒を化学量論的量または非化学量論的量でさらに含む化合物またはその塩を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、水和物である。
【0068】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「共結晶」という用語は、結晶格子内に2つ以上の化合物を含む結晶体を意味する。共結晶には、結晶格子内で、非イオン性相互作用を通じて結合し合った2つ以上の不揮発性化合物の結晶性分子複合体が含まれる。本明細書で使用する場合、共結晶には、その結晶性分子錯体に、治療用化合物と、1つ以上の追加の不揮発性化合物(複数可)(本明細書ではカウンター分子(複数可)という)が含まれている医薬品共結晶が含まれる。医薬品共結晶中のカウンター分子は典型的には、例えば、食品添加物、保存剤、医薬品賦形剤またはその他の医薬活性成分(API)のような製薬学的に許容可能な非毒性分子である。いくつかの実施形態では、医薬品共結晶は、APIの化学構造的一体性を損なうことなく、薬品の特定の物理化学的特性(例えば、溶解性、溶解速度、バイオアベイラビリティ及び/または安定性)を高める。例えば、Jones et al.,MRS Bulletin 2006,31,875-879、Trask,Mol.Pharmaceutics 2007,4(3):301-309、Schultheiss & Newman,Crystal Growth & Design 2009,9(6):2950-2967、Shan & Zaworotko,Drug Discovery Today 2008,13(9/10):440-446及びVishweshwar et al.,J.Pharm.Sci.2006,95(3):499-516を参照されたい。
【0069】
本明細書で使用する場合、別段に定められていない限り、「立体異性体」という用語には、本発明の鏡像異性体的/立体異性体的に純粋な化合物及び鏡像異性体的/立体異性体的に濃縮された化合物のすべてが含まれる。
【0070】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「立体異性体的に純粋な」という用語は、化合物の1つの立体異性体を含むとともに、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の逆のエナンチオマーを実質的に含まないことになる。キラル中心を2つ有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないことになる。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の1つの立体異性体を約80重量%超、その化合物の他の立体異性体を約20重量%未満、より好ましくは、その化合物の1つの立体異性体を約90重量%超、その化合物の他の立体異性体を約10重量%未満、さらに好ましくは、その化合物の1つの立体異性体を約95重量%超、その化合物の他の立体異性体を約5重量%未満、最も好ましくは、その化合物の1つの立体異性体を約97重量%超、その化合物の他の立体異性体を約3重量%未満含む。
【0071】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「立体異性体的に濃縮された」という用語は、化合物の1つの立体異性体を約60重量%超、好ましくは、約70重量%超、より好ましくは、化合物の1つの立体異性体を約80重量%超含む組成物を意味する。本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「鏡像異性体的に純粋な」という用語は、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、「立体異性体的に濃縮された」という用語は、キラル中心を1つ有する化合物の立体異性体的に濃縮された組成物を意味する。
【0072】
本明細書で使用する場合、別段に定められていない限り、「プロドラッグ」という用語は、化合物の誘導体であって、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解したり、酸化したり、または別段の形で反応したりして、その化合物をもたらすことのできる誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド及び生加水分解性ホスフェート類似体のような生加水分解性部分を含む化合物が挙げられるが、これらに限らない。プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO、-ONOまたは-ONO部分を含む化合物が挙げられる。プロドラッグは典型的には、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,172-178,949-982(Manfred E.Wolff,ed.,5th ed.1995)及びDesign of Prodrugs(H.Bundgaard,ed.,Elselvier,New York 1985)に記載されているような周知の方法を用いて調製できる。
【0073】
化合物は、その原子の1つ以上において、非天然な割合の原子同位体を含むことができる点にも留意されたい。例えば、化合物は、例えばトリチウム(H)、ヨウ素125(125I)、硫黄35(35S)または炭素14(14C)のような放射性同位体で放射線標識されていても、重水素(H)、炭素13(13C)または窒素15(15N)などの同位体が濃縮されていてもよい。本明細書で使用する場合、「アイソトポログ」は、同位体が濃縮された化合物である。「同位体が濃縮された」という用語は、その原子の天然の同位体組成以外の同位体組成を有する原子を指す。「同位体が濃縮された」とは、その原子の天然の同位体組成以外の同位体組成を有する原子を少なくとも1つ含む化合物を指してもよい。「同位体組成」という用語は、所定の原子において存在する各同位体の量を指す。放射線標識されており、同位体が濃縮された化合物は、治療剤、例えば、がん治療剤、炎症治療剤、研究試薬、例えば結合アッセイ試薬、及び診断剤、例えばin vivoイメージング剤として有用である。本明細書に記載されているような化合物の同位体の変形形態はいずれも、放射性であるか否かにかかわらず、本発明で提供する実施形態の範囲に含まれるように意図されている。いくつかの実施形態では、化合物のアイソトポログを提供し、例えば、そのアイソトポログは、重水素、炭素13または窒素15が濃縮された化合物である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するアイソトポログは、重水素が濃縮された化合物である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するアイソトポログは、重水素が濃縮された化合物であって、キラル中心で重水素化されている化合物である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、本発明で提供する化合物のアイソトポログであって、キラル中心で重水素化されている化合物である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、化合物Cのアイソトポログであって、キラル中心で重水素化されている化合物である。
【0074】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定されるような、特定の値の許容誤差を意味し、この誤差は部分的には、その値を測定したり、または求めたりする方法に左右される。ある特定の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、標準偏差が1、2、3または4以内であることを意味する。ある特定の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、所定の値または範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.05%以内であることを意味する。
【0075】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、同義的に用いられている。本明細書で使用する場合、対象は、霊長類動物以外の動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類動物(例えば、サル及びヒト)のような哺乳動物であることができる。具体的な実施形態では、対象は、ヒトである。一実施形態では、対象は、疾患、障害または状態を有する哺乳動物(例えばヒト)である。別の実施形態では、対象は、疾患、障害または状態を発症するリスクのある哺乳動物(例えばヒト)である。
【0076】
本明細書で使用する場合、化合物に関連する「選択すること」及び「選択された」とは、特定の化合物が所定の基準を有することに基づき(所定の基準を有することにより)、その特定の化合物を化合物群から特異的に選択することを意味する目的で用いられている。化合物は、化合物のライブラリーまたは化合物群をスクリーニングすることによって選択できる。
【0077】
図示されている構造と、その構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合、図示されている構造が優先されることに留意されたい。加えて、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太線または破線で示されていない場合、その構造または構造の一部には、そのすべての立体異性体が含まれると解釈するものとする。
【0078】
本明細書に示されている実施形態の実施の際には、別段に示されていない限り、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来の技法を用いることとし、これらの技法は、当業者の技能の範囲内である。このような技法は、文献で十分に説明されている。特に好適な参照用テキストの例としては、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.1989)、Glover,ed.,DNA Cloning,Volumes I and II(1985)、Gait,ed.,Oligonucleotide Synthesis(1984)、Hames & Higgins,eds.,Nucleic Acid Hybridization(1984)、Hames & Higgins,eds.,Transcription and Translation(1984)、Freshney,ed.,Animal Cell Culture:Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986)、Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、Scopes,Protein Purification:Principles and Practice(Springer Verlag,N.Y.,2d ed.1987)及びWeir & Blackwell,eds.,Handbook of Experimental Immunology,Volumes I-IV(1986)が挙げられる。
【0079】
5.2 化合物を特徴付けるかまたは選択する方法
Sal-like protein 4(SALL4)は、Spalt-like(SALL)遺伝子ファミリーのメンバーであるSALL4によってコードされる転写因子である。SALL4の発現は、マウスでは、7細胞期または8細胞期ほどの発生早期に開始され(Elling et al.,PNAS,103(44):16319-16324(2006)、Koshiba-Takeuchi et al.,Nat Genetics,38:175-183(2006))、成人のヒト及びその他の哺乳動物の精巣のように、特定の種類の幹細胞では、胚盤胞期以降も持続する(Eildermann et al.,Cells Tissues Organs,196(3):206-20(2012)、Gassei et al.,Plos One,8(1):e53976(2013))。
【0080】
SALL4は、四肢の形態形成を制御する胚性転写因子である。発生時の機能性SALL4タンパク質のレベルの低下は、四肢奇形によって特徴付けられるいくつかのヒト症候群の原因であることが示されている。ヒトでは、SALL4における機能欠損変異は、オキヒロ症候群(デュアン-橈側列症候群としても知られている)、IVIC症候群(眼-耳-橈側列症候群としても知られている)、ホルト-オーラム症候群及び肢端-腎-眼症候群を引き起こし、これらの症候群はいずれも、前腕異常とともに、耳、眼、心臓及び腎臓の様々な程度の異常によって特徴付けられる(Borozdin et al.,J Med Genet,41:e113 (2004)、Borozdin et al.,J Med Genetics,41:e102(2004)、Kholase et al.,Human Mutat.,26(3):176-83(2005)、Al-Baradie et al.,Am J Hum Genet.,71:1195-1199(2002)、Kohlase et al.,J Med Genet.,40(7):473-8(2003)及びKohlase et al.,Birth Defects Res A Clin Mol Teratol.,70(8):550-1(2004))。これらの症候群と関連するSALL4変異は、常染色体優性変異であり、SALL4活性を低下させると予想される(Borozdin et al.,J Med Genet,41:e113(2004)、Koshiba-Takeuchi et al.,Nat Genetics,38:175-183(2006))。したがって、SALL4のハプロ不全が発症メカニズムであること、及びSall4タンパク質のレベルの低下が小さくても、発生異常が生じると予測し得ることが示されている。
【0081】
SALL4には、少なくとも2つのアイソフォーム(SALL4A及びSALL4B)が存在する。本発明で提供する方法は部分的には、SALL4Aが、セレブロン-CRL4によるユビキチン化の直接的な化合物依存性基質であるという発見に基づいている。下記の第6節の実施例によって、SALL4Aは、in vitro及びin vivoにおいて、セレブロン-CRL4によるユビキチン化の直接的な化合物誘発性標的であることが示されている。
【0082】
すなわち、本開示に開示されているデータによって、SALL4(またはSALL4A)の分解が、セレブロン改変化合物によって誘発される催奇形性の動因として特定されている。SALL4のレベルを用いて、セレブロン改変化合物の毒性を判断することによって、生殖毒性のリスクが低減されたセレブロン改変化合物のスクリーニング及び選択を可能にできる。より具体的には、SALL4の分解の有意な低減を誘発しないか、またはSALL4の分解を有意には低減させないセレブロン改変化合物は、生殖毒性のリスクが低減されている可能性があるので、特定の患者を治療するには、そのような化合物が好ましいことがある。
【0083】
本明細書で使用する場合、「SALL4」という用語は、アイソフォームA、すなわちSALL4Aを指す。ヒトSALL4A(識別子:Q9UJQ4-1)のアミノ酸配列は、
MSRRKQAKPQ HINSEEDQGE QQPQQQTPEF ADAAPAAPAA GELGAPVNHP GNDEVASEDE ATVKRLRREE THVCEKCCAE FFSISEFLEH KKNCTKNPPV LIMNDSEGPV PSEDFSGAVL SHQPTSPGSK DCHRENGGSS EDMKEKPDAE SVVYLKTETA LPPTPQDISY LAKGKVANTN VTLQALRGTK VAVNQRSADA LPAPVPGANS IPWVLEQILC LQQQQLQQIQ LTEQIRIQVN MWASHALHSS GAGADTLKTL GSHMSQQVSA AVALLSQKAG SQGLSLDALK QAKLPHANIP SATSSLSPGL APFTLKPDGT RVLPNVMSRL PSALLPQAPG SVLFQSPFST VALDTSKKGK GKPPNISAVD VKPKDEAALY KHKCKYCSKV FGTDSSLQIH LRSHTGERPF VCSVCGHRFT TKGNLKVHFH RHPQVKANPQ LFAEFQDKVA AGNGIPYALS VPDPIDEPSL SLDSKPVLVT TSVGLPQNLS SGTNPKDLTG GSLPGDLQPG PSPESEGGPT LPGVGPNYNS PRAGGFQGSG TPEPGSETLK LQQLVENIDK ATTDPNECLI CHRVLSCQSS LKMHYRTHTG ERPFQCKICG RAFSTKGNLK THLGVHRTNT SIKTQHSCPI CQKKFTNAVM LQQHIRMHMG GQIPNTPLPE NPCDFTGSEP MTVGENGSTG AICHDDVIES IDVEEVSSQE APSSSSKVPT PLPSIHSASP TLGFAMMASL DAPGKVGPAP FNLQRQGSRE NGSVESDGLT NDSSSLMGDQ EYQSRSPDIL ETTSFQALSP ANSQAESIKS KSPDAGSKAE SSENSRTEME GRSSLPSTFI RAPPTYVKVE VPGTFVGPST LSPGMTPLLA AQPRRQAKQH GCTRCGKNFS SASALQIHER THTGEKPFVC NICGRAFTTK GNLKVHYMTH GANNNSARRG RKLAIENTMA LLGTDGKRVS EIFPKEILAP SVNVDPVVWN QYTSMLNGGL AVKTNEISVI QSGGVPTLPV SLGATSVVNN ATVSKMDGSQ SGISADVEKP SATDGVPKHQ FPHFLEENKI AVS
(配列番号1)
である。
【0084】
ヒトSALL4Aのコード配列は、
1 atgtcgaggc gcaagcaggc gaaaccccag cacatcaact cggaggagga ccagggcgag
61 cagcagccgc agcagcagac cccggagttt gcagatgcgg ccccagcggc gcccgcggcg
121 ggggagctgg gtgctccagt gaaccaccca gggaatgacg aggtggcgag tgaggatgaa
181 gccacagtaa agcggcttcg tcgggaggag acgcacgtct gtgagaaatg ctgtgcggag
241 ttcttcagca tctctgagtt cctggaacat aagaaaaatt gcactaaaaa tccacctgtc
301 ctcatcatga atgacagcga ggggcctgtg ccttcagaag acttctccgg agctgtactg
361 agccaccagc ccaccagtcc cggcagtaag gactgtcaca gggagaatgg cggcagctca
421 gaggacatga aggagaagcc ggatgcggag tctgtggtgt acctaaagac agagacagcc
481 ctgccaccca ccccccagga cataagctat ttagccaaag gcaaagtggc caacactaat
541 gtgaccttgc aggcactacg gggcaccaag gtggcggtga atcagcggag cgcggatgca
601 ctccctgccc ccgtgcctgg tgccaacagc atcccgtggg tcctcgagca gatcttgtgt
661 ctgcagcagc agcagctaca gcagatccag ctcaccgagc agatccgcat ccaggtgaac
721 atgtgggcct cccacgccct ccactcaagc ggggcagggg ccgacactct gaagaccttg
781 ggcagccaca tgtctcagca ggtttctgca gctgtggctt tgctcagcca gaaagctgga
841 agccaaggtc tgtctctgga tgccttgaaa caagccaagc tacctcacgc caacatccct
901 tctgccacca gctccctgtc cccagggctg gcacccttca ctctgaagcc ggatgggacc
961 cgggtgctcc cgaacgtcat gtcccgcctc ccgagcgctt tgcttcctca ggccccgggc
1021 tcggtgctct tccagagccc tttctccact gtggcgctag acacatccaa gaaagggaag
1081 gggaagccac cgaacatctc cgcggtggat gtcaaaccca aagacgaggc ggccctctac
1141 aagcacaagt gtaagtactg tagcaaggtt tttgggactg atagctcctt gcagatccac
1201 ctccgctccc acactggaga gagacccttc gtgtgctctg tctgtggtca tcgcttcacc
1261 accaagggca acctcaaggt gcactttcac cgacatcccc aggtgaaggc aaacccccag
1321 ctgtttgccg agttccagga caaagtggcg gccggcaatg gcatccccta tgcactctct
1381 gtacctgacc ccatagatga accgagtctt tctttagaca gcaaacctgt ccttgtaacc
1441 acctctgtag ggctacctca gaatctttct tcggggacta atcccaagga cctcacgggt
1501 ggctccttgc ccggtgacct gcagcctggg ccttctccag aaagtgaggg tggacccaca
1561 ctccctgggg tgggaccaaa ctataattcc ccaagggctg gtggcttcca agggagtggg
1621 acccctgagc cagggtcaga gaccctgaaa ttgcagcagt tggtggagaa cattgacaag
1681 gccaccactg atcccaacga atgtctcatt tgccaccgag tcttaagctg tcagagctcc
1741 ctcaagatgc attatcgcac ccacaccggg gagagaccgt tccagtgtaa gatctgtggc
1801 cgagcctttt ctaccaaagg taacctgaag acacaccttg gggttcaccg aaccaacaca
1861 tccattaaga cgcagcattc gtgccccatc tgccagaaga agttcactaa tgccgtgatg
1921 ctgcagcaac atattcggat gcacatgggc ggtcagattc ccaacacgcc cctgccagag
1981 aatccctgtg actttacggg ttctgagcca atgaccgtgg gtgagaacgg cagcaccggc
2041 gctatctgcc atgatgatgt catcgaaagc atcgatgtag aggaagtcag ctcccaggag
2101 gctcccagca gctcctccaa ggtccccacg cctcttccca gcatccactc ggcatcaccc
2161 acgctagggt ttgccatgat ggcttcctta gatgccccag ggaaagtggg tcctgcccct
2221 tttaacctgc agcgccaggg cagcagagaa aacggttccg tggagagcga tggcttgacc
2281 aacgactcat cctcgctgat gggagaccag gagtatcaga gccgaagccc agatatcctg
2341 gaaaccacat ccttccaggc actctccccg gccaatagtc aagccgaaag catcaagtca
2401 aagtctcccg atgctgggag caaagcagag agctccgaga acagccgcac tgagatggaa
2461 ggtcggagca gtctcccttc cacgtttatc cgagccccgc cgacctatgt caaggttgaa
2521 gttcctggca catttgtggg accctcgaca ttgtccccag ggatgacccc tttgttagca
2581 gcccagccac gccgacaggc caagcaacat ggctgcacac ggtgtgggaa gaacttctcg
2641 tctgctagcg ctcttcagat ccacgagcgg actcacactg gagagaagcc ttttgtgtgc
2701 aacatttgtg ggcgagcttt taccaccaaa ggcaacttaa aggttcacta catgacacac
2761 ggggcgaaca ataactcagc ccgccgtgga aggaagttgg ccatcgagaa caccatggct
2821 ctgttaggta cggacggaaa aagagtctca gaaatctttc ccaaggaaat cctggcccct
2881 tcagtgaatg tggaccctgt tgtgtggaac cagtacacca gcatgctcaa tggcggtctg
2941 gccgtgaaga ccaatgagat ctctgtgatc cagagtgggg gggttcctac cctcccggtt
3001 tccttggggg ccacctccgt tgtgaataac gccactgtct ccaagatgga tggctcccag
3061 tcgggtatca gtgcagatgt ggaaaaacca agtgctactg acggcgttcc caaacaccag
3121 tttcctcact tcctggaaga aaacaagatt gcggtcagct aa(配列番号2)
である。
【0085】
一態様では、本発明で提供する方法は、SALL4タンパク質の分解を判断することに基づいている。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明において提供するのは、(a)セレブロン改変化合物を試料に投与すること、及び(b)その化合物が、その試料中のSALL4タンパク質の分解を誘発するかを判断することを含む方法である。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法は、セレブロン改変化合物群(または治療用のセレブロン改変化合物群)をスクリーニングして、催奇形性作用のリスクが低減されたセレブロン改変化合物を特定するためのものである。別の実施形態では、本発明で提供する方法は、セレブロン改変化合物を特徴付けるため、より具体的には、セレブロン改変化合物(または治療用のセレブロン改変化合物)が催奇形性作用を誘発し得るかを判断するためのものである。
【0088】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)そのセレブロン改変化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、そのセレブロン改変化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び(f)SALL4の分解を誘発しないそのセレブロン改変化合物、または対照化合物と比べて、SALL4の分解の低減を誘導するそのセレブロン改変化合物を選択することを含む方法である。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び(f)SALL4の分解を誘発しないその化合物を選択することを含む方法である。
【0090】
別の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び(f)SALL4の分解の低減を示すその化合物を選択することを含む方法である。一実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによるそのSALL4の分解と比べて低減される。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによるそのSALL4の分解と比べて低減される。
【0091】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)そのセレブロン改変化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)試料を得ること、(b)その試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、(c)その化合物をその試料に投与すること、(d)その試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、(e)SALL4のその第1のレベルとその第2のタンパク質レベルを比較して、その化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断することによって、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。
【0093】
別の態様では、本発明で提供する方法は、SALL4のユビキチン化レベルを求めることに基づいている。
【0094】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)そのセレブロン改変化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、(c)SALL4のユビキチン化を誘発しないそのセレブロン化合物、または対照化合物と比べて、SALL4のユビキチン化レベルの低下を誘導するそのセレブロン改変化合物を選択することを含む方法である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、(c)SALL4のユビキチン化を誘発しないその化合物を選択することを含む方法を提供する。
【0096】
別の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、(c)SALL4のユビキチン化レベルの低下を示すその化合物を選択することを含む方法である。一実施形態では、そのSALL4のユビキチン化は、対照化合物によるそのSALL4のユビキチン化と比べて低下する。一実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4のユビキチン化は、サリドマイドによるそのSALL4のユビキチン化と比べて低下する。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めることによって、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。化合物によって誘発される、SALL4のユビキチン化によって、催奇形性の可能性が示される。いくつかの実施形態では、SALL4のより高度なユビキチン化によって、その化合物が、催奇形性作用を誘発する可能性が高いことが示される。
【0098】
さらに別の態様では、本発明で提供する方法は、SALL4とセレブロンとの相互作用(または結合)を判断することに基づいている。
【0099】
セレブロンは、特定のセレブロン改変化合物、例えば、サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドマイドに結合する重要な分子標的として特定されている。これらの化合物は、セレブロンを標的とし、そのユビキチンリガーゼの基質特異性を改変して、特定のがん細胞において臨床活性を誘導する。結合した基質は、セレブロン-CRL4複合体によってユビキチン化され、その結果、26Sプロテアソームによって分解される。したがって、SALL4の分解は、セレブロン改変化合物で処理した場合のSALL4とセレブロンとの相互作用(もしくは結合)、及び/またはセレブロン改変化合物で処理した場合のSALL4のユビキチン化を解析することによっても判断することができる。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)そのセレブロン改変化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、(c)SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しないそのセレブロン改変化合物、または対照化合物と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用の低減を誘導するそのセレブロン改変化合物を選択することを含む方法である。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)その試料中のSALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、(c)SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しないその化合物を選択することを含む方法である。
【0102】
別の実施形態では、本発明において提供するのは、疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、(c)SALL4とセレブロンとの相互作用を低減させるその化合物を選択することを含む方法である。一実施形態では、SALL4とセレブロンとの相互作用は、対照化合物の存在下における、SALL4とセレブロンとの相互作用と比べて低減される。一実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、SALL4とセレブロンとの相互作用は、サリドマイドの存在下における、SALL4とセレブロンとの相互作用と比べて低減される。
【0103】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)そのセレブロン改変化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することによって、その化合物の催奇形性を判断することを含む方法である。
【0104】
さらに別の実施形態では、本発明において提供するのは、セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、(a)その化合物を試料に投与すること、(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することを含み、SALL4とCRBNとのその相互作用によって、催奇形性の可能性が示される方法である。ある特定の実施形態では、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することは、SALL4とセレブロンとの物理的相互作用または結合を判断することを含む。
【0105】
下記の第6節の実施例に示されているように、本開示によって、SALL4タンパク質の部分のうち、セレブロン改変化合物の存在下で、セレブロンへの結合に直接関与する少なくとも一部分として、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)またはその断片(例えば、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11))が特定され、この領域内の変異(例えばG416A)によって、化合物で処理したときに、セレブロンとSALL4との相互作用が阻害される可能性があることが示されている。したがって、セレブロン改変化合物の存在下における、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)またはその断片(例えば、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11))とセレブロンとの相互作用を利用して、セレブロン改変化合物による処理によって、SALL4が分解し得るかを判断することができる。ある特定の実施形態では、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基を含むアミノ酸断片を使用する。ある特定の実施形態では、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基を含むアミノ酸断片を使用する。
【0106】
特定のアッセイでは、SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基またはその断片(例えば、SALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基)内の1つ以上のアミノ酸が、セレブロン改変化合物の存在下で、セレブロンの特定のアミノ酸に結合するかを解析する。いくつかの実施形態では、解析するアミノ酸は、G416である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、T405である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、G406である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、E407である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、R408である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、P409である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、F410である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、V411である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、C412である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、S413である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、V414である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、H417である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、R418である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、F419である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、T420である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、T421である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、K422である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、G423である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、N424である。別の実施形態では、そのアミノ酸は、L425である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、K426である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、V427である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、H428である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、F429である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、H430である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、R431である。さらに別の実施形態では、そのアミノ酸は、H432である。
【0107】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、タンパク質の分解の判断は、当業者に知られているいずれかの従来の方法によって行うことができる。本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、そのセレブロン改変化合物が、SALL4の分解を誘発するかは、セレブロン改変化合物の投与後のSALL4タンパク質のレベルと、対照レベルを比較することによって判断する。その対照は、コントロール試料を用いることによって用意でき、そのコントロール試料は、試料と同じ供給源に由来する。本発明で提供する各種の方法の別の実施形態では、その対照レベルは、セレブロン改変化合物の投与前に、試料中のSALL4タンパク質のレベルを測定することによって定める。いくつかの実施形態では、その対照レベルは、事前に定めたレベルである。いくつかの実施形態では、その対照レベルは、対照のセレブロン改変化合物、例えば、サリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミドの存在下におけるSALL4レベルである。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法は、セレブロン改変化合物を試料に投与する前に、SALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、そのセレブロン改変化合物をその試料に投与した後に、SALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、その第1のレベルと第2のタンパク質レベルを比較すること、及びその第2のレベルが、その第1のレベルよりも有意に低くないかを判断すること(有意に低くないことによって、その化合物が、SALL4タンパク質の分解を誘発しないことが示される)をさらに含む。
【0109】
本発明で提供する方法のいくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物をその試料に投与することは、in vitroで行う。別の実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物をその試料に投与することは、in vivoで行う。一実施形態では、試料を化合物と、ある期間、例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、20日またはこれを超える日数にわたって接触させる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する試料は、in vivoまたはin situで得たかまたは採取した生体組織または生体液由来の試料であってよい。いくつかの実施形態では、その試料は、罹患細胞または罹患組織、例えば、前がん細胞、前がん組織、がん細胞、がん組織、例えば腫瘍を含む、患者の領域から得てよい。このような試料は、患者から単離した器官、組織及び細胞であることができるが、これらに限らない。例示的な試料としては、細胞溶解液、細胞培養液、組織、口腔組織、胃腸組織、器官、細胞小器官、生体液、血液試料、尿試料、皮膚試料、骨髄試料、循環腫瘍細胞などが挙げられるが、これらに限らない。別の実施形態では、本発明で提供する試料は、細胞溶解液、細胞培養液、細胞株、単離タンパク質、合成タンパク質、細胞抽出物、操作した細胞、細菌細胞、昆虫細胞、胎児細胞、胎児組織、ゼブラフィッシュなど、及びこれらのうちの1つ以上を組み合わせたものから選択した試料であってよい。
【0111】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する各種の方法では、対象または個体(例えば患者)に由来する試料(例えば生体試料)を使用する。その対象は、がん(例えば、リンパ腫、MMまたは白血病)である患者のような患者であることができる。その対象は、哺乳動物、例えばヒトであることができる。その対象は、男性または女性であることができ、成人、幼児、乳児または胎児であることができる。試料は、がん(例えば、リンパ腫、MMもしくは白血病)の活動期中の時点に、またはがん(例えば、リンパ腫、MMもしくは白血病)が非活動期であるときに解析できる。ある特定の実施形態では、対象由来の試料を2つ以上得ることができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法で用いる試料は、対象由来の体液を含む。体液の非限定的な例としては、血液(例えば全血)、血漿、羊水、房水、胆汁、耳垢、クーパー液、射精前液、乳び、び汁、膣液、間質液、リンパ液、月経血、母乳、粘液、胸膜液、膿汁、唾液、皮脂、精液、血清、汗、涙、尿、膣潤滑液、嘔吐物、水、糞便、体内液(脳及び脊髄周囲の脳脊髄液を含む)、滑液、細胞内液(細胞内側の流体)、ならびに硝子体液(眼球内の流体)が挙げられる。いくつかの実施形態では、その試料は、血液試料である。血液試料は、例えば、Innis et al,eds.,PCR Protocols(Academic Press,1990)に記載されているような従来の技法を用いて得ることができる。従来の技法または市販のキット、例えば、RosetteSepキット(Stein Cell Technologies,Vancouver,Canada)を用いて、血液試料から、白血球細胞を分離することができる。従来の技法、例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec,Auburn,California)または蛍光活性化細胞選別(FACS)(Becton Dickinson,San Jose,California)を用いて、白血球細胞のサブ集団、例えば、単核球、B細胞、T細胞、単球、顆粒球またはリンパ球をさらに単離できる。
【0113】
一実施形態では、血液試料は、約0.1mL~約10.0mL、約0.2mL~約7mL、約0.3mL~約5mL、約0.4mL~約3.5mLまたは約0.5mL~約3mLである。別の実施形態では、血液試料は、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1.0mL、約1.5mL、約2.0mL、約2.5mL、約3.0mL、約3.5mL、約4.0mL、約4.5mL、約5.0mL、約6.0mL、約7.0mL、約8.0mL、約9.0mLまたは約10.0mLである。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で用いる試料は、生検標本(例えば腫瘍生検標本)を含む。生検標本は、いずれかの器官または組織、例えば、皮膚、肝臓、肺、心臓、結腸、腎臓、骨髄、歯、リンパ節、毛髪、脾臓、脳、乳房またはその他の器官から得たものであることができる。対象から試料を単離するには、当業者に知られているいずれかの生検技法、例えば、開放生検、非切開生検、コア生検、切開生検、切除生検または細針吸引生検を用いることができる。
【0115】
一実施形態では、本発明で提供する方法で用いる試料は、対象が、疾患または障害に対する治療を受ける前に、対象から得る。別の実施形態では、試料は、対象が、疾患または障害に対する治療を受けている最中に、対象から得る。別の実施形態では、試料は、対象が、疾患または障害に対する治療を受けた後に、対象から得る。各種の実施形態では、本明細書に示されているセレブロン改変化合物を対象に投与することが含まれる。
【0116】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法で用いる試料は、がん(例えば、リンパ腫、MMまたは白血病)細胞のような複数の細胞を含む。このような細胞としては、いずれかのタイプの細胞、例えば、幹細胞、血液細胞(例えば末梢血単核球(PBMC))、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、免疫細胞またはがん細胞を挙げることができる。
【0117】
B細胞(Bリンパ球)としては、例えば、血漿B細胞、記憶B細胞、B1細胞、B2細胞、辺縁帯B細胞及び濾胞性B細胞が挙げられる。B細胞は、免疫グロブリン(抗体)及びB細胞受容体を発現できる。
【0118】
特異的細胞集団は、市販の抗体(例えば、Quest Diagnostic(San Juan Capistrano,California)またはDako(Denmark)の抗体)を組み合わせたものを用いて得ることができる。
【0119】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法における細胞は、PBMCである。ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法で用いる試料は、例えば、がん(例えばリンパ腫、MMまたは白血病)である個体の疾患組織から得たものである。
【0120】
ある特定の実施形態では、化合物の作用を評価するか、作用機序を調べるか、または対照レベルを定めるなどするための疾患モデルとして、細胞株由来の試料を使用する。いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法で用いる細胞は、がん細胞株に由来するものである。
【0121】
例えば、いくつかの実施形態では、白血病細胞株を試料として使用する。例えば、一実施形態では、AML細胞株を試料として使用する。一実施形態では、そのAML細胞株は、KG-1細胞株である。別の実施形態では、そのAML細胞株は、KG-1a細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、KASUMI-1細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、NB4細胞株である。一実施形態では、そのAML細胞株は、MV-4-11細胞株である。別の実施形態では、そのAML細胞株は、MOLM-13細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、HL-60細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、U-937細胞株である。一実施形態では、そのAML細胞株は、OCI-AML2細胞株である。別の実施形態では、そのAML細胞株は、OCI-AML3細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、HNT-34細胞株である。さらに別の実施形態では、そのAML細胞株は、ML-2細胞株である。一実施形態では、そのAML細胞株は、AML-193細胞株である。別の実施形態では、そのAML細胞株は、F36-P細胞株である。他の例示的な白血病細胞株としては、8E5細胞株、CCRF-CEM細胞株、CCRF-HSB-2細胞株、MOLT-3細胞株、CEM/C2細胞株、CEM/C1細胞株、TALL-104細胞株、THP-1細胞株、Kasumi-3細胞株、BDCM細胞株、NCI-BL2122細胞株、JAA-F11細胞株、31E9細胞株、RBL-2H3細胞株、MV-4-11細胞株、BCP-1細胞株、JVM-13細胞株、KU812細胞株、MYA-1細胞株、Mo-B細胞株、MM.1S細胞株、RBL-1細胞株及びWEHI-3細胞株が挙げられるが、これらに限らない。
【0122】
別の例では、リンパ腫及び血液細胞株を試料として使用する。例示的な細胞株としては、Daudi細胞株、GA-10細胞株、HCC38BL細胞株、HCC2218BL細胞株、HH細胞株、Toledo細胞株、FeT-J細胞株、NK-92細胞株、Mino細胞株、JVM-2細胞株、EML-3C細胞株、IB4細胞株、63D3細胞株、C1R-B7細胞株、OKT5細胞株及び1H3細胞株が挙げられるが、これらに限らない。
【0123】
別の実施形態では、HT-1376細胞株、SCaBER細胞株、T24細胞株、RT4細胞株、TMB-54細胞株及びHT1197.T細胞株のような膀胱癌細胞株を試料として使用する。
【0124】
別の実施形態では、SUP-B15細胞株、Hs696細胞株、K-562細胞株、MEG-01細胞株、TF-1細胞株、RD-ES細胞株、SAML-2細胞株、FDC-P1細胞株、D-17細胞株、HOS細胞株、UMR-106細胞株、SK-ES-1細胞株、KM703細胞株及びBBm細胞株のような骨癌細胞株を試料として使用する。
【0125】
別の実施形態では、SW1088細胞株、CHLA-02-ATRT細胞株、U-118MG細胞株、HCN-2細胞株、RG2細胞株、LN-229細胞株、C6細胞株、3G5細胞株、M059K細胞株、X22細胞株、SCP細胞株、OA1細胞株及びNE-GFP-4C細胞株のような脳癌細胞株を試料として使用する。
【0126】
さらに別の実施形態では、Hs281.T細胞株、MDA-MB-468細胞株、CAMA-1細胞株、SK-BR-3細胞株、RBA細胞株、UACC-1179細胞株、NMU細胞株、BT-483細胞株、T-47D細胞株、ZR-75-30細胞株、MCF10A細胞株及びEMT6細胞株のような乳癌細胞株を試料として使用する。
【0127】
さらに別の実施形態では、RKOのような結腸癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、HeLa229のような婦人科癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、FaDuのような頭頸部癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、Capan-1のような肝臓癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、Calu-3のような肺癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、HPACのような膵臓癌細胞株を試料として使用する。さらに別の実施形態では、SK-LMS-1のような肉腫細胞株を試料として使用する。他のがんモデルの細胞株も本開示に含まれる。
【0128】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法で用いる細胞の数は、1つの細胞~約10個の細胞の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、本発明で提供する方法で用いる細胞の数は、約1×10個、約5×10個、約1×10個、約5×10個、約1×10個、約5×10個、約1×10個、約5×10個、約1×10個、約5×10個または約1×10個である。
【0129】
細胞の数及び種類は、例えば、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学法(例えば、組織特異的抗体もしくは細胞マーカー特異的抗体による染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)のような標準的な細胞検出技法を用いて、細胞表面マーカーの変化を測定することによって、光学顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡を用いて、細胞の形態を調べることによって、及び/またはPCR及び遺伝子発現プロファイリングのような、当該技術分野において周知である技法を用いて、遺伝子発現の変化を測定することによってモニタリングできる。これらの技法は、1つ以上の特定のマーカーに対して陽性である細胞を特定するのにも用いることができる。
【0130】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法において、細胞サブセットを使用する。特異的細胞集団を選別及び単離する方法は、当該技術分野において周知であり、細胞の大きさ、形態、または細胞内もしくは細胞外のマーカーに基づくことができる。このような方法としては、フローサイトメトリー、フローソーティング、FACS、ビーズベースの分離(磁気細胞選別など)、サイズベースの分離(例えば、ふるい、障害物の配列またはフィルター)、マイクロフルイディクスデバイスでの選別、抗体ベースの分離、沈降、親和性吸着、親和性抽出、密度勾配遠心分離、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションなどが挙げられるが、これらに限らない。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、細胞を含む粒子の蛍光特性に基づき、その粒子を分離するための周知の方法である(Kamarch,Methods Enzymol.151:150-165(1987))。個々の粒子の蛍光分子をレーザー励起させると、わずかな電荷が付与され、混合物から正の粒子と負の粒子を電磁分離できるようになる。一実施形態では、細胞表面マーカー特異的な抗体またはリガンドを別個の蛍光標識で標識する。細胞をセルソーターにかけて処理し、使用する抗体に結合する能力に基づき、細胞を分離させる。FACSで選別した粒子は、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接入れて、分離とクローニングを容易にしてよい。
【0131】
SALL4タンパク質のレベルは、当業者に知られている方法を用いて求めることができる。
【0132】
ある特定の実施形態では、本発明において提供する方法は、試料、例えば生体試料に由来するSALL4のタンパク質レベルを検出及び定量する方法である。
【0133】
いくつかのタンパク質検出方法及び定量方法を用いて、SALL4のレベルを測定できる。いずれかの好適なタンパク質定量方法を用いることができる。いくつかの実施形態では、抗体ベースの方法を使用する。使用できる例示的な方法としては、イムノブロッティング(ウエスタンブロット)、臨床現場即時法/臨床現場即時プラットフォーム、ELISA、免疫組織化学法、フローサイトメトリー、サイトメトリービーズアレイ、質量分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のようなクロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限らない。直接ELISA、間接ELISA及びサンドイッチELISAを含め、いくつかのタイプのELISAが一般的に用いられている。
【0134】
タンパク質レベルを検出するには、例えばプローブ(例えば、SALL4と特異的に相互作用できる結合タンパク質、例えば抗体)によって、試料中のポリペプチド産物を検出する周知の方法が数多く存在する。標識した抗体、その結合部分またはその他の結合パートナーを使用できる。その抗体は、元々、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体であることができ、あるいは、生合成によって作製してもよい。結合パートナーも、天然の分子であっても、合成によって作製してもよい。複合タンパク質の量は、当該技術分野において説明されている標準的なタンパク質検出手法を用いて求める。免疫アッセイの設計、理論及びプロトコールの詳細な論評は、Practical Immunology,Butt,W.R.,ed.,Marcel Dekker,New York,1984を含め、当該技術分野における多くのテキストに見ることができる。
【0135】
標識抗体によってタンパク質を検出するには、様々な免疫組織化学法アッセイが利用可能である。直接標識としては、抗体に結合する蛍光または発光タグ、金属、色素、放射性ヌクレオチドなどが挙げられる。間接標識としては、アルカリホスファターゼ、水素ペルオキシダーゼなどのような、当該技術分野において周知の様々な酵素が挙げられる。1ステップアッセイでは、標的SALL4タンパク質を固定化し、標識抗体とともにインキュベートする。その標識抗体は、その固定化した標的分子に結合する。洗浄して、未結合の分子を除去した後、その標識の存在について、試料をアッセイする。多くの免疫組織化学法が、臨床現場即時形式及びハンドヘルド型に取り入れられており、そのいずれも、タンパク質レベルを求めるのに使用し得る。
【0136】
そのタンパク質またはポリペプチドに特異的な固定化抗体の使用も、本開示によって企図されている。その抗体は、磁性粒子、クロマトグラフマトリックス粒子、アッセイ場所(マイクロタイターウェルなど)の表面、固体基板材料片(プラスチック片、ナイロン片、紙片など)などのような様々な固体支持体の上に固定化できる。その抗体またはアレイ状の複数の抗体を固体支持体の上にコーティングすることによって、アッセイストリップを調製できる。続いて、このストリップを試験試料に浸漬させ、洗浄及び検出工程によって処理して、測定可能なシグナル、例えば着色スポットを生成させる。
【0137】
2ステップアッセイでは、固定化した標的タンパク質SALL4を非標識抗体とともにインキュベートしてよい。そして、非標識抗体複合体が存在する場合、その複合体を、その非標識抗体に特異的である二次標識抗体に結合させる。その試料を洗浄し、標識の存在についてアッセイする。抗体を標識するのに用いるマーカーの選択は、用途に応じて変化することになる。しかしながら、マーカーの選択は、当業者には容易に判断可能である。
【0138】
その抗体は、放射性原子、酵素、発色部分、蛍光部分または比色タグで標識し得る。タグ標識の選択は、所望の検出限界にも左右されることになる。酵素アッセイ(ELISA)は典型的には、酵素タグ付加複合体と酵素基質との相互作用によって形成される着色生成物の検出を可能にする。放射性原子のいくつかの例としては、32P、125I、3H及び14Pが挙げられる。酵素のいくつかの例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。発色部分のいくつかの例としては、フルオレセイン及びローダミンが挙げられる。その抗体は、当該技術分野において知られている方法によって、これらの標識にコンジュゲートし得る。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミドなどのようなカップリング剤によって、酵素及び発色分子を抗体にコンジュゲートし得る。あるいは、コンジュゲートは、リガンド-受容体ペアを通じて行ってもよい。いくつかの好適なリガンド-受容体ペアとしては、例えば、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン及び抗体-抗原が挙げられる。
【0139】
一態様では、本開示において、生体試料中の標的タンパク質SALL4のレベルを検出するのに、サンドイッチ技法を使用することが企図されている。その技法では、対象とするタンパク質と結合できる2つの抗体、例えば、一方で固体支持体の上に固定化する抗体、及び一方で溶液中で遊離しているが、ある程度容易に検出可能な化学化合物で標識した抗体が必要となる。その二次抗体に使用し得る化学標識の例としては、反応基質または酵素基質に暴露されると、着色生成物または電気化学的に活性な生成物を生成させる放射線同位体、蛍光化合物及び酵素、またはその他の分子が挙げられるが、これらに限らない。SALL4タンパク質を含む試料をこの系に添加すると、そのポリペプチドは、固定化抗体及び標識抗体の両方に結合する。その結果、支持体の表面に「サンドイッチ」状の免疫複合体が得られる。その複合タンパク質は、未結合の試料成分及び過剰な標識抗体を洗い流し、支持体の表面上のタンパク質と複合化した標識抗体の量を測定することによって検出する。サンドイッチイムノアッセイは、検出限界に優れる標識を用いると、特異性が高く、感度が良い。
【0140】
ドットブロッティングは、抗体をプローブとして用いて、所望のタンパク質を検出する目的で、当業者によって日常的に使用されている(Promega Protocols and Applications Guide,Second Edition,1991,Page 263,Promega Corporation)。ドットブロット装置を用いて、試料を膜に塗布する。標識プローブをその膜とともにインキュベートし、タンパク質の存在を検出する。
【0141】
ウエスタンブロット解析は、当業者に周知である(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,1989,Vol.3,Chapter 18,Cold Spring Harbor Laboratory)。ウエスタンブロットでは、試料をSDS-PAGEによって分離する。そのゲルを膜に転写する。所望のタンパク質を検出するために、その膜を標識抗体とともにインキュベートする。
【0142】
上記のアッセイには、イムノブロッティング、免疫拡散、免疫電気泳動または免疫沈降(ただし、これらに限らない)のような工程が伴う。抗体とタンパク質またはポリペプチドとの特異的な免疫学的結合は、直接または間接的に検出できる。いくつかの実施形態では、自動解析装置(例えば自動シーケンシング装置)を用いて、SALL4のレベルを求める。このような方法はいずれも、当業者に周知である。
【0143】
いくつかの実施形態では、SALL4タンパク質のレベルまたは存在は、質量分析(MS)によって解析し、及び/または求める。典型的には、タンパク質の質量分析(MS)による解析によって、イオンの質量電荷比を測定して、単純な混合物及び複雑な混合物中の分子を同定及び定量する。質量分析計は、イオン源、質量分析部及びイオン検出部を有する。これらの構成要素の性質は、質量分析計の目的、必要なデータの種類、及び試料の物理的特性によって異なる。試料を質量分析計に液体、気体または乾燥の形態で入れてから気化させ、イオン源(例えば、APCI、DART、ESI)によってイオン化する。これらの分子が帯びる電荷により、質量分析計において、それらのイオンが加速して、そのシステムの残部にわたり移動できるようになる。それらのイオンが、質量分析部の電場及び/または磁場にさらされると、個々のイオンの軌道が、それらのm/zに基づき偏向する。広く用いられている質量分析部としては、飛行時間[TOF]型、オービトラップ型、四重極型及びイオントラップ型が挙げられ、それぞれの型には、特有の特徴がある。質量分析部を用いて、網羅的解析のために、試料中のすべてのアナライトを分離することができ、あるいは、質量分析部をフィルターのように用いて、特定のイオンのみを検出部の方に偏向させることができる。そして、質量分析部によってうまく偏向したイオンは、イオン検出部に衝突する。これらの検出部は、各イオンが検出部のプレートに衝突すると、カスケード状の電子を放出する電子増倍管またはマイクロチャンネルプレートであることが最も多い。このカスケードによって、感度向上のために、イオンが衝突するごとに増幅が行われる。このプロセス全体は、高度の真空状態で行って、気体分子及び非試料の中性夾雑イオン(試料のイオンと衝突して、それらの軌道を変えたり、または非特異的な反応生成物を生成させたりすることがある)を除去する。質量分析計は典型的には、イメージ電流検出を用いて、イオン振動数を測定し、質量スペクトルを得るコンピューターベースのソフトウェアプラットフォームに接続する。データ解析プログラムがイオンを検出し、そのイオンの個々のm/z値及び相対強度によってプロットを行う。そして、そのm/z値に基づき、分子の構造を予測する構築済みのデータベースによって、これらのイオンを同定できる。
【0144】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、試料、例えば生体試料に由来するSALL4のRNA(例えばmRNA)レベルを検出及び定量する方法である。
【0145】
mRNAレベルを検出または定量する方法は、当該技術分野においていくつか知られている。例示的な方法としては、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、PCRベースの方法などが挙げられるが、これらに限らない。そのmRNA配列を用いて、そのmRNA配列と少なくとも部分的に相補的であるプローブを調製できる。続いて、そのプローブを用いて、PCRベースの方法、ノーザンブロッティング、ディップスティックアッセイなどのようないずれかの好適なアッセイによって、試料中のmRNAを検出できる。
【0146】
別の実施形態では、試料、例えば生体試料中の核酸のアッセイを調製できる。アッセイは典型的には、固体支持体、及びその支持体と接触している少なくとも1つの核酸を含み、その核酸は、患者において、化合物による治療の際に発現が変化したmRNAの少なくとも一部に対応する。そのアッセイは、その試料におけるそのmRNAの発現の変化を検出するための手段を有することもできる。
【0147】
そのアッセイ方法は、所望のmRNA情報の種類に応じて変化し得る。例示的な方法としては、ノーザンブロット及びPCRベースの方法(例えばqRT-PCR)が挙げられるが、これらに限らない。qRT-PCRのような方法は、試料中のmRNAの量を正確に定量することもできる。
【0148】
いずれかの好適なアッセイプラットフォームを用いて、試料中のmRNAの存在を判断できる。例えば、アッセイは、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、テストストリップ、フィルター、マイクロスフィア、スライド、マルチウェルプレートまたは光ファイバーの形態であってよい。アッセイ系は、そのmRNAに対応する核酸が結合されている固体支持体を有してもよい。この固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、球体、多糖、キャピラリー、フィルム、プレートまたはスライドを含み得る。そのアッセイ構成成分は、mRNAを検出するためのキットとして調製して、一緒にパッケージ化することができる。
【0149】
所望の場合、その核酸を標識して、標識mRNAの集団を作製できる。概して、試料は、当該技術分野において周知である方法を用いて標識できる(例えば、DNAリガーゼ、ターミナルトランスフェラーゼを使用して、またはRNA骨格を標識することなどによって標識できる)。例えば、Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(Wiley & Sons,3rd ed.1995)、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,N.Y.,3rd ed.2001)を参照されたい。いくつかの実施形態では、試料は、蛍光標識で標識する。例示的な蛍光色素としては、キサンテン色素、フルオレセイン色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、6カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE))、ローダミン色素(例えば、ローダミン110(R110)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン6G(R6G5またはG5)、6-カルボキシローダミン6G(R6G6またはG6))、シアニン色素(例えば、Cy3、Cy5及びCy7)、Alexa色素(例えば、Alexa-fluor-555)、クマリン、ジエチルアミノクマリン、ウンベリフェロン、ベンズイミド色素(例えばHoechst33258)、フェナントリジン色素(例えばTexas Red)、エチジウム色素、アクリジン色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素、BODIPY色素、キノリン色素、ピレン、フルオレセインクロロトリアジニル、エオシン色素、テトラメチルローダミン、リサミン、ナフトフルオレセインなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0150】
典型的なmRNAアッセイ方法は、1)表面に結合させた対象プローブを得る工程、2)表面に結合させたそのプローブに、特異的な結合をもたらすのに充分な条件で、mRNA集団をハイブリダイズさせる工程、(3)ハイブリダイズ後に洗浄して、表面に結合させたそのプローブに特異的に結合しなかった核酸を除去する工程、及び(4)ハイブリダイズしたmRNAを検出する工程を含むことができる。これらの各工程で用いる試薬、及びその使用条件は、具体的な用途に応じて変化し得る。
【0151】
ハイブリダイゼーションは、好適なハイブリダイゼーション条件下で行うことができ、この条件は、所望されるストリンジェンシーの点で異なり得る。典型的な条件は、相補的な結合メンバー間、すなわち、表面に結合させた対象プローブと、試料中の相補的なmRNAとの間のプローブ/標的複合体を固体表面上に生成させるのに充分な条件である。ある特定の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いてよい。
【0152】
ハイブリダイゼーションは典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で行う。標準的なハイブリダイゼーション技法(例えば、試料中の標的mRNAをプローブに特異的に結合させるのに充分な条件下)は、Kallioniemi et al.,Science 1992,258:818-821及び国際特許出願公開第WO93/18186号に記載されている。一般的技法の手引きは、いくつか入手可能である(例えば、Tijssen,Hybridization with Nucleic Acid Probes,Parts I and II(Elsevier,Amsterdam 1993))。in situハイブリダイゼーションに適する技法の説明については、Gall et al.,Meth.Enzymol.1981,21:470-480、Angerer et al.,Genetic Engineering:Principles and Methods,Vol 7,pgs43-65(Plenum Press,New York,Setlow and Hollaender,eds.1985)を参照されたい。温度、塩濃度、ポリヌクレオチド濃度、ハイブリダイゼーション時間、及び洗浄条件のストリンジェンシーなどを含む適切な条件の選択は、試料の供給源、捕捉物質の性質、予測される相補性の度合いなどを含む実験設計に左右されることになり、当業者にとっては日常的な実験の要素として決定することができる。
【0153】
代替的ではあるが、同等であるハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を用いて、同様のストリンジェンシーの条件をもたらすことができることを当業者は容易に認識するであろう。
【0154】
mRNAハイブリダイゼーション手順の後、典型的には、表面に結合したポリヌクレオチドを洗浄して、未結合の核酸を除去する。洗浄は、いずれかの利便的な洗浄プロトコールを用いて行ってよく、その洗浄条件は典型的には、上記のように、ストリンジェントな条件である。そして、標準的な技法を用いて、プローブへの標的mRNAのハイブリダイゼーションを検出する。
【0155】
PCRベースの方法のような他の方法を用いて、SALL4の発現を検出することもできる。PCRの方法の例は、米国特許第6,927,024号に見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。RT-PCRの方法の例は、米国特許第7,122,799号に見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。蛍光in situ PCRの方法は、米国特許第7,186,507号に記載されており、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0156】
いくつかの実施形態では、RNA標的の検出及び定量の両方に、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)を用いることができる(Bustin et al.,Clin.Sci.2005,109:365-379)。qRT-PCRによって得られる定量結果は概して、定性的データよりも情報量が多い。したがって、いくつかの実施形態では、qRT-PCRベースのアッセイは、細胞ベースのアッセイの際に、mRNAレベルを測定するのに有用であることがある。qRT-PCR法は、患者への治療をモニタリングするのにも有用である。qRT-PCRベースの方法の例は例えば、米国特許第7,101,663号に見ることができ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0157】
通常の逆転写酵素PCRと、アガロースゲルによる解析とは対照的に、qRT-PCRでは、定量結果が得られる。qRT-PCRのさらなる利点は、使用が比較的容易なことと、利便的であることである。Applied Biosystems 7500のようなqRT-PCR用の機器は市販されており、TaqMan(登録商標)Sequence Detection Chemistryのような試薬も市販されている。例えば、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysをメーカーの指示に従って用いることができる。これらのキットは、ヒト、マウス及びラットのmRNA転写産物を迅速かつ確実に検出及び定量するように、事前に調合した遺伝子発現アッセイである。例示的なqRT-PCRプログラムは例えば、50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒を40サイクル行ってから、60℃で1分行うものである。
【0158】
特定のアンプリコンの蓄積と関連する蛍光シグナルが閾値と交差するサイクル数(Cという)を求めるために、例えば、比較C相対定量算出法を用いる7500 Real-Time PCR System Sequence Detectionソフトウェアvs.を用いて、データを解析できる。この方法を用いると、出力は、発現レベルの変化倍率として表される。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、そのソフトウェアによって自動的に決定されるように選択できる。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、ベースラインを上回るが、増幅曲線の指数関数的増加領域内に入るように充分低く設定する。
【0159】
セレブロン改変化合物によって誘発される、SALL4とセレブロンとの相互作用は、当業者に一般的に知られている方法を用いて解析できる。タンパク質間相互作用を解析するための各種の方法及びアプローチは、本明細書で説明するには数が非常に多いが、例示的な方法について以下で簡単に説明する。
【0160】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、共免疫沈降(Co-IP)及びプルダウンアッセイのような物理的な方法を用いて、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する。Co-IPは、抗体によって沈降される標的タンパク質を用いて、結合パートナー/タンパク質複合体を溶解液から共沈降させること以外は、単一のタンパク質の免疫沈降(IP)と本質的に同じようにして行う。相互作用タンパク質を標的抗原に結合させ、支持体に固定化されている抗体に、そのタンパク質を結合させる。免疫沈降させたタンパク質及びその結合パートナーは一般的に、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びウエスタンブロット解析によって検出する。
【0161】
プルダウンアッセイは、共免疫沈降と同様の手法のものである。これらの2つのアプローチの違いの1つは、Co-IPでは、抗体を用いてタンパク質複合体を捕捉するのに対し、プルダウンアッセイでは、「ベイト」タンパク質を用いて、溶解液中のタンパク質のうち、そのベイトに結合するいずれかのタンパク質を精製する点である。
【0162】
別の実施形態では、一過性のタンパク質間相互作用、例えば、細胞内の1カスケードまたはその他の代謝機能の一部として暫時的に見られるに過ぎないタンパク質間相互作用を判断するのに有用な方法を本発明において使用して、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する。
【0163】
例えば、架橋相互作用タンパク質は、相互作用する複合体の構成成分を安定させるかまたは恒久的に結合させるアプローチである。相互作用の構成成分が、共有結合で架橋されたら、相互作用する元々の複合体を維持したまま、他の工程(例えば、細胞の溶解、アフィニティー精製、電気泳動または質量分析)を用いて、タンパク質間相互作用を解析できる。ホモ二官能性のアミン反応性架橋剤を細胞に加えて、相互作用する可能性のあるタンパク質を併せて架橋させることができ、その後、溶解後に、ウエスタンブロッティングによって解析できる。架橋剤は、細胞内タンパク質の架橋用では、DSSのように、膜透過性であることができ、あるいは、細胞表面タンパク質の架橋用では、BS3のように、膜不透過性であることができる。さらに、いくつかの架橋剤は、DSPまたはDTSSPのような還元剤によって切断して、架橋を解消できる。あるいは、SDA生成物またはスルホ-SDAのように、光活性化可能な基を含むヘテロ二官能性架橋剤を用いて、特定の刺激後などに見られ得る一過性の相互作用を捕捉できる。光活性化は、L-フォトロイシンまたはL-フォトメチオニンのような光活性化可能なアミノ酸で代謝標識後に見られるものであることもできる。タンパク質間の架橋部位は、特にDSSOまたはDSBUのようなMS-開裂性架橋剤を用いる場合、質量分析を用いて高精度にマッピングできる。
【0164】
ある特定の実施形態では、本発明の方法において、ラベルトランスファータンパク質相互作用解析を用いることができる。ラベルトランスファーでは、架橋相互作用分子(すなわち、ベイトタンパク質及びプレイタンパク質)を、標識した架橋剤によって結合させてから、その標識がプレイに結合したままになるようにして、ベイトとプレイとの結合を切断する。新規な非同位体試薬及び方法により、いずれの研究者にとっても、引き続きこの技法が利用しやすく、かつ実施しやすくなっている。
【0165】
別の実施形態では、本発明の方法において、ファーウエスタンブロット解析を使用する。ファーウエスタンブロット解析では、電気泳動したタンパク質を、標的タンパク質に特異的な抗体ではなく、精製したタグ付きベイトタンパク質とともにインキュベートすることによって、タンパク質間相互作用を検出する。“Overview of Protein-Protein Interaction Analysis,”Pierce Protein Methods(Thermo Fisher Scientificのウェブサイトから入手可能)を参照されたい。
【0166】
さらに別の実施形態では、2つのタンパク質間の相互作用を判断する際に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ(または共鳴エネルギー移動(RET)アッセイもしくは電子エネルギー移動(EET)アッセイ)を使用する。簡潔に述べると、このアッセイは、エネルギーが2つの光感受性分子の間を移動できることに基づくものである。最初は電子励起状態にあるドナー発色団は、非放射性の双極子間結合を通じて、アクセプター発色団にエネルギーを移動させ得る。このエネルギー移動の効率は、ドナーとアクセプターとの距離の6乗に反比例し、これにより、FRETは、距離の小さい変化に対する感度が非常に高くなっている。FRET効率の測定値を用いて、2つのフルオロフォアが、互いに対して特定の距離以内にあるかを判断できるので、その測定値を用いて、2つの分子間の相互作用を判断できる。
【0167】
ある特定の実施形態では、様々な方法を組み合わせたものを用いて、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断及び/または確認できる。
【0168】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、ユビキチン化アッセイを用いて、SALL4タンパク質のユビキチン化レベルを求める。当業者に知られているいずれかの方法を用いることができ、その方法は、本開示に含まれる。例示的なユビキチン化アッセイの1つでは、ユビキチン経路の標的を調べるのに、Cisbio BioassaysのHTRF(登録商標)という試薬を使用する。HTRFユビキチンアッセイでは、EU3+-クリプテートまたはビオチンのいずれかで標識したユビキチンを用いる。XL665コンジュゲートを加えると、HTRFシグナルは、ユビキチン化レベルと比例するとともに、24時間超にわたって安定な状態を保つ。HTRFユビキチンアッセイには、酵素による工程及びHTRF検出工程という2つの基本的な段階がある。酵素による工程では、標的タンパク質をユビキチン酵素(E2及びE3)ならびにEU3+標識ユビキチンとともにインキュベートする。E1酵素を加えると、反応が開始する。そして、検出工程で、EDTAを含むXL665標識試薬を加えて、酵素反応を停止させることによって、ユビキチン化された標的タンパク質を検出する。別の例示的なユビキチン化アッセイは、下記の第6.1節に示されている。
【0169】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、セレブロン改変化合物を用いて、がんを治療する。いくつかの実施形態では、本発明で提供するスクリーニング方法は、がん治療用のセレブロン改変化合物を特定するためのものである。本発明で示されるがんには、いずれかのセレブロン改変化合物によって治療可能なあらゆる種類のがんが含まれる。本発明で示されるがんには、膀胱癌、骨癌、血液がん、脳癌、乳癌、頸癌、胸部癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭部癌、腎臓癌、肝臓癌、リンパ節癌、肺癌、口腔癌、頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、咽喉癌及び子宮癌が含まれる(ただし、これらに限らない)。具体的ながんとしては、進行性悪性腫瘍、アミロイドーシス、神経芽腫、髄膜腫、血管周囲細胞腫、多発性脳転移、多形性膠芽腫、膠芽腫、脳幹グリオーマ、予後不良の悪性脳腫瘍、悪性グリオーマ、再発性悪性グリオーマ、退形成星性細胞腫、退形成乏突起神経膠腫、神経内分泌腫瘍、直腸腺癌、結腸直腸癌(ステージ3及びステージ4の結腸直腸癌を含む)、切除不能な結腸直腸癌、転移性肝細胞癌、カポジ肉腫、核型急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、低悪性度濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性胸水中皮腫症候群、腹膜癌、漿液性乳頭状癌、婦人科肉腫、軟部組織肉腫、強皮症、皮膚血管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、平滑筋肉腫、進行性骨化性線維異形成症、ホルモン抵抗性前立腺癌、切除後のハイリスク軟部組織肉腫、切除不能な肝細胞癌、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、無症候性骨髄腫、卵管癌、アンドロゲン非依存性前立腺癌、アンドロゲン依存性ステージIV非転移性前立腺癌、ホルモン非感受性前立腺癌、化学療法非感受性前立腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞状甲状腺癌、甲状腺髄様癌及び平滑筋腫が挙げられるが、これらに限らない。
【0170】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、そのがんは、固形がんまたは血液がんである。いくつかの実施形態では、そのがんは、固形がんである。いくつかの実施形態では、その固形がんは、転移性である。いくつかの実施形態では、その固形がんは、肝細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、卵巣癌または膠芽腫である。
【0171】
別の実施形態では、そのがんは、血液腫瘍または血液がんである。ある特定の実施形態では、その血液腫瘍は、転移性である。このようながんとしては、骨髄腫、白血病、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)及びホジキン病(ホジキンリンパ腫ともいう)が挙げられる。一実施形態では、その骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの実施形態では、その白血病は例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)白血病、肥満細胞症またはB細胞急性リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態では、そのリンパ腫は例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞免疫芽球性リンパ腫、小非分割細胞性リンパ腫、ヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)白血病/リンパ腫、成人T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、AIDS関連性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換リンパ腫、縦隔原発(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、リヒタートランスフォーメーション、節性辺縁帯リンパ腫またはALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫である。一実施形態では、その血液がんは、例えば、DLBCL、濾胞性リンパ腫または辺縁帯リンパ腫を含む緩慢性リンパ腫である。
【0172】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、セレブロン改変化合物を用いて、がんではない疾患または障害を治療する。いくつかのこのような実施形態では、その疾患または障害は、非催奇形性の治療、例えば、非催奇形性であるか、または対照化合物による治療と比べて、催奇形性が軽減されたセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、その催奇形性は、サリドマイドによる治療と比べて軽減されている。
【0173】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用の低減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4とセレブロンとの相互作用は、サリドマイドによる治療と比べて低減されている。
【0174】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4のユビキチン化を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4のユビキチン化の軽減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4のユビキチン化は、サリドマイドによる治療と比べて軽減されている。
【0175】
別の実施形態では、その疾患または障害は、SALL4の分解を誘発しないか、または対照化合物による治療と比べて、SALL4の分解の低減を誘導するセレブロン改変化合物による治療を要する疾患または障害である。いくつかの実施形態では、その対照化合物は、サリドマイドである。別の実施形態では、その対照化合物は、ポマリドミドである。さらに別の実施形態では、その対照化合物は、レナリドマイドである。具体的な実施形態では、そのSALL4の分解は、サリドマイドによる治療と比べて低減される。
【0176】
本明細書に示されているセレブロン改変化合物(または治療用化合物)は、セレブロン及び/またはセレブロンとその基質との結合を直接または間接的に調節できる。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、セレブロンに直接結合する。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、セレブロンタンパク質のコンホメーション変化を誘導する。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、セレブロンタンパク質の基質特異性または親和性を変化させる。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、セレブロンタンパク質表面の特性を変化させる。
【0177】
いくつかの実施形態では、そのセレブロン改変化合物は、免疫調節化合物である。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、サリドマイド、あるいはそのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはその製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形である。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、レナリドマイド、あるいはそのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはその製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形である。いくつかの実施形態では、その治療用のセレブロン改変化合物は、ポマリドミド、あるいはそのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはその製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形である。
【0178】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法は、セレブロン改変化合物であると判断された化合物をスクリーニングするため、または催奇形性作用が低下している1つ以上のセレブロン改変化合物をさらに選択もしくは同定するためのものである。いくつかの実施形態では、そのセレブロン改変化合物は、セレブロンに直接結合する。したがって、ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法は、化合物のセレブロンへの結合を判断または確認することをさらに含む。化合物のセレブロンへの結合は、当業者に知られている方法によって判断できる。いくつかの実施形態では、そのセレブロン改変化合物は、ヒトセレブロンに結合する。別の実施形態では、そのセレブロン改変化合物は、マウスセレブロンに結合する。セレブロン改変化合物の、他の種に由来するセレブロンへの結合も、本開示に含まれる。
【0179】
いくつかの実施形態では、そのセレブロン改変化合物は、セレブロンのコンホメーション変化(例えば、セレブロンの化合物結合ポケット内のコンホメーション変化)を誘導するか、またはセレブロン表面の特性を別段に変化させると判断されている。
【0180】
ある特定の実施形態では、化合物がセレブロン改変化合物であるか、または化合物がセレブロンに結合するかの判断方法は、(a)(i)セレブロン及び対照化合物の第1の結晶構造を得ること、及び(ii)X線回折によって、その第1の結晶の三次元構造を求めて、第1のセットの原子座標を得ること、(b)(i)CRBN及びその化合物を含む第2の結晶を得ること、及び(ii)X線回折によって、その第2の結晶の三次元構造を求めて、第2のセットの原子座標を得ること、ならびに(c)前記第1のセットの原子座標と前記第2のセットの原子座標を比較することを含み、原子座標の違いによって、セレブロンのコンホメーション変化を誘導するか、またはセレブロン表面の特性を別段に変化させる化合物が示される。いくつかの実施形態では、その第1のセットの原子座標及び/または前記第2のセットの原子座標によって、化合物結合ドメインが定められる。ある特定の実施形態では、原子座標の違いは、原子間距離の差を評価することによって判断する。
【0181】
ある特定の実施形態では、その対照化合物は、セレブロン改変化合物ではない。ある特定の実施形態では、その対照化合物は、セレブロンに結合しないので、セレブロン及びその対照化合物の結晶構造は、セレブロンのコンホメーションが化合物によって変化しないコントロール結晶構造となる。
【0182】
ある特定の実施形態では、化合物がセレブロン改変化合物であるか、または化合物がセレブロンに結合するかの判断方法は、(a)セレブロン及び対照化合物の第1の三次元構造を得ること、(b)セレブロン及びその化合物の第2の三次元構造を得ること、及び(c)前記第1の三次元構造と前記第2の三次元構造を比較することを含み、その第1の三次元構造と第2の三次元構造との違いによって、CRBNのコンホメーション変化を誘導するか、またはCRBN表面の特性を別段に変化させる化合物が示される。ある特定の実施形態では、その対照化合物は、セレブロン改変化合物ではなく、その第1の三次元構造は、化合物に結合していないセレブロンのコントロール構造である。
【0183】
一実施形態では、そのコンホメーション変化または変化は、X線結晶解析によって評価する。別の実施形態では、その三次元構造は、NMR分光法、二面偏波式干渉法、振動分光法またはクライオ電子顕微鏡によって評価する。いくつかの実施形態では、セレブロンは、DDB1、Cul4、Roc1またはこれらをいずれかに組み合わせたものにさらに結合する。
【0184】
ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法は、1つ以上のアッセイ(例えば生物学的アッセイ)で、セレブロン改変化合物(または所定の化合物)を解析し、特徴付け、及び試験することをさらに含む。ある特定の実施形態では、本発明で提供する方法は、セレブロン改変化合物(または所定の化合物)の治療効果を試験することをさらに含む。
【0185】
本発明で提供する各種の方法のある特定の実施形態では、本発明で提供する方法は、本発明で提供する方法に基づき選択し及び/または特徴付けたセレブロン改変化合物を対象に投与して、その治療効果を評価することをさらに含む。
【0186】
さらに別の実施形態では、本発明で提供する方法は、本発明で提供する方法に基づき選択し及び/または特徴付けたセレブロン改変化合物を対象に投与して、がんのような疾患または障害を治療することをさらに含む。したがって、ある特定の態様では、本発明において提供するのは、がんの治療を以前受けたことがあるが、標準療法に応答しない患者、及び治療を以前に受けたことがない患者の治療方法である。いくつかの疾患または障害は、特定の年齢群に多く見られるが、本発明には、患者の年齢にかかわらず、患者を治療する方法も含まれる。本発明には、問題の疾患または状態を治療するための手術を受けた患者、及び受けていない患者を治療する方法がさらに含まれる。
【0187】
ある特定の実施形態では、その疾患または障害は、がんである。がん患者は、臨床症候が一様ではなく、臨床転帰が様々なであるため、患者が受ける治療も、患者の予後に応じて変わり得る。熟練の臨床医は、過度の実験なしに、個々のがん患者の治療に効果的に使用できる具体的な二次薬剤、手術の種類及び非薬物ベースの標準療法の種類を容易に判断できるであろう。
【0188】
ある特定の実施形態では、その化合物の治療上有効な量または予防上有効な量は、1日あたり約0.005~約1,000mg、1日あたり約0.01~約500mg、1日あたり約0.01~約250mg、1日あたり約0.01~約100mg、1日あたり約0.1~約100mg、1日あたり約0.5~約100mg、1日あたり約1~約100mg、1日あたり約0.01~約50mg、1日あたり約0.1~約50mg、1日あたり約0.5~約50mg、1日あたり約1~約50mg、1日あたり約0.02~約25mgまたは1日あたり約0.05~約10mgである。
【0189】
ある特定の実施形態では、その治療上有効な量または予防上有効な量は、1日あたり約0.1mg、約0.2mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mgまたは約150mgである。
【0190】
一実施形態では、その治療用化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体、製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、アイソトポログ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形の1日あたりの推奨投与量範囲であって、本明細書に記載されている状態に対する投与量範囲は、例えば、1日1回用量として1回投与するか、または1日をかけて数回に分けて投与する場合、1日あたり約0.1mg~約50mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、その用量は、1日あたり約1mg~約50mgの範囲である。別の実施形態では、その用量は、1日あたり約0.5mg~約5mgの範囲である。1日あたりの具体的な投与量としては、1日あたり0.1mg、0.2mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mgまたは50mgが挙げられる。
【0191】
具体的な実施形態では、推奨開始用量は、1日あたり0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mgまたは50mgであってよい。別の実施形態では、推奨開始用量は、1日あたり0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mgまたは5mgであってよい。その用量は、1日あたり10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mgまたは50mgまで増やしてよい。
【0192】
ある特定の実施形態では、その治療上有効な量または予防上有効な量は、約0.001~約100mg/kg/日、約0.01~約50mg/kg/日、約0.01~約25mg/kg/日、約0.01~約10mg/kg/日、約0.01~約9mg/kg/日、0.01~約8mg/kg/日、約0.01~約7mg/kg/日、約0.01~約6mg/kg/日、約0.01~約5mg/kg/日、約0.01~約4mg/kg/日、約0.01~約3mg/kg/日、約0.01~約2mg/kg/日または約0.01~約1mg/kg/日である。
【0193】
投与量は、mg/kg/日以外の単位で表すこともできる。例えば、非経口投与用の用量は、mg/m/日で表すことができる。当業者は、対象の身長もしくは体重、またはこれらの両方を与えられれば、用量をmg/kg/日からmg/m/日に変換する方法を容易に理解するであろう。例えば、65kgのヒトでは、1mg/kg/日の用量は、38mg/m/日とほぼ等しい。
【0194】
ある特定の実施形態では、セレブロン改変化合物の投与量は、その化合物の定常状態での血漿中濃度を約0.001~約500μM、約0.002~約200μM、約0.005~約100μM、約0.01~約50μM、約1~約50μM、約0.02~約25μM、約0.05~約20μM、約0.1~約20μM、約0.5~約20μMまたは約1~約20μMの範囲にするのに充分な量である。
【0195】
別の実施形態では、セレブロン改変化合物の投与量は、その化合物の定常状態での血漿中濃度を約5~約100nM、約5~約50nM、約10~約100nM、約10~約50nMまたは約50~約100nMの範囲にするのに充分な量である。
【0196】
本明細書で使用する場合、「定常状態での血漿中濃度」という用語は、セレブロン改変化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体、製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、アイソトポログ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形の投与期間後に達する濃度である。定常状態に達すると、その化合物の血漿中濃度の時間依存性曲線には、微小ピークとトラフが見られる。
【0197】
ある特定の実施形態では、そのセレブロン改変化合物の投与量は、その化合物の最高血漿中濃度(ピーク濃度)を約0.001~約500μM、約0.002~約200μM、約0.005~約100μM、約0.01~約50μM、約1~約50μM、約0.02~約25μM、約0.05~約20μM、約0.1~約20μM、約0.5~約20μMまたは約1~約20μMの範囲にするのに充分な量である。
【0198】
ある特定の実施形態では、そのセレブロン改変化合物の投与量は、その化合物の最低血漿中濃度(トラフ濃度)を約0.001~約500μM、約0.002~約200μM、約0.005~約100μM、約0.01~約50μM、約1~約50μM、約0.01~約25μM、約0.01~約20μM、約0.02~約20μM、約0.02~約20μMまたは約0.01~約20μMの範囲にするのに充分な量である。
【0199】
ある特定の実施形態では、そのセレブロン改変化合物の投与量は、その化合物の曲線下面積(AUC)を約100~約100,000ng・hr/mL、約1,000~約50,000ng・hr/mL、約5,000~約25,000ng・hr/mLまたは約5,000~約10,000ng・hr/mLの範囲にするのに充分な量である。
【0200】
治療する疾患及び対象の状態に応じて、本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、CIV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射または埋入)投与経路、吸入投与経路、経鼻投与経路、膣内投与経路、直腸投与経路、舌下投与経路、あるいは局所(例えば、経皮または局部)投与経路によって投与してよい。本明細書に示されている化合物は、各投与経路に適するように、単独でまたは組み合わせて、好適な投与単位で、製薬学的に許容可能な賦形剤、担体、アジュバント及びビヒクルとともに調合してよい。
【0201】
一実施形態では、本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、非経口投与する。別の実施形態では、その化合物は、静脈内投与する。
【0202】
そのセレブロン改変化合物は、単回用量(例えば単回ボーラス注射)として、または経時的に(例えば、経時的な持続注入もしくは経時的な分割ボーラス投与として)送達できる。そのセレブロン改変化合物は、必要な場合、例えば、患者の疾患が安定もしくは退縮するまで、または患者の疾患が進行するか、または許容不能な毒性が見られるまで、繰り返し投与することができる。例えば、固形がんでは、疾患の安定とは概して、測定可能な病巣の垂直直径が、直近の測定値から25%以上増大していないことを意味する(Therasse et al.,J.Natl.Cancer Inst.,92(3):205-216(2000))。疾患の安定または安定の欠如は、患者の症状の評価、身体診察、ならびにX線、CAT、PET、MRIスキャンまたは一般的に受け入れられているその他の評価モダリティを用いてイメージングした腫瘍の可視化のように、当該技術分野において知られている方法によって判断する。
【0203】
本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、1日に1回(QD)投与することも、1日あたりの用量を複数回(1日に2回(BID)、1日3回(TID)及び1日に4回(QID)など)に分けることもできる。加えて、その投与は、持続的(すなわち、連日または毎日)であることも、間欠的、例えば周期的(すなわち、数日、数週間または数カ月の休薬期間を含む)であることができる。本明細書で使用する場合、「毎日」という用語は、治療用化合物を、例えば、ある期間にわたって、各日に1回または2回以上投与すること意味するように意図されている。「持続」という用語は、治療用化合物を毎日、少なくとも10日間~52週間連続で投与することを意味するように意図されている。「間欠的な」または「間欠的に」という用語は、本明細書で使用する場合、規則的な間隔または不規則な間隔のいずれかで、停止及び開始することを意味するように意図されている。例えば、セレブロン改変化合物の間欠的な投与は、1週間に1~6日投与するか、周期的に投与する(例えば、2~8週間連続で毎日投与してから、最長で1週間の休薬期間を設ける)か、または1日おきに投与することである。「周期化」という用語は、本明細書で使用する場合、休薬期間を設けながら、セレブロン改変化合物を毎日または持続的に投与することを意味するように意図されている。ある特定の実施形態では、休薬期間は、治療期間と同じ長さである。別の実施形態では、休薬期間は、治療期間と異なる長さである。いくつかの実施形態では、周期の長さは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間または10週間である。周期化のいくつかの実施形態では、セレブロン改変化合物を1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、15日間、20日間、25日間または30日間、毎日投与してから、休薬期間を設ける。特定の実施形態では、4週間の周期の5日間、セレブロン改変化合物を毎日投与する。別の特定の実施形態では、4週間の周期の10日間、セレブロン改変化合物を毎日投与する。
【0204】
いくつかの実施形態では、投与頻度は、1日あたり約1回~1カ月あたり約1回の範囲内である。ある特定の実施形態では、投与は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日おきに1回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回である。一実施形態では、セレブロン改変化合物を1日に1回投与する。別の実施形態では、セレブロン改変化合物を1日に2回投与する。さらに別の実施形態では、その化合物を1日に3回投与する。さらに別の実施形態では、セレブロン改変化合物を1日に4回投与する。
【0205】
ある特定の実施形態では、セレブロン改変化合物を1日~6カ月間、1週間~3カ月間、1週間~4週間、1週間~3週間または1週間~2週間、1日に1回投与する。ある特定の実施形態では、セレブロン改変化合物を1週間、2週間、3週間または4週間、1日に1回投与する。一実施形態では、セレブロン改変化合物を1週間、1日に1回投与する。別の実施形態では、セレブロン改変化合物を2週間、1日に1回投与する。さらに別の実施形態では、セレブロン改変化合物を3週間、1日に1回投与する。さらに別の実施形態では、セレブロン改変化合物を4週間、1日に1回投与する。
【0206】
ある特定の実施形態では、セレブロン改変化合物を医薬組成物で調合し、患者に医薬組成物の形態で投与する。
【0207】
本発明で提供する各種の方法のいくつかの実施形態では、その方法は、第2の活性剤または支持療法剤を治療上有効な量投与することをさらに含む。その第2の活性剤は、大分子(例えば、タンパク質)または小分子(例えば、合成の無機分子、有機金属分子、もしくは有機分子)であることができる。いくつかの実施形態では、その第2の活性剤は、造血成長因子、サイトカイン、抗がん剤(例えばチェックポイント阻害剤)、抗生物質、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、コルチコステロイド、がん抗原に特異的に結合する治療用抗体、またはそれらの薬理学的に活性な変異体もしくは誘導体である。ある特定の実施形態では、その抗がん剤は、チェックポイント阻害剤である。
【0208】
いくつかの実施形態では、その第2の活性剤は、セレブロン改変化合物、あるいはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体、製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、アイソトポログ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物、または結晶多形の投与と関連する有害作用を緩和できる小分子である。第2の小分子活性剤の多くは、セレブロン改変化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物、互変異性体、製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、アイソトポログ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物、または結晶多形とともに(例えば、その投与前、投与後または同時に)投与すると、相乗作用をもたらすことができると考えられている。第2の小分子活性剤の例としては、抗がん剤、抗生物質、免疫抑制剤及びステロイドが挙げられるが、これらに限らない。
【0209】
5.3 キット
また、本発明において提供するのは、本発明で提供するいずれかの方法を行うためのキットである。別の態様では、本発明において提供するのは、SALL4(またはそのバリアント)のレベルを求めるための物質を含むキットである。いくつかの実施形態では、そのキットは、セレブロン改変化合物による治療後の、SALL4の分解を判断するためのものである。
【0210】
別の態様では、本発明において提供するのは、SALL4(またはそのバリアント)のユビキチン化を判断するための物質を含むキットである。いくつかの実施形態では、そのキットは、セレブロン改変化合物の治療後の、SALL4のユビキチン化を判断するためのものである。
【0211】
さらに別の態様では、本発明において提供するのは、SALL4またはその断片と、セレブロンまたはその断片との相互作用を判断するための物質を含むキットである。いくつかの実施形態では、そのキットは、セレブロン改変化合物による治療後の、SALL4またはその断片と、セレブロンまたはその断片との相互作用を判断するためのものである。
【0212】
例えば、そのキットは、SALL4の存在(もしくは不在)、または量を検出できるプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド、抗体、標識化合物またはその他の物質)を含むことができる。そのキットは、説明書を含むこともできる。
【0213】
プローブは、ゲノム配列、核酸産物またはポリペプチド産物に特異的にハイブリダイズし得る。開示されているキットは、例えば、緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定化剤も含むことができる。そのキットは、検出可能な物質(例えば、酵素または基質)を検出するのに必要な構成成分を含むこともできる。そのキットは、アッセイして、含まれる試験試料と比較できる1つのコントロール試料または一連のコントロール試料も含むことができる。キットの各構成成分は通常、個別の容器に入っており、その各種容器のすべてが、使用説明書とともに、1つのパッケージに入っている。
【0214】
本発明で提供する各種キットのある特定の実施形態では、そのキットは、試料を得るための器具または物質も含み得る。いくつかの実施形態では、その器具または物質は、腫瘍生検標本、リンパ節生検標本、血液、または骨髄、脾臓、肝臓、脳もしくは乳房の生検標本から試料を得るためのものである。その生体試料は、例えば、細胞培養液、細胞株、組織、器官、細胞小器官、生体液、血液試料、尿試料または皮膚試料であることができる。
【0215】
ある特定の実施形態では、そのキットは、SALL4の核酸(例えばmRNA)に特異的に結合する1つ以上のプローブを含む。ある特定の実施形態では、そのキットは、洗浄液をさらに含む。ある特定の実施形態では、そのキットは、ハイブリダイゼーションアッセイを行うための試薬、核酸の単離または精製手段、検出手段、ならびにポジティブコントロール及びネガティブコントロールをさらに含む。ある特定の実施形態では、そのキットは、キットの使用説明書をさらに含む。そのキットは、家庭用途、臨床用途または研究用途に合わせて作ることができる。
【0216】
ある特定の実施形態では、本発明において提供するのは、SALL4のタンパク質レベルを検出するためのキットである。ある特定の実施形態では、そのキットは、特異的なタンパク質を認識する抗体でコーティングしたディップスティック、洗浄液、アッセイを行うための試薬、タンパク質の単離または精製手段、検出手段、ならびにポジティブコントロール及びネガティブコントロールを含む。ある特定の実施形態では、そのキットは、キットの使用説明書をさらに含む。そのキットは、家庭用途、臨床用途または研究用途に合わせて作ることができる。
【0217】
このようなキットでは、例えば、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、テストストリップ、フィルター、マイクロスフィア、スライド、マルチウェルプレートまたは光ファイバーを用いることができる。そのキットの固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、球体、多糖、キャピラリー、フィルム、プレートまたはスライドであることができる。
【0218】
別の実施形態では、そのキットは、固体支持体、その支持体に結合させる核酸であって、核酸の少なくとも20塩基、50塩基、100塩基、200塩基、350塩基またはそれを超える塩基と相補的である核酸、及び生体試料における遺伝子の発現を検出するための手段を含む。
【0219】
具体的な実施形態では、その医薬キットまたはアッセイキットは、容器内に、化合物またはその医薬組成物を含み、さらに、1つ以上の容器内に、核酸を単離するための構成成分を含む。別の具体的な実施形態では、その医薬キットまたはアッセイキットは、容器内に、化合物または医薬組成物を含み、さらに、1つ以上の容器内に、RT-PCR、qRT-PCR、ディープシーケンシングまたはマイクロアレイを行うための構成成分を含む。
【0220】
ある特定の実施形態では、本発明で提供するキットでは、定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)、マイクロアレイ、フローサイトメトリーまたは免疫蛍光法によって、タンパク質の発現を検出するための手段を用いる。別の実施形態では、タンパク質の発現は、ELISAベースの手法または当該技術分野において知られているその他の類似の方法によって測定する。
【0221】
別の具体的な実施形態では、その医薬キットまたはアッセイキットは、容器内に、化合物またはその医薬組成物を含み、さらに、1つ以上の容器内に、タンパク質を単離するための構成要素を含む。別の具体的な実施形態では、その医薬キットまたはアッセイキットは、容器内に、化合物または医薬組成物を含み、さらに、1つ以上の容器内に、フローサイトメトリーまたはELISAを行うための構成成分を含む。
【0222】
別の態様では、本発明において提供するのは、SALL4を測定するためのキットであって、1つ以上の遺伝子産物の量を測定するのに必要な物質を供給するキットである。いくつかの実施形態では、このようなキットは、RNAまたはタンパク質を測定するのに必要な物質及び試薬を含んでよい。いくつかの実施形態では、このようなキットは、マイクロアレイを含み、そのマイクロアレイは、1つ以上の遺伝子産物にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド及び/またはDNA及び/またはRNA断片で構成されている。いくつかの実施形態では、上記のようなキットは、RNA産物またはRNA産物のcDNAコピーのいずれかのPCR用のプライマーを含んでよい。いくつかの実施形態では、このようなキットは、PCR用のプライマー、及びqPCR用のプローブを含んでよい。いくつかの実施形態では、このようなキットは、複数のプライマー及び複数のプローブを含んでよく、複数の遺伝子産物を同時に測定できるように、そのプローブのいくつかは、異なるフルオロフォアを有する。いくつかの実施形態では、このようなキットは、RNAからcDNAを作製するための物質及び試薬をさらに含んでよい。いくつかの実施形態では、上記のようなキットは、タンパク質産物に対して特異的な抗体を含んでよい。加えて、このようなキットは、生体試料からRNA及び/またはタンパク質を単離するための物質及び試薬を含んでもよい。加えて、このようなキットは、生体試料から単離したRNAからcDNAを合成するための物質及び試薬を含んでよい。
【0223】
核酸マイクロアレイキットでは、そのキットは概して、固体支持体表面に結合させるプローブを含む。このような実施形態の1つでは、プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、または150ヌクレオチド長~800ヌクレオチド長の範囲であるプローブを含め、さらに長いプローブのいずれかであることができる。そのプローブは、検出可能な標識で標識してよい。具体的な実施形態では、そのプローブは、遺伝子産物のうちの1つ以上に対して特異的である。そのマイクロアレイキットは、アッセイ、ならびにそのアッセイを行うことによって得られるデータを解釈及び解析する方法を行うための説明書を含んでよい。
【0224】
定量PCRの場合、そのキットは概して、事前に選択したプライマーであって、特定の核酸配列に対して特異的なプライマーを含む。その定量PCRキットは、核酸を増幅するのに適する酵素(例えば、Taqポリメラーゼのようなポリメラーゼ)、デオキシヌクレオチド、及び増殖反応に必要な緩衝液も含んでよい。その定量PCRキットは、ある状態と関連するか、またはその状態を示す核酸配列に対して特異的なプローブも含んでよい。そのプローブは、フルオロフォアで標識されていてもいなくてもよい。そのプローブは、クエンチャー分子で標識されていてもいなくてもよい。いくつかの実施形態では、その定量PCRキットは、酵素(例えば、AMV、MMLVなどのような逆転写酵素)及び逆転写用のプライマーとともに、逆転写反応に必要なデオキシヌクレオチド及び緩衝液を含め、逆転写RNAに適する構成要素も含んでよい。その定量PCRキットの各構成成分は概して、それぞれ好適な容器に入っている。したがって、これらのキットは概して、それぞれ個々の試薬、酵素、プライマー及びプローブに適する別々の容器を含む。さらに、その定量PCRキットは、その反応、ならびにその反応を行うことによって得られるデータを解釈及び解析する方法を行うための説明書も含んでよい。
【0225】
抗体ベースのキットでは、そのキットは例えば、(1)対象とするペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に結合する第1の抗体(固体支持体に結合させてもさせなくてもよい)、及び任意に(2)その第1の抗体、またはそのペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質のいずれかに結合するとともに、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、放射性同位体または酵素)にコンジュゲートされている第2の異なる抗体を含むことができる。その抗体ベースのキットは、免疫沈降を行うためのビーズも含んでよい。その抗体ベースのキットの各構成成分は概して、それぞれ好適な容器に入っている。したがって、これらのキットは概して、各抗体及び試薬に適する別々の容器を含む。さらに、その抗体ベースのキットは、そのアッセイ、ならびにそのアッセイを行うことによって得られるデータを解釈及び解析する方法を行うための説明書を含んでよい。
【0226】
一実施形態では、本発明で提供するキットは、セレブロン改変化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、アイソトポログ、プロドラッグ、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形を含む。そのキットは、追加の活性剤をさらに含んでよく、その活性剤としては、本明細書に開示されている活性剤が挙げられるが、これらに限らない。
【0227】
本発明で提供するキットは、その化合物を投与するのに用いる器具をさらに含んでよい。このような器具の例としては、シリンジ、点滴袋、パッチ及び吸入器が挙げられるが、これらに限らない。
【0228】
キットは、移植用の細胞または血液と、1つ以上の活性成分を投与するのに使用できる製薬学的に許容可能なビヒクルをさらに含んでよい。例えば、非経口投与のために再構成する必要のある固体形態で活性成分を供給する場合、そのキットは、その活性成分を溶解して、微粒子を含まない滅菌溶液であって、非経口投与に適する溶液を形成できる好適なビヒクルの密閉容器を含むことができる。製薬学的に許容可能なビヒクルの例としては、注射用水のUSP、水性ビヒクル(塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液などであるが、これらに限らない)、水混和性ビヒクル(エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどであるが、これらに限らない)、ならびに非水性ビヒクル(コーン油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどであるが、これらに限らない)が挙げられるが、これらに限らない。
【0229】
本発明で提供する方法及びキットのある特定の実施形態では、タンパク質の精製、試料の標識または固相アッセイの実施の際には、固相支持体を使用する。本明細書に開示されている方法を行うのに適する固相の例としては、ビーズ、粒子、コロイド、単一表面、チューブ、マルチウェルプレート、マイクロタイタープレート、スライド、膜、ゲル及び電極が挙げられる。固相が粒子状物質(例えばビーズ)である場合、一実施形態では、その粒子状物質をマルチウェルプレートのウェルに配分して、固相支持体の並行処理を可能にする。
【0230】
開示されているキットは、遺伝構成要素の有無及びタンパク質の有無、またはそれらのレベルを同時に測定するのに有用なマルチプレックスキットであってもよい。
【0231】
5.4 化合物
本明細書に示されている化合物は、セレブロン改変化合物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体を直接または間接的に調節する。いくつかの実施形態では、本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、セレブロンに直接結合して、CRBNタンパク質のコンホメーション変化を誘導できる。別の実施形態では、本明細書に示されているセレブロン改変化合物は、CRBN E3ユビキチンリガーゼ複合体の他のサブユニットに直接結合できる。
【0232】
本発明で提供する方法のための化合物としては、特定のがんを含む数種類のヒト疾患の治療に有用であり得る化合物群である免疫調節化合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0233】
本明細書で使用する場合、別段に示されていない限り、「免疫調節化合物」または「免疫調節剤」という用語には、LPS誘導性単球TNF-α、IL-1β、IL-12、IL-6、MIP-1α、MCP-1、GM-CSF、G-CSF及びCOX-2の産生を阻害する特定の有機小分子を含めることができる。特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書に開示されている免疫調節化合物がもたらす生体作用の1つは、骨髄系細胞によるTNF-αの産生を減少させることである。本明細書に開示されている免疫調節化合物は、TNF-α mRNAの分解を高めることができる。さらに、理論に拘束されるものではないが、本明細書に開示されている免疫調節化合物は、T細胞の強力な共刺激因子であり得るとともに、細胞の増殖を用量依存的な形で劇的に増大させ得る。本明細書に開示されている免疫調節化合物は、CD4+T細胞サブセットに対する共刺激作用よりも、CD8+T細胞サブセットに対する共刺激作用の方が大きいことがある。加えて、その化合物は、骨髄系細胞の応答に対する抗炎症特性を有することができるが、T細胞を効率的に共刺激して、IL-2、IFN-γをさらに多い量で産生させ、T細胞の増殖とCD8+T細胞の細胞傷害活性を高めることもできる。さらに、特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書に開示されている免疫調節化合物は、サイトカインの活性化を通じて間接的に、また直接、ナチュラルキラー(「NK」)細胞とナチュラルキラーT(「NKT」)細胞に作用できるとともに、NK細胞が有益なサイトカイン(IFN-γなどであるが、これに限らない)を産生する能力を高めて、NK細胞とNKT細胞の細胞傷害活性を高めることができる。
【0234】
本明細書に示されている例示的な免疫調節化合物としては、サリドマイド、レナリドマイド及びポマリドミド、あるいはそれらのエナンチオマーもしくはエナンチオマーの混合物、またはそれらの製薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、共結晶、包接化合物もしくは結晶多形が挙げられるが、これらに限らない。
【0235】
本明細書に開示されている各種の免疫調節化合物は、1つ以上のキラル中心を含み、エナンチオマーのラセミ混合物またはジアステレオマーの混合物として存在できる。したがって、本発明で提供するのは、上記のような化合物の立体異性体的に純粋な形態を使用すること、及びそれらの形態の混合物を使用することでもある。例えば、特定の免疫調節化合物のエナンチオマーを等量または不等量含む混合物を用いてよい。これらの異性体は、不斉合成しても、キラルカラムまたはキラル分割剤のような標準的な技法を用いて分割してもよい。例えば、Jacques,J.,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley-Interscience,New York,1981)、Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977)、Eliel,E.L.,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962)及びWilen,S.H.,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN,1972)を参照されたい。
【0236】
記載されている化合物はいずれも、市販購入することも、本明細書に開示されている特許または特許公開に記載されている方法に従って調製することもできる。さらに、光学的に純粋な化合物は、不斉合成することも、既知の分割剤またはキラルカラム及び他の標準的な有機合成化学技術を使用して分割することができる。
【0237】
本明細書に示されている各種の組成物及び方法のある特定の実施形態では、セレブロン改変化合物は、本明細書に示されている免疫調節化合物である。別の実施形態では、セレブロン改変化合物は、免疫調節化合物ではない。
【0238】
示されている構造と、その構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合には、示されている構造が優先されることに留意されたい。加えて、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太線または破線で示されていない場合、その構造または構造の一部には、そのすべての立体異性体が含まれると解釈するものとする。
【0239】
本発明で提供する各種の方法及び/またはキットのいずれにおいても、例えば、1つ以上の試薬(核酸プライマー、固体支持体などであるが、これらに限らない)に関して上で列挙した実施形態をいずれかに組み合わせたものも企図されていることに留意されたい。
【0240】
下記の非限定的な実施例によって、本発明のある特定の実施形態を例示する。
【実施例
【0241】
6.実施例
下記の実施例は、別段に詳細に説明されている場合を除き、当業者に周知であるとともに、当業者にとって定型的である標準的な技法を用いて行われている。実施例は、単に例示的なものとして意図されている。
【0242】
6.1 方法
タンパク質の発現及び精製
【0243】
2XYT培地(Teknova)を用いて、MBPに融合したWTタンパク質及び変異体タンパク質をE.coli BL21(DE3)Starという細胞(Life Technologies)で発現させた。0.6のOD600で18時間、16℃で細胞を誘導した。細胞は、ペレット化し、凍結し、精製の際に解凍し、150μMの酢酸亜鉛、40,000Uのベンゾナーゼ(Novagen)及び1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(San Diego Bioscience)を含むB-PER Bacterial Protein Extractionという緩衝液(Thermo Fisher)に再懸濁させた。溶解液をアミロース樹脂(NEB)とともに4℃で1時間インキュベートしてから、ビーズを洗浄した。200mMのNaCl、50mMのトリス(pH7.5)、3mMのTCEP、10%グリセロール、150μMの酢酸亜鉛及び10mMのマルトースを含む緩衝液で、タンパク質を溶出させた。
【0244】
セレブロン-DDB1の精製
【0245】
ZZドメイン-6×His-トロンビンタグ付加ヒトセレブロン(40~442位のアミノ酸)及び完全長ヒトDDB1を昆虫細胞SF9で、ESF921培地(Expression Systems)中、50uMの酢酸亜鉛の存在下で共発現させた。50mMのトリス-HCl(pH7.5)、500mMのNaCl、10mMのイミダゾール、10%グリセロール、2mMのTCEP、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(San Diego Bioscience)及び40,000Uのベンゾナーゼ(Novagen)を含む緩衝液に細胞を再懸濁させ、30秒、超音波処理した。溶解液を30,000rpmで30分、高速回転させることによって清澄化し、清澄化した溶解液をアフィニティー樹脂Ni-NTA(Qiagen)とともに1時間インキュベートした。500mMのイミダゾールを含む緩衝液で複合体を溶出させ、そのZZドメイン-6×Hisタグを、一晩のトロンビンの切断(Enzyme Research)を、10mMのイミダゾール緩衝液中での透析と組み合わせて除去した。切断された溶出液をアフィニティー樹脂Ni-NTA(Qiagen)とともにインキュベートし、さらに精製するために、そのフロースルーをANX HiTrapイオン交換カラム(GE Healthcare)によって、200mMのNaClに希釈した。そのANXカラムを10カラム容量の50mMのトリス-HCl(pH7.5)、200mMのNaCl、3mMのTCEPで洗浄してから、10カラム容量の50mMのビス-トリス(pH6.0)、200mMのNaCl、3mMのTCEPで洗浄したところ、210mMのNaClで、セレブロン-DDB1のピークが溶出された。このピークを回収し、Sephacryl S-400(16/60)というカラム(GE Healthcare)を用いて、サイズ排除クロマトグラフィーによって、10mMのHEPES(pH7.0)、240mMのNaCl及び3mMのTECPを含む緩衝液中でさらに精製した。そのセレブロン-DDB1複合体は、30mg/mLまで濃縮された。
【0246】
完全長ヒトセレブロン、完全長マウスセレブロン及び完全長ウサギセレブロンを完全長ヒトDDB1とともに、昆虫細胞SF9で、ESF921培地中、50uMの酢酸亜鉛の存在下で共発現させた。50mMのトリス-HCl(pH7.5)、500mMのNaCl、10mMのイミダゾール、10%グリセロール、2mMのTCEP、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(San Diego Bioscience)及び40,000Uのベンゾナーゼ(Novagen)を含む緩衝液に細胞を再懸濁させ、30秒、超音波処理した。溶解液を30,000rpmで30分、高速回転させることによって清澄化し、清澄化した溶解液をアフィニティー樹脂Ni-NTA(Qiagen)とともに1時間インキュベートした。500mMのイミダゾールを含む緩衝液で複合体を溶出させ、そのZZドメイン-6×Hisタグを、一晩のトロンビンの切断(Enzyme Research)を、10mMのイミダゾール緩衝液中での透析と組み合わせて除去した。切断された溶出液をアフィニティー樹脂Ni-NTA(Qiagen)とともにインキュベートし、さらに精製するために、Sephacryl S-400(16/60)というカラム(GE Healthcare)によって、10mMのHEPES(pH7.0)、240mMのNaCl及び3mMのTECPを含む緩衝液中で、そのフロースルーを200mMのNaClに希釈した。
【0247】
ジンクフィンガータンパク質の精製
【0248】
文献で示されているように、個別に精製したMBP融合ジンクフィンガードメインのドメイン境界には、そのジンクフィンガードメインのN末端側に5個のアミノ酸、そのジンクフィンガードメインのC末端側に1個のアミノ酸が常に含まれる(いずれのナンバリングも、Uniprot Isoform 1に由来する)。2XYT培地(Teknova)を用いて、MBPに融合した、WT及び変異体のSALL4ジンクフィンガードメインタンパク質、Ikarosジンクフィンガードメインタンパク質及びZFP91ジンクフィンガードメインタンパク質をE.coli BL21(DE3)Starという細胞(Life Technologies)で発現させた。0.6のOD600で18時間、16℃で細胞を誘導した。細胞は、ペレット化し、凍結し、精製の際に解凍し、150μMの酢酸亜鉛、40,000Uのベンゾナーゼ(Novagen)及び1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(San Diego Bioscience)を含むB-PER Bacterial Protein Extractionという緩衝液(Thermo Fisher)に再懸濁させた。溶解液をアミロース樹脂(NEB)とともに4℃で1時間インキュベートしてから、ビーズを洗浄した。200mMのNaCl、50mMのトリス(pH7.5)、3mMのTCEP、10%グリセロール、150μMの酢酸亜鉛及び10mMのマルトースを含む緩衝液でタンパク質を溶出させた。
【0249】
in vitroでのユビキチン化アッセイ
【0250】
精製したE1、E2、ユビキチン、Cul4A-Rbx1、セレブロン-DDB1及びGSPT1タンパク質を用いて、MBPに融合した上記のWTタンパク質及び変異体タンパク質のユビキチン化をin vitroで再構成させた。マルトースアフィニティー樹脂(NEB)によって精製した基質タンパク質を30uMという適切な濃度でインキュベートした。ユビキチン化の構成要素について、以下で簡潔に説明する。ヒトセレブロン-DDB1(セレブロンの40~442位のアミノ酸及び完全長DDB1)、ならびに6×his-DDB1のみを昆虫細胞SF9において、50μMの酢酸亜鉛の存在下で共発現させ、ニッケルアフィニティー樹脂(Qiagen)、HiTrap ANXカラムによるイオン交換(GE Healthcare)及びSephacryl400(16/60)によるサイズ排除クロマトグラフィー(GE Healthcare)によって精製した。ヒト完全長Cul4A及びRbx1を昆虫細胞SF9で共発現させ、ニッケルアフィニティー樹脂及びSuperdex200(16/60)によるサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。精製された組み換えヒトUbe1 E1(E-305)、組み換えヒトUbcH5a E2(E2-616)及び組み換えヒトユビキチン(U-100H)は、R&D systemsから購入した。構成成分は、示されているように100μMの化合物を含めるか、または含めずに、10mMのATP、1μMのUbe1、25μMのUbcH5a、200μMのUb、1μMのCul4-Rbx1、25μMのGSPT1及び1μMのセレブロン-DDB1という終濃度になるように、ユビキチン化アッセイ緩衝液(20mMのHEPES(pH7.5)、150mMのNaCl、10mMのMgCl)中で混合した。E1、E2、ATP及びユビキチンを30分プレインキュベートし、別途、MBP-基質、CRBN-DDB1、Cul4-Rbx1及び化合物を5分間、室温でプレインキュベートした後、その2つのプレインキュベーション液を混合することによって、ユビキチン化反応を開始させた。反応液を30Cで2時間インキュベートしてから、SDS-PAGEによって分離した後、クーマシー染色またはイムノブロット解析を行った。
【0251】
ヒトiPS細胞の培養
【0252】
ヒトiPS細胞株ACS-1019及びACS-1011(健常なドナー由来)をATCCから購入した。それらのhiPSCは、マトリゲル(BD Biosciences)で薄層コーティングした細胞培養プレート内のmTESR-1培地(Stem Cell Technologies)中で維持した(5%CO2加湿インキュベーターで、メーカーの指示に従って37℃でインキュベートした)。ガラスピペットを用いた機械的な継代を通じて、細胞を分割し、2~3日おきに、ディスパーゼまたはアキュターゼによる酵素消化を行った。
【0253】
CRISPRの媒介による、セレブロンのノックアウト
【0254】
CRISPR-Cas9、及びセレブロンを標的とするスモールガイドRNAを発現するレンチウイルスベクターをヒトiPSCのACS-1019に4日間トランスダクションした。得られたコロニーを増幅し、抗CRBN65抗体(Celgene)を用いたイムノブロット解析によって、セレブロンのノックアウトについてスクリーニングした。
【0255】
リアルタイムPCR
【0256】
RNeasy Mini Kit(Qiagen)をメーカーの指示に従って用いて、全RNAをヒトiPS細胞から抽出し、SuperScript(商標)IV First-Strand Synthesis System(ThermoFisher)を用いて、ランダムプライマーによって、第1鎖cDNAに逆転写した。ViiA 7 Real-Time PCR SystemをTaqMan Gene Expression Assayプローブ(ThermoFisher)とともに用いて、SALL4(#4351372)、POU5F1(#4331182)及びGAPDH(#4326317E)について、リアルタイムPCRを三連で行った。
【0257】
プラスミド
【0258】
Genscriptが、ヒトSALL4のコード配列をin vitroで合成し、BP組み換えによってpDONR223にサブクローニングして、pDONR223-SALL4を作製した。そして、オーバーラップPCRによる部位特異的変異誘発を行って、pDONR223-SALL4-G416A及びpDONR223-SALL4-G600Aを作製した。次に、Gateway組み換えを通じて、pDONR223-SALL4、pDONR223-SALL4-G416A及びpDONR223-SALL4-G600AをpLOC-EF1α-3×HA-gateway-IRES-Purにシャトル化して、pLOC-EF1α-3×HA-SALL4-IRES-Pur、pLOC-EF1α-3×HA-SALL4-G416A-IRES-Pur及びpLOC-EF1α-3×HA-SALL4-G600A-IRES-Purを作製した。ヒトCRBNのコード配列をヒトcDNAクローン(Dharmacon)からPCR増幅し、BP組み換えによってpDONR223にシャトル化して、pDONR223-CRBNを作製した。そして、pDONR223-CRBNをpDEST27(Invitrogen)にシャトル化して、pDEST27-CRBNを作製した。
【0259】
レンチウイルスの作製及び感染
【0260】
Lipofectamine(登録商標)2000を用いて、レンチウイルスプラスミドを2nd Generation Packaging System(ABM)によって、Lenti-X-293細胞(Clontech)にコトランスフェクションした。16時間のインキュベーション後、20%FBSを添加した新鮮なDMEM培地に培地を変更した。トランスフェクションから2日後に、ウイルス上清を回収し、2000rpmで5分間、遠心分離することによって清澄化してから、0.45マイクロメートルの酢酸セルロースまたはナイロンのフィルターユニットで濾過した。細胞をレンチウイルスに、多重感染度約0.5で感染させた。12時間後、ウイルス上清を除去し、完全培養培地をその細胞に加えた。48時間後、細胞を1~2μg/mLのピューロマイシンまたは10~20μg/mLのブラストサイジンとともに、さらに3日間インキュベートして、レンチウイルスベクターが安定的に組み込まれた細胞を選択した。
【0261】
CRBN及びSALL4の共免疫沈降
【0262】
GST-CRBNをコードするpDEST27-CRBN、及びブラストサイジン耐性遺伝子を含むpLOC空ベクター(Thermo Fisher)をLenti-X-293細胞にコトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、細胞をトリプシン処理し、96ウェルプレートに、限界希釈を通じて播種した。ブラストサイジン(20μg/mL)によって2週間選択後、シングルクローンをピックアップし、増殖させて、抗CRBN65抗体によるイムノブロット解析を介して、GST-CRBNの過剰発現についてスクリーニングした。次に、SALL4の野生型及びバリアントを発現するレンチウイルスに、GST-CRBNヒトを安定的に発現するLenti-X-293細胞を感染させて、GST-CRBN及びSALL4を安定的に発現するLenti-X-293細胞を作製した。そして、細胞をDMSOまたは40μMのサリドマイドで8時間、1μMのMLN4924の存在下で処理し、緩衝液B[50mMのトリス(pH7.4)、150mMのNaCl、0.5%NP-40、10%グリセロール、1×Complete Ultra Protease Inhibitor(Roche)及び1×PhosphoSTOP(Roche)]中で溶解させた。全細胞抽出物を14,000rpmで10分間、遠心分離することによって清澄化してから、抗HAアフィニティー樹脂(Roche)とともに4℃で一晩インキュベートした。抗HA樹脂を緩衝液Bで6回洗浄した後、2×LDSローディング緩衝液中で90℃において5分間煮沸することによって、抗HA免疫沈降物を溶出してから、イムノブロット解析にかけた。
【0263】
SALL4の細胞内分解
【0264】
GST-CRBN及びSALL4バリアントを安定的に発現するLenti-X-293細胞をDMSOまたは40μMのサリドマイドで16時間処理した。続いて、細胞を、氷冷した1×PBSで2回洗浄し、緩衝液A[50mMのトリス.CL、150mMのNaCl、1%トリトン-x100、完全プロテアーゼ阻害剤タブレット(Roche)、ホスファターゼ阻害剤タブレット(Roche)]で溶解させた。全細胞抽出物を回収し、イムノブロット解析にかけた。
【0265】
雄のニュージーランドホワイトウサギにおけるサリドマイド処置
【0266】
雄のニュージーランドホワイトウサギをビヒクル(脱イオン水中の1%カルボキシメチルセルロース)、または30mg/kg/日もしくは150mg/kg/日のいずれかのサリドマイドで56日間処置して、精巣の変性を調べた。最後の投与から24時間後に、精巣を採取し、10%NBFで固定し、処理し、パラフィン包埋し、免疫組織化学法のために4マイクロメートルで切片化した。
【0267】
ウサギ胚のin vivo試験
【0268】
すべてのウサギは、IACUCから承認された手順に従って飼養した。ウサギは、未処置のままにするか(時点ごとのn=4)、またはGD7から開始して、1日あたり180mg/kgのサリドマイドを投与した(時点ごとのn=5)。用量レベル及び妊娠感受ウィンドウは、サリドマイドの催奇形性の研究で以前に報告された所見(Christian MS,birth defect research,2007)に基づき選択した。
【0269】
妊娠初期(GD8~12)には、コントロールのウサギと、サリドマイドで処置したウサギでは、着床頻度に有意差は見られなかった。Thal処置群における着床部位の平均数は、8日目では8.2個、9日目では10.4個、10日目では8.75個、11日目では7.4個、12日目では8.8個であった。コントロール群における着床部位の平均数は、8日目では8.5個、9日目では7.25個、10日目では7個、11日目では9.5個、12日目では7.5個であった。
【0270】
胚の採取の際に、胚吸収部位、胚死亡数及び肉眼観察結果を記録した。胚の死亡は、心拍の欠乏に基づいた。コントロール群では、胚吸収部位、または胚及び胎盤の異常は見られなかった。サリドマイドで処置したウサギでは、胚の吸収及び死亡がGD9、GD10、GD11及びGD12で認められ、GD12に最も顕著であった。8日目には、5匹のウサギの41個のすべての着床部位は、正常なようであった。9日目に、5匹のウサギのうち1匹で影響が見られ、合計で52個の着床部位のうち、胚吸収部位が1つ見られた。10日目には、5匹のウサギのうち1匹で影響が見られ、合計で38個の着床部位のうち、胚吸収部位が1つ見られた。11日目には、5匹のウサギのうち3匹で影響が見られ、37個の着床部位のうち、胚吸収部位は2個(5.41%)、死亡胚は2個(5.41%)であった。12日目には、5匹のウサギのうち5匹で影響が見られ、45個の着床部位のうち、胚吸収部位は3個(6.98%)、死亡胚は11個(25.58%)であった。
【0271】
各ウサギにおいて、サリドマイドの最高血漿中濃度(CMax=3時間)が得られるように、最後のサリドマイドの投与から3時間後に、帝王切開を行った(Hui et al,Reproductive Toxicology,2014)。子宮を除去し、着床部位を計数し、胚の解剖の際に、死亡及び吸収を確認した。GD8の胚は解剖せずに、in situで、胎盤部位及び子宮壁に付着した状態で固定した。その着床部位全体を処理し、パラフィン包埋して、免疫組織化学法のために、4マイクロメートルで切片化した。GD9~12の胚を胚膜とともに採取し、10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定し、70%エタノールに移した。固定後、胚膜を除去し、胚を処理し、パラフィン包埋し、免疫組織化学法及びin situハイブリダイゼーション手順のために、4マイクロメートルで切片化した。
【0272】
ウサギ胚は、SALL4に対して染色し、マウス精巣は、SALL4及びZFP91に対して染色した。Bond-IIIという自動スライド染色装置(Leica Microsystems,Buffalo Grove,Illinois)で、Bond Polymer Refine Detectionというシステム(Leica Microsystems、DS9800)を用いて、免疫組織化学法(IHC)を行った。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を厚さ4マイクロメートルで切片化し、Bond-Maxという装置で脱パラフィンした。抗原回復をEpitope Retrieval 2(ER2、pH9.0)で20分、100℃で行った。スライドにおいて、内在性ペルオキシダーゼ活性をPeroxide Blockによって5分間、室温でブロックした。続いて、切片をマウスモノクローナル抗SALL4 EE-30抗体(Santa Cruz、sc-101147)とともに、1:100の希釈率で60分間、室温で、または0.25ug/mlのウサギモノクローナル抗ZFP91抗体(Celgeneカスタムクローン122-8-6)とともにインキュベートした。マウス精巣では、一次抗体を15分間、室温でインキュベートし、ポストプライマリー及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ポリマーをその装置のデフォルト条件でインキュベートした。ウサギ組織では、SALL4一次抗体を60分間インキュベートし、ポストプライマリー-HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(Bethyl Laboratories、A90-116P)を1:200の希釈率で30分、室温でインキュベートした。ウサギ組織でZAFP91を染色する際には、TBS中の1%T-X100で30分、TBS中の2%正常ヤギ血清+1%BSAで30分、1%NGSを含むTBSでヤギ抗ウサギFab断片(非コンジュゲート)(JacksonImmunoResearch、カタログ番号111-007-003)を1/10に希釈したもので60分インキュベートしてから、2%NGS及び1%BSAを含むTBSで希釈した一次ZFP91抗体で45分インキュベートするブロック工程を含めた。1%NGSを含むTBS中で、ビオチン化二次ヤギ抗ウサギFab断片(JacksonImmunoResearch、カタログ番号111-067-003)を1/800の希釈率で15分用いてから、ストレプトアビジン-HRPをBond Intense Rというシステムで検出した。続いて、抗原-抗体複合体を基質の過酸化水素及び色原体のジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)によって可視化した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水して、Tissue-Tek Film Automated Coverslipperによってカバースリップした。
【0273】
SALL4 RNAのin situハイブリダイゼーション(ISH)
【0274】
完全自動化のSALL4 ISHアッセイをLeica BOND RX IHC & ISH染色装置で、BOND Research Detection System(Leica、カタログ番号DS9455)を用いて行った。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ウサギ胚を厚さ4マイクロメートルで切片化し、60℃で1時間加熱してから、Dewax Solutionで72℃において脱パラフィンした。抗原回復をEpitope Retrieval 2(ER2、pH9.0)で15分、95℃で行った。カスタム設計したウサギSALL4標的プローブをスライドに添加し、42℃で2時間インキュベートした。続いて、RNAscope LS Multiplex Fluorescent Reagent Kit(ACD、カタログ番号322800)によって、BOND RXのデフォルトのACD ISHプロトコールを用いて、SALL4シグナルを増幅した。フルオロフォアOpal TSA570(PerkinElmer、カタログ番号FP1488001KT)を1:1500の希釈率で、30分のインキュベーションに用いて、SALL4シグナルを検出した。続いて、ProLong Diamond Antifade Mountant with DAPI(Life Technology、カタログ番号P36966)を用いて、スライドを手動でカバースリップした。倍率4倍でスライド全体のスキャンを行ったら、Perkin Elmer Vectra3.0というマルチスペクトル画像プラットフォームを用いて、倍率40倍の画像を取得した。
【0275】
ヒト化セレブロンマウス
【0276】
この試験では、C57Bl/6Ntacマウスを使用し、Taconicにおいて、特定病原体未感染の状態で維持した。
【0277】
ターゲティング性を高めるために、ネオマイシンカセット挿入部位をターゲティングするように設計されたXTN(商標)2 TALEN(Transposogen)とともに、エキソン2(Glu24)由来のヒトcDNA、bGHpA及びネオマイシン選択カセットからなるCRBNドナーベクターを含むC57Bl/6Ntac JM8 ES細胞のエレクトロポレーションによって、ヒトCRBN発現マウスを作製した。そのベクターは、CRBNが、内在性のマウスプロモーターによって駆動されるとともに、bGHpAで終結する転写産物が、マウスCRBN遺伝子のスプライシングを阻害させるように設計した。
【0278】
そのクローンから得られたPCR産物のシーケンシングにより、5’末端及び3’末端の両方でターゲティングが確認された。ターゲットクローンを胚盤胞に注入し、得られたキメラをCreリコンビナーゼデリーターマウス(Taconic)と交配して、ネオマイシン耐性カセットを欠失させた。そして、ホモ接合体になるまで、コロニーを交配した。
【0279】
ヒト化セレブロンマウスにおける胚障害の判断
【0280】
サリドマイドを雌のHOM huCRBNマウスに、0mg/kg/日(RO脱イオン水中の1.0%[w/v]カルボキシメチルセルロース[1500~3000cP])、100mg/kg/日、300mg/kg/日または1000mg/kg/日の用量レベルで、妊娠6日目から妊娠15日目[GD6~15]まで、1日に1回、強制経口投与した。GD15に、生物分析及びトキシコキネティクスの評価のために、投与から0.5時間後、1時間後、3時間後、6時間後及び24時間後に、試験に割り当てたマウスの顎下静脈から、血液試料を採取した。すべてのマウスは、GD18に予定されていた検死まで生存した。マウスを安楽死させ、検査し、肉眼的検死を行った。卵巣及び子宮において、黄体の数及び分布、着床部位、胎盤(大きさ、色及び形)、生存胎児及び死亡胎児、ならびに初期胚吸収及び後期胚吸収を調べた。ペントバルビタールナトリウム(390mg/mL)の腹腔内注射によって、胎児を安楽死させた。胎児の重さを量り、性別及び外見の異常について調べた。後期吸収胚において、外見の異常及び性別を可能な範囲内で調べた。各胎児の体重を記録した。胎児は、試験番号、同腹児数及び子宮内分布によって個々に識別した。それぞれの同腹における胎児の約半数において、Wilsonの切片化技法の適用によって、内臓の異常を調べた。各胎児をブアン液で固定し、切片をアルコールで保存した。残りの胎児(それぞれの同腹における胎児の約半数)において、アリザリンレッドSで染色後、骨格の異常を調べた。調べた後、チモールを保存剤として加えたグリセリンにおいて、骨格標本を保持した。
【0281】
6.2 in vitroにおいて、SALL4は、サリドマイド及びセレブロン-CRL4の直接的な基質である。
SALL4は、7つのジンクフィンガードメインを含み、そのうちの4つは、セレブロン基質のIkaros及びAiolosと同じ位置にグリシンを有する。この実施例では、これらの4つのグリシン含有ジンクフィンガーを含む4つのドメインにおいて、完全精製のin vitroユビキチン化系で、セレブロン-CRL4による、化合物依存的なユビキチン化について試験した(図1を参照されたい)。第1のジンクフィンガードメインには、405~432位のアミノ酸残基が含まれ、このドメインは、TGERPFVCSVCGHRFTTKGNLKVHFHRH(配列番号3)という配列を有する。第2のジンクフィンガードメインには、589~616位のアミノ酸残基が含まれ、このドメインは、TGERPFQCKICGRAFSTKGNLKTHLGVH(配列番号4)という配列を有する。第3のジンクフィンガードメインには、865~892位のアミノ酸残基が含まれ、このドメインは、RQAKQHGCTRCGKNFSSASALQIHERTH(配列番号5)という配列を有する。第4のジンクフィンガードメインには、893~920位のアミノ酸残基が含まれ、このドメインは、TGEKPFVCNICGRAFTTKGNLKVHYMTH(配列番号6)という配列を有する。Ikarosのジンクフィンガードメイン(140~168位のアミノ酸残基)をコントロールとして使用したが、このドメインは、TGERPFQCNQCGASFTQKGNLLRHIKLHS(配列番号7)という配列を有する。
【0282】
より具体的には、SALL4の個々のジンクフィンガードメインをE.coliで発現させ、MBPタグを介して精製した。そして、精製したジンクフィンガーをin vitroユビキチン化アッセイで、セレブロンへの結合及びユビキチン化について試験した。精製したジンクフィンガーを、精製したセレブロン-CRL4ユビキチンリガーゼ複合体、ならびに精製したユビキチン化カスケード成分Uba1、UbcH5a、UbcH5b、ATP及びユビキチンとともにインキュベートした。ユビキチン化は、セレブロン改変化合物(サリドマイド「thal」)の存在下のみで観察され、DMSO単独の場合には観察されなかった。
【0283】
図1Aに示されているように、1つのジンクフィンガードメイン(405~432位のアミノ酸)が、サリドマイド依存的に、かなり強く、Ikarosと同程度にユビキチン化された。精製した系におけるin vitroでのユビキチン化によって、SALL4タンパク質が、ユビキチン化の際に、サリドマイドと結合したセレブロンと直接相互作用し得ること、及び405~432位のアミノ酸(配列番号3)のジンクフィンガーが、SALL4とセレブロンとの結合の大きな動因であることが示されている。
【0284】
別の実験では、SALL4タンパク質において、既知のネオ基質(重要な位置にグリシンを含むβ-ヘアピンモチーフ)のセレブロンへの結合を媒介することが示されている構造的特徴の存在についてさらに解析されている。Ikaros及びAiolosは、ジンクフィンガードメイン内にこのモチーフを有する。この実験で解析した、SALL4の7つのジンクフィンガードメインは、図1Bに示されている。そのうちの4つが、セレブロンへの結合を媒介するのに必要な位置に、グリシンを含む(図1Bを参照されたい)。我々のin vitroでのセレブロン-CRL4ユビキチン化アッセイ(図1Cを参照されたい)で試験するために、これらの4つの個別のジンクフィンガーのヒト型を発現させて、精製した。1つのジンクフィンガードメイン(ZF2、410~432位のアミノ酸(配列番号11))は、サリドマイド依存的に、強くユビキチン化され、第2のジンクフィンガードメイン(ZF4、594~616位のアミノ酸)も、ZF2よりは弱いが、サリドマイドの存在下でユビキチン化された。ZF2は、セレブロンに結合することが示されているIkaros及びZFP91のジンクフィンガードメインと同程度にユビキチン化された(図1D)。好ましいジンクフィンガードメインの存在は、セレブロン基質のIkaros及びAiolosを彷彿させる(Ikaros及びAiolosでは、単一のジンクフィンガーモチーフが、セレブロンのリクルート及び分解を媒介する)。
【0285】
他のネオ基質で立証されているように、これらのジンクフィンガーのユビキチン化が、グリシン残基(ZF2のG416及びZF4のG600)に依存するかを調べるために、追加の実験を行った(図1C及び図1Dを参照されたい)。そのグリシンをアラニンに変異させたところ、両方のジンクフィンガーのユビキチン化は、有意に軽減され、IkarosにおいてG151をアラニンに、ZFP91においてG406をアラニンに変異させた場合に、ユビキチン化の阻止が観察されたことと整合し(図1Dを参照されたい)、これらのSALL4ジンクフィンガーが、グリシンを含むβ-ヘアピンモチーフを利用して、セレブロンに結合することが示された。したがって、精製した系における、これらのユビキチン化実験によって、SALL4ジンクフィンガーが、ユビキチン化の際に、サリドマイドと結合したセレブロンと直接相互作用し得ること、ZF2(410~432位のアミノ酸)が、セレブロンと相互作用するジンクフィンガーの中で最も顕著なものであること、及びこれらのジンクフィンガーが、グリシンを含むβヘアピンモチーフを通じて結合すると思われることが示されている。
【0286】
続いて、サリドマイドによって誘発される催奇形性を媒介する際に、SALL4のユビキチン化が果たす役割を探るために、我々は、サリドマイドによって誘発される催奇形性に対する感受性が、ウサギとマウスで異なることを、配列の違いによって説明できるかを調べた。マウスセレブロンは、サリドマイド結合ポケットの周囲に、セレブロンとネオ基質との結合を阻害することが以前示された2つのアミノ酸の違いを含むが、ウサギセレブロンは、これらの変異を含まず、そのセレブロンは、ネオ基質結合部位の周囲区域が、ヒトセレブロンとの間で100%保存されている(図1E及び1Gを参照されたい)。ヒトSALL4と、マウスオルソログ及びウサギオルソログとのアラインメントによって、ZF2は、ヒトとウサギの間で100%保存されているが、マウスでは、配列に違いがあることが示されている(図1F及び1Gを参照されたい)。
【0287】
そこで、我々は、サリドマイドによって処理した場合に、ウサギセレブロンがウサギSALL4ジンクフィンガーを、マウスセレブロンがマウスSALL4ジンクフィンガーをユビキチン化し得るかを試験した。図1Cに示されているように、ウサギセレブロンは、ウサギジンクフィンガーである357~385位のアミノ酸(ヒトZF2のオルソログ)をサリドマイド依存的にユビキチン化でき、効率性は、そのヒトタンパク質に匹敵していた。これに対して、マウスセレブロンは、マウスSALL4ジンクフィンガーである410~438位のアミノ酸(ヒトZF2のオルソログ)をユビキチン化できなかった。そこで我々は、基質の結合を阻害する、マウスセレブロンにおける既知の変異に鑑み、ヒトセレブロンがマウスSALL4を認識し得るかを調べた。ヒトセレブロンは、マウスSALL4ジンクフィンガーをユビキチン化できないことが明らかになり、マウスSALL4における変異は、セレブロンへの結合を阻害するものであり、したがって、WTマウス及びヒトセレブロン(huCRBN)トランスジェニックマウスの両方において、SALL4の分解が低減されることになることが示された。実際に、グリシンを含むβ-ヘアピンモチーフを有する4つのすべてのマウスSALL4ジンクフィンガーを試験したところ、マウスセレブロンまたはヒトセレブロンのいずれによっても、効率的にユビキチン化されたものはなかった(図1Hを参照されたい)。
【0288】
6.3 in vivoにおいて、SALL4は、サリドマイド及びセレブロン-CRL4の直接的な基質であり、SALL4のセレブロンへの結合及びSALL4の分解は、SALL4の残基G416に依存する。
in vitro解析で、SALL4がセレブロンに直接結合し、SALL4がユビキチン化されることが示されたことに鑑み、この実施例では、細胞内での結合及びユビキチン化についてさらに調べた。ヒト組織培養細胞での完全長SALL4のユビキチン化及びプロテアソームによる分解を解析した。
【0289】
完全長ヒトSALL4を安定的に発現する細胞を、セレブロンの存在下または不在下で、サリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミドによって処理した。より具体的には、CRISPR-Cas9によってセレブロンがノックアウトされており、HAタグを付加したSALL4またはSALL4変異体を安定的に発現するLenti-x293細胞株に、GST-セレブロンベクターまたは空ベクターをトランスフェクションした。続いて、細胞をサリドマイド(THAL)、レナリドマイド(LEN)またはポマリドミド(POM)で処理して、その化合物に依存的に、SALL4が分解されるのかをモニタリングした。ZFP91は、セレブロンを発現するすべての細胞株で化合物依存的に分解されるコントロール化合物依存的なセレブロン基質としてモニタリングした。アクチンをローディングコントロールとして使用した。
【0290】
SALL4タンパク質のレベルが化合物依存的に低下したことが観察され、その低下が、セレブロンの発現に依存することが明らかになった(図2を参照されたい)。続いて、G416(405~432位のアミノ酸のジンクフィンガーに存在するグリシン)またはG600(589~616位のアミノ酸のジンクフィンガーに存在するグリシン)のいずれかをアラニンに変異させたSALL4において、化合物依存的な分解をモニタリングした。G416Aという変異は、SALL4を安定させるのに充分であり、化合物の誘導によるSALL4の分解を阻止したが、G600Aという変異は、SALL4を安定させるには充分ではなかったことから、405~432位のアミノ酸のジンクフィンガーが、細胞において、セレブロンへの結合及び化合物依存的なユビキチン化の大きな動因であることと整合していた。
【0291】
続いて、細胞内での完全長SALL4のセレブロンへの結合を共免疫沈降によって試験した(図3を参照されたい)。HAタグを付加したWT SALL4、G416A SALL4またはG600A SALL4を細胞から免疫沈降させ、共精製されたセレブロンのレベルをウエスタンブロットによって評価した。簡潔に述べると、CRISPR-cas9によってセレブロンがノックアウトされており、HAタグを付加したSALL4またはSALL4変異体を安定的に発現するLenti-x293細胞株に、GST-セレブロンベクターまたは空ベクターのいずれかをトランスフェクションした。続いて、細胞をサリドマイド(THAL)、レナリドマイド(LEN)またはポマリドミド(POM)で処理し、抗HAビーズを用いて、SALL4をプルダウンした。そして、共精製されたGST-セレブロンの量をウエスタンブロットによって評価した。WT SALL4及びG600A SALL4の両方で、化合物依存的にセレブロンに強力に結合したことが示されたが、G416A変異SALL4では、結合が有意に阻害されたことから、405~432位のアミノ酸のSALL4ジンクフィンガーが、SALL4とセレブロンとの結合の大きな動因であることが確認された。
【0292】
6.4 SALL4の分解は、化合物による処理に依存する。
続いて、内在性SALL4の化合物依存的な分解が確認された(図4を参照されたい)。培養したNCCIT、NETRA-2 cl.D1及びAN3-CAというがん細胞株を、示されている濃度のサリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミドで16時間処理してから、細胞試料を、抗SALL4抗体(EE-30、Santa Cruz)によるウエスタンブロットによって解析した。比較のために、セレブロンの存在を確認する抗セレブロンブロット、及び抗アクチンローディングコントロール)とともに、短期暴露(S.E.)及び長期暴露(L.E.)の両方の抗SALL4ウエスタンブロットが示されている。
【0293】
これらの細胞株では、内在性SALL4をウエスタンブロットによって観察でき、サリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミドのいずれかで16時間処理した後、薬物依存的な分解をモニタリングした。内在性SALL4が、化合物依存的に有意に分解されたことが観察された。
【0294】
6.5 in vivoでのSALL4の分解
ウサギにおいて、in vivoで、SALL4のサリドマイド依存的なダウンレギュレーションも観察された。ウサギは、サリドマイドによって誘発される催奇形性に対して感受性を持つ種であることが以前に示されている。この実施例では、成体の雄のウサギを30mg/kgまたは150mg/kgのサリドマイドで処置した。精巣を解剖し、その後、免疫組織化学法によって、SALL4の発現レベルを調べたが、その結果は、図5に示されている。
【0295】
別の実験で、妊娠ウサギを180mg/kgのサリドマイドで処置した。その後、胚において、SALL4レベルを免疫組織化学法によって調べたが、その結果は、図6に示されている。
【0296】
より具体的には、下記の表1に示されているように、妊娠8日目(GD8)、GD9、GD10、GD11及びGD12に胚を採取するために、5~8月齢である成体の雌のニュージーランドホワイトウサギを管理交配させた。
表1.サリドマイドで処置したウサギにおける着床部位
【表1】
【0297】
GD8胚を含む子宮の全断面、及びGD9~12の未処置ウサギ胚の矢状断面で、SALL4に対する免疫組織化学法を行い、すべての胚葉におけるSALL4タンパク質の発現を明らかにしたところ、明らかな分布パターンが見られた(図6を参照されたい)。GD8の胚膜では、核内SALL4が見られたが、胎盤、子宮内膜または子宮壁では見られなかった。GD9~12の胚では、SALL4は、サリドマイド催奇形性試験で悪影響を受けることの多い胚構造体において、同様に分布していたとともに、高いレベルで観察された。神経管及び眼胞(外胚葉)、肢芽及び中腎(中胚葉)、ならびに肝芽及び肺芽(内胚葉)で、最も高いSALL4レベルが観察された(図6を参照されたい)。GD9、GD10及びGD11では、SALL4レベルは総じて高く、GD12に低下し始めた。
【0298】
サリドマイド処置群の胚では、SALL4レベルの有意な低下が見られ、この低下は、GD12に最も顕著であった(図6を参照されたい)。GD9以降には、サリドマイド処置群の胚での肉眼的異常が観察されたことから、妊娠感受期にわたって、胚におけるサリドマイド暴露量が相当な量であったことが示された。特によく見られた所見には、胎盤、胚膜、及び肝芽と肺芽に近い胚腹部領域における出血、奇形頭、眼胞の拡張、神経管の拡張及び屈曲、肢芽の短縮、ならびに尾のよじれが含まれていた。すなわち、サリドマイドによって誘発される催奇形性が見られる生物では、胎児の発達時に、関連組織において、SALL4タンパク質のレベルがサリドマイドによって低下する。
【0299】
したがって、サリドマイドによる処置は、雄のウサギの精巣(図5を参照されたい)及びウサギ胚(図6を参照されたい)におけるSALL4レベルを用量依存的に低下させることが示された。
【0300】
6.6 ヒトiPS細胞において、SALL4は、セレブロン依存的かつプロテアソーム依存的に分解される。
ヒトiPS細胞でも、サリドマイドの誘導によって、内在性SALL4タンパク質が分解されることが観察された。ヒトiPS細胞において、サリドマイドに暴露させたところ、SALL4レベルが、用量依存的に低下したとともに、CRISPR媒介性の遺伝子編集を介して、セレブロンをノックアウトしたところ、サリドマイドによって誘導される、SALL4のダウンレギュレーションが、完全にブロックされた(図7A)。サリドマイドによって誘導される、SALL4タンパク質のレベルの低下は、プロテアソーム阻害剤MG132及びNEDD8活性化酵素阻害剤MLN4924(すべてのCRLを不活化させる)によって阻止されたことから、ユビキチンの媒介によるプロテアソーム分解を通じて、SALL4タンパク質のレベルが低下することが示された(図7B)。我々は、SALL4レベルに対するいずれの転写作用も除外するために、SALL4 mRNAのレベルが、サリドマイドによる処理によっては低下しなかったことを確認し(図7E)、ネオ基質GSPT1で報告されているように、SALL4 mRNAのレベルは、おそらくは、タンパク質が減少した際の恒常性の調節により、むしろ上昇する。in vitroでのユビキチン化によって最も効率的な基質として特定されたZF2におけるグリシン含有デグロンが、細胞内のSALL4タンパク質の減少に関与するのかを調べるために、サリドマイドで処理したHEK293細胞で、異所的に発現させたSALL4野生型タンパク質、G416A変異体タンパク質及びG600A変異体タンパク質の分解を試験した(図7Cを参照されたい)。in vitroでの結果と整合して、G416A変異体は、SALL4のサリドマイド依存的な分解をブロックしたが、G600Aは、SALL4の分解に対する作用を有さなかったことから、ZF2が、セレブロンへの結合及びSALL4のユビキチン化を媒介する主なジンクフィンガーであることが確認された。同様に、野生型タンパク質、G416A変異体タンパク質及びG600A変異体タンパク質がセレブロンに結合する能力を共免疫沈降(co-IP)によって試験した(図7Dを参照されたい)。野生型SALL4及びG600A変異体SALL4は、セレブロンに結合できたが、G416A変異体では、細胞におけるセレブロンへの結合が阻害された。勘案すると、これらの結果から、SALL4タンパク質が、他のネオ基質と一致する形で、CRL4-CRBN E3リガーゼにリクルートされ、「G-モチーフ」デグロンが、ジンクフィンガー2において、重要な残基のG416の周囲に位置することが示されている。
【0301】
6.7 SALL4は、ウサギの精巣では分解されるが、huCRBNマウスの精巣では分解されない。
この実施例ではさらに、in vivoで、サリドマイドによるSALL4の分解を試験及び比較した。SALL4は、胎児の発達時に発現するが、成体組織では、精巣で見られる幹細胞のような限られた数の組織で、発現が維持される。我々は、ポジティブコントロールとして、SALL4のダウンレギュレーションと、既知のセレブロンネオ基質のダウンレギュレーションを比較したいと考えた。サリドマイドは、Ikarosの分解を誘発する活性は中程度に過ぎず、CK1αの分解は誘発しない(本明細書には、データは示されていない)。したがって、免疫組織化学法によって直接比較可能なように、我々は、サリドマイドに対する感受性を有するとともに、組織分布が、Ikarosよりも広範であるセレブロンネオ基質を探した。上記のように、ZFP91は、in vitroでのユビキチン化解析において、CRL4-CRBNの直接的な基質であることが確認された。
【0302】
このため、成体の雄のウサギ及びマウスにおいて、免疫組織化学法によって、精巣でのSALL4及びZFP91の発現の変化について試験及び観察を行った。ウサギ及びマウスでは、SALL4は、細精管の最基底層沿いに位置する細胞サブセット(精原細胞の形態学的特徴を有する)の核内で高度に発現される。サリドマイドで処置したウサギでは、精巣におけるSALL4タンパク質のレベルが用量依存的に低下し、低下は、150mg/kg/日において顕著であった(図8の左パネルを参照されたい)。デグロンのZFP91は、ウサギとヒトの間で保存されており、処置したウサギでは、それに応じて、ZFP91が減少する(図8の左パネルを参照されたい)。in situハイブリダイゼーションによって、サリドマイドで処置しても、SALL4 mRNAのレベルは、分解機序と整合して、変化しないことが示された(図9を参照されたい)。
【0303】
マウスでは、セレブロンに、ネオ基質のリクルート及び分解をブロックするとともに、サリドマイドの催奇形性作用に対する耐性を持つことが示されている種特異的なアミノ酸の違いが見られることが知られている。WTマウスでは、サリドマイドで処理したところ、SALL4またはZFP91の減少は見られなかった(図8の中央パネルを参照されたい)。セレブロンモジュレーターに対する感受性を付与するために、我々は、ヒトセレブロンを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを構築した(図10を参照されたい)。ZFP91の配列では、グリシン含有ネオ基質デグロンの周囲の領域が、ヒトとマウスの間で保存されており、したがって、ZFP91は、huCRBNマウスにおいて、強くダウンレギュレーションされる(図8の右パネルを参照されたい)。これに対して、最大1000mg/kgのサリドマイドで7日間処置した後でも、精巣において、SALL4タンパク質のレベルは変化していない(図8の右パネルを参照されたい)。マウスとウサギにおけるSALL4タンパク質配列の違いによって、ユビキチン化比率の違いを説明できることを示したin vitroでのユビキチン化データと、これらの所見は整合している。
【0304】
6.8 ヒトセレブロントランスジェニックマウスでは、サリドマイドの催奇形性が見られない。
マウスでは、ヒトセレブロンは、ZFP91のような、保存されたネオ基質タンパク質を分解させるが、マウスSALL4タンパク質の配列の違いにより、SALL4は分解させないことがわかったので(第6.7節を参照されたい)、この実施例では、サリドマイドがヒトトランスジェニックマウス(huCRBN)に及ぼす催奇形性作用が特徴付けられている。管理交配したホモ接合体huCRBNマウス(10/群)にサリドマイドを0mg/kg/日(コントロール)、100mg/kg/日、300mg/kg/日及び1000mg/kg/日の用量で、主要器官形成期(妊娠6~15日目)に経口投与しても、胎児には、いずれの発生異常も見られなかった。コントロールでは、生存胎児は、100mg/kg/日群で7匹、300mg/kg/日群で9匹、1000mg/kg/日群で8匹であった。試験中、薬物動態を評価して、サリドマイドへの暴露レベルが充分であったか確認したところ、薬物処置群における対応する平均血漿暴露量(曲線下面積)は、35,100ng・hr/mL、78,600ng・hr/mL及び143,000ng・hr/mLであった。その後、胎児において、発生異常の発現について調べたところ、発生異常は報告されなかった(サリドマイドで処置したhuCRBNマウスと、未処置のhuCRBNマウスから得た骨格標本の比較が、図11に示されている)。
【0305】
これらの結果から、SALL4が、セレブロン-CRL4によるユビキチン化の直接的な化合物依存性基質であることが証明されている。発生過程でSALL4が失われることで、オキヒロ症候群、IVIC症候群、ホルト-オーラム症候群及び肢端-腎-眼症候群における四肢奇形が生じることが知られている。したがって、本実施例における結果によって、SALL4のダウンレギュレーションは、特定の化合物、例えばサリドマイドによる処置の催奇形性作用の大きな動因であることが示されている。すなわち、SALL4を用いて、セレブロン調節化合物の毒性を判断することによって、生殖毒性のリスクが低減された化合物のスクリーニング及び選択を可能にできる。SALL4またはその変異体の存在を利用して、セレブロン調節化合物による治療対象の患者を選択することもできる。
【0306】
本明細書では、例示目的で、具体的な実施形態について説明してきたが、本発明で提供するものの趣旨と範囲から逸脱せずに、各種の修正を行ってよいことは上記から明らかであろう。上で言及した参照文献はいずれも、参照により、その全体が本明細書に援用される。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
(a)セレブロン改変化合物を試料に投与すること、及び
(b)前記セレブロン改変化合物が、SALL4タンパク質の分解を誘発するかを判断することを含む方法。
(態様2)
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)試料を得ること、
(b)前記試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、
(c)前記セレブロン改変化合物を前記試料に投与すること、
(d)前記試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、
(e)SALL4の前記第1のレベルと前記第2のタンパク質レベルを比較して、前記セレブロン改変化合物が、SALL4の分解を誘発するかを判断すること、及び
(f)SALL4の分解を誘発しない前記セレブロン改変化合物、または対照化合物と比べて、SALL4の分解の低減を誘導する前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含む前記方法。
(態様3)
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)前記試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めること、
(c)SALL4のユビキチン化を誘発しない前記セレブロン化合物、または対照化合物と比べて、SALL4のユビキチン化レベルの低下を誘導する前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含む前記方法。
(態様4)
疾患または障害を治療するためのセレブロン改変化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(d)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断すること、
(c)SALL4とセレブロンとの相互作用を誘発しない前記セレブロン改変化合物、または対照化合物と比べて、SALL4とセレブロンとの相互作用の低減を誘導する前記セレブロン改変化合物を選択すること、
を含む前記方法。
(態様5)
前記疾患または障害が、がんである、態様2~4のいずれか1項に記載の方法。
(態様6)
前記がんが、血液がんである、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記がんが、固形がんである、態様5に記載の方法。
(態様8)
前記がんが、多発性骨髄腫、リンパ腫及び白血病からなる群から選択される、態様6に記載の方法。
(態様9)
前記がんが、多発性骨髄腫である、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記がんが、リンパ腫である、態様8に記載の方法。
(態様11)
前記がんが、白血病である、態様8に記載の方法。
(態様12)
SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって、またはSALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11)とセレブロンとの相互作用によって、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する、態様4に記載の方法。
(態様13)
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)試料を得ること、
(b)前記試料中のSALL4の第1のタンパク質レベルを求めること、
(c)前記セレブロン改変化合物を前記試料に投与すること、
(d)前記試料中のSALL4の第2のタンパク質レベルを求めること、
(e)SALL4の前記第1のレベルと前記第2のタンパク質レベルを比較して、前記化合物の催奇形性を判断すること、
を含む前記方法。
(態様14)
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)前記試料中のSALL4のユビキチン化レベルを求めることによって、前記化合物の催奇形性を判断すること、
を含む前記方法。
(態様15)
セレブロン改変化合物が催奇形性作用を誘発するかの判断方法であって、
(a)前記セレブロン改変化合物を試料に投与すること、
(b)SALL4とセレブロンとの相互作用を判断することによって、前記化合物の催奇形性を判断すること、
を含む前記方法。
(態様16)
SALL4タンパク質の405~432位のアミノ酸残基(配列番号3)とセレブロンとの相互作用によって、またはSALL4タンパク質の410~432位のアミノ酸残基(配列番号11)とセレブロンとの相互作用によって、SALL4とセレブロンとの相互作用を判断する、態様15に記載の方法。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F-1】
図1F-2】
図1G
図1H
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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